標的一本鎖開裂および標的組込みのための方法、並びに組成物

申请号 JP2015176328 申请日 2015-09-08 公开(公告)号 JP2016040252A 公开(公告)日 2016-03-24
申请人 サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド; 发明人 ワン,ジアンビン;
摘要 【課題】哺乳類/ヒト細胞においてエラーを起こしやすいNHEJ修復を同時に発生させずに、二本鎖DNA内に一本鎖切断(切れ目)を生成し、切れ目部位における相同組換えによって標的組込みを促進する、方法および組成物の提供。 【解決手段】DNA結合ドメイン、および少なくとも1つの触媒不活性開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含む、融合タンパク質と、亜鉛フィンガードメインおよび触媒活性開裂ハーフドメインを含む第2の融合タンパク質とを含むタンパク質複合体であって、前記触媒不活性開裂ハーフドメインが、前記第2の融合タンパク質の前記触媒活性開裂ハーフドメインとヘテロ二量体を形成する、タンパク質融合体。 【選択図】なし
权利要求

DNA結合ドメイン、および少なくとも1つの触媒不活性開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインを含む、融合タンパク質。前記DNA結合ドメインが、亜鉛フィンガードメインを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。前記亜鉛フィンガードメインが、天然に存在しない、請求項2に記載の融合タンパク質。前記開裂ドメインが、FokI開裂ハーフドメインである、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の融合タンパク質。請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の融合タンパク質と、亜鉛フィンガードメインおよび触媒活性開裂ハーフドメインを含む第2の融合タンパク質とを含むタンパク質複合体であって、前記触媒不活性開裂ハーフドメインが、前記第2の融合タンパク質の前記触媒活性開裂ハーフドメインとヘテロ二量体を形成する、タンパク質融合体。請求項5に記載のポリヌクレオチドと、亜鉛フィンガードメインおよび触媒活性開裂ハーフドメインを含む融合タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドとを含む組成物であって、前記触媒不活性開裂ハーフドメインが、前記第2の融合タンパク質の前記触媒活性開裂ハーフドメインとヘテロ二量体を形成する、組成物。請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の融合タンパク質を含む単離細胞または細胞株、請求項5に記載のポリヌクレオチド、請求項6に記載のタンパク質複合体、および/または請求項7に記載の組成物。細胞内の標的二本鎖配列内に一本鎖切断を生成する方法であって、 請求項6に記載のタンパク質複合体、または請求項7に記載の組成物を提供することを含み、 前記ヘテロ二量体が、前記標的二本鎖配列内に一本鎖切断を生成する、方法。標的配列が細胞クロマチン内にある、請求項9に記載の方法。細胞内の対象領域内に外来配列を挿入する方法であって、 前記対象領域内に請求項9に記載の一本鎖切断を生成し、 一本鎖切断の生成に続き、前記対象領域内に挿入される外来配列を提供すること、 を含む、方法。前記外来配列が、野生型ゲノム配列を置換する、請求項11に記載の方法。細胞内の対象領域内の標的配列を不活性化させる方法であって、 請求項9に記載の方法に従って対象領域内に一本鎖切断を生成し、 前記対象領域内の前記野生型配列を置換する外来配列(前記標的配列を部分的または完全に不活性化させる)を提供すること、 を含む、方法。

说明书全文

技術分野 本開示は、ゲノム工学、遺伝子標的、標的染色体の組込み、およびタンパク質発現の分野に関する。

連邦政府による資金提供を受けた研究の下で行われた発明に対する権利の記述 非適用。

ゲノム生物学における主な対象領域は、特に、いくつかのゲノムの完全なヌクレオチド配列の決定の観点から見ると、ゲノム配列の標的変更である。

背景 ヌクレアーゼの開裂ドメインを、設計されたDNA結合タンパク質(例えば、FokI等からのヌクレアーゼ開裂ドメインに連結された亜鉛フィンガータンパク質(ZFP))に連結する、人工ヌクレアーゼが、真核細胞内の標的開裂に使用されている。例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ介在ゲノムの編集は、(1)所望の修飾のための生体細胞のゲノム内の標的部位における二本鎖切断(DSB)の作成、および(2)DNA修復の自然機構にこの切断を「修復」させることによって、特定の位置におけるヒトゲノムの配列を修飾することが明らかになっている。

特異性を増大させるために、開裂事象は、DNA結合時に二量体化して、触媒的に活性なヌクレアーゼ複合体を形成する、特注設計の亜鉛フィンガーヌクレアーゼの1対もしくは複数の対を使用して誘導される。また、特異性は、ヘテロ二量体の形成時のみに二本鎖DNAを開裂する、改変開裂ハーフドメインを含む、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の1対もしくは複数の対を使用することによって、さらに増大されている。例えば、米国特許公開第20080131962号を参照されたく、これは、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる。

人工ヌクレアーゼによって作成された二本鎖切断(DSB)は、例えば、標的突然変異生成の誘導、細胞DNA配列の標的欠失の誘導、および所定の染色体遺伝子座における標的組換えの促進のために使用されている。例えば、米国特許公開第20030232410号、同第20050208489号、同第20050026157号、同第20050064474号、同第20060188987号、同第20060063231号、同第20070218528号、同第20070134796号、同第20080015164号、ならびに国際公開第07/014275号および同第2007/139982号を参照されたく、それらの開示は、すべての目的のために、参照によりその全体が組み込まれる。したがって、標的ゲノム位置においてDSBを生成する能によって、任意のゲノムのゲノム編集が可能になる。

DSBを修復するための2つの主要かつ異なる経路である、相同組換え、および非相同末端結合(NHEJ)が存在する。相同組換えは、細胞修復過程を誘導するための鋳型(例えば、「ドナー」)として相同配列の存在を必要とし、修復の結果は、エラーがなく、予想可能である。相同組換えのための鋳型(つまり「ドナー」)配列の非存在下では、細胞は、典型的には、予測不可能であり、かつエラーを起こしやすい非相同末端結合(NHEJ)過程を介して、DSBを修復しようとする。

DNAの切れ目を含む、一本鎖切断(SSB)は、内在性活性酸素種によって、DNA修復および複製等のDNA代謝中に生成される、最も多いDNA損傷のうちの1つである。McKinnon et al.(2007)Annu Reb Genomic Hum Genet8:37〜55、Okano et al.(2003)Mol Cell Biol23:3974〜3981を参照されたい。非アポトーシス細胞の染色体は、全ゲノムの全体にわたって、約50kbの間隔で位置する一本鎖不連続性(SSB/切れ目)を含む。例えば、Szekvolgyi et al.(2007) Proc Natl Acad Sci USA104:14964〜14969を参照されたい。SSB/切れ目の大半は、4つの基本的工程:ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)によるSSB検出、様々な酵素によるDNA末端処理、DNAポリメラーゼによるDNAギャップの充填、およびDNA連結酵素によるDNA連結反応に分割することができる、迅速なグローバルSSB修復過程によって修復される(Caldecott,K.W.(2008)Nat Rev Genet9,619〜31を参照)。Lee et al.(2004)Cell 117:171〜184は、突然変異RAGタンパク質によって誘導された切れ目が、哺乳類の細胞において相同指向修復(HDR)を開始する可能性があることを示唆するデータを発見した。

しかしながら、ZFNが、SSB/切れ目を誘導するように組み替えることができるか、またはこれらのSSB/切れ目が、相同組換えによって修復することができるか、またはそれらを使用して、相同組換えを介する導入遺伝子の標的組込みを促進することができるかは、未だ明らかになっていない。したがって、哺乳類/ヒト細胞においてエラーを起こしやすいNHEJ修復を同時に発生させずに、二本鎖DNA内に一本鎖切断(切れ目)を生成し、切れ目部位における相同組換えによって標的組込みを促進する、方法および組成物が今なお必要とされている。

概要 対象となる任意の二本鎖標的配列内に標的一本鎖切断を誘導するための方法および組成物を本明細書に開示する。標的の一本鎖開裂後の相同組換えおよび標的組込みを促進する方法もまた、説明する。したがって、ゲノムの標的修飾が説明される。

一態様において、所望の二本鎖標的配列内に一本鎖切断を生成する、人工(非自然発生の)ヌクレアーゼを提供する。本明細書で説明するヌクレアーゼは、DNA結合ドメイン(例えば、改変亜鉛フィンガータンパク質)、および少なくとも1つの開裂ドメインもしくは少なくとも1つの開裂ハーフドメインを含む。特定の実施形態においては、これらのヌクレアーゼは、任意の選択された配列(例えば、遺伝子)を結合するように改変された亜鉛フィンガードメインを含む、亜鉛フィンガーヌクレアーゼである。本明細書で説明する亜鉛フィンガータンパク質ののどのタンパク質も、1個、2個、3個、4個、5個、6個以上の亜鉛フィンガーを含んでもよく、各亜鉛フィンガーは、選択された配列(例えば、遺伝子)内の標的亜部位に結合する認識へリックスを有する。開裂ドメインは、FokI等の任意のヌクレアーゼ、例えば、IIS型ヌクレアーゼからの開裂ハーフドメインに由来してもよい。特定の実施形態においては、開裂ハーフドメインは、別の開裂ハーフドメイン(例えば、二量体化ドメインにおける改変または野生型)とヘテロ二量体を形成する、改変FokI開裂ハーフドメインを含む。また、さらなる実施形態においては、開裂ドメイン(例えば、改変FokI開裂ハーフドメイン)は、ヌクレアーゼドメインの触媒ドメイン(酵素活性)を不活性化させる、突然変異を含む。

別の態様においては、一対の亜鉛フィンガーヌクレアーゼを含む、複合体および/または組成物が本明細書に提供され、各ヌクレアーゼは、改変亜鉛フィンガードメインおよびFokI開裂ハーフドメインを含み、開裂ハーフドメインは、二量体(ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成する。特定の実施形態においては、一対のうちの一方の亜鉛フィンガーヌクレアーゼは、第1の触媒活性の改変開裂ハーフドメインを含み、他方の亜鉛フィンガーヌクレアーゼは、第2の触媒不活性の改変開裂ハーフドメインを含み、第1および第2の改変開裂ハーフドメインは、偏性ヘテロ二量体を形成する。

さらに別の態様においては、本明細書で説明するヌクレアーゼのうちのいずれかをコードするポリヌクレオチドを提供する。

さらに別の態様においては、本明細書で説明するタンパク質および/またはポリヌクレオチドのうちのいずれかを含む、単離細胞も提供する。特定の実施形態においては、外来配列が標的変化を介して導入されている細胞株を提供する。特定の実施形態においては、1つもしくは複数の選択された遺伝子は、これらの細胞株内において(部分的または完全に)不活性化される。他の実施形態においては、細胞または細胞株は、細胞内に安定的または一時的に導入されている、1つもしくは複数の転写および/または翻訳外来配列を含む。そのような細胞株は、細胞株内に本明細書で説明するタンパク質および/またはポリヌクレオチドのうちのいずれかを含む細胞を培養することによって生成され、選択された遺伝子の不活性化をもたらす。

細胞内に安定的または一時的に導入されている、1つもしくは複数の転写および/または翻訳外来配列を含む、トランスジェニック生物も提供する。本明細書に提供する方法によって選択的に不活性化された遺伝子を含む、トランスジェニック生物、または内在性配列の発現を変更することが可能な外来配列を含む生物をさらに提供する。本明細書で説明する、トランスジェニック生物は、植物(例えば、作物またはタバコ系統)または動物(例えば、マウス、ネズミ、ウサギ、魚等)であり得る。特定の実施形態においては、トランスジェニック生物を使用して、本明細書に説明するヌクレアーゼをコードする1つもしくは複数の配列、および/または1つもしくは複数の外来配列(例えば、本明細書で説明するヌクレアーゼを使用して、標的組込みを介してゲノム内に挿入された配列)を有する生物株を生成する。例えば、誘導プロモーターの制御下で、本明細書に記載するヌクレアーゼを含む、トランスジェニック植物および植物を本明細書に開示する。したがって、ヌクレアーゼをコードするエピソームまたは組込み配列を含む、トランスジェニック植物および植物株は、植物において所望の時に、および/またはその植物の所望の組織内に発現させることができる。

また、細胞内の標的二本鎖配列内に特異的な一本鎖切断を生成する方法を提供する。特定の実施形態においては、該方法は、1対もしくは複数対のヌクレアーゼ(ヌクレアーゼをコードするタンパク質またはポリヌクレオチド)を細胞内に導入することを含む。ヌクレアーゼの各対は、第1のDNA結合ドメインおよび第1の触媒活性開裂ハーフドメインを有する第1のヌクレアーゼ、ならびに第2のDNA結合ドメインおよび第2の触媒不活性開裂ハーフドメインを有する第2のヌクレアーゼを含む。1対もしくは複数対のヌクレアーゼが、各対の第1および第2の開裂ハーフドメインが二量体を形成し、かつ標的配列内に一本鎖切断を生成するような条件下で、細胞内に導入される。

特定の実施形態においては、第1および/または第2のDNA結合ドメインは、亜鉛フィンガータンパク質(例えば、改変亜鉛フィンガータンパク質)を含む。さらに、本明細書で説明するいずれかの方法において、第1および第2の開裂ハーフドメインは、FokI開裂ハーフドメイン、例えば、偏性ヘテロ二量体を形成するように改変されるFokI開裂ハーフドメインを含むことができる。標的配列は、任意の二本鎖配列、例えば、ゲノム配列またはその一部等の細胞クロマチン内の配列であってもよい。また、標的配列は、例えば、プラスミドまたはウイルス内の染色体外二本鎖DNA配列であってもよい。同様に、標的配列は、原核細胞、および真菌細胞、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、霊長類細胞、およびヒト細胞等の真核細胞を含む、任意の細胞種内であってもよい。

一本鎖切断の部位は、触媒活性ヌクレアーゼが結合する配列に一致するか、または隣接してもよい(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個以上のヌクレオチドによって、結合部位の近接端部から分離する)。融合タンパク質は、例えば、融合タンパク質を細胞に送達する、および/または1つもしくは複数のヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを細胞に送達することによって、細胞内に発現することができ、該ポリヌクレオチドは、DNAの場合、mRNA内に転写され、次いで融合タンパク質内に翻訳される。あるいは、RNA分子は、次いで融合タンパク質を生成するために翻訳される細胞に送達することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法は、本開示の他所に提示する。

標的組換え(例えば、染色体内の配列または細胞クロマチン内の対象領域内の変更または置換)のための方法も提供する。例えば、変異ゲノム配列は、例えば、遺伝的疾患または遺伝性障害の治療のために、野生型配列によって置換することができる。また、野生型ゲノム配列は、例えば、癌遺伝子産物または不適切な炎症反応に関与する遺伝子産物の機能を防止するために、変異配列によって置換することができる。さらに、遺伝子の1つもしくは複数の対立遺伝子は、1つもしくは複数の異なる対立遺伝子(例えば、2対立遺伝子の標的組込み)によって置換することができる。

開示の方法において、本明細書で説明する1つもしくは複数の標的ヌクレアーゼは、所定部位において、標的配列(例えば、細胞クロマチン)内に一本鎖切断を生成し、切断領域内のヌクレオチド配列に相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを、細胞内に導入することができる。一本鎖切断の存在は、ドナー配列の組込みを促進することが本明細書に示されている。ドナー配列は、物理的に組込みされ得るか、あるいは、ドナーポリヌクレオチドは、相同組換えを介する切断の修復のための鋳型として使用され、細胞クロマチンへのドナーの導入のように、ヌクレオチド配列のすべて、または一部の導入をもたらす。したがって、細胞クロマチン内の第1の配列は、変更することができ、かつ、特定の実施形態においては、ドナーポリヌクレオチド内に存在する配列内に変換することができる。したがって、「置換する」または「置換」という用語の使用は、別の配列による1つのヌクレオチド配列の置換(すなわち、情報的な意味の配列の置換)を示すと理解することができ、かつ別のポリヌクレオチドによる1つのポリヌクレオチドの物理的または化学的置換を必ずしも必要としない。

また、第1のヌクレオチド配列で、細胞クロマチン(例えば、ゲノム配列)内の対象領域を置換するための方法を提供し、該方法は、(a)対象領域内の第2の配列に結合させるために、第1の亜鉛フィンガー結合ドメインを改変することと、(b)対象領域内の第3の配列に結合させるために、第2の亜鉛フィンガー結合ドメインを提供することと、(c)第1の亜鉛フィンガー結合ドメインおよび第1の触媒活性開裂ハーフドメインを含む、第1の融合タンパク質を細胞内に発現させることと、(d)第2の亜鉛フィンガー結合ドメインおよび第2の触媒不活性開裂ハーフドメインを含む、第2の融合タンパク質を細胞内に発現させることと、(e)細胞を、第1のヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチドに接触させることと、を含み、第1の融合タンパク質は、第2の配列に結合し、その第2の融合タンパク質は、第3の配列に結合し、それによって、一本鎖切断が対象領域内の細胞クロマチン内に作成され、対象領域内のヌクレオチド配列が第1のヌクレオチド配列で置換されるように、開裂ハーフドメインを位置付ける。特定の実施形態においては、細胞クロマチン内の一本鎖切断は、第2の配列と第3の配列との間の部位の対象領域内に作成される。亜鉛フィンガーヌクレアーゼは、タンパク質、および/または該亜鉛フィンガーヌクレアーゼをコードする、1つもしくは複数のポリヌクレオチドとして細胞に提供し得る。例えば、それぞれ、2つの融合タンパク質のうちの1つをコードする配列を含む、2つのポリヌクレオチドを細胞内に導入することができる。あるいは、両方の融合タンパク質をコードする配列を含む、単一のポリヌクレオチドを細胞内に導入することができる。

本明細書で説明する方法のいずれかにおいて、さらなる対の亜鉛フィンガータンパク質を、細胞内のさらなる標的部位のさらなる二本鎖および/または一本鎖開裂のために使用することができる。

したがって、一実施形態においては、第1のヌクレオチド配列で、細胞クロマチン内の対象領域(例えば、ゲノム配列)を置換するための方法は、(a)対象領域内の第2の配列に結合させるために、第1の亜鉛フィンガー結合ドメインを改変させることと、(b)第3の配列に結合させるために、第2の亜鉛フィンガー結合ドメインを提供することと、(c)細胞を、(i)第1のヌクレオチド配列を含む、第1のポリヌクレオチド、(ii)第1の亜鉛フィンガー結合ドメインおよび第1の触媒活性開裂ハーフドメインを含む第1の融合タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチド、(iii)第2の亜鉛フィンガー結合ドメインおよび第2の触媒不活性開裂ハーフドメインを含む、第2の融合タンパク質をコードする第3のポリヌクレオチド、に接触させることと、を含み、第1および第2の融合タンパク質は、発現し、第1の融合タンパク質は、第2の配列に結合し、第2の融合タンパク質は、第3の配列に結合し、それによって、対象領域内の細胞クロマチン内に一本鎖切断が生成されるように、開裂ハーフドメインを位置付け、対象領域は、第1のヌクレオチド配列で置換される。

細胞クロマチン内の対象領域内の配列の標的組換えおよび/または置換および/または変更のための方法の好ましい実施形態においては、染色体配列は、外来「ドナー」ヌクレオチド配列による相同組換えによって変更される。そのような相同組換えは、切断領域に相同的な配列が存在する場合に、細胞クロマチン内の一本鎖切断の存在によって刺激される。とりわけ、細胞クロマチン内の一本鎖切断は、非相同末端結合の細胞機構を刺激しない。

本明細書で説明する方法のうちのいずれかにおいて、第1のヌクレオチド配列(「ドナー配列」)は、対象領域内のゲノム配列に相同的であるが、それと同一ではない、配列を含むことができ、それによって、相同組換えを刺激し対象領域内に非同一配列を挿入することができる。したがって、特定の実施形態においては、対象領域内の配列に相同的であるドナー配列の一部は、置換されるゲノム配列に約80〜99%(または、それらの間の任意の整数)同一な配列を呈する。他の実施形態においては、ドナーとゲノム配列との間の相同性は、例えば、1つのヌクレオチドのみが、100個以上の連続塩基対のドナー配列とゲノム配列との間で異なる場合、99%以上である。特定の場合においては、ドナー配列の非相同的部分は、新規配列が対象領域内に導入されるように、対象領域内に存在しない配列を含むことができる。これらの例においては、非相同配列は、一般に、50〜1,000個(またはこれらの間の任意の整数値)の塩基対、または1,000を超える任意の数の塩基対、例えば、対象領域内の配列に相同的または同一である、人工染色体内に見られる配列等の配列、と隣接する。他の実施形態においては、ドナー配列は、第1の配列に非相同的であり、非相同組換え機構によってゲノム内に挿入される。

本明細書で説明する方法のいずれかの方法は、対象となる遺伝子の発現を阻害するドナー配列の標的組込みによる細胞内の1つもしくは複数の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用することができる。部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する細胞株も提供する。さらに、部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する植物細胞株を使用して、トランスジェニック植物を生成することができる。ヌクレアーゼの発現が誘導プロモーターによって駆動される、本明細書で説明するヌクレアーゼを含む植物細胞株も提供する。同様に、部分的または完全に不活性化された遺伝子を有する、卵母細胞等の哺乳類の生殖細胞を使用して、トランスジェニック動物を生成することができる。

さらに、本明細書で説明する標的組込みの方法を使用して、1つもしくは複数の外来配列を組込むことができる。外来核酸配列は、例えば、1つもしくは複数の遺伝子またはcDNA分子、または任意の種類のコードもしくは非コード配列、ならびに1つもしくは複数の制御要素(例えば、プロモーター)を含むことができる。また、外来核酸配列は、1つもしくは複数のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害RNA(RNAi)、ミクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。

本明細書で説明する細胞、細胞株および方法のうちのいずれかにおいて、細胞または細胞株は、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、PerC.6(登録商標)(Crucell)、EBx(登録商標)(Sigma−Aldrich Group)、ツマジロクサヨトウ(Sf)等の昆虫細胞、またはサッカロミセス、ピチアおよびシゾサッカロミセス等の真菌細胞であってもよい。

別の態様においては、本発明は、本明細書に説明する方法を実施するための、本明細書で説明する1つもしくは複数のヌクレアーゼ(または、これらのヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド)を含むキットを提供する。これらのキットは、試薬、緩衝剤、細胞、好適な容器、および書面の説明書を任意に含み得る。

これらの態様および他の態様は、全体の開示を考慮して、当業者には容易に明らかであろう。

図1は、不活性化された開裂ドメインを含む、例示的亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)構造を示す概略図である。ZFN対は、1つのDNA鎖のみを開裂して、切れ目としても称される、一本鎖切断(SSB)を形成する。

図2Aは、1つのヌクレアーゼがヌクレアーゼドメインの開裂活性を不活性化するように変異されている開裂ドメインを含む、一対の亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用する二本鎖標的の一本鎖開裂を図示する。示したZFN対を用いる標的基質の開裂によって得られた二本鎖開裂産物の分析を図示する。左から右に、列は、分子量ラダー、対照、8196zKK:8267ELと称するCCR5−標的ZFN対(KKおよびELは、偏性ヘテロ二量体を形成して、二本鎖切断を生成する改変開裂ドメインを指し(例えば、米国特許第2008/0131962号を参照、この明細書において野生型8196zKK8267EL(WT)とも称される)、8196zKK:8267ELと称するCCR5−標的ZFN対(8267ELタンパク質はまた、ZFN対のうちの1つの開裂ハーフドメインを不活性化させる1つの開裂ハーフドメインの触媒ドメイン(DN)の位置において突然変異を含む)、8196zKK:8267ELと称するCCR5−標的ZFN対(8267ELタンパク質はまた、ZFN対のうちの1つの開裂ハーフドメインを不活性化させる触媒ドメイン(D467A)内の位置467において突然変異を含む)、第2の分子量ラダー、第2の対照、8267RD:8196zDRと称するCCR5標的ZFN対(RDおよびDRは、偏性ヘテロ二量体を形成する改変開裂ドメインを指し、(例えば、米国特許第2008/0131962号を参照)この明細書において、野生型8267RD:8196zDR(WT)とも称される)、8267RD:8196zDRと称するCCR5−標的ZFN対(8196zDRタンパク質もZFN対のうちの1つの開裂ハーフドメインを不活性化させる1つの開裂ハーフドメインの触媒ドメイン(DN)の位置において突然変異を含む)、8267RD:8196zDRと称するCCR5−標的ZFN対(8196zDRタンパク質もZFN対のうちの1つの開裂ハーフドメインを不活性化させる触媒ドメイン(D467A)の位置467において突然変異を含む)を示す。

図2Bは、1つのヌクレアーゼがヌクレアーゼドメインの開裂活性を不活性化するように変異されている開裂ドメインを含む、一対の亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用する二本鎖標的の一本鎖開裂を図示する。示したZFN対を用いる、標的基質の開裂によって得られた一本鎖開裂産物の分析を示す。上述のように、図2Aでは、左から右に、列は、分子量ラダー、対照、8196zKK:8267EL(WT)と称するCCR5−標的ZFN対、8196zKK:8267EL(DN)と称するCCR5−標的ZFN対、8196zKK:8267EL(D467A)と称するCCR5−標的ZFN対、第2の分子量ラダー、第2の対照、8267RD:8196zDR(WT)と称するCCR5−標的ZFN対、8267RD:8196zDR(DN)と称するCCR5−標的ZFN対、および8267RD:8196zDR(D467A)と称するCCR5−標的ZFN対を示す。

図2Cは、1つのヌクレアーゼがヌクレアーゼドメインの開裂活性を不活性化するように変異されている開裂ドメインを含む、一対の亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用する二本鎖標的の一本鎖開裂を図示する。本明細書で説明する変異開裂ドメインを使用して起こりえる開裂パターンの概略図であり、どのバンドが様々なDNA断片上の放射性標識の位置のオートラジオグラフィー分析で検出されるかを示す。

図3A−3Eは、HDR依存性一本鎖アニーリング(SSA)経路によるK562細胞内のZFN誘導SSB/切れ目の修復を図示する。K562細胞は、上記の図2Aで説明するように、ZFN発現プラスミドの非存在下(ZFNなし、図3B)または存在下で、未処理(未処理、図3A)か、またはSSA−GFPレポータDNAプラスミドを用いてトランスフェクトされる:8196zKK:8267EL(WT、図3C)と称するCCR5−標的ZFN対、8196zKK:8267EL(DN、図3D)と称するCCR5−標的ZFN対、8196zKK:8267EL(D467A、図3E)と称するCCR5−標的ZFN対。細胞を、トランスフェクションの3日後に収集し、非生存細胞(PI

+)を染色するために、プロピジウムヨウ化物(PI)と共に5分間のインキューベーション後にフローサイトメトリー分析を行なった。CCR5遺伝子内の切断内へのGFPドナー配列の組込みは、GFPドナー配列が、切れ目部位に隣接する領域に相同的であるCCR5配列によって隣接されるため、HDR依存性経路を介して生じる。したがって、観察されたGFP蛍光信号の増加は、ドナー配列の標的組込みが生じたことを示した。各象限における細胞の割合を、象限の右上隅に示す。このデータは、DNおよびD467A突然変異体を含むZNF対がGFP配列を組込めることを表す。

図4A−4Dは、標的遺伝子内の二本鎖または一本鎖切断の誘導に続く外来配列(パッチドナー)の非相同末端結合(NHEJ)および標的組込み(TI)の分析を示す。図4Aは、上記の各列に示すZFN対を含む、K562細胞内のNHEJによる、一本鎖切断ではなく二本鎖の修復を示す。列の番号は、表1のサンプルの番号と一致する。図4Bは、表1に示すZFN対を用いたCCR−5遺伝子の一本または二本鎖開裂に続く、46bpのCCR−5パッチドナー分子の標的組込みを図示する。列の番号は、サンプルの番号と一致する。図4Cおよび4Dは、単一の亜鉛フィンガーヌクレアーゼまたは2つの亜鉛フィンガーヌクレアーゼの組み合わせで処理された細胞内の相同組換え事象を示す(各列の上に示す)。

図5A−5Bは、標的組込み、および46bpのCCR5−パッチドナーの存在下で示したZFNの組み合わせを用いてトランスフェクトしたK562細胞内のNHEJの分析を図示する。図5Aは、標的組込み分析を示し、図5Bは、NHEJ分析を示す。各列の下の数字は、標的組込みまたはNHEJの頻度(%)を示す。

図6A−6Bは、標的組込みおよびCCR5−tNGFR−outGFPドナーの存在下で示したZFNの組み合わせを用いてトランスフェクトされたK562細胞内のNHEJの分析を図示する。図6Aは、NHEJ分析を示し、図6Bは、サザンブロットによる標的組込み分析を示す。各列の下の数は、標的組込みまたはNHEJの頻度(%)を示す。

図7は、示したZFNコンストラクトを用いてトランスフェクトしたK562細胞内の示した時点における53BP1+遺伝子座(DSBを示す)を図示するグラフである。白丸は、ZFNを有さない対照細胞を図示し、黒丸は、野生型ZFNでトランスフェクトされた細胞を示し、白い四は、1つの野生型ZFNおよび1つの不活性化されたZFN(DN)でトランスフェクトされた細胞を示し、黒い四角は、1つの野生型ZFNおよび1つの不活性化されたZFN(D467A)でトランスフェクトされた細胞を示す。

図8は、K562細胞内のCXCR4遺伝子座における標的組込みの分析を図示する。K562細胞を、CXCR4DN ZFN:CXCR4−ZFN−L−EL−DN+CXCR4−ZFN−R−KKの非存在下(ZFNなし)または存在下で、CXCR4−パッチドナーDNAを用いてヌクレオフェクトした。細胞を、4〜7日間で回復させ、次いで、同一のDNAを用いて、再度ヌクレオフェクトした。この工程を合計4回のヌクレオフェクションのために反復した。次いで、gDNA調製およびRFLP分析のために、細胞を、最後のヌクレオフェクションの3日後に収集した。TIによって修飾されたCXCR4の予想位置を矢印で示した。各列の下の数字は、TIの頻度(%)を示す。

詳細な説明 細胞クロマチンの標的一本鎖開裂、および例えば、標的一本鎖開裂とそれに続く外来ポリヌクレオチド(細胞ヌクレオチド配列との1つもしくは複数の相同領域を含む)とゲノム配列との間の相同組換えによる細胞ヌクレオチド配列の標的変更に有用な組成物および方法を本明細書に開示する。ゲノム配列には、染色体、エピソーム、オルガネラゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、人工染色体、および、例えば、増幅配列、二重微小染色体、ならびに内在性または感染菌およびウイルスのゲノム等の細胞内に存在する任意の種類の核酸内に存在するものが挙げられる。ゲノム配列は、正常(すなわち、野生型)または変異であってもよく、変異配列は、例えば、挿入、欠失、転座、再配列、および/または点突然変異を含むことができる。ゲノム配列はまた、いくつかの異なる対立遺伝子のうちの1つを含むことができる。これらの組成物および方法はまた、染色体外ヌクレオチド配列、例えば、プラスミドの標的変更のために使用することができる。

標的一本鎖開裂および組換えに有用な組成物には、開裂ハーフドメインおよび亜鉛フィンガー結合ドメインを含む融合タンパク質、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド、ならびにポリペプチドとポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの組み合わせが挙げられる。亜鉛フィンガー結合ドメインは、1つもしくは複数の亜鉛フィンガー(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ以上の亜鉛フィンガー)を含むことができ、かつ任意のゲノムまたはエピソーム配列に結合するように改変することができる。したがって、開裂または組換えが望ましい対象となる標的ゲノムまたはエピソーム領域を特定することによって、本明細書に開示する方法に従い、触媒活性および触媒不活性開裂ハーフドメインの両方、ならびに該ゲノムまたはエピソーム領域内の標的配列を認識するように改変された亜鉛フィンガードメインを含む、1つもしくは複数の融合タンパク質を構築することができる。細胞内のそのような融合タンパク質(またはタンパク質)の存在は、その(それらの)結合部位への融合タンパク質の結合、およびゲノムもしくはエピソーム領域内またはその付近に一本鎖開裂をもたらすであろう。とりわけ、本明細書に示すように、ゲノムもしくはエピソーム領域に相同的な領域を有する外来ポリヌクレオチドがそのような細胞内にも存在する場合、相同組換えが、ゲノムもしくはエピソーム領域と外来ポリヌクレオチドとの間で効率的に生じる。

概略 本明細書で開示する方法の実践、ならびに組成物の調整と使用は、特に指示がない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、および関連分野における従来の技術を用い、それらは、当該技術分野の技術範囲内である。これらの技術は、文献に完全に説明されている。例えば、Sambrook et al.MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,Second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989 and Third edition,2001、Ausubel et al.,CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY,John Wiley&Sons,New York,1987および定期改訂、一連のMETHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,San Diego、Wolffe,CHROMATIN STRUCTUREAND FUNCTION,Third edition,Academic Press,San Diego,1998、METHODS IN ENZYMOLOGY,Vol.304,「Chromatin」(P.M.Wassarman and A.P.Wolffe,eds),Academic Press,San Diego,1999、およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,Vol.119,「Chromatin Protocols」(P.B.Becker,ed) Humana Press,Totowa,1999を参照されたい。

定義 「核酸」「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、線状または環状コンフォメーションで、一本鎖または二本鎖形態の、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示については、これらの用語をポリマーの長さに関する限定と解釈すべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの公知の類似体、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸(ホスホロチオエート主鎖)部分内で修飾されるヌクレオチドを含むことができる。一般に、特定ヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対形成特異性を有し、すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対を形成する。

「ポリペプチド」「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。この用語は、1つもしくは複数のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーにも適用される。

「結合」は、高分子間(例えば、タンパク質と核酸との間)の配列特異的で非共有結合的な相互作用を指す。結合相互作用のすべての構成要素は、相互作用が全体として配列特異的であるかぎり、配列特異的である必要はない(例えば、DNA主鎖中のリン酸残基との接触)。そのような相互作用は、一般に、10-6M-1以下の解離定数(Kd)によって特徴付けられる。「親和性」は、結合強度を指し、結合親和性の増加は、Kdの低下と相関する。

「結合タンパク質」は、他の分子に非共有結合的に結合することが可能なタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)、および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合においては、それは、それ自体に結合する(その結果、ホモ二量体、ホモ三量体等を形成する)ことができる、および/または異なるタンパク質または複数のタンパク質の1つもしくは複数の分子に結合することができる。結合タンパク質は、2種類以上の結合活性を有することができる。例えば、亜鉛フィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合、およびタンパク質結合活性を有する。

「亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、1つもしくは複数の亜鉛フィンガー(それは、亜鉛イオンの配位によって安定化される構造を有する結合ドメイン内のアミノ配列の領域である)によって配列特異的な形でDNAを結合するタンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインである。亜鉛フィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、亜鉛フィンガータンパク質またはZFPとして略記される。

亜鉛フィンガー結合ドメインは、例えば、天然に存在する亜鉛フィンガータンパク質の認識へリックス領域を改変させる(1つもしくは複数のアミノ酸を変化させる)ことによって、所定のヌクレオチド配列に結合されるように「改変」することができる。したがって、改変された亜鉛フィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。亜鉛フィンガータンパク質を改変するための方法の非制限例は、設計および選択である。設計された亜鉛フィンガータンパク質は、天然に存在しないタンパク質であり、その設計/組成物は、主として合理的基準によってもたらされる。設計のための合理的基準には、置換規則の適用、ならびに既存のZFP設計および結合データの情報を格納したデータベース中の情報を処理するためのコンピュータアルゴリズムの適用が挙げられる。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号、ならびに国際公開特許第98/53058号、同第98/53059号、同第98/53060号、同第02/016536号、および同第03/016496号を参照されたい。

「選択された」亜鉛フィンガータンパク質は、天然には見出されないタンパク質であり、その産生は、主にファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択等の実験的プロセスによってもたらされる。例えば、米国特許第5,789,538号、米国特許第5,925,523号、米国特許第6,007,988号、米国特許第6,013,453号、米国特許第6,200,759号、国際公開特許第95/19431号、同第96/06166号、同第98/53057号、同第98/54311号、同第00/27878号、同第01/60970号、同第01/88197号、および同第02/099084号を参照されたい。

「配列」という用語は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、それは、DNAまたはRNAであってもよく、線状、環状または分岐状であってもよく、一本鎖または二本鎖のいずれかであってもよい。「ドナー配列」という用語は、ゲノム内に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば、2〜10,000(またはそれらの間もしくはそれ以上の任意の整数)長のヌクレオチド、好ましくは、約100〜1,000(またはそれらの間の任意の整数)長のヌクレオチド、より好ましくは、約200〜500長のヌクレオチドであってもよい。あるいは、ドナー配列は、細菌人工染色体(BAC)または酵母人工染色体(YAC)等の人工染色体配列であってもよい。

「相同的非同一配列」は、第2の配列とある程度の配列同一性を共有するが、それらの配列が第2の配列の配列とは同一ではない、第1の配列を指す。例えば、突然変異型遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、突然変異型遺伝子の配列に対して相同かつ非同一である。特定の実施形態においては、2つの配列間の相同性の度合が、通常の細胞機構を使用して、それらの間での相同組換えを可能とするのに十分である。2つの相同非同一配列は、任意の長さであってもよく、それらの非相同性の度合は、1ヌクレオチドという小さなもの(例えば、ゲノム点突然変異を標的相同組換えによって修正するため)、または10キロ以上の塩基という大きなもの(例えば、染色体中の所定の異所性部位に遺伝子を挿入するため)であってもよい。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドが同一の長さである必要はない。例えば、20〜10,000個のヌクレオチドの外来ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)、人工染色体、またはヌクレオチド対を使用することができる。

核酸およびアミノ酸の配列同一性を決定するための技術は、当該技術分野において公知である。典型的に、そのような技術には、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはそれによってコードされるアミノ酸配列を決定することと、それらの配列を第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することと、が挙げられる。ゲノム配列もまた、この方法で決定し、比較することができる。一般に、同一性は、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ、厳密なヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸対応を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性百分率を決定することによって比較することができる。2つの配列の同一性百分率は、核酸またはアミノ酸配列を問わず、2つの整列された配列間の厳密な合致数を短い方の配列の長さで割り、100をかけたものである。本明細書で説明する配列に関して、望ましい配列同一性の度合の範囲は、約80%〜100%、およびそれらの間の任意の整数である。典型的に、配列間の同一性百分率は、少なくとも70〜75%、好ましくは、80〜82%、より好ましくは、85〜90%、さらに好ましくは、92%、より一層好ましくは、95%、最も好ましくは、98%の配列同一性である。

あるいは、安定した二重鎖の形成を相同領域間で可能にするような条件下でのポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションの後、一本鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、その消化された断片のサイズ決定を行うことによって、ポリヌクレオチド間の配列類似性の度合を決定することができる。2つの核酸配列、または2つのポリペプチド配列は、上述の方法を使用して決定されるように、配列が規定の長さの分子にわたって、少なくとも約70%〜75%、好ましくは80%〜82%、より好ましくは85%〜90%、さらに好ましくは92%、より一層好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を呈するときに、互いに実質的に相同である。本明細書で使用するとき、実質的に相同はまた、指定したDNAまたはポリペプチド配列に対して完全な同一性を示す配列も指す。実質的に相同なDNA配列は、例えば、その特定のシステムごとに定義されるストリンジェントな条件下で行われるサザンハイブリダイゼーション実験で同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件の定義は、当該技術分野の技術の範囲内である。例えば、Sambrook et al.,supra;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford,Washington,DC;IRL Press)を参照されたい。

2つの核酸断片の選択的ハイブリダイゼーションは、下記のように決定することができる。2つの核酸分子間の配列同一性の度合は、そのような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響する。部分的に同一な核酸配列は、完全に同一な配列の標的分子へのハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に阻害するであろう。完全に同一な配列のハイブリダイゼーションの阻害は、当該技術分野において周知のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、サザン(DNA)ブロット、ノーザン(RNA)ブロット、溶液ハイブリダイゼーション、または類似のアッセイ等、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)を使用して評価することができる。そのようなアッセイは、さまざまな度合の選択性を使用して、例えば、低ストリンジェンシから高ストリンジェンシまで変化する条件を使用して実施することができる。低ストリンジェンシが使用される場合、部分的な配列同一性度さえ持たない二次プローブ(例えば、約30%未満の標的分子との配列同一性を有するプローブ)を使用して、非特定結合事象の非存在下で、二次プローブが標的にハイブリダイズしないようにすることにより評価することができる。

ハイブリダイゼーションの条件は、当業者に周知である(例えば、Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach,editors B.D.Hames and S.J.Higgins,(1985)Oxford;Washington,DC;IRL Pressを参照)。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシは、ハイブリダイゼーション条件がミスマッチしたヌクレオチドを含むハイブリッドの形成を嫌う度合を指し、より高いストリンジェンシは、ミスマッチしたハイブリッドに対するよりより低い許容性と関連する。ハイブリダイゼーションに影響を及ぼす因子は、当業者には周知であり、それらには、温度、pH、イオン強度、および有機溶媒(例えば、ホルムアミドおよびジメチルスルホキシド等)の濃度が挙げられるが、これらに限定されない。当業者には公知のように、ハイブリダイゼーションストリンジェンシは、より高い温度、より低いイオン強度、およびより低い溶媒濃度によって増大する。

ハイブリダイゼーションのストリンジェンシ条件に関して、例えば、以下の因子:配列の長さおよび性質、さまざまな配列の塩基組成、塩類および他のハイブリダイゼーション溶液成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中のブロッキング剤(例えば、硫酸デキストラン、およびポリエチレングリコール)の存否、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメータ、ならびに異なる洗浄条件を変化させることによって、数々の等価な条件を使って、特定ストリンジェンシを確立できることは、当該技術分野において周知である。ハイブリダイゼーション条件の特定のセットの選択は、当該技術分野の標準的な方法に従って選択される(例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照)。

「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間で遺伝情報が交換されるプロセスである。本開示に関して、「相同組換え(HR)」は、例えば、細胞において二本鎖切断の修復中等に起こるそのような交換の特殊な形態を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を起こしたもの)のテンプレート修復に「ドナー」分子を使用し、かつそれは、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらすため、「非交差遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として、さまざまな名称で知られている。どの特定理論にも束縛されることは望まないが、そのような移動は、切断された標的とドナーとの間に形成されるヘテロ二重鎖DNAのミスマッチ修正、および/または、標的の一部になる遺伝情報の再合成にドナーが使用される「合成依存的鎖アニーリング」、および/または関連プロセスを含み得る。そのような特殊なHRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるような、標的分子配列の変更をもたらす。

「開裂」は、DNA分子の共有結合主鎖の破壊を指す。開裂は、リン酸ジエステル結合の酵素的または化学的加分解が挙げられるが、これらに限定されない、さまざまな方法によって開始することができる。一本鎖開裂は、二本鎖DNA/RNAの1つの鎖の開裂を指し、二本鎖開裂は、両方の鎖の開裂を指す(例えば、2つの異なる一本鎖開裂事象を介する)。特定の実施形態においては、融合ポリペプチドが、標的一本鎖DNA開裂に使用される。

「開裂ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一または異なる)と併せて、開裂活性(好ましくは、二本鎖開裂活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。「第1および第2の開裂ハーフドメイン」、「+および−開裂ハーフドメイン」、および「右および左の開裂ハーフドメイン」という用語は、二量体化する開裂ハーフドメインの対を指して、互換的に使用される。

「改変された開裂ハーフドメイン」は、別の開裂ハーフドメイン(例えば、別の改変された開裂ハーフドメイン)と偏性ヘテロ二量体を形成するように修飾されている開裂ハーフドメインである。米国特許公開第2005/0064474号、同第2007/0218528号、同第2008/0131962号、および米国特許第12/217,185号も参照されたく、それらは、参照によりその全体が組み込まれる。

「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、ならびに、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含むタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大半は、ヌクレオソームの形態で存在し、そこでは、ヌクレオソームコアが、それぞれ2つのヒストンH2A、H2B、H3およびH4を含む八量体と会合した約150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に依存して長さはさまざま)がヌクレオソームコアの間に延在する。1分子のヒストンH1は、一般にリンカーDNAと会合する。本開示に関して、「クロマチン」という用語は、原核性および真核性の両方のあらゆる種類の細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。

「染色体」は、細胞のゲノムのすべてまたは一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、その細胞のゲノムを含む全染色体の集合である、その核型によって特徴付けられる。細胞のゲノムは、1つもしくは複数の染色体を含むことができる。

「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含む、複製する核酸、核タンパク質複合体、または他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよび一定のウイルスゲノムが挙げられる。

「標的部位」または「標的配列」は、結合にとって十分な条件が存在すれば結合分子が結合するであろう核酸の一部を規定する、核酸配列である。例えば、配列5′−GAATTC−3′は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼの標的部位である。

「外来」分子は、通常は細胞内に存在しないが、1つもしくは複数の遺伝学的、生化学的、または他の方法によって細胞内に導入することができる分子である。「通常は細胞内に存在」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋の胚発生中のみに存在する分子は、成体筋細胞については外来分子である。同様に、熱ショックによって誘導される分子は、非熱ショック細胞については外来分子である。外来分子は、例えば、機能不全型内在性分子の機能型または正常機能型内在性分子の機能不全型を含むことができる。

外来分子は、とりわけ、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成されるもの等の小分子、または、タンパク質、核酸、糖質、脂質、糖タンパク質、多糖、上記分子の任意の修飾誘導体、または1つもしくは複数の上記分子を含む任意の複合体等の高分子であってもよい。核酸には、DNAおよびRNAが挙げられ、それは一本または二本鎖であってもよく、線状、分岐状または環状であってもよく、任意の長さであってもよい。核酸には、二重鎖を形成する能力のあるもの、ならびに三重鎖形成核酸が挙げられる。例えば、米国特許第5,176,996号および同第5,422,251号を参照されたい。タンパク質には、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。

外来分子は、内在性分子と同一の種類の分子、例えば、外来タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外来核酸は、感染ウイルスゲノム、細胞中に導入されたプラスミドもしくはエピソーム、または細胞内に通常は存在しない染色体を含むことができる。細胞中に外来分子を導入するための方法は、当業者には公知であり、脂質媒介導入(すなわち、中性およびカチオン性脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介導入およびウイルスベクター媒介導入が挙げられるが、これらに限定されない。外来分子はまた、内在性分子と同一の種類の分子であってもよいが、細胞が由来する種とは異なる種に由来する。例えば、ヒトの核酸配列は、マウスまたはハムスターに本来由来する細胞株中に導入し得る。

対照的に、「内在性」分子は、特定の環境条件下で特定の発生段階にある特定の細胞内に通常存在するものである。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリア、クロロプラストもしくは他の細胞小器官のゲノム、または天然に存在するエピソーム核酸を含むことができる。さらなる内在性分子は、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を含むことができる。

「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは共有結合的に連結された分子である。サブユニット分子は、同一の化学種類の分子であってもよいか、または異なる化学種類の分子であってもよい。第1の種類の融合分子の例には、融合タンパク質(例えば、ZFPDNA結合ドメインと1つもしくは複数の開裂ドメインとの融合物)、および融合核酸(例えば、上記に説明する融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第2の種類の融合分子の例には、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、および副溝結合剤と核酸との間の融合が挙げられるが、これらに限定されない。

細胞における融合タンパク質の発現は、細胞に融合タンパク質を送達することによって、または細胞に融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを送達し、そこで、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて融合タンパク質を生成することによって、生じてもよい。トランススプライシング、ポリペプチド開裂およびポリペプチド連結もまたは、細胞におけるタンパク質の発現に関与することができる。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの送達の方法を、本開示の他所に提示する。

本開示に関して、「遺伝子」は、遺伝子産物(infra参照)をコードするDNA領域、ならびに遺伝子産物の産生を調節する全てのDNA領域を含み、そのような調節配列がコードおよび/または転写配列に隣接しているかどうかは問わない。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネータ、翻訳調節配列(リポソーム結合部位および内部リポソーム侵入部位等)、エンハンサー、サイレンサ、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位および遺伝子座制御領域が挙げられるが、これらに限定されない。

「遺伝子発現」は、遺伝子産物への遺伝子に含まれる情報の変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNAまたは他のあらゆる種類のRNA)、またはmRNAの翻訳によって産生されるタンパク質であってもよい。遺伝子産物はまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集等のプロセスによって修飾されたRNA、および、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADPリボシル化、ミリスチリル化、およびグリコシル化によって修飾されたタンパク質を含む。

遺伝子発現の「調整」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調整には、遺伝子活性化および遺伝子抑制を挙げることができるが、これらに限定されない。遺伝子不活性化は、本明細書で説明するZFPを含まない細胞と比較した、遺伝子発現の任意の抑制を指す。したがって、遺伝子不活性化は、完全(ノックアウト)または部分的(例えば、遺伝子が通常の発現レベル未満、またはそれが影響を及ぼす活性の部分的抑制を示す突然変異型遺伝子の産物を呈する)であり得る。

「真核」細胞には、真菌細胞(酵母等)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞(例えば、T−細胞)が挙げられるが、これらに限定されない。

「細胞株」は、初代培養からの組織培養内に確立された細胞集団を指す。したがって、亜鉛フィンガーヌクレアーゼを使用して生成された細胞株は、1つもしくは複数の亜鉛フィンガーヌクレアーゼによって、1つもしくは複数の標的遺伝子が部分的または完全に不活性化されているか、または細胞(または細胞株)の子孫が、複数の継代培養後に部分的または完全な不活性化子孫を保持する、細胞(または細胞株)に起因する。さらに、細胞または細胞株は、遺伝子の発現が減少(ノックダウン)または削除(ノックアウト)されるときに、1つもしくは複数の示した細胞の発現が「欠損」している。

「トランスジェニック」は、細胞中に導入され、動物または植物のゲノムの一部になる核酸配列を含む、任意の動物または植物を意味する。該用語は、遺伝子的に改変された動物または植物、ならびに遺伝子的に改変された動物の子孫を指す。非ヒトトランスジェニック動物には、げっ歯動物等の脊椎動物、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、両生類、鳥類、魚、昆虫、爬虫類等が挙げられる。該用語には、動物または植物の細胞のすべてではないが、一部において、導入された核酸配列が見られるか、または核酸配列遺伝子が発現する、動物および植物も挙げられる。

「対象領域」は、例えば、遺伝子または遺伝子内のもしくはそれに隣接する非コード配列等の、その中で外来分子と結合することが望ましい細胞クロマチンの任意の領域である。結合は、標的DNA開裂および/または標的組換えの目的のためであってもよい。対象領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、クロロプラスト)、または感染ウイルスゲノム中に存在することができる。対象領域は、遺伝子のコード領域内、転写非コード領域(例えば、リーダ配列、トレーラ配列またはイントロン等)、またはコード領域の上流または下流のいずれかにある非転写領域内にあってもよい。対象領域は、長さが単一のヌクレオチド対という小さなものから、最大2,000個のヌクレオチド対、または任意の整数値のヌクレオチド対にまで及ぶことができる。

「作動的連結」および「作動的に連結」(または「作動可能に連結」という用語は、2つ以上の構成要素(配列要素等)の並列であって、両方の構成要素が正常に機能し、かつ構成要素のうちの少なくとも1つが、他の構成要素のうちの少なくとも1つに対して発揮される機能を媒介することができる状態を許すように、各構成要素が配置されているものを指して、互換的に使用される。図示として、プロモーター等の転写調節配列は、転写調節配列が1つもしくは複数の転写調節因子の存在または非存在に応じてコード配列の転写レベルを制御する場合は、コード配列に作動的に連結される。転写調節配列は、一般に、コード配列とはシスに、作動的に連結されるが、それに直接隣接している必要はない。例えば、エンハンサーは、たとえ隣接していなくても、コード配列に作動的に連結される転写調節配列である。

融合ポリペプチドに関して言えば、「作動的に連結」という用語は、それぞれの構成要素が、そのように連結されていない場合に、それが果たすであろう、他の構成要素に連動して同一の機能を実行するという事実を指すことができる。例えば、ZFPDNA結合ドメインが開裂ドメインに融合されている融合ポリペプチドに関して言えば、ZFPDNA結合ドメインおよび開裂ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZEPDNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合することができ、開裂ドメインがその標的部位の近傍でDNAを開裂することができる場合に、作動的連結状態にある。

タンパク質、ポリペプチド、または核酸の「機能的断片」は、タンパク質、ポリペプチド、または核酸であり、それらの配列は、完全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一でないが、完全長タンパク質、ポリペプチド、または核酸と同一の機能を保持する。機能的断片は、対応する天然分子より多い、少ない、または同一の残基数を有することができる、および/または1つもしくは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含むことができる。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸にハイブリダイズする能力)を決定するための方法は、当該技術分野において周知である。同様に、タンパク質機能を決定するための方法は周知である。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイによって決定することができる。DNA開裂は、ゲル電気泳動によってアッセイすることができる(Ausubel et al.,supraを参照)。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、例えば、共免疫沈降、ツーハイブリッドアッセイ、または相補性(遺伝的相補性および生化学的相補性の両方)によって決定することができる。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245〜246、米国特許第5,585,245号、およびPCT国際公開第98/44350号を参照されたい。

本明細書に使用するとき、「抗体」という用語には、多クローン性および単クローン性調製の両方から得られる抗体、ならびに以下のハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winter et al.,Nature (1991)349:293〜299、および米国特許第4,816,567号を参照)、F(ab′)2およびF(ab)断片、Fv分子(非共有結合ヘテロ二量体、例えば、Inbar et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1972) 69:2659〜2662、およびEhrlich et al.,Biochem(1980)19:4091〜4096を参照)、一本鎖Fv分子(sFv)(例えば、Huston et al.,Proc Natl Acad Sci USA(1988)85:5879〜5883を参照)、二量体および三量体抗体断片コンストラクト、ミニボディ(例えば、Pack et al.,Biochem(1992)31:1579〜1584、Cumber et al.,J Immunology(1992)149B:120〜126参照)、ヒト化抗体分子(例えば、Riechmann et al.,Nature(1988)332:323〜327、Verhoeyan et al.,Science(1988)239:1534〜1536、および1994年9月21日に発行された英国特許第2,276,169号を参照)、およびそのような分子から得られた機能断片(そのような断片は、親抗体分子の免疫学的結合特性を保持する)のうちのいずれかが挙げられる。

本明細書に使用するとき、「単クローン抗体」という用語は、均一の抗体群を有する抗体組成物を指す。該用語は、抗体の種または源に関して制限されず、それらが作製される手法によって制限されることを意図しない。該用語は、全免疫グロブリンならびに断片(Fab、F(ab′)2、Fv、および他の断片等)、ならびに親単クローン抗体分子の免疫学的結合特性を呈するキメラおよびヒト化均一抗体群を包含する。

ヌクレアーゼ 二本鎖DNA内に一本鎖切断(SSB、「切れ目」とも称される)を作製するために使用することができる人工ヌクレアーゼを本明細書で説明する。ゲノム中にSSBを導入することによって、相同組換え(例えば、標的組込み)を促進する方法も本明細書で説明する。

A.開裂ドメイン 本明細書で説明するヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ(開裂ドメイン、開裂ハーフドメイン)を含む。本明細書に説明する融合タンパク質の開裂ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。開裂ドメインの由来源になり得る例示的エンドヌクレアーゼには、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、2002〜2003 Catalogue,New English Biolabs,Beverly,MA、およびBelfort et al.(1997) Nucleic Acids Res.25:3379〜3388を参照されたい。DNAを開裂するさらなる酵素は公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ、マングビーンヌクレアーゼ、膵DNaseI、ミクロコッカスヌクレアーゼ、酵母HOエンドヌクレアーゼ、Linn et al.(eds.) Nucleases,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1993も参照されたい)。1つもしくは複数のこれらの酵素(または、それらの機能的断片)を、開裂ドメインおよび開裂ハーフドメインの供給源として使用することができる。例えば、SceI等のメガヌクレアーゼの開裂ドメインは、DSBではなくSSBを誘導するために部分的に不活性にさせることができる。

同様に、開裂ハーフドメインは、上述のように、開裂活性に二量体化を必要とする任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来することができる。融合タンパク質が開裂ハーフドメインを含む場合、一般に、2つの融合タンパク質が必要とされる。あるいは、2つの開裂ハーフドメインを含む単一のタンパク質を使用することができる。2つの開裂ハーフドメインは、同一のエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができるか、または各開裂ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(または、その機能的断片)に由来することができる。

また、2つの融合タンパク質の標的部位は、好ましくは、2つの融合タンパク質がそれぞれの標的部位に結合したときに、開裂ドメインが、例えば、二量体化によって機能的な開裂ドメインを形成し得るような空間的配向を開裂ドメインが互いにとることになるように、互いに配置される。したがって、特定の実施形態においては、標的部位の近接端部が5〜8個のヌクレオチドまたは15〜18個のヌクレオチドによって分離される。しかしながら、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位(例えば、2〜50個のヌクレオチド対以上)の間に介在することができる。一般に、開裂部位は、標的部位間にある。

制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在し、配列特異的に(認識部位で)結合して、結合部位近くでDNAを開裂する能力がある。特定の酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを開裂し、分離可能な結合および開裂ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、一方の鎖ではその認識部位から9個のヌクレオチドの位置、他方の鎖ではその認識部位から13個のヌクレオチドの位置における、DNAの二本鎖開裂を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号、同第5,436,150号、および同第5,487,994号、ならびにLi et al.(1992)Pro.Natl.Acad Sci.USA89:4275〜4279、Li et al.(1993)Pro.Natl.Acad Sci.USA90:2764〜2768、Kim et al.(1994a)Pro.Natl.Acad Sci.USA91:883〜887、Kim et al.(1994b) J.Biol.Chem.269:31,978〜31,982を参照されたい。したがって、一実施形態においては、融合タンパク質が、少なくとも1つのIIS型制限酵素に由来する開裂ドメイン(または、開裂ハーフドメイン)、および1つもしくは複数の亜鉛フィンガー結合ドメイン(改変されていても、改変されていなくてもよい)を含む。

その開裂ドメインが結合ドメインから分離可能である、例示的IIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である(Bitinaite et al.(1998)Pro.Natl.Acad Sci.USA95: 10,570−10,575を参照)。したがって、本開示に関しては、開示する融合タンパク質に使用されるFokI酵素の一部分は、開裂ハーフドメインとみなされる。したがって、亜鉛フィンガーFokI融合物を使用した細胞配列の標的二本鎖開裂および/または標的置換には、それぞれがFokI開裂ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を使用して、触媒活性開裂ドメインを再構成することができる。あるいは、亜鉛フィンガー結合ドメインおよび2つのFokI開裂ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子も使用することができる。亜鉛フィンガーFokI融合物を使用する標的開裂および標的配列変更のパラメータについては、本開示の他所に提供する。

開裂ドメインまたは開裂ハーフドメインは、開裂活性を保持するか、または多量体化(例えば二量体化)して機能的開裂ドメインを形成する能力を保持する、タンパク質の任意の部分であってもよい。

例示的なIIS型制限酵素は、国際公開第07/014275号に説明されており、その全体が本明細書に組み込まれる。さらなる酵素は、分離可能な結合および開裂ドメインを含み、これらは、本開示によって企図される。例えば、Roberts et al.(2003) Nucleic Acids Res.31:418〜420を参照されたい。

特定の実施形態においては、例えば、米国特許公開第20050064474号、同第20060188987号、および同第20080131962号に説明するように、開裂ドメインは、ホモ二量体化を最小限にするか、または防止する、1つもしくは複数の改変された開裂ハーフドメイン(二量体ドメイン変異体とも称される)を含み、それらのすべての開示は、参照によって本明細書にその全体が組み込まれる。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位のアミノ酸残基は、FokI開裂ハーフドメインの二量体化に影響するすべての標的である。

偏性ヘテロ二量体を形成するFokIの改変された例示的開裂ハーフドメインには、一対(第1の開裂ハーフドメインがFokIの490位および538位のアミノ酸残基において突然変異を含み、第2の開裂ハーフドメインが486位および499位のアミノ酸残基において突然変異を含む)が挙げられる。

例えば、特定の実施形態においては、ヌクレアーゼの組み合わせは、Glu(E)をLys(K)で置換する490位において突然変異、Iso(I)をLys(K)で置換する538位において突然変異、Gln(Q)をGlu(E)で置換する486位において突然変異、およびIso(I)をLys(K)で置換する499位において突然変異を有する開裂ドメインに使用される。具体的には、本明細書に説明する、改変された開裂ハーフドメインを、1つの開裂ハーフドメイン内の490位(E→K)および538位(I→K)を突然変異させて、「E490K:I538K」または「KK」と称される改変された開裂ハーフドメインを産生することにより、かつ別の開裂ハーフドメイン内の486位(Q→E)および499位(I→L)を突然変異させて、「Q486E:I499L」または「EL」と称される改変された開裂ハーフドメインを産生することにより調製した。

偏性ヘテロ二量体(異常開裂が最小限に抑えられるか、廃止される)形成する、一対の改変された開裂ハーフドメインの別の例は、1つの開裂ハーフドメインを487位(R→D、「RD」とも称される)で突然変異させ、他の開裂ハーフドメインを483位(D→R、「DR」とも称される)で突然変異させるものである。

本明細書に説明する改変された開裂ハーフドメインは、任意の好適な方法を使用して、例えば、米国特許公開第20050064474号(例えば、実施例5を参照)および国際公開第07/139898号に説明されている、野生型開裂ハーフドメイン(FokI)部位配向された突然変異生成によって調製することができる。

本発明の開裂ハーフドメインは、開裂ハーフドメインを不活性にさせるヌクレアーゼの触媒ドメインに1つもしくは複数の突然変異も含み得る。FokIの触媒ドメインにおいて突然変異することができる、アミノ酸の非制限例には、アミノ酸残基、467および/または469(野生型に対して決定される)が挙げられる。特定の実施形態においては、1つもしくは複数の点突然変異は、開裂ハーフドメインの触媒活性を不活性化させるように、偏性ヘテロ二量体の1つの成員の触媒ドメイン中に作製される。例えば、位は、DからNに突然変異され得、467位は、DからAに突然変異され得、469位は、KからAに突然変異され得る。他のアミノ酸は、これらまたは他の位置において置換され得る。

B.DNA結合ドメイン 本明細書に説明するヌクレアーゼはまた、少なくとも1つのDNA結合ドメインを含む。任意のDNA結合ドメインは、本明細書で開示する組成物および方法に使用することができる。特定の実施形態においては、DNA結合ドメインは、亜鉛フィンガータンパク質を含む。好ましくは、亜鉛フィンガータンパク質は、天然に存在せず、それは、選択する標的部位に結合するように改変される。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135〜141、Pabo et al.(2001)Ann Rev.Biochem.70:313〜340、Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656〜660、Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632〜637、Choo et al.(2000)Curr.Opin.Biotechnol.10:411〜416を参照されたい。改変された亜鉛フィンガー結合ドメインは、天然に存在する亜鉛フィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有することができる。改変方法には、合理的設計およびさまざまな種類の選択が挙げられるが、これらに限定されない。合理的設計には、例えば、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個々の亜鉛フィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することが挙げられ、それぞれの三重または四重ヌクレオチド配列は、特定の三重または四重配列と結合する亜鉛フィンガーの1つもしくは複数のアミノ酸配列に関連する。例えば、共同所有の米国特許第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む、例示的選択方法は、米国特許第5,789,538号、同第5,925,523号、同第6,007,988号、同第6,013,453号、同第6,410,248号、同第6,140,466号、同第6,200,759号、および同第6,242,568号、ならびに国際公開第98/37186号、同第98/53057号、同第00/27878号、同第01/88197、および英国特許2,338,237号に開示されている。また、亜鉛フィンガー結合ドメインの結合特異性の強化は、例えば、共同所有の国際公開第02/077227号に説明されている。

標的部位の選択、融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のためのZFPおよび方法は、当業者には公知であり、米国特許広報第20050064474号、および同第20060188987号に詳細に説明されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

また、これらおよび他の参考文献に開示するように、亜鉛フィンガードメインおよび/または多フィンガーの亜鉛フィンガータンパク質は、例えば、長さ5個以上のアミノ酸のリンカーを含む、任意の好適なリンカー配列を使用して互いに連結し得る。長さ6個以上のアミノ酸の例示的リンカー配列については、米国特許第6,479,626号、同第6,903,185号、および同第7,153,949号も参照されたい。本明細書で説明するタンパク質は、タンパク質の個々の亜鉛フィンガー間の好適なリンカーの任意の組み合わせを含み得る。

あるいは、DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI,PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIII等のホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号、同第6,833,252号、Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379〜3388、Dujon et al.(1989)Gene82:115〜118、Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22,1125〜1127、Jasin(1996)Trends Genet.12:224〜228、Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163〜180、Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345〜353、およびNew England Biolabsのカタログも参照されたい。また、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位に結合するように改変することができる(例えば、Chevalier et al.(2002)Molec.Cell 10:895〜905、Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952〜2962、Ashworth et al.(2006)Nature 441:656〜659、Paques et al.(2007)Current Gene Therapy 7:49〜66、米国特許第20070117128号を参照)。

特定の実施形態においては、本明細書で説明するヌクレアーゼは、1つのDNA結合ドメインおよび1つの開裂ドメイン、例えば、亜鉛フィンガータンパク質およびFokI開裂ハーフドメインを含む。他の実施形態においては、ヌクレアーゼは、1つのDNA結合ドメインおよび2つ以上の開裂ドメイン、例えば、1つの触媒活性FokI開裂ハーフドメインおよび1つの触媒的に不活性のFokI開裂ハーフドメインを含む亜鉛フィンガータンパク質を含む。これらの開裂ハーフドメインは、DNA結合ドメインがその標的部位に結合し、標的部位の近傍で一本鎖切断を産生するとき、二量体化することが可能である。

送達 本明細書で説明するヌクレアーゼ(例えば、ZFN)は、任意の好適な手段によって標的細胞に送達し得る。好適な細胞には、真核(動物および/または植物)および原核細胞、および/または細胞株が挙げられるが、これらに限定されない。そのような細胞またはそのような細胞から生成された細胞株の非制限例には、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11、CHO−DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、およびperC6細胞、ならびに昆虫細胞(ツマジロクサヨトウ(Sf)等)、または真菌細胞(サッカロミセス、ピチアおよびシゾサッカロミセス等)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態においては、細胞株は、CHO−K1、MDCK、またはHEK293細胞株である。また、二本鎖切断に敏感であり得る初代細胞を使用し得る。これらには、CD34+ヒト幹細胞、胚幹細胞、マウスの胚幹細胞、および誘導された多能性細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。トランスジェニック生物の生成に使用されることで公知の細胞(マウスの胚幹細胞および母卵細胞等)も使用し得る。

本明細書に説明する亜鉛フィンガータンパク質を含むヌクレアーゼを送達する方法は、例えば、米国特許第6,453,242号、同第6,503,717号、同第6,534,261号、同第6,599,692号、同第6,607,882号、同第6,689,558号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号に説明されており、それらのすべての開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

本明細書で説明するヌクレアーゼも、1つもしくは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN)をコードする配列を含むベクターを使用して送達され得る。プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ関連性ウイルスベクター等を含むが、これらに限定されない、任意のベクター系を使用し得る。米国特許第6,534,261号、同第6,607,882号、同第6,824,978号、同第6,933,113号、同第6,979,539号、同第7,013,219号、および同第7,163,824号を参照されたく、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、ヌクレアーゼをコードする配列に作動的に連結して、これらのヌクレアーゼの発現を駆動することができる構成的および誘導的プロモーターを詳細に説明している。さらに、これらのベクターのうちのいずれかが配列をコードする1つもしくは複数のヌクレアーゼを含み得ることは明らかであろう。したがって、1対もしくは複数対のZFNが細胞中に導入されるとき、ZFNは、同一のベクターまたは異なるベクターで運ばれ得る。複数のベクターが使用されるとき、各ベクターは、1つまたは複数のZFNをコードする配列を含み得る。

従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用して、改変されたZFPをコードする核酸を細胞(例えば、哺乳類細胞)および標的組織中に導入することができる。そのような方法を使用して、ZFPをコードする核酸を生体外の細胞に適用することもできる。特定の実施形態においては、ZFPをコードする核酸は、生体内または生体外遺伝子療法用途のために適用される。非ウイルスベクター送達システムには、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、および送達媒体(リポソームまたはポロキサマ等)との核酸錯体が挙げられる。ウイルスベクター送達システムには、細胞への送達後にエピソームまたは組込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝療法工程の再考については、Anderson,Science 256:808〜813(1992)、Nabel&Gelgner,TIBTECH 11:211〜217(1993)、Minani&Caskey,TIBTECH 11:162〜166(1993)、Dillon,TIBTECH 11:167〜175(1993)、Miller,Nature 357:455〜460(1992)、Van Brunt,Bitechnology 6(10):1149〜1154(1988)、Vigne,Restorative Neurology and Neuroscience 8:35〜36(1995)、Kremer&Perricaudet,British Medical Bulletin 51(1):31〜44(1995)、Haddada et al.,in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm(eds.)(1995)、およびYu et al.,Gene Therapy 1:13〜26(1994)を参照されたい。

核酸の非ウイルス送達の方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸複合体、ネイキッドDNA、人工ビリオン、および薬剤により強化されたDNAの取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000 system(Rich−Mar)を使用するソノポレーションも、核酸の送達に使用することができる。

さらなる例示的核酸送達システムには、Amaxa Biosystems(Cologne,Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville,Maryland)、BTX分子送達システム(Holliston,MA)、およびCopernicus Therapeutics Inc,(例えば、米国特許第6008336号を参照)により提供されるものが挙げられる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、および同第4,897,355号に説明されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(登録商標)およびLipofectin(登録商標))。ポリヌクレオチドの有効な受容体認識リポフェクションに好適であるカチオン性および中性脂質には、Felgner、国際公開第91/17424号、同第91/16024号のものが挙げられる。細胞(例えば、生体外投与)または標的組織(生体内投与)に送達することができる。

免疫脂質複合体等の標的リポソームを含む、脂質:核酸複合体の調製は、当業者には周知である(例えば、Crystal,Science 270:404〜410(1995)、Blaese et al.,Cancer Gene Ther.2:291〜297 (1995)、Behr et al.,Bioconjugate Chem.5:382〜389(1994)、Remy et al.,Bioconjugate Chem.5:647−654 (1994)、Gao et al.,Gene Therapy 2:710〜722(1995)、Ahmad et al.,Cancer Res.52:4817〜4820(1992)、米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第1,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号を参照)。

改変されたZFPをコードする核酸の送達のためのRNAまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、身体内の特定の細胞中にウイルスを標的させ、かつ核へウイルスペイロードを運ぶための高度に進化したプロセスを活用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与(生体内)することができるか、またはそれらは、生体外の細胞を治療することができ、かつ修飾された細胞は、患者に投与される(生体外)。ZFPの送達のための従来のウイルスベースのシステムには、遺伝子送達のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ関連性ウイルス、ワクチンおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。宿主ゲノム内の組込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ関連性ウイルス遺伝子送達方法を使用して可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。さらに、高い形質導入効率が多くの異なる細胞種および標的組織で認められている。

レトロウイルスの指向性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込むことによって変更することができ、それによって、標的細胞の潜在的な標的群を拡張させる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を形質導入または感染させることが可能であり、かつ典型的に、高ウイルス価を産生する、レトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子送達システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6−10kbの外来配列のパッケージング能力を有する、シス作用の長い末端反復から成る。最小限のシス作用のLTRは、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、それらは、次いで、治療遺伝子を標的細胞内に組込みして、永久的に導入遺伝子の発現をするために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組み合わせに基づくものが挙げられる(例えば、Buchscher et al.,J.Virol.66:2731〜2739(1992)、Johann et al.,J.Virol.66:1635〜1640(1992)、Sommerfelt et al.,Virol.176:58〜59(1990)、Wilson et al.,J.Virol.63:2374〜2378(1989)、Miller et al.,J.Virol.65:2220〜2224(1991)、PCT/米国特許第94/05700号を参照)。

一過性発現が好ましい用途においては、アデノウイルスベースのシステムを使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、非常に高い形質導入効率の能力があり、かつ細胞分裂を必要としない。そのようなベクターを使用して、高力価および高レベルの発現が得られている。このベクターは、比較的単純なシステムにおいて多量に産生することができる。アデノ関連性ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、例えば、核酸およびペプチドの生体内産生において、および生体内および生体外遺伝子治療手順(例えば、West et al.,Virology 160:38〜47(1987)、米国特許第4,797,368号、国際公開第93/24641号、Kotin,Human Gene Therapy 5:793〜801(1994)、Muzyczka,J.Clin.Invest.94:1351(1994)を参照)のために、標的核酸を細胞に形質導入するために使用される。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.5:3251〜3260(1985)、Tratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072〜2081(1984)、Hermonat&Muzyczka,PNAS 81:6466〜6470(1984)、およびSamulski et al.,J.Virol.63:03822−3828 (1989)を参照)を含む、いくつかの発刊物に説明されている。

現在、少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、形質導入剤を生成するためのヘルパー細胞株中に挿入された遺伝子による欠損ベクターの相補性を含むアプローチを使用する、臨床試験における遺伝子導入に使用可能である。

pLASNおよびMFG−Sは、臨床試験に使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunber et al.,Blood 85:3048〜305(1995)、Kohn et al.,Nat.Med.1:1017〜102(1995)、Malech et al.,PNAS 94:22 12133〜12138(1997)を参照)。PA317/pLASNは、遺伝子治療試験に使用された最初の治療ベクターであった(Blaese et al.,Science 270:475〜480(1995))。50%以上の形質形質導入効率がMFG−Sパッケージベクターに認められている(Ellem et al.,Immunol Immunother.44(1):10〜20(1997)、Dranoff et al.,Hum.Gene Ther.1:111〜2(1997))。

組換えアデノ関連性ウイルスベクター(rAAV)は、欠損および非病原性パルボウイルスアデノ関連性2型ウイルスに基づく有望な代替的遺伝子送達システムである。すべてのベクターは、遺伝子導入発現カセットに隣接するAAV145bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミドに由来する。形成導入された遺伝子のゲノム中への組込みによる効率的な遺伝子送達および安定した導入遺伝子送達は、このベクターシステムの主要な特性である(Wagner et al.,Lancet 351:9117 1702−3 (1998)、Kearns et al.,Gene Ther.9:748〜55(1996))。

複製欠損性アデノウイルスベクター(Ad)は、高力価で産生することができ、いくつかの異なる細胞種を容易に感染させる。アデノウイルスベクターの大半は、導入遺伝子がAdE1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置換し、その後、複製欠損性ベクターが、trans内の消失遺伝子機能を供給するヒト293細胞において増加されるように、改変される。Adベクターは、非分裂の分化した細胞(肝臓、腎臓、および筋肉に見られるもの等)を含む、複数の種類の生体内組織を形質転換することができる。従来のAdベクターは、大きな搬送能力を有する。臨床試験におけるAdベクターの使用の例には、筋肉内注入を用いる抗腫瘍免疫のポリヌクレオチド治療が挙げられる(Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083〜9(1998))。臨床試験における遺伝子送達のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例には、Rosenecker et al.,Infection 24:1 5〜10(1996)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.9:7 1083〜1089(1998)、Welsh et al.,Hum.Gene Ther.2:205〜18(1995)、Alvarez et al.,Hum.Gene Ther.5:597〜613(1997)、Topf et al.,Gene Ther.5:507〜513(1998)、Sterman et al.,Hum.Gene Ther.7:1083〜1089(1998)が挙げられる。

パッケージング細胞を使用して、宿主細胞を感染させることが可能なウイルス粒子を形成する。そのような細胞には、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317が挙げられる。遺伝子治療に使用するウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子中にパッケージングする産出細胞株によって生成される。典型的には、これらのベクターは、パッケージングおよびその後の宿主への組込みに必要とされる最小限のウイルス配列(適用可能な場合)、発現するタンパク質をコードする発現カセットによって置換されている他のウイルス配列を含む。欠損しているウイルス機能は、パッケージングする細胞株によってtransで提供される。例えば、遺伝子治療に使用するAAVベクターは、典型的には、宿主ゲノム中へのパッケージングおよび組込みに必要とされる、AAVゲノムからの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子すなわち、repおよびcapをコードするが、ITR配列が欠失するヘルパープラスミドを含む細胞株内にパッケージングされる。この細胞株はまた、ヘルパーとしてのアデノウイルスで感染させられる。このヘルパーウイルスは、ヘルパープラスミドから、AAVベクターの複製、およびAAV遺伝子の発現を促進する。このヘルパープラスミドは、ITR配列の欠失のため、有意な量でパッケージングされない。アデノウイルスの汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも敏感な熱処理によって低減することができる。

多くの遺伝子治療用途において、遺伝子治療ベクターが高度の特異性で特定の細胞型に送達されることが望ましい。したがって、ウイルスベクターは、ウイルスの外表面上のウイルス外被タンパク質を用いて、融合タンパク質としてのリガンドを発現させることによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように修飾することができる。該リガンドは、対象となる細胞型上に存在することで公知の受容体に対する親和性を有するように選択される。例えば、Han et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA92:9747〜9751(1995)は、モロニーマウス白血病ウイルスが、gp70に融合されたヒトヘレグリンを発現させるように修飾することができ、その組換えウイルスが、ヒト上皮成長因子受容体を発現する特定のヒト乳癌細胞を感染させることを報告した。この原則は、細胞表面受容体のために、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスがリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス標的細胞対にまで及ぶことができる。例えば、線状ファージは、事実上、任意の選択された細胞受容体に特異的結合親和性を有する抗体断片(例えば、FABまたはFv)を提示するように改変することができる。上記の説明は、主にウイルスベクターに適用されるが、同一の原則を非ウイルスベクターに適用することができる。そのようなベクターは、特異的標的細胞による取り込みを好む、特異的な取り込み配列を含むように改変することができる。

遺伝子治療ベクターは、下記に説明するように、個人の患者への投与、典型的には、全身投与(例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、または頭蓋内注入)または局所投与によって、生体内に送達することができる。あるいは、ベクターは、個人の患者から移植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞等の生体外細胞に送達した後に、通常、ベクターを組み込んだ細胞の選択後、患者内に該細胞を再移植することができる。

診断、研究、または遺伝治療のための生体外細胞のトランスフェクション(例えば、宿主生物内へのトランスフェクト細胞の再注入を介する)は、当業者には周知である。好ましい実施形態においては、細胞は、対象生物から単離され、ZFP核酸(遺伝子またはcDNA)をトランスフェクトされ、対象生物(例えば、患者)内に再注入される。生体外トランスフェクションに好適なさまざまな細胞型は、当業者には周知である(例えば、Freshney et al.,Culture of Animal Cells,A Manual of Basic Technique(3rd ed.1994)、患者からの細胞をどのように単離し、かつ培養するかの記述のために本明細書に引用した参考文献を参照)。

一実施形態においては、幹細胞は、細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療のための生体外手順に使用される。幹細胞を使用する利点は、それらが生体外で他の細胞型に分化することができるか、またはそれらの分化した幹細胞を骨髄内に移植する哺乳類(幹細胞のドナー等)に導入することができることである。GM−CSF、IFN−γ、およびTNF−α等のサイトカインを使用して、CD34+生体内細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化するための方法は、公知である(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照)。

幹細胞は、公知の方法を使用して、形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、CD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(panB細胞)、GR−1(顆粒球)、およびIad(分化された抗原提示細胞)等の不要細胞を結合する抗体を有する骨髄細胞をパンニングすることによって、骨髄から単離される(Inaba et al.,J.Exp.Med.176:1693〜1702(1992)を参照)。

ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソーム等)を含む治療ZFP核酸は、生体内細胞の形質導入のために、生物に直接投与することもできる。あるいは、ネイキッドDNAを投与することができる。投与は、最終的接触を経て血液細胞または組織細胞に分子を導入するために通常使用される経路(注射、注入、局所適用、およびエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない)のうちのいずれかによるものである。そのような核酸を投与する方法は、使用可能かつ当業者に周知であり、2つ以上の経路を使用して特定の組成物を投与することができるが、特定の経路は、しばしば、別の経路よりも即時かつ有効な反応を提供することができる。

DNAを造血幹細胞に導入する方法は、米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えば、CD34+細胞への導入遺伝子の導入に有用なベクターには、アデノウイルス型35が挙げられる。

免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入に好適なベクターには、非組込みレンチウイルスベクターが挙げられる(例えば、Ory et al.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:11382〜11388、Dull et al.(1998)J.Virol.72:8463〜8471、Zuffery et al.(1998)J.Virol.72:9873〜9880、Follenzi et al.(2000)Nature Genetics 25:217〜222を参照)。

医薬的に許容の担体は、投与されている特定の組成物、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって一部決定される。したがって、下記に説明するように、使用可能な多種多様な好適な医薬組成物の製剤が存在する(例えば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,1989を参照)。

上述のように、開示する方法および組成物は、原核細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、およびヒト細胞を含むが、これらに限定されない、任意の種類の細胞に使用することができる。タンパク質発現に好適な細胞株は、当業者には公知であり、COS、CHO(例えば、CHO−S、CHO−K1、CHO−DG44、CHO−DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28−G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0−Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293−F、HEK293−H、HEK293−T)、perC6、昆虫細胞(ツマジロクサヨトウ(Sf)等)、および真菌細胞(サッカロミセス、ピチアおよびシゾサッカロミセス等)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞株の子孫、変種、および誘導体を使用することもできる。また、二本鎖切断に敏感であり得る初代細胞を使用し得る。これらには、CD34+ヒト幹細胞、胚幹細胞、マウス胚幹細胞、および誘導された多能性細胞が挙げられ得るが、これらに限定されない。マウス胚幹細胞および母卵細胞等のトランスジェニック生物の生成に使用されることで公知の細胞も使用し得る。

用途 開示した組成物および方法は、選択した位置での一本鎖切断の導入が望ましい、任意の用途に使用することができる。また、本明細書で示すように、一本鎖開裂は、非相同末端結合(NHEJ)事象を誘導させることなく、一本鎖切断部位への標的組込み(相同組換えを介する)を促進する。

したがって、本明細書で説明する組成物および方法は、特異的標的一本鎖開裂が望ましい任意のヌクレアーゼ用途のために、および/または任意のゲノム配列を外来配列(例えば、相同性非同一配列)で置換するために使用することができる。

標的組込みでは、1つもしくは複数の亜鉛フィンガー結合ドメインは、規定の開裂部位またはその近傍における標的部位と結合するように改変され、この改変された亜鉛フィンガー結合ドメイン、および少なくとも(二量体を形成する)第1および第2の開裂ハーフドメインを有する融合タンパク質を発現する。第1の開裂ドメインは、触媒的に不活性化され、標的部位への融合タンパク質の亜鉛フィンガー部分の結合および開裂ハーフドメインの二量体化時に、標的部位の近傍のDNA内で一本鎖切断が生成される。

一本鎖切断の存在は、相同組換えを介して外来配列の組込みを促進する。したがって、ゲノム中に挿入される少なくとも1つの外来配列を含むポリヌクレオチドは、典型的には、相同組換えを促進するために、1つもしくは複数の標的遺伝子との相同領域を含むであろう。

対象となる任意の配列(外来配列)を、本明細書で説明するように導入することができる。例示的な外来配列には、任意のポリペプチドコード配列(例えば、cDNA)、プロモーター、エンハンサー、および他の抑制配列、shRNA発現カセット、エピトープタグ、マーカ遺伝子、開裂酵素認識部位、ならびにさまざまな種類の発現コンストラクトが挙げられるが、これらに限定されない。また、外来核酸配列は、1つもしくは複数のRNA分子(例えば、小ヘアピンRNA(shRNA)、阻害RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)等)を産生し得る。そのような配列は、標準的な分子生物学的技術(クローニング、合成等)を使用して容易に得ることができ、および/またはそれらは市販されている。例えば、MISSION(登録商標)TRCshRNAライブラリは、Sigma Aldrichから市販されている。

マーカ遺伝子には、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、強化緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、強化された細胞成長および/または遺伝子増幅(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)を媒介する細胞表面抗原(例えば、ΔNGFR)およびタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープタグには、例えば、FLAG、His、myc、Tap、Haのうちの1つもしくは複数のコピー、または任意の検出可能なアミノ酸配列が挙げられる。

好ましい実施形態においては、外来配列は、細胞中でポリペプチドの発現が望ましい任意のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、その任意のポリペプチドとして、抗体、抗原、酵素、受容体(細胞表面または細胞核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポータポリペプチド、成長因子、および上記のうちのいずれかの機能的断片が挙げられるが、これらに限定されない。そのコード配列は、例えば、cDNAであり得る。外来配列は、転写抑制因子もコードし得る。

例えば、外来配列は、遺伝子疾患を患う対象において欠乏しているか、または非機能的であるポリペプチドをコードする配列を含み、遺伝的疾患には、以下の軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損、アデノシン・デアミナーゼ欠損(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロフィー、アイカルディ症候群、α−1抗トリプシン欠乏、α−セラセミア、アンドロゲン不感性症候群、アペール症候群、催不整脈性右室異形成、異形成、毛細血管拡張性運動失調、バース症候群、β−サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナヴァン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、有痛脂肪症、外胚葉異形成症、ファンコニ貧血、進行性骨化性線維形成異常症、脆弱性X症候群、ガラクトース血症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、β−グロビン(HbC)の6番目のコドンにおけるヘモグロビンC突然変異、血友病、ハンチントン病、フルラー症候群、低ホスファターゼ血症、クラインフェルター症候群、クラッペ病、ランガー・ギーディオン症候群、白血病接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、大脳白質萎縮症、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖症(MPS)、爪・膝蓋骨症候群、腎性尿崩症、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、骨形成不全症、ポルフィリン症、プラダーウィリ症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群、サンフィリポ症候群、重度複合免疫不全症(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス・マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ・サックス病、血小板減少性橈骨欠損症(TAR)症候群、トレチャー・コリンズ症候群、トリソミー、結節硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォン・ヒッペル・リンドウ病、ワーデンバーグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット・アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖性症候群(XLP、OMIM番号308240)の遺伝的疾患のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。

一本鎖開裂の後の標的組込みによって治療することができるさらなる例示的疾患には、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリ病、およびテイ・サックス病)、ムコ多糖症(例えば、ハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球病、HbC、α−サラセミア、β−サラセミア)、および血友病が挙げられる。

特定の実施形態においては、外来配列は、マーカ遺伝子(上述)を含むことができ、それによって、標的組込みを受けた細胞、およびさらなる機能性をコードする連結された配列の選択を可能にする。

さらに、発現には必要ではないが、外来配列は、転写または翻訳抑制配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インスレーター、内部リポソーム侵入部位、2Aペプチドおよび/またはポリアデニル化信号をコードする配列であり得る。

本明細書で説明するヌクレアーゼは、1つもしくは複数のゲノム配列の不活性化(部分的または完全)に使用することもできる。不活性化は、例えば、コード配列内へのミスセンスまたはノンセンスコドンの標的組換え、遺伝子または抑制領域が分裂されるような、遺伝子またはその抑制領域内への不適切な配列(すなわち、「スタッファ」配列)の標的組換え、または転写物のミススプライシングを起こすようにイントロン内へのスプライス受容体配列の標的組換えによって、達成することができる。

内在性遺伝子のZFN媒介不活性化(例えば、ノックダウンまたはノックアウト)を使用して、例えば、アポトーシスまたはタンパク質産生(例えば、フコシル化等の翻訳後修飾)に関与する遺伝子に欠損する細胞株を生成することができる。ZFN媒介不活性化を使用して、トランスジェニック生物(例えば、植物またはトランスジェニック動物)を生成することもできる。

感染するまたは組込みされたウイルスゲノムの標的開裂を使用して、宿主内のウイルス感染を治療することができる。また、ウイルスの受容体をコードする遺伝子の標的開裂を使用して、そのような受容体の発現を阻害することができ、それによって、宿主生物のウイルス感染および/またはウイルスの拡大を予防する。ウイルス受容体(例えば、HIVのCCR5およびCXCR4受容体)をコードする遺伝子の標的突然変異生成を使用して、それらの受容体がウイルスに結合できないようにすることができ、それによって、新たな感染を防止し、かつ既存の感染の拡大を阻害する(例えば、国際公開特許第2007/139982号を参照)。標的にされ得るウイルスまたはウイルス受容体の非制限例には、HSV−1およびHSV−2等の単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、ならびにHHV6およびHHV7が挙げられる。肝炎ウイルスには、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、Δ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)が挙げられる。他のウイルスまたはそれらの受容体は、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス等)、カリシウイルス科、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルス等)、フラビウイルス科、コロナウイルス科、レオウイルス科、ビルナウイルス科、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス等)、フィロウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、流行性下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス等)、オルソミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスタイプA、B、C等)、ブンヤウイルス科、アレナウイルス科、レトロウイルス科、レンチウイルス科(例えば、HTLV−I、HTLV−II、HIV−1(HTLV−III、LAV、ARV、hTLR等とも称される)、HIV−II、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピロマーウイルス(HPV)、インフルエンザウイルス、およびダニ媒介性脳炎ウイルスを含むがこれらに限定されない、ウイルスを標的とし得る。これらおよび他のウイルスの説明については、例えば、Virology,3rd Edition(W.K.Joklik ed.1988)、Fundamental Virology,2nd Edition(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.1991)を参照されたい。HIVの受容体には、例えば、CD4、CCR−5、およびCXCR−4が挙げられる。

本明細書で説明する方法および組成物は、例えば、単離されたDNA鋳型内の部位特異的切れ目の導入、核酸増幅(例えば、クローニング、ライブラリ産生)、任意のサンプル中の核酸検出(例えば、遺伝的疾患および/または病原体の存在の診断)、ゲノム歩行、DNAメチル化分析の分析、および同等物のためのツールとして生体内内容物に使用することもできる(例えば、米国特許第7,314,714号、同第7,112,423号、同第7,090,804号、同第6,884,586号、および同第6,395,523号を参照)。例えば、本明細書で説明するニッキングヌクレアーゼは、単独または他の酵素と組み合わせて使用して、長く、非相補的のオーバーハングならびに他の構造物を生成することができる。

また、本明細書で説明する組成物は、鎖置換増幅(SDA)(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の検出を代替する迅速(15分ほど短い)な検出法を提供する、等温DNA増幅アプローチ)のための切れ目の入った(つまりギャップの入った)二本鎖DNAの生成のために使用することができる(例えば、米国特許第5,523,204号、Walker et al.(1992)Nucleic Acids Res.20(7):1691〜1696を参照)。今日までのSDAの使用は、半ホスホルチオエートDNA二重鎖を産生するために、修飾されたホスホルチオエートヌクレオチドによるものであるが、その修飾された鎖上の半ホスホルチオエートDNA二重鎖は、酵素開裂に耐性であり得、置換反応を駆動するために消化ではなく酵素的ニッキングをもたらす。または今日までのSDAの使用は、二本鎖DNAを切断しない改変された「ニッカーゼ」酵素によるものである。したがって、本明細書で説明するヌクレアーゼは、SDAが現在適用されている任意の用途に容易に適応することができる。したがって、本発明の組成物は、核酸配列の検出、および、したがって、任意のサンプル(例えば、血液、尿、血漿、組織サンプル、単離細胞、固定細胞等)からの遺伝的疾患および/または病原体(HPV、肝炎ウイルス(HCV、HBV、HAV)、HIV、ヒト結核菌、およびクラミジアトラコマチス等)の存在の診断に使用することができる。

さらなる生体内用途には、エキソヌクレアーゼによる分解の生成が挙げられる。例えば、本明細書に説明するニッキングヌクレアーゼは、ネストした欠失の生成のためにS1と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第7,244,560号、同第6,867,028号、および同第6,828,098号を参照)。

実施例1:突然変異開裂ドメインを有するZFNの設計および構築 国際公開第2007/139982号に記載されるように、CCR5を標的とする亜鉛フィンガータンパク質を、米国特許第2008/0131962号に記載するように、基本的には、米国特許第20050064474号、および国際公開第2005/014791号に記載するように、改変された開裂ドメインに作動的に連結させた。

具体的には、8196zと称したCCR5−結合亜鉛フィンガータンパク質を、(1)「8196zKK」と称した亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を形成するためのE490KおよびI538K突然変異、または(2)「8196zDR」と称したZFNを産生するためのD483R突然変異のいずれか一方を有する偏性ヘテロ二量体形成開裂ドメインに融合させた。同様に、8267と称したCCR5−結合亜鉛フィンガータンパク質を、(1)「8267EL」と称したZFNを形成するためのQ486EおよびI599L突然変異、または(2)「8267RD」と称したZFNを形成するためのR487D突然変異のいずれか一方を有する偏性ヘテロ二量体形成開裂ドメインに融合させた。すべての4つのZFNの触媒不活性形態も、アミノ酸残基(DNと明示するDからNへの突然変異)、467(D467Aと明示するDからAへの突然変異)、または469(K469Aと明示するKからAへの突然変異)の部位特異的突然変異生成によって調製した。

実施例2:1つの触媒不活性開裂ドメインを有する開裂ドメインの二量体は、一本鎖切断を誘導する 実施例1に説明するZFNを、さまざまな対の組み合わせで使用し、開裂事象を評価した。特に、実施例1に説明するZFN変異型を、転写/翻訳システム(Promega)を連動したTNT T7Quick(登録商標)を使用して合成した。

ZFN標的部位を含む適切な基質を、292塩基対基質を生成するためのCCR5ZFN結合領域にフランキングするCCR5配列のPCR増幅によって生成した。これらの基質を、T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、32P末端標識し、以下のZFN対:8196zKKおよび8267EL(WT)、8196zKKおよび8267EL(8267ELは、触媒的に不活性させる点突然変異DN(DN)を含む)、8196zKKおよび8267EL(8267ELは、触媒的に不活性させる点突然変異D467A(D467A)を含む)、8267RDおよび8196zDR(WT)、8267RDおよび8196zDR(8196zDRは、触媒的に不活性させる点突然変異DN(DN)を含む)、ならびに8267RDおよび8196zDR(8196zDRは、触媒的に不活性させる点突然変異D467A(D467A)を含む)と共にインキュベートした。放射標識された基質DNAおよびZFNタンパク質の混合物を、下記に説明する修正を加えて、以前説明したように、37℃で2時間、インキュベートした(Miller et al.(2007)Nat.Biotech.25:778〜785)。

開裂DNAを、フェノール/クロロホルムによって抽出し、未処理(二本鎖開裂産物)またはDNA変性溶液(1.0Mのグリオキサル、10mMのNaH2PO4/Na2HPO4、pH7.0、50%のDMSO)で処理して、一本鎖DNAを生成し、その後10%のReady(登録商標)gel TBE gel(Invitron)上で分離した。

図2Aに示すように、二本鎖開裂産物を、左右両方のFokI開裂ハーフドメインが触媒活性である、ZFN対(8196zKK+8267EL(WT)または8267RD+8196zDR(WT))のみを用いて効率的に生成した。未切断親DNA(292bp)は、すべてのZFN対と共に存在する。2つの断片(約168bpおよび約124bp)は、両方のZFN(8196zKK+8267EL(WT)または8267RD+8196zDR(WT)対)が触媒活性であったときに見られた。ZFNのうちの1つが、示す点突然変異体によって触媒的に不活性化される、すべてのZFN対の組み合わせでは、CCR5標的DNA内に二本鎖切断は生成されなかった。

しかしながら、図2Bに示すように、1つの触媒不活性ZFNとのZFN対は、一本鎖切断を誘導した。特に、二本鎖開裂産物(図2A、左から3つ目および8つ目の列)中の両方のFokI開裂ハーフドメインが触媒活性であるときに見られた約168bpの断片は、ZFN対(8196zKK+8267EL DNおよび8196zKK+8267EL D467A(1つの触媒不活性開裂ドメインを含む))を用いて処理された一本鎖開裂産物においても見られた(図2B、左から4つ目および5つ目の列を参照)。より小さな約124bpの断片は、各DNA鎖の5′末端のみが末端標識されたため、見られない(図2Cを参照)。

同様に、二本鎖開裂産物(図2A、左から3つ目および8つ目の列)中の両方のFokI開裂ハーフドメインが触媒活性であるときに見られた約124bpの断片は、8267RD+8196zDR DNまたは8267RD+8196zDR D467A(それぞれ触媒不活性開裂ハーフドメインを含む)で処理された一本鎖開裂産物においても見られた(図2B、左から9つ目および10つ目の列を参照)。再度、より大きな約168bpの断片は、各DNA鎖の5′末端のみが末端標識されたため、これらのサンプル中では、見られない(図2Cを参照)。

これらの結果は、1つの開裂ハーフドメインが触媒的に不活性化された開裂ハーフドメインの二量体の使用が二本鎖DNA内にSSB/切れ目を生成することを表す。

実施例3:細胞内の一本鎖アニーリングによるSSB/切れ目の修復 A.酵母細胞 SSB/切れ目を、標的遺伝子座で組換えベースのゲノム編集を誘導するためのさらなる方法として使用することができるかを評価するために、我々は、Doyon et al.(2008)Nat Biotechnol 26:702〜8および米国特許第20090111119号に基本的に説明されるように、まず、酵母中でこのシステムを試験した。

CCR5ZFN−標的部位がMEL1遺伝子の2つのオーバーラッピングと非機能的断片との間に導入された、SSA−MEL1レポータ酵母株を、ZFN発現プラスミド(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK(DN)、ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK(D467A))または対照ベクター(対照)を用いて形質転換させた。ZFN発現は、グルコース媒体中で一晩培養し、カラクトシダーゼ活性を分析する前に2〜6時間の2%のガラクトース中の培養細胞によって誘導させた。

カラクトシダーゼ活性の有意な増加が、対照ベクター(2.7〜4.1mU)で処理された培地と比較すると、DN/WT(40.0〜75.5mU)またはD467A/WT(51.7〜96.0mU)ZFNで処理された培地内のガラクトースによる2〜6時間のZFN発現の誘導と共に認められ、それは、本明細書で説明するZFNによって誘導されたSSB/切れ目が組換え誘導であり、かつ酵母中の一本鎖アニーリングによって修復することができることを示している。

DSBではなく、SSB/切れ目のSSA修復を介するZFN誘導MEL1発現を確実にするために、ZFNのDSB形成を誘導する能力も評価した。相同的鋳型配列がない場合、DSB誘導は、コロニー内の99.8%以上の酵母細胞に致死的である。HO遺伝子座に組込みされたCCR5ZFN標的部位を有する酵母細胞を、ZFN発現プラスミドを用いて形質転換させ、10倍の連続希釈で、グルコースまたはガラクトースを含有する最小限の媒体内で培養した。ZFNがDSBを誘導しない細胞のみがZFN発現の誘導に生き残ると予想される。

これらの細胞は、これらの細胞内に導入されたZFN発現プラスミドに関わらず、グルコースの存在下(ZFN発現の誘導なし)でよく増殖した。我々は、対照ベクターを用いて処理された培地と比較すると、ガラクトースの存在下で、WT/WT ZFNを用いて処理されたときに、培地内で生存した酵母細胞の数の2〜3ログの減少を認めた。対照的に、WT/WT ZFNのうちの1つをZFN変異型(DNまたはD467A)のうちの1つで置換する発現コンストラクトを用いて形質転換された酵母は、対照ベクターを用いて処理されたこれらの培地と区別がつかなかった。これらの培地から採取した抽出物のウェスタンブロット分析は、ZFNタンパク質の発現レベルが同様であったことを裏付けた。

認められた致死性が、組込みされたCCR5標的部位の存在に完全に依存するため、それは、野生型ZFNによるランダムDSBの生成によるものではない。したがって、これらの結果は、生細胞の内容において、SSBを生成するZFNが、SSB/切れ目形成を介してSSA媒介修復を誘導し、DSBを触媒しないことを裏付けた。

B.哺乳類細胞 SSB/切れ目が、哺乳類細胞中のHDR依存性SSA経路によって修復することができるかを評価するために、K562細胞をZFN発現プラスミドおよびSSA−GFPレポータプラスミドを用いて共トランスフェクトし、そこでは、反復された相同配列を有するeGFPオープンリーディングフレームがCCR5ZFN標的部位をコードする一続きのDNAに隣接し、次いで、SSA媒介修復を受け、かつGFpを発現する細胞の数をフローサイトメトリー分析によって監視した。

図3に示すように、SSA−GFPレポータのみを用いて処理されたサンプル(0.67%)よりも、DN/WT(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+SSA−GFPレポータ、3.55%)、またはD467A/WT(ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK+CCR5−SSA−GFPレポータ、3.40%)で処理されたサンプルにおいて、有意により多くのGFP+細胞が認められたが、それは、WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+GFPレポータ、8.58%)を用いて処理されたサンプルと比較すると、2〜3倍少ない。

これらのデータは、SSBを生成するZFNによって生成されたSSB/切れ目が哺乳類細胞のSSA経路によって修復することもできることを示す。

実施例4:一本鎖切断は、相同組換えによる標的組込みを促進する SSB/切れ目を誘導して、相同組換えおよび/またはNHEJを促進するZFNの能力も決定した。

簡潔に言うと、K562細胞を、表1に示すZFNの組み合わせのみ、または表1に示すZFNの組み合わせとCCR5パッチドナー配列を用いて処理した。ゲノムDNAを、処理した細胞から3日後に収集し、次いで、Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイおよびTaqMan(登録商標)qPCRアッセイによりNHEJ事象について試験した。また、RFLPアッセイを使用して、相同組換えによる標的組込みを試験した。

A.非相同末端結合 上述のように、NHEJ事象の百分率を、Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイおよびTaqMan(登録商標)qPCRアッセイにより推定した。簡潔に言うと、Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイを、Miller et al (2007)Nat.Biotech.25:778〜785)に説明するように実施した。TaqMan(登録商標)qPCRアッセイを、メーカーの使用説明書に従い実施して、CCR5ZFNを用いた二本鎖開裂の後の約10〜30%の細胞中に生じることで公知の5bpの挿入の存在を測定した。したがって、特定的なプライマーを、この五量体挿入事象に基づき設計し、試験し、最適化した。本アッセイは、五量体挿入配列を含むプラスミドDNAの1つのコピーを検出することが可能である。本アッセイは、ゲノムDNAサンプル中の0.01%(1e−4)のNHEJ事象を容易に検出することもできる。

非切断の親DNA(292bp)の他に、開裂した大断片(約168bp)および小断片(約124bp)の存在は、アッセイプロセス中のDNA配列のNHEJ誘導修飾およびその後のDNAヘテロ二本鎖の形成によって、Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼによる開裂を示す。

表1および図4Aに示すように、結果は、野生型(WT)ZFN、8196zKK+8267EL、または8267RD+8196zDR(1および9と標識された列)の組み合わせがDSBを誘導し、そのうちの54.3%および36.7%が、それぞれ、NHEJによって修復されたことを示す。野生型ZFNのみを使用したNHEJを示す図5Bも参照されたい。

対照的に、2つのZFNのうちの1つが、FokIドメイン内に触媒的に不活性化された点突然変異体を含む、他のZFN組み合わせのいずれも、放射性活性Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイおよび高感度のTaqman(登録商標)qPCRアッセイによって検出される、NHEJによる修復の欠如に基づき、二本鎖切断を誘導しなかった(図5Bを参照)。

したがって、本明細書で説明するように、1つのZFNが触媒的に不活性化される、ZFN対によって誘導されたDNAのSSB/切れ目は、NHEJを誘導することが不可能である。

B.標的組込み さまざまなドナーの標的組込みも評価した。試験したドナーには、Bg/I抑制酵素部位および2CCR5ZFN結合部位間に合計46bpの挿入を有する、より小さな46bpのCCR5−パッチドナー(R5−パッチドナー)、eGFP発現カセットがCCR5(R5−GFPドナー)に相同的な配列によって隣接される、1.6kbのCCR5−GFPドナー、およびCCR5−GFPドナーの相同的CCR5配列間のeGFPマーカを短縮NGFRレポータで置換し、かつeGFPマーカカセットをドナー鋳型プラスミド(CCR5−NGFR−outGFPドナー)上の相同的CCR5配列の外側に定置する、さらなるドナーが挙げられる。下記に特に指示しないかぎり、以下のZFN:8267−EL(またはZFN−L−EL)、8267−EL−DN(またはZFN−L−EL−DN)、8267−EL−D467A(ZFN−L−EL−D467A)および8196zKK(ZFN−R−KK)を使用した。

より小さな46bpのCCR5−パッチドナーの存在下で、野生型PCR産物を消化したBglIが2433bpであり、パッチ含有修飾されたCCR5PCR産物の断片を消化したBglIが、それぞれ、1554bpおよび925bpである制限酵素断片長多型(RFLP)アッセイによって、標的組込みを評価した。

図4Bおよび表1に示すように、野生型(WT)ZFN、8196zKK+8267ELまたは8267RD+8196zDRの組み合わせは、DSBを誘導し、そのうちの29.4%および28.4%は、それぞれ、相同組換えによって修復された。触媒活性のFokIドメインを有する1つの野生型zFNを含んだ組み合わせの大半は、0.5〜2.5%のDNA修復事象において相同組換えを誘導し、一方、触媒的に不活性化されたFokIドメインを有する2つのZFNを含む組み合わせのいずれも、相同組換を誘導することが不可能であった。さらに、野生型触媒活性または触媒的に不活性化された突然変異体のいずれかを有する単一のZFNのすべては、それら自体によって相同組換えを誘導することができなかった(図4Cおよび4D)。

また、図5Aに示すように、異なる実験において、WT/WT ZFN(DSB誘導)を用いて処理したK562細胞は、30.6%の内在性CCR5対立遺伝子においてCCR5−パッチドナーの標的組込み(TI)を示した。DN/WTまたはD467A/WT ZFNを用いて処理された細胞も、CCR5遺伝子座においてTI(それぞれ、7.3および8.0%)を示したが、約4倍低下したレベルの効率であった。TIは、単一のZFN(WT、DN、またはD467A)を用いて処理された任意のサンプル中で検出することができなかった。

CCR5−パッチドナーを使用する実験における未選別のプールに由来する単一細胞クローンの遺伝子型決定も実施した。K562細胞を、表2に示すドナーDNA、およびZFN発現プラスミドの組み合わせ(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK(WT)、ZFNーL−EL−DN+ZFN−R−KK(DN)、またはZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK(D467A))を用いて共トランスフェクトした。未選別または選別されたプールに、限界希釈による単一細胞クローニングを行なった。単一細胞由来のクローンを、細胞由来の顕微鏡下で選択し、その後の遺伝子型決定分析によって試験した。

表2に示すように、25%以上の拡張クローンは、CCR5遺伝子座内への標的組込みに対してヘテロ接合であり、K562細胞内のSSB/切れ目の誘導を介する、高頻度のHDR駆動ゲノム修飾を裏付けた。

同様に、上述のより大きな1.6kbのCCR5−GFPドナーを、WT/WT CCR5ZFNおよびニッカーゼ突然変異ZFN対と共に、K562細胞に導入して、CCR5遺伝子座内へのGFP発現カセットの標的組込みを評価した。簡潔に言うと、Moehle et al.(2007)Proc Natl Acad Sci USA104:3055〜3060に説明されるように、University of California(Berkeley,CA)の施設において、GFP+細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)によって選別し、この選別された群を使用して、単一細胞由来クローンを生成した。

WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+CCR5−GFP)を用いて処理されたサンプルに由来する75個のGFP+クローンの中で、70個のクローン(93.3%)がTI事象を有し、58個のクローン(77.3%)がNHEJ事象を有した。対照的に、DN/WT ZFN(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+CCR5−GFP)を用いた処理によって修飾されたクローンは、NHEJベースの修飾を示さなかったが、合計93個のクローンのうちの61個(65.6%)は、TI事象を呈した。D467A/WT ZFN(ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK+CCR5−GFP)を用いて処理された細胞に由来する95個のクローンのうちの1個(1.1%)が、CCR5においてNHEJ様突然変異を示したが、67個のクローン(70.5%)は、TI事象を呈した(表2を参照)。

CCR5−tNGFR−outGFPドナーを使用する実験では、ドナー上でコードされた配列のHDR駆動TIを受ける細胞は、GFP(NGFR+GFP−)ではなく、NGFRマーカのみを発現するべきである。dGFP(GFP+)の発現は、エピソーマルDNAの存在、または不明部位でのドナープラスミドのランダム組込みを示すであろう。

表面NGFR発現を細胞に濃縮させるために、細胞を、まず、抗NGFRmAb(BD Pharmingen)を用いてインキュベートし、洗浄し、次いで、CELLection Pan マウスIgGキット(Invitrogen)に提供されるDynalビーズに結合したヤギ抗マウスIgGを用いてインキュベートした後、磁場を通過させた。次いで、ビーズを、製造業者の説明書(Invitrogen)に従い、DNaseI消化によって、濃縮細胞から除去した。あるいは、細胞を、非染色、またはPE(BD Pharmingen)に結合した抗NGFRmAbを用いてインキュベートし、次いで、フローサイトメトリー細胞選別機を使用して、GFPおよび/またはNGFR発現レベルに基づき選別した。

Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイで決定されるように、WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+CCR5−tNGFR−outGFP)を用いて処理された細胞に由来する、選別されたNGFR+GFP−細胞プールは、高レベル(63.2%)のNHEJベースの修飾を含んだが、NHEJ修正は、以下のZFN(DN/WT(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+CCR5−tNGFR−outGFP)またはD467A/WT(ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK+CCR5−tNGFR−outGFP))で処理された細胞中で検出されなかった(図6A)。NHEJによる修飾のレベルにおけるこの差異は、NGFR+GFP+細胞群および未選別プールの両方でも認められた。

CCR5−tNGFR−outGFPドナーおよび切れ目誘発ZFN(DN/WTまたはD467A/WT)を用いて処理された細胞は、Surveyor(登録商標)ヌクレアーゼアッセイを使用して、NHEJを呈さなかったが、我々は、サザンブロット検出されるように、これらのサンプルに由来するNGFR+GFP−細胞中の18%超のCCR5対立遺伝子が、標的挿入事象を有したことを発見した(図6B)。さらに、DN/WTおよびD467A/WT ZFNを用いて処理されたサンプルから生成された単一細胞由来のクローンは、91個のうちの17個(78%)、および96個のうちの74個(77.1%)のクローンが、それぞれ、それらのゲノム内にTIを有することを裏付けた(表2)。対照的に、ZFN処理されたサンプルに由来する、選別されたNGFR+GFP+細胞においてTI事象は見られず、それは、ドナープラスミドのランダム組込みを受けた細胞を濃縮させるであろう。恐らく、CCR5でのさまざまな種類のNHEJ修飾、ドナーDNA鋳型のランダムな組込み、またはエピソーマルDNAとしてのドナープラスミドの安定した持続性の存在によってもたらされた、予想されるTIバンドの他に、複数のサザンブロットバンドが、WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+CCR5−tNFR−outGFP)処理されたサンプルに由来する選別されたNGFR+GFP+細胞において見られた。

表2に示すように、25%超の拡張クローンは、CCR5遺伝子座内への標的組込みに対してヘテロ接合であり、SSB/切れ目の誘導を介して高頻度のHDR駆動ゲノム修飾を裏付けた。

したがって、ZFN開裂部位における標的または標的外のNHEJ突然変異の減少または除去により、DNA中の一本鎖切断(切れ目)は、哺乳類(例えば、ヒト)細胞において相同組換えを誘導することができ、任意のDNA配列の標的組込みに使用することができる。

実施例5:Solexa(登録商標)大規模配列決定 SSB/切れ目がNHEJ経路によって修復されるかどうかをさらに評価するために、我々は、WT/WT、D/WT ZFN、または対照で処理されたK562細胞のCCR5標的遺伝子座のSolexa(登録商標)大規模配列決定を実施した。簡潔に言えば、ゲノムDNAを、ドナー分子のCCR5相同領域の外側に位置する一対のCCR5プライマーを使用して増幅させた。この増幅させた2.5kbのCCR5断片を、ゲル精製し、BpmIおよびxhoI抑制酵素部位を含むプライマーを使用する内部PCR反応の鋳型として使用した。

配列決定が推定ZFN開裂部位の近傍で開始されるように、次いで、単位複製配列をBpmIおよびXhoIを用いて消化し、PCR産物の16bpの5′末端を除去した。その消化した産物を、ゲル精製し、BpmIまたはXhoI消化DNA様末端を有し、各実験に特有のタグまたは3つのヌクレオチド「バーコード」を含まないアダプタに結紮した。次いで、アダプタに結紮されたPCR産物をゲル精製し、Illumina Genomic DNA Primers(Illumina)を使用してPCR増幅させた。得られたPCR産物に、California Institute for Quantitative Biosciences,University of California(Berkeley,CA)において、Solexa(登録商標)大規模配列決定を実施した。特注コンピュータスクリプトを使用して、WTであるか、またはNHEJ媒介の欠失または挿入と一致した、すべての配列を抽出した。

485,000を超える品質配列読み取り(各塩基では、>99%信頼度)を、試験したサンプルのそれぞれから分析した。WT/WT ZFNサンプル(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ)に由来する配列は、713,186の配列のうちの260,509(36.5%)が、NHEJによって修飾されたように思われたことを示した(表3を参照)。

著しく対照的に、D/WT ZFN(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ)から分析された配列は、944,605の配列のうちの43(0.0046%)のみが、NHEJに一致する突然変異を呈し、7,900倍超のNHEJの減少を明らかにした。D/WT ZFNで処理された細胞の突然変異率は、ドナーDNAのみ、またはドナーおよび単一ZFNを用いて処理された試料からのデータに基づき、恐らく、PCR増幅および配列決定工程中に生成されたエラーによって引き起こされる、アッセイのバックグラウンドノイズ内(0〜0.0058%)である。これは、対照およびZFNサンプル内で特定された少数の特有の配列変化によっても支持されている。認められた配列修飾の種類の大きな多様性は、WT/WT ZFNで処理されたサンプルに見られるように、これらの修飾がNHEJによるものであった場合に、予想されるであろう。

CCR5−パッチドナーの存在下でDN/WT ZFNを用いて処理された細胞は、7.3%の標的組込み事象を有し、それは、ZFNを使用するNHEJよりも、HDRに対して、1,500倍超の優先があることを意味する。単一ZFNの追加は、NHEJによる遺伝子座の修飾をもたらさず、DNA上の適切な配向の2つのZFNの結合がDSB形成に必要であるというさらなる証拠を提供することに留意されたい。

これらのデータは、SSB誘導ZFNで処理されたサンプルにおいてNHEJ事象がないか、または非常に少ないレベルのNHEJ事象が存在することを示唆した。

実施例6:触媒的に不活性化されたZFNを有するZFN対によって誘導されたDSB形成のゲノムワイド評価 SSB/切れ目は、内在性反応酸素種によるか、またはDNA代謝(DNA修復または複製等)中に産生された、最も高頻度の種類のDNA損傷のうちの1つであり、それは、鋳型として無傷の逆鎖を用いて、DNAポリメラーゼおよびリガーゼによって正確に修復することができる(Caldecott (2008)Nat Rev Genet 9:619〜31を参照)。対象とする標的部位ではなくゲノム部位において低レベルのDSBを誘導させるSSB生成ZFNの可能性をさらに評価するために、我々は、γH2AXおよび53BP1が、DNA損傷の自然反応としてDSBの部位に補充されるため、γH2AXおよび53BP1発現を検出することによって、DSB形成のゲノムワイド評価を実施した。

簡潔に言えば、γH2AXの細胞内染色では、ヌクレオフェクション後のさまざまな時点(例えば、1日目、2日目、3日目および7日目)に収集された細胞を、パーマ/洗浄緩衝液(0.05%のサポニン、2.5%のFBS、およびPBS中の0.02%のNaN3)を用いて透過処理し、次いで、抗γH2AXモノクローナル抗体(Upstate)を用いてインキュベートした後、Alexa Fluor488結合ヤギ抗マウス免疫グロブリン(Ig、Invitrogen)を用いてインキュベートした。次いで、細胞を、Guava Easycyte(登録商標)単一細胞分析システム(Guava(登録商標)Technologies)を使用して分析した。

53BP1免疫細胞化学では、Perez et al.(2008)Nat Biotechnol 26:808〜16に以前に詳細に説明されるように、細胞を、サイトスピン(Thermo Scientific)によってスライドを調製するために収集し、抗53BP1ウサギポリクローナル抗体(Bethyl Laboratories)を用いて染色した後、免疫蛍光顕微鏡(Nikon)に接続されたCCDカメラを用いて撮影した。

ZFNおよびドナーを有する細胞をトランスフェクトするために使用した実験的条件下で、有意な量のγH2AX発現が、DN/WT(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ、0.33%のγH2AX+)で処理された細胞ではなく、WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ、14.70%のγH2AX+)を用いて処理された細胞において、トランスフェクションの2日後に認められた。しかしながら、わずかに高いγH2AX発現が、D467A/WT(ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ、4.34%のγH2AX+)を用いて処理された細胞において認められ、それは、D467A/WT対が少量のDSB活性を保持し得る以前の観測と一致する。予想されたように、DN/WT対(ZFN−L−EL−DN+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ、0.84±0.17遺伝子座/細胞)を用いて処理された細胞よりも、WT/WT ZFN(ZFN−L−EL+ZFN−R−KK++CCR5−パッチ、6.09±1.07遺伝子座/細胞、平均±SD)を用いて処理された細胞において、より多くの53BP1+遺伝子座も認められ、それは、実質的に、バックグラウンドのレベルである。CCR5−パッチドナーのみ(0.82±0.22遺伝子座/細胞)を用いてトランスフェクトされた対照細胞と比較すると、53BP1+遺伝子座の数の中等度の増加が、D467A/WT(ZFN−L−EL−D467A+ZFN−R−KK+CCR5−パッチ、1.77±0.33遺伝子座/細胞)を用いて処理された細胞において認められた。γH2AXおよび53BP1の発現は、トランスフェクション後1週間以内にバックグラウンドレベルに戻った(図7)。

これらの実験条件下での非抑制のγH2AXおよび53BP1発現の欠如は、本明細書で説明するZFNが、バックグラウンド以上に形成されたDSBの数を増加させず、かつ、SSB誘導ZFNで処理された細胞に見られた標的組込みが、DSB誘導HDRではなく、切れ目誘導HDRを介して生じることへのさらなる支持を提供することをさらに裏付け、ヒト細胞のゲノムを編集するための代替の方法を提供する一方、NHEJを介する標的上および標的外の両方の突然変異生成の可能性を減少させる。

実施例7:非CCR5内在性遺伝子座におけるSSB−ZFNで開始された標的組込み SSBを誘導するZFNが、CCR5遺伝子座以外の遺伝子座におけるゲノムの編集に使用することができるかをさらに評価するために、我々は、CXCR4遺伝子座においてDN ZFNで開始された標的組込みを試験した。CXCR4を標的とした亜鉛フィンガードメインを含むWTおよびDN ZFNを、米国特許第61/210,636号に説明されるように調製した。その後、K562細胞を、CXCR4DN ZFN:CXCR4−ZFN−L−EL−DN+CXCR4−ZFN−R−KKの非存在(ZFNなし)または、その存在下で、CXCR4−パッチドナーDNAを用いてヌクレオフェクトした。細胞を、4〜7日間回復させ、次いで、同一のDNAを用いて、再度、ヌクレオフェクトした。このプロセスを、合計4回のヌクレオフェクションのために反復した。次いで、細胞を、gDNA調製およびRFLPアッセイのために、最後のヌクレオフェクションの3日後に収集した。

図8に示すように、ヒトゲノムの染色体2上に位置する内在性CXCR4遺伝子を特異的に標的にするDN/WT ZFN対は、CXCR4遺伝子座における有意な量のTIを媒介することもできる。

これらのデータは、標的SSB誘導ZFNを使用して、HDR駆動ゲノム編集を媒介する戦略が、広域に適用可能であり得、異なる標的遺伝子座全体にわたって普遍的に適用することができ得るということを示唆する。

実施例8:核酸配列の検出 病原体を含有することが疑わしいか、または遺伝的疾患を罹患すると疑われる個人からの血液または細胞サンプルを、標準的技術に従い収集する。適切なプライマーを、遺伝的疾患または病原体に特有である標的ヌクレオチド配列のために調製する。本明細書で説明するヌクレアーゼを、標的配列および/または増幅プライマーに内部位特異的一本鎖の切れ目を誘導するように構築する。

遺伝的疾患または病原体に特有な配列が存在するときに、遺伝的疾患または病原体に特有な配列が増幅されるように、サンプルを、適切なプライマー、ヌクレオチド(増幅にはdNTP)、および酵素混合物(適切なニッキングヌクレアーゼおよびDNAポリメラーゼを含む)を用いてインキュベートする。1つもしくは複数の構成要素は、容易な検出のために、検出可能に標識し得る。

次いで、もしあれば、増幅された配列を、標準的技術、例えば、ゲル電気泳動、フローサイトメトリー、放射標識等を使用して検出する。増幅された配列の存在は、遺伝的疾患または病原体の存在を示す。

実施例9:核酸配列の検出 病原体を含有することが疑わしいか、または遺伝的疾患を罹患すると疑われる個人からの血液または細胞サンプルを、標準的技術に従い収集する。

本明細書で言及したすべての特許、特許出願、および刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。

明確に理解できるように図示および例として本開示を多少詳細に提供したが、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、さまざまな変更および修正を実施することができることは、当業者には明らかであろう。したがって、前述の説明および例を限定的であるとみなしてはならない。

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