抗メタボリックシンドローム効果を持つ核酸

申请号 JP2013511193 申请日 2011-09-21 公开(公告)号 JP5860038B2 公开(公告)日 2016-02-16
申请人 国立大学法人北海道大学; 塩野義製薬株式会社; 发明人 光武 進; 座間 宏太; 五十嵐 靖之; 吉田 哲也; 田中 嘉一; 武本 浩;
摘要
权利要求

SMS2の発現を抑制する核酸を含有するメタボリックシンドロームの処置または予防用医薬組成物であって、 該核酸が、 下記の(a)〜(o): (a) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号1で表される塩基配列であり、他方が配列番号2で表される塩基配列であるsiRNA; (b) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号3で表される塩基配列であり、他方が配列番号4で表される塩基配列であるsiRNA; (c) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号5で表される塩基配列であり、他方が配列番号6で表される塩基配列であるsiRNA; (d) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号7で表される塩基配列であり、他方が配列番号8で表される塩基配列であるsiRNA; (e) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号9で表される塩基配列であり、他方が配列番号10で表される塩基配列であるsiRNA; (f) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号11で表される塩基配列であり、他方が配列番号12で表される塩基配列であるsiRNA; (g) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号13で表される塩基配列であり、他方が配列番号14で表される塩基配列であるsiRNA; (h) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号15で表される塩基配列であり、他方が配列番号16で表される塩基配列であるsiRNA; (i) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号17で表される塩基配列であり、他方が配列番号18で表される塩基配列であるsiRNA; (j) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号21で表される塩基配列であり、他方が配列番号22で表される塩基配列であるsiRNA; (k) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号23で表される塩基配列であり、他方が配列番号24で表される塩基配列であるsiRNA; (l) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号39で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号40で表される塩基配列であるsiRNA; (m) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号41で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号42で表される塩基配列であるsiRNA; (n) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号45で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号46で表される塩基配列であるsiRNA;および (o)一方または両方の塩基配列において1〜数個のヌクレオチドが付加、挿入、欠失または置換され、SMS2の発現を抑制する活性を有する、(a)〜(n)のいずれかに記載のsiRNA からなる群より選択されるいずれか1つ以上からなる 医薬組成物。SMS2の発現を抑制する核酸を含有するメタボリックシンドロームの処置または予防用医薬組成物であって、該核酸が配列番号81〜92のいずれか1つ以上からなる、医薬組成物。前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である請求項1または2記載の医薬組成物。下記の(a)〜(l)からなる群より選択されるいずれかのsiRNA: (a) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号1で表される塩基配列であり、他方が配列番 号2で表される塩基配列であるsiRNA; (b) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号3で表される塩基配列であり、他方が配列番 号4で表される塩基配列であるsiRNA; (c) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号7で表される塩基配列であり、他方が配列番 号8で表される塩基配列であるsiRNA; (d) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号9で表される塩基配列であり、他方が配列番 号10で表される塩基配列であるsiRNA; (e) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号11で表される塩基配列であり、他方が配列 番号12で表される塩基配列であるsiRNA; (f) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号13で表される塩基配列であり、他方が配列 番号14で表される塩基配列であるsiRNA; (g) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号15で表される塩基配列であり、他方が配列 番号16で表される塩基配列であるsiRNA; (h) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号21で表される塩基配列であり、他方が配列 番号22で表される塩基配列であるsiRNA; (i) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号23で表される塩基配列であり、他方が配列 番号24で表される塩基配列であるsiRNA; (j) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号39で表される塩基配列であり、他方がその 相補配列である配列番号40で表される塩基配列であるsiRNA; (k) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号45で表される塩基配列であり、他方がその 相補配列である配列番号46で表される塩基配列であるsiRNA;ならびに (l)一方または両方の塩基配列において1〜数個のヌクレオチドが付加、挿入、欠失または置換され、SMS2の発現を抑制する活性を有する、(a)〜(k)のいずれかに記載のsiRNA。配列番号81〜92のいずれか1つ以上からなるロックド核酸(LNA)含有核酸。

说明书全文

本発明は、SMS2の新規用途に関する。より詳細には、本発明は、SMS2を用いたメタボリックシンドロームの治療用医薬組成物に関する。

肥満の誘発は、ニューロペプチドY5受容体またはメラノコルチン受容体など視床下部発現タンパク質を介した摂食促進作用、またはアシルCoAカルボキシラーゼ(ACC)などを介した脂肪酸合成促進作用の関与などが知られている。現在、抗肥満薬として、ニューロペプチドY5受容体拮抗剤、メラノコルチン受容体拮抗剤およびACC阻害剤などが開発されている。しかし、現在のところ、有効な抗肥満薬は見出されていないのが現状である。

脂肪肝は、肝臓において中性脂肪が蓄積する疾患であり、肥満が主要な発症原因とされている。しかし、抗肥満薬同様、有効な脂肪肝処置薬は見出されていないのが現状である。また、メタボリックシンドロームの代表例とされ、肥満や循環器系疾患のような生活習慣病の根本的原因であるとされる糖尿病については、スルホニル尿酸薬、ビグアナイド、αグルコシダーゼ、およびアゾリジン誘導体などが開発されているが、副作用および有効性に問題がある。したがって、より有効な処置薬の開発が期待されている。

スフィンゴミエリン合成酵素(SMS)は、細胞膜に最も多量に存在するスフィンゴ脂質であるスフィンゴミエリン(SM)を合成する酵素であり、細胞死および生存に重要な役割を果たしている(非特許文献1および2参照)。SMSは、2004年に同定され、SMS1およびSMS2の2種類が存在することが知られている。SMS1はゴルジ体に発現し、SMのde novo合成に関与することが知られている。一方、SMS2はゴルジ体および細胞膜に発現し、生理機能については詳細が不明であり(非特許文献3参照)、非特許文献4〜6において動脈硬化への関与の可能性が示唆されているにすぎない。

これまで中性脂肪の代謝/吸収阻害剤や阻害物質、中性脂肪の代謝を促進する物質等を用いてメタボリックシンドロームを改善する方法が試みられている。具体的には核内受容体PPARsの合成リガンドによる高脂血症、II型糖尿病改善薬、スタチン系薬剤によるコレステロール合成阻害を介した高脂血症改善薬等である。

現在のところ、スフィンゴ脂質の合成制御を介した肥満誘発作用は知られていない。また、糖尿病薬や、抗肥満薬または脂肪肝処置薬として開発されているSMS阻害剤も存在しない。

他方、RNAiは1998年にFireらによって発見された現象(非特許文献7)で、二本鎖RNA(double strand RNA)が相同な標的遺伝子の発現を強に抑制するというものである。従来のベクター等を用いる遺伝子導入法に比べ簡便であり、標的に対する特異性が高く、遺伝子治療への応用が可能であるということで最近注目されている。RNAiを媒介する分子のうちでも、短鎖干渉RNA(siRNA)は、その応用が進んでいる(非特許文献8)。しかし、SMS阻害剤としての開発はなされておらず、SMS阻害剤としてメタボリックシンドロームを改善する効果も知られていない。

Yamaokaら、The Journal of Biological Chemistry,279, 18688-18693, (2004)

Huitemaら、The EMBO Journal,23, 33-44, (2004)

Tafesseら、The Journal of Biological Chemistry,281, 29421-29425, (2006)

Parkら、Circulation,110, 3465-3471, (2004)

Liuら、Arteriosclerosis,Thrombosis, and Vascular Biology, 29, 850-856,(2009)。

Liuら、Circulation Research,105, 295-303, (2009)

Fireら、Nature. 391:806-11, (1998)

Elbashirら、Nature. 411:494-8, (2001)

本発明は、スフィンゴ脂質の合成を抑制することにより体重を減少させること、内臓脂肪を減少させること、肝臓におけるトリグリセリドを減少させること、および肥満および脂肪肝を改善すること、および糖尿病等他のメタボリックシンドロームの処置薬に関する。

上記課題は、スフィンゴミエリンの合成酵素を、特にSMS2の発現を抑制し制御することで、上記疾患に関する処置予防をすることができることを見出し、本発明を完成した。したがって、本発明は、以下を提供する。 (項目1)SMS2の発現を抑制する核酸を含有するメタボリックシンドロームの処置または予防用医薬組成物。 (項目2)前記核酸がsiRNAである、項目1に記載の医薬組成物。 (項目3)前記siRNAが下記の(a)〜(o)に記載のsiRNAからなる群より選択されるいずれか1つ以上からなる項目2記載の医薬組成物。 (a) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号1で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号2で表される塩基配列であるsiRNA;

; (b) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号3で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号4で表される塩基配列であるsiRNA;

; (c) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号5で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号6で表される塩基配列であるsiRNA;

; (d) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号7で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号8で表される塩基配列であるsiRNA;

; (e) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号9で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号10で表される塩基配列であるsiRNA;

; (f) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号11で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号12で表される塩基配列であるsiRNA;

; (g) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号13で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号14で表される塩基配列であるsiRNA;

; (h) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号15で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号16で表される塩基配列であるsiRNA;

; (i) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号17で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号18で表される塩基配列であるsiRNA;

9>; (j) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号21で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号22で表される塩基配列であるsiRNA;

; (k) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号23で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号24で表される塩基配列であるsiRNA;

; (l) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号39で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号40で表される塩基配列であるsiRNA;

; (m) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号41で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号42で表される塩基配列であるsiRNA;

; (n) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号45で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号46で表される塩基配列であるsiRNA;

;ならびに (o)一方または両方の塩基配列において1〜数個のヌクレオチドが付加、挿入、 欠失または置換され、SMS2の発現を抑制する活性を有する、(a)〜(n)のいずれかに記載のsiRNA。 (項目4)前記核酸がアンチセンス核酸である、項目1に記載の医薬組成物。 (項目5)前記核酸がロックド核酸(LNA)を含むアンチセンス核酸である、項目1または4に記載の医薬組成物。 (項目5A)前記核酸が5’末端にロックド核酸(LNA)を、3’末端にLNAを含むアンチセンス核酸である、請求項1、4または5に記載の医薬組成物。 (項目6)前記アンチセンス核酸が、配列番号81〜92のいずれか1つ以上からなる請求項4、5または5A記載の医薬組成物。 (項目7)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目1〜5、5Aまたは6いずれか記載の医薬組成物。 (項目7A)前記核酸はSMS2の発現を抑制するのに有効な量で含まれる、項目1〜5、5A、6または7いずれか記載の医薬組成物。 (項目7B)薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、項目1〜5、5A、6、7または7Aのいずれか記載の医薬組成物。 (項目8)下記の(a)〜(o)からなる群より選択されるいずれかのsiRNA (a) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号1で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号2で表される塩基配列であるsiRNA;

; (b) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号3で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号4で表される塩基配列であるsiRNA;

; (c) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号5で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号6で表される塩基配列であるsiRNA;

; (d) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号7で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号8で表される塩基配列であるsiRNA;

; (e) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号9で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号10で表される塩基配列であるsiRNA;

; (f) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号11で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号12で表される塩基配列であるsiRNA;

; (g) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号13で表される塩基配列であり、他方がその 相補配列である配列番号14で表される塩基配列であるsiRNA;

; (h) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号15で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号16で表される塩基配列であるsiRNA;

; (i) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号17で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号18で表される塩基配列であるsiRNA;

; (j) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号21で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号22で表される塩基配列であるsiRNA;

; (k) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号23で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号24で表される塩基配列であるsiRNA;

; (l) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号39で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号40で表される塩基配列であるsiRNA;

; (m) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号41で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号42で表される塩基配列であるsiRNA;

; (n) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号45で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号46で表される塩基配列であるsiRNA;

;ならびに (o)一方または両方の塩基配列において1〜数個のヌクレオチドが付加、挿入、 欠失または置換され、SMS2の発現を抑制する活性を有する、(a)〜(n)のいずれかに記載のsiRNA。 (項目9)メタボリックシンドロームの処置または予防のための項目8に記載のsiRNA。 (項目10)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目9記載のsiRNA。 (項目10A)メタボリックシンドロームの処置または予防のための医薬を製造するための、項目8〜10いずれかに記載のsiRNAの使用。 (項目10B)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である請求項10A記載の使用。 (項目11)配列番号81〜92のいずれか1つ以上からなるロックド核酸(LNA)含有核酸。 (項目12)メタボリックシンドロームの処置または予防のための項目11に記載のロックド核酸(LNA)含有核酸。 (項目13)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目12記載のロックド核酸(LNA)含有核酸。 (項目14)メタボリックシンドロームを処置または予防するための方法であって、該方法は、項目1〜5、5A、6、7、7Aまたは7Bいずれかに記載の医薬組成物を該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法。 (項目15)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目14記載の方法。 (項目16)メタボリックシンドロームを処置または予防するための方法であって、該方法は、項目8〜10、10Aまたは10Bいずれかに記載のsiRNAを該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法。 (項目17)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目16記載の方法。 (項目18)メタボリックシンドロームを処置または予防するための方法であって、該方法は、項目11〜13いずれかに記載のLNA含有核酸を該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法。 (項目19)前記メタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択される1または2以上である項目18記載の方法。

本発明に関して、メタボリックシンドロームは複合的な要因で起こることが知られている。よって新しい作用機序を持つ医薬品の登場は、これまでの医薬品の弱点を補うことができる可能性がある。

本発明者らは、スフィンゴ脂質の代謝を制御する事で、間接的に中性脂質合成/代謝に影響を与えるというこれまでに無かった作用機序でメタボリックシンドロームを改善する方法を開発した。

本発明者らは、スフィンゴ脂質の一つスフィンゴミエリンの合成酵素SMS2などのスフィンゴミエリン合成酵素を制御することでトリアシルグリセロールの合成量に影響を与え、それによってメタボリックシンドロームを改善する方法を提案する。SMSはスフィンゴミエリンを合成する際に等モル量のジアシルグリセロールを生成する。本明細書において例示した実験からこのジアシルグリセロールは代表的な中性脂質であるトリグリセロール合成の原料となる可能性が示された。具体的には、例示的な例として、SMS2遺伝子を欠損したマウスに高脂肪食を負荷した際の体重増加が、対照群に比べて有意に減少し、通常食を負荷した際の体重により近かった。つまりSMSの活性を制御することでトリアシルグリセロールの合成量を制御し結果的にメタボリックシンドロームを改善することが期待できる。

そこで、SMS2機能を阻害することにより、メタボリックシンドロームの治療効果を期待することができると考え、例えば、新規分子特異的ノックダウン法であるRNAi(RNA干渉:RNA interference)法の治療への応用を検討した。

RNAi法とは、短い干渉dsRNA(siRNA(small interfering RNA))を用いて、特定遺伝子の発現を遺伝子レベルで速やかに発現抑制する技術である(非特許文献7および8)。SMS2のmRNA配列から、ターゲットとなる配列を複数選択し、そのsiRNAを合成し、SMS2をノックダウンさせることにより疾患治癒に結びつけられることを見出した。

従来、スフィンゴ脂質の合成制御を介したメタボリックシンドローム改善薬は存在しないので、本発明により新しい作用機序を持つ医薬品を作成することが可能となる。

図1は、実施例1におけるSMSsノックアウト(NO)マウスの作製に用いたターゲティングベクターの概略を示す。左は、SMS1遺伝子のノックアウトに用いたターゲティングベクターの概略を示し、右は、SMS2遺伝子のノックアウトに用いたターゲティングベクターの概略を示す。図中、EはEcoRI、PはPstI、SはSalI、SpはSpeI、SmaはSmaI、XhoはXhoIの制限酵素切断部位を示す。

図2は、実施例1における体重に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに投与した際の9週間にわたる体重(g)の変動を示す。高脂肪食を投与した野生型マウス(WT/HFD)は体重が増加したが、高脂肪食を投与したSMS2−KOマウス(SMS2 KO/HFD)の体重増加は、通常食を投与した野生型マウス(WT/ND)および通常食を投与したSMS2−KOマウス(SMS2 KO/ND)と差がなく、体重増加が有意に抑えられた。三;WT/HFD、菱形;WT/ND、丸;SMS2 KO/HFD、四角;SMS2 KO/ND、である。

図3は、実施例1における白色脂肪細胞量(WAT)に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、精巣上体に付着した脂肪重量(mg)の比較を示す。WT/HFD群(左)に比べて、SMS2 KO/HFD群(右)では白色脂肪細胞量(WAT)に減少傾向は見られるものの、有意な差ではなかった。図には示さないが、対照通常食(ND)を並行して与えた同様の実験も行っており、WT/HFD群に比べてSMS2 KO/HFD群では白色脂肪細胞量(WAT)が減少していた。一方、SMS2 KO/HFD群とSMS2 KO/ND群との間には有意差は見られなかったことがわかっている。

図4は、実施例1における肝トリグリセリド量に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、肝ホモジネート中のトリグリセリド量(mg/mgタンパク質)の比較を示す。WT/HFD群(左)に比べてSMS2 KO/HFD群(右)では有意にトリグリセリド量が減少していた。

図4Aは、実施例1における肝トリグリセリド量に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、肝ホモジネート中のトリグリセリド量(mg/mgタンパク質)の比較を示す。WT/HFD群(左)に比べてSMS2 KO/HFD群(右)では有意にトリグリセリド量が減少していた。一方、SMS2 KO/HFD群とSMS2 KO/ND群との間には有意差は見られなかった。

図5は、実施例1におけるアディポネクチン量に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、脂肪組織でのアディポネクチンmRNAの相対的な発現量の比較を示す。WT/HFD群(左)ではアディポネクチンの発現が抑制されているが、SMS2 KO/HFD群(右)では、比較的高い発現量が維持されていた。

図5Aは、実施例1におけるアディポネクチン量に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、脂肪組織のアディポネクチンmRNAの相対的な発現量の比較を示す。図5Aでは、左から順に、野生型に通常食を与えた群(WT/ND)、野生型に高脂肪食を与えた群(WT/HFD)、SMS2−KOマウスに通常食を与えた群(SMS2 KO/ND)、およびSMS2−KOマウスに高脂肪食を与えた群(SMS2 KO/HFD)を示す。Y軸は、mRNAの相対量を示す。WT群では、高脂肪食を付与することにより、アディポネクチンの発現が抑制されるが、SMS2 KO群では、高脂肪食を付与しても、比較的高い発現量が維持されていた。

図5B−1は、実施例1における脂肪組織におけるインスリン受容体に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに投与した際のインスリン受容体の相対的な発現量の比較を示す。左から順に、野生型に通常食を与えた群(WT/ND)、野生型に高脂肪食を与えた群(WT/HFD)、SMS2−KOマウスに通常食を与えた群(SMS2 KO/ND)、およびSMS2−KOマウスに高脂肪食を与えた群(SMS2 KO/HFD)を示す。Y軸は、mRNAの相対量を示す。野生型のマウスでは、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を与えるとインスリン受容体の発現量が低下するけれども、SMS2−KOマウスでは高脂肪食によるインスリン受容体の発現低下はおこっておらず、対照通常食を与えた場合とほぼ同程度の発現量であった。また、SMS2−KOマウスに対して高脂肪食を投与した場合のインスリン受容体の発現量は、野生型のマウスに対して高脂肪食を投与した場合と比較して有意に高かった。以上の結果から、SMS2−KOマウスの脂肪組織において、野生型のマウスでみられるような高脂肪食によるインスリン受容体の発現低下がおこっておらず、インスリン抵抗性にはなっていないことが示唆された。

図5B−2は、実施例1における脂肪組織におけるGlut4に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに投与した際のGlut4の相対的な発現量の比較を示す。左から順に、野生型に通常食を与えた群(WT/ND)、野生型に高脂肪食を与えた群(WT/HFD)、SMS2−KOマウスに通常食を与えた群(SMS2 KO/ND)、およびSMS2−KOマウスに高脂肪食を与えた群(SMS2 KO/HFD)を示す。Y軸は、mRNAの相対量を示す。野生型のマウスでは、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を与えるとGlut4の発現量が低下するけれども、SMS2−KOマウスでは高脂肪食によるGlut4の発現低下についてはその低下の度合いが抑えられており、対照通常食を与えた場合とほぼ同程度の発現量であった。また、SMS2−KOマウスに対して高脂肪食を投与した場合のGlut4の発現量は、野生型のマウスに対して高脂肪食を投与した場合と比較して有意に高かった。以上の結果から、SMS2−KOマウスの脂肪組織において、野生型のマウスでみられるような高脂肪食によるGlut4の発現低下がおこっておらず、インスリン抵抗性にはなっていないことが示唆された。

図5Cは、実施例1における血糖値に対する60%脂肪食投与の影響を検討した結果を表す。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに9週間投与した後に24時間絶食させた後、マウスの腹腔内に2g/kgのグルコースを投与し、投与直前、15分後、30分後、60分後、120分後に血糖値を測定した。投与直前には、4つの群で有意差はなかったが、投与後120分後には、SMS2 KO/HFD群はWT/HFD群に比べて有意に血糖値が低下していた。白三角はWT/NDを示し、薄い四角はWT/HFDを示し、塗りつぶした三角はSMS2 KO/NDを示し、濃い四角はSMS2 KO/HFDを示す。Y軸は血中グルコース濃度(mg/dL)を示し、X軸は時間(分)を示す。

図5Dは、図5Cのグラフの下の面積(AUC(area under curve))を棒グラフで表したものである。左から順に、野生型に通常食を与えた群(WT/ND)、野生型に高脂肪食を与えた群(WT/HFD)、SMS2—KOマウスに通常食を与えた群(SMS2 KO/ND)、およびSMS2—KOマウスに高脂肪食を与えた群(SMS2 KO/HFD)を示す。WT/HFDとSMS2 KO/HFDとの間には有意差が認められた(p<0.05)。Y軸は、GTT AUC(面積=AU、単位はm

2(面積単位))でその相対値を示す。

図5Eは、実施例1における血中インスリン量に対する通常食(ND)の影響を検討した結果を表す。野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに通常食を4週間投与した後、24時間絶食させ、その後通常食を投与し、24時間絶食時および通常食投与後1時間経過時の血中インスリン濃度を測定した。左は絶食時および右は食後1時間経過時のものを示し、それぞれのうち、左側(濃い部分)が野生型(WT)を示し、右側(薄い部分)がSMS2 KOを示す。Y軸は、血中インスリン濃度(pg/ml)を示す。野生型(WT)およびSMS2−KOマウスの間において、24時間の絶食時および通常食投与後1時間経過時いずれにおいても血中インスリン濃度に有意差は見られなかった。この実験からは、SMS2をノックアウトしても、インスリンの量および食事に対するインスリン分泌応答そのものについては、影響がないといえる。したがって膵ベータ細胞の異常によるインスリンの分泌異常の結果、惹起されることが予想される体重減少および血糖値の低下などの懸念は払拭できた。

図5Fは、実施例1における血糖値に対する高脂肪食の影響を検討した結果を表す。4週齢の野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに2週間高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を投与し、高脂肪食投与前に4時間絶食させたときおよび2週間高脂肪食を投与した後に4時間絶食させて血糖値を測定した。左の群は、0日目を示し、右の群は、15日目を示す。黒い棒はSMS2—KOマウスを示し、白い棒は野生型(WT)を示す。Y軸は血糖値(mg/dl)を示す。高脂肪食を投与する前には、野生型のマウスとSMS2−KOマウス間において、血糖値に有意差は見られないけれども、高脂肪食を2週間投与した後は、野生型のマウスの血糖値は、SMS2−KOマウスと比較して有意に血糖値が高かった(p<0.05)。この結果、SMS2−KOマウスでは、有意差をもって、血糖値が低下していたことを意味する。図5Eの結果をあわせみると、SMS−2をノックアウトすれば、インスリン抵抗性の糖尿病にはならないといえる。

図5Gは、実施例1における血中インスリン量に対する高脂肪食の影響を検討した結果を表す。野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を2週間投与した後、4時間絶食させ、血中インスリン量を測定した。左は野生型(WT)を示し、右はSMS2−KOマウス(KO)を示す。Y軸は、血中インスリン濃度(ng/ml)を示す。その結果、SMS2−KOマウスでは、野生型のマウスと比較して、有意差をもって、血中インスリン量が低下していた。

図5H−1は、実施例1におけるインスリンに対する血中グルコース濃度を検討した結果を表す。4週齢の野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに6週間高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を投与し、6週間経過時に腹腔内にインスリンを0.5U/kgで投与し、投与前および投与後15、30、60、90、120分での血中グルコース濃度を測定した結果を示す。特に、投与後、30、60、90分後には、SMS2−KOマウスは、野生型のマウスと比較して、有意に血中グルコース濃度が低下していたので、SMS2—KOマウスはインスリンに対してより感受性であることが明らかとなった。白丸は、野生型(WT)を示し、黒丸はSMS2−KOマウスを示す。*および**はいずれも有意(それぞれ、p<0.05およびp<0.01)を示す。Y軸は血中グルコース濃度(mg/dL)を示し、X軸は投与後経過時間(分)を示す。

図5H−2は、図5H−1のグラフの下の面積(AUC)の野生型(WT)に対する比(WT=1)を棒グラフで表す。SMS2−KOマウスにおいては、野生型のマウスと比較して、20%程度有意に減少していたので、インスリンに対してより感受性であることが明らかになった。以上の結果から、図5F,G、H−1、H−2より、SMS−2をノックアウトすれば、WTと比較してインスリン抵抗性の糖尿病にはなりにくいといえる。

図6は、実施例2において作製した、SMS1およびSMS2を欠失させたZS2細胞、SMS1を過剰発現する細胞(ZS2/SMS1)、およびSMS2を過剰発現する細胞(ZS2/SMS2)について、抗V5モノクローナル抗体を用いて行ったウェスタンブロッティングの結果を示す。ZS2細胞においてはバンドが検出されなかったが、ZS2/SMS1およびZS2/SMS2において、抗V5 mabで検出されるSMS1、SMS2のバンドがそれぞれ確認された。

図7は、実施例3において行ったZS2細胞、ZS2/SMS1細胞およびZS2/SMS2細胞のSMS活性についての検討結果を示す。ZS2/SMS1細胞(左)およびZS2/SMS2細胞(中央)がSMS活性を有していたのに対し、ZS2細胞(右)はSMS活性がなかった。グラフの縦軸は、SMS活性(単位:nmol/分/mgタンパク質)を示す。

図8は、実施例3において行ったZS2細胞、ZS2/SMS1細胞およびZS2/SMS2細胞のTG合成についての検討結果を示す。ZS2/SMS1細胞(左)およびZS2/SMS2細胞(中央)におけるTG量と、ZS2細胞(右)におけるTG量との間には有意差があった(各々、p<0.005およびp<0.02)。グラフの縦軸は、[

14C]TGの対照(ZS2細胞)に対する割合(%)を示す。

図9は、Hepa1c1c7細胞に対して各種siRNAを投与して、マウスSMS2に対するsiRNAとして機能するのかスクリーニングした結果を表す。SMS2−i1、i3、i6、i7およびi8はマウス細胞であるHepa1c1c7細胞で発現するマウスSMS2に対して65%以上のノックダウン活性を保持していた。

図10は、HeLa細胞に対して各種siRNAを投与して、ヒトSMS2に対するsiRNAとして機能するのかスクリーニングした結果を表す。SMS2−i6、i7、i8、i104、i105、i106、i107、i108およびi109はヒト細胞であるHeLa細胞で発現するヒトSMS2に対して少なくとも75%以上のノックダウン活性を保持していた。

図11は、SMS2−i8が、実施例2において作製した、ZS2/SMS2細胞に対して、SMS2の発現抑制作用を有しているのかを検討した結果を表す。SMS2−i8を投与した場合には、対照のsi−RNAを投与した場合に比べて、80%以上、SMS2の発現が抑制されていた。

図12は、SMS2−i8を、実施例2において作製した、ZS2/SMS2細胞に対して投与することによって、細胞のMeβCDに対する感受性が変化するのかを検討した結果を表す。SMS2−i8を投与した場合には、対照のsi−RNAを投与した場合に比べて、有意に細胞の生存率が低かった。

図13は、SMS2−i3を、Hepa1c1c7細胞に導入することで、細胞内のSMS2の発現が抑制されるのかを検討した結果を表す。SMS2−i3を導入した場合には、対照のsi−RNAを導入した際に比べて、細胞内のSMS2の発現量は80%以上抑制された。

図14は、SMS2−i11を、Hepa1c1c7細胞に導入することで、細胞内のSMS2の発現が抑制されるのかを検討した結果を表す。SMS2−i11を導入した場合には、対照のsi−RNAを導入した際に比べて、細胞内のSMS2の発現量は80%以上抑制された。

図15は、SMS2−i3またはi11を、レプチン欠損性肥満マウスに尾静脈注射して投与することで、マウス肝臓のSMS2の発現が抑制されるのかを検討した結果を表す。SMS2−i3を投与した場合には、対照のsi−RNAを導入した際に比べて、マウス肝臓におけるSMS2の発現量は60%以上抑制され、SMS2−i11を投与した場合には、対照のsi−RNAを導入した際に比べて、マウス肝臓におけるSMS2の発現量は70%以上抑制された。

図16は、SMS2−i3またはi11を、マウス尾静脈内注射して投与し、投与後10日経過した時点での体重の変化を検討した結果を表す。SMS2−i3またはi11を投与した場合も、対照群のマウスにおいても体重の変化に有意差はなかった。

図17は、SMS2−i3またはi11を、マウス尾静脈内注射して投与し、投与後10日間における平均摂餌量を検討した結果を表す。SMS2−i3またはi11を投与した場合も、対照群のマウスにおいても平均摂餌量に変化はなかった。

図18は、SMS2−i3またはi11を、マウス尾静脈内注射して投与し、投与10日後に4時間絶食させたマウスの肝臓におけるトリグリセリド量の検討をした結果を表す。SMS2−i3またはi11を投与した場合には、対照群のマウスと比較して、有意に肝臓のトリグリセリド量が低下していた。

図19は、ヒト肝実質細胞株であるHepG2細胞に対照siRNA配列(CTR−i)、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換し、48時間後のSMS2の発現量を図9と同じ方法で測定した結果を表す。SMS2−i104またはSMS2−i109のいずれを用いた場合においても、対照配列を用いた場合と比較して、60%程度SMS2の発現量が低下した。

図20Aは、ヒト肝実質細胞株であるHepG2細胞に対照siRNA配列(CTR−i)を形質転換し、72時間後に、トリグリセリドを特異的に染色できる蛍光試薬AdipoRed(NileRed)で染色し、5分後に蛍光顕微鏡で細胞を観察した結果を表す。図20—Bは、ヒト肝実質細胞株であるHepG2細胞にSMS2−i104を形質転換し、72時間に、トリグリセリドを特異的に染色できる蛍光試薬AdipoRed(NileRed)で染色し、5分後に蛍光顕微鏡で細胞を観察した結果を表す。CTR−iと比較して、SMS2−i104を形質転換した場合には細胞内の脂肪滴の粒子径が小さくなっていることが確認できた。図20—Cは、ヒト肝実質細胞株であるHepG2細胞にSMS2−i109を形質転換し、72時間後に、トリグリセリドを特異的に染色できる蛍光試薬AdipoRed(NileRed)で染色し、5分後に蛍光顕微鏡で細胞を観察した結果を表す。CTR−iと比較して、SMS2−i109を形質転換した場合には細胞内の脂肪滴の粒子径が小さくなっていることが確認できた。

図21は、図20AないしCで蛍光染色した細胞について、ランダムに5視野を撮像し、直径が1.25μm以上の脂肪滴数を計測した結果を表す。対照のsiRNAの配列を形質転換した場合と比較して、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換した場合には、直径が1.25μm以上の脂肪滴数が30%程度まで有意に減少していることが確認できた。このことから、SMS2を肝細胞で阻害することにより、抗肥満効果が惹起されることが示唆された。

図22は、実施例10において、LNA含有核酸の一例としてLNA型Gapmerアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、ヒトHEK293細胞でのノックダウン実験を行った結果を示す。使用したLNA型Gapmer アンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞培養液に最終濃度5μMでそのまま添加し、形質転換後72時間に定量的PCRを行った結果を示す。左から使用したアンチセンスオリゴのSMS2−13−XXXのXXXに当たる数字(それぞれ配列番号81〜92に該当する。)を示す。生理食塩1および生理食塩水2は、それぞれ生理食塩水を添加した対照である。NT−1およびNT−2は、それぞれ何も加えていない未処理の対照を示す。

以下に本発明の好ましい形態を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。

(定義) 以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。

本明細書において、「スフィンゴミエリン合成酵素」(本明細書において「SMS」ともいう。)とは、スフィンゴミエリン(本明細書において「SM」ともいう。)を合成する酵素であって、ホスファチジルコリン(本明細書において「PC」ともいう。)の存在下で、セラミドをスフィンゴミエリンへと変換する酵素をいい、細胞死および生存に重要な役割を果たしている(非特許文献1および2参照)。ここで、ホスファチジルコリンは、変換後ジアシルグリセロールに変換される。スフィンゴミエリン合成酵素としては、代表的に、SMS1およびSMS2が知られており、このほかにもホモログがあることが知られている(非特許文献1および2参照)。SMS1はゴルジ体に発現し、SMのde novo合成に関与することが知られている。一方、SMS2はゴルジ体および細胞膜に発現し、生理機能については詳細が不明である(非特許文献3参照)。なお、SMS1のGenBank Accession番号は、NM_147156(ヒト)、NM_144792(マウス)であり、SMS2は、BC028705.1(ヒト)、BC0413 69.2(ヒト)、NM_028943(マウス)である。

本明細書において「メタボリックシンドローム」または「メタボリック疾患」とは、当該分野において用いられる最も広義の意味で用いられ、内臓脂肪型肥満を共通の要因として高血糖、脂質異常症、高血圧が引き起こされる状態をいい、従前は、「生活習慣病」、「成人病」などと呼ばれており、これらの用語はすべて、本明細書において交換可能に使用される。メタボリックシンドロームまたはメタボリック疾患は、本明細書では特に糖尿病、肥満、脂質異常症(内臓脂肪過多)、脂肪肝等の疾患、あるいはアディポネクチン発現低下のような状態の少なくとも1つを含む。また、メタボリックシンドロームになった結果、それが原因で何年か後に動脈硬化になることも多いことから、「メタボリックシンドローム」には、動脈硬化一般が含まれるのではないが、上記メタボリックシンドローム(たとえば糖尿病、肥満など)により惹起される動脈硬化も含まれることが理解される。

本明細書において「糖尿病薬」とは、糖尿病を処置(たとえば、抑制、予防など)しうる薬剤をいう。糖尿病は、当該分野において通常使用される意味で用いられ、血糖値(血液中のグルコース濃度)が病的に高い状態をいい、糖尿病は、膵臓からインスリン分泌されないことで引き起こされる1型糖尿病と、インスリンの働きが低下することにより引き起こされる2型糖尿病に大別される。本明細書では、型にとらわれることなく、I型、II型を含む。そして、本明細書では、特にI型についていう場合「I型糖尿病薬」といい、II型についていう場合「II型糖尿病薬」ということがある。

ここで、インスリン抵抗性症候群とは糖尿病の主原因(特に2型糖尿病)であり、肥満や循環器系疾患のような生活習慣病の根本的原因である。インスリン抵抗性とは末梢組織がインスリンに対する応答が鈍化した状態を意味し、インスリンに対する応答が鈍化した結果、末梢組織がインスリンに応答できないため、血中グルコースを取り込めず、血糖値の高い状態が維持されることとなる。膵臓は血糖を低下させるために大量のインスリンを放出するので、血中インスリン濃度が高い値となる。

したがってインスリン抵抗性の改善により血糖値が低下し、上記生活習慣病の治療や予防に有用である。インスリン抵抗性改善の指標は血中インスリン濃度を測定し、低下していること、さらに血中アディポネクチン濃度が上昇していることが一つの指標となる。以上のことからアディポネクチンを上昇させる薬や、血糖値を正常レベルに維持しながらなおかつ血中インスリン濃度を低下させる薬はインスリン抵抗性改善薬となり、それに起因する糖尿病や肥満、循環器病(動脈硬化や高血圧など)やメタボリックシンドロームの治療にも有効である。

本明細書において「抗肥満薬」とは、肥満を処置(たとえば、抑制、予防など)しうる薬剤をいう。「肥満」は、メタボリックシンドロームの1つであり、疾患の一つとして捉えることができる。肥満状態としては、例えば、体重過多、脂肪過多などを挙げることができる。体格指数として測定されるBMIが25以上の場合肥満とされる。体脂肪率の場合は、18%以上を基準とする。肥満の処置効果は、体重の測定、脂肪の測定、脂肪中に蓄えられたトリグリセリドの測定などで判定することができる。

本明細書において「体重減少薬」とは、体重を減少させるかあるいは節食を抑制させる薬剤をいう。本明細書において「体重減少」または「体重を減少させる」とは、現在の体重を減少させる場合のほか、体重増加を抑制して現在の体重を維持する場合を含めて最も広義に解釈しなければならない。体重減少は、体重の測定、脂肪の測定、脂肪中に蓄えられたトリグリセリドの測定、または節食量の測定で判定することができる。

本明細書において「内臓脂肪減少薬」とは、内臓脂肪を減少させるかあるいは内臓脂肪 の増加を防止する薬剤をいう。内臓脂肪は、当該分野において通常使用される意味で用いられ、体脂肪のうち、内臓の周囲に付いた脂肪をいう。内臓脂肪の減少は、白色脂肪細胞重量を測定すること、腹部CT画像により測定すること、などで判定することができる。内臓脂肪減少の対象としては、内臓脂肪過多、あるいは脂質異常症などの疾患または症状を挙げることができる。「脂質異常症」は、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足している状態を指し、以前は、高脂血症とも呼ばれていた。脂質異常症は、メタボリックシンドロームの1つであり、疾患の一つとして捉えることができる。

本明細書において「脂肪肝処置薬」とは、脂肪肝を処置(たとえば、抑制、予防)し得る薬剤をいう。「脂肪肝」とは、当該分野において通常使用される意味で用いられ、肝臓に多量の脂肪が蓄積する状態をいう。その原因としては、アルコール性・栄養性・糖尿病性・薬剤性などが知られている。脂肪肝になると、その一部は肝硬変に移行するといわれる。その意味では、本発明は、肝硬変の予防剤と捉えることもできる。脂肪肝処置の効果は、脂肪中のトリグリセリド(TG)を測定すること、肝重量を測定すること、肝臓を肉眼的観察することなどで判定することができる。

本明細書において「アディポネクチン発現上昇剤」とは、アディポネクチンの発現を上昇させる薬剤をいう。アディポネクチンは、当該分野において通常使用される意味で用いられ、脂肪細胞から分泌される分泌タンパク質であり、内臓脂肪量に逆相関するといわれており、いわゆるメタボリック疾患の指標となるといわれている。アディポネクチン発現上昇は、たとえば、脂肪を採取しmRNAを抽出し、アディポネクチンmRNAの発現量を測定すること、抗アディポネクチン抗体を用いての免疫学的測定、などで判定することができる。

本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。

従って、本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「減少」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に減少することをいう。好ましくは、発現の減少は、ポリペプチドの発現量の減少を含む。本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」の「増加」とは、本発明の因子を作用させたときに、作用させないときよりも、発現の量が有意に増加することをいう。好ましくは、発現の増加は、ポリペプチドの発現量の増加を含む。本明細書において遺伝子の「発現」の「誘導」とは、ある細胞にある因子を作用させてその遺伝子の発現量を増加させることをいう。したがって、発現の誘導は、まったくその遺伝子の発現が見られなかった場合にその遺伝子が発現するようにすること、およびすでにその遺伝子の発現が見られていた場合にその遺伝子の発現が増大することを包含する。

本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては 、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。

本明細書において「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。

本明細書において、「(SMS2等の遺伝子の)発現を抑制する物質(例えば、核酸)」とは、標的遺伝子のmRNAの転写を抑制する物質、転写されたmRNAを分解する物質(例えば、核酸)、またはmRNAからのタンパク質の翻訳を抑制する物質(例えば、核酸)であれば特に限定されるものでない。かかる物質として、siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたはこれらの発現ベクター等の核酸などが例示される。その中でも、siRNAおよびその発現ベクターが好ましく、特にsiRNAが好ましい。「遺伝子の発現を抑制する物質」としては、上記のほか、タンパク質やペプチド、あるいは他の小分子も含まれる。なお、本発明において標的遺伝子は、SMS2遺伝子である。

本明細書において、「siRNA」とは、15〜40塩基からなる二本鎖RNA部分を有するRNA分子であり、前記siRNAのアンチセンス鎖と相補的な配列をもつ標的遺伝子のmRNAを切断し、標的遺伝子の発現を抑制する機能を有する。詳細には、本発明におけるsiRNAは、SMS2遺伝子のmRNA中の連続したRNA配列と相同な配列からなるセンスRNA鎖と、該センスRNA配列に相補的な配列からなるアンチセンスRNA鎖とからなる二本鎖RNA部分を含んでなるRNAである。かかるsiRNAおよび後述の変異体siRNAの設計および製造は当業者の技量の範囲内である。

二本鎖RNA部分の長さは、塩基として、15〜40塩基、好ましくは15〜30塩基、より好ましくは15〜25塩基、更に好ましくは18〜23塩基、最も好ましくは19〜21塩基である。これらの上限および下限は、これら特定のものに限定されず、これら列挙されているものの任意の組み合わせであってもよいことが理解される。siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の末端構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平滑末端を有するものであってもよいし、突出末端(オーバーハング)を有するものであってもよく、3’端が突き出したタイプが好ましい。センスRNA鎖およびアンチセンスRNA鎖の3’末端に数個の塩基、好ましくは1〜3個の塩基、さらに好ましくは2個の塩基からなるオーバーハングを有するsiRNAは、標的遺伝子の発現を抑制する効果が大きい場合が多く、好ましいものである。オーバーハングの塩基の種類は特に制限はなく、RNAを構成する塩基あるいはDNAを構成する塩基のいずれであってもよい。好ましいオーバーハング配列としては、3’末端にdTdT(デ オキシTを2bp)等を挙げることができる。例えば、好ましいsiRNAとしては、全てのsiRNAのセンス・アンチセンス鎖の、3’末端にdTdT(デオキシTを2bp)をつけているものが挙げられるがそれに限定されない。

さらに、上記siRNAのセンス鎖またはアンチセンス鎖の一方または両方において1〜数個までのヌクレオチドが欠失、置換、挿入および/または付加されているsiRNAも用いることができる。ここで、1〜数塩基とは、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜4塩基、さらに好ましくは1〜3塩基、最も好ましくは1〜2塩基である。かかる変異の具体例としては、3’オーバーハング部分の塩基数を0〜3個としたもの、3’−オーバーハング部分の塩基配列を他の塩基配列に変更したもの、あるいは塩基の挿入、付加または欠失により上記センスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖の長さが1〜3塩基異なるもの、センス鎖および/またはアンチセンス鎖において塩基が別の塩基にて置換されているもの等が挙げられるが、これらに限定されない。ただし、これらの変異体siRNAにおいてセンス鎖とアンチセンス鎖とがハイブリダイゼーションしうること、ならびにこれらの変異体siRNAが変異を有しないsiRNAと同等の遺伝子発現抑制能を有することが必要である。

さらに、該siRNAは、一方の端が閉じた構造の分子、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(Short Hairpin RNA;shRNA)であってもよい。shRNAは、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖RNA、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖RNA、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含むRNAであり、センス鎖部分とアンチセンス鎖部分がハイブリダイズし、二本鎖RNA部分を形成する。

siRNAは、臨床使用の際には、いわゆるoff−target効果を示さないことが望ましい。off−target効果とは、標的遺伝子以外に、使用したsiRNAに部分的にホモロジーのある別の遺伝子の発現を抑制する作用をいう。off−target効果を避けるために、候補siRNAについて、予めDNAマイクロアレイなどを利用して交差反応がないことを確認することが可能である。また、NCBI(National Center for Biotechnology Information)などが提供する公知のデータベースを用いて、標的となる遺伝子以外に候補siRNAの配列と相同性が高い部分を含む遺伝子が存在しないかを確認する事によって、off−target効果を避けることが可能である。

本発明のsiRNAを作製するには、化学合成による方法および遺伝子組換え技術を用いる方法等、公知の方法を適宜用いることができる。合成による方法では、配列情報に基づき、常法により二本鎖RNAを合成することができる。また、遺伝子組換え技術を用いる方法では、センス鎖配列やアンチセンス鎖配列をコードする発現ベクターを構築し、該ベクターを宿主細胞に導入後、転写により生成されたセンス鎖RNAやアンチセンス鎖RNAをそれぞれ取得することによって作製することもできる。また、標的遺伝子の特定配列のセンス鎖、該センス鎖配列に相補的な配列からなるアンチセンス鎖、およびその両鎖を繋ぐリンカー配列を含み、ヘアピン構造を形成するshRNAを発現させることにより、所望の二本鎖RNAを作製することもできる。

siRNAは、標的遺伝子の発現抑制活性を有する限りにおいては、siRNAを構成する核酸の全体またはその一部は、天然の核酸であってもよいし、修飾された核酸であってもよい。

本発明のSMS2等の遺伝子の発現を抑制する核酸には、修飾された核酸を用いてもよい。修飾された核酸とは、ヌクレオシド(塩基部位、糖部位)および/またはヌクレオシド間結合部位に修飾が施されていて、天然の核酸と異なった構造を有するものを意味する 。修飾された核酸を構成する「修飾されたヌクレオシド」としては、例えば、無塩基(abasic)ヌクレオシド;アラビノヌクレオシド、2’−デオキシウリジン、α−デオキシリボヌクレオシド、β−L−デオキシリボヌクレオシド、その他の糖修飾を有するヌクレオシド;ペプチド核酸(PNA)、ホスフェート基が結合したペプチド核酸(PHONA)、ロックド核酸(LNA)、モルホリノ核酸等が挙げられる。上記糖修飾を有するヌクレオシドには、2’−O−メチルリボース、2’−デオキシ−2’−フルオロリボース、3’−O−メチルリボース等の置換五炭糖;1’,2’−デオキシリボース;アラビノース;置換アラビノース等;六炭糖およびアルファ−アノマーの糖修飾を有するヌクレオシドが含まれる。これらのヌクレオシドは塩基部位が修飾された修飾塩基であってもよい。このような修飾塩基には、例えば、5−ヒドロキシシトシン、5−フルオロウラシル、4−チオウラシル等のピリミジン;6−メチルアデニン、6−チオグアノシン等のプリン;および他の複素環塩基等が挙げられる。

修飾された核酸を構成する「修飾されたヌクレオシド間結合」としては、例えば、アルキルリンカー、グリセリルリンカー、アミノリンカー、ポリ(エチレングリコール)結合、メチルホスホネートヌクレオシド間結合;メチルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホチオトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、トリエステルプロドラッグ、スルホン、スルホンアミド、サルファメート、ホルムアセタール、N−メチルヒドロキシルアミン、カルボネート、カルバメート、モルホリノ、ボラノホスホネート、ホスホルアミデートなどの非天然ヌクレオシド間結合が挙げられる。

本発明の二本鎖siRNAに含まれる核酸配列としては、配列表に記載の配列を好ましく用いることができる。これらのsiRNAのヌクレオチド配列を表1に示す。表1中、大文字で示されるのはセンスRNA配列およびアンチセンスRNA配列であり、小文字またはd+大文字(デオキシ体を意味する)で示されるのは3’末端オーバーハング配列である。

本明細書において、「トランスジェニック」とは、特定の遺伝子をある生物(または細胞等)に組み込むことまたはそのような遺伝子が組み込まれたかまたは欠失もしくは抑制された生物(例えば、動物(マウスなど)を含む)(または細胞等)をいう。トランスジェニック生物(または細胞等)のうち、ある遺伝子が欠失または抑制されているものをノックアウト生物(または細胞等)という。したがって「ノックアウト」とは、動物または細胞等について言及するとき、標的となる生来の遺伝子を機能しない状態または発現しない状態となっていることをいう。

本明細書において「遺伝子導入」は、目的となる遺伝子を細胞、組織、または動物中に導入することをいい、概念として、「形質転換」、「形質導入」および「トランスフェクション」などを包含するものであり、当該分野において公知の任意の手法によって実現することができる。また、「遺伝子導入」には導入部位を限定しない導入および導入部位を 限定する相同組換による導入のいずれも含むものである。遺伝子導入の手法としては、たとえば、レトロウイルス、プラスミド、ベクター等を用いた手法、あるいは、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法、リン酸カルシウム法が挙げられるがそれに限定されない。遺伝子導入に使用される細胞は、どのような細胞でもよいが、未分化細胞(たとえば、線維芽細胞など)を利用することが好ましい。

本明細書において、「予防する」とは、本発明の標的とする疾患、障害または症状が発生する前に、何らかの手段により、その疾患、障害または症状を生じさせないかまたは少なくとも遅延させること、あるいは疾患、障害または症状の原因自体が生じたとしてもそれが原因の障害が生じないような状態にすることをいう。

本明細書において、「治療する」とは、既に発症している本発明の標的とする疾患、障害または症状の進行を食い止めるか、または完全または部分的に拘わらず、本発明の標的とする疾患、障害または症状の進行が止まるか、または改善することをいう。

本明細書において「処置」とは、疾患、障害または症状に対して何らかの影響を与えるか、そのような疾患、障害または症状になることを防止することをいい、治療および予防の両方を含みうる。狭義には、「処置」は、「予防」に対して、発症後の上記行為をさす。

本明細書において「細胞死誘導剤」とは、細胞死を誘導しうる任意の薬剤をいう。本発明では、細胞膜のコレステロールと結合することにより細胞膜を破壊して細胞死を誘導ことができる薬剤であれば、いかなる物質をも使用することができる。SMSが欠損した細胞では、シクロデキストリン類を使用して細胞死を誘導することができるが、これに限定されないことが理解される。本明細書で「シクロデキストリン」という場合、広義に使用され、数分子のD−グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をとった任意の環状オリゴ糖およびその誘導体をいい、置換(例えば、置換基として、アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられるがこれらに限定されない)または非置換のシクロデキストリン類の任意の一つを指す。細胞死誘導剤として使用しうるシクロデキストリンとしては、たとえば、メチルαシクロデキストリン、メチルβシクロデキストリン、2−ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン、αシクロデキストリン、βシクロデキストリンなどを挙げることができる(参考として、J.Biol.Chem.270,29,17250−17256,1995;J.Biol.Chem.275,44,34028−34034;特開2007−332128などを参照。)。

本明細書において「再構成細胞」とは、ある細胞について、必要に応じてノックアウトにより特定の遺伝子を欠失させた後、目的となる遺伝子を導入して生産した細胞をいう。再構成細胞としては、本発明のスフィンゴミエリン合成酵素SMS1およびSMS2をノックアウトした細胞において、少なくとも1つのスフィンゴミエリン合成酵素(例えば、SMS1、SMS2またはSMS1およびSMS2の両方)を遺伝子導入させた細胞などを挙げることができる。

本明細書において「医薬」とは、当該分野でもっとも広義に解釈され、任意の薬を含み、薬事法上の医薬品、医薬部外品等のほか、骨形成による治療または予防を意図する任意の用途の薬剤、組成物等を包含することが理解される。そのような例として、医療分野、歯科分野等における応用が挙げられ、たとえば、遺伝子治療剤などが挙げられる。通常、医薬は固体または液体の賦形剤を含むとともに、必要に応じて崩壊剤、香味剤、遅延放出剤、滑沢剤、結合剤、着色剤などの添加剤を含むことができる。医薬品の形態は、錠剤、注射剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、細粒剤、徐放製剤などを含むが、これらに限定されない

(好ましい実施形態の説明) 以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。

(SMS2の発現を抑制する核酸) 本発明は、SMS2の発現を抑制する核酸を提供する。本発明の核酸は、核酸の翻訳または転写等を抑制する働きを有する。そのような核酸としては、アンチセンス核酸、RNAi作用を有する核酸(例えば、siRNA)、リボザイム活性を有する核酸等を挙げることができる。本発明のSMS2の発現を抑制する核酸は、修飾された核酸を含みうる。

このような核酸(例えば、siRNA、アンチセンス核酸)は、メタボリックシンドロームの改善、処置または予防のために用いられる。

本発明のSMS2のsiRNAなどのSMS2の発現を抑制する核酸の好ましい態様としては、例えば、以下の(a)〜(c)からなる群より選択される核酸を挙げることができる:(a)SMS2タンパク質をコードする遺伝子の転写産物またはその一部に対するアンチセンス核酸(b)SMS2タンパク質をコードする遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有する核酸;および(c)SMS2タンパク質をコードする遺伝子の発現をRNAi効果により阻害する作用を有する核酸(例えば、siRNA)。

SMS2としては、代表的には、配列番号79(ヒト)(LocusはNM_152621、6246bp)、配列番号80(マウス)(NM_028943、5791bp)(SMS2の全長配列)等を挙げることができるが、これ以外にも、SMS2として知られる配列であれば、どれでも標的として使用することができることが理解される。このような配列としては、ゲノムデータベース上の複数のAccession番号で参照される配列(例えば、ヌクレオチドデータベースでは、上記以外に、NM_001136257、NM_001136258、BC041369、BC028705(ヒト)等が検索され、タンパク質データベースでは、NP_001129730、NP_689834、NP_001129729、Q8NHU3、AAH41369、AAH28705、Q86VZ5(以上ヒト)、NP_083219(マウス)等)として公共遺伝子データベースNCBI上で検索される。

上記以外のタンパク質であっても、例えば、これらのAccession番号に記載された配列と高い相同性(通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)を有し、かつ、上記タンパク質が有する機能(例えば、細胞内のスフィンゴミエリンを合成する機能等)を持つタンパク質は、本発明の標的となるタンパク質に含まれる。上記タンパク質に関連するAccession番号に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が付加、欠失、置換、挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、通常変化するアミノ酸数が30アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内であるものも包含されることが理解される。あるいは、上記ヌクレオチド配列に関連するAccession番号に記載のDNA配列と高い相同性を有するものも包含される。高い相同性とは、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上(例えば、95%以上、さらには96%、97%、98%または99%以上)の相同性を意味する。この相同性は、mBLASTアルゴリズム(Altschul et al.(1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264−8; Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873−7)に よって決定することができる。あるいは、本発明の標的となる配列は、上記ヌクレオチド配列に関連するAccession番号に記載のDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものであってもよい。ここで「ストリンジェントな条件」としては、例えば、「2×SSC、0.1%SDS、50℃」、「2×SSC、0.1%SDS、42℃」、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」、よりストリンジェントな条件として「2×SSC、0.1%SDS、65℃」、「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」および「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」の条件を挙げることができる。

当業者は、上記の高い相同性を持つタンパク質から、上記のタンパク質に機能的に同等なタンパク質を、スフィンゴミエリンの合成活性を測定する方法を用いることにより適宜取得することができる。具体的な活性測定方法は、実施例にて例示的に記載される。また当業者においては、他の生物における上記遺伝子に相当する内在性の遺伝子を、上記遺伝子の塩基配列を基に適宜取得することが可能である。なお、本明細書においては、ヒト以外の生物における上記タンパク質および遺伝子に相当する上記タンパク質および遺伝子、あるいは、上述のタンパク質および遺伝子と機能的に同等な上記タンパク質および遺伝子も、単に上記の名称で記載する場合がある。

SMS2などの特定の内在性遺伝子の発現を阻害する方法としては、アンチセンス技術を利用する方法が当業者によく知られている。アンチセンス核酸が標的遺伝子の発現を阻害する作用としては、以下のような複数の要因が存在する。即ち、三重鎖形成による転写開始阻害、RNAポリメラーゼによって局部的に開状ループ構造が作られた部位とのハイブリッド形成による転写阻害、合成の進みつつあるRNAとのハイブリッド形成による転写阻害、イントロンとエクソンとの接合点におけるハイブリッド形成によるスプライシング阻害、スプライソソーム形成部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、mRNAとのハイブリッド形成による核から細胞質への移行阻害、キャッピング部位やポリ(A)付加部位とのハイブリッド形成によるスプライシング阻害、翻訳開始因子結合部位とのハイブリッド形成による翻訳開始阻害、開始コドン近傍のリボソーム結合部位とのハイブリッド形成による翻訳阻害、mRNAの翻訳領域やポリソーム結合部位とのハイブリッド形成によるペプチド鎖の伸長阻害、および核酸とタンパク質との相互作用部位とのハイブリッド形成による遺伝子発現阻害などである。このようにアンチセンス核酸は、転写、スプライシングまたは翻訳など様々な過程を阻害することで、標的遺伝子の発現を阻害する(平島および井上,新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現, 日本生化学会編,東京化学同人,1993,319−347.)。

本発明で用いられるアンチセンス核酸は、上記のいずれの作用により、上述のSMS2をコードする遺伝子の発現および/または機能を阻害してもよい。一つの態様としては、上述のSMS2をコードする遺伝子のmRNAの5’端近傍の非翻訳領域に相補的なアンチセンス配列を設計すれば、遺伝子の翻訳阻害に効果的と考えられる。また、コード領域もしくは3’の非翻訳領域に相補的な配列も使用することができる。このように、上述のSMS2をコードする遺伝子の翻訳領域だけでなく、非翻訳領域の配列のアンチセンス配列を含む核酸も、本発明で利用されるアンチセンス核酸に含まれる。使用されるアンチセンス核酸は、適当なプロモーターの下流に連結され、好ましくは3’側に転写終結シグナルを含む配列が連結される。このようにして調製された核酸は、公知の方法を用いることで所望の動物(細胞)に形質転換することができる。アンチセンス核酸の配列は、形質転換される動物(細胞)が有する内在性のSMS2をコードする遺伝子またはその一部と相補的な配列であることが好ましいが、遺伝子の発現を有効に抑制できる限りにおいて、完全に相補的でなくてもよい。転写されたRNAは標的遺伝子の転写産物に対して好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相補性を有する。アンチセンス核酸を用いて標的遺伝子の発現を効果的に阻害するには、アンチセンス核酸の長さは少なくとも12塩基以上25塩基未満であることが好ましいが、本発明のアンチセンス核酸は必ずしもこの 長さに限定されず、例えば、11塩基以下、100塩基以上、または500塩基以上であってもよい。アンチセンス核酸は、DNAのみから構成されていてもよいが、DNA以外の核酸、例えば、ロックド核酸(LNA)を含んでいてもよい。1つの実施形態としては、本発明で用いられるアンチセンス核酸は、5’末端にLNA、3’末端にLNAを含むLNA含有アンチセンス核酸であってもよい。このようなLNA含有アンチセンス核酸としては、配列番号81〜92などを挙げることができるがそれに限定されない。また、本発明において、アンチセンス核酸を用いる実施形態では、例えば平島および井上,新生化学実験講座2 核酸IV遺伝子の複製と発現,日本生化学会編,東京化学同人,1993,319−347.に記載される方法を用いて、配列番号79または80に記載されるSMS2の核酸配列に基づき、アンチセンス配列を設計することができる。参考となる配列としては、配列番号1〜18、21〜24、39〜42、45、46などを用いることができるがこれらに限定されない。例えば、実施例10に記載される配列番号81〜92のようなものが好ましく使用されるがこれに限定されない。これらのアンチセンス核酸を、実施例7および8に例示されるマウスおよびHepG2細胞を用いた手法で本発明のアンチセンスの効果を確認することができる。

SMS2の発現の阻害は、リボザイム、またはリボザイムをコードするDNAを利用して行うことも可能である。リボザイムとは触媒活性を有するRNA分子を指す。リボザイムには種々の活性を有するものが存在するが、中でもRNAを切断する酵素としてのリボザイムに焦点を当てた研究により、RNAを部位特異的に切断するリボザイムの設計が可能となった。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(小泉誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素,1990,35,2191.)。

例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15という配列のC15の3’側を切断するが、その活性にはU14とA9との塩基対形成が重要とされ、C15の代わりにA15またはU15でも切断され得ることが示されている(Koizumi,M. et al.,FEBS Lett,1988,228,228.)。基質結合部位が標的部位近傍のRNA配列と相補的なリボザイムを設計すれば、標的RNA中のUC、UUまたはUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを作出することができる(Koizumi,M. et al.,FEBS Lett,1988,239,285.、小泉誠および大塚栄子,タンパク質核酸酵素,1990,35,2191.、Koizumi,M. et al.,NuclAcids Res,1989,17,7059.)。

また、ヘアピン型リボザイムも本発明の目的に有用である。このリボザイムは、例えば、タバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan,JM.,Nature,1986,323,349.)。ヘアピン型リボザイムからも、標的特異的なRNA切断リボザイムを作出できることが示されている(Kikuchi,Y.& Sasaki,N.,Nucl Acids Res,1991,19,6751.、菊池洋,化学と生物,1992,30,112.)。このように、リボザイムを用いてSMS2をコードする遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、該遺伝子の発現を阻害することができる。

SMS2などの内在性遺伝子の発現の抑制は、さらに、標的遺伝子配列と同一もしくは類似した配列を有する二本鎖RNAを用いたRNA干渉(RNA interference、以下「RNAi」と略称する)によっても行うことができる。RNAiは、2本鎖RNA(dsRNA)が直接細胞内に取り込まれると、このdsRNAと相同な配列を持つ遺伝子の発現が抑えられるという、現在注目を浴びている手法である。哺乳類細胞にお いては、短鎖dsRNA(siRNA)を用いることにより、RNAiを誘導する事が可能で、RNAiは、ノックアウトマウスと比較して、効果が安定、実験が容易、費用が安価であるなど、多くの利点を有している。siRNAについては、本明細書において他の箇所においても詳述されている。

上述したように、本発明の上記「siRNA」は、当業者においては、該二本鎖RNAの標的となる上述SMS2をコードする遺伝子の塩基配列を基に、適宜作製することができる。二重鎖RNA部分のセンス鎖の例を示せば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、21および23などを挙げることができるがそれに限定されない。SMS2の配列の転写産物であるmRNAの任意の連続するRNA領域を選択し、この領域に対応する二本鎖RNAを作製することは、当業者においては、通常の試行の範囲内において適宜行い得ることである。また、該配列の転写産物であるmRNA配列から、より強いRNAi効果を有するsiRNA配列を選択することも、当業者においては、公知の方法によって適宜実施することが可能である。また、一方の鎖が判明していれば、当業者においては容易に他方の鎖(相補鎖)の塩基配列を知ることができる。siRNAは、当業者においては市販の核酸合成機を用いて適宜作製することが可能である。また、所望のRNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。

したがって、1つの実施形態では、本発明は、SMS2(例えば、配列番号79、80、SMS2の全長配列)のsiRNAである。このようなsiRNAとしては、具体的には、本発明者らが独自に配列設計した配列に基づくsiRNAである以下のような(a)〜(o)からなる群より選択されるいずれかに記載のsiRNAを挙げることができるがこれらに限定されない: (a) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号1で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号2で表される塩基配列であるsiRNA;

; (b) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号3で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号4で表される塩基配列であるsiRNA;

; (c) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号5で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号6で表される塩基配列であるsiRNA;

; (d) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号7で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号8で表される塩基配列であるsiRNA;

; (e) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号9で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号10で表される塩基配列であるsiRNA;

; (f) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号11で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号12で表される塩基配列であるsiRNA;

; (g) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号13で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号14で表される塩基配列であるsiRNA;

; (h) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号15で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号16で表される塩基配列であるsiRNA;

; (i) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号17で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号18で表される塩基配列であるsiRNA;

; (j) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号21で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号22で表される塩基配列であるsiRNA;

; (k) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号23で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号24で表される塩基配列であるsiRNA;

; (l) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号39で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号40で表される塩基配列であるsiRNA;

; (m) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号41で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号42で表される塩基配列であるsiRNA;

; (n) 二重鎖RNA部分の一方が配列番号45で表される塩基配列であり、他方がその相補配列である配列番号46で表される塩基配列であるsiRNA;

;ならびに (o)一方または両方の塩基配列において1〜数個のヌクレオチドが付加、挿入、欠失または置換され、SMS2の発現を抑制する活性を有する、(a)〜(n)のいずれかに記載のsiRNA。

本発明におけるsiRNAは、必ずしも標的配列に対する一組の2本鎖RNAである必要はなく、標的配列を含んだ領域に対する複数組の2本鎖RNAの混合物であってもよい。ここで標的配列に対応した核酸混合物としてのsiRNAは、当業者においては市販の核酸合成機およびDICER酵素を用いて適宜作成することが可能であり、また、所望のRNAの合成については、一般の合成受託サービスを利用することができる。なお、本発明のsiRNAには、所謂「カクテルsiRNA」が含まれる。また、本発明におけるsiRNAは、必ずしも全てのヌクレオチドがリボヌクレオチド(RNA)でなくともよい。即ち、本発明において、siRNAを構成する1もしくは複数のリボヌクレオチドは、対応するデオキシリボヌクレオチドであってもよい。この「対応する」とは、糖部分の構造は異なるものの、同一の塩基種(アデニン、グアニン、シトシン、チミン(ウラシル))であることを指す。例えば、アデニンを有するリボヌクレオチドに対応するデオキシリボヌクレオチドとは、アデニンを有するデオキシリボヌクレオチドのことを言う。また、前記「複数」とは特に制限されないが、好ましくは2〜5個程度の少数を指す。

さらに、本発明の上記RNAを発現し得るDNA(ベクター)もまた、本発明のSMS2の発現を抑制し得る核酸の好ましい態様に含まれる。例えば、本発明の上記二本鎖RNAを発現し得るDNA(ベクター)は、該二本鎖RNAの一方の鎖をコードするDNA、および該二本鎖RNAの他方の鎖をコードするDNAが、それぞれ発現し得るようにプロモーターと連結した構造を有するDNAである。本発明の上記DNAは、当業者においては、一般的な遺伝子工学技術により、適宜作製することができる。より具体的には、本発明のRNAをコードするDNAを公知の種々の発現ベクターへ適宜挿入することによって、本発明の発現ベクターを作製することが可能である。

(メタボリックシンドロームの医薬ならびに治療および予防方法) 別の局面において、本発明は、SMS2の発現を抑制する核酸を含有するメタボリックシンドロームの処置または予防用医薬組成物を提供する。ここで使用されるSMS2の発現を抑制する核酸としては、本明細書において(SMS2の発現を抑制する核酸)に記載される任意の核酸を用いることができることが理解される。

あるいは、本発明は、メタボリックシンドロームの処置または予防のためのSMS2の発現を抑制する核酸(例えば、siRNA、アンチセンス核酸)を提供する。メタボリックシンドロームの処置または予防のために使用されるSMS2の発現を抑制する核酸としては、本明細書において(SMS2の発現を抑制する核酸)に記載される任意の核酸を用いることができることが理解される。

好ましくは、本発明のSMS2の発現を抑制する核酸は、siRNAまたはアンチセンス核酸であり、上記具体的なsiRNAまたはアンチセンス核酸を例示することができる。

種々の実施形態において、本発明が標的とするメタボリックシンドロームは、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝からなる群より選択されることが理解される。したがって、本発明の核酸または医薬を使用する場合は、メタボリック疾患であれば適用部位もしくは疾患の種類は特に限定されず、例えば、肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝等を対象として適用される。上記疾患は、他の疾患と併発したものであってもよい。

1つの実施形態では、本発明の医薬は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。本発明の組成物を医薬または医薬品として使用する場合、その投与剤型としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、徐放製剤、カプセル剤、注射剤などが挙げられる。該医薬品は賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、香味剤、着色剤、遅延放出剤などの添加剤を含むことができる。経口製剤の場合、賦形剤として、例えば、乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロースなど、結合剤として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ポリビニルピロリドン、ブロックコポリマーなど、崩壊剤として、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチンなど、滑沢剤として、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油など、香味剤として、例えば、ココア末、ハッカ油、桂皮末などが使用できるが、これらに限定されない。必要により、徐放性または腸溶性製剤とするためのコーティングを施すことができる。注射用製剤の場合には、pH調整剤、溶解剤、等張化剤、緩衝化剤などが使用されるが、これらに限定されない。

本発明の医薬は、上記のような生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合し、医薬組成物として経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口剤としては、上述のような顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型とすることができる。非経口剤としては、注射剤、点滴剤、外用薬剤、吸入剤(ネブライザー)あるいは座剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、腹腔内注射剤、頭蓋内投与注射剤、あるいは鼻腔内投与注射剤等を示すことができる。外用薬剤には、経鼻投与剤、あるいは軟膏剤等を示すことができる。主成分である本発明の薬剤を含むように、上記の剤型とする製剤技術は公知である。

例えば、経口投与用の錠剤は、本発明の核酸または医薬に賦形剤、崩壊剤、結合剤、および滑沢剤等を加えて混合し、圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤には、乳糖、デンプン、あるいはマンニトール等が一般に用いられる。崩壊剤としては、炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウム等が一般に用いられる。結合剤には、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルピロリドンが用いられる。滑沢剤としては、タルクやステアリン酸マグネシウム等が公知である。

本発明の核酸または医薬を含む錠剤は、マスキングや、腸溶性製剤とするために、公知のコーティングを施すことができる。コーティング剤には、エチルセルロースやポリオキシエチレングリコール等を用いることができる。

また注射剤は、主成分である本発明の核酸または医薬を適当な分散剤とともに溶解、分散媒に溶解、あるいは分散させることにより得ることができる。分散媒の選択により、水 性溶剤と油性溶剤のいずれの剤型とすることもできる。水性溶剤とするには、蒸留水、生理食塩水、あるいはリンゲル液等を分散媒とする。油性溶剤では、各種植物油やプロピレングリコール等を分散媒に利用する。このとき、必要に応じてパラベン等の保存剤を添加することもできる。また注射剤中には、塩化ナトリウムやブドウ糖等の公知の等張化剤を加えることができる。更に、塩化ベンザルコニウムや塩酸プロカインのような無痛化剤を添加することができる。

また、本発明の核酸または医薬を固形、液状、あるいは半固形状の組成物とすることにより外用剤とすることができる。固形、あるいは液状の組成物については、先に述べたものと同様の組成物とすることで外用剤とすることができる。半固形状の組成物は、適当な溶剤に必要に応じて増粘剤を加えて調製することができる。溶剤には、水、エチルアルコール、あるいはポリエチレングリコール等を用いることができる。増粘剤には、一般にベントナイト、ポリビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、あるいはポリビニルピロリドン等が用いられる。この組成物には、塩化ベンザルコニウム等の保存剤を加えることができる。また、担体としてカカオ脂のような油性基材、あるいはセルロース誘導体のような水性ゲル基材を組み合わせることにより、座剤とすることもできる。

本発明の核酸または医薬を遺伝子治療剤として使用する場合は、本発明の核酸または医薬を注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられ、これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。

また、本発明の核酸または医薬をリポソームなどのリン脂質小胞体に導入し、その小胞体を投与することも可能である。siRNAまたはshRNAを保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入することができる。そして、得られる細胞を例えば、静脈内、動脈内等に全身投与する。肥満、糖尿病、脂質異常症および脂肪肝の部位等に局所的に投与することもできる。siRNAはin vitroにおいては非常に優れた特異的転写後抑制効果を示すが、in vivoにおいては血清中のヌクレアーゼ活性により速やかに分解されてしまうため持続時間が限られるためより最適で効果的なデリバリーシステム開発が求められてきた。一つの例としては、Ochiya,TらのNature Med.,5:707−710,1999、Curr.Gene Ther.,1 :31−52,2001より生体親和性材料であるアテロコラーゲンが核酸と混合し複合体を形成させると、生体中の分解酵素から核酸を保護する作用がありsiRNAのキャリアーとして非常に適しているキャリアーであると報告されており、このような形態を利用することができるが、本発明の核酸または医薬の導入の方法はこれには限られない。このようにして、生体内においては血清中の核酸分解酵素の働きにより、速やかに分解されてしまうため長時間の効果の継続を達成することができる。例えば、Takeshita F. PNAS.(2003) 102(34) 12177−82、Minakuchi Y Nucleic Acids Reserch(2004) 32(13) e109では、皮膚由来のアテロコラーゲンが核酸と複合体を形成し、生体内の分解酵素から核酸を保護する作用があり、siRNAのキャリアーとして非常に適していると報告されており、このような技術を用いることができる。

本発明の核酸または医薬は、安全とされている投与量の範囲内において、ヒトを含む哺乳動物に対して、必要量(有効量)が投与される。本発明の核酸または医薬の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師または獣医師の判断により適宜決定することができる。一例を示せば、年齢、性別、症状、投与経路、投与回数、剤型によって異なるが、例えば、アデノウイルスの場合の投与量は 1日1回あたり106〜1013個程度であり、1週〜8週間隔で投与される。

また、siRNAまたはshRNAを目的の組織または器官に導入するために、市販の遺伝子導入キット(例えば、アデノエクスプレス:クローンテック社)を用いることもできる。

本発明の医薬または医薬組成物において、さらに有効成分が含まれていてもよい。そのような含まれていてもよいさらなる医薬は、目的に応じ種々考えられる。

別の局面において、本発明は、メタボリックシンドロームの処置または予防のための医薬を製造するための、本発明のSMS2の発現を抑制する核酸(例えば、siRNA、アンチセンス核酸)の使用を提供する。ここで使用されうるSMS2の発現を抑制する核酸としては、上記(SMS2の発現を抑制する核酸)の節あるいは本節(メタボリックシンドロームの医薬ならびに治療および予防方法)で説明した任意の核酸を使用しうることが理解される。

1つの別の局面において、本発明の方法は、SMS2の発現を抑制する核酸を含有するメタボリックシンドロームの処置または予防用医薬組成物または医薬を生産する方法であって、SMS2の発現を抑制する核酸を薬学的に許容可能な賦形剤と混合する工程を包含する。医薬の形態のほか、当局が認める場合食品、健康食品、機能性食品なども同様に製造することができる。その場合、薬学的に許容可能な賦形剤に代えて、目的に応じた二次成分を用いることができる。

本発明の医薬または医薬組成物の有効量は、本発明の医薬または医薬組成物が目的とする薬効を発揮することができる量をいい、本明細書において、そのような有効量のうち、最小の濃度を最小有効量ということがあり、本明細書の記載に基づいて当業者は適宜決定することができる。そのような有効量の決定には、実際の投与のほか、動物モデルなどを用いることも可能である。本発明はまた、このような有効量を決定する際に有用である。

さらなる局面において、本発明は、メタボリックシンドロームを処置または予防する方法であって、該方法は、本発明のSMS2の発現を抑制する核酸(例えば、siRNA、アンチセンス核酸)を該処置または予防を必要とする被験体に投与する工程を包含する方法を提供する。ここで使用されうるSMS2の発現を抑制する核酸としては、上記(SMS2の発現を抑制する核酸)の節あるいは本節(メタボリックシンドロームの医薬ならびに治療および予防方法)で説明した任意の核酸を使用しうることが理解される。

個体への投与は、は本節(メタボリックシンドロームの医薬ならびに治療および予防方法)で説明されているとおりであり、任意の方法を用いることができ、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者(医師、獣医師、薬剤師等)であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。

本発明の予防もしくは治療方法の対象となる個体は、メタボリックシンドロームを発症し得る生物であれば特に制限されないが、好ましくはヒトである。

本発明の処置方法または予防方法において使用される有効成分の量は、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、細胞の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明の処置方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定すること ができる。頻度としては、例えば、毎日〜数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回〜1ヶ月に1回)の投与が挙げられる。1日〜1ヶ月に1回の投与を、経過を見ながら施すことが好ましい。

本発明の処置方法において使用される成分の種類および量は、本発明の方法によって得られた情報(例えば、疾患に関する情報)を元に、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、投与される被験体の部位の形態または種類などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。本発明のモニタリング方法を被験体(または患者)に対して施す頻度もまた、使用目的、対象疾患(種類、重篤度など)、患者の年齢、体重、性別、既往歴、および治療経過などを考慮して、当業者が容易に決定することができる。疾患状態をモニタリングする頻度としては、例えば、毎日−数ヶ月に1回(例えば、1週間に1回−1ヶ月に1回)のモニタリングが挙げられる。1日〜1ヶ月に1回のモニタリングを、経過を見ながら施すことが好ましい。

本発明は、キットなどとして使用されてもよく、その場合、指示書を伴うこともありうる。本明細書において「指示書」は、本発明の治療方法などを医師、患者など投与を行う人に対して記載したものである。この指示書は、本発明の医薬などを例えば、適切に投与することを指示する文言が記載されている。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。

(一般技術) 本明細書において用いられる医療器具製造技術、製剤技術、微細加工、分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法、糖鎖科学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel,F.M.,et al.eds,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons Inc.,NY,10158(2000);Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press;Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.et al.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman & Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G .T.(1996).Bioconjugate Techniques,Academic Press;Method in Enzymology 230、242、247、Academic Press、1994;別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。

本発明で使用される培養方法は、例えば、動物培養細胞マニュアル、瀬野ら編著、共立出版、1993年などに記載され支持されており、本明細書においてこのすべての記載を援用する。

以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。

以下の実施例で用いた動物の取り扱いは、北海道大学において規定される基準を遵守した。

使用した略語は以下のとおりである。 SMS:スフィンゴミエリン合成酵素 SMS1、SMS2:遺伝子名 KO:ノックアウト wKO:ダブルノックアウト MEF:マウス胚性線維芽細胞 FBS:ウシ胎仔血清 DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地 TG:トリグリセリド SM:スフィンゴミエリン MeβCD:メチルβシクロデキストリン HFD:高脂肪食 ND:通常食 WAT:白色脂肪細胞量 WT:野生型

(実施例1:SMS2の抑制による肝臓への中性脂肪蓄積の抑制) 1)SMSsノックアウトマウスの作製 マウスのSMSはこれまでに、発現クローニング法によって単離されたSMS1と、そのホモログとして同定されたSMS2、SMSrの3つのアイソフォームが見つかっている。SMS1ノックアウト(SMS1−KO)マウス、SMS2ノックアウト(SMS2−KO)マウスはともに、図1に示すターゲティングベクターを用いて、一般的なノックアウトマウス作製方法に則してエキソン1を欠損させて、作製した。

2)体重に対する60%脂肪食投与の影響の検討 4週齢の雄の野生型マウス(WT;C57BL6)とSMS2−KOマウスにそれぞれ高脂肪食(HFD;58Y1,testDiet社)と対照通常食(ND;AIN76A,testDiet社)を投与し、その後の体重変動を9週に渡って計測した。その結果、図2に示すように、SMS2 KOマウスにHFDを負荷した場合、WTに同様のHFDを投与した場合と比較して、体重増加が有意に抑えられた。

3)白色脂肪細胞量(WAT)に対する60%脂肪食投与の影響の検討 2)と同様にHFDを投与したWTとSMS2 KOマウス(12週後)を開腹し、精巣上体に付着した脂肪を採取しその重量を計測した。その結果、図3に示すように、SMS2 KO/HFDでは、白色脂肪細胞量(WAT)に減少傾向は見られるものの有意な差ではなかった。図には示さないが、対照通常食(ND)を並行して与えた同様の実験も行っており、WT/HFD群に比べてSMS2 KO/HFD群では白色脂肪細胞量(WAT)が減少していた。一方、SMS2 KO/HFD群とSMS2 KO/ND群との間には有意差は見られなかったことがわかっている。

4)肝トリグリセリド量に対する60%脂肪食投与の影響の検討 2)と同様にHFDを投与したWTとSMS2 KOマウス(12週後)を開腹し、肝臓を採取した。肝ホモジネート中のトリグリセリドをTriglyceride Quatification Kit(Biovision社)にて定量した。方法はキットの説明書に従った。ホモジネート中のタンパク質量をBCA protein assay(Pierce社)を用いて定量し、トリグリセリド量の補正に用いた。その結果、図4に示すように、WT/HFD群に比べてSMS2 KO/HFD群では有意にトリグリセリド量が減少していた。

さらに、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、肝ホモジネート中のトリグリセリド量(mg/mgタンパク質)の比較をした結果を図4Aに示す。その結果、図4Aに示すように、WT/HFD群(左)に比べてSMS2 KO/HFD群(右)では有意にトリグリセリド量が減少していた。一方、SMS2 KO/HFD群とSMS2 KO/ND群との間には有意差は見られなかった。

5)アディポネクチン量に対する60%脂肪食投与の影響の検討 2)と同様にHFDを投与したWTとSMS2 KOマウス(12週後)を開腹し、精巣上体に付着した脂肪を採取しmRNAを抽出し、QPCR(Thermal Cycler Dice TP800,タカラバイオ社)によってアディポネクチンのmRNA発現量を計測した。その際に同サンプル中のGAPDHのmRNA発現量で補正を行った。試薬は、第1鎖cDNA合成には、PrimeScript RT−reagent Kit(タカラバイオ社)を、QPCRには、SYBR premix EX Taq II(タカラバイオ社)を用いた。PCRプライマーは、 Fwプライマー:GTCAGTGGATCTGACGACACCAA(配列番号25);Rvプライマー:ATGCCTGCCATCCAACCTG(配列番号26) を用いた。

その結果、図5に示すように、WT/HFD群ではアディポネクチンの発現が抑制されているが、SMS2 KO/HFD群では、比較的高い発現量が維持されていた。さらに、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに12週間投与した際の、アディポネクチンの相対的な発現量の比較をした。その結果、図5Aに示すように、WT群では、高脂肪食を付与することにより、アディポネクチンの発現が抑制されるが、SMS2 KO群では、高脂肪食を付与しても、比較的高い発現量が維持されていた。

以上の結果から、SMS2の阻害によって、肝臓への中性脂肪の蓄積が抑えられる可能性があることが分かった。

6)インスリン抵抗性に関する実験 6−1)インスリン受容体の発現分析 次にWTおよびSMS2−KOマウスでの脂肪組織におけるインスリン受容体のmRNAの発現量を定量的PCRにて分析した。高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに投与した際のインスリン受容体の相対的な発現量を調べた。使用したプライマー配列と対照プライマー配列を示す。定量的PCRは、5)に記載のものと同様の手法で行った。

インスリン受容体(IR) フォワード(Fw):CAGCTCGAAACTGCATGGTTG(配列番号27) リバース(Rv):GGTGACATCCACCTCACAGGAA(配列番号28)

結果を図5B−1に示す。図5B−1に示すように、野生型のマウスでは、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を与えるとインスリン受容体の発現量が低下するけれども、SMS2—KOマウスでは高脂肪食によるインスリン受容体の発現低下はおこっておらず、対照通常食を与えた場合とほぼ同程度の発現量であった。また、SMS2—KOマウスに対して高脂肪食を投与した場合のインスリン受容体の発現量は、野生型のマウスに対して高脂肪食を投与した場合と比較して有意に高かった。

以上から、SMS2—KOマウスでは野生型にみられるようなHFDによるインスリン受容体の発現低下はおこっておらず、NDとほぼ同程度の発現量であった。以上の結果からSMS2—KOマウスの脂肪組織において、WTでみられるようなHFDによるインスリン受容体の発現低下がおこっておらず、インスリン抵抗性にはなっていないことが示唆された。(図5B−1)

6−2)Glut4の発現分析 次に、脂肪組織におけるGlut4に対する60%脂肪食投与の影響を検討し、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)または対照通常食(ND)を野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに投与した際のGlut4の相対的な発現量を比較した。使用したプライマー配列と対照プライマー配列を示す。

GLUT4: フォワード(Fw):CTGTAACTTCATTGTCGGCATGG(配列番号29) リバース(Rv):AGGCAGCTGAGATCTGGTCAAAC(配列番号30) 内在性対照遺伝子であるヒポキサン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT): フォワード(Fw):TTGTTGTTGGATATGCCCTTGACTA(配列番号7) リバース(Rv):AGGCAGATGGCCACAGGACTA(配列番号8)。

その結果を図5B−2に表す。図5B−2から明らかなように、野生型のマウスでは、高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を与えるとGlut4の発現量が低下するけれども、SMS2—KOマウスでは高脂肪食によるGlut4の発現低下についてはその低下の度合いが抑えられており、対照通常食を与えた場合とほぼ同程度の発現量であった。また、SMS2—KOマウスに対して高脂肪食を投与した場合のGlut4の発現量は、野生型のマウスに対して高脂肪食を投与した場合と比較して有意に高かった。以上の結果から、SMS2—KOマウスの脂肪組織において、野生型のマウスでみられるような高脂肪食によるGlut4の発現低下がおこっておらず、インスリン抵抗性にはなっていないことが示唆された。

6−3)耐糖能試験 上記「2)体重に対する60%脂肪食投与の影響の検討」において記載される対照通常食(ND)または高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を野生型(WT)またはSMS2−KOマウスに投与し、さらに9週間成育させたマウスを用いて耐糖能試験を行った。24時間絶食させた当該マウスの腹腔内に2g/kgでグルコースを投与し、投与直前、15分後、30分後、60分後、120分後に血糖値を尾静脈からの採血により測定した。測定にはグルコメーターを使用した。その結果、高脂肪食を投与した野生型およびSMS2—KOマウス間において120分の時点で、SMS2—KOマウスで有意に血糖値が低下することが判明した(P<0.05;図5C)。この耐糖能試験のグラフのグラフ下の面積を比較したところ(GTT AUC;図5D)、高脂肪食を投与した野生型およびSMS2—KOマウス間において、SMS2—KOマウスで有意に面積が低下していた(P<0.05)。

図5Dには、図5Cのグラフの下の面積(AUC)を棒グラフで表したものであるが、このように表現しても、SMS2 KO/HFD群はWT/HFD群に比べて有意に血糖値が低下していることが理解できる。

以上の結果から、グルコース負荷にたいして有意に感受性になっていることが確認できた。

次に血漿インスリン量を測定した。野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに通常食を8週齢の時点から4週間投与した後、24時間絶食させ、その後通常食を投与し、24時間絶食時および通常食投与後1時間経過時の血中インスリン濃度を測定した。その結果を図5Eに示す。図5Eから明らかなように、野生型(WT)およびSMS2−KOマウスの間において、24時間の絶食時および通常食投与後1時間経過時いずれにおいても血中インスリン濃度に有意差は見られなかった。したがって、野生型(WT)およびSMS2−KOマウスの両者で血中インスリン濃度および応答性に有意差は認められなかったといえる。以上の結果よりSMS2—KOマウスのインスリン産生能およびグルコースによる応答性に異常がないことが確認でき、したがって膵臓β細胞の異常は認められなかった。

次に、血糖値に対する高脂肪食の影響を検討した。4週齢の野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに2週間高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を投与し、高脂肪食投与前に4時間絶食させたときおよび2週間高脂肪食を投与した後に4時間絶食させて血糖値を測定した。図5Fに示されるように、高脂肪食を投与する前には、野生型のマウスとSMS2−KOマウス間において、血糖値に有意差は見られないけれども、高脂肪食を2週間投与した後は、野生型のマウスの血糖値は、SMS2−KOマウスと比較して有意に高かった。

次に、血中インスリン量に対する高脂肪食の影響を検討した。野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を2週間投与した後、4時間絶食させ、血中インスリン量を測定した。その結果、図5Gに示されるように、SMS2−KOマウスでは、野生型のマウスと比較して、有意差をもって、血中インスリン量が低下していた。

次に、インスリンに対する血中グルコース濃度を検討した。4週齢の野生型(WT)およびSMS2−KOマウスに6週間高脂肪食(HFD;60%脂肪食)を投与し、腹腔内にインスリンを0.5U/kgで投与し、投与前および投与後15、30、60、90、120分での血中グルコース濃度を測定した結果を図5H−1に示す。図5H−1に示されるように、特に、投与後30、60、90分後には、SMS2−KOマウスは、野生型 のマウスと比較して、有意に血中グルコース濃度が低下していたので、SMS2−KOマウスはインスリンに対して感受性であることが明らかとなった。

また、図5H−1のグラフの下の面積(AUC)を棒グラフで表す図5H−2からも明らかなように、SMS2−KOマウスにおいては、野生型のマウスと比較して、20%程度減少していたので、インスリンに対して感受性であることが明らかになった。

SMS2—KOマウスではWTと比較して、血漿インスリン量が有意に低下していた。したがってSMS2−KOマウスではインスリン抵抗性になっていないことが実証された。したがってSMS2—KOマウスではインスリンに対して感受性であり、野生型のマウスのようにインスリン抵抗性が惹起されていなかった。(特に、図5E、図5Fおよび図5G参照)。

以上の結果から、SMS2の阻害によって、糖尿病の治療、特にインスリン抵抗性を改善することができる可能性があることが分かった。

(実施例2:SMSs再構成細胞の作製) 1)不死化MEF細胞の作製 新培養細胞実験法(羊土社)第4章 初代培養 線維芽細胞 p.66−70に記載されるようにして、実施例1において作製したSMS1−KOマウスとSMS2−KOマウスとを交配させて得た、SMS1、SMS2を共に欠損したダブルノックアウト(SMS1,2−wKO)の胎児からMEF(マウス胚性線維芽細胞)を単離した。pMFG−SV40Tstを安定的に保持した293T細胞の培養上清に放出されたレトロウイルスをこのMEFに感染させて、MEFを不死化した。

a)ウイルス液の調製 ウイルス産生細胞としてNIH3T3エコトロピック・プロデューサー細胞 ΨCRE−MFGtsT(RCB1119;SV40 T抗原発現ウイルス産生細胞;http://www2.brc.riken.jp/lab/cell/detail.cgi?cell_no=RCB1119&type=1を参照のこと)を使用した。ΨCRE−MFGtsT細胞は、SV40tsTを発現するレトロウイルスを培地中に放出し、マウス宿主細胞に感染する。サブコンフルエントのΨCRE−MFGtsT細胞を10% FBSを含むDMEM中、37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。翌日、上清をウイルス液として回収し、0.20mmシリンジフィルター(CORNINGから入手可能)で濾過した。

b)ウイルス感染および細胞株のクローニング MEFの培養物において、10% FBS、ウイルス原液1mLを含むDMEM 5mLで培地を置換し、34℃、5% CO2の条件下で24時間培養してウイルスに感染させた後、10% FBSを含むDMEM 5mLを加えてさらに一晩培養した。翌日、10% FBSを含むDMEM 10mLに培地交換した。2〜3日ごとに培地を交換し、MEFの不死化細胞株を樹立し、さらに不死化したMEFからいくつかの細胞株をクローニングし、その一つをZS2と命名した。

2)SMS1またはSMS2を過剰発現する不死化MEF細胞の作製 pQCXIP(クロンテック社)に、C末端にV5タグを付加したSMS1およびSMS2を組み込み、レトロウイルスベクターを作製した。このプラスミドとGP2−293細胞(クロンテック社)を用いて、SMS1、SMS2をそれぞれ発現するレトロウイルスを作製し、クロンテック社の説明書に従って、1)でクローニングした細胞株の一つZS2細胞に感染させた。4μg/mlのピューロマイシンで非感染細胞を除き、SMS1を過剰発現した細胞ZS2/SMS1、およびSMS2を過剰発現した細胞株ZS2/S MS2を得た。これら3つの細胞株について、抗V5 mab(invitrogen)抗体を用いてウエスタンブロティングを行った。SMS1を発現させた細胞およびSMS2を発現させた細胞では、図6に示すように、抗V5 mabで検出されるSMS1、SMS2のバンドがそれぞれ確認された。

(実施例3:ZS2、ZS2/SMS1およびZS2/SMS2細胞の機能の検討) 実施例2で作製したZS2、ZS2/SMS1およびZS2/SMS2細胞の機能、特に、SMS活性およびTG合成について検討した。

1)SMS活性 実施例2で作製した細胞(2×105細胞/ウェル)を各々6ウェルプレートに播き、10% FBSを含むDMEM中で一晩培養した後、血清を含まないDMEMに培地を交換し、最終濃度が1μMとなるように調整したBODIPY−C5−セラミド(molecular probe社)を加えて、37℃で30分間反応させた。ピペッティングで細胞を剥がした後、100μlの溶解バッファー(20mM Tris−HCl、pH7.5、0.2%TritonX−100、1×complete(Roche社)、1mM PMSF)で溶解させ、タンパク量をBCA protein asay(Pierce社)で測定した。溶解液からBligh&Dyer法で脂質を抽出し、HPTLC(Merck社)を用いて、BODIPY−セラミドと生成したBODIPY−C5−スフィンゴミエリンを、Fla7000(Fuji film)で定量し、SMS活性を算出した。SMS活性はタンパク質量で補正した。図7に示すように、ZS2/SMS1細胞およびZS2/SMS2細胞がSMS活性を有していたのに対し、ZS2細胞はSMS活性がなかった。

2)TG合成 実施例2で作製した細胞(2×105細胞/プレート)を6ウェルプレートに播き、DMEM、10% FBS中で一晩培養後、血清を含まないDMEMに培地を交換し、最終濃度が1μCiの[14C]オレイン酸(American Radiolabeled Chemicals社)を加えて、37℃で30分間反応させた。ピペッティングで細胞を剥がした後、100μlの溶解バッファー(20mM TrisHCl、pH7.5、0.2%TritonX−100、1×complete(Roche社)、1mM PMSF)で溶解させ、蛋白量をBCA protein asay(Pierce社)で測定した。溶解液からBligh&Dyer法で脂質を抽出し、HPTLC(Merck社)を用いて[14C]オレイン酸と、生成した[14C]オレイン酸−トリグリセリドを、Fla7000(Fuji film)で定量し、TG量を算出した。図8に示すように、ZS2/SMS1細胞およびZS2/SMS2細胞におけるTG量と、ZS2細胞におけるTG量との間には有意差があった(各々、p<0.005およびp<0.02)。

(実施例4:SMS2に対するsiRNAのスクリーニング) 本実施例では、SMS2に対するsiRNAのスクリーニングを行った。具体的手順は以下のとおりである。

下記に示す、独自に配列設計したsiRNAを合成し、Hepa1c1c7細胞またはHeLa細胞に形質転換した。48時間後にSMS2mRNA量を測定することで、siRNAによるSMS2発現抑制率(ノックダウン率)を比較した。10%FCS(ウシ胎仔血清)を含有するDMEMを用い、5%CO2、37℃の条件下で両細胞を培養した。トランスフェクション前日に細胞を12ウェルプレートに播種し、24時間培養後、RNAiMAX(インビトロゲン)を用いて最終濃度100nMとなるように、各siRNAをトランスフェクションし、その48時間後に、SMS2のmRNA量を測定した。RNe asy Mini Kit(QIAGEN)を用いて添付マニュアルに従いDNase I処理した後、全RNAを回収し、SuperScriptIII First Strand Synthesis System(インビトロゲン)を用いて添付マニュアルに従いcDNA合成を行った。合成したcDNAを鋳型としてリアルタイム定量PCRを行ない、SMS2のmRNA量を定量した。リアルタイム定量PCRは反応試薬としてSYBR Green PCR Master Mix (ABI)を用い、Applied Biosystems 7500リアルタイムPCRシステム(ABI)を用いて測定を実施した。G3PDHの発現量でサンプル間のcDNAの均一化をおこなった。

ヒトおよびマウスSMS2の発現量を測定するために使用したリアルタイム定量PCRプライマー配列は、 Fwプライマー:TCAATGGAGACTCTCAGGC(配列番号33); Rvプライマー:CCGCTGAAGAGGAAGTCTC(配列番号34) を用い、 ヒトG3PDHの発現量を測定するために使用したリアルタイム定量PCRプライマー配列は、 Fwプライマー:CCTTCCGTGTCCCCACTG(配列番号35); Rvプライマー:ACCCTGTTGCTGTAGCCAA(配列番号36) を用い、 マウスG3PDHの発現量を測定するために使用したリアルタイム定量PCRプライマー配列は、 Fwプライマー:CAACTCCCACTCTTCCACCTTC(配列番号37); Rvプライマー:CTTACTCCTTGGAGGCCATGTAG(配列番号38) を用いた。

以下に、用いたマウス特異的siRNAの配列を示す。 SMS2-i1 5’-ggucacuuggaaagucaaa-3’ (センス鎖)(配列番号39) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号40) SMS2-i2 5’-ccggacuacauccagauuu-3’ (センス鎖)(配列番号41) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号42) SMS2-i3 5’-ggaugguauugguuggguu-3’ (センス鎖)(配列番号21) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号22) SMS2-i4 5’-gcagauuguuguugaucau-3’ (センス鎖)(配列番号43) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号44)

以下に、用いたヒトとマウスとで相同なsiRNAの配列を示す。 SMS2-i5 5’-cauagagacagcaaaacuu-3’ (センス鎖)(配列番号45) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号46)。 SMS2-i6 5’-gcauuuucuguaucagaaa-3’ (センス鎖)(配列番号1) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号2) SMS2-i7 5’-gucacuucuggugguauca-3’ (センス鎖)(配列番号3) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号4) SMS2-i8 5’-cuguuuuggugguaccauu-3’ (センス鎖)(配列番号5) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号6) 用いたヒト特異的siRNAの配列を示す。

SMS2-i104 5'-gggcauugccuucauauau-3' (センス鎖)(配列番号7) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号8) SMS2-i105 5'-ggcuguuucugagauacaa-3' (センス鎖)(配列番号9) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号10) SMS2-i106 5'-ggugguggauuguccauaa-3'(センス鎖)(配列番号11) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号12) SMS2-i107 5'-ggauuguccauaacuggau-3' (センス鎖)(配列番号13) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号14) SMS2-i108 5'-ccauaacuggaucacauau-3' (センス鎖)(配列番号15) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号16) SMS2-i109 5'-gcacacgaacacuacacua-3' (センス鎖)(配列番号17) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号18)

その結果、図9に示すようにヒトとマウスで相同なsiRNA配列(i6、i7、およびi8)は全てマウス細胞であるHepa1c1c7細胞でマウスSMS2に対して70%以上のノックダウン活性を保持していた(対照のCTR−iを100%として表示している)。また、図10に示すように、これら3種のsiRNAの配列は、ヒトHeLa細胞でも80%以上のノックダウン活性を保持していた(CTR−iを100%として表示)。さらに、図10に示すように、ヒトSMS2に特異的なsiRNAであるi104〜i109はすべてHeLa細胞で75%以上のノックダウン活性を保持していた。

(実施例5:SMSs再構成細胞におけるSMS2のノックダウン) 図11に示すように、マウスZS2/SMS2細胞でSMS2−i8を用いて実施例4と同じ実験を行った。siRNAの最終濃度は100nMであり、形質転換後48時間に定量的PCRを行った。その結果80%程度のSMS2の遺伝子発現抑制が確認できた。内在性対照としてG3PDHを使用した。

次いで、マウスZS2細胞でSMS2−i8が、SMS2の遺伝子発現を抑制し、細胞膜上のSMを減少させるのかの確認を行なった。図12に示すように、ZS2/SMS2細胞を用いて、ヒトSMS2に対するSMS2−i8を用いてノックダウンを行い、MeβCD感受性評価試験を行った。

6ウエルデッシュにZS2/SMS2細胞2x105個を2mlの10%FCS/DMEM培地にサスペンドして撒き、各種siRNAを最終濃度100nMになるように、市販の形質転換試薬RNAiMAX(インビトロジェン社)と混合後に添加する。業者のプロイコルに従い形質転換した。その後24時間後に培地を0.3% FCS OPTIPRO SFM(ギブコ)に置き換えて、さらに24時間培養後に、MeβCDを最終濃度5mMになるように添加し、さらに5% CO2 37℃にて16時間培養した。WST8を含む生細胞数測定試薬(ドウジンドウ社)を10μL/ウエルで添加し、さらに6時間5% CO2 37℃にて培養する。生細胞数はプロトコル通りに測定した。

ZS2/SMS2細胞に対してヒトSMS2に対するsiRNA(SMS2−i8)を用いてノックダウンすると、当該細胞がMeβCDに感受性になり、細胞増殖が最終濃度5mMのMeβCDで有意に低下(有意差検定でP<0.01)した。

したがって当該siRNAによりSMS2がノックダウンされることによって、細胞膜上のSMが減少し、ZS2/SMS2細胞がMeβCD感受性になることがわかり、したがって当該siRNAが細胞膜上のSMを減少させる活性があることがわかる。

対照として使用したsiRNA(CTR−i)配列を示す。 CTR−i 5’−uucuccgaacgugucacgu−3’(センス鎖)配列番号19) 同アンチセンス鎖(配列番号20)

(実施例6 マウス肝臓におけるSMS2のノックダウン) 本実施例では、マウスSMS2に対する2種類のsiRNA(SMS2−i3、i11)を用いてマウス肝実質細胞株であるHepa1c1c7細胞(ATCC)でSMS2をノックダウンし、その効果を確認した。

12ウエルデッシュに1x104個の細胞を撒き、24時間後に市販の形質転換試薬であるRNAiMAX(Invitrogen社)を用いて、業者のプロトコルに従い形質転換を行った。siRNAは最終濃度100nMで行った。48時間後に細胞を0.5mlのTrizol(invitrogen社)で溶解し、プロトコルにしたがいRNAを抽出した。cDNAへの逆転写は市販のキットであるSuperscript III(Invitrogen社)を用いて定法通り行った。定量的PCRは上記プライマーを使用し、市販のキット(ABI社)を用いて行った。

いずれのsiRNA配列を使用した場合であっても、80%以上のノックダウンを確認できた(図13、図14)。cDNAの標準化のためにG3PDHを用いた。

用いたマウスSMS2に特異的なsiRNA配列を示す。 SMS2−i3 5’−ggaugguauugguuggguu−3’(センス鎖)(配列番号21) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号22) SMS2−i11 5’−ggcucuuucugcguuacaa−3’(センス鎖)(配列番号23) その相補配列である同アンチセンス鎖(配列番号24)

これら細胞レベルでノックダウン活性を確認したsiRNA(i3およびi11)をマウスに投与するために、いわゆるsiRNA搭載リポソームを作製した。siRNA搭載リポソームは以下の論文(Nature Biotechnology、 Vol28、No2、p172−176 2010)を参考にして作製した。脂質とsiRNAをエタノールインジェクション法で混合することで作製した。論文と比較して脂質組成を少し改良し、C18PEG:Dlin−KC2−DMA:DPPC:Chol.=2:56.6:3.5:34.3(%)で作製した。作製したリポソームの粒子径を測定した所、どのsiRNAを使用して作製した場合にも約100nm、ゼータ電位も同様にすべてほぼ中性であった。

次にC57BL/6JHamSlc—ob/ob(日本SLC、以下ob/obマウスと呼ぶ)に通常食を与えることでレプチン欠損性肥満マウスを作製した。前述のようにして作製したsiRNA搭載リポソームをob/obマウス(5週齢、♀)尾静脈よりsiRNA量にして1.25mg/kgで注射して投与した(n=3)。投与後3日目で肝臓を回収し、図9で示した細胞からのRNA定量方法と同じ方法で、ノックダウン率を測定した。SMS2発現抑制群としてSMS2−i3またはi11(それぞれn=3)、ネガティブ対照群としてCTR−i(n=3)を投与して評価した。肝臓SMS2発現を解析した結果、mRNAレベルはSMS2—i11投与群において80%、i3投与群においても70%程度発現抑制されていた。以上より、肝臓SMS2発現抑制に成功したことが確認できた。

(実施例7 マウス肝臓におけるSMS2の抑制による肝臓トリグリセリドの減少) 7週齢のob/obマウス(♂)へsiRNA搭載リポソームをsiRNA量にして1.25mg/kgでマウス尾静脈内注射して投与した(n=3)。投与後10日間、体重と摂餌量の測定を行った。投与から10日後、4時間絶食させたob/obマウスの肝臓組織を回収した。投与後10日経過後の体重の変化と10日間の平均摂餌量を測定した結果を図16および図17に示す。対照群と比較して体重増加および平均摂餌量に有意差はなかった。

肝臓からの脂質成分の抽出はFolch法に従った。肝臓0.5gをホモジナイズしマイクロチューブへ入れ、0.1M KClを加えて1.4mLにメスアップし、よく攪拌して15mLファルコンチューブへ移す。次に、CHCl3とMeOH混合液(2:1)6mLを入れ、室温で2時間攪拌する。2mLの滅菌水を加えてよく攪拌し、5分間放置する。3000rpm、10分間遠心分離し、下層(有機層)を720μL回収する。エバポレーションを行って完全に有機溶媒を除去すると黄透明な脂質成分が得られる。抽出したトリグリセリドはトリグリセライドE-テストワコー(GPO・DAOS法:和光純薬)を用いて添付マニュアルに従い測定した。肝臓トリグリセリド量の測定結果を図18に示す。測定結果より、対照群(CTR−i投与)と比較してSMS2発現抑制(i3またはi11投与)によって肝臓トリグリセリドの低下(p<0.05)が見られた(n=3)。

以上の結果、マウスSMS2に対する2種類の異なる配列のsiRNAの両方の配列において、肝臓のトリグリセリドの低下が確認できたことから、この効果はいわゆるオフターゲット効果ではなく、SMS2の発現抑制により惹起されていることが確認できた。以上の結果から内臓脂肪蓄積抑制、脂肪肝抑制が確認された。

また、ob/obモデルは糖尿病モデルでもあり、実施例8等の実験結果から、本発明のsiRNAは、糖尿病における効果も期待しうることが理解される。

(実施例8 HepG2細胞に対するSMS2の抑制によるトリグリセリドの減少) ヒト肝実質細胞株であるHepG2細胞に対照のsiRNA配列であるCTR−i、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換した。48時間後のSMS2のノックダウン率を図9と同じ方法で測定した。その結果いずれのsiRNA配列を用いた場合にも60%程度のノックダウンが確認できた(図19)。

ノックダウンが確認できたので、次に、HepG2細胞を、CTR−i、SMS2−i104またはSMS2−i109の3種類のsiRNAを用いて形質転換し、24時間後に培地のFCSを0.5%にした。さらにその24時間後にエタノールに溶解したオレイン酸をBSAと混合し、バスタイプソニケーターを用いて超音波処理をほどこし、分散させたオレイン酸・BSA混合物を培地に添加した。加えたオレイン酸の最終濃度は0.4mM、BSAは1%にした。さらにその24時間後に培地を取り除き、細胞をPBSで2回洗浄後、10%ホルマリン・PBS溶液を加えて10分間細胞を固定した。その後細胞からホルマリン溶液を除去し、PBSで3回洗浄後にPBSを完全に除去し、トリグリセリドを特異的に染色できる蛍光試薬であるAdipoRed(NileRed)の溶液(Lonza社)を最終濃度4%になるように添加したPBS溶液を細胞に添加した。5分後に蛍光顕微鏡で細胞を観察した(図20A〜C)。また、CTR−iを形質転換した場合と比較して、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換した場合には、細胞内の脂肪滴の粒子径が小さくなっていると思われることから、視野をランダムに5視野を撮像し、直径が1.25μm以上の脂肪滴数を計測した。その結果、CTR−iを形質転換した場合と比較して、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換した場合には、直径が1.25μm以上の脂肪滴数が30%程度まで減少していた(図21)。このような現象は例えば、カベオリンやペリリピン、DGAT2などの阻害によりおこることがしられており、またそれらの遺伝子をノックアウトしたマウスはすべて抗肥満効果があることから、実施例8の結果と実施例7の結果をあわせると、SMS2の肝細胞での阻害により抗肥満効果が惹起されていることが示唆された。

次にこの脂肪滴中のTG量を画像の蛍光量を定量することで輝度として算出した。用いた測定ソフトはKEYENCE社製のBZII解析ソフトを用いた。その結果CTR−i を形質転換した場合と比較して、SMS2−i104またはSMS2−i109を形質転換した場合には、蛍光量が有意に低下しており、ヒト肝実質細胞でオレイン酸の取り込みかそのTGへの変換あるいはその両方が阻害されていることが判明した。このようにTG蓄積の抑制効果は前述のカベオリン阻害などでも同様の効果があり、また一般的にいって細胞内へのTG蓄積を抑制するような作用は抗肥満効果を惹起することが知られている。したがってSMS2阻害によりヒトsiRNAを用いた細胞レベルの解析においても、マウス肝臓でのノックダウンにより肝TG蓄積抑制作用と同じように、内臓脂肪蓄積抑制、脂肪肝抑制を示唆する効果が確認できた。

(実施例9:siRNA以外の核酸の例(リボザイム)) 次に、例えばKikuchi,Y.& Sasaki,N.,Nucl Acids Res,1991,19,6751.、菊池洋,化学と生物,1992,30,112.に記載される方法を用いて、配列番号79または80に記載されるSMS2の核酸配列に基づき、リボザイム配列を設計する。

これを、実施例7および8に記載されるマウスおよびHepG2細胞を用いた手法で本発明のリボザイムの効果を確認することができる。

(実施例10:SMS2に対するアンチセンス核酸のスクリーニング) 本実施例では、ヒトおよびマウスのSMS2の塩基配列での相同性領域(13マー以上の連続相同性領域)をもとに設計したアンチセンス核酸の有効性を実証した。 アンチセンスオリゴヌクレオチドを設計し、製造し、ヒトHEK293細胞でノックダウン実験を行った。配列の構造の設計はNucleic Acid Research 2010, Vol38, No.1 のEfficient gene silencing by delivery of locked nucleic acid antisense ligonucleotides, unassisted by transfection reagents.を参考にした。

以下に、本実施例において用いた13マーのアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列および形状を示す。使用した核酸は、LNA型Gapmerアンチセンスオリゴヌクレオチドとも称されるLNA含有核酸である。大文字はLNA(Locked nucleic acid)であり、小文字はDNAである。LNAはBNA(Bridged Nucleic Acid)の一種で、BNAは10種類以上が知られており、このうちLNAは、糖の2’位と4’位とを−O−CH2−で架橋しコンフォメーションをN型に固定した人工核酸であり、Funakoshi等から入手可能である。これらのオリゴヌクレオチドにおいて、すべての核酸は、ホスホロチオエート修飾のバックボーンでつながっている。LNA部分のCはすべてメチルシトシンである。以下の例では、5’末端にロックド核酸(LNA)が3つ、3’末端にLNAが2つ含まれる。

上記で作製した12種類のLNA型Gapmerアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、ヒトHEK293細胞でのノックダウン実験を行った。LNA型Gapmerアンチセンスオリゴヌクレオチドは細胞培養液に最終濃度5μMでそのまま添加した。形質転換後72時間に定量的PCRを行った。内在性対照としてG3PDHを使用した。 ヒトSMS2の発現量を測定するために使用したプライマー配列は、 Fwプライマー:TCAATGGAGACTCTCAGGC(配列番号33); Rvプライマー:CCGCTGAAGAGGAAGTCTC(配列番号34) を用い、 ヒトG3PDHの発現量を測定するために使用したプライマー配列は、 Fwプライマー:CCTTCCGTGTCCCCACTG(配列番号35); Rvプライマー:ACCCTGTTGCTGTAGCCAA(配列番号36) を用いた。

その結果、上記オリゴヌクレオチドを使用したいずれの実施形態でも生理食塩水投与細胞(アンチセンス未添加細胞)と比較してSMS2の遺伝子発現抑制が確認でき、そして、SMS2−13−006,007,008,012,014,017,019<それぞれ、配列番号82、83、84、88、89、90および91>において、生理食塩水投与細胞(アンチセンス未添加細胞)と比較して、50%以上のSMS2の遺伝子発現抑制が確認できた(図22)。

以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本出願は、2010年9月22日に出願された米国特許仮出願番号61/385,377に対して優先権を主張するものであり、その全体の内容は、具体的に本明細書に記載されているのと同様に本明細書の一部を構成するものとして援用されるべきであるこ とが理解される。

本発明は、メタボリック疾患の治療・予防剤を提供する。

配列番号1:SMS2-i6の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号2:SMS2-i6の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号3:SMS2-i7の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号4:SMS2-i7の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号5:SMS2-i8の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号6:SMS2-i8の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号7:SMS2-i104の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号8:SMS2-i104の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号9:SMS2-i105の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号10:SMS2-i105の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号11:SMS2-i106の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号12:SMS2-i106の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号13:SMS2-i107の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号14:SMS2-i107の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号15:SMS2-i108の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号16:SMS2-i108の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号17:SMS2-i109の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号18:SMS2-i109の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号19:CTR−iの二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号20:CTR−iの二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号21:SMS2-i3の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号22:SMS2-i3の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号23:SMS2-i11の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号24:SMS2-i11の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号25:実施例1で用いたアディポネクチンFwプライマー 配列番号26:実施例1で用いたアディポネクチンRvプライマー 配列番号27:インスリン受容体(IR)のFwプライマー 配列番号28:インスリン受容体(IR)のRvプライマー 配列番号29:GLUT4のFwプライマー 配列番号30:GLUT4のRvプライマー 配列番号31:ヒポキサン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)のFwプライマー 配列番号32:ヒポキサン・グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)のRvプライマー 配列番号33:ヒトおよびマウスSMS2の発現量を測定するために使用したリアルタイム定量PCRのFwプライマー 配列番号34:ヒトおよびマウスSMS2の発現量を測定するために使用したリアルタイム定量PCRのRvプライマー 配列番号35:ヒトG3PDHのFwプライマー 配列番号36:ヒトG3PDHのRvプライマー 配列番号37:マウスG3PDHのFwプライマー 配列番号38:マウスG3PDHのRvプライマー 配列番号39:SMS2-i1の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号40:SMS2-i1の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号41:SMS2-i2の二重鎖部分のセンス鎖部分の配列 配列番号42:SMS2-i2の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号43:SMS2-i4の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号44:SMS2-i4の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号45:SMS2-i5の二重鎖部分のセンス鎖の配列 配列番号46:SMS2-i5の二重鎖部分のアンチセンス鎖の配列 配列番号47:SMS2-i6のセンス鎖部分の配列 配列番号48:SMS2-i6のアンチセンス鎖の配列 配列番号49:SMS2-i7のセンス鎖部分の配列 配列番号50:SMS2-i7のアンチセンス鎖の配列 配列番号51:SMS2-i8のセンス鎖部分の配列 配列番号52:SMS2-i8のアンチセンス鎖の配列 配列番号53:SMS2-i104のセンス鎖部分の配列 配列番号54:SMS2-i104のアンチセンス鎖の配列 配列番号55:SMS2-i105のセンス鎖の配列 配列番号56:SMS2-i105のアンチセンス鎖の配列 配列番号57:SMS2-i106のセンス鎖の配列 配列番号58:SMS2-i106のアンチセンス鎖の配列 配列番号59:SMS2-i107のセンス鎖の配列 配列番号60:SMS2-i107のアンチセンス鎖の配列 配列番号61:SMS2-i108のセンス鎖の配列 配列番号62:SMS2-i108のアンチセンス鎖の配列 配列番号63:SMS2-i109のセンス鎖の配列 配列番号64:SMS2-i109のアンチセンス鎖の配列 配列番号65:CTR−iのセンス鎖の配列 配列番号66:CTR−iのアンチセンス鎖の配列 配列番号67:SMS2-i3のセンス鎖の配列 配列番号68:SMS2-i3のアンチセンス鎖の配列 配列番号69:SMS2-i11のセンス鎖の配列 配列番号70:SMS2-i11のアンチセンス鎖の配列 配列番号71:SMS2-i1のセンス鎖部分の配列 配列番号72:SMS2-i1のアンチセンス鎖の配列 配列番号73:SMS2-i2のセンス鎖部分の配列 配列番号74:SMS2-i2のアンチセンス鎖の配列 配列番号75:SMS2-i4のセンス鎖の配列 配列番号76:SMS2-i4のアンチセンス鎖の配列 配列番号77:SMS2-i5のセンス鎖の配列 配列番号78:SMS2-i5のアンチセンス鎖の配列 配列番号79:ヒトSMS2の核酸配列 配列番号80:マウスSMS2の核酸配列 配列番号81:実施例10で使用されたSMS2-13-003のアンチセンス核酸の配列 配列番号82:実施例10で使用されたSMS2-13-006のアンチセンス核酸の配列 配列番号83:実施例10で使用されたSMS2-13-007のアンチセンス核酸の配列 配列番号84:実施例10で使用されたSMS2-13-008のアンチセンス核酸の配列 配列番号85:実施例10で使用されたSMS2-13-009のアンチセンス核酸の配列 配列番号86:実施例10で使用されたSMS2-13-010のアンチセンス核酸の配列 配列番号87:実施例10で使用されたSMS2-13-011のアンチセンス核酸の配列 配列番号88:実施例10で使用されたSMS2-13-012のアンチセンス核酸の配列 配列番号89:実施例10で使用されたSMS2-13-014のアンチセンス核酸の配列 配列番号90:実施例10で使用されたSMS2-13-017のアンチセンス核酸の配列 配列番号91:実施例10で使用されたSMS2-13-019のアンチセンス核酸の配列 配列番号92:実施例10で使用されたSMS2-13-020のアンチセンス核酸の配列

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