腫瘍の処置における使用のための子癇前症胎盤間葉系幹細胞馴化培地

申请号 JP2015535152 申请日 2013-10-02 公开(公告)号 JP2015532099A 公开(公告)日 2015-11-09
申请人 コリオン・バイオテック・エス.アール.エル.Corion Biotech S.R.L.; コリオン・バイオテック・エス.アール.エル.Corion Biotech S.R.L.; 发明人 ロルフォ、アレッサンドロ; トドロス、トゥリーア;
摘要 液体培地中で子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得ることができる馴化培地(CM)が記載される。本発明の主題である馴化培地は、少なくともIP−10およびTARCタンパク質を含み、腫瘍、好ましくは上皮性腫瘍の治療的処置に使用される。
权利要求

腫瘍の治療的処置における使用のための、無血清液体基本培地中で子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得ることができる馴化培地であって、少なくともインターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP−10)および胸腺活性化制御ケモカイン(TARC)を含む馴化培地。前記腫瘍が、上皮性腫瘍である、請求項1に記載の使用のための馴化培地。前記腫瘍が、乳腺腫瘍である、請求項2に記載の使用のための馴化培地。前記馴化培地が、可溶性fms様チロシンキナーゼ−1(sFlt−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、ならびにそれらの任意の組合せから成る群から選択される少なくとも1種のタンパク質をさらに含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の使用のための馴化培地。前記馴化培地が、ENA−78、GRO、GRO−アルファ、IL−5、IL−7、IL−10、IL−15、IL−16、MCP−1、MCP−2、MCSF、MDC、アンギオゲニン、オンコスタチンm、VEGF、BDNF、BLC、CKb8−1、エオタキシン2、エオタキシン3、FLT−3リガンド、フラクタルカイン、GCP−2、GDNF、HGF、IFN−ガンマ、IGFBP−1、IGFBP−2、IGFBP−4、LIF、LIGHT、MCP−3、MCP−4、MIF、MIG、MIP−3アルファ、MIP−1ベータ、MIP−16、NAP−2、NT−3、オステオポンチン、オステオプロテゲリン、PDGFBB、ランテス、SCF、SDF、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TIMP−1およびTIMP−2、EGF、トロンボポエチン、レプチン、エオタキシン、FGF−4、FGF−6、FGF−7、FGF−9、IGFBP−3、NT−4、PARC、PIGF、ならびにそれらの任意の組合せから成る群から選択される1つ以上のタンパク質をさらに含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の使用のための馴化培地。前記胎盤間葉系幹細胞が、絨毛膜または羊膜起源である、請求項1〜5の何れか1項に記載の使用のための馴化培地。無細胞である、請求項1〜6の何れか1項に記載の使用のための馴化培地。前記子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞が、ヒト起源である、請求項1〜7の何れか1項に記載の使用のための馴化培地。請求項1に記載の馴化培地を調製する方法であって、 (i)無血清液体基本培地中で子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を培養する工程、および (ii)前記液体培地から細胞画分を全部または一部分離する工程 を含む、馴化培地を調製する方法。培養時間が、少なくとも3時間または少なくとも6時間または少なくとも12時間または少なくとも48時間または少なくとも72時間または少なくとも96時間または少なくとも120時間または少なくとも1週間である、請求項9に記載の方法。前記細胞画分が、ろ過および/または遠心分離によって前記液体培地から分離される、請求項10に記載の方法。腫瘍の治療的処置における使用のための医薬組成物であって、少なくともインターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP−10)および胸腺活性化制御ケモカイン(TARC)、ならびに任意の薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤および/または希釈剤を含む医薬組成物。可溶性fms様チロシンキナーゼ−1(sFlt−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)および腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−アルファ)、ならびにそれらの任意の組合せから成る群から選択されるタンパク質をさらに含む、請求項12に記載の医薬組成物。ENA−78、GRO、GRO−アルファ、IL−5、IL−7、IL−10、IL−15、IL−16、MCP−1、MCP−2、MCSF、MDC、アンギオゲニン、オンコスタチンm、VEGF、BDNF、BLC、CKb8−1、エオタキシン2、エオタキシン3、FLT−3リガンド、フラクタルカイン、GCP−2、GDNF、HGF、IFN−ガンマ、IGFBP−1、IGFBP−2、IGFBP−4、LIF、LIGHT、MCP−3、MCP−4、MIF、MIG、MIP−3アルファ、MIP−1ベータ、MIP−16、NAP−2、NT−3、オステオポンチン、オステオプロテゲリン、PDGFBB、ランテス、SCF、SDF、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TIMP−1およびTIMP−2、EGF、トロンボポエチン、レプチン、エオタキシン、FGF−4、FGF−6、FGF−7、FGF−9、IGFBP−3、NT−4、PARC、PIGF、ならびにそれらの任意の組合せから成る群から選択される1つ以上のタンパク質をさらに含む、請求項12または13に記載の医薬組成物。全身投与に適した剤形である、請求項12〜14の何れか1項に記載の医薬組成物。注入投与に適した剤形である、請求項15に記載の医薬組成物。経口投与に適した剤形である、請求項15に記載の医薬組成物。

说明书全文

本発明は、腫瘍性病態の治療的処置の分野に関する。

この数十年の間、抗腫瘍治療が重要な進歩を遂げたことから、かつては無情にも死の前兆であった予後がよい方向に改変されるようになり、それにより治療が可能になり、ときには治癒も可能になった症例数が増えつつある。しかしながら、一般的な腫瘍治療は、腫瘍部位や疾患のステージが外科的介入を許容しさえすれば、今でもなお主に外科的介入に基づく。外科的介入は通常化学および/または放射線療法処置が同時に行われるが、残念なことに重度の副作用を併発する。化学療法薬は全身投与されるために、その細胞毒性効果は、特に高い増殖速度を特徴とする組織において、癌細胞と健康な細胞の両方を無差別に標的とするであろう。実際に、化学療法薬は、追加の病的状態、例えば骨髄抑制および粘膜炎の発症を引き起こすであろう。放射線療法も、腫瘍領域の照射の間、健康な細胞のDNA損傷によって本質的に引き起こされる重度の副作用を誘導する可能性がある。この現象は、二次的な腫瘍の形成にもつながる可能性がある。

したがって、臨床的腫瘍学研究は、例えば癌細胞増殖および新生物細胞の転移性浸潤の間ならびに腫瘍血管新生の間、特異的に活性化される細胞機構に選択的に干渉する治療薬の使用を通して、新生物細胞をより強く標的化する作用を発揮することができる代替治療的手法の評価に焦点を置いた。

より革新的な解決策の中でも、幹細胞および生理的条件下で幹細胞によって作製された因子を使用する手法などの幹細胞に基づく治療が重要な役割を果たしている。

特に、最近の実験的証拠は、ヒト胚幹細胞が、癌細胞のin vitro増殖および腫瘍形成を選択的に阻害できる栄養性因子を分泌する可能性があることを示唆している。抗腫瘍活性は、骨髄および脂肪組織から単離された成人間葉系幹細胞(MSC)においても報告された。例えば、それは、静脈内に投与されたヒトMSCが、悪性組織に向かって選択的に移動し、腫瘍ストロマに取り込まれ、癌細胞増殖を阻害できるということが、in vivoマウスモデルにおいて観察された。活性腫瘍形成部位に向かうこの特有のMSC向性に基づいて、MSCに関する追加の治療的適用が最近開発された。これらの方法は、腫瘍領域において直接的に抗新生物活性を有する生体分子を選択的に輸送するためのビヒクルとしての、間葉系細胞の使用を含む。

上記の有望な結果にもかかわらず、診療におけるヒト幹細胞の適用は、今なお難問である。ヒト胚幹細胞は部分的にしか特徴づけられておらず、潜在的な副作用、例えば二次的腫瘍の発生の予測が困難なために、ヒト胚幹細胞は必然的に、重要な倫理の問題とバイオセイフティーの問題を伴う。他方では、MSCの治療的使用は、MSCの自然の濃度が低いために(骨髄における単核細胞の0.001%)、必然的に高度に侵襲的な手順で骨髄または脂肪組織からこれらの細胞を採取することを含み、加えてこれらの細胞を困難かつ高価なex−vivo増殖方法に晒す必要がある。

最近の研究では、胎盤間葉系幹細胞(PDMSC:placental mesenchymal stem cell)と名付けられた特定の細胞集団の、胎盤絨毛膜絨毛の間葉におけるおよび羊膜における存在が報告されている(Huang YC、Yang ZM、Chen XH、Tan MY、Wang J、Li XQら、Isolation of mesenchymal stem cells from human placental decidua basalis and resistance to hypoxia and serum deprivation.Stem Cell Rev.2009;5(3):247〜55)。胎盤組織固有の特徴のため、これらの細胞は、上昇した増殖および分化潜在とともに、それらに十分に明らかにされた寿命および調節された増殖速度を有する基礎的な特徴を提供する幹−間葉系表現型を有し、したがって、それらのin vivo使用に関連する二次的腫瘍形成の潜在的なリスクを減少させる。さらに、PDMSCは、免疫抑制および抗炎症活性を発揮することができる。

上記の特有の可塑および分化の性質ならびに胎盤組織を回収かつ使用する容易さに基づいて、胎盤間葉系幹細胞は、主に再生医学の分野において、旺盛な調査の主題であり続けている。Ruster B.および共同研究者らは、MSCが、損傷した器官および組織に向かって自発的に移動して、修復プロセスに参加する能力を有することを報告した(Ruester B、Goettig S、Ludwig RJ、Bistrian R、Mueller S、Seifried Eら、Mesenchymal stem cells display coordinated rolling and adhesion behavior on endothelial cells.Blood.2006;108(12):3938〜44)。Tリンパ球を直接的に刺激し、細胞毒性Tリンパ球に溶解抵抗性を与えるのに必要な、HLA−IIおよび同時刺激分子(CD80、CD86、CD40)の発現の欠如による、間葉系幹細胞に典型的な免疫原性の非存在は、再生医学におけるそれらの適用をさらに支持する。他の研究は、生理的胎盤の羊膜由来のPDMSCが、腫瘍細胞系増殖に阻害効果を発揮することができることを実証した(Magatti M、De Munari S、Vertua E、Parolini O.Amniotic Membrane−Derived Cells Inhibit Proliferation of Cancer Cell Lines by Inducing Cell Cycle Arrest.J Cell Mol Med.2012年1月19日.doi:10.1111/j.1582〜4934.2012.01531.x.)。

国際特許出願WO2013/093878は、子癇前症症候群の治療的処置のための、分娩生理的なヒト胎盤の絨毛膜絨毛から単離されたPDMSC細胞によって馴化された培地の使用を開示している。子癇前症は、悪化した母体胎盤炎症反応、普遍化した内皮損傷および欠陥のある胎盤発達を特徴とする重度のヒト妊娠関連症候群である。

以下の実験の節において、さらなる詳細で説明されるように、本発明者らは、液体培地中で子癇前症に罹ったヒト胎盤から単離された胎盤間葉系幹細胞を培養することによって作製された馴化培地(CM)が、腫瘍性増殖および血管形成に驚くべき抑制的効果を発揮することを観察した。特に、図1において説明されるように、上記の馴化培地による原発性および転移性腫瘍乳房組織外植片の処置は、対照と比較して、腫瘍性血管新生プロセスに関与する主要な血管増殖因子として周知のVEGF(「血管内皮増殖因子」)の発現レベルにおける、およびその発現が乳癌の予後不良と直接的に関連する活性化タンパク質−1(AP−1)ファミリーの癌遺伝子メンバーである転写因子JunBにおける有意かつ驚くべき減少を誘導する。生理的胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得られた馴化培地は、脈管形成を刺激することによって逆の効果を腫瘍性外植片に発揮するため、これらの細胞の治療効率は実に驚くべきことである。

血管形成プロセスおよび腫瘍細胞増殖に発揮される実験的に実証された抑制効果は、液体培地中でヒト子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得ることができる馴化培地の臨床的抗腫瘍有効性を強く示しており、この抑制効果は進行期で癌組織にも特に効果的であることが分かった。

上記のCM抗腫瘍効果に協奏的に寄与する子癇前症PDMSCによって分泌されるタンパク質を同定するために、本発明者らが従った実験的手法は、いくつかの異なるサイトカイン、ケモカインおよび増殖因子を特異的かつ同時に認識できる市販の抗体アレイを使用することによる、上記の培地のプロテオミクス解析をベースとした。プロテオミクス解析の結果は、下記のいくつかの因子の同定を可能にし、中でも重要なものは、IP−10(インターフェロンガンマ誘導タンパク質10)およびTARC(Thymus and Activation Regulated Chemokine:胸腺活性化制御ケモカイン)である。

したがって、本発明の主題は、腫瘍の治療的処置における使用のための、無血清液体基本培地中で子癇前症胎盤から単離された胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得ることができる、少なくともIP−10およびTARC因子を含む馴化培地(CM)である。さらに、本発明の主題は、IP−10およびTARCタンパク質を含む馴化培地および医薬組成物を作製する方法、本明細書の記載の不可欠な部分を構成する付属の特許請求の範囲において規定された全てを含む。

本発明の説明において、「子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞」という用語は、子癇前症症候群に罹った妊婦の胎盤由来間葉系幹細胞を示す。妊娠中の対象は、好ましくはヒト対象である。

胎盤起源の間葉系幹細胞は、起源の胎盤組織に基づいて様々な群に属している。実際に、ヒト胎盤は、胎児組織、例えば絨毛膜(繁生絨毛膜および平滑絨毛膜)および羊膜、ならびに母体由来組織、例えば脱落膜などの固有の構造体を含む。

好ましい態様において、本発明の主題である馴化培地は、絨毛膜起源の胎盤間葉系幹細胞を培養することによって得ることができる。好ましくは、しかし限定されるものではないが、絨毛膜間葉系幹細胞は、以下の表に記載の、細胞蛍光分析で検出された表面抗原特徴によって特徴づけられる。

あるいは、馴化培地を調製するために、上記の表に記載の表面抗原特徴を提示する羊膜由来間葉系幹細胞が使用される。

本発明の主題である馴化培地は、それらの抗腫瘍活性で有名な分泌タンパク質であるIP−10およびTARCを少なくとも含む。CXCファミリーのメンバーであるIP−10ケモカインは、インターフェロンガンマ(IFNガンマ)抗腫瘍活性の主要メディエーターである。なぜなら、IP−10は、IFNガンマによって誘導された後、CD8+Tリンパ球およびマクロファージを腫瘍部位に誘引することができ、血管新生抑制効果を発揮することができるからである。同様に、走化性誘引の役割は、TARCケモカインによっても発揮され、これは、新生物組織への活性化Th2エフェクター細胞の選択的移動を担っている。

上記のサイトカインとともに、RayBio(登録商標)ヒトサイトカイン抗体アレイ5キットによって行われたPDMSC馴化培地分析から、子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞によって分泌された他の機能的モジュレーターの存在が示され、このように明確なタンパク質発現プロファイルが同定された。

したがって、別の態様において、本発明の主題である馴化培地は、可溶性fms様チロシンキナーゼ−1(sFlt−1)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−8(IL−8)および/または腫瘍壊死因子アルファ(TNF−アルファ)も含む。sFlt−1は、強い血管新生抑制活性を有する可溶性分子であり;IL−6、IL−8およびTNF−アルファは、腫瘍細胞に対する細胞毒性の強力な炎症性サイトカインメディエーターである。

好ましくは、本発明の主題である馴化培地は、ENA−78、GRO、GRO−アルファ、IL−5、IL−7、IL−10、IL−15、IL−16、MCP−1、MCP−2、MCSF、MDC、アンギオゲニン、オンコスタチンm、VEGF、BDNF、BLC、CKb8−1、エオタキシン2、エオタキシン3、FLT−3リガンド、フラクタルカイン、GCP−2、GDNF、HGF、IFN−ガンマ、IGFBP−1、IGFBP−2、IGFBP−4、LIF、LIGHT、MCP−3、MCP−4、MIF、MIG、MIP−3アルファ、MIP−1ベータ、MIP−16、NAP−2、NT−3、オステオポンチン、オステオプロテゲリン(OSTOPROTEGERIN)、PDGFBB、ランテス、SCF、SDF、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TIMP−1およびTIMP−2、EGF、トロンボポエチン、レプチン、エオタキシン、FGF−4、FGF−6、FGF−7、FGF−9、IGFBP−3、NT−4、PARC、PIGF、ならびにそれらの任意の組合せから成る群から選択される1つ以上のタンパク質を含む。

本発明者らによって行われたサイトカイン分析では、本発明の主題である馴化培地中に以下のタンパク質は発見されなかったが、これは、それらが存在しなかったか、または非常に低い濃度および/もしくは使用されたアレイの検出限界より低い濃度で存在していたからである:GM−CSF、I−309、IL−1a、IL−1b、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、p40p70、IL−13、MIP−1、TNF−ベータ、IGF−I、IGFBP−4、TGF−ベータ3。

好ましい態様において、馴化培地は、上皮性腫瘍、より好ましくは乳腺腫瘍の治療的処置に使用される。本明細書の文脈において、「上皮性」という用語は、新生物形質転換の増殖腫瘍細胞部位の組織学的起源を示す。

PDMSC細胞を特徴づける免疫原性が存在しないことから、本発明の馴化培地は、PDMSC細胞を得た子癇前症胎盤間葉系幹細胞からなる細胞画分を任意に含んでもよい。あるいは、馴化培地は、細胞画分を含まない。

上記の馴化培地を得るための方法も本発明の範囲内であり、本方法は、 (i)無血清液体基本培地中で少なくとも3時間、子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を培養する工程; (ii)液体培地から細胞画分を、全部または一部分離する工程 を含む。

本明細書の文脈において、「基本」という用語は、哺乳類細胞の増殖を支持するのに通常必要な無機塩、アミノ酸およびビタミンを含有するが特殊な必要栄養素を有さない培地を指す。例として、これらに限定されないが、塩およびアミノ酸含有量に関して本質的に異なる以下の液体培地が挙げられる:イーグル基本培地(BME)、最小必須培地(MEM)、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Nutrient Mixture F−10(HAM’s F−10)およびNutrient Mixture F−12(HAM’s F−12)。より適切な培地の選択は、当業者のスキルの範囲内である。

本発明の方法によれば、血清中に含有される増殖因子が、子癇前症胎盤由来PDMSC細胞によって分泌された特定の因子によって引き起こされる効果を干渉したり変化させたりすることを避けるために、培地に血清は補充されない。

馴化培地を採取する前に、子癇前症胎盤由来胎盤間葉系幹細胞を、培養基質へのそれらの接着、それらの分裂増殖および上記培地を特徴づける構成要素の分泌がなされるように十分な時間培養することにより、培地を腫瘍の治療的処置に有利な効果を付与するようなものにできる。この期間は、少なくとも3時間、好ましくは少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間または少なくとも96時間または少なくとも120時間または少なくとも1週間以上である。

子癇前症胎盤由来PDMSC細胞から得られた馴化培地から、細胞画分を全部または一部分離するために、それ自体既知の任意の方法を用いることができる。例えば、本発明の馴化培地を、十分な多孔度を有するろ過複合材を使用してろ過して、懸濁液中に細胞要素およびそれらの残留物を保持させてもよい。あるいは、馴化培地と、その馴化培地を得たPDMSC細胞との分離は、遠心分離とそれによって生じた細胞そのものの沈降によって達成することができる。したがって、本発明の好ましい態様において、細胞構成要素からの本発明の馴化培地の分離は、ろ過もしくは遠心分離または両方の組合せによって行われる。分離方法の選択は、大部分は当業者の知識および技術的スキルの範囲内にある。

本発明の範囲は、本発明の馴化培地主題の抗腫瘍活性に極めて重要なものとして上記で同定された、少なくともタンパク質IP−10およびTARCを含む医薬組成物も含む。本発明による医薬組成物の追加の任意の構成要素は、以下のタンパク質である:sFlt−1、TNF−アルファ、ENA−78、GRO、GRO−アルファ、IL−5、IL−7、IL−6、IL−8、IL−10、IL−15、IL−16、MCP−1、MCP−2、MCSF、MDC、アンギオゲニン、オンコスタチンm、VEGF、BDNF、BLC、CKb8−1、エオタキシン2、エオタキシン3、FLT−3リガンド、フラクタルカイン、GCP−2、GDNF、HGF、IFN−ガンマ、IGFBP−1、IGFBP−2、IGFBP−4、LIF、LIGHT、MCP−3、MCP−4、MIF、MIG、MIP−3アルファ、MIP−1ベータ、MIP−16、NAP−2、NT−3、オステオポンチン、オステオプロテゲリン、PDGFBB、ランテス、SCF、SDF、TGF−ベータ1、TGF−ベータ2、TGF−ベータ3、TIMP−1およびTIMP−2、EGF、トロンボポエチン、レプチン、エオタキシン、FGF−4、FGF−6、FGF−7、FGF−9、IGFBP−3、NT−4、PARC、PIGF、ならびにそれらの任意の組合せ。治療的に活性の分子に加えて、本発明の主題である医薬組成物は、適切な賦形剤、ビヒクルおよび/または薬学的に許容される希釈剤を含み、その選択は当業者のスキルの範囲内である。

好ましくは、本発明による医薬組成物は、全身血流中への効果的な拡散を確実にするために、全身投与に適した製剤であり、より好ましくは注入による全身投与に適した製剤である。当然のことながら、本発明の状況において、任意のタイプの注入システムの使用が含まれ、その選択は当業者のスキルの範囲内にある。

代替の態様において、本発明の医薬組成物は、経口投与に適した任意の医薬製剤であり、その選択および調製は、当業者のスキルの範囲内にある。

以下の例は、添付の特許請求の範囲において規定された本発明の範囲をさらに説明するために提供され、制限するためではない。

例1:子癇前症胎盤由来間葉系幹細胞(PDMSC)の単離 胎盤由来間葉系幹細胞(PDMSC)を、子癇前症の妊娠由来の胎盤基底板から単離した。

子癇前症の診断を、American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)によって樹立された基準に従って行った:以前は正常圧の女性における、妊娠によって誘導された妊娠20週目以降の高血圧(収縮期≧140mmHg、拡張期≧90mmHg)およびタンパク尿(≧300mg/24h)の存在。先天性奇形、(数および/または構造の)染色体異常または明白な子宮内感染症を有する妊娠は除外した。

胎盤の採取およびその後の胎盤組織サンプリングを、分娩後、患者インフォームドコンセントに続いて、OIRM Sant’Anna−Mauriziano Hospital of Turinの倫理委員会の指針に従って行った。

膜(羊膜および絨毛膜)を、胎盤板から機械的に分離した。

全層組織生検材料を、基底脱落膜(合胞体栄養細胞との相互作用から改変された母体子宮内膜細胞から成る)の機械的除去後、胎盤基底板(胎盤絨毛膜絨毛によって形成され、子宮壁と直接接触している胎盤領域)から切り取った。

次に、胎盤生検材料を、残留血液を完全に除去するために、滅菌HBSS(ハンクス塩類緩衝液、溶液)(Gibco,Invitrogen by Life Technologies)を使用して、室温で数回洗浄した。

次に生検材料を機械的にホモジナイズし、DMEM LG(L−グルタミンおよびウシ胎仔血清−FBS非含有ダルベッコ改変最少必須培地、低グルコース)に溶解させたコラゲナーゼI 100U/ml(Gibco,Invitrogen by Life Technologies)、5μg/mlデオキシリボヌクレアーゼI(DNAse I,Invitrogen by Life Technologies)を使用して、振とう恒温水槽中で37℃で3時間、酵素消化処理した。

次いで生じた細胞懸濁液を、未消化の組織残留物を除去するために、540g、4℃で5秒間、遠心分離した。上清を採取し、直径70ミクロンの細孔を有する細胞分別フィルターを通してろ過した。ろ過後、細胞をペレット化するために、溶液を、540g、4℃で5分間、遠心分離した。次いで上清を捨て、細胞を滅菌HBSS(元の組織30グラム毎に30ml)に再懸濁した。

開始容量に対して1:3の割合になるような量のFicoll Paque Premium 1,073(GE Healthcare Europe)を、上記のように得た細胞溶液の下に敷いた。調製物を、540g、20℃で20分間、遠心分離し、勾配の中間の相に分配された単核細胞環を採取し、HBSS(元の組織の30グラム毎に50ml)に再懸濁して540g、20℃で10分間、遠心分離することによりFicollの残留物を除去した。

遠心分離後、上清を捨て、細胞を10%FBS(Gibco,Invitrogen by Life Technologies)および0.1%ゲンタマイシンを補充したDMEM LGに再懸濁した。次いで細胞を細胞培養びんに植え付け、5%CO2、37℃でインキュベートした。

5%CO2、37℃での培養で細胞を維持した。90%の集密度で、細胞を、細胞増殖を促進するために、トリプシンTrypLE Express(動物由来成分を有さない植物起源のトリプシン、GMP認定、Invitrogen Life Technologies)での処置によって分割した。

例2:子癇前症胎盤由来PDMSC細胞の特徴づけ 例1において記載した、子癇前症によって悪化した胎盤から単離した間葉系幹細胞(基底板の絨毛膜部分)を、この細胞型の典型である主要な表面抗原マーカーを分析することによって、細胞蛍光測定法によって特徴づけた。

これらの抗原の存在または非存在を、蛍光色素(Myltenyi,Bologna,Italy)がコンジュゲートしたモノクローナル抗体を使用することによって、評価した。蛍光評価によって、子癇前症胎盤由来の全てのPDMSC細胞系が、表面マーカーCD105、CD166、CD90およびCD73の発現に陽性であり、HLAII、CD34、CD133、CD20、CD326、CD31、CD45およびCD14の発現に陰性であることが実証され、したがって適正な間葉系表現型が示され、上皮/絨毛細胞および造血前駆細胞からのあらゆる混入が除外された。さらに、細胞表現型分析を、RT−PCR実験を行うことによって行い、これは、PDMSC細胞による、胚幹細胞に典型的なOct4(オクトマー結合転写因子4)およびNANOG(ホメオボックスタンパク質NANOG)遺伝子の発現を示した。

PDMSC幹細胞性を評価するために、培養の第3継代で、細胞を、3つの異なる系統:骨芽細胞、脂肪細胞および軟骨芽細胞における、それらの分化潜在力に関して調べた。分化を、特異的誘導培地を使用することによって得た。骨原性分化に関して、細胞培養物を、20%FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、2mM L−グルタミン、20mM β−ホスフェート−グリセロール、100nMデキサメタゾンおよび250μMアスコルベート−2−ホスフェートで補充したα−MEM中でインキュベートした。脂肪生成分化に関して、細胞培養物を、20%FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、12mM L−グルタミン、5μg/mlインスリン、50uMインドメタシン、1×10−6Mデキサメタゾンおよび0.5uM 3−イソブチル−1−メチルキサンチンで補充したα−MEMでインキュベートした。軟骨形成分化に関して、細胞培養物を、R3−IGF−1 1mL、bFGF2.5ML、0.5mLトランスフェリン、ウシインスリン1M、25mL FBSおよびゲンタマイシン/アンホテリシン−B 0.5mLで補充した軟骨細胞基本培地中でインキュベートした。培地を、3週間の間、1週間に2回交換した。細胞分化を、適正な染色を使用することによって評価した。骨芽細胞分化を、アリザリンレッドSでの染色によって評価した。アリザリンは、不溶性かつ強く染色されたカルシウムプラークの形成を判定することから、骨基質の強調表示が可能である。軟骨形成分化を、酸性ムコ多糖類ポリアニオン間で塩橋を形成し、グリコサミノグリカンを青色に染色するアルシアンブルー染色によって評価した。脂肪生成分化を、染色溶液中に存在する溶媒によって可溶化された脂質を強調表示し脂肪沈着を赤色に染色するオイルレッド染色によって評価した。

例3.馴化培地の作製 本発明の主題である馴化培地を得るために、子癇前症PDMSCを、起源の胎盤組織由来の絨毛性および/または造血性混入細胞の非存在によって実証されるように、それらが純度の適正な程度に達した時、第3〜第5継代にわたり植え継いだ。具体的には、細胞を、1×105細胞/mlの密度で、5%CO2、37℃の温度で、ウシ胎児血清(FBS)を有さないDMEM LGに植え付けた。PDMSCを、少なくとも3時間から1週間以上培養した。次いで実証された時点で馴化培地を採取し、その後、遠心分離および/またはろ過を行い、混入細胞片を除去した。必要な場合、このようにして得られた馴化培地は、−80℃で凍結することによって保存してもよい。

例4:サイトカインアレイによる馴化培地の分析 同じ試料中の80種の異なるサイトカインの同時分析が可能な市販のRayBio(登録商標)ヒトサイトカイン抗体アレイ5キットを製造者の説明書に従って使用して、子癇前症PDMSC細胞によって分泌された本発明の馴化培地中に存在するサイトカインのプロファイルを調査した。具体的には、その手順は、アレイ膜上にスポットされた抗体に基づいており、この抗体は、サイトカインが分析される試料中に存在する場合、それを認識しかつ捕えることができる。この実験の状況において、免疫複合体形成の部位でアレイ膜上に発生したシグナルを、ImageQuantソフトウェアを使用して濃度測定分析によって数量化した。同定されたサイトカインの発現レベルを、絶対値として判定せず、キット中に含まれた標準対照の群と比較して、百分率として標準化し、正の対照に100%の値を、負の対照に0%の値を割り当てた。上記の実験の結果を、以下の表に示す:

さらに、サイトカイン分析では、本発明の主題である馴化培地中に以下のタンパク質の存在は検出されなかったが、これは、それらが存在しなかったか、またはアレイの検出限界未満であったからである:GM−CSF、I−309、IL−1a、IL−1b、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、p40p70、IL−13、MIP−1、TNF−ベータ、IGF−I、IGFBP−4、TGF−ベータ3。

子癇前症間葉系幹細胞によって作製された、血管新生抑制sFlt−1を、リアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応、遺伝子発現レベルを評価する)およびウエスタンブロット分析(タンパク質発現レベルを評価する)によって検出した。リアルタイムPCRを、本発明者らの要求に従って、Life Technologies−Applied Biosystems Divisionによって作製されたプライマーおよびプローブTaqManの特定のセットを使用して、子癇前症胎盤由来の上記の胎盤細胞から単離されたmRNA(メッセンジャーRNA)に行った。これらのプライマーおよびプローブは、Nevo O.ら、J.Clin.Endocrinol.Metab.2008 93:285〜292によって以前発表された配列に基づく。ウエスタンブロット分析を、製造者の説明書に従って、Life Technologies−Invitrogen(カタログ番号36−1100)から購入した特異的なポリクローナル抗体anti.sFlt−1を使用することによって行った。リアルタイムPCRおよびウエスタンブロット分析は、遺伝子(4.5倍の増加、p<0.001)とタンパク質(2倍の増加、p<0.05)の両方のレベルで、生理的対照に対して、子癇前症胎盤間葉系幹細胞による有意に増加したsFlt−1産生を示した。

例5:子癇前症胎盤由来PDMSC細胞培養物から得た馴化培地の治療効果の評価 本発明の主題である馴化培地の治療効果を評価するために、乳癌およびその転移箇所の除去手術を受けた患者から得た原発性および転移性腫瘍から切り取られた腫瘍組織外植片によって代表されるin vitroモデルを使用して、特定の研究を行った。特に、本発明の馴化培地でのこのような外植片の処置が、著しい血管新生抑制および抗腫瘍活性の指標として、VEGF、JunBおよびPARPの発現レベルの減少ならびにカスパーゼ3(CASP3)およびp16INK4aの発現の増加を誘導するかどうかを検証した。いくつかの臨床的および実験的証拠から、VEGFは、癌において過剰発現され、腫瘍組織に栄養分を運ぶ新しい血管形成を誘導するため、腫瘍攻撃性の指標であることが実証された。JunBは、その発現が乳癌の予後不良と直接的に関連している癌遺伝子である。PARP(ポリ−(ADP−リボース)−ポリメラーゼ)は、化学療法薬によって引き起こされたDNA損傷を修復する核タンパク質であり、したがって腫瘍組織に化学療法に対する抵抗性を与える。CASP3およびp16Ink4Aは、アポトーシスを誘導し、細胞増殖を止めることができる2つの強力な腫瘍抑制因子である。

実験的手順に関して、通例の手術後の解剖的病理学的手順後、3人の異なる患者から採取された組織残留物から切り取られた腫瘍組織試料を使用した。各腫瘍から、8個の外植片を切り取り、マトリゲル充填インサート上で培養した。培養物を、子癇前症PDMSCを上記のように48時間培養することによって得た馴化培地を使用して、48時間処置した。

詳細には、同重量の保存された形態および構造を有する原発性腫瘍組織(直径5mm)から成る外植片を切り取り、150μlのマトリゲルを含有するインサート上に載せ、手術後ストレス後、それらの状態を平衡化するために、500μlのFBS非含有HAM F12培地中で、5%CO2、37℃で12時間、維持した。12時間後、培地を、500μlの馴化培地(12個の外植片)または500μlの血清を有さないDMEM LG培地(12個の対照外植片)と交換した。培養物を、同じ実験条件下で、さらに48時間、インキュベートした。実験の終わりに、処置外植片と対照外植片の両方を、採取し、製造者の説明書に従ってTRIzol試薬(Invitrogen Life Techonologies)を使用して、mRNA単離のために処理した。単離したらすぐに、mRNAを、ゲノムDNA混入物を除去するために、DNAase(Sigma−Aldrich)処置によって精製した。RNA濃度を、260nm波長で読む分光光度計によって判定し、一方でRNA純度を、1.8〜2でのA260/A280吸光度比を評価することによって評価した。

VEGF、JunB、PARP、CASP3およびp16INK4a発現レベルを調査するために行われる後の分析に有用な、cDNA(相補的DNA)を、製造者のプロトコールに従ってランダムヘキサマー手法およびキットRevertAid H Minus First Strand cDNA Synthesis(Fermentas Life Science)を使用して、5マイクログラムの以前抽出された全RNAからRT−PCRによって合成した。

本発明の馴化培地での腫瘍性培養物の処置後、VEGF、JunB、PARP、CASP3およびp16Ink4A遺伝子発現分析を、TaqManプライマーおよびプローブ(Life Technologies−Applied Biosystem Division)を使用して、リアルタイムPCRによって行った。相対定量化を行うために、リアルタイムPCRシグナルを、内部基準として使用したリボソーム18Sサブユニットのシグナルでの標準化後、試料の2つの群間で比較した。

図1および図2において報告されたヒストグラムで示されるように、差次的遺伝子発現結果は、本発明の主題である馴化培地(CM)での処置が、腫瘍性外植片における、CASP3およびp16Ink4A遺伝子発現レベルの増加を伴い、VEGF、JunBおよびPARP遺伝子発現レベルの統計的に有意な減少を誘導した(p<0.05)ことを明白に実証した。

本発明の馴化培地での処置による、VEGFおよびJunBの遺伝子発現レベル

本発明の馴化培地での処置による、PARP、CASP3およびp16Ink4Aの遺伝子発現レベル

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