細胞を標的にしたHPV処置のための組成物および方法

申请号 JP2018513745 申请日 2016-05-27 公开(公告)号 JP2018516984A 公开(公告)日 2018-06-28
申请人 アジェノビア コーポレーション; 发明人 クエイク, スティーブン アール.; ワン, ジャンビン;
摘要 本発明は、HPVゲノムを選択的に標的とするために、またはHPVに感染した細胞内に、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを選択的に発現させるために使用することができる、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを使用して処置するための組成物および方法を提供する。HPVに感染した細胞、感染細胞内のHPVゲノム、またはその両方を選択的に標的とすることにより、ヌクレアーゼはHPVゲノムを切断することができ、そのことにより、それを不活性化し、作動不能にし、ウイルスが感染の潜伏段階である場合においてさえも、ウイルスが繁殖する能 力 を妨害する。潜伏性HPVを切断し、宿主細胞から根絶することができるので、本発明の組成物および方法は、HPV感染を処置するために、パピローマウイルスに関連する多くの有害な健康事象を強力に予防するために使用され得る。
权利要求

標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記ヌクレアーゼをHPVゲノムへと標的に向かわせる標的指向性配列をコードするベクターを含む、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を処置するための組成物。ベクターが、ケラチノサイト内での前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列の発現を促進する特徴を含む、請求項1に記載の組成物。発現を促進する前記特徴が、他の型の宿主細胞よりも前記ケラチノサイト内での前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列の発現を選択的に好むプロモーター−エンハンサーカセットを含む、請求項2に記載の組成物。前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼである、請求項2に記載の組成物。前記ヌクレアーゼがCas9エンドヌクレアーゼを含み、前記標的指向性配列がガイドRNAを含む、請求項2に記載の組成物。前記標的指向性配列が、前記HPVゲノム内のE6遺伝子を切断するために前記ヌクレアーゼを標的に向かわせる、請求項2に記載の組成物。前記ベクターが、前記HPVゲノム内のE7遺伝子を切断するために前記ヌクレアーゼを標的に向かわせる第2の標的指向性配列をさらに含む、請求項6に記載の組成物。ヒト患者への送達のためにさらにパッケージされる、請求項1に記載の組成物。前記標的指向性配列がガイドRNAであり、ヒトゲノム内で60%超の一致を有さない、請求項1に記載の組成物。前記ベクターが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、プラスミド、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属ナノ粒子、ナノロッド、リポソーム、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、およびリポスフェアからなる群から選択されるベクターを含む、請求項1に記載の組成物。ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を処置するための方法であって、 宿主細胞に、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよびHPVゲノムへと前記ヌクレアーゼを標的に向かわせる標的指向性配列を導入するステップ;ならびに 宿主ゲノム上の遺伝子に干渉することなく、前記宿主細胞内において前記ヌクレアーゼで前記HPVゲノムを切断するステップ を含む方法。前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列が、前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列をコードするベクターを使用して導入される、請求項11に記載の方法。前記宿主細胞がケラチノサイトであり、前記ベクターが、前記ケラチノサイト内での前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列の発現を促進する特徴を含む、請求項12に記載の方法。発現を促進する前記特徴が、他の型の宿主細胞よりも前記ケラチノサイト内での前記標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび前記標的指向性配列の発現を選択的に好むプロモーター−エンハンサーカセットを含む、請求項13に記載の方法。前記ベクターが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、プラスミド、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属ナノ粒子、ナノロッド、リポソーム、マイクロバブル、細胞透過性ペプチド、およびリポスフェアからなる群から選択されるベクターを含む、請求項12に記載の方法。前記ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼである、請求項11に記載の方法。前記ヌクレアーゼがCas9エンドヌクレアーゼを含み、前記標的指向性配列がガイドRNAを含む、請求項11に記載の方法。前記標的指向性配列が、前記HPVゲノム内のE6遺伝子を切断するために前記ヌクレアーゼを標的に向かわせる、請求項17に記載の方法。前記ベクターが、前記HPVゲノム内のE7遺伝子を切断するために前記ヌクレアーゼを標的に向かわせる第2の標的指向性配列をさらに含む、請求項18に記載の方法。前記標的指向性配列がガイドRNAであり、ヒトゲノム内で60%超の一致を有さない、請求項19に記載の方法。前記宿主が生体ヒト患者であり、前記ステップがin vivoで行われる、請求項20に記載の方法。RNAでガイドされるヌクレアーゼ;および ウイルスのウイルス核酸内の標的部位に相補的な部分を有するRNA を含むリボ核タンパク質(RNP)を含む組成物。前記RNAでガイドされるヌクレアーゼが、CRISPR関連タンパク質およびCpf1からなる群より選択される、請求項22に記載の組成物。前記RNPを包み込むリポソームをさらに含む、請求項23に記載の組成物。前記ウイルスがヒトパピローマウイルス(HPV)である、請求項23に記載の組成物。前記標的部位が、前記HPVのゲノムのE6またはE7遺伝子内に存在する、請求項25に記載の組成物。前記RNAでガイドされるヌクレアーゼが、核局在化シグナルをさらに含む、請求項26に記載の組成物。少なくとも第2のRNPをさらに含み、前記第2のRNPは、第2のRNAでガイドされるヌクレアーゼおよび第2のRNAを含む、請求項26に記載の組成物。前記第2のRNAが、前記ウイルス核酸内の第2の標的部位に相補的な第2の部分を含み、前記第2の標的部位が、前記E6またはE7遺伝子内に存在し、前記標的部位と同じでない、請求項28に記載の組成物。前記RNPを包み込むリポソームおよび前記第2のRNPを包み込む第2のリポソームをさらに含む、請求項28に記載の組成物。前記RNAでガイドされるヌクレアーゼがCas9である、請求項28に記載の組成物。前記ウイルスに感染した細胞に送達されたときに前記ウイルス核酸を複数の位置で切断する複数のRNPをさらに含む、請求項23に記載の組成物。前記複数のRNPを包み込む複数のリポソームをさらに含む、請求項31に記載の組成物。前記標的部位に相補的な前記部分が、ヒトゲノム内で60%超の一致を有さない、請求項22〜33のいずれか一項に記載の組成物。請求項22〜33のいずれか一項に記載の組成物をin vitroで細胞または組織に送達するステップ、およびウイルス核酸を前記RNPで切断するステップを含む、細胞から外来核酸を除去する方法。

说明书全文

(関連出願への相互参照) 本出願は、2015年5月29日に出願された米国仮特許出願番号第62/168,188号の利益および優先権を主張しており、その内容は参考として援用される。

(発明の分野) 本発明は、一般に、ガイドされるヌクレアーゼ系を使用してウイルス感染を選択的に処置するための組成物および方法に関する。

(背景) ヒトパピローマウイルス、すなわちHPVは、多くの人々に感染するウイルスである。実際、75%を超える女性および男性が人生のある時点で感染する。ほとんどのHPV感染は無症候性であり、身体的症状を引き起こさないが、一部の人々では感染によって乳頭腫として公知の増殖を引き起こすことがあり、子宮頸部、外陰部、膣、陰茎、中咽頭および肛門のがんを引き起こすことさえある。特に、HPV 16およびHPV 18は、子宮頸がんのケースのおよそ70%の原因となることが知られている。

高リスク発癌性HPV型は、宿主DNAに組み込まれ、HPV E6およびE7等の遺伝子を発現することができる。E6およびE7発癌性タンパク質はp53およびpRB腫瘍抑制因子を不活性化し、HPVをがんの発症に関与させると考えられている。HPVはまた、細胞内に無期限に休眠する能を有し、処置後でさえ完全には根絶することができない潜伏段階を経る。その結果、ウイルスは感染の長期間の後に再び活性化し、その遺伝子の複製および発現を開始することができる。

(要旨) 本発明は、HPVに感染した細胞またはある特定のタイプの細胞内の、HPVゲノムを選択的に標的とするため、または標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを選択的に発現させるために使用することができる、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを使用したウイルス感染を処置する組成物および方法を提供する。HPVに感染したある特定のタイプの細胞を選択的に標的とすること、感染した細胞内のHPVゲノムを標的とすること、またはそれらの組合せにより、ヌクレアーゼはHPVゲノムを切断することができ、そのことにより、それを不活性化して作動不能とし、ウイルスが感染の潜伏段階にある場合でさえも増殖するウイルスの能力を妨害する。感染細胞を選択的に標的とすることは、例えば、ケラチノサイトに対する、細胞型特異的プロモーターを使用して行うことができ、そのような細胞は感染細胞である。ヌクレアーゼの標的に向かうことが可能な性質により、それは宿主ヒトゲノムの正常な機能を妨害することなくHPVゲノムを切断することに使用することができる。ウイルス核酸を標的とすることは、ヌクレアーゼで破壊しようとするウイルスゲノム物質を標的とし、宿主細胞ゲノムを標的としないガイドRNAなどの配列特異的部分を使用して行うことができる。一部の実施形態では、ウイルスゲノム物質を共に標的とし、それを選択的に編集または破壊するCRISPR/Cas9ヌクレアーゼおよびガイドRNA(gRNA)が使用される。gRNAは、HPVゲノムの特定部分へとCas9を標的に向かわせる。潜伏性HPVは、宿主細胞から切断され、根絶され得るので、本発明の組成物および方法は、HPV感染を処置するために、および強力にパピローマウイルスに関連する多くの有害な健康事象を未然に予防するために使用され得る。

本発明の態様は、RNAでガイドされるヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease)を含むリボ核タンパク質(RNP)およびウイルスのウイルス核酸内の標的部位に相補的な部分を有するRNAを含む組成物を提供する。RNPは、任意の細胞の外の溶液中で、活性形態で存在するということにおいて、好ましくは細胞外RNPである。

ある特定の実施形態では、RNAでガイドされるヌクレアーゼは、CRISPR関連タンパク質およびCpf1からなる群から選択される。組成物は、RNPを包み込むリポソームを含んでもよい。ウイルスは、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)であり得る。実施形態では、標的部位は、HPVのゲノムのE6またはE7遺伝子内に存在し得る。任意選択で、RNAでガイドされるヌクレアーゼは、核局在化シグナルを含むことができる。この組成物は、それ自体が第2のRNAでガイドされるヌクレアーゼおよび第2のRNAを含む、少なくとも第2のRNPを含み得る。第2のRNAは、ウイルス核酸内の第2の標的部位に相補的な第2の部分を含み、第2の標的部位は、E6またはE7遺伝子内に存在し、上記の標的部位と同じではない。組成物は、RNPを包み込むリポソームおよび第2のRNPを包み込む第2のリポソームを含んでもよい。ある特定の実施形態の1つでは、RNAでガイドされるヌクレアーゼはCas9である。

一部の実施形態では、組成物は、ウイルスに感染した細胞に送達するとウイルス核酸を複数の場所で切断する複数のRNPを含む。組成物は、複数のRNPを包み込む複数のリポソームをさらに含んでもよい。

実施形態のいずれかでは、標的部位に相補的な部分が、ヒトゲノム内において、60%超の一致を有さないことが好ましくあり得る。

本発明の態様は、細胞から外来核酸を除去する方法を提供する。この方法は、上に記載の実施形態のいずれかに従った細胞外RNPを含む組成物をin vitroで細胞または組織に送達するステップと、ウイルス核酸をRNPで切断するステップとを含む。

ある特定の態様では、本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を処置するための組成物を提供する。この組成物は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼをコードするベクターと、ヌクレアーゼをHPVゲノムへと標的に向かわせる1つまたは複数の標的指向性配列とを含む。このベクターは、ケラチノサイト内の標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列の発現を促進する誘導可能プロモーターを含んでもよい。例えば、誘導可能プロモーターは、他のタイプの宿主細胞よりも、ケラチノサイト内の標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列の発現を選択的に好むプロモーターエンハンサーカセットであり得る。標的に向かうことが可能なヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、または他の任意の好適な標的に向かうことが可能なヌクレアーゼであり得る。

好ましい実施形態では、ヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼであり、標的指向性配列(単数または複数)は、ガイドRNAを含む。標的指向性配列(単数または複数)は、E6遺伝子、E7遺伝子、その他、またはそれらの組合せ等の、HPVゲノム内の特定の遺伝子を切断するためにヌクレアーゼを標的に向かわせ得る。好ましくは、標的指向性配列は、ガイドRNAであり、ヒトゲノム内で60%超の一致を有していない。

組成物は、例えば、皮下送達系または静脈内送達系における、またはそれらを用いた、ヒト患者への送達のために、パッケージされてもよい。ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、プラスミド、ナノ粒子、カチオン性脂質、カチオン性ポリマー、金属ナノ粒子、ナノロッド、リポソーム、マイクロバブル、細胞浸透性ペプチド、またはリポスフェア(liposphere)を使用することを含み得る。

本発明の態様は、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を処置するための方法を提供する。この方法は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよびこのヌクレアーゼをHPVゲノムへと標的に向かわせる標的指向性配列を宿主細胞に導入するステップを含む。HPVゲノムは、宿主ゲノム上の遺伝子に干渉することなく、宿主細胞内のヌクレアーゼで切断される。一部の実施形態では、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列は、例えばタンパク質および1つまたは複数のガイドRNAとして、患者に(例えば、注射によってまたは静脈内に)直接導入される。ある特定の実施形態では、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列をコードするベクターを使用して導入される。本発明の方法はまた、例えば、細胞アッセイのために、in vitroでヌクレアーゼおよび標的指向性配列を導入するステップを含む。

好ましい実施形態では、宿主細胞はケラチノサイトであり、ベクターは、ケラチノサイト内の標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列の発現を促進する特徴を含む。発現を促進する特徴は、他のタイプの宿主細胞よりも、ケラチノサイト内の標的に向かうことが可能なヌクレアーゼおよび標的指向性配列の発現を選択的に好むプロモーター−エンハンサーカセットであり得る。ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼ等の任意の好適なヌクレアーゼを使用することができる。本方法の好ましい態様では、ヌクレアーゼはCas9エンドヌクレアーゼであり、標的指向性配列はガイドRNAを含む。標的指向性配列は、E6遺伝子、E7遺伝子、その他、またはそれらの組合せ等の、HPVゲノム内の特定の遺伝子を切断するためにヌクレアーゼを標的に向かわせてもよく、標的指向性配列は、ヒトゲノム内で70%超の一致を有していないガイドRNAである。

図1は、HPV感染を処置する方法を図示する。

図2は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼに対する標的を示す。

図3は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを使用したHPVゲノムを標的にしたことの結果を与える。

図4は、HPVゲノムを標的とするための組成物(composition)を示す。

図5は、Cas9陽性細胞の選択を可能にするEGFPマーカーがCas9タンパク質の後に融合されていることを示す。

図6は、プラスミドがori−Pを含むことにより、細胞内部の活性プラスミド複製が促進され、トランスフェクション効率が60%超増加したことを示す。

図7は、候補となる構造関連標的、形質転換関連標的、および潜伏関連標的が示されているEBVゲノムの概略図である。

図8は、ガイドRNA sgEBV2およびPCRプライマー位置の周辺のゲノム構成を示す。

図9は、sgEBV2により誘導された大きな欠失を示す(レーン1〜3は、それぞれ、sgEBV2処置の前、5日後、および7日後である)。

図10は、ガイドRNA sgEBV3/4/5およびPCRプライマー位置の周辺のゲノム構成を示す。

図11は、sgEBV3/5およびsgEBV4/5により誘導された大きな欠失を示す。レーン1および2は、sgEBV3/5処置の前および8日後の3F/5R PCR増幅産物である。レーン3および4は、sgEBV4/5処置の前および8日後の4F/5R PCR増幅産物である。

図12は、サンガー配列決定法により、sgEBV3/5の8日後にゲノム切断および修復ライゲーションが確認されたことを示す。

図13は、サンガー配列決定法により、sgEBV4/5の8日後にゲノム切断および修復ライゲーションが確認されたことを示す。

図14は、EBVゲノム領域において種々の組合せのガイドRNAで標的とした後の相対的細胞増殖を示す。

図15は、sgEBV1〜7で処置する前のフローサイトメトリー散乱シグナルを示す。

図16は、sgEBV1〜7で処置した5日後のフローサイトメトリー散乱シグナルを示す。

図17は、sgEBV1〜7で処置した8日後のフローサイトメトリー散乱シグナルを示す。

図18は、sgEBV1〜7で処置する前のアネキシンV Alexa647およびDAPI染色結果を示す。

図19は、sgEBV1〜7で処置した5日後のアネキシンV Alexa647およびDAPI染色結果を示す。

図20は、sgEBV1〜7で処置した8日後のアネキシンV Alexa647およびDAPI染色結果を示す。

図21および図22は、顕微鏡観察により、sgEBV1〜7での処置後にアポトーシス細胞形態が明らかになったことを示す。

図21および図22は、顕微鏡観察により、sgEBV1〜7での処置後にアポトーシス細胞形態が明らかになったことを示す。

図23は、sgEBV1〜7で処置する前の核形態を示す。

図24〜図26は、sgEBV1〜7で処置した後の核形態を示す。

図24〜図26は、sgEBV1〜7で処置した後の核形態を示す。

図24〜図26は、sgEBV1〜7で処置した後の核形態を示す。

図27は、デジタルPCRによる様々なCRISPR処置後のEBV負荷を示す。Cas9およびCas9−oriPは2つの複製物を有し、sgEBV1〜7は5つの複製物を有していた。

図28は、マイクロ流体チップに捕捉されている単一のRaji細胞を示す。

図29は、チップに捕捉されている単一のsgEBV1〜7処置細胞を示す。

図30は、処置前の単一細胞のEBV定量PCR Ct値のヒストグラムである。

図31は、sgEBV1〜7で処置した7日後の単一生存細胞のEBV定量PCR Ct値のヒストグラムである。

図32は、EBV CRISPRのSURVEYORアッセイを示す(レーンは左から右へと付番されている:レーン1:NEB 100bpラダー;レーン2:sgEBV1対照;レーン3:sgEBV1;レーン4:sgEBV5対照;レーン5:sgEBV5;レーン6:sgEBV7対照;レーン7:sgEBV7;レーン8:sgEBV4)。

図33は、CRISPR処置が、EBV陰性バーキットリンパ腫細胞株DG−75に対して細胞毒性ではなかったことを示す。

図34は、CRISPR処置が初代ヒト線維芽細胞IMR90に対して細胞毒性ではなかったことを示す。

図35は、ウイルス核酸を切断するために使用されるZFNを示す。

図36は、外来核酸を除去するために細胞3237を処理するための方法3201を図示する。

図37は、EBV特異的CRISPR/Cas9 RNPがEBV+Bリンパ腫がん細胞を特異的に死滅させることを示すための実験設計を図示する。

図38は、処置後6日間についてのEBV+がん細胞生存率を示す。

図39は、処置後6日目における各々の細胞集団の百分率を示す。

図40は、処置後3日間についての細胞生存の百分率を示す。

図41は、選択されたガイドRNAがゲノムにマッピングされる場所を示す。

図42は、Cas9での処置後の生存百分率を示す。

図43は、HPV特異的CRISPR/Cas9 RNP用量応答を示す。

図44は、HPV特異的CRISPR/Cas9 RNP経時変化を与える。

図45は、CRISPR/Cas9 RNPがDNA切断を増強することを示すゲルである。

図46は、RNPがpDNAと比較して細胞毒性が減少していることを示す。

図47は、RNPについてのHPV+がん細胞の生存率が、pDNAに対してより低いことを示す。

図48は、HPV特異的CRISPR RNPの組合せがHPV+がん細胞死滅を改善することを示す。

図49は、HPV+がん細胞を死滅させるためのプライマー設計を示す。

図50は、細胞の生存をモニターするためのプロセスを示す。

図51は、HPV−16特異的CRISPR/Cas9 pDNAがHPV−16陽性がん細胞を死滅させることを示す。

図52は、リポソームを介したCas9 RNPの送達を説明した。

図53は、リポソームに処方されたHPV特異的CRISPR/Cas9 RNPがHPV+がん細胞を阻害することを示す。

(詳細な説明) 本発明は、一般に、ケラチノサイトにおけるHPV感染への特定の適用でガイドされるヌクレアーゼ系を使用して、ウイルス感染を選択的に処置するための組成物および方法に関する。本発明の方法は、一本鎖または二本鎖切断、切断、消化または編集等のヌクレアーゼ活性を介して細胞内のウイルス核酸を無力化または損壊するために使用される。本発明の方法は、全ゲノムを再構築する確率を減少させて、ゲノム中に大きな欠失または繰り返しの欠失を体系的に引き起こすために使用され得る。

本発明の組成物および方法は、HPV感染、ならびにHPV感染の症状および帰結を処置するために提供される。HPVは、皮膚または粘膜のケラチノサイトにおいてのみ生産的感染を確立する。本発明は、潜伏性HPV感染に対する適用性を有するHPV感染に対するヌクレアーゼベースの抗ウイルス療法のための組成物および方法を提供する。

図1は、HPV感染を標的とする方法を図示する。好ましくは、本発明の組成物はケラチノサイトに送達される。臨床的に有意なHPV感染がケラチノサイトに影響を及ぼすことが理解される。in vivoにおけるHPV感染ケラチノサイトは、本発明の方法に従って処置することができる。この方法は、標的に向かうことが可能なヌクレアーゼ(例えば、タンパク質またはヌクレアーゼの遺伝子として)を得るステップを含む。ZFN、TALENまたはメガヌクレアーゼ等の、任意の好適なヌクレアーゼを使用することができる。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼはCas9である。HPVゲノム上の特定の標的へとヌクレアーゼを標的に向かわせる配列が提供される。この配列は、ケラチノサイト内で転写されて最終的なgRNAを提供する、ガイドRNAに相補的なDNAの形態であってもよい。ヌクレアーゼ遺伝子およびコードされたgRNAは、プラスミドまたはアデノウイルスベースのベクター等のDNAベクター中に提供されてもよく、ベクターは、任意選択で、ケラチノサイト特異的誘導可能プロモーターをさらに含み得る。その後、組成物は、HPV感染細胞に導入される。任意の好適なトランスフェクションまたは送達方法を使用してもよい。細胞内に入ると、遺伝子が発現され、Cas9酵素はgRNAを使用してHPVゲノムを標的とし、そしてそれを切断する。gRNAは、本明細書に記載される方法および基準に従ってヒトゲノムと一致することなくHPVゲノムに特異的であるため、この方法は宿主ゲノムを無傷に保ち、正常なヒト遺伝子機能を妨害しない。HPVの考察は、Mungerら、2004年、Mechanisms of human papillomavirus-induced oncogenesis、J Virol 78巻(21号): 11451〜11460頁およびMadkanら、2007年、The oncogenic potential of human papillomaviruses: a review on the role of host genetics and environmental cofactors、Brit J Dermatology 157巻(2号):228〜241頁に見出され、これらの各々の内容は、あらゆる目的のためにその全体が引用により取り込まれる。

組成物および方法を使用して、HPVゲノムを選択的に標的とするか、またはHPVに感染した細胞内で標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを選択的に発現させることができる。ある特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、HPV E6およびE7遺伝子を標的とするCRISPRガイドRNA配列を使用する。cas9をコードするDNAベクター等の本発明の組成物は、HBVゲノム内の特定の標的に相補的なgRNAをコードしてもよい。

図2は、CRISPRガイドRNAによって標的にされるHPVゲノムおよびHPV E6およびE7遺伝子を示す。E6およびE7タンパク質は発癌性であり得るため、それらのそれぞれの遺伝子をヌクレアーゼによる破壊の標的とすることは有用であり得る。好ましい実施形態では、各々の遺伝子は、ヌクレアーゼのプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)についてスキャンされる(例えば、Cas9について5’−NGG−3’)。遺伝子内に見出される各々の候補PAMについて、PAMに隣接する20ntが読み取られ、ヒトゲノムと比較される。20nt+PAMがヒトゲノム内で一定の基準で一致しない場合には、その20nt+PAMを標的指向性配列として使用することができる。この一致基準は、完璧ではない一致の必要条件であってもよい。好ましい実施形態では、標的指向性配列は、70%以上一致するヒトゲノム内の23nt文字列がない20nt+PAM(例えば、Cas9については23nt)である。より好ましい実施形態では、標的指向性配列は、PAMが続く20nt文字列(ヒトゲノムのこの20ntは70%以上で20ntの標的指向性配列と一致する)がヒトゲノム内にない20nt+PAMである(例えば、Cas9がヌクレアーゼである場合、14塩基またはそれを超える塩基が一致するPAMが続く、ヒトゲノムの20nt文字列があると、与えられた標的指向性配列の使用が除外されるだろう)。

HPVゲノムを切断するために標的に向かうことが可能なヌクレアーゼの使用が、in vitro CRISPRエンドヌクレアーゼアッセイによって本明細書に示される。T7ファージポリメラーゼによる転写のために、遺伝子にコードされたgRNAスキャフォールドが提供された。T7 in vitro 転写は、スキャフォールドを有する完全なガイドRNAを産生した。ゲノム標的の隣接領域を、HPV 18ゲノムDNA(Manassas、VAのATCCにより商標45152Dのもと販売されている)からPCR増幅した。in vitroエンドヌクレアーゼアッセイのために、Cas9タンパク質(Thousand Oaks、CAのPNA Bioから)、ガイドRNAおよび標的DNAを混合し、インキュベートした。消化されたDNAのDNAゲル電気泳動によって、高エンドヌクレアーゼ活性が明らかになった。

図3は、in vitro CRISPRエンドヌクレアーゼアッセイの結果を与える。4つのレーンは、E6−E7領域のPCR増幅産物(アンプリコン)およびin vitro CRISPR処理された増幅産物の生成物の結果を示す。レーン2〜4は、各々、対照に対する差を示す。レーン3は、HPVゲノムDNAの異なる質量の3つの断片への切断を示す。gRNAはE6またはE7遺伝子内で一致するように設計されているため、対応するタンパク質の発現を、ヌクレアーゼ切断によって停止させることができる。

組成物および方法を使用して、HPVに感染した細胞内で標的に向かうことが可能なヌクレアーゼを選択的に発現させることができる。HPVがケラチノサイトに感染することが理解される。例えば、引用により組み込まれる、Bossens、1992年、J Gen Virol 73巻:3269頁を参照されたい。ある特定の実施形態では、in vivoまたはin vitroでヌクレアーゼの発現を調節し、ケラチノサイト内のヌクレアーゼの発現を引き起こすプロモーター−エンハンサーカセットとともに、ヌクレアーゼが提供される。

図4は、本発明のある特定の実施形態による組成物の図を示す。この組成物は、好ましくは、少なくともヌクレアーゼ遺伝子および少なくとも1つの標的指向性配列(図4においてgRNAと標識される)を含むDNA鎖(環状または直線状、ここでは環状化されたものとして示される)を含む。この組成物は、HPV開始点等の複製の開始点を含み得る。好ましくは、この組成物は、いずれかまたは全てがケラチノサイトに特異的であってもよい、1つまたは複数のプロモーターを含む。ケラチノサイト内での発現をもたらす任意の好適なプロモーターまたはエンハンサーを使用してもよい。例えば、それぞれ、メタロチオネイン(metallothionein;MT)および誘導剤に応答する1,24−ビタミンD(3)(OH)(2)デヒドロキシラーゼ(VDH)プロモーター、カドミウムおよび1,25−ビタミンD(3)(OH)(2)(VitD(3))等の1つまたは複数の誘導可能プロモーターを含むベクター(例えば、プラスミド)内に、ヌクレアーゼが提供され得る。ケラチノサイト誘導可能プロモーターは、Mengら、2002年、 Keratinocyte gene therapy: cytokine gene expression in local keratinocytes and in circulation by introducing cytokine genes into skin、 Exp Dermatol 11巻(5号):456〜61頁に考察されており、さらなる考察は、Westergaardら、2001年、Modulation of keratinocyte gene expression and differentiation by PPAR-selective ligands and tetradecyltheioacetic acid、 J Invest Dermatol 116巻(5号):702〜12頁に見出すことができ、これらの各々の内容は引用により組み込まれる。誘導可能プロモーターはケラチノサイトに特異的であり、1つまたは好ましくは複数のgRNAは各々HPVゲノムの一部に特異的であるため、組成物を患者に投与すると、コードされた遺伝子はケラチノサイト内でのみ発現される。ヌクレアーゼは、HPVゲノムを切断するために1つまたは複数のgRNAによってガイドされる。gRNAは、特定の基準(例えば、70%以上一致しない)に従ってヒト内で一致を有さないので、宿主ゲノム機能は影響を受けない。したがって、本発明の組成物および方法は、HPV感染を処置するために使用され得る。さらに、本発明の組成物は、HPVプロモーターまたは複製開始点を含んでもよい。HPVゲノムの特徴は、ZhengおよびBaker、2006年、Papillomavirus genome structure, expression, and post-transcriptional regulation、 Front Biosci 11巻:2286〜2302頁に記載され、引用により取り込まれる。

(i.感染細胞の標的化) 図1は、ウイルスに感染した細胞を処置する方法を図示する。本発明の方法は、患者のin vivo処置に適用可能であり、潜伏ウイルス感染に関連するウイルスの遺伝子等の任意のウイルス遺伝物質を除去するために使用され得る。方法は、例えば、細胞培養物または細胞試料を調製または処理するために、in vitroで使用され得る。in vivoで使用される場合、細胞は、任意の好適な生殖系列細胞または体細胞であってもよく、本発明の組成物は、患者の身体の特定の部分に送達されてもよいか、または全身に送達されてもよい。全身的に送達される場合、本発明の組成物内に組織特異的プロモーターを含めることが好ましくあり得る。例えば、患者が肝臓に局在する潜伏性ウイルス感染を有する場合、標的ヌクレアーゼをコードするプラスミドまたはウイルスベクターに、肝臓組織特異的プロモーターが含まれてもよい。

図4には、ある特定の実施形態によるウイルス感染を処置するための組成物が示されている。組成物は、好ましくは、ヌクレアーゼと、ウイルス核酸へとヌクレアーゼを標的に向かわせる標的指向性部分(例えばgRNA)とをコードするベクター(プラスミド、直鎖状DNA、またはウイルスベクターであってもよい)を含む。組成物は、任意選択で、本明細書にさらに記載されているような、プロモーター、複製開始点、他のエレメント、またはそれらの組合せの1つまたは複数を含んでいてもよい。

(ii.ヌクレアーゼ) 本発明の方法は、プログラム可能であるか、または標的に向かわせることが可能なヌクレアーゼを使用して、ウイルス核酸を特異的に標的として破壊することを含む。例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート(CRISPR)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、他のエンドヌクレアーゼもしくはエキソヌクレアーゼ、またはそれらの組合せを含む、任意の好適な標的指向性ヌクレアーゼを使用することができる。Schiffer、2012年、Targeted DNA mutagenesis for the cure of chronic viral infections、J Virol、88巻(17号):8920〜8936頁を参照されたい。この文献は、参照により組み込まれる。

CRISPR方法論では、ガイドとしての小型RNA(gRNA)と複合体を形成して、任意のゲノム位置のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の上流にあるDNAを配列特異的な様式で切断するCRISPR関連ヌクレアーゼ(Cas9)が使用される。CRISPRは、crRNAおよびtracrRNAとして公知の別々のガイドRNAを使用することができる。このような2つの別々のRNAを組み合わせて単一のRNAにすることにより、短鎖ガイドRNA設計による部位特異的な哺乳類ゲノム切断が可能になる。Cas9およびガイドRNA(gRNA)は、公知の方法により合成することができる。Cas9/ガイドRNA(gRNA)は、非特異的DNA切断タンパク質Cas9、およびハイブリダイズしてCas9/gRNA複合体を標的に向かわせ、そして動員するRNAオリゴを使用する。Changら、2013年、Genome editing with RNA-guided Cas9 nuclease in zebrafish embryos、Cell Res、23巻:465〜472頁;Hwangら、2013年、Efficient genome editing in zebrafish using a CRISPR-Cas system、Nat. Biotechnol、31巻:227〜229頁;Xiaoら、2013年、Chromosomal deletions and inversions mediated by TALENS and CRISPR/Cas in zebrafish、Nucl Acids Res、1〜11頁を参照されたい。

CRISPR(クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート)は、細菌に見出され、ファージ感染から細菌を保護すると考えられている。CRISPRは、近年では真核生物DNAの遺伝子発現を変更するための手段として使用されているが、抗ウイルス療法またはより幅広くゲノム物質を損壊する方法としては提案されていない。むしろ、CRISPRは、標的とした細胞または細胞集団のDNAの転写を増加または減少させる手段としての挿入または欠失を導入するために使用されている。例えば、Horvathら、Science(2010年)327巻:167〜170頁;Ternsら、Current Opinion in Microbiology(2011年)14巻:321〜327頁;Bhayaら、Annu Rev Genet(2011年)45巻:273〜297頁;Wiedenheftら、Nature(2012年)482巻:331〜338頁;Jinek Mら、Science(2012年)337巻:816〜821頁;Cong Lら、Science(2013年)339巻:819〜823頁;Jinek Mら、(2013年)、eLife 2:e00471;Mali Pら、(2013年)Science、339巻:823〜826頁;Qi LSら、(2013年)Cell、152巻:1173〜1183頁;Gilbert LAら、(2013年)Cell、154巻:442〜451頁;Yang Hら、(2013年)Cell、154巻:1370〜1379頁;およびWang Hら、(2013年)Cell、153巻:910〜918頁)を参照されたい。

本発明の態様では、Cas9エンドヌクレアーゼは、ゲノムの少なくとも2つの位置で二本鎖切断を引き起こす。こうした2つの二本鎖切断は、ゲノム断片の欠失を引き起こす。ウイルス修復経路により2つの末端がアニーリングされたとしても、ゲノムは依然として欠失したままであり得る。この機序を使用した1つまたは複数の欠失は、ウイルスゲノムを無力化することになる。その結果、宿主細胞からウイルス感染がなくなることになる。

本発明の実施形態では、ヌクレアーゼは、標的ウイルスのゲノムを切断する。ヌクレアーゼは、核酸のヌクレオチドサブユニット間のリン酸ジエステル結合を切断することが可能な酵素である。エンドヌクレアーゼは、ポリヌクレオチド鎖内のリン酸ジエステル結合を切断する酵素である。デオキシリボヌクレアーゼI等、幾つかのものは、DNAを比較的非特異的に(配列に関わらず)切断するが、多くものは、典型的には制限エンドヌクレアーゼまたは制限酵素と呼ばれ、ヌクレオチド配列を非常に特異的にのみ切断する。本発明の好ましい実施形態では、Cas9ヌクレアーゼが、本発明の組成物および方法に組み込まれるが、任意のヌクレアーゼを使用することができることが理解されるべきである。

本発明の好ましい実施形態では、Cas9ヌクレアーゼを使用して、ゲノムを切断する。Cas9ヌクレアーゼは、ゲノムに二本鎖切断を生成することが可能である。Cas9ヌクレアーゼは、2つの機能性ドメインRuvCおよびHNHを有しており、各々が異なる鎖を切断する。これらドメインが両方とも活性であると、Cas9はゲノム中に二本鎖切断を引き起こす。

本発明の一部の実施形態では、ゲノムへの挿入は、無力化を引き起こすかまたはゲノム発現を変更するように設計することができる。加えて、挿入/欠失は、二本鎖切断に中途終止コードンを生成するか、またはリーディングフレームをシフトさせて二本鎖切断の下流に中途終止コードンを生成するかのいずれかにより、中途終止コードンを導入するためにも使用される。NHEJ修復経路のこうした結果はいずれも、標的遺伝子を損壊するために活用することができる。CRISPR/gRNA/Cas9系の使用により導入される変更は、ゲノムに恒久的に存続する。

本発明の一部の実施形態では、少なくとも1つの挿入は、CRISPR/gRNA/Cas9複合体により引き起こされる。好ましい実施形態では、ゲノム中に多数の挿入を引き起こすことにより、ウイルスが無力化される。本発明の態様では、挿入の数は、ゲノムが修復され得る確率を低下させる。

本発明の一部の実施形態では、少なくとも1つの欠失が、CRISPR/gRNA/Cas9複合体により引き起こされる。好ましい実施形態では、ゲノムに多数の欠失を引き起こすことにより、ウイルスが無力化される。本発明の態様では、欠失の数は、ゲノムが修復され得る確率を低下させる。非常に好ましい実施形態では、本発明のCRISPR/Cas9/gRNA系は、宿主ゲノムを無傷に保ったまま、著しいゲノム損壊を引き起こし、ウイルスゲノムの効果的な破壊をもたらす。

TALENは、本質的にあらゆる配列を標的とすることができるDNA結合ドメインに融合された非特異的DNA切断ヌクレアーゼを使用する。TALEN技術の場合、標的部位を識別し、発現ベクターを製作する。線状にされた発現ベクター(例えば、Not1により)を、mRNA合成の鋳型として使用することができる。Life Technologies(カールズバッド、米国カリフォルニア州)製のmMESSAGE mMACHINE SP6転写キット等の市販のキットを使用してもよい。JoungおよびSander、2013年、TALENs: a widely applicable technology for targeted genome editing、Nat Rev Mol Cell Bio、14巻:49〜55頁を参照されたい。

TALENおよびCRISPR法は、標的部位との1対1関係を提供する。つまり、TALEドメインの1単位のタンデムリピートが、標的部位の1つのヌクレオチドを認識し、CRISPR/Cas系のcrRNA、gRNA、またはsgRNAは、DNA標的の相補配列にハイブリダイズする。これらの方法は、1対のTALENまたは1つのgRNAを有するCas9タンパク質を使用して、標的に二本鎖切断を生成することを含み得る。その後、切断箇所は、非相同末端結合または相同組換え(HR)により修復される。

図35は、ウイルス核酸を切断するために使用されているZFNが示されている。手短に述べれば、ZFN法は、標的にされたZFN305および任意選択で少なくとも1つのアクセサリーポリヌクレオチドをコードする少なくとも1つのベクター(例えば、RNA分子)を、感染宿主細胞に導入することを含む。例えば、Weinsteinの米国特許出願公開第2011/0023144号を参照されたい。この文献は、参照により組み込まれる。細胞は、標的配列311を含む。細胞をインキュベートしてZFN305を発現させ、ZFN305により、標的とされた染色体配列311に二本鎖切断317を導入する。一部の実施形態では、ドナーポリヌクレオチドまたは交換ポリヌクレオチド321が導入される。ウイルス核酸の部分を無関連配列と交換することにより、ウイルス核酸の転写または複製を完全に妨害することができる。標的DNA311は交換ポリヌクレオチド321と共に、誤りがちな非相同末端結合DNA修復プロセスまたは相同性により導かれたDNA修復プロセスにより修復され得る。

典型的には、ZFNは、DNA結合ドメイン(つまり、ジンクフィンガー)および切断ドメイン(つまり、ヌクレアーゼ)を含み、この遺伝子は、mRNA(例えば、5’キャッピングされているか、ポリアデニル化されているか、またはその両方)として導入することができる。ジンクフィンガー結合ドメインは、選択した任意の核酸配列を認識および結合するように操作することができる。例えば、Quら、2013年、Zinc-finger-nucleases mediate specific and efficient excision of HIV-1 proviral DAN from infected and latently infected human T cells、Nucl Ac Res、41巻(16号):7771〜7782頁を参照されたい。この文献は参照により組み込まれる。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規な結合特異性を有する場合がある。操作方法としては、これらに限定されないが、合理的設計および種々のタイプの選択が挙げられる。ジンクフィンガー結合ドメインは、ジンクフィンガー認識領域(つまり、ジンクフィンガー)を介して標的DNA配列を認識するように設計することができる。例えば、米国特許第6,607,882号;第6,534,261号;および第6,453,242号を参照されたい。これら文献は、参照により組み込まれる。ジンクフィンガー認識領域を選択するための例示的な方法としては、ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系を挙げることができ、米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,410,248号;米国特許第6,140,466号;米国特許第6,200,759号;および米国特許第6,242,568号に開示されている。これら文献の各々は、参照により組み込まれる。

また、ZFNは切断ドメインを含む。ZFNの切断ドメイン部分は、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼ等の任意の好適なエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。例えば、BelfortおよびRoberts、1997年、Homing endonucleases: keeping the house in order、Nucleic Acids Res、25巻(17号):3379〜3388頁を参照されたい。切断ドメインは、切断活性に二量体化を必要とする酵素に由来していてもよい。各ヌクレアーゼが活性酵素二量体の単量体を含む場合、切断に2つのZFNが必要とされる場合がある。あるいは、単一のZFNが、活性酵素二量体を生成するための単量体を両方とも含んでいてもよい。存在する制限エンドヌクレアーゼは、配列特異的結合、および結合部位でのまたはその近傍でのDNA切断が可能であってもよい。ある特定の制限酵素(例えば、タイプIIS)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、タイプIIS酵素FokIは、二量体として活性であり、一方の鎖のその認識部位から9個のヌクレオチドで、および他方の鎖のその認識部位から13個のヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。ZFNに使用されるFokI酵素は、切断単量体とみなすことができる。したがって、FokI切断ドメインを使用する標的とされる二本鎖切断の場合、各々がFokI切断単量体を含む2つのZFNを使用して、活性酵素二量体を再構成することができる。Wahら、1998年、Structure of FokI has implications for DNA cleavage、PNAS、95巻:10564〜10569頁;米国特許第5,356,802号;米国特許第5,436,150号;米国特許第5,487,994号;米国特許出願公開第2005/0064474号;米国特許出願公開第2006/0188987号;米国特許出願公開第2008/0131962号を参照されたい。これら文献の各々は、参照により組み込まれる。

ZFNを使用したウイルス標的化は、ある配列を含む少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドを細胞内に導入することを含んでいてもよい。ドナーポリヌクレオチドは、好ましくは、染色体への組込み部位のいずれかの側と配列類似性を共有する上流配列および下流配列に隣接されている導入されるべき配列を含む。ドナーポリヌクレオチドの上流配列および下流配列は、目的の染色体配列とドナーポリヌクレオチドとの組換えを促進するように選択される。典型的には、ドナーポリヌクレオチドはDNAであり得る。ドナーポリヌクレオチドは、DNAプラスミド、バクテリア人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ウイルスベクター、DNAの線状小片、PCR断片、ネイキッド核酸であってもよく、リポソーム等の送達媒体を使用してもよい。ドナーポリヌクレオチドの配列は、エキソン、イントロン、調節配列、またはそれらの組合せを含んでいてもよい。二本鎖切断は、ドナーポリヌクレオチドとの相同組換えにより修復され、所望の配列が染色体内に組み込まれる。ZFN媒介性プロセスの場合、ZFNにより標的配列内に導入された二本鎖切断は、交換ポリヌクレオチドとの相同組換えにより修復され、交換ポリヌクレオチドの配列を標的配列の部分と交換することができる。二本鎖切断の存在は、切断の相同組換えおよび修復を促進する。交換ポリヌクレオチドは、物理的に組み込まれてもよく、あるいは切断を修復するための鋳型として交換ポリヌクレオチドを使用して、交換ポリヌクレオチドの配列情報が、標的配列のその部分の配列情報と交換されるという結果をもたらすことができる。したがって、ウイルス核酸の部分を、交換ポリヌクレオチドの配列に変換することができる。ZFN法は、ベクターを使用して、ZFNおよび任意選択で少なくとも1つの交換ポリヌクレオチドまたは少なくとも1つのドナーポリヌクレオチドをコードする核酸分子を感染細胞に送達することを含むことができる。

メガヌクレアーゼは、大型認識部位(12〜40塩基対の二本鎖DNA配列)により特徴付けられるエンドデオキシリボヌクレアーゼであり、そのため、一般的にこの部位は任意の所与のゲノムに1つしか存在しない。例えば、I−SceIメガヌクレアーゼにより認識される18塩基対配列は、偶然に1つ見出すだけでも、平均でヒトゲノムの20倍のサイズのゲノムを必要とするだろう(単一のミスマッチを有する配列は、ヒトサイズのゲノム1つ当たり約3倍見出されるが)。したがって、メガヌクレアーゼは、最も特異的な天然に存在する制限酵素であると考えられる。メガヌクレアーゼは、配列および構造モチーフに基づいて、5つのファミリーに分類することができる:LAGLIDADG、GIY−YIG、HNH、His−Cysボックス、およびPD−(D/E)XKである。最もよく研究されているファミリーは、生命界の全てに見出されているLAGLIDADGタンパク質のファミリーであり、一般的にイントロンまたはインテイン内にコードされているが、独立したメンバーも存在する。配列モチーフLAGLIDADGは、酵素活性の必須エレメントである。幾つかのタンパク質は、そのようなモチーフを1つだけ含むが、他のタンパク質はそのようなモチーフを2つ含む。いずれの場合でも、このモチーフの後には、他のファミリーメンバーとの配列類似性がほとんどないかまたは全くない約75〜200個のアミノ酸残基が続いていた。結晶構造は、以下のLAGLIDADGファミリーの配列特異性の様式および切断機序を示す:(i)伸長β鎖がDNAの主溝内に埋没することにより特異的接触が生じ、DNA結合サドルが、DNAのヘリックスのねじれを模倣するピッチおよび輪郭を有する;(ii)タンパク質とDNAとの間の完全な素結合能力は、決して完全に実現されることはない;(iii)特徴的な4−ntの3’−OH突出を生成する切断が副溝を横切って生じ、中央「4塩基」領域のDNAの歪みにより、切断を受けるリン酸結合がタンパク質触媒コアにより接近する;(iv)固有の「金属共有」パラダイムが関与することがある、提唱されている2金属機序により切断が生じる;および(v)最後に、コアα/βフォールディングの外側領域の「適応させられた(adapted)」スキャフォールドから、さらなる親和性および/または特異的接触が生じ得る。Silvaら、2011年、Meganucleases and other tools for targeted genome engineering、Curr Gene Ther、11巻(1号):11〜27頁を参照されたい。この文献は、参照により組み込まれる。

本発明の一部の実施形態では、鋳型配列がゲノム内に挿入される。ゲノムDNAにヌクレオチド改変を導入するためには、相同性により導かれた修復(HDR)の間に、所望の配列を含むDNA修複鋳型が存在しなければならない。DNA鋳型は、通常、gRNA/Cas9と共に細胞内にトランスフェクトされる。各相同性アームの長さおよび結合位置は、導入される変化のサイズに依存する。好適な鋳型が存在すると、HDRは、Cas9誘導性二本鎖切断に著しい変化を導入することができる。

本発明の一部の実施形態では、修飾型のヌクレアーゼを使用してもよい。RuvC−またはHNH−のいずれかの単一不活性触媒ドメインを含む修飾型のCas9酵素は、「ニッカーゼ」と呼ばれる。活性ヌクレアーゼドメインが1つのみで、Cas9ニッカーゼは、標的DNAの一方の鎖のみを切断し、一本鎖切断または「ニック」を生成する。不活性dCas9(RuvC−およびHNH−)と同様に、Cas9ニッカーゼは、gRNA特異性に基づいてDNAに依然として結合することができるが、ニッカーゼは、DNA鎖の一方のみを切断することになる。CRISPRプラスミドの大部分は、S.pyogenesに由来し、RuvCドメインは、D10A突然変異により不活化することができ、HNHドメインは、H840A突然変異により不活化することができる。

一本鎖切断またはニックは、通常、インタクトな相補的DNA鎖を鋳型として使用して、HDR経路により迅速に修復される。しかしながら、Cas9ニッカーゼにより導入された2つの近接した反対側の鎖のニックは、二本鎖切断として扱われ、この場合、「ダブルニック」または「二重ニッカーゼ」CRISPR系と呼ばれることが多い。ダブルニック誘導性二本鎖切断は、遺伝子標的に対する所望の効果に応じて、NHEJまたはHDRのいずれかにより修復することができる。こうした二本鎖切断にて、CRISPR/Cas9複合体により挿入および欠失が引き起こされる。本発明の態様では、欠失は、2つの二本鎖切断を互いに近接して配置することにより引き起こされ、それによりゲノムの断片の欠失が引き起こされる。

(iii.標的指向性配列) ヌクレアーゼは、ガイドRNA(gRNA)の標的特異性を使用することができる。以下で考察されるように、ガイドRNAまたは単一ガイドRNAは、ウイルスゲノムを標的とするように特異的に設計される。本明細書で使用さえる場合、標的指向性配列は、gRNA、crRNA、tracrRNA、sgRNAなどの任意の組合せを意味し得る。本発明のCRISPR/Cas9遺伝子編集複合体は、ウイルスゲノムを標的とするガイドRNAと共に最適に作用する。ガイドRNA(gRNA)(単一ガイドRNA(sgRNA)、crisprRNA(crRNA)、トランス活性化RNA(tracrRNA)、任意の他の標的指向性オリゴ、またはそれらの任意の組合せを含む)は、ウイルスゲノムの損壊を引き起こすために、CRISPR/Cas9複合体をウイルスゲノムへと導く。本発明の態様では、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、細胞内の特定のウイルスを標的とするように設計される。本発明の組成物を使用して任意のウイルスを標的とすることができることが理解されるべきである。ウイルスゲノムの特異的領域を識別することにより、CRISPR/Cas9/gRNA複合体の開発および設計が支援される。

本発明の態様では、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、細胞内の潜伏ウイルスを標的とするように設計される。細胞内にトランスフェクトされると、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、反復挿入または欠失によりゲノムの無力化を引き起こすか、または挿入または欠失の数に起因して、修復の可能性を著しく低減させる。

一例として、本発明者らは、CRISPR/Cas9/gRNA複合体を用いて、ヒトヘルペスウイルス4(HHV−4)とも呼ばれるエプスタインバーウイルス(EBV)を細胞内で不活化した。EBVは、ヘルペスファミリーのウイルスであり、ヒトにおいて最も一般的なウイルスの1つである。ウイルスは、直径がおよそ122nm〜180nmであり、タンパク質カプシドに包まれた二重らせんのDNAで構成されている。この例では、適切なin vitroモデルとして役割を果たすのは、Raji細胞株である。Raji細胞株は、造血起源からの最初の連続継代性ヒト細胞株であり、細胞株は、非通常株のエプスタインバーウイルスを産生するが、最も広範に研究されているEBVモデルの1つである。Raji細胞内のEBVゲノムを標的とするためには、EBVに対して特異性を有するCRISPR/Cas9複合体が必要とされる。

図5は、Cas9タンパク質の後に融合されたEGFPマーカーを含む組成物を示す。

EBVを標的とするCRISPR/Cas9プラスミドの設計は、Addgene,Inc.から得たU6プロモーター駆動性キメラガイドRNA(sgRNA)およびユビキタスプロモーター駆動性Cas9で構成される。本発明では、市販のガイドRNAおよびCas9ヌクレアーゼを使用することができる。Cas9タンパク質の後に融合されているEGFPマーカーにより、Cas9陽性細胞の選択を可能にした。

好ましくは、ガイドRNAは、商業的に購入したか否かに関わらず、HPVゲノムの特定の部分を標的とするように設計されている。HPV中の標的領域が識別され、HPVゲノムの選択部分を標的とするガイドRNAが開発され、本発明の組成物に組み込まれる。本発明の態様では、ガイドRNA設計には、特定のウイルス株の基準ゲノムが選択される。

EBVに関しては、例えば、B95−8株に由来する基準ゲノムを、設計指針として使用した。EBV等の、目的のゲノム内の選択領域または遺伝子が標的とされる。例えば、6つの領域を、ゲノム編集の目的が異なる7つのガイドRNA設計で標的とすることができる。

図7は、候補となる構造関連標的、形質転換関連標的、および潜伏関連標的が示されているEBVゲノムの概略図である。さらに、図7には、sgEBV1、sgEBV2、sgEBV3、sgEBV4/5、sgEBV6、およびsgEBV7が、EBVゲノムを標的とする箇所が示されている。

図7は、gRNAが参照ゲノムに沿って標的することを示しており、#は構造標的を意味しており、*は形質転換関連標的を意味しており、+は潜伏関連標的を意味している。

EBVに関して、感染の潜在モードおよび溶菌モードの両方で発現される唯一の核エプスタインバーウイルス(EBV)タンパク質は、EBNA1である。EBNA1は、潜伏感染に幾つかの重要な役割を果たすことが公知であるが、EBNA1は、遺伝子調節および潜伏ゲノム複製を含む多数のEBV機能にとって重要である。したがって、ガイドRNA sgEBV4およびsgEBV5を選択して、ゲノムのこの全領域を切除するためにEBNA1コード領域の両端を標的とした。こうした「構造」標的により、EBVゲノムを系統的により小さな小片に消化することが可能になる。EBNA3CおよびLMP1は、宿主細胞形質転換に不可欠であり、これら2つのタンパク質の5’エキソンをそれぞれ標的とするようにガイドRNA sgEBV3およびsgEBV7を設計した。

(iv.細胞への導入) 本発明の方法は、ヌクレアーゼおよび配列特異的標的指向性部分をHPV感染ケラチノサイト内に導入することを含む。ヌクレアーゼは、配列特異的標的指向性部分によりウイルス核酸を標的とし、その後、宿主ゲノムを妨害することなくウイルス核酸を切断する。任意の好適な方法を使用して、ヌクレアーゼを感染細胞または組織に送達することができる。例えば、ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼをコードする遺伝子を、注射により、経口で、または流体力学的送達により送達することができる。ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼをコードする遺伝子は、全身循環に送達してもよく、または特定の組織タイプに送達してもよく、もしくはそうでなければ局在化させてもよい。ヌクレアーゼまたヌクレアーゼをコードする遺伝子を修飾またはプログラムして、コードされているヌクレアーゼが、ある特定の組織タイプで優先的にまたはある特定の組織タイプでのみ転写されるように組織特異的プロモーターを使用することによる等の、ある特定の条件下でのみ活性化させてもよい。

一部の実施形態では、特異的なCRISPR/Cas9/gRNA複合体が細胞内に導入される。ガイドRNAは、ウイルスゲノムの少なくとも1つのカテゴリーの配列を標的とするように設計される。潜伏感染に加えて、本発明は、パッケージングにされる前に、または放出された後にウイルスゲノムを標的とすることにより、ウイルス複製を能動的に制御するために使用することもできる。

一部の実施形態では、ガイドRNAのカクテルを細胞内に導入してもよい。ガイドRNAは、ウイルスゲノムの多数のカテゴリーの配列を標的とするように設計される。ゲノムに沿って幾つかの領域を標的とすることにより、複数位置での二本鎖切断は、ゲノムを断片化し、修復の可能性を低下させる。修復機構が働いたとしても、こうした大きな欠失は、ウイルスを無力化する。

一部の実施形態では、幾つかのガイドRNAを添加して、異なるカテゴリーの配列を標的とするカクテルが生成される。例えば、2、5、7、または11個のガイドRNAが、3つの異なるカテゴリーの配列を標的とするCRISPRカクテル中に存在してもよい。しかしながら、任意の数のgRNAをカクテルに導入して、配列のカテゴリーを標的とすることができる。好ましい実施形態では、配列のカテゴリーは、それぞれ、ゲノム構造、宿主細胞形質転換、および潜伏感染性にとって重要である。

本発明の一部の態様では、in vitro実験により、ウイルスゲノム内の最も必須な標的を決定することが可能である。例えば、ゲノムを効果的に無力化するために最も必須な標的を理解するために、ガイドRNAのサブセットをモデル細胞内にトランスフェクトする。アッセイにより、どのガイドRNAまたはどのカクテルが、必須なカテゴリーの配列を標的とするのに最も効果的であるかを決定することができる。

例えば、EBVゲノムを標的とする場合、CRISPRカクテル中の7個のガイドRNAが、それぞれEBVゲノム構造、宿主細胞形質転換、および潜伏感染性にとって重要であると識別されている3つの異なるカテゴリーの配列を標的とした。効果的なEBV処置に最も必須な標的を理解するために、ガイドRNAのサブセットをRaji細胞にトランスフェクトした。sgEBV4/5は、EBVゲノムを85%低減したが、完全カクテルほど効果的には細胞増殖を抑制することができなかった(図14)。構造配列を標的とするガイドRNA(sgEBV1/2/6)は、EBV負荷を完全には除去しなかったが(26%の減少)、細胞増殖を完全に中止させることができた。ゲノム編集の効率が高いことおよび増殖が停止したことを考慮すると、sgEBV1/2/6の残留EBVゲノム痕跡は、インタクトなゲノムに起因するのではなく、EBVゲノムから消化された遊離の浮遊DNA、つまり偽陽性であると疑われた。

CRISPR/Cas9/gRNA複合体を構築したら、複合体を細胞内に導入する。複合体は、in vitroモデルまたはin vivoモデルの細胞内に導入することができることが理解されるべきである。本発明の態様では、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、トランスフェクション後にウイルスのインタクトなゲノムを残さないように設計され、複合体は、効率的なトランスフェクションのために設計される。

本発明の態様では、ウイルスベクターおよび非ウイルスベクターを含む種々の方法によりCRISPR/Cas9/gRNAを細胞内にトランスフェクトすることが可能である。ウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを挙げることができる。任意のウイルスベクターを本発明に組み込んで、細胞内へのCRISPR/Cas9/gRNA複合体の送達を達成することができることが理解されるべきである。消化または無力化のために設計されたCRISPR/Cas9/gRNA複合体によっては、幾つかのウイルスベクターは、他のものよりも効果的であり得る。本発明の態様では、ベクターは、宿主細胞でベクターを複製および維持するのに必要な複製開始点等の必須成分を含む。

本発明の態様では、ウイルスベクターを送達ベクターとして使用して、複合体を細胞内に送達する。送達ベクターとしてのウイルスベクターの使用は、当技術分野で公知である。例えば、Wilkesらの米国特許出願公開第2009/0017543号を参照されたい。この文献の内容は、参照により組み込まれる。

レトロウイルスは、その核酸をmRNAゲノムの形態(5’キャップおよび3’PolyA尾部を含む)で格納し、偏性寄生体として宿主細胞を標的とする一本鎖RNAウイルスである。当技術分野の一部の方法では、核酸を細胞内に導入するためにレトロウイルスが使用されてきた。ウイルスは、宿主細胞の細胞質内部に入ると、それ自体の逆転写酵素を使用してそのRNAゲノムからDNAを産生する。これは、通常のパターンの逆であり、したがってレトロ(逆方向)である。その後、この新しいDNAは、インテグラーゼ酵素により宿主細胞ゲノムに組み込まれ、その時点で、このレトロウイルスDNAは、プロウイルスと呼ばれる。例えば、モロニーマウス白血病ウイルス等の組換えレトロウイルスは、安定的した様式の宿主ゲノム内への組込み能力を有する。それらは、宿主ゲノム内への組込みを可能にする逆転写酵素を含む。レトロウイルスベクターは、複製可能または複製欠損のいずれであってもよい。本発明の一部の実施形態では、細胞内へのトランスフェクションを達成にするためにレトロウイルスが組み込まれるが、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、ウイルスゲノムを標的とするように設計される。

本発明の一部の実施形態では、レトロウイルスのサブクラスであるレンチウイルスが、ウイルスベクターとして使用される。レンチウイルスは、非分裂細胞のゲノム内への組込み能力を考慮すると、送達媒体(ベクター)として適合することができる。これは、他のレトロウイルスは分裂する細胞にしか感染することができないため、レンチウイルスに固有な特徴である。RNAの形態のウイルスゲノムは、ウイルスが細胞に進入してDNAを産生する際に逆転写され、その後ウイルスのインテグラーゼ酵素により無作為位置でゲノム内に挿入される。この時点ではプロウイルスと呼ばれるベクターは、ゲノムに残留し、細胞が分裂するときに細胞の子孫に受け継がれる。

レンチウイルスとは対照的に、アデノウイルスDNAは、ゲノムに組み込まれず、細胞分裂の間には複製されない。アデノウイルスおよび関連AAVは、宿主のゲノム内に組み込まれないため、送達ベクターとして使用され得る。本発明の一部の態様では、標的とされるウイルスゲノムだけが、CRISPR/Cas9/gRNA複合体により影響を受け、宿主の細胞は影響を受けない。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトおよび幾つかの他の霊長類種に感染する小型ウイルスである。AAVは、分裂する細胞および分裂しない細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のゲノム内に組み込むことができる。例えば、遺伝子治療ベクターとしての使用に有望であるため、自己相補性アデノ随伴ウイルス(scAAV)と呼ばれる改変型AAVが研究者により生成されている。AAVは、DNAの一本鎖をパッケージングしており、第2鎖の合成プロセスを必要とするが、scAAVは、両鎖をパッケージングしており、それらは共にアニーリングして二本鎖DNAを形成する。第2鎖の合成を省くことにより、scAAVは、細胞内での迅速な発現が可能になる。それ以外については、scAAVは、その対応するAAVの多くの特徴を有している。さらに、またはあるいは、本発明の方法および組成物は、送達ベクターの手段として、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、またはワクシニアウイルスを使用することができる。

本発明のある特定の実施形態では、非ウイルスベクターを使用して、トランスフェクションを達成することができる。核酸の非ウイルス送達法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、およびDNAの作用剤増強性取り込みが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号、および第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、TransfectamおよびLipofectin)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性および中性脂質としては、Jesseeの米国特許第7,166,298号またはJesseの米国特許第6,890,554号に記載されているものが挙げられ、これら文献の各々の内容は、参照により組み込まれる。送達は、細胞に対してであってもよく(例えば、in vitroまたはex vivo投与)、または標的組織に対してでもよい(例えば、in vivo投与)。

合成ベクターは、典型的には、負荷電の核酸と複合体を形成して100nm程度の直径を有する粒子を形成することができるカチオン性脂質またはポリマーに基づく。複合体は、ヌクレアーゼによる分解から核酸を保護する。さらに、細胞および局所送達戦略は、内部移行、放出、および適切な細胞内コンパートメント中の分配の必要性に対処しなければならない。全身送達戦略は、さらなるハードル、例えば、カチオン性送達媒体と血液成分との強力な相互作用、細網内皮系による取り込み、腎臓ろ過、目的の細胞に対する担体の毒性および標的指向能力に遭遇する。カチオン性非ウイルスの表面を修飾することにより、血液成分とのそれらの相互作用を最小限に抑え、細網内皮系取り込みを低減し、それらの毒性を低減し、標的細胞とのそれらの結合親和性を増加させることができる。血漿タンパク質との結合(オプソニン化とも称される)は、RESが循環ナノ粒子を認識する主要機序である。例えば、肝臓のクッパー細胞等のマクロファージは、スカベンジャー受容体を介してオプソニン化されたナノ粒子を認識する。

本発明の一部の実施形態では、非ウイルスベクターは、標的送達およびトランスフェクションを達成するように修飾される。ペグ化(つまり、表面をポリエチレングリコールで修飾すること)は、非ウイルスベクターのオプソニン化および凝集を低減し、細網内皮系によるクリアランスを最小限に抑えて、静脈内(i.v.)投与後の循環寿命延長をもたらすために使用される主要な方法である。したがって、ペグ化ナノ粒子は、「ステルス」ナノ粒子と呼ばれることが多い。循環から迅速にクリアランスされないナノ粒子は、感染細胞に遭遇する機会を得ることになる。

しかしながら、表面のPEGは、標的細胞による取り込みを減少させ、生物学的活動を低減させる場合がある。したがって、ペグ化成分の遠位端部に標的指向性リガンドを付加することが必要であり、標的細胞表面の受容体との結合が可能になるように、PEG「シールド」を越えてリガンドを突出させる。カチオン性リポソームを遺伝子担体として使用する場合、核酸の放出には、六方相形成を促進してエンドソーム脱出を可能にすること以外に、中性ヘルパー脂質の応用が有用である。本発明の一部の実施形態では、核酸を全身送達するための、および実験動物モデルにおいて治療効果を得るための、中性またはアニオン性リポソームが開発される。また、新規のカチオン性脂質およびポリマー、およびペプチドと共有結合または非共有結合で結合する遺伝子、標的指向性リガンド、ポリマー、または環境感受性部分の設計および合成も、非ウイルスベクターが遭遇する問題の解決のために注目されている。無機ナノ粒子(例えば、金属ナノ粒子、酸化鉄、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸マンガン、複水酸化物、カーボンナノチューブ、および量子ドット)を送達ベクターに施したものを調製し、多くの異なる様式で表面官能化することができる。

一部の実施形態では、複合体は、中でもリポソーム、アルブミンに基づく粒子、ペグ化タンパク質、生分解性ポリマー薬物複合材料、ポリマーミセル、デンドリマー等の全身療法用のナノ系にコンジュゲートされる。Davisら、2008年、Nanotherapeutic particles: an emerging treatment modality for cancer、Nat Rev Drug Discov.、7巻(9号):771〜782頁を参照されたい。この文献は、参照により組み込まれる。リポソーム等の長期循環巨大分子担体では、増強された透過性、および腫瘍血管からの優先的血管外漏出に対する保持効果を活用することができる。ある特定の実施形態では、本発明の複合体は、細胞への送達用のリポソームまたはポリマーソーム(polymerosome)にコンジュゲートされているか、または封入されている。例えば、リポソームアントラサイクリンは、非常に効率的な封入化を達成しており、リポソームダウノルビシンおよびペグ化リポソームドキソルビシン等の超長期循環性を有する型が挙げられる。Krishnaら、Carboxymethylcellulose-sodium based transdermal drug delivery system for propranolol、J Pharm Pharmacol.、1996年4月;48巻(4号):367〜70頁を参照されたい。

リポソーム送達系は、安定製剤を提供し、薬物動態の向上、および組織に対するある程度の「受動的」または「生理学的」標的指向性を提供する。有望な化学治療剤等の親水性および疎水性物質の封入化は公知である。例えば、以下の文献を参照されたい:Schneiderの米国特許第5,466,468号、合成脂質を含む非経口投与可能なリポソーム製剤が開示されている;Hostetlerらの米国特許第5,580,571号、リン脂質にコンジュゲートされているヌクレオシド類似体が開示されている;Nyqvistの米国特許第5,626,869号、薬学的活性化合物が、少なくとも1つの両親媒性成分および極性脂質成分および少なくとも1つの無極性脂質成分を含む限定脂質系に含まれているヘパリンまたはその断片である医薬組成物が開示されている。

リポソームおよびポリマーソームは、複数の溶液および化合物を含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、本発明の複合体は、ポリマーソームとカップリングされているか、またはポリマーソームに封入されている。人工小胞の一種としてのポリマーソームは、溶液を取り囲む極小中空球体であり、両親媒性合成ブロックコポリマーを使用して小胞膜を形成することにより製作される。一般的なポリマーソームは、それらのコアに水溶液を含有し、薬物、酵素、他のタンパク質およびペプチド、ならびにDNAおよびRNA断片等の感受性分子を封入し、保護するのに有用である。ポリマーソーム膜は、生物学的系に見出されるもの等の、外部物質から封入した物質を隔離する物理的障壁を提供する。ポリマーソームは、公知の技法により複乳剤から生成することができる。Lorenceauら、2005年、Generation of Polymerosomes from Double-Emulsions、Langmuir、21巻(20号):9183〜6頁を参照されたい。この文献は、参照により組み込まれる。

本発明の態様は、送達ベクターの使用を数多く提供する。送達ベクターの選択は、標的とされている細胞または組織、およびCRISPR/Cas9/gRNAの特定の組成に基づく。例えば、上記で考察されているEBVの例では、リンパ球は、リポフェクションに抵抗性であることが公知であるため、Raji細胞内へのDNA送達には、ヌクレオフェクション(Nucleofectorと呼ばれるデバイスにより生成される電気的パラメータと、細胞核内および細胞質内に基質を直接移行させる細胞タイプ特異的試薬との組合せ)が必要であった。Lonza pmaxプロモーターは、Cas9発現を駆動する。それは、このプロモーターがRaji細胞内での強力な発現をもたらしていたためである。ヌクレオフェクションの24時間後、蛍光顕微鏡で、少数の細胞から明白なEGFPシグナルが観察された。しかしながら、EGFP陽性細胞集団は劇的に減少し、ヌクレオフェクションの48時間後に10%未満のトランスフェクション効率が測定された。

図6は、Raji細胞におけるトランスフェクション効率に対するoriPの影響を示す。EBV複製開始点配列oriPを含んでいたCRISPRプラスミドは、60%超のトランスフェクション効率をもたらした。

本発明の態様は、CRISPR/Cas9/gRNA複合体および標的指向性送達を使用する。一般的で公知の経路としては、経皮経路、経粘膜(transmucal)経路、経鼻経路、経眼経路、経肺経路が挙げられる。薬物送達系はとしては、リポソーム、プロリポソーム、ミクロスフェア、ゲル、プロドラッグ、シクロデキストリン等を挙げることができる。本発明の態様では、肺の特定部位または細胞集団を標的とするためのエアロゾルに移行されることになる、生分解性ポリマーで構成されているナノ粒子が使用され、所定の様式での薬物放出および許容される期間内での分解が提供される。経皮的および径粘膜的制御放出送達系、鼻およびバッカルエアゾルスプレー、薬物含浸ロゼンジ、封入細胞、経口柔質ゲル、皮膚を介して薬物を投与するイオントフォレーシスデバイス、ならびに様々なプログラム可能な移植薬物送達デバイス等の制御放出技術(CRT)を、本発明の複合体と共に使用して、標的指向性制御送達が達成される。

(v.ウイルス核酸切断) CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、細胞内部に入ると、ウイルスゲノムを標的とする。本発明の態様では、複合体は、ウイルスゲノムへと標的化されている。潜伏感染に加えて、本発明を使用して、パッケージングにされる前にまたは放出された後にウイルスゲノムを標的とすることにより、ウイルス複製を能動的に制御することもできる。一部の実施形態では、本発明の方法および組成物は、Cas9等のヌクレアーゼを使用して潜伏ウイルスゲノムを標的とし、それにより増殖の機会を低減させる。

図3は、E6についてはgRNAでありE7についてはgRNAであるCas9エンドヌクレアーゼを用いたHPVゲノムの成功裏の切断の結果を示す。ヌクレアーゼは、gRNA(例えば、crRNA+tracrRNAまたはsgRNA)と複合体を形成する。複合体は、ウイルス核酸を標的化様式で切断して、ウイルスゲノムを無力化する。Cas9エンドヌクレアーゼは、ウイルスゲノムの二本鎖切断を引き起こす。ウイルスゲノムに沿った幾つかの位置を標的とし、一本鎖切断ではなく二本鎖切断を引き起こすことにより、ゲノムに沿った幾つかの位置でゲノムが効果的に切断される。好ましい実施形態では、二本鎖切断は、天然の修復機構がゲノムを共に接合した場合であってもゲノムが無力化されるように、小型の欠失が引き起こされるか、または小さな断片がゲノムから除去されるように設計されている。

ケラチノサイト内への導入後、CRISPR/Cas9/gRNA複合体は、HPVゲノム、遺伝子、転写物、または他のウイルス核酸に作用する。CRISPRにより生成された二本鎖DNA切断は、修復されて小型の欠失がもたらされる。こうした欠失は、タンパク質コードを中断し、したがってノックアウト効果を発揮することになる。

ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼをコードする遺伝子は、トランスフェクションにより感染細胞内に送達することができる。例えば、感染ケラチノサイトに、Cas9およびgRNAをコードするDNAをトランスフェクトすることができる(単一の小片または別々の小片で)。gRNAは、ウイルスゲノムに沿って1つまたは幾つかの位置にCas9エンドヌクレアーゼを局在化させるように設計される。Cas9エンドヌクレアーゼは、ゲノム中に二本鎖切断を引き起こし、ウイルスゲノムから小断片を欠失させる。欠失は、修復機構が働いたとしても、ウイルスゲノムを無力化する。

(vi.宿主ゲノム) 本発明の方法および組成物は、宿主遺伝物質を妨害せずにウイルス核酸を標的とするために使用することができることが理解される。本発明の方法および組成物は、ウイルス配列内の標的にハイブリダイズする配列を有するガイドRNA等の標的指向性部分を使用する。本発明の方法および組成物は、gRNAを使用して、排他的にウイルスゲノムと結合し、二本鎖を切断することによりウイルス配列を宿主から除去するcas9酵素等の標的に向かうヌクレアーゼまたはそのようなヌクレアーゼをコードするベクターをさらに使用してもよい。

標的指向性部分がガイドRNAを含む場合、gRNAの配列またはガイド配列は、ウイルス配列を調査して、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接し、しかもプロトスペーサーモチーフに隣接する宿主ゲノムには出現しない約20個のヌクレオチドの領域を見出すことにより決定することができる。

好ましくは、ガイド配列は、ガイド配列に従って製作されるgRNA/cas9複合体が、宿主ゲノムを妨害することなく、ウイルス配列の指定の特徴または標的と結合しそれらを消化することになるように、ある特定の類似性基準(例えば、PAMにより近い領域に向かってバイアスのかかった同一性と少なくとも60%同一であること)を満たす。好ましくは、ガイドRNAは、ウイルス配列中のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)(例えば、NGG、この場合Nは任意のヌクレオチドである)の次のヌクレオチド文字列に対応する。好ましくは、宿主ゲノムは、(1)所定の類似性基準によるヌクレオチド文字列が一致し、(2)またPAMに隣接するあらゆる領域を欠如する。所定の類似性基準は、例えば、PAMの5’側にある20個ヌクレオチド内に少なくとも12個の一致ヌクレオチドがあるという要件を含んでいてもよく、また、PAMの5’側にある10個ヌクレオチド内に少なくとも7個の一致ヌクレオチドがあるという要件を含んでいてもよい。注釈付きウイルスゲノム(例えば、GenBankからの)を使用して、ウイルス配列の特徴を識別し、ウイルス配列の選択特徴(例えば、ウイルス複製開始点、末端反復、複製因子結合部位、プロモーター、コード配列、または反復領域)内のウイルス配列のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の次のヌクレオチド文字を見出してもよい。ウイルス配列および注釈は、ゲノムデータベースから得ることができる。

複数の候補gRNA標的がウイルスゲノムに見出される場合、ガイドRNAの鋳型である配列の選択は、ガイド配列としての標的特徴に最も近いかまたは最も5’端にある候補標的を優先してもよい。選択は、好ましくは、中間的な(例えば、40%〜60%の)GC含量を有する配列を優先的に選んでもよい。エンドヌクレアーゼによるRNA指向性標的化に関するさらなる背景は、以下の文献で考察されている:米国特許出願公開第2015/0050699号;米国特許出願公開第20140356958号;米国特許出願公開第2014/0349400号;米国特許出願公開第2014/0342457号;米国特許出願公開第2014/0295556号;および米国特許出願公開第2014/0273037号。これら文献の各々の内容は、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。感染細胞にヒトゲノムのバックグラウンドが存在するため、ウイルスゲノムに対する効率が高く、ヒトゲノムに対するオフターゲット効果が低いことを保証するための1組のステップが提供される。こうしたステップは、(1)ウイルスゲノム内の標的を選択すること、(2)宿主ゲノムのPAM+標的配列を回避すること、(3)株間で保存されているウイルス標的を方法論的に選択すること、(4)適切なGC含量を有する標的を選択すること、(5)細胞でのヌクレアーゼ発現を制御すること、(6)ベクターを設計すること、(7)アッセイで検証すること等、およびそれらの種々の組合せを含んでいてもよい。標的指向性部分(ガイドRNA等)は、好ましくは、(i)潜伏関連標的、(ii)感染および症状関連標的、および(iii)構造関連標的等の、ある特定のカテゴリー内の標的と結合する。

gRNAの第1のカテゴリーの標的は、潜伏関連標的を含む。ウイルスゲノムは、潜伏を維持するためにある特定の特徴を必要とする。こうした特徴としては、これらに限定されないが、マスター転写制御因子、潜伏特異的プロモーター、宿主細胞と情報交換するシグナル伝達タンパク質等が挙げられる。宿主細胞が潜伏中に分裂している場合、ウイルスゲノムは、複製系がゲノムのコピーレベルを維持することが必要である。ウイルス複製開始点、末端反復、および複製開始点に結合する複製因子は、良好な標的である。こうした特徴の機能が妨害されると、ウイルスが再活性化し、それは、従来の抗ウイルス療法で処置することができる。

gRNAの第2のカテゴリーの標的は、感染関連および症状関連の標的を含む。ウイルスは、感染を促進するための種々の分子を産生する。ウイルスは、宿主細胞に進入すると、溶菌サイクルを開始し、それにより細胞死および組織損傷(HBV)を引き起こし得る。HPV16等のある特定の場合では、細胞産物(E6およびE7タンパク質)は、宿主細胞を形質転換し、がんを引き起こし得る。こうした分子を産生する重要なゲノム配列(プロモーター、コード配列等)を妨害すると、さらなる感染を予防することができ、および/またはその疾患の症状を治癒しないとしても、緩和することができる。

gRNAの第3のカテゴリーの標的は、構造関連標的を含む。ウイルスゲノムは、ゲノム統合、複製、または他の機能を支援する反復領域を含む場合がある。反復領域を標的とすると、ウイルスゲノムを切断して複数の小片にすることができ、それによりゲノムは物理的に破壊される。

ヌクレアーゼがcasタンパク質である場合、標的指向性部分は、ガイドRNAである。各casタンパク質は、標的とされた配列の次の特定のPAM(ガイドRNAのではない)を必要とする。これは、ヒトゲノム編集の場合と同じある。現在の理解では、ガイドRNA/ヌクレアーゼ複合体は、まずPAMに結合し、その後ガイドRNAと標的ゲノムとの間の相同性を探索する。Sternbergら、2014年、DNA interrogation by the CRISPR RNA-guided endonuclease Cas9、Nature、507巻(7490号):62〜67頁。DNAは、認識されると、PAMの3−nt上流で消化される。こうした結果は、オフターゲット消化が起こるためには、宿主DNAにPAMが存在し、かつガイドRNAとPAM直前の宿主ゲノムとの間の親和性が高いことが必要であることを示唆している。

高度に保存されているウイルスゲノムの部分を標的とする標的指向性部分を使用することが好ましい場合がある。ウイルスゲノムは、ヒトゲノムよりもはるかに変異性が高い。異なる株を標的とするために、ガイドRNAは、好ましくは、保存された領域を標的とすることになる。PAMは、最初の配列認識にとって重要であるため、保存された領域にPAMを有することも不可欠である。

好ましい実施形態では、本発明の方法を使用して、核酸を細胞に送達する。細胞に送達される核酸は、決定されたガイド配列を有するgRNAを含んでいてもよく、または核酸は、標的遺伝物質に対して作用することになる酵素をコードするプラスミド等のベクターを含んでいてもよい。その酵素が発現されることにより、標的遺伝物質の分解またはそうでなければ妨害が可能になる。酵素は、Cas9エンドヌクレアーゼ等のヌクレアーゼであってもよく、また、核酸は、決定されたガイド配列を有する1つまたは複数のgRNAをコードしていてもよい。

gRNAにより、ヌクレアーゼは、標的遺伝物質を標的とする。標的遺伝物質がウイルスゲノムを含む場合、そのゲノムの一部分に相補的なgRNAは、ヌクレアーゼによるそのゲノムの分解(degredation)を誘導することができ、それにより、インタクトなウイルスゲノムのさらなる複製が一切防止されるか、またはさらに細胞から完全に除去される。こうした手段により、潜伏ウイルス感染を標的として根絶することができる。

宿主細胞は、特定の細胞タイプによっては、異なる速度で増殖する場合がある。迅速な細胞複製にはヌクレアーゼの発現が高いことが必要であるが、未感染細胞のオフターゲット切断を回避するには、発現は低い方が役に立つ。ヌクレアーゼ発現の制御は、幾つかの態様により達成することができる。ヌクレアーゼがベクターから発現される場合、ベクターがウイルス複製開始点を有することにより、ベクターのコピー数を感染細胞でのみ劇的に増加させることができる。各プロモーターは、異なる組織では異なる活性を有する。遺伝子転写は、異なるプロモーターを選択することにより調整することができる。また、転写物およびタンパク質安定性は、安定化または不安定化モチーフ(ユビキチン標的指向性配列等)を配列に組み込むことにより調整することができる。

gRNA配列、ヌクレアーゼ(例えば、cas9)、他のエレメント、またはそれらの組合せに対する特異的プロモーターを使用してもよい。例えば、一部の実施形態では、gRNAは、U6プロモーターにより駆動される。タンパク質発現用のプロモーターを含むベクターを設計してもよい(例えば、Lonza Group Ltd(バーゼル、スイス)によりPMAXCLONINGという商標名で販売されているベクターに記載されているプロモーターを使用して)。ベクターは、プラスミドであってもよい(例えば、合成機器255および組換えDNA実験装置で生成される)。ある特定の実施形態では、プラスミドは、U6プロモーター駆動性gRNAまたはキメラガイドRNA(sgRNA)およびユビキタスプロモーター駆動性cas9を含む。任意選択で、ベクターは、後にcas9+細胞を選択することを可能にするために、cas9タンパク質の後に融合されているEGFP等のマーカーを含んでいてもよい。cas9は、gRNA(元の細菌系のCRISPR RNA(crRNA)と類似している)を、相補的なtrans活性化crRNA(tracrRNA)と共に使用して、gRNAに相補的なウイルス配列を標的とすることができることが理解される。cas9は、単一のRNA分子、gRNAおよびtracrRNAのキメラでプログラムすることができることも示されている。単一ガイドRNA(sgRNA)は、プラスミドにコードすることができ、sgRNAの転写は、cas9のプログラミングおよびtracrRNAの機能を提供することができる。背景については、Jinek、2012年、A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity、Science、337巻:816〜821頁、および特にこの文献の図5Aを参照されたい。

上記の原理を使用すると、本発明の方法および組成物を使用して、宿主ゲノムに悪影響を及ぼさずに、感染宿主のウイルス核酸を標的とすることができる。

さらなる背景は、Hsu、2013年、DNA targeting specificity of RNA-guided Cas9 nucleases、Nature Biotechnology、31巻(9号):827〜832頁;およびJinek、2012年、A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity、Science、337巻:816〜821頁を参照されたい。これら文献の各々の内容は、参照により組み込まれる。標的位置は、(i)潜伏関連標的(ii)感染および症状関連標的、または、(iii)構造関連標的等の、ある特定のカテゴリー内にあるものが選択されるため、これら配列を切断することにより、ウイルスが不活化され、宿主からウイルスが除去される。標的指向性RNA(gRNAまたはsgRNA)は、ウイルス遺伝子配列の標的と一致するが、宿主ゲノムと一致する一切のオフターゲットを起こさないという類似性基準を満たすように設計されているため、潜伏ウイルス遺伝物質は、宿主ゲノムを一切妨害せずに宿主から除去される。

(vii.組成物) 図36は、RNAでガイドされるヌクレアーゼ3205およびウイルスのウイルス核酸内の標的部位に相補的な部分を有するRNA 3213を含むリボ核タンパク質(RNP)3231を含む組成物3230を示す。RNPは、任意の細胞の外の溶液中で、活性形態で存在するという点において、好ましくは細胞外RNPである。RNAでガイドされるヌクレアーゼ3205は、Cas9またはCpf1等のCRISPR関連タンパク質であってもよい。図52は、RNP 3231を包み込むリポソーム5215を示す。図53は、リポソーム5215内に包み込まれたRNP 3231が、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した細胞に送達されると、初期遺伝子、特にE6およびE7内のHPVのウイルス核酸を切断する組成物の実施形態を提供することを示す。図53および図51に示されるように、初期遺伝子(E6およびE7)内の複数の部位を標的とするガイドRNAと共に複数のRNPが送達されると、組成物はHPV+がん細胞を死滅させることについて、有効である。図36は、細胞内の外来核酸を切断する(切断産物が代謝経路に入る可能性があるため、外来核酸を効果的に除去する)方法3201を示す。この方法は、上に記載の任意の実施形態に従った細胞外RNP 3231を含む組成物3230を、in vitroで細胞3259または組織に、または患者に送達するステップ、およびウイルス核酸をRNPで切断するステップを含む。

一部の実施形態では、本発明は、局所適用(例えば、in vivo、人の皮膚に直接)のための組成物3230を提供する。組成物は、表面に(例えば、局所的に)適用されてもよい。この組成物はヌクレアーゼ3205またはその遺伝子を提供し、医薬的に許容される希釈剤、アジュバントまたは担体を含む。好ましくは、主題の発明に従って使用される担体は、米国食品医薬品局(FDA)などの管轄権を有する政府機関によって、動物またはヒトの使用のために認可されている。例としては、リン酸緩衝食塩水、生理食塩水、水、および油/水エマルジョン等のエマルジョンが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。担体は、例えば、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であってよい。これらの製剤には、約0.01%〜約100%、好ましくは約0.01%〜約90%のMFB抽出物、残りの約0%〜約99.99%、好ましくは約10%〜約99.99%の許容可能な担体または他の賦形剤が含まれる。より好ましい製剤には、約10%までのMFB抽出物および約90%またはそれ超の担体または賦形剤が含まれる一方で、典型的で最も好ましい組成物には、約5%のMFB抽出物および約95%の担体または他の賦形剤が含まれる。製剤は、当業者に周知であり、そして容易に利用可能な多くの情報源に記載されている。

(参照による組込み) 本開示の全体にわたって、特許、特許出願、特許公報、ジャーナル、本、論文、ウェブコンテンツ等の他の文献が参照および引用されている。そのような文献は全て、それらの全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。

(均等物) 本明細書に図示および記載されているものに加えて、本発明およびその多数のさらなる実施形態に対する種々の改変は、当業者であれば、本明細書に引用されている科学文献および特許文献への参照を含む本書類の完全な内容から明白になる。本明細書の主題は、種々の実施形態およびその均等物にて本発明を実施するために応用することができる重要な情報、例示、および指針を含む。

(実施例1) 標的EBV バーキットリンパ腫細胞株Raji、Namalwa、およびDG−75を、ATCCから取得し、ATCCの推奨に従って10%FBSおよびPSAで補完されたRPMI1640で培養した。ヒト原発性肺線維芽細胞IMR−90を、Coriellから取得し、10%FBSおよびPSAで補完されたアドバンストDMEM/F−12で培養した。

Cong Lら、(2013年)、Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems.、Science、339巻:819〜823頁に記載されているような、U6プロモーター駆動性キメラガイドRNA(sgRNA)およびユビキタスプロモーター駆動性Cas9からなるプラスミドは、addgeneから得た。Cas9タンパク質の後に融合されているEGFPマーカーで、Cas9陽性細胞の選択を可能にした(図5)。本発明者らは、より効率的なPol−III転写およびより安定的なステム−ループ構造のために修飾型キメラガイドRNA設計を採用した(Chen Bら、(2013年)、Dynamic Imaging of Genomic Loci in Living Human Cells by an Optimized CRISPR/Cas System.、Cell、155巻:1479〜1491頁)。

本発明者らは、pX458をAddgene,Inc.から得た。合成イントロン(pmax)を有する修飾CMVプロモーターを、Lonza対照プラスミドpmax−GFPからPCRで増幅した。修飾ガイドRNA sgRNA(F+E)をIDTに注文した。EBV複製開始点oriPを、B95−8形質転換リンパ芽球様細胞株GM12891からPCRで増幅した。本発明者らは、標準的なクローニングプロトコールを使用して、pmax、sgRNA(F+E)、およびoriPをpX458にクローニングし、元のCAGプロモーター、sgRNA、およびf1開始点を置換した。本発明者らは、B95−8基準に基づいてEBV sgRNAを設計し、IDTにDNAオリゴを注文した。pX458の元々のsgRNAプレースホールダーは、陰性対照として役目を果たす。

リンパ球は、リポフェクションに抵抗性であることが公知であり、したがって、本発明者らは、Raji細胞内へのDNA送達にヌクレオフェクションを使用した。本発明者らは、Lonza pmaxプロモーターを選択して、Cas9発現を駆動する。それは、このプロモーターがRaji細胞内での強力な発現をもたらしていたためである。本発明者らは、DNA送達にLonza Nucleofector IIを使用した。500万個のRaji細胞またはDG−75細胞に、各々100ul反応で5ugプラスミドをトランスフェクトした。細胞株キットVおよびプログラムM−013を、Lonzaの推奨に従って使用した。IMR−90の場合、100ul Solution V中で5ugプラスミドを用いて、100万個の細胞にプログラムT−030またはX−005をトランスフェクトした。本発明者らは、ヌクレオフェクションの24時間後に、蛍光顕微鏡で少数の細胞からの明白なEGFPシグナルを観察した。しかしながら、その後EGFP陽性細胞集団は劇的に減少し、本発明者らは、ヌクレオフェクションの48時間後には10%未満のトランスフェクション効率を測定した(図6)。本発明者らは、このトランスフェクション効率の減少は、細胞分裂によるプラスミド希釈に起因すると考えた。宿主細胞内のプラスミドレベルを活性に維持するために、本発明者らは、EBV複製開始点配列、oriPを含むようにCRISPRプラスミドの再設計した。細胞内部での活性プラスミド複製により、トランスフェクション効率は、60%超に上昇した(図6)。

EBVゲノムを標的とするガイドRNAを設計するために、本発明者らはB95−8株に由来するEBV参照ゲノムに依存した。異なるゲノムの編集の目的のために7つのガイドRNA設計で6つの領域を標的とした。ガイドRNAは、WangおよびQuake、2014年、RNA-guided endonuclease provides a therapeutic strategy to cure latent herpesviridae infection、PNAS 111巻(36号):13157〜13162頁およびPNASウェブサイトにオンラインで公開されている文献の補足情報の表S1に列挙されており、これらの両方の文献の内容はあらゆる目的のために引用により取り込まれる。

EBNA1は、遺伝子調節および潜伏ゲノム複製を含む、多くのEBV機能にとって重要である。本発明者らは、ゲノムのこの領域全体を切除するために、EBNA1コード領域の両端に対するガイドRNA sgEBV4およびsgEBV5を標的とした。ガイドRNA sgEBV1、2、および6は、反復領域内にあるため、少なくとも1つのCRISPR切断の成功率が倍増する。こうした「構造」標的により、EBVゲノムを系統的により小さな小片に消化することが可能になる。EBNA3CおよびLMP1は、宿主細胞形質転換に不可欠であり、本発明者らは、これら2つのタンパク質の5’エキソンを標的とするように、それぞれガイドRNA sgEBV3およびsgEBV7を設計した。

EBVゲノム編集。

CRISPRにより生成される二本鎖DNA切断は、修復されて小型の欠失がもたらされる。こうした欠失は、タンパク質コードを中断し、したがってノックアウト効果を発揮することになる。SURVEYORアッセイにより、個々の部位の効率的な編集を確認した。

図32には、EBV CRISPRのSURVEYORアッセイが示されている(レーンは左から右へと付番されている:レーン1:NEB 100bpラダー;レーン2:sgEBV1対照;レーン3:sgEBV1;レーン4:sgEBV5対照;レーン5:sgEBV5;レーン6:sgEBV7対照;レーン7:sgEBV7;レーン8:sgEBV4)。

各ガイドRNAにより誘導された独立した小型欠失を越えた標的部位間の大きな欠失は、EBVゲノムを系統的に破壊することができる。

図8は、ガイドRNA sgEBV2およびPCRプライマー位置の周辺のゲノム構成を示す。

図9は、sgEBV2によって誘導される大きな欠失を示し、レーン1〜3は、それぞれ、sgEBV2処理の前、5日後、および7日後である。ガイドRNA sgEBV2は、12個の125bp繰り返し単位を有する領域を標的とする(図8)。全反復領域のPCR増幅産物は約1.8kbのバンドを与えた(図9)。sgEBV2トランスフェクションの5日後または7日後に、同じPCR増幅から約0.4kbのバンドを得た(図9)。約1.4kbの欠失は、最初および最後の反復単位における切断間の修復ライゲーションの期待された産物である(図8)。

sgRNA標的に隣接するDNA配列を、Phusion DNAポリメラーゼを用いてPCR増幅した。SURVEYORアッセイを、製造業者の説明書に従って実施した。大きな欠失を有するDNA増幅産物を、TOPOクローニングし、単一のコロニーを使用してサンガー配列決定を行った。EBV負荷を、Fluidigm BioMarkでのTaqmanデジタルPCRで測定した。保存されているヒト遺伝子座を標的とするTaqmanアッセイを、ヒトDNA正規化に使用した。Fluidigm C1に由来する単一細胞全ゲノム増幅産物の1ngを、EBV定量PCRに使用した。

本発明者らは、固有標的間の領域を欠失させることが可能であるこちょを実証した(図10)。sgEBV4〜5トランスフェクションの6日後、隣接領域全体をPCR増幅したところ(プライマーEBV4Fおよび5Rを用いて)、より短い増幅産物が得られ、同時に、予想される2kbのバンドは非常によりかすかであった(図11)。増幅産物クローンをサンガー配列決定したところ、2つの予期される切断部位が直接接続されていることが確認された(図13)。sgEBV3〜5を用いた同様の実験でも、EBNA3CからEBNA1までのさらに大きな欠失が判明した(図11〜12)。

プライマー設計等のさらなる情報は、WangおよびQuake、2014年、RNA-guided endonuclease provides a therapeutic strategy to cure latent herpesviridae infection、PNAS、111巻(36号):13157〜13162頁、およびPNASのウェブサイトにオンラインで公開されているこの論文の補足情報に示されている。これら書類の内容は両方とも、参照によりあらゆる目的のために組み込まれる。

EBVゲノム破壊による細胞増殖停止。

CRISPRトランスフェクションの2日後、さらなる培養のためにEGFP陽性細胞をフロー選別し、毎日生存細胞を数えた。図10は、ガイドRNA sgEBV3/4/5およびPCRプライマーの位置の周辺のゲノム構成を与える。

図11は、sgEBV3/5およびsgEBV4/5によって誘導される大きな欠失を示し、レーン1および2は、sgEBV3/5処理の前および8日後の3F/5R PCR増幅産物であり;レーン3および4は、sgEBV4/5処理の前および8日後の4F/5R PCR増幅産物である。

図12は、サンガー配列決定により、sgEBV3/5処理のゲノム切断および8日後に修復ライゲーションが確認されたことを示す。

図13は、サンガー配列決定により、sgEBV4/5処理のゲノム切断および8日後に修復ライゲーションが確認されたことを示す。

図14は、異なるCRISPR処置後のいくつかの細胞増殖曲線を示す。

図15〜17は、sgEBV1〜7処置前(図15)、5日後(図16)および8日後(図17)のフローサイトメトリー散乱シグナルを与える。

図18〜20は、sgEBV1〜7処置の前(図18)、5日後(図19)および8日後(図20)のアネキシンV Alexa647およびDAPI染色結果を示す。青色および赤色は、(図15〜17)における部分母集団P3およびP4に対応する。

図21は、顕微鏡観察により、sgEBV1〜7処理後にアポトーシス細胞形態が明らかになったことを示す。

図22は、顕微鏡観察により、sgEBV1〜7処理後にアポトーシス細胞形態が明らかになったことを示す。

図23は、sgEBV1〜7処理前の核形態を示す。

図24は、sgEBV1〜7処理後の核形態を示す。

図25は、sgEBV1〜7処理後の核形態を示す。

図26は、sgEBV1〜7処理後の核形態を示す。

予想したように、oriPまたはsgEBVを欠損したCas9プラスミドで処理した細胞は、数日以内にEGFP発現を失い、非処置対照群と同様の速度で増殖した(図14)。Cas9−oriPおよびスクランブルしたガイドRNAを有するプラスミドは、8日後にEGFP発現を維持したが、細胞増殖速度は低下しなかった。混合カクテルsgEBV1〜7での処理は、測定可能な細胞増殖をもたらさず、全細胞数は一定のままであったか、または減少した(図14)。フローサイトメトリー散乱シグナルは、細胞の大部分は肉芽形成の増加とともにサイズが縮小し、sgEBV1〜7処理後の細胞形態における変化をはっきりと明らかにした(図15〜17、集団P4からP3へシフト)。集団P3中の細胞はまた、DAPI染色により、易感染性の膜透過性を実証した(図18〜20)。

特に複数のガイドRNAによる、CRISPR細胞毒性の可能性を除外するために、本発明者らは2つの他の試料について、同じ処置を行った:EBV陰性バーキットリンパ腫細胞株DG−75(図33)および初代ヒト肺線維芽細胞IMR90(図34)。図33は、EBV陰性バーキットリンパ腫DG−75を用いたCRISPR細胞毒性試験を示す。

図33は、CRISPR処置が、EBV陰性バーキットリンパ腫細胞株DG−75に対して細胞毒性ではなかったことを示す。

図34は、CRISPR処置が初代ヒト肺線維芽細胞IMR90に対して細胞毒性でないことを示す。

図34は、初代ヒト肺線維芽細胞IMR90を用いたCRISPR細胞毒性試験を表す。トランスフェクションの8日後および9日後に、細胞増殖率は、非処置対照群から変化せず、これは細胞毒性が無視できたことを示唆している。

以前の研究によると、EBV腫瘍形成能力は、宿主細胞アポトーシスを妨害するためであると考えられている(Ruf IKら、(1999年)、Epstein-Barr Virus Regulates c-MYC, Apoptosis, and Tumorigenicity in Burkitt Lymphoma. ,Molecular and Cellular Biology、19巻:1651〜1660頁)。したがって、EBV活性の抑制は、アポトーシスプロセスを回復させることができる。そう考えれば、本発明者らの実験で細胞死が観察されたことを説明することができる。アネキシンV染色は、インタクトな細胞膜を有するが、ホスファチジルセリンが露出している細胞の特徴的な部分集団を明らかにした。これは、アポトーシスによる細胞死を示唆している(図18〜20)。明視野顕微鏡では、明白なアポトーシス細胞形態が示され(図21〜22)、蛍光染色は、劇的なDNA断片化を示した(図23〜26)。まとめると、こうした証拠は、EBVゲノム破壊後に正常な宿主細胞アポトーシス経路が回復したことを示唆している。

(部分集団中のEBVの完全クリアランス)

細胞増殖停止とEBVゲノム編集との間の関連の可能性を研究するために、本発明者らは、EBNA1を標的としたデジタルPCRを用いて、EBV負荷を異なる試料で定量した。保存されているヒト体細胞遺伝子座を標的とする別のTaqmanアッセイは、ヒトDNA正規化の内部対照としての役目を果たした。

図27は、デジタルPCRによる、様々なCRISPR処理後のEBV負荷を示し、ここで、Cas9およびCas9−oriPは2つの複製物を有し、sgEBV1〜7が5つの複製物を有していた。

図28は、全ゲノム増幅についての捕捉された単一細胞の顕微鏡観察を示す。

図29は、全ゲノム増幅についての捕捉された単一細胞の顕微鏡観察を示す。

図30は、処置前の単一細胞のEBV定量PCR Ct値のヒストグラムを与える。

図31は、sgEBV1〜7処置の7日後の単一生存細胞のEBV定量PCR Ct値のヒストグラムを示し、ここで図30および31の点線は、細胞あたりの1つのEBVゲノムのCt値を表す。

各非処置Raji細胞は、平均で、42コピーのEBVゲノムを有する(図27)。oriPまたはsgEBVを欠如したCas9プラスミドで処置した細胞は、非処置対照と明白に異なるEBV負荷差を示さなかった。oriPを有するがsgEBVを有していないCas9プラスミドで処置した細胞は、約50%低減されたEBV負荷を示した。この実験の細胞では増殖速度差が一切示されなかったという上記の観察と合わせて考えると、本発明者らは、これは、プラスミド複製中のEBNA1結合の競合によるものである可能性が高いと解釈する。ガイドRNAカクテルsgEBV1〜7をトランスフェクションに付加することにより、EBV負荷が劇的に低減された。生存細胞および死細胞は両方とも、非処置対照と比較して60%超のEBV減少を示している。

本発明者らは、7つのガイドRNAを同じモル比で提供したが、プラスミドトランスフェクションおよび複製プロセスは、非常に確率論的である可能性が高い。幾つかの細胞は、必然的にガイドRNAカクテルの異なるサブセットまたは混合物を受け取ることになり、これは処置効率に影響及ぼす場合がある。そのような効果を制御するため、本発明者らは、EBV負荷を、自動マイクロ流体システムによる単一細胞全ゲノム増幅を使用することにより単一細胞レベルで測定した。本発明者らは、新たに培養したRaji細胞を、マイクロ流体チップに搭載し、81個の単一細胞を捕捉した(図28)。sgEBV1〜7処置細胞の場合、本発明者らは、トランスフェクションの8日後に生存細胞をフロー選別して、91個の単一細胞を捕捉した(図29)。製造業者の説明書に従って、本発明者らは、約150ngの増幅DNAを、各単一細胞反応チャンバから得た。品質管理目的のため、本発明者らは、各単一細胞増幅産物に対して4遺伝子座のヒト体細胞DNA定量PCRを実施し(Wang J, Fan HC, Behr B, Quake SR、(2012年)Genome-wide single-cell analysis of recombination activity and de novo mutation rates in human sperm.、Cell、150巻:402〜412頁)、少なくとも1つの遺伝子座から陽性増幅産物を得ることを条件とした。69個の非処置単一細胞産物は、品質管理に合格し、そしてほとんど全ての細胞が著しい量のEBVゲノムDNAを示す、EBV負荷の対数正規分布を示した(図30)。本発明者らは、単一の統合EBVゲノムを含むNamalwaバーキットリンパ腫細胞のサブクローンを用いて、定量PCRアッセイを較正した。単一コピーEBV測定によると、Ctは29.8であった。これにより、本発明者らは、69個のRaji単一細胞試料の平均Ctが、バルクデジタルPCR測定による細胞当たり42コピーのEBVに対応していたと決定することが可能になった。sgEBV1〜7処置試料の場合、71個の単一細胞産物が品質管理に合格し、EBV負荷分布は劇的により広範であった(図31)。22個の細胞は、非処置細胞と同じEBV負荷を有していたが、19個の細胞は、検出可能なEBVを有しておらず、残りの30個の細胞は、非処置試料と比べて劇的なEBV負荷減少を示した。

EBV処置に必須の標的。本発明者らのCRISPRカクテルの7つのガイドRNAは、それぞれEBVゲノム構造、宿主細胞形質転換、および潜伏感染性にとって重要な3つの異なるカテゴリーの配列を標的とする。効果的なEBV処置に最も必須な標的を理解するために、本発明者らは、ガイドRNAのサブセットをRaji細胞にトランスフェクトした。sgEBV4/5は、EBVゲノムを85%低減したが、完全カクテルほど効果的には細胞増殖を抑制することができなかった(図14)。構造配列を標的とするガイドRNA(sgEBV1/2/6)は、EBV負荷を完全には除去しなかったが(26%の減少)、細胞増殖を完全に停止させることができた。本発明者らは、ゲノム編集の効率が高いことおよび増殖が停止したことを考慮して、sgEBV1/2/6の残存EBVゲノム痕跡は、インタクトなゲノムによるものではなく、EBVゲノムから消化された遊離浮遊DNA、つまり偽陽性であると推測する。本発明者らは、EBV処置には、特定の重要なタンパク質を標的とするよりも、EBVゲノム構造を系統的に破壊する方がより効果的であると結論付ける。

(実施例2) HPVゲノムおよび標的 HPVゲノムは、概して3つの主要領域(初期領域、後期領域、および長い制御領域(long control region;LCR))に分けることができる、およそ8kbのサイズの二本鎖環状DNAゲノムであり、これらの領域は2つのポリアデニル化部位により隔てられている。初期領域は、その5’半分からHPVゲノムの50%を超えるものであり、タンパク質に翻訳される6つの共通のオープンリーディングフレーム(E1、E2、E4、E5、E6およびE7)をコードする。後期領域は、初期領域の下流であり、メジャー(L1)およびマイナー(L2)キャプシドタンパク質の翻訳のためのL1 ORFおよびL2 ORFをコードする。gRNA等の標的指向性配列は、ウイルス機能を妨げるためにキャプシドタンパク質を標的とすることができる。約850bpのLCR領域は、タンパク質コード機能を有さないが、複製の開始点ならびにウイルス初期プロモーターおよび後期プロモーターからの転写調節のための転写因子結合部位を有する。引用により取り込まれる、Bernard、2007年、Gene expression of genital human papillomaviruses and considerations on potential antiviral approaches、Antivir Ther. 7巻:219〜237頁を参照されたい。HPV−16ゲノムは、2つの主要なプロモーターを含む。P97プロモーターは、E6 ORFの上流に位置し、ほとんど全ての初期遺伝子発現に関与する。P670プロモーターは、E7 ORF領域内に位置し、後期遺伝子発現に関与する。HPV−31のP99およびHPV−18のP105に匹敵するHPV−16 P97プロモーターは、非常に強力で、主に、細胞転写因子およびウイルストランス活性化因子/リプレッサーE2と相互作用し、未分化の基底細胞から高度に分化したケラチノサイトへP97の転写を調節するLCRの上流のシスエレメントによって、厳密に制御されている。E2は、TBPまたはTFIID結合後、P97転写のためのリプレッサーとして機能し、その転写抑制は、組込まれたHPV−16 DNAを有する細胞でのみ起こるがエピソーム性HPV−16 DNAを有する細胞では起こらないと考えられている。HPV−16 P670プロモーターは後期プロモーターであり、その活性は分化したケラチノサイトにおいてのみ誘導することができる。E6およびE7コード領域におけるエレメントは後期プロモーターを調節することができ、HPV−16における後期P670プロモーターおよびHPV−31におけるP742は両方ともE7コード領域に位置し、後期プロモーターからの転写は初期pA部位を迂回して後期領域を発現させなければならない。引用により取り込まれる、ZhengおよびBaker、2006年、Papillomavirus genome structure, expression, and post-transcriptional regulation、Front Biosci 11巻:2286〜2302頁を参照されたい。

プロモーターは、抗ウイルスまたは標的に向かうことが可能なエンドヌクレアーゼの遺伝子を含むベクターにおいて使用されてもよい。

(実施例3) 図36は、ウイルス核酸3251等の外来核酸を除去するための細胞3237を処理する方法3201を示す。方法3201は、HPV感染を処置するために臨床的に使用されてもよく、または方法3201は、例えば、ヒトに由来する細胞等の対象の細胞から外来核酸を除去するための研究および開発のために、in vitroで使用されてもよい。

方法3201は:ヌクレアーゼ3205およびRNA 3213を含むリボ核タンパク質(RNP)3231を形成するステップ3225;感染細胞3237にRNP 3231を送達するステップ3245;およびRNP 3231で細胞3237内のウイルス核酸3251を切断するステップを含む。

送達するステップ3245は、エレクトロポレーションを含んでもよいか、またはRNPは、送達するステップ3245のためにリポソーム内にパッケージされてもよい。一部の実施形態では、ウイルス核酸3251は、ウイルスのエピソーム性ウイルスゲノム、すなわちエピソームまたはエピソーム性ベクターとして存在する。RNA 3213は、ウイルス核酸3251内の標的に実質的に相補的であり、好ましくはヒトゲノム上の任意の位置に実質的に相補的でない部分を有する。好ましい実施形態では、ウイルスはHPV−16等のヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus;HPV)である。

好ましい実施形態では、ヌクレアーゼ3205は、好ましくはCas9等のCrisper関連タンパク質である。RNA 3213は、単一のガイドRNA(sgRNA)(crRNAおよびtracrRNAの機能性を提供する)であってもよい。この好ましい実施形態では、ヌクレアーゼ3205およびRNA 3213は、RNP 3231として細胞に送達される。

一部の実施形態では、RNPは、感染しているか、または感染が疑われる組織に送達される。例えば、RNPは、リポソームに充填され、臨床応用のために局所的または経皮的に送達されることができる。エレクトロポレーションまたはヌクレオポレーションを使用してもよく、このストラテジーは、ex vivoでの応用において特定の価値を有し得る。

一部の実施形態では、臨床応用、特に非経口送達のためには(例えば、プラスミドDNAに対して)RNPが好ましいことを見出すことができる。RNPは、DNA(AAV)またはmRNAに長所をもたらす活性の前もって形成された薬物である。細胞内の薬物成分を転写、翻訳、またはアセンブルする必要はない。RNP 3231の送達は、例えば、より初期の開始活性および制御されたクリアランス(毒性)のような、薬物特性の改善をもたらし得る。

(実施例4) Cas9 RNPがHPV+がん細胞を死滅させる Cas9等のヌクレアーゼは、選択されたガイドRNAを介してHPVゲノムにガイドされ得る。図41は、ある特定の実施形態に従って、選択されたガイドRNAがHPVゲノムにマッピングされる場所を示す。2つはE6遺伝子にマッピングし、2つはE7遺伝子にマッピングする。

図42は、Cas9ならびに各々のsgHPV E6−1、sgHPV E6−2、sgHPV E7−1、およびsgHPV E7−2を用いて処理した後の生存百分率を示す。HPV特異的CRISPR/Cas9リボ核タンパク質(RNP)による処理は、HPV+がん細胞を死滅させる。

図43は、HPV+がん細胞における、HPV特異的CRISPR/Cas9 RNP用量応答を示す。

図44は、HPV+がん細胞におけるHPV特異的CRISPR/Cas9 RNP経時変化を与える。図42〜44は、Cas9、および初期遺伝子にマッピングされる1つまたは複数のガイドRNAを含むRNPを、HPV+がん細胞に送達することにより、がん細胞を死滅させることができることを実証する。

(実施例5) Cas9 RNPは、Cas9 pDNAよりも良く切断する 図45は、CRISPR/Cas9 RNPがDNA切断を増強することを示すゲルである。

図46は、pDNAと比較して、RNPは細胞毒性が減少していることを示す。これらの結果は、RNP形態のCas9がウイルス処置剤として有効である見込みがあることを示している。

(実施例6) Cas9 RNPはHPV+がん細胞をpDNAよりも効果的に死滅させる 図47は、HPV+がん細胞の生存率が、HPV特異的CRISPR/Cas9 RNPを使用して、HPV+がん細胞を処理した場合に、Cas9をコードするpDNAでこれらの細胞を処理した場合よりも、より低いことを示す。

(実施例7) 複数のガイドRNAは、個々のものよりも良好である 図48は、HPV特異的CRISPR RNPの組合せがHPV+がん細胞死滅を改善することを示す。E6−1およびE6−2ガイドRNAでRNPを送達することにより、それらのどちらか一方のみでRNPを送達するよりも低い生存数がもたらされる。

(実施例8) E6、E7を標的とすることによるHPV+がん細胞の死滅 図49は、HPV+がん細胞を死滅させるためのプライマー設計を示す。プライマーE6−1、E6−2、E7−1、E7−3およびE7−4は、示されるように、E6およびE7遺伝子内に位置するように設計された。

図50は、細胞生存をモニターするプロセスを示す。GFPレポーターを有するCas9プラスミドを細胞内にエレクトロポレーションする。GFP+細胞を選択し、培養し、フローサイトメトリーにより測定する。

図51は、HPV−16特異的CRISPR/Cas9 pDNAがHPV−16陽性がん細胞を死滅させることを示す。標準化された生存数により、対照細胞が高い生存率を有することが示された。生存していない細胞は、Cas9ならびにE6−1、E7−2、およびE7−3プライマーの1つで処理されたものであった。

(実施例9) RNPのリポソーム送達により、がん細胞が阻害される 図52は、リポソームを介するCas9 RNPの送達を示した。

図53は、リポソーム内に処方されたHPV特異的CRISPR/Cas9 RNPが、HPV+がん細胞を阻害することを示す。これらの結果は、Cas9 RNPのリポソーム送達が、抗ウイルス/抗がん治療薬として、特に発癌性ウイルスがん細胞に対して、有望であることを示している。

(実施例10) EBV特異的CRISPR/Cas9 RNPは、EBV+Bリンパ腫がん細胞を特異的に死滅させる。 図37は、EBV特異的CRISPR/Cas9 RNPがEBV+Bリンパ腫がん細胞を特異的に死滅させることを示すための実験設計を図示している。Raji細胞はEBV陽性である。Raji細胞は、造血起源の継続ヒト細胞株である。DG−75細胞は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection;Manassas、VA)から入手可能なEBV陰性Bリンパ球細胞株である。DG−75は、mCherry蛍光マーカーを示す。EBV陰性細胞は蛍光マーカーを含むので、成功した切断事象を識別することができる。

図38は、処置後6日間のEBV+がん細胞の生存を示す。エプスタイン−バール(Epstein−Barr)ウイルス核酸3251に実質的に相補的なガイドRNAを有するRNP 3231を与えたEBV+細胞は、対照における約60〜70%と比較して、10%未満の生存率を示した。

図39は、Cas9、sgHPV3、sgEBV2+6およびsgEBV1+2+6についての処置後6日目の各々の細胞集団の百分率を示す。エプスタイン−バールウイルス核酸3251に実質的に相補的なガイドRNAを有するRNP 3231で処理したDG−75が、Raji細胞に対する培養物を卓越していることが、6日目のこのスナップショットにより示される。

図40は、Cas9(0.03および0.1ng/細胞での)ならびにsgEBV2/6とのCas9(同じ用量での)についての、処置後3日間の(陰性対照に対して正規化した)細胞生存百分率を示す。

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