宿主細胞および使用方法

申请号 JP2015561647 申请日 2014-03-06 公开(公告)号 JP2016514957A 公开(公告)日 2016-05-26
申请人 グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーGlaxoSmithKline LLC; グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーGlaxoSmithKline LLC; 发明人 ヨンファン、ジン; ユアン、チュー;
摘要 本発明は、キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPdiの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドとを含んでなる、遺伝子改変宿主細胞、特に、 酵母 細胞に関する。また、本明細書では、キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードすると、少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPdi1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)または少なくとも1つのEro1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子改変宿主細胞も提供される。
权利要求

キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)またはその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列と、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)またはその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列とを含んでなる宿主細胞。小胞体オキシドレダクチン(Ero1)またはその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列をさらに含んでなる、請求項1に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が培養系で増殖される際に、前記宿主細胞がKex2p、Pdi1およびEro1から選択されるタンパク質またはその断片および/もしくは変異体をコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列の少なくとも1つの遺伝子産物を発現または過剰発現する、請求項1または2に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が真菌細胞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記真菌細胞が酵母細胞である、請求項4に記載の宿主細胞。前記酵母細胞の属がサッカロミセス、クルイベロミセス、カンジダ、ピキア、シゾサッカロミセス、ハンセヌラ、クロエケラ、シュワンニオミセス、およびヤロウイアからなる群から選択される、請求項5に記載の宿主細胞。前記宿主細胞がS.セレビシエである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が哺乳動物細胞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の宿主細胞。Kex2pまたはその断片および/もしくは変異体をコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列が、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の宿主細胞。Pdi1をコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列が、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の宿主細胞。Ero1をコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列が、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、請求項2〜8のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が下記遺伝子改変:pep4プロテアーゼノックアウト、野生型宿主細胞に比べて低いubc4および/またはubc5活性、yps1ノックアウト、hsp150ノックアウト、ならびにpmt1ノックアウトのうち少なくとも1つをさらに含んでなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の宿主細胞。組換えポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含んでなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の宿主細胞。組換えポリペプチドをコードする前記少なくとも1つの核酸がプラスミド中に含まれている、請求項13に記載の宿主細胞。組換えポリペプチドをコードする前記少なくとも1つの核酸が前記宿主細胞のゲノムに組み込まれている、請求項13に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドが少なくとも1つのジスルフィド結合を有する、請求項13〜15のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドがアルブミン融合タンパク質である、請求項13〜16のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドが、アルブミンに遺伝子学的に融合された、GLP−1活性を有する少なくとも1つの治療用ポリペプチドを含んでなる、請求項13〜17のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチドを有する、請求項13〜18のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項13〜19のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドがリーダー配列を含んでなる、請求項13〜20のいずれか一項に記載の宿主細胞。前記リーダー配列がKEX2リーダー配列または改変KEX2リーダー配列である、請求項21に記載の宿主細胞。前記組換えタンパク質が配列番号10に示されるような改変リーダー配列を含んでなる、請求項13〜22のいずれか一項に記載の宿主細胞。請求項13〜23のいずれか一項に記載の宿主細胞を培養することを含んでなる、組換えポリペプチドを生産する方法。培養培地から前記組換えポリペプチドを回収することをさらに含んでなる、請求項24に記載の方法。請求項24または25に記載の方法により作製された組換えポリペプチド。前記組換えポリペプチドが配列番号1と99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項26に記載の組換えポリペプチド。前記組換えポリペプチドが配列番号1のアミノ酸配列からなる、請求項27に記載の組換えポリペプチド。請求項27または28に記載の組換えポリペプチドを含んでなる、医薬組成物。治療上有効な量の請求項29に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、それを必要とする患者を治療する方法。前記患者がI型糖尿病、II型糖尿病、グルコース不耐性、高血糖症、アルツハイマー病、肥満、心血管障害、うっ血性心不全、および網膜症から選択される疾患または病態を有する、請求項30に記載の方法。キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列と、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列と、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列とを含んでなる、宿主細胞。前記Kex2pまたはその機能的断片および/もしくは変異体が配列番号3の機能的遺伝子産物である、請求項32に記載の宿主細胞。前記Pdi1またはその機能的断片および/もしくは変異体が配列番号5の機能的遺伝子産物である、請求項32に記載の宿主細胞。前記Ero1または機能的断片および/もしくは変異体が配列番号7の機能的遺伝子産物である、請求項32に記載の宿主細胞。前記宿主細胞がS.セレビシエである、請求項32〜35のいずれか一項に記載の宿主細胞。組換えポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸をさらに含んでなる、請求項32または36に記載の宿主細胞。前記組換えポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸と少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを含んでなる、請求項37に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が、培養系で増殖される際に、同種であるが、キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列と、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列と、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)またはその機能的断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列とを含まない遺伝子改変の宿主細胞に比べて、前記組換えポリペプチドの価収率を増大する、請求項37または38に記載の宿主細胞。前記宿主細胞が培養系で増殖される際に、同種であって、Kex2p、Pdi1、およびEro1から選択される少なくとも2つの遺伝子産物を過剰発現しないこと以外は同じ培養条件で増殖された野生型宿主細胞に比べて、Kex2p、Pdi1、およびEro1から選択される少なくとも2つのタンパク質またはその断片および/もしくは変異体を過剰発現する、宿主細胞。

说明书全文

本発明は、生化学工学の分野にある。より詳しくは、本発明は遺伝子改変宿主細胞およびそれらにおいてポリペプチドを産生する方法に関する。

治療用ポリペプチドおよびタンパク質は、細菌細胞、大腸菌細胞、真菌または酵母細胞、生物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む種々の宿主細胞内で発現させることができる。メチロトローフ酵母ピキア・パストリス(Pichia pastoris)などの真菌宿主は、治療用タンパク質発現に顕著な利点を有し、例えば、真菌宿主は、内因性タンパク質を多量に分泌せず、強な誘導性プロモーターを有し、規定の化学培地で増殖でき、かつ、高力価の組換えタンパク質を産生することができる(Cregg et al., Mol. Biotech. 16:23-52 (2000))。酵母および糸状菌は両方とも、細胞内および分泌型両方の組換えタンパク質の産生に使用され、成功を収めている(Cereghino, J. L. and J. M. Cregg 2000 FEMS Microbiology Reviews 24(1): 45 66; Harkki, A., et al. 1989 Bio-Technology 7(6): 596; Berka, R. M., et al. 1992 Abstr. Papers Amer. Chem.Soc.203: 121-BIOT; Svetina, M., et al. 2000 J. Biotechnol. 76(23): 245-251)。S.セレビシエ(S.cerevisiae)は、組換え型ヒト血清アルブミン(HSA)の発現に関して注目される宿主細胞である。しかしながら、HASと遺伝子学的に融合されたポリペプチドを含む他の治療用ポリペプチドの発現は、組換えタンパク質の力価が低いという技術的障壁に直面している。

従って、異種ペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパク質を組換えタンパク質の力価を高くして産生できる宿主細胞、特に、S.セレビシエ株の必要がある。

発明の概要 本発明の一態様では、キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPdiの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドとを含んでなる、遺伝子改変宿主細胞が提供される。また、本明細書では、キラーエクスプレッションプロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードすると、少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPdi1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)または少なくとも1つのEro1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子改変宿主細胞も提供される。

別の態様では、本発明は、遺伝子改変宿主細胞が培養系で増殖される際に、前記タンパク質:Kex2p、Pdi1、またはEro1から選択される少なくとも1つの機能活性を有するタンパク質またはその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドの少なくとも1つの遺伝子産物を発現または過剰発現する遺伝子改変宿主細胞を提供する。本発明の別の態様は、遺伝子改変宿主細胞が培養系で増殖される際に、同種であって、Kex2p、Pdi1、およびEro1から選択される少なくとも2つの遺伝子産物を過剰発現しないこと以外は同じ培養条件で増殖された野生型宿主細胞に比べて、Kex2p、Pdi1、およびEro1から選択される少なくとも2つのタンパク質または前記少なくとも2つのタンパク質の少なくとも1つの機能活性を有するその断片および/または変異体を過剰発現する遺伝子改変宿主細胞を提供する。宿主細胞は原核生物であってもまたは真核生物であってもよい。宿主細胞の例としては、限定されるものではないが、HeLa、CHO、COS、HEK293、THPI、酵母、および昆虫細胞が挙げることができる。特定の実施形態では、哺乳動物細胞はハムスター、ヒト、またはマウス細胞である。特定の実施形態では、細胞はCHO細胞株、HEK293細胞株、またはBHK細胞株である。

また、本明細書では、本発明の宿主細胞を培養することを含んでなる、組換えポリペプチドを生産する方法が提供される。別の態様では、本発明は、本発明の方法により作製された組換えポリペプチドを提供する。また、本明細書では、本発明の方法により作製された組換えポリペプチドを含んでなる医薬組成物が提供される。本発明の別の態様では、治療上有効な量の本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる、それを必要とする患者を治療する方法が提供される。

図1は、アルビグルチド産生株のプレリミナリーマスターセルバンクの作出を示す図である。KEX2−KanMX発現カセットPCR産物からBXP10KEX2PDIERO1産生宿主までの工程は、プロセスIV宿主株BXP10_KEX2_PDI_ERO1を構築するための発現カセットの一連の組込みである。pCID3610プラスミドの形質転換後、最終的な生産クローンを選択し、プレリミナリーマスターセルバンク(PCB)の作出に用いた。

図2は、宿主株におけるPDI1およびKEX2のサザンブロット分析を示す図である。内因性KEX2およびPDI1遺伝子は、それぞれ染色体XIVおよびIIIに1コピーとして位置している(野生型)。組込みの標的部位は野生型の染色体XIIの下に示した。各遺伝子の検出プローブは、黒い四として示されている。

図3は、宿主株由来のPdi1およびKex2pのウエスタンブロット分析を示す図である。レーンのサンプル、レーン1〜5:5クローンのBXP10−KEX2−PDI1株;PDI:Pdi1を過剰発現するBXP10;KEX2:Kex2pを過剰発現するBXP10;およびBXP10:対照としての宿主株。等量のタンパク質をロードした。

図4は、振盪プレート試験からの12の上清サンプルのSDS−PAGEを示す図である。ゲルのレーン;L:SeeBlue2で前染色したタンパク質ラダー(Invitrogen);RS:pCID3610タンパク質の参照標品;1〜12:pCID3610を発現する12のサブクローン。

図5は、DasGip発酵実施で産生されたpCID3610タンパク質の力価(A)および品質(B)の分析を示す図である。pCID3610タンパク質の上清力価収率および6−AAレベル(%)を、対照としてのBXP10−KEX2−PDI1、すなわち、Kex2pおよびPdi1を過剰発現するBXP10と比較した。

図6は、リサーチセルバンクバイアル細胞から作製された増殖曲線を示す図である。

図7は、プレマスターセルバンクセル細胞から作製された増殖曲線を示す図である。

発明の詳細な説明 「宿主細胞」は、本明細書で使用する場合、単離したポリヌクレオチド配列により導入された(例えば、形質転換、感染、もしくはトランスフェクトされた)、または導入(例えば、形質転換、感染、もしくはトランスフェクション)可能な細胞を意味する。本発明の宿主細胞としては、限定されるものではないが、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、微生物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含み得る。酵母および/または糸状真菌起源の本発明の宿主細胞としては、限定されるものではないが、以下の科、属、および種を含み得る:ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィア(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラメ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・ミヌタ(Pichia minuta)(オガタ・エミヌタ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia alictaria)、ピキア・ゲルカム(Pichia guercum)、ピキア・ピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア属種(Pichia sp.)、サッカロミセス・カステリ(Saccharomyces castelii)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス属種(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロミセス・ジャポニカス(Schizosaccharomyces japonicus)、シゾサッカロミセス・オクトスポラス(Schizosaccharomyces octosporus)、シゾサッカロミセス・クリオフィルス(Schizosaccharomyces cryophilus)、シゾサッカロミセス属種(Schizosaccharomyces sp.)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クリベロマイセス属種(Kluyveromyces sp.)、クリベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ属種(Candida sp.)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)、フザリウム属種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネアラム(Fusariumu gramineum)、フザリウム・ベネナタム(Fusariumu venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)、ヤルロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、アークスラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans)、シュワンニオミセス・オシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)、およびアカパンカビ(Neurospora crassa)が挙げられる。

「形質転換した」とは、当技術分野で知られているように、外部DNAまたはRNAの導入による生物のゲノムもしくはエピソームの指定された修飾、または外部DNAまたはRNAの他の安定的な導入を意味する。

「トランスフェクトされた」とは、当技術分野で知られているように、限定されるものではないが、組換えDNAまたはRNAを含む外部DNAまたはRNAを微生物に導入することである。

「同一性」とは、当技術分野で知られているように、場合に応じて2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列間の、それらの配列を比較することにより判定される関係のことである。当技術分野において「同一性」はまた、場合に応じてポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の、そのような配列の文字列間の一致によって判定される配列関連度も意味する。「同一性」は、限定されるものではないが、以下に記載されているものを含む既知の方法によって容易に計算することができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H.G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988))。同一性を決定する方法は、試験される配列間で最大の一致が得られるように設計される。さらに、同一性を決定する方法は、公開されているコンピュータープログラムにコード化されている。2配列間の同一性を決定するコンピュータープログラム法としては、限定されるものではないが、GCGプログラムパッケージ方法(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(1): 387 (1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S.F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990)が含まれる。BLAST Xプログラムは、NBCIおよびその他のソースから公開されている(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, MD 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))。周知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性の決定に使用可能である。

ポリペプチド配列比較のためのパラメーターは、以下を含む: アルゴリズム:Needleman and Wunsch, J. Mol Biol. 48: 443-453 (1970) 比較マトリックス:BLOSSUM62 from Hentikoff and Hentikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:10915-10919 (1992) ギャップペナルティー:12 ギャップ長ペナルティー:4 これらのパラメーターを用いる有用なプログラムは、「ギャップ」プログラムとしてGenetics Computer Group, Madison WIから公開されている。上述のパラメーターは、ペプチド比較(終端ギャップについてはペナルティーなし)のためのデフォルトパラメーターである。

ポリヌクレオチド比較のためのパラメーターは以下を含む: アルゴリズム:Needleman and Wunsch, J. Mol Biol. 48: 443-453 (1970) 比較マトリックス:一致=+10、不一致=0 ギャップペナルティー:50 ギャップ長ペナルティー:3 入手先:Genetics Computer Group, Madison WI.からの「ギャップ」プログラム。これらは、核酸比較のためのデフォルトパラメーターである。

場合に応じてポリヌクレオチドおよびポリペプチドの「同一性」は、以下の(1)と(2)に示される。

(1)ポリヌクレオチドの実施形態は、参照配列、例えば、配列番号3と少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含んでなる単離されたポリヌクレオチドをさらに含み、ここで、前記ポリヌクレオチド配列は、配列番号3の参照配列と同一であってもよく、またはその参照配列と比較した際に、ある特定の整数までのヌクレオチド変異を含んでもよく、ここで、前記変異は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(転移および転換を含む)、または挿入からなる群から選択され、前記変異は、参照ヌクレオチド配列の5’末端もしくは3’末端位に存在してもよいし、またはこれらの末端位の間のいずれかの位置に、参照配列内のヌクレオチド間に個々にもしくは参照配列内の1以上の連続する群として分散して存在してもよく、前記ヌクレオチド変異の数は、配列番号3のヌクレオチドの総数に、同一性%を定義する整数を100で割ったものを掛け、次に、その結果を前記配列番号3のヌクレオチドの総数から差し引くこと、すなわち、 nn≦xn−(xn・y) (式中、nnはヌクレオチド変異の数であり、xnは配列番号3のヌクレオチドの総数であり、yは95%では0.95、97%では0.97または100%では1.00であり、・は乗算演算子を表す記号であり、xnとyの非整数の積は最も近い整数に切り捨てた後に、それをxnから差し引く。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の変異は、そのコード配列にナンセンス、ミスセンスまたはフレームシフト突然変異を作り出し、それにより、このような変異の後にポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドを変化させる) により求められる。

(2)ポリペプチドの実施形態は、配列番号1などのポリペプチド参照配列と少なくとも50、60、70、80、85、90、95、97または100%の同一性を有するポリペプチドを含んでなる単離されたポリペプチドをさらに含み、ここで、前記ポリペプチド配列は、参照配列と同一であってもよく、またはその参照配列と比較した際に、ある特定の整数までのアミノ酸変異を含んでもよく、ここで、前記変異は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)または挿入からなる群から選択され、前記変異は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端位に存在してもよいし、またはこれらの末端位の間のいずれかの位置に、参照配列のアミノ酸間に個々に、もしくは参照配列内の1以上の連続する群として分散して存在してもよく、前記アミノ酸変異の数は、アミノ酸総数に、同一性%を定義する整数を100で 割ったものを掛け、次に、その結果を前記アミノ酸総数から差し引くこと、すなわち、 na≦xa−(xa・y) (式中、naはアミノ酸変異の数であり、xaは配列中のアミノ酸の総数であり、yは95%では0.95、97%では0.97または100%では1.00であり、・は乗算演算子を表す記号であり、xaとyの非整数の積は最も近い整数へ切り捨てた後、それをxaから差し引く) により求められる。

「単離された」とは、その自然状態から「人の手で」変化されたことを意味し、すなわち、それが天然に存在する場合には、その元の環境から変更されたか取り出されたか、またはその両方を意味する。例えば、生物中に自然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離され」ていないが、限定されるものではないが、同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、そのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドが細胞に再び導入される場合を含め、その自然状態の共存物質から分離された場合には、「単離された」ものである。

「単離された」または「実質的に純粋な」核酸またはポリヌクレオチド(例えば、RNA、DNAまたは混合ポリマー)とは、天然の宿主細胞内で天然のポリヌクレオチドに本来伴っている他の細胞成分(例えば、リボソーム、ポリメラーゼおよびそれに本来伴っているゲノム配列)から実質的に分離されたものである。この用語は、(1)天然環境から取り出された、(2)「単離されたポリヌクレオチド」が本来見られるポリヌクレオチドの全てまたは一部と会合していない、(3)本来連結されていないポリヌクレオチドと作動可能(operatively)に連結されている、または(4)天然には存在しない、核酸またはポリヌクレオチドを包含する。用語「単離された」または「実質的に純粋」とはまた、組換え型またはクローン化DNA単離物、化学的に合成されたポリヌクレオチド類似体、または異種系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチド類似体に関して使用することもできる。

しかしながら、「単離された」とは、これまで記載した核酸またはポリヌクレオチドがそれ自体、その天然環境から物理的に取り出されていることを必ずしも必要としない。例えば、生物のゲノム中の内因性核酸配列は、この内因性核酸配列の発現が変化するように、例えば、増加、減少、または排除されるように、異種配列がその内因性核酸配列に隣接して置かれている場合に、本明細書では「単離された」と見なされる。この文脈において、異種配列は、その異種配列がそれ自体、内因性(同じ宿主細胞またはその後代に由来する)であるか外因性(異なる宿主細胞またはその後代に由来する)であるかを問わず、内因性核酸配列に天然に隣接していない配列である。例として、遺伝子が変化した発現パターンを持つように、プロモーター配列を宿主細胞のゲノム中の遺伝子の天然プロモーターで置き換えてもよい(例えば、相同組換えによる)。この遺伝子は、天然にそれに隣接している配列の少なくとも一部から分離されているので「単離されている」ことになる。

核酸はまた、ゲノム中の対応する核酸には天然に存在しない任意の修飾を含む場合にも「単離された」と見なされる。例えば、内因性コード配列は、人為的に、例えば、人間の介入により導入された挿入、欠失、または点突然変異を含む場合に「単離された」と見なされる。「単離された核酸」はまた、宿主細胞染色体の異種部位に組み込まれた核酸およびエピソームとして存在する核酸構築物も含む。さらに、「単離された核酸」は、他の細胞材料を実質的に含まない、または組換え技術により産生された場合には培養培地を実質的に含まない、または化学的に合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まないものであり得る。

本明細書で使用する場合、「機能的遺伝子産物をコードする核酸配列」とは、遺伝子のコード部分のあらゆる部分を意味する。機能的遺伝子産物をコードする核酸配列は、酵素全体の少なくとも1つの活性を遂行し得る酵素の一部であっても、完全な酵素であってもよい。

本明細書で使用する場合、「少なくとも1つの遺伝子産物の発現に必要な核酸」とは、遺伝子の一部をコードし、かつ/または遺伝子産物をコードする核酸に作動可能に連結されているが、必ずしもコード配列を含まない核酸配列を意味する。例として、少なくとも1つの遺伝子産物の発現に必要な核酸配列には、限定されないが、エンハンサー、プロモーター、調節配列、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化配列、および/またはコード配列が含まれる。

本明細書で使用する場合、「タンパク質分解」または「細胞内でタンパク質分解を担う遺伝子産物」とは、少なくとも1つのペプチド、ポリペプチドおよび/またはタンパク質の切断を引き起こすことができる任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質および/もしくは酵素またはその一部を意味する。タンパク質分解を担う遺伝子産物は、切断(すなわち、ペプチダーゼ)に直接関与してもよく、またはペプチダーゼ合成経路の一部として間接的に関与してもよい。細胞内のタンパク質分解を担う遺伝子産物の例としては、限定されるものではないが、アスパルチルプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、分泌型アスパルチルプロテアーゼ、分泌型セリンプロテアーゼ、酵母メチロトローフプロテアーゼ、DDP IV様エンドペプチダーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、Prb1様セリンプロテアーゼ、Prb1セリンプロテアーゼ、およびCPY様カルボキシペプチダーゼが挙げられる。また、分泌型セリンプロテアーゼなどの、細胞から分泌されてもタンパク質分解活性の一部または全部をなお維持しているプロテアーゼもこの定義に含まれる。分泌プロテアーゼは、細胞内および/または細胞外のタンパク質分解に関与する場合がある。

本明細書で使用する場合、「グリコシル化」または「細胞内のグリコシル化を担う遺伝子産生物」とは、細胞内における少なくとも1つの糖類部分のポリペプチドへの付加、または少なくとも1本の糖類鎖の伸長に関わる任意のペプチド、ポリペプチド、タンパク質および/もしくは酵素またはその一部を意味する。細胞内でグリコシル化を担う遺伝子産物は、細胞内で糖類をポリペプチドに付加することに直接関与し、例えば、限定されるものではないが、マンノシルトランスフェラーゼである。マンノシルトランスフェラーゼは、Dol−P−Manからの残基をペプチド、ポリペプチド、および/またはタンパク質上のセリンおよび/またはスレオニン残基に転移でき、あるいは、GPD−Manからのマンノース残基を糖類に転移する働きをし、このようにして、糖類鎖を伸長し得る。あるいは、グリコシル化を担う遺伝子産物は、グリコシル化経路の一部であり得、また、細胞内で多糖をポリペプチドに付加することに間接的に関与する可能性がある。細胞内のグリコシル化を担う遺伝子産物の例としては、限定されるものではないが、マンノシルトランスフェラーゼ類が挙げられる。

「ポリヌクレオチド」とは、一般に、非修飾RNAもしくはDNAまたは修飾RNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを意味する。「ポリヌクレオチド」としては、限定されるものではないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域、または一本鎖、二本鎖および三本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖RNA、一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、またはより一般には二本鎖、または三本鎖領域、または一本鎖および二本鎖領域の混合物であり得るのDNAおよびRNAを含んでなるハイブリッド分子が含まれる。加えて、「ポリヌクレオチド」とは、本明細書で使用する場合、RNAもしくはDNA、またはRNAとDNAの両方を含んでなる三本鎖領域を意味する。このような領域の鎖は、同じ分子に由来してもよいし、異なる分子に由来してもよい。これらの領域は1以上の分子を総て含み得るが、より一般には、一部の分子の領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つは、しばしばオリゴヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、1以上の修飾塩基を含んでなる上記のDNAまたはRNAも含む。従って、安定性または他の理由のために修飾された骨格を有するDNAまたはRNAは、本明細書で意図されるような「ポリヌクレオチド」である。さらに、2例のみ挙げると、イノシンなどの異常な塩基、またはトリチル化塩基などの修飾塩基を含んでなるDNAまたはRNAも、本明細書において使用されるようなポリヌクレオチドである。当業者に知られている多くの有用な目的に適う多種多様な修飾がDNAおよびRNAに行われていることが理解されるであろう。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用する場合、ポリヌクレオチドのこのような化学的、酵素的もしくは代謝的に修飾された形態、ならびにウイルスおよび細胞(例えば、単純細胞および複雑細胞を含む)に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。「ポリヌクレオチド」はまた、しばしばオリゴヌクレオチドと呼ばれる短いポリヌクレオチドも包含する。

「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または修飾ペプチド結合により互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含んでなる任意のペプチドまたはタンパク質を意味する。「ポリペプチド」とは、一般的にペプチド、オリゴペプチドまたはオリゴマーと呼ばれる短鎖と、一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖との両方を意味する。ポリペプチドは、20個の遺伝子にコードされているアミノ酸以外のアミノ酸を含んでなってもよい。「ポリペプチド」とは、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然プロセスによるか、または化学的修飾技術によって修飾されたものを含む。このような修飾は、基礎テキストおよびより詳細な研究論文、ならびに膨大な研究文献に詳述されており、当業者には周知である。同じ種類の修飾は、所与のポリペプチドのいくつかの部位に同じ程度で存在しても異なる程度で存在してもよいと理解される。また、所与のポリペプチドは、多くの種類の修飾を含んでよい。修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端もしくはカルボキシ末端を含むポリペプチドのどの場所に存在してもよい。修飾としては、例えば、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合的架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、GPIアンカー形成、酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のγ−カルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP−リボシル化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAにより媒介されるタンパク質へのアミノ酸付加、例えば、アルギニル化、およびユビキチン化が挙げられる。例えば、PROTEINS - STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993) and Wold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York (1983); Seifter et al., Meth. Enzymol. 182:626-646 (1990) and Rattan et al., Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging, Ann. N.Y. Acad. Sci. 663: 48-62 (1992)を参照。ポリペプチドは、分岐型または環状(分岐があってもなくてもよい)である。環状、分岐および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセスから生じるものであっても、完全に合成的な方法によって作出されるものでもよい。

「変異体」は、本明細書において使用される場合、それぞれ参照ポリヌクレオチドまたは参照ポリペプチドとは異なるが、本質的な特性を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドである。ポリヌクレオチドの典型的な変異体は、別の参照ポリヌクレオチドとはヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列の変化は、参照ポリヌクレオチドによりコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を変化させる場合もあるし、させない場合もある。以下に論じるように、ヌクレオチド変化は、参照配列によりコードされているポリペプチドのアミノ酸置換、付加、欠失、融合および末端切断をもたらし得る。ポリペプチドの典型的な変異体は、別の参照ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なる。一般に、参照ポリペプチドと変異体の配列は全体的に近似し、多くの領域で同一であるので、その相違は限られている。変異体と参照ポリペプチドは、アミノ酸配列が、1以上の置換、付加、欠失の任意の組み合わせにより異なり得る。置換または挿入されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによりコードされたものであってもなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体などの天然に存在するものであってもよいし、または天然に存在することが知られていない変異体であってもよい。本発明はまた、残基が同様の特徴を有する別のもので置換される保存的アミノ酸置換によって参照対象とは異なるポリペプチドである、本発明の各ポリペプチドの変異体も含む。典型的なそのような置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間;SerおよびThr間;酸性残基AspおよびGlu間;AsnおよびGln間;および塩基性残基LysおよびArg間;または芳香族残基PheおよびTyr間のものである。特に、いくつか、すなわち5〜10、1〜5、1〜3、1〜2または1つのアミノ酸が、任意の組み合わせで置換、欠失、または付加された変異体が存在する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの非天然変異体は、変異誘発技術により作出されてもよく、直接的合成によって作出されてもよい。変異体はまた、限定されるものではないが、そのアミノ酸側基の1以上の化学修飾を有するポリペプチドまたはその断片を含み得る。化学修飾としては、限定されるものではないが、化学部分の付加、新たな結合の創出、および化学部分の除去が含まれる。アミノ酸側基における修飾としては、限定されるものではないが、リシン−ε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのN−アルキル化、グルタミン酸基、アスパラギン酸基、またはカルボン酸基のアルキル化、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が含まれる。末端アミノ基の修飾としては、限定されるものではないが、デスアミノ、N−低級アルキル、N−ジ−低級アルキル、およびN−アシル修飾が含まれる。末端カルボキシ基の修飾としては、限定されるものではないが、アミド、低級アルキルアミド、ジアルキルアミド、および低級アルキルエステル修飾が含まれる。さらに、1以上の側基、または末端基を、熟練のタンパク質化学者に知られている保護基によって保護してもよい。

本明細書で使用する場合、「断片」は、ポリペプチドに関して使用する場合、完全な天然ポリペプチドのアミノ酸配列の総てではないが一部と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本明細書で使用する場合、「断片」は、ポリヌクレオチドまたは核酸配列に関して使用する場合、完全な天然ポリペプチドのアミノ酸配列の総てではないが一部と同じアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。断片は、「独立」していてもよいし、より大きなポリペプチドに含まれ、単一のより大きなポリペプチド内の単一の連続領域として部分または領域を形成してもよい。例として、天然GLP−1の断片は、天然アミノ酸1〜36番中のアミノ酸7〜36番を含む。さらに、ポリペプチドの断片は、天然の部分配列の変異体であってもよい。例えば、天然GLP−1のアミノ酸7〜30番を含んでなるGLP−1の断片は、その部分配列内にアミノ酸置換を有する変異体であってもよい。別の例として、「断片」は、限定されるものではないが、Kex2P、Pdi1、およびEro1を含む、本明細書に記載の前記ポリペプチドをコードするいずれの異種ポリペプチドまたは核酸も意味する場合があり、前記断片は、前記野生型ポリペプチドまたは酵素の少なくとも1つの機能活性を保持する。

本明細書で使用する場合、「コンジュゲート」または「コンジュゲートされた」とは、互いに結合している2つの分子を意味する。例えば、第1のポリペプチドは、第2のポリペプチドに共有結合的にまたは非共有結合的に結合されていてもよい。第1のポリペプチドは、化学的リンカーにより共有結合されていてもよいし、または第2のポリペプチドに遺伝子学的に融合(genetically fused)していてもよく、前記第1のポリペプチドと第2のポリペプチドは共通のポリペプチド骨格を有している。本発明の宿主細胞中で発現される組換えポリペプチドは、ヒト血清アルブミンにコンジュゲートされた少なくとも1つの治療用ポリペプチドを含んでなり得る。その他のコンジュゲートとしてはまた、限定されるものではないが、トランスフェリン、一本鎖可変ドメイン、および/または抗体の少なくとも1つのFc領域にコンジュゲートされた少なくとも1つの治療用ポリペプチドも含まれる。コンジュゲートは、リンカーを含んでも含まなくてもよい。

本明細書で使用する場合、「直列に配向される(tandemly oriented)」とは、同じ分子の一部として互いに隣接する2つ以上のポリペプチドを意味する。それらは共有結合的にまたは非共有結合的に結合していてよい。2つ以上の直列に配向されたポリペプチドは、同じポリペプチド骨格の部分を形成していてよい。直列に配向されたポリペプチドは、順配向であっても逆配向であってもよく、かつ/または他のアミノ酸配列により分離されていてもよい。

本明細書で使用する場合、「アルビグルチド」とは、組換えヒト血清アルブミンに直列に遺伝子学的に融合された修飾ヒトグルカゴン様ペプチド1(GLP−1、断片7〜36(A8G))の30−アミノ酸配列、2コピーからなる組換え融合タンパク質を意味する。アルビグルチドのアミノ酸配列を以下に配列番号1として示す。

「組換え発現系」とは、宿主細胞に導入、トランスフェクトまたは形質転換される本発明の発現系もしくはその一部またはポリヌクレオチド、あるいは本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの生産のための宿主細胞溶解液を意味する。

本明細書で使用する場合、「アルブミン融合タンパク質」は、好ましくは遺伝子学的な融合により互いに会合された治療用ポリペプチドの少なくとも断片または変異体とヒト血清アルブミンの少なくとも断片または変異体を含んでなる。

GLP−1活性を有するポリペプチドは、ヒトGLP−1の少なくとも1つの断片および/または変異体を含んでなり得る。ヒトGLP−1の2つの天然断片を配列番号2に示す。

式中、37番のXaaはGly(以下、「GLP−1(7−37)」と呼称)、または−NH2(以下、「GLP−1(7−36)」と呼称)である。GLP−1断片は、限定されるものではないが、ヒトGLP−1のアミノ酸7〜36(GLP−1(7−36))を含んでなる、あるいはまたからなるGLP−1の分子を含み得る。GLP−1の変異体またはそれらの断片は、限定されるものではないが、野生型GLP−1または配列番号2に示されるGLP−1の天然断片中に、1、2、3、4、5またはそれを超えるアミノ酸置換を含み得る。変異体GLP−1またはGLP−1の断片は、限定されるものではないが、野生型GLP−1のアラニン8に類似するアラニン残基の置換を含んでよく、このようなアラニンはグリシンに変異されている(以下、「A8G」と呼称)(例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第5,545,618号に開示されている突然変異体)。

本明細書で使用する場合、「KEX2」とは、「キラーエクスプレッションプロテアーゼ」または「Kex2p」と呼ばれる(本発明では「kexp」とも呼称)タンパク質をコードする遺伝子を意味する。Kex2pは、プロタンパク質プロセシングに関与するカルシウム依存性セリンプロテアーゼである。このプロテアーゼは、ポリペプチドを認識配列:Arg−Arg/XおよびLys−Arg/Xのカルボキシル末端で切断する。他のKex2p活性としては、限定されるものではないが、ヒドロラーゼ活性、金属イオン結合活性、セリン型エンドペプチダーゼ活性、ペプチダーゼ活性およびセリン型ペプチダーゼ活性が含まれる。KEXの別名としては、Pcsk2、Pcsk4、kpc−1がある。サッカロミセス・セレビシエ・エンドペプチダーゼ(KEX2)遺伝子はGenBank ID No.855483を有し、NCBIタンパク質配列Ref Seq NP:014161.1をコードする。KEX2遺伝子は、ミバエ、S.セレビシエ、K.ラクティス、E.ゴシッピー(E. gossypii)、S.ポンベ、M.オリゼ、およびアカパンカビ(N.crassa)で保存されている。KEX2の変異体は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisia)由来の(KEX2)遺伝子と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するか、またはサッカロミセス・セレビシエ由来のKex2pと少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドであり得る。Kex2pの機能的断片および/または変異体は、限定されるものではないが、ポリペプチドを認識配列:Arg−Arg/XおよびLys−Arg/Xのカルボキシル末端で切断する能力を含む、Kex2pの少なくとも1つの機能を保持すると考えられる。S.セレビシエ由来のKEX2の遺伝子配列(配列番号3)および対応するKex2pのアミノ酸配列(配列番号4)を以下に示す。

本明細書で使用する場合、「PDI」または「PDI1」とは、真核生物の小胞体において、それらが折り畳まれた際にタンパク質内のシステイン残基間でジスルフィド結合の形成および切断を触媒する酵素である「タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ」としても知られる「pdi」または「Pdi1p」をコードする遺伝子を意味する(Wilkinson B, Gilbert HF (June 2004). "Protein disulfide isomerase". Biochimica et Biophysica Acta 1699 (1-2): 35-44 and Gruber CW, Cemazar M, Heras B, Martin JL, Craik DJ (August 2006). "Protein disulfide isomerase: the structure of oxidative folding". Trends in Biochemical Sciences 31 (8): 455-64)) and can act as a chaperone protein (Wang, CC and Tsou, CL FASEB J. 1993 Dec;7(15):1515-7)。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼは、小胞体内腔に存在し、分泌型タンパク質および細胞表面タンパク質におけるジスルフィド結合の形成に不可欠な多機能性タンパク質であり、非天然ジスルフィド結合を元に戻し、非折り畳みタンパク質に結合したMan8GlcNAc2オリゴ糖をプロセシングして、非折り畳みタンパク質応答において分解を促進するMan7GlcNAc2とするエキソマンノシダーゼ活性を有するMnl1pと複合体を形成する。Pdi1はまた、酸化的レダクターゼ活性も有する。S.セレビシエ由来のPdi1pは、GenBank ID NO.850314によりコードされている。pdiの機能的断片および/または変異体は、GenBank ID No.850314と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによりコードされているNCBI Ref Seq NP_009887のアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するポリペプチドであってよく、限定されるものではないが、イソメラーゼ活性を含む、Pdiの少なくとも1つの機能を保持していると考えられる。Pdi1の機能活性としては、限定されるものではないが、ジスルフィド結合の形成および/または切断の触媒、不適切に折り畳まれたタンパク質の適切な折り畳みの補助が含まれる。PDIの別名としては、PDI1、PDIA2、Pdia3、P4HB、PADI1、Padi2、EUG1、NCU09223、SOAC1F5.02、およびAGOS_AFR718Wがある。PDI1遺伝子は、ヒト、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ、ミバエ、カ、C.エレガンス(C. elegans)、S.セレビシエ、K.ラクティス、E.ゴシッピー、S.ポンベ、M.オリゼ、アカパンカビ、A.サリアナ、およびイネで保存されている。(PDI1)は実行性がある。S.セレビシエ由来のPDIの遺伝子配列(配列番号5)および対応するPdi1のアミノ酸配列(配列番号6)を以下に示す。

PDIは、細胞のE.R.内腔の局在タンパク質である。酵素の細胞分布、その細胞下局在およびその発達特性に関する一連の証拠は、それがタンパク質生合成および分泌経路に役割を果たしていることを示唆し(Freedman, 1984, Trends Biochem. Sci. 9, pp.438-41)、これは直接的なin situ架橋研究によって裏付けられる(Roth and Pierce, 1987, Biochemistry, 26, pp.4179-82)。PDIを欠くミクロソーム膜はタンパク質ジスルフィド形成の特異的欠如を示すという発見(Bulleid and Freedman, 1988, Nature, 335, pp.649-51)は、分泌型タンパク質および細胞表面タンパク質の生合成中にこの酵素が天然のジスルフィド結合形成の触媒として機能することを暗示する。この役割は、in vitroでのこの酵素の触媒特性について知られていることと一致し、チオール:ジスルフィド相互変換反応を触媒して正味のタンパク質ジスルフィド形成、切断または異性化をもたらし、また、多種多様な還元型の非折り畳みタンパク質基質中でタンパク質の折り畳みおよび天然ジスルフィド結合の形成を触媒することができる(Freedman et al., 1989, Biochem. Soc. Symp., 55, pp.167-192)。この酵素のDNAおよびアミノ酸配列はいくつかの種で既知であり(Scherens, B. et al., 1991, Yeast, 7, pp. 185-193; Farquhar, R., et al., 1991, Gene, 108, pp. 81-89)、哺乳動物肝臓から均質となるまで精製された酵素の作用機序に関する情報が増えてきている(Creighton et al., 1980, J. Mol. Biol., 142, pp.43-62; Freedman et al., 1988, Biochem. Soc. Trans., 16, pp.96-9; Gilbert, 1989, Biochemistry 28, pp.7298-7305; Lundstrom and Holmgren, 1990, J. Biol. Chem., 265, pp.9114-9120; Hawkins and Freedman, 1990, Biochem. J., 275, pp.335-339)。多くのタンパク質因子のうち、タンパク質折り畳み、集合および細胞内の移動の媒介因子として現在関連付けられている(Rothman, 1989, Cell 59, pp.591-601)PDIは、明確に定義された触媒活性を有するという点で異例である。

PDIは、哺乳動物組織から容易に単離され、均質な酵素はホモ二量体(2×57kD)であり、特徴的には酸性pI(4.0〜4.5)を有する(Hillson et al., 1984, Methods Enzymol., 107, pp.281-292)。この酵素はまた、コムギおよび藻類のコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardii)からも精製されている(Kaska et al., 1990 Biochem. J. 268, pp.63-68)。活性は多種多様な供給源で検出されており、予備的報告では、PDI活性はS.セレビシエで検出可能であることが主張されている(Williams et al., 1968, FEBS Letts., 2, pp.133-135)。最近、大部分はクローニングされたcDNA配列に由来するいくつかのPDIの完全なアミノ酸配列が報告され、これらにはラット由来(Edman et al., 1985, Nature, 317, pp.267-270)、ウシ由来(Yamauchi et al., 1987, Biochem. Biophys. ReS. comm., 146, pp.1485-1492)、ヒト由来(Pihlajaniemi et al., 1987, EMBO J., 6, pp.643-9) 、酵母由来(Scherens, B., et al., 前掲; Farquhar, R. et al., 前掲)、ニワトリ雛由来(Parkkonen et al., 1988, Biochem. J., 256, pp.1005-1011)のPDIが含まれる。これらの脊椎動物種由来のタンパク質は、高い程度の配列保存を示し、総てがラットPDI配列で最初に示されたいくつかの総体的特徴を示す(Edman et al. 1985 前掲)。

PDIに相当するか、または密接に関連する配列が、ジスルフィド結合形成以外の機能を分析することを目的とする研究で同定された。例えば、PDIはE.R.内の新生または新たに合成されたプロコラーゲンポリペプチドの主要な翻訳後修飾を触媒する四量体αβ−酵素プロリル−4−ヒドロキシラーゼのβ−サブユニットとして働くという明確な証拠がある(Pihlajaniemi et al., 1987, supra; Koivu et al., 1987, J. Biol. Chem., 262, pp.6447-49))。また、PDIが共翻訳性N−グリコシル化のための系に関与していることを示唆する証拠もあり(Geetha-Habib et al., 1988, Cell, 4, pp.63-68)、最近、この酵素がトリグリセリドを新生分泌型リポタンパク質に転移する複合体に関与しているという提案がなされた(Wetterau at al., 1990, J. Biol. Chem., 265, pp.9800-7)。従って、PDIは、分泌型タンパク質の共翻訳性修飾および翻訳後修飾において多機能性である可能性がある(Freedman, 1989, Cell, 57, pp.1069-72)。

細菌、酵母、および昆虫細胞発現系におけるPdi1活性の増強は、ジスルフィド結合を含有する組換えタンパク質の分泌の増大をもたらし得る。アルビグルチド(ALB)(そのアミノ酸配列は配列番号1に示される)は、ヒトアルブミンと融合したDPP−4耐性GLP−1二量体からなる。このタンパク質は8つのジスルフィド結合を含む。Pdi1の過剰発現は、宿主細胞における配列番号1の適正な折り畳みと分泌、および/または宿主細胞からの配列番号1の分泌を改善することが可能である。

ERO1は、真核生物の小胞体(ER)内でタンパク質ジスルフィド結合の形成および異性化を触媒するオキシドレダクターゼ酵素であるERオキシドレダクチン1(Ero1)をコードする遺伝子である(Frand AR, Cuozzo JW, Kaiser CA (2000). "Pathways for protein disulphide bond formation". Trends Cell Biol. 10 (5): 203-10 and Frand AR, Kaiser CA (2000). "Two pairs of conserved cysteines are required for the oxidative activity of Ero1p in protein disulfide bond formation in the endoplasmic reticulum". Mol. Biol. Cell 11 (9): 2833-43)。S.セレビシエ由来のERO1は、NCBI遺伝子ID NO.854909およびNCBIタンパク質Ref Seq NP_013576を有する。ERO1の別名としては、限定されるものではないが、ERO1L、ERO1LB、Ero1a、Ero1b、ero−1、NCU02074がある。ERO1遺伝子は、ヒト、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、ゼブラフィッシュ、C.エレガンス、S.セレビシエ、K.ラクティス、E.ゴシッピー、S.ポンベ、M.オリゼ、アカパンカビ、A.サリアナ、およびイネで保存されている。ERO1活性としては、限定されるものではないが、フラビンアデニンジヌクレオチド結合、オキシドレダクターゼ活性、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ活性、およびチオール オキシダーゼ活性が含まれる。Ero1の機能的断片および/または変異体は、野生型Ero1の少なくとも1つの機能活性を維持するポリペプチドであると考えられる。

「小胞体オキシドレダクチン」または「ERO」は、真核生物細胞の小胞体内でタンパク質ジスルフィド結合の形成および異性化を触媒するオキシドレダクターゼ酵素である。ジスルフィド結合の形成は、酸化プロセスである。タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)が新生ポリペプチド中のジスルフィド結合の形成を触媒した後、PDIはチオール−ジスルフィド交換反応の際に還元されるようになる。EROは、酸化当量をPDIに導入するために必要とされる。S.セレビシエでは、小胞体オキシドレダクチンは、ERO1によりコードされる。

S.セレビシエ由来のERO1の遺伝子配列(配列番号7)および対応するEro1のアミノ酸配列(配列番号8)を以下に示す。

「微生物」とは、(i)原核生物、例えば、限定されるものではないが、連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、ボルデテラ属(Bordetella)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、放線菌属(Actinomycetes)、ストレプトミセス属(Streptomycetes)、ノカルジア属(Nocardia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルシニア属(Yersinia)、フランシセラ属(Fancisella)、パスツレラ属(Pasturella)、モラクセラ属(Moraxella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、ブランハメラ属(Branhamella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、リステリア属(Listeria)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、トレポネーマ属(Treponema)、大腸菌属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Kleibsiella)、ビブリオ属(Vibrio)、プロテウス属(Proteus)、エルウィニア属(Erwinia)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、スピリルム属(Spirillum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、赤痢菌属(Shigella)、レジオネラ属(Legionella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アエロモナス属(Aeromonas)、リケッチア属(Rickettsia)、クラミジア属(Chlamydia)、ボレリア属(Borrelia)およびマイコプラズマ属(Mycoplasma)を含み、さらに、限定されるものではないが、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、D群連鎖球菌、G群連鎖球菌、炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faecium)、ストレプトコッカス・デュランス(Streptococcus durans)、淋菌(Neisseria gonorrheae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ結核菌(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、癩菌(Mycobacterium leprae)、アクチノミセス・イスラエリー(Actinomyctes israelii)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、百日咳菌(Bordetella pertusis)、パラ百日咳菌(Bordatella parapertusis)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、大腸菌(Escherichia coli)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・エジプチウス(Haemophilus aegyptius)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ボルデテラ、チフス菌(Salmonella typhi)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、ペスト菌(Yersinia pestis)、肺炎桿菌(Kleibsiella pneumoniae)、霊菌(Serratia marcessens)、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)、コレラ菌(Vibrio cholera)、シゲラ・ディセンテリー(Shigella dysenterii)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、野兎病菌(Franscisella tularensis)、ウシ流産菌(Brucella abortis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)およびトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomitis)の種または群のメンバー、(ii)限定されるものではないが、アルケノオバクター(Archaebacter)を含む古細菌、および(iii)限定されるものではないが、原虫、菌類、サッカロミセス属、クリベロマイセス属、またはカンジダ属のメンバー、サッカロミセス・セレビシエ、クリベロマイセス・ラクティス、またはカンジダ・アルビカンス種のメンバーを含む単細胞または糸状真核生物を意味する。

「細菌」とは、(i)原核生物、例えば、限定されるものではないが、連鎖球菌属(Streptococcus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、ボルデテラ属(Bordetella)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ナイセリア属(Neisseria)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、放線菌属(Actinomycetes)、ストレプトミセス属(Streptomycetes)、ノカルジア属(Nocardia)、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルシニア属(Yersinia)、フランシセラ属(Fancisella)、パスツレラ属(Pasturella)、モラクセラ属(Moraxella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、エリシペロスリクス属(Erysipelothrix)、ブランハメラ属(Branhamella)、アクチノバチルス属(Actinobacillus)、ストレプトバチルス属(Streptobacillus)、リステリア属(Listeria)、カリマトバクテリウム属(Calymmatobacterium)、ブルセラ属(Brucella)、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、トレポネーマ属(Treponema)、大腸菌属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Kleibsiella)、ビブリオ属(Vibrio)、プロテウス属(Proteus)、エルウィニア属(Erwinia)、ボレリア属(Borrelia)、レプトスピラ属(Leptospira)、スピリルム属(Spirillum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、赤痢菌属(Shigella)、レジオネラ属(Legionella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アエロモナス属(Aeromonas)、リケッチア属(Rickettsia)、クラミジア属(Chlamydia)、ボレリア属(Borrelia)およびマイコプラズマ属(Mycoplasma)を含み、さらに、限定されるものではないが、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、C群連鎖球菌、D群連鎖球菌、G群連鎖球菌、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faecium)、ストレプトコッカス・デュランス(Streptococcus durans)、淋菌(Neisseria gonorrheae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、ガードネレラ・バジナリス(Gardnerella vaginalis)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ結核菌(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウム・ウルセランス(Mycobacterium ulcerans)、癩菌(Mycobacterium leprae)、アクチノミセス・イスラエリー(Actinomyctes israelii)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、百日咳菌(Bordetella pertusis)、パラ百日咳菌(Bordatella parapertusis)、気管支敗血症菌(Bordetella bronchiseptica)、大腸菌(Escherichia coli)、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘモフィルス・エジプチウス(Haemophilus aegyptius)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、ボルデテラ、チフス菌(Salmonella typhi)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)、ペスト菌(Yersinia pestis)、肺炎桿菌(Kleibsiella pneumoniae)、霊菌(Serratia marcessens)、セラチア・リクファシエンス(Serratia liquefaciens)、コレラ菌(Vibrio cholera)、シゲラ・ディセンテリー(Shigella dysenterii)、フレクスナー赤痢菌(Shigella flexneri)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、野兎病菌(Franscisella tularensis)、ウシ流産菌(Brucella abortis)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、セレウス菌(Bacillus cereus)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium tetani)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia rickettsii)およびトラコーマクラミジア(Chlamydia trachomitis)の種または群のメンバー、および(ii)限定されるものではないが、アルケノオバクター(Archaebacter)を含む古細菌を意味する。

本明細書で使用する場合、「異種核酸配列」とは、対象とする宿主細胞または微生物に挿入、形質転換、またはトランスフェクトされた核酸配列を意味する。異種核酸配列は、ポリペプチドの全体もしくは一部のコード配列であってよく、かつ/またはプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合要素またはポリアデニル化領域などの非コード調節要素を含んでなってもよい。異種核酸配列は、宿主細胞とは異なる生物、属または種に由来するポリペプチドをコードする核酸配列など、その宿主細胞では天然に見られない核酸配列であり得る。あるいは、異種核酸配列は、宿主細胞のゲノムに対して天然と言えるが、前記核酸配列によりコードされているポリペプチドの天然の核酸配列または発現の機能を増強するために宿主細胞に挿入、形質転換またはトランスフェクトされているものであってもよい。例えば、野生型S.セレビシエは、野生型Kex2pをコードする核酸配列を含み得るが、野生型Kex2pをコードする異種核酸を、前記宿主細胞によるKex2p産生を増大させるために前記S.セレビシエに形質転換してもよい。同様に、野生型S.セレビシエは、野生型Kex2pをコードする核酸配列を含み得るが、異種生物由来のKex2pをコードする異種核酸を、前記宿主細胞によるKex2p産生を増大させるために前記S.セレビシエに挿入してもよい。また、宿主細胞と同種に由来する野生型核酸の変異体および/または断片である異種核酸配列を含む宿主細胞も本発明により企図される。

本明細書で使用する場合、「組換えポリペプチド」およびその文法的変形は、対象とする形質転換宿主細胞または微生物によっては本来合成されず、組換えDNAによりその宿主細胞または微生物に導入されたポリペプチドを意味する。例えば、S.セレビシエは、非形質転換または非トランスフェクトS.セレビシエには見られないヒト血清アルブミンの発現のための宿主細胞として働き得る。組換えポリペプチドは、単離を容易にするために改変されたポリペプチドを含み得る。

本明細書で使用する場合、「親和性タグ」とは、分子に別の物質または分子に対する選択的親和性を与え得る、分子と会合した任意の部分を意味する。例えば、親和性タグは、分子にカラムの充填物質に対する選択的親和性を提供することにより分子の精製を容易にするために使用できる。親和性タグの非限定例はhis−タグである。

核酸は、別の核酸配列との機能的関係下に置かれている場合に、「作動可能に連結されている(operably linked)」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆タンパク質として発現されるならば、ポリペプチドのDNAと作動可能に連結されており;プロモーターまたはエンハンサーは、それがその配列の転写に影響を及ぼすならば、コード配列と作動可能に連結されており;またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように配置されていれば、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているDNA配列が連続していること、分泌リーダーの場合には、連続しかつリーディング相にあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは、連続でなくてもよい。連結は都合のよい制限部位におけるライゲーションによって行われる。このような部位が存在しなければ、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の実施に従って使用される。

本明細書で使用する場合、細胞を「採取する」とは、細胞培養から細胞を回収することを意味する。細胞は、採取の際に、培養液からそれらを分離するために、例えば、遠心分離または濾過によって濃縮してもよい。細胞の採取は、限定されるものではないが、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドなどの細胞内材料を得るために細胞を溶解させる工程をさらに含んでなってもよい。限定されるものではないが、異種発現されたポリペプチドを含め、ある種の細胞材料は、培養中に細胞から放出され得ることが、当業者には理解されるはずである。従って、目的の産物(例えば、組換え発現ポリペプチド)は細胞を採取した後の培養液中に残留する。

また、組換えDNA構築物が選択マーカーをコードする方法も提供される。このような選択マーカーは、正の選択または負の選択のいずれかを提供する。また、前記選択マーカーを発現させること、および選択工程の少なくとも1つの第1の形質転換細胞により産生された選択マーカーの量と選択工程の少なくとも1つの第2の形質転換細胞により産生された選択マーカーの量を比較することを含んでなる方法が提供され、ここでは、第1と第2の形質転換細胞は同じ選択マーカーを産生する。当技術分野で理解されているように、選択マーカーとしては、限定されるものではないが、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)、β−ガラクトシダーゼ、蛍光タンパク質、分泌型のヒト胎盤アルカリ性ホスファターゼ、β−グルクロニダーゼ、酵母選択マーカーLEU2およびURA3、アポトーシス耐性遺伝子、およびアンチセンスオリゴヌクレオチド、ならびにネオマイシン(neo)、カナマイシン、ジェネティシン、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、ゼオシン、ブラストサイジン、ノルセオトリシン、ビアラホス、フレオマイシン、およびアンピシリンを含む抗生物質の存在下での増殖能を付与する抗生物質耐性遺伝子が含まれる。当技術分野で理解されているように、細胞は、限定されるものではないが、目視またBD FACS Ariaなどの選択マーカーの発現を検出することができるセルソーターを含む様々な手段によって選別することができる。

用語「野生型」とは、当技術分野で理解されているように、遺伝子改変を伴わない天然集団に見られる宿主細胞またはポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を意味する。例えば、「野生型宿主細胞」とは、宿主細胞のゲノムにおいて遺伝子改変が作り出される、または生じる前の宿主細胞の非改変株を意味する。

本明細書で使用する場合、「力価」または「力価収率(titer yield)」とは、溶液(例えば、培養液または細胞溶解混合物またはバッファー)中の産物(例えば、組換え発現ポリペプチド)の濃度を意味し、通常mg/Lまたはg/Lで表される。力価収率の上昇は、定義された2セットの条件下で産生された産物の濃度の絶対的または総体的上昇を意味し得る。

「インクレチンホルモン」とは、本明細書で使用する場合、インスリン分泌を増強する、またはそうでなければインスリンのレベルを上昇させるいずれのホルモンも意味する。インクレチンホルモンの一例がGLP−1である。GLP−1は、食物摂取に応答して腸管L細胞により分泌されるインクレチンである。健康な個体では、GLP−1は、膵臓によるグルコース依存性インスリン分泌を刺激して末梢のグルコース吸収の増大をもたらすことにより食後血糖値を調節する重要な役割を果たす。GLP−1はまた、グルカゴン分泌を抑制して、肝臓のグルコース産生を低下させる。さらに、GLP−1は、胃内容排出時間を遅らせ、小腸運動を遅くして食物吸収を遅らせる。GLP−1は、グルコース依存性インスリン分泌に関与する遺伝子の転写を刺激することにより、また、β−細胞新生を促進することにより、継続的なβ細胞の能力を増進する(Meier, et al. Biodrugs 2003; 17 (2): 93-102)。

「GLP−1活性」とは、本明細書で使用する場合、限定されるものではないが、血液および/または血漿グルコースの低減、グルコース依存性インスリン分泌の刺激、またはそうでなければインスリンのレベルの上昇、グルカゴン分泌の抑制、フルクトサミンの低減、脳へのグルコース送達および代謝の増大、胃内容排出の緩徐化、ならびにβ細胞の能力および/または新生の増進を含む、天然ヒトGLP−1の1以上の活性を意味する。GLP−1活性に関連するこれらの活性および他の活性はいずれも、GLP−1活性またはGLP−1アゴニストを有する組成物によって直接的または間接的に引き起こされ得る。例として、GLP−1活性を有する組成物は、哺乳動物では、直接的または間接的にグルコース依存を刺激し得るが、インスリン産生の刺激は血漿グルコースレベルを間接的に低下させ得る。

「インクレチン模倣薬」は、本明細書で使用する場合、インスリン分泌を増進するか、またはそうでなければインスリンのレベルを上昇させ得る化合物である。インクレチン模倣薬は、インスリン分泌刺激能、β細胞新生増大能、β細胞アポトーシス阻害能、グルカゴン分泌阻害能、胃内容排出時間遅延能および哺乳動物における満腹感誘導能を持ち得る。インクレチン模倣薬としては、限定されるものではないが、GLP−1活性を有する任意のポリペプチド、例えば、限定されるものではないが、エキセンディン3およびエキセンディン4(その任意の断片および/または変異体および/またはコンジュゲートを含む)を含み得る。

「ドメイン抗体」または「dAb」は、抗原に結合し得る「単一可変ドメイン」と同じと見なされ得る。単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであり得るが、齧歯類(例えば、WO00/29004に開示)、テンジクザメおよびラクダ科動物VHH dAbなどの、他種由来の一本鎖抗体可変ドメインも含まれる。ラクダ科動物VHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種に由来する、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。このようなVHHドメインは当技術分野で利用可能な標準的技術に従ってヒト化されてもよく、このようなドメインは「ドメイン抗体」と見なされる。本明細書で使用する場合、VHは、ラクダ科動物VHHドメインを含む。

「単一可変ドメイン」という句は、可変領域またはドメインの違いに関わらず、抗原またはエピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質可変ドメイン(例えば、VH、VHH、VL)を意味する。

用語「抗原結合タンパク質」とは、本明細書で使用する場合、抗原と結合し得る抗体、抗体断片および他のタンパク質構築物、例えば、ドメイン、限定されるものではないが、可変ドメインおよびドメイン抗体を意味する。

本明細書で使用する場合、遺伝子改変宿主細胞において比較された酵素もしくはその断片または酵素活性の「量の低下」およびその文法的変形は、非遺伝子改変宿主細胞と比較した場合に、少なくとも1つの酵素の産生が少ないか、または少なくとも1種類の酵素活性の低下を示す遺伝子改変宿主細胞を意味する。一般に、遺伝子改変宿主細胞により産生された酵素活性の比較は、遺伝子改変前の同種の野生型株と行う。しかしながら、比較はまた、遺伝子改変宿主と、種もしくは株が異なるがその属に由来する野生型宿主との間、または別の遺伝子改変株との間で行うこともできる。少なくとも1つの酵素または酵素活性の低下はまた、少なくとも1つの酵素または酵素活性の完全な排除も含み、この場合、遺伝子改変宿主細胞では少なくとも1つの酵素が産生されず、かつ/または少なくとも1つの酵素が機能的でないか、もしくは活性を示さない。また、少なくとも1つの酵素活性の量の低下もこの定義に含まれる。すなわち、2つ以上の活性を有する酵素は、第1の活性の量は維持し得るが、同じ酵素の第2の活性は低下させる。

本明細書で使用する場合、遺伝子改変宿主細胞の酵素もしくはその断片または酵素活性の「量の増大」およびその文法的変形は、非遺伝子改変宿主細胞と比較した場合に、少なくとも1つの酵素の産生が多いか、または少なくとも1種類の酵素活性の増大を示す遺伝子改変宿主細胞を意味する。一般に、遺伝子改変宿主細胞により産生された酵素活性の比較は、遺伝子改変前の同種の野生型株と行う。しかしながら、比較はまた、遺伝子改変宿主と、種もしくは株が異なるがその属に由来する野生型宿主との間、または別の遺伝子改変株との間で行うこともできる。また、少なくとも1つの酵素活性の量の増大もこの定義に含まれる。すなわち、2つ以上の活性を有する酵素は、第1の活性の量は維持し得るが、同じ酵素の第2の活性は増大させる。加えて、この用語は、宿主細胞により産生される酵素の量とは別の酵素活性の増大を含む。例えば、遺伝子改変宿主細胞は、野生型に比べて、質量または量似よって測定されるような野生型宿主細胞により産生される酵素またはその断片および/もしくは変異体に関して同じまたは同等の量を産生し得るが、前記酵素の少なくとも1つの機能活性の量に測定可能な増大があってもよい。

本明細書で使用する場合、用語「ストリンジェントな条件」および「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、ハイブリダイゼーションが、それらの配列間に少なくとも70%および少なくとも80%、さらには少なくとも95%の同一性が存在する場合にのみ起こることを意味する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%デキストラン硫酸、および20マイクログラム/mlの変性剪断サケ精子DNAを含んでなる溶液中、42℃で一晩のインキュベーション、その後、0.1×SSC中、約65℃でのフィルターの洗浄である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件は周知であり、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989)、特に第11章で例示され、この開示は引用することにより全内容が本明細書の一部とされる。

本明細書で使用する場合、「遺伝子改変」または「遺伝子改変」とは、細胞DNA配列の1以上の塩基または断片のいずれの抑制、置換、欠失および/または挿入も意味する。このような遺伝子改変は、例えば、遺伝子工学技術により、または細胞を突然変異誘発物質に曝すことにより、in vitro(直接的には単離されたDNAに対して)またはin situで得ることができる。突然変異誘発物質としては、例えば、エネルギー線(X線、γ線、UVなど)などの物理的作用因子またはアルキル化剤(EMS、NQOなど)、ビアルキル化剤、インターカレート剤などのDNAの種々の官能基と反応し得る化学薬剤が含まれる。遺伝子改変はまた、例えば、Rothstein et al. (Meth. Enzymol. 194:281-301(1991))により開示されている方法に従った遺伝子破壊により得ることができる。この方法によれば、遺伝子の一部または全部が相同組換えを介してin vitro改変型に置換される。遺伝子改変はまた、トランスポゾン、ファージなど、DNA配列への任意の突然変異挿入によって得ることもできる。また、本明細書で使用する場合、「遺伝子改変」とは、それぞれ核酸またはアミノ酸の少なくとも1つの欠失、置換または抑制を有するポリペプチドまたはポリペプチドをコードする遺伝子を意味し得る。例えば、少なくとも1つのアミノ酸が野生型から置換されているポリペプチドは、遺伝子改変されていると見なされる。

遺伝子改変は、細胞機構によって復帰または減弱されることがある。あるいは、突然変異は、非復帰性およびまたは非漏出性であり得る。「漏出性突然変異」には、野生型機能の完全な不活性化ではなく部分的な不活性化をもたらす突然変異が含まれる。

本発明の宿主細胞が保有している遺伝子改変は、細胞のDNA配列のコード領域、および/または遺伝子の発現に影響を及ぼす領域に位置してもよい。従って、本発明の改変は一般に、タンパク質分解および/もしくはグリコシル化に関与するタンパク質および/もしくは酵素の遺伝子産物、または遺伝子産物の調節もしくは促進に影響を及ぼす。本発明の細胞の、異種発現ポリペプチドをタンパク質分解切断し、かつ/またはグリコシル化する能力の低下は、生物学的特性が変更された1以上の酵素の産生からの、または前記1以上の酵素の産生の不在からの、または1以上の酵素の低レベルでの産生からの、構造的および/またはコンフォメーション的変化によるものであり得る。

本発明の遺伝子改変はまた、本明細書に記載のKex2p、Pdi1、およびero1 の機能的活性のいずれかに関与するタンパク質および/または酵素の遺伝子産物、または遺伝子産物の調節もしくは促進に影響を及ぼす。本発明の細胞の、適正な折り畳みを行い、組換え発現ポリペプチドを分泌する能力の増強は、生物学的特性が変更されているか、または高レベルで産生される、これらのプロセスに関与する酵素によるものであり得る。

本発明の一態様において、キラーエクスプレッション(KEX)プロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pプロテアーゼの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)または少なくとも1つのPdi1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドとを含んでなる遺伝子改変宿主細胞が提供される。本発明の遺伝子改変宿主細胞としては、小胞体オキシドレダクチン(ero1)または少なくとも1つのEROの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドを含んでなる遺伝子改変宿主細胞が含まれる。

本発明の遺伝子改変宿主細胞はまた、前記遺伝子改変宿主細胞が培養系で増殖される際に、KEX、PDI、およびEROから選択される少なくとも1つの遺伝子産物を発現または過剰発現しない第2の宿主細胞に比べて、Kex2p、Pdi1、またはEro1から選択されるタンパク質および/または前記タンパク質の少なくとも1つの機能活性を有するその変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドの少なくとも1つの遺伝子産物を発現または過剰発現する遺伝子改変宿主細胞も含む。また、本発明には、遺伝子改変宿主細胞が培養系で増殖される際に、同種であって、KEX、PDIおよびEROから選択される少なくとも2つの遺伝子産物を過剰発現しないこと以外は同じ培養条件で増殖された第2の宿主細胞に比べて、Kex2p、Pdi1、またはEro1から選択される少なくとも2つのタンパク質または前記タンパク質の少なくとも1つの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体を過剰発現する遺伝子改変宿主細胞も含まれる。場合によっては、第2の宿主細胞は遺伝子改変を持ち得るが、Kex2p、Pdi1、またはEro1から選択されるタンパク質および/または前記タンパク質の少なくとも1つの機能活性を有するその変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドの少なくとも1つの遺伝子産物の発現または過剰発現を可能とする遺伝子改変は持たない。場合によっては、第2の宿主細胞は、改変宿主細胞と同種の野生型細胞(dすなわち、遺伝子改変が無い)であり得る。場合によっては、第2の宿主は、Kex2p、Pdi1、またはEro1から選択されるタンパク質および/または前記タンパク質の少なくとも1つの機能活性を有するその変異体をコードする核酸を含んでなること以外は、遺伝子改変宿主細胞と同じ遺伝子改変の総てを含んでいてよい。また、本発明の範囲内で、限定されるものではないが、Kex2p、Pdi1、およびEro1を含め、宿主細胞内にすでに含まれる遺伝子に由来する内因性ポリペプチドの発現を増強するために遺伝子改変されている宿主細胞も企図される。

本発明の別の態様では、下記の遺伝子改変:pep4プロテアーゼノックアウト、野生型宿主細胞に比べて低いubc4および/またはubc5活性、yps1ノックアウト、hsp150ノックアウト、およびpmt1ノックアウトのうち少なくとも1つをさらに含んでなる遺伝子改変宿主細胞が提供される。これらの遺伝子改変は、組換えヒト血清アルブミン分泌能を増強し、かつ、望まれない翻訳後修飾を低減することが判明している。

アルブミン融合タンパク質の産生に使用される酵母株としては、限定されるものではないが、D88、DXY1およびBXP10が含まれる。D88[leu2−3,leu2−122,can1,pra1,ubc4]は、親株AH22his+(DB1としても知られる;例えば、Sleep et al. Biotechnology 8:42-46 (1990))の誘導体である。この株は、LEU2遺伝子を含む2μ系プラスミドの栄養要求性選択を可能とするleu2突然変異を含む。D88はまた、グルコース過剰状態でPRB1の抑制解除を示す。PRB1プロモーターは、通常、グルコースレベルおよび増殖ステージを監視する2つのチェックポイントによって制御されている。このプロモーターは野生型酵母ではグルコース枯渇時に活性化され、静止期に入る。D88株は、グルコースによる抑制を示すが、静止期に入っている場合には誘導状態を維持する。PRA1遺伝子は、酵母液胞プロテアーゼであるYscAエンドプロテアーゼAをコードし、これはERに局在する。UBC4遺伝子はユビキチン化経路にあり、ユビキチン依存性分解のために、短命で異常なタンパク質を標的とすることに関与する。このubc4突然変異の単離により、細胞内の発現プラスミドのコピー数を増し、このプラスミドから発現される目的タンパク質の発現レベルの増強をもたらすことが分かっている(例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる国際公開第WO99/00504号参照)。

D88の誘導体であるDXY1は、下記の遺伝子型:[leu2−3,leu2−122,can1,pra1,ubc4,ura3:yap3]を有する。D88において単離されたこれらの突然変異に加えて、この株はまたYAP3プロテアーゼのノックアウトも有する。このプロテアーゼは、ほとんどの二塩基性残基(RR、RK、KR、KK)の切断を生じるだけでなく、タンパク質中の一塩基性残基における切断も促進することができる。このyap3突然変異の単離は、より高レベルの全長HSA産生をもたらした(例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる、米国特許第5,965,386号およびKerry-Williams et al., Yeast 14:161-169 (1998)参照)。

BXP10は、下記の遺伝子型:leu2−3,leu2−122,can1,pra1,ubc4,ura3,yap3::URA3,lys2,hsp150::LYS2,pmt1::URA3を有する。DXY1において単離されたこれらの突然変異に加えて、この株はPMT1遺伝子およびHSP150遺伝子のノックアウトも有する。PMT1遺伝子は、進化的に保存されたドリチル−リン酸−D−マンノースタンパク質O−マンノシルトランスフェラーゼ(Pmt)ファミリーのメンバーである。Pmt1pの膜貫通トポロジーは、それがO−結合型グリコシル化に役割を有する小胞体の内在性膜タンパク質であることを示唆する。この突然変異は、HSA融合物のO−結合型グリコシル化を軽減/排除する働きをする(例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる国際公開第WO00/44772号参照)。研究によれば、Hsp150タンパク質は、rHAからのイオン交換クロマトグラフィーによる分離が非効率であることが明らかになった。HSP150遺伝子におけるこの突然変異は、標準的な精製技術によって除去が困難であることが分かっている潜在的夾雑物を除去する。例えば、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第5,783,423号参照)。

本発明の遺伝子改変宿主細胞としては、限定されるものではないが、真菌細胞、酵母細胞、および哺乳動物細胞が含まれる。本発明の遺伝子改変宿主細胞としては、限定されるものではないが、サッカロミセス属、クルイベロミセス属、カンジダ属、ピキア属、シゾサッカロミセス属、ハンセヌラ属、クロエケラ属、シュワンニオミセス属、およびヤロウイア属が含まれる。本発明の遺伝子改変宿主細胞にはまた、限定されるものではないが、S.セレビシエも含まれる。

本発明の遺伝子改変宿主細胞は、組換えポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドをさらに含んでなり得る。少なくとも1つの異種ポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドとしては、限定されるものではないが、ベクター、宿主細胞のゲノムに形質転換されたDNA、ウイルスもしくはウイルスの一部、および/またはプラスミドが含まれる。異種ポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノムに形質転換してもよく、かつ、/または発現ベクターおよび/またはエピソーム発現系の一部であってもよい。

本発明のいくつかの態様では、組換えポリペプチドをコードする核酸は、プラスミド中に含まれている。他の態様では、組換えポリペプチドをコードする核酸は、本発明の宿主細胞のゲノムに形質転換される。

当技術分野で理解されているように、DNAは、いくつかの異なる方法により宿主細胞に形質転換することができる。酵母では、エレクトロポレーション、塩化リチウム法、酢酸リチウム法、またはスフェロプラスト法などの、任意の好都合なDNA移入法を使用することができる。高密度発酵に好適な安定株を作出するためには、DNAを宿主染色体に組み込むことが望ましい。組込みは、当技術分野で公知の技術を用い、相同組換えによって生じる。例えば、少なくとも1つの異種タンパク質を発現することができるDNAに、宿主生物の配列と相同な隣接配列を提供することができる。このようにして、望ましいまたは不可欠な遺伝子を破壊することなく、宿主ゲノムの所定の部位に組込みが生じる。加えて、また、その代わりに、少なくとも1つの異種タンパク質を発現することができるDNAを宿主染色体の望まれない遺伝子の部位に組み込む、その遺伝子またはその遺伝子産物の発現の破壊または欠失が果たされる。

遺伝子産物の発現の増強または過剰発現は遺伝子産物を発現することができるDNAの追加コピーを宿主染色体に組み込むことによって達成され得る。加えて、また、その代わりに、遺伝子産物をコードするDNAを強力なプロモーターに作動可能に連結してもよく、発現カセット全体を宿主染色体の所定の部位に組み込んでもよい。例えば、強力なプロモーター(例えば、PGK1プロモーター)に作動可能に連結されているKex2p、Pdi1、またはEro1をコードするDNAをNTS2−2の部位に組み込むと、対応する遺伝子産物の過剰発現が可能となる。他の実施形態では、DNAは、染色体、プラスミド、レトロウイルスベクター、または宿主ゲノムへのランダムな組込みを介して宿主に導入することができる。

本発明の遺伝子改変宿主細胞としては、kexプロテアーゼまたは少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドが、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7、およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、遺伝子改変宿主細胞が含まれる。好適には、プロモーターはPGK1である。本発明の遺伝子改変宿主細胞としてはまた、PDIまたは少なくとも1つのPdi1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドが、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7、およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、遺伝子改変宿主細胞も含まれる。好適には、プロモーターはPGK1である。加えて、本発明の遺伝子改変宿主細胞としては、EROまたは少なくとも1つのEROの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドが、TEF1、PRB1 ADH1、ADH2、PYK1、PGK1、ENO、GAL1.10.7、GALS、MET25、CUP1、PHO5、tetO−CYC1、CaMV、HXT6、HXT7、およびAREの群から選択される少なくとも1つのプロモーターに作動可能に連結されている、遺伝子改変宿主細胞が含まれる。好適には、プロモーターはPGK1である。

別の態様では、本発明の遺伝子改変宿主細胞で発現される組換えポリペプチドは、少なくとも1つのジスルフィド結合を有する。いくつかの態様では、組換えポリペプチドは、アルブミン融合タンパク質である。いくつかの態様では、組換えポリペプチドは、アルブミンにコンジュゲートされた、GLP−1活性を有する少なくとも1つの治療用ポリペプチドを含んでなる。

いくつかの態様では、GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体はGLP−1(7−36(A8G))を含んでなり、かつ、ヒト血清アルブミンに遺伝子学的に融合されている。さらなる実施形態では、本発明のポリペプチドは、ヒト血清アルブミンまたはその変異体のN末端またはC末端に融合されたGLP−1および/またはその断片および/もしくは変異体の、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれを超える直列に配向された分子を含んでなる。他の実施形態は、アルブミンまたはその変異体のN末端またはC末端に融合されたこのようなA8Gポリペプチドを有する。ヒト血清アルブミンのN末端に融合された、2つの直列に配向されたGLP−1(7−36)(A8G)断片および/または変異体の例としては、図3に示される配列番号1を含んでなる。別の態様では、GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体は、ヒト血清アルブミンに直列に遺伝子学的に融合された少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を含んでなる。少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子学的に融合されてもよい。GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドは、配列番号1を含んでなり得る。

GLP−1(7−37)の変異体は、例えば、Glu22−GLP−1(7−37)OHで表すことができ、これはGLP−1(7−37)OHの22番に通常見られるグリシンがグルタミン酸で置換されているGLP−1変異体を意味し;Val8−Glu22−GLP−1(7−37)OHは、GLP−1(7−37)OHの8番に通常見られるアラニンおよび22番に通常見られるグリシンがそれぞれバリンおよびグルタミン酸に置換されているGLP−1化合物を意味する。GLP−1の変異体の例としては、限定されるものではないが、下記のものが挙げられる。

GLP−1の変異体としてはまた、限定されるものではないが、そのアミノ酸側基の1以上の化学修飾を有するGLP−1またはGLP−1断片が含まれる。化学修飾としては、限定されるものではないが、化学部分の付加、新たな結合の作出、および化学部分の除去が含まれる。アミノ酸側基における修飾としては、限定されるものではないが、リシン−ε−アミノ基のアシル化、アルギニン、ヒスチジン、またはリシンのN−アルキル化、グルタミン酸またはアスパラギン酸 カルボン酸基のアルキル化(alkylation of glutamic or aspartic carboxylic acid groups)、およびグルタミンまたはアスパラギンの脱アミド化が含まれる。末端アミノ基の修飾としては、限定されるものではないが、デス−アミノ修飾、N−低級アルキル修飾、N−ジ−低級アルキル修飾、およびN−アシル修飾が含まれる。末端カルボキシ基の修飾としては、限定されるものではないが、アミド修飾、低級アルキルアミド修飾、ジアルキルアミド修飾、および低級アルキルエステル修飾が含まれる。さらに、1以上の側基、または末端基は、通常の技能を有するタンパク質化学者に知られている保護基によって保護されてよい。

GLP−1断片または変異体としてはまた、前記断片または変異体のGLP−1(7−37)OHのN末端および/またはC末端に1以上のアミノ酸が付加されているポリペプチドを含み得る。N末端またはC末端にアミノ酸が付加されているGLP−1のアミノ酸は、GLP−1(7−37)OHの対応するアミノ酸と同数で表される。例えば、LP−1(7−37)OHのN末端に2個のアミノ酸を付加することにより得られるGLP−1化合物のN末端アミノ酸は5番の位置にあり、GLP−1(7−37)OHのC末端に1個のアミノ酸を付加することにより得られるGLP−1化合物のC末端アミノ酸は38番の位置にある。従って、これらのGLP−1化合物の両方では、GLP−1(7−37)OHと同様に、12番はフェニルアラニンが占め、22番はグリシンが占めている。N末端にアミノ酸が付加されたGLP−1のアミノ酸1〜6は、GLP−1(1−37)OHの対応する位置のアミノ酸と同じであるか、またはその保存的置換であり得る。C末端にアミノ酸が付加されたGLP−1のアミノ酸38〜45は、グルカゴンまたはエキセンディン−4の対応する位置のアミノ酸と同じであるか、またはその保存的置換であり得る。

別の態様では、GLP−1活性を有する少なくとも1つのポリペプチドは、ヒト血清アルブミンに融合されたヒトGLP−1の少なくとも1つの断片および/または変異体を含んでなる。別の態様では、GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体は、GLP−1(7−36(A8G))を含んでなる。GLP−1の少なくとも1つの断片および変異体は、ヒト血清アルブミンに遺伝子学的に融合されている。別の態様では、本発明の組換えポリペプチドは、ヒト血清アルブミンに直列に遺伝子学的に融合された少なくとも2つのGLP−1(7−36(A8G))を含んでなる。これら2つのGLP−1(7−36(A8G))は、ヒト血清アルブミンのN末端に遺伝子学的に融合されている。場合によっては、組換えポリペプチドは、配列番号1を含んでなる。

本発明の一実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号1に示されるポリペプチドと99%の配列同一性を有するポリペプチドまたはC末端および/またはN末端で末端切断されている配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含んでなる。一態様において、組換えポリペプチドはGLP−1活性を有する。一態様において、ポリペプチドは、配列番号1に比べてN末端がアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個だけ末端切断されているか、または配列番号1と前配列にわたって99%の配列同一性を有するポリペプチドである。一態様において、組換えポリペプチドは、配列番号1に比べてC末端がアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個だけ末端切断されているか、または配列番号1と前配列にわたって99%の配列同一性を有するポリペプチドである。

さらに別の実施形態では、本発明の宿主細胞で発現される少なくとも1つの組換えポリペプチドは、下記:少なくとも1つの抗原結合タンパク質、少なくとも1つの単一可変ドメイン、および/または少なくとも1つのドメイン抗体のうちの1以上を含んでなる。少なくとも1つの抗原結合ドメインを含んでなるポリペプチドはまた、少なくとも1つのポリペプチドおよび/またはペプチド受容体アゴニストおよび/またはアンタゴニストも含んでなり得る。場合によっては、ポリペプチドアゴニストは、GLP−1受容体アゴニストであり得る。当技術分野で理解されているように、2つ以上の組換えポリペプチドが同じ細胞で発現されてもよい。例として、GLP−1活性を有する組換えポリペプチドは、抗原結合タンパク質と同じ細胞で発現させることができる。GLP−1活性を有するポリペプチドは、発現に必要な核酸配列(the nucleic acid sequenced)に作動可能に連結されている、抗原結合タンパク質と同じポリヌクレオチドから発現させてよい。あるいは、例として、GLP−1活性を有するポリペプチドは、同じエピソームDNAまたはゲノムであるが発現に必要な異なるポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されているものから、または別のベクターに存在するDNA配列から、抗原結合タンパク質などの第2の組換えポリペプチドとは独立に発現させてもよい。

また、キラーエクスプレッション(KEX)プロテアーゼ(Kex2p)または少なくとも1つのKex2pの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリペプチドと、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPDIの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリペプチドと、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)または少なくとも1つのEROの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの異種核酸配列とを含んでなる、遺伝子改変宿主細胞も提供される。本発明の遺伝子改変宿主細胞は、組換えポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を含んでなる。本発明の別の態様では、遺伝子改変宿主細胞は、培養系で増殖される際に、同種であるが、キラーエクスプレッション(KEX)プロテアーゼKex2pまたは少なくとも1つのKEXの機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチド配列と、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(Pdi1)または少なくとも1つのPdi1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチと、小胞体オキシドレダクチン(Ero1)または少なくとも1つのEro1の機能活性を有するその断片および/もしくは変異体をコードする少なくとも1つの単離されたポリヌクレオチドを含まない遺伝子改変の宿主細胞に比べて、前記組換えポリペプチドの発現を増強する。場合によっては、遺伝子改変宿主細胞はS.セレビシエである。

別の態様では、本発明の遺伝子改変宿主細胞で発現される組換えポリペプチドは、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。

別の態様では、本発明の遺伝子改変宿主細胞を培養することを含んでなる、組換えポリペプチドの生産方法が提供される。他の態様では、本方法は、培養培地から前記組換えポリペプチドを回収することをさらに含んでなる。他の態様では、前記方法により作製された組換えポリペプチドが提供される。別の態様では、本発明の方法により作製された組換えポリペプチドは、配列番号1と99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。他の態様では、組換えポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含んでなる。別の態様では、組換えポリペプチドは、リーダー配列を含んでなる。一態様において、リーダー配列は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含んでなる改変型KEXリーダー配列である。当技術分野で理解されているように、宿主細胞および増殖条件は、宿主細胞によって産生された組換えタンパク質の最終産物に影響を与えることができる。例えば、翻訳後調節は、宿主細胞種および増殖条件によって達成することができる。限定されるものではないが、組換えタンパク質のグリコシル化およびメチル化を含め、これらの翻訳後調節は、限定されるものではないが、前記宿主細胞によって産生された組換えタンパク質のタンパク質折り畳みおよびタンパク質活性または効力などの側面を果たし得る。

本発明のさらに別の態様では、本発明の方法により作製された組換えポリペプチドを含んでなる医薬組成物が提供される。また、治療上有効な量の前記医薬組成物を投与することを含んでなる、それを必要とする患者の治療方法も提供される。場合によっては、患者は、I型糖尿病、II型糖尿病、グルコース不耐性、高血糖症、アルツハイマー病、肥満、心血管障害、うっ血性心不全、および網膜症から選択される疾患または病態を有する。

本明細書で使用する場合、「治療用ポリペプチド」とは、疾患の治療、予防または改善に有用な1以上の治療活性および/または生物活性、特に、少なくとも1つの生物活性を有するタンパク質、ポリペプチド、抗体、ペプチドまたはその断片もしくは変異体を意味する。本発明により包含される治療用ポリペプチドとしては、限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、および生物製剤が含まれる(ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドという用語は本明細書では互換的に使用される)。治療用ポリペプチドに持たせ得る生物活性の非包括的リストは、本明細書に記載のGLP−1活性、免疫応答の増強、血管新生の促進、血管新生の阻害、内分泌機能の調節、造血機能の調節、神経成長の刺激、免疫応答の増強、または免疫応答の阻害をいずれも含む。

本明細書で使用する場合、「患者」は、疾患、病態または障害を伴う動物、好ましくは、哺乳動物、最も好ましくは、ヒトである。

本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」とは、疾患、病態または障害の治療、予防または改善に有効な量を意味する。治療用ポリペプチドの異常な発現および/または活性に関連する疾患または障害の治療、阻害および予防に有効であると思われる本発明の医薬組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。加えて、場合によってin vitroアッセイを、最適用量範囲を特定する助けとするために使用してもよい。処方物に使用される正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重篤度によって異なり、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から外挿され得る。

本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、治療用ポリペプチドと薬学上許容される担体とを含んでなる。特定の実施形態では、用語「薬学上許容される」とは、動物、より詳しくはヒトにおける使用に関して、連邦政府の規制当局もしくは州政府によって承認されているか、または米国薬局方またはその他の一般的に認知されている薬局方に挙げられていることを意味する。用語「担体」とは、治療薬がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような医薬担体は、水および油類(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源のものを含む)、例えば、落花生油大豆油、鉱油、ゴマ油などの無菌液体であり得る。水は、医薬組成物が静脈投与される場合に好ましい担体である。生理食塩水およびデキストロースおよびグリセロール水溶液も液体担体として、特に注射溶液に使用可能である。好適な製薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが含まれる。本組成物は、所望により、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤を含有することができる。これらの組成物は溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性処方物などの形態を採ってよい。本組成物は、従来の結合剤および担体、例えば、トリグリセリドとともに坐剤として処方することができる。経口処方物は、製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含み得る。好適な医薬担体の例は、E. W. Martinにより"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。このような組成物は、好ましくは精製された形態の、治療上有効な量の化合物または治療用ポリペプチドを、患者への適正な投与のための形態を与えるのに好適な量の担体とともに含有する。前記処方物は投与様式に適合するべきである。

当技術分野で理解されているように、「培養系で増殖させる」およびその文法的変形は、栄養培地に宿主細胞を播種し、その細胞培養物を一般に特定の宿主細胞の増殖に最適または標準的な条件下でインキュベートして細胞を増殖および/または分裂させることを意味する。当技術分野で理解されているように、培養宿主細胞により産生される1以上の酵素の酵素活性に、その培養物の増殖条件によって影響を与えることができる。例えば、培養宿主細胞により産生されたプロテアーゼのタンパク質分解活性は、下記の条件:pH、溶存酸素、温度、浸透圧、1以上の培地成分、特定のプロテアーゼ阻害剤、増殖時間および/または増殖速度、細胞濃度、培養期間、および/またはグルコース供給速度(例えば、流加)のうち1以上を変更することによって低下させることができる。複合タンパク質加水分解物の培養物への添加は、タンパク質分解の阻害に特に効果的であり得る。さらに、これらの条件を、効果を最大限にするように、培養中の1以上の特定の時点で変更してもよい。同様に、培養系で産生されたタンパク質のグリコシル化にも、類似の要因によって影響を与えることができる。従って、培養系でのタンパク質分解活性またはグリコシル化活性などの、宿主細胞の酵素活性を低減または増強するための増殖条件は、上記に挙げた限定されない要因の1以上を調節することによって最適化することができる。

また、当技術分野で理解されているように、宿主細胞における異種タンパク質および/または組換えタンパク質の生産は、上記に示す同じ要因の多くを制御することによって増大させることができる。加えて、限定されるものではないが、増殖培地へのラパマイシンの添加を含む、ベクターコピー数を増やす因子の添加も、生産を増大させ得る。生産を増大させ得る他の因子としては、限定されるものではないが、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)などの1以上のシャペロンタンパク質の共発現が含まれる。さらに、酸化的代謝に対する酸素の利用度を高め、従って、ポリペプチド生産を高めるために、宿主細胞においてヘモグロビン(HB)を少なくとも1つの異種ポリペプチドとともに共発現させることができる。

別の態様では、本発明の遺伝子改変宿主細胞から発現された組換えポリペプチドは、リーダー配列を含んでなる。いくつかの態様では、リーダー配列は、KEX2リーダー配列または改変型KEX2リーダー配列である。

野生型KEXリーダー配列は、以下に配列番号9として示される。

場合によっては、配列番号10として示される改変型KEXリーダー配列が使用される。

場合によっては、KEXリーダー配列は、配列番号9と配列全体にわたって90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を持ち得る。

生産中に宿主細胞から分泌される異種タンパク質または組換えタンパク質は、分泌を促進するリーダー配列を含んでなり得る。リーダー配列は、分泌、従って全体的な生産、および異種発現されたタンパク質の回収を改善するために改変してもよく、例えば、種々の分泌タンパク質由来の異なるリーダー配列を異種タンパク質に作動可能に連結し、発現の増強を評価してもよい。あるいは、所与のリーダー配列を、部位特異的突然変異誘発によるか、または改良されたリーダー配列変異体を同定するためのコンビナトリアルライブラリーアプローチの手段によって改変してもよい。2以上のリーダーペプチドに由来する領域を含んでなるキメラリーダー配列が異種タンパク質発現レベルを改善することが見出されることもある。

以下の実施例は、本発明の種々の非限定的態様を示す。

実施例1 S.KEX2、PDI1およびERO1を過剰発現するセレビシエ株 KEX2、PDI1およびERO1を過剰発現するS.セレビシエ(S. ceresiviae)株を、ノッティンガム、UKのDelta Biotechnology Ltd.(Delta)社で開発された酵母宿主発現系(S.セレビシエBXP10)を用いて構築した。BXP10は、ATCCから入手したs288c由来S.セレビシエAH22株に起源するものであった。BXP10の構築は、組換えヒト血清アルブミン(rHSA)分泌能を高め、かつ、望まない翻訳後修飾を低減するための、一連のランダム突然変異誘発と標的化された特異的遺伝子破壊を含んだ。

図1は、KEX2、PDI1およびERO1を過剰発現する株としてのBXP10−KEX2−PDI1−ERO1の作出を示す。PGK1プロモーターに作動可能に連結されているKEX2−KanMX、PGK1プロモーターに作動可能に連結されているPDI−HphMX、またはPGK1プロモーターに作動可能に連結されているERO−BsdMXを含有する発現カセットを、BXP10のNTS2−2遺伝子座(rDNAリピートにおける非転写スペーサー領域)に順次組み込み、その結果として下記の株:BXP10−KEX2(KEX2過剰発現株)、BXP10−KEX2−PDI1(KEX2およびPDI1過剰発現株)およびBXP10−KEX2−PDI1−ERO1(KEX2、PDI1およびERO1過剰発現株)が作出された。

KEX2の発現カセットを構築するために、BXP10ゲノムDNAからKEX2 ORF、PGK1遺伝子プロモーター(PPGK1)およびADH1遺伝子転写終結配列(TADH1)をPCRにより個々に増幅し、その後、別のPCR反応(「ソーイング(sewing)」または「融合」PCR反応)を用いて組み立てた。組み立てたPPGK1−KEX2−TADH1 断片をpRS314KanMXにクローニングしてpRS314KanMXpPGK1−KEX2を作出した。このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたDNA断片をエレクトロポレーションによりBXP10宿主株に形質転換し、G418を含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのG418耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

PDI1の発現カセットを担持するプラスミドpRS314HphMXpPGK1−PDI1を、pRS314KanMXpPGK1−KEX2のKEX2 ORFおよびKanMX領域を、PCR増幅したPDI1 ORFおよびハイグロマイシンB耐性マーカーHphMXで置換することにより構築した。このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたDNA断片をエレクトロポレーションによりBXP10−KEX2宿主株に形質転換し、ハイグロマイシンBを含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのハイグロマイシンB耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

PCRによってBXP10のゲノムDNAからERO1 ORFを増幅した後、pRS314pPGK1BsdMXにさらにクローニングし、pRS314BsdMXpPGK1−ERO1を作出した。このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたDNA断片をエレクトロポレーションによりBXP10−KEX2−PDI1宿主株に形質転換し、ブラストサイジンSを含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのブラストサイジン耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

図2は、BXP10のNTS2−2遺伝子座へのKEX2およびPDI1の組込みによるBXP10−KEX2およびBXP10−KEX2−PDI1株の作出を確認するサザンブロット分析を示す。KEX2に関しては、2.6kbのバンドが内因性KEX2コピーに相当し、1.6kbのバンドが組込み成功コピーに相当する。PDI1に関しては、1.3kbのバンドが内因性PDI1コピーに相当し、1.7kbのバンドが組込み成功コピーに相当する。

図3は、BXP10−KEX2−PDI1クローンにおけるPDI1およびKEX2の過剰発現を示す、PDI1およびKEX2のウエスタンブロット分析を示す。5つのBXP10−KEX2−PDI1クローンのうち、クローン#2は、PDI1およびKEX2の両方の最高発現を示し、従って、BXP10−KEX2−PDI1−ERO1を構築するための宿主株として選択した。

次に、宿主株を、2コピーのヒトグルカゴン様ペプチド1(GLP−1、断片7−36(A8G))および組換えヒトアルブミン(rHA)からなる組換え融合タンパク質(「pCID3610タンパク質」)を含むpCID3610プラスミドで形質転換した。各GLP−1配列は、タンパク質分解に対する耐性を付与するために8番の位置の天然アラニンをグリシンで置換して改変されていた。第2のGLP−1配列は、第1のGLP−1配列とrHAの間のペプチドスペーサーとして機能する。pCID3610タンパク質は、645個のアミノ酸からなる非グリコシル化タンパク質であり、72,970.4Daの分子量を有する。pCID3610は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第7,569,384号に詳細に記載されている。

pCID3610プラスミドは、pSAC35に基づく発現ベクターを用いてロックヴィル、MDのHuman Genome Sciencesにて構築された。pSAC35は、BXP10のロイシン栄養要求性を補足する選択マーカーとしてS.セレビシエのLEU2遺伝子を含む。pSAC35はまた、強力な酵母プロモーター(PRB1)、ユニークなクローニング部位(NotI)、および大腸菌でのクローニングおよび増幅を可能とする大腸菌プラスミドpUC9由来の配列も含む。加えて、pSAC35は、非組込み型(disintegrative)ベクターであり、ひと度、酵母に形質転換されると、pUC9由来配列が部位特異的組換えによって切り出される。この切り出しは、FLP認識標的(FRT)と、2ミクロンプラスミド由来酵母FLP(「flip」)リコンビナーゼの発現により達成される。pSAC35における他のセグメントとしては、D遺伝子のREP1およびREP2領域が含まれる。REP1およびREP2遺伝子は、プラスミドコピー数を調節する助けをし、また、細胞分裂中のプラスミド分配にも役割を果たす産物をコードする。D遺伝子の産物は、REP1およびREP2により引き起こされた抑制を軽減することによってFLP発現を増強する。pCID3610は、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされる米国特許第7,569,384号に詳細に記載されている。

オックスフォード大学、U.KのF.E. Baralle博士の研究室で、ヒトcDNAライブラリーからヒトアルブミン(HA)の全長cDNAが単離され、プラスミドpAT153ALBにクローニングされた。その後、pAT153ALBは、Delta社により、クローニングを容易にするための新規な制限部位をpSAC35に導入することにより改変された。

発現ベクタープラスミドpCID3610は、pSAC35から、次のように組み立てられたGLP−1−rHSA融合遺伝子の導入によって構築された。まず、リーダーペプチドと、成熟ペプチドの2番の位置におけるAからGへの一置換を有する成熟GLP−1変異体をコードする合成遺伝子を作製した。変異体GLP−1ペプチドを、酵母に最適なコドンを用いて逆翻訳し、オーバーラップするオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって直列コピーを合成した。この合成遺伝子を第2ラウンドのPCRで鋳型として用い、rHSA遺伝子の5’末端へのそのクローニングを可能とする5’および3’制限部位を付加した。最後に、シグナルペプチドコード配列をGLP−1構築物の5’末端に連結した。得られた断片をpSAC35のユニークなNotI部位に連結し、DH5αに形質転換し、発現ベクターpCID3610を得た。pCID3610のヌクレオチド配列を確認した。その後、プラスミドDNAのさらなる増幅および単離のためにpCID3610をDH5αに再び形質転換した。

pCID3610を発現するBXP10−KEX2−PDI1−ERO1株を構築するために、pCID3610をエレクトロポレーションによりBXP10−KEX2−PDI−ERO1に形質転換した後、細胞をESFM2アガロースプレートに播種し、これらのプレートを30℃(30C)で4日間インキュベートした後に、Leu+コロニーを選択した。12の形質転換体コロニーをさらにESFM2アガロースプレートに画線塗布して単一のクローンを得た。各画線塗布物から1コロニーを、24ディープウェル培養プレートを用い、スクリーニング用にESFM2培地に播種した。

振盪しながら3日間インキュベートした後に、12クローンの各培養物からの上清をSDS−PAGEで分析した。図4は、12の上清サンプルのSDS−PAGEを示す。次に、12クローンから4クローン(クローン#2、クローン#8、クローン#10およびクローン#12)をさらなる発酵試験のために選択した(選択されたクローンを図4に矢印で示す)。培養プレートの各ウェルからの培地の蒸発が異なることから、増殖の終了時の各培養物の最終用量、細胞培養物のOD測定値、およびSDS−PAGEゲル上のバンド強度を考慮して4つのクローンを選択した。

次に、これら4つの選択クローンを、発酵プログラムを用い、DASGIPミニバイオリアクターで実行し、得られた力価収率およびタンパク質品質を、KEX2、PDI1およびERO1を過剰発現しない宿主株であるpCID3610発現BXP10の場合と比較した。図5は、発酵の実行で産生されたタンパク質の力価収率およびタンパク質品質の分析を示す。タンパク質品質は、非効率なリーダー配列切断のためにN末端に余分な6個のアミノ酸(6−AA)を有するタンパク質産物のパーセンテージによって評価する。クローン#2およびクローン#8は、同じ発酵条件下で最大1.6g/LのpCID3610タンパク質を生成したに過ぎない(pCID3610発現BXP10のデータは図5に示されていない)pCID3610発現BXP10に比べて、pCID3610タンパク質濃度に有意な増大を示した。さらに、総てのクローンにおける6−AAレベル(余分な6−AAを有するタンパク質産物は1%未満)は、余分な6−AAを有するタンパク質産物が4〜7%であった(pCID3610発現BXP10のデータは図5に示されていない)pCID3610タンパク質を発現するBXP10の6−AAレベルに比べて有意に低下していた。これらの結果は、KEX2、PDI1およびERO1の過剰発現が、より良い品質のpCID3610タンパク質をより多く産生するように宿主株(BXP10)を大幅に改良したことを示唆する。

クローン#2およびクローン#8の力価収率および6−AAレベルは匹敵するものであったが、クローン#8は発酵の実行で若干良好な結果を示したので、これを主要クローンとして選択した。pCID3610の力価収率およびタンパク質品質の改善を確認するために、クローン#8を15Lファーメンターで実行した。4バッチの実行からの平均力価収率は2.5g/Lであり、これはpCID3610発現BXP10を用いた場合の力価収率の40〜50%増である。

BXP10−KEX2−PDI1−ERO1クローン#8の2つの別個の冷凍保存株を調製した。第1の冷凍保存株(「リサーチセルバンクバイアル」)は、3種類の抗生物質(G418、ハイグロマイシンおよびブラストサイジン)を総て含有した200mlのESFM2培地中でクローン#8を増殖させることにより調製した。細胞培養物が約3.0のOD600に達した際に、細胞を採取し、洗浄し、再懸濁させ、アリコートに分け、20%トレハロース冷凍保存株を作製した。

次に、リサーチセルバンクバイアルからの細胞を解凍し、ESFM2培地中、30℃および250rpmで増殖させた。培養物のOD600を測定することにより培養密度をモニタリングした。図6は、細胞の増殖曲線を示す。約OD600=2.54で、細胞を採取し、洗浄し、再懸濁させ、第2の冷凍保存株(「プレマスターセルバンク」)を調製した。図7は、プレマスターセルバンクからの細胞の増殖曲線を示す。

次に、BXP10−KEX2−PDI1−ERO1クローン#8の安定性を、in vitro細胞齢および15L生産試験により調べた。簡単に述べれば、プレマスターセルバンクからのクローン#8の細胞を7回の連続的振盪フラスコ工程に通した(これはおよそ51細胞世代に相当する)。その後、これらの細胞を15Lファーメンターに播種し、発酵プログラムを実施した。この発酵プロセスでさらに14世代が加えられた。上清の力価収率は5.3g/Lに達し、6−AAレベルは1.5%未満であった。このデータは、BXP10−KEX2−PDI1−ERO1クローン#8が約65世代後にpCID3610タンパク質を安定に産生していることを示した。

KEX2の発現カセットを構築するために、BXP10ゲノムDNAからPCRによりそれぞれ、PGK1遺伝子プロモーター(PPGK1)、KEX2 ORFおよびADH1遺伝子転写終結配列(TADH1)を個々に増幅し、その後、別のPCR反応(「ソーイング」または「融合」PCR反応)を用いて組み立てを行った。組み立てられたPPGK1−KEX2−TADH1断片をpRS314KanMXにクローニングし、pRS314KanMXpPGK1−KEX2を作製した。次に、このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたPCR断片をエレクトロポレーションによりBXP10宿主株に形質転換し、G418を含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのG418耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

PDI1 ORFをBXP10ゲノムDNAから増幅した。このDNA断片およびハイグロマイシンB耐性マーカーHphMXを用いて、pRS314KanMXpPGK1−KEX2中のKEX2 ORFおよびKanMX領域を置換し、プラスミドpRS314HphMXpPGK1−PDI1を得た。次に、このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたDNA断片をエレクトロポレーションによりBXP10−KEX2宿主株に形質転換し、ハイグロマイシンBを含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのハイグロマイシンB耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

同様に、ERO1 ORFをPCRによりBXP10のゲノムDNAから増幅した後、pRS314pPGK1BsdMXにさらにクローニングし、pRS314BsdMXpPGK1−ERO1を作製した。このプラスミドを最終ラウンドのPCRで鋳型として用い、NTS2−2組込み部位に相同な5’−および3’−フランキング配列(それぞれ105bpおよび101bp)を付加した。得られたDNA断片をエレクトロポレーションによりBXP10−KEX2−PDI1宿主株に形質転換し、ブラストサイジンSを含有するプレートに播種した。さらに、コロニーPCRにより、これらのブラストサイジン耐性クローンが、部位特異的組込みに関して陽性であることを確認した。

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