トランスジェニック生物における多不飽和脂肪酸の製造方法

申请号 JP2016110891 申请日 2016-06-02 公开(公告)号 JP6404268B2 公开(公告)日 2018-10-10
申请人 ビーエーエスエフ プラント サイエンス ゲーエムベーハー; 发明人 ザンク,トルステン; バウア,ヨーグ; シルプス,ペトラ; アッバディ,アミネ; ハインツ,エルンスト; キウ,シャオ; ヴリンテン,パトリシア; スペルリング,ペトラ; ドメルグー,フレデリック; マイアー,アストリド; キルシェ,イェレーナ;
摘要
权利要求

a)配列番号89に示す配列を有する核酸、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号90に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、または c)配列番号90に対してアミノ酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸 よりなる群から選ばれる、Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸。請求項1記載の単離された核酸によりコードされるポリペプチド。1以上の調節シグナルに機能しうる形で連結された請求項1に記載の単離された核酸を含んでなる遺伝子構築物。遺伝子構築物が、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[= アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシド(allenoxide)シンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼの群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の追加的な生合成遺伝子を含む、請求項3記載の遺伝子構築物。遺伝子構築物が、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼの群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の追加的な生合成遺伝子を含む、請求項3または4記載の遺伝子構築物。請求項1記載の核酸または請求項3〜5のいずれか1項記載の遺伝子構築物を含んでなるベクター。請求項1記載の少なくとも1つの核酸、請求項3〜5のいずれか1項記載の遺伝子構築物または請求項6記載のベクターを含んでなるトランスジェニック生物またはトランスジェニック植物。非ヒトトランスジェニック生物中で、該非ヒトトランスジェニック生物の全脂質含量に対して少なくとも1重量%の含量でEPA、DPAおよび/またはDHAを製造する方法であって、 a)Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を該生物内に導入し、 b)Δ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を該生物内に導入し、 c)Δ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を該生物内に導入し、 d)Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を該生物内に導入し、 e)Δ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を該生物内に導入する 工程を含み、Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸が、 a)配列番号89に示す配列を有する核酸、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号90に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、または c)配列番号90に対してアミノ酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸 よりなる群から選ばれ、非ヒトトランスジェニック生物がトランスジェニック微生物またはトランスジェニック植物である、上記方法。a)配列番号87もしくは配列番号105に示す配列を有する核酸、または b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号88もしくは配列番号106に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、または c)配列番号88もしくは配列番号106に対してアミノ酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸 よりなる群から選ばれる、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を該生物内に更に導入することを含む、請求項8記載の方法。a)配列番号107もしくは配列番号109に示す配列を有する核酸、または b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号108もしくは配列番号110に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸、または c)配列番号108もしくは配列番号110に対してアミノ酸レベルで少なくとも90%の同一性を有する配列を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸 よりなる群から選ばれる、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を該生物内へ更に導入することを含む、請求項8または9記載の方法。EPA、DPAおよび/またはDHAが油、脂質または遊離脂肪酸の形態で上記生物から単離される、請求項8〜10のいずれか1項記載の方法。EPAまたはDHAが製造される、請求項8〜11のいずれか1項記載の方法。請求項8〜10のいずれか1項記載の方法によってEPA、DPAおよび/またはDHAを製造し、 EPA、DPAおよび/またはDHAを油、脂質もしくは遊離脂肪酸の形態で単離し、 単離された油、脂質もしくは遊離脂肪酸を飼料、食品、化粧品または医薬に製剤化する ことを含む、飼料、食品、化粧品または医薬の調製方法。

说明书全文

本発明は、Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を生物に導入することによる、生物における多不飽和脂肪酸の製造方法に関する。それらの核酸配列は、適当な場合には、脂肪酸の生合成または脂質代謝のポリペプチドをコードする他の核酸配列と共に、該生物において有利に発現されうる。特に有利なのは、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ活性をコードする核酸配列である。これらのデサチュラーゼおよびエロンガーゼは、有利には、タラッシオシラ(Thalassiosira)、ユーグレナ(Euglena)またはオストレオコッカス(Ostreococcus)に由来する。本発明は更に、長鎖多不飽和脂肪酸の含量が上昇した油および/またはトリアシルグリセリドの製造方法に関する。

好ましい実施形態においては、本発明は更に、不飽和ω3-脂肪酸の製造方法、および不飽和脂肪酸(特に、3個を超える二重結合を有するω3-脂肪酸)の含量が上昇したトリグリセリドの製造方法に関する。本発明は、本発明の方法において使用するエロンガーゼおよびデサチュラーゼを、有利には、ω3-デサチュラーゼ、例えばピチアセエ(Pythiaceae)科の真菌、例えばフィトフトラ(Phytophthora)属、例えばフィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)属・種からのω3-デサチュラーゼ、または藻類、例えばプラシノフィセエ(Prasinophyceae)科、例えばオストレオコッカス(Ostreococcus)属、特にオストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)属・種、もしくはケイ藻、例えばタラッシオシラ(Thalassiosira)属、特にタラッシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)属・種からのω3-デサチュラーゼと組み合わせて発現させた結果として、ω3-二重結合を有する不飽和ω3-脂肪酸、油または脂質の含量が上昇したトランスジェニック生物、好ましくは、トランスジェニック植物またはトランスジェニック微生物の作製に関する。

本発明は更に、前記核酸配列、本発明の前記核酸配列を含む核酸構築物、ベクターおよび生物、該核酸配列および/または核酸構築物を含むベクター、ならびに前記核酸配列、核酸構築物および/またはベクターを含むトランスジェニック生物に関する。

本発明のもう1つの態様は、本発明の方法により製造された油、脂質および/または脂肪酸、ならびにそれらの使用に関する。さらに、本発明は、不飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸の含量が上昇したトリグリセリド、およびそれらの使用に関する。

脂肪酸およびトリアシルグリセリドは、食品産業、動物栄養、化粧品および医薬分野における多数の用途を有する。それらが遊離飽和または不飽和脂肪酸であるか、あるいは飽和または不飽和脂肪酸の含量が上昇した他のトリアシルグリセリドであるかどうかに応じて、それらは非常に多様な用途に適している。リノール酸およびリノレン酸のような多不飽和脂肪酸は哺乳動物により産生され得ないため、それらは哺乳動物に必須である。したがって、多不飽和ω3-脂肪酸およびω6-脂肪酸は動物およびヒトの栄養において重要な成分である。

エイコサペンタエン酸(= EPA, C20:5Δ5,8,11,14,17)またはドコサヘキサエン酸(= DHA, C22:6Δ4,7,10,13,16,19)のような多不飽和長鎖ω3-脂肪酸は、小児の脳の発達、眼の機能、ホルモンおよび他のシグナル物質の合成ならびに心血管障害、癌および糖尿病の予防を含め健康の態様において種々の役割を果たすため(Poulos, A Lipids 30:1-14, 1995; Horrocks, LAおよびYeo YK Pharmacol Res 40:211-225, 1999)、それらはヒトの栄養において重要な成分である。そのような理由で、多不飽和長鎖脂肪酸の製造が必要とされている。

ヒト用の食品の今日の組成を考慮すると、魚油中に豊富に見出される多不飽和ω3-脂肪酸の、食品への添加は、特に重要である。そこで、例えば、ドコサヘキサエン酸(= DHA, C22:6Δ4,7,10,13,16,19)またはエイコサペンタエン酸(= EPA, C20:5Δ5,8,11,14,17)のような多不飽和脂肪酸は、栄養価を改善するために乳児用調製粉乳に添加される。不飽和脂肪酸DHAは、脳機能の発達および維持に正の効果を及ぼすと言われている。

以下、多不飽和脂肪酸はPUFAまたはLCPUFA(poly unsaturated fatty acids, PUFAlong chain poly unsaturated fatty acids, LCPUFA)と称される。

種々の脂肪酸およびトリグリセリドは、主として、モルティエレラ(Mortierella)およびシゾキトリウム(Schizochytrium)のような微生物またはダイズ、アブラナのような油産生植物、クリプテコジニウム(Crypthecodinium)またはフェオダクチルム(Phaeodactylum)のような藻類などから得られ、この場合、それらは、一般に、それらのトリアシルグリセリド(= トリグリセリド = トリグリセロール)の形態で得られる。しかし、それらは、例えば魚類のような動物から得ることも可能である。遊離脂肪酸は加分解により有利に製造される。DHA、EPA、アラキドン酸(= ARA, C20:4Δ5,8,11,14)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3Δ8,11,14)またはドコサペンタエン酸(DPA, C22:5Δ7,10,13,16,19)のような非常に長鎖の多不飽和脂肪酸は、アブラナ、ダイズ、ヒマワリまたはベニバナのような油料作物においては合成されない。これらの脂肪酸の通常の天然源はニシン、サケ、イワシ(sardine)、レッドフィッシュ(redfish)、ウナギ、コイ、マス、カレイ、タイセイヨウサバ、ザンダー(zander; スズキ目クロマス科魚)またはマグロなどの魚類あるいは藻類である。

意図される用途によっては、飽和または不飽和脂肪酸を含有する油が好ましい。例えば、ヒトの栄養においては、不飽和脂肪酸、特に多不飽和脂肪酸を含有する脂質が好ましい。多不飽和ω3-脂肪酸は、血中コレステロールレベルに対して、したがって、心疾患を予防する可能性に対して正の効果を有すると言われている。心疾患、卒中または高血圧のリスクは食物へのこれらのω3-脂肪酸の添加により顕著に減少しうる。また、ω3-脂肪酸は、炎症、特に慢性炎症、関節リウマチのような免疫疾患に関連した過程に対して正の効果を及ぼす。したがって、それらは、食物、特に治療食に添加され、あるいは医薬において使用される。アラキドン酸のようなω6-脂肪酸は、我々の通常の食物摂取により、これらのリウマチ疾患に関連したこれらの障害に対して負の効果を及ぼす傾向にある。

ω3-およびω6-脂肪酸は、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸から誘導されるプロスタグランジンのようなエイコサノイドとして公知の組織ホルモンの前駆体、ならびにアラキドン酸およびエイコサペンタエン酸から誘導されるトロンボキサンおよびロイコトリエンの前駆体である。ω6-脂肪酸から生成するエイコサノイド(PG2系列として公知である)は、一般には、炎症反応を促進し、一方、ω3-脂肪酸からのエイコサノイド(PG3系列として公知である)は炎症促進効果はほとんど又は全く有さない。

多不飽和脂肪酸の正の特性により、過去においては、修飾された不飽和脂肪酸含量を有する種々の生物における油の製造のために、これらの脂肪酸またはトリグリセリドの合成に関与する遺伝子を利用可能にするための試みが多数なされてきた。すなわち、WO 91/13972およびその米国対応明細書はΔ9-デサチュラーゼを記載している。WO 93/11245はΔ15-デサチュラーゼを、WO 94/11516はΔ12-デサチュラーゼを特許請求している。さらに、デサチュラーゼは、例えばEP-A-0 550 162、WO 94/18337、WO 97/30582、WO 97/21340、WO 95/18222、EP-A-0 794 250、Stukeyら, J. Biol. Chem., 265, 1990: 20144-20149、Wadaら, Nature 347, 1990: 200-203またはHuangら, Lipids 34, 1999: 649-659に記載されている。しかし、種々のデサチュラーゼの生化学的特徴づけは現在のところ不十分である。なぜなら、膜結合型タンパク質である該酵素は、それらの単離および特徴づけにおいて著しく困難だからである(McKeonら, Methods in Enzymol. 71, 1981: 12141-12147, Wangら, Plant Physiol. Biochem., 26, 1988: 777-792)。一般に、膜結合型デサチュラーゼは、それを適当な生物に導入し、ついで出発物質および産物の分析により酵素活性に関して該生物を分析することにより特徴づけられる。Δ6-デサチュラーゼはWO 93/06712、米国特許第5,614,393号、米国特許第5614393号、WO 96/21022、WO 00/21557およびWO 99/27111に記載されており、トランスジェニック生物における脂肪酸の製造に関する用途はWO 98/46763、WO 98/46764およびWO 98/46765に記載されている。この文脈においては、種々のデサチュラーゼの発現および多不飽和脂肪酸の生成もWO 99/64616またはWO 98/46776に記載され特許請求されている。デサチュラーゼの発現効率、および多不飽和脂肪酸の生成に対するその効果に関しては、現在までに記載されている単一のデサチュラーゼの発現は、低い含量の不飽和脂肪酸/脂質、例えばγ-リノレン酸およびステアリドン酸をもたらすに過ぎない。さらに、一般には、ω3-およびω6-脂肪酸の混合物が得られている。

PUFAの製造に特に適した微生物は、微細藻類、例えばフェオダクチルム・トリコルヌツム(Phaeodactylum tricornutum)、ポルフィリジウム(Porphiridium)種、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種、シゾキトリウム(Schizochytrium)種またはクリプテコジニウム(Crypthecodinium)種、繊毛虫、例えばスチロニキア(Stylonychia)またはコルピジウム(Colpidium)、真菌、例えばモルティエレラ(Mortierella)、エントモフトラ(Entomophthora)またはムコール(Mucor)および/または蘚類、例えばフィスコミテレラ(Physcomitrella)、セラトドン(Ceratodon)およびマルチャンチア(Marchantia)(R. Vazhappilly & F. Chen (1998) Botanica Marina 41: 553-558; K. Totani & K. Oba (1987) Lipids 22: 1060-1062; M. Akimotoら (1998) Appl. Biochemistry and Biotechnology 73: 269-278)である。株の選択は、PUFAを含む一連の望ましい化合物を産生する対象微生物の多数の突然変異株の開発をもたらしてきた。しかし、多不飽和脂肪酸のような特定の分子の産生が改善された株の突然変異および選択は、長時間を要する困難な方法である。したがって、可能な場合には、前記の組換え法が好ましい。

しかし、前記微生物を使用した場合には、DPA、EPAまたはARAのような所望の多不飽和脂肪酸は、限られた量でしか産生され得ず、使用する微生物によっては、これらは、一般には、例えばEPA、DPAおよびARAの脂肪酸混合物として得られる。

アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の合成に関して、種々の合成経路が考察されている(図1)。例えば、EPAまたはDHAは、ビブリオ種(Vibrio sp.)またはシェワネラ種(Shewanella sp.)のような海洋細菌において、ポリケチド経路により産生される(Yu, R.ら Lipids 35:1061-1064, 2000; Takeyama, H.ら Microbiology 143:2725-2731, 1997)。

代替的ストラテジーは、デサチュラーゼおよびエロンガーゼの互換的活性である(Zank, T.K.ら Plant Journal 31:255-268, 2002; Sakuradani, E.ら Gene 238:445-453, 1999)。Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよびΔ4-デサチュラーゼによる前記経路の修飾は哺乳動物におけるスプレッチャー(Sprecher)経路である(Sprecher 2000, Biochim. Biophys. Acta 1486:219-231)。この場合、Δ4-不飽和化の代わりに、更なる伸長工程が生じてC24を与え、ついで更なるΔ6-不飽和化が生じ、最後にβ酸化が生じてC22鎖長を与える。しかし、スプレッチャー経路として公知のもの(図1を参照されたい)は、調節メカニズムが不明であるため、植物および微生物における産生には適していない。

不飽和脂肪酸は、それらの不飽和化パターンに応じて、2つの大きなクラス(すなわち、代謝活性および機能活性のおいて異なるω6-またはω3-脂肪酸)に分類されうる(図1)。

ω6-代謝経路の出発物質は脂肪酸リノール酸(18:2Δ9,12)であり、ω3-経路はリノレン酸(18:3Δ9,12,15)を経由して進行する。リノレンはω3-デサチュラーゼの活性により生成する(Tocherら 1998, Prog. Lipid Res. 37, 73-117; Domergueら 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)。

哺乳動物、したがってヒトも、対応するデサチュラーゼ活性(Δ12-およびω3-デサチュラーゼ)を有しておらず、これらの脂肪酸(必須脂肪酸)を食物から摂取しなければならない。これらの前駆体から出発して、一連のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ反応を介して、生理的に重要な多不飽和脂肪酸であるアラキドン酸(= ARA, 20:4Δ5,8,11,14)、ω6-脂肪酸および2つのω3-脂肪酸エイコサペンタエン酸(= EPA, 20:5Δ5,8,11,14,17)およびドコサヘキサエン酸(DHA, 22:6Δ4,7,10,13,17,19)が合成される。ω3-脂肪酸の適用は、心血管疾患(Shimikawa 2001, World Rev. Nutr. Diet. 88, 100-108)、炎症(Calder 2002, Proc. Nutr. Soc. 61, 345-358)および関節炎(ClelandおよびJames 2000, J. Rheumatol. 27, 2305-2307)の治療において前記の治療活性を示す。

したがって、栄養の生理学に関しては、多不飽和脂肪酸の合成の際には、より多量のω3-脂肪酸が産生されるようω6-合成経路からω3-合成経路へのシフトが達成されることが重要である(図1を参照されたい)。C18:2-、C22:4-またはC22:5-脂肪酸を不飽和化する種々のω3-デサチュラーゼの酵素活性(図1を参照されたい)は文献に記載されている。しかし、生化学に関して記載されているデサチュラーゼはいずれも、ω6合成経路の広範な範囲の基質をω3合成経路の対応脂肪酸に変換するものではない。

したがって、ω3-多不飽和脂肪酸の製造に適したω3-デサチュラーゼが依然として大いに必要とされている。すべての公知植物およびラン藻ω3-デサチュラーゼはリノール酸を基質としてC18脂肪酸を不飽和化するが、いずれのC20またはC22脂肪酸をも不飽和化し得ない。

真菌サプロレグニア・ディシリナ(Saprolegnia dicilina)は、C20-多不飽和脂肪酸を不飽和化しうるω3-デサチュラーゼを有することが公知である[Pereiraら 2004, Biochem. J. 378(Pt 2):665-71]。しかし、その欠点は、このω3-デサチュラーゼがいずれのC18-またはC22-PUFA(例えば、ω6-合成経路の重要な脂肪酸であるC18:2-、C22:4-またはC22:5-脂肪酸)も不飽和化し得ないことである。この酵素のもう1つの欠点は、それが、リン脂質に結合したいずれの脂肪酸をも不飽和化し得ないことである。CoA-脂肪酸エステルのみが変換される。

2個または4個のC原子によるエロンガーゼによる脂肪酸の伸長は、それぞれC20-およびC22-PUFAの製造に決定的に重要である。この過程は4工程を経て進行する。第1工程はケトアシル-CoAシンターゼ(KCS, 以下、エロンガーゼと称する)によるマロニル-CoAと脂肪酸-アシル-CoAとの縮合である。この後、還元工程(ケトアシル-CoAレダクターゼ, KCR)、脱水工程(デヒドラターゼ)および最終的な還元工程(エノイル-CoAレダクターゼ)が続く。エロンガーゼ活性はその過程全体の特異性および速度に影響を及ぼすと考えられている(MillarおよびKunst, 1997 Plant Journal 12:121-131)。

これまでに、エロンガーゼ遺伝子を得るための多数の試みがなされている。MillarおよびKunst, 1997 (Plant Journal 12:121-131) ならびにMillarら. 1999, (Plant Cell 11:825-838)は、単不飽和長鎖脂肪酸(C22:1)の合成のための、および植物におけるロウの生成用の非常に長鎖の脂肪酸(C28-C32)の合成のための植物エロンガーゼの特徴づけを記載している。アラキドン酸およびEPAの合成に関する記載は、例えばWO0159128、WO0012720、WO02077213およびWO0208401に見出される。多不飽和C24-脂肪酸の合成は、例えばTvrdikら 2000, JCB 149:707-717またはWO0244320に記載されている。

DHA(C22:6 n-3)を天然では産生しない生物におけるDHAの産生のための特異的エロンガーゼは現在のところ何ら記載されていない。現在のところ、C20-またはC24-脂肪酸を与えるエロンガーゼが記載されているに過ぎない。現在のところ、Δ5-エロンガーゼ活性は記載されていない。

高等植物はリノール酸(C18:2)およびリノレン酸(C18:3)のような多不飽和脂肪酸を含む。ARA、EPAおよびDHAは高等植物の種油においては全く見出されていないか、非常に少量見出されているに過ぎない(E. Ucciani: Nouveau Dictionnaire des Huiles Vegetales [New Dictionary of Vegetable Oils]. Technique & Documentation, Lavoisier, 1995. ISBN: 2-7430-0009-0)。しかし、高等植物、好ましくは、アブラナ、亜麻仁、ヒマワリおよびダイズのような油料作物におけるLCPUFAの産生が有利であろう。なぜなら、食品産業、動物栄養および医薬目的のための大量の高品質LCPUFAが経済的に入手されうるからである。この目的には、LCPUFA生合成の酵素をコードする遺伝子を組換え法により油料作物内に導入し、それらを該作物内で発現させることが有利である。これらの遺伝子は、例えばΔ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードする。これらの遺伝子は、有利には、LCPUFAを産生しそれを膜またはトリアシルグリセリドに組み込む微生物および下等植物から単離されうる。そのため、蘚類フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)からΔ6-デサチュラーゼ遺伝子を、そしてフィスコミトレラ・パテンス(P. patens)および線虫シー・エレガンス(C. elegans)からΔ6-エロンガーゼ遺伝子を単離することが既に可能である。

LCPUFA生合成酵素をコードする遺伝子を含みそれを発現し、その結果としてLCPUFAを産生する最初のトランスジェニック植物は、例えばDE-A-102 19 203(植物における多不飽和脂肪酸の製造方法)に最初に記載された。しかし、これらの植物はLCPUFAを、該植物中に存在する油を加工するためには更なる最適化を要する量で産生する。

したがって、これらの多不飽和脂肪酸での食物および/または飼料の強化を可能にするために、これらの多不飽和脂肪酸の、特に真核生物系における、簡便で経済的な製造方法が大いに必要とされている。

したがって、LCPUFAの合成に適した更なる遺伝子または酵素、特に、多不飽和脂肪酸の製造のためのΔ5-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼまたはΔ6-デサチュラーゼ活性を有する遺伝子を提供することが目的である。本発明のもう1つの目的は、ω6-脂肪酸からω3-脂肪酸への移行を可能にする遺伝子または酵素の提供である。もう1つの目的は、生物、有利には真核生物、好ましくは植物または微生物における多不飽和脂肪酸の製造方法を開発することである。この目的は、式I:

[式Iにおける可変基および置換基は以下の意味を有する: R1は、ヒドロキシル、補酵素A(チオエステル)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、スフィンゴ塩基または式II:

の基であり、ここで、 R2は、水素、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトールまたは飽和もしくは不飽和C2-C24-アルキルカルボニルであり、 R3は、水素、飽和もしくは不飽和C2-C24-アルキルカルボニルであるか、またはR2およびR3は、互いに独立して、式Ia:

の基であり、 ここで、nは2、3、4、5、6、7または9であり、mは2、3、4、5または6であり、pは0または3である] の化合物を、トランスジェニック生物中で、該トランスジェニック生物の全脂質含量に対して少なくとも1重量%の該化合物の含量で製造するための方法であって、 a)Δ9-エロンガーゼまたはΔ6-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を該生物内に導入し、 b)Δ8-デサチュラーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を該生物内に導入し、 c)Δ5-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を該生物内に導入し、 d)Δ5-エロンガーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を該生物内に導入し、 e)Δ4-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を該生物内に導入する工程を含んでなる製造方法により、達成された。

図1は、DHA(ドコサヘキサエン酸)の生合成のための種々の合成経路を示す。

図2は、種々の脂肪酸に対するΔ5-エロンガーゼ(配列番号53)の基質特異性を示す。

図3は、20:5ω3からの酵母内でのDHA生合成の再構成を示す。

図4は、18:4ω3からの酵母内でのDHA生合成の再構成を示す。

図5は、ベクターpYes3-OmELO3/pYes2-EgD4またはpYes3-OmELO3/pYes2-EgD4+pESCLeu-PtD5で形質転換されたトランスジェニック酵母における脂肪酸組成(mol%単位)を示す。酵母細胞を、250μMのそれぞれ20:5

Δ5,8,11,14,17および18:4

Δ6,9,12,15の存在下、トリプトファンおよびウラシル/ならびにロイシンを含有する最少培地で増殖させた。脂肪酸メチルエステルを酸メタノリシスにより細胞沈降物から得、GLCにより分析した。各値は平均値(n=4)±標準偏差を表す。

図6は、酵母株での機能および基質特異性を測定するための供給実験を示す。

図7は、OtElo1によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。

図8は、OtElo1によるアラキドン酸の伸長を示す。

図9は、酵母内でのTpELO1の発現を示す。

図10は、酵母内でのTpELO3の発現を示す。

図11は、酵母内でのThraustochytriumΔ5-エロンガーゼTL16/pYES2.1の発現を示す。

図12は、Pi-omega3Desによるα-リノレン酸(18:3 ω3-脂肪酸)を生じるリノール酸(18:2 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

図13は、Pi-omega3Desによるステアリドン酸(18:4 ω3-脂肪酸)を生じるγ-リノレン酸(18:3 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

図14は、Pi-omega3DesによるC20:3 ω3-脂肪酸を生じるC20:2 ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。

図15は、Pi-omega3DesによるC20:4 ω3-脂肪酸を生じるC20:3 ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。

図16は、Pi-omega3Desによるエイコサペンタエン酸(C20:5 ω3-脂肪酸)を生じるアラキドン酸(C20:4 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

図17は、Pi-omega3Desによるドコサペンタエン酸(C22:5 ω3-脂肪酸)を生じるドコサテトラエン酸(C22:4 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

図18は、種々の脂肪酸に対するPi-omega3Desの基質特異性を示す。

図19は、Pi-Omega3DesによるEPAへのリン脂質結合アラキドン酸の不飽和化を示す。

図20は、γ-リノレン酸(γ-18:3)へのリノール酸(矢印)のOtDes6.1による変換を示す。

図21は、OtD6.1の存在下の、リノール酸およびα-リノレン酸の変換(AおよびC)ならびにその直後の酵母内でのそれぞれARAおよびEPA合成経路の再構成(BおよびD)を示す。

図22は、酵母内でのELO(Xl)の発現を示す。

図23は、ELO(Ci)の基質特異性を示す。

図24は、それぞれOtElo1(B)およびOtElo1.2(D)によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。対照(A、C)は伸長産物(22:5 ω3)を示さない。

図25は、それぞれOtElo1(B)およびOtElo1.2(D)によるアラキドン酸の伸長を示す。対照(A、C)は伸長産物(22:4 ω6)を示さない。

図26は、エロンガーゼAt3g06470による20:5n-3の伸長を示す。

図27は、Xenopusエロンガーゼ(A)、Cionaエロンガーゼ(B)およびOncorhynchusエロンガーゼ(C)の基質特異性を示す。

図28は、OstreococcusΔ5-エロンガーゼ(A)、OstreococcusΔ6-エロンガーゼ(B)、ThalassiosiraΔ5-エロンガーゼ(C)およびThalassiosira OstreococcusΔ6-エロンガーゼ(D)の基質特異性を示す。

図29は、酵母内でのPhaeodactylum tricornutumΔ6-エロンガーゼ(PtELO6)の発現を示す。A)はC18:3

Δ6,9,12-脂肪酸の伸長を示し、B)はC18:4

Δ6,9,12,15-脂肪酸の伸長を示す。

図30は、供給基質に対するPtELO6の基質特異性を示す。

式IにおけるR1は、ヒドロキシル、補酵素A(チオエステル)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、スフィンゴ塩基または式II:

の基である。

R1の前記基は常に、式Iの化合物に、そのチオエステルの形態で結合している。

式IIにおけるR2は、水素、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトールまたは飽和もしくは不飽和C2-C24-アルキルカルボニルである。

挙げられうるアルキル基は飽和または不飽和であり、飽和または不飽和C2-C24-アルキルカルボニル鎖、例えばエチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、n-ノニルカルボニル、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニル(これらは1以上の二重結合を含む)である。飽和または不飽和C10-C22-アルキルカルボニル基、例えばn-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニル(これらは1以上の二重結合を含む)が好ましい。特に好ましいのは、飽和および/または不飽和C10-C22-アルキルカルボニル基、例えばC10-アルキルカルボニル、C11-アルキルカルボニル、C12-アルキルカルボニル、C13-アルキルカルボニル、C14-アルキルカルボニル、C16-アルキルカルボニル、C18-アルキルカルボニル、C20-アルキルカルボニルまたはC22-アルキルカルボニル基(これらは1以上の二重結合を含む)である。特に非常に好ましいのは、飽和または不飽和C16-C22-アルキルカルボニル基、例えばC16-アルキルカルボニル、C18-アルキルカルボニル、C20-アルキルカルボニルまたはC22-アルキルカルボニル基(これらは1以上の二重結合を含む)である。これらの有利な基は2個、3個、4個、5個または6個の二重結合を含みうる。脂肪酸鎖に20個または22個の炭素原子を有する特に好ましい基は6個までの二重結合、有利には3個、4個、5個または6個の二重結合、特に好ましくは5個または6個の二重結合を 含む。前記の基のすべては、対応する脂肪酸から誘導される。

式IIにおけるR3は水素、または飽和もしくは不飽和C2-C24-アルキルカルボニルである。

挙げられうるアルキル基は飽和または不飽和であり、飽和または不飽和C2-C24-アルキルカルボニル鎖、例えばエチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、n-ノニルカルボニル、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニル(これらは1以上の二重結合を含む)である。飽和または不飽和C10-C22-アルキルカルボニル基、例えばn-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニル(これらは1以上の二重結合を含む)が好ましい。特に好ましいのは、飽和および/または不飽和C10-C22-アルキルカルボニル基、例えばC10-アルキルカルボニル、C11-アルキルカルボニル、C12-アルキルカルボニル、C13-アルキルカルボニル、C14-アルキルカルボニル、C16-アルキルカルボニル、C18-アルキルカルボニル、C20-アルキルカルボニルまたはC22-アルキルカルボニル基(これらは1以上の二重結合を含む)である。特に非常に好ましいのは、飽和または不飽和C16-C22-アルキルカルボニル基、例えばC16-アルキルカルボニル、C18-アルキルカルボニル、C20-アルキルカルボニルまたはC22-アルキルカルボニル基(これらは1以上の二重結合を含む)である。これらの有利な基は2個、3個、4個、5個または6個の二重結合を含みうる。脂肪酸鎖に20個または22個の炭素原子を有する特に好ましい基は6個までの二重結合、有利には3個、4個、5個または6個の二重結合、特に好ましくは5個または6個の二重結合を 含む。前記の基のすべては、対応する脂肪酸から誘導される。

R1、R2およびR3の前記の基はヒドロキシルおよび/またはエポキシ基により置換されていてもよく、および/または三重結合を含んでもよい。

本発明の方法において製造される多不飽和脂肪酸は、有利には少なくとも2個、有利には3個、4個、5個または6個の二重結合を含む。該脂肪酸は、特に有利には、4個、5個または6個の二重結合を含む。該方法において製造される脂肪酸は、有利には、脂肪酸鎖内に18個、20個または22個のC原子を有し、該脂肪酸は、好ましくは、脂肪酸鎖内に20個または22個の炭素原子を含む。飽和脂肪酸は、有利には、該方法において使用する核酸と、低い度合で反応し、あるいは全く反応しない。低い度合は、飽和脂肪酸が、多不飽和脂肪酸と比較して、該活性の5%未満、有利には3%未満、特に有利には2%未満、非常に特に有利には1、0.5、0.25または0.125%未満で反応することを意味するものとして理解されるべきである。製造されたこれらの脂肪酸は該方法において単一産物として製造されるか、または脂肪酸混合物として存在しうる。

本発明の方法において使用する核酸配列は、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列である。

本発明の方法において有利に使用される核酸配列は、 a)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示す配列を有する核酸配列、または b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132もしくは配列番号134、配列番号136、配列番号138もしくは配列番号184に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132もしくは配列番号134、配列番号136、配列番号138もしくは配列番号184に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の同一性を有し、かつΔ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするものである。

式IおよびIIにおける置換基R2またはR3は、有利には互いに独立して、飽和または不飽和C18-C22-アルキルカルボニルであり、特に有利には、それらは、互いに独立して、少なくとも2個の二重結合を有する不飽和C18-、C20-またはC22-アルキルカルボニルである。

該方法の好ましい実施形態は、 a)配列番号87もしくは配列番号105に示す配列を有する核酸配列、または b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号88もしくは配列番号106に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号88もしくは配列番号106に対してアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号87もしくは配列番号105に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を、該生物内に更に導入することにより特徴づけられる。

もう1つの好ましい実施形態においては、該方法は、 a)配列番号107もしくは配列番号109に示す配列を有する核酸配列、または b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号108もしくは配列番号110に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号108もしくは配列番号110に対してアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号107もしくは配列番号109に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を、該生物内に更に導入することを含む。

これらの前記Δ12-デサチュラーゼ配列は単独で又はω3-デサチュラーゼ配列と共に、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼをコードし該方法において使用する核酸配列と共に使用することが可能である。

表1は、核酸配列、起源生物および配列番号を示す。

該方法において製造される多不飽和脂肪酸は、有利には、膜脂質および/またはトリアシルグリセリド中に結合しているが、該生物内で遊離脂肪酸として見出されることもあり、あるいは他の脂肪酸エステルの形態で結合していることも可能である。この場合、それらは、「純粋な産物」として、あるいは有利には、種々の脂肪酸の混合物または異なるグリセリドの混合物の形態で存在しうる。トリアシルグリセリド中に結合している種々の脂肪酸は、4〜6個のC原子を有する短鎖脂肪酸、8〜12個のC原子を有する中鎖脂肪酸または14〜24個のC原子を有する長鎖脂肪酸から誘導されるものであってよく、好ましくは、長鎖脂肪酸、より好ましくは、18、20および/または22個のC原子を有する長鎖多不飽和脂肪酸である。

有利には、本発明の方法は、脂肪酸エステル中に少なくとも2個の二重結合、有利には、脂肪酸エステル中に少なくとも3個、4個、5個または6個の二重結合、特に有利には、脂肪酸エステル中に少なくとも5個または6個の二重結合を有する、多不飽和C18-、C20-および/またはC22-脂肪酸分子との脂肪酸エステルを生じ、有利には、リノール酸(=LA, C18:2Δ9,12)、γ-リノレン酸(= GLA, C18:3Δ6,9,12)、ステアリドン酸(= SDA, C18:4Δ6,9,12,15)、ジホモ-γ-リノレン酸(= DGLA, 20:3 Δ8,11,14)、ω3-エイコサテトラエン酸(= ETA, C20:4Δ5,8,11,14)、アラキドン酸(ARA, C20:4Δ5,8,11,14)、エイコサペンタエン酸(EPA, C20:5Δ5,8,11,14,17)、ω6-ドコサペンタエン酸(C22:5Δ4,7,10,13,16)、ω6-ドコサテトラエン酸(C22:4Δ7,10,13,16)、ω3-ドコサペンタエン酸(= DPA, C22:5Δ7,10,13,16,19)、ドコサヘキサエン酸(= DHA, C22:6Δ4,7,10,13,16,19)またはこれらの混合物、好ましくは、ARA、EPAおよび/またはDHA、の合成をもたらす。特に非常に好ましくは、ω3-脂肪酸、例えばEPAおよび/またはDHAが産生される。

多不飽和C18-、C20-および/またはC22-脂肪酸分子との脂肪酸エステルは、油または脂質の形態、例えば、少なくとも2個、3個、4個、5個または6個、好ましくは5個または6個の二重結合を有する多不飽和脂肪酸を含む、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、脂質、糖脂質、例えばスフィンゴ糖脂質、リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールまたはジホスファチジルグリセロール、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドまたは他の脂肪酸エステル、例えばアセチル補酵素Aエステルのような化合物の形態で、該脂肪酸エステルの製造に使用されている生物から単離されうる。好ましくは、それらは、それらのジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドの形態および/またはホスファチジルコリンの形態、特に好ましくはトリアシルグリセリドの形態で単離される。これらのエステルに加えて、該多不飽和脂肪酸は、該生物(有利には植物)内に、遊離脂肪酸としても存在し、あるいは他の化合物中に結合している。一般には、種々の前記化合物(脂肪酸エステルおよび遊離脂肪酸)は、トリグリセリドが80〜90重量%、ジグリセリドが2〜5重量%、モノグリセリドが5〜10重量%、遊離脂肪酸が1〜5重量%、リン脂質が2〜8重量%(それらの種々の化合物の合計は100重量%となる)の概算内訳で、生物内に存在する。

本発明の方法は、該トランスジェニック生物(好ましくはトランスジェニック植物)内の全脂肪酸に対して少なくとも3重量%、有利には少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも8重量%、特に好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%の含量で産生されるLCPUFAを与える。この場合、宿主生物内に存在するC18-および/またはC20-脂肪酸を、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%変換して対応産物(2つの例のみを挙げると、DPAまたはDHA)をもたらすことが有利である。脂肪酸は、有利には、結合形態で産生される。これらの不飽和脂肪酸は、本発明の方法で使用する核酸を用いることにより、有利に産生されたトリグリセリドのsn1、sn2および/またはsn3位に配置されうる。本発明の方法においては、出発化合物であるリノール酸(C18:2)およびリノレン酸(C18:3)により複数の反応工程が行われるため、例えばアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ω6-ドコサペンタエン酸またはDHAのような該方法の最終産物は、絶対的に純粋な産物としては得られず、微量の前駆体が最終産物中に常に存在する。例えば、リノール酸およびリノレン酸の両方が出発生物および出発植物内に存在する場合には、ARA、EPAまたはDHAのような最終産物が混合物として存在する。前駆体は、有利には、問題の最終産物の量に対して20重量%より多くなるべきではなく、好ましくは、15重量%より多くなるべきではなく、特に好ましくは、10重量%より多くなるべきではなく、最も好ましくは、5重量%より多くなるべきではない。有利には、本発明の方法により、トランスジェニック植物内に、専らARA、EPAまたは専らDHAが、結合形態または遊離酸として、最終産物として産生される。化合物ARA、EPAおよびDHAが同時に産生される場合には、それらは少なくとも1:1:2(EPA:ARA:DHA)、有利には少なくとも1:1:3、好ましくは1:1:4、特に好ましくは1:1:5の比で産生される。

本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、有利には、6〜15%のパルミチン酸、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のバクセン酸、0.1〜1%のアラキン酸、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%の単不飽和脂肪酸および60〜85%の多不飽和脂肪酸(各場合について、該生物の全脂肪酸含量に基づく、100%に対する割合である)を含む。脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に存在する有利な多不飽和脂肪酸は、好ましくは、全脂肪酸含量に対して少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1%のアラキドン酸である。さらに、本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、有利には、脂肪酸エルカ酸(13-ドコサエン酸)、ステルクリン酸(9,10-メチレン-オクタデカ-9-エン酸)、マルバル酸(8,9-メチレンヘプタデカ-8-エン酸)、カウルモオグル酸(シクロペンテンドデカン酸)、フラン脂肪酸(9,12-エポキシオクタデカ-9,11-ジエン酸)、ベルノール酸(9,10-エポキシオクタデカ-12-エン酸)、タリリン酸(6-オクタデシン酸)、6-ノナデシン酸、サンタルビン酸(t11-オクタデセン-9-イン酸)、6,9-オクタデセニン酸、ピルル酸(t10-ヘプタデセン-8-イン酸)、クレペニニン酸(9-オクタデセン-12-イン酸)、13,14-ジヒドロオロフェ酸、オクタデセン-13-エン-9,11-ジイン酸、ペトロセレン酸(シス-6-オクタデセン酸)、9c,12t-オクタデカジエン酸、カレンデュル酸(calendulic acid)(8t10t12c-オクタデカトリエン酸)、カタルプ酸(9t11t13c-オクタデカトリエン酸)、エレオステアリン酸(9c11t13t-オクタデカトリエン酸)、ジャカリン酸(8c10t12c-オクタデカトリエン酸)、プニカ酸(9c11t13c-オクタデカトリエン酸)、パリナリン酸(9c11t13t15c-オクタデカテトラエン酸)、ピノレン酸(全シス-5,9,12-オクタデカトリエン酸)、ラバレン酸(5,6-オクタデカジエナレン酸)、リシノール酸(12-ヒドロキシオレイン酸)および/またはコリオール酸(13-ヒドロキシ-9c,11t-オクタデカジエン酸)よりなる群から選ばれる 脂肪酸を含む。前記脂肪酸は、一般に、有利には、本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に微量でしか見出されない。すなわち、それらは、全脂肪酸に対して、30%未満、好ましくは25%、24%、23%、22%または21%未満、特に好ましくは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満、非常に特に好ましくは4%、3%、2%または1%未満で見出される。本発明のもう1つの好ましい形態においては、これらの前記脂肪酸は、全脂肪酸に対して0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%未満、特に好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満で見出される。本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、有利には、酪酸、コレステロール、クルパノドン酸(= ドコサペンタエン酸, C22:5Δ4,8,12,15,21)およびナイシン酸(テトラコサヘキサエン酸, C23:6Δ3,8,12,15,18,21)を、全脂肪酸に対して0.1%未満含むか、および/またはそれらを全く含まない。

脂肪酸をGC分析により検出した場合に(実施例を参照されたい)、本発明の方法において使用する核酸配列により、非トランスジェニックの出発生物、例えば酵母、藻類、真菌または植物、例えばアラビドプシス(arabidopsis)または亜麻仁と比較して、少なくとも50%、有利には少なくとも80%、特に有利には少なくとも100%、非常に特に有利には少なくとも150%の、多不飽和脂肪酸の収率の増加が得られる。

また、前記の方法により、化学的に純粋な多不飽和脂肪酸または脂肪酸組成物を合成することも可能である。この目的のため、脂肪酸または脂肪酸組成物は、生物、例えば微生物もしくは植物、または生物を成長させている培養培地から、あるいは生物と培養培地から、公知方法、例えば抽出、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーまたはこれらの方法の組合せにより、単離される。これらの化学的に純粋な脂肪酸または脂肪酸組成物は、食品産業分野、化粧品分野および特に医薬産業分野における用途に有用である。

本発明の方法における製造に適した生物は、原則として、任意の生物、例えば微生物、非ヒト動物または植物である。

適した植物は、原則として、脂肪酸を合成しうるすべての植物、例えばすべての双子葉または単子葉植物、藻類または蘚類である。有利な植物は、以下の植物の科:アデロテェシアセエ(Adelotheciaceae)、アナカルジアセエ(Anacardiaceae)、アステラセエ(Asteraceae)、アピアセエ(Apiaceae)、ベツラセエ(Betulaceae)、ボラギナセエ(Boraginaceae)、ブラッシカセエ(Brassicaceae)、ブロメリアセエ(Bromeliaceae)、カリカセエ(Caricaceae)、カンナバセエ(Cannabaceae)、コンボルブラセエ(Convolvulaceae)、チェノポジアセエ(Chenopodiaceae)、クリプセコジニアセエ(Crypthecodiniaceae)、ククルビタセエ(Cucurbitaceae)、ジトリチャセエ(Ditrichaceae)、エレアグナセエ(Elaeagnaceae)、エリカセエ(Ericaceae)、ユーホルビアセエ(Euphorbiaceae)、ファバセエ(Fabaceae)、ゲラニアセエ(Geraniaceae)、グラミネエ(Gramineae)、ジュグランダセエ(Juglandaceae)、ラウラセエ(Lauraceae)、レグミノセ(Leguminosae)、リナセエ(Linaceae)、ユーグレナセエ(Euglenaceae)、プラシノフィセエ(Prasinophyceae)または野菜植物または観賞植物(例えばタゲテス(Tagetes))の群から選ばれる。

挙げられうる具体例は、以下のものよりなる群から選ばれる植物である:Adelotheciaceae、例えばPhyscomitrella属、例えばPhyscomitrella patens属・種、Anacardiaceae、例えばPistacia、Mangifera、Anacardium属、例えばPistacia vera [ピスタチオ]、Mangifer indica [マンゴー] またはAnacardium occidentale [カシュー]属・種、Asteraceae、例えばCalendula、Carthamus、Centaurea、Cichorium、Cynara、Helianthus、Lactuca、Locusta、Tagetes、Valeriana属、例えばCalendula officinalis [マリーゴールド(common marigold)]、Carthamus tinctorius [ベニバナ]、Centaurea cyanus [ヤグルマソウ]、Cichorium intybus [チコリ]、Cynara scolymus [チョウセンアザミ]、Helianthus annus [ヒマワリ]、Lactuca sativa、Lactuca crispa、Lactuca esculenta、Lactuca scariola L. ssp. sativa、Lactuca scariola L. var. integrata、Lactuca scariola L. var. integrifolia、Lactuca sativa subsp. romana、Locusta communis、Valeriana locusta [サラダ野菜(salad vegetables)]、Tagetes lucida、Tagetes erectaまたはTagetes tenuifolia [センジュギクまたはコウオウソウ]属・種、Apiaceae、例えばDaucus属、例えばDaucus carota [ニンジン]属・種、Betulaceae、例えばCorylus属、例えばCorylus avellanaまたはCorylus colurna [ヘーゼルナッツ]属・種、Boraginaceae、例えばBorago属、例えばBorago officinalis [ルリチシャ]属・種、Brassicaceae、例えばBrassica、Camelina、Melanosinapis、Sinapis、Arabadopsis属、例えばBrassica napus、Brassica rapa ssp. [アブラナ]、Sinapis arvensis Brassica juncea、Brassica juncea var. juncea、Brassica juncea var. crispifolia、Brassica juncea var. foliosa、Brassica nigra、Brassica sinapioides、Camelina sativa、Melanosinapis communis [カラシ]、Brassica oleracea [飼料ビート]またはArabidopsis thaliana属・種、Bromeliaceae、例えばAnana、Bromelia (パイナップル)属、例えばAnana comosus、Ananas ananasまたはBromelia comosa [パイナップル]属・種、Caricaceae、例えばCarica属、例えばCarica papaya [ポーポー]属・種、Cannabaceae、例えばCannabis属、例えばCannabis sativa [タイマ]属・種、Convolvulaceae、例えばIpomea、Convolvulus属、例えばIpomoea batatus、Ipomoea pandurata、Convolvulus batatas、Convolvulus tiliaceus、Ipomoea fastigiata、Ipomoea tiliacea、Ipomoea trilobaまたはConvolvulus panduratus [サツマイモ]属・種、Chenopodiaceae、例えばBeta属、例えばBeta vulgaris、Beta vulgaris var. altissima、Beta vulgaris var. vulgaris、Beta maritima、Beta vulgaris var. perennis、Beta vulgaris var. conditivaまたはBeta vulgaris var. esculenta [テンサイ]属・種、Crypthecodiniaceae、例えばCrypthecodinium属、例えばCryptecodinium cohnii属・種、Cucurbitaceae、例えばCucurbita属、例えばCucurbita maxima、Cucurbita mixta、Cucurbita pepoまたはCucurbita moschata [パンプキン/カボチャ]属・種、Cymbellaceae、例えばAmphora、Cymbella、Okedenia、Phaeodactylum、Reimeria属、例えばPhaeodactylum tricornutum属・種、Ditrichaceae、例えばDitrichaceae、Astomiopsis、Ceratodon、Chrysoblastella、Ditrichum、Distichium、Eccremidium、Lophidion、Philibertiella、Pleuridium、Saelania、Trichodon、Skottsbergia属、例えばCeratodon antarcticus、Ceratodon columbiae、Ceratodon heterophyllus、Ceratodon purpurascens、Ceratodon purpureus、Ceratodon purpureus ssp. convolutus、Ceratodon purpureus ssp. stenocarpus、Ceratodon purpureus var. rotundifolius、Ceratodon ratodon、Ceratodon stenocarpus、Chrysoblastella chilensis、Ditrichum ambiguum、Ditrichum brevisetum、Ditrichum crispatissimum、Ditrichum difficile、Ditrichum falcifolium、Ditrichum flexicaule、Ditrichum giganteum、Ditrichum heteromallum、Ditrichum lineare、Ditrichum lineare、Ditrichum montanum、Ditrichum montanum、Ditrichum pallidum、Ditrichum punctulatum、Ditrichum pusillum、Ditrichum pusillum var. tortile、Ditrichum rhynchostegium、Ditrichum schimperi、Ditrichum tortile、Distichium capillaceum、Distichium hagenii、Distichium inclinatum、Distichium macounii、Eccremidium floridanum、Eccremidium whiteleggei、Lophidion strictus、Pleuridium acuminatum、Pleuridium alternifolium、Pleuridium holdridgei、Pleuridium mexicanum、Pleuridium ravenelii、Pleuridium subulatum、Saelania glaucescens、Trichodon borealis、Trichodon cylindricusまたはTrichodon cylindricus var. oblongus属・種、Elaeagnaceae、例えばElaeagnus属、例えばOlea europaea [オリーブ]属・種、Ericaceae、例えばKalmia属、例えばKalmia latifolia、Kalmia angustifolia、Kalmia microphylla、Kalmia polifolia、Kalmia occidentalis、Cistus chamaerhodendrosまたはKalmia lucida [アメリカシャクナゲ]属・種、Euglenaceae、例えばAscoglena、Astasia、Colacium、Cyclidiopsis、Euglena、Euglenopsis、Hyalaphacus、Khawkinea、Lepocinclis、Phacus、Strombomonas、Trachelomonas属、例えばEuglena gracilis属・種、Euphorbiaceae、例えばManihot、Janipha、Jatropha、Ricinus属、例えばManihot utilissima、Janipha manihot、Jatropha manihot、Manihot aipil、Manihot dulcis、Manihot manihot、Manihot melanobasis、Manihot esculenta [キャッサバ]またはRicinus communis [ヒマ]属・種、Fabaceae、例えばPisum、Albizia、Cathormion、Feuillea、Inga、Pithecolobium、Acacia、Mimosa、Medicajo、Glycine、Dolichos、Phaseolus属、ダイズ、例えばPisum sativum、Pisum arvense、Pisum humile [エンドウ]、Albizia berteriana、Albizia julibrissin、Albizia lebbeck、Acacia berteriana、Acacia littoralis、Albizia berteriana、Albizzia berteriana、Cathormion berteriana、Feuillea berteriana、Inga fragrans、Pithecellobium berterianum、Pithecellobium fragrans、Pithecolobium berterianum、Pseudalbizzia berteriana、Acacia julibrissin、Acacia nemu、Albizia nemu、Feuilleea julibrissin、Mimosa julibrissin、Mimosa speciosa、Sericanrda julibrissin、Acacia lebbeck、Acacia macrophylla、Albizia lebbeck、uilleea lebbeck、Mimosa lebbeck、Mimosa speciosa、Medicago sativa、Medicago falcata、Medicago varia [アルファルファ]、Glycine max Dolichos soja、Glycine gracilis、Glycine hispida、Phaseolus max、Soja hispidaまたはSoja max [ダイズ]属・種、Funariaceae、例えばAphanorrhegma、Entosthodon、Funaria、Physcomitrella、Physcomitrium属、例えばAphanorrhegma serratum、 Entosthodon attenuatus、Entosthodon bolanderi、Entosthodon bonplandii、Entosthodon californicus、Entosthodon drummondii、Entosthodon jamesonii、Entosthodon leibergii、Entosthodon neoscoticus、Entosthodon rubrisetus、Entosthodon spathulifolius、Entosthodon tucsoni、Funaria americana、Funaria bolanderi、Funaria calcarea、Funaria californica、Funaria calvescens、Funaria convoluta、Funaria flavicans、Funaria groutiana、Funaria hygrometrica、Funaria hygrometrica var. arctica、Funaria hygrometrica var. calvescens、Funaria hygrometrica var. convoluta、Funaria hygrometrica var. muralis、Funaria hygrometrica var. utahensis、Funaria microstoma、Funaria microstoma var. obtusifolia、Funaria muhlenbergii、Funaria orcuttii、Funaria plano-convexa、Funaria polaris、Funaria ravenelii、Funaria rubriseta、Funaria serrata、Funaria sonorae、Funaria sublimbatus、Funaria tucsoni、Physcomitrella californica、Physcomitrella patens、Physcomitrella readeri、Physcomitrium australe、Physcomitrium californicum、Physcomitrium collenchymatum、Physcomitrium coloradense、Physcomitrium cupuliferum、Physcomitrium drummondii、Physcomitrium eurystomum、Physcomitrium flexifolium、Physcomitrium hookeri、Physcomitrium hookeri var. serratum、Physcomitrium immersum、Physcomitrium kellermanii、Physcomitrium megalocarpum、Physcomitrium pyriforme、Physcomitrium pyriforme var. serratum、Physcomitrium rufipes、Physcomitrium sandbergii、Physcomitrium subsphaericum、Physcomitrium washingtoniense属・種、Geraniaceae、例えばPelargonium、Cocos、Oleum属、例えばCocos nucifera、Pelargonium grossularioidesまたはOleum cocois [ココナッツ]、Gramineae、例えばSaccharum属、例えばSaccharum officinarum属・種、Juglandaceae、例えばJuglans、Wallia属、例えばJuglans regia、Juglans ailanthifolia、Juglans sieboldiana、Juglans cinerea、Wallia cinerea、Juglans bixbyi、Juglans californica、Juglans hindsii、Juglans intermedia、Juglans jamaicensis、Juglans major、Juglans microcarpa、Juglans nigraまたはWallia nigra [クルミ]属・種、Lauraceae、例えばPersea、Laurus属、例えばLaurus nobilis [ゲッケイジュ]、Persea americana、Persea gratissimaまたはPersea persea [アボカド]属・種、Leguminosae、例えばArachis属、例えばArachis hypogaea [ラッカセイ]属・種、Linaceae、例えばAdenolinum属、例えばLinum usitatissimum、Linum humile、Linum austriacum、Linum bienne、Linum angustifolium、Linum catharticum、Linum flavum、Linum grandiflorum、Adenolinum grandiflorum、Linum lewisii、Linum narbonense、Linum perenne、Linum perenne var. lewisii、Linum pratenseまたはLinum trigynum [亜麻仁]属・種、Lythrarieae、例えばPunica属、例えばPunica granatum [ザクロ]属・種、Malvaceae、例えばGossypium属、例えばGossypium hirsutum、Gossypium arboreum、Gossypium barbadense、Gossypium herbaceumまたはGossypium thurberi [ワタ]属・種、Marchantiaceae、例えばMarchantia属、例えばMarchantia berteroana、Marchantia foliacea、Marchantia macropora属・種、Musaceae、例えばMusa属、例えばMusa nana、Musa acuminata、Musa paradisiaca、Musa spp. [バナナ]属・種、Onagraceae、例えばCamissonia、Oenothera属、例えばOenothera biennisまたはCamissonia brevipes [オオマツヨイグサ]、Palmae、例えばElaeis属、例えばElaeis guineensis [アブラヤシ]属・種、Papaveraceae、例えばPapaver属、例えばPapaver orientale、Papaver rhoeas、Papaver dubium [ケシ]属・種、Pedaliaceae、例えばSesamum属、例えばSesamum indicum [ゴマ]属・種、Piperaceae、例えばPiper、Artanthe、Peperomia、Steffensia属、例えばPiper aduncum、Piper amalago、Piper angustifolium、Piper auritum、Piper betel、Piper cubeba、Piper longum、Piper nigrum、Piper retrofractum、Artanthe adunca、Artanthe elongata、Peperomia elongata、Piper elongatum、Steffensia elongata [カイエンヌ]、Poaceae、例えばHordeum、Secale、Avena、Sorghum、Andropogon、Holcus、Panicum、Oryza、Zea (トウモロコシ)、Triticum属、例えばHordeum vulgare、Hordeum jubatum、Hordeum murinum、Hordeum secalinum、Hordeum distichon、Hordeum aegiceras、Hordeum hexastichon、Hordeum hexastichum、Hordeum irregulare、Hordeum sativum、Hordeum secalinum [オオムギ]、Secale cereale [ライムギ]、Avena sativa、Avena fatua、Avena byzantina、Avena fatua var. sativa、Avena hybrida [オートムギ]、Sorghum bicolor、Sorghum halepense、Sorghum saccharatum、Sorghum vulgare、Andropogon drummondii、Holcus bicolor、Holcus sorghum、Sorghum aethiopicum、Sorghum arundinaceum、Sorghum caffrorum、Sorghum cernuum、Sorghum dochna、Sorghum drummondii、Sorghum durra、Sorghum guineense、Sorghum lanceolatum、Sorghum nervosum、Sorghum sacchar atum、Sorghum subglabrescens、Sorghum verticilliflorum、Sorghum vulgare、Holcus halepensis、Sorghum miliaceum、Panicum militaceum [アワ]、Oryza sativa、Oryza latifolia [イネ]、Zea mays [トウモロコシ]、Triticum aestivum、Triticum durum、Triticum turgidum、Triticum hybernum、Triticum macha、Triticum sativumまたはTriticum vulgare [コムギ]属・種、Porphyridiaceae、例えばChroothece、Flintiella、Petrovanella、Porphyridium、Rhodella、Rhodosorus、Vanhoeffenia属、例えばPorphyridium cruentum属・種、Proteaceae、例えばMacadamia属、例えばMacadamia intergrifolia [マカダミア]属・種、Prasinophyceae、例えばNephroselmis、Prasinococcus、Scherffelia、Tetraselmis、Mantoniella、Ostreococcus属、例えばNephroselmis olivacea、Prasinococcus capsulatus、Scherffelia dubia、Tetraselmis chui、Tetraselmis suecica、Mantoniella squamata、Ostreococcus tauri属・種、Rubiaceae、例えばCoffea属、例えばCoffea spp.、Coffea arabica、Coffea canephoraまたはCoffea liberica [コーヒー]属・種、Scrophulariaceae、例えばVerbascum属、例えばVerbascum blattaria、Verbascum chaixii、Verbascum densiflorum、Verbascum lagurus、Verbascum longifolium、Verbascum lychnitis、Verbascum nigrum、Verbascum olympicum、Verbascum phlomoides、Verbascum phoenicum、Verbascum pulverulentumまたはVerbascum thapsus [ビロードモウズイカ]属・種、Solanaceae、例えばCapsicum、Nicotiana、Solanum、Lycopersicon属、例えばCapsicum annuum、Capsicum annuum var. glabriusculum、Capsicum frutescens [コショウ]、Capsicum annuum [パプリカ]、Nicotiana tabacum、Nicotiana alata、Nicotiana attenuata、Nicotiana glauca、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana rustica、Nicotiana sylvestris [タバコ]、Solanum tuberosum [ジャガイモ]、Solanum melongena [ナス]、Lycopersicon esculentum、Lycopersicon lycopersicum、Lycopersicon pyriforme、Solanum integrifoliumまたはSolanum lycopersicum [トマト]属・種、Sterculiaceae、例えばTheobroma属、例えばTheobroma cacao [カカオノキ]属・種、またはTheaceae、例えばCamellia属、例えばCamellia sinensis [チャ]属・種。

有利な微生物としては、例えば、Chaetomiaceae、Choanephoraceae、Cryptococcaceae、Cunninghamellaceae、Demetiaceae、Moniliaceae、Mortierellaceae、Mucoraceae、Pythiaceae、Sacharomycetaceae、Saprolegniaceae、Schizosacharomycetaceae、SodariaceaeまたはTuberculariaceae科の群から選ばれる真菌が挙げられる。

挙げられうる微生物の具体例は以下の群のものである:Choanephoraceae、例えばBlakeslea、Choanephora属、例えばBlakeslea trispora、Choanephora cucurbitarum、Choanephora infundibulifera var. cucurbitarum属・種、Mortierellaceae、例えばMortierella属、例えばMortierella isabellina、Mortierella polycephala、Mortierella ramanniana、Mortierella vinacea、Mortierella zonata属・種、Pythiaceae、例えばPhytium、Phytophthora属、例えばPythium debaryanum、Pythium intermedium、Pythium irregulare、Pythium megalacanthum、Pythium paroecandrum、Pythium sylvaticum、Pythium ultimum、Phytophthora cactorum、Phytophthora cinnamomi、Phytophthora citricola、Phytophthora citrophthora、Phytophthora cryptogea、Phytophthora drechsleri、Phytophthora erythroseptica、Phytophthora lateralis、Phytophthora megasperma、Phytophthora nicotianae、Phytophthora nicotianae var. parasitica、Phytophthora palmivora、Phytophthora parasitica、Phytophthora syringae属・種、Saccharomycetaceae、例えばHansenula、Pichia、Saccharomyces、Saccharomycodes、Yarrowia属、例えばHansenula anomala、Hansenula californica、Hansenula canadensis、Hansenula capsulata、Hansenula ciferrii、Hansenula glucozyma、Hansenula henricii、Hansenula holstii、Hansenula minuta、Hansenula nonfermentans、Hansenula philodendri、Hansenula polymorpha、Hansenula saturnus、Hansenula subpelliculosa、Hansenula wickerhamii、Hansenula wingei、Pichia alcoholophila、Pichia angusta、Pichia anomala、Pichia bispora、Pichia burtonii、Pichia canadensis、Pichia capsulata、Pichia carsonii、Pichia cellobiosa、Pichia ciferrii、Pichia farinosa、Pichia fermentans、Pichia finlandica、Pichia glucozyma、Pichia guilliermondii、Pichia haplophila、Pichia henricii、Pichia holstii、Pichia jadinii、Pichia lindnerii、Pichia membranaefaciens、Pichia methanolica、Pichia minuta var. minuta、Pichia minuta var. nonfermentans、Pichia norvegensis、Pichia ohmeri、Pichia pastoris、 Pichia philodendri、Pichia pini、Pichia polymorpha、Pichia quercuum、Pichia rhodanensis、Pichia sargentensis、Pichia stipitis、Pichia strasburgensis、Pichia subpelliculosa、Pichia toletana、Pichia trehalophila、Pichia vini、Pichia xylosa、Saccharomyces aceti、Saccharomyces bailii、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces bisporus、Saccharomyces capensis、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces cerevisiae var. ellipsoideus、Saccharomyces chevalieri、Saccharomyces delbrueckii、Saccharomyces diastaticus、Saccharomyces drosophilarum、Saccharomyces elegans、Saccharomyces ellipsoideus、Saccharomyces fermentati、Saccharomyces florentinus、Saccharomyces fragilis、Saccharomyces heterogenicus、Saccharomyces hienipiensis、Saccharomyces inusitatus、Saccharomyces italicus、Saccharomyces kluyveri、Saccharomyces krusei、Saccharomyces lactis、Saccharomyces marxianus、Saccharomyces microellipsoides、Saccharomyces montanus、Saccharomyces norbensis、Saccharomyces oleaceus、Saccharomyces paradoxus、Saccharomyces pastorianus、Saccharomyces pretoriensis、Saccharomyces rosei、Saccharomyces rouxii、Saccharomyces uvarum、Saccharomycodes ludwigii、Yarrowia lipolytica、Schizosacharomycetaceae属・種、例えばSchizosaccharomyces属、例えばSchizosaccharomyces japonicus var. japonicus、Schizosaccharomyces japonicus var. versatilis、Schizosaccharomyces malidevorans、Schizosaccharomyces octosporus、Schizosaccharomyces pombe var. malidevorans、Schizosaccharomyces pombe var. pombe種、Thraustochytriaceae、例えばAlthornia、Aplanochytrium、Japonochytrium、Schizochytrium、Thraustochytrium属、例えばSchizochytrium aggregatum、Schizochytrium limacinum、Schizochytrium mangrovei、Schizochytrium minutum、Schizochytrium octosporum、Thraustochytrium aggregatum、Thraustochytrium amoeboideum、Thraustochytrium antacticum、Thraustochytrium arudimentale、Thraustochytrium aureum、Thraustochytrium benthicola、Thraustochytrium globosum、Thraustochytrium indicum、Thraustochytrium kerguelense、Thraustochytrium kinnei、Thraustochytrium motivum、Thraustochytrium multirudimentale、Thraustochytrium pachydermum、Thraustochytrium proliferum、Thraustochytrium roseum、Thraustochytrium rossii、Thraustochytrium striatumまたはThraustochytrium visurgense種。

更なる有利な微生物としては、例えば、Bacillaceae、EnterobacteriacaeまたはRhizobiaceae科の群から選ばれる細菌が挙げられる。

挙げられうる具体例は、以下のものよりなる群から選ばれる微生物である:Bacillaceae、例えばBacillus属、例えばBacillus acidocaldarius、Bacillus acidoterrestris、Bacillus alcalophilus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus amylolyticus、Bacillus brevis、Bacillus cereus、Bacillus circulans、Bacillus coagulans、Bacillus sphaericus subsp. fusiformis、Bacillus galactophilus、Bacillus globisporus、Bacillus globisporus subsp. marinus、Bacillus halophilus、Bacillus lentimorbus、Bacillus lentus、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus polymyxa、Bacillus psychrosaccharolyticus、Bacillus pumilus、Bacillus sphaericus、Bacillus subtilis subsp. spizizenii、Bacillus subtilis subsp. subtilisまたはBacillus thuringiensis属・種、Enterobacteriacae、例えばCitrobacter、Edwardsiella、Enterobacter、Erwinia、Escherichia、Klebsiella、SalmonellaまたはSerratia属、例えばCitrobacter amalonaticus、Citrobacter diversus、Citrobacter freundii、Citrobacter genomospecies、Citrobacter gillenii、Citrobacter intermedium、Citrobacter koseri、Citrobacter murliniae、Citrobacter sp.、Edwardsiella hoshinae、Edwardsiella ictaluri、Edwardsiella tarda、Erwinia alni、Erwinia amylovora、Erwinia ananatis、Erwinia aphidicola、Erwinia billingiae、Erwinia cacticida、Erwinia cancerogena、Erwinia carnegieana、Erwinia carotovora subsp. atroseptica、Erwinia carotovora subsp. betavasculorum、Erwinia carotovora subsp. odorifera、Erwinia carotovora subsp. wasabiae、Erwinia chrysanthemi、Erwinia cypripedii、Erwinia dissolvens、Erwinia herbicola、Erwinia mallotivora、Erwinia milletiae、Erwinia nigrifluens、Erwinia nimipressuralis、Erwinia persicina、Erwinia psidii、Erwinia pyrifoliae、Erwinia quercina、Erwinia rhapontici、Erwinia rubrifaciens、Erwinia salicis、Erwinia stewartii、Erwinia tracheiphila、Erwinia uredovora、Escherichia adecarboxylata、Escherichia anindolica、Escherichia aurescens、Escherichia blattae、Escherichia coli、Escherichia coli var. communior、Escherichia coli-mutabile、Escherichia fergusonii、Escherichia hermannii、Escherichia sp.、Escherichia vulneris、Klebsiella aerogenes、Klebsiella edwardsii subsp. atlantae、Klebsiella ornithinolytica、Klebsiella oxytoca、Klebsiella planticola、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae、Klebsiella sp.、Klebsiella terrigena、Klebsiella trevisanii、Salmonella abony、Salmonella arizonae、Salmonella bongori、Salmonella choleraesuis subsp. arizonae、Salmonella choleraesuis subsp. bongori、Salmonella choleraesuis subsp. cholereasuis、Salmonella choleraesuis subsp. diarizonae、Salmonella choleraesuis subsp. houtenae、Salmonella choleraesuis subsp. indica、Salmonella choleraesuis subsp. salamae、Salmonella daressalaam、Salmonella enterica subsp. houtenae、Salmonella enterica subsp. salamae、Salmonella enteritidis、Salmonella gallinarum、Salmonella heidelberg、Salmonella panama、Salmonella senftenberg、Salmonella typhimurium、Serratia entomophila、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia grimesii、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Serratia marcescens subsp. marcescens、Serratia marinorubra、Serratia odorifera、Serratia plymouthensis、Serratia plymuthica、Serratia proteamaculans、Serratia proteamaculans subsp. quinovora、Serratia quinivoransまたはSerratia rubidaea属・種、Rhizobiaceae、例えばAgrobacterium、Carbophilus、Chelatobacter、Ensifer、Rhizobium、Sinorhizobium属、例えばAgrobacterium atlanticum、Agrobacterium ferrugineum、Agrobacterium gelatinovorum、Agrobacterium larrymoorei、Agrobacterium meteori、Agrobacterium radiobacter、Agrobacterium rhizogenes、Agrobacterium rubi、Agrobacterium stellulatum、Agrobacterium tumefaciens、Agrobacterium vitis、Carbophilus carboxidus、Chelatobacter heintzii、Ensifer adhaerens、Ensifer arboris、Ensifer fredii、Ensifer kostiensis、Ensifer kummerowiae、Ensifer medicae、Ensifer meliloti、Ensifer saheli、Ensifer terangae、Ensifer xinjiangensis、Rhizobium ciceri Rhizobium etli、Rhizobium fredii、Rhizobium galegae、Rhizobium gallicum、Rhizobium giardinii、Rhizobium hainanense、Rhizobium huakuii、Rhizobium huautlense、Rhizobium indigoferae、Rhizobium japonicum、Rhizobium leguminosarum、Rhizobium loessense、Rhizobium loti、Rhizobium lupini、Rhizobium mediterraneum、Rhizobium meliloti、Rhizobium mongolense、Rhizobium phaseoli、Rhizobium radiobacter、Rhizobium rhizogenes、Rhizobium rubi、Rhizobium sullae、Rhizobium tianshanense、Rhizobium trifolii、Rhizobium tropici、Rhizobium undicola、Rhizobium vitis、Sinorhizobium adhaerens、Sinorhizobium arboris、Sinorhizobium fredii、Sinorhizobium kostiense、Sinorhizobium kummerowiae、Sinorhizobium medicae、Sinorhizobium meliloti、Sinorhizobium morelense、Sinorhizobium saheliまたはSinorhizobium xinjiangense属・種。

本発明の方法のための有利な微生物の更なる具体例としては、Dinophyceae、TuraniellidaeまたはOxytrichidae科、例えばCrypthecodinium cohnii、Phaeodactylum tricornutum、Stylonychia mytilus、Stylonychia pustulata、Stylonychia putrina、Stylonychia notophora、Stylonychia sp.、Colpidium campylumまたはColpidium sp.属・種の群から選ばれる原生生物またはケイ藻類が挙げられる。

本発明の方法において有利に適用されるのは、例えば真菌、例えばモルティエレラまたはヤブレツボカビ、酵母、例えばSaccharomycesまたはSchizosaccharomyces、蘚類、例えばPhyscomitrellaまたはCeratodon、非ヒト動物、例えばCaenorhabditis、藻類、例えばNephroselmis、Pseudoscourfielda、Prasinococcus、Scherffelia、Tetraselmis、Mantoniella、Ostreococcus、CrypthecodiniumまたはPhaeodactylum、あるいは植物、例えば双子葉または単子葉植物の、トランスジェニック生物である。本発明の方法において特に有利に使用される生物は、油産生生物に属する生物、すなわち、油の製造に使用される生物、例えば真菌、例えばMortierellaまたはThraustochytrium、藻類、例えばNephroselmis、Pseudoscourfielda、Prasinococcus、Scherffelia、Tetraselmis、Mantoniella、Ostreococcus、Crypthecodinium、Phaeodactylum、または植物、特に、大量の脂質化合物を含む植物、好ましくは油料種子または油料作物植物、例えばラッカセイ、アブラナ、カノラ、ヒマワリ、ベニバナ(Carthamus tinctoria)、ケシ、カラシ、タイマ、ヒマ、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ(Punica)、オオマツヨイグサ、ビロードモウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、ゲッケイジュ、パンプキン/カボチャ、亜麻仁、ダイズ、ピスタチオ、ルリチシャ、樹木(アブラヤシ、ココナッツまたはクルミ)または耕作作物、例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トリチカレ、イネ、オオムギ、ワタ、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ナス科植物、例えばジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、ビシア(Vicia)種、エンドウ、アルファルファ、または低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、Salix種、および多年生草および飼料作物である。本発明の好ましい植物は、油料作物植物、例えばラッカセイ、アブラナ、カノラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、カラシ、タイマ、ヒマ植物、オリーブ、キンセンカ、ザクロ(Punica)、オオマツヨイグサ、パンプキン/カボチャ、亜麻仁、ダイズ、ルリチシャ、樹木(アブラヤシ、ココナッツ)である。特に好ましいのは、C18:2-および/またはC18:3-脂肪酸含量が高い植物、例えばヒマワリ、ベニバナ、タバコ、ビロードモウズイカ、ゴマ、ワタ、パンプキン/カボチャ、ケシ、オオマツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、タイマまたはアザミである。非常に特に好ましい植物は、ベニバナ、ヒマワリ、ケシ、オオマツヨイグサ、クルミ、亜麻仁またはタイマのような植物である。

したがって、本発明の前記方法においては、工程(a)〜(d)において導入される核酸、およびω3-サチュラーゼをコードする所望により導入されうる核酸配列に加えて、脂肪酸または脂質代謝の酵素をコードする更なる核酸を生物内に更に導入することが有利である。

原理上は、多不飽和脂肪酸の製造方法においては、脂肪酸または脂質代謝のすべての遺伝子を、有利にはΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼ[本発明の目的においては、複数表現は単数表現を含み、その逆も成り立つと理解される]と組合せて使用することが可能である。アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[= アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシド(allenoxide)シンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼよりなる群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の遺伝子は、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼと組合せて有利に使用される。Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼの群から選ばれる遺伝子は、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼの前記遺伝子と組合せて、特に好ましく使用され、個々の遺伝子または組み合わせた複数の遺伝子を使用することが可能である。

ヒトエロンガーゼ、または非ヒト動物由来のエロンガーゼ、例えばオンコリンクス(Oncorhynchus)、ゼノプス(Xenopus)またはシオナ(Ciona)由来のエロンガーゼと比較して、本発明のΔ5-エロンガーゼは、それがC22-脂肪酸を対応C24-脂肪酸へと伸長させないという有利な特性を有する。さらに、有利には、それは、ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼにより変換される、Δ6位に二重結合を有する脂肪酸を変換しない。特に有利なΔ5-エロンガーゼは不飽和C20-脂肪酸のみを選択的に変換する。これらの有利なΔ5-エロンガーゼは、いくつかの推定膜貫通ヘリックス(5-7)を有する。有利には、Δ5位に1個の二重結合を有するC20-脂肪酸のみが変換され、ω3-C20-脂肪酸(EPA)が好ましい。本発明の好ましい実施形態においては、それらは更に、それらが有利には、Δ5-エロンガーゼ活性以外に、Δ6-エロンガーゼ活性を全く有さないか又は比較的僅かしか有さないという特性を有する。これとは対照的に、ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは、Δ6-またはΔ5-二重結合を有する脂肪酸に対してほぼ同じ活性を有する。これらの有利なエロンガーゼは、いわゆる単機能性エロンガーゼと称される。これとは対照的に、前記の基質に加えて、例えばΔ9-またはΔ11-二重結合を有する単不飽和C16-およびC18-脂肪酸をも変換するヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは、多機能性エロンガーゼと称される。基質として機能するようEPAを酵母に加えた酵母供給試験(yeast feeding test)においては、単機能性エロンガーゼは、有利には、加えたEPAの少なくとも15%、有利には少なくとも20重量%、特に有利には少なくとも25重量%をドコサペンタエン酸(DPA, C22:5Δ7,10,13,16,19)に変換する。基質としてγ-リノレン酸(= GLA, C18:3Δ6,9,12)を加える場合には、この基質は有利には全く伸長されない。C18:3Δ5,9,12も同様に伸長されない。もう1つの有利な実施形態においては、加えたGLAの60重量%未満、有利には55重量%未満、特に好ましくは50重量%未満、特に有利には45重量%未満、非常に特に有利には40重量%未満がジホモ-γ-リノレン酸(= C20:3Δ8,11,14)に変換される。本発明のΔ5-エロンガーゼ活性のもう1つの非常に特に好ましい実施形態においては、GLAは変換されない。

図27および28は、種々のエロンガーゼの、測定された基質特異性を示す。図27は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(図27A)、シオナ・インテスチナリス(Ciona intestinalis)(図27B)およびオンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss)(図27C)の多機能性エロンガーゼの特異性を示す。これらのエロンガーゼのすべては広範囲の基質を変換する。本発明の方法においては、これは、更なる酵素活性により変換されなければならない副産物を与えうる。したがって、これらの酵素は本発明の方法においてはそれほど好ましくない。好ましい単機能性エロンガーゼおよびそれらの基質特異性を図28に示す。図28Aは、オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)Δ5-エロンガーゼの特異性を示す。この酵素は、Δ5位に二重結合を有する脂肪酸のみを変換する。有利には、C20-脂肪酸のみが変換される。タラッシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)Δ5-エロンガーゼにより同様に高い基質特異性が示される(図28C)。オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)Δ6-エロンガーゼ(図28B)およびタラッシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)のもの(図28B)は共に、有利には、Δ6位に二重結合を有する脂肪酸のみを変換する。有利には、C18-脂肪酸のみが変換される。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)およびユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)由来のΔ5-エロンガーゼもそれらの特異性により特徴づけられる。

本発明の有利なΔ6-エロンガーゼも、同様に、高い特異性により特徴づけられる。すなわち、C18-脂肪酸が優先的に伸長される。有利には、それらは、Δ6位に二重結合を有する脂肪酸を変換する。特に有利なΔ6-エロンガーゼは、有利には、分子内に3個または4個の二重結合を有するC18-脂肪酸(その脂肪酸はΔ6位に1個の二重結合を含むはずである)を変換する。本発明の好ましい実施形態においては、それらは更に、Δ6-エロンガーゼ活性以外に、有利にはΔ5-エロンガーゼ活性を全く有さないか又は比較的僅かしか有さないという特徴を有する。これとは対照的に、ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは、Δ6-またはΔ5-二重結合を有する脂肪酸に対するほぼ同じ活性を有する。これらの有利なエロンガーゼは、いわゆる単機能性エロンガーゼと称される。前記のとおり、これとは対照的に、前記の基質に加えて、例えばΔ9-またはΔ11-二重結合を有する単不飽和C16-およびC18-脂肪酸をも変換するヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは多機能性エロンガーゼと称される。基質として機能するようEPAを酵母に加えた酵母供給試験(yeast feeding test)においては、単機能性エロンガーゼは、有利には、加えたα-リノレン酸(= ALA, C18:3Δ9,12,15)の少なくとも10重量%または加えたγ-リノレン酸(= GLA, C18:3Δ6,9,12)の少なくとも40重量%、有利には、少なくとも20重量%または50重量%、特に有利には少なくとも25重量%または60重量%を変換する。C18:4Δ6,9,12,15(ステアリドン酸)も伸長されるのが特に有利である。この場合、SDAは少なくとも40重量%、有利には少なくとも50重量%、特に有利には少なくとも60重量%、非常に特に有利には少なくとも70重量%変換される。特に有利なΔ6-エロンガーゼは以下の基質に対して活性を全く示さないか又は非常に僅かしか示さない(0.1重量%未満の変換率):C18:1Δ6, C18:1Δ9, C18:1Δ11, C20:2Δ11,14, C20:3Δ11,14,17, C20:3Δ8,11,14, C20:4Δ5,8,11,14, C20:5Δ5,8,11,14,17 またはC22:4Δ7,10,13,16

図29および30ならびに表18は、種々のエロンガーゼの、測定された基質特異性を示す。

公知ω3-デサチュラーゼとは対照的に、本発明のω3-デサチュラーゼは、広範囲のω6-脂肪酸を不飽和化しうるという有利な特性を有し、C20:2-、C20:3-、C20:4-、C22:4-またはC22:5-脂肪酸のようなC20-およびC22-脂肪酸が優先的に不飽和化される。しかし、より短いC18-脂肪酸、例えばC18:2-またはC18:3-脂肪酸も有利に不飽和化される。該ω3-デサチュラーゼのこれらの特性により、有利には、生物(有利には植物または真菌)内の脂肪酸スペクトルをω6-脂肪酸からω3-脂肪酸へとシフトさせることが可能である。好ましくは、本発明のω3-デサチュラーゼはC20-脂肪酸を不飽和化する。生物内では、既存脂肪酸プールからのこれらの脂肪酸の少なくとも10%、15%、20%、25%または30%が、対応するω3-脂肪酸に変換される。C18-脂肪酸に対する酵素ω3-デサチュラーゼの活性は10倍低い。すなわち、脂肪酸プール中に存在する脂肪酸の約1.5〜3%しか、対応ω3-脂肪酸に変換されない。本発明のω3-デサチュラーゼの好ましい基質は、リン脂質中に結合したω6-脂肪酸である。図19は、ジホモ-γ-リノレン酸[C20:4Δ8,11,14]の不飽和化に関して、該不飽和化過程中に、ω3-デサチュラーゼが、有利には、sn1位において結合した脂肪酸とsn2位において結合した脂肪酸とを区別しないことを明らかに示している。リン脂質中でsn1位において結合した脂肪酸およびsn2位において結合した脂肪の両方が不飽和化される。さらに、ω3−デサチュラーゼは広範囲のリン脂質、例えばホスファチジルコリン(= PC)、ホスファチジルイノシトール(= PIS)またはホスファチジルエタノールアミン(= PE)を変換することが有利である。最後に、不飽和化産物は中性脂質(= NL)、すなわち、トリグリセリド中にも見出されうる。

公知のΔ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼと比較して、本発明のΔ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼの利点は、それらが、CoA-脂肪酸エステルまたはリン脂質(有利にはCoA-脂肪酸エステル)に結合した脂肪酸を変換しうることである。

本発明の方法において使用するΔ12-デサチュラーゼは、有利には、オレイン酸(C18:1Δ9)をリノール酸(C18:2Δ9,12)へ、あるいはC18:2Δ6,9をC18:3Δ6,9,12(= GLA)へ変換する。使用するΔ12-デサチュラーゼは、有利には、リン脂質またはCoA-脂肪酸エステルに結合した脂肪酸、有利には、CoA-脂肪酸エステルに結合した脂肪酸を変換する。

脂肪酸または脂質代謝のポリペプチド(例えば、Δ4-、Δ5-、Δ6-、Δ8-、Δ12-デサチュラーゼまたはΔ5-、Δ6-またはΔ9-エロンガーゼ活性を有する更なるポリペプチド)をコードする核酸配列と有利に組合わせた、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする本発明の方法において使用する核酸の酵素活性により、本発明の方法においては広範囲の多不飽和脂肪酸が製造されうる。本発明の方法に使用する生物(例えば、有利な植物)の選択に応じて、種々の多不飽和脂肪酸の混合物、または個々の多不飽和脂肪酸、例えばEPAもしくはARAが、遊離または結合形態で製造されうる。出発植物内の一般的な脂肪酸組成(C18:2-またはC18:3-脂肪酸)に応じて、C18:2-脂肪酸から誘導される脂肪酸、例えばGLA、DGLAまたはARA、あるいはC18:3-脂肪酸から誘導される脂肪酸、例えばSDA、ETAまたはEPAが得られる。該方法に使用する植物内の不飽和脂肪酸としてリノール酸(= LA, C18:2Δ9,12)のみが存在する場合には、該方法は産物としてGLA、DGLAまたはARAのみを与えることが可能であり、それらのすべては遊離脂肪酸または結合形態として存在しうる。該方法に使用する植物(この場合は、例えば亜麻仁)内の不飽和脂肪酸としてα-リノレン酸(= ALA, C18:3Δ9,12,15)のみが存在する場合には、該方法は産物としてSDA、ETAもしくはEPAおよび/またはDHAのみを与えることが可能であり、前記のとおり、それらのすべては遊離脂肪酸または結合形態として存在しうる。その合成において機能するΔ4-、Δ5-、Δ6-、Δ12-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼあるいはΔ4-、Δ5-、Δ8-、Δ12-デサチュラーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼと有利に組み合わされた酵素Δ5-エロンガーゼの活性の修飾により、前記生物(有利には前記植物)内で個々の産物のみを特異的に産生させることが可能である。Δ6-デサチュラーゼおよびΔ6-エロンガーゼの活性により、出発植物および不飽和脂肪酸に応じて、例えばGLAおよびDGLA、またはSDAおよびETAが生成される。好ましくは、DGLAまたはETAまたはこれらの混合物が生成する。Δ5- デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよびΔ4-デサチュラーゼを生物(有利には植物)内に追加的に導入すると、ARA、EPAおよび/またはDHAが追加的に生成する。これは、Δ8-デサチュラーゼおよびΔ9-エロンガーゼが既に導入されている生物にも適用される。有利には、合成の出発物質として機能する生物または植物内に存在する脂肪酸に応じて、専らARA、EPAもしくはDHAまたはこれらの混合物が合成される。生合成カスケードが関与するため、問題の最終産物は生物内に純粋形態では存在しない。少量の前駆体化合物が最終産物中に常に共存する。これらの少量は、最終産物DGLA、ETAもしくはそれらの混合物またはARA、EPA、DHAもしくはそれらの混合物(有利にはEPAもしくはDHAまたはそれらの混合物)に対して20重量%未満、有利には15重量%未満、特に有利には10重量%未満、最も有利には5、4、3、2または1重量%未満に相当する。

本発明の核酸によりコードされるタンパク質は、DHAの合成のための2つの前駆体であるC18:4Δ6,9,12,15-脂肪酸およびC20:5Δ5,8,11,14,17-脂肪酸に対して高い特異性を示す(DHAの前駆体および合成に関しては図1を参照されたい)。例えば、配列番号53によりコードされるタンパク質は、1個のω3-二重結合を追加的に有するΔ6-およびΔ5-脂肪酸に対する特異性を有する(図2)。Δ5-エロンガーゼは、有利にはアシル-CoAエステルの脂肪酸残基を2炭素原子伸長させるケトアシル-CoAシンターゼ活性を有する。

Δ5-エロンガーゼ遺伝子、PhaeodacylumΔ5-デサチュラーゼおよびEuglenaΔ4-デサチュラーゼを使用することにより、酵母(Saccharomyces cerevisiae)におけるDHAの合成を示すことが可能であった(図3)。

本発明のΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼのための出発脂肪酸の生物内での直接的産生に加えて、それらの脂肪酸を外から供給することもできる。経済的な理由では、生物内での産生が好ましい。ω3-デサチュラーゼの好ましい基質はリノール酸(C18:2Δ9,12)、γ-リノレン酸(C18:3Δ6,9,12)、エイコサジエン酸(C20:2Δ11,14)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3Δ8,11,14)、アラキドン酸(C20:4Δ5,8,11,14)、ドコサテトラエン酸(C22:4Δ7,10,13,16)およびドコサペンタエン酸(C22:5Δ4,7,10,13,15)である。

有利に上昇した多不飽和脂肪酸含量を有する油および/またはトリグリセリドの製造に関する前記製造方法における収量を増加させるためには、脂肪酸の合成のための出発産物の量を増加させることが有利である。これは、例えば、Δ12-デサチュラーゼを伴うポリペプチドをコードする核酸を生物内に導入することにより達成されうる。これは、オレイン酸が豊富である、油産生生物、例えばBrassicaceae科、例えばBrassica属、例えばアブラナ;Elaeagnaceae科、例えばElaeagnus属、例えばOlea europaea属・種、またはFabaceae科、例えばGlycine属、例えばGlycine max属・種において特に有利である。これらの生物はリノール酸に乏しいため(Mikoklajczakら, Journal of the American Oil Chemical Society, 38, 1961, 678-681)、出発物質リノール酸を産生させるための前記Δ12-デサチュラーゼの使用が有利である。

本発明の方法において使用する核酸は、有利には、以下のような植物に由来する:藻類、例えばPrasinophyceae科、例えばHeteromastix、Mammella、Mantoniella、Micromonas、Nephroselmis、Ostreococcus、Prasinocladus、Prasinococcus、Pseudoscourfielda、Pycnococcus、Pyramimonas、ScherffeliaまたはTetraselmis属、例えばHeteromastix longifillis、Mamiella gilva、Mantoniella squamata、Micromonas pusilla、Nephroselmis olivacea、Nephroselmis pyriformis、Nephroselmis rotunda、Ostreococcus tauri、Ostreococcus sp. Prasinocladus ascus、Prasinocladus lubricus、Pycnococcus provasolii、Pyramimonas amylifera、Pyramimonas disomata、Pyramimonas obovata、Pyramimonas orientalis、Pyramimonas parkeae、Pyramimonas spinifera、Pyramimonas sp.、Tetraselmis apiculata、Tetraselmis carteriaformis、Tetraselmis chui、Tetraselmis convolutae、Tetraselmis desikacharyi、Tetraselmis gracilis、Tetraselmis hazeni、Tetraselmis impellucida、Tetraselmis inconspicua、Tetraselmis levis、Tetraselmis maculata、Tetraselmis marina、Tetraselmis striata、Tetraselmis subcordiformis、Tetraselmis suecica、Tetraselmis tetrabrachia、Tetraselmis tetrathele、Tetraselmis verrucosa、Tetraselmis verrucosa fo. rubensまたはTetraselmis sp.属・種の藻類、あるいはEuglenaceae科、例えばAscoglena、Astasia、Colacium、Cyclidiopsis、Euglena、Euglenopsis、Hyalophacus、Khawkinea、Lepocinclis、Phacus、StrombomonasまたはTrachelomonas属、例えばEuglena acus、Euglena geniculata、Euglena gracilis、Euglena mixocylindracea、Euglena rostrifera、Euglena viridis、Colacium stentorium、Trachelomonas cylindricaまたはTrachelomonas volvocina属・種の藻類。使用する核酸は、有利には、Euglena、MantoniellaまたはOstreococcus属の藻類に由来する。

更なる有利な植物は、藻類、例えばIsochrysisまたはCrypthecodinium、藻類/ケイ藻類、例えばThalassiosiraまたはPhaeodactylum、蘚類、例えばPhyscomitrellaまたはCeratodon、または高等植物、例えばPrimulaceae、例えばAleuritia、Calendula stellata、Osteospermum spinescensまたはOsteospermum hyoseroides、微生物、例えば真菌、例えばAspergillus、Thraustochytrium、Phytophthora、Entomophthora、MucorまたはMortierella、細菌、例えばShewanella、酵母、または動物、例えば線虫、例えばCaenorhabditis、昆虫、カエル、アワビまたは魚類である。本発明の単離された核酸配列は、有利には、脊椎動物目の動物に由来する。好ましくは、該核酸配列は、Vertebrata(脊椎動物亜門); ユーテレオストミ(Euteleostomi)、Actinopterygii(条鰭亜綱); Neopterygii(新鰭亜綱); Teleostei(硬骨魚類); Euteleostei、Protacanthopterygii、Salmoniformes; SalmonidaeまたはOncorhynchusまたは脊椎動物(Vertebrata)、Amphibia(両生類)、Anura(カエル目)、Pipidae、XenopusまたはEvertebrata、例えばProtochordata、Tunicata、Holothuroidea、Cionidae、例えばAmaroucium constellatum、Botryllus schlosseri、Ciona intestinalis、Molgula citrina、Molgula manhattensis、Perophora viridisまたはStyela partitaに由来する。該核酸は、特に有利には、真菌、動物または植物、例えば藻類または蘚類、好ましくはSalmoniformes目(サケ目)、例えばSalmonidae科、例えばSalmo属、例えばOncorhynchus mykiss、Trutta truttaまたはSalmo trutta fario属・種、藻類、例えばMantoniellaまたはOstreococcus属、あるいはケイ藻類、例えばThalassiosiraまたはPhaeodactylum属、あるいは藻類、例えばCrypthecodiniumに由来する。

本発明の方法は、有利には、前記核酸配列、または核酸配列によりコードされるタンパク質の酵素活性を保持するポリペプチドをコードするそれらの誘導体もしくはホモログを使用する。これらの配列は、個々に、またはΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼをコードする核酸配列と組合せて、発現構築物内にクローニングされ、生物内への導入および生物内での発現に使用される。これらの発現構築物は、それらの構築により、本発明の方法において産生される多不飽和脂肪酸の有利な最適合成を可能にする。

好ましい実施形態においては、該方法は更に、該方法において使用する核酸配列を含む細胞または無傷生物を得る工程を含み、この場合、Δ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼをコードする本発明の核酸配列、前記の遺伝子構築物またはベクターで、単独で又は脂肪酸もしくは脂質代謝のタンパク質をコードする更なる核酸配列と組み合わさせて、該細胞および/または該生物を形質転換する。もう1つの好ましい実施形態においては、この方法は更に、該生物または培養物から油、脂質または遊離脂肪酸を得る工程を含む。該培養は、例えば、微生物(例えば、Mortierella、Thalassiosira、Mantoniella、Ostreococcus、SaccharomycesまたはThraustochytrium)の培養の場合には発酵培養、あるいは植物の温室または圃場栽培耕作の形態をとりうる。このようにして得られた細胞または生物は、有利には、油産生生物、例えば、油料作物、例えばラッカセイ、アブラナ、カノラ、亜麻仁、タイマ、ラッカセイ、ダイズ、ベニバナ、タイマ、ヒマワリまたはルリチシャの細胞である。

植物細胞、植物組織または植物器官の場合には、「増殖」は、例えば、栄養培地上または栄養培地中での培養、あるいは基材上または内、例えば水耕栽培、鉢植え堆肥または耕地における無傷植物の耕作を意味すると理解される。

本発明の目的においては、「トランスジェニック」または「組換え」は、例えば核酸配列;該核酸配列を含む発現カセット(= 遺伝子構築物)またはベクター;あるいは本発明の核酸配列、発現カセットまたはベクターで形質転換された生物に関して、それらの構築物がすべて、 a)本発明の核酸配列、または b)本発明の核酸配列に機能しうる形で連結された遺伝的制御配列、例えばプロモーター、または c)a)およびb) のいずれかがそれらの天然の遺伝的環境中に存在しないか又は組換え法により改変されている状態で、組換え法により作製されたものであることを意味し、ここで該改変は、例えば、1以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、逆位または挿入の形態をとってもよい。天然の遺伝的環境とは、元の生物における天然のゲノムまたは染色体遺伝子座あるいはゲノムライブラリー中の存在を意味すると理解される。ゲノムライブラリーの場合には、該核酸配列の天然の遺伝的環境は、好ましくは、少なくとも部分的に維持されている。該環境は、該核酸配列の少なくとも一方の側に隣接し、少なくとも50bp、好ましくは少なくとも500bp、特に好ましくは少なくとも1000bp、最も好ましくは少なくとも5000bpの配列長を有する。天然に存在する発現カセット(例えば、核酸配列の天然プロモーターと、対応するΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-エロンガーゼ遺伝子との、天然に存在する組合せ)は、この発現カセットが非天然の合成(「人工的」)方法(例えば、突然変異処理)により改変された場合に、トランスジェニック発現カセットとなる。適当な方法は、例えば米国特許第5,565,350号またはWO 00/15815に記載されている。

したがって、本発明の目的におけるトランスジェニック生物またはトランスジェニック植物は、前記のとおり、該方法において使用する核酸が生物のゲノム内のそれらの天然遺伝子座に存在しないことを意味すると理解され、該核酸は同種的または異種的に発現されうる。しかし、記載されているとおり、トランスジェニックはまた、本発明の核酸が生物のゲノム内のそれらの天然位置に存在する場合に、該配列が、天然配列に対して改変されていること、および/または天然配列の調節配列が改変されていることをも意味する。トランスジェニックは、好ましくは、ゲノム内の非天然遺伝子座における本発明の核酸の発現(すなわち、同種的)を意味すると理解され、あるいは、好ましくは、核酸の異種的発現が生じる。好ましいトランスジェニック生物は、真菌、例えばMortierellaまたはPhytophtora、蘚類、例えばPhyscomitrella、藻類、例えばMantoniella、Euglena、CrypthecodiniumまたはOstreococcus、ケイ藻類、例えばThalassiosiraまたはPhaeodactylum、あるいは植物、例えば油料作物である。

本発明の方法において使用する核酸、発現カセットまたはベクターの生物または宿主生物は、原理上は、有利には、脂肪酸、特に不飽和脂肪酸を合成しうる、そして/又は組換え遺伝子の発現に適している全ての生物である。挙げられうる具体例は、植物、例えばArabidopsis、Asteraceae、例えばCalendula、または作物植物、例えばダイズ、ラッカセイ、ヒマ植物、ヒマワリ、トウモロコシ、ワタ、アマ、アブラナ、ココヤシ、アブラヤシ、ベニバナ(Carthamus tinctorius)またはカカオ豆、微生物、例えば真菌、例えばMortierella、Thraustochytrium、Saprolegnia、PhytophtoraまたはPythium属、細菌、例えばEscherichiaまたはShewanella属、酵母、例えばSaccharomyces属、ラン藻類、繊毛虫、藻類、例えばMantoniella、Euglena、ThalassiosiraまたはOstreococcus、あるいは原生動物、例えば渦鞭毛藻類、例えばCrypthecodiniumである。好ましい生物は、相当量の油を天然で合成しうる生物、例えば真菌、例えばMortierella alpina、Pythium insidiosum、Phytophtora infestans、または植物、例えばダイズ、アブラナ、ココヤシ、アブラヤシ、ベニバナ、アマ、タイマ、ヒマ植物、キンセンカ、ラッカセイ、カカオ豆またはヒマワリ、または酵母、例えばSaccharomyces cerevisiaeであり、ダイズ、アマ、アブラナ、ベニバナ、ヒマワリ、キンセンカ、MortierellaまたはSaccharomyces cerevisiaeが特に好ましい。原理上は、宿主生物としては、前記トランスジェニック生物に加えて、トランスジェニック動物、有利には非ヒト動物、例えばC. elegans、Ciona intestinalisまたはXenopus laevisが挙げられる。

更なる利用可能な宿主細胞は、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。

使用しうる発現株、例えば、より低いプロテアーゼ活性を有する発現株が、Gottesman, S., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 119-128に記載されている。

これらは、実際のトランスジェニック植物に由来するか、及び/又はトランスジェニック植物を得るために使用できる、植物細胞ならびに植物の特定の組織、器官および部分(すべての表現型形態のもの)、例えば葯、繊維、根毛、柄、胚、カルス、子葉、葉柄、収穫材料、植物組織、生殖組織および細胞培養物を包含する。

本発明の方法において合成された多不飽和脂肪酸を含むトランスジェニック植物は、有利には、合成された油、脂質または脂肪酸の単離を要することなく直接的に販売されうる。本発明の方法のための植物は、無傷植物およびすべての植物部分、植物器官または植物部分、例えば葉、茎、種子、根、塊茎、葯、繊維、根毛、柄、胚、カルス、子葉、葉柄、収穫物質、植物組織、生殖組織および細胞培養物(実際のトランスジェニック植物に由来するか、及び/又はトランスジェニック植物を得るために使用しうるもの)を意味するものとして記載される。この場合、種子は、種子の全ての部分、例えば種皮、表皮細胞、種子細胞、内胚乳または胚組織を含む。しかし、本発明の方法において製造された化合物は、生物、有利には植物から、それらの油、脂肪、脂質および/または遊離脂肪酸の形態で単離されうる。この方法により製造された多不飽和脂肪酸は、生物を、それが増加している作物から又は圃場から収穫することにより得ることが可能である。これは、植物部分、好ましくは植物種子を圧縮または抽出することにより行うことが可能である。この場合、油、脂肪、脂質および/または遊離脂肪酸は、熱を加えないいわゆる常温たたき(cold-beating)または常温圧縮により得ることが可能である。植物部分の破壊、特に種子の破壊を容易にするために、それを予め粉砕し、蒸らすか又は焙焼する。このようにして前処理した種子を次いで、圧縮し、または加温ヘキサンのような溶媒で抽出することが可能である。ついで溶媒を除去する。微生物の場合には、微生物を、収穫後、例えば、更なる加工工程を行うことなく直接的に抽出し、あるいは、破壊後に、当業者に公知の種々の方法により抽出する。このようにして、該方法において製造された化合物の96%以上を単離することが可能である。ついで、得られた産物を更に加工(すなわち、精製)する。この方法においては、まず、植物粘液および懸濁物質のような物質を除去する。いわゆるデスライミングを酵素的に、または例えばリン酸のような酸の添加により物理化学的に行うことが可能である。ついで、塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液での処理により、遊離脂肪酸を除去する。得られた産物を、産物中の残留アルカリを除去するために水で十分に洗浄し、ついで乾燥させる。産物中の残存色素を除去するためには、フィラーアース(filler's earth)または活性炭を使用して産物を漂白する。最後に、例えば蒸気を使用して産物を脱臭する。

この方法により製造されるPUFAまたはLCPUFAは、有利には、脂肪酸分子内に少なくとも2個の二重結合、好ましくは3個、4個、5個または6個の二重結合を有するC18-、C20-またはC22-脂肪酸分子、有利にはC20-またはC22-脂肪酸分子である。これらのC18-、C20-またはC22-脂肪酸分子は、油、脂質または遊離脂肪酸の形態で生物から単離することが可能である。適当な生物は、例えば前記で挙げたものである。好ましい生物はトランスジェニック植物である。

したがって、本発明の1つの実施形態は、前記方法により製造された油、脂質もしくは脂肪酸またはそれらの画分、特に好ましくは、PUFAを含みトランスジェニック植物に由来する油、脂質または脂肪酸組成物である。

前記のとおり、これらの油、脂質または脂肪酸は、有利には、6〜15%のパルミチン酸、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のバクセン酸、0.1〜1%のアラキン酸、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%の単不飽和脂肪酸および60〜85%の多不飽和脂肪酸(各場合について、該生物の全脂肪酸含量に基づく100%に対する割合である)を含む。脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に存在する有利な多不飽和脂肪酸は、好ましくは、全脂肪酸含量に対して少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1%のアラキドン酸である。さらに、本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、有利には、脂肪酸エルカ酸(13-ドコサエン酸)、ステルクリン酸(9,10-メチレン-オクタデカ-9-エン酸)、マルバル酸(8,9-メチレンヘプタデカ-8-エン酸)、カウルモオグル酸(シクロペンテンドデカン酸)、フラン脂肪酸(9,12-エポキシオクタデカ-9,11-ジエン酸)、ベルノール酸(9,10-エポキシオクタデカ-12-エン酸)、タリリン酸(6-オクタデシン酸)、6-ノナデシン酸、サンタルビン酸(t11-オクタデセン-9-イン酸)、6,9-オクタデセニン酸、ピルル酸(t10-ヘプタデセン-8-イン酸)、クレペニニン酸(9-オクタデセン-12-イン酸)、13,14-ジヒドロオロフェ酸、オクタデセン-13-エン-9,11-ジイン酸、ペトロセレン酸(シス-6-オクタデセン酸)、9c,12t-オクタデカジエン酸、カレンデュル酸(calendulic acid)(8t10t12c-オクタデカトリエン酸)、カタルプ酸(9t11t13c-オクタデカトリエン酸)、エレオステアリン酸(9c11t13t-オクタデカトリエン酸)、ジャカリン酸(8c10t12c-オクタデカトリエン酸)、プニカ酸(9c11t13c-オクタデカトリエン酸)、パリナリン酸(9c11t13t15c-オクタデカテトラエン酸)、ピノレン酸(全シス-5,9,12-オクタデカトリエン酸)、ラバレン酸(5,6-オクタデカジエナレン酸)、リシノール酸(12-ヒドロキシオレイン酸)および/またはコリオール酸(13-ヒドロキシ-9c,11t-オクタデカジエン酸)よりなる群から選ばれる脂肪酸を含む。前記脂 肪酸は、一般に、有利には、本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に微量でしか見出されない。すなわち、それらは、全脂肪酸に対して、30%未満、好ましくは25%、24%、23%、22%または21%未満、特に好ましくは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満、非常に特に好ましくは4%、3%、2%または1%未満で見出される。本発明のもう1つの好ましい形態においては、これらの前記脂肪酸は、全脂肪酸に対して0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%未満、特に好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満で見出される。本発明の方法により製造された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、有利には、酪酸、コレステロール、クルパノドン酸(= ドコサペンタエン酸, C22:5Δ4,8,12,15,21)およびナイシン酸(テトラコサヘキサエン酸, C23:6Δ3,8,12,15,18,21)を、全脂肪酸に対して0.1%未満しか含まないか、および/または全く含まない。

本発明の油、脂質または脂肪酸は有利には、産生生物(有利には植物、特に好ましくは油料作物、例えばダイズ、アブラナ、ココヤシ、アブラヤシ、ベニバナ、アマ、タイマ、ヒマ、キンセンカ、ラッカセイ、カカオ豆、ヒマワリ、または前記の更なる単子葉もしくは双子葉油料作物植物)の全脂肪酸含量に対して少なくとも0.5%、0.5%、1%、2%、3%、4%または5%、有利には少なくとも6%、7%、8%、9%または10%、特に有利には少なくとも11%、12%、13%、14%または15%のARA、あるいは少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%または5%、有利には少なくとも6%または7%、特に有利には少なくとも8%、9%または10%のEPAおよび/またはDHAを含む。

本発明のもう1つの実施形態は、飼料、食品、化粧品または医薬における油、脂質、脂肪酸および/または脂肪酸組成物の使用である。本発明の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物は、例えば魚油のような動物由来の他の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物と混合するために当業者に公知の様態で使用されうる。これらの油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物は、植物および動物構成成分から構成され、飼料、食品、化粧品または医薬の製造にも使用されうる。

「油」、「脂質」または「脂肪」は、不飽和、飽和、好ましくはエステル化脂肪酸を含む脂肪酸混合物を意味すると理解される。油、脂質または脂肪は、好ましくは、多不飽和の遊離の、または有利には、エステル化された脂肪酸、特に、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸を豊富に含む。

不飽和エステル化脂肪酸の量は、好ましくは、約30%に達し、50%の含量がより好ましく、60%、70%、80%またはそれ以上がより一層好ましい。分析のためには、例えば、エステル交換反応により脂肪酸をメチルエステルに変換した後でガスクロマトグラフィーにより脂肪酸含量を測定することが可能である。該油、脂質または脂肪は、種々の他の飽和または不飽和脂肪酸、例えばカレンデュル酸(calendulic acid)、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸などを含みうる。油または脂肪中の種々の脂肪酸の含量は、特に出発生物によって様々でありうる。

該方法において製造される、有利には少なくとも2個の二重結合を有する多不飽和脂肪酸は、前記のとおり、例えばスフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、脂質、糖脂質、リン脂質、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたは他の脂肪酸エステルである。本発明の方法において製造された、有利には少なくとも5個または6個の二重結合を有する多不飽和脂肪酸から出発すると、存在する多不飽和脂肪酸は、例えばアルカリ(例えば、水性KOHまたはNaOH)での処理、または酸加水分解(有利には、メタノールまたはエタノールのようなアルコールの存在下で行う)、あるいは酵素的切断により遊離され、例えば相分離およびそれに続く例えばH2SO4での酸性化により単離されうる。また、該脂肪酸は、前記加工工程を経ずに直接的に遊離されうる。

該方法において使用する核酸は、生物、有利には植物細胞または植物内へのそれらの導入の後、分離したプラスミド上に存在するか、または有利には、宿主細胞のゲノム内に組込まれうる。ゲノム内への組込みの場合には、組込みはランダムであるか、または天然遺伝子が導入コピーにより置換されて該細胞による所望の化合物の産生がモジュレーションされるように組換えにより組込みが生じてもよく、または遺伝子の発現を保証する少なくとも1つの配列と、機能的に転写される遺伝子のポリアデニル化を保証する少なくとも1つの配列とを含む機能的発現単位に機能しうる形で遺伝子が連結されるようイン・トランスで遺伝子を使用することにより組込みが生じてもよい。該核酸は、有利には、多重並行発現のための多重発現カセットまたは構築物により生物内に導入され、有利には、遺伝子の多重並行種子特異的発現のために植物内に導入される。

蘚類および藻類は、相当量の多不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸(ARA)および/またはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する唯一公知の植物系である。蘚類はPUFAを膜脂質内に含み、一方、藻類、藻類近縁生物および少数の真菌は相当量のPUFAをトリアシルグリセロール画分中にも蓄積する。したがって、トリアシルグリセロール画分中にもPUFAを蓄積するそのような株から単離された核酸分子は本発明の方法に、したがって宿主(特に、油料作物のような植物、例えばアブラナ、カノラ、亜麻仁、タイマ、ダイズ、ヒマワリおよびルリチシャ)内の脂質およびPUFA産生系の修飾に特に有利である。したがって、それらは、本発明の方法において有利に使用されうる。

本発明の方法において使用する、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、および/または使用する他の核酸、例えば、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[= アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシド(allenoxide)シンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼの群から選ばれる、脂肪酸または脂質代謝のポリペプチドをコードする核酸に好適な基質は、有利には、C16-、C18-またはC20-脂肪酸である。該方法において基質として変換される脂肪酸は、好ましくは、それらのアシル-CoAエステルおよび/またはそれらのリン脂質エステルの形態で変換される。

本発明の長鎖PUFAを製造するためには、まず、多不飽和C18-脂肪酸をデサチュラーゼの酵素活性により不飽和化し、ついでエロンガーゼにより少なくとも2個の炭素原子を、伸長させなければならない。この酵素活性は、1回の伸長サイクルの後ではC20-脂肪酸を与え、2回の伸長サイクルの後ではC22-脂肪酸を与える。本発明の方法において使用するデサチュラーゼおよびエロンガーゼの活性は、好ましくは、脂肪酸分子内に有利には少なくとも2個、好ましくは3個、4個、5個または6個の二重結合を有するC18-、C20-および/またはC22-脂肪酸を与え、特に好ましくは、脂肪酸分子内に少なくとも2個、好ましくは3個、4個、5個または6個、非常に特に好ましくは5個または6個の二重結合を有するC20-および/またはC22-脂肪酸を与える。最初の不飽和化および伸長が生じた後、更なる不飽和および伸長工程、例えばΔ5およびΔ4位における不飽和化が生じうる。特に好ましい本発明の方法の産物は、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である。脂肪酸内に少なくとも2個の二重結合を有するC20-脂肪酸は、遊離脂肪酸の形態またはエステル、例えばリン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールもしくはトリアシルグリセロールの形態で、本発明における酵素活性により伸長されうる。

有利に使用される植物内の脂肪酸、油、脂質または脂肪の好ましい生合成部位は、例えば、一般には、種子、または種子の細胞層であり、したがって、該方法において使用する核酸の種子特異的発現は理にかなっている。しかし、脂肪酸、油または脂質の生合成は必ずしも種子組織に限定されず、植物の他のすべての部分(例えば、表皮細胞または塊茎)においても組織特異的に生じうることが明らかである。

本発明の方法における生物として微生物、例えば酵母、例えばSaccharomycesまたはSchizosaccharomyces、真菌、例えばMortierella、Aspergillus、Phytophtora、Entomophthora、MucorまたはThraustochytrium、藻類、例えばIsochrysis、Mantoniella、Euglena、Ostreococcus、PhaeodactylumまたはCrypthecodiniumを使用する場合には、これらの生物は、有利には、発酵培養で増殖させる。

Δ5-エロンガーゼをコードする本発明の核酸の使用により、該方法において製造される多不飽和脂肪酸は、該核酸を組換え的に含まない野生型生物の場合と比較して少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは少なくとも20%、非常に特に好ましくは少なくとも50%増加しうる。

原理上は、該方法において使用する生物における、本発明の方法により製造される多不飽和脂肪酸は、2つの異なる様態で増加しうる。有利には、該方法により製造される遊離多不飽和脂肪酸のプールおよび/またはエステル化多不飽和脂肪酸の含量が増大しうる。有利には、トランスジェニック生物におけるエステル化多不飽和脂肪酸のプールが本発明の方法により増大する。

本発明の方法における生物として微生物を使用する場合には、それを、宿主生物に応じた当業者に公知の方法により増殖させ又は培養する。一般には、通常は糖の形態の炭素源、通常は有機窒素源(例えば、酵母エキスまたは硫酸アンモニウムのような塩)の形態の窒素源、微量元素、例えば鉄、マンガンおよびマグネシウムの塩、そして適当な場合にはビタミンを含む液体培地で、0℃〜100℃、好ましくは10℃〜60℃の温度で、酸素を通気させながら、微生物を増殖させる。液体培地のpHは一定に維持することが可能であり、すなわち、培養期間中に調節されてもされなくてもよい。培養は、バッチ方式、半バッチ方式で又は連続的に行うことが可能である。栄養素は、発酵開始時に供給し、または半連続的または連続的に供給することが可能である。産生された多不飽和脂肪酸は、前記の生物から、当業者に公知の方法、例えば抽出、蒸留、結晶化、適当な場合には、塩での沈殿、および/またはクロマトグラフィーにより単離することが可能である。この目的のため、有利には、該生物を予め破壊することができる。

宿主生物が微生物である場合には、本発明の方法は、有利には、0℃〜95℃、好ましくは10℃〜85℃、特に好ましくは15℃〜75℃、非常に特に好ましくは15℃〜45℃の温度で行う。

この方法においては、pH値は、有利には、pH 4〜12、好ましくはpH 6〜9、特に好ましくはpH 7〜8に維持する。

本発明の方法は、バッチ方式、半バッチ方式で又は連続的に行うことが可能である。公知培養方法に関する概説はChmielによるテキスト(Bioprozeβtechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik [Bioprocess technology 1. Introduction to Bioprocess technology] (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhasによるテキスト(Bioreaktoren und periphere Einrichtungen [Bioreactors and peripheral equipment] (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))中に見出されうる。

使用する培地は、対象株の要求性を適切に満たすものでなければならない。種々の微生物のための培地の説明はAmerican Society for Bacteriology (Washington D. C., USA, 1981) の“Manual of Methods fuer General Bacteriology”のテキスト中に見出されうる。

前記のとおり、本発明において使用しうるこれらの培地は、通常、1以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンおよび/または微量元素を含む。

好ましい炭素源としては、糖、例えば単糖、二糖または多糖が挙げられる。非常に優れた炭素源の具体例としては、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースが挙げられる。糖を、糖蜜または糖精製の他の副産物のような複合化合物として培地に添加することも可能である。また、種々の炭素源の混合物を添加することも有利であろう。他の可能な炭素源としては、油脂、例えばダイズ油、ヒマワリ油、ラッカセイ油およびヤシ脂肪、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸および/またはリノール酸、アルコールおよび/または多価アルコール、例えばグリセロール、メタノールおよび/またはエタノール、および/または有機酸、例えば酢酸および/または乳酸が挙げられる。

窒素源は、通常、有機もしくは無機窒素化合物、またはこれらの化合物を含む物質である。窒素源の具体例には、液体もしくは気体形態のアンモニア、またはアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウム、硝酸塩(ニトラート)、尿素、アミノ酸または複合窒素源、例えばコーンスティープリカー、ダイズ粕、ダイズタンパク質、酵母エキス、肉エキスなどが含まれる。窒素源は単独で又は混合物として使用することができる。

培地内に存在しうる無機塩化合物には、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リンまたは硫酸塩が含まれる。

無機硫黄含有化合物、例えば硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、四チオン酸塩、チオ硫酸塩、スルフィド、または他の有機硫黄化合物、例えばメルカプタンおよびチオールを、硫黄含有ファインケミカル、特にメチオニンの製造のための硫黄源として使用することが可能である。

リン源としては、リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応ナトリウム含有塩を使用することが可能である。

金属イオンを溶解状態で維持するために、キレート化剤を培地に加えてもよい。特に適したキレート化剤には、ジヒドロキシフェノール、例えばカテコールもしくはプロトカテクアート、または有機酸、例えばクエン酸が含まれる。

微生物を培養するために本発明で使用する発酵培地は、通常、他の増殖因子、例えばビタミン、または増殖促進物質、例えばビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテナートおよびピリドキシンなどをも含む。増殖因子および塩は、しばしば、複合培地成分、例えば酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなどに由来する。さらに、適当な前駆物質を培地に添加することが可能である。培地内の化合物の厳密な組成は個々の実験に大きく左右され、各場合ごとに個別に決定される。培地の最適化に関する情報は、テキスト“Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach”(P.M. Rhodes, P.F. Stanbury編, IRL Press (1997) pp. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に記載されている。増殖培地は商業的供給者から、例えばStandard 1(Merck)またはBHI(ブレーンハートインフュージョン, DIFCO)などから得ることが可能である。

培地のすべての成分は、加熱(1.5barおよび121℃で20分間)または濾過滅菌により滅菌する。該成分は一緒に又は必要に応じて別々に滅菌することが可能である。培地成分のすべては培養開始時に存在していてもよく、あるいは、所望により、連続的に又はバッチ方式で加えてもよい。

培養温度は、通常、15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、実験中に一定に保ったり又は変化させることが可能である。培地のpHは5〜8.5、好ましくは約7.0であるべきである。培養のためのpHは、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水、または酸性化合物、例えばリン酸もしくは硫酸の添加により、培養中に制御することが可能である。消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルを使用することにより、発泡を抑制することが可能である。プラスミドの安定性を維持するために、選択的効果を有する適当な物質、例えば抗生物質を培地に加えることが可能である。酸素または酸素含有気体混合物、例えば空気を培養物内に通気することにより、好気的条件を維持する。培養温度は、通常、20℃〜40℃、好ましくは25℃〜40℃である。培養は、所望の産物の生成が最大になるまで継続する。この目的は、通常、10時間〜160時間以内に達成される。

このようにして得られた発酵ブロス、特に、多不飽和脂肪酸を含む発酵ブロスは、通常、7.5〜25重量%の乾燥重量を含有する。

ついで発酵ブロスを更に加工してもよい。必要性に応じて、分離方法、例えば遠心分離、濾過、デカントまたはこれらの方法の組合せにより、バイオマスを完全または部分的に発酵ブロスから取り出すことが可能であり、あるいは該ブロス内に完全に残してもよい。バイオマスをその分離後に加工することは有利である。

一方、該細胞を分離することなく、ロータリーエバポレーター、薄膜エバポレーター、流下フィルムエバポレーター、逆浸透またはナノ濾過(nanofiltration)のような公知方法により発酵ブロスを濃厚化または濃縮化することも可能である。最後に、この濃縮された発酵ブロスを加工して、その中に存在する脂肪酸を得ることが可能である。

該方法において得られた脂肪酸は、関心のある更なる産物の化学合成の出発物質としても適している。例えば、医薬、食品、動物飼料または化粧品の製造のために、それらを、互いに組合せて又は単独で使用することが可能である。

本発明は更に、Δ5-エロンガーゼを有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。この場合、該核酸配列によりコードされるΔ5-エロンガーゼは、最終的にジアシルグリセリドおよび/またはトリアシルグリセリド中に取り込まれる、脂肪酸分子内に少なくとも4個の二重結合を有するC20-脂肪酸を変換する。

有利な単離された核酸配列は、配列番号115、配列番号116、配列番号139、配列番号140、配列番号141または配列番号142に示す配列を有するアミノ酸配列の群から選ばれるアミノ酸配列を含みΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列である。

さらに有利な単離された核酸配列は、Δ5-エロンガーゼ活性を有し、かつ a)配列番号115および配列番号139、配列番号115および配列番号140、もしくは配列番号139および配列番号140、または b)配列番号116および配列番号141、配列番号116および配列番号142、もしくは配列番号141および配列番号142、または c)配列番号115および配列番号139および配列番号140、もしくは配列番号116および配列番号141および配列番号142 よりなる群から選ばれるアミノ酸配列の組合せを含むポリペプチドをコードする核酸配列である。

配列番号115 (NXXXHXXMYXYYX)、配列番号116 (HHXXXXWAWW)、配列番号139 (LHXXHH)、配列番号140 (TXXQXXQF)、配列番号141 (DTXFMV) および配列番号142 (TQAQXXQF)に示す配列は種々のエロンガーゼの保存領域に相当する。表2は、前記核酸配列中に存在するXで示されたアミノ酸の意味を示す(第3列)。種々の位置における好ましいアミノ酸もこの表中に見出されうる(第3列)。第1列は配列番号を示し、第2列は配列内の位置を示す。

特に有利なΔ5-エロンガーゼは配列番号116、配列番号141および/または配列番号142の配列のうち少なくとも1つを含む。

特に有利な単離された核酸配列は、 a)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号131もしくは配列番号133に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号84、配列番号86、配列番号114、配列番号132もしくは配列番号134に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号84、配列番号85、配列番号113、配列番号131もしくは配列番号133に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号131もしくは配列番号133に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる配列である。

本発明は更に、 a)配列番号69、配列番号81、配列番号111もしくは配列番号183に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号70、配列番号82、配列番号112もしくは配列番号184に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号70、配列番号82、配列番号112もしくは配列番号184に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号69、配列番号81、配列番号111もしくは配列番号183に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、 a)配列番号87もしくは配列番号105に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号88もしくは配列番号106に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号88もしくは配列番号106に対してアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号87もしくは配列番号105に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、 a)配列番号89もしくは配列番号97に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号90もしくは配列番号98に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号90もしくは配列番号98に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号89もしくは配列番号97に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、 a)配列番号91、配列番号93、配列番号99もしくは配列番号101に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号92、配列番号94、配列番号100もしくは配列番号102に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号92、配列番号94、配列番号100もしくは配列番号102に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号91、配列番号93、配列番号99もしくは配列番号101に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、 a)配列番号95もしくは配列番号103に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号96もしくは配列番号104に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号96もしくは配列番号104に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号95もしくは配列番号103に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、 a)配列番号107もしくは配列番号109に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号108もしくは配列番号110に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号108もしくは配列番号110に対してアミノ酸レベルで少なくとも50%の相同性を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号107もしくは配列番号109に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。

本発明は更に、本発明の配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号183の核酸配列を含んでなり、該核酸が1以上の調節シグナルに機能しうる形で連結されている遺伝子構築物に関する。また、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[= アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシド(allenoxide)シンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼの群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の追加的な生合成遺伝子が該遺伝子構築物内に存在してもよい。有利には、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ9-エロンガーゼまたはω3-デサチュラーゼの群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子が追加的に存在する。

本発明の方法において使用する核酸配列のすべては、有利には、真核生物、例えば植物、微生物または動物に由来する。該核酸配列は、好ましくは、Salmoniformes目(サケ目)、藻類、例えばMantoniella、Crypthecodinium、EuglenaまたはOstreococcus、真菌、例えばPhytophthora属、あるいはケイ藻類、例えばThalassiosiraまたはPhaeodactylum属に由来する。

ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼ活性を有するタンパク質をコードする該方法において使用する核酸は、有利には、単独で、または好ましくは核酸の発現を可能にする発現カセット(= 核酸構築物)と組合せて、生物(有利には植物または微生物)中に導入される。該核酸構築物は、例えばΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼのような酵素活性を有する2以上の核酸配列を含みうる。

該方法において使用する核酸を導入するためには、有利には、核酸を公知方法により増幅し連結させる。好ましくは、Pfu DNAポリメラーゼまたはPfu/Taq DNAポリメラーゼ混合物に関するプロトコールによる方法に従う。増幅すべき配列を考慮して、プライマーを選択する。有利には、増幅産物が開始コドンから終止コドンまでの全コード配列を含むよう、プライマーを選択すべきである。増幅後、増幅産物を適切に分析する。例えば、ゲル電気泳動分離を行うことが可能であり、ついで定量的および定性的分析を行う。ついで、増幅産物を、標準的なプロトコール(例えば、Qiagen)に従い精製することが可能である。精製された増幅産物のアリコートは後続のクローニング工程に利用可能である。適当なクローニングベクターは当業者に一般に公知である。これらには、特に、微生物系において複製可能なベクター、すなわち、主として、酵母または真菌における効率的なクローニングを保証し植物の安定な形質転換を可能にするベクターが含まれる。特に挙げなければならないものは、T-DNA媒介形質転換に適した種々のバイナリーおよび同時組込みベクター系である。そのようなベクター系は、一般には、それらが、アグロバクテリウム媒介形質転換に要求されるvir遺伝子とT-DNA境界決定配列(T-DNA境界)とを少なくとも含むことにより特徴づけられる。これらのベクター系は、有利には、更なるシス調節領域、例えばプロモーターおよびターミネーター配列、および/または適切に形質転換された生物を同定できるようにするための選択マーカーをも含む。同時組込みベクター系の場合には、vir遺伝子およびT-DNA配列は同一ベクター上に配置されるが、バイナリー系は少なくとも2つのベクター(それらのうちの一方はvir遺伝子を含有するがT-DNAを含有せず、もう一方はT-DNAを含有するがvir遺伝子を含有しない)に基づくものである。このことから、最後に挙げたベクターは、比較的小さく、取扱い易く、大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウムの両方において複製される。これらのバイナリーベクターには、pBIB-HYG、pPZP、pBecks、pGreen系列のベクターが含まれる。本発明においては、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTVおよびpCAMBIAが好ましく使用される。バイナリーベクターおよびそれらの使用に関する概説はHellensら, Trends in Plant Science (2000) 5, 446-451に見出される。該ベクターを調製するためには、まず、該ベクターを制限エンドヌクレアーゼで線状化し、ついで適当な方法で酵素的に修飾する。ついで該ベクターを精製し、アリコートをクローニング工程で使用する。クローニング工程においては、酵素的に切断された、そして適当な場合には精製された増幅産物を、リガーゼを使用して、同様にして既に調製されているベクター断片とクローニングする。この場合、個々の核酸構築物、またはベクターまたはプラスミド構築物は、1またはそれ以上のコード化遺伝子セグメントを有しうる。これらの構築物内のコード化遺伝子セグメントは、好ましくは、調節配列に機能しうる形で連結されている。調節配列には、特に、植物配列、例えば前記プロモーターおよびターミネーター配列が含まれる。該構築物は有利には、選択的条件下、微生物、特に大腸菌(E. coli)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)内で安定に増殖し、植物または微生物内への異種DNAの導入を可能にしうる。

該方法において使用する核酸、本発明の核酸および核酸構築物は、生物、例えば微生物または有利には植物内に、有利にはクローニングベクターを使用して導入され、したがって、Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), Chapter 6/7, p. 71-119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, KungおよびR. Wu編, Academic Press, 1993, 15-38; B. Jenesら, Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, KungおよびR. Wu編, Academic Press (1993), 128-143; Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225に公開および引用されているような植物の形質転換に使用されうる。したがって、該方法において使用する核酸、本発明の核酸および核酸構築物および/またはベクターを広範囲の生物、有利には植物の組換え改変に使用して、該生物をより良好および/またはより効率的なPUFA産生体とすることが可能である。

Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼタンパク質ならびに該方法において使用する他のタンパク質、例えばΔ12-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼまたはΔ4-デサチュラーゼタンパク質の改変を可能にする一連のメカニズムが存在し、この改変タンパク質により、植物、好ましくは油料作物または微生物における有利な多不飽和脂肪酸の収率、産生量および/または産生効率が直接的に影響されうる。遺伝子産物の量、そして最終的には一般式Iの化合物の産生量が増大するよう、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼタンパク質または遺伝子の数または活性が増強されうる。対応遺伝子の導入前に該化合物を生合成する活性および能を欠いている生物におけるde novo合成も可能である。これは、他のデサチュラーゼまたはエロンガーゼあるいは脂肪酸および脂質代謝の他の酵素との組合せにも同様に当てはまる。この場合、種々の分岐(divergent)配列、すなわち、DNA配列レベルで異なる配列の使用も有利かもしれず、あるいは時間経過と共に(例えば、種子または油貯蔵組織の成熟度に応じて)異なる遺伝子発現を可能にする遺伝子発現のためのプロモーターの使用も有利かもしれない。

Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子を単独で又は細胞内の他の遺伝子と組合せて生物内に導入することにより、最終産物への生合成の流れが促進されるばかりでなく、対応するトリアシルグリセロール組成を増大またはde novo生成することも可能となる。同様に、1以上の脂肪酸、油、極性および/または中性脂質の生合成に必要な栄養素の輸送に関与する他の遺伝子の数または活性を増大させることができ、その結果、細胞内または貯蔵区画内のこれらの前駆体、補因子または中間体の濃度が増加し、それにより、後記のとおり、細胞のPUFA産生能が更に増強される。該活性を最適化し、あるいはこれらの化合物の生合成に関与する1以上のΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子の数を増加させることにより、あるいはこれらの化合物の分解に関与する1以上の遺伝子の活性を破壊することにより、生物、有利には植物における脂肪酸および脂質分子の収率、産生量および/または産生効率の向上が可能となる。

本発明の方法において使用する単離された核酸分子はタンパク質またはその一部をコードするものであって、ここで、該タンパク質または個々のタンパク質またはその一部は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138または配列番号184に示すアミノ酸配列に対して十分な相同性を有するアミノ酸配列を含み、該タンパク質またはその一部がΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ活性を保持する。該核酸分子によりコードされるタンパク質またはその一部は、好ましくは、それらの必須酵素活性、および生物(有利には植物)における細胞膜または脂肪体の合成に必要な化合物の代謝に或いはこれらの膜を横切った分子の輸送に関与する能力を保持する。有利には、該核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138または配列番号184に示すアミノ酸配列に対して少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、80%または90%、最も好ましくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する。本発明の目的においては、相同性または相同はそれぞれ同一性または同一を意味すると理解される。

相同性は、アミノ酸または核酸配列領域の全体にわたって計算した。当業者は、種々の配列の比較のための種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムを入手可能である。ここでは、NeedlemanおよびWunsch、またはSmithおよびWatermanのアルゴリズムが、特に信頼しうる結果を与える。プログラムPileUp (J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153) またはプログラムGapおよびBestFit [NeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970) ならびにSmithおよびWaterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)](これらは、GCGソフトウェアパッケージ [Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部である)を、配列アライメントに使用した。パーセントとして前記で示した配列相同性値は、プログラムGAPおよび以下の設定を用いて配列領域全体にわたって計算したものである:ギャップ・ウェイト: 50、長さウェイト: 3、平均マッチ: 10.000および平均ミスマッチ: 0.000。特に示さない限り、配列アライメントのための標準設定として常にこれらの設定を用いた。

本発明の方法において使用するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼの必須酵素活性は、それらが、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号183の配列およびそれらの誘導体によりコードされるタンパク質/酵素と比較して少なくとも10%、好ましくは20%、特に好ましくは30%、非常に好ましくは40%の酵素活性を少なくとも保持し、したがって、生物、有利には植物または植物細胞における脂肪酸、脂肪酸エステル、例えばジアシルグリセリドおよび/またはトリアシルグリセリドの合成に必要な化合物の代謝ならびに膜を介した分子(少なくとも2個、有利には3個、4個、5個または6個の位置に二重結合を有する脂肪酸分子内のC18-、C20-またはC22-炭素鎖を意味する)の輸送に関与しうることを意味すると理解される。

該方法において有利に使用しうる核酸は、細菌、真菌、ケイ藻類、動物、例えばCaenorhabditisまたはOncorhynchus、あるいは植物、例えば藻類または蘚類、例えばShewanella、Physcomitrella、Thraustochytrium、Fusarium、Phytophthora、Ceratodon、Mantoniella、Ostreococcus、Isochrysis、Aleurita、Muscarioides、Mortierella、Borago、Phaeodactylum、Crypthecodinium属、特に、Oncorhynchus mykiss、Xenopus laevis、Ciona intestinalis、Thalassiosira pseudonona、Mantoniella squamata、Ostreococcus sp.、Ostreococcus tauri、Euglena gracilis、Physcomitrella patens、Phytophtora infestans、Fusarium graminaeum、Cryptocodinium cohnii、Ceratodon purpureus、Isochrysis galbana、Aleurita farinosa、Thraustochytrium sp.、Muscarioides viallii、Mortierella alpina、Borago officinalis、Phaeodactylum tricornutum、Caenorhabditis elegans、あるいは特に有利には、Oncorhynchus mykiss、Euglena gracilis、Thalassiosira pseudononaまたはCrypthecodinium cohnii属・種に由来する。

あるいは、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードし、かつ、有利には、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号183に示す核酸配列に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列を本発明の方法において使用することができる。

該方法において使用する核酸配列は、有利には、生物(例えば、微生物または植物)内での核酸の発現を可能にする発現カセット内に導入される。

これを行う場合には、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードする核酸配列を1以上の調節シグナル(有利には、遺伝子発現を増強するためのもの)に機能しうる形で連結する。これらの調節配列は、該遺伝子およびタンパク質の特異的発現を可能にすると意図される。宿主生物に応じて、これは、例えば、誘導が生じた後においてのみ、該遺伝子が発現および/または過剰発現されること、あるいはそれが直ちに発現および/または過剰発現されることを意味する。例えば、これらの調節配列は、誘導因子または抑制因子が結合する配列の形態をとり、核酸の発現を制御する。これらの新規調節配列に加えて、またはこれらの配列の代わりに、これらの配列の天然調節エレメントが実際の構造遺伝子の前に尚も存在することが可能であり、適当な場合には、それらの天然の調節が排除されて該遺伝子の発現が増強されるように該天然調節エレメントが遺伝的に改変されていてもよい。しかし、発現カセット(= 発現構築物 = 遺伝子構築物)は構築がより簡単でありうる。すなわち、核酸配列またはその誘導体の前に追加的な調節シグナルが導入されておらず、天然プロモーターおよびその調節は除去されていなかった。その代わりに、調節がもはや生じず、および/または遺伝子発現が増強するように天然調節配列が突然変異している。その活性を増強するために、さらにこれらの改変プロモーター自体、部分配列の形態の天然遺伝子の前に位置しうる(= 本発明において使用する核酸配列の一部を有するプロモーター)。さらに、有利には、該遺伝子構築物は、該核酸配列の発現の増強を可能にする、プロモーターに機能しうる形で連結された1以上のいわゆるエンハンサー配列をも含みうる。追加的な有利な配列、例えば更なる調節エレメントまたはターミネーター配列もDNA配列の3'末端に挿入されうる。Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼ遺伝子は、1以上のコピーの発現カセット(= 遺伝子構築物)として存在しうる。好ましくは、各発現カセット内に該遺伝子の唯一のコピーが存在する。この遺伝子構築物は宿主生物内で一緒に発現されうる。この場合、遺伝子構築物は1以上のベクターに含めて挿入することができ、細胞内に遊離形態で存在してもよいし、またはゲノム内に挿入されてもよい。発現されるべき遺伝子群が1つの遺伝子構築物内に一緒に存在する場合、ゲノム中への更なる遺伝子の挿入に有利である。

この場合、調節配列または調節因子は、前記のとおり、好ましくは、導入された遺伝子の遺伝子発現に対して正の効果を及ぼして、それを増強しうる。したがって、プロモーターおよび/またはエンハンサーのような強力な転写シグナルを使用することにより、有利には転写レベルで、調節エレメントの増強が生じうる。一方、それに加えて、例えばmRNAの安定性を改善することによる翻訳の増強も可能である。

本発明のもう1つの実施形態は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138または配列番号184に示すポリペプチドをコードし配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183またはその誘導体により定められる1以上の配列を含む1以上の遺伝子構築物である。前記のΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼタンパク質は、有利には、脂肪酸の不飽和化または伸長をもたらし、その基質は脂肪酸分子内に、有利には1個、2個、3個、4個、5個または6個の二重結合を有し、有利には18個、20個または22個の炭素原子を有するものである。このことは、1以上の調節シグナル(有利には、遺伝子発現を増強するためのもの)に機能しうる形で連結されたそれらのホモログ、誘導体または類似体にも同様に当てはまる。

本新規方法のための有利な調節配列は、例えば、cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRまたはλ-PLプロモーターのようなプロモーター内に存在し、グラム陰性細菌において有利に使用されるものである。更なる有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターamyおよびSPO2、酵母または真菌プロモーターADC1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADH、または植物プロモーターCaMV/35S [Franckら, Cell 21 (1980) 285-294]、PRP1 [Wardら, Plant. Mol. Biol. 22 (1993)]、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nos、またはユビキチンまたはファセオリン(Phaseolin)プロモーター内に存在する。この場合には、誘導性プロモーター、例えばEP-A-0 388 186(ベンゼンスルホンアミド誘導性)、Plant J. 2, 1992:397-404(Gatzら, テトラサイクリン誘導性)、EP-A-0 335 528(アブシジン酸誘導性)またはWO 93/21334(エタノールまたはシクロヘキセノール誘導性)に記載されているプロモーターも有利である。更なる適当な植物プロモーターは、ジャガイモの細胞質FBPアーゼプロモーターもしくはST-LSIプロモーター(Stockhausら, EMBO J. 8, 1989, 2445)、ダイズホスホリボシルピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(GenBankアクセッション番号U87999)またはEP-A-0 249 676に記載されている根粒特異的プロモーターである。

特に有利なプロモーターは、脂肪酸の生合成に関与する組織内の発現を可能にするプロモーターである。非常に特に有利なのは、種子特異的プロモーター、例えば、記載されているUSPプロモーターであるが、他のプロモーター、例えばLeB4、DC3、ファセオリン(phaseolin)またはナピン(napin)プロモーターもある。更なる特に有利なプロモーターは、単子葉または双子葉植物に使用しうる、米国特許第5,608,152号(アブラナナピンプロモーター)、WO 98/45461(アラビドプシスオレオシンプロモーター)、米国特許第5,504,200(Phaseolus vulgarisファセオリンプロモーター)、WO 91/13980(Brassica Bce4プロモーター)、Baeumleinら, Plant J., 2, 2, 1992:233-239(マメ科植物由来のLeB4プロモーター)(これらのプロモーターは双子葉植物に適している)に記載されている種子特異的プロモーターである。単子葉植物に適したプロモーターの具体例は、オオムギlpt-2またはlpt-1プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、オオムギホルデインプロモーターおよび他の適当なプロモーター(WO 99/16890に記載のもの)である。

原理上は、すべての天然プロモーターをそれらの調節配列(例えば、前記のもの)と共に本新規方法に使用することが可能である。また、合成プロモーターを追加的に又は単独で使用することは、例えばWO 99/16890に記載されているとおり、特にそれが種子特異的発現を媒介する場合には、可能であり有利である。

特に高いPUFA含量を特にトランスジェニック植物において得るためには、有利には、PUFA生合成遺伝子を油料作物において種子特異的に発現させるべきである。この目的のため、種子特異的プロモーター、あるいは胚および/または内胚乳において活性なプロモーターを使用することが可能である。原理上は、種子特異的プロモーターは双子葉植物および単子葉植物の両方から単離されうる。好ましいプロモーターを以下に挙げる:USP(= 未知種子タンパク質(unknown seed protein))およびビシリン(vicilin)(Vicia faba) [Baeumleinら, Mol. Gen Genet., 1991, 225(3)]、ナピン(アブラナ) [米国特許第5,608,152号]、アシルキャリアタンパク質(アブラナ) [米国特許第5,315,001号およびWO 92/18634]、オレオシン(Arabidopsis thaliana)[WO 98/45461およびWO 93/20216]、ファセオリン(Phaseolus vulgaris)[米国特許第5,504,200号]、Bce4 [WO 91/13980]、レグミネス(legumines)B4(LegB4プロモーター) [Baeumleinら, Plant J., 2,2, 1992]、Lpt2およびlpt1(オオムギ) [WO 95/15389およびWO95/23230]、コメ、トウモロコシおよびコムギ由来の種子特異的プロモーター [WO 99/16890]、Amy32b、Amy 6-6およびアレウレイン(aleurain) [米国特許第5,677,474号]、Bce4(アブラナ) [米国特許第5,530,149号]、グリシニン(ダイズ) [EP 571 741]、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(ダイズ) [JP 06/62870]、ADR12-2(ダイズ) [WO 98/08962]、イソクエン酸リアーゼ(アブラナ) [米国特許第5,689,040号]またはα-アミラーゼ(オオムギ) [EP 781 849]。

植物遺伝子発現は化学誘導性プロモーターによっても促進されうる(Gatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108の総説を参照されたい)。化学誘導性プロモーターは、遺伝子発現を時間特異的に生じさせたい場合に特に適している。そのようなプロモーターの具体例としては、サリチル酸誘導性プロモーター(WO 95/19443)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導性プロモーターが挙げられる。

複数の世代にわたるトランスジェニック植物内への生合成遺伝子の安定な組込みを保証するためには、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼをコードし該方法において使用する核酸のそれぞれは、別々のプロモーター(好ましくは、もう一方のプロモーターとは異なるプロモーター)の制御下で発現されるべきである。なぜなら、反復的配列モチーフはT-DNAの不安定化または組換え事象を招きうるからである。この場合、有利には、プロモーターの後に、発現されるべき核酸の挿入のための適当な切断部位が有利にはポリリンカー中に位置し、適当な場合には、ポリリンカーの後にターミネーター配列が位置するよう、発現カセットを構築する。5個までの遺伝子が1つの構築物において組み合わされ、トランスジェニック植物内に導入されて発現されうるよう、この配列は、数回、好ましくは3回、4個または5回反復している。有利には、該配列は3回まで反復している。核酸配列を発現させるために、後者を、適当な切断部位を介してプロモーターの後に(例えば、ポリリンカー内に)挿入する。有利には、各核酸配列はそれ自身のプロモーターを有し、適当な場合には、それ自身のターミネーター配列を有する。そのような有利な構築物は、例えばDE 101 02 337またはDE 101 02 338に開示されている。一方、プロモーターの後に、そして適当な場合にはターミネーター配列の前に、複数の核酸配列を挿入することも可能である。この場合、発現カセット内の挿入核酸の挿入部位または配列は決定的に重要ではない。すなわち、核酸配列は、その発現が実質的に影響されない限り、該カセット内の最初または最後の位置に挿入されうる。有利には、種々のプロモーター、例えばUSP、LegB4またはDC3プロモーター、および種々のターミネーター配列を発現カセット内で使用することが可能である。一方、1つのタイプのプロモーターのみを該カセット内で使用することも可能である。しかし、これは望ましくない組換え事象を招きうる。

前記のとおり、有利には、導入された遺伝子の転写は、導入された生合成遺伝子の3'末端(終止コドンの後ろ)の適当なターミネーター配列により終結されるべきである。この場合に使用しうる配列の一例は、OCS1ターミネーター配列である。プロモーターの場合と同様に、各遺伝子ごとに異なるターミネーター配列を使用すべきである。

前記のとおり、遺伝子構築物は、生物内に導入すべき更なる遺伝子をも含みうる。調節遺伝子、例えば誘導因子の遺伝子、抑制因子の遺伝子、または自身の酵素活性により生合成経路の1以上の遺伝子の調節に関与する酵素の遺伝子を宿主生物内に導入し、それを該生物内で発現させることが可能であり有利である。これらの遺伝子は異種または同種由来でありうる。さらに、有利には、脂肪酸または脂質代謝の更なる生合成遺伝子が核酸構築物または遺伝子構築物内に存在しうる。しかし、これらの遺伝子は1以上の更なる核酸構築物上にも位置しうる。好ましくは使用される脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子は、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[= アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシド(allenoxide)シンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼもしくは脂肪酸エロンガーゼまたはそれらの組合せよりなる群から選ばれる遺伝子である。特に有利な核酸配列は、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼよりなる群から選ばれる脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子である。

この場合、前記核酸または遺伝子を、前記と同様に、他のエロンガーゼおよびデサチュラーゼと組合せて発現カセット内にクローニングし、アグロバクテリウムを使用する植物の形質転換に使用することが可能である。

ここでは、調節配列または調節因子は、前記のとおり、好ましくは、導入された発現遺伝子に対して正の効果を有し、それを増強しうる。したがって、調節エレメントの増強は、有利には、プロモーターおよび/またはエンハンサーのような強力な転写シグナルを使用することにより、転写レベルで生じうる。しかし、例えばmRNAの安定性を改善することにより、翻訳の増強も可能である。原理上は、発現カセットは、植物内への導入のために直接的に使用することが可能であり、あるいはベクター内に導入してもよい。

これらの有利なベクター、好ましくは発現ベクターは、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードし該方法において使用される核酸、あるいは核酸構築物を含み、該核酸は、単独で、あるいはアシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼのような脂肪酸または脂質代謝の更なる生合成遺伝子と組合せて使用される。この場合に用いる「ベクター」なる語は、それに結合している別の核酸を輸送しうる核酸分子を意味する。1つのタイプのベクターは、追加的なDNAセグメントがその中に連結されうる環状二本鎖DNAループである「プラスミド」である。もう1つのタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノム内に連結されることが可能である。あるベクターは、それが導入された宿主細胞内で自律複製しうる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクター)。他のベクターは、有利には、それらが宿主細胞内に導入された際に宿主細胞のゲノム内に組込まれ、したがって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、機能しうる形でそれが連結されている遺伝子の発現を制御しうる。これらのベクターはこの文脈においては「発現ベクター」と称される。通常、DNA組換え技術に適した発現ベクターはプラスミドの形態をとる。本明細書においては、「プラスミド」および「ベクター」は互換的に用いられうる。なぜなら、プラスミドは、最も頻繁に使用されるベクターの形態だからである。しかし、本発明は、同様の機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクターをも含むと意図される。さらに、「ベクター」なる語は、当業者に公知の他のベクター、例えばファージ、ウイルス、例えばSV40、CMV、TMV、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、ファージミド、コスミド、直鎖状または環状DNAを含むと意図される。

該方法において有利に使用される組換え発現ベクターは、後記の核酸または前記の遺伝子構築物を、宿主細胞内で使用される核酸を発現するのに適した形態で含む。このことは、該組換え発現ベクターが、発現させる核酸配列に機能しうる形で連結された、発現に使用する宿主細胞に基づいて選ばれる1以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクターにおいては、「機能しうる形で連結(された)」は、関心のあるヌクレオチド配列が該ヌクレオチド配列の発現が可能であるように調節配列に結合されており、それらが互いに結合していて、その両方の配列が、例えば、in vitro転写/翻訳系において、あるいはベクターを宿主細胞内に導入する場合には宿主細胞において、該配列から予想される機能を果たすことを意味する。「調節配列」なる語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包むと意図される。これらの調節配列は、例えばGoeddel: Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990) に記載されている。あるいは、GruberおよびCrosby, in: Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnolgy, CRC Press, Boca Raton, Florida, GlickおよびThompson編, Chapter 7, 89-108およびそれに引用されている参考文献を参照されたい。調節配列には、多数のタイプの宿主細胞内でヌクレオチド配列の構成的発現を制御する調節配列、および特定の条件下で特定の宿主細胞のみにおいてヌクレオチド配列の直接的発現を制御する調節配列が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換すべき宿主細胞の選択、タンパク質の所望の発現レベルなどのような要因に左右されうることが当業者に公知である。

使用する組換え発現ベクターが、原核または真核細胞におけるΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼの発現のために設計されうる。簡便性の理由によりベクター構築の中間工程は微生物において行うことが多いため、これが好都合である。例えば、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子は、細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母および他の真菌細胞(Romanos, M.A.ら, (1992) ”Foreign gene expression in yeast: a review”, Yeast 8:423-488; van den Hondel, C.A.M.J.J.ら, (1991) ”Heterologous gene expression in filamentous fungi”, in: More Gene Manipulations in Fungi, J.W. Bennet & L.L. Lasure,編, pp. 396-428: Academic Press: San Diego; およびvan den Hondel, C.A.M.J.J., & Punt, P.J. (1991) ”Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi, in: Applied Molecular Genetics of Fungi, Peberdy, J.F.ら編, pp. 1-28, Cambridge University Press: Cambridgeを参照されたい)、藻類(Falciatoreら, 1999, Marine Biotechnology.1, 3:239-251)、以下のタイプの繊毛虫:Holotrichia、Peritrichia、Spirotrichia、Suctoria、Tetrahymena、Paramecium、Colpidium、Glaucoma、Platyophrya、Potomacus、Desaturaseudocohnilembus、Euplotes、EngelmaniellaおよびStylonychia、特にStylonychia lemnae属(WO 98/01572に記載されている形質転換方法においてベクターを使用するもの)、および好ましくは多細胞植物の細胞(Schmidt, R.およびWillmitzer, L. (1988) ”High efficiency Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation of Arabidopsis thaliana leaf and cotyledon explants” Plant Cell Rep.:583-586; Plant Molecular Biology and Biotechnology, C Press, Boca Raton, Florida, Chapter 6/7, pp.71-119 (1993); F.F. White, B. Jenesら, Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, KungおよびR. Wu編, Academic Press (1993), 128-43; Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225 (およびそれらに引用されている参考文献))において発現されうる。適当な宿主細胞は更に、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。別法として、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用してin vitroで転写され翻訳されうる。

ほとんどの場合、原核生物におけるタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質の発現を制御する構成性または誘導性プロモーターを含むベクターの使用を伴う。典型的な融合発現ベクターとしては、とりわけ、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith, D.B., およびJohnson, K.S. (1988) Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, NJ)が挙げられ、これらの場合、それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース-E結合タンパク質およびプロテインAが組換え標的タンパク質に融合される。

適当な誘導性非融合大腸菌(E. coli)発現ベクターの具体例としては、とりわけ、pTrc(Amannら (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studierら, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89)が挙げられる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、宿主RNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの転写に基づく。ベクターpET 11dからの標的遺伝子発現は、共発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)により媒介されるT7-gn10-lac融合プロモーターの転写に基づく。このウイルスポリメラーゼは、lacUV5プロモーターの転写制御下にT7 gn1遺伝子を含有する常在λプロファージから宿主株BL21 (DE3)またはHMS174 (DE3)により供給される。

原核生物に適した他のベクターは当業者に公知である。これらのベクターとしては、例えば、大腸菌(E. coli)の場合にはpLG338、pACYC184、pBR系列、例えばpBR322、pUC系列、例えばpUC18またはpUC19、M113mp系列、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11またはpBdCI、Streptomycesの場合にはpIJ101、pIJ364、pIJ702またはpIJ361、Bacillusの場合にはpUB110、pC194またはpBD214、Corynebacteriumの場合にはpSA77またはpAJ667が挙げられる。

もう1つの実施形態においては、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S. cerevisiaeにおける発現のためのベクターの具体例には、pYeDesaturasec1(Baldariら (1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa(KurjanおよびHerskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら (1987) Gene 54:113-123)およびpYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, CA)が含まれる。糸状菌のような他の真菌における使用に適したベクターおよびベクター構築方法には、van den Hondel, C.A.M.J.J., & Punt, P.J. (1991) ”Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi, in: Applied Molecular Genetics of fungi, J.F. Peberdyら編, pp. 1-28, Cambridge University Press: CambridgeまたはMore Gene Manipulations in Fungi [J.W. Bennet & L.L. Lasure編, pp. 396-428: Academic Press: San Diego]に詳細に記載されているものが含まれる。更なる適当な酵母ベクターとしては、例えばpAG-1、YEp6、YEp13またはpEMBLYe23が挙げられる。

別法として、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼは、バキュロウイルスベクターを使用して昆虫細胞内で発現されうる。培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)内でのタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルス発現ベクターには、pAc系列(Smithら (1983) Mol. Cell Biol.. 3:2156-2165)およびpVL系列(LucklowおよびSummers (1989) Virology 170:31-39)が含まれる。

前記ベクターは、可能である適当なベクターのごく一部に過ぎない。更なるプラスミドは当業者に公知であり、例えばCloning Vectors(Pouwels, P.H.ら編, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に記載されている。原核および真核細胞のための更なる適当な発現系に関しては、Sambrook, J., Fritsch, E.F.およびManiatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2. edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989のChapters 16および17を参照されたい。

該方法のもう1つの実施形態においては、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼは単細胞植物細胞(例えば、藻類)(Falciatoreら, 1999, Marine Biotechnology 1 (3):239-251およびそれに引用されている参考文献を参照されたい)および高等植物の植物細胞(例えば、種子植物類、例えば耕作作物)において発現されうる。植物発現ベクターの具体例には、Becker, D., Kemper, E., Schell, J.およびMasterson, R. (1992) ”New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197; ならびにBevan, M.W. (1984) ”Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”, Nucl. Acids Res. 12:8711-8721; Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, KungおよびR. Wu編, Academic Press, 1993, p. 15-38に詳細に記載されているものが含まれる。

植物発現カセットは、好ましくは、各配列がその機能(例えば、転写終結)を果たしうるよう機能しうる形で連結された、植物細胞内での遺伝子の発現を制御しうる調節配列(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。好ましいポリアデニル化シグナルは、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)T-DNAに由来するもの、例えばオクトピンシンターゼとして公知であるTiプラスミドpTiACH5の遺伝子3(Gielenら, EMBO J. 3 (1984) 835以下参照)またはその機能的等価体であるが、植物において機能的に活性であるすべての他のターミネーター配列も適している。

植物遺伝子発現は転写レベルには限定されないことが非常に多いため、植物発現カセットは、好ましくは、タンパク質/RNA比を増加させるタバコモザイクウイルス5'非翻訳リーダー配列を増強する過剰駆動(overdrive)配列(Gallieら, 1987, Nucl. Acids Research 15:8693-8711)のような翻訳エンハンサーなどの、機能しうる形で連結された他の配列を含む。

前記のとおり、植物遺伝子発現は、正しい時機に又は細胞もしくは組織特異的に遺伝子発現を誘発する適当なプロモーターに機能しうる形で連結されていなければならない。利用可能なプロモーターは構成性プロモーター(Benfeyら, EMBO J. 8 (1989) 2195-2202)、例えば植物ウイルス、例えば35S CaMV(Franckら, Cell 21 (1980) 285-294)、19S CaMV(米国特許第5352605号およびWO 84/02913を参照されたい)に由来するもの、または植物プロモーター、例えば米国特許第4,962,028号に記載されているRubiscoサブユニットのプロモーターである。

植物遺伝子発現カセット中で機能しうる形で連結して使用するための他の好ましい配列は、その遺伝子産物を、その対応する細胞区画、例えば液胞、核、すべてのタイプの色素体、例えばアミロプラスト、葉緑体、有色体、細胞外腔、ミトコンドリア、小胞体、エライオプラスト、ペルオキシソームおよび他の植物細胞区画へ導くために必要な標的化配列(Kermode, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4 (1996) 285-423の総説およびそれに引用されている参考文献を参照されたい)である。

前記のとおり、植物遺伝子発現は化学誘導性プロモーターによっても達成されうる(Gatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108の総説を参照されたい)。化学誘導性プロモーターは、遺伝子発現を時間特異的に生じさせたい場合に特に適している。そのようなプロモーターの具体例としては、サリチル酸誘導性プロモーター(WO 95/19443)、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Gatzら (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導性プロモーターが挙げられる。

生物的または非生物的ストレス条件に応答するプロモーター、例えば病原体誘導性PRP1遺伝子プロモーター(Wardら, Plant. Mol. Biol. 22 (1993) 361-366)、熱誘導性トマトhsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号)、低温誘導性ジャガイモαアミラーゼプロモーター(WO 96/12814)または創傷誘導性pinIIプロモーター(EP-A-0 375 091)も適している。

特に好ましいのは、脂肪酸、脂質および油の生合成が生じる組織および器官、種子細胞、例えば内胚乳および発生中の胚の細胞において遺伝子発現を引き起こすプロモーターである。適当なプロモーターは、アブラナナピンプロモーター(米国特許第5,608,152号)、Vicia faba USPプロモーター(Baeumleinら, Mol Gen Genet, 1991, 225 (3):459-67)、Arabidopsisオレオシンプロモーター(WO 98/45461)、Phaseolus vulgarisファセオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号)、Brassica Bce4プロモーター(WO 91/13980)またはレグミン(legumine)B4プロモーター(LeB4; Baeumleinら, 1992, Plant Journal, 2 (2):233-9)、およびトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、イネなどのような単子葉植物において種子特異的発現を引き起こすプロモーターである。注目に値する適当なプロモーターは、オオムギlpt2またはlpt1遺伝子プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、あるいはオオムギホルデイン遺伝子、イネグルテリン遺伝子、イネオリジン遺伝子、イネプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝子、トウモロコシゼイン遺伝子、エンバクグルテリン遺伝子、モロコシカシリン遺伝子またはライムギセカリン遺伝子(これらはWO 99/16890に記載されている)由来のプロモーターである。

特に、本方法において使用するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼの多重並行発現を引き起こすことが望ましい場合がある。そのような発現カセットは、複数の個々の発現構築物の同時形質転換により、あるいは好ましくは、1つの構築物上で複数の発現カセットを組合せることにより、導入されうる。また、複数のベクターを、各場合に複数の発現カセットで形質転換し、ついで宿主細胞内に導入することが可能である。

同様に特に適している他のプロモーターは、色素体特異的発現を引き起こすプロモーターである。なぜなら、色素体は、脂質生合成の前駆体およびいくつかの最終産物が合成される区画に相当するからである。適当なプロモーター、例えばウイルスRNAポリメラーゼプロモーターはWO 95/16783およびWO 97/06250に記載されており、アラビドプシス由来のclpPプロモーターはWO 99/46394に記載されている。

ベクターDNAは、通常の形質転換またはトランスフェクション技術により原核および真核細胞内に導入することが可能である。この場合に用いる「形質転換」および「トランスフェクション」、接合および形質導入なる用語は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞内に導入するための当技術分野で公知の多数の方法、例えばリン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈法、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、自然受容、化学的媒介導入、エレクトロポレーションまたはパーティクルボンバードメントを含むと意図される。植物細胞を含む宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのための適当な方法は、Sambrookら. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual., 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989) および他の実験参考書、例えばMethods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, GartlandおよびDavey編, Humana Press, Totowa, New Jerseyに見出されうる。

原理上は、本発明の核酸、本発明の遺伝子産物または本発明のベクターの取り込みに適した宿主細胞はすべての原核または真核生物である。有利に使用される宿主生物は、真菌または酵母のような微生物、あるいは植物細胞、好ましくは植物または植物部分である。真菌、酵母または植物が好ましく使用され、特に好ましくは植物、非常に特に好ましくは、脂質化合物を豊富に含む油料作物のような植物、例えばアブラナ、オオマツヨイグサ、タイマ、アザミ、ラッカセイ、カノラ、亜麻仁、ダイズ、ベニバナ、ヒマワリ、ルリチシャ、または例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ワタ、キャッサバ、コショウ、マンジュギクなどの植物、ナス科(Solanacea)植物、例えばジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、ビシア(Vicia)種、エンドウ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、Salix種、高木(アブラヤシ、ココナッツ)および多年生草および飼料作物である。本発明の特に好ましい植物は、油料作物、例えばダイズ、ラッカセイ、アブラナ、カノラ、亜麻仁、タイマ、オオマツヨイグサ、ヒマワリ、ベニバナ、樹木(アブラヤシ、ココナッツ)である。

本発明は更に、Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記の単離された核酸配列であって、該核酸配列によりコードされるエロンガーゼが、1個の二重結合を有するC16-およびC18-脂肪酸、有利には、1個のΔ6二重結合を有する多不飽和C18-脂肪酸ならびに1個のΔ5二重結合を有する多不飽和C20-脂肪酸を変換するものである、該核酸配列にも関する。C22-脂肪酸は伸長されない。

有利な単離された核酸配列は、Δ5-エロンガーゼ活性を有し、かつ配列番号115、配列番号116、配列番号139、配列番号140、配列番号141または配列番号142に示す配列を有するアミノ酸配列の群から選ばれるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列である。

更なる有利な単離された核酸配列は、Δ5-エロンガーゼ活性を有し、かつ a)配列番号115および配列番号139、配列番号115および配列番号140、もしくは配列番号139および配列番号140、または b)配列番号116および配列番号141、配列番号116および配列番号142、もしくは配列番号141および配列番号142、または c)配列番号115および配列番号139および配列番号140、もしくは配列番号116および配列番号141および配列番号142 よりなる群から選ばれるアミノ酸配列の組合せを含むポリペプチドをコードする核酸配列である。

Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする好ましい核酸配列は、有利には、前記のアミノ酸配列を含む。後者は表2に、より詳細に記載されている。

特に有利な単離された核酸配列は、以下: a)配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号131もしくは配列番号133に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号84、配列番号86、配列番号114、配列番号132もしくは配列番号134に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号84、配列番号86、配列番号114、配列番号132もしくは配列番号134に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号131もしくは配列番号133に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる配列である。

本発明は更に、Δ6-エロンガーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼまたはΔ12-デサチュラーゼをコードする、以下に列挙する核酸配列に関する。

更なる有利な単離された核酸配列は、以下: a)配列番号69、配列番号81、配列番号111もしくは配列番号183に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号70、配列番号82、配列番号112もしくは配列番号184に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号70、配列番号82、配列番号112もしくは配列番号184に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号69、配列番号81、配列番号111もしくは配列番号183に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる配列である。

以下: a)配列番号87もしくは配列番号105に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号88もしくは配列番号106に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号88もしくは配列番号106に対してアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号87もしくは配列番号105に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列。

以下: a)配列番号89もしくは配列番号97に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号90もしくは配列番号98に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号90もしくは配列番号98に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号89もしくは配列番号97に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列。

以下: a)配列番号91、配列番号93、配列番号99もしくは配列番号101に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号92、配列番号94、配列番号100もしくは配列番号102に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号92、配列番号94、配列番号100もしくは配列番号102に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号91、配列番号93、配列番号99もしくは配列番号101に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列。

以下: a)配列番号95もしくは配列番号103に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号96もしくは配列番号104に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号96もしくは配列番号104に対してアミノ酸レベルで少なくとも40%の相同性を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号95もしくは配列番号103に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列。

以下: a)配列番号107もしくは配列番号109に示す配列を有する核酸配列、 b)遺伝暗号の縮重の結果として、配列番号108もしくは配列番号110に示すアミノ酸配列から誘導されうる核酸配列、または c)配列番号108もしくは配列番号110に対してアミノ酸レベルで少なくとも50%の相同性を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする、配列番号107もしくは配列番号109に示す核酸配列の誘導体、 よりなる群から選ばれる、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列。

本発明の前記核酸は、PUFAを合成しうる生物、例えば非ヒト動物、繊毛虫、真菌、植物、例えば藻類または渦鞭毛藻類に由来する。

単離された前記核酸配列は、有利には、サルモニフォルメス(Salmoniformes)、ゼノプス(Xenopus)またはシノア(Ciona)、ケイ藻タラッシオシラ(Thalassiosira)属またはクリプセコジニウム(Crypthecodinium)属、あるいはプラシノフィセエ(Prasinophyceae)科、例えばオストレオコッカス(Ostreococcus)属、あるいはユーグレナセエ(Euglenaceae)科、例えばユーグレナ(Euglena)属、あるいはフィチアセエ(Pythiaceae)科、例えばフィトフトラ(Phytophthora)属に由来する。

本発明は更に、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記のような単離された核酸配列であって、該核酸配列によりコードされるω3-デサチュラーゼが、2個、3個、4個または5個の二重結合を有するC18-、C20-およびC22-脂肪酸、あるいは有利には、2個または3個の二重結合を有する多不飽和C18-脂肪酸、および2個、3個または4個の二重結合を有する多不飽和C20-脂肪酸を変換するものである、前記核酸配列に関する。4個または5個の二重結合を有するC22-脂肪酸も不飽和化される。

前記のとおり、本発明は更に、Δ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼを有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列に関する。ここで、これらの核酸配列によりコードされるΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼは、1個、2個、3個、4個または5個の二重結合を有するC18-、C20-およびC22-脂肪酸、そして有利には、1個、2個または3個の二重結合を有する多不飽和C18-脂肪酸、例えばC18:1Δ9、C18:2Δ9,12またはC18:3Δ9,12,15、3個または4個の二重結合を有する多不飽和C20-脂肪酸、例えばC20:3Δ8,11,14またはC20:4Δ8,11,14,17、あるいは4個または5個の二重結合を有する多不飽和C22-脂肪酸、例えばC22:4Δ7,10,13,16またはC22:5Δ7,10,13,16,19を変換する。該脂肪酸は、有利には、リン脂質またはCoA-脂肪酸エステル、有利にはCoA-脂肪酸エステルにおいて不飽和化される。

有利な実施形態においては、本発明の文脈で用いる「核酸(分子)」なる語は、遺伝子コード領域の3'および5'末端の非翻訳配列、すなわち、コード領域の5'末端の上流の少なくとも500、好ましくは200、特に好ましくは100ヌクレオチドの配列、および遺伝子コード領域の3'末端の下流の、少なくとも100、好ましくは50、特に好ましくは20ヌクレオチドの配列を更に含む。「単離された」核酸分子は、該核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されている。「単離された」核酸は、好ましくは、該核酸が由来する生物のゲノムDNA内の該核酸に天然で隣接している配列(例えば、該核酸の5'および3'末端に位置する配列)を有さない。種々の実施形態においては、単離されたΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ分子は、例えば、該核酸が由来する細胞のゲノムDNA内の該核酸分子に天然で隣接している約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含んでもよい。

本方法において使用する核酸分子、例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183のヌクレオチド配列またはそれらの一部を有する核酸分子は、標準的な分子生物学的技術および本明細書に記載の配列情報を用いて単離することが可能である。また、例えば、相同配列、または相同で保存された配列領域は、比較アルゴリズムを使用することによりDNAまたはアミノ酸レベルで同定することが可能である。それらは、本方法において使用しうる他の核酸配列を単離するためのハイブリダイゼーションプローブおよび標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているもの)に用いることが可能である。さらに、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183の完全配列またはそれらの一部を含む核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することが可能であり、この場合、この配列またはその一部に基づくオリゴヌクレオチドプライマー(例えば、完全配列またはその一部を含む核酸分子は、この同じ配列に基づいて作製されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる)を使用する。例えば、mRNAは細胞から単離することができ(例えば、Chirgwinら (1979) Biochemistry 18:5294-5299のチオシアン酸グアニジン抽出法により)、cDNAは逆転写酵素(例えば、Gibco/BRL, Bethesda, MDから入手可能なモロニーMLV逆転写酵素、またはSeikagaku America, Inc., St.Petersburg, FLから入手可能なAMV逆転写酵素)により単離することができる。ポリメラーゼ連鎖反応による増幅のための合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示す配列の1つに基づいて、あるいは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138もしくは配列番号184に示すアミノ酸配列を利用して、作製することが可能である。本発明の核酸は、鋳型としてのcDNAまたはゲノムDNAと適当なオリゴヌクレオチドプライマーとを使用する標準的なPCR増幅技術により増幅することが可能である。このようにして増幅した核酸を適当なベクター内にクローニングし、DNA配列分析により特徴づけすることが可能である。デサチュラーゼヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成装置を使用する標準的な合成法により作製することが可能である。

配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183の配列を有するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ核酸配列のホモログとは、例えば、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示すヌクレオチド配列またはそのホモログ、誘導体もしくは類似体に対して少なくとも約50または60%、好ましくは少なくとも約60または70%、より好ましくは少なくとも70または80%、90%または95%、より一層好ましくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性または相同性を有する対立遺伝子変異体を意味する。さらに、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示すヌクレオチド配列の1つ又はその一部に、例えばストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の単離された核酸分子が含まれる。その一部は、本発明においては、少なくとも25塩基対(= bp)、50 bp、75 bp、100 bp、125 bpまたは150 bp、好ましくは少なくとも175 bp、200 bp、225 bp、250 bp、275 bpまたは300 bp、特に好ましくは350 bp、400 bp、450 bp、500 bpまたはそれ以上の塩基対がハイブリダイゼーションに使用されることを意味すると理解される。完全配列を使用することも可能であり有利である。対立遺伝子変異体には、特に、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183に示す配列に対するヌクレオチドの欠失、挿入または置換により得られうる機能的変異体が含まれるが、合成された生成タンパク質の酵素活性は、有利には、1以上の遺伝子の挿入に関して保持されることが意図される。Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼの酵素活性を保持する(すなわち、その活性が実質的に減少していない)タンパク質とは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183によりコードされるタンパク質と比較して、元の酵素活性の少なくとも10%、好ましくは20%、特に好ましくは30%、非常に特に好ましくは40%を有するタンパク質を意味する。相同性は、アミノ酸または核酸配列領域の全体にわたって計算した。当業者は、種々の配列の比較のための種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムを入手可能である。ここでは、NeedlemanおよびWunsch、またはSmithおよびWatermanのアルゴリズムが、特に信頼しうる結果を与える。プログラムPileUp (J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153) またはプログラムGapおよびBestFit [NeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970) ならびにSmithおよびWaterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)](これらは、GCGソフトウェアパッケージ [Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部である)を、配列アライメントに使用した。パーセントとして前記で示した配列相同性値は、プログラムGAPおよび以下の設定を用いて配列領域全体にわたって計算したものである:ギャップ・ウェイト: 50、長さウェイト: 3、平均マッチ: 10.000および平均ミスマッチ: 0.000。特に示さない限り、配列アライメントのための標準設定として常にこれらの設定を用いた。

配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183のホモログは、例えば細菌、真菌および植物ホモログ、末端切断型配列、一本鎖DNAまたはRNA(コードおよび非コードDNA配列のもの)をも意味する。

配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137もしくは配列番号183のホモログは、誘導体、例えばプロモーター変異体をも意味する。プロモーターの機能または活性が悪影響を受けることなく、示されているヌクレオチド配列の上流のプロモーターは1以上のヌクレオチド置換、挿入および/または欠失により改変されうる。さらに、プロモーター配列の改変はそれらの活性を増強し、それらはより活性なプロモーター(異種生物由来のものを含む)により完全に置換されてもよい。

脂質および脂肪酸、PUFA補因子ならびに酵素の代謝または膜を横切る親油性化合物の輸送に関与するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有する前記の核酸およびタンパク質分子は、本発明の方法においては、トランスジェニック生物、有利には植物、例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トリチカレ、イネ、オオムギ、大豆、ラッカセイ、ワタ、Linum種、例えば亜麻仁またはアマ、Brassica種、例えばアブラナ、カノラおよびカブ、コショウ、ヒマワリ、ルリチシャ、オオマツヨイグサおよびマンジュギク、ナス科植物、例えばジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、Vicia種、エンドウ、キャッサバ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、チャ)、Salix種、高木(アブラヤシ、ココナッツ)および多年生草および飼料作物におけるPUFAの産生のモジュレーションのために、直接的に使用され(例えば、脂肪酸生合成タンパク質の過剰発現または最適化が改変物における脂肪酸の収率、産生量および/または産生効率に直接的な影響を及ぼす場合)、および/または、PUFAの収率、産生量および/または産生効率の向上または望ましくない化合物の低減をもたらす間接的な影響を及ぼしうる(例えば、脂質および脂肪酸、補因子および酵素の代謝のモジュレーションが該細胞内での望ましい化合物の収率、産生量および/または産生効率または組成の改変を招き、今度はこれが1以上の脂肪酸の産生に影響を及ぼしうる)。

種々の前駆体分子と生合成酵素との組合せは、脂質組成に決定的な影響を及ぼし、種々の脂肪酸分子の産生をもたらす。なぜなら、多不飽和脂肪酸(= PUFA)はトリアシルグリセロール内だけでなく、膜脂質内にも取り込まれるからである。

Brassicaceae、Boraginaceae、PrimulaceaeまたはLinaceaeは、PUFA、例えばステアリドン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の産生に特に適している。亜麻仁(Linum usitatissimum)は、有利には、前記のとおり、本発明の核酸配列を、有利には更なるデサチュラーゼおよびエロンガーゼと組み合わせて使用するPUFAの産生において特に適している。

脂質合成は2つの部分、すなわち脂肪酸の合成およびsn-グリセロール-3-リン酸へのそれらの結合と、極性頭部基の付加または改変とに分けることができる。膜内で用いられる通常の脂質は、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質およびホスホグリセリドを含む。脂肪酸合成は、アセチル-CoAから、アセチル-CoAカルボキシラーゼによるマロニル-CoAへの変換、またはアセチルトランスフェラーゼによるアセチル-ACPへの変換で始まる。縮合反応後、これらの2つの産物分子は一緒になってアセトアセチル-ACPを形成し、これは一連の縮合、還元および脱水反応により変換されて、所望の鎖長を有する飽和脂肪酸分子が得られる。これらの分子からの不飽和脂肪酸の産生は、酸素分子により好気的に又は嫌気的に、特定のデサチュラーゼにより触媒される(微生物における脂肪酸合成に関しては、F.C. Neidhardtら (1996) E. coli and Salmonella. ASM Press: Washington, D.C., pp. 612-636およびそれに引用されている参考文献; Lengelerら (編) (1999) Biology of Procaryotes. Thieme: Stuttgart, New Yorkおよびそれに引用されている参考文献、ならびにMagnuson, K.ら (1993) Microbiological Reviews 57:522-542およびそれに引用されている参考文献を参照されたい)。更なる伸長工程を経るためには、生じたリン脂質結合脂肪酸は、脂肪酸CoAエステルプールに戻されなければならない。これは、アシル-CoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼにより可能となる。さらに、これらの酵素は伸長した脂肪酸をCoAエステルからリン脂質へ転移できる。適当な場合には、この一連の反応が繰り返し行われる。

PUFAの生合成の前駆体の具体例はオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。エイコサおよびドコサ型鎖の脂肪酸を得るためには、C18-炭素脂肪酸がC20およびC22へと伸長されなければならない。Δ12-、ω3-、Δ4-、Δ5-、Δ6-およびΔ8-デサチュラーゼおよび/またはΔ5-、Δ6、Δ9-エロンガーゼのような本方法において使用するデサチュラーゼを用いて、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸、有利にはエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸を製造でき、ひいては食品、飼料、化粧品または医薬に関する種々の用途において使用できる。脂肪酸分子内に少なくとも2個、有利には少なくとも3個、4個、5個または6個の二重結合を有するC20-および/またはC22-脂肪酸、好ましくは、脂肪酸分子内に有利には4個、5個または6個の二重結合を有するC20-またはC22-脂肪酸が、前記酵素を使用して製造されうる。不飽和化は、対象脂肪酸の伸長の前または後に生じてもよい。したがって、該デサチュラーゼ活性の産物ならびにありうる更なる不飽和化および伸長工程は、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸またはエイコサペンタエン酸のような脂肪酸への、C20-脂肪酸からC22-脂肪酸への更なる伸長を含む、より高度な不飽和化を示す好ましいPUFAを与える。本発明の方法において使用するデサチュラーゼおよびエロンガーゼの基質はC16-、C18-またはC20-脂肪酸、例えばリノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサテトラエン酸またはステアリドン酸である。好ましい基質はリノール酸、γ-リノレン酸および/またはα-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸またはエイコサペンタエン酸である。脂肪酸内に少なくとも2個、3個、4個、5個または6個の二重結合を有する合成されたC20-またはC22-脂肪酸は、本発明の方法においては、遊離脂肪酸の形態またはそれらのエステルの形態、例えばそれらのグリセリドの形態で得られる。

「グリセリド」なる語は、1個、2個または3個のカルボキシル基でエステル化されたグリセロール(モノ、ジまたはトリグリセリド)を意味すると理解される。「グリセリド」は、種々のグリセリドの混合物をも意味すると理解される。グリセリドまたはグリセリド混合物は、更なる添加剤、例えば遊離脂肪酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび/または他の物質を含みうる。

本発明の目的においては、「グリセリド」は更に、グリセロール誘導体を意味すると理解される。前記脂肪酸グリセリドに加えて、これらはグリセロリン脂質およびグリセロ糖脂質をも含む。この場合に挙げられうる好ましい具体例は、レシチン(ホスファチジルコリン)、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリンおよびアルキルアシルグリセロリン脂質のようなグリセロリン脂質である。

さらに、脂肪酸は次いで、種々の修飾部位に移され、トリアシルグリセロール貯蔵脂質内に組み込まれなけれなならない。脂質合成におけるもう1つの重要な工程は、例えばグリセロール脂肪酸アシルトランスフェラーゼによる極性頭部基への脂肪酸の転移である(Frentzen, 1998, Lipid, 100(4-5):161-166を参照されたい)。

植物脂肪酸生合成に関する刊行物、ならびに脂質化合物の不飽和化、脂質代謝および膜輸送に関する刊行物、ならびにβ酸化、脂肪酸改変および補因子、トリアシルグリセロールの貯蔵およびトリアシルグリセロールの構築に関する刊行物(それらに引用されている参考文献を含む)としては、以下の文献を参照されたい:Kinney, 1997, Genetic Engeneering, JK Setlow編, 19:149-166; OhlroggeおよびBrowse, 1995, Plant Cell 7:957-970; ShanklinおよびCahoon, 1998, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 49:611-641; Voelker, 1996, Genetic Engeneering, JK Setlow編, 18:111-13; Gerhardt, 1992, Prog. Lipid R. 31:397-417; Guehnemann-Schaefer & Kindl, 1995, Biochim. Biophys Acta 1256:181-186; Kunauら, 1995, Prog. Lipid Res. 34:267-342; Stymneら, 1993, in: Biochemistry and Molecular Biology of Membrane and Storage Lipids of Plants, MurataおよびSomerville編, Rockville, American Society of Plant Physiologists, 150-158, Murphy & Ross 1998, Plant Journal. 13(1):1-16。

本方法において製造されるPUFAには、細菌のような高等生物とは別の生物によっては容易に合成されうるが高等動物はもはや合成できないため摂取しなければならないか又は高等動物はそれ自体を十分な量でもはや合成し得ないため補足的な量を摂取しなければならないような一群の分子を包含する。例えば、ネコはもはやアラキドン酸を合成できない。

本発明の目的におけるリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよび/またはホスファチジルイノシトール、有利にはホスファチジルコリンを意味すると理解される。産生量または生産性なる語は当技術分野で公知であり、一定の時間内に一定の発酵体積において生成する発酵産物(式Iの化合物)の濃度(例えば、1リットルおよび1時間当たりの該産物のkg)を含む。それはまた、植物細胞または植物における生産性、すなわち、この細胞または植物におけるすべての脂肪酸の含量に対する、本方法において製造された所望の脂肪酸の含量を含む。産生効率は、一定の産生量を得るのに要する時間(例えば、ファインケミカルの所定の処理速度を細胞が達成するのに要する時間)を含む。収率または産物/炭素収率は当技術分野で公知であり、炭素源から該産物(すなわち、ファインケミカル)への変換効率を含む。これは、通常、例えば、炭素源1kg当たりの産物のkgとして表される。該化合物の収率または産生量を増加させることにより、一定の時間にわたり一定の培養量において得られるこの化合物の分子の量または得られるこの化合物の適当な分子の量が増加する。生合成または生合成経路なる語は当技術分野で公知であり、化合物、好ましくは有機化合物が、例えば多工程の強力に制御されたプロセスで、細胞により中間体から合成されることを含む。異化または異化経路なる語は当技術分野で公知であり、化合物、好ましくは有機化合物が、例えば多工程の強力に制御されたプロセスで、細胞により切断されて異化産物(より一般的な用語では、より小さい又は単純な分子)を生じることを含む。代謝なる語は当技術分野で公知であり、生物において生じる生化学反応の全体を含む。したがって、ある化合物の代謝(例えば、脂肪酸の代謝)は、この化合物に関連した細胞におけるこの化合物の生合成経路、修飾経路および異化経路の全体を含む。

もう1つの実施形態においては、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183に示す本発明の核酸分子の誘導体は、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号132、配列番号134または配列番号184の完全なアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、有利には約50または60%、有利には少なくとも約60%または70%、より好ましくは少なくとも約70または80%、80〜90%、90〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%またはそれ以上の相同性(= 同一性)を有するタンパク質をコードする。相同性は、アミノ酸または核酸配列領域の全体にわたって計算した。プログラムPileUp (J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153) またはプログラムGapおよびBestFit [NeedlemanおよびWunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970) ならびにSmithおよびWaterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)](これらは、GCGソフトウェアパッケージ [Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部である)を、配列アライメントに使用した。パーセントとして前記で示した配列相同性値は、プログラムBestFitおよび以下の設定を用いて配列領域全体にわたって計算したものである:ギャップ・ウェイト: 50、長さウェイト: 3、平均マッチ: 10.000および平均ミスマッチ: 0.000。特に示さない限り、配列アライメントのための標準設定として常にこれらの設定を用いた。

さらに、本発明は、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183に示すヌクレオチド配列によりコードされるものと同じΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-エロンガーゼをコードしているが遺伝暗号の縮重により配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183に示すヌクレオチド配列の1つ(およびその一部)とは異なる核酸分子を含む。

配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183に示すΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼまたはΔ6-エロンガーゼに加えて、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼのアミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が集団内に存在しうることを当業者は認識するであろう。Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼにおけるこれらの遺伝的多型は自然変異により集団内の個体間に存在しうる。これらの自然変異は、通常、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の変動を引き起こす。自然変異により生じ、かつ機能的活性を改変しないΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼにおけるこれらのヌクレオチド変異および生じるアミノ酸多型のそれぞれは本発明に含まれるべきである。

本発明の方法に有利な核酸分子は、本明細書に開示するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ核酸に対するそれらの相同性により、該配列またはその一部をハイブリダイゼーションプローブとして使用してストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標準的なハイブリダイゼーション技術に従い、単離することができる。この場合、例えば、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183のヌクレオチド配列を含む核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする少なくとも15ヌクレオチド長の単離された核酸分子を使用することができる。少なくとも25個、50個、100個、200個またはそれ以上のヌクレオチドを有する核酸を使用することもできる。この場合に用いる「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」は、互いに少なくとも60%の相同性を有するヌクレオチド配列が通常は互いにハイブリダイズしたまま維持されるハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を表すと意図される。条件は、好ましくは、互いに少なくとも約65%、好ましくは少なくとも約70%、特に好ましくは少なくとも75%またはそれ以上の相同性を有する配列が通常は互いにハイブリダイズしたまま維持される条件である。これらのストリンジェントな条件は当業者に公知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な一例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(= SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーション、 およびそれに続く、0.2×SSC、0.1% SDS中、50〜65℃での1以上の洗浄工程である。これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸のタイプによって、また、例えば有機溶媒が存在する場合には温度およびバッファー濃度によって異なることが当業者に公知である。「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、例えば、ハイブリダイゼーション温度は、核酸のタイプに応じて、0.1〜5×SSC(pH 7.2)の濃度を有する水性バッファー中、42℃〜58℃である。有機溶媒、例えば50%ホルムアミドが前記バッファー中に存在する場合には、標準的な条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドに関するハイブリダイゼーション条件は、例えば、0.1×SSCおよび20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドに関するハイブリダイゼーション条件は、例えば、0.1×SSCおよび30℃〜55℃、好ましくは45℃〜55℃である。前記ハイブリダイゼーション条件は、例えば、ホルムアミドの非存在下、約100bp(= 塩基対)の長さおよび50%のG+C含量を有する核酸について定められている。前記参考書またはSambrookら, ”Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; HamesおよびHiggins (編) 1985, ”Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (編) 1991, ”Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxfordのような参考書に基づき、必要なハイブリダイゼーション条件を決定するための方法が、当業者に公知である。

2つのアミノ酸配列(例えば、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号114、配列番号132、配列番号134または配列番号184の配列のうち1つ)または2つの核酸(例えば、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183)の相同性(= 同一性)のパーセンテージ(%)を決定するためには、最適な比較のために、それら配列を、一方の下に他方が来るよう書き並べる(例えば、タンパク質または核酸の配列内には、他方のタンパク質または他方の核酸との最適なアライメントが得られるようキャップを導入してもよい)。ついで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。配列内のある位置が他方の配列内のその対応位置と同じアミノ酸残基または同じヌクレオチドにより占められている場合には、分子はこの位置において相同である(すなわち、この場合に用いるアミノ酸または核酸「相同性」はアミノ酸または核酸「同一性」と一致する)。2つの配列間の相同性のパーセンテージ(%)は、それらの配列が共有している位置の数の関数である(すなわち、相同性% = 同一位置の数/位置の総数×100)。したがって、相同性および同一性なる語は同義語であるとみなされるべきである。

配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号114、配列番号132、配列番号134または配列番号184のタンパク質配列に相同であるΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼをコードする単離された核酸分子は、コードされるタンパク質内に1以上のアミノ酸の置換、付加または欠失が導入されるように配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183のヌクレオチド配列内に1以上のヌクレオチドの置換、付加または欠失を導入することにより作製されうる。配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183の配列のうちの1つにおける突然変異は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発のような標準的な技術により導入されうる。推定される非必須アミノ酸残基の1以上において保存的アミノ酸置換を生じることが好ましい。「保存的アミノ酸置換」においては、アミノ酸残基は、類似した側鎖を有するアミノ酸残基により置換される。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定められている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼにおける推定非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基により置換される。あるいは、もう1つの実施形態においては、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼをコードする配列の全体または一部において、突然変異を例えば飽和突然変異によりランダムに導入することが可能であり、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性を保持している突然変異体を同定するために、得られた突然変異体を、本明細書に記載のΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性に関して、組換え発現によりスクリーニングすることができる。配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133または配列番号183の配列のうちの1つの突然変異誘発の後、コードされるタンパク質を組換え的に発現させてもよく、そして該タンパク質の活性を、例えば本明細書に記載の試験により測定することができる。

本発明は更に、本発明の配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号113、配列番号131、配列番号133もしくは配列番号183の核酸または本発明のこれらの核酸配列を含む遺伝子構築物もしくはベクターを含むトランスジェニック非ヒト生物に関する。非ヒト生物は、有利には、微生物、非ヒト動物または植物、特に好ましくは植物である。

以下の実施例により本発明を更に詳しく説明することとするが、これらの実施例は限定的なものと解釈されるべきではない。本特許出願において引用されている参考文献、特許出願、特許および公開特許出願のすべての内容を参照により本明細書に組み入れることとする。

実施例1:一般的クローニング方法: 例えば制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロンメンブレンへの核酸の転写、DNA断片の連結、大腸菌(E. coli)細胞の形質転換、細菌培養および組換えDNAの配列分析のようなクローニング手法は、Sambrookら (1989) (Cold Spring Harbor Laboratory Press: ISBN 0-87969-309-6)により記載されているようにして行った。

実施例2:組換えDNAの配列分析 組換えDNA分子を、サンガー法(Sangerら (1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA74, 5463-5467)によりABIレーザー蛍光DNAシークエンサーで配列決定した。ポリメラーゼ連鎖反応により得た断片を配列決定し、発現させるべき構築物内のポリメラーゼエラーを回避するように確認した。

実施例3:Oncorhynchus mykiss遺伝子のクローニング 本出願に詳しく記載されているエロンガーゼ遺伝子に対応するタンパク質配列内の保存領域に関する検索により、Genbank配列データベースにおいて、対応モチーフを有する2つの配列を同定した。

Qiagen (Valencia, CA, US)のRNAeasyキットを使用して、Oncoryhnchus mykissの全RNAを単離した。オリゴ-dT-セルロース(Sambrookら, 1989)を使用して、該全RNAからポリ-A+ RNA(mRNA)を単離した。Promegaの逆転写システムキットを使用して、該RNAを逆転写に付し、合成されたcDNAをベクターλZAP(lambda ZAP Gold, Stratagene)内にクローニングした。ついで該製造業者の使用説明書に従い該cDNAを取り出してプラスミドDNAを得た。ついで、発現プラスミドをクローニングするためのPCRに、該cDNAプラスミドライブラリーを使用した。

実施例4:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング 酵母内での異種発現のための2つの配列のクローニングのためのPCR反応に、以下のオリゴヌクレオチドを使用した。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素HindIIIおよびBamHIと共に37℃で2時間インキュベートした。酵母発現ベクターpYES3(Invitrogen)を同様にしてインキュベートした。ついで812bpのPCR産物、905bpのPCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびエロンガーゼcDNAを連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpYES3-OmELO2およびpYES3-OmELO3を配列決定により確認し、エレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)中へと形質転換した。対照として、並行してpYES3を形質転換した。ついで該酵母を、2%グルコースを添加した完全-トリプトファン不含最少培地上にプレーティングした。したがって、該培地でトリプトファン無しで増殖できた細胞は対応プラスミドpYES3、pYES3-OmELO2(配列番号51)およびpYES3-OmELO3(配列番号53)を含んでいた。選択後、更なる機能的発現のためにそれぞれについて2つの形質転換体を選択した。

実施例5:植物における種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。 PSUN-OmELO2 フォワード: 5‘-GCGGCCGCATAATGGCTTCAACATGGCAA (配列番号175) リバース: 3‘-GCGGCCGCTTATGTCTTCTTGCTCTTCCTGTT (配列番号176) PSUN-OmELO3 フォワード: 5‘-GCGGCCGCataatggagacttttaat (配列番号177) リバース: 3‘-GCGGCCGCtcagtcccccctcactttcc (配列番号178)

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-OmELO2およびpSUN-OmELO3を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片としてpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens Tiプラスミドからのオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応しており、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、標準的な方法に従うPCR反応により増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3', 配列番号174)。該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に導入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

実施例6:酵母および種子からの脂質抽出 所望の化合物(例えば、脂肪酸)の産生に対する植物、真菌、藻類、繊毛虫における遺伝的改変の効果を、適当な条件(例えば、前記の条件)下で該改変微生物または改変植物を成長させ所望の産物(すなわち、脂質または脂肪酸)の産生量の増加に関して培地および/または細胞成分を分析することにより判定した。これらの分析技術は当業者に公知であり、分光法、薄層クロマトグラフィー、種々のタイプの染色法、酵素的および微生物学的方法ならびに分析用クロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィーを含む(例えば、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A2, p. 89-90およびp. 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A.ら, (1987) “Applications of HPLC in Biochemistry“ in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 17; Rehmら (1993) Biotechnology, Vol. 3, Chapter III: “Product recovery and purification“, p. 469-714, VCH: Weinheim; Belter, P.A.ら, (1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, J.F.およびCabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, J.A.およびHenry, J.D. (1988) Biochemical Separations, in: Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. B3; Chapter 11, p. 1-27, VCH: Weinheim; およびDechow, F.J. (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publicationsを参照されたい)。

前記方法に加えて、Cahoonら (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940およびBrowseら (1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載されているようにして、植物脂質は植物材料から抽出される。脂質および脂肪酸の定性的および定量的分析はChristie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2); Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids. A Practical Guide - Ayr, Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 pp. (Oily Press Lipid Library; 1); “Progress in Lipid Research, Oxford: Pergamon Press, 1 (1952) - 16 (1977) 題名: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載されている。

発酵の最終産物を測定することに加えて、所望の化合物の製造に用いられる代謝経路の他の成分(例えば、中間体および副産物)を分析して該化合物の全体的な産生効率を測定することも可能である。該分析方法は、培地内の栄養素(例えば、糖、炭化水素、窒素源、リン酸および他のイオン)の量を測定し、バイオマスの組成および増殖を測定し、生合成経路の通常の代謝産物の産生を分析し、発酵中に生成した気体を測定することを含む。これらの測定のための標準的な方法はApplied Microbial Physiology; A Practical Approach, P.M. RhodesおよびP.F. Stanbury編, IRL Press, p. 103-129; 131-163および165-192 (ISBN: 0199635773)ならびにそれらに引用されている参考文献に記載されている。

一例として、脂肪酸の分析が挙げられる(略語:FAME, 脂肪酸メチルエステル; GC-MS, 気液クロマトグラフィー/質量分析; TAG, トリアシルグリセロール; TLC, 薄層クロマトグラフィー)。

脂肪酸産物の存在についての明白な検出は、Christieおよびそれに引用されている参考文献(1997, in: Advances on Lipid Methodology, Fourth Edition: Christie, Oily Press, Dundee, 119-169; 1998, Gaschromatographie- Massenspektrometrie- Verfahren [Gas chromatography/mass spectrometric methods], Lipide 33:343-353)に何度か記載されている標準的な分析方法(GC、GC-MSまたはTLC)を用いて組換え生物を分析することにより得ることが可能である。

分析すべき材料は、超音波処理、ガラスミル内での粉砕、液体窒素処理および粉砕、または他の適用可能な方法により破砕することが可能である。破砕後、該材料を遠心分離しなければならない。沈降物を蒸留水に再懸濁させ、100℃で10分間加熱し、氷上で冷却し、再遠心分離し、ついで2%ジメトキシプロパンを含有するメタノール中の0.5M 硫酸にて90℃で1時間抽出して、加水分解された油および脂質化合物を得、これはメチル基が転移された脂質を与える。これらの脂肪酸メチルエステルを石油エーテル中で抽出し、最後に、170℃〜240℃の温度勾配で20分間および240℃で5分間、キャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25μm, 0.32 mm)を使用するGC分析に付す。得られた脂肪酸メチルエステルのアイデンティティを、商業的供給源(すなわち、Sigma)から入手可能な標品を使用して特定しなければならない。

植物材料を、まず、乳鉢内で乳棒で粉砕することにより機械的にホモジナイズして、それをより抽出し易くする。

ついで、100℃で10分間の加熱を行い、氷上で冷却後、再沈降を行う。該細胞沈降物を1M メタノール硫酸および2% ジメトキシプロパンで90℃で1時間加水分解し、脂質をメチル基転移に付す。得られた脂肪酸メチルエステル(FAME)を石油エーテル中で抽出する。抽出されたFAMEを、170℃〜240℃の温度勾配で20分間および240℃で5分間、キャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25m, 0.32 mm)を使用する気液クロマトグラフィーにより分析する。該脂肪酸メチルエステルのアイデンティティを、対応するFAME標品(Sigma)との比較により確認する。二重結合のアイデンティティおよび位置を、例えば4,4-ジメトキシオキサゾリン誘導体(Christie, 1998)を与える該FAME混合物の適当な化学誘導体化により、GC-MSを用いて更に分析することが可能である。

実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES3、pYES3-OmELO2およびpYES3-OmELO3で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 10分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出することにより抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に採取した。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。

該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例7:OmELO2およびOmELO3の機能的特徴づけ OmELO2はエロンガーゼ活性を示さないが、OmELO3は種々の基質を用いて顕著な活性を有することが示された。OmElo3の基質特異性は、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図2)。供給した基質はすべてのトランスジェニック酵母において大量に検出されうる。すべてのトランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OmElo3反応の産物)の合成を示す。これは、遺伝子OmElo3の機能的発現が可能であることを意味する。

図2は、OmElo3が、1個のω3二重結合を有するΔ5-およびΔ6-脂肪酸の伸長を高い特異性でもたらす基質特異性を有することを示す。さらに、ω6-脂肪酸(C18およびC20)も、それより低い特異性で伸長した。OmElo3の最良の基質(66%までの伸長)はステアリドン酸(C18:4 ω3)およびエイコサペンタエン酸(C20:5 ω3)であった。

実施例8:酵母におけるDHAの合成の再構築 EPA(20:5 ω3)またはステアリドン酸(18:4 ω3)から出発して、Euglena gracilis Δ4-デサチュラーゼまたはPhaeodactylum tricornutumΔ5-デサチュラーゼおよびEuglena gracilisΔ4-デサチュラーゼと共にOmElo3を共発現させることにより、DHA(22:6 ω3)の生合成の再構築を行った。この目的のため、発現ベクターYes2-EgD4およびpESCLeu-PtD5を追加的に構築した。pYes3-OtElo3(配列番号55)で既に形質転換された前記酵母株を更に、pYes2-EgD4で、あるいはpYes2-EgD4およびpESCLeu-PtD5で同時に、形質転換した。pYes3-OmELO/pYes2-EgD4の場合には2% グルコースを添加した完全-最少トリプトファンおよびウラシル不含培地寒天プレート上、ならびにpYes3-OmELO/pYes2-EgD4+pESCLeu-PtD5株の場合には完全-トリプトファン、ウラシルおよびロイシン不含最少培地上で、形質転換酵母を選択した。前記のとおり、2%(w/v)ガラクトースの添加により、発現を誘導した。培養物は15℃で更に120時間インキュベートした。

図3は、20:5 ω3が供給されたトランスジェニック酵母の脂肪酸プロフィールを示す。ベクターpYes3-OmElo3およびブランクベクターpYes2で形質転換された対照酵母(A)においては、20:5 ω3が非常に効率的に伸長して22:5 ω3をもたらした(65%の伸長)。EgΔ-4デサチュラーゼの追加的な導入は22:5 ω3から22:6 ω3(DHA)への変換を引き起こした。該トランスジェニック酵母の脂肪酸組成を図5に示す。OmElo3およびEgD4の共発現の後、最大3%のDHAが酵母において検出された。

もう1つの共発現実験においては、OmElo3、EgD4およびP. tricornutum Δ5-デサチュラーゼ(PtD5)が一緒に発現された。該トランスジェニック酵母にステアリドン酸(18:4 ω3)を供給し、それらを分析した(図4)。これらの酵母の脂肪酸組成を図5に示す。供給された脂肪酸18:4 ω3はOmElo3により伸長されて20:4 ω3をもたらした(60%の伸長)。後者はPtD5により不飽和化されて20:5 ω3をもたらした。PtD5活性は15%であった。さらに、20:5 ω3をOmElo3により伸長させて22:5 ω3を得ることができた。ついで、新たに合成された22:5 ω3は22:6 ω3(DHA)へと不飽和化された。最大0.7%のDHAがこれらの実験において得られた。

本発明において使用する配列OmElo3、EgD4およびPtD5は真核細胞におけるDHAの製造に適していることが、これらの実験から認められる。

実施例9:トランスジェニック植物の作製 a)トランスジェニックアブラナ植物の作製(Moloneyら, 1992, Plant Cell Reports, 8:238-242の変法) トランスジェニックアブラナ植物を作製するためには、Agrobacterium tumefaciens C58C1:pGV2260または大腸菌(Escherichia coli)におけるバイナリーベクター(Deblaereら, 1984, Nucl. Acids. Res. 13, 4777-4788)を使用することができる。アブラナ植物(Var. Drakkar, NPZ Nordeutsche Pflanzenzucht, Hohenlieth, Germany)を形質転換するために、3%スクロースを添加したMurashige-Skoog培地(MurashigeおよびSkoog 1962 Physiol. Plant. 15, 473)(3MS培地)中、陽性形質転換されたアグロバクテリウムコロニーの一晩培養物の1:50希釈物を使用する。新たに発芽した無菌アブラナ植物の葉柄または胚軸(各場合に約1cm2)をペトリ皿中、1:50アグロバクテリウム希釈物と共に5〜10分間インキュベートする。ついで、0.8% Bacto寒天を添加した3MS培地上、25℃の暗所において3日間の共インキュベーションを行う。ついで該培養物を明期16時間/暗期8時間で3日間増殖させ、そして500mg/l Claforan(セフォタキシムナトリウム)、50mg/l カナマイシン、20μM ベンジルアミノプリン(BAP)を添加し今度は1.6g/lのグルコースを添加したMS培地において該培養を1週間周期で継続する。成長中のシュートを、2%スクロース、250mg/l Claforanおよび0.8% Bacto寒天を添加したMS培地に移す。3週間後に根が発生しない場合には、発根のための成長ホルモンとして2-インドール酪酸を培地に加えた。

カナマイシンおよびClaforanを添加した2MS培地上、再生シュートを得た。発根後、それらを堆肥に移し、制御環境室内または温室内で2週間の成長後、開花させ、成熟種子を収穫し、Δ5-エロンガーゼもしくはΔ6-エロンガーゼ活性またはω3-デサチュラーゼ活性のようなエロンガーゼ発現について脂質分析により分析した。このようにして、多不飽和C20-およびC22-脂肪酸の含量が上昇した系統を同定することが可能である。

b)トランスジェニック亜麻仁植物の作製 トランスジェニック亜麻仁植物は、パーティクルボンバードメントを用いて例えばBellら, 1999, In Vitro Cell. Dev. Biol.-Plant. 35(6):456-465の方法により作製することが可能である。全体としては、アグロバクテリウム媒介形質転換により、例えばMlynarovaら (1994), Plant Cell Report 13: 282-285の方法により、亜麻仁を形質転換した。

実施例10:Thraustochytrium aureum ATCC34304およびThraustochytrium ssp.からのΔ5-エロンガーゼ遺伝子のクローニング 本出願において見出された種々のエロンガーゼタンパク質配列を比較することにより、保存核酸領域(ヒスチジンボックス: His-Val-X-His-His, チロシンボックス: Met-Tyr-X-Tyr-Tyr)を決定することができた。これらの配列を使用して、T. aureum ATCC34304およびThraustochytrium ssp.のESTデータベースを他のΔ5-エロンガーゼに関してスクリーニングした。以下の新規配列が見出された。

Qiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasyキットを使用して、T. aureum ATCC34304およびThraustochytrium ssp.の全RNAを単離した。polyATract単離システム(Promega)を使用して、全RNAからmRNAを単離した。Marathon cDNA増幅キット(BD Biosciences)を使用して、該mRNAを逆転写に付し、該製造業者の使用説明書に従いアダプターを連結した。ついで、5'-および3'-RACE(rapid amplification of cDNA ends;cDNA末端の迅速増幅)による発現プラスミドのクローニングのためのPCRに、cDNAライブラリーを使用した。

実施例11:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング 酵母内での異種発現のための配列のクローニングのためのPCR反応に、以下のオリゴヌクレオチドを使用した。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物BioTaurELO1(配列番号65参照)およびTL16y2(配列番号83参照)を、酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に、該製造業者の使用説明書に従い、21℃で30分間インキュベートした。この場合、PCR産物を、トポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性およびT突出部を利用して該ベクター内に連結した。インキュベーション後、大腸菌(E. coli)DH5α細胞を形質転換した。適当なクローンをPCRにより同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasyキットにより単離し、配列決定により確認した。ついで正しい配列をエレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)内に形質転換した。対照として、並行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。ついで該酵母を、2% グルコースを添加したウラシル不含最少培地上にプレーティングした。したがって、該培地でウラシル無しで増殖することができた細胞は当該プラスミドpYES2.1、pYES2.1-BioTaurELO1およびpYES2.1-TL16y2を含む。選択後、更なる機能的発現のためにそれぞれについて2つの形質転換体を選択した。

実施例12:植物での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、PSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。

PSUN-BioTaurELO1 フォワード: 5'-GCGGCCGCATAATGACGAGCAACATGAGC (配列番号166)、 リバース: 3'-GCGGCCGCTTAGGCCGACTTGGCCTTGGG (配列番号167) PSUN-TL16y2 フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGGACGTCGTCGAGCAGCAATG (配列番号168)、 リバース: 5'-GCGGCCGCTTAGATGGTCTTCTGCTTCTTGGGCGCC (配列番号169)

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-BioTaurELO1およびpSUN-TL16y2を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片としてpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens Tiプラスミドからのオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、標準的な方法に従うPCR反応により増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3', 配列番号165)。該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300中に導入した。これによりpSUN-USPと称されるプラスミドが作製された。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

酵母および種子からの脂質抽出は、実施例6に記載のようにして行った。

実施例13:BioTaurELO1およびTL16y2の機能的特徴づけ BioTaurELO1の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図6)。図6は、ベクターpYes2.1(対照)またはΔ5-エロンガーゼを伴うベクターpYes2.1-BioTaurELO1(= BioTaur)を含む酵母株における機能および基質特異性を測定するための供給実験を示す。両方のバッチにおいて、200μMのγ-リノレン酸およびエイコサペンタエン酸を酵母インキュベーション培地に加え、インキュベーションを24時間行った。該脂肪酸を該酵母から抽出した後、それらをメチル基転移に付し、ガスクロマトグラフィーにより分離した。供給した2つの脂肪酸から得た伸長産物を矢印で示す。

供給した基質はすべてのトランスジェニック酵母において大量に検出されうる。すべてのトランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(BioTaurELO1反応の産物)の合成を示す。これは、遺伝子BioTaurELO1の機能的発現が可能であることを意味する。

図6は、BioTaurELO1が、1個のω3二重結合を有するΔ5-およびΔ6-脂肪酸の伸長を高い特異性でもたらす基質特異性を示すことを示す。さらに、ω6-脂肪酸(C18およびC20)も伸長した。γ-リノレン酸(C18:3 ω6)は65.28%の比率で、ステアリドン酸(C18:4 ω3)は65.66%の比率で、そしてエイコサペンタエン酸(C20:5 ω3)は22.01%の比率で変換される。種々の供給実験の基質特異性を表3に示す(本明細書の最後を参照されたい)。

GLAおよびEPAを供給した場合のGLAの変換率は65.28%であった。同じ量のGLAおよびEPAを供給した場合のEPAの変換率は9.99%であった。EPAのみを供給した場合には、EPAの変換率は22.01%であった。アラキドン酸(= ARA)も、供給した場合には変換された。その変換率は14.47%であった。ステアリドン酸(= SDA)も変換された。この場合、変換率は65.66%であった。

TL16y2の機能および基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した。図4は供給実験を示す。該供給実験は、BioTaurELO1に関して記載されているのと同様に行った。供給した基質はすべてのトランスジェニック酵母において大量に検出されうる。すべてのトランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(TL16y2反応の産物)の合成を示した(図11)。これは、遺伝子TL16y2の機能的発現が可能であることを意味する。

表4に示す、対照と比較したTL16y2に関する結果は、以下の変換率(%)を示している:a)EPA変換率(%)(250μM):8%、b)EPA変換率(%)(50μM):41%、c)ARA変換率(%):20.3%、d)SDA変換率(%):79.4%、およびe)GLA変換率(%):74.9%。

したがって、TL16y2はΔ5-、Δ6-およびΔ8-エロンガーゼ活性を示す。これらのうち、Δ6-二重結合を有するC18-脂肪酸に関する活性が最も高い。供給脂肪酸の濃度に応じて、Δ5-またはΔ8-二重結合を有するC20-脂肪酸の伸長が続いて起こる。

実施例14:Ostreococcus tauriからの遺伝子のクローニング Δ5-エロンガーゼ活性またはΔ6-エロンガーゼ活性を有する本出願に列挙したエロンガーゼ遺伝子を使用してタンパク質配列内の保存領域を検索することにより、Ostreococcus tauri配列データベース(ゲノム配列)において対応モチーフを有する2つの配列を同定することができた。該配列は以下のとおりである。

OtElo1はDanio rerioエロンガーゼ(GenBank AAN77156; 約26%の同一性)に対して最も高い類似性を有し、一方OtElo2はPhyscomitrella Elo(PSE)に対して最大の類似性を有する[約36%の同一性](アライメントは、tBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410)を使用して行った)。

該クローニング操作は以下のとおりに行った。 定常期の40mlのOstreococcus tauri培養物を遠心し、ペレットを100μlの二重蒸留水に再懸濁させ、-20℃で保存した。PCR法に基づき、当該ゲノムDNAを増幅した。対応プライマーペアを、開始コドンに隣接した高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するように選択した。各場合に1μlの解凍細胞、200μM dNTP、2.5U Taqポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む50μl全量を使用して、OtElo-DNAの増幅を行った。PCRのための条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

実施例15:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング Ostreococcus tauriエロンガーゼの機能を特徴づけするために、対象DNAのオープンリーディングフレームをpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングしてpOTE1およびpOTE2を得た。

Saccharomyces cerevisiae株334をエレクトロポレーション(1500V)によりベクターpOTE1またはpOTE2でそれぞれ形質転換した。ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として使用した。2%グルコースを添加した完全-ウラシル不含最少培地(CMdum)寒天プレート上で形質転換酵母を選択した。選択後、各場合において3個の形質転換体を更なる機能的発現のために選択した。

Otエロンガーゼを発現させるために、各場合に、2%(w/v)ラフィノースを添加したウラシル不含CMdum液体培地5mlよりなる前培養物に、まず、選択した形質転換体を接種し、それを30℃、200rpmで2日間インキュベートした。ついで、2%のラフィノースおよび300μMの種々の脂肪酸を添加した CMdum液体培地(ウラシル不含)5mlに該前培養物を、OD600が0.05となるまで接種した。2%(w/v)のガラクトースの添加により発現を誘導した。培養物を20℃で更に96時間インキュベートした。

実施例16:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、PCRを用いて、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に挿入した。対応するプライマー配列は、OtElo1およびOtElo2の5'および3'領域から誘導した。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-OtELO1およびpSUN-OtELO2を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300内に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens TiプラスミドからのOstreococcus遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、PCR反応および標準的な方法を用いて増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3', 配列番号164)。該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に挿入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

実施例17:酵母内でのOtELO1およびOtELO2の発現 実施例15に記載のようにしてプラスミドpYES3、pYES3-OmELO1およびpYES3-OmELO2で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例18:OtELO1およびOtELO2の機能的特徴づけ OtElo1の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(表5)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OtElo1反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子OtElo1が機能的に発現されたことを意味する。

表4は、OtElo1が狭い基質特異性を有することを示している。OtElo1は、C20-脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(図7)およびアラキドン酸(図8)を伸長させうるに過ぎず、ω3-不飽和化エイコサペンタエン酸を優先的に伸長させることができた。

表5は、種々の脂肪酸と比較した、Δ5位に二重結合を有するC20-多不飽和脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo1の基質特異性を示す。

ベクターpOTE1で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。各値は平均(n=3)±標準偏差を表す。

OtElo2(配列番号81)の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(表6)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OtElo2反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子OtElo2が機能的に発現されたことを意味する。

表6は、種々の脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo2の基質特異性を示す。

ベクターpOTE2で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。各値は平均(n=3)±標準偏差を表す。

表3に示す酵素活性は、OtElo2がΔ6-エロンガーゼであることを明らかに示している。

実施例19:Thalassiosira pseudonanaからの遺伝子のクローニング Δ5-エロンガーゼ活性またはΔ6-エロンガーゼ活性を有する本出願に詳述したエロンガーゼ遺伝子を使用してタンパク質配列内の保存領域を検索することにより、Thalassiosira pseudonana配列データベース(ゲノム配列)における対応モチーフを有する2つの配列を同定することができる。該配列は以下のとおりであった。

T. pseudonanaの2リットルの培養物をf/2培地(Guillard, R.R.L. 1975. Culture of phytoplankton for feeding marine invertebrates. In Culture of Marine Invertebrate Animals (Smith, W.L.およびChanley, M.H.編), Plenum Press, New York, pp 29-60)中で80 E/cm2の光強度で14日間増殖させた。該細胞の遠心分離後、Qiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasyキットを該製造業者の使用説明書に従って使用してRNAを単離した。Marathon cDNA増幅キット(BD Biosciences)を使用してmRNAを逆転写に付し、アダプターを該製造業者の使用説明書に従い連結した。ついでcDNAライブラリーを、5'-および3'-RACE(rapid amplification of cDNA ends;cDNA末端の迅速増幅)による発現プラスミドのクローニングのためのPCRに使用した。

実施例20:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング 対象プライマーペアを、開始コドンに隣接した高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するよう選択した。各場合に1μlのcDNA、200μM dNTPs、2.5UのAdvantageポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、TpElo DNAの増幅を行った。PCR条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

酵母内での異種発現のための配列のクローニングに、該PCR反応用の以下のオリゴヌクレオチドを使用した。

PCR産物を、酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に、該製造業者の使用説明書に従い、21℃で30分間インキュベートした。PCR産物を、トポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性およびT突出部を利用して該ベクター内に連結した。インキュベーション後、大腸菌(E. coli)DH5α細胞を形質転換した。適当なクローンをPCRにより同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasyキットにより単離し、配列決定により確認した。ついで正しい配列をエレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)へと形質転換した。対照として、並行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。ついで該酵母を、2%グルコースを添加したウラシル不含最少培地上にプレーティングした。該培地でウラシル無しで増殖することができた細胞は対応プラスミドpYES2.1、pYES2.1-TpELO1、pYES2.1-ELO2およびpYES2.1-TpELO3を含む。選択後、更なる機能的発現のために各場合について2つの形質転換体を選択した。

実施例21:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。 PSUN-TPELO1 フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGTGCTCACCACCGCCGTC (配列番号152)、 リバース: 3'-GCGGCCGCCTACATGGCACCAGTAAC (配列番号153) PSUN-TPELO2 フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGTGCTCATCACCGCCGTC (配列番号154)、 リバース: 3'-GCGGCCGCCTACATGGCACCAGTAAC (配列番号155) PSUN-TPELO3 フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGGACGCCTACAACGCTGC (配列番号156)、 リバース: 3'-GCGGCCGCCTAAGCACTCTTCTTCTTT (配列番号157)。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-TPELO1、pSUN-TPELO2およびpSUN-TPELO3を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片としてpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens Tiプラスミドからのオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、標準的な方法に従うPCR反応により増幅した。(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'; 配列番号151)。

該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に導入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

酵母および種子からの脂質抽出は、実施例6に記載のようにして行った。

実施例22:酵母内でのTpELO1、TpELO2およびTpELO3の発現 実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES2、pYES2-TpELO1、pYES2-TpELO2およびpYES2-TpELO3で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例23:TpELO1およびTPELO3の機能的特徴づけ TpElo1の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図9)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(TpElo1反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子TpElo1が機能的に発現されたことを意味する。

表7は、TpElo1が狭い基質特異性を有することを示している。TpElo1は、C20-脂肪酸であるエイコサペンタエン酸およびアラキドン酸を伸長させうるに過ぎなかったが、ω3-不飽和化エイコサペンタエン酸を優先的に伸長させることが可能であった。

ベクターpYES2-TpELO1で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。ついで、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

TpElo3の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図10)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(TpElo3反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子TpElo3が機能的に発現されたことを意味する。

表8は、TpElo3が狭い基質特異性を有することを示している。TpElo3は、C18-脂肪酸であるγ-リノレン酸およびステアリドン酸を伸長させうるに過ぎなかったが、ω3-不飽和化ステアリドン酸を優先した。

ベクターpYES2-TpELO3で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。ついで、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

実施例24:酵母内でのPi-omega3Desの異種発現のための発現プラスミドのクローニング 酵母内での異種発現のために、適当なPi-omega3Des特異的プライマーを使用するPCRによりPi-omega3Desクローンを酵母発現ベクターpYES3中にクローニングした。Pi-omega3Desタンパク質をコードする該遺伝子のオープンリーディングフレームのみが増幅された。それは、発現ベクターpYES3内へのクローニングのための2つの切断部位を含有していた。

フォワードプライマー: 5’-TAAGCTTACATGGCGACGAAGGAGG (配列番号149)、 リバースプライマー: 5’-TGGATCCACTTACGTGGACTTGGT (配列番号150)。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μlの5'-ATGおよび3'-終結プライマー)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素HindIIIおよびBamHIと共に37℃で2時間インキュベートした。酵母発現ベクターpYES3(Invitrogen)を同様にしてインキュベートした。ついで1104bpのPCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびデサチュラーゼcDNAを連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpYES3-Pi-omega3Desを配列決定により確認し、エレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)内に形質転換した。対照として、並行してpYES3を形質転換した。ついで該酵母を、2%グルコースを添加したトリプトファン不含最少培地上にプレーティングした。該培地でトリプトファン無しで増殖できた細胞は対応プラスミドpYES3、pYES3-Pi-omega3Desを含んでいた。選択後、更なる機能的発現のために各場合について2つの形質転換体を選択した。

実施例25:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。 PSUN-Pi-omega3Des リバース: 3'-GCGGCCGCTTACGTGGACTTGGTC (配列番号147)、 フォワード: 5'-GCGGCCGCatGGCGACGAAGGAGG (配列番号148)。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で4時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドPSUN-Piomega3Desを配列決定により確認した。

実施例26:酵母内でのPi-omega3Desの発現 実施例24に記載のようにしてプラスミドpYES3またはpYES3-Pi-omega3Desで形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。脂肪酸メチルエステル(FAME)を酵母細胞沈降物から酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出することにより抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例27:Pi-omega3Desの機能的特徴づけ Pi-omega3Desの基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図12〜18)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。このことは、酵母内へのこれらの脂肪酸の取り込みを証明している。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(Pi-omega3Des反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子Pi-omega3Desが機能的に発現されたことを意味する。

図12は、Pi-omega3Desによるα-リノレン酸(18:3 ω3-脂肪酸)へのリノール酸(18:2 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図12A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図12B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、C18:2Δ9,12-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

図13は、Pi-omega3Desによるステアリドン酸(18:4 ω3-脂肪酸)へのγ-リノレン酸(18:3 ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図13A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図13B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、γ-C18:3Δ6,9,12-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

図14は、Pi-omega3DesによるC20:3-ω3-脂肪酸へのC20:2-ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図14A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図14B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、C20:2Δ11,14-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

図15は、Pi-omega3DesによるC20:4-ω3-脂肪酸へのC20:3-ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図15A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図15B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、C20:3Δ8,11,14-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

図16は、Pi-omega3Desによるエイコサペンタエン酸(C20:5-ω3-脂肪酸)へのアラキドン酸(C20:4-ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図16A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図16B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、C20:4Δ5,8,11,14-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

図17は、Pi-omega3Desによるドコサペンタエン酸(C22:5-ω3-脂肪酸)へのドコサテトラエン酸(C22:4-ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図17A)またはベクターpYES3-Pi-omega3Des(図17B)で形質転換された無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。該酵母を、C22:4Δ7,10,13,16-脂肪酸(300μM)の存在下、最少培地で増殖させた。ついで該FAMEをGLCにより分析した。

種々の脂肪酸に対するPi-omega3Desの基質特異性が図18から認められうる。ベクターpYes3-Pi-omega3Desで形質転換された酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。脂肪酸メチルエステルを、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより合成した。ついで該FAMEをGLCにより分析した。各値は3回の測定の平均を表す。以下の式を用いて、変換率(不飽和%)を計算した。 [産物]/[産物]+[基質]*100。

実施例9に記載のとおり、Pi-omega3Desはトランスジェニック植物の作製にも使用することが可能である。ついで、実施例6に記載のようにしてそれらの植物の種子から脂質を抽出することができる。

実施例28:Ostreococcus tauriからのデサチュラーゼ遺伝子のクローニング 保存モチーフ(His boxes, Domergueら 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)を用いたタンパク質配列内の保存領域の検索は、Ostreococcus tauri配列データベース(ゲノム配列)において対応モチーフを有する5個の配列の同定を可能にした。該配列は以下のとおりである。

個々の遺伝子の相同性を見出すためのアライメントは、tBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410)を使用して行った。

クローニングは以下のとおりに行った。 定常期の40mlのOstreococcus tauri培養物を遠心し、ペレットを100μlの二重蒸留水に再懸濁させ、-20℃で保存した。PCR法に基づき、当該ゲノムDNAを増幅した。対応プライマーペアを、開始コドンに隣接する高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するよう選択した。各場合に1μlの解凍細胞、200μM dNTP、2.5U Taqポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、OtDes-DNAの増幅を行った。PCRのための条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

該PCRには以下のプライマーを使用した。 OtDes6.1 フォワード: 5’ggtaccacataatgtgcgtggagacggaaaataacg3’ (配列番号145)、 OtDes6.1 リバース: 5’ctcgagttacgccgtctttccggagtgttggcc3’ (配列番号146)。

実施例29:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング Ostreococcus tauriからのデサチュラーゼOtDes6.1(= Δ6-デサチュラーゼ)の機能を特徴づけするために、pYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの上流に該DNAのオープンリーディングフレームのクローニングを行って、対応するpYES2.1-OtDes6.1クローンを得た。同様にして、他のOstreococcusデサチュラーゼ遺伝子をクローニングすることが可能である。

Saccharomyces cerevisiae株334をエレクトロポレーション(1500V)によりベクターpYES2.1-OtDes6.1で形質転換した。ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として使用した。2%グルコースを添加した完全-ウラシル不含最少培地(CMdum)寒天プレート上で形質転換酵母を選択した。選択後、各場合において3個の形質転換体を更なる機能的発現のために選択した。

OtDes6.1デサチュラーゼを発現させるために、各場合に、2%(w/v)ラフィノースを添加したウラシル不含CMdum液体培地5mlよりなる前培養物に、まず、選択した形質転換体を接種し、それを30℃、200rpmで2日間インキュベートした。ついで、2%のラフィノースおよび300μMの種々の脂肪酸を添加した5mlのCMdum(ウラシル不含)液体培地に該前培養物をOD600が0.05となるまで接種した。2%(w/v)のガラクトースの添加により発現を誘導した。培養を20℃で更に96時間インキュベートした。

実施例30:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製する。この目的のため、PCRを用いて、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入する。対応するプライマー配列は、デサチュラーゼの5'および3'領域から誘導する。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドを配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens TiプラスミドからのOstreococcus遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、PCR反応および標準的な方法を用いて増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3', 配列番号144)。該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300中に挿入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

実施例31:酵母内でのOtDes6.1の発現 実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES2およびpYES2-OtDes6.2で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例32:Ostreococcusデサチュラーゼの機能的特徴づけ デサチュラーゼの基質特異性は、種々の酵母を使用する供給により、酵母内での発現の後に測定することが可能である(デサチュラーゼ遺伝子のクローニング、酵母発現の実施例を参照されたい)。個々の活性の測定のための説明は、Δ15-デサチュラーゼに関してはWO 93/11245、Δ12-デサチュラーゼに関してはWO 94/11516、Δ6-デサチュラーゼに関してはWO 93/06712、米国特許第5,614,393号、米国特許第5614393号、WO 96/21022、WO 0021557およびWO 99/27111、Δ4-デサチュラーゼに関してはQiuら 2001, J. Biol. Chem. 276, 31561-31566、Δ5-デサチュラーゼに関してはHongら 2002, Lipids 37,863-868に見出されうる。

表9は、種々の脂肪酸に対するデサチュラーゼOtDes6.1の基質特異性を示す。OtDes6.1の基質特異性は、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OtDes6.1反応の産物)の合成を示した(図20)。これは、遺伝子OtDes6.1が機能的に発現されたことを意味する。

ベクターpYES2-OtDes6.1で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。ついで、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。各値は、平均(n=3)±標準偏差を表す。活性は、以下の式を用いて計算した変換率に対応する:[基質/(基質+産物)*100]。

表9は、OtDes6.1がリノール酸およびリノレン酸(18:2および18:3)に対する基質特異性を有することを示している。なぜなら、これらの脂肪酸が最高の活性をもたらしているからである。これとは対照的に、オレイン酸(18:1)およびパルミチン酸(16:1)に対する活性はそれほど顕著ではない。リノール酸およびリノレン酸の好ましい変換は、多不飽和脂肪酸の製造に対するこのデサチュラーゼの好適性を示している。

図20は、OtDes6.1によるリノール酸の変換を示す。FAMEをガスクロマトグラフィーにより分析した。供給した基質(C18:2)はγ-C18:3に変換される。出発物質および生成産物の両方が矢印で示されている。

図21は、OtDes6.1の存在下でのγ-リノレン酸(= GLA)およびステアリドン酸(= STA)をそれぞれ生じるリノール酸(= LA)およびα-リノレン酸(= ALA)の変換を示す(図21AおよびC)。さらに、図21は、Δ6-デサチュラーゼOtDes6.1に加えてPhyscomitrella patens由来のΔ6-エロンガーゼPSE1(Zankら 2002, Plant J. 31:255-268)およびPhaeodactylum tricornutum由来のΔ5-デサチュラーゼPtD5(Domergueら 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)が共に存在する場合の、リノール酸(= LA)およびα-リノレン酸(= ALA)のそれぞれの、ジホモ-γ-リノレン酸(= DHGLA)およびアラキドン酸(= ARA、図21B)を生じる変換並びにジホモステアリドン酸(= DHSTA)およびエイコサペンタエン酸(= EPA、図21D)を生じる変換を示す。図21は、Δ6-エロンガーゼPSE1の存在下、Δ6-デサチュラーゼOtDes6.1の反応産物GLAおよびSTAがほぼ定量的に伸長されてそれぞれDHGLAおよびDHSTAを与えることを明らかに示している。それぞれARAおよびEPAを生じるΔ5-デサチュラーゼPtD5による後続の不飽和化も問題ない。エロンガーゼ産物の約25〜30%が不飽和化される(図21BおよびD)。

以下の表10は、クローニングされたOstreococcusデサチュラーゼの概要を示す。

実施例33:Thalassiosira pseudonanaからのデサチュラーゼ遺伝子のクローニング 保存モチーフ(His box, モチーフを参照されたい)を用いたタンパク質配列内の保存領域の検索は、Thalassiosira pseudonana配列データベース(ゲノム配列)における対応モチーフを有する6個の配列の同定を可能にした。該配列は以下のとおりである。

クローニングは以下のとおりに行った。 定常期の40mlのThalassiosira pseudonana培養物を遠心し、ペレットを100μlの二重蒸留水に再懸濁させ、-20℃で保存した。PCR法に基づき、当該ゲノムDNAを増幅した。対応プライマーペアを、開始コドンに隣接する高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するよう選択した。各場合に1μlの解凍細胞、200μM dNTP、2.5U Taqポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、TpDes-DNAの増幅を行った。PCRのための条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

実施例34:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング Thalassiosira pseudonanaデサチュラーゼの機能を特徴づけするために、対象DNAのオープンリーディングフレームをpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングして、対応するpYES2.1クローンを得る。

Saccharomyces cerevisiae株334をエレクトロポレーション(1500V)によりベクターpYES2.1-TpDesaturasenで形質転換する。ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として使用する。2%グルコースを添加したがウラシルを欠く完全-最少培地(CMdum)寒天プレート上で形質転換酵母を選択する。選択後、各場合において3個の形質転換体を更なる機能的発現のために選択する。

Tpデサチュラーゼを発現させるために、各場合に、2%(w/v)ラフィノースを添加したがウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地の前培養物に、まず、選択した形質転換体を接種し、それを30℃、200rpmで2日間インキュベートする。ついで、2%のラフィノースおよび300μMの種々の脂肪酸を添加した5mlのCMdum液体培地(ウラシルを含有しない)に該前培養物をOD600が0.05となるよう接種する。2%(w/v)のガラクトースの添加により発現を誘導する。培養を20℃で更に96時間インキュベートする。

実施例35:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製する。この目的のため、PCRにより、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入する。対応するプライマー配列は、該デサチュラーゼの5'および3'領域から誘導する。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドを配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300内に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens TiプラスミドからのOstreococcus遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、PCR反応および標準的な方法を用いて増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'; 配列番号143)。該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に挿入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

実施例36:酵母内でのTpデサチュラーゼの発現 実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES2およびpYES2-Tpで形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例37:Thalassiosira pseudonanaデサチュラーゼの機能的特徴づけ デサチュラーゼの基質特異性は、種々の酵母を使用する供給により、酵母内での発現の後に測定することが可能である(デサチュラーゼ遺伝子のクローニング、酵母発現の実施例を参照されたい)。個々の活性の測定のための説明は、Δ15-デサチュラーゼに関してはWO 93/11245、Δ12-デサチュラーゼに関してはWO 94/11516、Δ6-デサチュラーゼに関してはWO 93/06712、米国特許第5,614,393号、米国特許第5614393号、WO 96/21022、WO 0021557およびWO 99/27111、Δ4-デサチュラーゼに関してはQiuら 2001, J. Biol. Chem. 276, 31561-31566、Δ5-デサチュラーゼに関してはHongら 2002, Lipids 37,863-868に見出されうる。

個々のデサチュラーゼの活性は、以下の式を用いて、変換率から計算される:[基質/(基質+産物)*100]。

以下の表11および12は、クローニングされたThalassiosira pseudonanaデサチュラーゼの概要を示す。

OstreococcusおよびThalassiosiraからのΔ12-デサチュラーゼ遺伝子は前記実施例と同様にしてクローニングされうる。

実施例38:Xenopus laevisおよびCiona intestinalisからのエロンガーゼ遺伝子のクローニング 本明細書に詳述するΔ5-エロンガーゼ活性またはΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いて遺伝子データベース(Genbank)内のタンパク質配列内の保存領域(コンセンサス配列 配列番号115および配列番号116を参照されたい)を検索することにより、他の生物からの他のエロンガーゼ配列を同定し単離することができた。適当なモチーフを使用して、各場合にX. laevisおよびC. intestinalisからの更なる配列をそれぞれ同定することが可能であった。該配列は以下のとおりであった。

X. laevis cDNAクローンは、NIH(National Institute of Health;米国国立衛生研究所)から得た[Genetic and genomic tools for Xenopus research: The NIH Xenopus initiative, Dev. Dyn. 225 (4), 384-391 (2002)]。

C. intestinalis cDNAは、京都大学から得た[Satou,Y., Yamada,L., Mochizuki,Y., Takatori,N., Kawashima,T., Sasaki,A., Hamaguchi,M., Awazu,S., Yagi,K., Sasakura,Y., Nakayama,A., Ishikawa,H., Inaba,K.およびSatoh,N. “A cDNA resource from the basal chordate Ciona intestinalis” JOURNAL Genesis 33 (4), 153-154 (2002)]。

実施例39:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング 各場合に1μlのcDNA、200μM dNTP、2.5UのAdvantageポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、エロンガーゼDNAを増幅した。PCR条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

酵母内での異種発現のための配列のクローニングのためのPCR反応に、以下のオリゴヌクレオチドを使用した。

PCR産物を、酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に、該製造業者の使用説明書に従い、21℃で30分間インキュベートした。PCR産物を、トポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性およびT突出部を利用して該ベクター内に連結した。インキュベーション後、大腸菌(E. coli)DH5α細胞を形質転換する。適当なクローンをPCRにより同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasyキットにより単離し、配列決定により確認した。ついで正しい配列をエレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)内に形質転換した。対照として、並行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。ついで該酵母を、2% グルコースを添加したウラシル不含最少培地上にプレーティングした。したがって、該培地でウラシル無しで増殖することができた細胞は対応プラスミドpYES2.1、pYES2.1-ELO(Xl)およびpYES2.1-ELO(Ci)を含む。選択後、更なる機能的発現のために各場合について2つの形質転換体を選択した。

実施例40:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。

pSUN-ELO(Xl) フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGGCCTTCAAGGAGCTCACATC (配列番号125)、 リバース: 3'-GCGGCCGCCTTCAATGGTTTTTGCTTTTCAATGCACCG (配列番号126) pSUN-ELO(Ci) フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGGACGTACTTCATCGT (配列番号127)、 リバース: 3'-GCGGCCGCTTTAATCGGTTTTACCATT (配列番号128)

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-ELO(Xl)およびpSUN-ELO(Ci)を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片としてpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens Tiプラスミドからのオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、標準的な方法に従うPCR反応により増幅した。プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3' (配列番号129)。

該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に導入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

酵母および種子からの脂質抽出は、実施例6に記載のようにして行った。

実施例41:酵母内でのELO(Xl)およびELO(Ci)の発現 実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES2、pYES2-ELO(Xl)およびpYES2-ELO(Ci)で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例42:ELO(Xl)およびELO(Ci)の機能的特徴づけ ELO(Xl)の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図22)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(ELO(Xl)反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子ELO(Xl)が機能的に発現されたことを意味する。

表13は、ELO(Xl)が広範な基質特異性を有することを示している。C18およびC20脂肪酸の両方が伸長され、Δ5-およびΔ6-不飽和脂肪酸が優勢に認められる。

ベクターpYES2-ELO(Xl)で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。ついで、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

ELO(Ci)の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図23)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(ELO(Ci)反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子ELO(Ci)が機能的に発現されたことを意味する。

表14は、ELO(Ci)が広範な基質特異性を有することを示している。C18およびC20脂肪酸の両方が伸長され、Δ5-およびΔ6-不飽和脂肪酸が優勢に認められる。

ベクターpYES2-ELO(Ci)で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。ついで、無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

実施例43:Ostreococcus tauriからの遺伝子のクローニング Δ5-エロンガーゼ活性またはΔ6-エロンガーゼ活性を有する本明細書に記載のエロンガーゼ遺伝子を用いてタンパク質配列内の保存領域を検索することにより、Ostreococcus tauri配列データベース(ゲノム配列)において対応モチーフを有する各場合に2つの配列を同定することができた。該配列は以下のとおりであった。

OtElo1およびOtElo1.2はDanio rerio由来のエロンガーゼ(GenBank AAN77156; 約26%の同一性)に対して最も高い類似性を示し、OtElo2およびOtElo2.1はPhyscomitrella Elo(PSE)に対して最大の類似性を示す[約36%の同一性](アライメントは、tBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410)を使用して行った)。

該エロンガーゼは以下のとおりにクローニングした。 定常期の40mlのOstreococcus tauri培養物を遠心し、ペレットを100μlの二重蒸留水に再懸濁させ、-20℃で保存した。PCR法に基づき、それぞれのゲノムDNAを増幅した。それぞれのプライマーペアを、開始コドンに隣接する高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するよう選択した。各場合に1μlの解凍細胞、200μM dNTP、2.5U Taqポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、OtElo-DNAを増幅した。PCR条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

実施例44:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング Ostreococcus tauriエロンガーゼの機能を特徴づけするために、対象DNAのオープンリーディングフレームをpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングして、対応するpOTE1、pOTE1.2、pOTE2およびpOTE2.1クローンを得る。

Saccharomyces cerevisiae株334をエレクトロポレーション(1500V)によりベクターpOTE1、pOTE1.2、pOT22、pOTE2.1のそれぞれで形質転換する。ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として使用する。2%グルコースを添加しているがウラシルを欠く完全-最少培地(CMdum)寒天プレート上で形質転換酵母を選択する。選択後、各場合において3個の形質転換体を更なる機能的発現のために選択する。

Otエロンガーゼを発現させるために、各場合に、2%(w/v)ラフィノースを添加しているがウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地よりなる前培養物に、まず、選択した形質転換体を接種し、それを30℃、200rpmで2日間インキュベートする。ついで、2%のラフィノースおよび300μMの種々の脂肪酸を添加した5mlのCMdum液体培地(ウラシルを含有しない)に該前培養物を、OD600が0.05となるよう接種する。2%(w/v)のガラクトースの添加により発現を誘導する。培養を20℃で更に96時間インキュベートする。

実施例45:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製する。この目的のため、PCRを用いて、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入する。対応するプライマー配列は、OtElo1、OtElo1.2、OtElo2およびOtElo2.1の5'および3'領域から誘導する。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および該ベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-OtELO1、pSUN-OtELO1.2、pSUN-OtELO2およびpSUN-OtELO2.2を配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens TiプラスミドからのOstreococcus遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、PCR反応および標準的な方法を用いて増幅した。 (プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3')(配列番号130)。

該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に導入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

実施例46:酵母内でのOtElo1、OtElo1.2、OtElo2およびOtELO2.2の発現 実施例15に記載のようにしてプラスミドpYES3、pYES3-OtELO1、pYES3-OtELO1.2、pYES3-OtELO2およびpYES3-OtELO2.2で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例47:OtElo1、OtElo1.2、OtElo2およびOtELO2.1の機能的特徴づけ OtElo1の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(表15)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OtElo1反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子OtElo1が機能的に発現されたことを意味する。

表15は、OtElo1およびOtElo1.2が狭い基質特異性を有することを示している。OtElo1およびOtElo1.2は、C20-脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(図24A、24B)およびアラキドン酸(図25A、25B)を伸長させうるに過ぎなかったが、ω3-不飽和化エイコサペンタエン酸を優先した。

表15は、種々の脂肪酸と比較した、Δ5位に二重結合を有するC20-不飽和脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo1およびOtElo1.2の基質特異性を示す。

それぞれベクターpOTE1およびpOTE1.2で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

OtElo1(配列番号81)、OtElo2.1(配列番号111)の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(表16)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(OtElo2反応の産物)の合成を示した。これは、遺伝子OtElo2およびOtElo2.1が機能的に発現されたことを意味する。

表16は、種々の脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo2およびOtElo2.1の基質特異性を示す。OtElo2.1の活性は顕著に高い。

ベクターpOTE2およびpOTE2.1でそれぞれ形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。

表16に示す酵素活性は、OtElo2またはOtElo2.1がΔ6-エロンガーゼであることを明らかに示している。

図24 A-Dは、それぞれOtElo1(B)およびOtElo1.2(D)によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。対照(A、C)は伸長産物(22:5ω3)を示さない。

図25 A-Dは、それぞれOtElo1(B)およびOtElo1.2(D)によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。対照(A、C)は伸長産物(22:4ω6)を示さない。

実施例48:Euglena gracilisおよびArabidopsis thalianaからのエロンガーゼ遺伝子のクローニング Δ5-エロンガーゼ活性またはΔ6-エロンガーゼ活性を有する本出願に詳述するエロンガーゼ遺伝子を用いてタンパク質配列内の保存領域を検索することにより、配列データベース(Genbank, Euglena ESTライブラリー)において対応モチーフを有するArabidopsis thalianaおよびEuglena gracilisのそれぞれからの配列を同定することができた。該配列は以下のとおりである。

Euglena gracilisエロンガーゼは以下のとおりにクローニングした。 Euglena gracilis株1224-5/25をSammlung fuer Algenkulturen Goettingen [Goettingen collection of algal cultures] (SAG)から入手した。単離のために、該株を培地II(Calvayrac RおよびDouce R, FEBS Letters 7:259-262, 1970)内で8時間/16時間の明/暗周期(光強度35 mol s-1m-2)で23℃で4日間増殖させた。

4日齢のEuglena培養物の全RNAを、Qiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasyキットを使用して単離した。オリゴ-dt-セルロース(Sambrookら, 1989)を使用して、ポリA+ RNA(mRNA)を全RNAから単離した。Promegaの逆転写システムキットを使用して該RNAを逆転写に付し、合成されたcDNAをベクターλZAP(lambda ZAP Gold, Stratagene)内にクローニングした。該製造業者の使用説明書に従い該cDNAを取り出してプラスミドDNAを生成し、クローンをランダムシークエンシングにより部分配列決定した。polyATract単離システム(Promega)を使用して、全RNAからmRNAを単離した。Marathon cDNA増幅キット(BD Biosciences)を使用して、該mRNAを逆転写に付し、該製造業者の使用説明書に従いアダプターを連結した。ついで、5'-および3'-RACE(rapid amplification of cDNA ends)による発現プラスミドのクローニングのためのPCRに、該cDNAライブラリーを使用した。

Arabidopsis thalianaエロンガーゼは以下のとおりにクローニングした。 ゲノムDNAから、2つの遺伝子に対するプライマーを、各場合についてオープンリーディングフレームの5'および3'末端にて誘導した。

A. Thalianaから全RNAを単離するために、Chrigwinら, (1979)の方法を用いた。21日齢の植物の葉を、液体窒素中、乳棒および乳鉢で粉砕し、破壊バッファーで処理し、37℃で15分間インキュベートした。遠心分離(10分間、4℃、12 000×g)後、上清中のRNAを0.02容量の3M酢酸ナトリウム(pH 5.0)および0.75容量のエタノールで-20℃で5時間沈殿させた。ついで更なる遠心工程の後、該RNAを出発物質1g当たり1mlのTES中に取り、1容量のフェノール/クロロホルムで1回、および1容量のクロロホルムで1回抽出し、該RNAを2.5M LiClで沈殿させた。それに続く遠心分離および80%エタノールでの洗浄の後、該RNAを水に再懸濁させた。Sambrookら 1989に記載されているとおりにcDNAを合成し、誘導されたプライマーを使用してRT-PCRを行った。PCR産物をベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)内に該製造業者の使用説明書に従いクローニングした。

実施例49:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング A. thalianaデサチュラーゼの機能を特徴づけするために、対象DNAのオープンリーディングフレームをpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングして、対応するpAt60およびpAt70クローンを得る。

Saccharomyces cerevisiae株334をエレクトロポレーション(1500V)によりベクターpAt60およびpAt70でそれぞれ形質転換する。ブランクベクターpYES2.1で形質転換した酵母を対照として使用する。2%グルコースを添加しているがウラシルを欠く完全-最少培地(CMdum)寒天プレート上で形質転換酵母を選択する。選択後、各場合において3個の形質転換体を更なる機能的発現のために選択する。

Atエロンガーゼを発現させるために、各場合に、2%(w/v)ラフィノースを添加しているがウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地の前培養物に、まず、選択した形質転換体を接種し、それを30℃、200rpmで2日間インキュベートする。

ついで、2%のラフィノースおよび300μMの種々の脂肪酸を添加した5mlのCMdum液体培地(ウラシルを含有しない)に該前培養物を、OD600が0.05となるよう接種した。2%(w/v)のガラクトースの添加により発現を誘導した。培養を20℃で更に96時間インキュベートした。

実施例50:酵母内でのpAt60およびpAt70の発現 実施例5に記載のようにしてプラスミドpYES2.1、pAt60およびpAt70で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。

対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例51:pAt60およびpAt70の機能的特徴づけ エロンガーゼAt3g06460およびAt3g06470の基質特異性を、それぞれ、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(表17、図26)。供給した基質は該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量に検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(それぞれ遺伝子At3g06460およびAt3g06470の産物)の合成を示した。これは、これらの遺伝子が機能的に発現されたことを意味する。

図26はエロンガーゼAt3g06470による20:5n-3の伸長を示す。

実施例52:Phaeodactylum tricornutumからのエロンガーゼのクローニング 本出願に詳述するΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いてタンパク質配列内の保存領域から縮重プライマーを作製し、それらのプライマーを用いてPCRによりPhaeodactylum cDNAライブラリーのスクリーニングを行った。以下のプライマー配列を使用した。

括弧内のヌクレオチド塩基は、各場合に一方または他方のヌクレオチド塩基とのオリゴヌクレオチドの混合物が存在することを意味する。

Phaeodactylum cDNAライブラリーの調製: P. tricornutum UTEX 646の2L培養物をf/2培地(Guillard, R.R.L. 1975. Culture of phytoplankton for feeding marine invertebrates. In Culture of Marine Invertebrate Animals (Smith, W.L.およびChanley, M.H.編), Plenum Press, New York, pp 29-60)中で35 E/cm2の光強度で14日間増殖させた。遠心分離後、凍結細胞を液体窒素の存在下で微細粉末に粉砕し、2mlのホモジナイゼーションバッファー(0.33 M ソルビトール, 0.3 M NaCl, 10 mM EDTA, 10 mM EGTA, 2% SDS, 2% メルカプトエタノールを含む0.2 M Tris-Cl(pH 8.5))に再懸濁させた。4mlのフェノールおよび2mlのクロロホルムの添加後、該混合物を45〜50℃で激しく15分間振とうした。ついでそれを遠心分離(10分間×10 000g)し、クロロホルムを使用して水相を段階的に抽出した。ついで核酸を1/20容量の4M炭酸水素ナトリウム溶液の添加により沈殿させ、遠心分離した。ペレットを80mM Tris-ホウ酸(pH 7.0)および1mM EDTA中に取り、RNAを8M塩化リチウムで沈殿させた。遠心分離および70%エタノールでの洗浄後、RNAペレットをRNアーゼフリー水中に取った。ポリ(A)-RNAをDynabeads(Dynal, Oslo, Norway)で、該製造業者の使用説明書に従い単離し、Roche(Mannheim)のMLV-Rtaseを使用して第1鎖cDNA合成を行った。ついでDNAポリメラーゼIおよびクレノウフラグメントを使用して第2鎖合成を行い、ついでRNアーゼH消化を行った。cDNAをT4 DNAポリメラーゼで処理し、ついでT4リガーゼによりEcoRI/XhoIアダプター(Pharmacia, Freiburg)を連結した。XhoI消化、リン酸化およびゲル分離の後、300bpより大きな断片をファージλZAP Express中に製造業者(Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)の使用説明書に従い連結した。cDNAライブラリーの大量切断およびプラスミド回収の後、該プラスミドライブラリーを大腸菌(E. coli)DH10B細胞内に形質転換し、PCRスクリーニングに使用した。

前記縮重プライマーを使用して、配列番号187を有するPCR断片を作製することができた。

この断片をジゴキシゲニン(Roche, Mannheim)で標識し、ファージライブラリーのスクリーニングのためのプローブとして使用した。

配列番号187の配列を使用して、PhaeodactylumΔ6-エロンガーゼの完全長RNA分子を構成する配列番号183の遺伝子配列を得ることができた。

実施例53:酵母内での異種発現のための発現プラスミドのクローニング 対象プライマーペアを、開始コドンに隣接する高効率翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を含有するよう選択した。各場合に1μlのcDNA、200μM dNTP、2.5U Advantageポリメラーゼおよび100pmolの各プライマーを含む全量50μlを使用して、PtELO6 DNAを増幅した。PCR条件は以下のとおりであった:95℃で5分間の最初の変性、ついで94℃で30秒間、55℃で1分間および72℃で2分間を30サイクル、ならびに72℃で10分間の最終伸長工程。

酵母内での異種発現のための配列のクローニングのためのPCR反応に、以下のオリゴヌクレオチドを使用した。

PCR産物を、酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に、該製造業者の使用説明書に従い、21℃で30分間インキュベートした。PCR産物(配列番号192を参照されたい)を、トポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性およびT突出部を利用して該ベクター内に連結した。インキュベーション後、大腸菌(E. coli)DH5α細胞を形質転換した。適当なクローンをPCRにより同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasyキットにより単離し、配列決定により確認した。ついで正しい配列をエレクトロポレーション(1500V)によりSaccharomyces株INVSc1(Invitrogen)内に形質転換した。対照として、並行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。ついで該酵母を、2%グルコースを添加したウラシル不含最少培地上にプレーティングした。したがって、該培地でウラシル無しで増殖することができた細胞は対応プラスミドpYES2.1およびpYES2.1-PtELO6を含む。選択後、更なる機能的発現のために各場合について2つの形質転換体を選択した。

実施例54:植物内での種子特異的発現のための発現プラスミドのクローニング 植物を形質転換するために、pSUN-USPに基づくもう1つの形質転換ベクターを作製した。この目的のため、以下のプライマーペアを使用して、NotI切断部位をコード配列の5'および3'末端に導入した。

PSUN-PtELO6 フォワード: 5'-GCGGCCGCACCATGATGGTACCTTCAAGTTA (配列番号190)、 リバース: 3'-GAAGACAGCTTAATAGGCGGCCGC (配列番号191)。

PCR混合物(50μl)の組成: 5.00μlの鋳型cDNA、 5.00μlの10×バッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl2、 5.00μlの2mM dNTP、 1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)、 0.50μlのAdvantageポリメラーゼ ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

PCR反応条件: アニーリング温度:55℃で1分間、 変性温度:94℃で1分間、 伸長温度:72℃で2分間、 サイクル数:35。

PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にしてインキュベートした。ついで該PCR産物および7624bpのベクターをアガロースゲル電気泳動により分離し、対応するDNA断片を切り出した。該DNAをQiagenゲル精製キットにより、該製造業者の使用説明書に従い精製した。ついでベクターおよびPCR産物を連結した。RocheのRapid Ligationキットをこの目的に使用した。得られたプラスミドpSUN-PtELOを配列決定により確認した。

pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz, P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。pSUN-USPは、USPプロモーターをEcoRI断片としてpSUN300中に挿入することによりpSUN300から誘導されたものである。ポリアデニル化シグナルは、A. tumefaciens Tiプラスミドからのオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター, GenbankアクセッションV00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.およびSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。USPプロモーターはヌクレオチド1-684(GenbankアクセッションX56240)に対応し、ここで、USP遺伝子の非コード領域の部分が該プロモーター内に存在する。684塩基対のサイズのプロモーター断片を、商業的に入手可能なT7標準プライマー(Stratagene)および合成プライマーを使用して、標準的な方法に従うPCR反応により増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'; 配列番号151)。

該PCR断片を再びEcoRI/SalIで切断し、OCSターミネーターを有するベクターpSUN300内に導入した。これは、pSUN-USPと称されるプラスミドを与えた。該構築物をシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、アブラナ、タバコおよび亜麻仁の形質転換に使用した。

酵母および種子からの脂質抽出は、実施例6に記載のようにして行った。

実施例55:酵母内でのPtEloの発現 実施例4に記載のようにしてプラスミドpYES2およびpYES2-PtELO6で形質転換された酵母を以下のとおりに分析した。

主培養物からの酵母細胞を遠心分離(100×g, 5分間, 20℃)により集め、100mM NaHCO3(pH 8.0)で洗浄して残留培地および脂肪酸を除去した。酵母細胞沈降物から出発して、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスにより調製した。この目的のため、該細胞沈降物を2mlの1N メタノール硫酸および2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。FAMEを、石油エーテル(PE)で2回抽出した。未誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相を2mlの100mM NaHCO3(pH8.0)および2mlの蒸留水で各場合に1回洗浄した。ついでPE相をNa2SO4で乾燥させ、アルゴン下で蒸発させ、100μlのPE中に取った。該サンプルを水素炎イオン化検出器を備えたHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフにてDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。該GLC分析のための条件は以下のとおりであった:オーブン温度を5℃/分の速度で50℃から250℃へ、そして最終的には250℃(保持)で10分間に設定した。対応する脂肪酸標品(Sigma)と保持時間を比較することにより、シグナルを同定した。該方法は、例えばNapierおよびMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298 ならびにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

実施例56:PtELO6の機能的特徴づけ 図29はC18:3Δ6,9,12およびC18:4Δ6,9,12,15の変換を示す。これら基質は各場合に2個の炭素原子によって伸長され、それぞれ脂肪酸C20:3Δ8,11,14およびC20:4Δ8,11,14,17が生成する。PtELO6の基質特異性を、発現および種々の脂肪酸の供給後に測定した(図30)。該トランスジェニック酵母のすべてにおいて大量の供給基質が検出されうる。該トランスジェニック酵母は新たな脂肪酸(PtElo6反応の産物)の合成を示す。これは、遺伝子PtELO6が機能的に発現されたことを意味する。

表18は、PtElo6が狭い基質特異性を有することを示している。PtELO6は、C18-脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸およびステアリドン酸を伸長させうるに過ぎなかったが、ω3-不飽和化ステアリドン酸を優先した(図30も参照されたい)。

供給実験:脂肪酸(太字)を各場合に250μmで加えた。下線を付した脂肪酸の生成は新規である。

以下の脂肪酸は供給されたが、変換されなかった。 ・18:1Δ6, 18:1Δ9, 18:1Δ11 ・20:2Δ11,14, 20:3Δ11,14,17, 20:3Δ8,11,14, 20:4Δ5,8,11,14, 20:5Δ5,8,11,14,17 ・22:4Δ7,10,13,16

ベクターpYES2-PtELO6で形質転換した酵母を、示されている脂肪酸の存在下、最少培地で増殖させた。無傷細胞を酸メタノリシスに付すことにより、脂肪酸メチルエステルを合成した。ついでFAMEをGLCにより分析した。このようにして、図29および30ならびに表16に示す結果を得た。

均等物: 本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態の多数の均等物が、単に通常の実験を行うことにより当業者により同定され又は見出されうる。これらの均等物は特許請求の範囲の範囲内であると意図される。

QQ群二维码
意见反馈