Method for producing a polyunsaturated fatty acid in transgenic plants

申请号 JP2007500134 申请日 2005-02-23 公开(公告)号 JP4567047B2 公开(公告)日 2010-10-20
申请人 ビーエーエスエフ プラント サイエンス ゲーエムベーハー; 发明人 ウー,グオハイ; キウ,シャオ; シルプス,ペトラ; ダトラ,ナガマニ; バウアー,ヨルグ;
摘要
权利要求
  • トランスジェニック植物の種子中に、総脂質含量に基づいて少なくとも20重量%の含量で、 C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸を産生させる方法であって、次のステップ:
    a) 該生物にΔ6-デサチュラーゼ活性 を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および
    b) 該生物に、Δ6-エロンガーゼ活性 を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および
    c) 該生物に、Δ5-デサチュラーゼ活性 を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および
    d) 該生物に、Δ5-エロンガーゼ活性 を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および
    e) 該生物に、Δ4-デサチュラーゼ活性 を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、
    を含 む、前記方法。
  • トランスジェニック植物の種子において、全ての C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸を一緒にした含量が、総脂質含量に基づき少なくとも27重量%である、 請求項1に記載の方法。
  • トランスジェニック植物の種子において、ドコサヘキサエン酸含量が、総脂質含量に基づき少なくとも1重量%である、 請求項1に記載の方法。
  • Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列が、
    a) Δ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、配列番号193に記載の配列を有する核酸配列、もしくは配列番号194に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して誘導可能な核酸配列、もしくは配列番号193に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号194に記載のアミノ酸配列とアミノ酸レベルで少なくとも80%同一性を有し、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、または、
    b) Δ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、配列番号27に記載の配列を有する核酸配列、もしくは配列番号28に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して誘導可能な核酸配列、もしくは配列番号27に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号28に記載のアミノ酸配列とアミノ酸レベルで少なくとも80%同一性を有し、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、または、
    c) Δ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、配列番号11に記載の配列を有する核酸配列、もしくは配列番号12に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して誘導可能な核酸配列、もしくは配列番号11に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号12に記載のアミノ酸配列とアミノ酸レベルで少なくとも80%同一性を有し、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、または、
    d) Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、配列番号83に記載の配列を有する核酸配列、もしくは配列番号84に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して誘導可能な核酸配列、もしくは配列番号83に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号84に記載のアミノ酸配列とアミノ酸レベルで少なくとも80%同一性を有し、かつΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、または、
    e) Δ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、配列番号41に記載の配列を有する核酸配列、もしくは配列番号42に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して誘導可能な核酸配列、もしくは配列番号41に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号42に記載のアミノ酸配列とアミノ酸レベルで少なくとも80%同一性を有し、かつΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、
    からなる群より選択される、 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  • ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、
    a) 配列番号87もしくは配列番号105に記載の配列を有する核酸配列、または、
    b) 配列番号88もしくは配列番号106に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して導出可能な核酸配列、または、
    c) 配列番号87もしくは配列番号105に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号88もしくは配列番号106とアミノ酸レベルで少なくとも 80 %の同一性を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、
    からなる群より選択される前記核酸配列をトランスジェニック植物にさらに導入する、 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  • Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、
    a) 配列番号107、配列番号109もしくは配列番号195に記載の配列を有する核酸配列、または、
    b) 配列番号108、配列番号110もしくは配列番号196に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して導出可能な核酸配列、または、
    c) 配列番号107、配列番号109もしくは配列番号195に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号108、配列番号110もしくは配列番号196とアミノ酸レベルで少なくとも 80 %の同一性を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、
    からなる群より選択される前記核酸配列をトランスジェニック植物にさらに導入する、 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  • アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾホスフォリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝の生合成経路のタンパク質をコードする核酸配列をトランスジェニック植物にさらに導入する、 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  • トランスジェニック植物が、油産生植物、栄養植物または観賞植物からなる群より選択される、 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  • トランスジェニック生物が、ウルシ科(Anacardiaceae)、キク科(Asteraceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、アサ科(Cannabaceae)、キク科(Compositae)、アブラナ科(Cruciferae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、アカバナ科(Onagraceae)、ボロボロボキ科(Olacaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、コショウ科(Piperaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、イネ科(Poaceae)またはナス科(Solanaceae)からなる植物科の群より選択されるトランスジェニック植物である、 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  • C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸が、油、脂質または遊離脂肪酸の形態で生物から分離される、 請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  • 全ての核酸配列が、共通の組換え核酸分子上で植物に導入される、 請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
  • 各々の核酸配列が、自身のプロモーターの制御下にある、 請求項11に記載の方法。
  • 自身のプロモーターが、種子特異的プロモーターである、 請求項12に記載の方法。
  • 植物が、脂肪種子植物または脂肪果実植物である、 請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
  • 植物が、ダイズ、落花生、アブラナ、キャノーラ、アマニ、月見草、ビロードモウズイカ、アザミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、月桂樹、野バラ、カボチャ/スカッシュ、ピスタチオ、ゴマ、ヒマワリ、ベニバナ、ボリジ、トウモロコシ、ケシ、カラシ、麻、ヒマ、オリーブ、キンセンカ、ザクロ、油ヤシ、クルミおよびココナッツからなる群より選択される、 請求項14に記載の方法。
  • 植物がカラシ(Brassica juncea)である、 請求項14または15に記載の方法。
  • C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸が、油、脂質または遊離脂肪酸の形態で植物から得られる、 請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
  • 不飽和または飽和脂肪酸が、 C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸から遊離している、 請求項17に記載の方法。
  • 遊離がアルカリ性加水分解または酵素切断によりもたらされる、 請求項18に記載の方法。
  • アラキドン酸濃度が、トランスジェニック植物の総脂質含量に基づき少なくとも25%である、 請求項11〜19のいずれか1項に記載の方法。
  • エイコサペンタエン酸濃度が、トランスジェニック植物の総脂質含量に基づき少なくとも15%である、 請求項11〜20のいずれか1項に記載の方法。
  • C18-、C20-および/またはC22-多価不飽和脂肪酸が、油、脂質または遊離脂肪酸の形態で生物から分離される、 請求項11〜21のいずれか1項に記載の方法。
  • 说明书全文

    本発明は、トランスジェニック植物の種子における多価不飽和脂肪酸の製造方法に関し、この方法は、生物に、ω3-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ活性活性を有するポリペプチド、好ましくはΔ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼおよびΔ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を導入することによる。

    核酸配列は、配列番号11、配列番号27、配列番号193、配列番号197、配列番号199および配列番号201に示す配列である。 好ましくは、これらの核酸配列に加え、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするさらなる核酸配列を植物中にさらに導入し、同時発現させる。 特に好ましくは、これは配列番号195に示す核酸配列である。

    これらの核酸配列は、脂肪酸生合成または脂質代謝のポリペプチドをコードするさらなる核酸配列と一緒に発現させるのが適当であるならば、都合良く生物中で発現させてもよい。 Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ活性をコードする核酸配列は特に都合がよい。 これらのデサチュラーゼおよびエロンガーゼは、都合良く珪藻(Thalassiosira)、ミドリムシ(Euglena)またはオストレオコッカス(Ostreococcus)に由来する。 さらに、本発明は、長鎖多価不飽和脂肪酸含量の増加した油および/またはトリアシルグリセリドの製造方法に関する。

    好ましい実施形態において、本発明はさらにアラキドン酸、エイコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸の製造方法に関し、増加した不飽和脂肪酸(特にアラキドン酸、エイコサペンタエン酸、および/またはドコサヘキサエン酸)含量を有するトリグリセリドを、トランスジェニック植物中、有利にはトランスジェニック植物の種子中で産生させる方法に関する。 本発明は、多価不飽和脂肪酸(特にアラキドン酸、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸)含量の増加したトランスジェニック植物の製造に関し、この含量の増加は本発明の方法に用いるエロンガーゼおよびデサチュラーゼの発現に起因するものである。

    本発明はさらに、Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を一緒にまたは別々に含有する組換え核酸分子、ならびに、前記組換え核酸分子を含有するトランスジェニック植物に関する。

    さらに本発明の一部分は、本発明の方法によって産生される油、脂質、および/または脂肪酸、ならびにこれらの使用に関する。 さらに、本発明は、不飽和脂肪酸、および不飽和脂肪酸含量の増大したトリグリセリド、ならびにこれらの使用に関する。

    脂質合成は2部に分類することができる:すなわち、脂肪酸の合成とsn-グリセロール-3-リン酸へのそれらの結合、ならびに、極性頭部基の付加または修飾である。 膜に使用される通常の脂質としては、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質およびホスホグリセリドが挙げられる。 脂肪酸合成は、アセチル-CoAカルボキシラーゼによるアセチル-CoAのマロニル-CoAへの変換、または、アセチルトランスアシラーゼによるアセチル-CoAのアセチル-ACPへの変換をもって開始される。 縮合反応後、これらの2つの産物分子は一緒になってアセトアセチル-ACPを形成し、アセトアセチル-ACPは一連の縮合、還元および脱反応により変換され、所望の鎖長の飽和脂肪酸分子が得られる。 これらの分子からの不飽和脂肪酸の生成は、特定のデサチュラーゼにより分子酸素により触媒され、触媒は好気的に、または嫌気的に行われる(微生物における脂肪酸合成に関しては、FC Neidhardt ら(1996) E. coli and Salmonella. ASM Press: Washington, DC, p. 612-636およびそこに引用されている文献;Lengelerら(編) (1999) Biology of Procaryotes. Thieme: Stuttgart, New York, およびそこに引用されている文献、ならびにMagnuson, K.,ら(1993) Microbiological Reviews 57:522-542およびそこに引用されている文献を参照のこと)。 さらなる伸長ステップを踏むには、結果として生じるリン脂質結合型脂肪酸が、脂肪酸CoAエステルプールに戻されなければならない。 これはアシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼにより実現される。 さらに、これらの酵素はCoAエステルから伸長した脂肪酸を、リン脂質に再び転移させる能を有する。 適当ならば、この一連の反応を繰り返し行ってもよい。

    さらに、脂肪酸はその後、種々の修飾のための場所へと輸送され、トリアシルグリセロール貯蔵脂質へと組み入れられる必要がある。 脂質合成におけるさらなる重要なステップは、脂肪酸を、例えばグリセロール脂肪酸アシルトランスフェラーゼなどにより、極性頭部基へと転移させるステップ(Frentzen, 1998, Lipid, 100(4-5):161-166を参照されたい)である。

    刊行物として植物における脂肪酸の生合成、不飽和化、脂質代謝および脂質性化合物の膜輸送、ベータ酸化、脂肪酸および補因子の修飾、ならびにトリアシルグリセロールの貯蔵と会合に関するものについては、次の論文およびそれらに引用されている文献を参照されたい:Kinney, 1997, Genetic Engineering, 編: JK Setlow, 19:149-166; Ohlrogge and Browse, 1995, Plant Cell 7:957-970; Shanklin and Cahoon, 1998, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 49:611-641; Voelker, 1996, Genetic Engineering, 編集: JK Setlow, 18:111-13; Gerhardt, 1992, Prog. Lipid R. 31:397-417; Guhnemann-Schafer & Kindl, 1995, Biochim. Biophys Acta 1256:181-186; Kunau ら, 1995, Prog. Lipid Res. 34:267-342; Stymne ら, 1993, in: Biochemistry and Molecular Biology of Membrane and Storage Lipids of Plants, 編: Murata and Somerville, Rockville, American Society of Plant Physiologists, 150-158, Murphy & Ross 1998, Plant Journal. 13(1):1-16。

    以下の記載において、多価不飽和脂肪酸のことを、PUFA、またはLCPUFA(多価不飽和脂肪酸p oly u nsaturated f atty a cids, PUFA , 長鎖多価不飽和脂肪酸l ong c hain p oly u nsaturated f atty a cids, LCPUFA )と呼ぶ。

    脂肪酸およびトリアシルグリセリドは、食品産業、家畜飼料、化粧品、および薬理の分野において複数の用途を有する。 遊離の飽和もしくは不飽和脂肪酸であるか、または飽和もしくは不飽和脂肪酸含量の増大したトリアシルグリセリドであるかによって、これらは非常に広範な用途に適当である。 リノール酸やリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸は、哺乳動物によって合成され得ないことから、該動物において必須である。 このことから、多価不飽和ω3-脂肪酸およびω6-脂肪酸はヒトおよび動物の食料の重要な成分である。 従って、例えば、不飽和脂肪酸を有する脂質、特に多価不飽和脂肪酸を有する脂質は、ヒトの栄養に好ましい。 多価不飽和ω3-脂肪酸は、血中コレステロールレベルに好ましい効果を有するとされ、そのことから心疾患の予防にもプラスの効果を有するとされる。 心疾患、脳卒中または高血圧のリスクは、これらのω3-脂肪酸を食品に添加することにより有意に低減させることができる(Shimikawa 2001, World Rev. Nutr. Diet. 88, 100-108)。

    ω3-脂肪酸はまた、関節リウマチなどの免疫疾患と関連する炎症、特に慢性炎症過程に好ましい効果を有する(Calder 2002, Proc. Nutr. Soc. 61, 345-358; Cleland and James 2000, J. Rheumatol. 27, 2305-2307)。 従ってω3-脂肪酸は食品、特にダイエット食品に添加されるか、または医薬に利用される。 アラキドン酸などのω6-脂肪酸は、これらのリウマチ疾患に関して好ましくない効果を有する傾向がある。

    ω3-およびω6-脂肪酸は、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸から誘導されるプロスタグランジンなど、ならびに、アラキドン酸およびエイコサペンタエン酸から誘導されるトロンボキサンおよびロイコトリエンなどの、エイコサノイドとして知られる組織ホルモンの前駆体である。 ω6-脂肪酸から形成されるエイコサノイド(PG 2系列と呼ばれる)は、一般に炎症反応を促進するのに対して、ω3-脂肪酸由来のエイコサノイド(PG 3系列と呼ばれる)は、炎症促進効果を殆どあるいは全く有しない。

    エイコサペンタエン酸(=EPA、C20:5 Δ5,8,11,14,17 )またはドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6 Δ4,7,10,13,16,19 )などの多価不飽和長鎖ω3-脂肪酸はヒトの栄養に重要な成分であるが、これは健康面における前記脂肪酸の種々の役割に起因するものであり、そうした役割としては例えば小児の脳の発達、目の機能性、ホルモンおよび他のシグナル伝達物質の合成、ならびに心疾患、癌および糖尿病の予防が挙げられる(Poulos, A Lipids 30:1-14, 1995; Horrocks, LA and Yeo YK Pharmacol Res 40:211-225, 1999)。 従って、多価不飽和長鎖脂肪酸の製造に対する要求が存在する。

    今日のヒトの食物の組成に起因して、食物への多価不飽和ω3-脂肪酸(魚油に多く存在する)の添加は特に重要である。 従って、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6 Δ4,7,10,13,16,19 )またはエイコサペンタエン酸(=EPA、C20:5 Δ5,8,11,14,17 )などの多価不飽和脂肪酸は、栄養価を高めるために乳児用ミルクに添加される。 不飽和脂肪酸であるDHAは、脳機能の発達および維持にプラスの効果を有するとされている。 従って、多価不飽和長鎖脂肪酸の製造に対する要求が存在する。

    種々の脂肪酸およびトリグリセリドは、主に微生物(例えばモルティエレラ属(Mortierella)もしくはシゾキトリウム属(Schizochytrium))から、または油産生植物(例えばダイズ、アブラナ、クリプセコジニウム属(Crypthecodinium)やファエオダクティラム属(Phaeodactylum)などの藻類)から得られ、一般にトリアシルグリセリド(=トリグリセリド=トリグリセロール)の形態で得られる。 また一方、前記脂肪酸およびトリグリセリドは、動物、例えば魚からも得られる。 遊離脂肪酸は都合良く加水分解により調製される。 しかしながら、EPA、DHA、アラキドン酸(ARA、C20:4 Δ5,8,11,14 )、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3 Δ8,11,14 )またはドコサペンタエン酸(DPA、C22:5 Δ7,10,13,16,19 )などの超長鎖多価不飽和脂肪酸は、アブラナ、ダイズ、ヒマワリおよびベニバナなどの油料作物では合成されない。 こうした脂肪酸の従来の天然の供給源は、例えばニシン、サーモン(salmon)、イワシ、サケ(redfish)、ウナギ、コイ、マス、ハリバ、サバ、ザンダー、もしくはマグロなどの魚、または藻類である。

    意図される用途によって、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸を含む油が好ましい。 ヒトの栄養においては、例えば不飽和脂肪酸、特に多価不飽和脂肪酸を含む脂質が好ましい。 多価不飽和ω3-脂肪酸は、血中のコレステロールレベルに好ましい効果を有するとされ、このことから心疾患の予防性にプラスの効果を有するとされる。 心疾患、脳卒中または高血圧のリスクは、これらのω3-脂肪酸を食品に添加することにより有意に低減させることができる。 またω3-脂肪酸は関節リウマチなどの免疫疾患と関連する炎症、特に慢性炎症過程に好ましい効果を有する。 従ってω3-脂肪酸は食品、特にダイエット食品に添加されるか、または医薬に利用される。 アラキドン酸などのω6-脂肪酸は、通常の食事摂取に起因して、これらのリウマチ疾患との関連においてこれらの疾患に好ましくない効果を示す傾向がある。

    これらの脂肪酸もしくはトリグリセリドは好ましい特徴を有することから、それらの合成に関わる遺伝子を、種々の生物において不飽和脂肪酸含量の改変された油を産生させるために利用可能にする試みは、これまでにも成されてきた。 かくして国際公開第91/13972号パンフレットおよびその米国での対応明細書はΔ9-デサチュラーゼを記載している。 国際公開第93/11245号パンフレットはΔ15-デサチュラーゼをクレームしており、国際公開第94/11516号パンフレットはΔ12-デサチュラーゼをクレームしている。 さらなるデサチュラーゼは、例えば欧州特許出願公開第0 550 162号明細書、国際公開第94/18337号パンフレット、国際公開第97/30582号パンフレット、国際公開第97/21340号パンフレット、国際公開第95/18222号パンフレット、欧州特許出願公開第0 794 250号明細書、Stukey ら, J. Biol. Chem., 265, 1990: 20144-20149、Wada ら, Nature 347, 1990: 200-203またはHuang ら, Lipids 34, 1999: 649-659に記載されている。 しかしながら、種々のデサチュラーゼの生化学的特徴付けは、酵素が膜結合型タンパク質であり分離と特徴付けが非常に困難であることから、今日まで不十分であった(McKeon ら, Methods in Enzymol. 71, 1981: 12141-12147、Wang ら, Plant Physiol. Biochem., 26, 1988: 777-792)。 一般に、膜結合型デサチュラーゼの特徴付けは、該デサチュラーゼを適当な生物に導入し、その後出発物質および生成物を調べることで酵素活性を解析することにより行う。 Δ6-デサチュラーゼは、国際公開第93/06712号パンフレット、米国特許第5,614,393号明細書、米国特許第5614393号明細書、国際公開第96/21022号パンフレット、国際公開第00/21557号パンフレットおよび国際公開第99/27111号パンフレットに記載されている。 トランスジェニック生物における脂肪酸産生のための酵素の利用は、国際公開第98/46763号パンフレット、国際公開第98/46764号パンフレットおよび国際公開第98/46765号パンフレットに記載されている。 種々のデサチュラーゼの発現は国際公開第99/64616号パンフレットまたは国際公開第98/46776号パンフレットに記載されクレームされている。 デサチュラーゼの発現効率および多価不飽和脂肪酸の形成に対するその影響に関しては、今日まで記載されたように単一のデサチュラーゼを発現させることは、結果として低い含量の不飽和脂肪酸/脂質、例えばγ-リノレン酸およびステアリドン酸などしか生じていないことに留意されたい。

    これまでにエロンガーゼ遺伝子を取得する試みはいくつかなされてきた。 Millar and Kunst, 1997 (Plant Journal 12:121-131)およびMillar ら, 1999 (Plant Cell 11:825-838)は、モノ不飽和長鎖脂肪酸(C22:1)合成、および植物中でのワックス(C 28 〜C 32 )形成のための超長鎖脂肪酸合成についての植物エロンガーゼの特徴付けを記載している。 アラキドン酸およびEPAの合成は、例えば国際公開第01/59128号パンフレット、国際公開第00/12720号パンフレット、国際公開第02/077213号パンフレット、および国際公開第02/08401号パンフレットに記載されている。 多価不飽和C24脂肪酸の合成は、例えば、Tvrdik ら 2000, J. Cell Biol. 149:707-718または国際公開第02/44320号パンフレットに記載されている。

    PUFAの産生に特に適した微生物は、例えば、海洋性珪藻ファエオダクティラム・トリコルナタム(Phaeodactylum tricornutum)、紅藻ポルフィリジウム種(Porphiridium species)、ヤブレツボカビ種(Thraustochytrium species)、シゾキトリウム種(Schizochytrium species)もしくはクリプセコジニウム種(Crypthecodinium species)などの微小藻類、スティロニキア属(Stylonychia)もしくはコルピディウム属(Colpidium)などの繊毛虫、クサレケカビ属(Mortierella)、ハエカビ属(Entomophthora)もしくはケカビ属(Mucor)などの菌類、ならびに/またはニセツリガネゴケ属(Physcomitrella)、ヤノウエノアカゴケ属(Ceratodon)およびゼニゴケ属(Marchantia)などのコケ類などの微生物である(R. Vazhappilly & F. Chen (1998) Botanica Marina 41: 553-558; K. Totani & K. Oba (1987) Lipids 22: 1060-1062; M. Akimotoら(1998) Appl. Biochemistry and Biotechnology 73: 269-278)。 株を選択した結果、一連の望ましい化合物(PUFAも含まれる)を産生する対象微生物の変異株がいくつか開発された。 しかしながら、多価不飽和脂肪酸のような特定の分子の生産力が強化された株の突然変異導入と選択は、時間がかかり、そして困難なプロセスであり、このことから上述のように組換え手法が好ましい。 しかしながら、所望の多価不飽和脂肪酸(例えばDPA、EPA、またはARAなど)は、上述の微生物を利用しても限定的な量しか産生されない;なぜならば、通常それらは一般的に用いる微生物に依存して脂肪酸の混合物として得られるからである。

    高等植物は、リノール酸(C18:2)やリノレン酸(C18:3)などの多価不飽和脂肪酸を含有する。 ARA、EPA、およびDHAは高等植物の種油に全く存在しないか、または微量しか存在しない(E. Ucciani: Nouveau Dictionnaire des Huiles Vegetales [植物油の新辞典]. Technique & Documentation - Lavoisier, 1995. ISBN: 2-7430-0009-0)。 また一方、高等植物、好ましくは脂肪種子植物(アブラナ、アマニ、ヒマワリ、およびダイズなど)におけるLCPUFAの産生は、食品産業、家畜飼料、および医薬目的のための高品質なLCPUFAが大量に経済的に得られる可能性があることから、都合がよい。 こうした目的のために、脂肪種子植物に、LCPUFA生合成酵素をコードする遺伝子を組み換え手法によって導入し発現させることは都合がよい。 こうした遺伝子は例えばΔ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードする。 こうした遺伝子はLCPUFAを産生して膜またはトリアシルグリセリドに組み込む微生物または下等植物から都合良く単離することができる。 従って既に、コケであるヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)からΔ6-デサチュラーゼ遺伝子を単離することが可能であり、P. patensおよび線虫であるC. elegansからΔ6-エロンガーゼ遺伝子を単離することが可能である。

    アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)の合成について、種々の合成経路が議論されている(図1)。 かくしてEPAまたはDHAは、ビブリオ属細菌(Vibrio sp.)またはシェワネラ属細菌(Shewanella sp.)などの海洋細菌においてポリケチド経路により産生される(Yu, R.ら Lipids 35:1061-1064, 2000; Takeyama, H. ら Microbiology 143:2725-2731, 1997)。

    これとは別の戦略は、デサチュラーゼおよびエロンガーゼの活性を改変することである(Zank, TK ら Plant Journal 31:255-268, 2002; Sakuradani, E. ら Gene 238:445-453, 1999)。 Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼによる上記経路の改変型は、哺乳動物におけるスプレッチャー経路(Sprecher 2000, Biochim. Biophys. Acta 1486:219-231)である。 この経路ではΔ4-不飽和化の代わりに、さらなる伸長ステップが行われてC 24が得られ、その後さらにΔ6-不飽和化および最後にβ-酸化が行われて、C 22鎖長産物が得られる。 しかしながら、いわゆるスプレッチャー経路(図1を参照のこと)は調節機構が未知であることから植物および微生物中での産生には適していない。

    不飽和化される形態によって、多価不飽和脂肪酸は2つの大きな系列、すなわちω6-またはω3-脂肪酸系列に分けることができ、これらはその代謝および機能的作用が異なる(図1)。

    ω6-代謝経路の出発物質は脂肪酸のリノール酸(18:2 Δ9,12 )であり、これに対してω3-経路はリノレン酸(18:3 Δ9,12,15 )から進行する。 リノレン酸は、ω3-デサチュラーゼの作用により形成される(Tocherら 1998, Prog. Lipid Res. 37, 73-117; Domergueら 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)。

    哺乳動物、従ってヒトも、対応するデサチュラーゼ活性(Δ12-およびω3-デサチュラーゼ)を有さず、これらの脂肪酸(必須脂肪酸)を食物から摂取しなければならない。 これらの前駆物質から出発して、生理学的に重要な多価不飽和脂肪酸である、ω6-脂肪酸の一種のアラキドン酸(=ARA、20:4 Δ5,8,11,14 )、ならびにω3-脂肪酸の二種であるエイコサペンタエン酸(=EPA、20:5 Δ5,8,11,14,17 )およびドコサヘキサエン酸(DHA、22:6 Δ4,7,10,13,17,19 )は、一連のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ反応によって合成される。 心疾患(Shimikawa 2001, World Rev. Nutr. Diet. 88, 100-108)、炎症(Calder 2002, Proc. Nutr. Soc. 61, 345-358)およびリウマチ(Cleland and James 2000, J. Rheumatol. 27, 2305-2307)の治療におけるω3-脂肪酸の応用は上述のような治療活性を示す。

    従って栄養生理学の観点からは、より多くのω3-脂肪酸が産生されるように、ω6-合成経路からω3-合成経路へのシフトをもたらすこと(図1を参照のこと)は都合がよい。 C 18:2 -、C 22:4 -、またはC 22:5 -脂肪酸を不飽和化する種々のω3-デサチュラーゼの酵素活性(図1を参照されたい)が刊行物に記載されている。 しかしながら、生化学的性質が明らかにされたデサチュラーゼはいずれも、ω6-合成経路の多様な基質をω3-合成経路における対応する脂肪酸へと変換しない。

    エロンガーゼが2または4炭素原子だけ脂肪酸を伸長させることは、それぞれC 20 -およびC 22 -PUFAの産生に極めて重要である。 このプロセスは4工程により進行する。 第1のステップは、ケトアシル-CoAシンターゼ(KCS、以降エロンガーゼと言う)によるマロニル-CoAの脂肪酸-アシル-CoAへの縮合である。 このステップの後に、還元ステップ(ケトアシル-CoAレダクターゼ、KCR)、脱水ステップ(デヒドラターゼ)、および最後の還元ステップ(エノイル-CoAレダクターゼ)が行われる。 エロンガーゼ活性がプロセス全体の特異性および速度を左右するとされている(Millar and Kunst, 1997 Plant Journal 12:121-131)。

    今日までに、天然ではDHA(C22:6 n-3)を産生しない生物中でのDHA産生については、いかなる具体的なエロンガーゼも記述されていない。 今日までに記載されているのはC 20 -またはC 24 -脂肪酸を生じるエロンガーゼのみである。 Δ5-エロンガーゼ活性は今日まで記述されていない。

    LCPUFA生合成酵素をコードする遺伝子を含みそして発現し、その結果LCPUFAを産生した最初のトランスジェニック植物は、例えば独国特許出願公開第102 19 203号明細書(植物中での多価不飽和脂肪酸の製造方法)または国際公開第2004/071467号パンフレットにおいて初めて記載された。 しかしながら、それらの植物は、該植物中に存在する油を加工するためにさらに最適化しなければならない量でしかLCPUFAを産生しない。 かくして独国特許出願公開第102 19 203号明細書に記載された植物は、植物の総脂質含量に基づきそれぞれ、ARA含量が0.4〜2%でしかなくEPA含量が0.5〜1%でしかない。 国際公開第2004/071467号パンフレットは、ARA、EPAまたはDHAなどの多価不飽和C 20 -およびC 22 -脂肪酸のより高い含量を開示している。 しかしながら、開示されたプロセスには一連の重大な欠点がある。 開示された方法の種子からは、DHAは全く検出されないようである。 PUFAを製造するにはダイズはさほど適していない、なぜならばダイズは油含量が約20重量%と低いからである。 ダイズは都合のよいタンパク質源であり、そのため大規模に栽培されている。 しかしながら、ダイズの油含量は相対的には低い方である。 その上、製造工程から得られるジホモ-γ-リノレン酸(=DGHLまたはHGLA)含量は高すぎる。 HGLAは魚油または藻類油または微生物油では殆ど検出されない。 さらなる欠点は、国際公開第2004/071467号パンフレットに開示された植物が共形質転換(cotransformation)により作製されたものであることであり、このことはその後の世代において特徴が隔絶される原因となり、従ってより大きな選択労力が必要になる。

    国際公開第91/13972号パンフレット

    国際公開第93/11245号パンフレット

    国際公開第94/11516号パンフレット

    欧州特許出願公開第0 550 162号明細書

    国際公開第94/18337号パンフレット

    国際公開第97/30582号パンフレット

    国際公開第97/21340号パンフレット

    国際公開第95/18222号パンフレット

    欧州特許出願公開第0 794 250号明細書

    国際公開第93/06712号パンフレット

    米国特許第5,614,393号明細書

    国際公開第96/21022号パンフレット

    国際公開第00/21557号パンフレット

    国際公開第99/27111号パンフレット

    国際公開第98/46763号パンフレット

    国際公開第98/46764号パンフレット

    国際公開第98/46765号パンフレット

    国際公開第99/64616号パンフレット

    国際公開第98/46776号パンフレット

    国際公開第01/59128号パンフレット

    国際公開第00/12720号パンフレット

    国際公開第02/077213号パンフレット

    国際公開第02/08401号パンフレット

    国際公開第02/44320号パンフレット

    独国特許出願公開第102 19 203号明細書

    国際公開第2004/071467号パンフレット

    FC Neidhardt ら(1996) E. coli and Salmonella. ASM Press: Washington, DC, p. 612-636 Lengelerら(編) (1999) Biology of Procaryotes. Thieme: Stuttgart, New York Magnuson, K.,ら(1993) Microbiological Reviews 57:522-542 Frentzen, 1998, Lipid, 100(4-5):161-166 Kinney, 1997, Genetic Engineering, 編: JK Setlow, 19:149-166 Ohlrogge and Browse, 1995, Plant Cell 7:957-970 Shanklin and Cahoon, 1998, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 49:611-641 Voelker, 1996, Genetic Engineering, 編集: JK Setlow, 18:111-13 Gerhardt, 1992, Prog. Lipid R. 31:397-417 Guhnemann-Schafer & Kindl, 1995, Biochim. Biophys Acta 1256:181-186 Kunau ら, 1995, Prog. Lipid Res. 34:267-342 Stymne ら, 1993, in: Biochemistry and Molecular Biology of Membrane and Storage Lipids of Plants, 編: Murata and Somerville, Rockville, American Society of Plant Physiologists, 150-158 Murphy & Ross 1998, Plant Journal. 13(1):1-16 Shimikawa 2001, World Rev. Nutr. Diet. 88, 100-108 Calder 2002, Proc. Nutr. Soc. 61, 345-358 Cleland and James 2000, J. Rheumatol. 27, 2305-2307 Poulos, A Lipids 30:1-14, 1995 Horrocks, LA and Yeo YK Pharmacol Res 40:211-225, 1999 Stukey ら, J. Biol. Chem., 265, 1990: 20144-20149 Wada ら, Nature 347, 1990: 200-203 Huang ら, Lipids 34, 1999: 649-659 McKeon ら, Methods in Enzymol. 71, 1981: 12141-12147 Wang ら, Plant Physiol. Biochem., 26, 1988: 777-792 Millar and Kunst, 1997 Plant Journal 12:121-131 Millar ら, 1999 Plant Cell 11:825-838 Tvrdik ら 2000, J. Cell Biol. 149:707-718 R. Vazhappilly & F. Chen (1998) Botanica Marina 41: 553-558 K. Totani & K. Oba (1987) Lipids 22: 1060-1062 M. Akimotoら(1998) Appl. Biochemistry and Biotechnology 73: 269-278 E. Ucciani: Nouveau Dictionnaire des Huiles Vegetales [植物油の新辞典]. Technique & Documentation - Lavoisier, 1995. ISBN: 2-7430-0009-0 Yu, R.ら Lipids 35:1061-1064, 2000 Takeyama, H. ら Microbiology 143:2725-2731, 1997 Zank, TK ら Plant Journal 31:255-268, 2002 Sakuradani, E. ら Gene 238:445-453, 1999 Sprecher 2000, Biochim. Biophys. Acta 1486:219-231 Tocherら 1998, Prog. Lipid Res. 37, 73-117 Domergueら 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113

    従って、これらの多価不飽和脂肪酸によって食物および/または飼料の栄養価を高めることを実現するには、植物系、特にトランスジェニック植物の種子におけるこうした多価不飽和脂肪酸の簡便で安価な製造方法が強く切望されている。

    従って本発明の目的は、トランスジェニック植物の種中で大量の多価不飽和脂肪酸、特にARA、EPAおよびDHAを製造する方法を開発することである。 この目的は、トランスジェニック植物の種子中に、総脂質含量に基づき少なくとも20重量%の含量で一般式I

    で表される化合物を産生させる本発明の方法により達成されたが、この方法は以下の処理工程を含む:


    a) 該生物にΔ9-エロンガーゼ

    および/または Δ6-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および


    b) 該生物に、Δ8-デサチュラーゼ

    および/または Δ6-エロンガーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および


    c) 該生物に、Δ5-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および


    d) 該生物に、Δ5-エロンガーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、および


    e) 該生物に、Δ4-デサチュラーゼ活性をコードする少なくとも1つの核酸配列を導入すること、かつここで、式I中の変数および置換基は以下の意味を有する:


    R

    1は、ヒドロキシル、コエンザイムA(チオエステル)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、スフィンゴ塩基、または一般式II


    で表される基であり、


    R

    2は、水素、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、または飽和もしくは不飽和C

    2 〜C

    24 -アルキルカルボニルであり、


    R

    3は、水素、飽和もしくは不飽和C

    2 〜C

    24 -アルキルカルボニルであるか、またはR

    2およびR

    3は互いに独立に一般式Ia:


    の基であり、


    ここでnは、2、3、4、5、6、7、または9であり、mは、2、3、4、5または6であり、pは0または3である。 都合良く、上記式IおよびIa中の変数n、m、およびpは次の通りである:n=2、3、または5、m=4、5、または6、かつp=0または3。 本方法に特に有利な実施形態においては、式IおよびIa中の変数n、m、およびpは次の通りである:m=4、n=3、p=3であり、従って一般式IおよびIaの化合物はアラキドン酸を表し、ならびに/またはm=5、n=3、p=0であり、従って一般式IおよびIaの化合物はエイコサペンタエン酸を表し、ならびに/またはm=5、n=5、p=0であり、従って一般式IおよびIaの化合物はドコサペンタエン酸を表し、ならびに/またはm=6、n=3、p=0であり、従って一般式IおよびIaの化合物はドコサヘキサエン酸を表す。

    一般式IにおけるR 1は、ヒドロキシル、コエンザイムA(チオエステル)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、スフィンゴ塩基、または一般式II

    で表される基である。

    上述したR 1の基はしばしばチオエステルの形態で一般式Iの化合物に結合している。

    一般式IIにおけるR 2は、水素、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾジホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、または飽和もしくは不飽和C 2 〜C 24 -アルキルカルボニルである。

    アルキル基として挙げられるのは、置換されたもしくは置換されていない、飽和もしくは不飽和C 2 〜C 24 -アルキルカルボニル鎖、例えば1以上の二重結合を有するエチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、n-ノニルカルボニル、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニルなどである。 好ましいのは、飽和もしくは不飽和C 10 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有する、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニルである。 特に好ましいのは、飽和および/もしくは不飽和C 10 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有するC 10 -アルキルカルボニル、C 11 -アルキルカルボニル、C 12 -アルキルカルボニル、C 13 -アルキルカルボニル、C 14 -アルキルカルボニル、C 16 -アルキルカルボニル、C 18 -アルキルカルボニル、C 20 -アルキルカルボニル、またはC 22 -アルキルカルボニル基である。 特別に好ましいのは、飽和もしくは不飽和C 16 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有するC 16 -アルキルカルボニル、C 18 -アルキルカルボニル、C 20 -アルキルカルボニルまたはC 22 -アルキルカルボニル基である。 都合のよいこれらの基は、2、3、4、5または6個の二重結合を有し得る。 脂肪酸鎖において炭素原子を20または22個有する特に好ましい基は、最大6個の二重結合、有利に3、4、5または6個の二重結合、特に好ましくは4、5または6個の二重結合、特別に好ましくは5または6個の二重結合を有する。 上述の基はいずれも対応する脂肪酸から誘導される。

    式II中のR 3は、水素、飽和または不飽和C 2 〜C 24 -アルキルカルボニルである。

    アルキル基として挙げられるのは、置換されたもしくは置換されていない、飽和もしくは不飽和C 2 〜C 24 -アルキルカルボニル鎖、例えば1以上の二重結合を有するエチルカルボニル、n-プロピルカルボニル、n-ブチルカルボニル、n-ペンチルカルボニル、n-ヘキシルカルボニル、n-ヘプチルカルボニル、n-オクチルカルボニル、n-ノニルカルボニル、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニルである。 好ましいのは、飽和もしくは不飽和C 10 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有する、n-デシルカルボニル、n-ウンデシルカルボニル、n-ドデシルカルボニル、n-トリデシルカルボニル、n-テトラデシルカルボニル、n-ペンタデシルカルボニル、n-ヘキサデシルカルボニル、n-ヘプタデシルカルボニル、n-オクタデシルカルボニル、n-ノナデシルカルボニル、n-エイコシルカルボニル、n-ドコサニルカルボニルまたはn-テトラコサニルカルボニルなどである。 特に好ましいのは、飽和および/もしくは不飽和C 10 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有するC 10 -アルキルカルボニル、C 11 -アルキルカルボニル、C 12 -アルキルカルボニル、C 13 -アルキルカルボニル、C 14 -アルキルカルボニル、C 16 -アルキルカルボニル、C 18 -アルキルカルボニル、C 20 -アルキルカルボニル、またはC 22 -アルキルカルボニル基である。 特別に好ましいのは、飽和もしくは不飽和C 16 〜C 22 -アルキルカルボニル基、例えば1以上の二重結合を有するC 16 -アルキルカルボニル、C 18 -アルキルカルボニル、C 20 -アルキルカルボニルまたはC 22 -アルキルカルボニル基である。 都合のよいこれらの基は、2、3、4、5または6個の二重結合を含み得る。 脂肪酸鎖において炭素原子を20または22個有する特に好ましい基は、最大6個の二重結合、有利に3、4、5または6個の二重結合、特に好ましくは4、5または6個の二重結合、特別に好ましくは5または6個の二重結合を有する。 上述の基はいずれも対応する脂肪酸から誘導される。

    上述の基R 1 、R 2およびR 3は、ヒドロキシルおよび/もしくはエポキシ基で置換されてもよく、ならびに/または三重結合を有してもよい。

    本発明の方法において産生される多価不飽和脂肪酸は、有利に少なくとも2個、有利に3、4、5または6個の二重結合を有する。 特に有利な脂肪酸は、4、5または6個の二重結合を有する。 本方法において産生される脂肪酸は有利に、脂肪酸鎖中に18、20または22個の炭素原子を有する;好ましくは脂肪酸は脂肪酸鎖中に20または22個の炭素原子を有する。 飽和脂肪酸は有利に、本方法で用いる核酸では、わずかな程度しか反応しないかまたは全く反応しない。 わずかな程度とは、多価不飽和脂肪酸と比較して、飽和脂肪酸が活性の5%未満、有利に3%未満、特に有利に2%未満、特別に好ましくは1、0.5、0.25、または0.125%の活性でしか反応しないことを意味する。 本方法において産生されるこれらの脂肪酸は、単一の産生物としてまたは脂肪酸混合物として産生され得る。

    本発明の方法に使用する核酸配列は、Δ9-エロンガーゼ活性、Δ6-デサチュラーゼ活性、Δ8-デサチュラーゼ活性、Δ6-エロンガーゼ活性、Δ5-デサチュラーゼ活性、Δ5-エロンガーゼ活性および/またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列の形態のものである。

    本発明の方法に有利に用いる核酸配列は、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、次のa)〜c)からなる群より選択されるものである:
    a) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列を有する核酸配列、または、
    b) 配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号184、配列番号194、配列番号198、配列番号200または配列番号202に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して導出可能な核酸配列、または、
    c) 配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号184、配列番号194、配列番号198、配列番号200または配列番号202とアミノ酸レベルで少なくとも40%同一性を有するポリペプチドをコードし、かつΔ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有するもの。

    有利に、一般式IおよびII中の置換基R 2またはR 3は互いに独立に、飽和または不飽和C 18 〜C 22 -アルキルカルボニル:特に有利に、互いに独立に、少なくとも2個の二重結合、有利に少なくとも3、4、5または6個の二重結合、特に有利に少なくとも4、5、または6個の二重結合を有するC 18 -、C 20 -またはC 22 -アルキルカルボニルである。

    本方法の好ましい実施形態においては、ω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、次のa)〜c):
    a) 配列番号87、または配列番号105に記載の配列を有する核酸配列、または、
    b)配列番号88または配列番号106に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して導出可能な核酸配列、または、
    c) 配列番号87または配列番号105に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号88または配列番号106に記載の配列とアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするもの、
    からなる群より選択される核酸配列をトランスジェニック植物にさらに導入する。

    本方法の別の好ましい実施形態においては、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列であって、次のa)〜c):
    a) 配列番号107、配列番号109または配列番号195に記載の配列を有する核酸配列、または、
    b) 配列番号108、配列番号110または配列番号196に記載のアミノ酸配列から遺伝暗号の縮重に起因して導出可能な核酸配列、または、
    c) 配列番号107、配列番号109または配列番号195に記載の核酸配列の誘導体であって、配列番号108、配列番号110または配列番号196とアミノ酸レベルで少なくとも60%の同一性を有し、かつΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記誘導体、
    からなる群より選択される前記核酸配列をトランスジェニック植物にさらに導入する。

    これらの上述のΔ12-デサチュラーゼ配列は、単独でまたはω3-デサチュラーゼ配列と組み合わせて、本方法において使用されるΔ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、またはΔ4-デサチュラーゼをコードする核酸配列とともに使用することができる。

    表1に核酸配列、起源生物、および配列番号を示す。

    本発明のさらなる実施形態では、トランスジェニック植物における大量の多価不飽和脂肪酸、特にARAおよびEPAの製造方法を記載する。 この方法はDHAの製造にも適当である。 このことから、本方法において、ARA、EPA、DHAまたはこれらの混合物を製造することが可能である。 このことから本発明のさらなる実施形態は、一般式I

    で表される化合物をトランスジェニック植物中で産生させる方法であって:


    次のステップ:


    a) 次のi)〜iv)からなる群より選択され、かつΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を植物中に導入すること、


    i) 配列番号193または配列番号201に記載の配列を有する核酸、


    ii) 配列番号194または配列番号202に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、


    iii) 配列番号193または配列番号201に記載の核酸配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、および


    iv) 配列番号193または配列番号201に記載の配列と少なくとも60%の同一性を有する核酸配列、


    b) 次のi)〜iv)からなる群より選択され、かつΔ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を植物中に導入すること、


    i) 配列番号27または配列番号199に記載の配列を有する核酸、


    ii) 配列番号28または配列番号200に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、


    iii) 配列番号27または配列番号199に記載の核酸配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、および


    iv) 配列番号27または配列番号199に記載の配列と少なくとも60%の同一性を有する核酸配列、


    c) 次のi)〜iv)からなる群より選択され、かつΔ5-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を植物中に導入すること、


    i) 配列番号11に記載の配列を有する核酸、


    ii) 配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、


    iii) 配列番号11に記載の核酸配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、および


    iv) 配列番号11に記載の配列と少なくとも60%の同一性を有する核酸配列、


    を含み、


    ここで式Iの変数および置換基は上記に定義されたものである、


    前記方法である。

    本方法に使用可能な核酸配列は、国際公開第02/26946号パンフレット(ヤブレツボカビ種(Thraustochytrium ssp.)由来のΔ5-デサチュラーゼ、配列番号11およびフィティウム・イレギュラーレ(Phytium irregulare)由来のΔ6-デサチュラーゼ、配列番号193)ならびに国際公開第01/59128号パンフレット(ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼ、配列番号27)に記載されており、これらを特別に本明細書に引用する。 しかしながらこれらの事例では、ARAおよびEPAの形成は、トランスジェニック植物中では観察されず微生物中でしか観察されなかったか、あるいは、トランスジェニック植物中ではARAおよびEPA合成の増大は検出されなかった。 その上、本発明の核酸配列は上記明細書中では脂肪酸生合成経路の他の酵素をコードする核酸とは組み合わせられていない。

    驚くべきことに、配列番号11、27、193、199および201に記載の配列を有する核酸の共発現が、トランスジェニック植物中において、植物の総脂質含量に基づき8%より多く、有利に10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%より多く、特に有利に21%、22%、23%、24%または25%より多い、非常に増大したARA含量をもたらすことが今回見出された(表2、表3、表4および図31を参照されたい)。 上述のパーセンテージは重量パーセントである。

    多価不飽和脂肪酸(特にARA、EPAもしくはDHAまたはそれらの混合物)含量が野生型植物由来の油および/またはトリグリセリドと比較して有利に増大された油および/またはトリグリセリドを産生するための本方法の収率をさらに高めるには、脂肪酸生合成の出発物質の量を増やすことが好都合である。 これは例えば、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を生物に導入し共発現させることにより達成されうる。

    このことが特に都合がよいのは、油産生生物、例えばアブラナ科(Brassicaeae)、例えばアブラナ属(Brassica)、例えばアブラナ(oilseed rape)、ナノハナ(turnip rape)、セイヨウカラシナ(indian mustard);グミ科(Elaeagnaceae)、例えばグミ属(Elaeagnus)、例えば属および種Olea europaea(オリーブ)またはマメ科(Fabaceae)、例えばダイズ属(Glycine)、例えば属および種Glycine max(ダイズ)などオレイン酸含量が高く、リノレン酸含量が低いもの(Mikoklajczakら, Journal of the American Oil Chemical Society, 38, 1961, 678-681)においてである。

    このことから本発明の好ましい実施形態においてはΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列がトランスジェニック植物に更に導入される。

    特に好ましくは、この核酸配列は、次のa)〜d)からなる群より選択される:
    a) 配列番号195に記載の配列を有する核酸配列、
    b) 配列番号196に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、
    c) 配列番号195に記載の核酸配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、および
    d)配列番号195に記載の配列と少なくとも60%の同一性を有する核酸配列。

    配列番号195に記載の核酸配列は、マリゴールド(Calendula officinalis)由来であり、国際公開第01/85968号パンフレットに記載されており、その開示はしかして参照により本明細書に組み入れる。

    本発明の方法に使用するΔ12-デサチュラーゼは、都合良くオレイン酸(C18:1 Δ9 )をリノール酸(C18:2 Δ9,12 )へと変換するか、またはC18:2 Δ6,9をC18:3 Δ6,9,12 (γ-リノレン酸=GLA)へと変換するが、これらはARA、EPAおよびDHA合成の出発物質である。 Δ12-デサチュラーゼは都合良くリン脂質またはCoA-脂肪酸エステルに結合した脂肪酸、有利にはCoA-脂肪酸エステルに結合した脂肪酸を変換する。 前もって伸長ステップが行われたならばこのことは有利に合成産物の収率の上昇をもたらす。 なぜならば一般に伸長はCoA-脂肪酸エステルに対してなされ、これに対して不飽和化の大部分はリン脂質もしくはトリグリセリドに対してなされるからである。 従ってCoA-脂肪酸エステルと、リン脂質またはトリグリセリドの交換(さらに制限的である可能性のある酵素反応を必要とするであろう)は必要ない。

    トランスジェニック植物中でさらにΔ12-デサチュラーゼを発現させることは、植物の総脂質含量に基づき、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%および20%より多く、特に有利に21%、22%、23%、24%または25%より多い、ARA含量のさらなる増加をもたらす(表3、表4および図32を参照されたい)。 上述のパーセンテージは重量パーセントである。

    Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするさらなる核酸配列を、本発明の方法における植物に都合良く導入してもよい。

    Δ5-エロンガーゼ活性をコードする核酸配列であって、次のものからなる群より選択される核酸配列は好ましい:
    a) 配列番号43、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号197に記載の配列を有する核酸配列、
    b) 配列番号44、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号81、配列番号86、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138または配列番号198に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列、
    c) 配列番号43、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号197に記載の核酸配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列、および
    d) 配列番号43、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号83、配列番号85、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137または配列番号197に記載の配列と少なくとも60%の同一性を有する核酸配列。

    本方法の好ましい実施形態においてはΔ5-エロンガーゼ遺伝子は種子特異的プロモーターの制御下で発現される。

    本方法のさらなる都合のよい実施形態において全ての核酸配列は共通の組換え核酸分子により植物に導入されるが、ここでは各々の核酸配列は自身のプロモーターの制御下にあってもよく、この自身のプロモーターは種子特異的プロモーターの形態であってもよい。

    しかしながら、変換を行うために本発明において首尾よく用いることができるのは、配列表に記載の核酸のみならず;むしろこれらの配列とはある程度異なっていても、本質的に同一の酵素活性を有するタンパク質をコードする配列も利用可能である。 これらは配列表に特定した配列と、ある程度の同一性または相同性を有する核酸の形態である。 本質的に同一の酵素活性とは、野生型酵素の少なくとも20%、30%、40%、50%または60%、有利に少なくとも70%、80%、90%または95%、特に有利に少なくとも96%、97%、98%または99%の酵素活性を有するタンパク質を意味する。

    2つのアミノ酸配列または2つの核酸の相同性(すなわち同一性)のパーセンテージを決定するには、一方の配列をもう片方の配列の下に記載する(例えば、タンパク質または核酸と最適なアライメントを生成するために、もう片方のタンパク質または核酸の配列中にギャップを導入してもよい)。 次に対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。 ある配列中のある位置に、他方の配列の対応する位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同一のアミノ酸残基または同一のヌクレオチドが存在する場合、これらの分子はその位置において相同である(すなわち本文脈において用いるアミノ酸または核酸「相同性」は、アミノ酸または核酸「同一性」に相当する)。 2つの配列間の相同性のパーセンテージは、それらの配列に共通する位置の数の関数である(すなわち%相同性=同一位置数/位置の総数×100)。 従って相同性および同一性という用語は同義であると理解される。

    相同性は、アミノ酸または核酸配列領域全体に渡って計算される。 種々の配列を比較するためには、当業者は種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムを利用することができる。 Needleman and WunschまたはSmith and Watermanのアルゴリズムは特に信頼できる結果を生成する。 配列比較は、GCGソフトウェアパケット[Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部であるGapおよびBestFitプログラム[Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970)およびSmith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)]またはPileUpプログラム(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153)を用いて行った。パーセントで示された上述の配列相同性データは、次のように設定したGAPプログラムを用いて配列領域全体にわたり決定した:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均マッチ:10.000および平均ミスマッチ0.000。特に断らない限り、配列比較には常にこれらの設定を標準設定として用いた。

    配列番号12、配列番号28、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200および/または配列番号202に記載のアミノ酸配列の改変をもたらすDNA配列多型は、ある集団内に生じうると当業者には理解されよう。 これらの天然の変異体は通常、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼの核酸配列の1〜5%の変化を生じる。 本発明は、天然の変化の結果であり酵素活性を本質的に変更しないΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ中の、各々のそして全てのこれらのヌクレオチド変異体およびその結果生じるアミノ酸多型を包含するものである。

    本発明の方法に用いるΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、またはΔ5-エロンガーゼの本質的な酵素活性とは、これらが配列およびその誘導体によりコードされるタンパク質/酵素と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、特に好ましくは30%、40%、50%、または少なくとも60%、最も好ましくは少なくとも70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の酵素活性を保持し、かつ、これらが植物または植物細胞中で脂肪酸、脂肪酸エステル、例えばジアシルグリセリドおよび/またはトリアシルグリセリドの合成に必要な化合物の代謝に関与するか、あるいは、膜を横断する分子の輸送に関与することができることを意味し、ここでの化合物または分子とは脂肪酸分子中にC 18 -、C 20 -、またはC 22 -炭素鎖を有し少なくとも2、有利に3、4または5つの部位に二重結合を有するものを意味する。

    同様に本発明に包含されるのは、使用するΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子である。 本文脈において用いる「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、互いに少なくとも60%の相同性を有するヌクレオチド配列が、通常互いにハイブリダイズされたままであるハイブリダイズおよび洗浄条件を表す。 好ましい条件は、少なくとも約65%、70%、80%、または90%、好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、または95%、ならびに特に好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%、またはそれより高い相同性を互いに有する配列が、通常互いにハイブリダイズされたままである条件である。 こうしたストリンジェントな条件は当業者に既知であり、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。

    ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい、非限定的な例としては、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中でのハイブリダイゼーション、およびそれに続く50〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDS中での1以上の洗浄ステップが挙げられる。 これらのハイブリダイゼーション条件は、核酸の種類によって、ならびに、例えば有機溶媒が存在する場合に温度およびバッファー濃度に関係してよって、変動することが当業者には知られている。 「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、一例としてハイブリダイゼーション温度は核酸の種類に依存し、0.1〜5×SSC(pH7.2)の濃度の水性バッファー中では42℃〜58℃である。 有機溶媒、例えば50%ホルムアミドが上述のバッファー中に存在する場合、標準条件下での温度は約42℃である。 DNA:DNAハイブリッド体についての好ましいハイブリダイゼーション条件は、例えば0.1×SSCおよび20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。 DNA:RNAハイブリッド体についての好ましいハイブリダイゼーション条件は、例えば0.1×SSCで30℃〜55℃、好ましくは45℃〜55℃である。 上述のハイブリダイゼーション温度は、長さ約100bp(すなわち塩基対)および50%のG+C含量でホルムアミド不在下での核酸について決定したものである。 当業者は、例えばSambrookら, “Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (編) 1985, “Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, “Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxfordなどの教材に基づいて必要なハイブリダイゼーション条件をどのように決定すればよいか知っている。

    1以上のヌクレオチド置換、付加または欠失をヌクレオチド配列に導入することにより、1以上のアミノ酸置換、付加または欠失を有するΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼをコードする単離された核酸分子を生成させることができる。 突然変異は、標準的技術、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR仲介変異誘発などを用いて、いずれかの配列に導入することができる。 1以上の非必須アミノ酸残基に、保存的アミノ酸置換を生じることは好ましい。 「保存的アミノ酸置換」ではアミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換される。 類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されている。 これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分枝側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸があげられる。 このことから、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ中の推定非必須アミノ酸残基は、好ましくは同じ側鎖のファミリーからの別のアミノ酸残基に置換される。 あるいは別の実施形態では、突然変異をΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼをコードする配列の一部もしくは全体に渡りランダムに(例えば飽和突然変異誘発により)導入してもよく、結果として生じる変異体は記載されたΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性の組換え発現についてスクリーニングすることにより、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性を保持する変異体を同定することができる。

    本発明の方法により産生される多価不飽和脂肪酸は有利に、少なくとも2、好ましくは3、4、5または6個の二重結合を有する。 脂肪酸は特に好ましくは4、5または6個の二重結合を有する。 本方法により産生される脂肪酸は好ましくは20または22個の炭素原子の長さを有する。

    飽和脂肪酸は好ましくは、本方法に用いる核酸ではわずかな程度しか反応しないか、または全く反応しない。 「わずかな程度」とは、多価不飽和脂肪酸と比較して、飽和脂肪酸が活性の5%未満、好ましくは3%未満、特に好ましくは%未満、最も好ましくは1、0.5、0.25、または0.125%でしか反応しないことを意味する。 本方法により産生される脂肪酸は、単一の生成物としてまたは脂肪酸混合物として産生され得る。

    本方法により産生される多価不飽和脂肪酸は、有利には膜脂質および/またはトリアシルグリセリド中に結合されるが、遊離の脂肪酸としてまたは他の脂肪酸エステルの形態で結合されて生物中に存在することもできる。 この文脈において、多価不飽和脂肪酸は「純粋な産物」として、または種々の脂肪酸の混合物もしくは種々のグリセリドの混合物の形態で有利に存在し得る。 トリアシルグリセリドに結合された種々の脂肪酸は、4〜6個の炭素原子を有する短鎖脂肪酸、8〜12個の炭素原子を有する中鎖脂肪酸または14〜24個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸から誘導可能であり、好ましいのは長鎖脂肪酸、特に好ましいのはC 18 -、C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸の長鎖脂肪酸LCPUFA、特別に好ましいのはC 20 -および/またはC 22 -脂肪酸の長鎖脂肪酸LCPUFA、例えばARA、EPA、DHAまたはそれらの組み合わせである。

    本発明の方法は有利に、脂肪酸エステル中に、少なくとも2個の二重結合、有利に少なくとも3、4、5または6個の二重結合、特に有利に4、5、または6個の二重結合、特別に有利に少なくとも5または6個の二重結合を有する多価不飽和C 18 -、C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸分子を有する脂肪酸エステルを生じる。 このことは有利に、リノール酸(=LA、C18:2 Δ9,12 )、γ-リノレン酸(= GLA、C18:3 Δ6,9,12 )、ステアリドン酸(= SDA、C18:4 Δ6,9,12,15 )、ジホモ-γ-リノレン酸(=DGLA、20:3 Δ8,11,14 )、ω3-エイコサテトラエン酸(=ETA、C20:4 Δ5,8,11,14 )、アラキドン酸(ARA、C20:4 Δ5,8,11,14 )、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5 Δ5,8,11,14,17 )またはこれらの混合物の合成をもたらし、好ましくはω3-エイコサテトラエン酸(=ETA、C20:4 Δ5,8,11,14 )、アラキドン酸(ARA、C20:4 Δ5,8,11,14 )、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5 Δ5,8,11,14,17 )、ω6-ドコサペンタエン酸(C22:5 Δ4,7,10,13,16 )、ω6-ドコサテトラエン酸(C22:4 Δ7,10,13,16 )、ω3-ドコサペンタエン酸(=DPA、C22:5 Δ7,10,13,16,19 )、ドコサヘキサエン酸(=DHA、C22:6 Δ4,7,10,13,16,19 )またはこれらの混合物が産生され、ARA、EPA、および/またはDHAが特別に産生される。 ω3-脂肪酸、例えばEPAおよび/またはDHA、好ましくはDHAが有利に産生される。

    多価不飽和C 18 -、C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸分子を有する脂肪酸エステル、有利に多価不飽和C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸分子を有する脂肪酸エステルは、脂肪酸エステルの調製のために使用した植物から油または脂質の形態で分離することができ、例えばスフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、脂質、糖脂質、例えばグリコスフィンゴ脂質、リン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールもしくはジホスファチジルグリセロール、モノアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドまたは他の脂肪酸エステル、例えばアセチル補酵素Aエステルなどの化合物の形態で分離することができ、これらの化合物は少なくとも2、3、4、5もしくは6個、好ましくは4、5もしくは6個、特に好ましくは5もしくは6個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸を含んでなる。 好ましくはこれらの脂肪酸エステルは、そのジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドおよび/またはホスファチジルコリンの形態で分離され、特に好ましくはトリアシルグリセリドの形態で分離される。 これらのエステルの他に、多価不飽和脂肪酸はまた、遊離の脂肪酸としてまたは他の化合物中に結合して植物中に存在する。 一般に、上述した種々の化合物(脂肪酸エステルおよび遊離脂肪酸)は、トリグリセリドの重量の80〜90重量%、ジグリセリドの2〜5重量%、モノグリセリドの5〜10重量%、遊離脂肪酸の1〜5重量%、リン脂質の2〜8重量%の近似的分配で生物中に存在し、種々の化合物の総量は100重量%になる。

    本発明の方法(本発明の目的および本明細書に記載する開示について、単数形は複数形を含み逆もまた同様であることを意図する)において、産生されるLCPUFAは、トランスジェニック生物中の総脂質含量に基づき、少なくとも3、5、6、7または8重量%の含量で産生され、有利に少なくとも9、10、11、12、13、14または15重量%、好ましくは少なくとも16、17、18、19または20重量%、特に好ましくは少なくとも21、22、23、24または25重量%、特別に好ましくは26、27、28、29または30重量%で、有利にトランスジェニック植物の種子中に産生される。 ここでは、宿主生物中に存在するC 18 -および/またはC 20 -脂肪酸は、都合良く対応する産物、例示を目的としていくつか挙げるならば例えばARA、EPA、DPAまたはDHAへと、少なくとも10%、有利に少なくとも20%、特に有利に少なくとも30%、特別に有利に少なくとも40%の割合で変換される。 脂肪酸は有利に結合形態で産生される。

    分子内に4または5個の二重結合を有する多価不飽和C 20 -脂肪酸は、それらの脂肪酸全てを合算して、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸重量に基づき、少なくとも15、16、17、18、19または20重量%、有利に少なくとも21、22、23、24または25重量%、特に有利に少なくとも26、27、28、29または30重量%の含量で本方法により有利に産生される。

    分子内に4、5または6個の二重結合を有する多価不飽和C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸は、それらの脂肪酸全てを合算して、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸重量に基づき、少なくとも15、16、17、18、19または20重量%、有利に少なくとも21、22、23、24または25重量%、特に有利に少なくとも26、27、28、29または30重量%、特別に有利に31、32、33、34または35重量%の含量で本方法により有利に産生される。

    ARAが本発明の方法により産生される場合、その含量は、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸重量に基づき、少なくとも3、5、6、7、8、9または10重量%、有利に少なくとも11、12、13、14または15重量%、好ましくは少なくとも16、17、18、19または20重量%、特に好ましくはすくなくとも21、22、23、24または25重量%、最も好ましくは少なくとも26重量%である。

    EPAが本発明の方法により産生される場合、その含量は、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸重量に基づき、少なくとも0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1重量%、有利に少なくとも2、3、4または5重量%、好ましくは少なくとも6、7、8、9または10重量%、特に好ましくは少なくとも11、12、13、14または15重量%、および最も好ましくは少なくとも16重量%である。

    DHAが本発明の方法により産生される場合、その含量はトランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸重量に基づき、少なくとも0.01、または0.02重量%、有利に少なくとも0.03または0.05重量%、有利に少なくとも0.09または0.1重量%、特に好ましくは少なくとも0.2または0.3重量%、および最も好ましくは少なくとも0.35重量%である。

    本発明の方法に用いる核酸の補助を得て、これらの不飽和脂肪酸を、有利に産生されるトリグリセリドのsn1、sn2および/またはsn3位に配置させることが可能である。 本発明の方法において出発化合物であるリノール酸(C18:2)およびリノレン酸(C18:3)が複数の反応ステップを経ることから、本方法の最終産物、例えばアラキドン酸(ARA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ω6-ドコサペンタエン酸またはDHAは完全に純粋な産物として得られるわけではなく、最終産物中には必ず微量の前駆物質がやはり存在する。 例えば、もしリノール酸およびリノレン酸の両方が出発生物または出発植物中に存在するならば、最終産物(例えばARA、EPAまたはDHA)は混合物として存在する。 最終産物がARAであるかまたはDHAである場合には、各々の場合のもう片方の最終産物が微量しか存在しないことは都合がよい。 このことから、DHA含有脂質および/または油中に、15、14、13、12または11重量%未満、有利に10、9、8、7、6または5重量%未満、特に有利に4、3、2または1重量%未満のEPAおよび/またはARAしか存在すべきではない。 このことから、EPA含有脂質および/または油中に、15、14、13、12または11重量%未満、有利に10、9、8、7、6または5重量%未満、特に有利に4、3、2または1重量%未満のARAしか存在すべきではない。 またこのことから、ARA含有脂質および/または油中に、15、14、13、12または11重量%未満、有利に10、9、8、7、6または5重量%未満、特に有利に4、3、2または1重量%未満のEPAおよび/またはDHAしか存在すべきではない。

    また一方、1つの産物中に種々の多価不飽和C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸の混合物が存在することが望ましい場合もあり得る。 このような場合においては、DHA含有脂質および/または油は、トランスジェニック植物の種子中の総脂質含量に基づき、少なくとも1、2、3、4または5重量%、有利に少なくとも6、7または8重量%、特に有利に少なくとも9、10、11、12、13、14または15重量%、特別に有利に少なくとも16、17、18、19、20、21、22、23、24または25重量%のARAおよび/またはEPAを含み得る。

    前駆物質は有利には、対象の最終産物の量に基づき、20重量%以下、好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下、特別に好ましくは5重量%以下となるべきである。 有利に、ARA、EPAまたはDHAのみが、結合されたまたは遊離酸として、トランスジェニック植物中に本発明の方法の最終産物として産生される。 化合物ARA、EPAおよびDHAが同時に産生される場合、それらは有利に少なくとも1:1:2(EPA:ARA:DHA)、有利に少なくとも1:1:3、好ましくは1:1:4、特に好ましくは1:1:5の比率で産生される。 化合物ARAおよびEPAが同時に産生される場合、これらは有利に植物中で少なくとも1:6(EPA:ARA)、有利に少なくとも1:8、好ましくは少なくとも1:10、特に好ましくは少なくとも1:12の比率で産生される。

    本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は、各々について生物の総脂肪酸含量を100%としてこれにに基づいて、有利に6〜15%のパルミチン酸、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のバクセン酸、0.1〜1%のアラキン酸、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%のモノ不飽和脂肪酸、および60〜85%の多価不飽和脂肪酸を含む。

    さらに、本発明の方法により産生された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は有利に、次の脂肪酸の群から選択される脂肪酸を含む:エルカ酸(13-ドコサエン酸)、ステルクリン酸(9,10-メチレンオクタデセ-9-エン酸)、マルバリン酸(8,9-メチレンヘプタデセ-8-エン酸、チョールムーグラ酸(シクロペンテンドデカン酸)、フラン脂肪酸(9,12-エポキシオクタデカ-9,11-ジエン酸)、ベルノール酸(9,10-エポキシオクタデセ-12-エン酸)、タリリン酸(6-オクタデシン酸)、6-ノナデシン酸、サンタルビン酸(t11-オクタデセン-9-イン酸)、6,9-オクタデセニン酸、ピルリン酸(pyrulic acid)(t10-ヘプタデセン-8-イン酸)、クレペニニン酸(crepenyninic acid)(9-オクタデセン-12-イン酸)、13,14-ジヒドロオロフェイン酸(13,14-dihydrooropheic acid)、オクタデセン-13-エン-9,11-ジイン酸、ペトロセリン酸(cis-6-オクタデセン酸)、9c,12t-オクタデカジエン酸、カレンデュラ酸(calendulic acid)(8t10t12c-オクタデカトリエン酸)、カタルピン酸(9t11t13c-オクタデカトリエン酸)、エレオステアリン酸(9c11t13t-オクタデカトリエン酸)、ジャカリン酸(jacaric acid)(8c10t12c-オクタデカトリエン酸)、プニシン酸(punicic acid)(9c11t13c-オクタデカトリエン酸)、パリナリン酸(9c11t13t15c-オクタデカテトラエン酸)、ピノオレイン酸(pinolenic acid)(all-cis-5,9,12-オクタデカトリエン酸)、ラバレン酸(laballenic acid)(5,6-オクタデカジエンアレン酸(octadecadienallenic acid)、リシノール酸(12-ヒドロキシオレイン酸)および/またはコリオリ酸(coriolic acid)(13-ヒドロキシ-9c,11t-オクタデカジエン酸)。上述の脂肪酸は一般に、本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に有利に微量しか存在しない、すなわち総脂肪酸に基づき、これらは30%未満、好ましくは25%、24%、23%、22%または21%未満、特に好ましくは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満、特別に好ましくは4%、3%、2%または1%未満しか存在しない。 本発明のさらに好ましい態様では、これらの上述の脂肪酸は総脂肪酸に基づき0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%未満、特に好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満しか存在しない。 本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は有利に総脂肪酸に基づき、ブチル酸、コレステロール、イワシ酸(=ドコサペンタエン酸、C22:5 Δ4,8,12,15,21 )およびニシン酸(nisinic acid)(テトラコサヘキサエン酸、C23:6 Δ3,8,12,15,18,21 )を0.1%未満しか含まないか、または全く含まない。

    本発明の核酸配列または本発明の方法に用いる核酸配列に起因して、多価不飽和脂肪酸(主にARAおよびEPA、またDHAも)の収率は、非トランスジェニック出発植物、例えばカラシ(Brassica juncea)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ナガミノアマナズナ(Camelina sativa)、シロイナズナ(Arabidopsis thanliana)またはアマ(Linum usitatissimum)などの植物と比較して、GC分析により比較した場合に、少なくとも50、80または100%、有利に少なくとも150、200、または250%、特に有利に少なくとも300、400、500、600、700、800または900%、特別に有利に少なくとも1000、1100、1200、1300、1400または1500%増加させることができる;実施例を参照のこと。

    上述のように、本方法により産生される、分子に4、5または6個の二重結合を有する多価不飽和C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸は、C12:0-またはC14:0-脂肪酸を微量しか含まないかまたは全く含まない植物種子中に含まれる。 より短い飽和脂肪酸、例えばC4:0、C6:0、C8:0またはC10:0脂肪酸もまた、脂質および/または油中に存在すべきではなく、または微量しか存在してはならない。 微量とは、有利に、GCで分析した場合に、単位GCピーク面積中で有利に5、4、3、2または1%未満、有利に0.9、0.8、0.7、0.6または0.5%未満、特に有利に0.4、0.3、0.2または0.1%未満、特別に好ましくは0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01未満の量と理解される。 C16:0脂肪酸は有利に1〜28%の単位GCピーク面積の範囲内であるべきである。 有利にC16:0脂肪酸は脂質、油および/または遊離脂肪酸中に25%、20%、15%または10%未満、有利に9%、8%、7%、6%または5%未満、特に有利に4%、3%、2%または1%単位GCピーク面積未満かあるいは全く存在しない量でしか存在すべきではない。 C16:1脂肪酸は有利に1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1%、特に有利に0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%単位GCピーク面積未満の量しか存在すべきではない。 特別に好ましくはC16:1脂肪酸は、本方法により産生される油および/または脂質中に存在すべきではない。 C15:0、C17:0、C16:1 Δ3 trans、C16:4 Δ4,7,10,13およびC18:5 Δ3,6,9,12,15脂肪酸についても同様である。 オレイン酸(C18:1 Δ9 )の他に、その異性体(C18:1 Δ7 、18:1 Δ11 )もまた脂質、油または遊離脂肪酸中に存在し得る。 これらは有利に、単位GCピーク面積で測定して5%、4%、3%、2%または1%未満の量でしか存在しない。 C20:0、C20:1、C24:0およびC24:1脂肪酸はそれぞれの場合に、単位GCピーク面積でそれぞれ対応して0〜1%、0〜3%、および0〜5%の範囲内で存在すべきである。 さらに、ジホモ-γ-リノレン酸(=DGLA)は少量しかGC分析において単位GCピーク面積として種油および/または種子脂質中に検出されるべきではない。 少量とは、単位GCピーク面積で2、1.9、1.8、1.7、1.6または1.5%未満、有利に1.4、1.3、1.2、1.1または1%未満、特に有利に0.9、0.8、0.7、0.6、0.5または0.4%未満を意味する。

    本方法の好ましい実施形態において、DGLAおよびARAは1:1〜1:100、有利に1:2〜1:80、特に有利に1:3〜1:70、特別に1:5〜1:60の比率で産生されるべきである。

    さらなる本方法の好ましい実施形態において、DGLAおよびEPAは1:1〜1:100、1:2〜1:80、特に有利に1:3〜1:70、特別に1:5〜1:60の比率で産生されるべきである。

    本発明の方法により産生される脂質および/または油は、有利に、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸含量に基づき、少なくとも30、40または50重量%、有利に少なくとも60、70または80重量%という高い含量の不飽和脂肪酸、有利に多価不飽和脂肪酸を有するべきである。

    飽和脂肪酸の総和は都合よく、本発明の方法に好適に使用される植物中で少量にしか相当すべきではない。 この文脈に置ける少量とは、単位GCピーク面積で15%、14%、13%、12%、11%または10%未満、好ましくは9%、8%、7%または6%未満の量を意味する。

    種々の方法により導入された多価不飽和脂肪酸合成の遺伝子を有する本方法で使用される宿主植物は、有利に種子中のタンパク質含量よりも高い油含量を有するべきであり、有利な植物は5:1、4:1、3:1、2:1または1:1の比率の油/タンパク質含量を有するべきである。 この文脈において、種子の総重量に基づく油含量は、15〜55%、有利に25〜50%、特に有利に35〜50%の範囲内であるべきである。 本方法に使用する都合のよい宿主植物は、以下の表5に示すようにトリグリセリドのsn1、sn2およびsn3部位に、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸(これらは本発明の方法における多価不飽和脂肪酸合成の出発化合物である)の分布を有すると考えられるが、表中では番号1〜7の行はそのような分布の種々の有利な変法を示す。 npは存在しないことを意味する。

    表5:トリグリセリドのsn1、sn2およびsn3部位における有利な脂肪酸分布を有する植物

    各行は次の植物の比率を示す:第1行=落花生(Arachis hypogaea)、第2行=セイヨウアブラナ(Brassica napus)、第3行=ダイズ(Glycine max)、第4行=アマ(Linum usitatissimum)、第5行=トウモロコシ(Zea mays)、第6行=オリーブ(Olea europaea)および第7行=カカオ(Theobroma cacao)。

    本方法に有利な宿主植物は高いオレイン酸含量を有する植物であり、高いオレイン酸含量とは植物の総脂肪酸含量に基づき、脂質および/または油、特にトリグリセリド中のリノール酸および/またはリノレン酸と比較して少なくとも40、50、60または70重量%の含量を意味し、宿主植物の例としては、例えばカシュー(Anarcardium occidentale)、アルガン(Argania spinosa)、木綿(Bombax malabaricum)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、シア(Butyrospermum parkii)、高-オレイン酸型ベニバナ(Carthamus tinctorius)、コロキンシス(Citrullus colocynthis)、ヘーゼルナッツ(Corylus avellana)、ククルビタ・フォエチジッシマ(Curcurbita foetidissima)、カボチャ(Curcurbita pepo)、キク科ニガーシード(Guizotia abyssinica)、高-オレイン酸型ヒマワリ(Helianthus annus)、マカダミア(Macadamia intergrifolia)、ブラッククミン(Nigella sativa)、オリーブ(Olea europaea)、ケシ(Papaver somniferium)、パッションフルーツ(Passiflora edulis)、アボカド(Persea americana)、スィートアーモンド(Prunus amygdalis)、杏(Prunus armeniaca)、アーモンド(Prunus dulcis)、アメンドウ(Prunus communis)、ゴマ(Sesamum indicum)、マルーパ(Simarouba glauca)、茶(Thea sasumgua)、またはカカオ(Theobroma cacao)が挙げられる。 さらなる有利な植物は、他のsn1およびsn3部位と比較してsn2部位により高い含量の不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸を有する。 より高い含量とは、sn1:sn2:sn3の比率が1:1.1:1、1:1.5:1〜1:3:1であることを意味する。 また、有利な植物であるキウイフルーツ(Actinidia chinensis)、ククイノキ(Aleurites moluccana)、アルネビア・グリフィシイー(Arnebia griffithii)、イエローマスタード(Brassica alba)、シロガラシ(Brassica hirta)、クロガラシ(Brassica nigra)、カラシ(Brassica juncea)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)、ナガミノアマナズナ(Camelina sativa)、大麻(Cannabis sativa)、エキウム・ルブルム(Echium rubrum)、シベナガムラサキ (Echium vulgare)、ホップ(Humulus lupulus)、クルミ(Juglans regia)、アマ(Linum usitatissimum)、キムム種(Ocimum spp.)、シソ(Perilla frutescens)、スベリヒユ(Portulaca oleracea)、サクラ(Prunus cerasus)、アッケシソウ(Salicornia bigelovii)、チア(Salvia hispanica)などは、植物の脂質および/または油中に高いα-リノレン酸含量を有し、すなわち植物の総脂肪酸含量に基づき少なくとも10、15または20重量%、有利に少なくとも25、30、35、40、45または50重量%のα-リノレン酸含量を有する。 特別に有利な植物は同様に、本方法で産生されるアラキドン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸について、トリグリセリド中のsn1およびsn3部位よりもsn2部位に対して1:1.1:1、1:1.5:1〜1:3:1の有利な優先性を示す。

    本方法に使用する植物は、有利には、植物の総脂肪酸含量に基づき2重量%未満のエルカ酸含量しか有するべきでない。 また、C16:0および/またはC18:0飽和脂肪酸の含量は都合よく、植物の総脂肪酸含量に基づき、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10重量%未満、都合よく9、8、7、6または5重量%未満であるべきである。 またC20:0またはC22:1などの長鎖脂肪酸は、有利には存在すべきではないか、または少量、有利には本方法に用いる植物の総脂肪酸含量に基づき、4、3、2,または1重量%未満、有利には0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1重量%未満の量しか存在すべきではない。 典型的にはC16:1は、本発明の方法に使用する植物中では脂肪酸としては存在しないかまたは少量しか存在しない。 少量とは有利には、植物の総脂肪酸含量に基づき、4、3、2または1重量%未満、有利には0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1重量%未満の脂肪酸含量を意味する。

    経済的な理由、すなわち耕作面積および油の収率ゆえに、大規模に栽培されている植物、例えばダイズ、アブラナ、カラシ、アマナズナ、アマニ、ヒマワリ、油ヤシ、木綿、ゴマ、トウモロコシ、オリーブが好適であり、好ましくはアブラナ、アマナズナ、アマニ、ヒマワリが本方法で宿主植物として頻繁に使用される。

    上述の方法により化学的に純粋な多価不飽和脂肪酸または脂肪酸組成物もまた合成可能である。 このためには脂肪酸または脂肪酸組成物を植物(有利には植物の種子)から、既知の様式(例えば種子を臼で挽くことなどにより粉砕し、次いで抽出し、蒸留し、結晶化し、クロマトグラフィーにかけることまたはこれらの手法を組み合わせること)により分離する。 これらの化学的に純粋な脂肪酸または脂肪酸組成物は、食品産業分野、化粧品分野および特に医薬品産業分野の用途に有利である。

    本発明の方法に適当な植物は、一般に脂肪酸を合成できるあらゆる植物であり、例えば双子葉もしくは単子葉植物、藻類またはコケ類全てである。 有利な植物は、以下の植物科:アブラゴケ科(Adelotheciaceae)、ウルシ科(Anacardiaceae)、キク科(Asteraceae)、セリ科(Apiaceae)、カバノキ科(Betulaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、パパイヤ科(Caricaceae)、アサ科(Cannabaceae)、キク科(Compositae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、アブラナ科(Cruciferae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、クルミ科(Juglandaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、アカバナ科(Onagraceae)、ボロボロノキ科(Olacaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、コショウ科(Piperaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、イネ科(Poaceae)、バラ科(Rosaceae)またはナス科(Solanaceae)、有利にはウルシ科(Anacardiaceae)、キク科(Asteraceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、アサ科(Cannabaceae)、キク科(Compositae)、アブラナ科(Cruciferae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、アカバナ科(Onagraceae)、ボロボロノキ科(Olacaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、コショウ科(Piperaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、イネ科(Poaceae)またはナス科(Solaneae)からなる群より選択されるが、本方法に適当な他の植物は栄養植物または観賞植物、例えばマンジュギクなどである。

    例として挙げられる植物は以下よりなる群から選択される植物である:漆科(Anacardiaceae)、例えばカイノキ属(Pistacia)、マンゴー属(Mangifera)、カシュー属(Anacardium)、例えば属および種Pistacia vera[ピスタチオ]、Mangifer indica[マンゴー]もしくはAnacardium occidentale[カシュー]、キク科(Asteraceae)、例えばキンセンカ属(Calendula)、ベニバナ属(Carthamus)、ヤグルマギク属(Centaurea)、キコリウム属(Cichorium)、チョウセンアザミ属(Cynara)、ヒマワリ属(Helianthus)、アキノゲシ属(Lactuca)、Locusta属、タゲテス属(Tagetes)、カノコソウ属(Valeriana)、例えば属および種Artemisia sphaerocephala、Calendula officinalis[一般のマリゴールド]、Carthamus tinctorius[ベニバナ]、Centaurea cyanus[コーンフラワー]、Cichorium intybus[チコリー]、Cynara scolymus[チョウセンアザミ]、Helianthus annus[ヒマワリ]、Lactuca sativa(レタス)、Lactuca crispa(カッティングレタス)、Lactuca esculenta、Lactuca scariola L. ssp. sativa(トゲチシャ)、Lactuca scariola L. var. integrata、Lactuca scariola L. var. integrifolia、Lactuca sativa subsp. romana、Locusta communis、Valeriana locusta [サラダ野菜]、Tagetes lucida(ミントマリゴールド)、Tagetes erecta(マリゴールド)もしくはTagetes tenuifolia[センジュギクもしくはコウオウソウ]、セリ科(Apiaceae)、例えばニンジン属(Daucus)、例えば属および種Daucus carota[ニンジン]、カバノキ科(Betulaceae)、例えばハシバミ属(Corylus)、例えば属および種Corylus avellana(ハシバミ)もしくはCorylus colurna[ヘーゼルナッツ]、ムラサキ科(Boraginaceae)、例えばAdelocaryum属、Alkanna属、ウシノシタグサ属(Anchusa)、ボラゴ属(Borago)、Brunnera属、Cerinthe属、オオルリソウ属(Cynoglossum)、シャゼンムラサキ属(Echium)、Gastrocatyle属、ムラサキ属(Lithospermum)、Moltkia属、キバナムラサキ属(Nonea)、オノスマ属(Onosma)、Onosmodium属、Paracaryum属、Pectocarya属、ヒレハリソウ属(Symphytum)、例えば属および種Adelocaryum coelestinum、Alkanna orientalis、Anchusa anzurea(ウシノシタグサ)、Anchusa capensis(アフリカワスレナグサ)、Anchusa hybrida、Borago officinalis[ボリジ]、Brunnera orientalis、Cerinthe minor(セリンセ)、Cynoglossum amabile(シナワスレナグサ)、Cynoglossum lanceolatum(シマスナビキソウ)、Echium rubrum(エキウム・ルブルム)、Echium vulgare(シベナガムラサキ)、Gastrocatyle hispida、Lithospermum arvense(イヌムラサキ)、Lithospermum purpureocaeruleum、Moltkia aurea、Moltkia coerules、Nonea macrosperma、Onosma sericeum、Onosmodium molle、Onosmodium occidentale、Paracaryum caelestinum、Pectocarya platycarpa、Symphytum officinale(ヒレハリソウ)、アブラナ科(Brassicaceae)、例えばアブラナ属(Brassica)、アマナズナ属(Camelina)、Melanosinapis属、シロガラシ属(Sinapis)、シロイナズナ属(Arabadopsis)、例えば属および種Brassica alba(シロガラシ)、Brassica carinata、Brassica hirta、Brassica napus(セイヨウアブラナ)、Brassica rapa ssp.[アブラナ]、Sinapis arvensis(ノハラガラシ)、Brassica juncea(カラシナ)、Brassica juncea var. juncea、Brassica juncea var. crispifolia、Brassica juncea var. foliosa、Brassica nigra(クロガラシ)、Brassica sinapioides、Camelina sativa(ナガミアマナズナ)、Melanosinapis communis[カラシ]、Brassica oleracea(スベリヒユ)[飼料用ビート]もしくはArabidopsis thaliana(シロイナズナ)、パイナップル科(Bromeliaceae)、例えばAnana属、パイナップル属(Bromelia)(パイナップル)、例えば属および種Anana comosus(パイナップル)、Ananas ananasもしくはBromelia comosa[パイナップル]、パパイヤ科(Caricaceae)、例えばパパイヤ属(Carica)、例えば属および種Carica papaya[パパイヤ]、アサ科(Cannabaceae)、例えばアサ属(Cannabis)、例えばCannabis sativa[麻]、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、例えばサツマイモ属(Ipomea)、ヒルガオ属(Convolvulus)、例えば属および種Ipomoea batatus (サツマイモ)、Ipomoea pandurata、Convolvulus batatas、Convolvulus tiliaceus、Ipomoea fastigiata、Ipomoea tiliacea、Ipomoea triloba(アサガオ)もしくはConvolvulus panduratus[カンショ、batate]、アカザ科(Chenopodiaceae)、例えばフダンソウ属(Beta)、例えば属および種Beta vulgaris(フダンソウ)、Beta vulgaris var. altissima(テンサイ)、Beta vulgaris var. vulgaris(サトウダイコン)、Beta maritima(ハマフダンソウ)、Beta vulgaris var. perennis、Beta vulgaris var. conditiva(テーブルビート)もしくはBeta vulgaris var. esculenta[テンサイ]、Crypthecodiniaceae、例えばクリプセコジニウム属(Crypthecodinium)、例えば属および種Crypthecodinium cohnii(海洋性渦鞭毛藻)、ウリ科(Cucurbitaceae)、例えばカボチャ属(Cucurbita)、例えば属および種Cucurbita maxima (セイヨウカボチャ)、Cucurbita mixta(ククルビタ・ミクスタ)、Cucurbita pepo(ペポカボチャ)もしくはCucurbita moschata[カボチャ/スカッシュ]、グミ科(Elaeagnaceae)、例えばグミ属(Elaeagnus)、例えば属および種Olea europaea[オリーブ]、ツツジ科(Ericaceae)、例えばカルミア属(Kalmia)、例えば属および種Kalmia latifolia(カルミア)、Kalmia angustifolia(ホソバアメリカシャクナゲ)、Kalmia microphylla(マウンテンローレル)、Kalmia polifolia(アメリカローレル)、Kalmia occidentalis、Cistus chamaerhodendrosもしくはKalmia lucida[アメリカシャクナゲ]、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、例えばキャッサバ属(Manihot)、Janipha属、タイワンアブラギリ属(Jatropha)、ヒマ属(Ricinus)、例えば属および種Manihot utilissima(イモノキ)、Janipha manihot、Jatropha manihot、Manihot aipil、Manihot dulcis、Manihot manihot、Manihot melanobasis、Manihot esculenta[キャッサバ]もしくはRicinus communis[ヒマシ油植物]、マメ科(Fabaceae)、例えばエンドウ属(Pisum)、ネムノキ属(Albizia)、Cathormion属、フェビレア属(Feuillea)、インガ属(Inga)、Pithecolobium属、アカシア属(Acacia)、オジギソウ属(Mimosa)、ウマゴヤシ属(Medicajo)、ダイズ属(Glycine)、ドリコス属(Dolichos)、インゲン属(Phaseolus)、ダイズ(soybean)、例えば属および種Pisum sativum(エンドウ)、Pisum arvense(アカバナエンドウ)、Pisum humile[エンドウマメ]、Albizia berteriana、Albizia julibrissin(ネムノキ)、Albizia lebbeck(ビルマネムノキ)、Acacia berteriana、Acacia littoralis、Albizia berteriana、Albizzia berteriana、Cathormion berteriana、Feuillea berteriana、Inga fragrans、Pithecellobium berterianum、Pithecellobium fragrans、Pithecolobium berterianum、Pseudalbizzia berteriana、Acacia julibrissin、Acacia nemu、Albizia nemu、Feuilleea julibrissin、Mimosa julibrissin、Mimosa speciosa、Sericanrda julibrissin、Acacia lebbeck、Acacia macrophylla、Albizia lebbeck(ビルマネムノキ)、Feuilleea lebbeck、Mimosa lebbeck、Mimosa speciosa[ネムノキ]、Medicago sativa(ムラサキウマゴヤシ)、Medicago falcata(コガネウマゴヤシ)、Medicago varia[アルファルファ]、Glycine max(ダイズ)、Dolichos soja(ツルマメ)、Glycine gracilis、Glycine hispida(ツルマメ)、Phaseolus max(ダイズ)、Soja hispida(ダイズ)もしくはSoja max[ダイズ]、フウロソウ科(Geraniaceae)、例えばペラルゴニウム属(Pelargonium)、ココヤシ属(Cocos)、Oleum属、例えば属および種Cocos nucifera(ココヤシ)、Pelargonium grossularioides (ココナッツ・ゼラニウム)もしくはOleum cocois[ココナッツ]、イネ科(Gramineae)、例えばサトウキビ属(Saccharum)、例えば属および種Saccharum officinarum(サトウキビ)、クルミ科(Juglandaceae)、例えばクルミ属(Juglans)、Wallia属、例えば属および種Juglans regia(クルミ)、Juglans ailanthifolia(オニグルミ)、Juglans sieboldiana(オニグルミ)、Juglans cinerea(バタークルミ)、Wallia cinerea(ホワイトウォルナット)、Juglans bixbyi(ビクスビー・ウォルナット)、Juglans californica(クラロウォルナット)、Juglans hindsii(ヒンズウォルナット)、Juglans intermedia、Juglans jamaicensis、Juglans major、Juglans microcarpa(リトルウォルナット)、Juglans nigra(ブラックウォルナット)もしくはWallia nigra[クルミ]、クスノキ科(Lauraceae)、例えばワニナシ属(Persea)、ゲッケイジュ属(Laurus)、例えば属および種Laurus nobilis[月桂樹]、Persea americana(アボカド)、Persea gratissima(アボカド)もしくはPersea persea [アボカド]、マメ科(Leguminosae)、例えばラッカセイ属(Arachis)、例えば属および種Arachis hypogaea[落花生]、アマ科(Linaceae)、例えばAdenolinum属、例えば属および種Linum usitatissimum(アマ)、Linum humile、Linum austriacum、Linum bienne(ヒメアマ)、Linum angustifolium、Linum catharticum(マウンテンフラックス)、Linum flavum(ヤマブキアマ)、Linum grandiflorum(ベニバナアマ)、Adenolinum grandiflorum、Linum lewisii(レウェシー種アマ)、Linum narbonense(ヘブンリーブルー)、Linum perenne(シュッコンアマ)、Linum perenne var. lewisii、Linum pratense もしくはLinum trigynum[アマニ]、Lythrarieae科、例えばザクロ属(Punica)、例えば属および種Punica granatum [ザクロ]、アオイ科(Malvaceae)、例えばワタ属(Gossypium)、例えば属および種Gossypium hirsutum(アプランドワタ)、Gossypium arboreum(キダチワタ)、Gossypium barbadense(ウミシマワタ)、Gossypium herbaceum(アジアワタ)もしくは Gossypium thurberi[木綿]、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、例えばゼニゴケ属(Marchantia)、例えば属および種 Marchantia berteroana、Marchantia foliacea、Marchantia macropora、バショウ科(Musaceae)、例えばバショウ属(Musa)、例えば属および種Musa nana(香蕉)、Musa acuminata (ミバショウ)、Musa paradisiaca(リョウリバナナ)、Musa spp. [バナナ]、アカバナ科(Onagraceae)、例えばカミソニア属(Camissonia)、オエノセラ属(Oenothera)、例えば属および種Oenothera biennis(マメツヨイグサ)もしくはCamissonia brevipes[月見草]、ヤシ科(Palmae)、例えばアブラヤシ属(Elaeis)、例えば属および種Elaeis guineensis[油ヤシ]、ケシ科(Papaveraceae)、例えば、一例として、ケシ属(Papaver)、例えば属および種Papaver orientale(オニゲシ)、Papaver rhoeas(ヒナゲシ)、Papaver dubium(ナガミヒナゲシ)[ケシ]、ゴマ科(Pedaliaceae)、例えばゴマ属(Sesamum)、例えば属および種Sesamum indicum[ゴマ]、コショウ科(Piperaceae)、例えばコショウ属(Piper)、Artanthe属、サダソウ属(Peperomia)、Steffensia属、例えば属および種Piper aduncum(コンドルキージョ)、Piper amalago、Piper angustifolium、Piper auritum(ピペル・アウリツム)、Piper betel(キンマ)、Piper cubeba(クベペッパー)、Piper longum(ナガミコショウ)、Piper nigrum(コショウ)、Piper retrofractum(ヒハツモドキ)、Artanthe adunca、Artanthe elongata、Peperomia elongata、Piper elongatum、Steffensia elongata[カイエンペッパー]、イネ科(Poaceae)、例えばオオムギ属(Hordeum)、ライムギ属(Secale)、エンバク属(Avena)、ソルガム属(Sorghum)、ウシクサ属(Andropogon)、シラゲガヤ属(Holcus)、キビ属(Panicum)、イネ属(Oryza)、トウモロコシ属(Zea(トウモロコシ))、コムギ属(Triticum)、例えば属および種Hordeum vulgare(オオムギ)、Hordeum jubatum、Hordeum murinum、Hordeum secalinum、Hordeum distichon Hordeum aegiceras、Hordeum hexastichon、Hordeum hexastichum、Hordeum irregulare、Hordeum sativum、Hordeum secalinum[オオムギ]、Secale cereale[ライムギ]、Avena sativa(エンバク)、Avena fatua(カラスムギ)、Avena byzantina(アカエンバク)、Avena fatua var. sativa(マカラスムギ)、Avena hybrida[オートムギ]、Sorghum bicolor(モロコシ)、Sorghum halepense(セイバンモロコシ
    )、Sorghum saccharatum(サトウモロコシ)、Sorghum vulgare(トウキビ)、Andropogon drummondii、Holcus bicolor、Holcus sorghum、Sorghum aethiopicum、Sorghum arundinaceum、Sorghum caffrorum、Sorghum cernuum、Sorghum dochna、Sorghum drummondii(チキンコーン)、Sorghum durra(アズキモロコシ)、Sorghum guineense、Sorghum lanceolatum、Sorghum nervosum(コウリャン)、Sorghum saccharatum(サトウモロコシ)、Sorghum subglabrescens、Sorghum verticilliflorum、Sorghum vulgare(トウキビ)、Holcus halepensis、Sorghum miliaceum、Panicum militaceum[ミレット]、Oryza sativa(イネ)、Oryza latifolia(野生イネ)[イネ]、Zea mays[トウモロコシ]、Triticum aestivum(コムギ)、Triticum durum(マカロニコムギ)、Triticum turgidum、Triticum hybernum(コムギ)、Triticum macha(トリティカム・マチャ)、Triticum sativum(コムギ)もしくはTriticum vulgare[コムギ]、チノリモ科(Porphyridiaceae)、例えばChroothece属、Flintiella属、Petrovanella属、チノリモ属(Porphyridium)、Rhodella属、Rhodosorus属、Vanhoeffenia属、例えば属および種Porphyridium cruentum(チノリモ)、ヤマモガシ科(Proteaceae)、例えばマカデミア属(Macadamia)、例えば属および種Macadamia intergrifolia[マカデミア]、バラ科(Rosaceae)、例えばサクラ属(Prunus)、例えば属および種Prunus armeniaca(杏)、Prunus amygdalus(スィートアーモンド)、Prunus avium(サクランボ)、アカネ科(Rubiaceae)、例えばコーヒーノキ属(Coffea)、例えば属および種Coffea spp.(コーヒー種)、Coffea arabica(コーヒー・アラビカ)、Coffea canephora(コーヒー・カネフォーラ)もしくはCoffea liberica(コーヒー・リベリカ)[コーヒー]、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、例えばゴマノハグサ属(Scrophularia)、モウズイカ属(Verbascum)、例えば属および種Scrophularia marilandica、Verbascum blattaria(シロハナモウズイカ)、Verbascum chaixii(モウズイカ)、Verbascum densiflorum、Verbascum lagurus、Verbascum longifolium、Verbascum lychnitis(リクニティス)、Verbascum nigrum(クロモウズイカ)、Verbascum olympicum(オリンピカム)、Verbascum phlomoides(フロモイデス)、Verbascum phoenicum(ムラサキモウズイカ)、Verbascum pulverulentumもしくはVerbascum thapsus[ビロードモウズイカ]、ナス科(Solanaceae)、例えばトウガラシ属(Capsicum)、タバコ属(Nicotiana)、ナス属(Solanum)、トマト属(Lycopersicon)、例えば属および種Capsicum annuum(トウガラシ)、Capsicum annuum var. glabriusculum、Capsicum frutescens[コショウ]、Capsicum annuum[パプリカ]、Nicotiana tabacum(タバコ)、Nicotiana alata(ハナタバコ)、Nicotiana attenuata(野生タバコ)、Nicotiana glauca(キダチタバコ)、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana rustica、Nicotiana sylvestris[タバコ]、Solanum tuberosum[ジャガイモ]、Solanum melongena[ナス]、Lycopersicon esculentum(トマト)、Lycopersicon lycopersicum(トマト)、Lycopersicon pyriforme、Solanum integrifolium(ヒラナス)もしくはSolanum lycopersicum[トマト]、アオギリ科(Sterculiaceae)、例えばカカオ属(Theobroma)、例えば属および種Theobroma cacao[カカオ]またはツバキ科(Theaceae)、例えばツバキ属(Camellia)、例えば属および種Camellia sinensis[茶]。 さらに挙げられる植物としては、属および種Argania spinosa(アルガン)、Arnebia griffithii(アルネビア・グリフィシィ)、Adansonia digitata(バオバブ)、Orbignya martiana(ババス)、Carum carvi(キャラウェイ)、Bertholletia excelsa(ブラジルナッツ)、Aleurites moluccana(ククイナッツ)、Hydnocarpus kurzii(ヒドノカルプス・クルジイ)、Salvia hispanica(チア)、Vitis vinifera(ブドウ)、Corvlus avellana(ヘーゼルナッツ)、Humulus lupus(ホップ)、Hyptis spicigera(ヒプティス・スピシゲラ)およびShorea stenoptera(イリッペバターノキ)がある。

    本発明の方法に有利に使用される植物は、双子葉または単子葉植物などのトランスジェニック植物である。 本発明の方法に使用される植物のうちで特に有利なものは、油産生植物に属するトランスジェニック植物であるが、油産生植物とは油の産生に使用される植物を言い、例えば好ましくは、大量の脂質化合物を含む油果実作物、例えば落花生、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ(Carthamus tinctoria)、ケシ、カラシ、麻、ヒマシ油植物、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、月見草、ビロードモウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカデミア、アボカド、月桂樹、カボチャ/スカッシュ、アマニ、ダイズ、ピスタチオ、ボリジ、樹木(油ヤシ、ココナッツ、クルミ)または作物、例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、木綿、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ナス科植物、例えば、ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、ソラマメ種、エンドウマメ、アルファルファもしくは低木植物(コーヒー、カカオ、茶)、シダレヤナギ種、ならびに多年生牧草および家畜用農作物などである。

    本発明において好ましい植物は脂肪種子植物および油料作物植物、例えば落花生、アブラナ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、セイヨウカラシナ、カラシ、麻、ヒマシ油植物、オリーブ、キンセンカ、ザクロ、月見草、カボチャ/スカッシュ、アマニ、ダイズ、ボリジ、樹木(油ヤシ、ココナッツ)である。 特に好ましい植物は、C18:2-および/またはC18:3-脂肪酸の多い植物、例えばヒマワリ、ベニバナ、トマト、ビロードモウズイカ、ゴマ、木綿、カボチャ/スカッシュ、ケシ、月見草、クルミ、アマニ、麻、アザミまたはベニバナである。 特別に好ましい植物は、例えばベニバナ、ヒマワリ、ケシ、月見草、クルミ、アマニ、セイヨウカラシナ、アマナズナまたは麻などの植物である。

    都合がよいのは、上述の本発明の方法において植物にさらに、本方法のステップ(a)〜(e)または(a)〜(c)で導入する核酸および場合により導入されたω3-デサチュラーゼおよび/またはΔ12-デサチュラーゼをコードする核酸配列に加え、脂肪酸もしくは脂質代謝の酵素をコードする別の核酸を導入することである。

    一般に多価不飽和脂肪酸を産生するための方法において、あらゆる脂肪酸もしくは脂質代謝遺伝子が使用可能であり、有利にはΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼと組み合わせて使用可能である(本発明の目的において、複数形は単数形を含み、逆もまた同様であると理解されたい)。 脂肪酸もしくは脂質代謝の遺伝子であって、アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoAリゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼからなる群より選択されるものは、有利にΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼと組み合わせて使用される。 Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼからなる群より選択される遺伝子は特に上述のΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼ遺伝子と組み合わせて好適に使用され、ここでは単独の遺伝子もしくは複数の遺伝子を組み合わせて使用可能である。 上述の遺伝子は有利にΔ6-エロンガーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼおよび/またはΔ12-デサチュラーゼと組み合わせて本発明において使用される。

    Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼからなる群より選択される遺伝子は特に、上述の遺伝子と組み合わせて好適に使用される。

    Δ6-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよび/またはΔ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする本発明の方法に用いる核酸の酵素活性を、有利に脂肪酸または脂質代謝のポリペプチド(例えばΔ8-デサチュラーゼまたはΔ5-もしくはΔ9-エロンガーゼ活性を有するポリペプチド)をコードする核酸配列と組み合わせることにより、本発明の方法により多様な多価不飽和脂肪酸が製造可能である。 本発明の方法に用いる植物としてどの植物を選択したかにより、種々の多価不飽和脂肪酸の混合物または個別の多価不飽和脂肪酸(例えばEPAもしくはARA)を遊離の形態でまたは結合型として産生させることができる。 出発植物中で支配的な脂肪酸組成(C18:2-もしくはC18:3-脂肪酸)によって、C18:2-脂肪酸から誘導される脂肪酸(例えばGLA、DGLAもしくはARA)、またはC18:3-脂肪酸から誘導される脂肪酸(例えばSDA、ETAもしくはEPA)が結果的に得られる。 本方法に用いる植物中に不飽和脂肪酸としてリノール酸(=LA、C18:2 Δ9,12 )のみが存在する場合、その方法ではGLA、DGLAおよびARAのみが産物として生じ、これらはいずれも遊離脂肪酸としてまたは結合型として存在しうる。 本方法に用いる植物中に不飽和脂肪酸としてα-リノレン酸(=ALA、C18:3 Δ9,12,15 )のみが存在する場合(例えばアマニの場合がそうである)、その方法ではSDA、ETAまたはEPAのみが産物として生じ、上記のようにこれらはいずれも遊離脂肪酸としてまたは結合型として存在しうる。

    Δ6-デサチュラーゼおよびΔ6-エロンガーゼの活性に起因して、形成される産物は例えば、出発植物およびその植物中の不飽和脂肪酸によって、それぞれGLAおよびDGLA、またはSDAおよびETAである。 好ましくはDGLAもしくはETAまたはこれらの混合物が形成される。 植物中にさらにΔ5-デサチュラーゼを導入したならば、ARAおよび/またはEPAもまた形成される。 その上さらに、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ活性をコードする遺伝子をさらに導入したならば、本発明の方法により脂肪酸DPAおよび/またはDHAが産生され得る。 合成の出発物質として作用する植物中に存在する脂肪酸に依存して有利に、ARA、EPAおよび/もしくはDHAまたはこれらの混合物のみが合成される。 生合成カスケードが関与することから、対象の最終産物は生物中で純粋な形態では存在しない。 少量の前駆物質が必ず最終産物中にさらに存在する。 少量とは、最終産物であるDGLA、ETAもしくはその混合物、またはARA、EPAもしくはその混合物、またはAEA、EPA、DHAもしくはその混合物に基づき、20重量%未満、有利に15重量%未満、特に有利に10重量%未満、最も有利に5、4、3、2または1重量%未満の量である。

    本発明の方法に使用される酵素のための出発脂肪酸は、植物中に直接産生させることの他に、脂肪酸を外部から供給してもよい。 経済的理由から植物中での産生が好ましい。 ARAの製造に好適な基質は、リノール酸(C18:2 Δ9,12 )、γ-リノレン酸(C18:3 Δ6,9,12 )およびジホモ-γ-リノレン酸(C20:3 Δ8,11,14 )である。 EPAの製造に好適な基質は、リノレン酸(C18:3 Δ9,12,15 )、ステアリドン酸(C18:4 Δ6,9,12,15 )およびエイコサテトラエン酸(C20:4 Δ8,11,14,17 )である。 DHAの製造に好適な基質は、リノレン酸(C18:3 Δ9,12,15 )、ステアリドン酸(C18:4 Δ6,9,12,15 )、エイコサテトラエン酸(C20:4 Δ8,11,14,17 )、EPAおよびDPAである。

    ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼ(例えばオンコリンクス属(Oncorhynchus)、ツメガエル属(Xenopus)またはシオナ属(Ciona)由来のもの)と比較して、本発明のΔ5-エロンガーゼは、C 22 -脂肪酸を対応するC 24 -脂肪酸へと伸長しないという有利な特徴を有する。 さらに、本発明のΔ5-エロンガーゼは有利に、ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼがそうしてしまうように、Δ6-位に二重結合を有する脂肪酸を変換することがない。 特に有利にΔ5-エロンガーゼは選択的に不飽和C 20 -脂肪酸しか変換しない。 これらの都合のよいΔ5-エロンガーゼはいくつかの推定膜貫通型ヘリックス(5〜7)を含有する。 有利に、Δ5-位に二重結合を有するC 20 -脂肪酸のみが変換され、ここではω3-C 20 -脂肪酸が優先される(EPA)。 その上さらに、本発明の好適な実施形態において、これらは、Δ5-エロンガーゼ活性の他に、有利にほとんどあるいは全くΔ6-エロンガーゼ活性を示さないという特徴を有する。 対照的に、ヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼΔ6-またはΔ5-二重結合を有する脂肪酸に対してほぼ同じ活性を示す。 こうした有利なエロンガーゼのことを単一機能型エロンガーゼとも言う。 対照的にヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは多機能型エロンガーゼと呼ばれ、それらは上述の基質の他にモノ不飽和C 16 -およびC 18 -脂肪酸、例えばΔ9-またはΔ11-二重結合を有するものをも変換してしまう。 酵母培養試験において、基質として酵母にEPAを添加したところ、単機能型エロンガーゼは添加したEPAの少なくとも15重量%、有利に少なくとも20重量%、特に有利に少なくとも25重量%をドコサペンタエン酸(DPA、C22;5 Δ7,10,13,16,19 )へと変換した。 γ-リノレン酸(=GLA、C18:3 Δ6,9,12 )を基質として加えた場合には、この酸は都合良いことに全く伸長されない。 同様にC18:3 Δ5,9,12もまた伸長されない。 別の有利な実施形態においては、添加されたGLAの60重量%未満、有利に55重量%未満、好ましくは50重量%未満、特に有利に45重量%未満、特別に有利に40重量%未満しかジホモ-γ-リノレン酸(=C20:3 Δ8,11,14 )へと変換されない。 さらなる、特に好ましい本発明のΔ5-エロンガーゼ活性についての実施形態においては、GLAは変換されない。

    図27および図28は測定した種々のエロンガーゼの基質特異性を示す。 図27は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(図27A)、カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)(図27B)、およびニジマス(Oncorhynchus mykiss)(図27C)由来の多機能型エロンガーゼの特異性を示す。 これらのエロンガーゼはいずれも多様は基質を変換する。 本発明の方法においては、このことは副産物を生じてしまい、それらはさらなる酵素活性により変換されなければならない。 このことから、これらの酵素は本発明の方法においてさほど好ましくはない。 好ましい単一機能型エロンガーゼおよびその基質特異性を図28に示す。 図28Aはオストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)Δ5-エロンガーゼの特異性を示す。 この酵素はΔ5-位に二重結合を有する脂肪酸のみを変換する。 有利にC20-脂肪酸のみが変換される。 タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)Δ5-エロンガーゼも同じような高い基質特異性を示す(図28C)。 Ostreococcus tauriΔ6-エロンガーゼ(図28B)およびThallasiosira pseudonanaΔ6-エロンガーゼ(図28D)の両方は、有利にΔ6-位に二重結合を有する脂肪酸のみを変換した。 有利にC 18 -脂肪酸のみが変換される。 シロイナズナ(Arabidopsis thaliana)およびミドリムシ(Euglena gracilis)由来のΔ5-エロンガーゼもまた、その特異性により特徴づけられる。

    同様に本発明の有利なΔ6-エロンガーゼは高い特異性により特徴付けられ、換言すればC 18 -脂肪酸が優先的に伸長される。 本発明の有利なΔ6-エロンガーゼは、Δ6-位に二重結合を有する脂肪酸を都合良く変換する。 特に有利なΔ6-エロンガーゼは、有利に分子内に3または4個の二重結合を有するC 18 -脂肪酸を変換するが、それらの脂肪酸はΔ6-位に二重結合を有するものでなければならない。 その上さらに、本発明の好適な実施形態において、これらは、Δ6-エロンガーゼ活性を有することの他に、都合の良いことにΔ5-エロンガーゼ活性を全く有しないかもしくは相対的に低い程度しか有しない、という特徴を有する。 対照的にヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは、Δ6-またはΔ5-二重結合を有する脂肪酸に対してほぼおなじ活性を示す。 有利なエロンガーゼのことを単一機能型エロンガーゼとも言う。 対照的にヒトエロンガーゼまたは非ヒト動物由来のエロンガーゼは多機能型エロンガーゼと呼ばれており、それらは上述の基質の他にモノ不飽和C 16 -およびC 18 -脂肪酸、例えばΔ9-またはΔ11-二重結合を有するものをも変換してしまう。 酵母培養試験において、基質として酵母にEPAを添加したところ、単機能型エロンガーゼは添加したα-リノレン酸(=ALA、C18:3 Δ9,12,15 )の少なくとも10重量%、または添加したγ-リノレン酸(=GLA、C18:3 Δ6,9,12 )の少なくとも40重量%、有利にそれぞれ少なくとも20重量%および50重量%、特に有利にそれぞれ少なくとも25重量%および60重量%を変換した。 C18:4 Δ6,9,12,15 (ステアリドン酸)が変換されることも特に都合がよい。 ここでは、SDAは、少なくとも40重量%、有利に少なくとも50重量%、特に有利に少なくとも60重量%、特別に有利に少なくとも70重量%変換される。 特に都合の良いΔ6-エロンガーゼは、次の基質に対してほとんど(変換率にして0.1重量%未満)あるいは全く活性を示さない:C18:1 Δ6 、C18:1 Δ9 、C18:1 Δ11 、0C20:2 Δ11,14 、C20:3 Δ11,14,17 、C20:3 Δ8,11,14 、C20:4 Δ5,8,11,14 、C20:5 Δ5,8,11,14,17 、またはC20:4 Δ7,10,13,16

    図29および図30および表21は測定した種々のエロンガーゼの基質特異性を示す。

    既知のω3-デサチュラーゼと比較して、本発明の方法に使用するω3-デサチュラーゼは広範な範囲のω6-脂肪酸を不飽和化することができるという都合の良い特徴を有し、C 20 -およびC 22 -脂肪酸(例えばC 20:2 -、C 20:3 -、C 20:4 -、C 22:4 -またはC 22:5 -脂肪酸)が優先的に不飽和化される。 また一方、より短いC 18 -脂肪酸、例えばC 18:2 -またはC 18:3 -脂肪酸もまた都合良く不飽和化される。 ω3-デサチュラーゼのこれらの特徴に起因して、生物中(有利には植物または菌類中)の脂肪酸分布をω6-脂肪酸からω3-脂肪酸へと都合良くシフトさせることが可能である。 本発明のω3-デサチュラーゼはC 20 -脂肪酸を優先的に不飽和化する。 生物内で、これらの脂肪酸は、存在する脂肪酸プールから、少なくとも10%、15%、20%、25%または30%変換され、対応するω3-脂肪酸を生じる。 これに対してC 18 -脂肪酸については、ω3-デサチュラーゼの活性は10分の1という換算係数分だけ低く、すなわち脂肪酸プール中に存在する脂肪酸の約1.5〜3%しか対応するω3-脂肪酸へと変換されない。 本発明のω3-デサチュラーゼの好ましい基質はリン脂質中に結合したω6-脂肪酸である。 ジホモ-γ-リノレン酸[C 20:4 Δ8,11,14 ]の不飽和化に関して図19は、不飽和化が行われるに際してω3-デサチュラーゼが都合のよいことにsn1またはsn2位に結合した脂肪酸を区別しないことを明確に示す。 リン脂質中のsn1位に結合した脂肪酸およびsn2位に結合した脂肪酸の両方が不飽和化される。 別の利点は、ω3-デサチュラーゼが多様なリン脂質、例えばホスファチジルコリン(=PC)、ホスファチジルイノシトール(=PIS)またはホスファチジルエタノールアミン(=PE)などを変換するということである。 最後に不飽和化産物はまた、中性脂肪(=NL)、すなわちトリグリセリド中にも存在する。

    既知のΔ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼと比較して、本発明の方法に用いるΔ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ6-デサチュラーゼの利点は、これらがリン脂質またはCoA脂肪酸エステル、有利にはCoA脂肪酸エステルに結合された脂肪酸を変換することができるということである。

    本発明の方法に用いるΔ12-デサチュラーゼは、都合良くオレイン酸(C18:1 Δ9 )をリノール酸(C18:2 Δ9,12 )へと、またはC18:2 Δ6,9をC18:3 Δ6,9,12 (=GLA)へと変換する。 用いるΔ12-デサチュラーゼは有利に、リン脂質またはCoA脂肪酸エステル、有利にはCoA脂肪酸エステルに結合した脂肪酸を変換する。

    Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする本発明の方法に用いる核酸による酵素活性を、有利に脂肪酸または脂質代謝のポリペプチド(例えばΔ4-、Δ5-、Δ6-、Δ8-、Δ12-デサチュラーゼまたはΔ5-、Δ6-もしくはΔ9-エロンガーゼ活性を有するさらなるポリペプチド)をコードする核酸配列と組み合わせることにより、本発明の方法において非常に多様な多価不飽和脂肪酸を製造することができる。 本発明の方法に用いる都合のよい植物としてどの植物を選択したかによって、種々の多価不飽和脂肪酸の混合物または個別の多価不飽和脂肪酸(例えばEPA、ARAもしくはDHAなど)を遊離の形態で、もしくは結合型として製造することができる。 出発植物中で支配的な脂肪酸組成(C18:2-もしくはC18:3-脂肪酸)によって、C18:2-脂肪酸から誘導される脂肪酸(例えばGLA、DGLAもしくはARA)、またはC18:3-脂肪酸から誘導される脂肪酸(例えばSDA、ETA、EPAもしくはDHA)が結果的に得られる。 本方法に用いる植物中に不飽和脂肪酸としてリノール酸(=LA、C18:2 Δ9,12 )のみが存在する場合、その方法ではGLA、DGLAおよびARAのみが産物として生じ、これらはいずれも遊離脂肪酸としてまたは結合型として存在しうる。 植物中でさらにω3-デサチュラーゼを発現させることにより、脂肪酸分布をα-リノレン酸、DPAおよびDHAへとシフトさせることができる。 しかしながらこの脂肪酸分布のシフトは相対的なものでしかなく限定的である。 さらに都合が良いのは、既に高いα-リノレン酸含量を有する植物(例えば下記に記載するもの)におけるこのようなシフトである。 植物中に不飽和脂肪酸としてα-リノレン酸(=ALA、C18:3 Δ9,12,15 )のみが存在する場合(例えばアマニの場合がそうである)、その方法ではSDA、ETA、EPAおよび/またはDHAのみが産物として生じ、上記のようにこれらはいずれも遊離脂肪酸としてまたは結合型として存在しうる。 合成において役割を果たす酵素Δ5-エロンガーゼの活性による修飾は、都合良くΔ4-、Δ5-、Δ6-、Δ12-デサチュラーゼおよび/もしくはΔ6-エロンガーゼ、またはΔ4-、Δ5-、Δ8-、Δ12-デサチュラーゼおよび/もしくはΔ9-エロンガーゼと組み合わせることにより、標的化された様式で上述の植物中に単独の生成物のみを産生させることが可能である。 Δ6-デサチュラーゼおよびΔ6-エロンガーゼの活性に起因して、出発植物および不飽和脂肪酸に依存して、例えばGLAおよびDGLA、または、SDAおよびETAが形成される。 好ましくはDGLAまたはETAまたはこれらの混合物が形成される。 もし生物中に(有利には植物中に)Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよびΔ4-デサチュラーゼがさらに導入されたならば、ARA、EPAおよび/またはDHAがさらに形成される。 このことはまた、Δ8-デサチュラーゼおよびΔ9-エロンガーゼをこれ以前に導入した生物にも適応される。 都合良く、植物中に存在する脂肪酸(合成の出発基質として作用する)に依存して、ARA、EPAもしくはDHAまたはそれらの混合物のみが合成される。 生合成カスケードが関与することから、対象の最終産物は生物中で純粋な形態では存在しない。 少量の前駆物質が必ず最終産物中にさらに存在する。 こうした少量とは、最終産物であるDGLA、ETAもしくはその混合物、またはARA、EPA、DHAもしくはその混合物、有利にはEPA、DHAもしくはその混合物に基づき、20重量%未満、有利に15重量%未満、特に有利に10重量%未満、特別に有利に5、4、3、2または1重量%未満の量である。

    本発明の方法に使用することができるマス由来の核酸(配列番号53)は、DHA合成の前駆物質である2種のC18:4 Δ6,9,12,15 -およびC20:5 Δ5,8,11,14,17 -脂肪酸に高い特異性を示すタンパク質をコードする(DHAの前駆物質および合成については図1を参照のこと)。 また一方、他の脂肪酸もまたこの酵素により伸長される。 かくして配列番号53によりコードされるタンパク質は、さらに1つのω3-二重結合を有するΔ6-およびΔ5-脂肪酸に対する特異性を示す(図2)。 Δ5-エロンガーゼは、ケト-アシル-CoAシンターゼ活性を有し、該活性は有利にアシル-CoAエステルの脂肪酸残基を2炭素原子分伸長する。

    酵母(Saccharomyces cerevisiae)中でのDHA合成は、上述の魚由来Δ5-エロンガーゼ遺伝子の産物、ならびにさらなるΔ5-エロンガーゼ、ファエオダクティラム(Phaeodactylum)由来のΔ5-デサチュラーゼおよびミドリムシ(Euglena)由来のΔ4-デサチュラーゼによって検出された(図3)。

    トランスジェニック生物中で直接産生させることのほかに、都合良くトランスジェニック植物に脂肪酸(本発明の方法に都合良く用いるΔ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼのための出発脂肪酸)を外部から与えることもできる。 経済的な理由から生物中での産生が好ましい。 ω3-デサチュラーゼの好ましい基質は、リノール酸(C18:2 Δ9,12 )、γ-リノレン酸(C18:3 Δ6,9,12 )、エイコサジエン酸(C20:2 Δ11,14 )、ジホモ-γ-リノレン酸(C20:3 Δ8,11,14 )、アラキドン酸(C20:4 Δ5,8,11,14 )、ドコサテトラエン酸(C22:4 Δ7,10,13,16 )およびドコサペンタエン酸(C22:5 Δ4,7,10,13,15 )である。

    都合良く多価不飽和脂肪酸含量を増大させた油および/またはトリグリセリドを産生するための上述の方法において収率を向上させるためには、脂肪酸合成の出発物質の量を増加させることは都合が良い;このことは例えば生物中に、Δ12-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を導入することにより達成できる。 このことが特に有利なのは油産生生物、例えばアブラナ科(Brassicaeae)に属する生物、例えばアブラナ属(Brassica)、一例としてセイヨウアブラナ;グミ科(Elaeagnaceae)に属する生物、例えばグミ属(Elaeagnus)、一例として属および種Olea europaea(オリーブ)、またはマメ科(Fabaceae)、例えばダイズ属(Glycine)、一例として属および種Glycine max(ダイズ)などオレイン酸含量の高いものにおいてである。 これらの生物はリノール酸含量が低いに過ぎない(Mikoklajczakら, Journal of the American Oil Chemical Society, 38, 1961, 678 - 681)ことから、出発物質としてのリノール酸を産生するための上述のΔ12-デサチュラーゼの使用は都合がよい。

    本発明の方法に使用する核酸は、有利に例えば次の植物に由来するものである:藻類、例えばプラシノ藻綱(Prasinophyceae)の藻類、例えばヘテロマスティクス属(Heteromastix)、マミエラ属(Mammella)、マントニエラ属(Mantoniella)、ミクロモナス属(Micromonas)、ネフロセルミス属(Nephroselmis)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、プラシノクラドゥス属(Prasinocladus)、プラシノコッカス属(Prasinococcus)、シュードスコルフィエルダ属(Pseudoscourfielda)、ピクノコッカス属(Pycnococcus)、ピラミモナス属(Pyramimonas)、スケルフェリア属(Scherffelia)もしくはテトラセルミス属(Tetraselmis)、例えば属および種Heteromastix longifillis(ヘテロマスティクス・ロンギフィリス)、Mamiella gilva(マミエラ・ギルヴァ)、Mantoniella squamata(マントニエラ・スクアマータ)、Micromonas pusilla(ミクロモナス・プシーラ)、Nephroselmis olivacea(ネフロセルミス・オリヴァケア)、Nephroselmis pyriformis(ネフロセルミス・ピリフォルミス)、Nephroselmis rotunda(ネフロセルミス・ローツンダ)、Ostreococcus tauri(オストレオコッカス・タウリ)、Ostreococcus sp. Prasinocladus ascus(オストレオコッカス種プラシノクラドゥス・アスクス)、Prasinocladus lubricus(プラシノクラドゥス・ルブリカス)、Pycnococcus provasolii(ピクノコッカス・プロヴァソーリー)、Pyramimonas amylifera(ピラミモナス・アミリフェラ)、Pyramimonas disomata(ピラミモナス・ジソマータ)、Pyramimonas obovata(ピラミモナス・オボヴァータ)、Pyramimonas orientalis(ピラミモナス・オリエンタリス)、Pyramimonas parkeae(ピラミモナス・パーキエ)、Pyramimonas spinifera(ピラミモナス・スピニフェラ)、Pyramimonas sp.(ピラミモナス種)、Tetraselmis apiculata(テトラセルミス・アピキュラータ)、Tetraselmis carteriaformis(テトラセルミス・カルテリアフォルミス)、Tetraselmis chui(テトラセルミス・チュイ)、Tetraselmis convolutae(テトラセルミス・コンボルータエ)、Tetraselmis desikacharyi(テトラセルミス・デシカチャリ)、Tetraselmis gracilis(テトラセルミス・グラシリス)、Tetraselmis hazeni(テトラセルミス・ハゼニ)、Tetraselmis impellucida(テトラセルミス・イムペルシダ)、Tetraselmis inconspicua(テトラセルミス・インコンスピキュア)、Tetraselmis levis(テトラセルミス・レビス)、Tetraselmis maculata(テトラセルミス・マキュラータ)、Tetraselmis marina(テトラセルミス・マリーナ)、Tetraselmis striata(テトラセルミス・ストリアータ)、Tetraselmis subcordiformis(テトラセルミス・サブコルジフォルミス)、Tetraselmis suecica(テトラセルミス・スエシカ)、Tetraselmis tetrabrachia(テトラセルミス・テトラブラキア)、Tetraselmis tetrathele(テトラセルミス・テトラセーレ)、Tetraselmis verrucosa(テトラセルミス・ヴェルーコサ)、Tetraselmis verrucosa fo. rubens(テトラセルミス・ヴェルーコサfo.ルーベンス)もしくはTetraselmis sp.(テトラセルミス種)、またはユーグレナ科(Euglenaceae)からの藻類、例えばアスコグレナ属(Ascoglena)、アスタシア属(Astasia)、コラキウム属(Colacium)、シクリディオプシス属(Cyclidiopsis)、ユーグレナ属(Euglena)、ユーグレノプシス属(Euglenopsis)、ヒアロファカス属(Hyalophacus)、カウキネア属(Khawkinea)、レポキンクリス属(Lepocinclis)、ウチワヒゲムシ属(Phacus)、ストロンボモナス属(Strombomonas)またはトックリヒゲムシ属(Trachelomonas)由来のもの、例えば属および種 Euglena acus(ユーグレナ・アクス)、Euglena geniculata(ユーグレナ・ゲニキュラータ)、Euglena gracilis(ユーグレナ・グラシリス)、Euglena mixocylindrica(ユーグレナ・ミキソシリンドリカ)、Euglena rostrifera(ユーグレナ・ロストリフェラ)、Euglena viridis(ユーグレナ・ビリジス)、Colacium stentorium(コラキウム・ステントリウム)、Trachelomonas cylindrica(トラケルモナス・シリンドリカ)もしくはTrachelomonas volvocina(トラケロモナス・ボルボキナ)など。 本方法に使用される核酸配列はまた、都合良く次の藻類に由来してもよい:例えばPorphyridium cruentum(チノリモ)、Isochrysis galbana(イソクリシス・ガルバナ)もしくはChlorella minutissima(クロレラ・ミヌティッシマ)、Chlorella vulgaris(クロレラ・ブルガリス)、Thraustochytrium aureum(トラウストキトリウム・オーレウム)もしくはNannochloropsis oculata(ナノクロロープシス・オクラータ)などの藻類など。 使用する核酸は有利には、ユーグレナ属(Euglena)、マントニエラ属(Mantoniella)またはオストレオコッカス属(Ostreococcus)の藻類由来のものである。

    本発明の方法に用いる核酸配列の供給源としてのさらなる有利な植物は、例えばイソクリシス属(Isochrysis)もしくはクリプセコジニウム属(Crypthecodinium)などの藻類、例えばタラシオシラ属(Thalassiosira)もしくはファエオダクティラム属(Phaeodactylum)などの藻類/珪藻、例えばフィスコミトレラ属(Physcomitrella)もしくはヤノウエノアカゴケ属(Ceratodon)などの苔類、または例えばサクラソウ科(Primulaceae)、例えばアレウリティア亜属(Aleuritia)、Calendula stellata(カレンデュラ・ステラータ)、Osteospermum spinescens(オステオスペルマム・スピネセンス)もしくはOsteospermum hyoseroides(スターオブザベルドト)などの高等植物、菌類などの微生物、例えばコウジカビ属(Aspergillus)、ヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)、ファイトフソラ属(Phytophthora)、エントモーフソラ属(Entomophthora)、ケカビ属(Mucor)もしくはモルティエレラ属(Mortierella)など、例えばシェワネラ属(Shewanella)もしくは酵母などの細菌、または動物、例えばシノラブディス属(Caenorhabditis)などの線虫類、昆虫、カエル、ナマコもしくは魚類などである。 本発明の単離された核酸配列は有利には脊椎動物門の動物に由来する。 好ましくは核酸配列は次の脊椎動物亜門の綱のものに由来する;ユーテレオストミー(Euteleostomi)、条鰭亜綱(Actinopterygii);新鰭亜網(Neopterygii);真骨類(Teleostei);正真骨類(Euteleostei)、原棘鰭上目(Protacanthopterygii)、サケ目(Salmoniformes);サケ科(Salmonidae)もしくはオンコリンクス属(Oncorhynchus)または脊椎動物亜門、両生綱(Amphibia)、カエル目(Anura)、ピパ科(Pipidae)、クセノプス属(Xenopus)もしくはエベルテブラータ属(Evertebrata)、例えば原索動物門(Protochordata)、ツニカータ(Tunicata)、ナマコ綱(Holothuroidea)、ユウレイボヤ科(Cionidae)例えばAmaroucium constellatum(アマローキウム・コンステラトゥム)、Botryllus schlosseri(ホヤ)、Ciona intestinalis(カタユウレイボヤ)、Molgula citrina(モルギュラ・シトリナ)、Molgula manhattensis(マンハッタンボヤ)、Perophora viridis(ペロフォラ・ビリディス)もしくはStyela partita(スティエラ・パルティタ)など。 核酸は特に都合良く、菌類、動物または藻類もしくは苔類などの植物に由来し、好ましくはサケ目(Salmoniformes)、例えばサケ科(Salmonidae)、例えばサルモ属、例えば属および種Oncorhynchus mykiss(ニジマス)、Trutta trutta(ブラウントラウト)もしくはSalmo trutta fario(リバーブラウントラウト)由来であるか、例えばマントニエラ属(Mantoniella)もしくはオストレオコッカス属(Ostreococcus)などの藻類由来であるか、または例えばタラシオシラ属(Thalassiosira)もしくはファエオダクティラム属(Phaeodactylum)などの珪藻由来であるか、または例えばクリプセコジニウム属(Crypthecodinium)などの藻類由来である。

    本発明の方法に用いる都合の良い核酸はまた、微生物由来、例えばモルティエレラ属(Mortierella)、フィティウム属(Phytium)、例えば属および種Mortierella alpina(モルティエレラ・アルピナ)、Mortierella elongata(モルティエレラ・エロンガータ)、Phytium irregulare(フィティウム・イレギュラーレ)、Phytium ultimum(フィティウム・ウルティマム)などの菌類由来、または、例えばシェワネラ属(Shewanella)、例えば属および種Shewanella hanedai(シェワネラ・ハネダイ)などの細菌由来であってもよい。

    本発明の方法は、上述の核酸配列またはその誘導体もしくはホモログであって、該核酸配列によりコードされるタンパク質の酵素活性を保持するポリペプチドをコードするものを都合良く利用する。 これらの配列は単独で、またはΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/もしくはω3-デサチュラーゼをコードする核酸配列と組み合わせて、発現構築物にクローニングされ、生物への導入、および生物中での発現に使用される。 その構成に起因してこれらの発現構築物は、本発明の方法において産生される多価不飽和脂肪酸の都合よく最適化された合成を可能にする。

    好ましい実施形態においては、方法はさらに該方法に使用される核酸配列を含んでなるトランスジェニック植物を取得するステップを含み、ここでは植物は、以下に記載された遺伝子構築物またはベクターとして、Δ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/もしくはω3-デサチュラーゼをコードする本発明の核酸配列のみで、または脂肪酸もしくは脂質代謝のタンパク質をコードするさらなる核酸配列と組み合わせて、形質転換されたものである。 さらなる好ましい実施形態においては、方法はさらに、植物の種子、例えば油料作物(落花生、アブラナ、キャノーラ、アマニ、麻、落花生、ダイズ、ベニバナ、麻、ヒマワリもしくはボリジなど)の種子から油、脂質または遊離脂肪酸を得るステップを含む。

    「生育させる」とは、植物細胞、植物組織または植物器官については例えば栄養媒体上もしくは中での培養を意味し、また完全な植物については下層土上でのもしくは中(例えば水耕培地、培養土中で、または耕作に適した土地で)での栽培を意味する。

    本発明はさらに、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼをコードする本発明の核酸配列であって、該核酸が1以上の調節シグナルに機能的に連結されたものを含む遺伝子構築物に関する。 さらに遺伝子構築物は、以下よりなる群から選択される脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子をさらに含んでもよい:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼ。 Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼまたはω3-デサチュラーゼからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子は都合良くさらに存在する。

    本方法に使用する核酸配列であってΔ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ6-エロンガーゼ活性を有するタンパク質をコードするものは都合良く、単独でまたは、好ましくは該核酸を植物中で発現可能にする発現カセット(=核酸構築物)と組み合わせて、植物中に導入される。 核酸構築物は酵素活性(例えばΔ12-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼの活性)を有する1以上の核酸配列を含み得る。

    核酸を遺伝子構築物に導入するためには、本方法に使用する核酸は都合良く既知の様式で増幅され結合される。 好ましくはPfu DNAポリメラーゼまたはPfu/Taq DNAポリメラーゼ混合物のためのプロトコルに沿った手順に従う。 プライマーは、増幅される配列を考慮して選択する。 便宜上、プライマーは、増幅産物が開始コドンから終止コドンまでの全コード遺伝子配列を含むように選択されるべきである。 増幅後、増幅産物を都合良く解析する。 例えばゲル電気泳動分離を行ってもよく、次に定量および定性分析を行う。 次に増幅産物を標準プロトコル(例えばQuiagen)に従って精製することができる。 精製された増幅産物のアリコートを次に続くクローニングステップに用いることができる。

    適当なクローニングベクターは当業者に広く知られている。 こうしたものとしては特に、微生物系での複製が可能なベクター、すなわち主に酵母または菌類での効率的なクローニングが保証され、植物の安定な形質転換を可能にするベクターが挙げられる。 特に挙げるべきものとしては、T-DNA仲介形質転換に適した種々のバイナリーベクター系およびコインテグレティブベクター系がある。 このようなベクター系は一般に、アグロバクテリウム仲介形質転換に必要なvir遺伝子およびT-DNA境界配列(T-DNAボーダー)を少なくとも含むことを特徴とする。 これらのベクター系は好ましくはさらなるcis-調節領域、例えばプロモーターおよびターミネーター配列および/または選択マーカーをも含み、それらによって適切に形質転換された生物を同定することができる。 コインテグレティブベクター系の場合にはvir遺伝子とT-DNA配列が同じベクターに配置されるのに対して、バイナリー系は少なくとも2つのベクターに基づき、そのうちの1つのベクターはvir遺伝子を保有するもののT-DNAを保有せず、第2のベクターはT-DNAを保有するもののvir遺伝子を保有しない。 このことから、後者のベクターはいずれも相対的に小さく、容易に遺伝子操作でき、E. coli(大腸菌)およびアグロバクテリウム中で複製させることができる。 こうしたバイナリーベクターとしてはpBIB-HYG、pPZP、pBecks、pGreen系列由来のベクターが挙げられる。 本発明においては、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTVおよびpCAMBIAを好適に使用する。 バイナリーベクターの総説およびそれらの使用はHellens ら, Trends in Plant Science (2000) 5, 446-451に見出される。

    ベクターを調製するためには最初にベクターを制限酵素で線状化して、次に適当な様式で酵素的に修飾することができる。 次に、ベクターを精製し、クローニングステップにそのアリコートを用いる。 クローニングステップでは増幅産物を酵素的に切断し適当であるならば精製し、リガーゼを用いてベクター断片(同じような様式で調製されたもの)と連結させる。 この意味合いにおいて特定の核酸構築物またはベクターもしくはプラスミド構築物は、1以上の遺伝子コード領域を有しうる。 これらの構築物中の遺伝子コード領域は好ましくは調節配列と機能的に連結されている。 調節配列としては、特にプロモーターやターミネーター配列などの植物配列が挙げられる。 構築物は都合良く微生物中で、特にE. coli(大腸菌)およびAgrobacterium tumefaciens(アグロバクテリウム・トゥメファシエンス)中で、選択条件下で安定して増殖させることができ、植物または微生物への異種DNAの転移を可能にする。

    本方法に使用する核酸は、都合良くクローニングベクターを用いて植物中に導入することができ、出版された次に引用する文献に記載された植物などといった、植物の形質転換に使用することができる:Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), Chapter 6/7, p. 71-119 (1993); FF White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, 編: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, 15-38; B. Jenes ら, Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, 編: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128-143; Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225。 このことから、本方法に使用する核酸および/またはベクターは、多様な植物の組換え改変に使用することができ、そのことによりそれらの植物は改良されたおよび/またはより効率的なPUFA産生植物となる。

    Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-デサチュラーゼタンパク質を改変することができる一連の機構が存在し、その機構より、植物中(好ましくは脂肪種子植物または油料作物中)での多価不飽和脂肪酸の収率、生産性および/または生産効率を、改変されたタンパク質に起因して直接左右することができる。 Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-デサチュラーゼタンパク質もしくは遺伝子の数または活性を増加(増大)させることができ、そのことによりより多くの遺伝子産物が産生され、最終的には一般式Iの化合物がより多く産生される。 対応する遺伝子を導入する以前はある化合物を生合成する活性および能力を欠いていた植物中でのde novo合成もまた可能である。 このことは、さらなるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼ、または脂肪酸および脂質代謝のさらなる酵素との組み合わせについても同じように当てはまる。 種々の異なる配列、すなわちDNA配列レベルで異なる配列の使用、あるいは経時的に(例えば種子もしくは油貯蔵組織の成熟度の関数として)異なる遺伝子発現を可能にするプロモーターの使用はまたこの意味合いでは有利である。

    Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-デサチュラーゼ遺伝子の組み合わせを単独でまたは他の遺伝子と組み合わせて植物中に導入することにより、最終産物に向かう生合成流量を増加させることが可能であるのみならず、対応するトリアシルグリセロール組成物を増加させるまたはde novoで創作することも可能である。 同様に、1種以上の脂肪酸、油、極性脂質および/または中性脂肪の生合成に必要な栄養物の取り込みに関わる他の遺伝子の数もしくは活性を増大させることができ、そのことにより細胞内または貯蔵区画内でのこれらの出発物質、コファクターまたは中間体の濃度が増大し、そのことによって細胞がPUFAを産生する能力がさらに増強される。 これらの化合物の生合成に関わる1種以上のΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-デサチュラーゼ遺伝子の活性を最適化することにより、もしくは数を増加させることにより、あるいはこれらの化合物の分解に関わる1種以上の遺伝子の活性を破壊することにより、植物中での脂肪酸および脂質分子の収率、生産性および/または生産効率を増大させることが可能である。

    本方法に用いる核酸配列は都合良く、植物中での該核酸の発現を可能にする発現カセットに導入される。

    導入するに当たり、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-デサチュラーゼをコードする核酸配列は、遺伝子発現を増強するために都合良く1種以上の調節シグナルに機能的に連結させる。 これらの調節配列は遺伝子およびタンパク質の特異的発現を可能にすることを意図したものである。 宿主生物に依存して、このことは、例えば誘導をかけた後にのみ遺伝子が発現されおよび/または過剰発現されることを意味するか、あるいは直ちに遺伝子が発現されおよび/または過剰発現されることを意味する。 例えば、これらの調節配列は誘導因子もしくは抑制因子が結合する配列の形態であり、それらの結合により核酸の発現を制御する。 これらの新規調節配列に加え、またはこれらの配列の代わりに、これらの配列の天然の調節因子が実際の構造遺伝子の上流に依然として存在してもよく、適当ならばそれらの天然の調節が消去され遺伝子の発現が増強されるように遺伝子操作されていてもよい。 これらの改変されたプロモーターはまた、活性を増強するために部分配列(=本発明に使用する核酸配列の一部を有するプロモーター)の形態で天然遺伝子の上流にそのまま配置されてもよい。 さらに遺伝子構築物は、核酸配列の発現が増強されるのを可能にする1以上の所謂エンハンサー配列をプロモーターと機能的に連結された状態で都合良く含みうる。 さらなる有益な配列、例えばさらなる調節因子やターミネーター配列などもまた、DNA配列の3'末端に挿入され得る。

    Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ6-エロンガーゼ遺伝子は1以上のコピーの発現カセット(=遺伝子構築物)中に存在してもよい。 好ましくは各々のカセット中には1コピーの遺伝子しか存在しない。 この(またはこれらの)遺伝子構築物は宿主植物中で一緒に発現させることができる。 この意味合いにおいては、遺伝子構築物は1以上のベクターに挿入されて細胞中に独立の形態で存在してもよく、またはゲノムに挿入されてもよい。 発現させる遺伝子が1つの遺伝子構築物上に一緒に存在する場合、宿主ゲノムにさらなる遺伝子を挿入することは都合がよい。

    この意味合いにおいては、上述の調節配列もしくは調節因子は好ましくは、導入した遺伝子の発現に対してプラスの効果を示し、そのことにより該遺伝子発現を増強する。 従って調節因子の増強(有利には転写レベルで)は、強力な転写シグナル(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)を使用することにより達成されうる。 また一方、翻訳の増強もさらに可能であり、それは例えばmRNAの安定性を向上させることにより達成される。

    本発明のさらなる実施形態においては、配列番号11、配列番号27、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201もしくはその誘導体により規定され、配列番号12、配列番号28、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202に示すポリペプチドをコードする1以上の配列を含む1以上の遺伝子構築物が存在する。 上述のΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-デサチュラーゼタンパク質は都合よく脂肪酸の不飽和化または伸長をもたらし、このとき基質は有利には1、2、3または4個の二重結合を有し、有利には脂肪酸分子中に18、20または22個の炭素原子を有する。 1以上の調節シグナル(好ましくは遺伝子発現を増強するためのもの)に機能的に連結されたこれらのホモログ、誘導体またはアナログについても同様である。

    一般に、あらゆる天然のプロモーター(上述のものなど)をその調節配列と共に新規方法のために使用することが可能である。 追加的にまたは単独で合成プロモーターを使用することは可能でありまた都合がよく、特に該プロモーターが種子特異的発現を仲介する(例えば国際公開第99/16890号パンフレットに記載のもの)場合にはそうである。

    特に高いPUFA含量を、特にトランスジェニック植物中で達成するためには、PUFA生合成遺伝子を有利に種子特異的な様式で脂肪種子中で発現させるべきである。 このためには種子特異的プロモーター、または胚芽でもしくは内胚で作動するプロモーターが使用可能である。 一般に種子特異的プロモーターは双子葉および単子葉植物の両方から単離される。 好ましいプロモーターの一覧を以下に記載する:USP(=未知の種子タンパク質)およびビシリン(vicilin)プロモーター(Vicia faba(ソラマメ))[Baumlein ら, Mol. Gen Genet., 1991, 225(3)]、ナピンプロモーター(セイヨウアブラナ)[米国特許第 5,608,152号明細書]、コンリニンプロモーター(アマニ)[国際公開第02/102970号パンフレット]、アシルキャリアタンパク質プロモーター(セイヨウアブラナ)[米国特許第5,315,001号明細書および国際公開第92/18634号パンフレット]、オレオシンプロモーター(Arabidopsis thaliana(シロイナズナ))[国際公開第98/45461号パンフレットおよび国際公開第93/20216号パンフレット]、ファセオリンプロモーター(Phaseolus vulgaris(インゲンマメ))[米国特許第5,504,200号明細書]、Bce4プロモーター[国際公開第91/13980号パンフレット]、legumes B4 (LegB4 プロモーター)[Baumlein ら, Plant J., 2,2, 1992], Lpt2およびlpt1プロモーター(オオムギ)[国際公開第95/15389号パンフレットおよび国際公開第95/23230号パンフレット]、イネ、トウモロコシおよびコムギ由来の種子特異的プロモーター[国際公開第99/16890号パンフレット]、Amy32b、Amy 6-6およびアレウレインプロモーター[米国特許第5,677,474号明細書]、Bce4プロモーター(セイヨウアブラナ)[米国特許第5,530,149号明細書]、グリシニンプロモーター(ダイズ)[欧州特許第571 741号明細書]、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼプロモーター(ダイズ)[特開平06-62870号公報]、ADR12-2プロモーター(ダイズ)[国際公開第98/08962号パンフレット]、イソクエン酸リアーゼプロモーター(セイヨウアブラナ)[米国特許第5,689,040号明細書]またはα-アミラーゼプロモーター(オオムギ)[欧州特許第781 849号明細書]。

    植物遺伝子発現はまた、化学的に誘導可能なプロモーターにより促進され得る(総説としてGatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108を参照されたい)。 化学的に誘導可能なプロモーターは、遺伝子発現を時間特異的な様式で行いたい場合に特に適している。 このようなプロモーターの例として挙げられるのは、サリチル酸誘導プロモーター(国際公開第95/19443号パンフレット)、テトラサイクリン誘導プロモーター (Gatz ら (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導プロモーターである。

    複数の世代に渡りトランスジェニック植物中に生合成遺伝子が安定して組み込まれることを保証するためには、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-デサチュラーゼをコードし本方法に使用する各々の核酸を、別のプロモーター(好ましくは他のプロモーターと異なるプロモーター)の制御下で発現させるべきである。 なぜならば繰り返し配列モチーフはT-DNAを不安定にしてしまい、または組換え事象をもたらしてしまう可能性があるからである。 この意味合いにおいては、プロモーターの後に、発現させる核酸を挿入するための適当な切断部位が(有利にはポリリンカー中に)存在し、また適当ならばポリリンカーの後にターミネーター配列が配置されるように発現カセットを都合よく構築する。 この配列を複数回、好ましくは3、4、5、6または7回繰り返して、1つの構築物中に最大7つの遺伝子を組み合せて、発現させるためにトランスジェニック植物中に導入することが可能である。 有利にはこの配列を最大4回繰り返す。 核酸配列を発現させるためには、それらを適当な切断部位、例えばポリリンカー中でプロモーターの後ろに挿入する。 有利には各々の核酸配列は自身のプロモーターを有し、適切ならば自身のターミネーター配列を有する。 このような都合のよい構築物は例えば独国特許第101 02 337合名最初または独国特許第101 02 338号明細書中に開示されている。 また一方、複数の核酸配列を共通のプロモーターの下流に、そして適当ならば共通のターミネーターの上流に挿入することも可能である。 ここでは、発現カセット中の挿入核酸の挿入部位または配列は決定的に重要ではない、換言すればカセット中の最初または最後の位置に挿入するかによって、実質的に発現が影響を受けることなく、核酸配列を挿入可能である。 有利に、種々のプロモーター、例えばUSP、LegB4またはDC3プロモーターおよび種々のターミネーター配列を発現カセットに用いることができる。 また一方、カセット中で1種類のプロモーターのみを使用することも可能ではあるが、これは望ましくない組換え事象を引き起こす可能性がある。

    上述のように、導入した遺伝子の転写は有利に、導入した生合成遺伝子の3'末端(終止コドンの後ろ)で適当なターミネーター配列により終結されるべきである。 この意味合いで使用可能な配列の例は、OCS1ターミネーター配列である。 プロモーターの場合と同様、各々の遺伝子には異なるターミネーター配列が使用されるべきである。

    上述のように、遺伝子構築物はまた植物に導入されるさらなる遺伝子を含んでもよい。 宿主植物に誘導因子、リプレッサーまたは酵素(その酵素活性に起因して生合成経路の1以上の遺伝子の調節に関わる)の遺伝子などといった調節遺伝子を導入し発現させるすることは可能であり好都合でもある。 これらの遺伝子は異種または同種起源のものでありうる。

    さらに脂肪酸または脂質代謝のさらなる生合成遺伝子が都合よく核酸構築物または遺伝子構築物中に存在してもよい;また一方これらの遺伝子は1以上の別の核酸構築物中に存在してもよい。 好ましくは選択される脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子は、アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼあるいはこれらの組み合わせからなる群より選択される遺伝子である。

    特に都合のよい核酸配列は、アシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子である。

    この文脈において上述の核酸または遺伝子は、他のエロンガーゼおよびデサチュラーゼと組み合わせて発現カセット(上述のものなど)にクローニングしてもよく、アグロバクテリウムを利用して植物の形質転換に使用することができる。

    この場合、調節配列または調節因子(上述のものなど)は、好ましくは導入した遺伝子の発現にプラスの効果を及ぼし、該発現を増強する。 従って調節因子の増強は、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの強力な転写シグナルを用いることにより都合よく転写レベルで成されうる。 また一方、例えばmRNAの安定性を向上させることにより、翻訳を増強することも可能である。 一般に発現カセットは植物に直接導入するのに使用してもよく、またはベクターに導入してもよい。

    こうした都合のよいベクター、好ましくは発現ベクターは、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ5-デサチュラーゼをコードし本発明に使用される核酸を含むか、あるいは、単独でまたは別の脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子(例えばアシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ9-エロンガーゼなどの遺伝子)と組み合わせて使用される該核酸を含む核酸構築物を含む。

    本明細書の文脈において使用する「ベクター」という用語は、ベクターに結合した別の核酸を輸送することのできる核酸分子を言う。 ある種類のベクターを「プラスミド」と言い、これはさらなるDNAセグメントを連結することのできる環状二本鎖DNA環である。 別の種類のベクターのはウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノム内に連結させることが可能である。 特定のベクターは、導入された宿主細胞中で自律的に複製することができ、例えば細菌複製起点を有する細菌ベクターが挙げられる。 他のベクターは、宿主細胞に導入されたときに都合よく宿主細胞のゲノム内に組み込まれ、そのことにより宿主ゲノムとともに複製する。 さらに、特定のベクターは、機能的に連結されている遺伝子の発現を制御できる。 本明細書ではこうしたベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。 通常は、DNA組換え技術に適した発現ベクターはプラスミドの形態である。 本明細書では「プラスミド」と「ベクター」は交換可能な用語として使用される。 なぜならばプラスミドは最も頻繁に使われるベクターの形態だからである。 他方、本発明は発現ベクターの他の形態をも包含することを意図しており、例えば類似の機能を示すウイルスベクターなどが包含される。 さらに、「ベクター」という用語にはまた、当業者によく知られた他のベクター、例えばファージ、SV40、CMV、TMVなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、ファージミド、コスミド、線状または環状DNAが包含されることを意図する。

    本方法に都合よく使用される組換え発現ベクターは、本発明において使用する核酸もしくは記載の遺伝子構築物を、宿主細胞中で発現するのに適当な形態で含む。 つまり該組換え発現ベクターは、1以上の調節配列(発現に用いる宿主細胞に基づいて選択し、発現させる核酸配列と機能的に連結されているもの)を含む。 組換え発現ベクターにおける「機能的に連結された」または「機能的に連結されている」とは、対象のヌクレオチド配列が調節配列に結合している様式が、該ヌクレオチド配列の発現を可能にし、両方の配列が、その配列の推定機能を(例えばin-vitro転写/翻訳系で、またはベクターが宿主細胞に導入されたならば宿主細胞中で)発揮するように互いに結合されていることを意味する。

    「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を包含することを意図する。 こうした調節配列としては例えば、Goeddel: Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)または:Gruber and Crosby, in: Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, CRC Press, Boca Raton, Florida, 編: Glick and Thompson, Chapter 7, 89-108に記載されているもの、およびそれらに引用されている文献を参照されたい。 調節配列として包含されるものには、多くの種類の宿主細胞中でヌクレオチド配列の構成的な発現を制御する配列、および特定の条件下で特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の直接発現を制御する配列がある。 当業者ならば、発現ベクターの設計が選択した形質転換される宿主細胞、タンパク質の所望の発現レベルなどといった要因に依存することを理解するであろう。

    本方法のさらなる実施形態においてはΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-デサチュラーゼは、単細胞植物細胞(例えば藻類)中で発現させることができ(Falciatore ら, 1999, Marine Biotechnology 1 (3):239-251およびそこに引用されている文献を参照のこと)、また、高等植物(例えば耕地作物などの種子植物)由来の植物細胞中で発現させることも可能である。 植物発現ベクターとして包含されるものとしては例えば以下に詳述されるものが挙げられる:Becker, D., Kemper, E., Schell, J., and Masterson, R. (1992) “New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;ならびにBevan, MW (1984) “Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”, Nucl. Acids Res. 12:8711-8721; Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, 編: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, p. 15-38。

    植物発現カセットは、植物細胞中での遺伝子発現を制御し、各々の配列がその機能(例えば転写終結)を発揮できるように機能的に連結されている調節配列(例えばポリアデニル化シグナル)を都合よく含む。 好ましいポリアデニル化シグナルはAgrobacterium tumefaciens T-DNA由来のもの、例えばTiプラスミドpTiACH5(Gielen ら, EMBO J. 3 (1984) 835 下記を参照)の遺伝子3(オクトピンシンターゼとして知られている)またはその機能的等価物であるが、植物中で機能的に作用する他のあらゆるターミネーター配列もまた適当である。

    植物遺伝子発現の調節は多くの場合転写レベルに限定されないことから、植物発現カセットは好ましくは、例えばタンパク質/RNA比を増大させる翻訳増強配列、例えばタバコモザイクウイルス5'非翻訳リーダー配列を含むオーバードライブ配列(Gallie ら, 1987, Nucl. Acids Research 15:8693-8711)などといった他の機能的に連結されている配列を含む。

    上述のように、発現される遺伝子は、遺伝子を時間的、細胞特異的、または組織特異的な様式で発現させる適当なプロモーターに機能的に連結されるべきである。 使用可能なプロモーターは構成的プロモーター(Benfey ら, EMBO J. 8 (1989) 2195-2202)、例えば植物ウイルス由来のプロモーター、例えば35S CaMV (Franck ら, Cell 21 (1980) 285-294)、19S CaMV(米国特許第5352605号および国際公開第84/02913号パンフレットも参照されたい)、または構成的植物プロモーター、例えばRubisco小サブユニットのプロモーター(米国特許第4,962,028号明細書に記載されている)である。

    上述のように植物遺伝子発現はまた化学的に誘導可能なプロモーターにより達成することができる(総説としてGatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108を参照されたい)。 化学的に誘導可能なプロモーターは、遺伝子発現を時間特異的な様式で行いたい場合に特に適している。 このようなプロモーターの例として挙げられるのは、サリチル酸誘導プロモーター(国際公開第95/19443号パンフレット)、テトラサイクリン誘導プロモーター(Gatz ら (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導プロモーターである。

    生物的または抗生的ストレス条件に応答するプロモーターもまた適当であり、例えば病原体誘導PRP1遺伝子プロモーター(Ward ら, Plant. Mol. Biol. 22 (1993) 361-366)、熱誘導トマトhsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号明細書)、低温誘導ジャガイモα-アミラーゼプロモーター(国際公開第96/12814号パンフレット)または外傷誘導pinIIプロモーター(欧州特許出願公開第0 375 091号明細書)などが挙げられる。

    特に好ましいプロモーターは、脂肪酸、脂質および油の生合成が行われる組織および器官で、種子細胞中で、例えば内胚および成育中の胚芽の細胞で遺伝子発現をもたらすものである。 適当なプロモーターとして挙げられるのはセイヨウアブラナnapinプロモーター(米国特許第5,608,152号明細書)、アマニConlininプロモーター(国際公開第02/102970号パンフレット)、Vicia faba USPプロモーター(Baeumleinら, Mol Gen Genet, 1991, 225 (3):459-67)、シロイナズナoleosinプロモーター(国際公開第98/45461号パンフレット)、Phaseolus vulgarisファセオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号明細書)、Brassica Bce4プロモーター(国際公開第91/13980号明細書)またはlegume B4プロモーター(LeB4;Baeumlein ら, 1992, Plant Journal, 2 (2):233-9)、ならびにトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、イネなどの単子葉植物中での種子特異的発現をもたらすプロモーターである。 挙げられる適当なプロモーターとしてはオオムギlpt2もしくはlpt1遺伝子プロモーター(国際公開第95/15389号パンフレットおよび国際公開第95/23230号パンフレット)、またはオオムギhordein 遺伝子、イネglutelin遺伝子、イネoryzin遺伝子、イネprolamine遺伝子、コムギgliadine遺伝子、コムギglutelin遺伝子、トウモロコシzeine遺伝子、オートムギglutelin遺伝子、ソルガムkasirin遺伝子またはライムギsecalin遺伝子(国際公開第99/16890パンフレットに記載されている)由来のプロモーターである。

    特に適当な他のプロモーターはプラスチド特異的発現をもたらすものである。 なぜならばプラスチドは脂質生合成の前駆物質およびいくつかの最終産物が合成される区画を構成するからである。 適当なプロモーターは、ウイルスRNAポリメラーゼプロモーター(国際公開第95/16783号パンフレットおよび国際公開第97/06250号パンフレットに記載)および、Arabidopsis clpP プロモーター(国際公開第99/46394号パンフレットに記載)である。

    とりわけ、本方法に使用するΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-デサチュラーゼの複数並行発現をもたらすことが望まれることがある。 このような発現カセットは個々の発現構築物を複数同時に形質転換することにより導入することができ、または好ましくは1つの構築物上に複数の発現カセットを組み合わせることにより導入することができる。 また、複数の発現カセットを用いて複数種のベクターをそれぞれ形質転換し、これらを宿主細胞に導入することも可能である。

    植物遺伝子発現カセット中で機能的に連結して使用される他の好適な配列は、遺伝子産物を対応する細胞区画(例えば液胞、核、あらゆる種類のプラスチド、例えばアミロプラスト、クロロプラスト、クロモプラスト、細胞外空間、ミトコンドリア、小胞体、エライオプラスト、ペルオキシソームおよび植物細胞の他の区画)へと標的化するのに必要な標的配列である(Kermode, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4 (1996) 285-423の総説およびそこに引用されている文献を参照のこと)。

    本発明の方法は、配列番号11、配列番号27、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201に記載の配列を有する核酸配列、またはその誘導体もしくはホモログであって、核酸配列によりコードされるタンパク質の酵素活性を保持するポリペプチドをコードするものを使用する。 これらの配列は単独でまたは使用される他の酵素をコードする核酸配列と組み合わせて発現構築物にクローニングされ、植物中への形質転換および植物中での発現のために使用される。 その構成に起因して、これらの発現構築物は都合よく本発明の方法で製造する多価不飽和脂肪酸の最適な合成を可能にする。

    好ましい実施形態において方法はさらに該方法に使用される核酸配列を含んでなる細胞または完全植物を取得するステップを含み、ここでは該細胞および/または植物は、上記に記載された遺伝子構築物またはベクターとして、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、および/もしくはΔ6-エロンガーゼ活性を有するペプチドをコードする本発明の核酸配列のみで、または脂肪酸もしくは脂質代謝のタンパク質をコードするさらなる核酸配列と組み合わせて形質転換されたものである。 結果として得られる細胞は有利には油産生生物、例えば油料作物(例えば落花生、アブラナ、キャノーラ、アマニ、麻、落花生、ダイズ、ベニバナ、麻、カラシ、ヒマワリもしくはボリジなど)の細胞である。

    本発明の目的において「トランスジェニック」または「組換え」とは、例えば本発明の核酸配列を含んでなる核酸配列、発現カセット(=遺伝子構築物)もしくはベクター、または本発明の核酸配列、発現カセット、もしくはベクターで形質転換された生物に関して用いる場合、
    a) 本発明の核酸配列、もしくは
    b) 本発明の核酸配列に機能的に連結された遺伝的制御配列、例えばプロモーター、または
    c) a)およびb)
    が天然の遺伝的周辺環境では存在しないかもしくは組換え手法によって改変されており、
    該改変は例えば1以上のヌクレオチド残基の置換、付加、欠失、反転、または挿入の形態であってもよい、組換え手法により作製されるあらゆる構築物を意味する。 天然の遺伝的周辺環境とは、元の生物中の天然のゲノムもしくは染色体の遺伝子座またはゲノムライブラリー中での配置を意味する。 ゲノムライブラリーの場合には、核酸配列の天然の遺伝的周辺環境は好ましくは少なくとも部分的に保持されている。 周辺環境の少なくとも一方の側部には核酸配列が結合しており、少なくとも50bp、好ましくは少なくとも500bp、特に好ましくは1000bp、最も好ましくは少なくとも5000bpの長さの配列を有する。 天然に生じる発現カセット(例えば本発明の方法に使用される核酸配列の天然のプロモーターならびに対応するΔ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-エロンガーゼ遺伝子の天然に生じる組み合わせ)は、この発現カセットが自然のものではない、合成(「人工」)の手法(例えば突然変異原性処理)により改変された場合に、トランスジェニック発現カセットとなる。 適当な手法は例えば米国特許第5,565,350号明細書または国際公開第00/15815号パンフレットに記載されている。

    従って本発明の目的のためのトランスジェニック植物とは、該方法に使用する核酸が植物ゲノム中の天然の遺伝子座に存在せず、ここで核酸が異種または同種発現可能であることを意味する。 また一方、トランスジェニックとは本発明の核酸が植物ゲノムの天然の位置に存在するものの、天然の配列と比較して配列が改変されており、および/または天然の配列の調節配列も改変されていることをも意味する。 トランスジェニックとは好ましくは、ゲノム中の天然とは異なる遺伝子座で本発明の核酸配列または本発明の方法に使用される核酸配列が発現される、すなわち該核酸配列の同種もしくは好ましくは異種発現が起こることを意味する。 好ましいトランスジェニック植物は脂肪種子作物または脂肪果実作物である。

    本発明の方法に使用するのに適当な植物は一般に、都合よく、脂肪酸、特に不飽和脂肪酸(ARA、EPAおよび/またはDHAなど)を合成可能な、そして組換え遺伝子の発現に適当なあらゆる植物である。 例として挙げられる植物は例えばシロイナズナ、キク科(Asteraceae)、例えばキンセンカ属(Calendula)、またはダイズ、落花生、ヒマシ油植物、ヒマワリ、トウモロコシ、木綿、アマ、アブラナ、ココナッツ、油ヤシ、ベニバナ(Carthamus tinctorius)またはカカオ豆などの作物である。 大量の油を天然で合成することのできる植物は好ましく、例えばダイズ、アブラナ、アマナズナ属(Camelina)、セイヨウカラシナ、ココナッツ、油ヤシ、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、アマ、麻、ヒマシ油植物、キンセンカ属、落花生、カカオ豆またはヒマワリまたはSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母が挙げられ、ダイズ、アマ、アブラナ、ベニバナ、ヒマワリ、アマナズナ属(Camelina)、セイヨウカラシナまたはキンセンカ属(Calendula)が特に好ましい。

    本発明の方法に使用する核酸配列をクローニングするために使用可能なさらなる宿主細胞は:Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に詳述されている。

    使用可能な発現株、例えばよりプロテアーゼ活性のより低いものは、:Gottesman, S., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 119-128に記載されている。

    これらに含まれるのは、あらゆる表現型(例えば葯、繊維、根毛、茎、胚芽、カルス、子葉、葉柄、収穫物、植物組織、再生組織および細胞培養物など)としての植物細胞ならびに特定の組織、器官および植物の一部分であり、これらは実際のトランスジェニック植物由来であり、および/または該トランスジェニック植物を作製するために使用可能である。

    本発明の方法により合成された多価不飽和脂肪酸、特にARA、EPAおよび/またはDHAを含むトランスジェニック植物または有利にはその種子は、合成された油、脂質または脂肪酸を分離する必要なく都合よく直接市場に出すことができる。 本発明の方法のための植物とは、完全植物ならびにあらゆる植物部分、植物器官または葉、幹、種子、根、塊茎、葯、繊維、根毛、茎、胚芽、カルス、子葉、葉柄、収穫物、植物組織、再生組織および細胞培養物などといった植物の一部であって、実際のトランスジェニック植物由来であるか、および/または該トランスジェニック植物を作製するために使用可能であるものを意味する。 この意味合いにおいて種子には、種子のあらゆる部分、例えば種皮、表皮細胞、種子細胞、内胚細胞、または胚芽組織が含まれる。

    一般に本発明の方法はまた、植物細胞培養での多価不飽和脂肪酸、特にARA、EPAおよび/またはDHAの産生とそれに続く培養物からの脂肪酸の取得に適している。 特に、植物細胞培養は、懸濁培養またはカルス培養の形態であり得る。

    また一方、本発明の方法で製造する化合物を、植物から、有利には種子から、油、脂肪、脂質および/または遊離脂肪酸の形態で分離してもよい。 本方法により産生される多価不飽和脂肪酸、特にARA、EPAおよび/またはDHAは、植物または植物種子を、それらを生育させた培地または田畑から刈り取ることにより収穫できる。

    さらなる実施形態において、この方法にはさらに植物または作物から油、脂質または脂肪酸を得るステップが含まれうる。 作物は例えば温室または田畑で生育される作物の形態であり得る。

    油、脂質または遊離脂肪酸は、植物の一部、好ましくは植物種子を圧搾または抽出することにより分離できる。 この意味合いにおいては、油、脂肪、脂質または遊離脂肪酸は、熱を加えずに、低温粉砕または低温圧搾といった方法で得てもよい。 植物の一部、特に種子をより簡便に破砕するためには、それらをあらかじめ細かく砕く、蒸すまたはローストする。 こうした様式であらかじめ処理した種子をその後、加温ヘキサンなどの溶媒で圧搾または抽出できる。 その後溶媒を除去する。

    その後、結果的に得られる多価不飽和脂肪酸を含む産物をさらに処理(すなわち精製)する。 この工程では植物粘液および懸濁物などの物質を最初に除去する。 脱粘は酵素により、または酸(例えばリン酸)を加えることにより化学的/物理的になされ得る。 その後、塩基(例えば水酸化ナトリウム溶液)で処理することにより遊離脂肪酸を除去する。 結果として生じる産物は、該産物中に残留しているアルカリ液を除去するために水で十分に洗浄し、次に乾燥させる。 産物中に残留している色素を除去するためには、産物を例えばフラー土または活性炭を用いて漂白する。 最後に産物を例えば蒸気を用いて脱臭する。

    本方法により産生されるPUFAまたはLCPUFAは好ましくは、脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合、有利に3、4、5または6個の二重結合、特に有利に4、5、または6個の二重結合を有するC 18 -、C 20 -またはC 22 -脂肪酸分子、有利にはC 20 -またはC 22 -脂肪酸である。 これらのC 18 -、C 20 -またはC 22 -脂肪酸分子は、植物から油、脂質または遊離脂肪酸の形態で単離され得る。 適当な植物の例は上述したものなどである。 適当な生物はトランスジェニック植物である。

    従って本発明の1つの実施形態は、上述の方法により調整された油、脂質もしくは脂肪酸またはその画分、特に好ましくはPUFAを含むトランスジェニック植物由来の油、脂質または脂肪酸組成物に関する。

    本方法により得られる脂肪酸はまた、有用な製品を化学合成するための出発物質としても適当である。 例えば本方法により得られる脂肪酸は、医薬、食品、飼料または化粧品の製造に単独でまたは一緒に使用可能である。

    上述のようにこれらの油、脂質または脂肪酸は有利には各々について生物の総脂肪酸含量を100%としてこれに基づいて、有利に6〜15%のパルミチン酸、1〜6%のステアリン酸、7〜85%のオレイン酸、0.5〜8%のバクセン酸、0.1〜1%のアラキン酸、7〜25%の飽和脂肪酸、8〜85%のモノ不飽和脂肪酸、および60〜85%の多価不飽和脂肪酸を含む。 脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に存在する都合のよい多価不飽和脂肪酸は、総脂肪酸含量に基づき好ましくは少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1%のアラキドン酸である。 さらに、本発明の方法により産生された脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は有利に、次の脂肪酸の群から選択される脂肪酸を含む:エルカ酸(13-ドコサエン酸)、ステルクリン酸(9,10-メチレンオクタデセ-9-エン酸)、マルバリン酸(8,9-メチレンヘプタデセ-8-エン酸、チョールムーグラ酸(シクロペンテンドデカン酸)、フラン脂肪酸(9,12-エポキシオクタデカ-9,11-ジエン酸)、ベルノール酸(9,10-エポキシオクタデセ-12-エン酸)、タリリン酸(6-オクタデシン酸)、6-ノナデシン酸、サンタルビン酸(t11-オクタデセン-9-イン酸)、6,9-オクタデセニン酸、ピルリン酸(pyrulic acid)(t10-ヘプタデセン-8-イン酸)、クレペニニン酸(crepenyninic acid)(9-オクタデセン-12-イン酸)、13,14-ジヒドロオロフェイン酸(13,14-dihydrooropheic acid)、オクタデセン-13-エン-9,11-ジイン酸、ペトロセリン酸(cis-6-オクタデセン酸)、9c,12t-オクタデカジエン酸、カレンデュラ酸(calendulic acid)(8t10t12c-オクタデカトリエン酸)、カタルピン酸(9t11t13c-オクタデカトリエン酸)、エレオステアリン酸(9c11t13t-オクタデカトリエン酸)、ジャカリン酸(jacaric acid)(8c10t12c-オクタデカトリエン酸)、プニシン酸(punicic acid)(9c11t13c-オクタデカトリエン酸)、パリナリン酸(9c11t13t15c-オクタデカテトラエン酸)、ピノオレイン酸(pinolenic acid)(all-cis-5,9,12-オクタデカトリエン酸)、ラバレン酸(laballenic acid)(5,6-オクタデカジエンアレン酸(octadecadienallenic acid)、リシノール酸(12-ヒドロキシオレイン酸)および/またはコリオリ酸(coriolic acid)(13-ヒドロキシ-9c,11t-オクタデカジエン酸)。上述の脂肪酸は一般に、本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に有利に微量しか存在しない、すなわち総脂肪酸に基づき、これらは30%未満、好ましくは25%、24%、23%、22%または21%未満、特に好ましくは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満、特別に好ましくは4%、3%、2%または1%未満しか存在しない。 本発明のさらに好ましい態様では、これらの上述の脂肪酸は総脂肪酸に基づき0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%未満、特に好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満しか存在しない。 本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は有利に総脂肪酸に基づき、ブチル酸、コレステロール、イワシ酸(=ドコサペンタエン酸、C22:5 Δ4,8,12,15,21 )およびニシン酸(nisinic acid)(テトラコサヘキサエン酸、C23:6 Δ3,8,12,15,18,21 )を0.1%未満しか含まないおよび/または全く含まない。

    一般に上述の脂肪酸は、本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に有利に微量しか存在しない、すなわち総脂肪酸に基づき、これらは30%未満、好ましくは25%、24%、23%、22%または21%未満、特に好ましくは20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%または5%未満、特別に好ましくは4%、3%、2%または1%未満しか存在しない。 本発明のさらに好ましい態様では、上述のこれら脂肪酸は総脂肪酸に基づき0.9%、0.8%、0.7%、0.6%または0.5%未満、特に好ましくは0.4%、0.3%、0.2%、0.1%未満の量しか存在しない。 本発明の方法により産生される脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物は有利に総脂肪酸に基づき、ブチル酸、コレステロール、鰯酸(=ドコサペンタエン酸、C22:5 Δ4,8,12,15,21 )およびニシン酸(nisinic acid)(テトラコサヘキサエン酸、C23:6 Δ3,8,12,15,18,21 )を0.1%未満しか含まないおよび/または全く含まない。

    本発明の油、脂質または脂肪酸は、都合よく産生用生物、有利に植物、特に有利に油料作物(例えばダイズ、アブラナ、ココナッツ、油ヤシ、ベニバナ、アマニ、麻、ヒマシ油植物、キンセンカ、落花生、カカオ豆、ヒマワリ、または上述の他の単子葉もしくは双子葉油料作物)の総脂肪酸含量に基づき、ARAを少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%もしくは10%、有利に少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%もしくは17%、特に有利に少なくとも18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%もしくは25%、またはEPAを少なくとも0.5%、1%、2%、3%、4%、5%もしくは6%、有利に少なくとも7%、8%、9%、10%もしくは11%、特に有利に少なくとも12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%もしくは20%、またはDHAを少なくとも0.01%、0.02%、0.03%、0.04%もしくは0.05%もしくは0.06%、有利に少なくとも0.07%、0.08%、0.09%もしくは0.1%、特に有利に少なくとも0.2%、0.3%もしくは0.4%含む。 全てのパーセンテージは重量%である。

    本発明の核酸配列または本発明の方法に用いる核酸配列に起因して、多価不飽和脂肪酸(主にARAおよびEPA、またDHAも)の収率は、非トランスジェニック出発植物、例えばカラシ(Brassica juncea)、セイヨウアブラナ(Brassica napus)、ナガミノアマナズナ(Camelina sativa)、シロイナズナ(Arabidopsis thanliana)またはアマ(Linum usitatissimum)などの植物と比較して、GC分析により比較した場合に、少なくとも50、80または100%、有利に少なくとも150、200、または250%、特に有利に少なくとも300、400、500、600、700、800または900%、特別に有利に少なくとも1000、1100、1200、1300、1400または1500%増加させることができる;実施例を参照のこと。

    本発明の方法により産生される脂質および/または油は、他のsn1およびsn3部位と比較してsn2部位により高い含量の不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸およびα-リノレン酸を有する。 より高い含量とは、sn1:sn2:sn3の比率が1:1.1:1、1:1.5:1〜1:3:1であることを意味する。 同様に、本方法で産生されるアラキドン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸は、脂質および/または油中で、トリグリセリド中のsn1およびsn3部位と比較してsn2部位に対して有利に1:1.1:1、1:1.5:1〜1:3:1の優先性を示す。

    上述のように、本方法により産生される、分子内に4、5または6個の二重結合を有する多価不飽和C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸は、C12:0-またはC14:0-脂肪酸を微量しか含まないかまたは全く含まない植物種子中に含まれる。 より短い飽和脂肪酸、例えばC4:0、C6:0、C8:0またはC10:0脂肪酸もまた、脂質および/または油中に存在すべきではなく、または微量しか存在してはならない。 微量とは、有利に、GCで分析した場合に、単位GCピーク面積中で有利に5、4、3、2または1%未満、有利に0.9、0.8、0.7、0.6または0.5%未満、特に有利に0.4、0.3、0.2または0.1%未満、特別に好ましくは0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01未満の量を意味する。 C16:0脂肪酸は有利に1〜28%の単位GCピーク面積の範囲内であるべきである。 有利にC16:0脂肪酸は脂質、油および/または遊離脂肪酸中に25%、20%、15%または10%未満、有利に9%、8%、7%、6%または5%未満、特に有利に4%、3%、2%または1%単位GCピーク面積未満でしか存在しないか、あるいは全く存在すべきではない。 C16:1脂肪酸は有利に1、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1%、特に有利に0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02または0.01%単位GCピーク面積未満の量しか存在すべきではない。 特別に好ましくはC16:1脂肪酸は、本方法により産生される油および/または脂質中に存在すべきではない。 C15:0、C17:0、C16:1 Δ3 trans、C16:4 Δ4,7,10,13およびC18:5 Δ3,6,9,12,15脂肪酸についても同様である。 オレイン酸(C18:1 Δ9 )の他に、その異性体(C18:1 Δ7 、18:1 Δ11 )もまた脂質、油または遊離脂肪酸中に存在し得る。 これらは有利に、単位GCピーク面積で測定して5%、4%、3%、2%または1%未満の量でしか存在しない。 C20:0、C20:1、C24:0およびC24:1脂肪酸はそれぞれの場合に、単位GCピーク面積でそれぞれ対応して0〜1%、0〜3%、および0〜5%の範囲内で存在すべきである。 さらに、ジホモ-γ-リノレン酸(=DGLA)は少量しかGC分析において単位GC面積として種油および/または種子脂質中に検出されるべきではない。 少量とは、単位GCピーク面積で2、1.9、1.8、1.7、1.6および1.5%未満、有利に1.4、1.3、1.2、1.1または1%未満、特に有利に0.9、0.8、0.7、0.6、0.5または0.4%未満を意味する。

    本方法の好ましい実施形態において、DGLAおよびARAは1:1〜1:100、有利に1:2〜1:80、特に有利に1:3〜1:70、特別に1:5〜1:60の比率で産生されるべきである。

    さらなる本方法の好ましい実施形態において、DGLAおよびEPAは1:1〜1:100、1:2〜1:80、特に有利に1:3〜1:70、特別に1:5〜1:60の比率で産生されるべきである。

    本発明の方法により産生される脂質、油および/または遊離脂肪酸は、有利に、トランスジェニック植物の種子中の総脂肪酸含量に基づき、少なくとも30、40または50重量%、有利に少なくとも60、70または80重量%という高い含量の不飽和脂肪酸、有利に多価不飽和脂肪酸を有するべきである。

    飽和脂肪酸の総和は都合よく、好適に使用される植物中の脂質、油および/または遊離脂肪酸の少量にしか相当すべきではない。 この文脈に置ける少量とは、単位GCピーク面積で15%、14%、13%、12%、11%または10%未満、好ましくは9%、8%、7%または6%未満の量を意味する。

    本方法で産生される脂質、油および/または遊離脂肪酸は、有利には、植物の総脂肪酸含量に基づき2重量%未満のエルカ酸含量しか有するべきではない。 都合よく、脂質および/または油中にエルカ酸は全く存在すべきではない。 また、C16:0および/またはC18:0飽和脂肪酸の含量は都合よく、脂質および/または油の総脂肪酸含量に基づき、19、18、17、16、15、14、13、12、11または10重量%未満、都合よく9、8、7、6または5重量%未満であるべきである。 またC20:0またはC22:1などの長鎖脂肪酸は、有利には存在すべきではないか、または少量、有利には脂質および/または油の総脂肪酸含量に基づき、4、3、2,または1重量%未満、有利には0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1重量%未満の量しか存在すべきではない。 典型的にはC16:1は、本発明の方法で産生された脂質および/または油中で脂肪酸としては存在しないかまたは少量しか存在しない。 少量とは有利には、脂質および/または油の総脂肪酸含量に基づき、4、3、2または1重量%未満、有利には0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1重量%未満の脂肪酸含量を意味する。

    圧搾後に得られる本発明の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物を、クルード油と言う。 それらはあらゆる油、脂質成分およびそれらに可溶性の化合物を依然として含む。 そのような化合物は種々のトコフェロール、例えばα-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロールおよび/もしくはδ-トコフェロール、またはフィトステロール、例えばブラシカステロール、カンペステロール、スチグマステロール、β-シトステロール、シトスタノール、Δ 5 -アベナステロール、Δ 5 ,24-スチグマスタジエノール、Δ 7 -スチグマステノールもしくはΔ 7 -アベナステロールなどである。 これらの化合物は脂質または油100g当たりに、1〜1000mg、有利に10〜800mg存在する。 トリテルペン、例えばゲルマニオール(germaniol)、アミリン、シクロアルテノールなどもまたこれらの脂質および油に存在し得る。 これらの脂質および/または油は本方法で産生される多価不飽和脂肪酸(ARA、EPAおよび/またはDHAなど)を、極性および非極性脂質、数例を挙げるとすれば例えばリン脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、糖脂質、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドなどに結合した状態で含む。 リゾホスホリピドもまた脂質および/または油中に存在し得る。 これらの脂質および/または油の成分は適当な方法で互いに分離することができる。 コレステロールはこれらのクルード油中に存在しない。

    本発明のさらなる実施形態は、油、脂質、脂肪酸および/または脂肪酸組成物の飼料、食品、化粧品または医薬での使用に関する。 本発明の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物は、当業者に知られた様式で使用して動物由来の他の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物(例えば魚油)と混合してもよい。 そのような魚油に典型的なのは短鎖脂肪酸、例えばC12:0、C14:0、C14:1、分枝C15:0、C15:0、C16:0またはC16:1である。 多価不飽和C16脂肪酸、例えばC16:2、C16:3またはC16:4、分枝C17:0、C17:1、分枝C18:0およびC19:0ならびにC19:0およびC19:1もまた魚油に見出される。 このような脂肪酸は魚油に典型的であり、植物油中では微量しか存在しないかまたは全く存在しない。 経済的に適当な魚油は例えば、アンチョビ油、メンハーデン油、マグロ油、鰯油、ニシン油、サバ油、鯨油、およびサーモン油である。 これらの動物由来の脂質および/または油は、クルード油の形態で(すなわちまだ精製されていない脂質および/または油の形態で)本発明の油との混合に使用してもよく、または種々の精製画分を混合に使用してもよい。

    本発明のさらなる実施形態は、飼料、食品、化粧品または医薬における油、脂質、脂肪酸および/または脂肪酸組成物の使用に関する。

    本発明の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物は、当業者に知られた様式で使用して動物由来の他の油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物(例えば魚油)と混合してもよい。 植物および動物成分を含むこれらの油、脂質、脂肪酸または脂肪酸混合物は、やはり食品、飼料、化粧品または医薬の製造に使用可能である。

    「油」、「脂質」または「脂肪」という用語は、不飽和または飽和の、好ましくはエステル化された脂肪酸を含む脂肪酸混合物を意味する。 油、脂質または脂肪は好ましくは多価不飽和の遊離または好ましくはエステル化された脂肪酸、特にリノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸の含量が高い。 エステル化された不飽和脂肪酸の量は好ましくは約30%であり、50%の含量はより好ましく、60%、70%、80%、85%またはそれより多い含量はさらに好ましい。 解析については、脂肪酸含量は例えば脂肪酸をエステル交換によりメチルエステルに変換した後にガスクロマトグラフィーで測定することができる。 油、脂質または脂肪は種々の他の飽和もしくは不飽和脂肪酸、例えばカレンデュラ酸、パルミチン酸、パルミトオレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸などを含み得る。 油または脂肪中の種々の脂肪酸含量は、特に出発生物に依存して変化する。

    本方法において産生される、都合よく少なくとも2個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸は、上述のように、例えばスフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、脂質、糖脂質、リン脂質、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロールまたは他の脂肪酸エステルである。

    有利に少なくとも5または6個の二重結合を有する本発明の方法で調製された多価不飽和脂肪酸から出発して、存在する多価不飽和脂肪酸は例えばアルカリ剤(例えば水性KOHまたはNaOH)で処理することにより、または酸加水分解により、有利にはアルコール(例えばメタノールまたはエタノール)の存在下で、または酵素切断によって遊離させることができ、例えば相分離およびその後の酸性化により(例えばH 2 SO 4を用いて)分離することができる。 また脂肪酸を上述の処理工程を踏まずに直接遊離させることもできる。

    相当量の多価不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸(ARA)および/またはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)を産生する既知の植物系は苔類と藻類だけである。 苔類はPUFAを膜脂質中に有するのに対して、藻類、藻類に関連する生物および数種の菌類は相当量のPUFAをトリアシルグリセロール画分に蓄積する。 このことに起因してトリアシルグリセロール画分にPUFAを蓄積する株から単離された核酸分子は、本発明の方法に特に都合が良く、従って宿主(特に油料作物などの植物、例えばアブラナ、キャノーラ、アマニ、麻、ダイズ、ヒマワリ、およびボリジ)における脂質およびPUFA産生系の改変に都合が良い。 このことからこれらを本発明の方法に都合良く使用することができる。

    本方法に使用する核酸を植物細胞または植物に導入した後、それらは別のプラスミド上にまたは有利に宿主細胞のゲノムに組み込まれて存在し得る。 ゲノムに組み込まれる場合については組み込みは、ランダムでもよくまたは天然の遺伝子が導入されたコピーで置き換えられそのことにより細胞による所望の化合物の産生がモジュレートされる組換えによって達成されてもよく、あるいは、遺伝子が機能的な発現ユニット(遺伝子の発現を保証する少なくとも1つの配列と機能的に転写される遺伝子のポリアデニル化を保証する少なくとも1つの配列を含む)と機能的に連結されるようなトランスでの遺伝子の使用によって達成されてもよい。 核酸は複数並行発現のために、複数発現カセットまたは構築物により都合良く生物に導入してもよく、有利には遺伝子の複数並行種子特異的発現のために植物中に導入してもよい。

    当然のことながら、複数の遺伝子の共発現は遺伝子を共通の組換え核酸構築物により導入することによって達成できるが、しかしむしろ個々の遺伝子を別々に、すなわち同時にまたは連続して、種々の構築物上から導入することも可能である。 この場合遺伝子を共発現すべき植物において全ての遺伝子が同時に存在することは、異なる選択マーカーを使用することにより保証される。 この植物は1以上の形質転換処置の産物であってもよく、または1以上の遺伝子を含む植物の交雑産物であってもよい。

    本発明の方法に使用され、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/もしくはΔ9-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに/または使用されるさらなる核酸、例えばアシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝のポリペプチドをコードする核酸に都合良く適当な基質は、有利にC 16 -、C 18 -、C 20 -またはC 22 -脂肪酸である。 方法において基質として変換される脂肪酸は好ましくはそのアシル-CoAエステルおよび/またはそのリン脂質エステルの形態で変換される。 本方法において、アシル-CoAエステルに特異的なデサチュラーゼを使用することは有利である。 ここでの利点は、一般に不飽和化の基質であるリン脂質エステルとアシル-CoAエステルの置換を省略できることである。 従って、既に示されたように、いくつかの場合には制限的となる追加の酵素ステップは、省略可能である。

    本発明の長鎖PUFAを産生するためには、多価不飽和C 16 -またはC 18 -脂肪酸は最初にデサチュラーゼの酵素活性により不飽和化され、その後エロンガーゼにより少なくとも2炭素原子分伸長されなければならない。 この酵素活性は1回の伸長サイクル後、C 18 -またはC 20 -脂肪酸を生じ、2回の伸長サイクル後にはC 20 -またはC 22 -脂肪酸を生じる。 本発明の方法に使用するデサチュラーゼおよびエロンガーゼ活性は好ましくは、都合良く脂肪酸分子中に少なくとも2個の二重結合、好ましくは3、4、5または6個の二重結合を有するC 18 -、C 20 -および/またはC 22 -脂肪酸を生じ、特に好ましくは分子中に少なくとも3個の二重結合、好ましくは3、4、5または6個の二重結合、特別に好ましくは4、5または6個の二重結合を有するC 20 -および/またはC 22 -脂肪酸を生じる。 本発明の方法の産物で特に好ましいのはアラキドン酸、エイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸である。 脂肪酸中に少なくとも2個の二重結合を有するC 18 -脂肪酸は、本発明の酵素活性により遊離脂肪酸の形態で、またはエステルの形態、例えばリン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、ホスホグリセリド、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロールまたはトリアシルグリセロールの形態で伸長されうる。

    有利に使用される植物中の脂肪酸、油、脂質または脂肪の好ましく生合成される場所は、例えば一般に種子または種子の細胞層であり、これは本方法に使用する核酸の種子特異的発現と整合する。 また一方、脂肪酸、油または脂質の生合成が種子組織に限定される必要がないことは明らかであり、該生合成は植物の他のあらゆる部分、例えば表皮細胞または塊茎などで組織特異的な様式で行われてもよい。

    Δ5-エロンガーゼをコードする本発明の核酸を使用することにより、本方法で産生される多価不飽和脂肪酸は、組換えによる核酸を含まない野生型の生物と比較して、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、特に好ましくは20%、特別に好ましくは少なくとも50%増加し得る。

    一般に本発明の方法により産生される多価不飽和脂肪酸は、本方法に使用される植物中では2つの異なる様式で増加させることができる。 本方法により産生される遊離の多価不飽和脂肪酸のプールおよび/またはエステル化された多価不飽和脂肪酸の含量を増大させることができる。 有利にトランスジェニック生物中のエステル化された多価不飽和脂肪酸のプールが本発明の方法により増大する。

    本発明のさらなる主題はΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする単離された核酸配列であって、ここでΔ5-エロンガーゼは脂肪酸分子中に少なくとも4個の二重結合を有するC 20 -脂肪酸を変換するものであり、これらの変換された肪酸は都合良く最終的にはジアシルグリセリドおよび/またはトリアシルグリセリドに組み込まれる。

    このことから本発明のさらなる主題はΔ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードし配列番号197に記載の配列を有する単離された核酸配列である。

    本発明のさらなる主題はΔ6-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、配列番号199に記載の配列を有する単離された核酸配列である。

    また本発明のさらなる主題はΔ6-デサチュラーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、配列番号201に記載の配列を有する単離された核酸配列である。

    同様に本発明のさらなる主題は次のa)〜e)を含む組換え核酸分子に関する:
    a) 植物細胞中、このましくは種子細胞中で活性なプロモーターの1以上のコピー、
    b) Δ6-デサチュラーゼ活性をコードする、配列番号193または配列番号201に記載の配列を有する少なくとも1つの核酸配列、
    c) Δ5-デサチュラーゼ活性をコードする、配列番号11に記載の配列を有する少なくとも1つの核酸配列、
    d) Δ6-エロンガーゼ活性をコードする、配列番号27または配列番号199に記載の配列を有する少なくとも1つの核酸配列、および
    e) 1以上のコピーのターミネーター配列。

    都合良く配列番号195に記載の配列を有しΔ12-デサチュラーゼをコードする追加の核酸配列もまた上述の組換え核酸分子中に存在してもよい。

    さらに有利な実施形態において配列番号197に記載の配列を有しΔ5-エロンガーゼをコードする追加の核酸配列もまた上述の組換え核酸分子中に存在してもよい。

    上述の配列の他に、以下のものからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝の追加の生合成遺伝子もまた、組換え核酸分子に導入可能である:アシル-CoAデヒドロゲナーゼ、アシル-ACP[=アシルキャリアタンパク質]デサチュラーゼ、アシル-ACPチオエステラーゼ、脂肪酸アシルトランスフェラーゼ、アシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、脂肪酸シンターゼ、脂肪酸ヒドロキシラーゼ、アセチル-補酵素Aカルボキシラーゼ、アシル-補酵素Aオキシダーゼ、脂肪酸デサチュラーゼ、脂肪酸アセチレナーゼ、リポキシゲナーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼ、アレンオキシドシンターゼ、ヒドロペルオキシドリアーゼまたは脂肪酸エロンガーゼ。

    これらの遺伝子は好ましくは、Δ4-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼまたはΔ9-エロンガーゼからなる群より選択される脂肪酸または脂質代謝の遺伝子である。

    本発明のさらなる主題は、本発明における配列番号11、配列番号27、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の核酸配列を含む遺伝子構築物であり、このとき核酸は1以上の調節シグナルに機能的に連結されている。

    本発明の方法に使用する核酸配列はいずれも、有利に例えば植物、藻類などの微生物または動物などといった真核生物由来である。 好ましくは核酸配列は、サケ目(Salmoniformes)、ツメガエル属(Xenopus)またはシオナ属(Ciona)、例えばマントニエラ属(Mantoniella)、クリプセコジニウム属(Crypthecodinium)、ユーグレナ属(Euglena)もしくはオストレオコッカス属(Ostreococcus)などの藻類、例えば疫病菌(Phytophtora)などの菌類、またはタラシオシラ属(Thalassiosira)もしくはファエオダクティラム属(Phaeodactylum)由来の珪藻などに由来する。

    ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼまたはΔ9-エロンガーゼ活性を有するタンパク質をコードする本方法に使用する核酸配列は都合良くそのまま導入されるか、または好ましくは植物中での核酸の発現をもたらす発現カセット(=核酸構築物)と組み合わせて導入される。 Δ12-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼなどの酵素活性に関する1以上の核酸配列が核酸構築物中に存在しうる。

    本方法に使用する核酸を植物に導入するに当たり、それらは都合良く上述のように増幅および連結される。

    本発明のΔ12-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼタンパク質、および本方法に使用する追加のタンパク質、例えばΔ12-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼまたはΔ4-デサチュラーゼタンパク質などの改変を可能にする一連の機構が存在し、該改変されたタンパク質に起因して、植物(好ましくは油料作物植物)中で都合よく産生される多価不飽和脂肪酸の収率、生産性および/または生産効率が直接左右され得る。 Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼもしくはΔ4-デサチュラーゼタンパク質または遺伝子の数または活性を増大させることにより、遺伝子産物がより多く産生され、そしてそのことにより最終的には一般式Iで表される化合物がより多量に産生される。 対象の遺伝子を導入する以前には化合物を生合成する活性および能力を欠いていた植物中でのde novo合成もまた可能である。 さらなるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼまたは脂肪酸および脂質代謝の追加の酵素との組み合わせについても同様である。 種々の多様な配列、すなわちDNA配列レベルで異なる配列の使用も有利であり、また遺伝子発現の時期を(例えば種子または貯蔵組織の成熟度に依存して)変化させられる遺伝子発現用プロモーターの使用も有利である。

    Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子を、植物中に単独で導入することは、または他の遺伝子と組み合わせて細胞に導入することは、最終産物に向かう生合成流量を増加させ得るのみならず、対応するトリアシルグリセロール組成物を増加させるもしくはde novoで創作することも可能である。 同様に、1種以上の脂肪酸、油、極性脂質および/または中性脂肪の生合成に必要な栄養物の取り込みに関わる他の遺伝子の数もしくは活性を増大させることができ、そのことにより細胞内または貯蔵区画内でのこれらの出発物質、コファクターまたは中間体の濃度が増大し、そのことによって細胞がPUFAを産生する能力がさらに増強されるが、これは以下に記載する通りである。 これらの化合物の生合成に関わる1種以上のΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、またはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子の活性を最適化することにより、もしくは数を増加させることにより、あるいはこれらの化合物の分解に関わる1種以上の遺伝子の活性を破壊することにより、生物中でのおよび有利には植物中での脂肪酸および脂質分子の収率、生産性および/または生産効率を増大させることが可能である。

    本発明の方法に使用する単離された核酸分子はタンパク質またはその一部をコードし、ここでタンパク質または個々のタンパク質もしくはその一部分は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号184、配列番号194、配列番号198、配列番号200または配列番号202に示すアミノ酸配列と十分な相同性を有するアミノ酸配列を含み、このときタンパク質またはその一部はΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ活性を保持する。 核酸分子によりコードされるタンパク質もしくはその一部は、好ましくはその本質的な酵素活性を依然として保持し、また、生物中(有利には植物中)での細胞膜または脂肪体の形成に必要な化合物の代謝に関わる能力および細胞膜を横断する分子の輸送に関わる能力を依然として保持する。 有利に、核酸分子によりコードされるタンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号184、配列番号194、配列番号198、配列番号200または配列番号202に記載のアミノ酸配列と少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%およびより好ましくは少なくとも約70%、80%もしくは90%、および最も好ましくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する。 本発明の目的において、相同性または相同とは、同一性または同一を意味する。

    相同性は、アミノ酸または核酸配列領域全体に渡って計算した。 種々の配列を比較するためには、種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムが利用可能である。 この意味ではNeedleman and WunschまたはSmith and Watermanのアルゴリズムは特に信頼できる結果を生成する。 配列アライメントを実行するためには、GCGソフトウェアパケット[Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部であるGapおよびBestFitプログラム[Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970)およびSmith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)]またはPileUpプログラム(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153)を用いた。パーセントで示された上述の配列相同値は、次のように設定したGAPプログラムを用いて配列領域全体にわたり決定した:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均マッチ:10.000および平均ミスマッチ0.000。特に断らない限り、配列比較には常にこれらの設定を標準設定として用いた。

    本発明の方法に使用されるΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼの本質的な酵素活性とは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列およびそれらの誘導体によりコードされるタンパク質/酵素と比較して少なくとも10%、好ましくは20%、特に好ましくは30%および特別に40%の酵素活性を保持し、そのことにより生物中(有利には植物または植物細胞)での脂肪酸、脂肪酸エステル(ジアシルグリセリドおよび/またはトリアシルグリセリドなど)の合成に必要な化合物の代謝に関与するか、または細胞膜を横断する分子の輸送に関与することを意味し、ここで化合物は少なくとも2つ、有利には3、4、5または6つの位置に二重結合を有し脂肪酸分子がC 18 -、C 20 -、またはC 22 -炭素鎖であるものである。

    本方法に有利に使用可能な核酸分子は以下のものに由来する:細菌、菌類、珪藻、動物、例えばシノラブディス属(Caenorhabditis)もしくはオンコリンクス属(Oncorhynchus)、あるいは植物、例えば藻類または苔類、例えばシェワネラ属(Shewanella)、フィスコミトレラ属(Physcomitrella)、ヤブレツボカビ属(Thraustochytrium)、フサリウム属(Fusarium)、ファイトフソラ属(Phytophthora)、ヤノウエアカゴケ属(Ceratodon)、マントニエラ属(Mantoniella)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、イソクリシス属(Isochrysis)、アレウリタ属(Aleurita)、ムスカリオイデス属(Muscarioides)、モルティエレラ属(Mortierella)、ボラゴ属(Borago)、ファエオダクティラム属(Phaeodactylum)、クリプセコジニウム属(Cryphthecodinium)であり、特に属および種Oncorhynchus mykiss(ニジマス)、Xenopus laevis(アフリカツメガエル)、Ciona intestinalis(カタユウレイボヤ)、Thalassiosira pseudonona(タラシオシラ・シュードナナ)、Mantoniella squamata(マントニエラ・スクアマータ)、Ostreococcus sp.(オストレオコッカス種)、Ostreococcus tauri(オストレオコッカス・タウリ)、Euglena gracilis(ユーグレナ・グラシリス)、Physcomitrella patens(ヒメツリガネゴケ)、Phytophtora infestans(疫病菌)、Fusarium graminaeum(フサリウム・グラミネウム)、Cryptocodinium cohnii(クリプセコジニウム・コーニー)、Ceratodon purpureus(ヤノウエアカゴケ)、Isochrysis galbana(イソクリシス・ガルバナ)、Aleurita farinosa(アレウリタ・ファリノーサ)、Thraustochytrium sp. (ヤブレツボカビ種)、Muscarioides vialii(ムスカリオイデス・ビアリー)、Mortierella alpina(モルティエレラ・アルピナ)、Borago officinalis(ボリジ)、Phaeodactylum tricornutum(ファエオダクティラム・トリコルナタム)、Caenorhabditis elegans(線虫)または特に有利にOncorhynchus mykiss(ニジマス)、Euglena gracilis(ユーグレナ・グラシリス)、Thalassiosira pseudonona(タラシオシラ・シュードナナ)、もしくはCrypthecodinium cohnii(クリプセコジニウム・コーニー)。

    あるいはまた、本発明の方法に使用可能なヌクレオチド配列は、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードし、かつ配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下で都合良くハイブリダイズするものである。

    本方法に使用する核酸配列は都合良く微生物や植物などの生物中で核酸の発現を可能にする発現カセットに導入される。

    この文脈意味において、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼをコードする核酸配列は都合良く1以上の調節シグナルに機能的に連結されて遺伝子発現を増加させる。 これらの調節配列は、遺伝子およびタンパク質発現の標的化された発現を可能にすると考えられる。 例えばこのことは、宿主植物に依存して、誘導をかけた後にのみ遺伝子が発現されるおよび/または過剰発現されることを意味するか、あるいは直ちに遺伝子が発現および/または過剰発現されることを意味しうる。 例えばこれらの調節配列は、誘導因子またはリプレッサーが結合し、該結合により核酸の発現が調節される形態のものである。 これらの新規調節配列に加え、またはそれらの配列の代わりに、実際の構造遺伝子の上流にある天然の調節配列が依然として存在してもよく、適当ならば天然の調節スイッチがオフにされ遺伝子の発現が増強されるように遺伝的に改変されていてもよい。 また一方発現カセット(=発現構築物=遺伝子構築物)は、より単純な構造であってもよく、すなわち核酸配列またはその誘導体の上流にいかなる追加の調節シグナルも挿入されず、調節機能を伴った天然のプロモーターが除去されていなくてもよい。 そのかわり天然の調節配列は調節が行われないおよび/または遺伝子発現が増強されるように変異導入されている。 これらの改変されたプロモーターは活性を増大させるために、部分配列(=本発明の核酸配列の一部を伴うプロモーター)としてまたは単独で、天然遺伝子の上流に配置され得る。 その上、遺伝子構築物は都合良くプロモーターと機能的に連結された1以上の「エンハンサー配列」を含んでもよく、これらは核酸配列の発現の増加を可能にする。 また、DNA配列の3'末端に追加の有利な配列、例えばさらなる調節エレメントまたはターミネーターを挿入することも可能である。 Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼ および/またはΔ9-エロンガーゼ遺伝子は、発現カセット(=遺伝子構築物)中に1以上のコピーとして存在してもよい。 有利には、各々の場合に発現カセット中に存在する遺伝子のコピーは1つだけである。 遺伝子構築物は宿主生物中で一緒に発現させることができる。 この文脈において、遺伝子構築物は1以上のベクターに挿入されてもよく、細胞中で遊離の形態で存在してもよく、またはゲノムに挿入されてもよい。 発現させる遺伝子が1つの遺伝子構築物上に共存する場合、さらなる遺伝子を宿主ゲノムに挿入することは都合がよい。

    この意味合いにおいて、調節配列または調節因子は上述の通り、好ましくは導入した遺伝子の発現に対してプラスの効果をもたらし、そのことにより遺伝子発現を増大させる。 このことから調節エレメントによる増強は有利に強力な転写シグナル(プロモーターおよび/またはエンハンサーなど)を使用することにより転写レベルで起こりうる。 また一方、翻訳の増強も可能であり、これは例えばmRNAの安定性を向上させることによる。

    新規方法に都合良い調節配列は、例えば植物プロモーターCaMV/35S [Franck ら, Cell 21 (1980) 285-294], PRP 1 [Ward ら, Plant Mol. Biol. 22 (1993)]、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nosまたはユビキチンもしくはファセオリンプロモーターなどのプロモーター中に見出すことができる。 またこの文脈において有利なのは誘導プロモーター、例えば欧州特許公開第0 388 186号明細書(ベンジルスルホンアミド誘導性)、Plant J. 2, 1992:397-404 (Gatz ら、テトラサイクリン誘導性)、欧州特許公開第0 335 528 号明細書(アブシジン酸誘導性)または国際公開第93/21334号パンフレット(エタノールもしくはシクロヘキサノール誘導性)に記載のプロモーターなどである。 さらなる適当な植物プロモーターは、細胞質FBPアーゼのプロモーターまたはジャガイモ由来のST-LSIプロモーター(Stockhaus ら, EMBO J. 8, 1989, 2445)、Glycine max(ダイズ)由来のホスホリボシル-ピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(Genbank登録番号第U87999号)または欧州特許公開第0 249 676号明細書に記載のノード特異的プロモーターである。 特に都合のよいプロモーターは、脂肪酸の生合成に関わる組織での発現を可能にするものである。 特別に都合がよいのは種子特異的プロモーター、例えば実施されているUSPプロモーターのみならず、LeB4、DC3、ファセオリンもしくはナピンプロモーターなどといった他のプロモーターである。 さらなる特に都合のよいプロモーターは、単子葉もしくは双子葉植物に使用可能な種子特異的プロモーターであり、米国特許第5,608,152号明細書(アブラナ由来のナピンプロモーター)、国際公開第98/45461号パンフレット(シロイナズナ由来のオレオシンプロモーター)、米国特許第5,504,200号明細書(Phaseolus vulgaris由来のファセオリンプロモーター)、国際公開第91/13980号パンフレット(アブラナ由来のBce4プロモーター)、Baeumlein ら, Plant J., 2, 2, 1992:233-239 (マメ科植物由来のLeB4 プロモーター)に記載のものであるが、これらは双子葉植物に適当なプロモーターである。 次のプロモーターは例えば単子葉植物に使用するのに適当である:オオムギ由来のlpt-2もしくはlpt-1プロモーター(国際公開第95/15389号パンフレットおよび国際公開第95/23230号パンフレット)、オオムギ由来のホルデインプロモーターならびに国際公開第99/16890号パンフレットに記載の他の適当なプロモーター。

    一般に新規方法のために調節配列を伴ったあらゆる天然のプロモーター(上記のものなど)が使用可能である。 同様に合成プロモーターを追加でまたは単独で使用することも可能であり、また都合がよく、特にそれらが種子特異的発現を仲介する(例えば国際公開第99/16890号パンフレットに記載のもの)場合に都合がよい。

    特にトランスジェニック植物中で特に高いPUFA含量を達成するためには、PUFA生合成遺伝子は有利に、脂肪種子作物中で種子特異的な様式で発現させるのが望ましい。 このためには、種子特異的プロモーターまたは胚芽および/もしくは内胚で作動するプロモーターを使用してもよい。 一般に種子特異的プロモーターは双子葉植物および単子葉植物のいずれからも単離可能である。 このような都合のよいプロモーターは上述されており、例えばUSP、ビシリン(Vicilin)、ナピン、オレオシン、ファセオリン、Bce4、LegB4、Lpt2、lpt1、Amy32b、Amy 6-6、アレウレインまたはBce4プロモーターなどがある。

    さらに、化学的に誘導可能なプロモーターもまたは本発明の方法に都合良く使用できる。

    ダイズでの発現に適当な都合のよいさらなるプロモーターは、β-コングリシニンα-サブユニット、β-コングリシニンβ-サブユニット、クニッツトリプシン阻害剤、アネキシン、グリシニン、アルブミン2S、レグミンA1、レグミンA2およびBD30のプロモーターである。

    特に有用なプロモーターは、USP、LegB4、Fad3、SBP、DC-3またはクルシフェリン820のプロモーターである。

    本発明の方法に使用される核酸配列の発現に用いる都合のよい調節配列は、有利にダイズ中での発現のためのターミネーターであり、例えばLeg2A3'、Kti3'、Phas3'、BD30 3'またはAIS3'である。

    特に都合のよいターミネーターはA7T、OCS、LeB3Tまたはcatターミネーターである。

    複数の世代に渡りトランスジェニック植物中に生合成遺伝子が安定して組み込まれることを保証するためには、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼをコードし本方法に使用する各々の核酸は、上述のように、自身のプロモーターの制御下に、好ましくは異なるプロモーターの制御下にあるべきである。 なぜならば繰り返し配列モチーフはT-DNAを不安定にしてしまい、または組換え事象をもたらしてしまう可能性があるからである。 上述したように遺伝子構築物はまた、植物に導入するさらなる遺伝子を含んでもよい。

    この意味合いにおいて、本発明の方法に使用される核酸の発現に都合良く用いる調節配列または調節因子は、上述のように、好ましくは導入した遺伝子の発現に対してプラスの効果を有しうる。

    これらの都合のよいベクター、好ましくは発現ベクターはΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼもしくはΔ4-デサチュラーゼをコードする本方法に使用される核酸を含むか、あるいは、使用される核酸を単独でまたはさらなる脂肪酸または脂質代謝の生合成遺伝子(例えばアシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ4-デサチュラーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ9-デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/もしくはΔ9-エロンガーゼなど)と組み合わせて含有する核酸構築物を含む。

    本明細書に記載し使用する「ベクター」という用語は、それに結合した別の核酸を輸送することのできる核酸分子を言う。

    使用する組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞中でΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼを発現するように設計することができる。 このように設計することが好都合なのは、ベクター構築のための中間ステップがしばしば簡便性のために微生物中で行われるからである。 例えば、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ遺伝子を、細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞および他の菌類細胞(以下を参照されたい:Romanos, MA, ら (1992) “Foreign gene expression in yeast: a review”, Yeast 8:423-488; van den Hondel, CAMJJ, ら (1991) “Heterologous gene expression in filamentous fungi”, in: More Gene Manipulations in Fungi, JW Bennet & LL Lasure, 編, pp. 396-428: Academic Press: San Diego; and van den Hondel, CAMJJ, & Punt, PJ (1991) “Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi, in: Applied Molecular Genetics of Fungi, Peberdy, JF, ら, 編, pp. 1-28, Cambridge University Press: Cambridge)、藻類(Falciatore ら, 1999, Marine Biotechnology. 1, 3:239-251)、次の種の繊毛虫: コガネ属(Holotrichia)、縁毛類(Peritrichia)、旋毛綱(Spirotrichia)、吸管虫亜綱(Suctoria)、テトラヒメナ属(Tetrahymena)、ゾウリムシ属(Paramecium)、コルピディウム属(Colpidium)、グラウコマ属(Glaucoma)、プラティオフリア属(Platyophrya)、ポトマクス属(Potomacus)、デサチュラーゼウドコニレンバス(Desaturaseudocohnilembus)、ユープロテス属(Euplotes)、エンゲルマニエラ属(Engelmaniella)、およびスティロニキア属(Stylonychia)、特に属スティロニキア・レムナエ(Stylonychia lemnae)中で発現させることができ、該発現においてベクターは国際公開第98/01572号パンフレットに記載の形質転換方法に沿って、好ましくは多細胞植物の細胞中(Schmidt, R. and Willmitzer, L. (1988) “High efficiency Agrobacterium tumefaciens-mediated transformation of Arabidopsis thaliana leaf and cotyledon explants” Plant Cell Rep.: 583-586; Plant Molecular Biology and Biotechnology, C Press, Boca Raton, Florida, chapter 6/7, pp. 71-119 (1993); FF White, B. Jenes ら, Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, 編: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128-43; Potrykus, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42 (1991), 205-225およびそこに引用されている文献を参照のこと)で使用する。 適当な宿主細胞はGoeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)にさらに検討されている。 別の方法としては、組換え発現ベクターは、例えばT7-プロモーター調節配列およびT7-ポリメラーゼを使用してin vitroで転写および翻訳させてもよい。

    ほとんどの場合原核生物におけるタンパク質発現は、都合良く酵素活性を簡便に検出するため、例えばデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を検出するために行われ、これには融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を制御する構成的プロモーターまたは誘導プロモーターを有するベクターが使用される。 典型的な融合発現ベクターの例は、pGEX (Pharmacia Biotech Inc; Smith, DB, and Johnson, KS (1988) Gene 67:31-40)、pMAL (New England Labs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)であり、このときグルタチオンS-トランスフェラーゼ (GST)、マルトースE結合タンパク質およびプロテインAがそれぞれ組換え標的タンパク質と融合する。

    適当な誘導可能で非融合性の大腸菌(E. coli)発現ベクターは、特にpTrc (Amannら (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11d (Studierら, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89)である。 pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、宿主RNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの転写に基づく。 pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、T7-gn10-lac融合プロモーターの転写に基づき、転写は共発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって仲介される。 このウイルスポリメラーゼは宿主菌株BL21 (DE3)もしくはHMS174 (DE3)によって提供されるか、lacUV 5 プロモーターの転写制御下でT7 gn1遺伝子を有する、組みこまれたλ-プロファージによって提供される。

    当業者には原核生物に適当な他のベクターも知られており、こうしたベクターは例えば大腸菌(E. coli)ではpLG338、pACYC184、pBR322などのpBR系列、pUC18もしくはpUC19などのpUC系列、M113mp系列、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11またはpBdClであり、Streptomyces(放線菌)ではplJ101、plJ364、plJ702またはplJ361であり、枯草菌(Bacillus)ではpUB110、pC194またはpBD214であり、コリネ菌(Corynebacterium)ではpSA77またはpAJ667である。

    さらなる実施形態において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。 酵母S. cerevisiae用の発現ベクターの例として挙げられるのは、pYeDesaturasec1(Baldari ら (1987) Embo J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz ら (1987) Gene 54:113-123)およびpYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)である。 他の菌類、例えば糸状菌での使用に適当なベクターの構築のためのベクターおよび方法としては、以下の文献に詳述されているものが挙げられる: van den Hondel, CAMJJ, & Punt, PJ (1991) “Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi, in: Applied Molecular Genetics of fungi, JF Peberdy ら, 編 pp. 1-28, Cambridge University Press: Cambridge, または:More Gene Manipulations in Fungi [JW Bennett & LL Lasure, 編, pp. 396-428: Academic Press: San Diego]。さらなる適当な酵母ベクターは、例えばpAG-1、YEp6、YEp13またはpEMBLYe23である。

    別の方法として、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼをバキュロウイルス発現ベクターを用いて昆虫細胞で発現させることもできる。 培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)でのタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAc系列 (Smithら(1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVL系列 (Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39)が挙げられる。

    上述のベクターは、適当に利用することのできるベクターのごく一部を総括したに過ぎない。 さらなるプラスミドは当業者に知られており、例えば:Cloning Vectors (編, Pouwels, PH, ら, Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に記載されている。 原核細胞および真核細胞の適当なさらなる発現系についてはSambrook, J., Fritsch, EF, and Maniatis, T., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989の第16章および第17章を参照されたい。

    酵素活性を検出するためには、Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼを、単細胞植物細胞(例えば藻類)中で発現させてもよく(Falciatore ら, 1999, Marine Biotechnology 1 (3):239-251およびそこに引用されている文献を参照のこと)、高等植物(例えば耕地作物などの種子植物)由来の植物細胞中で発現させてもよい。 植物発現ベクターの例としては以下に詳述されているものが挙げられる:Becker, D., Kemper, E., Schell, J., and Masterson , R. (1992) “New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border”, Plant Mol. Biol. 20:1195-1197;およびBevan, MW (1984) “Binary Agrobacterium vectors for plant transformation”, Nucl. Acids Res. 12:8711-8721;また高等植物の遺伝子組み換え用ベクターについては:Transgenic Plants, Vol. 1, Engineering and Utilization, 編: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, p. 15-38に記載のものが挙げられる。

    植物発現カセットは好ましくは、植物細胞中での遺伝子発現を制御することができ、各々の配列がその機能(例えば転写終結)を発揮できるように機能的に連結されている調節配列(例えばポリアデニル化シグナル)を含む。 好ましいポリアデニル化シグナルはAgrobacterium tumefaciens T-DNA由来のもの、例えばTiプラスミドpTiACH5の遺伝子3(オクトピンシンターゼとして知られている)(Gielen ら, EMBO J. 3 (1984) 835 下記を参照)またはその機能的等価物であるが、植物中で機能的に作用する他のあらゆるターミネーター配列もまた適当である。

    植物遺伝子発現は多くの場合転写レベルに限定されないことから、植物発現カセットは好ましくは、例えばタンパク質/RNA比を増大させる翻訳増強配列、例えばタバコモザイクウイルス5'非翻訳リーダー配列を含むオーバードライブ配列(Gallie ら, 1987, Nucl. Acids Research 15:8693-8711)などといった他の機能的に連結されている配列を含む。

    上述のように、発現させる遺伝子は、遺伝子を時間的、細胞特異的、または組織特異的な様式で発現させる適当なプロモーターに機能的に連結されるべきである。 使用可能なプロモーターは構成的プロモーター(Benfey ら, EMBO J. 8 (1989) 2195-2202)、例えば植物ウイルス由来のプロモーター、例えば35S CaMV (Franck ら, Cell 21 (1980) 285-294)、19S CaMV(米国特許第5352605号および国際公開第84/02913号パンフレットも参照されたい)、または植物プロモーター、例えばRubisco小サブユニットのプロモーター(米国特許第4,962,028号明細書に記載されている)である。

    植物遺伝子発現カセット中で機能的に連結して使用する他の好適な配列は、遺伝子産物を適切な細胞区画(例えば液胞、核、あらゆる種類のプラスチド、例えばアミロプラスト、クロロプラスト、クロモプラスト、細胞外空間、ミトコンドリア、小胞体、脂肪体、ペルオキシソームおよび植物細胞の他の区画)へと標的化するのに必要な標的配列である(Kermode, Crit. Rev. Plant Sci. 15, 4 (1996) 285-423の総説およびそこに引用されている文献を参照のこと)。

    植物遺伝子発現はまた、化学的に誘導可能なプロモーターにより促進され得る(総説としてGatz 1997, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol., 48:89-108を参照されたい)。 化学的に誘導可能なプロモーターは、遺伝子発現を時間特異的な様式で行いたい場合に特に適している。 このようなプロモーターの例として挙げられるのは、サリチル酸誘導プロモーター(国際公開第95/19443号パンフレット)、テトラサイクリン誘導プロモーター (Gatz ら (1992) Plant J. 2, 397-404)およびエタノール誘導プロモーターである。

    生物的または抗生的ストレス条件に応答するプロモーターもまた適当であり、例えば病原体誘導PRP1遺伝子プロモーター(Ward ら, Plant. Mol. Biol. 22 (1993) 361-366)、熱誘導トマトhsp80プロモーター(米国特許第5,187,267号明細書)、低温誘導ジャガイモα-アミラーゼプロモーター(国際公開第96/12814号パンフレット)または外傷誘導pinIIプロモーター(欧州特許出願公開第0 375 091号明細書)などが挙げられる。

    特に好ましいプロモーターは、脂肪酸、脂質および油の生合成が行われる組織および器官で、種子細胞中で、例えば内胚および成育中の胚芽の細胞で遺伝子発現をもたらすものである。 適当なプロモーターとして挙げられるのはセイヨウアブラナ由来のナピンプロモーター(米国特許第5,608,152号明細書)、Vicia faba由来のUSPプロモーター(Baeumleinら, Mol Gen Genet, 1991, 225 (3):459-67)、Arabidopsis由来のオレオシンプロモーター(国際公開第98/45461号パンフレット)、Phaseolus vulgaris由来のファセオリンプロモーター(米国特許第5,504,200号明細書)、アブラナ由来のBce4プロモーター(国際公開第91/13980号明細書)またはレグミンB4プロモーター(LeB4;Baeumlein ら, 1992, Plant Journal, 2 (2):233-9)、ならびにトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、イネなどの単子葉植物中での種子特異的発現をもたらすプロモーターである。 考慮すべき適当なプロモーターとしてはオオムギ由来のlpt2もしくはlpt1遺伝子プロモーター(国際公開第95/15389号パンフレットおよび国際公開第95/23230号パンフレット)、または国際公開第99/16890パンフレットに記載されているもの(オオムギホルデイン遺伝子、イネグルテリン遺伝子、イネオリザイン遺伝子、イネプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝子、トウモロコシzein遺伝子、オートムギグルテリン遺伝子、ソルガムkasirin遺伝子またはライムギsecalin遺伝子由来のプロモーター)である。

    とりわけ、本方法に使用するΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼ、Δ6-エロンガーゼおよび/またはΔ5-デサチュラーゼの複数並行発現をもたらすことが望まれることがある。 このような発現カセットは個々の発現構築物を複数同時に形質転換することにより導入してもよく、または好ましくは1つの構築物上に複数の発現カセットを一緒にして導入してもよい。 また、複数のベクターをそれぞれ複数の発現カセットで形質転換し、ついでそれらを宿主細胞に導入してもよい。

    特に適当な他のプロモーターはプラスチド特異的発現をもたらすものである。 なぜならばプラスチドは脂質生合成の前駆物質およびいくつかの最終産物が合成される区画であるからである。 適当なプロモーターは、ウイルスRNAポリメラーゼプロモーター(国際公開第95/16783号パンフレットおよび国際公開第97/06250号パンフレットに記載)および、シロイナズナ由来のclpPプロモーター(国際公開第99/46394号パンフレットに記載)である。

    ベクターDNAは、慣用の形質転換またはトランスフェクション技術により原核細胞または真核細胞に導入することができる。 本明細書で使用する「形質転換」、「トランスフェクション」、コンジュゲーションおよびトランスダクションという用語は、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための複数の先行技術方法を包含することを意図し、例えばリン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈降法、DEAE-デキストラン仲介形質転換法、リポフェクション法、天然コンピテンス、化学的仲介転換法、エレクトロポレーション法またはパーティクルガン法が挙げられる。 宿主細胞(植物細胞も含む)を形質転換するまたはトランスフェクトするための適当な方法は、Sambrook ら. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)および他の実験マニュアル、例えばMethods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, 編: Gartland and Davey, Humana Press, Totowa, New Jerseyなどに記載されている。

    都合良く使用される宿主生物は植物細胞、好ましくは植物または植物の一部分である。 特に好ましい植物は、多量の脂質化合物を含む脂肪種子植物もしくは油料作物などの植物であり、例えば、アブラナ、月見草、麻、アザミ、落花生、キャノーラ、アマニ、ダイズ、ベニバナ、セイヨウカラシナ、ヒマワリ、ボリジなど、またはトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、木綿、キャッサバ、コショウ、マンジュギク、ナス科植物、例えばジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、ソラマメ種、エンドウマメ、アルファルファ、低木(コーヒー、カカオ、茶)、シダレヤナギ種(Salix species)、樹木(油ヤシ、ココナッツ)ならびに多年生牧草および家畜用農作物などの植物である。 本発明において特に好ましい植物は、ダイズ、落花生、アブラナ、キャノーラ、アマニ、麻、月見草、ヒマワリ、ベニバナ、樹木(油ヤシ、ココナッツ)などの油料作物である。

    上述のように、本発明のさらなる主題は、Δ5-エロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードし配列番号197に記載の配列を有する単離された核酸配列であり、ここで該核酸配列によりコードされているエロンガーゼは1個の二重結合を有するC 16 -およびC 18 -脂肪酸を伸長しないものである。 1つのΔ6-二重結合を有する多価不飽和C 18 -脂肪酸もC 22 -脂肪酸も変換されない。 有利に1つのΔ5-二重結合を有する多価不飽和C 20 -脂肪酸のみが酵素活性により伸長される。 本発明のさらなる主題は、上述の通り、Δ6-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼおよびΔ12-デサチュラーゼである。

    有利な実施形態において、本明細書で使用する「核酸(分子)」という用語は、コード遺伝子領域の3'および5'末端に存在する非翻訳領域をも含み、これはコード領域の5'末端よりも少なくとも500、好ましくは200、特に好ましくは100ヌクレオチド上流の配列、およびコード遺伝子領域の3'末端の少なくとも100、好ましくは50、特に好ましくは20ヌクレオチド下流である。 「単離された」核酸分子は、核酸の天然の供給源に存在する他の核酸分子から分離されたものである。 「単離された」核酸は好ましくは、該核酸が由来する生物のゲノムDNA中で該核酸の隣に天然で結合している配列(例えば該核酸の5'および3'末端に配置されている配列)を有しない。 種々の実施形態において、単離されたΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ分子は、核酸が由来する細胞のゲノムDNA中で、天然で核酸分子に結合しているヌクレオチド配列を、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満しか含まない。

    本方法に使用する核酸分子、例えば配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199もしくは配列番号201に記載のヌクレオチド配列を有する核酸分子またはその一部は、分子生物学の標準技術および本明細書に提供する配列情報を用いて単離することができる。 また、DNAもしくはアミノ酸レベルでの相同配列もしくは相同な保存配列領域は、比較アルゴリズムを用いて同定することができる。 これらの配列領域は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用可能であり、標準ハイブリダイゼーション技術(例えばSambrook ら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているもの)と併せて、本方法に有用なさらなる核酸配列を単離するために使用可能である。 さらに、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199もしくは配列番号201の完全配列またはその一部を含む核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応により単離することができ、そのとき用いるオリゴヌクレオチドプライマーはこれらの配列またはその一部に基づく(例えば、完全配列またはその一部分を含む核酸分子は、この配列そのものに基づいて作成されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応により単離することができる)。 例えば、mRNAは(一例としてChirgwin ら (1979) Biochemistry 18:5294-5299のグアニジウムチオシアネート抽出法により)細胞から単離することができ、そしてcDNAはリバーストランスクリプターゼ(例えばGibco/BRL, Bethesda, MD からのMoloney-MLVリバーストランスクリプターゼまたはSeikagaku America, Inc., St. Petersburg, FL からのAMVリバーストランスクリプターゼ)を用いて生成させることができる。 ポリメラーゼ連鎖反応による増幅のための合成オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列のいずれかに基づいて作成してもよく、あるいは配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号112、配列番号114、配列番号118、配列番号120、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号184、配列番号194、配列番号198、配列番号200または配列番号202に記載のアミノ酸配列の補助により作成してもよい。 上述のいずれかの核酸は、適当なオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、cDNAを用いて標準PCR増幅技術により増幅してもよく、あるいはまた、鋳型としてゲノムDNAを用いて増幅してもよい。 このことから増幅された核酸を適当なベクターにクローニングして、DNA配列解析により特徴付けしてもよい。 デサチュラーゼヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドは、標準合成技術により、例えば自動DNA合成機を用いて製造することができる。

    使用される配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列を有するΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼ核酸配列のホモログとは、例えば配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199もしくは配列番号201に記載のヌクレオチド配列のいずれか1つまたはそのホモログ、誘導体もしくはアナログあるいはその一部に対して、少なくとも約50または60%、好ましくは少なくとも約60または70%、より好ましくは少なくとも約70または80%、90%または95%およびさらに好ましくは少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性または相同性を有する対立遺伝子変異体を意味する。 さらに単離された核酸配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199もしくは配列番号201に記載のヌクレオチド配列のいずれか1つまたはその一部と、例えばストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列である。 この文脈において本発明における一部(一部分)とは、少なくとも25塩基対(=bp)、50bp、75bp、100bp、125bpまたは150bp、好ましくは少なくとも175bp、200bp、225bp、250bp、275bpまたは300bp、特に好ましくは350bp、400bp、450bp、500bpまたはそれより多くの塩基対がハイブリダイゼーションに使用されることを意味する。 有利に、配列全体を使用することも可能である。 対立遺伝子変異体は特に、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列から/へとヌクレオチドを欠失、挿入または置換することにより得られる機能的変異体を含み、ここでの意図は1以上の遺伝子への挿入について結果的に得られる合成されたタンパク質の酵素活性が都合良く保持されることである。 Δ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼまたはΔ4-デサチュラーゼの酵素活性を依然として保持するタンパク質、すなわちその活性が本質的に失われていないタンパク質とは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号111、配列番号113、配列番号117、配列番号119、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号183、配列番号193、配列番号197、配列番号199または配列番号201に記載の配列によりコードされるタンパク質と比較して、元の酵素活性の少なくとも10%、好ましくは20%、特に好ましくは30%、特別に好ましくは40%の活性を有するタンパク質を意味する。 相同性は、アミノ酸配列または核酸配列領域全体に渡って計算した。 種々の配列を比較するためには、当業者は種々のアルゴリズムに基づく一連のプログラムを利用することができる。 この意味ではNeedleman and WunschまたはSmith and Watermanのアルゴリズムは特に信頼できる結果を生成する。 配列アライメントを実行するためには、GCGソフトウェアパケット[Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991)]の一部であるGapおよびBestFitプログラム[Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970)およびSmith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981)]またはPileUpプログラム(J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higginsら, CABIOS, 5 1989: 151-153)を用いた。パーセントで示された上述の配列相同値は、配列領域全体について次の設定を用いたGAPプログラムを使用して決定した:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均マッチ:10.000および平均ミスマッチ0.000。特に断らない限り、配列比較には常にこれらの設定を標準設定として用いた。

    上述の核酸配列のホモログとは、例えば細菌、菌類および植物ホモログ、末端切断配列、コードまたは非コードDNA配列の一本鎖DNAまたはRNA、あるいは、プロモーター変異体などの誘導体をも意味する。 記載したヌクレオチド配列の上流のプロモーターは、プロモーターの機能または作用に不利な影響を及ぼすことなく、1以上のヌクレオチドを置換、挿入および/または欠失させることにより改変することができる。 さらに、プロモーターの作用は、その配列を改変することにより、または作用のより強いプロモーター(異種生物由来のものも含む)で完全に置き換えることにより増強することができる。

    上述の核酸およびタンパク質分子であってΔ12-デサチュラーゼ、ω3-デサチュラーゼ、Δ9-エロンガーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、Δ8-デサチュラーゼ、Δ6-エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼ、Δ5-エロンガーゼおよび/またはΔ4-デサチュラーゼ活性を有し、脂質や脂肪酸の代謝、PUFAコファクター、および酵素に関連するか、または膜を横断する親油性化合物の輸送に関わるものは、トランスジェニック植物(例えばトウモロコシ、コムギ、ライムギ、オオムギ、オートムギ、ライコムギ、イネ、オオムギ、ダイズ、落花生、木綿、アマニもしくはアマなどのアマ属種、アブラナ、キャノーラ、セイヨウカラシナおよびナノハナなどのアブラナ属種、コショウ、ヒマワリ、ボリジ、月見草およびマンジュギク、ジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマトなどのナス科植物、ソラマメ種、エンドウマメ、キャッサバ、アルファルファ、低木植物(コーヒー、カカオ、茶)、シダレヤナギ種、樹木(油ヤシ、ココナッツ)ならびに多年生牧草および家畜用農作物)中でのPUFAの産生をモジュレートするために本発明の方法に使用され、ここで該モジュレートは直接的である(例えば脂肪酸生合成タンパク質の過剰発現もしくは最適化が、改変された生物の脂肪酸の収率、生産性および/または生産効率に直接影響する場合)および/または間接的な影響ではあるものの、やはりPUFAの収率、生産性および/または生産効率の増加、あるいは望ましくない化合物の減少を引き起こすもの(例えば脂質や脂肪酸の代謝、コファクター、ならびに酵素を改変することが、収率、生産性および/または生産効率の変化をもたらすか、あるいは細胞内にある所望の化合物の組成物が次に1以上の脂肪酸の産生に影響を及ぼし得る場合)である。

    アブラナ科(Brassicaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、サクラソウ科(Primulaceae)またはアマ科(Linaceae)は、PUFAの産生、好ましくはアラキドン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸の産生に特に適当である。 本発明の核酸配列を用いたPUFAの産生に特に適当なものは、セイヨウカラシナ(Brassica juncea)、アブラナおよびナガミノアマナズナ(Camelina sativa)であり、これは都合良く上述のようにさらなるデサチュラーゼおよびエロンガーゼと組み合わせて行う。

    種々の前駆物質分子および生合成酵素の組み合わせは、異なる脂肪酸分子の産生をもたらし、これは脂質の組成に大きな影響を及ぼす。 なぜならば多価不飽和脂肪酸(=PUFA)はトリアシルグリセロールのみならず膜脂質にも組み込まれるからである。

    アブラナ科(Brassicaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、サクラソウ科(Primulaceae)またはアマ科(Linaceae)は、PUFAの産生、例えばステアリドン酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸の産生に特に適当である。 アマニ(Linum usitatissumum)およびセイヨウカラシナ(Brassica juncea)およびナガミノアマナズナ(Camelina sativa)は、本発明の核酸配列を用いたPUFAの産生に特に適当であり、これは都合良く上述のようにさななるデサチュラーゼおよびエロンガーゼと組み合わせて行う。

    脂質合成は次の2部に分けられる:脂肪酸の合成とsn-グリセロール-3-リン酸へのその結合、および、極性頭部基の付加または修飾。 膜に使用される通常の脂質としてはリン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質、およびホスホグリセリドが挙げられる。 脂肪酸合成は、アセチル-CoAカルボキシラーゼによりアセチル-CoAがマロニル-CoAに変換されることにより、または、アセチルトランスアシラーゼによりアセチル-CoAがアセチル-ACPに変換されることにより開始される。 縮合反応後、これらの2種の産物分子が一緒になってアセトアシル-ACPが形成され、これが一連の縮合、還元および脱水反応により変換されて所望の鎖長の飽和脂肪酸分子が得られる。 これらの分子からの不飽和脂肪酸の生成は特異的デサチュラーゼにより触媒され、触媒は分子酸素により好気的に、または嫌気的に行われる(微生物の脂肪酸合成についてはFC Neidhardt ら (1996) E. coli and Salmonella. ASM Press: Washington、DC、p. 612-636およびそこに引用されている文献; Lengeler ら (編) (1999) Biology of Procaryotes. Thieme: Stuttgart、New York、およびそこに引用されている文献、ならびにMagnuson、K.、ら (1993) Microbiological Reviews 57:522-542およびそこに引用されている文献を参照のこと)。 さらなる伸長ステップを踏むには、結果的に生じるリン脂質結合型脂肪酸をリン脂質から脂肪酸CoAエステルプールに戻さなくてはならない。 これはアシル-CoA:リゾホスホリピドアシルトランスフェラーゼにより実現される。 さらに、これらの酵素は伸長された脂肪酸をCoAエステルからリン脂質へと再び転移させることができる。 適当ならば、この一連の反応を繰り返し行ってもよい。

    PUFA生合成の前駆物質の例は、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。 エイコサおよびドコサ鎖型の脂肪酸を得るには、これらのC 18 -炭素脂肪酸はC 20およびC 22へと伸長されなければならない。 本方法に使用するデサチュラーゼ、例えばΔ12-、ω3-、Δ4-、Δ5-、Δ6-およびΔ8-デサチュラーゼならびに/またはΔ5-、Δ6-、Δ9-エロンガーゼを利用して、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸、有利にはエイコサペンタエン酸および/またはドコサヘキサエン酸を産生し、その後それらを食品、飼料、化粧品または医薬の分野の用途での種々の目的に使用することが可能である。 上述の酵素を用いて、脂肪酸分子中に少なくとも2、有利には少なくとも3、4、5または6個の二重結合を有するC 20 -および/またはC 22 -脂肪酸、好ましくは脂肪酸分子中に有利に4、5または6個の二重結合を有するC 20 -またはC 22 -脂肪酸を製造することができる。 不飽和化は、対象の脂肪酸が伸長される前または後に行われてもよい。 このことに起因して、デサチュラーゼ活性の産物から、ならびにさらなる可能な不飽和化および伸長からより不飽和度の高い好ましいPUFAがもたらされるが、このときのさらなる伸長の例としてはC 20 -脂肪酸のC 22 -脂肪酸へのさらなる伸長、および例えばγ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸またはエイコサペンタエン酸などの脂肪酸へのさらなる伸長が挙げられる。 本発明の方法に使用するデサチュラーゼおよびエロンガーゼの基質は、C 16 -、C 18 -またはC 20 -脂肪酸、例えば、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、エイコサテトラエン酸またはステアリドン酸などである。 好ましい基質は、リノール酸、γ-リノレン酸および/もしくはα-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸もしくはアラキドン酸、エイコサテトラエン酸またはエイコサペンタエン酸である。 脂肪酸中に少なくとも2、3、4、5または6個、有利に少なくとも4、5、または6個の二重結合を有する合成C 20 -〜C 22 -脂肪酸は、本発明の方法では遊離脂肪酸の形態またはそのエステルの形態、例えばそのトリグリセリドの形態として得られる。

    「グリセリド」という用語は、1、2または3個のカルボキシル基でエステル化されたグリセロール(モノ-、ジ-、またはトリグリセリド)を意味する。 「グリセリド」はまた、種々のグリセリドの混合物を意味する。 グリセリドまたはグリセリド混合物は、さらなる添加物、例えば遊離脂肪酸、抗酸化剤、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび/または他の物質を含んでもよい。

    本発明の方法における「グリセリド」は、グリセロールから誘導される誘導体をも意味する。 上述の脂肪酸グリセリドの他に、グリセロリン脂質およびグリセロ糖脂質もまたこれらに含まれる。 ここで挙げられる好ましい例は、レシチン(ホスファチジルコリン)などのグリセロリン脂質、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリンおよびアルキルアシルグリセロリン脂質などである。

    さらに脂肪酸はその後、修飾のための種々の場所へと輸送され、トリアシルグリセロール貯蔵脂質に組み込まれなければならない。 脂質合成に重要なさらなるステップは、極性頭部基へと脂肪酸を転移(例えばグリセロール-脂肪酸アシルトランスフェラーゼにより)させるステップである(Frentzen、1998、Lipid、100(4-5):161-166を参照のこと)。

    刊行物として植物脂肪酸生合成、不飽和化、脂質代謝ならびに脂肪化合物の膜通過輸送、ベータ酸化、脂肪酸修飾およびコファクター、トリアシルグリセロール貯蔵およびアセンブリに関するものについては、次の論文およびそこに引用されている文献を参照されたい:Kinney, 1997, Genetic Engineering, 編, JK Setlow, 19:149-166;Ohlrogge and Browse, 1995, Plant Cell 7:957-970; Shanklin and Cahoon, 1998, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol. Biol. 49:611-641;Voelker, 1996, Genetic Engineering, 編: JK Setlow, 18:111-13; Gerhardt, 1992, Prog. Lipid R. 31:397-417; Guhnemann-Schafer & Kindl, 1995, Biochim. Biophys Acta 1256:181-186; Kunau ら, 1995, Prog. Lipid Res. 34:267-342; Stymme ら, 1993, in: Biochemistry and Molecular Biology of Membrane and Storage Lipids of Plants,編: Murata and Somerville, Rockville, American Society of Plant Physiologists, 150-158, Murphy & Ross 1998, Plant Journal. 13(1):1-16。

    本方法で製造されるPUFAに含まれる一群の分子は、高等動物がもはや合成できずそのため摂取しなければならないものであるか、または高等動物がもはや自身では十分な量を合成できずそのためさらに摂取しなければならないものであるが、しかしながら細菌などの他の生物はそれらの一群の分子を容易に合成できる;例えばネコはもはやアラキドン酸を合成することができない。

    本発明の目的においてリン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよび/またはホスファチジルイノシトールを意味し、都合良くはホスファチジルコリンを意味する。

    「生産」または「生産性」という用語は当技術分野で知られており、一定期間および一定の発酵容量中で形成される発酵産物(式Iの化合物)の濃度を意味する(例えば産物kg/時間/リットル)。 これらの用語はまた、植物細胞または植物中での生産性、すなわち細胞または植物中の総脂肪酸含量に基づく、本方法で生産される所望の脂肪酸の含量をも包含する。 生産効率という用語は、特定量の産物を得るのに必要な時間を包含する(例えば精製化学物質の特定のスループット速度を達成するのに細胞が要する時間)。 「収率」または「産物/炭素収率」という用語は当技術分野で知られており、炭素源を産物(すなわち精製化学物質)へと変換する効率を包含する。 この用語は通常、例えば産物kg/炭素源kgで表される。 化合物の収率または生産性を向上させることにより、得られる分子の量または特定量の培地中のこの化合物の適当に得られる分子の量は、一定期間増加する。

    「生合成」または「生合成経路」という用語は当技術分野で知られており、中間物質から出発して細胞による化合物(好ましくは有機化合物)の合成を包含し、これは例えば高度に調節された多段階プロセスで行われる。 「異化」または「異化経路」という用語は当技術分野で知られており、細胞による化合物(好ましくは有機化合物)の切断の結果、異化生成物(より一般的な用語ではより小さいまたはさほど複雑ではない分子)を生じることを包含し、これは例えば高度に調節された多段階プロセスで行われる。

    「代謝」という用語は当技術分野で知られており、生物中で行われる全ての生化学的反応を包含する。 従って、特定の化合物の代謝(例えば脂肪酸の代謝)は、細胞中のその化合物のあらゆる生合成、修飾および異化経路を含む。

    本発明を、以下の実施例でさらに詳述するが、これらは限定的であると解釈されてはならない。 本特許明細書に引用した全ての文献、特許出願、特許、および公開特許出願の全内容を、参照により本明細書に組み入れる。

    実施例1:一般的なクローニング法:
    クローニング法、例えば、制限切断、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、核酸のニトロセルロース膜及びナイロン膜への転移、DNA断片の連結、大腸菌細胞の形質転換、細菌の培養及び組換えDNAの配列分析等は、Sambrook(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press: ISBN 0-87969-309-6)らに記載されるように実施した。

    実施例2:組換えDNAの配列分析:
    組換えDNA分子は、サンガーの方法(Sangerら(1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74, 5463-5467)により、ABIレーザー蛍光DNAシーケンサーを用いて配列決定した。 発現されるべき構築物中のポリメラーゼのエラーを回避すべく、ポリメラーゼ連鎖反応から生じた断片を配列決定し、確認した。

    実施例3:ニジマス(Oncorhynchus mykiss)由来の遺伝子のクローニング:
    本出願中に詳述されるエロンガーゼ遺伝子に対応するタンパク質配列中の保存領域の検索結果として、適当なモチーフを有する2種類の配列がGenbank配列データベース中で同定された。

    ニジマス由来の総RNAをQiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasy Kitを用いて単離した。 ポリ-A+RNA(mRNA)をオリゴ-dTセルロース(Sambrookら, 1989)を用いて総RNAから単離した。 このRNAをPromegaの逆転写システムキットを用いて逆転写に供し、合成したcDNAをλZAPベクター(lambda ZAP Gold, Stratagene)中にクローニングした。 cDNAを製品説明書に従って脱パッケージ化し(depackaged)、プラスミドDNAを生じさせた。 次いで、発現プラスミドをクローニングするために、このcDNAプラスミドライブラリーをPCRに用いた。

    実施例4:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング:
    酵母中での異種発現用の2種類の配列をクローニングするために、以下のオリゴヌクレオチドをPCR反応に用いた:

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素HindIII及びBamHIを用いて37℃で2時間インキュベートした。 酵母発現ベクターpYES3(Invitrogen)を同じようにインキュベートした。 その後、812bp PCR産物、905bp PCR産物及びベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクター及びエロンガーゼcDNAを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpYES3-OmELO2及びpYES3-OmELO3を配列決定によって確認し、エレクトロポレーション(1500V)を用いてサッカロミセス(Saccharomyces)株INVSc1(Invitrogen)に形質転換した。 対照として、平行してpYES3を形質転換した。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にトリプトファンを欠く最小培地に塗布した。 したがって、トリプトファンを欠く培地中で増殖可能な細胞は、対応するプラスミドpYES3、pYES3-OmELO2(配列番号51)及びpYES3-OmELO3(配列番号53)を含む。 選別後、いずれの場合も2種類の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例5:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング:
    植物を形質転換するために、pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを作製した。 このため、Notl切断部位を以下のプライマー対を用いてコード配列の5'及び3'末端に導入した:
    PSUN-OmELO2
    正方向: 5'-GCGGCCGCATAATGGCTTCAACATGGCAA (配列番号175)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCTTATGTCTTCTTGCTCTTCCTGTT (配列番号176)
    PSUN-OmELO3
    正方向: 5'-GCGGCCGCataatggagacttttaat (配列番号177)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCtcagtcccccctcactttcc (配列番号178)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIを用いて37℃で16時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同じようにインキュベートした。 その後、PCR産物及び7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-OmELO2及びpSUN-OmELO3を配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz P., Svab, Z, Maliga P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol. Biol. 25:989-994)。 pSUN-USPはEcoRI断片としてUSPプロモーターをpSUN300に挿入することによって、pSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンス(A. tumefaciens)Tiプラスミド由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター、Genbank登録V00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.及びSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1−684(Genbank登録X56240)に対応し、これはこのプロモーター中に存在するUSP遺伝子の非コード領域の一部分である。 684塩基対のサイズのプロモーター断片を、標準的な方法、市販のT7標準プライマー(Stratagene)及び合成プライマー(プライマー配列:5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTTGGCTATGAA-3'、配列番号174)を用いたPCR反応を介して増幅した。 PCR断片をEcoRI/SaIIを用いて再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ、タバコ及びリンシードを形質転換するために用いた。

    実施例6:酵母及び種子由来の脂質抽出物:
    遺伝子改変の、植物、真菌、藻類、繊毛虫における効果又は所望の化合物(脂肪酸等)の産生に対する効果は、改変した微生物又は改変した植物を適当な条件下(上述されるもの等)で増殖すること、及び所望の産物の(すなわち脂質又は脂肪酸の)産生の向上について培地及び/又は細胞成分を分析することによって判定することができる。 これらの分析技術は当業者に公知であり、分光法、薄層クロマトグラフィー。 様々なタイプの染色法、酵素法及び微生物法、並びに高速液体クロマトグラフィー(例えばUllman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A2, p. 89-90及びp. 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A.ら, (1987) 「Applications of HPLC in Biochemistry」: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 17; Rehmら (1993) Biotechnology, Vol. 3, III章: 「Product recovery and purification」, p. 469-714, VCH: Weinheim; Belter, PA,ら(1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley及びSons; Kennedy, JF及びCabral, JMS (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley及びSons; Shaeiwitz, JA及びHenry, JD (1988) Biochemical Separations: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. B3;11章, p.1-27, VCH: Weinheim;並びにDechow, FJ (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publications)等の分析的クロマトグラフィーを含む。

    上述した方法に加えて、植物脂質はCahoonら(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940及びBrowseら(1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載されるように植物材料(plant material)から抽出される。 脂質又は脂肪酸の質的及び量的分析は、Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2); Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids. A Practical Guide-Ayr, Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 pp. (Oily Press Lipid Library; 1); Progress in Lipid Research, Oxford: Pergamon Press, 1 (1952)-16 (1977) under the title: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載される。

    醗酵の最終産物を測定することに加えて、所望の化合物の産生に使用される代謝経路の他の成分(中間体及び副産物)を、この化合物の全体的な産生効率を測定するために分析することも可能である。 分析方法は、培地中の栄養素(例えば、糖、炭化水素、窒素源、リン酸塩及び他のイオン)の量を測定すること、バイオマス組成及びその増殖を測定すること、生合成経路の通常の代謝物質の産生を分析すること、並びに醗酵中に生じる気体を測定することを含む。 これらの測定のための標準的な方法はApplied Microbial Physiology; A Practical Approach, PM Rhodes and PF Stanbury, Ed., IRL Press, p. 103-129; 131-163及び165-192(ISBN: 0199635773)、並びにその中で引用される引用文献に記載される。

    脂肪酸の分析がその一例である(略語:FAME、脂肪酸メチルエステル;GC-MS、ガス液体クロマトグラフィー/質量分析;TAG、トリアシルグリセロール;TLC、薄層クロマトグラフィー)。

    脂肪酸産物の存在についての明確な検出は、Christie(1997: Advances on Lipid Methodology, 第4版: Christie, Oily Press, Dundee, 119-169; 1998, Gaschromatographie-Massenspektrometrie-Verfahren [Gas chromatography/mass spectrometric methods], Lipide 33:343-353)及びその中の引用文献に何度か記載されるように、標準的な分析方法(GC、GC-MS又はTLC)を用いて組換え生物を分析することによって取得することができる。

    分析されるべき物質は超音波処理、ガラス研磨機中でのグラインディング、液体窒素及びグラインディングによって、又は他の適用可能な方法を介して粉砕することができる。 粉砕後、物質を遠心分離する必要がある。 沈殿物は蒸留水中で再懸濁され、100℃で10分間加熱され、氷上で冷却され、そして再び遠心分離された後、2%ジメトキシプロパンを含むメタノール中の0.5M 硫酸中、90℃で1時間抽出される。 これによりメチル基転移された脂質を生じる加水分解した油化合物及び脂質化合物が生じる。 これらの脂肪酸メチルエステルは石油エーテル中で抽出され、最終的にキャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25m, 0.32mm)を170℃から240℃の温度勾配で20分間、そして240℃で5分間使用するGC分析に供される。 生じた脂肪酸メチルエステルの同一性は商業的供給源(すなわちSigma)から購入可能な標準を用いて規定する必要がある。

    より抽出し易くするために、植物物質は最初に乳棒とすり鉢で粉砕することによって機械的にホモジナイズされる。

    その後、100℃で10分間加熱され、氷上での冷却後、再び沈殿処理される。 細胞沈殿物は1M メタノール硫酸及び2%ジメトキシプロパンを用いて90℃で1時間加水分解され、脂質がメチル基転移される。 生じた脂肪酸メチルエステル(FAME)は石油エーテル中で抽出される。 抽出したFAMEは、キャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25m, 0.32 mm)を170℃から240℃の温度勾配で20分、そして240℃で5分間用いたガス液体クロマトグラフィーによって分析される。 脂肪酸メチルエステルの同一性は、対応するFAME標準(Sigma)との比較によって確認される。 二重結合の同一性及び位置は、(例えば、GC-MSを用いて4,4-ジメトキシオキサゾリン誘導体(Christie, 1998)を生じる)FAME混合物の適切な化学誘導体化によってさらに分析することができる。

    実施例4で記載されるプラスミドpYES3、pYES3-OmELO2及びpYES3-OmELO3で形質転換されている酵母を以下のように分析した:
    本培養物から遠心分離(100×g、10分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄し、残存の培地及び脂肪酸を除去した。 脂肪酸メチルエステル(FAME)を酵母細胞沈殿物を用いて酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEは石油エーテル(PE)で2回抽出することによって抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)と2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥させ、アルゴン下で気化し、100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で毎分5℃ずつ増加させ、最後に10分間250℃(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。

    方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany, 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 393): 15-218に記載されている。

    実施例7:OmELO2及びOmELO3の機能の特徴付け
    異なる基質を用いて、OmELO2は伸長活性は示さないが、OmELO3については顕著な活性が検出された。 OmELo3の基質特異性は発現及び様々な脂肪酸の給餌後に測定した(図2)。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母において大量に検出することができる。 全てのトランスジェニック酵母は、新たな脂肪酸がOmElo3反応の産物に合成されていることを示す。 これは遺伝子OmElo3が機能的に発現されたことを意味する。

    図2は、OmElo3がω-二重結合を有するΔ5-及びΔ6-脂肪酸の伸長を高い特異性で導く基質特異性を有することを立証する。 さらにω6-脂肪酸(C18及びC20)も、より低い特異性で伸長された。 OmElo3に対する最高の基質はステアリドン酸(C18:4ω3)及びエイコサペンタエン酸(C20:5ω3)であった(最大で66%伸長)。

    実施例8:酵母におけるDHA合成の再構成
    DHA(22:6ω3)の生合成の再構成は、ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)Δ4-デサチュラーゼ又はフェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)Δ5-デサチュラーゼ及びユーグレナ・グラシリスΔ4-デサチュラーゼと共にOmElo3を共発現させることによって、EPA(20:5ω3)又はステアリドン酸(18:4ω3)を起点に実施した。 このために、発現ベクターpYes2-EgD4及びpESCLeu-PtD5をさらに構成した。 次いで、pYes3-OmElo3(配列番号55)で既に形質転換されている上述の酵母株を、pYes2-EgD4でさらに、又はpYes2-EgD4及びpESCLeu-PtD5で同時に、形質転換した。 形質転換した酵母は、pYes3-pYes3-OmElO/pYes2-EgD4株の場合は2%グルコースで補充した完全にトリプトファン及びウラシルを欠く最小培地寒天プレートで、pYes3-OmElO/pYes2-EgD4+pESCLeu-PtD5株の場合は完全にトリプトファン、ウラシル及びロイシンを欠く最小培地で選別した。 次いで、発現を2%(v/v)ガラクトースを添加することによって誘導した。 その後、培養物をさらに120分間15℃でインキュベートした。

    図3は、20:5ω3が給餌されたトランスジェニック酵母の脂肪酸プロファイルを示す。 ベクターpYes3-OmElo3及びブランクベクターpYes2で形質転換されている対照酵母では(A)、20:5ω3は高い効率で伸長されて22:5ω3を生じた(65%伸長)。 EEgΔ4-デサチュラーゼの更なる導入は、22:5ω3の22:6ω3 DHAへの転換をもたらした。 トランスジェニック酵母の脂肪酸組成は図5に示される。 OmElo3及びEgD4の共発現後、最大3%のDHAが酵母で検出された。

    更なる共発現実験において、OmElo3、EgD4及びP.トリコルヌーツム由来のΔ5-デサチュラーゼ(PtD5)を一緒に発現させた。 トランスジェニック酵母にステアリドン酸(18:4ω3)を給餌し、分析した(図4)。 これらの酵母の脂肪酸組成は図5に示される。 OmElo3は給餌した脂肪酸18:4ω3を伸長して20:4ω3を生じた(60%伸長)。 後者はPtD5によって不飽和化されて20:5ω3を生じた。 PtD5活性は15%に達した。 さらに、20:5ω3はEmElo3によって伸長されて22:5ω3を生じた。 その後、新たに合成された22:5ω3が不飽和化されて22:6ω3(DHA)を生じた。 最大0.7%のDHAがこれらの実験で取得された。

    これらの実験は、本発明で使用される配列OmElo3、EgD4及びPtD5が、真核細胞中でのDHAの産生に適切であることを立証する。

    実施例9:トランスジェニック植物の作製
    a)トランスジェニック菜種植物の作製(Moloneyら1992, Plant Cell Reports, 8:238-242の改変法)
    アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58C1:pGV2260又はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)におけるバイナリーベクター(Deblaereら, 1984, Nucl. Acids. Res. 13, 4777-4788)をトランスジェニック菜種植物の作製のために使用することができる。 菜種植物を形質転換するために(Var. Drakkar, NPZ Nordeutsche Pflanzenzucht, Hohenlieth, Germany)、3%スクロースで補充したMurashige-Skoog培地(Murashige及びSkoog 1962 Physiol. Plant. 15, 473)(3MS培地)中で形質転換した陽性アグロバクテリアコロニーの一晩培養物(1:50希釈)を用いる。 新たに発芽した滅菌の菜種植物の葉柄又ははい軸(いずれの場合も約1cm 2 )を、1:50アグロバクテリア希釈で、5〜10分間ペトリ皿中でインキュベートする。 その後、0.8% Bacto寒天で補充した3MS培地上で、25℃で3日間共インキュベートする。 次いでこの培養物を16時間明所/8時間暗所で3日間増殖させる。 その後、500mg/l Claforan(セフォタキシム・ナトリウム)、50mg/l カナマイシン、20μM ベンジルアミノプリン(BAP)で補充したMS培地上で、1.6g/lのグルコースを補充して週周期で培養を継続する。 増殖する苗条を2%スクロース、250mg/l Claforan及び0.8% Bacto寒天で補充したMS培地に移す。 3週間後に根の発達が見られない場合には、根の成長ホルモンとして2-インドール酪酸を培地に添加する。

    再生した苗条は、カナマイシンとClaforanで補充した2MS培地上で取得した。 すなわち、発根後、これらを堆肥に移し、制御環境の保管庫又は温室中で2週間の増殖後に開花させ、成熟種子を回収して、エロンガーゼ発現(Δ5-エロンガーゼ又はΔ6-エロンガーゼ活性等)に関する脂質分析によって分析した。 このようにして、多価不飽和C 20 -およびC 22 -脂肪酸の含量が増加した系統を同定できる。

    b)トランスジェニックリンシード植物の作製 トランスジェニックリンシード植物は、例えばBellら1999, In Vitro Cell. Dev. Biol.-Plant. 35(6):456-465の方法により粒子衝突を用いて作製することができる。 大抵は、アグロバクテリア仲介型形質転換をリンシードの形質転換に用いた(例えばMlynarovaら(1994), Plant Cell Report 13: 282-285の方法による)。

    実施例10:スラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)ATCC34304及びスラウストキトリウムssp.由来のΔ5-エロンガーゼ遺伝子のクローニング
    本出願中で発見された様々なエロンガーゼタンパク質配列の比較は、保存された核酸領域(ヒスチジンボックス: His-Val-X-His-His、チロシンボックス: Met-Tyr-X-Tyr-Tyr)の規定を可能にした。 T.アウレウムATCC34304及びスラウストキトリウムssp.のESTデータベースを、これらの配列を用いて別のΔ5-エロンガーゼについてスクリーニングした。 以下の新規配列が発見された:

    T.アウレウムATCC34304及びスラウストキトリウムssp.由来の総RNAをQiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasy Kitを用いて単離した。 mRNAはpolyATract単離システム(Promega)を用いて総RNAから単離した。 mRNAをMarathon cDNA Amplification Kit (BD Biosciences)を用いて逆転写に供し、アダプターを製品説明書に従って連結した。 次いで5'-及び3'-RACE(cDNA末端の迅速増幅)による発現プラスミドのクローニングのために、cDNAライブラリーをPCRに利用した。

    実施例11:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング
    酵母中での異種発現用の配列をクローニングするために、以下のオリゴヌクレオチドをPCR反応に用いた:

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物BioTaurELO1(配列番号65参照)及びTL16y2(配列番号83参照)を酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(invitrogen)と共に製品説明書に従って21℃で30分間インキュベートした。 PCR産物をT突出部及びトポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性によりベクター中に連結した。 インキュベーション後、E.coli DH5α細胞を形質転換した。 適当なクローンをPCRによって同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasy Kitにより単離し、配列決定によって確認した。 次いで、正確な配列をサッカロミセス株INVSc1(Invitrogen)にエレクトロポレーション(1500V)によって形質転換した。 対照として、平行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地に塗布した。 したがって、ウラシルを欠く培地中で増殖可能な細胞は対応するプラスミドpYES2.1、pYES2.1-BioTaurELO1及びpYES2.1-TL16y2を含む。 選別後、いずれの場合も2種類の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例12:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製した。 このために、NotI切断部位を以下のプライマー対を用いてコード配列の5'及び3'末端に導入した:
    PSUN-BioTaurELO1
    正方向: 5'-GCGGCCGCATAATGACGAGCAACATGAGC (配列番号166)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCTTAGGCCGACTTGGCCTTGGG (配列番号167)
    PSUN-TL16y2
    正方向: 5'-GCGGCCGCACCATGGACGTCGTCGAGCAGCAATG (配列番号168)
    逆方向: 5'-GCGGCCGCTTAGATGGTCTTCTGCTTCTTGGGCGCC (配列番号169)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同じようにインキュベートした。 その後、PCR産物及び7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-BioTaurELO1及びpSUN-TL16y2を配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz,P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。 pSUN-USPはUSPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300に挿入することによってpSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocs-Terminator, Genbank登録V00088)(De Greve,H., Dhaese,P., Seurinck,J., Lemmers,M., Van Montagu,M.及びSchell,J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1〜684に対応し(Genbank登録X56240)、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズであるプロモーター断片は、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA−3'、配列番号 165)を用いたPCR反応並びに標準的な方法によって増幅した。 PCR断片はEcoRI/SaIIで再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物はアラビドプシス・タリアナ、菜種、タバコ及びリンシードの形質転換に使用した。

    脂質は実施例6に記載されるように酵母及び種子から抽出した。

    実施例13:BioTaurELO1及びTL16y2の機能の特徴付け
    BioTaurELO1の基質特異性を、発現及び様々な脂肪酸の給餌後に測定した(図6)。 図6は、ベクターpYes2.1(対照)又はΔ5-エロンガーゼを有するベクターpYes2.1-BioTaurELO1 (=Biotaur)のいずれかを含む酵母株を用いた機能性及び基質特異性を決定するための給餌実験を示す。 両アプローチにおいて、200μmのγ-リノレン酸及びエイコサペンタエン酸を酵母インキュベーション培地に添加し、24時間インキュベートした。 脂肪酸を酵母から抽出した後、これらをメチル基転移し、ガスクロマトグラフィーによって分離した。 給餌された2種の脂肪酸を起源とする伸長産物は矢印によって特定される。

    給餌された基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 全てのトランスジェニック酵母は、新たな脂肪酸(BioTaurELO1反応の産物)が合成されていることを示す。 これは遺伝子BioTaurELO1が機能的に発現されていることを意味する。

    図6は、BioTaurELO1が、高い特異性でω3-二重結合を有するΔ5-及びΔ6-脂肪酸の伸長に導く基質特異性を有することを示す。 さらに、ω6-脂肪酸(C18及びC20)も伸長された。 γ-リノレン酸(C18:3ω6)は65.28%の変換率で、ステアリドン酸(C18:4ω3)は65.66%の変換率で、そしてエイコサペンタエン酸(C20:5ω3)は22.01%の変換率で変換される。 様々な給餌実験の基質特異性は表6に示される(明細書の最後を参照)。

    GLA及びEPAを給餌した際、GLAの変換率は65.28%であった。 これに対してGLA及びEPAを給餌した際、EPAの変換率は9.99%であった。 EPAのみが給餌された際、EPAの変換率は22.01%であった。 アラキドン酸(=ARA)も給餌の際に変換された。 その変換率は14.47%であった。 ステアリドン酸(=SDA)も変換された。 この場合、変換率は65.66%であった。

    TL16y2の機能性及び基質特異性は発現及び様々な脂肪酸の給餌後に測定した。 表7は給餌実験を示す。 給餌実験はBioTaurELO1について記載されるものと同様に実施した。 給餌されている基質は全てのトランスジェニック酵母で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(TL16y2反応の産物)の合成を立証した(図11)。 これは遺伝子TL16y2が機能的に発現されていることを意味する。

    表7に示されるTL16y2による結果は、以下の変換率(対照の%)を示す:a)EPA(250μm)の変換率(%):8%、b)EPA(50μm)の変換率(%):41%、c)ARAの変換率(%):20.3%、d)SDAの変換率(%):79.4%、及びe)GLAの変換率(%):74.9%。

    したがって、TL16y2はΔ5-、Δ6-、及びΔ8-エロンガーゼ活性を示す。 この活性はΔ6-二重結合を有するC18-脂肪酸で最高である。 その後、Δ5-又はΔ8-二重結合を有するC20-脂肪酸が、給餌される脂肪酸の濃度に応じて伸長される。

    実施例14:オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)由来の遺伝子のクローニング
    本出願で示されるΔ5-エロンガーゼ活性又はΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いたタンパク質配列中の保存領域の検索は、オストレオコッカス・タウリ配列データベース(ゲノム配列)中で適当なモチーフを有する配列の同定を可能にした。

    この配列は以下のものであった:

    OtElo1はダニオ・レリオ(Danio rerio)由来のエロンガーゼと最大の類似性(GenBank AAN77156;約26%の同一性)を示し、OtElo2はフィスコミトレラ(Physcomitrella)のElo(PSE)と最大の類似性(約36%の同一性)を示す(アライメントはtBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410)を用いて実施した)。

    クローニング手順は以下の通りであった。

    定常期のオストレオコッカス・タウリの培養物40mlを遠沈し、100μlの2回蒸留水中で再懸濁し、-20℃で保存した。 各ゲノムDNAをPCR方法に基づいて増幅した。 適切なプライマー対は、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳(high efficient translation)のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を有するように選択した。 OtElo DNAの増幅は、いずれの場合も総量50μl中、1μlの解凍細胞、200μmのdNTP、2.5U Taqポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実行した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分間、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分間の最終伸長ステップ。

    実施例15:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング
    オストレオコッカス・タウリのエロンガーゼの機能を特徴付けるために、問題のDNAのオープン・リーディング・フレームをpYES2.1/V5-His-TOPO (Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングし、pOTE1及びpOTE2を生じさせた。

    サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)株334をエレクトロポレーション(1500V)によって、ベクターpOTE1又はpOTE2で形質転換した。 ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として用いた。 形質転換した酵母を2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地(CMdum)寒天プレート上で選別した。 選別後、いずれの場合も3種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    Otエロンガーゼを発現させるために、いずれの場合も2%(w/v)ラフィノースで補充したウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地の前培養物を、選別した形質転換体で接種し、30℃で2日間インキュベートした(200rpm)。

    次いで、2%ラフィノースで補充した5mlのCMdum液体培地(ウラシル無含)及び300μmの様々な脂肪酸を前培養物で0.05のOD 600まで接種した。 発現は2%(w/v)ガラクトースの添加によって誘導した。 この培養物をさらに20℃で96時間インキュベートした。

    実施例16:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製した。 このために、PCRを用いてNotI切断部位をコード配列の5'及び3'末端に導入した。 対応するプライマー配列はOtElo1及びOtElo2の5'及び3'領域から誘導される。

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートした。 その後、PCR産物及びベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-OtELO1及びpSUN-OtELO2を配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz P., Svab, Z, Maliga P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol. Biol. 25:989-994)。 pSUN-USPはEcoRI断片の形態でUSPプロモーターをpSUN300に挿入することによって、pSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオストレオコッカス遺伝子のものである(ocsターミネーター、Genbank登録V00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.及びSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1−684(Genbank登録X56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズのプロモーター断片を、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)(プライマー配列:5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'、配列番号164)を用いたPCR反応及び標準的な方法によって増幅した。

    PCR断片をEcoRI/SaIIを用いて再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ、タバコ及びリンシードを形質転換するために用いた。

    実施例17:酵母中でのOtELO1及びOtElO2の発現
    実施例15に記載されるようにプラスミドpYES3、pYES3-OtELO1及びpYES3-OtELO2で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から酵母細胞を遠心分離(100xg、5分、20℃)によって回収し、100mM NaHCO 3 (pH8.0)で洗浄して残存の培地及び脂肪酸を取り除いた。 酵母細胞沈殿物から、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)のジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEを石油エーテル(PE)で2回抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100 mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン化で気化し、そして100μlのPEに取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例18:OtELO1及びOtELO2の機能の特徴付け:
    OtELo1の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に決定することができた(表8)。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(OtElo1反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子OtElo1が機能的に発現されていることを意味する。

    OtElo1が限られた基質特異性を有することが表7から理解できる。 OtElo1はC20-脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(図7)及びアラキドン酸(図8)の伸長のみが可能であったが、ω3-不飽和エイコサペンタエン酸を優先する。

    表8は、様々な脂肪酸と比較した、Δ5-位置に二重結合を有するC20-多価不飽和脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo1の基質特異性を示す。

    ベクターpOTE1で形質転換されている酵母を、最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。 各値は平均(n=3)±標準偏差を表す。

    OtELo2(配列番号81)の基質特異性は、発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができた。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができた。 トランスジェニック酵母は、新規脂肪酸(OtElo2反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子OtElo2が機能的に発現されていることを意味する。

    表9は、様々な脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo2の基質特異性を示す。

    ベクターpOTE2で形質転換されている酵母を最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。 各値は平均(n=3)±標準偏差を表す。

    表9に示される酵素活性はOTELO2がΔ6-エロンガーゼであることを明らかに立証する。

    実施例19:タラシオシラ・シュードナナ(Thalassiosira pseudonana)由来の遺伝子のクローニング
    本出願に示されるΔ5-エロンガーゼ活性又はΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いたタンパク質配列中の保存領域の検索は、タラシオシラ・シュードナナの配列データベース(ゲノム配列)中で適当なモチーフを有する2種の配列の同定を可能にした。 この配列は以下であった:

    T.シュードナナの2リットル培養物はf/2培地(Guillard, RRL 1975. Culture of phytoplankton for feeding marine invertebrates. In Culture of Marine Invertebrate Animals (編集. Smith, WL及びChanley, MH), Plenum Press, New York, pp 29-60)中で14d(=日)間、80E/cm 2の光強度で増殖させた。 細胞を遠沈した後、RNAをQuiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasy Kitを製品説明書に従って用いて単離した。 mRNAをMarathon cDNA Amplification Kit(BD Biosciences)を用いて逆転写に供し、アダプターを製品説明書に従って連結した。 次いで、5'-及び3'-RACE(cDNA末端の迅速増幅)による発現プラスミドのクローニングのために、cDNAライブラリーをPCRに利用した。

    実施例20:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング
    適切なプライマー対は、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を有するように選択した。 TpElo DNAの増幅は、いずれの場合も総量50μl中、1μlのcDNA、200μmのdNTP、2.5UのAdvantageポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実施した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    酵母中での異種発現用の配列をクローニングするために、以下のオリゴヌクレオチドをPCR反応のために使用した:

    PCR産物を酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に製品説明書に従って21℃で30分間インキュベートした。 PCR産物をT突出部及びトポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性によってベクター中に連結した。 インキュベーション後、E.coli DH5α細胞を形質転換した。 適当なクローンをPCRによって同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasy Kitによって単離し、配列決定によって確認した。 次いで、正確な配列をサッカロミセス株INVSc1(Invitrogen)にエレクトロポレーション(1500V)によって形質転換した。 対照として、平行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地に塗布した。 したがって、ウラシルを欠く培地中で増殖可能であった細胞は対応するプラスミドpYES2.1、pYES2.1-TpELO1、pYES2.1-TpELO2及びpYES2.1-TpELO3を含む。 選別後、いずれの場合も2種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例21:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製する。 このために、以下のプライマー対を用いてNotI切断部位をコード配列の5'及び3'末端に導入する:
    PSUN-TPELO1
    正方向: 5'-GCGGCCGCACCATGTGCTCACCACCGCCGTC (配列番号152)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCCTACATGGCACCAGTAAC (配列番号153)
    PSUN-TPELO2
    正方向: 5'-GCGGCCGCACCATGTGCTCATCACCGCCGTC (配列番号154)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCCTACATGGCACCAGTAAC (配列番号155)
    PSUN-TPELO3
    正方向: 5'-GCGGCCGCaccatggacgcctacaacgctgc (配列番号156)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCCTAAGCACTCTTCTTCTTT (配列番号157)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μl 2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートする。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートする。 その後、PCR産物及び7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出する。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製する。 その後、ベクターとPCR産物とを連結する。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを使用する。 生じるプラスミドpSUN-TPELO1、pSUN-TPELO2及びpSUN-TPELO3を配列決定によって確認する。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz P., Svab, Z, Maliga P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol. Biol. 25:989-994)。 pSUN-USPはEcoRI断片の形態でUSPプロモーターをpSUN300に挿入することによって、pSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocsターミネーター、Genbank登録V00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.及びSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1−684(Genbank登録X56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズのプロモーター断片を、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)を用いるPCR反応及び標準的な方法によって増幅した(プライマー配列: 5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3';配列番号151)。

    PCR断片をEcoRI/SaIIを用いて再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物は、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ、タバコ及びリンシードを形質転換するために用いた。

    脂質は実施例6に記載されるように酵母及び種子から抽出した。

    実施例22:酵母中でのTpELO1、TpELO2及びTpELO3の発現
    実施例4のようにプラスミドpYES2、pYES2-TpELO1、pYES2-TpELO2及びpYES2-TpELO3で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して、残存の培地及び脂肪酸を除去した。 脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって酵母細胞沈殿物から調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEを石油エーテル(PE)で2回抽出することによって抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNaHCO 3 (pH 8.0)で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPEに取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier and Michaelson, 2001, Lipids 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany, 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3): 215-218に記載されている。

    実施例23:TpELO1及びTpELO3の機能の特徴付け:
    TpELO1の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができた(図9)。 給餌される基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は、新規脂肪酸(TpElo1反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子TpElo1が機能的に発現されていることを意味する。

    TpElo1が限られた基質特異性を示すことは表10から理解できる。 TpElo1はC-20脂肪酸であるエイコサペンタエン酸及びアラキドン酸の伸長のみが可能であったが、ω3-不飽和エイコサペンタエン酸を優先する。

    ベクターpYES2-TpELO1で形質転換されている酵母は、最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後FAMEをGLCを介して分析した。

    TpElo3の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に決定することができた(図10)。 給餌される基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(TpElo3反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子TpElo3が機能的に発現されていることを意味する。

    TpElo3が限られた基質特異性を示すことは表11から理解できる。 TpElo3はC18-脂肪酸であるγ-リノレン酸及びステアリドン酸の伸長のみが可能であるが、ω3-不飽和ステアリドン酸を優先する。

    ベクターpYES-TpELO3で形質転換されている酵母を、最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは、無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEはGLCを介して分析した。

    実施例24:酵母中でのPi-omega3Desの異種発現用のプラスミドのクローニング及び発現
    酵母中での異種発現のために、Pi-omega3Desクローンを、適当なPi-omega3Des特異的プライマーを用いたPCRを介して酵母発現ベクターpYES3にクローニングした。 ここで、専らPi-omega3Desタンパク質をコードする遺伝子のオープン・リーディング・フレームが増幅され、pYES3発現ベクター中にクローニングするための2種類の切断部位が与えられた:
    正方向プライマー: 5'-TAAGCTTACATGGCGACGAAGGAGG (配列番号149)
    逆方向プライマー: 5'-TGGATCCACTTACGTGGACTTGGT (配列番号150)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μlの5'ATGプライマー及び3'停止プライマー)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素HindIII及びBamHIと共に37℃で2時間インキュベートした。 酵母発現ベクターpYES3(Invitrogen)を同様にインキュベートした。 その後、1104bpのPCR産物及びベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとデサチュラーゼcDNAとを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpYES3-Pi-omega3Desを配列決定によって確認し、サッカロミセス株INVSc1(Invitrogen)にエレクトロポレーション(1500V)によって形質転換した。 平行してpYES3を形質転換して、対照として扱った。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にトリプトファンを欠く最小培地に塗布した。 したがって、トリプトファンを欠く培地中で増殖可能であった細胞は、関連するプラスミドpYES3、pYES3-Pi-omega3Desを含む。 選別後、いずれの場合も2種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例25:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製した。 このために、NotI切断部位を以下のプライマー対を用いてコード配列の5'及び3'末端に導入した:
    PSUN-Pi-omega3Des
    逆方向: 3'-GCGGCCGCTTACGTGGACTTGGTC (配列番号147)
    正方向: 5'-GCGGCCGCatGGCGACGAAGGAGG (配列番号148)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で4時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートした。 その後、PCR産物及び7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-Piomega3Desを配列決定によって確認した。

    実施例26:酵母中でのPi-omega3Desの発現
    実施例24に記載されるプラスミドpYES3又はpYES3-Pi-omega3Desで形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して、残存の培地及び脂肪酸を除去した。 脂肪酸メチルエステル(FAME)は酸メタノリシスによって酵母細胞沈殿物から調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEを石油エーテル(PE)で2回抽出することによって抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPEに取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany, 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例23:Pi-omega3Desの機能の特徴付け:
    Pi-omega3Desの基質特異性は、発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができた(図12〜18)。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母中に大量に存在し、これはこれらの脂肪酸が酵母中に取り上げられていることを証明する。 トランスジェニック酵母は、新規脂肪酸(Pi-omega3Des反応の産物)の合成を立証する。 これは遺伝子Pi-omega3Desが機能的に発現されていることを意味する。

    図12は、Pi-omega3Desによるリノール酸(18:2ω6-脂肪酸)の不飽和化によりα-リノレン酸(18:3ω3-脂肪酸)が生じることを示す。 脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図12A)又はベクターpYES3-Pi-omega3Des(図12B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、18:2 Δ9,12 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    図13は、Pi-omega3Desによるγ-リノレン酸(18:3ω6-脂肪酸)の不飽和化によりステアリドン酸(18:4ω3-脂肪酸)が生じることを示す。 脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図13A)又はベクターpYes-3-Pi-omega3Des(図13B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、γ-C18:3 Δ6,9,12 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    図14は、Pi-omega3DesによるC20:2-ω6-脂肪酸の不飽和化によりC20:3-ω3-脂肪酸が生じることを示す。 脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図14A)又はベクターpYes3-Pi-omega3Des(図14B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、C20:2 Δ11,14 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    図15は、Pi-omega3DesによるC20:3-ω6-脂肪酸の不飽和化によりC20:4-ω3-脂肪酸が生じることを示す。 脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図15A)又はベクターpYes3-Pi-omega3Des(図15B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、C20:3 Δ8,11,14 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    図16は、Pi-omega3Desによるアラキドン酸(C20:4-ω6-脂肪酸)の不飽和化によりエイコサペンタエン酸(C20:5-ω3-脂肪酸)が生じることを示す。

    脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図16A)又はベクターpYes3-Pi-omega3Des(図16B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、C20:4 Δ5,8,11,14 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    図17は、Pi-omega3Desによるドコサテトラエン酸(C22:4-ω6-脂肪酸)の不飽和化によりドコサペンタエン酸(C22:5-ω3-脂肪酸)が生じることを示す。 脂肪酸メチルエステルは、ブランクベクターpYES2(図17A)又はベクターpYes3-Pi-omega3Des(図17B)で形質転換されている無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 酵母は最小培地中、C22:4 Δ7,10,13,16 -脂肪酸(300μm)の存在下で培養した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    異なる脂肪酸に対するPi-omega3Desの基質特異性は図18から理解できる。 ベクターpYes3-Pi-omega3Desで形質転換されている酵母を、最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。 各値は3つの測定値の平均を表す。 変換率(%不飽和化)は以下の式を用いて計算した:
    [産物]/[産物]+[基質] 100

    実施例9に記載されるように、Pi-omega3Desはトランスジェニック植物を作製するために使用することもできる。 その後、脂質は実施例6に記載されるようにこれらの植物の種子から抽出することができる。

    実施例28:オストレオコッカス・タウリ由来のデサチュラーゼ遺伝子のクローニング
    保存されたモチーフを用いたタンパク質配列中の保存領域の検索(His boxes, Domergueら. 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)は、オストレオコッカス・タウリの配列データベース(ゲノム配列)中で、これに対応するモチーフを有する5種類の配列の同定を可能にした。 この配列は以下であった:

    個々の遺伝子の相同性を見出すためのアライメントは、tBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410)を用いて実施した。

    クローニング手順は以下の通りであった。

    定常期のオストレオコッカス・タウリの培養物40mlを遠沈し、100μlの2回蒸留水中で再懸濁し、−20℃で保存した。 各ゲノムDNAをPCR法に基づいて増幅した。 適当なプライマー対を、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を有するように選択した。 OtDes DNAの増幅は、いずれの場合も総量50μl中、1μlの解凍細胞、200μmのdNTP、2.5U Taqポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実施した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    以下のプライマーをPCRで使用した:
    OtDes6.1正方向: 5'ggtaccacataatgtgcgtggagacggaaaataacg3' (配列番号145)
    OtDes6.1逆方向: 5'ctcgagttacgccgtctttccggagtgttggcc3' (配列番号146)

    実施例29:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング:
    オストレオコッカス・タウリ由来のデサチュラーゼOtDes6.1(=Δ6-デサチュラーゼ)の機能を特徴付けるために、そのDNAのオープン・リーディング・フレームを、pYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングし、これに対応するクローンpYES2.1-OtDes6.1を生じさせた。 オストレオコッカス由来の別のデサチュラーゼ遺伝子は同じようにクローニングすることができる。

    サッカロミセス・セレビシエ株334はエレクトロポレーション(1500V)によってベクターpYES2.1-OtDes6.1で形質転換した。 ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として用いた。 形質転換した酵母は2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地(CMdum)寒天プレート上で選別した。 選別後、いずれの場合も3種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    OtDes6.1デサチュラーゼを発現させるために、いずれの場合も2%(w/v)ラフィノースで補充したウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地の前培養物を選別した形質転換体で接種し、2日間30℃でインキュベートした(200rpm)。 次いで、2%ラフィノース及び300μmの様々な脂肪酸で補充した5mlのCMdum液体培地(ウラシル無含)を前培養物で0.05のOD 600まで接種した。 発現は2%(w/v)ガラクトースの添加によって誘導した。 培養物はさらに20℃で96時間インキュベートした。

    実施例30:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製する。 このために、NotI切断部位をPCRを用いてコード配列の5'及び3'末端に導入する。 対応するプライマー配列はデサチュラーゼの5'及び3'領域から誘導される。

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物は制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートした。 その後、PCR産物及びベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドは配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz P., Svab, Z, Maliga P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol. Biol. 25:989-994)。 pSUN-USPはEcoRI断片の形態でUSPプロモーターをpSUN300に挿入することによって、pSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオストレオコッカス遺伝子のものである(ocsターミネーター、Genbank登録V00088)(De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.及びSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1−684(Genbank登録X56240)に対応し、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズのプロモーター断片は、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)(プライマー配列:5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'、配列番号144)を用いたPCR反応並びに標準的な方法によって増幅した。

    PCR断片をEcoRI/SaIIを用いて再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物は、アラビドプシス・タリアナ、ナタネ、タバコ及びリンシードを形質転換するために用いた。

    実施例31:酵母中でのOtDes6.1の発現
    実施例4に記載されるプラスミドpYES2、pYES2-OtDes6.2で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH8.0)で洗浄して残存の培地及び脂肪酸を除去した。 酵母細胞沈殿物から脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)のジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEを石油エーテル(PE)で2回抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは、対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例32:オストレオコッカス由来のデサチュラーゼの機能の特徴付け:
    デサチュラーゼの基質特異性は異なる酵母を用いた給餌による、酵母中での発現後(デサチュラーゼ遺伝子のクローニング、酵母発現の例を参照)に決定することができる。 個々の活性を測定するための記述は、Δ15-デサチュラーゼについてはWO 93/11245、Δ12-デサチュラーゼについてはWO 94/11516、Δ6-デサチュラーゼについてはWO 93/06712、US 5,614,393、US 5614393、WO 96/21022、WO 0021557及びWO 99/27111、Δ4-デサチュラーゼについてはQiuら.2001, J. Biol. Chem. 276, 31561-31566、Δ5-デサチュラーゼについてはHongら. 2002, Lipids 37, 863-868で見出される。

    表12は異なる脂肪酸に対するデサチュラーゼOtDes6.1の基質特異性を示す。 OtDes6.1の基質特異性は、発現及び様々な脂肪酸の給餌に測定した。 給餌された基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は、新規脂肪酸(OtDes6.2反応の産物)の合成を立証した(図20)。 これは遺伝子OtDes6.1が機能的に発現されていることを意味する。

    ベクターpYES2-OtDes6.1で形質転換されている酵母は最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。 各値は平均(n=3)±標準偏差を表す。 この活性は式[基質/(基質+産物) 100]を用いて計算した変換率に対応する。

    OtDes6.1がリノール酸及びリノレン酸(18:2及び18:3)に対する基質特異性を示すことは表12から理解できる。 というのも、最高の活性がこれらの脂肪酸によって取得されるからである。 対照的に、オレイン酸(18:1)及びパルミトレイン酸(16:1)に対する活性は著しく低い。 リノール酸及びリノレン酸の好適な変換は、このデサチュラーゼが多価不飽和脂肪酸の産生に適当であることを証明する。

    図20は、OtDes6.1によるリノール酸の変換を示す。 FAMEはガスクロマトグラフィーを介して分析した。 給餌された基質(C18:2)はγ-C18:3に変換される。 出発物質及び生じる産物はいずれも矢印で示される。

    図21は、OtDes6.1の存在下で、リノール酸(=LA)及びα-リノレン酸(=ALA)の変換が、それぞれγ-リノレン酸(=GLA)及びステアリドン酸(=STA)を生じることを示す(図21A及びC)。 さらに図21は、Δ6-デサチュラーゼOtDes6.1並びにフィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)Δ6-エロンガーゼPSE1(Zankら. 2002, Plant J. 31:255-268)及びフェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)Δ5-デサチュラーゼPtD5(Domergueら. 2002, Eur. J. Biochem. 269, 4105-4113)の存在下での、リノール酸(=LA)及びα-リノレン酸(=ALA)の変換により、それぞれジホモ-γ-リノレン酸(=DHGLA)、アラキドン酸(=ARA、図21B)、ジホモステアリドン酸(=DHSTA)及びエイコサペンタエン酸(=EPA、図21D)を生じることを示す。 図21は、Δ6-エロンガーゼPSE1の存在下でのΔ6-デサチュラーゼOtDes6.1の反応産物GLA及びSTAが、実質的に量的に伸長されてそれぞれDHGLA及びDHSTAを生じることをはっきりと示す。 それぞれARA及びEPAを生じさせるためのΔ5-デサチュラーゼPtD5によるその後の不飽和化も円滑に進展する。 約25〜30%のエロンガーゼ産物が不飽和化される(図21B及びD)。

    実施例33:タラシオシラ・シュードナナ由来のデサチュラーゼ遺伝子のクローニング
    保存されたモチーフ(Hisボックス、モチーフ参照)を用いたタンパク質配列中の保存領域の検索は、タラシオシラ・シュードナナの配列データベース(ゲノム配列)中でこれに対応するモチーフを有する6種の配列の同定を可能にした。 この配列は以下であった:

    クローニング手順は以下の通りであった。

    定常期のタラシオシラ・シュードナナの培養物40mlを遠沈し、100μlの2回蒸留水中で再懸濁し、-20℃で保存した。 各ゲノムDNAをPCR法に基づいて増幅した。 適切なプライマー対は、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を有するように選択した。 いずれの場合も、TpDes DNAの増幅は、総量50μl中、1μlの解凍細胞、200μmのdNTP、2.5U Taqポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実施した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    実施例34:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング:
    タラシオシラ・シュードナナ由来のデサチュラーゼの機能を特徴付けるために、各DNAのオープン・リーディング・フレームを、pYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングし、対応するpYES2.1クローンを生じさせた。

    サッカロミセス・セレビシエ株334をエレクトロポレーション(1500V)によってベクターpYES2.1-TpDesaturasenで形質転換する。 ブランクベクターpYES2で形質転換される酵母を対照として用いる。 形質転換した酵母は2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地(CMdum)寒天プレート上で選別する。 選別後、いずれの場合も3種の形質転換を更なる機能的発現のために選別する。

    Tpデサチュラーゼを発現させるために、いずれの場合も2%(w/v)ラフィノースで補充した5mlのウラシルを欠くCMdum液体培地の初期前培養物を選別した形質転換体で接種し、30℃で2日間インキュベート(200rpm)する。 次いで2%ラフィノース及び300μmの様々な脂肪酸で補充した5mlの液体CMdum培地(ウラシル無含)を前培養物で0.05のOD 600まで接種する。 発現は2%(w/v)ガラクトースの添加によって誘導される。 培養物をさらに96時間20℃でインキュベートする。

    実施例35:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製する。 このために、NotI切断部位をPCRを用いてコード配列の5'及び3'末端に導入する。 対応するプライマー配列はデサチュラーゼの5'及び3'領域から誘導される。

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+ 25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートする。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートする。 その後、PCR産物とベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出する。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結する。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じるプラスミドを配列決定によって確認する。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz,P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。 pSUN-USPはUSPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300に挿入することによってpSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のOCS遺伝子である(ocs-Terminator, Genbank登録V00088)(De Greve,H., Dhaese,P., Seurinck,J., Lemmers,M., Van Montagu,M.及びSchell,J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1〜684に対応し(Genbank登録X56240)、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズであるプロモーター断片は、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)(プライマー配列:
    5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'、配列番号143)を用いたPCR反応並びに標準的な方法によって増幅した。

    PCR断片はEcoRI/SaIIで再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物はアラビドプシス・タリアナ、菜種、タバコ及びリンシードの形質転換に使用した。

    実施例36:酵母中でのTpデサチュラーゼの発現
    実施例4に記載されるプラスミドpYES2及びpYES2-TpDesaturasenで形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して残存の培地及び脂肪酸を除去する。 酵母細胞沈殿物から、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって調製する。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)のジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートする。 FAMEは石油エーテル(PE)で2回抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄する。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げる。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離する。 GLC分析の条件は以下の通りである:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定する。

    シグナルは、対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定する。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載される。

    実施例37:タラシオシラ・シュードナナ由来のデサチュラーゼの機能の特徴付け:
    デサチュラーゼの基質特異性は、異なる酵母を用いた給餌によって、酵母中での発現(デサチュラーゼ遺伝子のクローニング、酵母発現の例を参照)後に測定することができる。 個々の活性を測定する記述は、Δ15-デサチュラーゼについてはWO 93/11245、Δ12-デサチュラーゼについてはWO 94/11516、Δ6-デサチュラーゼについてはWO 93/06712、US 5,614,393、US 5614393、WO 96/21022、WO 0021557及びWO 99/27111、Δ4-デサチュラーゼについてはQiuら.2001, J. Biol. Chem. 276, 31561-31566、Δ5-デサチュラーゼについてはHongら. 2002, Lipids 37, 863-868で見出される。

    個々のデサチュラーゼの活性は、式[基質/(基質+産物) 100]を用いた変換率から計算される。

    表11及び12はクローニングしたタラシオシラ・シュードナナのデサチュラーゼの概要を示す。

    オストレオコッカス及びタラシオシラ由来のΔ12-デサチュラーゼ遺伝子も上述の例と同様にクローニングすることができる。

    実施例38:ゼノプス・ラエビス(Xenopus laevis)及びシオナ・インテスティナリス(Ciona intestinalis)由来のエロンガーゼ遺伝子のクローニング
    本出願に詳述されるΔ5-エロンガーゼ活性又はΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いた遺伝子データベース(Genbank)中での、タンパク質配列の保存領域(コンセンサス配列、配列番号115及び配列番号116)の検索は、他の生物由来の別のエロンガーゼ配列の同定及び単離を可能にした。 更なる配列はいずれの場合もX.ラエビス及びC.インテスティナリスから同定した。 この配列は以下であった:

    X.ラエビスのcDNAクローンはNIH(国立健康研究所)から取得した(Genetic and genomic tools for Xenopus research: The NIH Xenopus initiative, Dev. Dyn. 225 (4), 384-391 (2002))。

    C.インテスティナリスのcDNAクローンは京都大学から取得した(Satou, Y., Yamada, L., Mochizuki, Y., Takatori, N., Kawashima, T., Sasaki, A., Hamagu-chi, M., Awazu, S., Yagi, K., Sasakura, Y., Nakayama, A., Ishikawa, H., Inaba, K.及びSatoh, N. 「A cDNA resource from the basal chordate Ciona intestinalis」 JOURNAL Genesis 33 (4), 153-154 (2002))。

    実施例39:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング
    エロンガーゼDNAはいずれの場合も総量50μl中、1μlのcDNA、200μMのdNTP、2.5UのAdvantageポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて増幅した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    酵母中での異種発現用の配列をクローニングするために、以下のオリゴヌクレオチドをPCR反応に使用した:

    PCR産物は酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に製品説明書に従って21℃で30分間インキュベートした。 PCR産物はT突出部及びトポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性によってベクターに連結する。 インキュベーション後、E.coli DH5α細胞を形質転換した。 適当なクローンをPCRによって同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasy Kitを用いて単離し、配列決定によって確認した。 次いで、正確な配列をサッカロミセス株INVSc1(Invitrogen)にエレクトロポレーション(1500V)によって形質転換した。 対照として、平行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地上に塗布した。 したがって、ウラシルを欠く培地中で増殖可能であった細胞は、対応するプラスミドpYES2.1、pYES2.1-ELO(XI)及びpYES2.1-ELO(Ci)を含む。 選別後、いずれの場合も2種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例40:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製する。 このために、NotI切断部位を以下のプライマー対を用いてコード配列の5'及び3'末端に導入する:
    pSUN-ELO(XI)
    正方向: 5'-GCGGCCGCACC ATG GCCTTCAAGGAGCTCACATC(配列番号125)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCCT TCA ATGGTTTTTGCTTTTCAATGCACCG(配列番号126)
    pSUN-ELO(Ci)
    正方向: 5'-GCGGCCGCACC ATG GACGTACTTCATCGT(配列番号127)
    逆方向: 3'-GCGGCCGCT TTA ATCGGTTTTACCATT(配列番号128)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物は制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートした。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートした。 その後、PCR産物と7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-ELO(XI)及びpSUN-ELO(Ci)を配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz,P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。 pSUN-USPはUSPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300に挿入することによってpSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocs-Terminator, Genbank登録V00088)(De Greve,H., Dhaese,P., Seurinck,J., Lemmers,M., Van Montagu,M.及びSchell,J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1〜684に対応し(Genbank登録X56240)、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズであるプロモーター断片は、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)を用いたPCR反応及び標準的な方法によって増幅した。

    プライマー配列:
    5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'(配列番号129)

    PCR断片はEcoRI/SaIIで再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物はアラビドプシス・タリアナ、菜種、タバコ及びリンシードの形質転換に使用した。

    脂質は実施例6に記載されるように酵母及び種子から抽出した。

    実施例41:酵母中でのELO(XI)及びELO(Ci)の発現
    実施例4に記載されるプラスミドpYES2、pYES2-ELO(XI)及びpYES2-ELO(Ci)で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して残存の培地及び脂肪酸を除去した。 脂肪酸メチルエステル(FAME)を酵母細胞沈殿物から酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEは石油エーテル(PE)で2回抽出することによって抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany, 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例42:ELO(XI)及びELO(Ci)の機能の特徴付け:
    ELO(XI)の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができる(図22)。 給餌される基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は、新規脂肪酸(ELO(XI)反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子ELO(X)が機能的に発現されていることを意味する。

    ELO(XI)が広範な基質特異性を示すことは表16から理解できる。 C18-及びC20-脂肪酸の両者が伸長されるが、Δ5-及びΔ6-不飽和脂肪酸に対する優先を観察することができる。

    ベクターpYES2-ELO(XI)で形質転換されている酵母は、最小培地中、詳述される脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは、無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    ELO(Ci)の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に決定することができる(図23)。 給餌される基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(ELO(Ci)反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子ELO(Ci)が機能的に発現されていることを意味する。

    ELO(Ci)が広範な基質特異性を示すことは表17から理解できる。 C18-及びC20-脂肪酸の両者が伸長されるが、Δ5-及びΔ6-不飽和脂肪酸に対する優先を観察することができる。

    ベクターpYES2-ELO(Ci)で形質転換されている酵母は、最小培地中、詳述される脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは、無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    実施例43:オストレオコッカス・タウリ由来の遺伝子のクローニング
    本明細書に記載されてきたΔ5-エロンガーゼ活性又はΔ6-エロンガーゼ活性を持つエロンガーゼ遺伝子を用いたタンパク質配列中の保存領域の検索は、いずれの場合もオストレオコッカス・タウリの配列データベース(ゲノム配列)中でこれに対応するモチーフを有する2種類の配列の同定を可能にした。 この配列は以下であった:

    OtElo1及びOtElo1.2は、ダニオ・レリオ(Danio rerio)由来のエロンガーゼと最大の類似性を示したが(GenBank AAN77156;約26%の同一性)、OtElo2及びOtElo2.1はフィスコミトレラ(Physcomitrella)のElo(PSE)と最大の類似性(約36%の同一性)を示した(アライメントはtBLASTnアルゴリズム(Altschulら, J. Mol. Biol. 1990, 215: 403-410))を用いて実施した)。

    エロンガーゼは以下のようにクローニングした。

    定常期のオストレオコッカス・タウリの培養物40mlを遠沈し、100μlの二回蒸留水中に再懸濁し、-20℃で保存した。 各ゲノムDNAをPCR法に基づいて増幅した。 適切なプライマー対は、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を有するように選択した。 OtElo DNAの増幅は、いずれの場合も総量50μl中、1μlの解凍細胞、200μMのdNTP、2.5UのTaqポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実施した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    実施例44:酵母中での異種発現のための発現プラスミドのクローニング:
    オストレオコッカス・タウリ由来のエロンガーゼの機能を特徴付けるために、各DNAのオープン・リーディング・フレームを、pYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングして、pOTE1、pOTE1.2、pOTE2及びpOTE2.1を生じさせた。

    サッカロミセス・セレビシエ株334をエレクトロポレーション(1500V)によってそれぞれベクターpOTE1、pOTE1.2、pOTE2及びpOTE2.1で形質転換した。 ブランクベクターpYES2で形質転換した酵母を対照として用いた。 形質転換した酵母は、2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地上で選別した。 選別後、いずれの場合も3種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    Otエロンガーゼを発現させるために、いずれの場合も2%(w/v)ラフィノースで補充したウラシルを含まない5mlの液体CMdum培地の前培養物を選別した形質転換体で接種し、30℃で2日間インキュベートした(200rpm)。 次いで、2%ラフィノース及び300μmの様々な脂肪酸で補充した5mlの液体CMdum培地(ウラシル無含)を前培養物で0.05のOD 600まで接種した。 発現は2%(w/v)ガラクトースの添加によって誘導した。 培養物はさらに20℃で96時間インキュベートした。

    実施例45:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製した。 このために、NotI切断部位をPCRを用いてコード配列の5'及び3'末端に導入した。 対応するプライマー配列はOtElo1、OtElo1.2、OtElo2及びOtElo2.1の5'及び3'領域から誘導した。

    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物は制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートする。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートする。 その後、PCR産物とベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出する。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpSUN-OtELO1、pSUN-OtELO1.2、pSUN-OtELO2及びpSUN-OtELO2.2を配列決定によって確認した。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz,P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。 pSUN-USPはUSPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300に挿入することによってpSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオストレオコッカス遺伝子のものである(ocs-Terminator, Genbank登録V00088)(De Greve,H., Dhaese,P., Seurinck,J., Lemmers,M., Van Montagu,M.及びSchell,J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1〜684に対応し(Genbank登録X56240)、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズであるプロモーター断片は、合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)を用いたPCR反応並びに標準的な方法によって増幅した。

    プライマー配列:
    5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3'、配列番号130。

    PCR断片はEcoRI/SaIIで再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物はアラビドプシス・タリアナ、菜種、タバコ及びリンシードの形質転換に使用した。

    実施例46:酵母中でのOtElo1、OtElo1.2、OtElo2及びOtELO2.2の発現
    実施例15に記載されるプラスミドpYES3、pYES3-OtElO1、pYES3-OtElO1.2、pYES3-OtELO2及びpYES3-OtELO2.2で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して残存の培地および脂肪酸を除去した。 酵母細胞沈殿物から、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)のジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEを石油エーテル(PE)で2回抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例47:OtElo1、OtElo1.2、OtElo2及びOtElo2.1の機能の特徴付け:
    OtElo1の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定した(表18)。 給餌された基質は全てのトランスジェニック酵母中で大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(OtElo1反応の産物)の合成を示した。 これは遺伝子OtElo1が機能的に発現されたことを意味する。

    OtElo1及びOtElo1.2が限られた基質特異性を有することは表18から理解できる。 OtElo1及びOtElo1.2はC20-脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(図24A、24B)及びアラキドン酸(図25A、25B)の伸長のみが可能であったが、ω3-不飽和エイコサペンタエン酸を優先した。

    表18は、異なる脂肪酸との比較における、Δ5-位置に二重結合を有するC20-多価不飽和脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo1又はOtElo1.2の基質特異性を示す。

    ベクターpOTE1又はpOTE1.2で形質転換されている酵母は、最小培地中、記載の脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    OtElo2(配列番号81)、OtElo2.1(配列番号111)の基質特異性は、発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができる(表19)。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母において大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(OtElo2反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子OtElo2及びOtElo2.1が機能的に発現されていることを意味する。

    表19は、様々な脂肪酸に対するエロンガーゼOtElo2及びOtElo2.1の基質特異性を示す。 OtElo2.1は著しく高い活性を示す。

    ベクターpOTE2又はpOTE2.1で形質転換されている酵母は、最小培地中、記載の脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。

    表19に示される酵素活性はOtElo2及びOtElo2.1がそれぞれΔ6-エロンガーゼであることをはっきりと証明する。

    図24A〜Dは、それぞれOtElo1(B)及びOtElo1.2(D)によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。 対照(A、C)は伸長産物(22:5ω3)を示さない。

    図25A〜Dは、それぞれOtElo1(B)及びOtElo1.2(D)によるアラキドン酸の伸長を示す。 対照(A、C)は伸長産物(22:4ω6)を示さない。

    実施例48:ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)及びアラビドプシス・タリアナ由来のエロンガーゼ遺伝子のクローニング
    本出願で詳述される、Δ5-エロンガーゼ活性又はΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を利用したタンパク質配列中の保存領域の検索は、配列データベース(Genbank, Euglena EST Bank)中で、それぞれこれに対応するモチーフを有するアラビドプシス・タリアナ及びユーグレナ・グラシリス由来の配列の同定を可能にした。 この配列は以下であった:

    ユーグレナ・グラシリスのエロンガーゼを以下のようにクローニングした。

    ユーグレナ・グラシリス株1224-5/25をSammlung fur Algenkulturen Gottingen [Gottingen collection of algal cultures](SAG)から取得した。 単離のために、この株を培地II(Calvayrac R and Douce R, FEBS Letters 7:259-262, 1970)中、23℃で4日間、8h/16hの光周期(光強度35mol s-1 m-2)で増殖させた。

    4日齢のユーグレナ培養物の総RNAをQiagen(Valencia, CA, US)のRNAeasy Kitを用いて単離した。 poly-A+RNA(mRNA)をオリゴ-dT-セルロース(Sambrookら(1989))を用いて総RNAから単離した。 RNAをPromegaのReverse Transcription System Kitを用いて逆転写に供し、合成したcDNAをλZAPベクター(lambda ZAP Gold, Stratagene)中にクローニングした。 cDNAを製品説明書に従って脱パッケージ化し、プラスミドDNAを生じさせ、クローンをランダムシーケンシングのために部分的に配列決定した。 mRNAをPolyATract単離システム(Promega)を用いて総RNAから単離した。 mRNAをMarathon cDNA Amplification Kit(BD Biosciences)を用いて逆転写に供し、アダプターを製品説明書に従って連結した。 次いで5'-及び3'-RACE(cDNA末端の迅速増幅)によって発現プラスミドをクローニングするために、cDNAライブラリーをPCRに用いた。

    アラビドプシス・タリアナのエロンガーゼを以下のようにクローニングした。

    ゲノムDNAから、2つの遺伝子に対するプライマーをオープン・リーディング・フレームの5'及び3'末端で誘導した。

    Chrigwinら(1979)の方法は、A.タリアナから総RNAを単離するのに用いた。 21日齢の植物からの葉を液体窒素中で粉砕し、破壊(disruption)バッファーで処理し、37℃で15分間インキュベートした。 遠心分離後(10分、4℃、12000xg)、上清中のRNAを0.02容量の3M 酢酸ナトリウム(pH 5.0)及び0.75容量のエタノールを用いて-20℃で5時間沈殿させた。 更なる遠心分離ステップ後、RNAを出発物質1g当たり1mlのTES中に取り上げ、1容量のフェノール/クロロホルムで1回、及び1容量のクロロホルムで1回抽出し、そしてRNAを2.5M LiClで沈殿させた。 続く遠心分離及び80%エタノールでの洗浄後、RNAを水中に再懸濁させた。 cDNAはSambrookら1989の方法に従って合成し、そして誘導したプライマーを用いてRT-PCRを実施した。 PCR産物は製品説明書に従ってベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)中にクローニングした。

    実施例49:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング:
    A.タリアナのエロンガーゼの機能を特徴付けるために、問題のDNAのオープン・リーディング・フレームをpYES2.1/V5-His-TOPO(Invitrogen)のガラクトース誘導性GAL1プロモーターの下流にクローニングして、pAt60及びpAT70を生じさせた。

    サッカロミセス・セレビシエ株334をエレクトロポレーション(1500V)によって、それぞれベクターpAt60及びpAt70で形質転換した。 ブランクベクターpYES2.1で形質転換した酵母を対照として使用した。 形質転換した酵母は2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地(CMdum)寒天プレート上で選別した。 選別後、いずれの場合も3種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    Atエロンガーゼを発現させるために、いずれの場合も2%(w/v)ラフィノースで補充したウラシルを欠く5mlのCMdum液体培地の前培養物を選別した形質転換体で接種し、30℃で2日間インキュベートした(200rpm)。

    次いで、2%ラフィノース及び300μMの様々な脂肪酸で補充した5mlの液体CMdum培地(ウラシル無含)を前培養物で0.05のOD 600まで接種した。 発現は2%(w/v)ガラクトースの添加によって誘導した。 培養物はさらに20℃で96時間インキュベートした。

    実施例50:酵母中でのpAt60及びpAt70の発現
    実施例5に記載されるプラスミドpYES2.1、pAt60及びpAt70で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH8.0)で洗浄して残存の培地及び脂肪酸を除去した。 酵母細胞沈殿物から、脂肪酸メチルエステル(FAME)を酸メタノリシスによって調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)のジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEは石油エーテル(PE)で2回抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、いずれの場合も有機相を2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で洗浄した。 その後、PE相をNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3):215-218に記載されている。

    実施例51:pAt60及びpAt70の機能の特徴付け
    エロンガーゼAt3g06460及びAt3g06470の基質特異性は発現及び様々な脂肪酸の給餌後に測定した(表20、図26)。 給餌された基質は全てのトランスジェニック酵母中で検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(それぞれ、遺伝子At3g06460及びAt3g06470の産物)の合成を示した。 これはこれらの遺伝子が機能的に発現されていることを意味する。

    図26はエロンガーゼAt3g06470による20:5n-3の伸長を表す。

    実施例52:フェオダクチルム・トリコルヌーツム由来のエロンガーゼのクローニング
    タンパク質配列中の保存領域から、縮重プライマーを本出願で詳述されるΔ6-エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼ遺伝子を用いて構築し、これらのプライマーをPCRによってフェオダクチルムのcDNAを検索するのに用いた。 以下のプライマー配列を使用した:

    括弧中のヌクレオチド塩基は、いずれの場合も一方の又は他方のヌクレオチド塩基を含むヌクレオチドの混合物が存在することを意味する。

    フェオダクチルムcDNAライブラリーの構築:
    P.トリコルヌーツムUTEX646の2リットル培養物をf/2培地(Guillard, RRL 1975. Culture of phytoplankton for feeding marine invertebrates. In Culture of Marine Invertebrate Animals (編集. Smith, WL及びChanley, MH), Plenum Press, New York, pp 29-60)中で14d(=日)間、35E/cm 2の光強度で増殖させた。 遠心分離後、凍結した細胞を液体窒素の存在下で細かい粉末まで挽き、2mlのホモジナイゼーションバッファー(0.2M Tris-Cl(pH 8.5)中、0.33M ソルビトール、0.3M NaCl、10mM EDTA、10mM EGTA、2%SDS、2%メルカプトエタノール)中で再懸濁した。 4mlのフェノール及び2mlのクロロホルムを添加した後、混合液を40〜50℃で15分間強く振とうした。 その後、混合液を遠心分離し(10分×10000g)、水相をクロロホルムで段階的に抽出した。 次いで、核酸を1/20容量の4M 炭酸水素ナトリウム溶液の添加によって沈殿させ、そして遠心分離した。 ペレットを80mM Tris-ホウ酸(pH 7.0)及び1mM EDTA中に取り上げ、RNAを8M塩化リチウムで沈殿させた。 遠心分離及び70%強エタノールによる洗浄後、RNAペレットをRNase無含水に取り上げた。 Poly(A)-RNAはDynabead(Dynal, Oslo, Norway)を製品説明書に従って用いて単離し、第1cDNA鎖の合成をRoche(Mannheim)のMLV-Rtaseを用いて実施した。 次いで、第2鎖の合成をDNAポリメラーゼI及びクレノー断片を用いて実施し、その後RNaseHで消化した。 次いで、cDNAをT4ポリメラーゼで処理し、その後、EcoRI/XhoIアダプター(Pharmacia, Freiburg)をT4リガーゼによって付着させた。 XhoIによる消化、リン酸化及びゲル分離後、300bp以上の断片をファージλZAP Express(Stratagene, Amsterdam, the Netherlands)中に製品説明書に従って連結した。 cDNAライブラリーの大量摘出及びプラスミド再生の後、プラスミドライブラリーをE.coli DH10B細胞に形質転換し、PCRスクリーニングに用いた。

    上述の縮重プライマーを用いて、配列番号187を有するPCR断片を作製することが可能であった。

    この断片をジゴキシゲニン(Roche, Mannheim)で標識し、ファージライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用した。

    配列番号187の配列を用いて、フェオダクチルムΔ6-エロンガーゼの全RNA分子を構成する遺伝子配列(配列番号183)を取得することが可能であった。

    実施例53:酵母中での異種発現用の発現プラスミドのクローニング
    適切なプライマー対は、これらが開始コドンに隣接する高効率性の翻訳のための酵母コンセンサス配列(Kozak, Cell 1986, 44:283-292)を保有するように選択した。 PtELO6 DNAの増幅は、いずれの場合も総量50μl中、1μlのcDNA、200μMのdNTP、2.5U Advantageポリメラーゼ及び100pmolの各プライマーを用いて実施した。 PCR条件は以下の通りであった:最初の変性は95℃で5分、その後94℃で30秒、55℃で1分及び72℃で2分の30サイクル、そして72℃で10分の最終伸長ステップ。

    酵母中での異種発現用の配列をクローニングするために、以下のオリゴヌクレオチドをPCR反応に用いた:

    PCR産物を酵母発現ベクターpYES2.1-TOPO(Invitrogen)と共に製品説明書に従って21℃で30分間インキュベートした。 PCR産物(配列番号192参照)をT突出部及びトポイソメラーゼ(Invitrogen)の活性によってベクターに連結した。 インキュベーション後、E.coli DH5α細胞を形質転換した。 適当なクローンをPCRによって同定し、プラスミドDNAをQiagen DNAeasy Kitを用いて単離し、配列決定によって確認した。 次いで、正確な配列をサッカロミセス株INVSc1(Invitrogen)にエレクトロポレーション(1500V)によって形質転換した。 対照として、平行してブランクベクターpYES2.1を形質転換した。 その後、酵母を2%グルコースで補充した完全にウラシルを欠く最小培地に塗布した。 したがって、ウラシルを欠く培地中で増殖可能な細胞は、対応するプラスミドpYES2.1及びpYES2.1-PtELO6を含む。 選別後、いずれの場合も2種の形質転換体を更なる機能的発現のために選別した。

    実施例54:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    pSUN-USPを基礎とする別の形質転換ベクターを植物の形質転換のために作製する。 このために、NotI切断部位を以下のプライマー対を用いてコード配列の5'及び3'末端に導入する:
    PSUN-PtELO6
    正方向: 5'-GCGGCCGCACCATGATGGTACCTTCAAGTTA (配列番号190)
    逆方向: 3'-GAAGACAGCTTAATAGGCGGCCGC (配列番号191)
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ
    ClontechのAdvantageポリメラーゼを使用した。

    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素NotIと共に37℃で16時間インキュベートする。 植物発現ベクターpSUN300-USPを同様にインキュベートする。 その後、PCR産物と7624bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出する。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製する。 その後、ベクターとPCR産物とを連結する。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いる。 生じるプラスミドpSUN-PtELOは配列決定によって確認する。

    pSUN300はプラスミドpPZPの誘導体である(Hajdukiewicz,P, Svab, Z, Maliga, P., (1994) The small versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation. Plant Mol Biol 25:989-994)。 pSUN-USPはUSPプロモーターをEcoRI断片の形態でpSUN300に挿入することによってpSUN300から創造した。 ポリアデニル化シグナルはA.チュメファシエンスTiプラスミド由来のオクトピンシンターゼ遺伝子のものである(ocs-Terminator, Genbank登録V00088)(De Greve,H., Dhaese,P., Seurinck,J., Lemmers,M., Van Montagu,M.及びSchell,J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))。 USPプロモーターはヌクレオチド1〜684に対応し(Genbank登録X56240)、USP遺伝子の非コード領域の一部はこのプロモーター中に存在する。 684塩基対のサイズであるプロモーター断片は合成プライマー及び市販のT7標準プライマー(Stratagene)を用いたPCR反応並びに標準的な方法によって増幅した。

    (プライマー配列:
    5'-GTCGACCCGCGGACTAGTGGGCCCTCTAGACCCGGGGGATCCGGATCTGCTGGCTATGAA-3';配列番号151)。

    PCR断片はEcoRI/SaIIで再び切断し、OCSターミネーターを含むベクターpSUN300に挿入した。 これによりpSUN-USPと称するプラスミドが生じた。 この構築物はアラビドプシス・タリアナ、菜種、タバコ及びリンシードの形質転換に使用した。

    脂質は実施例6に記載されるように酵母及び種子から抽出した。

    実施例55:酵母中でのPtEloの発現
    実施例4に記載されるプラスミドpYES2及びpYES2-PtELO6で形質転換されている酵母を以下のように分析した。

    本培養物から遠心分離(100xg、5分、20℃)によって酵母細胞を回収し、100mM NaHCO 3 (pH 8.0)で洗浄して、残存の培地及び脂肪酸を除去した。 脂肪酸メチルエステル(FAME)は酸メタノリシスによって酵母細胞沈殿物から調製した。 このために、細胞沈殿物を2mlの1N メタノール硫酸及び2%(v/v)ジメトキシプロパンと共に80℃で1時間インキュベートした。 FAMEは石油エーテル(PE)で2回抽出することによって抽出した。 非誘導体化脂肪酸を除去するために、有機相をいずれの場合も2mlの100mM NaHCO 3 (pH 8.0)及び2mlの蒸留水で1回洗浄した。 その後、PE相はNa 2 SO 4で乾燥し、アルゴン下で気化し、そして100μlのPE中に取り上げた。 サンプルを、炎イオン化検出器を搭載したHewlett-Packard 6850ガスクロマトグラフ中のDB-23キャピラリーカラム(30m, 0.25mm, 0.25μm, Agilent)で分離した。 GLC分析の条件は以下の通りであった:オーブンの温度は50℃から250℃の範囲で、毎分5℃ずつ増加しながら最後に250℃で10分(保持)となるように設定した。

    シグナルは対応する脂肪酸標準(Sigma)と保持時間を比較することによって同定した。 この方法論は、例えばNapier及びMichaelson, 2001, Lipids. 36(8):761-766; Sayanovaら, 2001, Journal of Experimental Botany. 52(360):1581-1585, Sperlingら, 2001, Arch. Biochem. Biophys. 388(2):293-298並びにMichaelsonら, 1998, FEBS Letters. 439(3): 215-218.に記載されている。

    実施例56:PtELO6の機能の特徴付け:
    図29はC18:3 Δ6,9,12及びC18:4 Δ6,9,12,15の変換を表す。 この基質はいずれの場合も2つの炭素原子によって伸長され、これによりそれぞれ脂肪酸C20:3 Δ8,11,14及びC20:4 Δ8,11,14,17を生じる。 PtELO6の基質特異性は発現及び異なる脂肪酸の給餌後に測定することができる(図30)。 給餌した基質は全てのトランスジェニック酵母において大量に検出することができる。 トランスジェニック酵母は新規脂肪酸(PtElo6反応の産物)の合成を立証した。 これは遺伝子PtElO6が機能的に発現されていることを意味する。

    PtElo6が限られた基質特異性を有することは表21から理解できる。 PtELO6はC18-脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸、γ-リノレン酸及びステアリドン酸の伸長のみが可能であったが、ω3-不飽和ステアリドン酸を優先した(図30も参照)。

    給餌実験:脂肪酸(太字)をいずれの場合も250μMの量で添加した。 下線の脂肪酸はデノボで形成した。

    以下の脂肪酸は、給餌したが変換されなかった:
    18:1 Δ6 、18:1 Δ9 、18:1 Δ11
    20:2 Δ11,14 、20:3 Δ11,14,17 、20:3 Δ8,11,14 、20:4 Δ5,8,11,14 、20:5 Δ5,8,11,14,17
    22:4 Δ7,10,13,16

    ベクターpYES2-PtELO6で形質転換されている酵母は、最小培地中、詳述した脂肪酸の存在下で培養した。 脂肪酸メチルエステルは無傷の細胞を酸メタノリシスに供することによって合成した。 その後、FAMEをGLCを介して分析した。 このように図29及び30並びに表19に示される結果を測定した。

    実施例57:植物中での種子特異的発現用の発現プラスミドのクローニング
    本明細書下記に記載される一般的な条件は、特に規定がなければ以下の全ての実験に適用する。

    本発明に従って実施例に以下が好適に使用される:Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTV及びpCAMBIA。 バイナリーベクター及びその使用の概要はHellensら, Trends in Plant Science (2000) 5, 446-451で見出すことができる。 DE 10205607に記載されるpGPTV誘導体を用いた。 このベクターは追加的に挿入されたAscl制限切断部位によってpGPTNと異なる。

    クローニング手順の出発点はクローニングベクターpUC19(Maniatisら)であった。 第1ステップでは、Conlininプロモーター断片を以下のプライマーを用いて増幅した:
    CnI1 C 5': gaattcggcgcgccgagctcctcgagcaacggttccggcggtatagagttgggtaattcga
    CnI1 C 3': cccgggatcgatgccggcagatctccaccattttttggtggtgat
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10 pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素EcoRIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 クローニングベクターpUC19を同様にインキュベートした。 その後、PCR産物及び切断した2668bpベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-Cnl1-Cを配列決定によって確認した。

    次のステップで、ベクターpGPVT-USP/OCS(DE 102 05 607)由来のOCSターミネーター(Genbank登録V00088; De Greve, H., Dhaese, P., Seurinck, J., Lemmers, M., Van Montagu, M.及びSchell, J. Nucleotide sequence and transcript map of the Agrobacterium tumefaciens Ti plasmid-encoded octopine synthase gene J. Mol. Appl. Genet. 1 (6), 499-511 (1982))を以下のプライマーを用いて増幅した:
    OCS_C 5': aggcctccatggcctgctttaatgagatatgcgagacgcc
    OCS_C 3': cccgggccggacaatcagtaaattgaacggag
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 ベクターpUC19-Cnl1-Cを制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1-C_OCSを配列決定によって確認した。

    次のステップで、CnI1-Bプロモーターを以下のプライマーを用いてPCRによって増幅した:
    Cnl1-B 5': aggcctcaacggttccggcggtatag
    Cnl1-B 3': cccggggttaacgctagcgggcccgatatcggatcccattttttggtggtgattggttct
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1-Cは制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1C_CnI1B_OCSを配列決定によって確認した。

    更なるステップで、CnI1BのOCSターミネーターを挿入した。 このためにPCRを以下のプライマーを用いて実施した:
    OCS2 5': aggcctcctgctttaatgagatatgcgagac
    OCS2 3': cccgggcggacaatcagtaaattgaacggag
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1C_CnI1B_OCSを制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを使用した。 生じたプラスミドpUC19-CnI1C_CnI1B_OCS2を配列決定によって確認した。

    次のステップで、CnI1-Aプロモーターを以下のプライマーを用いてPCRによって増幅した:
    Cnl1-B 5': aggcctcaacggttccggcggtatagag
    Cnl1-B 3': aggccttctagactgcaggcggccgcccgcattttttggtggtgattggt
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-Cnl1-Cは制限酵素SmaIと共に25℃で12時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1C_Cnl1B_CnI1A_OCS2を配列決定によって確認した。

    更なるステップで、CnI1AのOCSターミネーターを挿入した。 このために、PCRを以下のプライマーで実施した:
    OCS2 5': ggcctcctgctttaatgagatatgcga
    OCS2 3': aagcttggcgcgccgagctcgtcgacggacaatcagtaaattgaacggaga
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素HindIIIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS2を制限酵素StuIと共に37℃で2時間インキュベートし、制限酵素HindIIIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS3を配列決定によって確認した。

    次のステップでは、プラスミドpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS3をΔ6-、Δ5-デサチュラーゼ及びΔ6-エロンガーゼをクローニングするために使用した。 このために、フィチウム・イレギュラエ(Phytium irregulare)(WO02/26946)由来のΔ6-デサチュラーゼを以下のPCRプライマーを用いて増幅した:
    D6Des(Pir) 5': agatctatggtggacctcaagcctggagtg
    D6Des(Pir) 3': ccatggcccgggttacatcgctgggaactcggtgat
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素BglIIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素NcoIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS3を制限酵素BglIIと共に37℃で2時間インキュベートし、制限酵素NcoIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)を配列決定によって確認した。

    次のステップで、プラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)をスラウストキトリウムssp.由来のΔ5-デサチュラーゼ(WO02/26946)をクローニングするために用いた。 このために、スラウストキトリウムssp.由来のΔ5-デサチュラーゼを以下のPCRプライマーを用いて増幅した:
    D5Des(Tc) 5': gggatccatgggcaagggcagcgagggccg
    D5Des(Tc) 3': ggcgccgacaccaagaagcaggactgagatatc
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素BamHIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素EcoRVと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1_d6Des(Pir)は制限酵素BamHIと共に37℃で2時間インキュベートし、制限酵素EcoRVと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)は配列決定によって確認した。

    次のステップでは、プラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)をフィスコミトレラ・パテンス由来のΔ6-エロンガーゼ(WO01/59128)をクローニングするために用い、このため、以下のPCRプライマーを用いた増幅を実施した:
    D6Elo(Pp) 5': gcggccgcatggaggtcgtggagagattctacggtg
    D6Elo(Pp) 3': gcaaaagggagctaaaactgagtgatctaga
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物は最初に制限酵素NotIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素XbaIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)は制限酵素NotIと共に37℃で2時間、及び制限酵素XbaIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)を配列決定によって確認した。

    植物形質転換用のバイナリーベクターはpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)から作製した。 このために、pUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)を制限酵素AscIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpGPTVは同様にインキュベートした。 その後、pUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)からの断片及び切断したpGPTVベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、これに関連するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR断片とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)を配列決定によって確認した。

    別の構築物であるpGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)を用いた。 このために、以下のプライマーを用いてpUC19-CnI1C_OCSから増幅を実施した:
    CnI1_OCS 5': gtcgatcaacggttccggcggtatagagttg
    CnI1_OCS 3': gtcgatcggacaatcagtaaattgaacggaga
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素SalIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19を制限酵素SalIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを使用した。 生じたpUC19-CnI1_OCSプラスミドを配列決定によって確認した。

    更なるステップで、カレンデュラ・オフィシナリス(WO01/85968)由来のΔ12-デサチュラーゼ遺伝子をpUC19-CnI1_OCSにクローニングした。 このために、d12Des(Co)を以下のプライマーを用いて増幅した:
    D12Des(Co) 5': agatctatgggtgcaggcggtcgaatgc
    D12Des(Co) 3': ccatggttaaatcttattacgatacc
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を制限酵素BglIIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後NcoIと共に同一の温度で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1_OCSを同様にインキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、対応するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_D12Des(Co)は配列決定によって確認した。

    プラスミドpUC19-CnI1_D12Des(Co)及びプラスミドpUC19- CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)は制限酵素SalIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、ベクター断片及びベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、関連するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとベクター断片とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)を配列決定によって確認した。

    植物形質転換用のバイナリーベクターはpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)から作製した。 このために、pUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)を制限酵素AscIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpGPTVは同様に処理した。 その後、pUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)からの断片及び切断したpGPTVベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、関連するDNA断片を摘出した。 DNAはQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)は配列決定によって確認した。

    植物の形質転換に適当な別のベクターはpSUN2である。 ベクター中に存在する発現カセット数を5個以上に増加すべく、このベクターをGateway System(Invitrogen, Karlsruhe)と組合せて用いた。 このために、GatewayカセットAを下記に記載されるように製品説明書に従ってベクターpSUN2に挿入した。

    pSUN2ベクター(1μg)を制限酵素EcoRVと共に37℃で1時間インキュベートした。 その後、GatewayカセットA(Invitrogen, Karlsruhe)をRoche(Mannheim)のRapid Ligation Kitを用いて切断したベクターに連結した。 生じたプラスミドをE.coli DB3.1細胞(Invitrogen)に形質転換した。 その後、単離したプラスミドpSUN-GWを配列決定によって確認した。

    第2ステップでpUC19-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)から発現カセットをAscIを用いて摘出し、同様に処理されているベクターpSUN-GWに連結した。 生じたプラスミドpSUN-4Gを別の遺伝子構築物に用いた。

    このために、pENTRクローンを最初に製品説明書(Invitrogen)に従って改変した。 プラスミドpENTR1A(Invitrogen)を制限酵素EcorIと共に37℃で1時間インキュベートし、その後、クレノー酵素及び1種の1μM dNTPミックスで30分間処理し、そしてその後、AscIアダプター(5'-ggcgcgcc;5'末端でリン酸化、二本鎖)をベクターpENTR1A(Invitrogen)に連結させた。 この改変において、遺伝子が上述されるようにCnIカセットに段階的に挿入され、AscIを介してpENTRベクターに転移される。

    スラウストキトリウムssp.由来の遺伝子TL16y2(配列番号83)を上述される様式でpSUN-4Gベクターに転移した。

    次のステップで、プラスミドpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS3をΔ5-エロンガーゼTL16y2をクローニングするために用いた。 このために、スラウストキトリウムssp.由来のΔ5-エロンガーゼを以下のPCRプライマーを用いて増幅した:
    TL16y2 5': agatct atggacgtcgtcgagcagca
    TL16y2 3': ccatggcccggg agaagcagaagaccatctaa
    PCRミックスの組成(50μl):
    5.00μlの鋳型cDNA
    5.00μlの10xバッファー(Advantageポリメラーゼ)+25mM MgCl 2
    5.00μlの2mM dNTP
    1.25μlの各プライマー(10pmol/μl)
    0.50μlのAdvantageポリメラーゼ(Clontech)
    PCR反応条件:
    アニーリング温度:55℃1分変性温度:94℃1分伸長温度:72℃2分サイクル数:35

    PCR産物を最初に制限酵素BglIIと共に37℃で2時間インキュベートし、その後制限酵素NcoIと共に37℃で2時間インキュベートした。 ベクターpUC19-CnI1C_CnI1B_CnI1A_OCS3は制限酵素BglIIと共に37℃で2時間、制限酵素NcoIと共に37℃で2時間インキュベートした。 その後、PCR産物と切断したベクターをアガロースゲル電気泳動によって分離し、関連するDNA断片を摘出した。 DNAをQiagen Gel Purification Kitを製品説明書に従って用いて精製した。 その後、ベクターとPCR産物とを連結した。 このためにRocheのRapid Ligation Kitを用いた。 生じたプラスミドpUC19-CnI1_TL16y2を配列決定によって確認した。 その後、このカセットをAscIを用いて摘出し、AscIで予め処理したpENTRベクターに連結した。 次いで、生じたプラスミドpENTR-CnI1_TL16y2を製品説明書(Invitrogen)に従ってベクターpSUN-4Gと共にインキュベートした(再結合反応)。 この産物はベクターpSUN-5Gを生じ、これを植物の形質転換に用いた。

    更なるステップで、構築物pSUN-8Gを上述の方法論を用いて作製した。 このために、上述の制限酵素切断部位、オープン・リーディング・フレームの最初のそしていずれの場合も最後の20ヌクレオチドを含む遺伝子(配列番号41、53、87及び113)に対する5'及び3'プライマーを作製し、標準的な条件(上記参照)下で増幅し、ベクターpENTR-CnIに連結した。

    ベクターpSUN-4Gとの再結合反応により、構築物pSUN-8Gが生じた。 このベクターもまた植物の形質転換に用いた。

    実施例58:トランスジェニック植物の作製
    a)トランスジェニックインドマスタード植物の作製。 菜種植物の形質転換用のプロトコールを用いた(Moloneyら, 1992, Plant Cell Reports, 8:238-242の方法の改変)。

    トランスジェニック植物を作製するために、作製したバイナリーベクターpGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)、pSUN-5G及びpSUN-8Gをアグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58C1:pGV2260(Deblaereら, 1984, Nucl. Acids Res. 13, 4777-4788)に形質転換した。 インドマスタード植物を形質転換するために、3%スクロース(3MS培地)を補充したMurashige-Skoog培地(Murashige及びSkoog 1962 Physiol. Plant. 15, 473)中で形質転換した陽性アグロバクテリウムコロニーの一晩培養物(1:50希釈)を使用した。 新たに発芽した滅菌植物の葉柄又ははい軸(いずれの場合も約1cm 2 )をペトリ皿中、1:50アグロバクテリア希釈で5〜10分間インキュベートした。 その後、0.8%Bacto寒天で補充した3MS培地上で、暗下、25℃で3日間共インキュベートした。 その後500mg/lのClaforan(セフォタキシム・ナトリウム)、50mg/lカナマイシン、20μM ベンジルアミノプリン(BAP)及び1.6g/lグルコースで補充したMS培地上、16時間明所/8時間暗所でかつ週周期で培養を継続した。 増殖する苗条を2%スクロース、250mg/l Claforan及び0.8%Bacto寒天で補充したMS培地に移した。 3週間後に根の形成が見られない場合には、根の成長ホルモンとして作用する2-インドール酪酸を培地に添加した。

    再生した苗条をカナマイシン及びClaforanで補充した2MS培地上で維持し、発根後に土壌に移し、栽培後、制御環境の保管庫又は温室中で2週間成長させて開花させ、成熟種子を回収して、脂質分析によってエロンガーゼ発現(Δ6エロンガーゼ活性等)又はΔ5-若しくはΔ6-デサチュラーゼ活性について試験した。 このように、C20-及びC22-多価不飽和脂肪酸の成分が高められた系統を同定した。

    トランスジェニック菜種植物もこのプロトコールを用いて首尾よく作製された。

    b)トランスジェニックリンシード植物の作製 トランスジェニックリンシード植物は、例えばBellら(1999, In Vitro Cell. Dev. Biol.-Plant. 35(6): 456-465)の方法によって粒子衝突を用いて作製することができる。 アグロバクテリア媒介形質転換を、例えばMlynarovaら, (1994), Plant Cell Report 13: 282-285の方法によって実施することができる。

    実施例59:種子からの脂質抽出
    植物における遺伝子改変の、所望の化合物(脂肪酸等)の産生への効果は、適当な条件下(上述されるもの等)で改変型植物を生育すること、及び所望の化合物の(すなわち、脂質又は脂肪酸)の産生の向上について培地及び/又は細胞成分を分析することによって測定することができる。 これらの分析技術は当業者に公知であり、分光法、薄層クロマトグラフィー、様々なタイプの染色法、酵素法及び微生物法並びに高速液体クロマトグラフィー(例えば、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. A2, pp 89-90及びpp 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A.ら, (1987) 「Applications of HPLC in Biochemistry」 : Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 17; Rehmら. (1993) Biotechnology, Vol. 3, III章: 「Product recovery and purification」, pp 469-714, VCH: Weinheim; Belter, PAら. (1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, JF及びCabral, JMS (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, JA及びHenry, JD (1988) Biochemical Separations: Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. B3; 11章, pp 1-27, VCH: Weinheim;並びにDechow, FJ (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publications参照)等の分析的クロマトグラフィーを含む。

    上述の方法に加えて、植物脂質はCahoonら(1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940及びBrowseら(1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載されるように植物材料から抽出される。 脂質又は脂肪酸の質的及び量的分析はChristie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2); Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids. A Practical Guide-Ayr, Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 pp (Oily Press Lipid Library; 1); 「Progress in Lipid Research, Oxford: Pergamon Press, 1 (1952)-16(1977) 題名: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載される。

    醗酵の最終産物を測定することに加えて、所望の化合物の産生に利用される代謝経路の他の成分(中間体及び副産物等)を分析して、この化合物の全体的な産生効率を決定することもできる。 この分析方法は、培地中の栄養物質(例えば、糖、炭化水素、窒素源、ホスファート及び他のイオン)の量を測定すること、バイオマス組成及びその増殖を測定すること、生合成経路の通常の代謝物質の産生を分析すること、並びに醗酵中に生じるガスを測定することを含む。 これらの測定のための標準的な方法は、Applied Microbial Physiology; A Practical Approach, PM Rhodes及びPF Stanbury, 編., IRL Press, pp 103-129; 131-163及び165-192 (ISBN: 0199635773)並びにその中で引用される参考文献に記載されている。

    脂肪酸の分析がその一例である(略語:FAME、脂肪酸メチルエステル;GC-MS、ガス液体クロマトグラフィー/質量分析;TAG、トリアシルグリセロール;TLC、薄層クロマトグラフィー)。

    脂肪酸産物の存在は、Christie及びその中の参考文献(1997,: Advances on Lipid Methodology, 第4版: Christie, Oily Press, Dundee, 119-169; 1998, Gaschromatographie-Massenspektrometrie-Verfahren [Gas chromatography/mass spectrometry methods], Lipide 33: 343-353)によって幾度となく記載されるように、標準的な方法(GC、CG-MS又はTLC)を用いて組換え生物を分析することによって明確に証明することができる。

    分析されるべき物質は、超音波処理、ガラス研磨機中でのグラインディング、液体窒素及びグラインディングによって、又は他の適用可能な方法を介して粉砕することができる。 粉砕後、物質は遠心分離する必要がある。 沈殿物は蒸留水中で再懸濁され、100℃で10分間加熱され、氷上で冷却され、再び遠心分離された後、2%ジメトキシプロパンを含むメタノール中の0.5M硫酸中90℃で1時間抽出され、これによりメチル基転移した脂質を生じる加水分解した油および脂質化合物が生じる。 これらの脂肪酸メチルエステルは石油エーテル中で抽出され、最終的にキャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25m, 0.32mm)を170℃から240℃の温度勾配で20分間、240℃で5分間使用するGC分析に供される。 生じた脂肪酸メチルエステルの同一性は商業的供給源(すなわちSigma)から購入可能な標準を用いて規定されるべきである。

    植物物質は、より抽出し易くするために、乳棒とすり鉢で粉砕することによって機械的にホモジナイズされる。

    その後、100℃で10分間加熱され、氷上での冷却後、再び沈澱処理される。 細胞沈殿物は1Mメタノール硫酸及び2%ジメトキシプロパンを用いて90℃で1時間加水分解され、脂質はメチル基転移される。 生じる脂肪酸メチルエステル(FAME)は石油エーテルで抽出される。 抽出したFAMEはキャピラリーカラム(Chrompack, WCOT Fused Silica, CP-Wax-52 CB, 25 m, 0.32 mm)を170℃から240℃の温度勾配で20分、240℃で5分間用いたガス液体クロマトグラフィーによって分析される。 脂肪酸メチルエステルの同一性は対応するFAME標準(Sigma)との比較によって確認される。 二重結合の同一性及び位置は、FAME混合物(例えばGC-MSを用いて4,4-ジメトキシオキサゾリン誘導体(Christie, 1998)を生じる)適当な化学誘導体化によってさらに分析することができる。

    実施例60:作製したトランスジェニック植物由来の種子の分析
    実施例59と同様に、構築物pGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)、pSUN-5G及びpSUN-8Gで形質転換されている植物の種子を分析した。 図XXは構築物pGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)を有する種子の脂肪酸スペクトルを示す。 形質転換されていない対照植物(野生型対照、WT)との比較において、脂肪酸スペクトルの顕著な変化が観察された。 したがって、形質転換する遺伝子が機能的であることを証明することが可能であった。 図32の結果を表22にまとめる。

    ここで、構築物pSUN-5Gを有する種子の分析は、構築物pGPTV-CnI1_d6Des(Pir)_d5Des(Tc)_D6Elo(Pp)_D12Des(Co)を有する系と比較してアラキドン酸含量が顕著に増加した系が取得された。 この関連で、最大25%のARAを有する系を取得した。 追加のエロンガーゼ(TL16y2)が間違いなくこの効果の原因である(図31、pSUN-5G)。 この系からの結果は表23にまとめられる。

    実施例61:トランスジェニックインドマスタード植物の種子中のDHAの検出
    実施例58に記載される、構築物pSUN-8Gを用いて作製された植物の種子を実施例59に記載されるように分析した。 LCPUFAアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸に加えて、トラウストキトリウム由来のΔ4-デサチュラーゼ並びにニジマス(Onchorynchis mykiss)及びオストレオコッカス・タウリ由来のΔ5-エロンガーゼによる変換後の産物であるドコサヘキサエン酸もこれらの種子で検出された。 図33は非形質転換型対照植物と比較した、改変型脂肪酸スペクトルによるクロマトグラムを示す。 様々な測定の結果が表24にまとめられる。

    表24は、構築物pSUN-8Gで形質転換されているトランスジェニック種子の脂肪酸分析を示す。

    この実験中、種子中のドコサヘキサエン酸の合成が最初に証明された。 高等植物におけるDHAの合成は、例えばWO2004/071467に記載されているが、この合成は胚形成細胞培養物のみについて立証され、種子については立証されていなかった。

    同等物:
    本明細書に記載される本発明による具体的な実施形態の多くの同等物は、単純な慣用的実験によって当業者が確認又は見出すことができる。 これらの同等物は特許請求の範囲に含まれることが意図される。

    図1は、DHA(ドコサヘキサエン酸)生合成の種々の合成経路について示す。

    図2は、異なる脂肪酸に対するΔ5−エロンガーゼ(配列番号53)の基質特異性を示す。

    図3は、酵母中での20:5ω3からのDHA生合成の再構成を示す。

    図4は、酵母中での18:4ω3からのDHA生合成の再構成を示す。

    図5は、ベクターpYes3-OmELO3/pYes2-EgD4又はpYes3-OmELO3/pYes2-EgD4+pESCLeu-PtD5で形質転換されているトランスジェニック酵母の脂肪酸組成(モル%)を示す。

    図6は、酵母株との機能性及び基質特異性を測定する給餌実験を示す。

    図7は、OtElo1によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。

    図8は、OtElo1によるアラキドン酸の伸長を示す。

    図9は、酵母中でのTpELO1の発現を示す。

    図10は、酵母中でのTpELO3の発現を示す。

    図11は、酵母中でのトラウストキトリウム(Thraustochytrium)Δ5-エロンガーゼTL16/pYES2.1の発現を示す。

    図12は、α-リノレン酸(18:3ω3-脂肪酸)を生じる、Pi-omega3Desによるγ-リノレン酸(18:2ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

    図13は、ステアリドン酸(18:4ω3-脂肪酸)を生じる、Pi-omega3Desによるγ-リノレン酸(18:2ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

    図14は、C20:3ω3-脂肪酸を生じる、Pi-omega3DesによるC20:2ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。

    図15は、C20:4ω3-脂肪酸を生じる、Pi-omega3DesによるC20:3ω6-脂肪酸の不飽和化を示す。

    図16は、エイコサペンタエン酸(C20:5ω3-脂肪酸)を生じる、Pi-omega3Desによるアラキドン酸(C20:4ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

    図17は、ドコサペンタエン酸(C22:5ω3-脂肪酸)を生じる、Pi-omega3Desによるドコサテトラエン酸(C22:4ω6-脂肪酸)の不飽和化を示す。

    図18は、異なる脂肪酸に対する、Pi-omega3Desの基質特異性を示す。

    図19は、EPAを生じる、Pi-Omega3Desによるリン脂質結合化アラキドン酸の不飽和化を示す。

    図20は、γ-リノレン酸(γ-18:3)を生じる、OtDes6.1によるリノール酸(矢印)の変換を示す。

    図21は、リノール酸及びα-リノレン酸の変換(A及びC)、及び酵母におけるOtD6.1の存在下でのARA及びEPA合成経路の再構成(B及びD)を示す。

    図22は、酵母中でのELO(XI)の発現を示す。

    図23は、様々な脂肪酸の給餌(A:給餌なし、B:C18:4、C:C20:5)に対するELO(Ci)の基質特異性を示す。

    図24は、それぞれOtElo1(B)及びOtElo1.2(D)によるエイコサペンタエン酸の伸長を示す。 対照(A、C)は伸長産物(22:5ω3)を示さない。

    図25は、それぞれOtElo1(B)及びOtElo1.2(D)によるアラキドン酸の伸長を示す。 対照(A、C)は伸長産物(22:4ω6)を示さない。

    図26は、エロンガーゼAt3g06470による20:5n-3の伸長を示す。

    図27は、ゼノプス(Xenopus)エロンガーゼ(A)、シオナ(Ciona)エロンガーゼ(B)及びオンコリンクス(Oncorhynchus)エロンガーゼ(C)の基質特異性を示す。

    図28は、オストレオコッカス(Ostreococcus)Δ5-エロンガーゼ(A)、オストレオコッカス(Ostreococcus)Δ6-エロンガーゼ(B)、タラシオシラ(Thalassiosira)Δ5-エロンガーゼ(C)及びタラシオシラ・オストレオコッカス(Thalassiosira Ostreococcus)Δ6-エロンガーゼ(D)の基質特異性を示す。

    図29は、酵母中でのフェオダクチルム・トリコルヌーツム(Phaeodactylum tricornutum)Δ6-エロンガーゼ(PtELO6)の発現を示す。 A)はC18:3

    Δ6,9,12脂肪酸の伸長を示し、B)はC18:3

    Δ6,9,12,15脂肪酸の伸長を示す。

    図30は、給餌した基質に対するPtELO6の基質特異性を示す。

    図31は、pSUN-5Gで形質転換したトランスジェニック植物の種子のガスクロマトグラフ分析を示す。

    図32は、pGPTV-D6Des(Pir)_D5Des(Tc)_D6Elo(PP)_12Des(Co)で形質転換したトランスジェニック植物の種子のガスクロマトグラフ分析を示す。

    図33は、ブラシカ・ユンセア(Brassica juncea)のトランスジェニック種子中のDHAを示す。 植物は構築物pSUN-8Gで形質転換した。

    QQ群二维码
    意见反馈