種子油においてトコフェロール含量を増加させるための材料および方法

申请号 JP2017525981 申请日 2015-11-13 公开(公告)号 JP2017534293A 公开(公告)日 2017-11-24
申请人 ビーエーエスエフ プラント サイエンス カンパニー ゲーエムベーハー; ビーエーエスエフ プラント サイエンス カンパニー ゲーエムベーハー; 发明人 アンドレ,カール;
摘要 本発明は概して分子 生物 学の分野に関係し、 植物 のトコフェロール含量を対照植物と比較して増加させることに関するものであって、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。本発明はまた、油、 脂肪酸 もしくは脂質含有組成物の製造方法、ならびにそのような油および脂質それ自体に関する。【選択図】なし
权利要求

Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む、植物のトコフェロール含量を対照植物と比較して増加させるための方法。ω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。Δ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、Δ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、ならびに場合により、ω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド、およびΔ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドが発現される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ならびに場合により、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびプラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが発現される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。ポリヌクレオチドが組換えポリヌクレオチドである、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。ポリヌクレオチドが、植物のゲノムに安定して組み込まれる1つのT-DNAもしくは構築物上に存在する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。ポリヌクレオチドが植物の種子において発現される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。種子におけるトコフェロール含量が、対照植物の種子におけるトコフェロール含量と比較して増加する、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。トコフェロール含量が、全トコフェロール含量、αトコフェロール含量、βトコフェロール含量、γトコフェロール含量、および/またはδトコフェロール含量であって、特にトコフェロール含量が、全トコフェロール含量、γトコフェロール含量、および/またはδトコフェロールである、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。植物が油糧種子植物であって、特に、植物が、アブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)の植物であり、もっとも好ましくは、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)およびアブラナ(Brassica rapa)のうち1つもしくは2つの種のゲノムを含有する種の植物であって、したがって好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)、カラシナ(Brassica juncea)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアブラナ(Brassica rapa)種の植物である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。高いトコフェロール含量を有する植物を選択するステップをさらに含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。植物から油を採取するステップであって、前記油が高いトコフェロール含量を有し、好ましくは前記油が、油のトコフェロール含量を維持する条件下で採取される、前記ステップをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。Δ12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびΔ5-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含有する、構築物もしくはT-DNA。ω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、および/またはΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含有する、請求項15に記載の構築物もしくはT-DNA。前記構築物もしくはT-DNAが、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼのための少なくとも1つ(特に少なくとも2つ)の発現カセット、ならびに場合により、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つ(特に少なくとも2つ)の発現カセット、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含有する、請求項15または16に記載の構築物もしくはT-DNA。植物のトコフェロール含量を対照植物と比べて増加させるための、i) 請求項15〜17のいずれか1つに記載の構築物もしくはT-DNA、またはii) Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの、使用。請求項15〜17のいずれか1つに記載の構築物もしくはT-DNAで形質転換された、植物、植物部位、または植物細胞。Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含有する、植物、または植物細胞。前記植物が、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ならびに場合により、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびプラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含有する、請求項20に記載の植物。前記ポリヌクレオチドが同一のT-DNAに含まれる、請求項19〜21のいずれか1つに記載の植物。前記植物がアブラナ属(Brassica)植物である、請求項19〜22のいずれか1つに記載の植物。特に種子において、対照植物と比較して高いトコフェロール含量を有するアブラナ属(Brassica)植物。請求項19〜24のいずれか1つに記載の植物の種子。請求項25に記載の種子から得られる、または得られた油であって、前記油が高いトコフェロール含量を有する、前記油。i) 請求項18〜24のいずれか1つに記載の植物を、その油を含有する種子を得るために生育させるステップ、 ii) 前記種子を収穫するステップ、ならびに iii) ステップii)で収穫された前記種子から油を抽出するステップ を含む、植物油またはトコフェロール生産の方法。ステップiii)で抽出された油からトコフェロールを単離するステップiv)をさらに含む、請求項27に記載の方法。

说明书全文

発明の分野 本明細書は、米国特許仮出願第62/079622号、2014年11月14日出願、および米国特許仮出願第62/234373号、2015年9月29日出願、に優先権を主張するものであり、これらはその全体を参考として本明細書に含めるものとする。

配列表は本明細書の一部であるが、特許明細書と同時にテキストファイルとして提出される。配列表の内容はその全体を参考として本明細書に含めるものとする。

本発明は概して分子生物学の分野に関係し、植物のトコフェロール含量を対照植物と比較して増加させることに関するものであって、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。本発明はまた、油、脂肪酸もしくは脂質含有組成物の製造方法、ならびにそのような油および脂質それ自体に関する。

発明の背景 脂肪酸は、多くの生物学的過程において基本的な役割を果たす、長鎖炭化素側鎖を有するカルボン酸である。脂肪酸が天然において遊離型で見いだされることはまれであり、むしろ脂質の主要成分としてエステル化された形で存在する。そのため、脂質/脂肪酸はエネルギー源である(たとえば、β酸化)。さらに、脂質/脂肪酸は細胞膜の不可欠な成分であり、したがって、生物学的もしくは生化学的情報を処理するために欠かせない。

ドコサヘキサエン酸(DHA, 22:6(4,7,10,13,16,19))などの極長鎖多価不飽和脂肪酸(VLC-PUFA)は、哺乳類のさまざまな組織および細胞小器官の細胞膜の必須成分である(たとえば、神経、網膜、脳および免疫細胞)。臨床研究から、DHAは乳児の脳の成長および発達、ならびに成人の正常な脳機能の維持に不可欠であることが示された(Martinetz, M. (1992) J. Pediatr. 120:S129 S138)。DHAはまた、シグナル伝達プロセス、ロドプシン活性化、ならびに桿体および錐体の発達に有意な影響を及ぼす。(Giusto, N.M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391)さらに、DHAのプラス効果は、高血圧、関節炎、鬱病、血栓症、およびがんなどの疾病についても判明した(Horrocks, L.A. and Yeo, Y.K. (1999) Pharmacol. Res. 40:211-215)。したがって、DHAの適切な食餌性補給はヒトの健康にとって重要である。ヒトの体は、エイコサペンタエン酸(EPA, 20:5(5,8,11,14,17))をDHAに変換することができる。EPAは通常、海産食品に見いだされ、北大西洋産の脂肪分の多い魚に豊富に存在する。DHAの前駆体として機能することに加えて、EPAはヒトの体内でエイコサノイドに変換されることもある。EPAから生成されるエイコサノイドは、抗炎症性および抗血小板凝集特性を有する。数多くの有益な健康効果がDHA、またはEPAおよびDHAの混合物について明らかになっている。

ビタミンE(トコフェロール)は、植物および動物のいずれにおいても酸化的損傷の防止にとって重要な脂溶性抗酸化物質であり、心血管疾患の予防に有益な効果があることで知られる。ビタミンEは植物油に天然に存在し、酸化的損傷を防止する役割を果たしている。したがって、植物油は食餌においてビタミンEの有用な供給源である。加えて、植物油から抽出されたビタミンEは、他の食品中の添加物、健康サプリメント、および化粧品として使用される。

これまで、油のビタミンE濃度とn-3 VLC-PUFA(すなわちEPAもしくはDHA)成分とを関連づけることはできなかった。ビタミンEは、α、β、γ、およびδなどのさまざまな形のトコフェロールとして植物中に存在する。52個の在来種および15個の育種系統のセイヨウアブラナ(Brassica napus)を含む研究は、αトコフェロールと18:1+18:2との間に有意な正の相関関係があるが、γトコフェロールと脂肪酸含量との間に相関関係はないことを明らかにした(Li et al. (2013) J Agric Food Chem 61:34-40)。トコフェロール濃度は、遺伝子操作された脂肪酸組成を有するさまざまなセイヨウアブラナ種子において不飽和度と相関はなかった(Abidi et al (1999) J Am Oil Chem Soc 76, 463-467, 及びDolde et al (1999) J Am Oil Chem Soc 76, 349-355)。

したがって、トコフェロールを好ましくは高濃度で含有する植物、特に種子の、確実な供給源を提供する必要がある。

Martinetz, M. (1992) J. Pediatr. 120:S129 S138

Giusto, N.M., et al. (2000) Prog. Lipid Res. 39:315-391

Horrocks, L.A. and Yeo, Y.K. (1999) Pharmacol. Res. 40:211-215

Li et al. (2013) J Agric Food Chem 61:34-40

Abidi et al (1999) J Am Oil Chem Soc 76, 463-467

Dolde et al (1999) J Am Oil Chem Soc 76, 349-355

本発明はこのように、植物のトコフェロール含量を対照植物と比較して増加させるための方法に関するものであって、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。

ある実施形態において、方法はさらに、ω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。

ある実施形態において、方法はさらに、Δ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。

ある実施形態において、方法はさらに、Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることを含む。Δ4-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチドが発現されることが好ましい。さらに好ましくは、コエンザイムA依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびリン脂質依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド。

少なくとも2つの追加のポリヌクレオチドが発現されることが好ましい。さらにまた、本発明は3つの追加のポリヌクレオチドすべての発現を検討する。したがって、方法はさらに、Δ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(好ましくは、コエンザイムA依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびリン脂質依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド)ならびにω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることを含んでいてもよい。

その上、本発明の方法は、Δ15-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることをさらに含んでいてもよい。

ある実施形態において、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来(好ましくはThraustochytrium sp. ATCC21685由来)のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(好ましくは少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ならびに場合により、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(好ましくは少なくとも2つのポリヌクレオチド)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが発現される。好ましくは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来(好ましくはThraustochytrium sp. ATCC21685由来)のΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドが発現される。さらに、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドを発現させることが想定される。本明細書において他に記載したように、前記ポリヌクレオチドのバリアントも発現させることができる。

本発明の方法にしたがって、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、Δ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチド、ならびに場合により、ω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも3つのポリヌクレオチド、およびΔ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも2つのポリヌクレオチドが発現されることが想定される。好ましくは、コエンザイムA依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびリン脂質依存性Δ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが発現される。 ある実施形態において、ポリヌクレオチドは植物の種子において発現される。

本発明によれば、トコフェロール含量は植物の種子において、好ましくは、対照植物の種子中のトコフェロール含量と比べて増加しているはずであり、特に植物の種子油中のトコフェロール含量は対照植物の種子油と比較して増加する。

好ましくは、上記のエロンガーゼおよびデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは組換えポリヌクレオチドである。この組換えポリヌクレオチドは、それをアグロバクテリウムによる形質転換などの組換え法で植物に導入することによって、植物において発現が可能である。したがって、その方法は、上記ポリヌクレオチドを導入して発現させるステップを含むことができる。

ある実施形態において、方法はさらに、(対照植物と比較して)高いトコフェロール含量を有する植物を選択するステップを含むことができる。

本発明によると、上記のポリヌクレオチドは1つのT-DNAもしくは構築物上に(したがって同一のT-DNAもしくは構築物上に)存在する。当該構築物もしくはT-DNAは植物のゲノムに安定に組み込まれるものとする。ある実施形態において、植物はT-DNAについてホモ接合性である。別の実施形態において、植物はT-DNAについてヘミ接合性である。植物が1つの遺伝子座において1つのT-DNAについてホモである場合、これは、それにもかかわらずここではシングルコピーとみなされ、すなわち1コピーである。本明細書で使用されるダブルコピーは、1つもしくは2つの遺伝子座において、ヘミ接合性またはホモ接合性の状態で、2つのT-DNAが挿入された植物を指す。

本発明はまた、トコフェロール含量を増やすために、本発明の方法との関連で記載されたポリヌクレオチドのための発現カセットを含有する構築物もしくはT-DNAに関する。

好ましくは、構築物もしくはT-DNAは、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、ならびに場合により、上記のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードする少なくとも1つの追加のポリヌクレオチドのための発現カセットを含有するものとする。

本発明はさらに、植物のトコフェロール含量を対照植物と比べて増加させるための、本発明との関連で記載されるポリヌクレオチドの使用、または前記ポリヌクレオチドのための発現カセットを含有する構築物もしくはT-DNAの使用に関する。

本発明はまた、トコフェロール含量を増加させるための、本発明の方法との関連で記載されるポリヌクレオチドのための発現カセットを含有する、または本発明のT-DNAもしくは構築物を含有する、植物に関する。

本発明はまた、本発明の植物の種子にも関する。上記種子は、トコフェロール含量を増加させるための、本発明の方法との関連で記載されるポリヌクレオチドのための発現カセット、または本発明のT-DNAもしくは構築物を含有するものとする。ある実施形態において、種子は本発明の油を含有するものとする。油は以下に記載する。

トコフェロール含量を増加させるための方法は、植物から、とりわけ植物の種子から、油を採取するステップを追加して含むことが好ましい。上記の油は、本明細書に記載の増加したトコフェロール含量を有するはずである。それに加えて、油はVLC-PUFAの含量が増加しているはずである。本発明にしたがって、油はトコフェロール含量を維持する条件下で植物から採取されるものとする。そのような方法は当技術分野でよく知られている。

本発明はまた、油を製造する方法も提供するが、その方法において油は高いトコフェロール含量を示す。さらに、油は高いVLC-PUFA含量、なかでもEPAおよび/またはDHAの高含量をを示す可能性がある。特に好ましい態様において、これらの方法は対応する植物油を製造するための方法である。したがって、本発明は油を製造する方法も提供する。

本発明はまた、植物を作製するための方法も提供するが、そこでその植物もしくはその子孫は、トコフェロール含量の高い油の起源として使用することができる。油はさらにVLC-PUFA含量、とりわけEPAおよび/またはDHA含量が高いことが好ましい。したがって、本発明は、有益なことに、種子油中のトコフェロール含量の高い遺伝的表現型を有する植物を作製するための方法も提供する。さらに、植物は、その組織もしくは構成部分において高いVLC-PUFA含量を有する可能性があり、好ましくは種子油において高いEPAおよび/またはDHA含量を有する可能性がある。

発明の詳細な説明 本発明のさまざまな態様を以下にさらに詳細に記載する。前項に示される定義および説明は適切に適用される。当然のことながら、詳細な説明はクレイムの範囲を制限することを意図するものではない。

トコフェロールは当技術分野ではよく知られている。「トコフェロール含量」という用語は、好ましくは、全トコフェロール含量のことを指し、すなわち植物、植物の一部(好ましくは種子)またはその油(特に種子油)の中に存在するトコフェロール類の量の総計を表す。具体的には、その用語は、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、およびδトコフェロールの量の総計を表す。しかしながら、その用語は、αトコフェロールの量、βトコフェロールの量、γトコフェロールの量、またはδトコフェロールの量を表すことも想定される。好ましい実施形態において、その用語はγトコフェロールの量を指す。別の好ましい実施形態において、その用語はδトコフェロールの量を指す。やはり好ましいのは、その用語が、全トコフェロール、γトコフェロール、および/またはδトコフェロールの量を指すことである。

したがって、本発明との関連で「トコフェロール」は、好ましくは、全トコフェロール、αトコフェロール、βトコフェロール、γトコフェロール、および/またはδトコフェロールを指す。特に、その用語は全トコフェロール、γトコフェロール、またはδトコフェロールを指す。

好ましくは「量」または「含量」という用語は、(好ましくは植物中の、より好ましくは種子中の、そしてもっとも好ましくは種子油中の)絶対量または濃度を表す。ある実施形態において、植物の種子油中のトコフェロールの含量は、対照植物の種子油と比べて増加する。

トコフェロール含量の増加は、植物、または植物の部分、組織もしくは器官、好ましくは種子、なかでも特に油の中のトコフェロール含量の、対照植物と比較して少なくとも1% 、少なくとも5% 、少なくとも10% 、少なくとも12% 、または少なくとも15%の増加を意味する。

本明細書に記載のトコフェロールの「含量の増加(増加した含量)」または「高い含量」は、好ましくは、97 mg/100 g種子油より高い、特に100 mg/100 g種子油より高い種子油中の全トコフェロール含量、31 mg/100 g種子油より高い、特に33 mg/100 g種子油より高い種子油中のαトコフェロール含量、0.6 mg/100 g種子油より高い種子油中のβトコフェロール含量、65 mg/100 gより高い、特に70 mg/100 g種子油より高い種子油中のγトコフェロール含量、または1.4 mg/100 g種子油より高い、特に1.5 mg/100 g種子油より高い種子油中のδトコフェロール含量を表す。

本明細書に記載のトコフェロールの「含量の増加(増加した含量)」または「高い含量」はまた、好ましくは、35 mg/100 g種子より高い、特に39 mg/100 g種子より高い全トコフェロール種子含量、12 mg/100 g種子より高い、特に13 mg/100 g種子より高い種子中のαトコフェロールの種子含量、0.22 mg/100 g種子より高い種子中のβトコフェロールの種子含量、25 mg/100 g種子より高い、特に26 mg/100 g種子より高い種子中のγトコフェロールの種子含量、または0.45 mg/100 g種子より高い、特に0.48 mg/100 g種子より高い種子中のδトコフェロールの種子含量を表す。

種子、特に油はさらに、高いVLC-PUFA(極長鎖多価不飽和脂肪酸)含量を有する可能性がある。

適当な対照植物の選択肢には、日常的な実験設定の一部であって、対応する野生型植物、または本明細書に記載のデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドのない、対応する植物を含めることができる。対照植物は典型的には、評価されるべき植物と同一の植物種、または同一の変種の植物である。対照植物は、評価されるべき植物のヌル欠損体であってもよい。ヌル欠損体(またはヌル対照植物)は、分離(segregation)によって導入遺伝子を失った個体である。さらに、対照植物は本発明の植物の生育条件に対して同一もしくは基本的に同一の生育条件下で、すなわち本発明の植物の近くで、しかもそれと同時に、生育させる。本明細書で使用される「対照植物」は好ましくは、植物全体だけでなく、種子および種子の一部などの植物部位を指す。対照は対照植物由来の油であってもよい。

好ましくは、対照植物は同質遺伝子系の対照植物である(従って、対照油はたとえば、同質遺伝子系対照植物由来とする)。

本明細書で使用される「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」という用語は、少なくとも2個、好ましくは3、4、5、または6個の二重結合を有する脂肪酸を指す。さらに、当然のことながら、このような脂肪酸は脂肪酸鎖の中に、好ましくは18から24個の炭素原子を含む。さらに好ましくは、その用語は、脂肪酸鎖の中に20から24個の炭素原子を有する長鎖PUFA(VLC-PUFA)に関する。本発明の意味における多価不飽和脂肪酸は、DHGLA 20:3 (8,11,14)、ARA 20:4 (5,8,11,14)、ETA 20:4 (8,11,14,17)、EPA 20:5 (5,8,11,14,17)、DPA 22:5 (4,7,10,13,16)、DPA n-3 (7,10,13,16,19)、DHA 22:6 (4,7,10,13,16,19)、より好ましくは、エイコサペンタエン酸(EPA) 20:5 (5,8,11,14,17)、およびドコサヘキサエン酸(DHA) 22:6 (4,7,10,13,16,19)である。したがって、当然のことながら、本発明で与えられる方法はEPAおよび/またはDHAおよび/またはトコフェロールに関連していることがもっとも好ましい。さらに、合成中に生じるVLC-PUFAの中間体も含まれる。このような中間体は好ましくは、本発明のポリペプチドのデサチュラーゼ、ケトアシルCoAシンターゼ、ケトアシルCoAレダクターゼ、デヒドラターゼ、およびエノイルCoAレダクターゼ活性によって基質から形成される。好ましくは、基質には、LA 18:2 (9,12)、GLA 18:3 (6,9,12)、DHGLA 20:3 (8,11,14)、ARA 20:4 (5,8,11,14)、エイコサジエン酸20:2 (11,14)、エイコサテトラエン酸20:4 (8,11,14,17)、エイコサペンタエン酸20:5 (5,8,11,14,17)が含まれる。本発明にしたがって使用される、多価不飽和脂肪酸を含めた脂肪酸の系統名、その対応する慣用名、および略語表記が以下の表に与えられる:

本明細書で使用される「栽培(培養する)」という用語は、植物において細胞のトコフェロール生成を可能にし、種子が高含量のトコフェロールを含有できるようにし、または油が高含量のトコフェロールを含有できるようにする(対照と比較して)栽培/培養条件下で、トランスジェニック植物を維持および生育させることを表す。これは、本発明の方法に関連して本明細書に記載されるポリヌクレオチドが植物中に存在することを意味する。宿主細胞を培養するための適当な培養条件は、以下にさらに詳細に記載する。

本明細書に記載の酵素をコードするポリヌクレオチドは、植物のゲノムに安定して組み込まれることが好ましい。さらに好ましくは、ポリヌクレオチドは植物のゲノムに安定的に組み込まれるT-DNAまたは構築物上に存在する。したがって、ポリヌクレオチドは1つの、すなわち同一のT-DNA(または構築物)上に存在する。同じことは、本明細書に記載の発現カセットにも当てはまる。したがって、ヌクレオチドまたは発現カセットは同一T-DNAに含まれていることが好ましい。

当然のことながら、2コピー以上のT-DNAが植物(たとえばT-DNA(もしくは構築物)に関してホモ接合性である植物)中に、またはアグロバクテリウムによる形質転換が2つ以上の組込み事象をもたらした植物中に、存在することがある。

本明細書で使用される「得る(採取する)」という用語は、本発明の、宿主細胞および培養培地を含めた細胞培養物、または植物もしくは植物部位、特に種子の提供、ならびにトコフェロールを含有するそれらの精製標品もしくは部分精製標品の提供を含む。植物、植物部位、または精製もしくは部分精製標品はさらに、多価不飽和脂肪酸、好ましくはARA, EPA, DHAを、遊離型またはCoA結合型の状態で、膜リン脂質として、またはトリアシルグリセリドエステルとして含有することができる。さらに好ましくは、PUFAおよびVLC-PUFAをトリグリセリドエステルとして、たとえば油の形で得ることができる。精製法に関するより詳細な情報は以下で確認することができる。

本発明の「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボ核酸またはリボ核酸のことをいう。特に指示のない限り、本明細書の「ポリヌクレオチド」は一本鎖DNAポリヌクレオチドまたは二本鎖DNAポリヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの長さは、塩基対の数(「bp」)またはヌクレオチド数(「nt」)の指定により、本明細書に従って示される。本明細書によれば、二つの標記は、それぞれの核酸が一本鎖であるか、二本鎖であるかにかかわらず区別せずに使用される。また、ポリヌクレオチドはそれぞれのヌクレオチド配列によって規定されるので、ヌクレオチド/ポリヌクレオチド、およびヌクレオチド配列/ポリヌクレオチド配列という用語は区別なく使用され、したがって核酸配列に言及することは、その核酸配列と同一の配列をもつ一続きの核酸からなる、またはそれを含有する核酸を規定するように意図されている。

具体的には、本明細書に従って使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ遺伝子に関する限り、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドに関する。デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする好ましいポリヌクレオチドは、実施例セクションの表2に示す(核酸配列およびポリペプチド配列の配列番号は右側の2列に記載される)。

好ましくは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドは、植物における混合型の発現によって、植物中の、特に種子、種子油、または植物全体もしくはその部位の中の、トコフェロールの含量、したがってその量を増加させることができるはずである。増加が統計学的に有意であるかどうかは、たとえばスチューデントt-検定などの、当業者に公知の統計学的検定によって、少なくとも90% の信頼水準で、好ましくは少なくとも95%、さらにもっと好ましくは少なくとも98% の信頼水準で決定することができる。より好ましくは、増加とは、対照と比べて、特に対照に由来する種子、種子油、粗製油、または精製油と比べて、少なくとも1% 、少なくとも5% 、少なくとも10% 、少なくとも12% 、または少なくとも15% (好ましくは重量比)のトコフェロール量の増加である。

さらに、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドは、植物における混合型の発現によって、たとえば種子油または植物全体もしくはその部位中のPUFA量、および特にVLC-PUFA量を増加させることができるはずである。より好ましくは、増加とは、野生型対照と比べて、特に野生型対照に由来する種子、種子油、粗製油、または精製油と比べて、少なくとも5% 、少なくとも10% 、少なくとも20% 、または少なくとも30% (好ましくは重量比)のVLC-PUFA含有トリグリセリドの量の増加である。

したがって、本発明は、対照植物の油のトコフェロール含量と比較してトコフェロール含量が増加しているだけでなく、PUFA含量、特にVLC-PUFA含量も増加している油の製造も可能にする。

好ましくは、前記のVLC-PUFAは、C20、C22またはC24脂肪酸本体を有する多価不飽和脂肪酸であり、さらに好ましくはEPAおよび/またはDHAである。油サンプルの脂質分析を添付の実施例に示す。

多価不飽和C20-および/またはC22-脂肪酸分子を有する脂肪酸エステルは、油または脂質の形で、たとえば、スフィンゴ脂質;ホスホグリセリド;脂質;スフィンゴ糖脂質などの糖脂質;ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールもしくはジホスファチジルグリセロールなどのリン脂質;モノアシルグリセリド;ジアシルグリセリド;トリアシルグリセリド;またはアセチルコエンザイムAエステルなどの他の脂肪酸エステルといった化合物の形で、分離することができるが、それらは、脂肪酸エステルの調製のために使用される生物に由来する、少なくとも2、3、4、5または6個の、好ましくは5または6個の二重結合を有する多価不飽和脂肪酸を含有する。好ましくは、それらは、そのジアシルグリセリド、トリアシルグリセリドの形で、および/またはホスファチジルコリンの形で、特に好ましくは、トリアシルグリセリドの形で分離される。これらのエステルに加えて、多価不飽和脂肪酸は、ヒト以外のトランスジェニック生物または宿主細胞、好ましくは植物に、遊離脂肪酸として、または他の化合物と結合した状態でも存在する。脂肪酸は結合型として生産されることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの助けにより、これらの多価不飽和脂肪酸を、製造されるべき好ましいトリグリセリドのsn1、sn2および/またはsn3位に位置づけることができる。

本明細書に記載のデサチュラーゼおよびエロンガーゼは当技術分野でよく知られている。

「デサチュラーゼ」という用語は、さまざまな数の不飽和炭素原子二重結合を有する、さまざまな長さの脂肪酸の不飽和化を触媒する、すべての酵素活性および酵素を含む。具体的には、これには、好ましくは4番目および5番目の炭素原子の脱水素を触媒するΔ4(d4)-デサチュラーゼ;好ましくは5番目および6番目の炭素原子の脱水素を触媒するΔ5(d5)-デサチュラーゼ;好ましくは6番目および7番目の炭素原子の脱水素を触媒するΔ6(d6)-デサチュラーゼ;好ましくは15番目および16番目の炭素原子の脱水素を触媒するΔ15(d15)-デサチュラーゼが含まれる。ω3(o3)デサチュラーゼは好ましくはn-2およびn-3炭素原子の脱水素を触媒する。

「エロンガーゼ」という用語は、さまざまな数の不飽和炭素原子二重結合を有する、さまざまな長さの脂肪酸の伸長を触媒する、すべての酵素活性および酵素を含む。好ましくは、本明細書で使用される「エロンガーゼ」という用語は、脂肪酸の炭素鎖の中に、好ましくは脂肪酸の1、5、6、9、12および/または15位に、2つの炭素分子を導入するエロンガーゼ活性を指す。

好ましい実施形態において、「エロンガーゼ」という用語は、飽和および不飽和脂肪酸のいずれのカルボニル末端(すなわち1位)にも、2つの炭素分子を導入するエロンガーゼの活性を指す。

本発明の基礎となる研究において、優れたデサチュラーゼおよびエロンガーゼ触媒活性を有する酵素が、トコフェロール含量を増加させるために与えられた。実施例セクションの表2は、本発明において使用される好ましいデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードする、好ましいポリヌクレオチドを記載する。したがって、本発明との関連で使用することができるデサチュラーゼおよびエロンガーゼのポリヌクレオチドを表2に示す。本明細書に記載される通り、前記ポリヌクレオチドのバリアントも使用することができる。

Δ6-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、WO2001/059128、WO2004/087902およびWO2005/012316に記載されているが、前記文書はヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ5-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、WO2002026946およびWO2003/093482に記載されているが、前記文書はヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ6-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、WO2005/012316、WO2005/083093、WO2006/008099およびWO2006/069710に記載されているが、前記文書はプラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

ある実施形態において、Δ6-デサチュラーゼはCoA(コエンザイムA)依存性Δ6-デサチュラーゼである。

Δ6-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、WO2005/012316、WO2005/007845およびWO2006/069710に記載されているが、前記文書は海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ12-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2006100241に記載されているが、前記文書はダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ4-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2004/090123に記載されているが、前記文書はユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ5-エロンガーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2005/012316およびWO2007/096387に記載されているが、前記文書はプラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

ω3-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2008/022963に記載されているが、前記文書はフィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

ω3-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2005012316およびWO2005083053に記載されているが、前記文書はジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ4-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2002026946に記載されているが、前記文書はヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

パブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドがWO2003078639およびWO2005007845に記載されている。これらの文書は、特にその文書がΔ4-デサチュラーゼ"PIDES 1"、ならびにそれぞれWO2003078639の図3a-3d、およびWO2005007845の図3a、3bに関係する限りにおいて、その全体が本明細書に組み入れられる。

Δ15-デサチュラーゼ活性を示すポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、たとえばWO2010/066703に記載されているが、前記文書はトウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)C5株由来のこの酵素を記載しており、その全体が本明細書に組み入れられる。

前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書において「標的遺伝子」または「目的の核酸」とも称される。ポリヌクレオチドは当技術分野でよく知られている。前記ポリヌクレオチドの配列は、実施例セクションに記載のT-DNAの配列の中に見いだすことができる(たとえば、配列番号3に示される配列を有するVC-LTM593-1qczの配列を参照し、表1も参照されたい)。ポリヌクレオチドおよびポリペプチド配列は実施例セクションの表2においても与えられる。

本発明に関連して本明細書に記載されるデサチュラーゼおよびエロンガーゼとして好ましいポリヌクレオチドの配列を以下に示す。本明細書に記載のように、ポリヌクレオチドのバリアントも使用することができる。本発明にしたがって使用されるデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、特定の生物に由来することができる。ある生物(たとえばヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens))に由来するポリヌクレオチドはコドン最適化されることが好ましい。具体的には、ポリヌクレオチドは植物における発現のためにコドン最適化されるべきである。

「コドン最適化」という用語は当業者によく理解されている。好ましくは、コドン最適化されたポリヌクレオチドは、それが1つもしくは複数の植物種におけるコドン使用頻度に適応しているという点で、その配列の起源である生物での核酸配列と比べると改変されたポリヌクレオチドである。典型的には、少なくとも1つまたは2つ以上のコドンを、所定の生物(特に植物)の遺伝子においてより頻繁に使用される1つもしくは複数のコドンで置き換えることによって、ポリヌクレオチド、特にコード領域をその生物(特に植物)における発現に適応させる。本発明によれば、「ある生物から得られた」(言い換えると「ある生物由来の」)特定のポリヌクレオチドのコドン最適化バリアントは、好ましくは、前記生物に由来するポリヌクレオチドとみなされるものとする。 好ましくは、コドン最適化されたポリヌクレオチドは、コドン最適化されないポリヌクレオチド(すなわち野生型配列)によってコードされるポリペプチドと同じ配列を有する同一ポリペプチドをコードするものとする。本発明の基礎となる研究において、コドン最適化されたポリヌクレオチドが(デサチュラーゼとして)使用された。コドン最適化されたポリヌクレオチドは、配列番号3に示される配列を有するベクターのT-DNAに含まれる(表1を参照されたい)。

本発明に関連して本明細書に記載される、デサチュラーゼおよびエロンガーゼとして好ましいポリヌクレオチドの配列、ならびにその配列に対応するポリペプチドを下記において説明する。当然、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのバリアントを、本発明に関連して使用することができる(特に、方法、T-DNA,構築物、植物、種子などとの関連において)。

本発明にしたがって使用されるΔ6-エロンガーゼは、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)に由来することが好ましい。前記Δ6-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号258に示す。前記Δ6-エロンガーゼは、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましいが、特に、前記Δ6-エロンガーゼは、コドン最適化されたそのバリアントによってコードされる。ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)に由来するΔ6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド1267-2139に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号257にも示される。

本発明にしたがって使用されるΔ5-デサチュラーゼは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来することが好ましい。本発明との関連においてヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)は、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)ATCC21685を意味することが好ましい。前記Δ5-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号260に示す。前記Δ5-デサチュラーゼは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい:特に、前記Δ5-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するΔ5-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド3892-5211に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号259にも示される。本発明によれば、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するΔ5-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチド(すなわち2コピー以上のポリヌクレオチド)を発現させることが想定される(好ましくは2つのポリヌクレオチド)。したがって、本発明のT-DNA、構築物、植物、種子などは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するΔ5-デサチュラーゼをコードする、2コピー(もしくは3コピー以上)のポリヌクレオチドを含有するものとする。

本発明にしたがって使用されるΔ6-デサチュラーゼは、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来することが好ましい。前記Δ6-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号262に示す。前記Δ6-デサチュラーゼは、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ6-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来するΔ6-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド7802-9172に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号261にも示される。

本発明にしたがって使用されるΔ6-エロンガーゼは、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)に由来することが好ましい。前記Δ6-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号264に示す。前記Δ6-エロンガーゼは、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ6-エロンガーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)に由来するΔ6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド12099-12917に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号263にも示される(したがって、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)に由来するΔ6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号263に示される配列を有することが好ましい)。

本発明にしたがって使用されるΔ12-エロンガーゼは、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)に由来することが好ましい。前記Δ12-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号266に示す。前記Δ12-エロンガーゼは、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ12-エロンガーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)に由来するΔ12-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド14589-15785に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号265にも示される。

本発明にしたがって使用されるΔ5-エロンガーゼは、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来することが好ましい。前記Δ5-エロンガーゼの好ましい配列を配列番号276に示す。前記Δ5-エロンガーゼは、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ5-エロンガーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)に由来するΔ5-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド38388-39290に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号275にも示される。

本発明にしたがって使用されるω3-デサチュラーゼは、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)に由来することが好ましい。前記ω3-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号268に示す。前記ω3-デサチュラーゼは、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記ω3-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)に由来するω3-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド17690-18781に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号267にも示される。本発明によれば、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)に由来するω3-デサチュラーゼをコードする2つ以上のポリヌクレオチド(すなわち2コピー以上のポリヌクレオチド)を発現させることが想定される(好ましくは2つのポリヌクレオチド)。したがって、本発明のT-DNA、構築物、植物、種子などは、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)に由来するω3-デサチュラーゼをコードする、2コピー(もしくは3コピー以上)のポリヌクレオチドを含有するものとする。

本発明にしたがって使用されるω3-デサチュラーゼは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)に由来することが好ましい。前記ω3-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号270に示す。前記ω3-デサチュラーゼは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記ω3-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)に由来するω3-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド20441- 21526に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号269にも示される。

本発明の方法によれば、植物において、好ましくは同一でないω3-デサチュラーゼをコードする、2つ以上の同一でないポリヌクレオチドを発現させることが特に想定される。好ましくは、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびフィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に2つのポリヌクレオチド、すなわち2コピーのポリヌクレオチド)が発現される。

本発明にしたがって使用されるΔ4-デサチュラーゼは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来することが好ましい。前記Δ4-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号272に示す。前記Δ4-デサチュラーゼは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ4-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)に由来するΔ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド26384- 27943に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号271にも示される。

本発明にしたがって使用されるΔ4-デサチュラーゼは、パブロバ(Pavlova lutheri)に由来することが好ましい。前記Δ4-デサチュラーゼの好ましい配列を配列番号274に示す。前記Δ4-デサチュラーゼは、パブロバ(Pavlova lutheri)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ4-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。パブロバ(Pavlova lutheri)に由来するΔ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド34360-35697に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。このポリヌクレオチドの配列は配列番号273にも示される。

本発明の方法によれば、植物において、好ましくは同一でないΔ4-デサチュラーゼをコードする、2つの同一でないポリヌクレオチドを発現させることがさらに想定される。好ましくは、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド(特に2つのポリヌクレオチド)が発現される。

本発明にしたがって使用されるΔ15-デサチュラーゼは、トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)に由来することが好ましい。前記Δ15-デサチュラーゼは、トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)に由来するポリヌクレオチドによってコードされることが好ましい;特に、前記Δ15-デサチュラーゼは、コドン最適化された前記ポリヌクレオチドのバリアントによってコードされる。トウモロコシごま葉枯病菌(Cochliobolus heterostrophus)に由来するΔ15-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドは、配列番号9のヌクレオチド2151- 3654に示される配列を有するポリヌクレオチドであることが好ましい。

上記のように、Δ6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)から得ることができる。さらに、Δ6-エロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)から得ることができる。具体的には、本発明の方法との関連で、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、および海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物において発現させることが想定される。 上記のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明にしたがって、たとえば、オストレオコッカス(Ostreococcus)、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium)、ユーグレナ(Euglena)、タラシオシラ(ニセコアミケイソウ)(Thalassiosira)、エキビョウキン(Phytophthora)、フハイカビ(Pythium)、コクリオボリス(Cochliobolus)、ニセツリガネゴケ(Physcomitrella)属の生物から採取可能であり、または採取される。しかしながら、オルソログ、パラログ、もしくは他のホモログが他の種から同定される可能性がある。好ましくは、それらは、植物、たとえば、藻類、たとえばハプト藻のイソクリシス属(Isochrysis)、プラシノ藻のマントニエラ属(Mantoniella)、渦鞭毛藻のクリプテコディニウム属(Crypthecodinium);藻類/珪藻類、たとえばフェオダクチラム属(Phaeodactylum);蘚類、たとえばヤノウエノアカゴケ属(Ceratodon);または高等植物、たとえばアレウリティア(Aleuritia)などのサクラソウ科(Primulaceae)、キンセンカ属のカレンデュラ・ステラータ(Calendula stellata)、オステオスペルマム・スピネセンス(Osteospermum spinescens)もしくはオステオスペルマム・ヒオセロイデス(Osteospermum hyoseroides);微生物、たとえば真菌、たとえばコウジカビ属(アスペルギルス属)(Aspergillus)、ハエカビ属(Entomophthora)、ケカビ属(Mucor)もしくはモルテェレラ属(Mortierella);細菌、たとえばシュワネラ属(Shewanella);酵母または動物から採取される。好ましい動物はカエノラブディティス属 (Caenorhabditis)などの線虫、昆虫または脊椎動物である。脊椎動物の中で、核酸分子は、好ましくは、ユーテレオストミー(Euteleostomi)、条鰭亜綱(Actinopterygii);新鰭亜網(Neopterygii);真骨上目(Teleostei);正真骨亜区(Euteleostei)、原棘鰭上目(Protacanthopterygii)、サケ目(Salmoniformes);サケ科(Salmonidae)またはタイヘイヨウサケ属(Oncorhynchus)から、より好ましくは、サケ目から、最も好ましくは、タイセイヨウサケ属(Salmo)などのサケ科、たとえば、ニジマス(Oncorhynchus mykiss)、Trutta truttaまたはブラウントラウト(Salmo trutta fario)などの属および種から得ることができる。さらに、核酸分子は珪藻類、たとえば、タラシオシラ(ニセコアミケイソウ)(Thalassiosira)またはフェオダクチラム(Phaeodactylum)属から得ることができる。

したがって、本発明にしたがって使用される「ポリヌクレオチド」という用語はさらに、本発明のポリヌクレオチドのオルソログ、パラログもしくは他のホモログを表す、前記の具体的なポリヌクレオチドのバリアントまたは誘導体を包含する。その上、本発明のポリヌクレオチドのバリアントもしくは誘導体には、人工的に作製された変異タンパク質も含まれる。前記変異タンパク質としては、たとえば、変異誘発技術により作製されて、基質特異性が改善もしくは改変された酵素、またはコドン最適化されたポリヌクレオチドがある。

本発明の核酸バリアントもしくは誘導体は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加および/または欠失により、与えられた規準のポリヌクレオチドと異なるポリヌクレオチドである。基準のポリヌクレオチドがタンパク質をコードしている場合、このタンパク質の機能はバリアントもしくは誘導体ポリヌクレオチドにおいても保存され、したがってバリアント核酸配列は依然として上記デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードしているはずである。バリアントもしくは誘導体は、前記の特定の核酸配列に、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズすることができる核酸配列を含有するポリヌクレオチドも包含する。こうしたストリンジェントな条件は当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6において確認することができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃にて6x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(= SSC)中とするハイブリダイゼーション条件であって、その後50〜65℃(特に65℃)にて0.2 xSSC, 0.1% SDS中での1回もしくは複数回の洗浄ステップに続く。こうしたハイブリダイゼーション条件は、核酸のタイプに応じて、ならびに、たとえば有機溶媒が存在する場合に、バッファーの温度および濃度に関して異なることが当業者に知られている。たとえば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」下では、0.1〜5 x SSC(pH 7.2)の濃度を有する水性バッファー中で、温度は、核酸のタイプに応じて42℃〜58℃の間で変動する。前記バッファー中に、たとえば50% ホルムアミドなどの有機溶媒が存在する場合、標準条件下の温度は約42℃である。DNA:DNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1 x SSCおよび20℃〜45℃、好ましくは30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドのためのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、0.1 x SSCおよび30℃〜55℃、好ましくは45℃〜55℃である。前記のハイブリダイゼーション温度は、たとえば、ホルムアミド非存在下で、長さが約100 bp(=塩基対)でG + C含量が50% の核酸について決定される。当業者は、上記のテキストまたは下記のテキスト:Sambrook et al., "Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; Hames and Higgins (Ed.) 1985, ”Nucleic Acids Hybridization: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxford; Brown (Ed.) 1991, "Essential Molecular Biology: A Practical Approach”, IRL Press at Oxford University Press, Oxfordなどのテキストを参照することによって、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を承知している。ある実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、1x SSCにおいて65℃、または1x SSCおよび50% ホルムアミドにおいて42℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.3x SSC中で65℃での洗浄を含む。別の実施形態において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、1x SSCにおいて65℃、または1x SSCおよび50% ホルムアミドにおいて42℃でのハイブリダイゼーションと、その後の0.1x SSC中で65℃での洗浄を含む。

あるいはまた、ポリヌクレオチドバリアントは、混合オリゴヌクレオチドプライマーによるDNAの増幅といったPCRに基づく技術、すなわち本発明のポリペプチドの保存されたドメインに対して縮重プライマーを使用することによって得ることができる。本発明のポリペプチドの保存されたドメインは、本発明のポリヌクレオチドの核酸配列またはポリペプチドのアミノ酸配列の配列比較によって同定することができる。鋳型として、細菌、真菌、植物、または動物由来のDNAまたはcDNAを使用することができる。さらに、バリアントとしては、実施例の表1に記載のT-DNA配列のいずれか1つに示される核酸コード配列に対して、ならびに特に、上記デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ、とりわけ表2に記載のエロンガーゼおよびデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドに対して、少なくとも50% 、少なくとも55% 、少なくとも60% 、少なくとも65% 、少なくとも70% 、少なくとも75% 、少なくとも80% 、少なくとも85% 、少なくとも90% 、少なくとも95% 、少なくとも98% または少なくとも99% 同一な核酸配列を含有するポリヌクレオチドが挙げられる。たとえば、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドに対して(ならびに、したがって配列番号3のヌクレオチド26384- 27943に示される配列を有するポリヌクレオチドに対して)少なくとも50% 、少なくとも55% 、少なくとも60% 、少なくとも65% 、少なくとも70% 、少なくとも75% 、少なくとも80% 、少なくとも85% 、少なくとも90% 、少なくとも95% 、少なくとも98% または少なくとも99% 同一であるポリヌクレオチドが想定される。当然、本明細書に記載のバリアントは、それぞれの酵素の機能を保持していなければならなず、たとえば、Δ4-デサチュラーゼのバリアントはΔ4-デサチュラーゼ活性を保持しなければならず、Δ12-デサチュラーゼのバリアントはΔ12-デサチュラーゼ活性を保持していなければならない。

同一性% の値は、アミノ酸もしくは核酸配列の全域にわたって算出されることが好ましい。さまざまなアルゴリズムに基づく一連のプログラムが、異なる配列を比較するために当業者に利用可能である。好ましい実施形態において、2つのアミノ酸配列間の同一性% は、EMBOSSソフトウェアパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice,P., Longden,I., and Bleasby,A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のneedleプログラムに組み込まれたNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman 1970, J. Mol. Biol. (48):444-453)、BLOSUM62スコア行列、ならびにギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.5を用いて求められる。EMBOSSパッケージのローカルインストールのためのガイド、ならびにWebサービスへのリンクは、http://emboss.sourceforge.netにおいて見いだすことができる。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインするために使用されるパラメーターの、限定的でない好ましい例は、BLOSUM62スコア行列、ギャップ開始ペナルティ10、およびギャップ伸長ペナルティ0.5などのデフォルトパラメーターである。また別の好ましい実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性% は、EMBOSSソフトウェアパッケージ (EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice,P., Longden,I., and Bleasby,A, Trends in Genetics 16(6), 276-277, 2000)のneedleプログラムを使用し、EDNAFULL スコア行列、ならびにギャップ開始ペナルティ10およびギャップ伸長ペナルティ0.5を用いて求められる。needleプログラムを用いて2つの核酸配列をアラインするために関連して使用されるパラメーターの、限定的でない好ましい例は、EDNAFULLスコア行列、ギャップ開始ペナルティ10、およびギャップ伸長ペナルティ0.5などのデフォルトパラメーターである。本発明の核酸およびタンパク質配列を、さらに「クエリ配列」として使用し、公開データベースに対して検索を行って、たとえば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を特定することができる。このような検索は、Altschulら (Altschul 1990, J. Mol. Biol. 215:403-10)のBLASTシリーズのプログラム(バージョン2.2)を用いて実行することができる。クエリ配列として本発明のデサチュラーゼおよびエロンガーゼの核酸配列を使用するBLASTは、BLASTn、BLASTxもしくはtBLASTxプログラムにより、デフォルトパラメーターを用いて実行され、本発明のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ配列に相同なヌクレオチド配列(BLASTn, tBLASTx)またはアミノ酸配列(BLASTx)を得ることができる。クエリ配列として本発明のデサチュラーゼおよびエロンガーゼのタンパク質配列を使用するBLASTは、BLASTpもしくはtBLASTnプログラムにより、デフォルトパラメーターを用いて実行され、本発明のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ配列に相同なアミノ酸配列(BLASTp)または核酸配列(tBLASTn)を得ることができる。比較目的でギャップ付きアラインメントを得るために、デフォルトパラメーターを用いたGapped BLASTをAltschulら (Altschul 1997, Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402)に記載のように利用することができる。

配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、または275に示す配列を有するポリヌクレオチドの好ましいバリアントを以下に記載する。

本明細書に記載のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドのバリアントは、下記からなる一群から選択される核酸配列を含有するポリヌクレオチドであることが好ましい: a) 配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、もしくは275に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列に対して少なくとも70% 、80% 、または90% 同一である核酸配列、 b) 配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、もしくは276に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して少なくとも70% 、80% 、または90% 同一であるポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに c) i) 配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、もしくは275に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列、またはii) 配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、もしくは276に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸と、ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成することができる核酸配列。

上記のように、前記核酸によってコードされるポリペプチドは、機能、ひいてはそれぞれの酵素の活性を保持していなければならない。たとえば、配列番号270に示す配列を有するポリペプチドはω3-デサチュラーゼ活性を有する。したがってこのポリペプチドのバリアントもω3-デサチュラーゼ活性を有するものとする。

したがって、本明細書に記載のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、下記からなる一群から選択される核酸配列を含有するポリヌクレオチドであることが好ましい: a) 配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、もしくは275に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列、 b) 配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、もしくは276に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列、 c) 配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、もしくは275に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列に対して少なくとも70% 、80% 、または90% 同一である核酸配列、 d) 配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、もしくは276に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドに対して少なくとも70% 、80% 、または90% 同一であるポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに e) i) 配列番号257、259、261、263、265、267、269、271、273、もしくは275に示すヌクレオチド配列を有する核酸配列、またはii) 配列番号258、260、262、264、266、268、270、272、274、もしくは276に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸と、ストリンジェントな条件下でハイブリッド形成することができる核酸配列。

事象LBFLFKは2つのT-DNA挿入を含むが、この挿入はLBFLFK Locus 1およびLBFLFK Locus 2に指定されている。この挿入を含有する植物は、配列番号3に示す配列を有するT-DNAベクターを用いた形質転換によって作製された。植物中に存在する挿入物の配列決定から、それぞれの遺伝子座はコード配列内に点変異を含有しており、その結果1つのアミノ酸が入れ替わっていることが明らかになった。この変異は遺伝子の機能に影響を与えなかった。Locus 1は、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼ(d12Des(Ps))のコード配列中に点変異を有する。その結果生じたポリヌクレオチドは配列番号324に示す配列を有する。このポリヌクレオチドは配列番号325に示す配列を有するポリペプチドをコードする。Locus 2は、パブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼ(d4Des(Pl))のコード配列に点変異を有する。その結果生じたポリヌクレオチドは配列番号326に示す配列を有する。このポリヌクレオチドは配列番号327に示す配列を有するポリペプチドをコードする。前記ポリヌクレオチドは、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチド、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドのバリアントとみなされる。ポリヌクレオチドはバリアントとみなされて、本発明との関連で使用することができる。

任意の核酸の断片、特に前記核酸配列のいずれかの断片を含有するポリヌクレオチドも、本発明のポリヌクレオチドとして網羅される。断片は、上記のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性を依然として有するポリペプチドをコードするものとする。したがって、ポリペプチドは、前記生物活性を与える、本発明のポリペプチドのドメインを含むか、またはそうしたドメインからなると考えられる。本明細書に記載の断片は、好ましくは、前記核酸配列のいずれか1つの、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも250、もしくは少なくとも500個の連続したヌクレオチドを含んでなるか、または前記アミノ酸配列のいずれか1つの、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも80、少なくとも100、もしくは少なくとも150個の連続したアミノ酸を含むアミノ酸配列をコードする。

上記のバリアントポリヌクレオチドもしくは断片は、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性をかなりの程度まで保有するポリペプチドをコードすることが好ましく、その程度は、下記の実施例で与えられるT-DNAによりコードされたポリペプチド(特に表1および2に記載のデサチュラーゼおよびエロンガーゼ)のいずれかによって示されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼ活性の、少なくとも10% 、少なくとも20% 、少なくとも30% 、少なくとも40% 、少なくとも50%、少なくとも60% 、少なくとも70% 、少なくとも80% 、または少なくとも90% であることが好ましい。

本発明に関して記載されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドを発現させるために、そのポリヌクレオチドは、作動しうるように発現制御配列に連結されるものとする。発現制御配列はそれに作動しうるように連結されるポリヌクレオチドに対して異種であることが好ましい。当然のことながら、ポリヌクレオチドはそれぞれ、発現制御配列に作動しうるように連結される。

本明細書で使用される「発現制御配列」という用語は、目的とする核酸、この場合は上記の核酸の転写を管理する、すなわち開始させて制御することができる核酸配列を指す。このような配列は通常、プロモーター、またはプロモーターおよびエンハンサー配列の組み合わせからなるか、またはそれらを含む。ポリヌクレオチドの発現は、核酸分子の、好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写を含む。追加の調節エレメントには転写ならびに翻訳エンハンサーを含めることができる。好ましくは、以下のプロモーターおよび発現制御配列を本発明の発現ベクター中で使用することができる。cos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRまたはλ-PLプロモーターは、グラム陰性細菌において使用されることが好ましい。グラム陽性細菌用には、プロモーターamyおよびSPO2を使用することができる。酵母もしくは真菌プロモーターから、ADC1、AOX1r、GAL1、MFα、AC、P-60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHを使用することが好ましい。動物細胞または生体発現のために、プロモーター、CMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサーを使用することが好ましい。植物からは、プロモーターCaMV/35S (Franck 1980, Cell 21: 285-294)、PRP1(Ward 1993, Plant. Mol. Biol. 22)、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33、nosまたはユビキチンもしくはファゼオリンプロモーター。これに関連して、やはり好ましいのは誘導プロモーターであって、たとえば、EP 0388186 A1(すなわちベンジルスルホンアミド誘導性プロモーター)、Gatz 1992, Plant J. 2:397-404 (すなわちテトラサイクリン誘導性プロモーター)、EP 0335528 A1(すなわちアブシジン酸誘導性プロモーター)、またはWO 93/21334(すなわちエタノールもしくはシクロヘキサノール誘導性プロモーター)に記載のプロモーターなどである。さらに好適な植物プロモーターは、ジャガイモ由来の細胞質FBPアーゼのプロモーターもしくはST-LSIプロモーター(Stockhaus 1989, EMBO J. 8, 2445)、ダイズ(Glycine max)由来のホスホリボシル-ピロリン酸アミドトランスフェラーゼプロモーター(Genbank登録番号U87999)、またはEP 0249676 A1に記載の節特異的プロモーターである。特に好ましいのは、脂肪酸生合成に関与する組織において発現を可能にするプロモーターである。また特に好ましいのは、種子特異的プロモーター、たとえば慣用されるUPSプロモーターなどであるが、他のプロモーター、たとえばLeB4、DC3、ファセオリンまたはナピンプロモーターなども好ましい。さらに特に好ましいプロモーターは、単子葉植物もしくは双子葉植物に使用することができる、種子に特異的なプロモーターであって、それは、US 5,608,152(セイヨウアブラナ由来のナピンプロモーター)、WO 98/45461(シロイヌナズナ属(Arabidopsis)由来のオレオシンプロモーター)、US 5,504,200(インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)由来のファセオリンプロモーター)、WO 91/13980(アブラナ属(Brassica)由来のBce4プロモーター)、Baeumlein et al., Plant J., 2, 2, 1992:233-239(マメ科植物由来のLeB4プロモーター)に記載されているが、これらのプロモーターは双子葉植物に好適である。以下のプロモーターは単子葉植物に好適である:オオムギ由来のlpt-2もしくはlpt-1プロモーター(WO 95/15389およびWO 95/23230)、オオムギ由来のホルデインプロモーター、ならびに好適であってWO 99/16890に記載される他のプロモーター。原則として、新規プロセスのために、すべての天然プロモーターをそれらの制御配列、たとえば上記のものなどと共に使用することができる。同様に、合成プロモーターを、追加して、または単独で使用することが可能であり有利でもあるが、それは特に、そのプロモーターがたとえばWO 99/16890に記載のように種子に特異的な発現に関与する場合である。本明細書に記載のデサチュラーゼおよびエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、植物の種子において発現されることが好ましい。具体的な実施形態において、種子特異的プロモーターが本発明にしたがって用いられる。具体的な好ましい実施形態において、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、実施例の項においてデサチュラーゼおよびエロンガーゼの発現のために使用される発現制御配列に作動しうるように連結される(たとえば、VC-LTM593-1qcz rcにおいてエロンガーゼおよびデサチュラーゼを発現させるために使用されるプロモーターを参照されたい。このベクターの配列は配列番号3に示されるが、実施例の項の表1も参照されたい)。

本明細書で使用される「作動しうるように連結された」という表現は、発現制御配列および目的の核酸が、当該発現制御配列が目的の当該核酸の発現を管理することができるように連結されることを意味しており、すなわち発現制御配列が、発現されるべき核酸配列に機能的に連結されるべきことを意味する。したがって、発現制御配列および発現されるべき核酸配列は、発現されるべき核酸配列の5'末端において発現制御配列を挿入することによって、互いに物理的に連結されることがある。あるいはまた、発現制御配列および発現されるべき核酸は、発現制御配列が少なくとも1つの目的の核酸配列の発現を管理することができるように、物理的に近くに存在するだけである場合もある。発現制御配列および発現されるべき核酸は、好ましくは最大で500 bp、300 bp、100 bp、80 bp、60 bp、40 bp、20 bp、10 bpまたは5 bpだけ離れていることが好ましい。

本発明の好ましいポリヌクレオチドは、プロモーターに加えて、目的の核酸配列に作動しうるように連結されたターミネーター配列を含有する。それによって発現カセットが形成される。

本明細書で使用される「ターミネーター」という用語は、転写を終結させることができる核酸配列を意味する。こうした配列は、転写されるべき核酸配列から転写機構を引き離す原因となる。好ましくは、ターミネーターは植物において、特に植物種子において活性であるべきである。好適なターミネーターは当技術分野で知られており、好ましくはポリアデニル化シグナル、たとえばSV40-ポリ-A部位またはtk-ポリ-A部位、またはLokeら(Loke 2005, Plant Physiol 138, pp. 1457-1468)に示される植物特異的シグナルの1つを、発現されるべき核酸配列の下流に含む。

好ましい実施形態において、本明細書に記載のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは組換え体である。

本発明はさらに、デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列を含有する組換え核酸分子に関するが、この核酸配列は、その配列の由来する生物での核酸配列と比べて、1つもしくは複数の植物種のコドン使用頻度に適合させられているという点で改変されている。

本発明の目的のために、「組換え体」は、たとえば、本発明のプロセスで使用される核酸配列を含有する、核酸配列、発現カセット(=遺伝子構築物)もしくはベクターに関して、または本発明のプロセスで使用される核酸配列、発現カセット、もしくはベクターで形質転換された宿主細胞に関して、組換え法によってもたらされるそれらすべての構築物を意味するが、そうした構築物において、核酸配列、または核酸配列に作動しうるように連結されたプロモーターなどの遺伝子制御配列は、天然の遺伝子環境になく、または組換え法によって改変されている。

上記で与えられる定義は以下に適用されることが好ましい: 上記のように、本発明は植物のトコフェロール含量を対照植物と比べて増加させるための方法に関するものであって、その方法は、植物において、Δ12-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ6-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、およびΔ5-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させることを含む。ある実施形態において、その方法はさらに、ω3-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、Δ5-エロンガーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、および/またはΔ4-デサチュラーゼをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドの発現を含む(本発明の方法に関するさらに詳細については、「発明の概要」の項を参照されたいが、定義および説明はそれに基づいて適用される)。好ましくは、ポリヌクレオチドは発現カセットから発現される。

本発明はまた、植物もしくはその部分、特に植物油において高いトコフェロール含量を達成するために、本発明の方法に関連して記載されるポリヌクレオチド、構築物もしくはT-DNAを提供することに関する。

構築物もしくはT-DNAは、トコフェロール含量を増加させるために、本発明の方法に関連して記載されるポリヌクレオチドのための発現カセットを含有する。構築物もしくはT-DNAは本発明の方法と関連して使用することができる。ある実施形態において前記構築物もしくはT-DNAは、前記ポリヌクレオチドを発現させるために(トコフェロール含量を増加させるために)植物に導入される。

したがって、本発明は、Δ12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびΔ5-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含有する構築物もしくはT-DNAに関する。

遺伝子(ここでは標的遺伝子とも呼ばれる)発現のための発現カセットは、作動しうるようにプロモーター(発現制御配列)に連結された、それぞれの酵素(すなわちデサチュラーゼもしくはエロンガーゼ)をコードするポリヌクレオチドを含有するものとする。好ましくは、発現カセットはさらにターミネーターを含有する。ターミネーターはデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドの下流にあることが好ましい。

ある実施形態において、構築物もしくはT-DNAは、ω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含有する。

ある実施形態において、構築物もしくはT-DNAは、Δ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含有する。

ある実施形態において、構築物もしくはT-DNAは、Δ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含有する。

ある実施形態において、構築物もしくはT-DNAは、Δ15-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットをさらに含有する。

好ましい実施形態において、構築物もしくはT-DNAは、ω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット(好ましくは、コエンザイムA依存性Δ4-デサチュラーゼのために少なくとも1つ、ならびにリン脂質依存性Δ4-デサチュラーゼのために少なくとも1つ)をさらに含有する。

特に好ましい実施形態において、T-DNAもしくは構築物は、Δ12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、Δ6-エロンガーゼのための少なくとも2つの発現カセット、Δ5-デサチュラーゼのための少なくとも2つの発現カセット、ならびに場合により、ω3-デサチュラーゼのための少なくとも3つの発現カセット、およびΔ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも2つの発現カセット(好ましくは、CoA(コエンザイムA)依存性Δ4-デサチュラーゼのために1つ、およびリン脂質依存性Δ4-デサチュラーゼのために1つ)を含有する。

別の好ましい実施形態において、T-DNAもしくは構築物は、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ダイズ茎疫病菌(Phytophthora sojae)由来のΔ12-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ6-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ5-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット(特に少なくとも2つ)、ならびに場合により、フィチウム・イレグラレ(Pythium irregulare)由来のω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット(特に少なくとも2つ)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)由来のω3-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、プラシノ藻オストレオコッカス(Ostreococcus tauri)由来のΔ5-エロンガーゼのための少なくとも1つの発現カセット、ヤブレツボカビ(Thraustochytrium sp.)由来のΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセット、およびパブロバ(Pavlova lutheri)由来のΔ4-デサチュラーゼのための少なくとも1つの発現カセットを含有する。

T-DNAもしくは構築物が、実施例の項に記載のT-DNAベクターVC-LTM593-1qcz中のT-DNAの配列を含有することも好ましい。このベクターは配列番号3に示す配列を含む。

したがって、本発明は、植物において標的遺伝子を発現させるためのT-DNAを提供するが、このT-DNAは左および右境界エレメント、ならびに少なくとも1つの発現カセットを含有しており、この発現カセットはプロモーター、それに機能しうるように連結された標的遺伝子、およびその下流にターミネーターを含有するものであって(したがって少なくとも上記の発現カセット)、このT-DNAの長さは、左から右境界エレメントまで測定され、標的遺伝子を含んで、少なくとも30000 bpの長さを有する。ある実施形態において、発現カセットは少なくとも500 bpの長さのセパレーターによってT-DNAのもっとも近い境界から隔てられている。

ある実施形態において、本発明のT-DNAもしくは構築物は、上記のデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードする発現カセット間にセパレーターを含有することができる。発現カセットは、互いに他から少なくとも100塩基対のセパレーターによって隔てられていることが好ましい。したがって、各発現カセット間にセパレーターが存在する。

したがって、本発明は、核酸、すなわちポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、本発明のT-DNAもしくは構築物であるか、またはそれを含有する。したがって、本発明のT-DNAは、ポリヌクレオチド、好ましくはDNA、そしてもっとも好ましくは2本鎖DNAである。本発明の「T-DNA」は、植物の遺伝物質(ゲノム)内への最終的な組込みを可能にする核酸である。そのような組込みのために、それぞれの植物材料の形質転換が必要とされることを当業者は理解しており、好ましい形質転換法および植物作製法は本明細書に記載される。

本発明にしたがって、本発明により定義されたT-DNAもしくは構築物を含有する核酸も与えられる。たとえば、本発明のT-DNAは、環状核酸、たとえばプラスミドの中に含まれていてもよく、追加の核酸部分が左右境界エレメントの間に、すなわち本発明の発現カセット(1つもしくは複数)の反対側に存在するような状態であってもよい。このような環状核酸は、任意の開始点を用いて直線の形でマップに位置づけることができるが、たとえば、「左境界エレメント - 発現カセット - 右境界エレメント- 発現カセットの反対側の追加の核酸部分」という定義は、「発現カセット - 右境界エレメント - 発現カセットの反対側の追加の核酸部分 - 左境界エレメント」という定義と同じ環状核酸を明示する。追加の核酸部分は、1つもしくは複数の宿主微生物、好ましくはエシェリキア属(Escherichia)の微生物、好ましくは大腸菌(E. coli)、および/またはアグロバクテリウム属(Agrobacterium)の微生物における全核酸、すなわちT-DNAおよび追加の核酸部分を含む核酸分子、の複製のための1つもしくは複数の遺伝因子を含有することが好ましい。好ましい宿主微生物は以下に詳細に記載する。本発明のT-DNAを含むこのような環状核酸は、形質転換ベクターとして特に有用である;このようなベクターは以下に詳細に記載する。

本明細書に記載のポリヌクレオチドは好ましくは、それらを植物に導入した後、植物において発現される。したがって、本発明の方法はまた、ポリヌクレオチドを植物に導入するステップを含んでいてもよい。好ましくは、形質転換によって、具体的にはアグロバクテリウムによる形質転換によって、ポリヌクレオチドは植物に導入される。ある実施形態において、植物は、本発明と関連して記載されるポリヌクレオチドおよび/または発現カセットを含有する、構築物もしくはT-DNAを用いて形質転換される。したがって、植物が本発明のT-DNAもしくは構築物で形質転換される(形質転換されている)ことが想定される。導入のために使用される構築物もしくはT-DNAは、発現されるべきすべてのポリヌクレオチドを含有することが好ましい。したがって、1つの構築物もしくはT-DNAが形質転換のために使用されるものとする。

したがって、T-DNAもしくは構築物の長さは、長大であることが好ましく、すなわち少なくとも15000 bp、好ましくは30000 bpを超える、さらに好ましくは少なくとも40000 bp、さらにより好ましくは少なくとも50000 bp、そしてもっとも好ましくは少なくとも60000 bpの長さを有する可能性がある。好ましくは、T-DNAの長さは、前記の最小の長さのいずれかから120000 bpまでの範囲にあるが、さらに好ましくは前記の最小の長さのいずれかから100000 bpまでの範囲、さらにより好ましくは前記の最小の長さのいずれかから90000 bpまでの範囲、さらにより好ましくは前記の最小の長さのいずれかから80000 bpまでの範囲にある。このような最小の長さであれば、個々の遺伝子がそれぞれ少なくとも1つのプロモーターおよび少なくとも1つのターミネーターに作動しうるように連結されている発現カセットの形で多数の遺伝子を導入することができる

。ある実施形態において、T-DNA左境界エレメントの3'方向に、またはT-DNA右境界エレメントの5'方向に、セパレーターが存在し、それぞれの境界エレメントを、標的遺伝子を含有する発現カセットから分離する。2つのセパレーターが下記の追加要件を満たす限り、T-DNA左境界エレメントの3'方向にあるセパレーターは、T-DNA右境界エレメントの5'方向にあるセパレーターと必ずしも同じ長さおよび/または配列を有するとは限らない。

別の実施形態において、発現カセットは、少なくとも100塩基対のセパレーターによって互いに隔てられているが、100から200塩基対が好ましい。従って、セパレーターは発現カセットの間に存在する。

セパレーターまたはスペーサーは、主にその長さによって規定されるDNA片である。その機能は、それぞれT-DNAの左もしくは右境界から標的遺伝子を隔てることである。セパレーターの導入は、T-DNAのゲノムDNAへの挿入後、隣接する遺伝子位置によってもたらされる大きな影響から当該遺伝子を効果的に引き離す。たとえば、必ずしもすべてのゲノム遺伝子座が、標的遺伝子の発現に等しく適しているわけではなく、同じプロモーターおよびターミネーター制御下の同一遺伝子が、植物ゲノム内の標的遺伝子(およびそれに対応するプロモーターおよびターミネーター)の組込み領域に応じて、植物において異なる強度で発現されることがあると一般に考えられている。植物ゲノムの領域が異なると、転写因子および/またはポリメラーゼ酵素に対するアクセスしやすさが異なると一般に考えられているが、それは、たとえば、これらの領域がヒストンの周囲にきつく巻き付けられていること、および/または染色体骨格(たとえば、Deal et al., Curr Opin Plant Biol. Apr 2011; 14(2): 116-122を参照されたい)もしくは他の足場材料(たとえば、Fukuda Y., Plant Mol Biol. 1999 Mar; 39(5): 1051-62を参照されたい)に付着していることに起因する。本発明のT-DNAによって上記の利益を得るメカニズムはわかりにくいので、スペーサーを、ヒストンもしくは染色体骨格もしくは他の足場付着領域に隣接することによるDNAの巻き付けによってもたらされる張を相殺するために、緩衝となるものを物理的に提供する手段と考えると都合がよい。モデルとして、標的遺伝子を転写するために、DNAが部分的にほどける必要があると考えることができる。たとえば、核酸鎖の回転が制限されるほど、標的遺伝子の隣接領域がヒストンの回りにきつく巻き付けられているか、またはそうでなければ足場もしくは骨格に付着しているために、標的遺伝子の隣接領域が、このような巻き戻しに抵抗する場合、スペーサーは、巻き戻す試みによって生じる張力を、より長い一続きの核酸全体に分布させることを可能にするので、標的遺伝子において巻き戻すために必要な力を減少させることができる。

ある実施形態において、セパレーターの長さは少なくとも500 bpである。したがって、セパレーターは、500 bpより長くてもよく、好ましくは少なくとも800 bpの長さであり、さらに好ましくは少なくとも1000 bpである。もっと長いスペーサーは、標的遺伝子と、もっとも近いゲノム隣接領域との間にさらに大きな物理的間隔をとることを可能にする。

別の実施形態において、スペーサーの長さは少なくとも100 bpである。好ましくはスペーサーは100から200塩基対の長さを有する。

セパレーターは、マトリックス付着領域もしくは足場付着領域のない配列を有することが好ましい。セパレーターもしくはスペーサーは、実施例で与えられる全スペーサーにわたって集約された、スペーサーにおいて20回以上出現する5タプルを、500 bpの長さに対して2回以上、好ましくは1000 bpの長さについて2回以上含まないことが好ましい。その5タプルは実施例で与えられるスペーサーの中に高い頻度で存在する:AGCCT, CGTAA, CTAAC, CTAGG, GTGAC, TAGGC, TAGGT, AAAAA, AACGC, TTAGC, ACGCT, GCTGA, ACGTT, AGGCT, CGTAG, CTACG, GACGT, GCTTA, AGCTT, CGCTA, TGACG, ACGTG, AGCTG, CACGT, CGTGA, CGTTA, AGCGT, TCACG, CAGCT, CGTCA, CTAGC, GCGTC, TTACG, GTAGC, TAGCG, TCAGC, TAGCT, AGCTA, GCTAG, ACGTA, TACGT。1つもしくは複数の前記5タプルの出現頻度を、セパレーターもしくはスペーサーと比べて減少させることによって、T-DNAにおける標的遺伝子の発現の増加をさらに達成することができる。

セパレーターは、選択可能なマーカーを含有することができる。選択可能なマーカーは、好ましくは、種子における発芽、または植物の十分な生長を待つ必要なしにその存在を確認することができる核酸片である。好ましくは、選択可能なマーカーは、表現型特性、たとえば除草剤耐性、呈色、種子表面特性(たとえば、しわ)、発光もしくは蛍光タンパク質、たとえば、緑色蛍光タンパク質、またはルシフェラーゼを、種子または生長する植物に伝達する。表現型特性を示すためにマーカー遺伝子の発現が必要ならば、セパレーターはそれに応じてマーカー遺伝子を選択可能なマーカーとして含有し、好ましくは発現カセットの形で含有する。セパレーターに選択可能なマーカーを含めることは、そのマーカーが非形質転換体植物材料の容易な放棄を可能にするので、特に好都合である。また、隣接するゲノムDNAによって引き起こされる遺伝子サイレンシング作用に打ち勝つにはスペーサーの長さおよび/または核酸塩基組成が不十分な植物ゲノムの位置に、T-DNAが組み込まれる期待はずれの場合には、選択可能なマーカーは、このような運悪くうまく機能しない実験的形質転換体を容易に放棄することを可能にする。したがって、セパレーターは、除草剤耐性遺伝子を発現するための発現カセットを含有することが好ましい。このようなセパレーターは、形質転換体を栽培しなければならない可能性を大幅に減少させるが、そのサイレンシング効果は非常に強いので、選択可能なマーカーの発現でさえ、大きく減少し、あるいは完全に阻害される。本発明にしたがって、セパレーターはデサチュラーゼもしくはエロンガーゼ遺伝子を含有しないことが好ましく、また、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ遺伝子に作動しうるように連結されたプロモーターも含有しないことが好ましい。したがって、本発明のT-DNAは好ましい実施形態において、VLC-PUFA生産に不可欠なデサチュラーゼおよびエロンガーゼ遺伝子の、隣接する植物ゲノムDNAによって引き起こされる作用のあらゆる影響からの効果的な分離に有用である。

植物においてトコフェロール含量を増加させるために(ならびにVLC-PUFA生産のために)、本発明はまた、実施例の表1および2で与えられるコード配列(具体的にはデサチュラーゼおよびエロンガーゼのコード配列)を含有する構築物もしくはT-DNAを提供するが、好ましくは、実施例の表1に記載のコード配列(具体的にはデサチュラーゼおよびエロンガーゼのコード配列)およびプロモーターを含有し、さらに好ましくは実施例の表1に記載のコード配列(具体的にはデサチュラーゼおよびエロンガーゼのコード配列)およびプロモーターおよびターミネーターであって、さらにもっとも好ましくは、VC-LTM593-1qcz rc中に存在する、本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼおよびエロンガーゼのための発現カセットである(実施例の項、配列番号3を参照されたい)。

本発明はさらに、トコフェロール含量を増加させるために本発明の方法との関連で本明細書に記載されるポリヌクレオチド、または本発明のT-DNAもしくは構築物を含有する植物に関する。そのうえ本発明は植物の種子に関する。前記種子は前記ポリヌクレオチドを含有するものとする。ある実施形態において、前記ポリヌクレオチドは同一のT-DNAに含まれる。

それに加えて、本発明は、対照植物と比べてトコフェロール含量が増加し、とりわけ対照植物の種子と比べて種子中のトコフェロール含量が増加した、アブラナ属植物またはその種子に関する。ある実施形態において、前記植物はセイヨウアブラナ(Brassica napus)植物である。前記植物はトランスジェニックであるものとする。

好ましい実施形態において、本発明の種子は下記に詳細に記載する油を含有するものとする。

本発明の植物は、本発明の1つもしくは複数のT-DNAもしくは構築物を含有するものとする。したがって、植物は、少なくとも本発明のT-DNAもしくは構築物を含有するものとする。そのうえ、本発明の植物は、トコフェロール含量を増加させる、本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドを含有することが想定される。

好ましくは、植物に含まれるT-DNAもしくは構築物は、1つもしくは複数のd6Des(Δ6-デサチュラーゼ)、1つもしくは複数のd6Elo(Δ6-エロンガーゼ)、1つもしくは複数のd5Des(Δ5-デサチュラーゼ)、または1つもしくは複数のd12Des(Δ12-デサチュラーゼ)をコードする1つもしくは複数の発現カセットを含有する。ある実施形態において、本発明の植物に含まれるT-DNAもしくは構築物は、1つもしくは複数のo3Des(ω3-デサチュラーゼ)、1つもしくは複数のd5Elo(Δ5-エロンガーゼ)および/または1つもしくは複数のd4Des(Δ4-デサチュラーゼ)、好ましくは少なくとも1つのCoA(コエンザイムA)依存性d4Desおよび1つのリン脂質依存性d4Des、のための発現カセットをさらに含有する。

3つのデサチュラーゼ遺伝子は、遺伝子量効果(いわゆる「コピー数効果」)をとくに受けやすく、上記の個々の遺伝子を含有する発現カセットの数を増加させると、他の遺伝子の発現カセット数を増加させるより顕著な、植物油中のVLC-PUFAレベルの増加をもたらす。これらの遺伝子は、Δ12-デサチュラーゼ活性、Δ6-デサチュラーゼ活性、およびω3-デサチュラーゼ活性をコードする遺伝子である。当然のことながら、本発明のT-DNAが同じ機能を持つ遺伝子を含有する2つ以上の発現カセットを含有する場合、これらの遺伝子は、その核酸配列もしくはそれによってコードされるポリペプチド配列に関して同一である必要はないが、機能的に相同であるべきである。したがって、たとえば、本明細書に記載の遺伝子量効果を利用するために、本発明のT-DNAは、場合により(必要に応じて)Δ6-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼをコードする遺伝子の多重性に加えて、Δ12-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含有する2つ、3つ、4つ、または5つ以上の発現カセットを含有することができるが、それぞれの遺伝子によってコードされるこのΔ12-デサチュラーゼポリペプチドは、そのアミノ酸配列が異なる。同様に、本発明のT-DNAは、場合によりΔ12-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼをコードする遺伝子の多重性に加えて、Δ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含有する2つ、3つ、4つ、または5つ以上の発現カセットを含有することができるが、それぞれの遺伝子によってコードされるこのΔ6-デサチュラーゼポリペプチドは、そのアミノ酸配列が異なっており、あるいは、本発明のT-DNAは、場合によりΔ12-デサチュラーゼおよび/またはΔ6-デサチュラーゼをコードする遺伝子の多重性に加えて、ω3-デサチュラーゼをコードする遺伝子をそれぞれ含有する2つ、3つ、4つ、または5つ以上の発現カセットを含有することができるが、それぞれの遺伝子によってコードされるこのω3-デサチュラーゼポリペプチドは、そのアミノ酸配列が異なる。

本発明によれば、T-DNA、構築物もしくは植物は、1つもしくは複数の前記コード配列の代わりに、その機能的なホモログを含有することもできる。コード配列の機能的なホモログは、置換されたコード配列と同じ代謝機能を有するポリペプチドをコードする配列である。たとえば、Δ5-デサチュラーゼの機能的ホモログは、もう一つのΔ5-デサチュラーゼであると考えられ、Δ5-エロンガーゼの機能的ホモログは、また別のΔ5-エロンガーゼであると考えられる。コード配列の機能的ホモログは好ましくは、実施例の表1に与えられる対応するコード配列によってコードされるポリペプチドに対して、少なくとも40% の配列同一性を有するポリペプチドをコードするが、より好ましくは少なくとも41% 、より好ましくは少なくとも46% 、より好ましくは少なくとも48% 、より好ましくは少なくとも56% 、より好ましくは少なくとも58% 、より好ましくは少なくとも59% 、より好ましくは少なくとも62% 、より好ましくは少なくとも66% 、より好ましくは少なくとも69% 、より好ましくは少なくとも73% 、より好ましくは少なくとも75% 、より好ましくは少なくとも77% 、より好ましくは少なくとも81% 、より好ましくは少なくとも84% 、より好ましくは少なくとも87% 、より好ましくは少なくとも90% 、より好ましくは少なくとも92% 、より好ましくは少なくとも95% 、より好ましくは少なくとも96% 、より好ましくは少なくとも97% 、より好ましくは少なくとも98% 、およびさらにより好ましくは少なくとも99% である。同様に、プロモーターの機能的ホモログは、近位プロモーターについては、500 bp以内にあるコード配列の転写を開始させるための配列であり、あるいは遠位プロモータについては、コード配列にもっとも近いプロモーターTATAボックスから離れた3000 bp以内にあるコード配列の転写を開始させるための配列である。さらにまた、植物種子特異的プロモーターの機能的ホモログはもう1つの植物種子特異的プロモーターである。ターミネーターの機能的ホモログは、それに応じて、核酸配列の転写を終結させるための配列である。

実施例は特に好ましいT-DNA配列を記載する。当業者は、本明細書に記載のコード配列、プロモーターおよびターミネーターを、それらの機能的ホモログで置き換えることができることを認識している。しかしながら、実施例はまた、本発明にしたがって、プロモーターおよびコード配列の一定の組み合わせ、または対応するコード配列の発現をもたらすプロモーターの一定の組み合わせ、または特定のコード配列もしくはそれらの組み合わせが特に有利であることを記載する;このような組み合わせまたは各個のコード配列は、本発明によれば、それぞれのエレメント(この場合、コード配列もしくはプロモーター)の機能的ホモログで置き換えられるべきではない。好ましいプロモーター - コード配列 - ターミネーターの組み合わせを表1に示す。

本発明のT-DNAもしくは構築物は、2つ以上の遺伝子、好ましくは遺伝子量効果の影響を受けやすいすべての遺伝子を含有することができる。本明細書に記載のように、望ましい活性を有する酵素をコードする2つ以上の遺伝子を植物細胞に導入することは、特定の酵素活性、たとえばΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼ、および/またはω3-デサチュラーゼ活性の、高い変換効率を達成するために有利である。T-DNAを植物細胞に導入する場合、たとえば本明細書に記載のように、植物細胞を微生物に暴露することを含む形質転換法が一般に用いられる。それぞれの微生物は、本発明のT-DNAを含む2つ以上の核酸を含有することができるので、本発明の2つ以上のT-DNAを細胞の遺伝物質の中に独立して組み込んで含有する組換え植物細胞が得られることが多い。したがって、形質転換用の1つの構築物上では遺伝子量効果の影響を受けやすい遺伝子を組み合わせることによって、形質転換の独立性を容易に利用することができ、そうしたT-DNAの高頻度の多重挿入を達成することができる。これは、形質転換されるべき各構築物のサイズを小さく維持する同時形質転換に依存する形質転換法に特に有用である。

本発明はしたがって、本発明のT-DNAを含有する構築物も提供するが、この構築物は、微生物の関わる形質転換、好ましくはアグロバクテリウム(Agrobacterium)の関わる形質転換による、植物細胞の形質転換のためのベクターであることが好ましい。それに対応して、本発明はまた、1つの本発明のT-DNAを、好ましくは前記T-DNAを含んでなる構築物として含有する形質転換微生物を提供する。好ましくは、微生物はアグロバクテリウム属(Agrobacterium)であり、好ましくはその毒性をなくした菌株であって、さらに好ましくはAgrobacterium tumefaciens、さらにより好ましくはAgrobacterium rhizogenesである。対応する菌株はたとえば、WO06024509A2に記載されており、そうした微生物を用いた植物形質転換のための方法は、たとえばWO13014585A1に記載されている。これらのWO公報は、このような微生物の作製、選択および使用に関する重要な情報を含んでいるので、その全体を本明細書に組み入れる。

「ベクター」という用語は好ましくは、ファージ、プラスミド、ウイルスベクター、ならびに人工染色体、たとえば細菌もしくは酵母人工染色体を包含する。さらに、その用語はまた標的指向性構築物に関するが、それは標的指向性構築物をゲノムDNAの中にランダムに、または部位特異的に組み込むことを可能にする。このような標的構築物は好ましくは、以下に詳細に記載する相同組換えもしくは非相同組換えのために十分な長さのDNAを含有する。本発明のポリヌクレオチドを含むベクターは、好ましくはさらに、宿主における増殖および/または選択のための選択可能なマーカーを含有する。ベクターは、当技術分野でよく知られているさまざまな技術によって宿主細胞に組み込まれてもよい。宿主細胞に導入される場合、ベクターは細胞質に存在してもよいが、ゲノム内に組み込まれていてもよい。後者の場合、当然のことながら、ベクターはさらに、相同組換えもしくは異種挿入を可能にする核酸配列を含有することができる。ベクターは、従来の形質転換技術もしくはトランスフェクション技術によって原核細胞もしくは真核細胞に導入することができる。これに関連して使用される、「形質転換」および「トランスフェクション」、コンジュゲーションおよび形質導入という用語は、外来核酸(たとえばDNA)を宿主細胞に導入するための多様な先行技術のプロセスを含んでおり、それには、リン酸カルシウム、塩化ルビジウムもしくは塩化カルシウム共沈殿法、DEAEデキストランによるトランスフェクション、リポフェクション、天然の形質転換受容性、炭素に基づくクラスター、化学的作用を介した導入、エレクトロポレーションまたは微粒子銃などが含まれる。植物細胞を含めた宿主細胞の形質転換もしくはトランスフェクションのために好適な方法は、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、および他のラボラトリーマニュアル、たとえばMethods in Molecular Biology, 1995, Vol. 44, Agrobacterium protocols, Ed.: Gartland and Davey, Humana Press, Totowa, New Jersey.に見いだすことができる。あるいはまた、熱ショックもしくはエレクトロポレーション技術によってプラスミドベクターを導入することができる。ベクターがウイルスならば宿主細胞に適用する前に、in vitroで適当なパッケージング細胞株を用いてパッケージすることができる。

好ましくは、本明細書に記載のベクターはクローニングベクターとして好適であり、すなわち微生物系で複製可能である。このようなベクターは、細菌、そして好ましくは酵母もしくは真菌において効率的なクローニングを保証し、植物の安定した形質転換を可能にする。言及すべきは、とくにさまざまなバイナリーベクター系および同時組込みベクター系であって、これらはT-DNAによる形質転換に適している。こうしたベクター系は、通常、少なくとも、アグロバクテリウムによる形質転換のために必要なvir遺伝子、およびT-DNAの境界を定める配列(T-DNA境界)を含有することを特徴とする。これらのベクター系はまた、プロモーターおよびターミネーターなどのシス制御領域、および/または形質転換された適当な宿主細胞もしくは生物を識別することができる選択マーカーをさらに含有することも好ましい。同時組込みベクター系は、vir遺伝子およびT-DNA配列を同一ベクター上に有するが、バイナリー系は2つのベクターに基づくものであって、1つはvir遺伝子を有するがT-DNAはなく、もう1つはT-DNAを有するがvir遺伝子はない。結果として、後述したベクターは比較的小型で、操作しやすく、大腸菌およびアグロバクテリウムのいずれにおいても複製可能である。こうしたバイナリーベクターには、pBIB-HYG、pPZP、pBecks。pGreenシリーズ由来のベクターがある。本発明にしたがって使用するのに好ましいのは、Bin19、pBI101、pBinAR、pGPTVおよびpCAMBIAである。バイナリーベクターおよびその使用に関する概要は、Hellens et al, Trends in Plant Science (2000) 5, 446-451に見いだすことができる。さらに、適切なクローニングベクターを使用することによって、ポリヌクレオチドは、植物または動物などの宿主細胞もしくは生物に導入することが可能であり、したがって、以下に公開され、記載されているような、植物の形質転換に使用することができる:Plant Molecular Biology and Biotechnology (CRC Press, Boca Raton, Florida), chapter 6/7, pp. 71-119 (1993); F.F. White, Vectors for Gene Transfer in Higher Plants; in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press, 1993, 15-38; B. Jenes et al., Techniques for Gene Transfer, in: Transgenic Plants, vol. 1, Engineering and Utilization, Ed.: Kung and R. Wu, Academic Press (1993), 128-143; Potrykus 1991, Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Molec. Biol. 42, 205-225。

さらに好ましくは、本発明のベクターは発現ベクターである。このような発現ベクターにおいて、すなわち、本発明のポリヌクレオチドを含有するベクターは、植物細胞もしくはその単離された画分における発現を可能にする発現制御配列に作動しうるように連結された核酸配列(「発現カセット」とも呼ばれる)を有する。

最も重要なことは、本発明が、本発明の構築物もしくはT-DNAをそのゲノム内に組み込んで含有する植物またはその種子を提供することである。

このように、構築物もしくはT-DNAは、植物もしくは植物細胞のゲノム内に安定して組み込まれるものとする。したがって、本発明は、本発明のT-DNAもしくは構築物を含有する植物に関する。

このようなT-DNAもしくは構築物は、植物およびとりわけその種子において、特に油糧種子植物において、トコフェロール含量を増加させるために必要とされるすべての遺伝子の発現を可能にすることが好ましいが、もっとも有益なのはアブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)の植物もしくは種子においてであって、もっとも好ましいのは、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)およびアブラナ(Brassica rapa)のうち1つもしくは2つの種のゲノムを含有する種、したがって好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、アビシニアガラシ(Brassica carinata)、カラシナ(Brassica juncea)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアブラナ(Brassica rapa)の植物もしくは種子においてである。本発明にしたがってもっとも好ましいのは、セイヨウアブラナ(Brassica napus)およびアビシニアガラシ(Brassica carinata)の植物および種子である。

本発明の植物は必然的にトランスジェニックであり、すなわち本発明の植物は、対応する野生型植物には存在しない遺伝物質、または対応する野生型植物とは異なる配置の遺伝物質、たとえば遺伝要素の数が異なる遺伝物質を含有する。たとえば、本発明の植物は、野生型植物にも存在するプロモーターを含有するが、本発明の植物は、対応する野生型植物ではみられないプロモーターとコード配列の組み合わせで、コード配列に作動しうるように連結されたそのようなプロモーターを含有する。したがって、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドは、組換えポリヌクレオチドであるものとする。

本発明の植物および種子は、これまで作製された植物とは、高含量のトコフェロール(および好ましくはVLC-PUFA)の生産の点で異なっており、実施例を参照されたい。具体的には、本発明の方法と関連して記載されるエロンガーゼもしくはデサチュラーゼをコードするポリヌクレオチドの組み合わせ、本発明の構築物およびT-DNAは、高い形質転換効率で次のような形質転換植物(いわゆる「遺伝子組換え作物」)およびその種子の作製を可能にするが、自家受精した植物の数世代にわたってT-DNA挿入の安定性は高く、表現型および農学上の性質は不変であるか、または損なわれず、このような形質転換植物およびそれに対応する子孫集団の油において、トコフェロールの量および濃度は高く、VLC-PUFA、特にEPAおよび/またはDHAの量および濃度が高い。特に指示のない限り、本発明のT-DNAもしくは構築物を含有する本発明の植物は、本発明のT-DNAもしくは構築物の一部を含有する植物であってもよく、そのような部分は、対応する本発明の完全なT-DNAもしくは構築物においてコードされるデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼの生産には十分である。このような植物は、前文で規定された本発明のT-DNAの一部に加えて、少なくとも1つの本発明の完全なT-DNAを含有することが好ましい。このような植物は、以下、「部分的ダブルコピー」植物とも称される。事象LBFDAUは本発明のT-DNAの一部を含有する植物の一例であるが、それでもやはり本発明の植物である。ある実施形態においてT-DNAは完全なT-DNAである。

本発明の好ましい植物は、複数の発現カセットを含有する本発明の1つもしくは複数のT-DNAまたは構築物を含有するが、この発現カセットは、1つもしくは複数のd5Des、1つもしくは複数のd6Elo、1つもしくは複数のd6Des、および1つもしくは複数のd12Desをコードする1つもしくは複数の遺伝子を含有する。ある実施形態において、少なくとも1つのT-DNAもしくはベクターは、1つもしくは複数の発現カセットをさらに含有するが、この発現カセットは、1つもしくは複数のd5Elo、1つもしくは複数のo3Des、1つもしくは複数のd15Des、および/または1つもしくは複数のD4Des、好ましくは少なくとも1つのCoA依存性D4Desおよび1つのリン脂質依存性d4Desをコードする、1つもしくは複数の遺伝子を含有する。ある実施形態において、その1つのT-DNAまたは複数のT-DNAは、d6Elo(Tp_GA)および/またはd6Elo(Pp_GA)をコードする1つもしくは複数の発現カセットを含有する。d6Elo(Tp_GA)は、海洋性中心目珪藻(Thalassiosira pseudonana)由来のΔ6-エロンガーゼであり、d6Elo(Pp_GA)は、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6-エロンガーゼである。

好ましくは、本発明の植物(もしくは植物細胞)は、油糧種子作物の植物(もしくは油糧種子作物の植物細胞)である。さらに好ましくは、前記油糧種子作物は、亜麻(アマ属の1種(Linum sp.))、菜種(アブラナ属の1種(Brassica sp.))、大豆(ダイズ属(Glycine)およびSoja亜属の1種)、ヒマワリ(ヒマワリ属の1種(Helianthus sp.))、ワタ(ワタ属の1種(Gossypium sp.))、トウモロコシ(Zea mays)、オリーブ(オリーブ属の1種(Olea sp.))、ベニバナ(ベニバナ属の1種(Carthamus sp.))、カカオノキ(Theobroma cacoa)、ラッカセイ(ラッカセイ属の1種(Arachis sp.))、アサ、カメリナ(アマナズナ)、ハマナ、アブラヤシ、ココナッツ、アメリカホドイモ、ゴマの実、トウゴマ、北米産アブラナ科Lesquerella属の草本、ナンキンハゼ、シアバターノキの実、アブラギリの実、カポックの実、ケシの実、ホホバの実、およびエゴマからなる一群から選択される。本発明のポリヌクレオチドもしくはT-DNAを導入するために使用される好ましい植物は、脂肪酸を合成することができる植物、たとえばすべての双子葉もしくは単子葉植物、藻類、または蘚類である。好ましい植物は、植物の科であるアブラゴケ科(Adelotheciaceae)、ウルシ科(Anacardiaceae)、ヤシ科(Arecaceae)、キク科(Asteraceae)、セリ科(Apiaceae)、カバノキ科(Betulaceae)、ムラサキ科(Boraginaceae)、アブラナ科(Brassicaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、パパイヤ科(Caricaceae)、アサ科(Cannabaceae)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、アカザ科(Chenopodiaceae)、キク科(Compositae)、クリプテコジニアセア科(Crypthecodiniaceae)、アブラナ科(Cruciferae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、キンシゴケ科(Ditrichaceae)、グミ科(Elaeagnaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、マメ科(Fabaceae)、フウロソウ科(Geraniaceae)、イネ科(Gramineae)、クルミ科(Juglandaceae)、クスノキ科(Lauraceae)、マメ科(Leguminosae)、アマ科(Linaceae)、アオイ科(Malvaceae)、ワサビノキ科(Moringaceae)、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、アカバナ科(Onagraceae)、ボロボロノキ科(Olacaceae)、モクセイ科(Oleaceae)、ケシ科(Papaveraceae)、コショウ科(Piperaceae)、ゴマ科(Pedaliaceae)、イネ科(Poaceae)、ナス科(Solanaceae)、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、または野菜植物またはセンジュギクなどの観賞植物からなる一群から選択される。言及することができる例は、以下の植物であって、下記からなる一群から選択される:アブラゴケ科(Adelotheciaceae)、たとえばニセツリガネゴケ属(Physcomitrella)、たとえばヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)の属および種、ウルシ科(Anacardiaceae)、たとえばカイノキ属(Pistacia)、マンゴー属(Mangifera)、カシューナットノキ属(Anacardium)、たとえばPistacia vera[ピスタチオ]、Mangifer indica[マンゴー]もしくはAnacardium occidentale[カシュー]の属および種、キク科(Asteraceae)、たとえばキンセンカ属(Calendula)、ベニバナ属(Carthamus)、 ヤグルマギク属(Centaurea)、キクニガナ属(Cichorium)、アーティチョーク属(Cynara)、ヒマワリ属 (Helianthus)、アキノノゲシ属(Lactuca)、Locusta属、センジュギク属(Tagetes)、カノコソウ属(Valeriana)、たとえばキンセンカ(Calendula officinalis)[普通のキンセンカ]、Carthamus tinctorius[ベニバナ]、Centaurea cyanus[ヤグルマギク]、Cichorium intybus[チコリー]、Cynara scolymus[アーティチョーク]、Helianthus annus[ヒマワリ]、レタス(Lactuca sativa)、リーフレタス(Lactuca crispa)、Lactuca esculenta、Lactuca scariola L. ssp. sativa、Lactuca scariola L. var. integrata、Lactuca scariola L. var. integrifolia、ロメインレタス(Lactuca sativa subsp. romana)、Locusta communis、Valeriana locusta [サラダ野菜]、ミントマリーゴールド(Tagetes lucida)、マンジュギク(Tagetes erecta)もしくはTagetes tenuifolia[アフリカもしくはフレンチマリーゴールド]の属および種、セリ科(Apiaceae)、たとえばニンジン属(Daucus)、たとえばDaucus carota[ニンジン]の属および種、カバノキ科(Betulaceae)、たとえばハシバミ属(Corylus)、たとえばセイヨウハシバミ(Corylus avellana)もしくはトルコキハシバミ(Corylus colurna)[ヘーゼルナッツ]の属および種、ムラサキ科(Boraginaceae)、たとえばルリジサ属(Borago)、たとえばルリジサ(Borago officinalis)[ボリジ]の属および種、アブラナ科(Brassicaceae)、たとえばアブラナ属(Brassica)、Melanosinapis、シロガラシ属(Sinapis)、シロイナズナ属(Arabadopsis)、たとえばセイヨウアブラナ(Brassica napus)、アブラナ(Brassica rapa ssp.)[菜種]、ノハラガラシ(Sinapis arvensis)、セイヨウカラシナ(Brassica juncea)、カラシナ(Brassica juncea var. juncea)、アザミナ(Brassica juncea var. crispifolia)、シュエリーホン(Brassica juncea var. foliosa)、クロガラシ(Brassica nigra)、Brassica sinapioides、Melanosinapis communis[カラシ]、キャベツ類(Brassica oleracea)[飼料用ビート]もしくはシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の属および種、パイナップル科(Bromeliaceae)、たとえばアナナス属(Ananas)、ブロメリア属(Bromelia)(パイナップル)、たとえばパイナップル(Anana comosus)、Ananas ananasもしくはBromelia comosa[パイナップル]の属および種、パパイヤ科(Caricaceae)、たとえばパパイヤ属(Carica)、たとえばCarica papaya[パパイヤ]の属および種、アサ科(Cannabaceae)、たとえばアサ属(Cannabis)、たとえばCannabis sativa[アサ]の属および種、ヒルガオ科(Convolvulaceae)、たとえばサツマイモ属(Ipomoea)、セイヨウヒルガオ属(Convolvulus)、たとえばサツマイモ(Ipomoea batatus)、イモネアサガオ(Ipomoea pandurata)、サツマイモ(Convolvulus batatas)、Convolvulus tiliaceus、Ipomoea fastigiata、Ipomoea tiliacea、ホシアサガオ(Ipomoea triloba)もしくはConvolvulus panduratus[サツマイモ]の属および種、アカザ科(Chenopodiaceae)、たとえばフダンソウ属(Beta)、たとえばビート(Beta vulgaris)、テンサイ(Beta vulgaris var. altissima)、テーブルビート(Beta vulgaris var. vulgaris)、シービート(Beta maritima)、Beta vulgaris var. perennis、Beta vulgaris var. conditivaもしくはBeta vulgaris var. esculenta[テンサイ]の属および種、クリプテコジニアセア科(Crypthecodiniaceae)、たとえばクリプセコジニウム属(Crypthecodinium)、たとえばCrypthecodinium cohniiの属および種、ウリ科(Cucurbitaceae)、たとえばカボチャ属(Cucurbita)、たとえばセイヨウカボチャ(Cucurbita maxima)、種間雑種カボチャ(Cucurbita mixta)、ペポカボチャ(Cucurbita pepo)もしくはニホンカボチャ(Cucurbita moschata)[カボチャ/スカッシュ]の属および種、キンベラ科(Cymbellaceae)、たとえば、アンフォラ属(Amphora)、キンベラ属(Cymbella)、オケデニア属(Okedenia)、フェオダクチラム属(Phaeodactylum)、レイメリア属(Reimeria)、たとえば、Phaeodactylum tricornutumの属および種、キンシゴケ科(Ditrichaceae)、例えば、キンシゴケ属(Ditrichaceae)、アストミオプシス属(Astomiopsis)、ヤノウエノアカゴケ属(Ceratodon)、クリゾブラステラ属(Chrysoblastella)、ディトリカム属(Ditrichum)、ディストリチウム属(Distichium)、エクレミジウム属(Eccremidium)、ロフィジオン属(Lophidion)、フィリベルチエラ属(Philibertiella)、プレウリジウム属(Pleuridium)、サエラニア属(Saelania)、トリコドン属(Trichodon)、スコッツバージア属(Skottsbergia)、たとえばCeratodon antarcticus、Ceratodon columbiae、Ceratodon heterophyllus、ヤノウエノアカゴケ(Ceratodon purpureus)、Ceratodon purpureus ssp. convolutus、Ceratodon、purpureus spp. stenocarpus、Ceratodon purpureus var. rotundifolius、Ceratodon ratodon、Ceratodon stenocarpus、Chrysoblastella chilensis、Ditrichum ambiguum、Ditrichum brevisetum、Ditrichum crispatissimum、Ditrichum difficile、Ditrichum falcifolium、Ditrichum flexicaule、Ditrichum giganteum、Ditrichum heteromallum、Ditrichum lineare、Ditrichum lineare、Ditrichum montanum、Ditrichum montanum、キンシゴケ(Ditrichum pallidum)、Ditrichum punctulatum、Ditrichum pusillum、Ditrichum pusillum var. tortile、Ditrichum rhynchostegium、Ditrichum schimperi、Ditrichum tortile、Distichium capillaceum、Distichium hagenii、Distichium inclinatum、Distichium macounii、Eccremidium floridanum、Eccremidium whiteleggei、Lophidion strictus、Pleuridium acuminatum、Pleuridium alternifolium、Pleuridium holdridgei、Pleuridium mexicanum、Pleuridium ravenelii、Pleuridium subulatum、アオゴケ(Saelania glaucescens)、Trichodon borealis、Trichodon cylindricusまたはTrichodon cylindricus var. oblongusの属および種、グミ科(Elaeagnaceae)、たとえばグミ属(Elaeagnus)、たとえばOlea europaea[オリーブ]の属および種、ツツジ科(Ericaceae)、たとえばカルミア属(Kalmia)、たとえばアメリカシャクナゲ(Kalmia latifolia)、ホソバアメリカシャクナゲ(Kalmia angustifolia)、Kalmia microphylla、Kalmia polifolia、Kalmia occidentalis、Cistus chamaerhodendrosもしくはKalmia lucida[アメリカシャクナゲ]の属および種、トウダイグサ科(Euphorbiaceae)、たとえばイモノキ属(Manihot)、ジャニファ属(Janipha)、ナンヨウアブラギリ属(Jatropha)、トウゴマ属(Ricinus)、たとえばタピオカノキ(Manihot utilissima)、Janipha manihot、Jatropha manihot、Manihot aipil、Manihot dulcis、Manihot manihot、Manihot melanobasis、Manihot esculenta[キャッサバ] もしくはトウゴマ(Ricinus communis)[ヒマシ油植物]の属および種、マメ科(Fabaceae)、たとえばエンドウ属(Pisum)、ネムノキ属(Albizia)、カトルミオン属(Cathormion)、フェウイレア属(Feuillea)、インガー属(Inga)、ピテケロビウム属(Pithecellobium)、アカシア属(Acacia)、オジギソウ属(Mimosa)、ウマゴヤシ属(Medicago)、ダイズ属(Glycine)、コウシュンフジマメ属(Dolichos)、インゲンマメ属 (Phaseolus)、ダイズ(Soja)、たとえばエンドウ(Pisum sativum)、Pisum arvense、Pisum humile[エンドウマメ]、Albizia berteriana、ネムノキ(Albizia julibrissin)、ビルマネム(Albizia lebbeck)、Acacia berteriana、Acacia littoralis、Albizia berteriana、Albizzia berteriana、Cathormion berteriana、Feuillea berteriana、Inga fragrans、Pithecellobium berterianum、Pithecellobium fragrans、Pithecolobium berterianum、Pseudalbizzia berteriana、ネムノキ(Acacia julibrissin)、ネムノキ(Acacia nemu)、ネムノキ(Albizia nemu)、ネムノキ(Feuilleea julibrissin)、ネムノキ(Mimosa julibrissin)、ネムノキ(Mimosa speciosa)、ネムノキ(Sericanrda julibrissin)、ビルマネム(Acacia lebbeck)、Acacia macrophylla、ビルマネム(Albizia lebbeck)、Feuilleea lebbeck、ビルマネム(Mimosa lebbeck)、Mimosa speciosa[ネムノキ]、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)、コガネウマゴヤシ(Medicago falcata)、Medicago varia[アルファルファ]、ダイズ(Glycine max)、ダイズ(Dolichos soja)、スルマメ(Glycine gracilis)、ダイズ(Glycine hispida)、ダイズ(Phaseolus max)、ダイズ(Soja hispida)もしくはSoja max[ダイズ]の属および種、ヒョウタンゴケ科(Funariaceae)、たとえば、アファノレグマ属(Aphanorrhegma)、ヒメヒョウタンゴケ属(Entosthodon)、ヒョウタンゴケ属(Funaria)、ニセツリガネゴケ属(Physcomitrella)、ツリガネゴケ属(Physcomitrium)、たとえばAphanorrhegma serratum、Entosthodon attenuatus、Entosthodon bolanderi、Entosthodon bonplandii、Entosthodon californicus、Entosthodon drummondii、Entosthodon jamesonii、Entosthodon leibergii、Entosthodon neoscoticus、Entosthodon rubrisetus、Entosthodon spathulifolius、Entosthodon tucsoni、Funaria americana、Funaria bolanderi、Funaria calcarea、Funaria californica、タチヒョウタンゴケ(Funaria calvescens)、Funaria convoluta、Funaria flavicans、Funaria groutiana、ヒョウタンゴケ(Funaria hygrometrica)、Funaria hygrometrica var. arctica、Funaria hygrometrica var. calvescens、Funaria hygrometrica var. convoluta、Funaria hygrometrica var. muralis、Funaria hygrometrica var. utahensis、Funaria microstoma、Funaria microstoma var. obtusifolia、Funaria muhlenbergii、Funaria orcuttii、Funaria plano-convexa、Funaria polaris、Funaria ravenelii、Funaria rubriseta、Funaria serrata、Funaria sonorae、Funaria sublimbatus、Funaria tucsoni、ニセツリガネゴケ(Physcomitrella californica)、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)、Physcomitrella readeri、Physcomitrium australe、Physcomitrium californicum、Physcomitrium collenchymatum、Physcomitrium coloradense、Physcomitrium cupuliferum、Physcomitrium drummondii、ヒロクチゴケ(Physcomitrium eurystomum)、Physcomitrium flexifolium、Physcomitrium hookeri、Physcomitrium hookeri var. serratum、Physcomitrium immersum、Physcomitrium kellermanii、Physcomitrium megalocarpum、Physcomitrium pyriforme、Physcomitrium pyriforme var. serratum、Physcomitrium rufipes、Physcomitrium sandbergii、アゼゴケ(Physcomitrium subsphaericum)、Physcomitrium washingtonienseの属および種、フウロソウ科(Geraniaceae)、たとえばテンジクアオイ属(Pelargonium)、ココヤシ属(Cocos)、オレウム属(Oleum)、たとえばココヤシ(Cocos nucifera)、ココナッツゼラニウム(Pelargonium grossularioides)もしくはOleum cocois[ココナッツ]の属および種、イネ科(Gramineae)、たとえばサトウキビ属(Saccharum)、たとえばサトウキビ(Saccharum officinarum)の属および種、クルミ科(Juglandaceae)、たとえばクルミ属(Juglans)、ワリア属(Wallia)、たとえばシナノグルミ(Juglans regia)、オニグルミ(Juglans ailanthifolia)、オニグルミ(Juglans sieboldiana)、バターナット(Juglans cinerea)、Wallia cinerea、Juglans bixbyi、Juglans californica、カリフォルニアクログルミ(Juglans hindsii)、Juglans intermedia、Juglans jamaicensis、Juglans major、Juglans microcarpa、クロクルミ(Juglans nigra)もしくはWallia nigra[クルミ]の属および種、クスノキ科(Lauraceae)、たとえばワニナシ属(Persea)、ゲッケイジュ属(Laurus)、たとえばゲッケイジュ(Laurus nobilis)[月桂樹]、アボカド(Persea americana)、Persea gratissimaもしくはPersea persea [アボカド]の属および種、マメ科(Leguminosae)、たとえばラッカセイ属(Arachis)、たとえばラッカセイ(Arachis hypogaea)[落花生]の属および種、アマ科(Linaceae)、たとえばアマ属(Linum)、アマ属(Adenolinum)、たとえばアマ(Linum usitatissimum)、Linum humile、Linum austriacum、ヒメアマ(Linum bienne)、Linum angustifolium、Linum catharticum、ヤマブキアマ(Linum flavum)、ベニバナアマ(Linum grandiflorum)、Adenolinum grandiflorum、ブルーフラックス(Linum lewisii)、Linum narbonense、シュクコンアマ(Linum perenne)、Linum perenne var. lewisii、メドーフラックス(Linum pratense)もしくはキバナアマ(Linum trigynum)[亜麻仁]の属および種、ミソハギ科(Lythraceae)、たとえばザクロ属(Punica)、たとえばザクロ(Punica granatum)[ザクロ]の属および種、アオイ科(Malvaceae)、たとえばワタ属(Gossypium)、たとえばリクチメン(Gossypium hirsutum)、モクメン(Gossypium arboreum)、カイトウメン(Gossypium barbadense)、アジアメン(Gossypium herbaceum)もしくは Gossypium thurberi[ワタ]の属および種、ゼニゴケ科(Marchantiaceae)、たとえばゼニゴケ属(Marchantia)、たとえばゼニゴケ(Marchantia berteroana)、Marchantia foliacea、Marchantia macroporaの属および種、バショウ科(Musaceae)、たとえばバショウ属(Musa)、たとえばMusa nana、Musa acuminata、Musa paradisiaca、Musa spp. [バナナ]の属および種、アカバナ科(Onagraceae)、たとえばカミソニア属(Camissonia)、マツヨイグサ属(Oenothera)、たとえばメマツヨイグサ(Oenothera biennis)もしくはCamissonia brevipes[マツヨイグサ]の属および種、ヤシ科(Palmae)、たとえばアブラヤシ属(Elaeis)、たとえばアブラヤシ(Elaeis guineensis)[油ヤシ]の属および種、ケシ科(Papaveraceae)、たとえば、ケシ属(Papaver)、たとえばオニゲシ(Papaver orientale)、ヒナゲシ(Papaver rhoeas)、ナガミヒナゲシ(Papaver dubium)[ケシ]の属および種、ゴマ科(Pedaliaceae)、たとえばゴマ属(Sesamum)、たとえばゴマ(Sesamum indicum)[ゴマ]の属および種、コショウ科(Piperaceae)、たとえばコショウ属(Piper)、アルタンテ属(Artanthe)、サダソウ属(Peperomia)、ステフェンシア属(Steffensia)、たとえばPiper aduncum、Piper amalago、Piper angustifolium、ピペル・アウリツム(Piper auritum)、キンマ(Piper betle)、クベバ(Piper cubeba)、ヒハツ(Piper longum)、コショウ(Piper nigrum)、ヒハツモドキ(Piper retrofractum)、Artanthe adunca、Artanthe elongata、Peperomia elongata、Piper elongatum、Steffensia elongata[カイエンペッパー]の属および種、イネ科(Poaceae)、たとえばオオムギ属(Hordeum)、ライムギ属(Secale)、カラスムギ属(Avena)、モロコシ属(Sorghum)、メリケンカルカヤ属(Andropogon)、シラゲガヤ属(Holcus)、キビ属(Panicum)、イネ属(Oryza)、トウモロコシ属(Zea(トウモロコシ))、コムギ属(Triticum)、たとえばオオムギ(Hordeum vulgare)、ホソノゲムギ(Hordeum jubatum)、ムギクサ(Hordeum murinum)、Hordeum secalinum、二条オオムギ(Hordeum distichon)、Hordeum aegiceras、六条オオムギ(Hordeum hexastichon)、Hordeum hexastichum、Hordeum irregulare、Hordeum sativum、Hordeum secalinum[オオムギ]、Secale cereale[ライムギ]、エンバク(Avena sativa)、カラスムギ(Avena fatua)、Avena byzantina、Avena fatua var. sativa、Avena hybrida[カラスムギ]、モロコシ(Sorghum bicolor)、セイバンモロコシ(Sorghum halepense)、サトウモロコシ(Sorghum saccharatum)、Sorghum vulgare、スーダングラス(Andropogon drummondii)、Holcus bicolor、Holcus sorghum、Sorghum aethiopicum、Sorghum arundinaceum、Sorghum caffrorum、Sorghum cernuum、Sorghum dochna、スーダングラス(Sorghum drummondii)、Sorghum durra、Sorghum guineense、Sorghum lanceolatum、Sorghum nervosum、サトウモロコシ(Sorghum saccharatum)、Sorghum subglabrescens、Sorghum verticilliflorum、Sorghum vulgare、Holcus halepensis、Sorghum miliaceum、キビ(Panicum militaceum)[キビ]、イネ(Oryza sativa)、Oryza latifolia [イネ]、Zea mays[トウモロコシ]、パンコムギ(Triticum aestivum)、デュラムコムギ(Triticum durum)、リベットコムギ(Triticum turgidum)、Triticum hybernum、Triticum macha、Triticum sativumもしくはTriticum vulgare[コムギ]の属および種、チノリモ科(Porphyridiaceae)、たとえばクロテス属(Chroothece)、フリンチエラ属(Flintiella)、ペトロバネラ属(Petrovanella)、チノリモ属(Porphyridium)、ロデラ属(Rhodella)、ロドソラス属(Rhodosorus)、バンホエフェニア属(Vanhoeffenia)、たとえばPorphyridium cruentumの属および種、ヤマモガシ科(Proteaceae)、たとえばマカダミア属(Macadamia)、たとえばMacadamia intergrifolia[マカダミア]の属および種、プラシノ藻綱(Prasinophyceae)、たとえば、ネフロセルミス属(Nephroselmis)、プラシノコッカス属(Prasinococcus)、シェルフェリア属(Scherffelia)、テトラセルミス属(Tetraselmis)、マントニエラ属(Mantoniella)、オストレオコッカス属(Ostreococcus)、たとえば、Nephroselmis olivacea、Prasinococcus capsulatus、Scherffelia dubia、Tetraselmis chui、Tetraselmis suecica、Mantoniella squamata、Ostreococcus tauriの属および種、アカネ科(Rubiaceae)、たとえばコーヒーノキ属(Coffea)、たとえばCoffea spp.、アラビアコーヒーノキ(Coffea arabica)、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)もしくはリベリカコーヒーノキ)(Coffea liberica)[コーヒーノキ]の属および種、ゴマノハグサ科(Scrophulariaceae)、たとえば、モウズイカ属(Verbascum)、たとえばモウズイカ(Verbascum blattaria)、Verbascum chaixii、Verbascum densiflorum、Verbascum lagurus、Verbascum longifolium、Verbascum lychnitis、クロバナモウズイカ(Verbascum nigrum)、Verbascum olympicum、Verbascum phlomoides、Verbascum phoenicum、Verbascum pulverulentumもしくはVerbascum thapsus[ビロードモウズイカ]の属および種、ナス科(Solanaceae)、たとえばトウガラシ属(Capsicum)、タバコ属(Nicotiana)、ナス属(Solanum)、 トマト属(Lycopersicon)、たとえばトウガラシ(Capsicum annuum)、Capsicum annuum var. glabriusculum、キダチトウガラシ(Capsicum frutescens)[トウガラシ]、Capsicum annuum[パプリカ]、タバコ(Nicotiana tabacum)、シュッコンタバコ(Nicotiana alata)、Nicotiana attenuata、キダチタバコ(Nicotiana glauca)、Nicotiana langsdorffii、Nicotiana obtusifolia、Nicotiana quadrivalvis、Nicotiana repanda、Nicotiana rustica、Nicotiana sylvestris[タバコ]、Solanum tuberosum[ジャガイモ]、Solanum melongena[ナス]、トマト(Lycopersicon esculentum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、Lycopersicon pyriforme、Solanum integrifoliumもしくはトマト(Solanum lycopersicum)[トマト]の属および種、アオギリ科(Sterculiaceae)、たとえばカカオ属(Theobroma)、たとえばTheobroma cacao[カカオ]の属および種、またはツバキ科(Theaceae)、たとえばツバキ属(Camellia)、たとえばチャノキCamellia sinensis[茶]の属および種。具体的には、本発明にしたがってトランスジェニック植物として使用される好ましい植物は、大量の脂質化合物を含有する油糧果実作物、たとえば、ラッカセイ、菜種、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、カラシ、アサ、ヒマシ油植物、オリーブ、ゴマ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、モウズイカ、アザミ、野バラ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、マカダミア、アボカド、月桂樹、カボチャ、亜麻仁、ダイズ、ピスタチオ、ルリジサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ、クルミ)または作物、たとえば、トウモロコシ、小麦、ライ麦、カラス麦、 ライ小麦、米、大麦、キャッサバ、コショウ、センジュギク、ナス科植物、たとえばジャガイモ、タバコ、ナスおよびトマト、ソラマメ属の1種、エンドウ、アルファルファ、または低木(コーヒー、カカオ、茶)、ヤナギ属の1種、ならびに多年草および飼料作物である。

本発明の好ましい植物は、油糧作物、たとえば、ラッカセイ、菜種、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、ケシ、カラシ、アサ、ヒマシ油植物、オリーブ、キンセンカ、ザクロ、マツヨイグサ、カボチャ、亜麻仁、ダイズ、ルリジサ、樹木(油ヤシ、ココナッツ)である。特に好ましいのは、ヒマワリ、ベニバナ、タバコ、モウズイカ、ゴマ、棉、カボチャ、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、アサ、アザミ、またはベニバナである。特にとても好ましい植物は、ベニバナ、ヒマワリ、ケシ、マツヨイグサ、クルミ、亜麻仁、もしくはアサなどの植物であるが、もっとも好ましいのはアブラナ科の植物である。

もっとも好ましくは、本発明の植物は、「Uトライアングル」に見いだされる植物、すなわちアブラナ属の植物である:セイヨウアブラナ(Brassica napus)(AA CCゲノム;n=19)は、アブラナ属の複二倍体植物であるが、アブラナ(Brassica rapa)(AAゲノム;n=10)とキャベツ類(Brassica oleracea)(CCゲノム;n=9)のハイブリダイゼーションの結果生じたと考えられる。カラシナ(Brassica juncea)(AA BBゲノム;n=18)はアブラナ属の複二倍体植物であって、これは一般にアブラナ(Brassica rapa)とクロガラシ(Brassica nigra)(BBゲノム;n=8)のハイブリダイゼーションの結果生じたと考えられる。生育条件によっては、カラシナ(B. juncea)はセイヨウアブラナ(B. napus)よりすぐれた形質を有する場合がある。このすぐれた形質には、高収率、強い干ばつ耐性および高温耐性、ならびに高い耐病性を含めることができる。アビシニアガラシ(Brassica carinata)(BB CCゲノム;n=17)は、アブラナ属の複二倍体植物であるが、クロガラシ(Brassica nigra)とキャベツ類(Brassica oleracea)のハイブリダイゼーションの結果生じたと考えられる。生育条件によっては、アビシニアガラシ(Brassica carinata)は、セイヨウアブラナ(B. napus)よりすぐれた形質を有する場合がある。特にアビシニアガラシ(Brassica carinata)は、同じT-DNAで形質転換した場合、VLC-PUFA濃度をセイヨウアブラナ(B. napus)より少なくとも20% 高めることができる。

本発明の植物は、「キャノーラ」植物であることが好ましい。キャノーラは菜種の遺伝的変種であって、カナダの植物育種研究者によって、特にその油および油かすの性状のために、なかでも飽和脂肪酸を低レベルにするために開発された。キャノーラは概して、種子油中のエルカ酸(Δ13-22:1)が重量比で2% 未満であり、油を含有しない油かす粉末のグルコシノレートが30マイクロモル/g未満である、アブラナ属の1種の植物を指す。典型的には、キャノーラ油は、パルミチン酸およびステアリン酸として知られる飽和脂肪酸、オレイン酸として知られる一価不飽和脂肪酸、ならびにリノール酸およびリノレン酸として知られる多価不飽和脂肪酸を含有する可能性がある。キャノーラ油は、約7% (w/w)未満の飽和脂肪酸(大半はパルミチン酸およびステアリン酸)および40% (w/w)を上回るオレイン酸(全脂肪酸に対するパーセンテージとして)を含有することができる。伝統的に、キャノーラ作物には、セイヨウアブラナ(Brassica napus)およびアブラナ(Brassica rapa)の変種が含まれる。本発明の好ましい植物は、スプリングキャノーラ(spring canola)(セイヨウアブラナ亜種Brassica napus subsp. oleifera var. annua)およびウィンターキャノーラ(winter canola)(セイヨウアブラナ亜種Brassica napus subsp. oleifera var. biennis)である。さらに、他のキャノーラタイプと類似した油および油かす特性を有するキャノーラ品質のカラシナ(Brassica juncea)変種が、キャノーラ作物ファミリーに追加された(U.S. Pat. No. 6,303,849, to Potts et al., issued on Oct. 16, 2001; U.S. Pat. No. 7,423,198, to Yao et al.; Potts and Males, 1999;これらはすべて、参考として本明細書に組み入れられる)。同様に、セイヨウアブラナ(Brassica napus)のキャノーラ品質の変種と、クロガラシ(Brassica nigra)とを交雑させてそれらの子孫を適当に選択することによって、場合によりさらにアビシニアガラシ(B. carinata)、セイヨウアブラナ(B. napus)および/またはクロガラシ(B. nigra)との戻し交雑後に、キャノーラ品質のアビシニアガラシ(B. carinata)変種を確立することができる。

本発明はまた、以下のステップを含む方法によって調製される後代系統から得ることができる、または得られる、種子油VLC-PUFA含量の遺伝的表現型を与える遺伝子型を有するアブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)、の植物もしくはその種子を提供する: i) アブラナ科、好ましくはアブラナ属、もっとも好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)の植物であって、本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチドの組み合わせ、本発明の構築物もしくはT-DNA、および/またはそうした構築物もしくはT-DNAの一部を含有する前記植物と、アブラナ科、好ましくはアブラナ属、もっとも好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)の親植物であって、前記T-DNAおよび/またはその一部を含有しない前記親植物とを、交雑させてF1雑種を得るステップ、 ii) 少なくとも一代自家受粉させるステップ、ならびに iii) 対照植物よりトコフェロール含量の増加した種子を産出することができる、本発明のポリヌクレオチドの組み合わせ、構築物、T-DNAを含有する、ステップ(ii)の子孫を同定するステップ。ある実施形態において、増加したトコフェロール含量は、本明細書に別記するトコフェロール含量である。

ある実施形態において、産出される種子は、18:1n-9の下流の全VLC-PUFA含量が油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して少なくとも40% (w/w)であるか、または好ましくは、油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して、EPA含量が少なくとも8% 、もしくは少なくとも12% (w/w)であり、ならびに/またはDHA含量が少なくとも1% (w/w)であるような、VLC-PUFAを含有する。

ある実施形態において、産出される種子は、EPA含量が少なくとも8% 、もしくは少なくとも12% (w/w)であるようなVLC-PUFAを含有する。

ある実施形態において、DHA含量は全種子脂肪酸含量の少なくとも1% (w/w)である。

この方法は、本発明の方法との関連で記載されるポリヌクレオチド、本発明のT-DNAもしくは構築物を含有する植物のゲノム内に、アブラナ科(Brassicaceae)、好ましくはアブラナ属(Brassica)の他のメンバーの遺伝物質を効果的に取り込むことを可能にする。この方法は、ポリヌクレオチド、T-DNAおよび/または構築物を、アブラナ科の他メンバーに見られる有利な形質の原因となる遺伝物質と組み合わせるために特に有用である。アブラナ科の他メンバーの有利な形質は、本明細書に例として記載されるが、他の有利な形質、または有利な形質の発現に関与する遺伝子および/または調節エレメントは、別に記載される可能性がある。

前記ポリヌクレオチド、本発明のT-DNAもしくは構築物、またはその一部を含有しない親植物は、農学上の優良植物であることが好ましい。具体的には、本発明は、本発明の植物もしくは種子に由来する異種物質を、異なるゲノム背景、たとえば異なる変種もしくは種に移行させることを示す。

より詳細には、本発明は、T-DNAまたはその一部分(後者は、本発明の植物に特に適切であって、それは本発明の全長T-DNAもしくは構築物に加えて、本発明のT-DNAもしくは構築物の一部も含み、前記の一部分は、好ましくは、少なくとも1つの発現カセットを含有し、その発現カセットは好ましくは、デサチュラーゼもしくはエロンガーゼ、好ましくはΔ12-デサチュラーゼ、Δ6-デサチュラーゼおよび/またはω3-デサチュラーゼをコードする遺伝子を含有する)を、アビシニアガラシ(Brassica carinata)の1種に移行させること、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)もしくはクロガラシ(Brassica nigra)由来の遺伝物質を、本発明のT-DNAおよび/またはその一部もしくは2つ以上のその部分を含有する本発明の植物に導入することを教示する。本発明にしたがって、クロガラシ(Brassica nigra)の遺伝子であって、セイヨウアブラナ(Brassica napus)に存在するそのホモログと置き換えた前記遺伝子、またはセイヨウアブラナに存在するホモログに加えて付加された前記遺伝子は、植物種子およびその油のVLC-PUFA量をさらに増加させるのに特に有用である。

また、本発明は、本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチド、本発明の構築物もしくはT-DNAおよび/またはその一部を含有する新たな植物変種を示す。こうした変種は、適当な交雑相手を選択することによって、たとえば、特定の気候生育条件、除草剤耐性、ストレス抵抗性、真菌抵抗性、草食動物抵抗性、油含量の増加もしくは減少、または他の有利な特性に、かなり適応させることができる。収穫時の油含量が、対応する同一変種の野生型植物より低い本発明の植物を提供することは、たとえば、本発明の前記植物の油における全トコフェロール含量を増加させるために(そしてVLC-PUFA量を向上させるために)、ならびに/または前記油におけるトコフェロール濃度(およびVLC-PUFA濃度)を高めるために、特に有用である。

本発明はまた、トコフェロール含量(特に種子油中の含量増加)の遺伝的表現型を与える遺伝子型を有する植物であって、以下のステップを含む方法によって調製される後代系統から得ることができる、または得られる前記植物を作製するための方法を提供する: i) 本発明のトランスジェニック植物を、本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチド、本発明の構築物もしくはT-DNA、またはその一部を含有しない親植物であって、その親植物がアブラナ科、好ましくはアブラナ属、もっとも好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)である前記親植物と、交雑させてF1雑種を得るステップ、 ii) 少なくとも一代自家受粉させるステップ、ならびに iii) 対照植物の種子よりトコフェロール含量の増加した種子を産出することができる、ポリヌクレオチド、構築物、もしくはT-DNAを含有する、ステップ(ii)の子孫を同定するステップ。

ある実施形態において、前記種子は、18:1n-9の下流の全VLC-PUFA含量が油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して少なくとも40% (w/w)であるか、または好ましくは、油含量30% (w/w)、好ましくは油含量35% (w/w)、さらに好ましくは油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して、EPA含量が少なくとも8% であり、ならびに/またはDHA含量が少なくとも1% (w/w)であるような、VLC-PUFAを含有する可能性がある。

その方法は、本発明の植物の新規変種およびトランスジェニック種、ならびにその種子の作製を可能にする。このような植物および種子は、本発明の上記の利点を示す。好ましくは、EPA含量は、油の全脂質含量に対して重量比で少なくとも10% であり、さらにより好ましくは少なくとも13% (w/w)である。DHA含量は、油の全脂質含量に対して重量比で少なくとも1.5% であり、さらにより好ましくは少なくとも2% (w/w)であることが、やはり好ましい。本発明ははじめて、農業栽培条件下で確実に、種子においてこのように高レベルのトコフェロールおよびVLC-PUFAの達成を可能にするが、すなわち、本発明の植物を栽培する少なくとも1 haの商業生産圃場の種子から得られる実際の収量を代表するものであって、この植物は、当該植物においてEPAおよび/またはDHA生成経路を実行するための規定のコピー数の遺伝子を有しており、そのコピー数は少なく、すなわち単一コピーであるか、または一部が2コピーである。

本発明の植物には、戻し交配(非トランスジェニック、同質遺伝子親系統との交配)、およびUトライアングルの他の遺伝資源との交配によって得ることができる、または得られる植物も含まれる。したがって、本発明は、種子油トコフェロール含量増加の遺伝的表現型を与える遺伝子型を有する植物であって、以下のステップを含む方法によって調製される後代系統から得ることができる、または得られる前記植物を作製する方法を提供する: i) 本発明のトランスジェニック植物(「非反復親」とも呼ばれる)を、本発明のポリヌクレオチド、T-DNAもしくは構築物に含まれる遺伝子を発現しない親植物であって、その親植物がアブラナ科、好ましくはアブラナ属、もっとも好ましくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、キャベツ類(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、またはアビシニアガラシ(Brassica carinata)である前記親植物と、交配させて雑種子孫を得るステップ、 ii) 雑種子孫をふたたび親と交配させて、別の雑種子孫を得るステップ、 iii) 場合によりステップii)を繰り返すステップ、ならびに iv)本発明の方法との関連で記載されるデサチュラーゼもしくはエロンガーゼをコードするポリヌクレオチド、本発明のT-DNA、もしくは構築物を含有する、雑種子孫を選択するステップ。

たとえば上記のような戻し交配の方法を本発明に使用して、本発明のポリヌクレオチド、構築物もしくはT-DNAを含有する植物系統に特性を導入し、または特性を改善することができる。このような雑種子孫はステップiv)において選択されるが、これは所定のパラメーターを満足させる。本発明の戻し交配の方法は、それによって、反復親の望ましい遺伝物質の残りを基本的にすべて保持し、したがって親系統の望ましい生理的および形態的構成を保持しつつ、非反復親からの、望ましい遺伝子、または好ましくは本発明のポリヌクレオチド、構築物もしくはT-DNAによって反復親の遺伝物質の改変を有効に促す。次に、選択された雑種子孫を増やし、それが本明細書に記載の系統を構成する。ステップii)の繰り返しに有用な子孫の選択は、ゲノムマーカーの使用によってさらに容易にすることができる。たとえば、そうした子孫は、ステップii)の繰り返しために選択されるが、それらは前の交配ステップで得られた他の子孫と比べて、親にも存在する大半のマーカー、および/または非反復親にも存在する、本発明の望ましいポリヌクレオチド、構築物もしくはT-DNA、またはそれらのT-DNAもしくは構築物の一部以外の、なるべく少ないマーカーを含有する。

好ましくは、本発明のポリヌクレオチド、構築物もしくはT-DNAを含有する雑種子孫が選択されるが、さらにより好ましくは、たとえば、本発明の構築物もしくはT-DNAの別の部分を雑種植物の遺伝物質に取り込むことにより本発明の非反復親に由来する少なくとも1つの追加の発現カセットを含有する、雑種子孫が選択される。

同一環境条件下で生育させたときに、5% の有意水準で決定される非反復親由来の遺伝物質に加えて、親の望ましい形態的および生理的特性が基本的にすべて、変換された植物において回復されている雑種子孫が得られることがさらに好ましい。

さらに好ましくは、対照と比べて特に種子油中のトコフェロール含量の増加した種子を産出する雑種子孫が選択される。種子が、油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して、18:1n-9の下流の全VLC-PUFA含量が少なくとも40% (w/w)であるような、VLC-PUFAを含有すること、または好ましくは、油含量30% (w/w)、好ましくは油含量35% (w/w)、さらに好ましくは油含量40% (w/w)の全種子脂肪酸含量に対して、EPA含量が少なくとも8% であり、ならびに/またはDHA含量が少なくとも1% (w/w)であるような、VLC-PUFAを含有することも好ましい。

当然のことながら、このような種子のVLC-PUFAまたはトコフェロール含量は、単一種子から、あるいは一個の植物の種子から測定されるべきではなく、少なくとも100個の植物、より好ましくは少なくとも200個の植物、さらにより好ましくは、植物の半分が異なる年の圃場試験で栽培された少なくとも200個の植物の、種子VLC-PUFA含量の数値平均を指す。

個別の非反復親の選択は、戻し交配の目的によって決まってくる。主要目的の1つは、商業的に望ましい、農学的に重要な形質を系統に付加することである。

「系統」という用語は、その指定を共有する個体間で全体的な変化をほとんど示さない植物群のことをいう。「系統」は一般に、少なくとも1つの形質について個体間で遺伝的変異をほとんど、もしくはまったく示さない植物群を指す。この出願で使用される「DH(倍加半数体)系統」は、半数体組織を培養した後、細胞分裂を伴わずに染色体の内容を倍加することによって作製される植物群を表し、2倍体の数の染色体を有する植物を生じるが、このそれぞれの染色体ペアは、2つの重複染色体からなる。したがって、DH系統は通常、個体間で形質にほとんど、もしくはまったく変化を示さない。非反復親において本発明のT-DNAにもともと含まれる1つもしくは複数の遺伝子を含有する系統も、本発明の植物とみなされる。

本発明はまた、植物油および/またはトコフェロール生産の(特にトコフェロール生産のための)方法に関するものであって、以下のステップを含む: i) たとえば油を含有する種子を得られるような、本発明の植物を生育させるステップ、 ii) 前記種子を収穫するステップ、ならびに iii) ステップii)で収穫された前記種子から油を抽出するステップ。

好ましくは、油のトコフェロール含量は、対照植物の種子から抽出された油より増加している。好ましいトコフェロール含量の増加は、本明細書に別記する。

iii)の抽出ステップは、好ましくは、油のトコフェロール含量を維持する条件下で実行される。本発明との関連で、油のトコフェロール含量を維持する条件は、トコフェロール含量を減少させない条件であるべきである。このような条件は当技術分野でよく知られており、たとえば、Willner et al. Einfluss der Prozessparameter auf die Tocopherolbilanz bei der Gewinnung von pflanzlichen Oelen. Lipid / Fett, Volume 99, Issue 4, pages 138-147, 1997に記載されているが、これらはここに参考としてその全体が本明細書に組み入れられる。

それに加えて、油は全脂質含量に基づいて重量比で少なくとも1% のDHA含量を有し、ならびに/または全脂質含量に基づいて重量比で少なくとも8% のEPA含量を有する可能性がある。

追加ステップとして、この方法は、ステップiii)で抽出された油からトコフェロールを単離するステップiv)を含んでいてもよい。

ある実施形態において、「トコフェロールを単離する」という表現は「トコフェロールを濃縮する」ことを意味する。

油からトコフェロールを単離する方法は当技術分野でよく知られており、たとえば、“Commercial Extraction of Vitamin E from Food Sources” in The Encyclopedia of Vitamin E, Preedy, V.R. and Watson R.R. (eds.), CABI Publishers, Oxford, U.K., pp. 140-152 and in US 5,627,289に記載されている。2つの文書はいずれもその全体を本明細書に組み入れるものとする。

たとえば、トコフェロールは、油に含まれる遊離脂肪酸のエステル化、油からの脂肪族化合物の除去を可能にする鹸化、蒸留、クロマトグラフィー法、酵素法(リパーゼの使用による)などといった、さまざまな方法で単離することができる。これらの、およびその他の方法が、前項に記載した“The Encyclopedia of Vitamin E”の一章に記載されている。

ある実施形態において、単離は、前記油に含まれる遊離脂肪酸のメタノールによるエステル化;メタノールを用いたアルカリ触媒エステル交換による、前記油に含まれるトリグリセリドのエステル交換;前記エステル交換によって生じた油を酸性化した後洗浄すること;ならびに、前記の酸性化および洗浄によって生じた油から脂肪酸メチルエステルを蒸留によって除去することを含む。ある実施形態において、油の水蒸気蒸留物は、油として使用される。

ある実施形態において、塩酸などの無機酸が酸性化のために使用される。

ある実施形態において、前記混合物はメタノールを用いてエステル化されるが、その容量比はメタノール1に対して、混合物1から1.5である。

ある実施形態において、遊離脂肪酸は60〜100℃の温度で(特に65〜70℃の温度で)エステル化される。好ましくは脂肪酸は、強力な酸性イオン交換体の存在下でエステル化される。

油は、EPA、DHA、および/またはDPA n-3を下記の濃度で含有することが好ましい。

また好ましくは、EPA含量は、油の全脂質含量に対して重量比で少なくとも8% 、さらに好ましくは少なくとも10% (w/w)である。DHA含量は、好ましくは油の全脂質含量に対して重量比で少なくとも1% 、さらに好ましくは少なくとも1.5% である。本明細書に記載するように、本発明の植物は、このような植物油生産方法のために、好ましくは、本発明のポリヌクレオチド、構築物、もしくはT-DNAを含有し、さらに場合によっては1つもしくは複数の、T-DNAもしくは構築物の一部を含有するが、この一部分もしくは複数の部分はそれぞれ、本発明のT-DNAの少なくとも1つの発現カセットを含有する。

本発明はまた、トコフェロールの含量が増加した油に関する。好ましくは、前記の油は、上記の方法によって得られるか、または本発明の植物によって生産される。好ましくは、前記の油は高含量のVLC-PUFAを含有する(「高含量」および「増加した含量」という表現は本明細書では区別なく使用される)。たとえば、油はEPA、DHA、および/またはDPA n-3を下記の濃度で含有する。

「油」という用語は、エステル化されてトリグリセリドとなっている不飽和および/または飽和脂肪酸を含有する、脂肪酸混合物を意味する。好ましくは、本発明の油のトリグリセリドは、上記のPUFAまたはVLC-PUFA分子を含有する。エステル化されたPUFAおよび/またはVLC-PUFAの量は、好ましくは約30% であるが、50% の含量がより好ましく、60% 、70% 、80% またはそれ以上の含量がさらにもっと好ましい。油はさらに遊離脂肪酸、好ましくは上記のPUFAおよびVLC-PUFAを含有してもよい。分析のために、脂肪酸含量はたとえば、エステル交換によって脂肪酸をメチルエステルに変換した後GC分析装置で測定することができる。油脂中のさまざまな脂肪酸の含量は、特に起源によって変動しうる。しかしながら、油は、PUFAおよび/またはVLC-PUFA組成および含量に関して、天然に存在しない組成を有するものとする。植物油中の脂肪酸の大半は、トリグリセリドとしてエステル化されていることが知られている。したがって、本発明の油において、PUFAおよびVLC-PUFAは、好ましくは、トリグリセリドとしてエステル化された形でも存在する。このような独特の油の組成、および油のトリグリセリド中のPUFAおよびVLC-PUFAの独特のエステル化パターンは上記の本発明の方法を適用することによってのみ得られるはずであることが理解されるであろう。その上、本発明の油は、他の分子種も含有する可能性がある。具体的には、少量の本発明のポリヌクレオチドもしくはベクターを含有することがある。しかしながら、このような少量は、PCRなどの高感度技術によってのみ検出することができる。

上記のように、これらの油、脂質、または脂肪酸組成物は、好ましくは、(重量比で)6〜15% パルミチン酸、1〜6% ステアリン酸、7〜85% オレイン酸、0.5〜8% バクセン酸、0.1〜1% アラキン酸、7〜25% 飽和脂肪酸、8〜85% 一価不飽和脂肪酸、および60〜85% 多価不飽和脂肪酸を含有し、いずれの場合も(好ましくは重量で)100% および生物の全脂肪酸含量に基づく。脂肪酸エステルまたは脂肪酸混合物中に存在する好ましいVLC-PUFAは、好ましくは、全脂肪酸含量(好ましくは重量)に基づいて、1% 〜20% DHA、または5.5% 〜20% DHA、および/または9.5% 〜30% EPAである。

本発明の油、脂質、または脂肪酸は、生産宿主細胞、生物、有利なものとして植物、特に油糧作物、たとえばダイズ、菜種、ココナツ、油ヤシ、ベニバナ、アマ、アサ、ひまし油植物、キンセンカ属、ラッカセイ、カカオ豆、ヒマワリ、または前記のその他の単子葉植物もしくは双子葉植物油糧作物の全脂肪酸含量に基づいて(好ましくは重量比で)、好ましくは、少なくとも1% 、2% 、3% 、4% 、5.5% 、6% 、7% 、もしくは7.5%、より好ましくは、少なくとも8% 、9% 、10% 、11% 、もしくは12% 、そしてもっとも好ましくは、少なくとも13%1、4%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%のDHA、および/または少なくとも9.5%、10%、11%、もしくは12%、より好ましくは少なくとも13%、14%、14,5%、15%、もしくは16%、そしてもっとも好ましくは、少なくとも17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、もしくは30%のEPAを含有する。

本発明の種子は、本発明の油もしくは脂質を含有するものとする。好ましくは、油もしくは脂質は、植物から、より好ましくは1つもしくは複数の植物(特に本発明の1つもしくは複数の植物)の種子から、抽出され、採取され、得ることができ、または生産される。したがって、油もしくは脂質は、本発明の方法によって得ることができる。具体的には、植物油もしくは植物脂質は、抽出された植物油もしくは脂質である。また、好ましくは前記の油もしくは脂質は、植物から、より好ましくは、1つもしくは複数の植物(特に本発明の1つもしくは複数の植物)の、種子の処理単位から、または大量の種子から、抽出され、採取され、得ることができ、または生産される。

好ましくは、油もしくは脂質と関連して「抽出される」という用語は、植物から、特に1つもしくは複数の植物の種子から、抽出された油もしくは脂質を表す。より好ましくは、油もしくは脂質と関連して「抽出される」という用語は、植物から、特に1つもしくは複数の植物の、種子の処理単位から、または大量の種子から、抽出された油もしくは脂質を表す。このような油もしくは脂質は、粗製の組成物であってもよい。しかしながら、それは、たとえば水が除去された精製油もしくは脂質であってもよい。ある実施形態において、油もしくは脂質は、他の供給源に由来する脂肪酸と混合されない。

本発明の油もしくは脂質は、植物の種子中の油もしくは脂質であってもよい。好ましくは、前記の植物はトランスジェニック植物である。より好ましくは、前記の植物は本発明の植物である。特に好ましい実施形態において、植物はアブラナ属植物である。

本発明の油もしくは脂質は、脂肪酸を含有するものとする。具体的には、油もしくは脂質は、脂肪酸をエステル化された形で含有するものとする。したがって、脂肪酸はエステル化されるものとする。好ましくは、本発明の油もしくは脂質は、次の脂肪酸のうち1つもしくはいくつかを(エステル化された形で)含有する:エイコサペンタエン酸(チムノドン酸、EPA、20:5n-3)、クルパノドン酸(DPA n-3)、およびDHA((Z,Z,Z,Z,Z,Z)-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸)。ある実施形態において、油もしくは脂質は、EPAおよびDHAを含有する。さらに、油もしくは脂質がEPA、DHA、およびDPA n-3を含有することが想定される。

本発明の脂質もしくは油の全脂肪酸含量における、前記脂肪酸の好ましい含量は、以下にさらに記載される。以下において、含量の範囲が与えられる。本明細書で与えられる脂肪酸の含量(レベル)は、(油もしくは脂質に含まれる)すべての脂肪酸の全重量に対する(特定の脂肪酸の重量の)パーセンテージとして表される。したがって、含量は、好ましくは重量パーセント(% w/w)として与えられる。下記の含量は、高含量とみなされる。

好ましくは、脂肪酸はエステル化された形で存在する。したがって、脂肪酸はエステル化された脂肪酸とする。

上記のように、油もしくは脂質は、EPA(20:5n-3)を含有することができる。好ましくは、エイコサペンタエン酸(チムノドン酸、EPA,20:5n-3)の含量は、全脂肪酸含量に対して、0.1%〜20%、より好ましくは2%〜15%、もっとも好ましくは5%〜10% の間である。さらに、EPAの含量は、全脂肪酸含量の5%〜15%の間であることが想定される。

上記のように、油もしくは脂質は、クルパノドン酸(DPA n-3)を含有することができる。好ましくは、クルパノドン酸(DPA n-3)の含量は、全脂肪酸含量に対して0.1% 〜10%、より好ましくは1% 〜6%、もっとも好ましくは2%〜4%である。さらに、DPA n-3の含量は少なくとも全脂肪酸含量の2%とすることができる。

上記のように、油もしくは脂質は、DHAを含有することができる。好ましくは、DHAの含量は、全脂肪酸含量に対して1% 〜10%、より好ましくは1% 〜4%、もっとも好ましくは1%〜2%である。さらに、DHAの含量は全脂肪酸含量の1%〜3%であることが想定される。

本発明のさらに他の実施形態は、以下に詳細に記載するように、油、脂質、脂肪酸、および/または脂肪酸組成物の、飼料、食料品、栄養補助食品、化粧品、または医薬組成物における使用である。本発明の油、脂質、脂肪酸、もしくは脂肪酸混合物は、動物起源の他の油、脂質、脂肪酸、もしくは脂肪酸混合物、たとえば魚油と混合するために使用することができる。

「組成物」という用語は、固体、液体、または気体状に調剤された任意の組成物を表す。前記の組成物は、必要に応じて適当な補助化合物、たとえば賦形剤もしくは基剤、またはその他の成分とともに、本発明の化合物を含有する。これに関連して、補助化合物とその他の成分とは本発明に関して区別されるが、補助化合物はすなわち、望ましい目的のためにその組成物を適用するにあたって、本発明の化合物によって引き起こされる効果に関与しない化合物であり、その他の成分はすなわち、さらなる効果を与えるか、または本発明の化合物の効果を調整する化合物である。適当な賦形剤および/または基剤は、組成物が使用されることになる目的、およびその他の成分によって決まる。当業者は、このような適当な賦形剤および/または基剤を造作なく決定することができる。適当な賦形剤および/または基剤の例は当技術分野でよく知られており、バッファーなどの生理食塩水、水、油/水エマルションなどのエマルション、さまざまなタイプの湿潤剤などがある。

油、脂肪酸、もしくは脂質を含有する組成物に関するさらに好ましい実施形態において、前記組成物は、医薬組成物、化粧品組成物、食料品、飼料、好ましくは魚飼料または栄養補助食品として、さらに調合される。

本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物、ならびに必要に応じて1つもしくは複数の製薬上許容される基剤を含有する。本発明の化合物は、製薬上許容される塩として製剤することができる。許容される塩は、酢酸、メチルエステル、Hel、硫酸、塩素などを含む。医薬組成物は好ましくは、局所投与もしくは全身投与される。薬物投与に通常用いられる適当な投与経路は、経口、静脈内、または非経口投与、ならびに吸入である。しかしながら、化合物の性質および作用機序に応じて、医薬組成物は他の経路でも投与することができる。たとえば、ポリヌクレオチド化合物は、遺伝子治療法で、ウイルスベクターもしくはウイするもしくはリポソームを使用することによって投与することができる。

さらに、化合物は、他の薬物と組み合わせて、共通の医薬組成物として、または別々の医薬組成物として投与することができるが、前記の別々の医薬組成物はパーツからなるキットの形で提供されてもよい。化合物は好ましくは、通常の手順に従って薬物を標準的な医薬基剤と組み合わせることによって調製される、通常の剤形で投与される。これらの手順は、望ましい製剤に適合するように、成分を混合、造粒、および圧縮もしくは溶解することを含むことができる。当然のことながら、製薬上許容される基剤もしくは賦形剤の形態および性質は、組み合わされるべき活性成分の量、投与経路、および他の周知の変数によって決まる。1つもしくは複数の基剤は、製剤の他の成分と適合するという意味で、ならびにレシピエントに有害でないという意味で、許容されなければならない。使用される医薬基剤は、たとえば、固体、ゲル、もしくは液体とすることができる。固体基剤の例は、乳糖、白土、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体基剤の例は、リン酸緩衝生理食塩水、糖蜜、ピーナッツ油およびオリーブ油などの油、水、エマルション、さまざまなタイプの湿潤剤、滅菌溶液などである。同様に、基剤もしくは賦形剤は、当技術分野でよく知られている時間遅延材料、たとえば、グリセリルモノステアリン酸もしくはグリセリルジステアリン酸を単独で、またはワックスとともに含んでいてもよい。前記の好適な基剤は上記のもの、および当技術分野で周知のその他のものを含むが、たとえば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。1つもしくは複数の賦形剤は、組成物の生物活性に影響を与えないように選択される。こうした賦形剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス液である。それに加えて、医薬組成物もしくは医薬製剤は、他の基剤、アジュバント、または毒性がなく、治療的作用がなく、免疫原性のない安定化剤なども含んでいてもよい。治療上有効な用量は、本発明の医薬組成物に使用される化合物の量であって、本明細書に記載の疾患もしくは異常に付随する症状を予防し、改善し、または治療する前記の量を表す。

「化粧品組成物」という用語は、医薬組成物について上述したように製剤することができる組成物に関する。化粧品組成物についても同様に、本発明の化合物が好ましくは実質的に純粋な形で使用されることが想定される。しかしながら、不純物は医薬組成物ほど重大な意味を持たない可能性がある。化粧品組成物は好ましくは局所的に適用されるものとする。

本発明の化合物を含有する好ましい化粧品組成物は、ヘアートニック、育毛剤組成物、シャンプー、粉末、ゼリー、ヘアーリンス、軟膏、ヘアーローション、ペースト、ヘアークリーム、ヘアースプレー、および/またはヘアーエアゾールとして製剤することができる。

以下の実施例の項で詳細に記載する3つの事象の種子は、Budapest treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedureの規定の下にATCCに寄託され、すなわち、事象「LBFLFK」の種子 = ATCC番号「PTA-121703」、事象「LBFDHG」の種子 = ATCC番号「PTA-121704」、ならびに事象「LBFDAU」の種子 = ATCC番号「PTA-122340」である。出願者は、生物由来物質の移動または商業目的のその輸送に関する法律によって課せられたいかなる制限も無視する権限はない。出願者は、この特許によって認められる権利、またはPlant Variety Protection Act (7 USC sec. 2321、以下参照)の下で寄託された事象に適用可能な権利のいかなる侵害も放棄しない。未承認の種子の増殖は禁止されている。この種子は、国内法令にしたがって規制される可能性がある。種子の寄託は、当業者の便宜のためにのみ行われたのであって、本発明を完全に説明するために、本発明を完全に可能にするために、または本発明もしくはその任意の一部もしくは態様を実行するために、寄託された種子が必要であるとの告白、承認、申告、または主張とみなされず、それを意味しない。また、種子の寄託は、本発明の方法の適用を、そうした種子、またはそうした種子に含まれる任意の物質、たとえば核酸、タンパク質、もしくはそのような核酸もしくはタンパク質の任意の断片の適用に制限することを推奨するとはみなされず、それを意味しない。

寄託された種子は、配列番号3に示す配列を有するT-DNAベクターで形質転換された植物に由来する。

本発明は付属の実施例によってさらに説明されるが、しかしながらそれは、本明細書に記載の発明の範囲を制限するものではない。 (実施例)

材料および方法 A. 一般的なクローニング法

クローニング法、たとえば、二本鎖DNAを特異的な部位で切断するための制限エンドヌクレアーゼの使用、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロン膜上への核酸の転写、DNA断片の連結、大腸菌(E. coli)の形質転換および細菌の培養は、Sambrook et al. (1989) (Cold Spring Harbor Laboratory Press: ISBN 0-87965-309-6)に記載のように実施された。ポリメラーゼ連鎖反応は、Phusion(商標名) High-Fidelity DNA Polymerase (NEB, Frankfurt, Germany)を使用し、メーカーの説明書に従って行った。概して、PCRで使用されるプライマーは、増幅のためにプライマーの3'末端の少なくとも20ヌクレオチドが鋳型と完全にアニールするようにデザインされる。制限酵素部位は、プライマーの5'末端に制限酵素部位に相当するヌクレオチドを付けることによって付加される。例えばプロモーターを遺伝子に連結したり、遺伝子をターミネーターに連結したりといった、目的の2つの断片を連結するための方法として、たとえば、K. Heckman and L. R. Pease, Nature Protocols (2207) 2, 924-932に記載される融合PCRを用いた。たとえば、Czar et al. (Trends in Biotechnology, 2009, 27(2): 63-72)に記載されるような遺伝子合成は、Geneart(登録商標)サービスを用いてLife Technologiesにより行われた。WO2013049227に記載のGeneart(登録商標)技術は、少ない塩基対の長さの遺伝要素の作製を可能にし、本発明ではそれを用いて約60,000bpの完全なプラスミドを作製した。ヌクレオチドのポリヌクレオチドへの化学合成は、短いDNA断片を目的に用いられたが、次に、WO2013049227に記載の従来のクローニング技術を組み合わせて使用して、前記断片を逐次的なモジュール方式で組み合わせて、大きなサイズの断片とした。

B. 複数のタンパク質をコードする複数の発現カセットを植物ゲノムに導入するのに適したさまざまなタイプの植物形質転換プラスミド。 アグロバクテリウムによる植物形質転換のために、DNA構築物はいくつかの基準を満たすことが好ましい:(1)構築物は、「T-DNA左境界」(LB)および「T-DNA右境界」(RB)の間のいわゆるトランスファーDNA(T-DNA)上に、植物ゲノム内への挿入を意図したいくつかの遺伝要素を保有する(2)ほとんどのクローニングステップは大腸菌においてDNAを増やすステップを要求するので、構築物は大腸菌において複製する。(3)植物形質転換法は、アグロバクテリウムによる感染を受けた細胞の植物ゲノム内に目的の遺伝要素を挿入することができるアグロバクテリウムの使用に依存するので、構築物はアグロバクテリウム(たとえば、A. tumefaciensまたはA. rhizogenes)において複製する。(4)構築物は、植物細胞の感染のために、ならびにアグロバクテリウムの感染を受けた植物細胞の植物ゲノム内への望ましい遺伝要素の導入および組込みのために必要とされるタンパク質をコードする、補助遺伝要素を含有するか、または、構築物は、同じアグロバクテリウム細胞内に存在するそのような補助遺伝要素を含有するもう1つの構築物と組み合わせて使用された。(5)構築物は、完全な構築物を含有する細菌細胞、ならびに望ましい遺伝要素を含有する植物細胞の選択または識別を容易にするための選択マーカーを含有することができる。利用可能なプラスミドの概要はKomori et al (2007)で与えられた。

C. F因子/pRI複製開始点を含有するBiBAC Tプラスミド内でのEPAおよびDHA合成に必要な遺伝子のアセンブリー セイヨウアブラナ(Brassica napus)種子でのVLC-PUFA合成のために、VLC-PUFA代謝経路のタンパク質をコードする遺伝子のセットを発現エレメント(プロモーター、ターミネーターおよびイントロン)と組み合わせて、植物のアグロバクテリウムによる形質転換のために使用されるバイナリーTプラスミドに導入した。すべての発現カセットは、1つのバイナリーTプラスミド上に組み入れられた。DNA合成の進歩によって、数多くの会社が、微生物ゲノムの大きさにまで達するポリヌクレオチドの最初のテンプレートなしに、de novo合成のために化学合成と分子生物学的技法を組み合わせて使用するサービスを提供することが可能となっている。この実施例に記載のプラスミドの構築に用いられた合成は、Life TechnologiesによってGeneart(登録商標)サービスを用いて実行された。WO2013049227に記載のGeneart(登録商標)技術は、少ない塩基対の長さの遺伝要素の作製を可能にし、本発明ではそれを用いて、約61,000bpの全長を有する植物形質転換用バイナリーTプラスミドVC-LTM593-1qcz rcを作製した。プラスミドVC-LTM593-1qcz rcの構造を表1に示す。

D. BiBACを用いたトランスジェニック植物の作製法 概して、トランスジェニック菜種植物は、DeBlock et al. 1989, Plant Physiology, 91:694-701にしたがって改変プロトコールにより作製された。形質転換用の菌株の一夜培養物を、抗生物質(20 mg/L クロラムフェニコール、5 mg/Lテトラサイクリン、50 mg/Lカナマイシン)含有YEB培地中にて調製し、28℃で増殖させた。翌日、培養物の光学濃度を600 nmの波長でチェックした。それは約1.0に到達した。それより低い光学濃度の培養物は培養期間を延長した。光学濃度が1.3を超える培養物は、OD約0.2となるようにYEB培地で希釈し、OD 1.0に達するまで培養した。培養物を約4000gでペレットとし、100 mg/L アセトシリンゴンを含有する液体MS培地(Murashige and Skoog 1962)、pH 5.8、3%スクロース、中で、OD600nm 0.1となるように再懸濁した。5日経過した黄化芽生えから調製された胚軸部分の接種に、このアグロバクテリウム懸濁液を使用した。

種子は、Duchefa (Duchefa Biochemie, PO Box 809 2003 RV Haarlem, Netherlands)社製のMSB5培地、pH 5.8, 3%スクロースおよび0.8% Oxoid寒天を用いて、低光量条件下で5日間発芽させた(< 50 μMol/m2s)。低光量条件下での発芽は外植片をもたらし、これは黄化胚軸より安定していて扱いやすい。4〜7 mmの長さの胚軸部分を、軽く振盪しているアグロバクテリウム細胞のバスに最長4分接種し、インキュベーション後、選別した。感染した外植片を、共培養培地(MS培地、pH 5.6、3%スクロース、0.6 g/L MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、18 g/Lマンニトール、0.7%Phyto Agar(Duchefa Biochemie, PO Box 809 2003 RV Haarlem, Netherlands、品番SKU:P1003)、100 mg/L アセトシリンゴン、200 mg/L L-システイン、1 mg/L 2,4D (2,4-ジクロロフェノキシ酢酸))とともに、その表面に一重のWhatman濾紙を載せたペトリ皿に移した。ペトリ皿をテープでシールし、長日条件下(16時間明期/8時間暗期)で3日間23℃にてインキュベートした。3日の共培養期間後、外植片を、アグロバクテリウムが増殖しないように、MS培地、pH 5.6、3% スクロース、0.6 g/L MES、18 g/L マンニトール、0.7% Phyto Agar,1 mg/L 2,4D および500 mg/L カルベニシリンに移し、回復期の間、共培養と同じ物理的条件下で7日間、インキュベートした。

選択的再分化のために、回復期間の後、外植片をMS培地、pH 5.8、3% スクロース、0.7% Phyto Agar、2.5 mg/L AgNO3 3 mg/L BAP (6-ベンジルアミノプリン)、0.1 mg/L GA (ジベレリン酸)、0.1 mg/L NAA (1-ナフタレン酢酸)、500 mg/L カルベニシリン、100 nM イマゼタピル(Pursuit)に移し、上記のように長日条件下で2週間培養した。2週間ごとに継代培養を行う。ホルモンは段階的に次のように減少させた:BAP 3 〜 0.5 〜 0.05 mg/L; GA (ジベレリン酸) 0.1 〜 0.25 〜 0.25 mg/L; NAA 0.1 〜 0 〜 0 mg/L。

選択的再分化を2サイクル行った後、発育した全芽を収穫することができた。全芽を切り取り、ex vitro長日条件下、ふた付きボックス内で、伸長/発根培地(MS培地、pH 5.8、2%スクロース、100 mg/L ミオイノシトール、40 mg/L アデニン硫酸塩、500 mg/L MES、0.4% Sigma Agar、150 mg/L チメンチン、0.1 mg/L IBA (インドール-3-酪酸))、または1/10量のスクロースを含まないMS培地培地で給水されたロックウール/ストーンウールもしくは発泡マット(Grodan, GRODAN Group P.O. Box 1160, 6040 KD Roermond The Netherlands, or Oasis, 919 Marvin Street, Kent, OH 44240 USA)に移した。

in vitro培地中でシュートを伸長させ、発根させて、土にじかに移した。in vitroシュート、またはGH適応シュートのいずれかを分子解析のためにサンプリングした。

オートクレーブ滅菌(抗生物質、ホルモン、添加物、たとえばL-システイン、アセトシリンゴン、イミダゾリノン成分以外)または濾過滅菌して調製された培地を使用した(寒天成分はオートクレーブ滅菌され、42℃に冷却してから使用された)。

E. 温室および圃場における種子発芽および植物生育 形質転換された植物は、種子産出および表現型評価のために、温室および圃場の両方で栽培された。温室生育条件は、16時間の明期の後8時間の暗期とした。明期(昼の期間とも呼ばれる)の間、光量子200-300 μMol/m2s(これは植物の上端における光の入射であり、光はこの相対量を達成するように植物からの距離で調整された)に相当する光のレベルで、温度は20℃とした。昼の期間の間、温室内の光の範囲は光量子130から500μMol/m2sまで変動した。上記の昼の範囲から外れると、光量子200-300 μMol/m2sまでレベルを上げるように人工光の使用を始動させるか、または光量子200-300 μMol/m2sまでレベルを戻すように光を避ける、および/または遮るようにした。暗期(夜の期間とも称される)の温度は18℃とした。昼の期間が始まる4時間前に温度は低下し、暗期の残りの間は15℃に下がっていた。植物は必要に応じて水をやり、昆虫は駆除された。土壌型は、Floragard (Oldenburg, Germany)が提供する50 % Floradur B Seed + 50 % Floradur B Cutting(砂およびパーライトを含む)とした。植物の生育は栄養素の供給によって増強された。栄養素は日常の水やりとともに行った。0.1% (w/v) 肥料溶液 (Hakaphos Blue 15(N) -10 (P) - 15(K), Compo GmbH & Co KG, Muenster, Germany)を用いて植物に水やりした。水は必要に応じて供給された(たとえば、植物の生育段階、水の消費量などに応じて)。他家受粉を回避するために、植物は最初の花が開花した時点で袋がけした。すべての開花した花が袋に覆われていることを確認するために、植物は毎日チェックした。適切に覆われていない開花した花は除去した。

圃場生育植物のために、気候的にUSDA生育ゾーン3a-4bおよび5aに対応する6区画で植物を生育させた。USDA生育ゾーン3a-4bおよび5aに対応する区域で栽培される植物は、夏に栽培された。キャノーラの標準的な植物栽培を続行した。栽培者によって必要があるとして、鳥や昆虫から防護するためのネットかけおよび他の手段を使用し、除草剤および施肥も行った。すべての区画の栽植密度は平米当たり種子80個とした。

F. 植物油の脂質抽出および脂質分析 植物における、または望ましい分子、たとえば特定の脂肪酸の生成に関する、遺伝子改変の結果は、例えば上記のような適当な条件下で植物を生育させて、脂質もしくはある種の脂肪酸などの望ましい分子の生産向上について生育培地および/または細胞成分を分析することによって、測定された。脂質は、Ullman, Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd. A2, S. 89-90 und S. 443-613, VCH: Weinheim (1985); Fallon, A., et al., (1987) “Applications of HPLC in Biochemistry“ in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17; Rehm et al. (1993) Biotechnology, Bd. 3, Kapitel III: “Product recovery and purification“, S. 469-714, VCH: Weinheim; Belter, P.A., et al. (1988) Bioseparations: downstream processing for Biotechnology, John Wiley and Sons; Kennedy, J.F., und Cabral, J.M.S. (1992) Recovery processes for biological Materials, John Wiley and Sons; Shaeiwitz, J.A., und Henry, J.D. (1988) Biochemical Separations, in: Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Bd. B3; Kapitel 11, S. 1-27, VCH: Weinheim; and Dechow, F.J. (1989) Separation and purification techniques in biotechnology, Noyes Publicationsなどの標準的な文献に記載のように抽出した。

脂質および脂肪酸の抽出は、Cahoon et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96 (22):12935-12940, and Browse et al. (1986) Analytic Biochemistry 152:141-145に記載のように、上記以外のプロトコールを用いて行うことができるとされる。脂質もしくは脂肪酸の定量分析および定性分析に用いられるプロトコールは、Christie, William W., Advances in Lipid Methodology, Ayr/Scotland: Oily Press (Oily Press Lipid Library; 2); Christie, William W., Gas Chromatography and Lipids. A Practical Guide - Ayr, Scotland: Oily Press, 1989, Repr. 1992, IX, 307 S. (Oily Press Lipid Library; 1); “Progress in Lipid Research, Oxford: Pergamon Press, 1 (1952) - 16 (1977) u.d.T.: Progress in the Chemistry of Fats and Other Lipids CODENに記載される。

種子においてEPAおよびDHAを生産するための、実施例1Cに記載の遺伝要素を含有するトランスジェニック植物を作製するために、菜種(セイヨウアブラナ種子(Brassica napus))を1Dに記載のように形質転換した。遺伝要素を含有する選択された植物を、実施例1Eに記載の条件下で成熟種子の発達した状態まで生育させた。収穫された種子から上記のように脂肪酸を抽出し、上記のようにガスクロマトグラフィーを用いて分析した。脂肪酸の含量(レベル)は、本発明の全体を通じて、種子油中に含まれる(すべての脂肪酸の総重量)に対する(個別の脂肪酸の重量)のパーセンテージとして表される。種子油含量は本発明の全体を通じて、(種子の全油重量)に対する(油の重量)のパーセンテージとして表される。

G. 植物種子サンプルの組成分析 種子の組成に及ぼす遺伝子改変の影響は、例えば上記のような適当な条件下で植物を生育させて、特定の組成パラメーターについて種子組織を分析することによって測定された。成熟種子サンプルを、Foss Knifetec 1095 Sample Millにかけて細かい粉末に粉砕し、Eurofins Nutrition Analysis Center (ENAC)に提供した。具体的には、ビタミンE(トコフェロールは)粉砕種子サンプルにおいて、ENACにより、MET-VT-008法およびMET-VT-030法を用いて測定されたが、これらの2つの方法はいずれも、Association Of Analytical Communities method AOAC 971.30を参考として、HPLC分離および定量を含む。

種子においてトコフェロール、ならびにEPAおよびDHAの生産を増大させるためにプラスミドVC-LTM593-1qcz rcのT-DNAを含有する植物 この実施例に記載のすべての遺伝要素は、1つのT-DNA上でBiBACプラスミドにより植物ゲノムに導入された。この目的に向けて、プラスミドVC-LTM593-1qcz rcをアグロバクテリウムにクローニングし、実施例1にしたがって、このアグロバクテリウム培養物と共に植物組織をインキュベートした。VC-LTM593-1qcz rcの遺伝要素、および各要素の機能を表1に記載する。便宜のために、VC-LTM593-1qcz rcの2つのT-DNAを保有する植物種子において発現されるすべての酵素を、追加として表2に記載する。ある実施形態において、本発明の植物、植物部分(特に種子)、T-DNA、または構築物は、表に記載される、一部のデサチュラーゼおよび/もしくはエロンガーゼ、またはすべてのデサチュラーゼおよび/もしくはエロンガーゼを含有する。

A. 夏期にUSDA生育ゾーン3a-4bおよび5aにおいて圃場試験で栽培されたプラスミドVC-LTM593-1qcz rc のT-DNAを保有するT2植物の脂肪酸プロファイルおよびビタミンE含量

VC-LTM593-1qcz rc の1-2コピーのT-DNAを含有する、6つの独立したトランスジェニック事象から得られたホモ型T2植物を、実施例1にしたがって圃場区画で栽培した。T3種子を収穫し、実施例1に記載の脂肪酸分析のために提出した。表3は、それぞれの事象について、すべての区画から得られたすべてのサンプルにわたる脂肪酸プロファイルデータを含む。いずれの事象も圃場においてVLC-PUFAを生成する能力がある(ARA、EPAおよびDHA)。

表3に記載の同じT3種子を、実施例1に記載のように組成分析に提供した。データを解析するために、ソフトウェアJMP 11.0を用いてANOVAを行った。解析は、テューキー検定を用いて95%信頼水準で行った。圃場試験から得られたデータの不均衡(たとえば天候などに起因する)を相殺するために、統計分析において平均の代わりに最小二乗平均を使用した。表3の共通する文字は、最小二乗平均の有意な差異はないことを示す。この統計分析に基づいて、ある事象、LBFDAUは、未形質転換Kumily対照より高いγトコフェロールおよび全トコフェロールを含有するが、他のすべての事象は、事象LBFIHEを除いて、Kumilyより高いγトコフェロールおよび全トコフェロールレベルを有する傾向がある。

表3および4に記載のトランスジェニック事象は、すべて、18:1+18:2含量が未形質転換Kumilyより減少している(18:1+18:2 = 80%)。しかしながら、Li et al. (2013) J Agric Food Chem 61:34-40に基づいて予想されたαトコフェロール含量の有意な減少は観察されなかった。代わりに、γトコフェロールおよび全トコフェロール含量の増加が観察され、最大の増加は、もっとも多くのEPA+DHA組み合わせを生産する事象LBFDAUにおいて生じた。相関分析を行って、VLC-PUFAとトコフェロールとの相関関係を明らかにした(表5)。ARA(n-6脂肪酸)はいずれのトコフェロール成分との間にも相関関係はなかった。その一方で、有意な正の相関関係が、さまざまなトコフェロールとEPAおよびDHAとの間で観察された。相関係数は、鎖長が20炭素かそれを超えるすべてのn-3またはすべてのn-6脂肪酸の総計について決定された。トコフェロールとVLC-PUFA含量との相関関係は、n-3脂肪酸に特異的である。もっとも高い相関は、20炭素鎖長またはそれ以上のn-3脂肪酸とγ、δ、および全トコフェロールとの間で観察された。したがって、20および22炭素n-3 VLC-PUFA、EPA、DPA、およびDHAを合成する生合成経路を植物に導入することは、ビタミンE含量の増加ももたらす。

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