フッ化物イオン電池

申请号 JP2015171343 申请日 2015-08-31 公开(公告)号 JP2017050113A 公开(公告)日 2017-03-09
申请人 トヨタ自動車株式会社; 国立大学法人京都大学; 发明人 中本 博文; 三木 秀教; 小久見 善八; 安部 武志;
摘要 【課題】本発明は、充電時の過電圧を低減したフッ化物イオン電池を提供することを課題とする。 【解決手段】本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するフッ化物イオン電池であって、上記負極活物質が、Ce元素およびPb元素を少なくとも含有する 合金 であることを特徴とするフッ化物イオン電池を提供することにより、上記課題を解決する。 【選択図】図1
权利要求

正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するフッ化物イオン電池であって、 前記負極活物質が、Ce元素およびPb元素を少なくとも含有する合金であることを特徴とするフッ化物イオン電池。前記負極活物質が、Al元素をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のフッ化物イオン電池。

说明书全文

本発明は、充電時の過電圧を低減したフッ化物イオン電池に関する。

高電圧かつ高エネルギー密度な電池として、例えばLiイオン電池が知られている。Liイオン電池は、Liイオンと正極活物質との反応、および、Liイオンと負極活物質との反応を利用したカチオンベースの電池である。一方、アニオンベースの電池として、フッ化物イオンの反応を利用したフッ化物イオン電池が知られている。

例えば、特許文献1には、正極と、負極と、アニオン電荷キャリア(F)を伝導することができる電解質と、を備える電気化学セル(フッ化物イオン電池)が開示されている。また、特許文献1には、負極向けの有用なフッ化物イオンホスト材料として、CeFxが例示されている。

特許文献2には、金属または合金の形態であり、そのフッ素化が大きな等圧生成ポテンシャルを有する1つまたは複数のフッ化物をもたらすアノード(An0)を備える二次ソリッドステート電流源が開示されている。また、特許文献2には、アノード材料として、Li、K、Na、Sr、Ba、Ca、Mg、Al、Ce、Laからなる群、あるいは、前述の金属とPb、Cu、Bi、Cd、Zn、Co、Ni、Cr、Sn、Sb、Feの群から選択される金属との合金から選択される金属(またはその合金)が例示されている。

特許文献3には、アノードと、カソードと、溶媒内に少なくとも部分的に溶解しているフッ化物塩を含む電解質と、フッ化物複合体生成種を含む添加剤とを備えるフッ化物イオン電池が開示されている。また、特許文献3の実施例には、アノード材料として、Pb、PbF2、Laを用いた結果が記載されている。

特開2013−145758号公報

特開2008−537312号公報

特開2014−501434号公報

フッ化物イオン電池のアノード材料(負極活物質)としてCeを用いた場合、充電時の過電圧が大きいという問題がある。過電圧とは、ある電気化学反応において、その反応の理論電位と、実際に反応が進行する電位との差をいう。充電時の過電圧が大きいと、充電時の電ロスが多くなり、エネルギー効率が低下する。

本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、充電時の過電圧を低減したフッ化物イオン電池を提供することを主目的とする。

上記課題を達成するために、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するフッ化物イオン電池であって、上記負極活物質が、Ce元素およびPb元素を少なくとも含有する合金であることを特徴とするフッ化物イオン電池を提供する。

本発明によれば、負極活物質として、Ce元素にPb元素を加えた合金を用いることで、充電時の過電圧を低減したフッ化物イオン電池とすることができる。

上記発明においては、上記負極活物質が、Al元素をさらに含有していても良い。

本発明のフッ化物イオン電池は、充電時の過電圧を低減できるという効果を奏する。

本発明のフッ化物イオン電池の一例を示す概略断面図である。

実施例1および比較例1、2の測定試料に対するCV測定の結果である。

実施例1および比較例3、4の測定試料に対するCV測定の結果である。

実施例1〜3の測定試料に対するCV測定の結果である。

実施例3、4の測定試料に対するCV測定の結果である。

以下、本発明のフッ化物イオン電池について、詳細に説明する。

図1は、本発明のフッ化物イオン電池の一例を示す概略断面図である。図1に示されるフッ化物イオン電池10は、正極活物質を含有する正極活物質層1と、負極活物質を含有する負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。

本発明によれば、負極活物質として、Ce元素にPb元素を加えた合金を用いることで、充電時の過電圧を低減したフッ化物イオン電池とすることができる。そのため、充電時の電力ロスが少なくなり、エネルギー効率の向上を図ることができる。充電時の過電圧を低減できる理由は、以下の通りであると推測される。すなわち、Ce単体を用いた場合、目的とする反応(Ceのフッ化脱フッ化反応)ではなく、それ以外の副反応が優位に進行するため、充電時の過電圧が大きくなると推測される。これに対して、Ce元素にPb元素を加えた合金を用いることで、PbがCeの保護材として機能することで、副反応の発生を抑制でき、充電時の過電圧を低減できる。保護材としての機能は、具体的には、Fと適度な結合性を有し、かつCeよりも化学的に安定なPbがCeの酸化を抑制することで、反応活性の低い被膜の形成を抑制する機能であると推測される。さらに、本発明における負極活物質は、Ceのフッ化脱フッ化反応の活性が、従来のCe単体に比べて大幅に高いため、電池の高容量化を図ることができる。

なお、上述したように、特許文献2には、アノード材料として、Li、K、Na、Sr、Ba、Ca、Mg、Al、Ce、Laからなる群、あるいは、前述の金属とPb、Cu、Bi、Cd、Zn、Co、Ni、Cr、Sn、Sb、Feの群から選択される金属との合金から選択される金属(またはその合金)が例示されている。しかしながら、例示された組み合わせは、少なくとも110(10×11)種類以上もあり、特許文献2には、Ce元素およびPb元素を含有する合金について具体的に開示されていない。また、後述する実施例に記載するように、Ce元素およびPb元素の組み合わせを選択することで、充電時の過電圧を低減できるという効果が得られる。この効果は、特許文献1〜3には記載されていない異質な効果である。 以下、本発明のフッ化物イオン電池について、構成ごとに説明する。

1.負極活物質層 本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極活物質層は、負極活物質の他に、導電化材および結着材の少なくとも一方をさらに含有していても良い。

本発明における負極活物質は、通常、放電時にフッ化する活物質である。また、負極活物質は、通常、Ce元素およびPb元素を少なくとも含有する合金である。負極活物質におけるCe元素およびPb元素の割合は、特に限定されるものではない。Ce元素に対するPb元素の重量割合(Pb/Ce)は、例えば0.25以上であり、0.5以上であっても良く、1以上であっても良い。Pb元素の割合が少なすぎると、Ceの副反応を十分に抑制できない可能性がある。一方、Pb/Ceは、例えば10以下であり、6以下であっても良く、2.5以下であっても良い。Pb元素の割合が多すぎると、Ceとフッ化物イオンとの反応を阻害してしまう可能性がある。

本発明における負極活物質は、Ce元素およびPb元素のみから構成される合金であっても良く、1種または2種以上の他の元素を更に含有する合金であっても良い。他の元素は、通常、PbがCeを保護する機能を維持できる元素であり、例えば、Al元素を挙げることができる。

負極活物質全体(合金全体)におけるCe元素およびPb元素の合計割合は、例えば、1重量%以上であり、3重量%以上であっても良く、5重量%以上であっても良く、8重量%以上であっても良い。一方、負極活物質全体(合金全体)におけるCe元素およびPb元素の合計割合は、最大で100重量%である。また、本発明における負極活物質は、Ce元素およびPb元素を主成分として含有していても良い。この場合、合金全体におけるCe元素およびPb元素の合計割合は、例えば、50重量%以上であり、70重量%以上であっても良く、90重量%以上であっても良い。一方、本発明における負極活物質は、Ce元素およびPb元素以外の他の元素を主成分として含有していても良い。この場合、合金全体における他の元素の(合計)割合は、例えば、50重量%以上であり、70重量%以上であっても良く、90重量%以上であっても良い。

負極活物質の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、粒子状、薄膜状を挙げることができる。負極活物質の平均粒径(D50)は特に限定されるものではない。また、負極活物質の製造方法は、上述した合金を得ることができる方法であれば特に限定されないが、例えば、溶融急冷法を挙げることができる。溶融急冷法の具体例としては、原料(例えばCe単体およびPb単体)を加熱し、溶融物を作製し、その溶融物を冷却ロールに接触させることで急冷する方法を挙げることができる。

導電化材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。一方、結着材としては、化学的、電気的に安定なものであれば特に限定されるものではないが、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材を挙げることができる。

また、負極活物質層における負極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば30重量%以上であり、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。また、負極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。

2.正極活物質層 本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、正極活物質の他に、導電化材および結着材の少なくとも一方をさらに含有していても良い。

本発明における正極活物質は、通常、放電時に脱フッ化する活物質である。また、正極活物質には、負極活物質よりも高い電位を有する任意の活物質が選択され得る。正極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、および、これらのフッ化物を挙げることができる。正極活物質に含まれる金属元素としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Co、Pb、Ce、Mn、Au、Pt、Rh、V、Os、Ru、Fe、Cr、Bi、Nb、Sb、Ti、Sn、Zn等を挙げることができる。中でも、正極活物質は、Cu、CuFx、Pb、PbFx、Bi、BiFx、Ag、AgFxであることが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、正極活物質の他の例として、炭素材料、および、そのフッ化物を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。また、正極活物質のさらに他の例として、ポリマー材料を挙げることができる。ポリマー材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン等を挙げることができる。

導電化材および結着材については、上述した「1.負極活物質層」に記載した材料と同様の材料を用いることができる。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、容量の観点からはより多いことが好ましく、例えば30重量%以上であり、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。また、正極活物質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。

3.電解質層 本発明における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。電解質層を構成する電解質は、液体電解質(電解液)であっても良く、固体電解質であっても良い。

本発明における電解液は、例えば、フッ化物塩および有機溶媒を含有する。フッ化物塩は、活物質と反応するフッ化物イオンを生じさせるものであれば特に限定されるものではなく、無機フッ化物塩であっても良く、有機フッ化物塩であっても良い。また、フッ化物塩は、イオン液体であっても良い。無機フッ化物塩の一例としては、例えば、XF(Xは、Li、Na、K、RbまたはCsである)を挙げることができる。

有機フッ化物塩のカチオンとしては、例えば、アルキルアンモニウムカチオン、アルキルホスホニウムカチオン、アルキルスルホニウムカチオン等を挙げることができる。アルキルアンモニウムカチオンとしては、例えば、N+(R1R2R3R4)で表されるカチオンを挙げることができる。なお、R1〜R4は、それぞれ独立に、アルキル基またはフルオロアルキル基である。R1〜R4の炭素数は、通常、10以下である。アルキルアンモニウムカチオンの典型例としては、テトラメチルアンモニウムカチオンを挙げることができる。

電解液におけるフッ化物塩の濃度は、例えば0.1mol%〜40mol%の範囲内であり、1mol%〜10mol%の範囲内であることが好ましい。

電解液の有機溶媒は、通常、フッ化物塩を溶解する溶媒である。有機溶媒の一例としては、一般式R1−O(CH2CH2O)n−R2(R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数4以下のアルキル基、または、炭素数4以下のフルオロアルキル基であり、nは2〜10の範囲内である)で表されるグライムを挙げることができる。

グライムの具体例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル(G2)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等を挙げることができる。

有機溶媒の他の例としては、非溶媒を挙げることができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート挙げることができる。また、有機溶媒として、イオン液体を用いても良い。

本発明における電解液は、フッ化物塩および有機溶媒のみから構成されていても良く、他の化合物をさらに含有していても良い。他の化合物としては、Liイオンおよびスルホニルアミドアニオンを有するLiアミド塩を挙げることができる。スルホニルアミドアニオンは、アミドアニオンにおけるN(アニオン中心)と、スルホニル基のSとが結合したアニオンである。スルホニルアミドアニオンとしては、例えば、ビスフルオロスルホニルアミド(FSA)アニオン、ビストリフルオロメタンスルホニルアミド(TFSA)アニオンを挙げることができる。なお、本発明における電解液は、後述する実施例に記載されているように、無機フッ化物塩と、Liアミド塩と、グライムとを含有することが好ましい。

一方、上記固体電解質としては、La、Ce等のランタノイド元素のフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ元素のフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類元素のフッ化物等を挙げることができる。

また、本発明における電解質層の厚さは、電池の構成によって大きく異なるものであり、特に限定されるものではない。

4.その他の構成 本発明のフッ化物イオン電池は、上述した負極活物質層、正極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。また、本発明のフッ化物イオン電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していても良い。より安全性の高い電池を得ることができるからである。

5.フッ化物イオン電池 本発明のフッ化物イオン電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、一次電池には、二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。また、本発明のフッ化物イオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および型等を挙げることができる。

なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。なお、測定試料は全てAr雰囲気下グローブボックスにて作製した。

[実施例1] 溶融急冷法により作製したCePb合金リボン(Ce:Pb=1:1の重量比、高純度化学社製)を測定試料とした。一方、テトラグライム(G4、キシダ化学社製)に、リチウムビスフルオロスルホニルアミド(Li−FSA、キシダ化学社製)およびフッ化セシウム(CsF、関東化学社製)を、それぞれ4.5M、0.45Mとなるように混合し、フッ素樹脂製の密封容器内にて30℃の条件で撹拌することにより、電解液を得た。このようにして、測定試料および電解液を用意した。

[実施例2] 測定試料として、溶融急冷法により作製したAlCePb合金リボン(Al:Ce:Pb=96:4:5の重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[実施例3] 測定試料として、溶融急冷法により作製したAlCePb合金リボン(Al:Ce:Pb=96:4:10の重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[実施例4] トリグライム(G3、関東化学社製)に、リチウムビスフルオロスルホニルアミド(Li−FSA、キシダ化学社製)およびフッ化リチウム(LiF、高純度化学社製)を、それぞれ5.5M、2.75Mとなるように混合し、フッ素樹脂製の密封容器内にて30℃の条件で撹拌することにより、電解液を得た。この電解液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[比較例1] 測定試料として、Ce箔(純度99.9%、レアメタリック社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[比較例2] 測定試料として、溶融急冷法により作製したAlCe合金リボン(Al:Ce=96:4の重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[比較例3] 測定試料として、Pb板(純度99.99%、ニラコ社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[比較例4] 測定試料として、溶融急冷法により作製したPbAl合金リボン(Pb:Al=7:3の重量比)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、測定試料および電解液を用意した。

[評価] (サイクリックボルタンメトリ測定) 実施例1〜4および比較例1〜4の測定試料に対して、各々の電解液中でCV測定を行った。具体的には、Ar雰囲気下グローブボックス内で、ディップ式3電極セルを用いて評価した。作用極には測定試料を、対極には、PTFE、アセチレンブラック(AB)、フッ化カーボンの合材電極を用いた。なお、合材電極は、PTFE:AB:フッ化カーボン=1:2:7の重量比で含有する電極である。また、基準極は、バイコールガラスを用いて電解液と隔離した。なお、基準極には、硝酸銀およびテトラブチルアンモニウムパークロレートがそれぞれ0.1Mで溶解したアセトニトリル溶液にAg線を浸漬させたものを用いた。また、測定は、室温、掃引速度1mV/sの条件で実施した。その結果を図2〜図5に示す。なお、横軸の電位は、標準水素電極(Standard hydrogen electrode、SHE)基準の電位である。

まず、図2(a)は、実施例1および比較例1、2の測定試料に対するCV測定の結果であり、図2(b)〜(d)は、それぞれの結果を分離して示したものである。図2に示すように、実施例1(CePb)では、−2.5V付近および−2.7V付近に、還元電流ピークが観察された。これらのピークは、比較例1(Ce)および比較例2(CeAl)では観察されなかった。Ceのフッ化脱フッ化反応の理論電位は−2.6Vであることから、−2.7V付近の還元電流ピークは、CeF3の脱フッ化を示すピークであると推測される。また、−2.5V付近の還元電流ピークは、PbのLi合金化(Pbと、電解液に含まれるリチウム塩のLiとの合金化)を示すピークであると推測される。

一方、実施例1(CePb)では、−2.55V付近および−2.4V付近に、酸化電流ピークが観察された。比較例1(Ce)でも、−2.55V付近において僅かに酸化電流の増大が観察されることから、−2.55V付近の酸化電流ピークは、Ceのフッ化を示すピークであると推測される。また、−2.4V付近の酸化電流ピークは、Li合金化したPbの脱Li化反応を示すピークであると推測される。

以上のことから、実施例1および比較例1、2を比べると、CePb合金を採用することで、Ceのフッ化脱フッ化反応の活性が大幅に向上することが確認された。また、比較例1(Ce)では、−2.95V付近に、CeF3の脱フッ化を示すピークが僅かに観察された。Ceのフッ化脱フッ化反応の理論電位は−2.6Vであることを考慮すると、Ce単体を用いた場合には副反応が起こりやすく、主反応(CeF3の脱フッ化)を起こすためには、大きな過電圧が必要であることが示唆された。これに対して、実施例1(CePb)では、ほぼ理論電位で反応が起きており、充電時の過電圧を低減できることが確認された。

次に、図3(a)は、実施例1および比較例3、4の測定試料に対するCV測定の結果であり、図3(b)〜(d)は、それぞれの結果を分離して示したものである。図3の結果からも、上述した推測が妥当であることが示唆された。具体的には、図3に示すように、実施例1(CePb)、比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)では、いずれも−2.5V付近に、還元電流ピークが観察された。そのため、−2.5V付近のピークは、PbのLi合金化を示すピークであることが示唆された。また、実施例1(CePb)では、−2.7V付近に、還元電流ピークが観察された。このピークは、比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)では観察されなかった。そのため、−2.7V付近の還元電流ピークは、CeF3の脱フッ化を示すピークであることが示唆された。

一方、比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)では、実施例1(CePb)と同様に、−2.55V付近の酸化電流ピークと、−2.5V付近から立ち上がる酸化電流ピークとが確認された。しかしながら、−2.55V付近の酸化電流ピークは、Ceを含有する実施例1(CePb)と、Ceを含有しない比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)とで、挙動が大きく異なっている。具体的には、Ceを含有する実施例1(CePb)の場合、−2.55V付近の酸化電流ピークは、−2.5V付近から立ち上がる酸化電流ピークよりも大きい。これに対して、Ceを含有しない比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)の場合、ピークの大小関係が逆になっている。この結果は、−2.55V付近の酸化電流ピークが、Ceを含有する実施例1(CePb)と、Ceを含有しない比較例3(Pb)および比較例4(PbAl)とにおいて、それぞれ異なる反応のピークであることを示唆している。さらに、Ceのフッ化脱フッ化反応の理論電位は−2.6Vを考慮すると、−2.55V付近の酸化電流ピークは、Ceのフッ化を示すピークであることが示唆された。

次に、図4(a)は、実施例1〜3の測定試料に対するCV測定の結果であり、図4(b)〜(d)は、それぞれの結果を分離して示したものである。図4に示すように、実施例1(CePb)、実施例2、3(AlCePb)では、いずれも、−2.7V付近に還元電流ピーク(CeF3の脱フッ化のピーク)が観察され、−2.5V付近に酸化電流ピーク(Ceのフッ化のピーク)が観察された。そのため、Ce元素およびPb元素に加えて、第三成分(ここではAl元素)を含有する負極活物質においても、Ceのフッ化脱フッ化反応の活性が、Ce単体に比べて向上することが確認された。また、実施例2および実施例3を比べると、Pb元素の割合が異なっていても、同様の還元電流ピークおよび酸化電流ピークが観察され、Ceのフッ化脱フッ化反応が生じていることが確認された。

次に、図5(a)は、実施例3、4の測定試料に対するCV測定の結果であり、図5(b)、(c)は、それぞれの結果を分離して示したものである。図5に示すように、実施例3、4(AlCePb)では、電解液の種類が異なるものの、いずれも、−2.7V付近に還元電流ピーク(CeF3の脱フッ化のピーク)が観察され、−2.5V付近に酸化電流ピーク(Ceのフッ化のピーク)が観察された。そのため、電解液の種類が異なっていても、同様の還元電流ピークおよび酸化電流ピークが観察され、Ceのフッ化脱フッ化反応が生じていることが確認された。

1 … 正極活物質層 2 … 負極活物質層 3 … 電解質層 4 … 正極集電体 5 … 負極集電体 6 … 電池ケース 10 … フッ化物イオン電池

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