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ダイヤモンド接合体、それを備える工具、およびダイヤモンド接合体の製造方法

申请号 JP2015547689 申请日 2014-10-08 公开(公告)号 JP6416776B2 公开(公告)日 2018-10-31
申请人 住友電工ハードメタル株式会社; 住友電気工業株式会社; 发明人 東 泰助; 山口 忠士; 万木 伸一郎; 曽我部 万里;
摘要
权利要求

多結晶ダイヤモンド焼結体と、 硬質基体と、 前記多結晶ダイヤモンド焼結体と前記硬質基体との間に設けられた硬質層とを備え、 前記多結晶ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子と焼結助剤とを含み、 前記硬質基体は、タングステンカーバイドとコバルトとを含み、 前記硬質層は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる硬質粒子とコバルトとを含み、 前記硬質粒子の体積平均粒子径は、前記ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径以上である、ダイヤモンド接合体。前記硬質層において、前記コバルトの含有割合は5体積%以上30体積%以下である、請求項1に記載のダイヤモンド接合体。前記硬質粒子は、前記炭化物からなる、請求項1または請求項2に記載のダイヤモンド接合体。前記硬質層はダイヤモンド粒子を含まない、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体。前記硬質層は、前記硬質粒子および前記コバルトからなる、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体。前記硬質粒子のアスペクト比は2.5以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体。前記硬質層の厚みは、10μm以上400μm以下である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体。前記ダイヤモンド粒子の最大粒子径が50μm以下である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体。請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体を備える工具。硬質基体上に硬質粒子を配置し、前記硬質粒子上にダイヤモンド粒子および焼結助剤とを配置した成形体を準備する工程と、 前記成形体を圧5.0GPa以上7.5GPa以下、温度1300℃以上1900℃以下の条件で焼結する焼結工程と、を備える、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のダイヤモンド接合体の製造方法。

说明书全文

本発明は、ダイヤモンド接合体、それを備える工具、およびダイヤモンド接合体の製造方法に関する。

ダイヤモンドは、極めて高い硬度を有しており、ダイヤモンド粒子を原料にして製造される多結晶ダイヤモンド焼結体(以下「PCD」ともいう)は、切削工具、耐摩工具といった種々の工具に使用されている。

PCDを工具に使用する場合、PCDが硬質基体に接合された接合体(以下、「PCD接合体」ともいう)を、工具の母体となる台金に接合して使用するのが一般的である。たとえば、特開2010−208942号公報(特許文献1)には、ダイヤモンド粉末と結合材用の粉末とを混合させた混合粉末を、基体としての超硬合金製の円盤上に配置させた状態でタンタル(Ta)製の容器に充填し、これを高温高圧で焼結させることにより、PCD接合体を製造する方法が開示されている。

特開2010−208942号公報

しかしながら、従来の製造方法では、製造されたPCD接合体におけるPCDと硬質基体との接合強度が低い場合があった。このような接合強度の低いPCD接合体を工具に利用した場合、たとえば、この工具を用いて被加工材を加工した際に、PCDの一部または全部が工具から離脱してしまう恐れがある。

本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、高い接合強度を有するPCD接合体(ダイヤモンド接合体)、これを備える工具、および当該PCD接合体(ダイヤモンド接合体)の製造方法を提供することにある。

本発明の第1の態様は、多結晶ダイヤモンド焼結体と、硬質基体と、多結晶ダイヤモンド焼結体と硬質基体との間に設けられた硬質層とを備え、多結晶ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子と焼結助剤とを含み、硬質基体は、タングステンカーバイドとコバルトとを含み、硬質層は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる硬質粒子とコバルトとを含むダイヤモンド接合体である。

本発明の第2の態様は、上記ダイヤモンド接合体を備える工具である。 本発明の第3の態様は、硬質基体上に硬質粒子を配置し、硬質粒子上にダイヤモンド粒子および焼結助剤とを配置した成形体を準備する工程と、成形体を圧5.0GPa以上7.5GPa以下、温度1300℃以上1900℃以下の条件で焼結する焼結工程と、を備え、硬質基体はタングステンカーバイドとコバルトとを含み、硬質粒子は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる、ダイヤモンド接合体の製造方法である。

本発明によれば、高い接合強度を有するPCD接合体、これを備える工具、および当該PCD接合体の製造方法を提供することができる。

一実施の形態に係るPCD接合体の概略的な断面図である。

PCD接合体の接合強度の測定方法を概略的に説明するための断面図である。

一実施の形態に係るPCD接合体を備えるダイヤモンドバイトの一部における概略的な断面図である。

一実施の形態に係るPCD接合体の製造方法を概略的に説明するためのフロー図である。

図4の配置工程を概略的に説明するための断面図である。

実施例2のPCD接合体の電子顕微鏡観察像を示す図である。

比較例2のPCD接合体の電子顕微鏡観察像を示す図である。

[本願発明の実施形態の説明] 最初に本発明の実施の概要について説明する。

本発明者らは、PCDと硬質基体との高い接合強度を有するPCD接合体を得るべく鋭意検討の結果、以下の知見を見い出し、本発明を完成させた。

本発明者らは、まず、硬質基体上にPCDの原料となるダイヤモンド粒子と焼結助剤であるコバルト(Co)とを配置させた複数の成形体を準備し、これらを高温高圧で焼結することにより、複数のPCD接合体を得た。そして、電子顕微鏡を用いて各PCD接合体の組織状態を観察したところ、PCDと硬質基体との界面に、異常粒成長した(焼結後の)ダイヤモンド粒子が存在しない個体と、存在する個体とがあることが確認された。

PCDと硬質基体との界面に異常粒成長した(焼結後の)ダイヤモンド粒子が存在しない場合、この界面には、硬質基体と、(焼結後の)ダイヤモンド粒子およびCoからなるPCDとの熱膨張係数差による残留応力が発生する。一方、PCDと硬質基体との界面に異常粒成長した(焼結後の)ダイヤモンド粒子が存在する場合、この界面には、硬質基体と異常粒成長した(焼結後の)ダイヤモンド粒子との熱膨張係数差による残留応力が発生する。後者の熱膨張係数差は、前者の熱膨張係数差よりも大きいために、前者の残留応力は、後者の残留応力よりも大きくなる。界面の残留応力が大きいと、界面を構成する2つの材料の接合強度が弱くなるために、後者の場合、PCDと硬質基体との接合強度が弱くなると考えられる。

本発明者らは、同条件で複数のPCD接合体を製造したにも関わらず、上記のように、異常粒成長したダイヤモンド粒子が存在する個体と、存在しない個体とが製造された理由について、以下のように推測した。

Coを含有する硬質基体上にダイヤモンド粒子を含む層を配置して焼結を行った場合、硬質基体中に含まれていたCoがダイヤモンド粒子を含む層側へと拡散される。この拡散されるCoが多い場合、ダイヤモンド粒子を含む層中には、意図しない過剰なCoが含まれることになる。Coはダイヤモンド粒子の粒成長を促進する機能を有するため、ダイヤモンド粒子に過剰なCoが接触する界面では、ダイヤモンド粒子の異常粒成長が発生し易くなる。そして、PCDと硬質基体との界面においてダイヤモンド粒子の異常粒成長が起こると、この界面に大きな残留応力が発生し、結果的に、PCDと硬質基体との接合強度は低くなる。また、この異常粒成長は、たとえば、焼結炉内の温度の不均一性、焼結炉内における成形体の配置位置の違いなどによって引き起こされるが、異常粒成長の発生、成長は速度が速いために、その制御が難しい。このために、同条件で焼結されたにも関わらず、異常粒成長したダイヤモンド粒子が存在する個体と、存在しない個体とが製造される。

そこで、本発明者らは、硬質基体からのCoの過剰な拡散を抑制すべく鋭意検討を重ね、ダイヤモンド粒子と硬質基体との間に特定の硬質粒子を配置し、これを焼結することによって、PCD接合体の接合強度を向上できることを知見し、本発明を完成させた。

(1)すなわち、本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体は、多結晶ダイヤモンド焼結体と、硬質基体と、多結晶ダイヤモンド焼結体と硬質基体との間に設けられた硬質層とを備え、多結晶ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンド粒子と、焼結助剤とを含み、硬質基体は、タングステンカーバイドとコバルトとを含み、硬質層は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる硬質粒子とコバルトとを含むダイヤモンド接合体である。本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体は、高い接合強度を有することができる。

(2)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体において好ましくは、硬質層におけるコバルトの含有割合は5体積%以上30体積%以下である。これにより、硬質層は高い抗折力を有することができる。

(3)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体において好ましくは、硬質粒子の体積平均粒子径は、ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径以上である。これにより、多結晶ダイヤモンド接合体はより高い接合強度を有することができる。

(4)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体において好ましくは、硬質粒子のアスペクト比は2.5以下である。これにより、多結晶ダイヤモンド接合体はより高い接合強度を有することができる。

(5)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体において好ましくは、硬質層の厚みは、10μm以上400μm以下である。これにより、硬質層はより高い硬度を有することができる。

(6)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体において好ましくは、ダイヤモンド粒子の最大粒子径は50μm以下である。これにより、多結晶ダイヤモンド接合体はより高い接合強度を有することができる。

(7)本実施の形態に係る工具は、上記の多結晶ダイヤモンド接合体を備える工具である。本実施の形態に係る工具は、高い接合強度を有する多結晶ダイヤモンド接合体を備えることにより、高い耐欠損性を有することができる。

(8)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法は、硬質基体上に、硬質粒子を配置し、硬質粒子上にダイヤモンド粒子および焼結助剤とを配置した成形体を準備する工程と、成形体を圧力5.0GPa以上7.5GPa以下、温度1300℃以上1900℃以下の条件で焼結する焼結工程と、を備え、硬質基体はタングステンカーバイドとコバルトとを含み、硬質粒子は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる、ダイヤモンド接合体の製造方法である。本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法によれば、上記のPCD接合体、すなわち、高い接合強度を有する多結晶ダイヤモンド接合体を製造することができる。

(9)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法において好ましくは、硬質粒子の体積平均粒子径は、ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径以上である。これにより、より高い接合強度を有する多結晶ダイヤモンド接合体を製造することができる。

(10)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法において好ましくは、硬質粒子のアスペクト比は2.5以下である。これにより、より高い接合強度を有する多結晶ダイヤモンド接合体を製造することができる。

(11)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法において好ましくは、硬質粒子は、前記硬質基体上に10μm以上400μm以下の厚みを有する層状に配置される。これにより、より高い硬度を有する硬質層を形成することができる。

(12)本実施の形態に係る多結晶ダイヤモンド接合体の製造方法において好ましくは、焼結工程後の前記ダイヤモンド粒子の最大粒子径は50μm以下である。これにより、より高い接合強度を有する多結晶ダイヤモンド接合体を製造することができる。

[本願発明の実施形態の詳細] 以下、図面に基づいて本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。

≪第1の実施の形態:PCD接合体≫ 図1は、一実施の形態に係るPCD接合体の概略的な断面図である。図1を参照し、PCD接合体1は、多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)2と、硬質基体3と、PCD2と硬質基体3との間に設けられた硬質層4とを備える。

PCD2は、ダイヤモンド粒子と、焼結助剤とを含み、硬質基体3は、タングステンカーバイド(WC)とコバルト(Co)を含み、硬質層4は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる硬質粒子とCoとを含む。硬質層4は本実施の形態に係るPCD接合体1の特徴の一つであり、PCD接合体1において、硬質層4が存在することにより、PCD接合体1の接合強度を従来と比して高めることができる。この理由は明確ではないが、本発明者らは以下のように考察している。

本発明者らは、次のようにして、PCD2と硬質基体3との間に硬質層4が存在するPCD接合体1を製造できることを見出している。まず、金型内に(焼結前の)硬質基体3を配置し、その上に硬質層4の材料となる硬質粒子を層状に成形し、その上にPCD2の材料となるダイヤモンド粒子および焼結助剤の混合粉末を層状に成形した成形体を準備する。次に、この成形体を高温高圧で焼結することにより、硬質基体3とPCD2との間に、硬質粒子とCoとを含む硬質層4が形成された、PCD接合体1が製造される。

上述の製造方法において、硬質層4の材料として用いたものは硬質粒子のみであるにも関わらず、硬質層4にCoが含まれるのは、焼結中に硬質基体3からダイヤモンド粒子側に拡散するCoが、硬質粒子間に吸収されて保持されるためと考えられる。そして、硬質粒子間にCoが吸収、保持されることにより、ダイヤモンド粒子側へのCoの拡散が抑制されることとなり、これにより、過剰なCoが存在することに起因するダイヤモンド粒子の界面での異常粒成長が抑制される。

したがって、PCD接合体1内の残留応力は、異常粒成長が抑制されなかった場合と比して低減されるため、結果的に、PCD接合体1の接合強度は従来と比して高まる。なお、硬質層4において、硬質粒子間は拡散されたCoによって補間されており、また、硬質粒子はCoを焼結助剤として互いに結合されており、かつ、硬質粒子自身も高い硬度を有するために、硬質層4の存在によるPCD接合体1の強度の低下はない。

ここで、本明細書において、PCD接合体の接合強度が高いとは、PCD接合体からのPCDの脱落が起こり難いことを意味し、PCDが硬質基体に強固に接合されていることを意味する。したがって、たとえば、接合強度の高いPCD接合体と、接合強度の低いPCD接合体とに対し、同じ大きさおよび同じ方向の力を加えた場合、接合強度の高いPCD接合体においてはPCDの脱落が起こらず、接合強度の低いPCD接合体においてはPCDの脱落が起こり得る。

上記のような接合強度の大小は、以下の方法により評価することができる。 図2は、PCD接合体の接合強度の測定方法を概略的に説明するための断面図である。図2を参照し、せん断試験機20は、台座21と、支柱22と、ヘッド23とを備える。2つの支柱22は台座21の上に一定の隙間をあけた状態で垂直に配置されており、1つの支柱22は、被検体であるPCD接合体1を固定して保持するためのこの字型に窪んだ保持部22aを有する。ヘッド23は、支柱22間の隙間に挿入されており、図中の上方から下方に垂直にスライドすることができる。

上記せん断試験機20において、PCD接合体1は、支柱22の保持部22aに固定される。このとき、PCD接合体1の接合強度を測定したい部位が保持部22a内外の境界(保持部22aにより囲まれる矩形の空間の外端と、支柱22間の隙間との境界)に位置するように固定される。すなわち、図2では、PCD2と硬質層4との界面が、保持部22aの内外の境界に位置しているため、この場合には、PCD2と硬質層4との界面の接合強度が測定される。

図2に示すPCD接合体1を固定したせん断試験機20において、ヘッド23に対して図中の矢印に示すように、図中下方向に所定の荷重が負荷される。これにより、ヘッド23が下方向にスライドし、保持部22aから露出するPCD2に押しあてられる。そして、ヘッド23がPCD2に押し当てられた状態で、ヘッド23に負荷される荷重を増加させていく。PCD接合体1が破損したときにヘッド23に負荷されていた荷重を、接合強度とすることができる。

なお、PCD2または硬質層4の厚みが比較的薄い場合、PCD2と硬質層4との界面、または硬質層4と硬質基体3との界面を、上述のように保持部22aの内外の境界に位置するように固定することが難しい場合がある。この場合には、少なくとも、両界面が保持部22aの外側(支柱22間の隙間)に位置するように配置し、両界面に荷重がかかるようにする。これにより、各界面の接合強度を個別に測定することはできないものの、接合強度の弱い界面で先に破損が生じると考えられるため、少なくとも、PCD接合体1全体としての接合強度を測定することができる。

以下、図1を参照しながら、PCD接合体1を構成する各部について詳細に説明する。 <多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)> PCD2は、ダイヤモンド粒子が焼結助剤を介して焼結されたものである。すなわち、PCD2は、ダイヤモンド粒子からなるダイヤモンド相と、焼結助剤からなる第1結合相とを有する。なお、PCD2には、ダイヤモンド粒子、焼結助剤の他、不可避不純物が含まれる。

PCD2におけるダイヤモンド粒子の含有割合は、70体積%以上98体積%以下が好ましく、80体積%以上98体積%以下がより好ましい。ダイヤモンド粒子の含有割合が70体積%未満の場合、PCD2の硬度が十分でない場合があり、98体積%超の場合、相対的に焼結助剤の含有割合が低下することにより、ダイヤモンド粒子間の結合が弱くなったり、結合の程度が不均一になったりする。なお、PCD2における焼結助剤の含有割合は、2体積%超30体積%未満であることが好ましく、この理由は上記と同様である。

本明細書において、PCD2におけるダイヤモンド粒子の含有割合は次の方法によって算出したものとする。まず、PCD2の断面を鏡面研磨し、任意の領域のPCD2の反射電子像を、電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察する。このとき、ダイヤモンド粒子からなるダイヤモンド相は黒色領域となり、焼結助剤からなる第1結合相は灰色領域または白色領域となって観察される。次に、観察視野画像において、ダイヤモンド相領域と第1結合相領域とを画像処理により2値化し、ダイヤモンド相領域の占有面積を計測する。そして、該占有面積を次の式(1)に代入することによりダイヤモンド粒子の体積含有率を算出する。 (ダイヤモンド相の体積含有率)=(ダイヤモンド相の占有面積)÷(視野画像におけるPCD2の面積)×100・・・(1)。

PCD2の厚み(図1中の上下方向)は、特に限定されないが、図1の用途では0.10mm以上1.5mm以下が好ましい。

また、PCD2は、硬質層4との界面側から所定の厚みを有し、かつ高いコバルトの含有割合(体積%)を示すコバルトリッチ層を含んでいてもよい。PCD2がコバルトリッチ層を含むことにより、PCD2と硬質層4の熱膨張係数差に起因する残留応力を低減することができる。

(ダイヤモンド粒子) ダイヤモンド粒子は、0.1μm以上50μm以下の体積平均粒子径を有することが好ましい。ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径が50μm超の場合、それ自身のへき開性に起因する欠陥の発生が起こり易い。ダイヤモンド相にへき開性に起因する欠陥が発生すると、PCD2内に欠損が生じ易くなる。また、0.1μm未満の粒子は製造が困難であり、また、取り扱いも複雑となる。ダイヤモンド粒子の体積平均粒子径は、より好ましくは0.1μm以上30μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上5μm以下である。

ここで、本明細書において、「体積平均粒子径」とは、体積基準の粒度分布(体積分布)におけるメジアン径(d50)を意味し、PCD2に含まれる全てのダイヤモンド粒子を対象にした平均粒子径であることを意味する。なお、本明細書において、「体積平均粒子径」を単に「粒径」と記すこともある。

ダイヤモンド粒子の粒径(体積平均粒子径)を算出するための各粒子の粒子径は、次の方法によって測定することができる。まず、多結晶ダイヤモンド焼結体2の断面を鏡面研磨し、任意の領域の多結晶ダイヤモンド焼結体2の反射電子像を、電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察する。次に、この反射電子像において、ダイヤモンド相を構成する粒子に外接する円の直径(すなわち外接円相当径)を測定し、該直径をダイヤモンド粒子の粒径とする。

なお、PCD2に含まれるダイヤモンド粒子の粒径(ただし、異常粒成長したダイヤモンド粒子を含まない)は、PCD2の材料として用いたダイヤモンド粒子、すなわち、焼結前のダイヤモンド粒子と一致する傾向にある。なかでも、ダイヤモンド粒子の粒径が小さいほど(たとえば、10μm以下)、焼結前後の各ダイヤモンド粒子の粒径が一致する傾向にある。

PCD2において、ダイヤモンド粒子は、それぞれ個々の粒子として存在していてもよく、隣り合う粒子が結合した状態、すなわちネックグロースを形成した状態で存在していてもよい。ただし、より高強度なPCD2を得るという観点からは、ダイヤモンド相を構成するダイヤモンド粒子のうち、90体積%以上はネックグロースを形成した状態で存在していることが好ましい。ダイヤモンド粒子が個別に存在するか、ネックグロースを形成した状態で存在するか、またその体積%は、下記の焼結助剤の種類、添加量によって制御することができる。

ここで、本実施の形態に係るPCD接合体1においては、上述のように、従来の硬質層を有さないダイヤモンド接合体と比して、ダイヤモンド粒子の界面での異常粒成長が抑制されている。このため、PCD2を構成するダイヤモンド粒子は、たとえば、以下(1)〜(3)のような特徴を有することが可能となる。

(1)PCD2に含まれるダイヤモンド粒子の最大粒子径が50μm以下;PCD2に含まれるダイヤモンド粒子がこの特徴を有する場合、ダイヤモンド粒子の界面での異常粒成長が十分に抑制されているとみなすことができ、もって、ダイヤモンド接合体(PCD接合体)の接合強度が十分に高められることになる。ダイヤモンド粒子の最大粒子径は、より好ましくは30μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。

なお、ダイヤモンド粒子の最大粒子径とは、焼結工程後のダイヤモンド接合体に含まれるダイヤモンド粒子の粒子径の最大値である。すなわち、この最大粒子径は、多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)と硬質層との界面におけるダイヤモンド粒子の粒成長の最大値を意味し、例えば、硬質層と接しているか、又は、硬質層と近接しているダイヤモンド粒子の最大粒子径を意味する。ダイヤモンド粒子の粒子径は、上記のダイヤモンド粒子の粒径(体積平均粒子径)を算出するための各粒子の粒子径の測定方法と同様にして測定することができる。

(2)PCD2に含まれるダイヤモンド粒子の最大粒子径が該ダイヤモンド粒子の平均粒子径の3倍以下;PCD2に含まれるダイヤモンド粒子がこの特徴を有する場合、ダイヤモンド粒子の界面での異常粒成長が十分に抑制されているとみなすことができ、もって、ダイヤモンド接合体(PCD接合体)の接合強度が十分に高められることになる。ダイヤモンド粒子の最大粒子径は、より好ましくは該ダイヤモンド粒子の平均粒子径の2倍以下である。

(3)異常粒成長したダイヤモンド粒子によって構成される層の不存在;ダイヤモンド粒子の界面での異常粒成長が抑制されることにより、PCD2は、異常粒成長したダイヤモンド粒子が連続することによって形成される上記層が存在しない構成をとることができる。この構成は、異常粒成長したダイヤモンド粒子が点在している構成を含み得るが、より好ましくは、上記層を有さず、かつ点在する異常粒成長したダイヤモンド粒子も含まない。なお、この場合の異常粒成長したダイヤモンド粒子とは、体積平均粒子径の3倍以上の粒径を有するダイヤモンド粒子である。

PCD2を構成するダイヤモンド粒子は、上記(1)〜(3)のうちの1つの特徴を備えることができ、2つ以上の特徴を備えることもできる。

(焼結助剤) 焼結助剤としては、ダイヤモンド粒子の焼結助剤として用いられる公知のものを挙げることができる。たとえば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などの鉄族金属、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)を挙げることができる。なかでも、Coはダイヤモンド粒子のネックグロース生成の原動力となるダイヤモンド粒子の溶解析出反応速度が速いため、ダイヤモンド粒子の焼結助剤として好適に用いられる。

なお、Ti等(上記の元素のうち、鉄族金属以外の元素)は、本来、ダイヤモンド粒子のネックグロースを促進する触媒作用は有していないが、ダイヤモンド粒子のネックグロースを促進する触媒作用を有する鉄族金属(Co、Fe、Ni)等と共にTi等を適量添加することにより、Ti等が鉄族金属等の触媒作用を阻害せずに、炭素が焼結助剤中に溶解する際にTi等が過剰な炭素のゲッターとなると推定される。また、Ti等がダイヤモンド粒子と反応して炭化物となることにより、上記のダイヤモンド粒子同士の結合力向上と、異常粒成長の抑制を達成できるものと推定される。

異常粒成長の抑制などの目的のため、Ti等の添加量は、焼結助剤の総量に対して80体積%以下であることが好ましい。Ti等の添加量が80体積%を超えると、触媒作用を有する鉄族金属等の量が不足し、ネックグロースが顕著に損なわれる場合がある。

PCD2におけるCoの含有割合は2体積%以上30体積%以下が好ましい。PCD2におけるCoの含有割合が2体積%未満の場合、ダイヤモンド粒子間の結合が弱くなったり、結合の程度が不均一になったりする傾向があり、30体積%超の場合、PCD2の耐欠損性や耐衝撃性などの強度や耐摩耗性が低下する。焼結助剤がCo以外の上記他の元素の1種以上を含む場合、PCD2におけるCo以外の他の元素の結合剤中の含有割合は0.1体積%以上80体積%以下が好ましい。

焼結助剤がCoのみからなる場合には、ダイヤモンド粒子の含有割合と同様の方法により、PCD2におけるCoの含有割合を算出することができる。焼結助剤がCoの他、他の元素を含む場合には、ICP(Inductively Coupled Plasma)分析により、Coおよび他の元素の各含有割合(重量%)を算出することができる。

<硬質基体> 硬質基体3は、WCを母材とし、かつCoを含有する合金であって、いわゆるWC基超硬合金である。このような硬質基体3は、高い硬度と高い強度を有することができる。PCD接合体1において、硬質基体3の厚み(図1中の上下方向)は特に制限されず、通常、3mm程度の厚みものが用いられる。また、硬質基体3は、Coに加え、他の鉄族金属を含有していてもよい。

<硬質層> 硬質層4は、PCD2と硬質基体3との間に設けられており、両者と強固に結合する層であり、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる硬質粒子とコバルトとを含む。すなわち、硬質層4には、焼結された上記硬質粒子からなる硬質相と、Coからなる第2結合相とを有する。なお、硬質層には、硬質粒子、Coの他、不可避不純物が含まれる。

硬質層4におけるCoの含有割合は、5体積%以上30体積%以下が好ましく、15体積%以上25体積%以下がより好ましい。Coの含有割合が5体積%未満のときは、硬質層によるCoの吸収が不十分な状態となり、異常粒成長が発生する可能性がある。また、Coの含有割合が15体積%以上の場合、硬質層4は高い抗折力を有することができるため、硬質層4自体の破損を抑制することができる。さらに、Coの含有割合が30体積%を超えると、硬質層4自体の抗折力が低下する場合がある。

硬質層4におけるCoの含有割合は、ダイヤモンド粒子の含有割合と同様の方法により算出することができる。また、硬質層4の断面を電子後方散乱回折像法(EBSD:Electron Back Scatter Diffraction Patterns)で測定することによっても、硬質層4におけるCoの含有割合を算出することができる。

また、硬質層4の厚みdは、10μm以上400μm以下が好ましく、10μm以上150μm以下がより好ましい。硬質層4の厚みdは、硬質粒子の粒径、総体積(cm3)等に依存するが、この厚みdが10μm未満の場合、硬質層4内におけるCoが保持され得る領域、すなわち、第2結合相と成り得る領域が少ないために、硬質層4のCoの吸収能力が不十分となる場合がある。一方、厚みdが400μmを超える場合、硬質層4内における第2結合相となり得る領域、すなわち、Coによって埋められるべき領域が多いために、硬質粒子同士のCoによる結合が不均一となり、硬質層4が良好な焼結体とならず、脆弱になる場合がある。

(硬質粒子) 硬質粒子は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなり、具体的には、WC、W2C、TiC、ZrC、HfC、NbC、TaC、Cr3C2、Mo2C、SiC、B4C、VC、TiN、ZrN、VN,NbN、CrN、Si3N4、BN、TiCN、SiCNなどの合金を挙げることができる。硬質粒子が高い硬度を有することにより、硬質層4は高い硬度を有することができ、硬質層4が存在することに起因するPCD接合体1の強度の低下を抑制することができる。

列挙した合金に関し、高い硬度を有する点で、WC、TiC、ZrC、HfC、VC、NbC、Cr3C2、SiC、BN、TiCN、SiCNが好ましく、硬質層4の性質と硬質基体3の性質とが類似している場合に、硬質層4と硬質基体3との接合強度がさらに高まり、また、硬質層4と硬質基体3との間の応力差が極めて小さくなることから、WCがより好ましい。

上記硬質粒子の粒径は、ダイヤモンド粒子の粒径以上であることが好ましい。なお、硬質層4に含まれる硬質粒子の粒径は、硬質層4の材料として用いた硬質粒子、すなわち、焼結前の硬質粒子と一致する。硬質粒子の粒径がダイヤモンド粒子の粒径以上の場合、PCD接合体2の接合強度はさらに高まる。この理由は明確ではないが、本発明者らは次のように考察する。

硬質層4を構成する硬質粒子の粒径がダイヤモンド粒子の粒径未満の場合、硬質層4の材料である焼結前の硬質粒子の粒径もまた、PCDの材料である焼結前のダイヤモンド粒子の粒径未満である。なお、以下説明を容易とするために、焼結前の硬質粒子を「pre−硬質粒子」とし、焼結前のダイヤモンド粒子を「pre−ダイヤモンド粒子」、焼結前の硬質基体を「pre−硬質基体」という。

このようなpre−硬質粒子、pre−ダイヤモンド粒子およびpre−硬質基体を用いてPCD接合体を製造する場合、pre−硬質基体と、pre−硬質粒子を任意の厚みの層状に成形した層(層A)と、pre−ダイヤモンド粒子および焼結助剤とを任意の厚みの層状に成形した層(層B)がこの順に積層された成形体が形成され、引き続き、この成形体が焼結されることになる。

この際に、pre−ダイヤモンド粒子よりもpre−硬質粒子の粒径のほうが小さいと、層Aと層Bとの界面において、界面を構成するpre−ダイヤモンド粒子同士が過剰に接触(隣接)し、これにより異常粒成長したダイヤモンド粒子が発生するために、結果的に、PCD接合体の接合強度が低下する。これに対し、pre−硬質粒子の粒径がpre−ダイヤモンド粒子の粒径以上の場合、このような異常粒成長の発生を抑制することができる。

また、上記硬質粒子のアスペクト比は2.5以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。硬質粒子のアスペクト比が2.5以下の場合、PCD接合体2の接合強度はさらに高まる。この理由は明確ではないが、本発明者らは次のように考察する。

硬質層4に含まれる硬質粒子のアスペクト比が2.5超の場合、硬質層4の材料であるpre−硬質粒子のアスペクト比もまた2.5超である。アスペクト比が2.5超のpre−硬質粒子は、アスペクト比が2.5以下の等軸晶形状型の粒子とは異なり、柱状晶形状型の粒子とみなすことができる。柱状晶形状型の粒子を用いて任意の厚みの層状の層Aに成形した際、等軸晶形状の粒子と比して粒子間の隙間が少ない状態で成形される傾向がある。層A内の隙間が少ない場合、層Aにおいて、焼結時にpre−硬質基体からpre−ダイヤモンド粒子側に拡散するCoの吸収能力が低下する。これにより、過剰なCoがダイヤモンド粒子側にまで拡散して異常粒成長したダイヤモンド粒子が発生するために、結果的にPCD接合体の接合強度が弱まる。

これに対し、硬質粒子のアスペクト比が2.5以下であり、等軸晶形状型の粒子である場合、このような異常粒成長の発生を抑制することができる。また、アスペクト比が2.5超の柱状晶形状型の粒子は、応力負荷時に粒子内の応力分布状態が不均一になり、それ自体の強度が低下する場合があるが、アスペクト比が2.5以下の等軸晶形状型の粒子はこのような強度低下は生じ難い。

なお、本明細書において、「アスペクト比」とは、硬質粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)をいう。また、上記アスペクト比は、硬質層4内に含まれる硬質粒子の各アスペクト比の平均である。このため、硬質層4内には、アスペクト比が2.5超の柱状晶形状の硬質粒子が存在する場合がある。ただし、Coの高い吸収効果を発揮し、硬質層4の高い強度を得るためには、硬質層4内に含まれるアスペクト比が2.5超のダイヤモンド粒子の割合は、10体積%以下であることが好ましい。より好ましくは、硬質層4内は、アスペクト比が2.5超の柱状晶形状の硬質粒子を含まない。

また、本発明者らは、0.3μm未満の粒径を有するWCからなるpre−硬質粒子を焼結した場合に、pre−硬質粒子の全てが等軸晶形状型であるにもかかわらず、硬質層中に柱状晶形状型の硬質粒子が生成されることを知見した。硬質層が柱状晶形状型の硬質粒子をわずかに含む場合であっても、本実施の形態に係る効果を奏し得るが、pre−硬質粒子の粒径が0.3μm未満の場合には、柱状晶形状型の硬質粒子が多くなり易いために、結果的に、PCD接合体の接合強度を低下させるに至ってしまう場合が考えられる。したがって、上記硬質粒子の粒径は、0.3μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。

さらに、上記硬質粒子の粒径は、硬質層4の厚み以下であることが好ましく、硬質層4の厚みの1/2以下であることが好ましい。硬質粒子の粒径が硬質層4の厚みを超えると、硬質層4の厚みが不均一となり、PCD2と硬質層4との接合強度や、硬質基体3と硬質層4との接合強度が低下する場合がある。また、硬質粒子の粒径が硬質層4の厚みの1/2以下であることにより、硬質層4の厚みをより均一にすることができるとともに、Coを含有するための第2結合相の領域を十分に確保することができる。

なお、硬質層4における硬質粒子の粒径、アスペクト比は、次の方法によって測定することができる。粒径に関し、まず、多結晶ダイヤモンド焼結体2の断面を鏡面研磨し、任意の領域の多結晶ダイヤモンド焼結体2の反射電子像を、電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察する。次に、この反射電子像において、硬質相を構成する硬質粒子に外接する円の直径(すなわち外接円相当径)を測定し、該直径を硬質粒子の粒径とする。また、アスペクト比に関し、同反射電子像において、硬質相を構成する硬質粒子の長径と短径を測定し、これらの比を算出する。

また、硬質層4は、ダイヤモンド粒子を含んでいてもよい。このダイヤモンド粒子は、たとえば、PCD接合体1の製造過程において、PCD2を形成させるために用いたダイヤモンド粒子が硬質層4中に混入したものである。また、たとえば、硬質層4を形成させるために、硬質層4の材料として意図的に混入させたものである。

ただし、硬質層4中のダイヤモンド粒子の含有量は10体積%以下が好ましく、より好ましくは、硬質層4はダイヤモンド粒子を含まない。硬質層4において、ダイヤモンド粒子が10体積%を超える割合で存在する場合、ダイヤモンド粒子の異常粒成長が存在する可能性が高まり、これによってPCD接合体1の接合強度が低下する恐れがある。

≪第2の実施の形態:PCD接合体を備える工具≫ 一実施の形態に係る工具の一例として、ダイヤモンドバイトについて説明する。図3は、一実施の形態に係るPCD接合体を備えるダイヤモンドバイトの一部における概略的な断面図である。図3を参照し、ダイヤモンドバイト30は、台金31と、ろう付け層32と、PCD2、硬質基体3および硬質層4を有するPCD接合体1とを主に備えている。台金31およびろう付け層32は、電気を流す材質からなり、その電気的性質は金属的特性を示す。具体的には、台金31は、鉄系金属、超硬合金などの金属からなることが好ましい。また、ろう付け層32についても、銀、チタン、またはこれらの合金などを含むことが好ましい。

ダイヤモンドバイト30において、PCD接合体1は、ろう付け層32を介して台金31に固定されている。PCD接合体1は、ダイヤモンドバイト31の被加工物との接触領域に配置されており、ダイヤモンドバイト31の切削刃として機能する。また、PCD接合体1には、被加工物を効率的に切削すべく、すくい面30bおよび逃げ面30cを含み、すくい面30bおよび逃げ面30cの接触部において切れ刃30dが構成されている。このようなダイヤモンドバイト31は、公知の方法により作製することができる。

本実施の形態に係るダイヤモンドバイト30によれば、接合強度の高いPCD接合体1を有する。このため、被加工物を加工する際のPCD接合体1の脱落が抑制されるため、高い耐欠損性を有することができる。また、これに伴い工具としての長い寿命を有することができる。

本実施の形態に係る工具は、上記ダイヤモンドバイト30に限定されない。たとえばドリルやエンドミルなどの他の切削工具(図示しない)でもよく、ドレッサー、スタイラス、ノズルまたはダイスなどの耐摩耗工具(図示しない)でもよく、砥石、ワイヤーソー、ブレード、ビットなどの研削工具(図示しない)でもよい。これらの切削工具、耐摩耗工具、研削工具においても、PCD接合体1を備えることにより上記ダイヤモンドバイト30と同様に、高い耐欠損性、長寿命を有することができる。

≪第3の実施の形態:PCD接合体の製造方法≫ 図4は、一実施の形態に係るPCD接合体の製造方法を概略的に説明するためのフロー図である。図5は、図4の配置工程を概略的に説明するための断面図である。図4および図5を用いて、本実施の形態に係るPCD接合体1の製造方法について説明する。

(配置工程) まず、図4のステップS41において、ダイヤモンド粒子と硬質基体との間に、硬質粒子を配置する(S41:配置工程)。具体的には、図5を参照し、まず、タンタルなどの耐熱性の高い材料から成る金型51内に、硬質基体51を配置し、その上に、硬質粒子52を所定の厚みdを有する層状に配置する。さらに、この硬質粒子52からなる層上に、ダイヤモンド粒子53を所定の厚みを有する層状に配置する。そして、さらに、このダイヤモンド粒子53からなる層状に、焼結助剤54を配置する。これにより、硬質基体51、硬質粒子52、ダイヤモンド粒子53および焼結助剤54がこの順に積層された成形体が準備される。

本工程に用いられる硬質基体51は、WCを母材とし、かつCoを含有する合金であって、いわゆるWC基超硬合金である。硬質基体51の厚み(図5中の上下方向)は特に制限されず、通常、3mm程度の厚みのものが用いられる。なお、硬質基体51は後述する焼結工程を経ることにより、その内部のCo量が変化するが、この変化は硬質基体51の形状、特性、性質、性能を変えるものではない。すなわち、硬質基体51と、硬質基体3(第1の実施の形態)とは、Coの含有量に相違があるのみである。

本工程に用いられる硬質粒子52は、ビッカース硬度が1100Hv以上の炭化物、窒化物、または炭窒化物からなる。このような炭化物、窒化物、または炭窒化物としては、第1の実施の形態で述べたように、種々の合金を挙げることができる。硬質粒子52は、後述する焼結工程を経て、焼結助剤としてのCoによって互いに結合された硬質層4(焼結体)へと変化する。ただし、硬質粒子52の形状、特性、性質、性能は焼結工程の前後で変化しない。

このため、たとえば、硬質粒子52の粒径をダイヤモンド粒子53の粒径以上とすることにより、製造されるPCD接合体1において、硬質層4中の硬質粒子の粒径をダイヤモンド粒子の粒径以上とすることができる。また、硬質粒子52が2.5以下のアスペクト比を有することにより、硬質層4中の硬質粒子のアスペクト比を2.5以下とすることができる。また、上記理由により、第1の実施の形態における「硬質層4の厚み」は、硬質粒子52からなる層の厚みdと一致する。したがって、たとえば、硬質粒子52の粒径を硬質粒子52からなる層の厚みd以下にすることにより、製造されるPCD接合体1において、硬質粒子の粒径を硬質層4の厚み以下とすることができる。

ただし、成形した硬質粒子52からなる層の充填度が低い場合には、焼結工程の前後で層厚が変化する場合が懸念されるため、硬質粒子52に荷重(例えば、15ton以上20ton以下の荷重)を付与することにより、硬質粒子52からなる層を成形し、その充填度を高めておくことが好ましい。

なお、第1の実施の形態において、硬質粒子の粒径は電子顕微鏡を用いて算出されるが、本実施の形態において、硬質粒子52の粒径は、他の方法、たとえば、レーザー回折法により測定された粒度分布に基づいて算出することができる。また、アスペクト比についても、他の方法、たとえば、フロー式粒子像分析法により測定された粒子形状に基づいて算出することができる。

本工程に用いるダイヤモンド粒子53の詳細は、第1の実施の形態で詳述したダイヤモンド粒子と同様であるため、その説明は繰り返さない。すなわち、ダイヤモンド粒子53は、焼結工程の前後でその形状、特性、性質、性能に変化はない。なお、ダイヤモンド粒子53の粒径についても、硬質粒子52の粒径と同様に、レーザー回折法により測定された粒度分布に基づいて算出することができる。

本工程に用いる焼結助剤54の詳細についても、第1の実施の形態で詳述した焼結助剤と同様であるため、その説明は繰り返さない。

ここで、本実施の形態に係る製造方法により製造されるPCD接合体1に関し、硬質層4におけるCoの含有割合は、上述のように、5体積%以上30体積%以下が好ましい。硬質層5のCoの含有割合を上記範囲内に設計するためには、たとえば、次の予備検討を事前に行うことが好ましい。まず、用いる硬質基体51と同じ硬質基体を用い、この硬質基体上に、硬質粒子の粒径、アスペクト比、または使用量を変化させながら種々の硬質粒子からなる層を成形してこれらを焼結し、焼結後に硬質基体上に作製された硬質層中のCoの含有割合を算出する。この予備検討を経ることにより、種々の組成を有する硬質基体51のそれぞれに対して好適な硬質粒子52を選択することができる。

以上、詳述した配置工程では、ダイヤモンド粒子53と焼結助剤54とを異なる層状に成形する方法を示したが、ダイヤモンド粒子53と焼結助剤54とをボールミル等を用いて混合させた混合粉末を用いて、1つの層を成形させてもよい。上述のように焼結助剤54とダイヤモンド粒子53とを異なる2つの層状に成形する場合には、ダイヤモンド粒子を高密度で含む層を有する焼結体が得られる。このような焼結体は、強度、耐摩耗性に優れる。一方、混合粉末を用いて1つの層状に成形する場合には、焼結体全体で均一なネックグロース度合を有する焼結体が得られる。

また、硬質粒子52からなる層上に、ダイヤモンド粒子53と全量に対して1〜50重量%のCo粉末とを混合してなるペーストを塗布し、その上に、ダイヤモンド粒子53、または、ダイヤモンド粒子と焼結助剤の混合粉末を用いて層を成形してもよい。この場合、PCD接合体1におけるPCD2内に、上述のコバルトリッチ層を設けることができる。さらに、硬質粒子52からなる層に移動するCoの量が少ないと判断される場合には、硬質粒子52とともに、所定の量のCoを配置してもよい。これにより、製造されるPCD接合体1において、硬質層4の焼結の程度を高めることができる。ただし、PCD2と硬質基板3の接合強度を高めるという観点からは、硬質粒子52とともにはCoを配置しないことが好ましい。

(焼結工程) 次に、図4のステップS42において、成形された成形体を焼結する(S42:焼結工程)。具体的には、上記成形体を圧力5.0GPa以上7.5GPa以下、温度1300℃以上1900℃以下の条件で焼結する。焼結時間は特に限定されず、成形体の大きさ、厚さ等によって適宜変更されるが、少なくとも、10分以上焼結することにより、十分に焼結されたPCD接合体1を得ることができる。

以上の工程を経ることにより、ダイヤモンド粒子53が焼結助剤54を介して焼結されてなるPCD2と、硬質基体51が焼結されてなる硬質基体3と、硬質粒子52が焼結されてなる硬質粒子とCoとを含む硬質層4と、を含むPCD接合体1が製造される(図1参照)。なお、硬質層4内にCoが含まれる理由は、実施の形態1における説明と同様であるため、その説明は繰り返さない。製造されたPCD接合体1は、高い接合強度を有するため、たとえば、工具に利用した際、高い耐欠損性を示すことができる。

また、本実施の形態に係る製造方法によれば、高い接合強度を有するPCD接合体1を歩留まり良く製造することができる。その理由は次の通りである。以下の実施例においても詳述するように、本発明者らの検討により、従来の製造方法において、焼結温度を1470℃、1500℃、1530℃に設定して硬質層を含まないPCD接合体を製造した場合に、製造されたPCD接合体の各接合強度が大きく変化することが確認された。これに対し、本実施の形態に係る製造方法によれば、各温度条件下で製造した各PCD接合体の各接合強度が従来と比して高いだけでなく、各温度間でそれほど変化しないことが確認された。すなわち、本実施の形態に係る製造方法によれば、従来と比して高い接合強度を有するPCD接合体1を製造できるとともに、温度条件が多少変化した場合であっても、接合強度の変化の程度が少ないPCD接合体1を製造することができる。

以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

≪検討1≫ 焼結温度がPCD接合体に及ぼす影響について検討した。

<実施例1〜4> 実施例1において、タンタルからなる金型内に、WC基超硬合金(製品名:GR35、(株)アライドマテリアル社製)を配置し、その上に、粒径(体積平均粒子径)4μm、アスペクト比1.0のWC粉末(製品名:MAS900、H.C.Starck社製)3.0gを15tonの荷重で圧縮しながら配置して、厚み40μmの層を形成させた。次に、このWC粒子上に、粒径(体積平均粒子径)0.8μmのダイヤモンド粉末11gを層状に配置し、さらにその上に、焼結助剤として、Co粉末を4.0g配置した。これにより、成形体が準備された。次に、成形体が収容された金型を焼結炉内に静置し、炉内の圧力を7.2GPaまで上昇させるとともに、炉内の温度を1470℃まで昇温させた後、この状態を10分間維持して成形体を焼結させた。これにより、PCD接合体が製造された。

実施例2〜4において、それぞれ炉内の温度を1500℃、1530℃、1560℃にまで昇温させた以外は、実施例1と同様の方法により、PCD接合体を製造した。

<比較例1〜4> 比較例1〜4において、上記WC粉末を配置しなかった以外は、それぞれ実施例1〜4と同様の方法により、PCD接合体を製造した。

<評価> 各実施例1〜4および比較例1〜4において製造されたPCD接合体から、所定の大きさのPCD接合体試験片を切り出した。そして、図2に示すせん断試験機20を用いて、PCD接合体試験片の接合強度を測定した。

具体的には、各PCD接合体試験片に関し、WC基超硬合金の領域のみが保持部22a内に位置し、硬質層が確実に保持部22aから露出するように、せん断試験機20に固定させた。なお、各試験片に関して、同等の領域が保持部22a内に位置するように注意した。そして、ヘッド23を各試験片に押し当てて、荷重をかけていき、各試験片が破損した荷重を各PCD接合体の接合強度とした。また、各実施例の硬質層に関し、EBSDによりCoの含有割合を算出した。この結果を表1に示す。

表1を参照し、実施例1〜4においては、90kgf/mm2以上の接合強度が確認されたのに対し、比較例1〜4では、最大でも65.3kgf/mm2の接合強度が確認されるに過ぎなかった。また、実施例1〜4において、焼結温度を1470℃〜1560℃の範囲内で変更しても、製造された各PCD接合体は高い接高強度を有したのに対し、比較例1〜4において、焼結温度を同様に変更することにより、製造された各PCD接合体は大きく変化した。

≪検討2≫ 実施例2および比較例2のPCD接合体を用いて、内部応力のシミュレーションを行った。

具体的には、まず、実施例2および比較例2の各PCD接合体の組織状態を電子顕微鏡を用いて観察した。その結果を図6および7に示す。図6および図7は、それぞれ、各PCD接合体の表面(各界面を含む面)を2000倍の倍率で観察したものである。図6および図7において、白色領域がWCを示し、灰色領域がCoを示し、黒色領域がダイヤモンド(C)を示す。図6において、領域60はWC基超硬合金であり、領域61は硬質層(WC粒子領域)であり、領域62および領域63はPCDを構成し、なかでも領域62はコバルトリッチ層に該当する。また、図7において、領域70はWC基超硬合金であり、領域71はダイヤモンド粒子が過剰に大きく粒成長した異常粒成長領域であり、領域72および領域73はPCDを構成し、なかでも領域72はコバルトリッチ層に該当する。

次に、得られた各画像に関し、各領域60〜63、70〜73のそれぞれを画像処理により2値化し、各領域におけるCoとWCとの含有割合、またはCoとダイヤモンド(C)との含有割合をそれぞれ算出した。算出された含有割合から、各領域60〜63、70〜73の熱膨張係数を算出した。また、各領域の厚みについても、同観察画像を用いて算出し、これにより各領域の体積を算出した。なお、領域60および領域70に関しては、熱膨張係数および体積について、カタログ値を引用した。

そして、得られた各領域の熱膨張係数および体積から、各領域間に生じる応力差を算出した。その結果、実施例2におけるPCD接合体においては、領域62と領域61との界面における応力差が最も大きく、その数値が2.0GPaであるのに対し、比較例2におけるPCD接合体においては、領域70と領域71との界面における応力差が最も大きく、その数値は3.8GPaであった。このシミュレーション結果から、実施例2および比較例2の各PCD接合体を比較した場合、比較例2のPCD接合体はその内部により大きい残留応力を有しているために、実施例2のPCD接合体よりも接合強度が低いと理解された。

≪検討3≫ 硬質層の厚みがPCD接合体に及ぼす影響について検討した。

<実施例5〜10、比較例5> 実施例5において、WC粉末からなる層の厚みを10μmとした以外は、実施例2と同様の方法により、PCD接合体を製造した。実施例6〜10および比較例5において、WC粉末からなる層の厚みをそれぞれ40μm、70μm、150μm、200μm、400μm、500μmと変更した以外は、実施例5と同様の方法により、PCD接合体を製造した。

<評価> 実施例2と同様の方法によりPCD接合体(実施例5〜10、比較例5)の接合強度を算出した。また、異常粒成長領域の有無を検査し、粒成長が5μm以上である場合に異常粒成長領域が「有」と判断した。この結果を表2に示す。なお、表2において、考察が容易となるように、比較例2の結果も示した。

表2を参照し、実施例5〜10のいずれのPCD接合体においても、高い接合強度が確認された。また、電子顕微鏡を用いて、各試験片における硬質層とPCDとの界面の組織状態を観察したところ、粒子径が5μm以上にまで成長するようなダイヤモンド粒子の異常粒成長は見られなかった。ただし、実施例9、10においては、硬質層内および硬質基板内に遊離炭素が著しく析出していた。これは、硬質粒子間の隙間が多く、硬質基板内から過剰にCoが拡散したためと考えられる。

≪検討4≫ 接合体の界面におけるダイヤモンド粒子の最大粒子径がPCD接合体に及ぼす影響について検討した。

<実施例11〜14> 実施例11〜14において、用いるダイヤモンド粒子の粒径(体積平均粒子径)をそれぞれ1.2μm、3.1μm、4.2μm、35.0μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法により、PCD接合体を製造した。

<評価> 実施例2と同様の方法によりPCD接合体(実施例11〜14)の接合強度を算出した。その結果(4回の測定における平均値および最小値)を表3に示す。

表3を参照し、実施例11〜14のいずれのPCD接合体においても、高い接合強度が確認された。なお、実施例2、11〜13においては、用いたダイヤモンド粒子の体積平均粒子径に対し、最大粒子径、すなわち、硬質層とPCDとの界面に存在する粒成長したダイヤモンド粒子の粒径のほうが大きい結果であるのに対し、実施例14においては、用いたダイヤモンド粒子の体積平均粒子径に対し、最大粒子径が小さい結果であった。これは、実施例14で用いたダイヤモンド粉末の粒径のばらつきが大きく、また、粒径の大きなダイヤモンド粒子がCoに溶解したためと考えられる。

今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

1 PCD接合体、2 PCD、3 硬質基体、4 硬質層、20 せん断試験機、21 台座、22 支柱、23 ヘッド、30 ダイヤモンドバイト、30b すくい面、30c 逃げ面、30d 切れ刃、31 台金、 32 ろう付け層、51 金型、52 硬質粒子、53 ダイヤモンド粒子、54 焼結助剤、60,70 領域(WC基超硬合金)、61 領域(硬質層)、62,72 領域(コバルトリッチ層)、63,73 領域、71 領域(異常粒成長領域)。

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