切削工具及びその製造方法並びに切削方法

申请号 JP2008532123 申请日 2007-08-30 公开(公告)号 JPWO2008026700A1 公开(公告)日 2010-01-21
申请人 京セラ株式会社; 发明人 栄仁 谷渕; 栄仁 谷渕;
摘要 【課題】硬質相を結 合金 属にて結合した超硬合金からなる基体と、基体の表面上に形成されるTiN層との密着性を改善した硬質材からなる切削工具及びその製造方法を提供する。【解決手段】硬質材からなる切削工具であって、前記硬質材は、硬質相と結合金属とを含む基体と、該基体の表面に形成されたTiN層とを備えており、前記基体は、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の 固溶体 からなるβ相を有しており、前記β相は、少なくとも一部が前記基体の表面に存在しており、前記TiN層は、前記基体表面のβ相の直上に、該β相の結晶と同じ方位関係を持った結晶を有することを特徴とする【選択図】図1
权利要求
  • 硬質材からなる切削工具であって、
    前記硬質材は、硬質相と結合金属とを含む基体と、該基体の表面に形成されたTiN層とを備えており、
    前記基体は、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を有しており、
    前記β相は、少なくとも一部が前記基体の表面に存在しており、
    前記TiN層は、前記基体表面のβ相の直上に、該β相の結晶と同じ方位関係を持った結晶を有することを特徴とする切削工具。
  • 硬質材からなる切削工具であって、
    前記硬質材は、硬質相と結合金属とを備える基体と、該基体の表面に形成されたTiN層とを備えており、
    前記基体は、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を有しており、
    前記β相は、少なくとも一部が前記基体の表面に存在しており、
    前記TiN層は、前記基体との界面において前記基体の表面のβ相上でエピタキシャル成長した部分を有することを特徴とする切削工具。
  • 前記基体は、前記β相を1〜8wt%含有していることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
  • 前記基体のTiN層との界面における基準長さ10μmに対する最大高さRmaxが0.05〜0.35μmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削工具。
  • 前記TiN膜におけるTiN結晶の膜厚方向に対して垂直な方向の平均結晶幅が10〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の切削工具。
  • 硬質材からなる切削工具の製造方法であって、
    硬質相と、結合金属と、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種及びWを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相と、を含む基体を研磨して、前記β相を前記基体の表面に露出させる研磨工程と、
    前記基体表面の酸化を還元するともに、該基体表面にNの結合肢を発生させる前処理工程と、
    CVD法により前記基体上に、前記基体表面に露出したβ相の直上でエピタキシャル成長した部分を有するTiN層を形成するTiN層成膜工程とを有する切削工具の製造方法。
  • 前記前処理工程は、CVD炉内において、H2を50〜75vol%、N2を25〜50vol%の範囲内でそれぞれ含み合計が100vol%になるように混合したガスを導入し、
    前記基体を前記CVD炉において、前記導入するガスの常温常圧での流量をVg(L/min)、前記CVD炉内の体積をVr(L)としたときのVg/Vr(1/min)が0.1〜0.3になるように制御した状態で保持することを特徴とする請求項6に記載の切削工具の製造方法。
  • 前記TiN層成膜工程は、前記CVD炉内に、TiCl4が0.3〜1.2vol%、H2が35〜65vol%、N2が35〜65vol%の範囲内でそれぞれ含み合計が100vol%になるように混合したガスを導入し、一定の圧力で前記Vg/Vrが0.7〜1.1(1/min)になるように制御することにより、CVD法により前記基体上に、前記基体表面に露出したβ相上でエピタキシャル成長した部分を有するTiN層を形成することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の切削工具の製造方法。
  • 前記前処理工程における前記基体を前記CVD炉に保持する時間が10〜60分であることを特徴とする請求項7又は8に記載の切削工具の製造方法。
  • 請求項1乃至5のいずれかの切削工具を用いて被削材を切削する切削方法であって、
    前記被削材に切削工具を相対的に近づける近接工程と、
    前記被削材又は切削工具の少なくとも一方を回転させ、前記切削工具を被削材に接触させて切削する切削工程と、
    前記被削材と前記切削工具とを相対的に遠ざける離間工程とを、備えることを特徴とする切削方法。
  • 说明书全文

    本発明は、金属等の切削加工に用いられる切削工具及びその製造方法並びに前記切削工具を用いた切削方法に関する。

    従来から、超硬合金又はサーメット等からなる基体の表面にTiC、TiCN、TiN、Al2O3等をCVD法(化学蒸着法)、PVD法(物理蒸着法)により被覆してなる硬質材が、切削工具に用いられている。 このような切削工具は、被覆層の耐摩耗性と、基体の強靭性とを兼ね備えており、例えば金属の切削加工等に幅広く利用されている。

    しかしながら、上記のような切削工具において、基体と該基体の表面に形成された被覆層の密着性が劣る場合、切削加工中に被覆層が基体から剥離することにより急激に摩耗が進行し、切削工具の寿命が低下してしまうという問題があった。 また、基体と該基体の表面に形成された被覆層との密着性が低いことにより、切削加工において刃先に大きな衝撃が加わる場合、被覆層が剥離し、欠損が発生するという問題がある。

    このような問題点を解決するために、従来は、基体の表面を粗面化して表面積を増加させてアンカー効果を得ることにより、基体と被覆層の密着を向上させる方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。 また、基体の組成成分を被覆層に拡散させることにより、基体と被覆層との密着性を向上させる方法(例えば、特許文献2又は特許文献3参照)が提案されている。

    具体的には、Coを含むWC基超硬合金からなる基体の表面にCVD法により、TiC又はTiNの第1層、柱状晶結晶を含むTiCNの第2層、TiC、TiCO等の第3層、Al2O3の第4層を順次被覆形成し、第1層と第2層又は第1〜3層までに基体中のW及びCoを拡散させた切削工具が開示されている。

    特開平5−44012号公報

    特開平7−243023号公報

    特開平8−118105号公報

    しかしながら、基体の表面を粗面化してアンカー効果により基体と被覆層の密着力を向上させる方法では、粗面化された基体表面上に形成される被覆層の結晶状態にばらつきが発生し、十分に密着力を向上させることはできないという問題がある。

    また、基体の組成成分を被覆層に拡散させることにより、基体と被覆層との密着性を向上させる方法では、基体表面において、被覆層中の拡散を詳細に観察すると、拡散層は著しく不均一になっている。 具体的に説明すると、結合金属であるCoが基体表面に露出した部分においては拡散量が多くなる。 しかし、炭化タングステン等の立方晶構造化合物の表面においては十分に拡散していない。 そのため、基体と被覆層との密着性の改善が不十分であるという問題がある。

    そこで本発明は、上記問題点に鑑み、硬質相を結合金属にて結合した超硬合金からなる基体と、基体の表面上に形成されるTiN層との密着性を改善した硬質材からなる切削工具及びその製造方法を提供することを目的とする。

    本発明における切削工具は、硬質材からなり、前記硬質材は、硬質相と結合金属とを含む基体と、該基体の表面に形成されたTiN層とを備えており、前記基体は、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を有しており、前記β相は、少なくとも一部が前記基体の表面に存在しており、前記TiN層は、前記基体表面のβ相の直上に、該β相の結晶と同じ方位関係を持った結晶を有することを特徴とする。

    また、上記発明における切削工具の製造方法は、硬質材からなる切削工具の製造方法であって、硬質相と、結合金属と、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相とを含む基体を研磨して、前記β相を前記基体の表面に露出させる研磨工程と、前記基体表面の酸化を還元するともに、該基体表面にNの結合肢を発生させる前処理工程と、CVD法により前記基体上に、前記基体表面に露出したβ相上でエピタキシャル成長した部分を有するTiN層を形成するTiN層成膜工程とを有することを特徴とする。

    本発明を用いることにより、基体と被覆層との密着力を向上させることができる。 これにより、切削加工時における膜剥離に起因する欠損を抑制できるとともに、耐欠損性に優れた切削工具を提供することができる。

    本発明は、金属等の切削加工に用いられる切削工具に関するものである。 具体的には硬質相を結合金属にて結合した超硬合金からなる基体の表面上に、少なくともTiN層が形成された硬質材を用いた切削工具に関するものである。

    なお、上記切削工具としては、ソリッドタイプのドリル又はエンドミルや、ろう付けタイプ又はスローアウェイタイプの旋削バイトに用いられるチップ等、切削に寄与する切刃部分を有するものが該当する。

    本発明に用いられる基体は、硬質相と結合金属とを含んでいる。 本発明に用いられる硬質相は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物から選ばれる少なくとも1種を含んでいるものが好ましい。 具体的には主成分は炭化タングステン(WC)であり、副成分として炭化チタニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウム等が用いられる。 また、結合金属としては、従来から用いられているものであれば特に限定はなく、例えばFe、Ni、Co等の鉄族金属が使用可能である。

    基体の表面には、被覆層が形成されており、該被覆層は1層または複数層を積層したものである。 本発明において、被覆層の最も基体側にはTiN層が形成されている。 TiN層上には、例えば、柱状晶結晶を含むTiCN層、TiC層、TiCO層、Al2O3層等が適宜積層されていることが好ましい。

    また、本発明に用いられる基体は、Ti、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を有している。

    本発明の特徴として、前記TiN層は、前記基体表面のβ相の直上に、該β相の結晶と同じ方位関係、すなわちエピタキシャル関係を持った結晶を有する。 換言すると、TiN層は、基体との界面においてβ相の直上でエピタキシャル成長した部分を有する。 これにより、基体と被覆層との密着力を向上させることができる。

    なお、エピタキシャル成長とは、基板結晶上に該基板結晶と同じ方位関係を持った結晶を成長させることをいう。

    ここで、エピタキシャル成長した粒子は、透過型電子顕微鏡によって200万倍でβ相とその直上のTiN層の粒子を確認した際に観察される結晶格子の縞模様(格子縞)がβ相からTiN粒子にかけて連続して見える状態にあると共に、制限視野電子線回折像において、β相とTiN粒子とが同じ格子構造を示す像であることの二点について分析することによって確認できる。

    前記β相は、基体に対して1〜8wt%含まれていることが好ましい。 この範囲内においては、TiN膜と基体の密着力と基体自体の強度のバランスが良好となる。 そのため、切削工具の耐摩耗性と耐欠損性が優れるものとなる。 なお、β相が1wt%以上の場合は、β相上にエピタキシャル成長するTiN層の面積が増加するとともに、基体とTiN層との密着力が向上しやすい。 β相が8wt%以下では、β相が適度に分散されており基体内で凝集し難い。 これにより、破壊の起点となりやすいβ相の凝集部分が発生しにくく、さらなる耐欠損性を得ることができる。

    また、前記基体のTiN層との界面は、基準長さ10μmに対する最大高さRmaxが0.05〜0.35μmであることが好ましい。 特に最大高さRmaxが0.1〜0.2μmであることが好ましい。

    前記Rmaxが0.05μm以上の場合は、加工された表面が適度に活性な面となっており、加工後に基体の表面が過度に酸化するのを抑制することができるため、TiN層がβ相上においてエピタキシャル成長しやすくなる。 また、前記Rmaxが0.35μm以下であれば、表面が平滑に保たれており、TiN層がβ相上においてエピタキシャル成長しやすい。

    また、前記TiN膜におけるTiN結晶の膜厚方向に対して垂直な方向の平均結晶幅が10〜50nmの場合に最も付着力が向上し、エピタキシャル成長しやすくなる。 特に、前記平均結晶幅が10〜30nmであることが好ましい。

    前記TiN膜におけるTiN結晶の膜厚方向に対して垂直な方向の平均結晶幅が10nm以上の場合は、単位面積あたりの粒界が多くなりすぎず、エピタキシャル成長する領域を確保することができる。 また、前記平均結晶幅が50nm以下の場合は、TiN粒子自体の強度が維持されているため、強い衝撃が加わった場合であっても、TiN層が破壊されにくく、欠損しにくくなる。

    (製造方法)
    上記本発明の切削工具を構成する超硬合金の製造方法の一例について説明する。

    まず、炭化タングステン(WC)粉末に対して、金属コバルト(Co)粉末を5.0〜15.0vol%と、β相を形成するための化合物粉末として、炭化チタン粉末を0.8〜4.5vol%、炭化タンタル粉末を0.5〜7.0vol%の比率で調合する。

    上記のように調合した粉末に加えて、所定時間混合・粉砕してスラリー状にした後、当該スラリーにバインダを添加し、スプレードライヤー等を用いて乾燥しながら混合粉末の造粒を行なう。 次に、造粒された粉末を用いてプレス成形により切削工具形状に成形を行なう。 その後、焼成炉にて脱脂を行なった後、焼成炉の温度を1420〜1550℃に上げて、1〜1.5時間焼成して超硬合金を作製することができる。

    次に、研磨工程として、前記超硬合金からなる基体の表面を♯400〜1000程度の砥粒を用いてブラシで研磨する。 これにより、前記基体の表面にTi、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を露出させるとともに、その上に形成されるTiN層が、前記β相とエピタキシャル成長しやすい状態に整えることができる。 具体的には、基体のTiN層との界面は、基準長さ10μmに対する最大高さRmaxが0.05〜0.35μmとなるように、前記研磨工程におけるブラシの回転数及び圧力等を適宜調整する。

    なお、ブラシによる研磨は、サンドブラストやエッチング等の表面粗さが大きくなりやすい研磨方法に比べて、表面粗さを上記範囲に調整しやすいため好ましい。

    次に、前処理工程として、CVD炉内において、H2を50〜75vol%、N2を25〜50vol%の範囲内でそれぞれ含み合計が100vol%になるように混合したガスを導入し、前記導入するガスの常温常圧での体積をVg(L/min)、前記CVD炉内の体積をVr(L)としたときのVg/Vr(1/min)が0.1〜0.3になるように制御し、前記基体を前記CVD炉内に保持する。 この前処理工程は、前記基体表面の酸化を還元するともに、該基体表面にNの結合肢を発生させることを目的とするものである。 これにより、基体表面に形成されるTiN層が、基体の表面におけるβ相の結晶と同じ方位関係を持った結晶となりやすくなる。 換言すると、TiN層が基体の表面におけるβ相とエピタキシャル成長しやすい状態にすることができる。

    なお、前記処理時間は10〜60分程度、CVD炉内の圧力は10〜30kPa、処理温度は850〜950℃で行なうことが好ましい。 当該範囲においては、基体表面にエピタキシャル成長が起こりやすい表面状態となる。

    次に、TiN層成膜工程として、前記CVD炉内において、TiCl4が0.3〜1.2vol%、H2が35〜65vol%、N2が35〜65vol%の範囲内でそれぞれ含み合計が100vol%になるように混合したガスを導入し、一定の圧力で前記Vg/Vr(1/min)が0.7〜1.1になるように制御し、CVD法により前記基体上に、前記基体表面に露出したβ相上でエピタキシャル成長した部分を有するTiN層を形成する。

    このTiN層成膜工程においては、Vg(L/min)の数値が大きくなる、即ち導入するガス量が前記前処理工程よりも大きく増加している。 この状態で、一定の圧力雰囲気下であればCVD炉でフローしているガスの流速が速くなる。 これにより、CVD法によって成膜されるTiN層にエピタキシャル成長に必要なエネルギーを運動エネルギーとして供給することができる。

    なお、前記圧力としては、7〜20kPa、処理温度は、860〜1000℃で行なうことが好ましい。 当該範囲においては、基体表面にTiN層がエピタキシャル成長しやすくなる。

    上記製造方法のように、所定の研磨工程、所定の前処理工程を基体に施した後に所定のTiN層成膜工程を行なうことにより、基体表面に露出したβ相上にTiN層がエピタキシャル成長しやすくなり、基体とTiN層を含む被覆層との密着性を向上させることができる。

    即ち、従来技術のように基体の表面を粗面化すると、その表面ではエピタキシャル成長が起こり難くなってしまう。 しかし、基体表面に研磨を施すと、表面の酸化が進み、基体表面のβ相上に形成するTiN層をエピタキシャル成長させることができる。 なお、本発明における研磨工程としては、鏡面またはRmaxが0.05μm以下であることが好ましい。

    また、基体の材料である超硬合金は、例えば炭化タングステン等の六方晶であるのに対して、TiN層は立方晶であり結晶系が異なることから、不整合転位などを加える必要があるなど、基体の表面に形成するTiN層を、前記β相の結晶と同じ方位関係を持った結晶とすることは非常に困難であった。

    さらに、基体の表面に形成するTiN層を、基体のβ相とエピタキシャル成長をさせるためには、基体の結晶の格子幅にTiN層の格子幅を一致させる必要があった。 しかし、格子幅を一致されるためには大きなエネルギーが必要であり、CVD法によってTiN層を形成する場合は、TiN層成膜工程において十分なエネルギーを付与することはが困難であった。

    そこで、出願人は実験を繰り返した結果、(1)基体の表面にTi、Ta、Nb、Zrの少なくとも1種と、Wとを含む炭化物、窒化物、炭窒化物の少なくとも1種の固溶体からなるβ相を露出させるとともに、基体表面を平滑にする研磨工程、(2)前記基体表面の酸化を還元するともに、該基体表面にNの結合肢を発生させる前処理工程、(3)所定の条件でCVD炉内にガス流を発生させて、TiN層の成膜時にエピタキシャル成長に必要なエネルギーを供給するTiN層成膜工程、これらを順次行なうことにより、従来技術ではなしえなかった基体との界面においてTiN層をβ相の直上でエピタキシャル成長させることに成功した。

    以下に本発明の実施例を、表を参照して説明する。

    (実施例)
    平均粒径1.4μmの炭化タングステン(WC)粉末、平均粒径1.6μmの金属コバルト(Co)粉末、平均粒径1.5μmの炭化チタン(TiC)粉末、平均粒径1.4μmのTaC粉末、その他ZrC、NbCをそれぞれ表1に記載の配合組成で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMG120408)に成形した後、脱バインダ処理を施し、表1に記載の方法で焼成して試料No. A−Dの超硬合金を作製した。

    前記試料A−Dの超硬合金内に含まれるβ相の量を蛍光X線回折分析(XRF)により測定し、炭化物換算計算および体積換算計算したところ試料No. Aは1.4vol%、試料No. Bは8vol%、試料No. Cは1vol%、試料No. Dは0vol%であった。

    上記試料No. A−Dの超硬合金を基体として、No. 1から15までの試料をそれぞれ準備して、基材の表面に表2に記載の各研磨工程を施した。 なお、表2における層厚は、基体と被覆層との界面、又は被覆層の各層の界面を含む任意破断面5ヵ所について、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、それぞれの層厚を数点測定し平均値を算出したものである。

    さらに、前処理工程を表2及び表3に記載の各条件に設定して行なった。 次いで、成膜工程として、表2に記載の各層を表3の条件でCVD法により試料No. 1から15の切削工具を作製した。

    なお、TiN層が、基体表面のβ相の直上に、該βの結晶と同じ方位関係の結晶を含むか否か、即ちエピタキシャル成長しているか否かの確認については、制限視野電子線解析像で確認するともに、高分解能透過型電子顕微鏡(HR−TEM)により、各資料の基材とTiN層との界面近傍の断面を観察し、多波干渉像にTiN層において基体のβ相部分から格子縞が連続である領域が確認されたものを、該β相と同じ方位関係を有しているものと判断した。 それに対して、TiN層において基体のβ相部分から格子縞が不連続であり、それぞれの粒子の方位は異なっているものについては、β相の直上において、該β相と同じ方位関係を有していないと判断した。 なお、図1に、基材と被覆層との界面付近のエピタキシャル成長が確認できる断面の概略図を示す。

    表2の結果から分かるように、本発明の製造方法を用いた試料No. 1−10については、TiN層において基体のβ相部分から格子縞が連続である領域、即ち、β相の直上において、前記β相と同じ方位関係を有している箇所が確認された。 それに対して、試料No. 11−15については、TiN層は、β相の直上において、該β相と格子縞が不連続であり、前記β相と同じ方位関係を有している箇所は確認できなかった。

    上記試料No. 1から15を用いて下記条件により、切削試験を行い、耐摩耗性(逃げ面摩耗、境界摩耗)、耐欠損性、刃先状態をそれぞれ測定した。 その結果を以下の表4に示す。

    (切削条件)
    (1)耐摩耗性試験被削材 :SUS304 円柱材工具形状:CNMG120408
    切込速度:200m/分送り速度:0.2mm/rev
    切り込み:1.5mm
    切削時間:20分切削状態:湿式切削(2)耐欠損性試験被削材 :SUS304 円柱材(溝付き)
    工具形状:CNMG120408
    切込速度:170m/分送り速度:0.3mm/rev
    切り込み:1.5mm
    切削状態:湿式切削

    表4から分かるように、TiN層が、基体表面のβ相の直上に、該βの結晶と同じ方位関係の結晶を含む試料No. 1−10については、エピタキシャル成長した部分が確認できなかった試料No. 11−15に比べて、逃げ面摩耗、境界摩耗、耐欠損試験、刃先状態のすべてにおいて優れた結果を得ることができた。

    これは、TiN層が基体表面のβ相の結晶と同じ方位関係の結晶ことにより、当該箇所において基体と被覆層との密着力を向上し、その結果、切削加工時における欠損を抑制できたものと考えられる。 また、基体と被覆層との界面において、圧力が集中する部分を低減することができ、切削工具の耐久性を向上させることができたものと考えられる。

    次に、本発明の切削工具を用いた切削方法について図面を参照して説明する。

    図2から図4に本発明の切削方法における概略図を示す。 まず、図2に示すように、切削工具15と被削材20とを準備し、被削材20を回転させて切削工具15を被削材20に近づける。 なお、切削工具15と被削材20とは、相対的に近づけば良く、例えば、被削材10を切削工具15に近づけても良い。

    次いで、図3に示すように、切削工具15を被削材20に接触させて切削する。 その後、図4に示すように被削材20から切削工具15を離間させる。 なお、切削加工を継続する場合は、被削材20を回転させた状態を保持して、被削材20の異なる箇所に切削工具15を接触させる工程を繰り返す。

    上記切削方法としては、外径加工、具体的には横引き加工を例に説明したが、内径加工等その他の切削加工にも用いることができる。

    基材と被覆層との界面付近のを含む断面の概略図である。

    本発明の切削方法の工程を示す概略図である。

    本発明の切削方法の工程を示す概略図である。

    本発明の切削方法の工程を示す概略図である。

    符号の説明

    1 基材2 TiN層3 界面4 β相A TiN層のエピタキシャル成長箇所(β相の結晶と同じ方位関係を有する箇所)

    QQ群二维码
    意见反馈