新規DNA切断酵素

申请号 JP2015515912 申请日 2014-05-09 公开(公告)号 JP6349309B2 公开(公告)日 2018-06-27
申请人 国立大学法人九州大学; 发明人 石野 良純; 石野 園子; 白石 都;
摘要
权利要求

配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有する酵素を含み、損傷塩基を含むDNA鎖において、該損傷塩基を有するデオキシリボヌクレオチドと、前記デオキシリボヌクレオチドの5’側に隣接するデオキシリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合を切断するための酵素試薬。配列番号2または4に示すアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列を有する酵素を含み、損傷塩基を含むDNA鎖において、該損傷塩基を有するデオキシリボヌクレオチドと、前記デオキシリボヌクレオチドの5’側に隣接するデオキシリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合を切断するための酵素試薬。配列番号2または4に示すアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する酵素を含み、損傷塩基を含むDNA鎖において、該損傷塩基を有するデオキシリボヌクレオチドと、前記デオキシリボヌクレオチドの5’側に隣接するデオキシリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合を切断するための酵素試薬。損傷塩基がヒポキサンチンである請求項1から3のいずれか一項に記載の酵素試薬。損傷塩基がキサンチンである請求項1から3のいずれか一項に記載の酵素試薬。損傷塩基がウラシルである請求項1から3のいずれか一項に記載の酵素試薬。損傷塩基が脱塩基(アベイシック)である請求項1から3のいずれか一項に記載の酵素試薬。酵素がサーモコカケアエ(Thermococcaceae)科由来である請求項1から7のいずれか一項に記載の酵素試薬。酵素がピロコッカス(Pyrococcus)属またはサーモコッカス(Thermococcus)属由来である請求項8に記載の酵素試薬。酵素がピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)またはサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)由来である請求項9に記載の酵素試薬。請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素試薬と、Endo Vとを使用して損傷塩基を除去する方法。請求項1から10のいずれか一項に記載の酵素試薬と、フラップエンドヌクレアーゼとを使用して損傷塩基を除去する方法。損傷塩基が、ピポキサンチン、キサンチン、ウラシルおよび脱塩基(アベイシック)からなる群から選択される少なくとも1つである請求項11または12に記載の方法。請求項11から13のいずれか一項に記載の方法によって損傷塩基を除去した後、DNAリガーゼ反応によって再結合する遺伝子操作方法。

说明书全文

本発明は試験管内(インビトロ)遺伝子試薬として有用なDNA切断酵素、遺伝子工学的手法を用いた該酵素の製造方法および該酵素を用いた遺伝子操作方法に関する。

分子生物学の発展によって、種々の目的によって遺伝子(DNA)解析を行う機会が急激に増している。そのため、試験管内でDNA鎖やRNA鎖を目的に応じて細工する遺伝子操作技術では、様々な活性を有する種々の酵素が必要とされている。そして現在の遺伝子操作技術はこれらの酵素抜きにしては成り立たない。

遺伝子工学技術には、これまで様々なDNA関連酵素が利用されてきた。DNAを切断する酵素には、塩基配列を特異的に認識して切断する酵素と立体構造を認識して切断する酵素が知られている。なかでも塩基配列を特異的に認識して切断する酵素として頻繁に用いられているのは制限酵素と呼ばれるもので、一般的に二本鎖DNAの特異的な塩基配列の4〜8塩基を認識して切断する。一方、一本鎖DNAを特異的に切断する酵素としては、一本鎖DNAやRNAに作用してモノヌクレオチドに分解するエンドヌクレアーゼであるAepergillus oryzae由来のS1ヌクレアーゼ、Penicillium citrinum由来のP1ヌクレアーゼ、Alteromonas espejiana由来のBal31ヌクレアーゼなどが公知であり、市販されている。 また、DNA鎖中に損傷塩基がある場合、それを認識し、特異的に損傷塩基の3’側を切る酵素として、エンドヌクレアーゼV[Endonuclease V(Endo V)]が知られている(非特許文献1)。エンドヌクレアーゼVについては、例えば、大腸菌由来のEndo Vが遺伝子工学用酵素として市販されている(New England Biolabs,Ipswich,MA,USA)。また、DNA鎖中のデオキシリボースの酸化的損傷で生じる酸化的脱塩基損傷が知られており、その切断に関与する酵素として大腸菌のEndo IVやhumanのabasic endonuclease(ApeI)が知られている(非特許文献2)。

Cao W.(2012)Endonuclease V:an unusual enzyme for repair of DNA deamination. Cell Mol Life Sci.2012 Dec 20.

Yong−jie Xu, Edy Yong Kim, and Bruce Demple (1998) J Biol Chem. 1998 Oct 30;273(44):28837—44.

しかし、これらの酵素によるDNA鎖切断にはMutMやDNAポリメラーゼbetaのリアーゼ活性が必要であり、また切断後に1ヌクレオチドギャップが生じることが分かっている(非特許文献2)。すなわち、損傷塩基を認識するエンドヌクレアーゼについては、損傷塩基の5’側のリン酸ジエステル結合を直接切断する活性はこれまでに知られておらず、そのような活性を有する酵素の存在は不明である。しかし、そのような酵素があれば、損傷塩基の3’側を切る酵素(エンドヌクレアーゼVなど)と併用することにより、損傷塩基の両端を切って該塩基を除去することができるため、新規な遺伝子工学技術開発のために大いに役立つことが期待される。

したがって、本発明の目的は、損傷塩基を含むDNA鎖において、その損傷塩基のすぐ5’側を特異的に切断する活性を有する酵素を遺伝子操作用試薬等として提供することにあり、さらに該酵素を用いて、DNA鎖から損傷塩基を除去する方法を提供することにある。

本発明者らは、上記課題に鑑み、超好熱性アーキア(古細菌)の一種であるピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus、以下P.furiosusとも記載する。)のEndo Vに着目し、この酵素が大腸菌や他生物由来の既知のEndo Vと同様に、DNA鎖中のアデニンが脱アミノ化されて生じた損傷塩基であるヒポキサンチンの存在する位置の3’側のヌクレオチドのリン酸ジエステル結合を切断することを確認した。

そして、さらなる鋭意努の結果、P.furiosusの細胞抽出液には、ヒポキサンチンの5’側が切断された産物を与える活性も含まれていることを見い出し、その活性のもとになるタンパク質の同定を行った。当該酵素は、このようにヒポキサンチンを有するDNA鎖を切断する酵素として同定されたが、その後、損傷塩基であるウラシルやキサンチンを含むDNA鎖や、塩基欠損(アベイシック)DNA鎖なども切断する活性を有していることが確認された。さらに本発明者らは、当該タンパク質と相同性を有するタンパク質を、近縁種のアーキアであるサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)から得ることに成功し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、下記(1)から(19)に関する。 (1)損傷塩基を含むDNA鎖において、該損傷塩基を有するデオキシリボヌクレオチドと、前記デオキシリボヌクレオチドの5’側に隣接するデオキシリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合を切断する活性を有する酵素。 (2)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含む(1)に記載の酵素。 (3)1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加された配列番号2または4に示すアミノ酸配列を含む(1)に記載の酵素。 (4)配列番号2または4に示すアミノ酸配列と95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む(1)に記載の酵素。 (5)損傷塩基がヒポキサンチンである(1)から(4)のいずれか一つに記載の酵素。 (6)損傷塩基がキサンチンである(1)から(4)のいずれか一つに記載の酵素。 (7)損傷塩基がウラシルである(1)から(4)のいずれか一つに記載の酵素。 (8)損傷塩基が脱塩基(アベイシック)である(1)から(4)のいずれか一つに記載の酵素。 (9)サーモコカケアエ(Thermococcaceae)科由来である(1)から(8)のいずれか一つに記載の酵素。 (10)ピロコッカス(Pyrococcus)属またはサーモコッカス(Thermococcus)属由来である(9)に記載の酵素。 (11)ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)またはサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)由来である(10)に記載の酵素。 (12)(1)から(11)のいずれか一つに記載の酵素をコードするDNA。 (13)(12)に記載のDNAを含有する組換え体ベクター。 (14)(13)に記載の組換え体ベクターを宿主細胞に導入して得られる形質転換体。 (15)(14)に記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に(1)から(11)のいずれか一つに記載の酵素を生成蓄積させ、培養物から該酵素を採取することを含む、(1)から(11)のいずれか一つに記載の酵素の製造方法。 (16)(1)から(11)のいずれか一つに記載の酵素と、Endo Vとを使用して損傷塩基を除去する方法。 (17)(1)から(11)のいずれか一つに記載の酵素と、フラップエンドヌクレアーゼとを使用して損傷塩基を除去する方法。 (18)損傷塩基が、ヒポキサンチン、キサンチン、ウラシルおよび脱塩基(アベイシック)からなる群から選択される少なくとも1つである(16)または(17)に記載の方法。 (19)(16)から(18)のいずれか一つに記載の方法によって損傷塩基を除去した後、DNAリガーゼ反応によって再結合する遺伝子操作方法。

本発明の酵素は、DNAの塩基と糖の間のグリコシド結合が切れたアベイシックなDNA鎖や、アデニン、グアニン、シトシンがそれぞれ脱アミノされた損傷塩基であるヒポキサンチン、キサンチン、ウラシルを特異的に認識して、DNA鎖を切断する活性を有する。詳細には、本発明の酵素は、損傷塩基のすぐ5’側を切断する特異性を示す全く新規のものであるため、その性質を利用した新規遺伝子工学技術開発への応用が期待される。さらに本発明の酵素を用いることで、損傷塩基をDNA鎖から除去する方法を提供することができる。

図1は、DNA塩基の脱アミノ化を説明する概略図である。

図2は、ピロコッカス・フリオサスの細胞抽出液に含まれるヒポキサンチン除去修復に関与するタンパク質のスクリーニングの結果を示す電気泳動図である。

図3は、活性画分のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す図である。

図4は、最終活性画分の電気泳動の結果を示す図であり、そこに含まれるタンパク質を検出した図である。

図5は、PF1551の活性測定の結果を示す図である。

図6は、サーモコッカス・コダカレンシス由来のPF1551ホモログ(TK0887)の活性測定の結果を示す電気泳動図である。

図7は、Endo Qの切断様式を示す概略図である。

図8は、Endo Qの切断様式を示す概略図である。

図9は、Endo Qによる切断後、T4リガーゼを用いた再結合を示す電気泳動図である。

本明細書におけるアミノ酸配列などの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAc−IUB communication on Biological Nomenclature,Eur.J.Biochem.,138;9(1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作製のためのガイドライン」(特許庁編)および当該分野における慣用記号に従うものとする。

(I)本発明のDNA(遺伝子) 本発明の遺伝子は、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)の遺伝子PF1551であり、DNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断する活性を有するDNA切断酵素(タンパク質)をコードする遺伝子およびそのホモログである。 すなわち本発明の遺伝子は、下記の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)または(g)を含有するポリヌクレオチドである。

(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド; (b)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (c)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1もしくは複数の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (d)(a)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質コードするポリヌクレオチド; (e)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (f)(e)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (g)(e)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

また本発明の遺伝子は、P.furiosusの近縁種のアーキア(古細菌)であるサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)の遺伝子TK0887であり、PF1551のコードするタンパク質と相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子およびそのホモログである。 すなわち本発明の遺伝子は、下記の(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)または(n)を含有するポリヌクレオチドである。

(h)配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド; (i)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (j)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において1もしくは複数の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (k)(h)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも80%以上の同一性を有し、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質コードするポリヌクレオチド; (l)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (m)(l)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド; (n)(l)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。

本明細書でタンパク質または酵素の性質に関し、「DNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有する」とは、特別な場合を除き、DNA中の少なくとも1つの損傷塩基を特異的に認識し、該損傷塩基を有するデオキシリボヌクレオチドと、前記デオキシリボヌクレオチドの5’側に隣接するデオキシリボヌクレオチドとのホスホジエステル結合を切断する活性を有することをいう。切断後には5’側にリン酸基、3’側に酸基が残る型の切断様式をとり、DNAリガーゼによる再結合が可能である。

「損傷塩基」とは、DNAが変異原に曝露されることなどにより損傷を受けた塩基をいい、特に本明細書では、例えば高温、UV,電離放射線、亜硝酸などの変異原により、DNAの塩基と糖の間のグリコシド結合が切れたアベイシックなDNA鎖や、アミノ基が失われ酸素が結合することによって脱アミノ化された塩基をいう(図1)。脱アミノ化により、アデニンはヒポキサンチンに、グアニンはキサンチンに、シトシンはウラシルに変化する。 脱アミノ化による損傷塩基を修復しないでおくと、例えば、ヒポキサンチン(Hx)についてはシトシン(C)と対を作るので、その後のDNAの複製・転写によって塩基対は、(A:T→)Hx:T→Hx:Cとなり、もう一度複製が行われるとHx:C→G:Cとなる。このようにして、A:TがG:Cに点変異する。

「ストリンジェントな条件」とは、特別な場合を除き、6M尿素、0.4%SDS、0.5×SSCの条件またはこれと同等のハイブリダイゼーション条件を指し、さらに必要に応じ、本発明では、よりストリンジェンシーの高い条件、例えば、6M尿素、0.4%SDS、0.1×SSCまたはこれと同等のハイブリダイゼーション条件を適用することができる。それぞれの条件において、温度は約40℃以上とすることができ、よりストリンジェンシーの高い条件が必要であれば、例えば約50℃、さらに約65℃としてもよい。

本明細書で「1もしくは複数の塩基が置換、欠失、挿入および/または付加された塩基配列」という場合、置換等されるヌクレオチドの個数は、その塩基配列からなるポリヌクレオチドがコードするタンパク質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個または1〜4個程度であるか、同一または性質の似たアミノ酸配列をコードするような置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。 また、本明細書で「1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列」という場合、置換等されるアミノ酸の個数は、そのアミノ酸配列を有するタンパク質が所望の機能を有する限り特に限定されないが、1〜9個または1〜4個程度であるか、同一または性質の似たタンパク質を構成するような置換等であれば、さらに多くの個数の置換等がありうる。このような塩基配列またはアミノ酸配列に係るポリヌクレオチドを調製するための手段は、当業者には周知である。

本発明の遺伝子には、配列番号1または3に記載の塩基配列と高い同一性を有する塩基配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが含まれる。 塩基配列に関し、高い同一性とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。また、本発明に係る遺伝子には、配列番号2または4に記載のアミノ酸配列の全部または少なくともシグナル配列を除いた部分を含む一部と高い同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドが含まれる。アミノ酸配列に関し、高い同一性とは、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列の同一性を指す。

ポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の同一性(相同性ということもある)に関する検索・解析は、当業者には周知のアルゴリズムまたはプログラム(例えば、DNASISソフトウェア、BLAST、CLUSTAL WおよびJALVIEW等を用いる。)により行うことができる。プログラムを用いる場合のパラメーターは、当業者であれば適切に設定することができ、また各プログラムのデフォルトパラメーターを用いてもよい。これらの解析方法の具体的な手法もまた、当業者には周知である。

本発明に係るポリヌクレオチドは、天然物からハイブリダイゼーション技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術等を利用して得ることができる。具体的には、好ましくは、サーモコッシ(Thermococci)綱、サーモコッカレス(Thermococcales)目、サーモコカケアエ(Thermococcaceae)科の菌、より好ましくは、ピロコッカス(Pyrococcus)属、またはサーモコッカス(Thermococcus)属の菌;さらに好ましくは、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)またはサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)に属する細菌;特に好ましくは、ピロコッカス・フリオサスから、ゲノムDNA(gDNA)を調製し、あるいは同細菌体から全RNAを調製して逆転写によりcDNAを合成する。gDNAまたはcDNAから、本発明のDNA分解の適切な部分塩基配列をプローブまたはプライマーとして設計・利用して、全長の本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。

本発明に係るポリヌクレオチドには、DNAおよびRNAが含まれ、DNAには、ゲノムDNA、cDNAおよび化学合成DNAが含まれる。DNAは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNAでありうる。本発明に係るポリヌクレオチドは、ピロコッカス属、またはサーモコッカス属に属する細菌;好ましくは、ピロコッカス・フリオサスまたはサーモコッカス・コダカレンシスに属する細菌;より好ましくは、ピロコッカス・フリオサス由来でありうる。 配列表の配列番号1にピロコッカス・フリオサス、配列番号3にサーモコッカス・コダカレンシスに由来する塩基配列を示す。

本発明はまた、本発明に係るポリヌクレオチド(本発明のDNAおよびそのホモログ)を含む組換えベクター、その組換えベクターにより形質転換された、形質転換体も提供する。本発明はさらに、本発明に係るポリヌクレオチドを用いて宿主(菌もしくは細菌、動物細胞、または植物細胞。例えば、大腸菌)を形質転換する工程を含む、形質転換方法も提供する。

本発明に係るポリヌクレオチドが挿入されるベクターは、宿主内で挿入物を発現させることが可能なものであれば特に制限はなく、ベクターは、通常、プロモーター配列、ターミネーター配列、外的な刺激により誘導的に挿入物を発現させるための配列、目的遺伝子を挿入するための制限酵素により認識される配列、および形質転換体を選択するためのマーカーをコードする配列を有する。組換えベクターの作製、組換えベクターによる形質転換方法は、当業者に周知の方法を適用することができる。

(II)本発明の酵素(タンパク質) 本発明の酵素は、本発明のDNAであるPF1551によってコードされるタンパク質またはそのホモログである。 すなわち本発明の酵素は、下記の(e’)、(f’)または(g’)を含有するタンパク質である。 (e’)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質; (f’)(e’)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質; (g’)(e’)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質。

さらに、PF1551のコードするタンパク質と相同性を有するタンパク質が、P.furiosusの近縁種のアーキア(古細菌)であるサーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)の遺伝子TK0887にも認められた。 したがって、また本発明の酵素は、TK0887のコードするタンパク質と相同性を有するタンパク質をコードする遺伝子およびそのホモログである。 すなわち本発明の酵素は、下記の(l’)、(m’)または(n’)を含有するタンパク質である。

(l’)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質; (m’)(l’)に記載のタンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質; (n’)(l’)に記載のタンパク質のアミノ酸配列と少なくとも80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつDNA中の損傷塩基のすぐ5’側を切断するDNA切断活性を有するタンパク質。

本発明の酵素の精製および同定は、以下のように行われた。 まず、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)の細胞抽出液に、DNA鎖中のアデニンが脱アミノ化されて生じた損傷塩基であるヒポキサンチン含有DNAを切断する活性が存在することを確かめた。ピロコッカス・フリオサスの細胞抽出液を陽イオン交換カラムクロマトグラフィーで分画し、その各フラクションを用いて、ヒポキサンチン含有の化学合成DNA鎖を基質とした切断反応を行なった結果、図2に示すように、サンプル番号1〜4において、24merの位置にバンドが検出される画分を得た。一方、精製された「エンドヌクレアーゼV」のみで処理されたサンプルにおいては、26merの位置にバンドが検出されている。エンドヌクレアーゼVによる切断反応では、ヒポキサンチンの3’側の1ヌクレオチド下流で切断されることが分かっているので、24merが現れるということはヒポキサンチンの5’側で切断されていることを示している。したがって、24merの位置にバンドが現れたサンプル番号1〜4の画分においては、5’側に切断活性が起きたことを示している。

なお、サンプル番号1〜4の画分にエンドヌクレアーゼVも含まれることをウエスタン解析で確認されているので、エンドヌクレアーゼVによる切断反応も同時に起きていることが予想される。DNAの標識は5’末端にされているので、同時に切断反応が起きても、検出されるのはより短い24merだけである。

P.furiosus細胞抽出液を原理の異なる5種類のクロマトグラフィーで丁寧に分画していき、目的の活性を濃縮した。その画分をSDS−PAGE に供し、銀染色を行なうと、図4に示すようなタンパク質を検出した。矢印に示す8つのバンドを切り出し(実施例2及び図4)、高感度質量分析に供し、そこに含まれるタンパク質のアミノ酸配列を求めた。その結果、目的の活性を与えるタンパク質の候補として、20種のタンパク質がリストアップされた。

それらのタンパク質をコードする遺伝子をP.furiosusのゲノムDNAよりクローニングし、大腸菌で発現させた。得られた組換え大腸菌の細胞抽出液を用いて、損傷塩基を含むDNAを基質としたヌクレアーゼアッセイを行ったところ、候補タンパク質のうちの一つから、P.furiosusの細胞中から検出された活性と同様の、ヒポキサンチン塩基の存在する位置の5’側が切断された産物を与える活性が検出された。従って、この活性を有するタンパク質は、P.furiosusの遺伝子番号PF1551の産物であることが分かった(図5)。

この遺伝子産物は、データベース上で、Hypothetical proteinとしてアノーテートされており、機能未知のタンパク質である。本発明では、この機能未知のタンパク質が、ヒポキサンチン塩基を含むDNAの鎖の5’側を切断するという新規の活性を有する酵素であることを確定した。すなわち、遺伝子配列を翻訳して得られるアミノ酸配列は、既知のタンパク質との相同性を示さず、このような損傷塩基特異的なヌクレアーゼ活性を有するタンパク質であることは、データベース上の配列からは全く予想できるものではない。

また本発明の酵素は、サーモコッカス・コダカレンシス(Thermococcus kodakarensis)にも認められ、その遺伝子TK0887をクローニングして、組換え大腸菌を作製して、当該遺伝子を発現させた。その遺伝子産物に同様の切断活性があるのかどうかを調べた結果、図6に示すように、その細胞抽出液からもPF1551の場合と同様の切断産物を与える活性が検出された。この切断活性はヒポキサンチン(Hx)のところがGになっているG−Tミスマッチを含むDNA基質では検出されなかった(レーンG)。また、TK0887遺伝子を組み込んでいない大腸菌では基質にHxが含まれていても切断は起こらなかった(レーン“E.coli”)。

本発明の新規DNA切断酵素(配列番号2の424アミノ酸からなる分子量47,653のタンパク質)は、Endonuclease Q(Endo Q)と命名された。この酵素はヒポキサンチンを有するDNA鎖を切断する酵素として上記のように同定されたが、その基質特異性がどの程度厳密なものかを調べるために、他の損傷塩基として、その後の研究により、ヒポキサンチンを有するDNA鎖を切断するだけではなく、ウラシル、キサンチンを含むDNA鎖や、塩基欠損(アベイシック)DNA鎖、ミスマッチ塩基対を含むDNAについても切断反応を行なったところ、ウラシル、キサンチン、アベイシック部位を有するDNA鎖を同様の効率で切断することが示された。

図7に、ヒポキサンチンを含むDNA基質の場合とウラシルを含むDNA基質の場合を示す。図7中、*I、*U、*Aは、それぞれヒポキサンチン、ウラシル、アデニン(通常のDNA塩基)を含む標識した1本鎖DNA基質を示し、*I/T、*U/G、*A/T、とは、それぞれヒポキサンチン、ウラシル、アデニン、がチミンまたはグアニンと向いあう部位を有する二本鎖DNA基質を表し、ヒポキサンチン、ウラシル、アデニンを含む鎖が標識されていることを示す。また、I/*Tはヒポキサンチンとチミンが向かい合う部位を有する二本鎖のチミンを含むほうの鎖が標識されたDNA基質を示す。また、図8に、アベイシック部位、GTミスマッチ、キサンチンをそれぞれ有するDNA鎖を基質に用いた場合を示す。アベイシック部位、キサンチンを有するDNA基質は同様の効率で切断するが、通常の二本鎖、GTミスマッチを含むDNA基質は全く切断されない。図8中、*AP、*A、*Xはアベイシック、アデニン、キサンチンを含む標識した1本鎖DNA基質、*AP/T、*G/T、*A/T、*X/Gとは、アベイシック、グアニン、アデニン、キサンチンがチミンまたはグアニンと向かい合う部位を有する二本鎖DNAのそれぞれアベイシック、グアニン、アデニン、キサンチンを含む鎖に標識をした二本鎖DNA基質を示す。

なお、損傷塩基の種類によって切断産物のバンドの位置がヒポキサンチンの場合と異なるのは、基質DNAの塩基配列の都合で、損傷塩基の位置がHxの位置と異なることに起因しており、切断位置がすぐ隣りの5’側であることは変わらない。また、図7の右側のパネルは、ヒポキサンチンを含むDNA基質の場合で、標識するDNA鎖を変えて実験した結果、ヒポキサンチンを含む側の鎖のみが切断を受け、含まない方のDNA鎖は切断されないことを示す。

さらに、本発明の酵素(Endo Q)により切断されたDNAは、前述のように、5’側にリン酸基、3’側に水酸基を有する形に切断することは、図9に示した実験で、T4リガーゼを用いることで切断産物が再結合することで証明される。

なお、P. furiosus(DSM3638)は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (Inhoffenstrasse 7B 38124 Braunschweig GERMANY)より入手し、T.kodakarensisを京都大学 大学院 工学研究科 合成・生物化学専攻 生物化学工学分野の研究室(京都市西京区京都大学桂)より入手し、本発明のタンパク質を得た。またT.kodakarensis(JCM 12380)は、Japan Collection of Microorganisms(茨城県つくば市高野台3−1−1 独立行政法人 理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室)より入手することも可能である。

本発明の酵素(Endo Q)を製造する方法は以下の工程に分けられる。 (1)配列番号2または4に示すアミノ酸配列を有する酵素をコードする塩基配列を調製する工程。 当該タンパク質をコードする遺伝子をゲノム配列のデータベースから抽出し、コーディング領域の両端の遺伝子配列を基に、PCR用のプライマーを設計し、化学合成する。例えば、PF1551−F (5′−GG GCC ATG GTA GTT GAT GGC GAT CTG CAC A−3′, the restriction site of NcoI is underlined) and the reverse primer PF1551−R (5′− GG GGC GGC CGC TTA ATT TAC CTC TTT ATT TTT AAT ATA TTG AAG C−3′、 the restriction site of NotI is underlined)のようなものが考えられる。このプライマーセットを用いて、一般的なPCR条件(50μLの反応溶液:20mM Tris−HCl、pH8.0、2mM MgCl2、10mM KCl、10mM(NH4)2SO4、0.1% TritonX−100、0.1mg/ml BSA中に80ngのP.furiosusゲノムDNA、400nM 各プライマー、200μM of 各dNTPs、2.5units PfuDNA polymeraseを含む)により目的の遺伝子を試験管内で増幅する。 (2)塩基配列を発現ベクターに挿入し、組換えベクターを得る工程 例えば、大腸菌用の発現ベクターであるpET21d(+)を用いる場合、上記プライマーの配列中にそれぞれ、制限酵素NcoI,NotI認識配列を含めておくと、PCR増幅遺伝子を両酵素で処理すると、それぞれの認識配列が両末端に現れる。従って、pET21d(+)を同じくNcoI、NotIで切断し、その位置に当該遺伝子を挿入し、組換えベクターを得ることが可能になる。 (3)ベクターで宿主細胞を形質転換し、形質転換体を得る工程 例えば、大腸菌を宿主に用いる場合、その形質転換法は確立されており、最も簡便には、大腸菌細胞を塩化カルシウム溶液に浸して氷中で静置することによって、外来DNAを細胞内に取り込み易くなる。試験管内で作成した組換えDNA溶液をこの細胞液に加えると宿主細胞は、そのDNAによって形質転換され、形質転換体が得られる。ベクターとしてpET21d(+)を用いる場合、宿主細胞は、E.coli BL21 CodonPlus(DE3)−RIL株が適している。 (4)形質転換体を培養する工程 当該遺伝子を導入したE.coli BL21 CodonPlus(DE3)−RIL株を培養する場合、アンピシリン50μl/ml、クロラムフェニコール34μl/mlを含むLB培地で37℃の振とう培養を行い、波長600nmで測定した濁度OD600が0.6程度まで増殖した時に、イソプロピルβ−Dチオガラクトピラノシド(IPTG)を1mMになるように添加して、当該遺伝子発現の誘導をかけ、さらに37℃で4時間振とう培養を続けると目的タンパク質が効率良く産生される。 (5)培養液から酵素を採取する工程 上記のように培養した大腸菌を遠心分離(5分、5000×g、4℃)によって集菌し、超音波破砕機で細胞を潰して細胞抽出液を得る。目的タンパク質は耐熱性であるが、宿主大腸菌は常温生物であり、そのタンパク質には耐熱性がない。従って、細胞抽出液を熱処理(例えば80℃、20分)すると、宿主の大部分のタンパク質は変性して不溶化するので、遠心分離(10分、15000×g、4℃)によって取り除ける。その後、さらに原理の異なるクロマトグラフィーを続けることによって、高純度に精製された目的タンパク質を調製することができる。

(III)本発明の損傷塩基を除去する方法 本発明の損傷塩基を除去する方法は、本発明の酵素(エンドヌクレアーゼQ)と、損傷塩基の3’側のヌクレオチドのリン酸ジエステル結合を切断するEndo Vまたはフラップエンドヌクレアーゼを組み合せることにより、損傷塩基を切り出して除去することができる方法である。 損傷塩基を除去した後は、切断後の界面をDNAリガーゼ反応によって再結合することができる。

本発明のタンパク質は、以下に記載する実施例に記載した方法のほか、本願明細書に開示される配列情報に基づいて、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製することができる。また、本願明細書に開示される配列を改変した配列を含むタンパク質についても、当該分野で公知の方法を使用して、当業者によって容易に作製することができる。 また本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。

[実施例1] 本願発明の切断酵素の同定

Bacto Trypton(BD)20g、Bacto Yeast Extract(BD):5g、塩化ナトリウム:23.9g、塩化マグネシウム六水和物:10.8g、硫酸ナトリウム:4g、Soluble Starch:10g(DIFCO)、10mlの100×Trace element(30%MgSO

4、10%NaCl、1%FeSO

4・7H

2O、1%ZnSO

4、1%CuSO

4・7H

2O、1%CoSO

4・5H

2O、0.1%CuSO

4・5H

2O、0.1%KAl(SO

4)

2、0.1%H

3BO

2、Na

2MoO

4・2H

2O、0.25%NiCl

2・6H

2O,pH7.0)を含む培地1000mlをオートクレーブ後、内温が100℃まで低下したところで培地瓶を取り出し、2mlのP.furiosusの菌種を添加した。その後、98℃で静置培養を行った。OD

600が0.6になったところでインキュベーターから取り出し、培養液を10分間水で冷却した。その後、培養液を遠心(6268×g、10分間、4℃)することにより集菌した。培地中の菌体数は血球計算盤を用いて計算した。

<細胞抽出液の調製とカラムクロマトグラフィーによる分画> 集菌した菌体をプロテアーゼ阻害剤であるcomplete、Mini、EDTA−free(Roche)を溶解した15mlの溶液A(50mM Tris−HCl、pH8.0、0.5mM DTT、0.1mM EDTA、10%グリセロール)に懸濁し、氷上で超音波破砕(5秒間、on/10秒間、offで計10分間)を行った。超音波破砕液を遠心(23708×g、10分間、4℃)して得られた上清を細胞抽出液とした。細胞抽出液を0.1M塩化ナトリウムを含む溶液B(10mM potassium phosphate,pH7.4)で透析した(4℃、14時間)。同じ溶液で平衡化したphosphocellulose(P11)カラムに供し、0.1−1M NaClの直線濃度勾配により、結合したタンパク質を分画した。目的の活性は0.20−0.37M NaClで溶出した。

この画分を0.1M NaClを含む溶液Aで透析し、1ml HiTrap SP HPカラム(GE Healthcare)に供した。0.1−1M NaClの直線濃度勾配で結合タンパク質を溶出したところ、目的の活性は0.21−0.41M NaClの位置に溶出した。

この画分を溶液Aで希釈し、NaCl濃度を0.1M以下に下げた。そして、1ml HiTrap Heparin HPカラム(GE Healthcare)に供し、0.1−1M NaCl濃度勾配で結合タンパク質を分画した。目的の活性は0.27−0.46M NaClで溶出した。

この画分を溶液Bで透析し、1ml Hydroxyapatiteカラム(ECONOPACK CHT−II;Bio−Rad)に供した。結合タンパク質を0.01−0.5Mリン酸カリウム濃度勾配(溶液B中)で溶出し、目的の活性を0.23−0.26Mリン酸カリウムの位置に得た。

その画分をさらに、1ml MonoS HR5/5カラム(Pharmacia)に供した。0−0.3M NaCl(溶液A中)の直線濃度勾配で結合タンパク質を溶出した結果、図3に示すように、目的の切断活性を有する画分を得る事ができ、0.23M NaClで溶出される画分において、最も高い活性を示した。

図3によると、レーン6、7の画分に、目的の活性が最も多く含まれていると予想されたので、レーン6の画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、銀染色によって、この画分に含まれる含有タンパク質を検出した。その結果、図4に示すように、まだ多くの種類のタンパク質がこの画分に含まれていることが分かった。このうちはっきり見える8本のバンド(図4に矢印で示すバンド)を切り出し、それぞれを高感度質量分析に供した結果、目的の活性を与えるタンパク質の候補として、活性の強度とバンド強度の連動性、活性と関連すると予想されるドメインの有無、アーキア間における保存の有無、アノテーションの有無等の観点から、20種の候補タンパク質をリストアップした。すなわち、他の画分についても電気泳動して、銀染色によるタンパク質検出を行い、バンドの濃さと、図3に示した活性の強さ(切断産物のバンド強度)の相対関係を調べたり、DNAと同語作用するタンパク質と予想されるような構造(配列)を有していないか、そのタンパク質がアーキア間でどの程度保存されているのか(重要な分子であれば保存度が高い)、データベース上で既に機能が予想されてアノーテーションされているものは、その名称(”DNA結合タンパク質”など)をリストアップする、などの作業を行なって、候補タンパク質を絞り込んだ。

20種の候補タンパク質をコードする遺伝子を、P.furiosusのゲノムDNAよりクローニングし、大腸菌内でそれぞれの遺伝子を発現させた。細胞質中に産生されたそれぞれの遺伝子産物の活性を調べるために、組換え大腸菌細胞を培養して、集菌した後、超音波細胞破砕機(Misonix社 astrason ultrasonic processor)で大腸菌細胞を破砕し、遠心分離(15000×g、10分、4℃)して、細胞抽出液を遠心上清に得た。さらに、それを湯浴槽中で、80℃、20分の処理を行い、宿主大腸菌由来のタンパク質を変性させ、遠心分離(15000×g、10分、4℃)によって除去して目的の分画サンプルを得た。

<エンドヌクレアーゼ活性測定> 5’末端をCy5で蛍光標識した、ヒポキサンチン(5’末端から25nt目の位置)含む45鎖長のオリゴヌクレオチド(Cy5−45N−dI25)と非標識の相補的配列を有する45鎖長のオリゴヌクレオチド(temp45N−normal)を用いて、TAM緩衝液(40mM Tris−acetate(pH7.8)、0.5mM酢酸マグネシウム)30μl中でそれぞれ終濃度500nM、750nMとなるように混合し、98℃から30℃まで段階的に除冷し(PCR装置を用いた)、ヒポキサンチンを含む二本鎖DNA基質(Hx−dsDNA)を調製した。

また、損傷塩基を含まないDNA基質の調製のために、ヒポキサンチンの部位がアデニンになっているノーマルなDNA鎖(45N)をtemp45N−normalと同様の条件でアニーリングして調製した。用いたオリゴヌクレオチドの塩基配列を以下に示す。

Cy5−45N−dI25:5’−cgaactgcctggaatcctgacgacitgtagcgaacgatcacctca−3’(配列番号5) temp45N−normal:5’−tgaggtgatcgttcgctacatgtcgtcaggattccaggcagttcg−3’(配列番号6) 45N:5’−cgaactgcctggaatcctgacgacatgtagcgaacgatcacctca−3’(配列番号7)

反応液20μl(10nM Hx−dsDNA、50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM DTT、0.1%Tween20、1mM MgCl2、および分画サンプル2μl)を調製し、60℃で1時間反応させた。反応後、反応停止液(98%ホルムアミド、10mM EDTA、0.1%Orange G)40μlを反応液中に加えて反応を停止させ、98℃で3分間熱処理し、急冷した。この反応液1.5μlを8M 尿素−12%ポリアクリルアミドゲルに供し、1×Tris−borate EDTA(TBE)(89mM Tris、89mMホウ酸、および2mM EDTA)中で、20Wで50分間の電気泳動を行った。電気泳動終了後、Typhoon Trio+(GE Healthcareイメージアナライザーを用いて反応液中のDNAを可視化した。

質量分析によって得られた候補タンパク質遺伝子について、それぞれクローニングして組換え大腸菌を作成し、その活性を調べることによって、候補遺伝子のうちの遺伝子番号PF1551を有する組換え大腸菌から、P.furiosusの細胞中から検出された活性と同様のヒポキサンチン塩基の存在する位置の5’側が切断された産物を与える活性が検出された。従って、この活性を有するタンパク質は、P.furiosusの遺伝子番号PF1551の産物であることが分かった(図5)。

[実施例2] 本発明の酵素(Endo Q)により切断されたDNAの末端がDNA鎖の連結酵素であるDNAリガーゼで再結合できるかどうかを確かめるために、デオキシイノシンを含む DNA(配列番号5)及びそのすぐ5’側のCがUに変わったDNA基質を配列番号6のDNA鎖とアニールして二本鎖を形成させた。50mM Tris−HCl、pH8.0、1mM DTT、1mM MgCl2、0.01% Tween20を含む反応液中でTkoEndoQ(10 nM)と75℃、20分間反応させ、98℃、10分間静置して酵素を失活させた。その後、98℃から25℃まで2時間かけて下げていくことによって、DNAを二本鎖に戻し、Quick Ligation Kit(New England Biolabs社製)を用いて、室温で30分間ライゲーション反応を行なった。98℃で5分間置いた後、すぐに氷中に移して急冷した。そのサンプルを8M 尿素を含む12% PAGEに供し、その電気泳動イメージを蛍光イメージアナライザー(Typhoon Trio+、GE Healthcare社製)により可視化した(図9)。切断産物である23mer(Uの場合)、および24mer(Iの場合)が、DNAリガーゼを加えることによって、元の長さ(45mer)に戻ることが示された。 その結果、本発明の酵素(Endo Q)により、切断されたDNAは、T4リガーゼを用いることで再結合することが確認された(図9)。

本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2013年5月10日付で出願された米国仮出願(61/821,866)に基づいており、その全体が引用により援用される。

本発明の酵素は、例えば、細胞中のDNAが様々な外的要因、内的要因によってどのくらいの頻度で損傷を受けるかという検出キットの開発や、損傷を受けたDNAだけを切断することでPCRの鋳型から除去し、損傷が原因で生じるPCR時の変異率を下げる技術などに応用することが可能である。さらに本発明の酵素は、超好熱菌由来であるため、超好熱性であり、極めて熱安定性に優れているため、操作性に優れ、種々の遺伝子工学技術で使用される遺伝子工学用酵素として新たな技術開発への応用が期待される。

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