改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤

申请号 JP2015556811 申请日 2015-01-07 公开(公告)号 JPWO2015105112A1 公开(公告)日 2017-03-23
申请人 味の素株式会社; 发明人 佐藤 弘明; 弘明 佐藤; 裕行 中越; 裕行 中越; 正男 小谷; 正男 小谷; 芳江 小林; 芳江 小林;
摘要 改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤を提供する。 酸化 剤及び/又は酸化還元酵素と金属及び/又は金属含有物とを用いて蛋白質を含有する食品原料を処理し、蛋白質含有食品を製造する。
权利要求

蛋白質を含有する食品原料を、酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物で処理することを含む、改質された蛋白質含有食品の製造方法(但し、酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が産加工食品である場合を除く)。前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びフェノールオキシダーゼから選択される1又はそれ以上の酵素である、請求項1に記載の方法。前記金属含有物が、金属含有酵母である、請求項1または2に記載の方法。前記金属含有酵母が、鉄含有酵母、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、及びバナジウム含有酵母から選択される1又はそれ以上の酵母である、請求項3に記載の方法。前記金属含有物が、金属塩である、請求項1または2に記載の方法。前記金属塩が、鉄塩である、請求項5に記載の方法。前記蛋白質含有食品が、米加工食品、小麦加工食品、卵加工食品、畜肉加工食品、及び乳加工食品から選択される1種又はそれ以上の食品である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。前記酸化還元酵素が、食品原料1g当たり、0.0001U〜100U添加される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。前記金属含有酵母が、食品原料1g当たり、乾物重量で、0.00000025g〜0.0027g添加される、請求項3、4、7、および8のいずれか1項に記載の方法。さらに、酸化還元酵素の基質を添加することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物を含有する、蛋白質含有食品改質用の製剤(但し、酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が水産加工食品である場合を除く)。前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びフェノールオキシダーゼから選択される1又はそれ以上の酵素である、請求項11に記載の製剤。前記金属含有物が、金属含有酵母である、請求項11または12に記載の製剤。前記金属含有酵母が、鉄含有酵母、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、及びバナジウム含有酵母から選択される1又はそれ以上の酵母である、請求項13に記載の製剤。前記金属含有物が、金属塩である、請求項11または12に記載の製剤。前記金属塩が、鉄塩である、請求項15に記載の製剤。前記蛋白質含有食品が、米加工食品、小麦加工食品、卵加工食品、畜肉加工食品、及び乳加工食品から選択される1種又はそれ以上の食品である、請求項11〜16のいずれか1項に記載の製剤。前記製剤が、金属及び/又は金属含有物を、該製剤に含有される酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、0.00000005g〜0.0005g含有する、請求項11〜17のいずれか1項に記載の製剤。前記製剤が、金属含有酵母を、該製剤に含有される酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、0.000001g〜0.01g含有する、請求項13、14、17、18のいずれか1項に記載の製剤。さらに、酸化還元酵素の基質を含有する、請求項11〜19のいずれか1項に記載の製剤。

说明书全文

本発明は、改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤に関するものである。

多くの食品は澱粉、タンパク質、糖類、脂質など様々な成分により構成されている。特に、米、小麦、卵、畜肉、乳等、ほとんどの食品には蛋白質が含まれている。食品製造時の製造適性や食感等、食品の物性における蛋白質の寄与は大きいため、蛋白質の分解、改質、修飾、重合等は食品物性改良における重要な手段の一つとされている。これまでに蛋白質をターゲットとした物性改良技術としては、トランスグルタミナーゼによる蛋白質架橋反応や、蛋白質のチオール基(SH基)を架橋しジスルフィド結合(S-S結合)を生成させる酸化反応等が知られている。

特許文献1には、エビを、グルコース、グルコースオキシダーゼ、及び過酸化素分解酵素を含む水溶液に浸漬し、次いで重曹及び/又は重合リン酸塩を含む水溶液に浸漬した後、ボイル処理し冷凍乾燥することを特徴とする凍結乾燥エビの製造方法が開示されている。グルコースオキシダーゼにより生成する過酸化水素により、エビの蛋白質構造が網目状に架橋される旨の記載があり、凍結乾燥エビのような熱湯により復元させるエビに関して、プリプリとした柔らかさと歯ごたえが共存したエビ食感が得られると記載されている。また、特許文献2には、グルコースオキシダーゼによってパン類の生地の伸展性や作業性等を改良する旨の記載があり、α−アミラーゼ、アスコルビン酸、及び/又はヘミセルラーゼと併用時の効果についても記載されている。

しかしながら、これらの技術では蛋白質含有食品の改質効果がいまだ不十分であり、より短時間で高い改良効果を得る方法が求められていた。

特許文献3には金属含有酵母が開示されており、鉄含有酵母については特許文献4、5等多くの報告がなされている。しかしながら、特許文献3〜5は、いずれも、貧血改善等健康維持に関する文献であり、蛋白質含有食品の食感改良方法についての開示はない。

特許第4344294号公報

特許第5290140号公報

特開2003−61618号公報

特開平5−176758号公報

特許第4972316号公報

本発明は、改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤を提供することを課題とする。

本発明者等は、鋭意研究を行った結果、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素と、鉄含有酵母や鉄塩等の金属含有物とを併用することにより、蛋白質含有食品を効率的に改質できることを見出し、本発明を完成するに至った。

即ち、本発明は以下の通り例示できる。 (1) 蛋白質を含有する食品原料を、酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物で処理することを含む、改質された蛋白質含有食品の製造方法(但し、酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が水産加工食品である場合を除く)。 (2) 前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びフェノールオキシダーゼから選択される1又はそれ以上の酵素である、(1)に記載の方法。 (3) 前記金属含有物が、金属含有酵母である、(1)または(2)に記載の方法。 (4) 前記金属含有酵母が、鉄含有酵母、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、及びバナジウム含有酵母から選択される1又はそれ以上の酵母である、(3)に記載の方法。 (5) 前記金属含有物が、金属塩である、(1)または(2)に記載の方法。 (6) 前記金属塩が、鉄塩である、(5)に記載の方法。 (7) 前記蛋白質含有食品が、米加工食品、小麦加工食品、卵加工食品、畜肉加工食品、及び乳加工食品から選択される1種又はそれ以上の食品である、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。 (8) 前記酸化還元酵素が、食品原料1g当たり、0.0001U〜100U添加される、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。 (9) 前記金属含有酵母が、食品原料1g当たり、乾物重量で、0.00000025g〜0.0027g添加される、(3)、(4)、(7)、および(8)のいずれかに記載の方法。 (10) さらに、酸化還元酵素の基質を添加することを含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。 (11) 酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物を含有する、蛋白質含有食品改質用の製剤(但し、酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が水産加工食品である場合を除く)。 (12) 前記酸化還元酵素が、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、及びフェノールオキシダーゼから選択される1又はそれ以上の酵素である、(11)に記載の製剤。 (13) 前記金属含有物が、金属含有酵母である、(11)または(12)に記載の製剤。 (14) 前記金属含有酵母が、鉄含有酵母、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、及びバナジウム含有酵母から選択される1又はそれ以上の酵母である、(13)に記載の製剤。 (15) 前記金属含有物が、金属塩である、(11)または(12)に記載の製剤。 (16) 前記金属塩が、鉄塩である、(15)に記載の製剤。 (17) 前記蛋白質含有食品が、米加工食品、小麦加工食品、卵加工食品、畜肉加工食品、及び乳加工食品から選択される1種又はそれ以上の食品である、(11)〜(16)のいずれかに記載の製剤。 (18) 前記製剤が、金属及び/又は金属含有物を、該製剤に含有される酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、0.00000005g〜0.0005g含有する、(11)〜(17)のいずれかに記載の製剤。 (19) 前記製剤が、金属含有酵母を、該製剤に含有される酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、0.000001g〜0.01g含有する、(13)、(14)、(17)、および(18)のいずれかに記載の製剤。 (20) さらに、酸化還元酵素の基質を含有する、(11)〜(19)のいずれかに記載の製剤。

焼成パンの外観比較の結果を示す図(写真)。

<1>蛋白質含有食品 本発明において、蛋白質含有食品としては、蛋白質を含有する食品原料(以下、単に「食品原料」ともいう)より製造される加工食品が挙げられる。蛋白質を含有する食品原料としては、肉、豚肉、鶏肉等の肉類、魚、貝、エビ、カニ、タコ、イカ等の魚介類(水産物)、米、小麦等の穀類、乳、卵等が挙げられる。蛋白質含有食品として、具体的には、ハム、ソーセージ、ハンバーグ、唐揚げ等の畜肉加工食品、炊飯米、米粉パン、ビーフン等の米加工食品、パン、麺、菓子、餃子等の小麦加工食品、マヨネーズ等の卵加工食品、乳加工食品、水産加工食品等が挙げられる。なお、「水産加工食品」とは、魚、貝、エビ、カニ、タコ、イカ等の水産物より製造される食品を指す。蛋白質含有食品の提供の態様は特に制限されない。すなわち、蛋白質含有食品は、生食品、加熱品、冷凍品、無菌包装品、レトルト品、乾燥品、缶詰品等の任意の態様で提供されてよい。

<2>本発明の製剤 本発明の製剤は、酸化剤及び/又は酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物を含有する、蛋白質含有食品改質用の製剤である。本発明において、酸化剤及び/又は酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物を総称して「有効成分」ともいう。

なお、本発明の製剤からは、酸化剤及び/又は酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が水産加工食品である場合が除かれてもよい。

本発明の製剤は、蛋白質含有食品を改質するために用いることができる。具体的には、本発明の製剤で蛋白質を含有する食品原料を処理することにより、蛋白質含有食品を改質することができる。「改質」としては、食感等の物性の改善が挙げられる。「改質」として、具体的には、米の場合、米飯の「もちもち感」の付与または増強が挙げられる。米飯の「もちもち感」とは、例えば、米飯を噛みこんだ際にもち米のように歯にまとわりつく感覚を意味してよい。また、「改質」として、具体的には、小麦の場合、パンの「もちもち感」の付与または増強や、麺の「弾」や「中芯感」の付与または増強が挙げられる。パンの「もちもち感」とは、例えば、パンを咀嚼した際に歯で感じる弾力感覚を意味してよい。麺の「弾力」とは、例えば、口内全体で感じる反発力の強さを意味してよい。麺の「中芯感」とは、例えば、表面の硬さと中芯の硬さの差を意味してよい。また、改質により、例えば、食品原料の加工後の形状の悪化や歩留りの低下が抑制されてもよい。

本発明においては、酸化剤及び/又は酸化還元酵素と、金属及び/又は金属含有物とを併用することにより、酸化剤及び/又は酸化還元酵素を単独で用いる場合と比較して、蛋白質含有食品を改質する効果を高めることができる。そのような効果を、以下、「有効成分の併用効果」ともいう。一態様においては、有効成分の併用効果により、例えば、酸化還元酵素の使用量や酸化還元酵素の反応時間を低減することができると期待される。

本発明の製剤は、酸化剤及び/又は酸化還元酵素を含有する。本発明の製剤は、酸化還元酵素を含有するのが好ましい。

酸化剤は、酸化作用を有するものであれば特に制限されない。酸化剤は、処理対象の食品原料に対して酸化作用を発揮するものであってよい。酸化剤としては、過酸化水素、グルタチオン、アスコルビン酸、エリソルビン酸、リノレン酸等が挙げられる。これらの酸化剤は、酸化型であってよい。例えば、グルタチオンは、酸化型グルタチオン(GSSG)であってよい。また、例えば、アスコルビン酸は、デヒドロアスコルビン酸であってよい。塩の形態を取り得る酸化剤は、塩の形態で利用されてもよい。すなわち、「酸化剤」という用語は、特記しない限り、フリー体の酸化剤、その塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。酸化剤としては、1種の酸化剤を用いてもよく、2種またはそれ以上の酸化剤を組み合わせて用いてもよい。

酸化還元酵素は、酸化還元反応を触媒できるものであれば特に制限されない。酸化還元酵素は、例えば、直接的または間接的に処理対象の食品原料の酸化に寄与するものであってよい。酸化還元酵素は、例えば、酸化剤を生ずる反応を触媒するものであってよい。ここでいう酸化剤については、上述した酸化剤(有効成分の1つとしての酸化剤)の記載を準用できる。酸化還元酵素は、具体的には、例えば、過酸化水素を生成する反応を触媒するものであってよい。酸化還元酵素としては、グルコースオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、ラクトパーオキシダーゼ、リジルオキシダーゼ等が挙げられる。グルコースオキシダーゼは、グルコースと酸素を基質としてグルコノラクトン(グルコノラクトンは、非酵素的にグルコン酸へと加水分解される)と過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素である。また、アスコルビン酸オキシダーゼは、アスコルビン酸と酸素を基質としてデヒドロアスコルビン酸と水を生成する反応を触媒する酵素である。フェノールオキシダーゼは、モノフェノール類、ジフェノール類、ポリフェノール類等のフェノール類を酸化する反応を触媒する酵素の総称である。フェノールオキシダーゼは、チロシナーゼ、ラッカーゼ、またはポリフェノールオキシダーゼとも呼ばれる。酸化還元酵素の由来は特に制限されない。酸化還元酵素は、生物、動物、植物等いずれの由来のものであってもよい。また、酸化還元酵素としては、公知の酸化還元酵素のホモログや人為的改変体を利用してもよい。例えば、グルコースオキシダーゼとしては、麹菌等の微生物由来、植物由来のものなど種々の起源のものが知られているが、それらいずれのグルコースオキシダーゼを用いてもよい。また、グルコースオキシダーゼは、組み換え酵素であってもよい。酸化還元酵素として、具体的には、「スミチームPGO」という商品名で新日本化学工業(株)より市販されている微生物由来のグルコースオキシダーゼが例示される。酸化還元酵素は、酸化還元酵素以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。酸化還元酵素は、例えば、他の酵素を含有していてもよい。例えば、市販のグルコースオキシダーゼ製剤にはカタラーゼを含有するものが多く見られるが、酸化還元酵素としては、そのような酸化還元酵素と他の酵素の混合物を用いてもよい。酸化還元酵素としては、1種の酸化還元酵素を用いてもよく、2種またはそれ以上の酸化還元酵素を組み合わせて用いてもよい。

本発明の製剤は、金属及び/又は金属含有物を含有する。

金属は、有効成分の併用効果が得られるものであれば特に制限されない。金属は、例えば、亜鉛、セレン、マンガン、モリブデン以外の金属であってよい。金属としては、カルシウム、クロム、銅、マグネシウム、鉄、バナジウム等が例示される。中でも、効果が高いという点から、クロム、銅、マグネシウム、鉄、バナジウムから選択される金属が好ましく、鉄がより好ましい。金属は、単体やイオン等のいずれの形態であってもよい。金属としては、1種の金属を用いてもよく、2種またはそれ以上の金属を組み合わせて用いてもよい。

金属含有物は、有効成分の併用効果が得られるものであれば特に制限されない。金属含有物に含有される金属については、上述した金属(有効成分の1つとしての金属)の記載を準用できる。金属含有物としては、金属塩や金属含有食品が挙げられる。金属含有物は、1種の金属を含有してもよく、2種またはそれ以上の金属を組み合わせて含有してもよい。金属含有物としては、1種の成分を用いてもよく、2種またはそれ以上の成分を組み合わせて用いてもよい。

金属塩としては、カルシウム塩、クロム塩、銅塩、マグネシウム塩、鉄塩、バナジウム塩等が例示される。中でも、効果が高いという点から、クロム塩、銅塩、マグネシウム塩、鉄塩、バナジウム塩から選択される金属が好ましく、鉄塩がより好ましい。鉄塩としては、塩化鉄、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、三二酸化鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄、硫酸鉄、硫酸第一鉄、ヘム鉄等が例示される。金属塩は、塩やイオン等のいずれの形態であってもよい。

金属含有食品としては、金属を含有する食品添加物、金属含有酵母、ラクトフェリン、レバー、血漿、にぼし、かつお、しじみ、干しエビ、海苔、ひじき、きくらげ、カレー粉、こしょう、桑の葉、ほうれん草、小松菜、よもぎ、明日葉、ごぼう等が例示される。中でも、金属含有酵母が好ましい。金属含有食品に含有される金属は、金属塩等の金属含有物であってもよい。金属含有食品において、金属や金属塩は、単体、塩、イオン等のいずれの形態で含有されていてもよい。金属を含有する食品における金属含有量は、食品の重量1gあたり、例えば、0.0001g〜0.2gであってよい。

金属含有酵母としては、例えば、酵母培養時に金属を添加し、酵母菌体内に取り込ませたものが知られているが、これに限定されない。金属含有酵母としては、カルシウム含有酵母、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、鉄含有酵母、バナジウム含有酵母等が例示される。特に、効果が高いという点から、クロム含有酵母、銅含有酵母、マグネシウム含有酵母、鉄含有酵母、バナジウム含有酵母から選択される酵母が好ましく、鉄含有酵母がより好ましい。金属含有酵母における金属含有量は、酵母の乾物重量1gあたり、例えば、0.001g〜0.1g、好ましくは0.01g〜0.08g、より好ましくは0.04g〜0.06gであってよい。金属含有酵母は、粉末状、ペースト状、懸濁液状等のいずれの形態であってもよい。また、金属含有酵母は、生菌のままでも、殺菌したものでもよい。酵母の種類は特に制限されない。酵母としては、Saccharomyces cerevisiae等のSaccharomyces属に属する酵母、Schizosaccharomyces pombe等のSchizosaccharomyces属に属する酵母、Candida utilis等のCandida属に属する酵母が例示される。中でも、Saccharomyces属又はCandida属に属する酵母が好ましい。金属含有酵母として、具体的には、セティ(株)より「金属含有酵母」というカテゴリー名で市販されている鉄含有酵母や特許文献4および5に記載されている鉄含有酵母が例示される。

本発明の製剤は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、有効成分以外の原料(以下、「他の原料」ともいう)を含有してもよい。他の原料としては、例えば、調味料、飲食品、または医薬品に配合して利用されるものを利用できる。他の原料としては、トランスグルタミナーゼ等の酵素、グルコース、デキストリン、澱粉、加工澱粉、還元麦芽糖等の賦形剤、植物蛋白、グルテン、卵白、ゼラチン、カゼイン等の蛋白質、グルタミン酸ナトリウム、動物エキス、魚介エキス、蛋白加水分解物、蛋白部分分解物等の調味料、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、焼成カルシウム等のアルカリ剤(pH調整剤)、グルコン酸、クエン酸塩等のキレート剤、アスコルビン酸ナトリウム、グルタチオン、システイン等の酸化還元剤、アルギン酸、かんすい、油脂、色素、酸味料、香料等その他の食品添加物等が挙げられる。他の原料としては、1種の原料を用いてもよく、2種またはそれ以上の原料を組み合わせて用いてもよい。本発明の製剤は、例えば、有効成分を適宜これら他の原料と混合して製造することができる。

本発明の製剤は、酸化還元酵素の基質を含有していてよい。酸化還元酵素の基質としては、グルコースオキシダーゼの基質であるグルコース、アスコルビン酸オキシダーゼの基質であるアスコルビン酸、フェノールオキシダーゼの基質であるフェノール類が挙げられる。塩の形態を取り得る基質は、塩の形態で利用されてもよい。すなわち、「基質」という用語は、特記しない限り、フリー体の基質、その塩、またはそれらの混合物を意味してよい。塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。本発明の製剤は、酸化還元酵素とその基質を組み合わせて含有していてよい。すなわち、例えば、本発明の製剤は、グルコースオキシダーゼとグルコースとを含有していてもよく、アスコルビン酸オキシダーゼとアスコルビン酸とを含有していてもよく、フェノールオキシダーゼとフェノール類とを含有していてもよい。一方、本発明の製剤は、或る酸化還元酵素を含有しない場合に、その基質を含有していてもよい。すなわち、例えば、本発明の製剤は、グルコースオキシダーゼを含有しない場合に、グルコースを含有していてもよい。

本発明の製剤の形態は特に制限されない。本発明の製剤は、液体状、ペースト状、顆粒状、粉末状等のいずれの形態であってもよい。本発明の製剤は、例えば、粉末状であるのが好ましい。

本発明の製剤における有効成分の総含有量は、0%(w/w)より多く、且つ、100%(w/w)より少ない。本発明の製剤における有効成分の総含有量は、例えば、1ppm(w/w)以上、10ppm(w/w)以上、100ppm(w/w)以上、または1000ppm(w/w)以上であってよい。また、本発明の製剤における有効成分の総含有量は、例えば、99.9%(w/w)以下、50%(w/w)以下、10%(w/w)以下、または1%(w/w)以下であってよい。

有効成分としてグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を用いる場合、本発明の製剤における金属及び/又は金属含有物の含有量は、酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、例えば、0.00000005g以上、0.0000005g以上、または0.000014g以上であってよく、0.05g以下、0.005g以下、または0.0005g以下であってもよい。本発明の製剤における金属及び/又は金属含有物の含有量は、酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、例えば、0.00000005g〜0.0005gが好ましく、0.0000005g〜0.0005gがより好ましく、0.000014g〜0.0005gがさらに好ましい。

有効成分としてグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素と鉄含有酵母等の金属含有酵母を用いる場合、本発明の製剤における金属含有酵母の含有量は、酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、例えば、0.000001g以上、0.00001g以上、または0.0003g以上であってよく、1g以下、0.1g以下、または0.01g以下であってもよい。本発明の製剤における金属含有酵母の含有量は、酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、例えば、0.000001g〜0.01gが好ましく、0.00001g〜0.01gがより好ましく、0.0003g〜0.01gがさらに好ましい。

尚、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素の活性は、常法に従って測定することができる。例えば、グルコースオキシダーゼ活性の測定法としては、以下の方法が例示できる。グルコースを基質として、酸素存在下でグルコースオキシダーゼを作用させることで過酸化水素を生成させる。生成した過酸化水素にアミノアンチピリン及びフェノール存在下でペルオキシダーゼを作用させることでキノンイミン色素を生成させる。生成したキノンイミン色素を波長500nmで測定し、1分間に1μmolのグルコースを酸化するのに必要な酵素量を1U(ユニット)と定義する。具体的には以下の通りである。グルコースオキシダーゼを0.1mol/Lリン酸塩緩衝液(リン酸二水素カリウム、水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整)に攪拌溶解させ、0.1mol/Lリン酸塩緩衝液で50倍希釈し、GO溶液とする。分析セルに、フェノール含有緩衝液(Milli-Q、リン酸二水素カリウム1.36g、5%フェノール試液3mL、5%トリトンX-100溶液3mLを混合して水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0、100mLに調整)を2.0mL、10%グルコース溶液を500μL、0.01%パーオキシダーゼ溶液(PO”amano”3 (1250U±250U)を使用)を500μL、0.4% 4-アミノアンチピリン溶液を100μL、それぞれ順番に添加、転倒混合し、37±0.1℃に10分保持する。上記分析セルにGO溶液を100μL入れ、5分間、30秒毎に11点自動測定し、120秒と300秒の間の増分(傾き)からGO活性値を測定する。尚、ブランク区は上記にてGO溶液の代わりに0.1mol/Lリン酸塩緩衝液を入れて測定した値を用い、GO試験区から差し引く。グルコースオキシダーゼ以外の酸化還元酵素についても、1分間に1μmolの基質を酸化または還元するのに必要な酵素量を1U(ユニット)と定義する。

本発明の製剤における各有効成分の濃度は、例えば、上記例示した有効成分の総濃度や含有比率を満たすように設定することができる。

本発明の製剤に含有される各成分(すなわち、有効成分および必要によりその他の成分)は、互いに混合されて本発明の製剤に含有されていてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、本発明の製剤に含有されていてもよい。例えば、本発明の製剤は、それぞれ別個にパッケージングされた、酸化剤及び/又は酸化還元酵素と、金属及び/又は金属含有物とのセットとして提供されてもよい。このような場合、セットに含まれる成分は使用時に適宜併用することができる。

<3>本発明の方法 本発明においては、有効成分(すなわち、酸化剤及び/又は酸化還元酵素、並びに、金属及び/又は金属含有物)を利用して、蛋白質含有食品を改質することができる。すなわち、本発明の方法は、蛋白質を含有する食品原料を有効成分で処理することを含む、蛋白質含有食品を改質する方法である。また、本発明の方法の一態様は、蛋白質を含有する食品原料を有効成分で処理することを含む、改質された蛋白質含有食品の製造方法である。なお、「食品原料を有効成分で処理する」ことを「食品原料に有効成分を作用させる」ともいう。また、「食品原料を有効成分で処理する」工程を「改質工程」ともいう。

本発明においては、具体的には、食品原料を本発明の製剤で処理することにより、食品原料を有効成分で処理することができる。すなわち、言い換えると、本発明の方法は、蛋白質を含有する食品原料を本発明の製剤で処理することを含む、蛋白質含有食品を改質する方法であってよい。また、本発明の方法の一態様は、蛋白質を含有する食品原料を本発明の製剤で処理することを含む、改質された蛋白質含有食品の製造方法であってよい。

なお、本発明の方法からは、酸化剤及び/又は酸化還元酵素がグルコースオキシダーゼであり、金属及び/又は金属含有物が金属含有酵母であり、かつ蛋白質含有食品が水産加工食品である場合が除かれてもよい。

本発明の蛋白質含有食品は、有効成分で処理すること以外は、通常の蛋白質含有食品と同様の原料を用い、同様の方法によって製造することができる。有効成分は、蛋白質含有食品の製造工程のいずれの段階で食品原料に作用させてもよい。有効成分は、そのまま、あるいは適宜溶液等を調製して、食品原料と共存させることにより、食品原料に作用させることができる。例えば、有効成分を食品原料に添加してもよいし、有効成分を含有する処理液に食品原料を浸漬してもよい。以下、このような有効成分を食品原料と共存させる操作を総称して有効成分の「添加」ともいう。有効成分を食品原料に作用させる順序は特に制限されない。有効成分は、全て同時に食品原料に添加し、作用させてもよく、それぞれ別個に、あるいは、任意の組み合わせで別個に、食品原料に添加し、作用させてもよい。本発明の製剤による処理も同様に実施することができる。

本発明の方法における改質工程の実施条件は、有効成分の併用効果が得られる限り特に制限されない。本発明の方法における改質工程の実施条件は、有効成分の種類や添加量、及び食品原料の種類や形態等の諸条件に応じて適宜設定できる。例えば、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を用いる場合、反応時間は、酸化還元酵素が基質物質に作用することが可能な時間であれば特に制限されない。反応時間としては、例えば、1分〜24時間が好ましく、5分〜24時間がより好ましく、5分〜2時間がさらに好ましい。また、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を用いる場合、反応温度は、酸化還元酵素が活性を保つ範囲であれば特に制限されない。反応温度としては、例えば、0〜80℃が好ましく、4〜60℃がより好ましい。すなわち、蛋白質含有食品の製造工程における浸漬、混合、加熱等の工程を経ることでも十分な反応時間が得られる。本発明の方法においては、蛋白質含有食品の製造工程が改質工程を兼ねていてもよいし、別途改質工程を実施してもよい。

本発明の方法における各成分(すなわち、有効成分および必要によりその他の成分)の添加量や添加比率は、有効成分の併用効果が得られる限り特に制限されない。本発明の方法における各成分の添加量や添加比率は、蛋白質含有食品の原料の種類や形態等の諸条件に応じて適宜設定できる。

有効成分としてグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を用いる場合、酸化還元酵素の添加量は、米、小麦、卵、畜肉、乳等の食品原料1g当たり、例えば、0.0001U〜100Uが好ましく、0.001U〜10Uがより好ましい。

金属及び/又は金属含有物の添加量は、米、小麦、卵、畜肉、乳等の食品原料1g当たり、金属量に換算して、例えば、0.000000013g以上、0.00000005g以上、0.00000013g以上、0.000005g以上、または0.0000037g以上であってよく、0.005g以下、0.0005g以下、または0.00013g以下であってもよい。金属及び/又は金属含有物の添加量は、米、小麦、卵、畜肉、乳等の食品原料1g当たり、金属量に換算して、例えば、0.000000013g〜0.00013gが好ましく、0.00000013g〜0.00013gがより好ましく、0.0000037g〜0.00013gがさらに好ましい。有効成分としてグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素を用いる場合、金属及び/又は金属含有物の添加量は、酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、例えば、0.00000005g以上、0.0000005g以上、または0.000014g以上であってよく、0.05g以下、0.005g以下、または0.0005g以下であってもよい。金属及び/又は金属含有物の添加量は、酸化還元酵素1U当たり、金属量に換算して、例えば、0.00000005g〜0.0005gが好ましく、0.0000005g〜0.0005gがより好ましく、0.000014g〜0.0005gがさらに好ましい。

有効成分として鉄含有酵母等の金属含有酵母を用いる場合、金属含有酵母の添加量は、米、小麦、卵、畜肉、乳等の食品原料1g当たり、乾物重量換算で、例えば、0.00000025g以上、0.000001g以上、0.0000026g以上、0.00001g以上、または0.00002g以上であってよく、0.1g以下、0.005g以下、0.0027g以下であってもよい。有効成分として鉄含有酵母等の金属含有酵母を用いる場合、金属含有酵母の添加量は、米、小麦、卵、畜肉、乳等の食品原料1g当たり、乾物重量換算で、例えば、0.00000025g〜0.0027gが好ましく、0.0000026g〜0.0027gがより好ましく、0.00002g〜0.0027gがさらに好ましい。有効成分としてグルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素と鉄含有酵母等の金属含有酵母を用いる場合、金属含有酵母の添加量は、酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、例えば、0.000001g以上、0.00001g以上、または0.0003g以上であってよく、1g以下、0.1g以下、または0.01g以下であってもよい。金属含有酵母の添加量は、酸化還元酵素1U当たり、乾物重量で、例えば、0.000001g〜0.01gが好ましく、0.00001g〜0.01gがより好ましく、0.0003g〜0.01gがさらに好ましい。

本発明の方法においては、酸化還元酵素の基質を添加してよい。本発明の方法においては、酸化還元酵素とその基質を併用してよい。すなわち、例えば、グルコースオキシダーゼとグルコースとを併用していてもよく、アスコルビン酸オキシダーゼとアスコルビン酸とを併用していてもよく、フェノールオキシダーゼとフェノール類とを併用してもよい。一方、本発明の方法においては、或る酸化還元酵素を利用しない場合に、その基質を添加していてもよい。すなわち、例えば、グルコースオキシダーゼを添加しない場合に、グルコースを添加していてもよい。酸化還元酵素とその基質を併用することにより、酸化還元酵素のみを添加する場合と比較して、例えば、より少ない酵素量で蛋白質含有食品を改質することができ、よって、酸化還元酵素の添加量を低減することができると期待される。グルコース等の酸化還元酵素の基質の添加量は、食品原料1gに対し、例えば、0.0001g〜0.1g、好ましくは0.001g〜0.05g、より好ましくは0.005g〜0.01gであってよい。

以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこの実施例により何ら限定されない。

<実施例1>グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用による炊飯米の改質 米は日本をはじめ世界中で食されている主要な食糧であり、炊飯米だけでなく様々な形態に加工、流通していることから、代表的な蛋白質含有食品であると言える。そこで、炊飯米を例に、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果を検討した。

表1に示す量にて米を計量した。まず洗米を行い、表1に示す量になるように水を加え、米を浸漬した(1時間)。次に、表1に示す量にてグルコースオキシダーゼ及び鉄含有酵母を加えて炊飯した(45分)。炊飯終了後、炊飯釜の円周にしゃもじを入れ、釜をひっくり返して米をバットにあけた。釜肌に接していた部分の硬い米を除去し、乾燥しないように米をラップに包んで真空冷却器にて真空冷却を行った。真空冷却後、米粒をつぶさないように容器に入れ、容器内に空気が入らないようにラップで包装して恒温器(20℃)に入れて、20℃になるまで保管した。20℃になるまで保管した米飯について官能評価を行った。官能評価は、「もちもち感」について行った。評価項目である「もちもち感」は噛みこんだ際にもち米のように歯にまとわりつく感覚を表す。無添加品(#1)の「もちもち感」を0点とし、それよりもやや上回る場合を1点、上回る場合を2点、顕著に上回る場合を3点、非常に顕著に上回る場合を4点として0〜4点で評価を行った。評価は専門パネル4人により行い、表中の結果にはその平均値を掲載した。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。グルコースオキシダーゼとして「スミチームPGO」(新日本化学工業(株)製)を、金属含有酵母として「鉄含有酵母」(セティ(株)製、鉄含有量5重量%)をそれぞれ用いた。グルコースオキシダーゼの比活性は2,220U/gであった。米1g当たり、グルコースオキシダーゼ添加量は1.33Uであり、鉄含有酵母の添加量は0.000060gであった。

官能評価結果を表1に示す。グルコースオキシダーゼのみを添加した試験区(#2)では「もちもち感」の官能評点が1.53であったのに対し、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用した試験区(#4)では評点が3.55であった。一方で、鉄含有酵母のみを添加した試験区(#3)の評点は無添加区(#1)と同じく0であった。すなわち、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、等量のグルコースオキシダーゼまたは鉄含有酵母を単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果が得られた。以上より、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。よって、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素と鉄含有酵母等の金属含有物を併用することにより、例えば、酸化還元酵素の使用量を減らしたり、酸化還元酵素の反応時間を減らしたりすることが可能であると考えられる。

<実施例2>グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用によるパンの改質 小麦は世界中で食されている主要な食糧であり、多くの小麦製品が市場流通していることから、代表的な蛋白質含有食品であると言える。そこで、代表的な小麦製品であるパンを例にして、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果を検討した。

表2に示した原料のうち、水を除く粉末原料をミキサーにてミキシングした(捏ね上げ温度25℃、15分)。得られた生地を取り出して10分静置し、分割および成型を行い(70g)、10分静置した。尚、静置中は生地が乾燥しないように湿らせたキッチンペーパーを生地に被せた。次に急速冷凍(−40℃、30分)を行い、冷凍保存(−20℃、1日)した。冷凍保存後、焼成パンおよび揚げパンを製造し、室温まで放冷してそれぞれ評価した。焼成パンは、冷凍パン生地を解凍(25℃、150分)し、ホイロ(38℃、湿度85%、60分)後、オーブンにて焼成(210℃、10分)を行うことで製造した。また、揚げパンは、冷凍パン生地を解凍(25℃、150分)し、油で揚げる(180℃、3分)ことで製造した。焼成パンでは半分に切断してその断面を撮影して膨らみを評価した。揚げパンではパンを切断し、生地内部について官能評価を行った。揚げパンの官能評価は、「もちもち感」について行った。評価項目である「もちもち感」は咀嚼した際に歯で感じる弾力感覚を表し、無添加品(#1)の「もちもち感」を0点として、それよりもやや上回る場合を0.5点、上回る場合を1点、顕著に上回る場合を1.5点、非常に顕著に上回る場合を2点として0〜2点で評価を行った。評価は専門パネル4人により行い、表中の結果にはその平均値を掲載した。尚、図表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。グルコースオキシダーゼとして「スミチームPGO」(新日本化学工業(株)製)を、金属含有酵母として「鉄含有酵母」(セティ(株)製、鉄含有量5重量%)をそれぞれ用いた。グルコースオキシダーゼの比活性は2,220U/gであった。原料小麦粉1g当たり、グルコースオキシダーゼ添加量は0.015U又は0.15Uであり、鉄含有酵母の添加量は0.00033gであった。

焼成パンの外観比較の結果(写真)を図1に示す。図1より、無添加区(#1)では生地の膨らみが小さいのに対し、グルコースオキシダーゼのみを添加した区(#2)では生地が約1.3倍に大きく膨らんだ。また、グルコースオキシダーゼの添加量を1/10にした区(#3)ではグルコースオキシダーゼの効果が不十分であるため、無添加区(#1)と同様に生地の膨らみが小さかった。一方、グルコースオキシダーゼの添加量を1/10にして鉄含有酵母も添加した区(#4)では、通常の添加量でグルコースオキシダーゼを添加した区(#2)とほぼ同様の膨らみが得られた。このことから、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、グルコースオキシダーゼの使用量を減らしつつ、形の潰れやボリュームの減少等のパンの形状の悪化を抑制できることが可能であることが分かった。揚げパンの官能評価の結果を表2に示す。表2の結果から、揚げパンについても、焼成パンのときとほぼ類似した傾向を示すことがわかる。すなわち、揚げパンの「もちもち感」について、グルコースオキシダーゼの添加量を1/10にして鉄含有酵母も添加した区(#4)では、通常の添加量でグルコースオキシダーゼを添加した区(#2)の1.03点を上回る1.53点が得られた。以上より、パンについても、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、相乗的に改質効果が得られることが明らかとなった。また、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、グルコースオキシダーゼの使用量を減らしつつ、より強いもちもちとした食感を得ることが可能であることが分かった。よって、本発明は、パンを例として様々な蛋白質含有食品の製造工程において有効である。

<実施例3>グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用によるうどんの改質 さらに、パン以外の小麦製品にも本発明が応用可能か検討すべく、代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果の検討を行った。

表3に示す量にて各材料を計量した。水と食塩を除く全ての原料を予め混合し、粉ミックスとした。また、一方で水と食塩を混合して食塩水とした。混練機(2kg真空捏機、大竹麺機(株)またはオーテイク(株))にて粉ミックスを混練しながら(100rpm3分、50rpm2分)、食塩水を少しずつ加えた。混練後、生地を取り出し、製麺機にて表4の条件でバラ掛け、複合、圧延を行った。切り出しは♯10(2.3mm)の切刃で行い、打ち粉をして袋に詰め、冷凍庫にて保存した(−20℃、1日)。冷凍保存後、麺を沸騰した熱湯の中で茹でた(100℃、19分)。茹で後、十分な量の氷水中にうどんを浸して氷冷した(0℃、3分)。尚、茹で及び氷冷は麺全体に均等に行われるようにするため、麺が傷つかない程度に箸で軽くほぐしながら行った。氷冷した麺をざるにあげて、官能評価を行った。官能評価項目は「弾力」および「中芯感」で、「弾力」は口内全体で感じる反発力の強さ、「中芯感」は表面の硬さと中芯の硬さの差を表している。無添加品(#1)の「弾力」および「中芯感」を0点とし、それよりもやや上回る場合を0.5点、上回る場合を1点、顕著に上回る場合を2点、非常に顕著に上回る場合を3点として、0〜3点で評価を行った。評価は専門パネル4人により行い、表中の結果にはその平均値を掲載した。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。グルコースオキシダーゼとして「スミチームPGO」(新日本化学工業(株)製)を、金属含有酵母として「鉄含有酵母」(セティ(株)製、鉄含有量5重量%)をそれぞれ用いた。グルコースオキシダーゼの比活性は2,220U/gであった。原料小麦粉及び澱粉1g当たり、グルコースオキシダーゼ添加量は0.26Uであり、鉄含有酵母の添加量は0.0000625gであった。

官能評価の結果を表3に示す。結果より、グルコースオキシダーゼのみを添加した試験区(#2)では、「弾力」の評点が1.05、「中芯感」の評点が1.08であったのに対し、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用した試験区(#4)では、「弾力」の評点が1.53、「中芯感」の評点が2.13であった。一方で、鉄含有酵母のみを添加した試験区(#3)の評点は無添加区(#1)と同じく0であった。すなわち、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、等量のグルコースオキシダーゼまたは鉄含有酵母を単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果が得られた。以上より、うどんについても、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、相乗的に改質効果が得られることが明らかとなった。よって、グルコースオキシダーゼ等の酸化還元酵素と鉄含有酵母等の金属含有物を併用することにより、例えば、酸化還元酵素の使用量を減らしたり、酸化還元酵素の反応時間を減らしたりすることが可能であると考えられる。

<実施例4>グルコースオキシダーゼ以外の酸化還元酵素の評価(1) グルコースオキシダーゼ以外の酸化還元酵素でも本発明が実施可能か検討すべく、代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、アスコルビン酸オキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果の検討を行った。

表5に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。また、表中のAscOはアスコルビン酸オキシダーゼを、表中のAscはアスコルビン酸を、それぞれ意味している。

官能評価の結果を表5に示す。#1〜#4の結果より、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、それぞれを単独で添加した場合よりも高い食感の改質効果(中芯感および弾力)が得られることが再度確認された。また、#1、#3、#5、#6の結果より、アスコルビン酸オキシダーゼと鉄含有酵母を併用することによっても、それぞれを単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。以上より、グルコースオキシダーゼに限られず、アスコルビン酸オキシダーゼ等の他の酸化還元酵素を用いた場合にも、鉄含有酵母との併用により、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例5>グルコースオキシダーゼ以外の酸化還元酵素の評価(2) グルコースオキシダーゼ以外の酸化還元酵素でも本発明が実施可能か検討すべく、代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、フェノールオキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果の検討を行った。

表6に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。

官能評価の結果を表6に示す。#1、#3、および#5〜#8の結果より、フェノールオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することによっても、それぞれを単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。以上より、グルコースオキシダーゼに限られず、フェノールオキシダーゼ等の他の酸化還元酵素を用いた場合にも、鉄含有酵母との併用により、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例6>グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用による処理時間の短縮効果の評価 代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用により、グルコースオキシダーゼによる処理時間を短縮することが可能であるかを評価した。

表7に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。ただし、「寝かし」と記載がある試験区については、製麺および小包装後、冷凍庫にて保存する前に、記載した時間、室温(25℃)にて静置処理(寝かし工程)を実施した。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。

官能評価の結果を表7に示す。#2−1〜#2−4および#3−1の結果より、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、寝かし工程を実施しなくても、グルコースオキシダーゼを単独で添加し寝かし工程の時間を延長した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。以上より、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、グルコースオキシダーゼを単独で添加した場合よりも短時間で蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例7>鉄含有酵母以外の金属含有酵母の評価 鉄含有酵母以外の金属含有酵母でも本発明が実施可能か検討すべく、代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、グルコースオキシダーゼと各種金属含有酵母の併用効果の検討を行った。

表8に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。鉄含有酵母以外の金属含有酵母として、セティ(株)製の各種金属含有酵母を用いた。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。

官能評価の結果を表8に示す。#3、#5、#6、#10、#11、および#12の結果より、グルコースオキシダーゼと各種金属含有酵母を併用することにより、グルコースオキシダーゼを単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。また、#13〜#15の結果より、各種金属含有酵母を単独で添加した場合には食感の改良効果は認められなかった。以上より、鉄含有酵母に限られず、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、クロム(Cr)、銅(Cu)、バナジウム(V)等の他の金属を含有する酵母を用いた場合にも、グルコースオキシダーゼとの併用により、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例8>鉄含有酵母の添加量の評価 代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用する際の、鉄含有酵母の添加量について評価した。

表9に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。

官能評価の結果を表9に示す。#4〜#8の結果より、鉄含有酵母を種々の添加量でグルコースオキシダーゼと併用することにより、それぞれを単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。併用効果は#4〜#6まで添加量依存的に増大し、#6〜#8で最大の併用効果が得られた。具体的には、食品原料1g当たり、鉄含有酵母の添加量0.00000025g〜0.0027gの範囲で併用効果が確認された。また、グルコースオキシダーゼ1U当たり、鉄含有酵母の添加量0.000001g〜0.01gの範囲で併用効果が確認された。以上より、鉄含有酵母を種々の添加量でグルコースオキシダーゼと併用することにより、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例9>グルコースオキシダーゼと鉄塩の併用効果の評価 金属含油酵母以外の金属含有物でも本技術が応用可能か検討すべく、代表的な小麦製品の一つである麺(ざるうどん)を例として、グルコースオキシダーゼと鉄塩の併用効果の検討を行った。

表10に示す量にて各材料を計量し、うどんを製造し、官能評価を実施した。鉄塩を添加する場合、その添加量は、鉄の量に換算して、#3の鉄含有酵母の添加量と同量となるように設定した。うどんの製造方法および官能評価の条件は、実施例3と同じである。用いたグルコースオキシダーゼと鉄含有酵母は、実施例3と同じである。尚、表中のGOはグルコースオキシダーゼを意味している。

官能評価の結果を表10に示す。#5〜#12の結果より、グルコースオキシダーゼと鉄塩を併用することにより、それぞれを単独で添加した場合よりも高い食感の改良効果(中芯感および弾力)が得られた。以上より、本発明は、金属含有酵母に限られず、鉄塩等の他の金属含有物を用いた場合にも、酸化還元酵素との併用により、相乗的に蛋白質含有食品の改質効果が得られることが明らかとなった。

<実施例10>グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用による牛肉の改質 牛肉を例にして、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用効果を検討した。

アメリカ産の牛もも肉(解凍品;10mmスライス)約100 gを計量した。肉と酵素液(表11)を240mm×170mm程度のサイズのビニール袋に入れ、肉を酵素液に浸した状態で真空包装した。包装した袋を冷蔵庫(4℃)にて一晩(15時間程度)静置した。液切りし、肉を計量し、漬けこみ後の歩留りを算出した。表面温度250℃に熱した鉄板上にて、肉を表裏1.5分間ずつ焼成した。肉を計量し、焼成後の歩留りを算出した。肉を一口大(厚み1cm,幅2cm)にカットし、硬さや弾力等の食感について官能評価を実施した。

結果を表11に示す。#1(無添加区)では、焼成により肉から肉汁が流出し、歩留りが顕著に低下した。一方、#2(グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母の併用区)では、#1より、肉汁の流出が抑制され、歩留りが向上しており、官能評価も肉汁が感じられ良好であった。以上より、食肉加工品についても、グルコースオキシダーゼと鉄含有酵母を併用することにより、改質効果が得られることが明らかとなった。

産業の利用可能性

本発明によると、酸化剤又は酸化還元酵素を単独で用いるよりも高い蛋白質含有食品の改質効果を得ることができる。すなわち、本発明により蛋白質含有食品の品質を向上できるため、本発明は食品分野において極めて有用である。

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