細胞発達を制御するための装置および方法

申请号 JP2015256450 申请日 2015-12-28 公开(公告)号 JP6363060B2 公开(公告)日 2018-07-25
申请人 ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー; 发明人 ダイセロート、カール; ストロー、アルブレクト; シュナイダー、エム、ブレット; エイラン、ラーグ、ディー.;
摘要
权利要求

生体外で胚性幹(ES)細胞の成長及び発達を選択的に制御する方法であって、 a)生物オプシンを発現するように遺伝子改変されたES細胞を含む組織培養マトリクス; 前記組織培養マトリクス中の細胞にパルス光を供与するように配置された光源;および 前記光源に動を供給して駆動させるパルス発生器を備え、 前記微生物オプシンがチャネルロドプシンであり、 前記組織培養マトリクスが多孔性隔膜を備え、当該多孔性隔膜はポリエチレンテレフタラートからなり、3μm〜7μmの径の孔を有する装置においてES細胞を培養する工程;及び、 b)前記光源を作動させて、前記光源からのパルス照射を前記ES細胞に向けることにより微生物オプシンを活性化し、それにより前記ES細胞の成長及び発達を選択的に制御する工程、を含む方法。前記組織培養マトリクスが多孔性隔膜を備え、当該多孔性隔膜は前記組織培養マトリクスからの細胞の移動を防止し、マトリクスの他の部分における凝集を防止するように配置される、請求項1に記載の方法。前記微生物オプシンがチャネルロドプシン−2である、請求項1に記載の方法。前記装置が、活動電位の表示器によって供給される検出光のための光検出器をさらに備える、請求項1に記載の方法。前記微生物オプシンが、細胞型に特異的なプロモータに作動可能に結合したヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1に記載の方法。前記微生物オプシンがニューロンに特異的なプロモータに作動可能に結合したヌクレオチド配列によってコードされる、請求項1に記載の方法。前記ES細胞が5日の期間刺激される、請求項1に記載の方法。

说明书全文

関連特許文献 本願は、2008年6月17日付で提出された「改変組織中における細胞相互作用の制御」という名称の米国仮特許出願第61/132,163号および2008年8月29日付で提出された「自動化された時間的に正確な光遺伝学的刺激を用いた、胚性幹細胞分化の調節に関わる構成物、方法、および組成物」という名称の米国仮特許出願第61/093,086号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張する。基礎となるこれらの仮出願およびそれぞれの添付文書全体を参照により本明細書に取り込む。本特許文書は以下の基礎となる特許文献にも関し、これらの全体を参照により本明細書に取り込む:2006年7月24日付で提出された米国特許出願第11/459,636号(STFD.169PA)、2008年1月9日付で提出された国際特許出願第PCT/US2008/050628号(STFD.150PCT)、および2008年8月7日付で提出された米国特許出願第12/187,927(STFD.167PA)(例えば図1〜5に関する説明)。

本発明は、概して細胞および/または組織の成長および発達のための方法、デバイス、およびシステムに関する。

自然の状態で発達する組織は本来、多細胞型の性質をしている。移植される培養幹細胞は、かなりの部分が、成熟せずにまたは機能的な組織系中に組み込まれずに死滅する。培養細胞は、それらが自然の状態で共存する細胞のそばで発達させると、生存および機能的な組込みの確率が上昇する。多くの場合、生存細胞の数は、ニューロンと共にグリア細胞および内皮細胞または線維芽細胞を成長させることで改善され得る。通常、これは培養中および移植後の両方に当てはまる。

生物体と分離して組織および/または細胞などを成長させる組織培養は、通常、ブロスまたは寒天等の液体、半固体、または固体の成長培地を用いることで促進される。例えば再生医療において固体臓器として移植することが意図される場合、好適なマトリックスが通常要求される。適切な場所に適切な未熟細胞(例えば幹細胞)が存在しても、機能性を有し且つ/または移植可能である組織への発達は自然発生的には起こらない。具体的に、神経組織、例えば脳の場合、環境中の種々の細胞の活性によって、軸索および樹状突起の出芽が形成される。このように、局所的な細胞環境が神経発生の制御に重要である。経験的に、科学者は、海馬細胞の共培養が海馬における神経発生を促進することおよび神経発生を生じさせない環境中で成長した成熟NPC(ニューロン前駆細胞)は興奮に反応することができないことを実験により示してきた。これらの細胞は、例えば化学的シグナル、分子的シグナル、および電気的シグナルを介して、互いに連絡する。しばしば化学的または分子的なシグナル伝達は電気的シグナル伝達によって引き起こされ、例えば内分泌細胞は電気刺激された時に成長因子を放出する。このような場合、活性依存的な競争が起こることが多い。例えば、脳の一領域のより活性の高いニューロンは、より活性の低いニューロンが占める領域にまで広がって成長する。逆に、発達中に脳領域中の活性を制限すると機能的欠陥が生じる。電気的シグナル伝達および分子的シグナル伝達は、培養中の細胞が環境中で相互の挙動を制御するための最も一般的なアプローチである。

電気的シグナル伝達は、神経細胞発達の重要な部分であり、内分泌細胞および筋肉細胞などの多くのその他の細胞型の細胞にとっても重要な部分である。ニューロン前駆細胞(NPC)に電気パルスを与えると、NPCは一般的な球様構造から成熟ニューロンへと発達し、それに従い軸索および樹状突起を出芽し、他のニューロンとの電気的結合を確立する。

化学的/分子的シグナル伝達はしばしば、電気的シグナル伝達により引き起こされる。例えば、成体の神経発生およびNPCの成熟は、興奮性の刺激により大幅に強化され、Cav1.2/1.3チャネルおよびNMDA受容体が関与する。これらのCa2+流入経路は増殖中のNPC上にあり、これによってNPCは興奮性刺激を直接感知して処理することができる。NPC中のCa2+シグナルは、神経発達を促進した遺伝子発現パターンを急速に誘導する。これにより、新しいニューロンのシナプスが活性な神経回路中に組み込まれる。別の例として、電気刺激された時に成長因子を放出する内分泌細胞が挙げられるが、これは、他の分子的シグナルまたは化学的シグナルによっても引き起こされ得る。神経成長因子(NGF)は、発達中のニューロンを囲む細胞、例えばグリア細胞によって分泌され、これはニューロンの発達および長期生存に重要である。神経成長因子(NGF)は、グリア細胞およびある種のニューロンにより分泌される小タンパク質であり、標的ニューロンの分化および生存を誘導する。NGFは、その高親和性受容体(TrkA)および低親和性受容体(LNGFR)に結合してそれらを活性化し、ニューロンの生存および分化を促進する。逆に、proNGF等のNGFを分子的に修飾することでアポトーシスを惹起することができる。脳由来神経栄養因子(BDNF)が、線維芽細胞、内皮細胞(例えば毛細血管内の内皮細胞)等の細胞から放出され、軸索および樹状突起の出芽などのニューロンの成長および発達を促進する働きをする。BDNFの発現が不足すると、ニューロンの発達が損なわれるだけでなく、毛細血管の発達および内皮細胞自体の生存も損なわれる。NGF、BDNF、およびニューロトロフィン3は、チロシンキナーゼ(trk)受容体trkA、trkB、およびtrkCを有するニューロンに結合する。血管内皮増殖因子(VEGF)−Dは、血管および/またはリンパ管上の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)2およびVEGFR3を認識および活性化する血管新生増殖因子のVEGFファミリーの一員である。例えば、ニューロピリン1(NRP−1)は、血管透過性因子/血管内皮増殖因子(VPF/VEGF)受容体の1つであり、正常な血管の発達に関わる。

しかし、電気的および化学的/分子的シグナル伝達には制限がある。例えば、電気刺激は、それが活性化する細胞型は不確かである。簡潔に述べると、所定の配置の電場は、影響を与える細胞型に関して比較的選択性が低い。電極は活性ニューロン、グリア、内分泌細胞、筋細胞の挙動、更には刺激領域内の骨の成長にまで無差別に影響を与える。その結果、細胞への電極の物理的近接が、影響を受けるかどうかに関する唯一の最も大きな決定要因となり得る。これらの制限のため、異種細胞で構成される組織中で特定のクラスの細胞に排他的に影響を与えることは一般的に不可能である。

細胞内分子シグナル伝達は、多くの場合細胞型特異的であるものの、必要な成長因子の透過にしばしば抵抗性である物理的にきつく密着した細胞培養環境中で、特に効率的な毛細血管の発達なしに、これを人工的に修飾することは容易でないことが多い。K+、BDNF、NGF、およびVEGFなどの化学的および分子的なシグナル伝達作用を有する物質の適切且つ/または理想的な分布は、これらの物質を本来的に産生する細胞を標的細胞に関して自然な空間的配置で用いることで最も良く達成され得る。分子的シグナル伝達はしばしば、供給源である細胞への電気シグナルによって引き起こされるため、そのようなシグナル伝達は環境内の電気的活性が非特異的であることの影響を受ける。

幹細胞(成体幹細胞または胚性幹細胞)を用いた培養神経線維の産生を成功させるためには多数の課題がある。これらの課題は、進化の中でずっと維持されている幹細胞成熟の順序およびその一生の初期にこれらの細胞配列間で生じる結合(この結合は細胞配列のその後の発達と共に維持されることもあり、維持されないこともある)に由来する問題を含む。培養繊維を長期間生存させるために、天然であれ人工的であれ、成長中の機能を強化する何らかの方法が必要であろう。

本実験で樹状突起および軸索の本来の発達が側面方向および/またはランダム方向に成長する傾向があることが示されているように、予測可能な方向での樹状突起および軸索の安定した出芽および成長を容易化するという目的に向かって努が続けられている。

複数の実施例および応用例中で本発明を例示する。その一部を以下に要約する。

ある観点では、本発明は、組織を最適な発達に向けるために、混合組織培養環境内で特定の細胞型の活性を個々および別個に制御する機序および方法を提供することに関する。

本発明のある態様は、軸索および樹状突起に固有の特性を用いて幼若ニューロンの発達制御を促進することに関する。具体例として、樹状突起および軸索は、異なる関連する化学誘引物質、時間的特性(軸索は樹状突起より速く成長する)、物理的サイズ(軸索は樹状突起より長く薄い)を有する。これらの特性は、幼若ニューロンの発達を形成するための手段を提供するであろう。

例示的な一実施形態によれば、生物学的な組織または細胞培養において細胞相互作用を促進する方法は、複数の細胞型の中から選択された型の幹細胞の制御可能な活性化をもたらす。この方法は、選択された型の幹細胞中で微生物オプシンを発現させることで、選択された型の幹細胞を含む組織または細胞培養の領域に微生物オプシンを導入することを含む。その後、光源を幹細胞の近くに設置し、他の型の細胞の成長および発達とは独立した様式で幹細胞の成長および発達を選択的に制御するために、光源を用いて、光を制御可能に作動させ、光源からのパルス照射を選択された型の幹細胞に向ける。

また、本発明によれば、特定の一実施形態は、混合細胞培養環境内における特定の細胞型との個別的な連絡を提供することに関し、これによって、組織発生において個々の型および個々の役割をもつ細胞を管理することができる。これによって、これらの選択された細胞型のそれぞれを、手動またはコンピュータシステムで決定した通りに、要求に応じてそれらの特定の産物を放出するように誘導することができる。このアプローチの目的は、培養または操作されている組織の事実上全ての面を最大限に制御できるようにすることである。

別の特定の実施形態では、所定の空間的・幾何的配置内における組織の人工的成長を提供する。例えば、システムの一方の末端で検知したシグナルを伝播し、対応するシグナルを他方の末端に出力する、電気的に相互に結合されたニューロンの長軸方向に延びたシステム。人工的に産生された神経線維は、例えば損傷を受けたヒトの脳または脊髄中で、ダメージを受けた神経線維の代わりとして働くことができるであろう。

別の特定の実施形態は、脳の一部の内部ペーシング方法に関し、例えば脳の機能低下部分または機能亢進部分が内部ペーシングされ、一方で脳の別の部分を制御部として(例えば、DBSパルス発生器等の外部制御源の代わりとして)用いる。

更に別の特定の実施形態は、所定の移動範囲内に幹細胞細胞体を囲い込んで保持することに関する。本発明のこの態様は、幹細胞、特に胚性幹細胞がその移植場所から逃れることができ、その結果、それら自身が身体内で癌性腫瘍となり得ることを想定している。

応用例としては、組織培養、および生体内に移植された細胞領域に与えられる連続的な栄養刺激が含まれる。本明細書は、特定の標的細胞型に特別な連絡チャネルを与える光遺伝学的アプローチの応用を詳説する。非標的細胞型は、この特定の波長の光の影響は受けないが、異なる波長またはシグナルに対する感受性を付与されてもよい。これに係る実施形態は特に、脊髄または脳の損傷修復に適した神経組織発達の制御に関する。しかし、発達中の組織内の異なる細胞型を独立に制御する同じ一般的原理は、培養中のまたは生体内に移植された心臓、肝臓、膵臓、腎臓、骨、および身体のその他の組織にも適用される。

本特許にかかる発明の別の態様は、胚性幹細胞への微生物オプシンの使用および導入、並びに迅速な光学要素およびイオン流の光遺伝学的制御を利用して胚性幹細胞分化を非侵襲的に調節するための自動化された新規なシステムを用いる幹細胞工学用途向けの光遺伝学的技術の開発に関する。

更に別の実施形態によれば、本発明は、脳内移植後に、ニューロンを機能化して宿主と一体化させるCNS(中枢神経系)疾患/行動の治療(例えばパーキンソン病、脳卒中、および脊髄損傷に適用可能)に関する。この目的のために、本発明は、分化細胞を生成し、本来の神経回路中に組み込み、その後、光で選択的に制御する、CNS疾患/行動を治療するための幹細胞療法に関する。

本発明の上記した概要は、本発明の説明した各実施形態または全ての実施例を記載することを意図したものではない。添付の図面および以下の詳細な説明で、これらの実施形態を更に具体的に例示する。

以下に記載する本発明の種々の実施形態の詳細な説明を添付の図面と一緒に考慮することで、本発明が更に深く理解されるであろう。

本発明の一実施形態に係る、選択的活性化(例えば刺激または抑制)およびその活性検出のための、組織の成長、発達、活性、および維持中に協同して機能する複数のクラスの細胞型を含むシステムを示す図である。

本発明の一実施形態に係る、生物学的構成要素および人工的構成要素の仕組、並びに組織培養をマルチチャネルで刺激するための刺激手段を示す図である。

本発明に係る組織サンプルを培養するためのシステムを示す図である。

本発明に係る、1つの細胞に複数の形質導入を用い、二次的に影響を受ける第2の細胞型の活性を介した活性フィードバックを示すシステムを示す図である。

本発明に係る、培養中または移植後の組織発達を管理するのに適したマルチチャネル刺激およびモニタリングシステムを示す図である。

本発明に係る、発達を促進する、生きた生物中への培養組織の生体内移植および組込みを示す模式図である。

本発明に係る実施例の結果を示す画像およびチャートである。

本発明に係る実施例の結果を示す画像およびチャートである。

本発明に係る実施例の結果を示す画像およびチャートである。

本発明に係る実施例の結果を示す画像およびチャートである。

本発明に係る実施例の結果を示す画像およびチャートである。

本発明は、種々の修正および変更形態が可能であり、その詳細を例として図面中に示し、詳細に記載する。しかし、それらは記載した特定の実施形態に本発明を限定することを意図するものと理解されるべきではない。逆に、本発明の精神および範囲に含まれる全ての修正、均等物、および変更が本発明に含まれることが意図される。

本発明は、生物学的組織中の胚性幹細胞等の幹細胞の培養およびその成長促進のための方法および装置に関する。本発明は、神経ネットワーク中における幹細胞の成長を扱う仕組および方法における使用に特に適していることが見出された。本発明はそのような生物学的環境に必ずしも限定される必要はないが、これを用いた種々の例の説明を介して、本発明の種々の態様が理解されよう。

本発明の例示的な一実施形態によれば、生物学的な組織または細胞培養中における細胞相互作用を促進するための方法により、組織または細胞培養中に存在してもしなくてもよい複数の細胞型の中から選択された型の幹細胞が制御可能に活性化される。この方法は、選択された型の幹細胞中で微生物オプシンを発現させることで、選択された型の幹細胞を含む組織または細胞培養の領域に微生物オプシンを導入することを含む。その後、光源を幹細胞の近くに置き、他の型の細胞の成長および発達とは独立した様式で幹細胞の成長および発達を選択的に制御するために、この光源を用いて、制御可能に光を作動させて光源からの照射パルスを選択された型の幹細胞に向ける。

図1は、組織の成長、発達、活動、および維持中に協同して機能する複数のクラスの細胞型を示す。これらの細胞型は、例えばカラーLEDおよび選択的カラーフィルタを付けたフォトダイオードのアレイを用いて、選択的に刺激または抑制、およびその活性の検出がなされ得る。各LEDおよびフォトダイオードは、コンピュータに接続された別個のチャネルで制御される。コンピュータコントローラ100はマルチチャネルドライバ101を介して出入力を送受信し、マルチチャネルドライバ101は、マルチチャネルケーブル150を介して連結されたトランスデューサ(LED187、177、および157並びにフォトダイオード167および147)を介して各細胞と連絡する。LED187は、ChR2を介してグリア細胞185のイオンチャネルを調節する光186を放射する。これにより、神経栄養性化学物質184(例えばBDNF)が放出され、これがニューロン120に受容され、その結果、ニューロン120の成長および発達が誘導される。ニューロン120は、成長すると、血管内皮増殖因子(VEGF)等の栄養性化学物質を放出し、これは毛細血管145に受容され、毛細血管145が一部を形成しているネットワークの成長を促進する。LED177は、ニューロン175のイオンチャネルを調節する光176を放射する。バンドフィルタを備えたフォトダイオード167が、活動電位164に反応してニューロン165から放出される指示薬(電圧色素等)により放射される波長の光166を受信する。LED157は、線維芽細胞155のイオンチャネルを調節する波長の光156を放射する。バンドフィルタを備えたフォトダイオード147は、指示薬により放射される波長の光146、例えばFura−2またはRH1691により放射される特有な波長の光を受信する。ニューロン120は軸索122を有し、軸索122はシナプス129を介して、軸索175を有する第2のニューロン165と連絡する。ニューロン120は、グリア細胞185から代謝支援を受ける。グリア細胞185は、毛細血管145に接するエンドフィート186から栄養を引き出し、エンドフィート187を介してニューロン細胞120に栄養を届ける。ミクログリア140(代表的なサンプルを示す。)は全体に分散されている。増殖中のNPC上にはCa2+流入経路があるので、NPCは興奮刺激を直接感知および処理することができる。NPC中のCa2+シグナルは、神経発達が促進された遺伝子発現パターンを急速に誘導する。これにより、活動する神経回路に新しいニューロンのシナプスが組み込まれる。別の例として、電気刺激された時に成長因子を放出する内分泌細胞が挙げられるが、これは他の分子的シグナルまたは化学的シグナルによっても引き起こされ得る。発達中のニューロンを囲む細胞、例えばグリア細胞によって神経成長因子(NGF)が分泌され、これはニューロンの発達および長期間の生存に重要である。神経成長因子(NGF)はグリア細胞および一部のニューロンによって分泌される小タンパク質であり、標的ニューロンの分化および生存を誘導する。NGFは、その高親和性受容体(TrkA)および低親和性受容体(LNGFR)に結合してそれらを活性化し、ニューロンの生存および分化を促進する。逆に、proNGF等のNGFを分子的に修飾することでアポトーシスを惹起することができる。脳由来神経栄養因子(BDNF)が、線維芽細胞、内皮細胞(例えば毛細血管内の内皮細胞など)等の細胞から放出され、軸索および樹状突起の出芽などのニューロンの成長および発達を促進する働きをする。BDNFの発現が不足すると、ニューロンの発達が損なわれるだけでなく、毛細血管の発達および内皮細胞自体の生存も損なわれる。NGF、BDNF、およびニューロトロフィン3は、チロシンキナーゼ(trk)受容体trkA、trkB、およびtrkCを有するニューロンに結合する。血管内皮増殖因子(VEGF)−Dは、血管および/またはリンパ管上の血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)2およびVEGFR3を認識および活性化する、血管新生増殖因子のVEGFファミリーの一員である。例えば、ニューロピリン1(NRP−1)は、血管透過性因子/血管内皮増殖因子(VPF/VEGF)受容体の1つであり、正常な血管の発達に関わる。光遺伝学的方法は、BDNF、NGF、GDNF、VEGF等の化合物の放出を引き起こすために用いることができる。

Gタンパク質の機能の1つは、細胞に刺激が与えられてからその細胞が反応するまでのプロセスを仲介することであり、例えば、ニューロンに与えられる電気的スパイクのタイミングは、Gタンパク質の活性に応じて、興奮性シナプス後電位の発生に変換されることもあり、されないこともある。Gタンパク質は種々の下流の介在物質を用いてその役割を果たすことができる。BDNF、NGF、GDNF、VEGF等の因子が放出されるように、(光刺激または薬理学的刺激によって)Gx、Gq等のGタンパク質を誘導することができる。Gタンパク質の刺激は細胞型特異的に(例えば、基礎となる仮特許出願文書の1または複数に記載されているか、Airan R.D., Thompson K.R., Fenno L.E., Bernstein H., Deisseroth K., Temporally Precise in vivo Control of Intracellular Signaling, Nature, 2009 Apr 23, 458(7241):1025-9, Epub 2009 Mar 18に記載されているように、細胞型特異的な遺伝子ターゲティングおよび光遺伝学的刺激方法を用いる)。これがなされた場合、そのような因子に対する細胞応答レベルの調節および制御は、組織培養、神経回路、動物、または患者内の、選択された細胞型にだけ適用され、その他の隣接する集団には適用されない。Gタンパク質は、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、バソプレシン、オキシトシン、並びにその他の神経伝達物質およびホルモンの放出制御にも用いることができる。Gタンパク質活性の制御は、それにより細胞分化の制御を可能にし、所定の時間に神経回路がオンまたはオフにされる。

ネットワーク内の細胞活性レベルを外部で読み取る方法は当該技術分野で公知である。Knopfel et al., Optical probing of neuronal circuit dynamics: genetically encoded versus classical fluorescent sensors, Trends Neurosci. 2006 Mar 29, 3:160-6に記載されているように、そのような方法には、Fura−2、オレゴングリーン488BAPTA−1、X−Rhod−5F等の非タンパク質性カルシウムセンサー;イエローカメレオン3.6、G−CaMP2、Camgaroo−2、TN−L15等の遺伝的にコードされたカルシウムセンサー;ジ−4−ANEPPS、JPW3028等の非タンパク質性電位センサー;並びにhVOS等のハイブリッド電位センサー;FlaSh、SPARC、VSFP1等の遺伝的にコードされたセンサーの使用などがある。更に、当該技術分野で公知の手段により、RH−155等の吸収に基づくカルシウム流測定を利用してもよい。

蛍光色素に連結した抗体を用いた、細胞産物およびそれらを発現する細胞亜集団の発現の読取り値を得る方法。例えば、細胞発達の発達段階を正確に計測するために、ネスチン染色を用いることができる(例えば基礎となる米国仮特許出願第61/093,086号参照)。

更に、自動化された画像解析用のソフトウェアおよびシステムを用いて、発達中の細胞のサイズおよび分化の形態の程度の両方を評価し、読み取ることができる。一例として、画像をベースにした細胞動態の解析および画像をベースにした細胞の局在または表現型のスクリーニングを実施する、Open Microscopy Environment(www.openmicroscopy.org)のPERLに基づくOMEサーバプロジェクトに構築された顕微鏡検査システムが挙げられる。ソフトウェアによる読取りの別の例は、BD IPLab Advanced Image Analysis Software(メリーランド州ロックビルのBDバイオサイエンス社製)によるものである。細胞活性に関する読取りを行うその他の方法は当該技術分野で公知であり、分光測定法(吸収および透過率)、機能的磁気共鳴画像法(BOLD効果の利用等)、および陽電子放射断層撮影法が含まれる。細胞代謝活性の読取りも、二酸化炭素等の気体の存在に対して反応する電子的な化学物質「探知機(sniffer)」によって得ることができる。

図2aは、生物学的構成要素と人工的構成要素の仕組および改変組織培養マトリックス内の組織培養をマルチチャネルで刺激するための刺激手段を示す。パルス発生器201は、LED225およびLED226に動力(power)を供給し、これらのLEDはそれぞれ異なるスペクトルおよびパラメータを発光し、一方で電源224およびアース223は、必要な電流フローを与える。例えば、LED225は青色光を50Hzで放射し、LED226は黄色光を100Hzで放射する。図1に示す電子部は図解のために単純化されている。実際には、別個のチャネルを実現するために別個に作動する複数のパルス発生器が用いられ、以降の図に示すように、これらのチャネルはシステムに入る読取りデータに応じて独立して作動することができる。ニューロン前駆細胞(NPC、神経幹細胞)205、グリア前駆細胞(GPC、グリア幹細胞)206、および血管前駆細胞(VPC、血管幹細胞)207を細胞成長培地208に添加する。全てが封入用多孔性膜216内に維持され、多孔性膜210に接触し、取り付けられた多孔性膜204によって封がされる。膜細孔210を有する多孔性隔膜209は、改変マトリックスの外に細胞が移動するのを阻止する役目を果たし、改変マトリックスのその他の部分における凝集を防ぐ。多孔性膜209は、ポリエチレンテレフタラート多孔性膜等の材料から構成されていてもよい。通常、細孔210の直径は約3〜7μである。このようなサイズの細孔210は通常、幹細胞本体(細胞体)が通過するには小さすぎるが、樹状突起および軸索が通過するには十分な大きさである。多孔性膜209は、軸索および樹状突起の成長前および成長中の細胞移動を制限する(上、下、上下、または周囲の)固着層(anchoring layer)として機能し、移植前に培養装置から細胞を取り出すための簡便な手段を提供する。改変マトリックスに隣接する別個の区画で、細胞成長培地212にNPC211が添加され、更なるグリア前駆細胞および血管前駆細胞207を添加することができる。多孔性隔膜213は、先の多孔性膜210同様、マトリックスのこの区画を封じ込め、移動または凝集を防ぐ役目をする。その後に続く区画で、細胞成長培地215にNPC214が再度添加され、上記で指定した更なる細胞型が再度添加される。膜細孔217を有する封入用多孔性膜216が上記改変マトリックス全体を封入する。封入用多孔性膜216は、ポリエチレンテレフタラート多孔性膜等の材料から構成されていてもよい。通常、細孔217の直径は約3〜7μである。このようなサイズの細孔217は通常、幹細胞本体(細胞体)が通過するには小さすぎるが、樹状突起および軸索が通過するには十分な大きさである。これらの細孔217はまた、生理学的ガス交換並びに発光膜216の外部に位置する微小血管構造およびグリア細胞からの栄養素の流入を許す。細胞および培地区画218、219、220、221は、上記の区分化された細胞群と同様であり、同様に移動または凝集を防ぐ役目を果たす。

当該技術分野で公知の特定の条件下で、種々の系列の種々の細胞が、種々の産物または成長因子のいずれかを産生するように誘導することができる。例えば、ニューロン自体が、BDNFを分泌することができ、また、内胚葉由来細胞が通常しているように胃ホルモン(血管作用性小腸ペプチド(VIP)またはソマトスタチン(somatastatin)等)も分泌することができる。別の実施形態では、神経幹細胞または多能性幹細胞または誘導多能性幹細胞(iPS)(Takahahi et al., Yu et al.)を、より分化した対応する細胞の代わりに用いることができ、一部は例えばニューロン系の発達経路を獲得し、他の一部は例えば血管系の発達経路を取り得る。

図2Bは、本発明に従って成長させた細胞または組織を用いて、脳または身体の2つの部分、それぞれ領域260および領域270が、どのようにして機能的に結合または再結合され得るかを一般的な様式で示している。脳の場合、領域260および270は、その間の本来の結合が例えば脳血管障害によって切断された2個の脳核を表すものであってもよい。脊髄損傷の場合、領域260および270はそれぞれ、脳および以前に麻痺した筋肉を表すすものであってもよい。末梢神経の場合、260および270はそれぞれ、脊髄ガングリオンおよび求心路遮断された手を表すものであってもよい。心筋症の場合、領域260および270はそれぞれ、迷走神経および新たに再生した心臓組織を表すものであってもよい。細胞265は、神経細胞、グリア細胞、および血管細胞、または前駆(幹)細胞であってもよく、多孔性ポリエチレンテレフタラート膜等の人工マトリックス材料266によってその場所に保持されている。パルス発生器280がLED285に動力を供給して、細胞265に照射される光が放射される。

本発明に基づき、図3aおよび3bは、多数の組織サンプルを効率的に培養するためのシステムを示す。そのより具体的な実施例で、図3aのシステムは、並行して多数の組織サンプルを効率的に培養するためのハイスループット多層システムである。図3aは、本発明に適したマルチチャネルエミッタ−検出器ユニットを示す。マルチチャネルエミッタ−検出器ユニット300は、LED315、フォトトランジスタ325、フォトトランジスタ335、LED345、およびLED355を備え、細胞310、320、330、340、および350を含む組織培養ウェル305の上に配置される。LED315は、X型細胞310に受容される特定の波長域の光316を照射する。LED345は、Y型細胞350に受容される特定の波長域の光346を照射する。LED355は、Z型細胞340に受容される特定の波長域の光356を照射する。フォトトランジスタ325は、V型細胞320が放射する特定の波長域の光326を受信する。フォトトランジスタ335は、W型細胞330が放射する特定の波長域の光336を受信する。一実施形態では、細胞型Vがニューロン、細胞型Wがアストロサイト、細胞型Xがアストロサイト、細胞型Yが線維芽細胞、細胞型Zが膵臓ベータ細胞であってもよい。本制御方法を適用できる細胞型の多様性を強調するために、細胞型は変数V、W、X、Y、Zを用いて示す。更に、これらの変数のいずれも、別の変数で表されるものと同じ型であってもよい。例えば、V型細胞がX型細胞と同一であってもよい。

図3bは、本発明に係る、並行して多数の組織サンプルを効率的に培養するためのハイスループットマルチウェルインキュベーション制御システムを示す。図3A中、環境制御チャンバー390は、培養プレートアクチュエータ380および培養プレート365を含み、培養プレートのそれぞれは組織培養ウェル370(代表例)を含む。マルチチャネルエミッタ/検出器ユニット360(代表例)は、図3aのマルチチャネル発光器/検出器ユニット300と同様のものであり、発光器/検出器360は並べて配置され、そのそれぞれがコンピュータ375によって制御される。各マルチチャネル発光器/検出器ユニット360は、刺激を送り、ウェル370中の発達組織から、刺激からのフィードバックを含む読取りを受信する。刺激の指令および読取り値はコンピュータ375によってそれぞれ送信および受信される。コンピュータ375により協同するヒータ391、加湿器/ガス混合制御装置392、およびサーモスタット393によって適切な環境条件が維持される。

図4は、1つの細胞への複数の形質導入の使用を示し、二次的に影響を受ける第2の細胞型の活性に仲介される活性フィードバックを示す。遺伝子402は、例えばChR2がニューロン中で光感受性を与えるように、宿主細胞に光感受性を付与する。遺伝子412は、細胞が特定の生理学的プロセスを受けた時に、細胞に光を放出させる。例えば、Knopfel et al. 2006に記載されている蛍光剤は、ニューロンが脱分極した時にニューロンに光を放出させる。その他の例としては、特定のホルモン(例えばBDNF)または神経伝達物質を受容した時に発光する物質、あるいは、VEGF等の特定の物質を分泌した時に光を放つ物質が含まれ得る。遺伝子プロモーター401は遺伝子402を活性化するように作用し、遺伝子プロモーター411は遺伝子412を活性化するように作用する。この活性化の結果405として、細胞420は、図3に示す電子制御シグナルによって決定されるLED420から放射される波長域の光421に生理的に反応する。この光への反応は、自己認識反応(self−recognized response)421(例えば、軸索および樹状突起の発達増大)および外的に認識できる反応(externally recognizable response)(425)、例えば血管内皮増殖因子(VEGF)の放出、または隣接する発達中の神経細胞における軸索および樹状突起の発達促進であってもよい。外的に認識できる反応425は、細胞430により受容されるものとして示しており、その結果、細胞430は自己認識反応(self−recognizable response)431および波長域441の光を発生する。この光放射は当然、別の形態の外的に認識できる反応(externally recognizable response)である。波長域441の光はフォトダイオード440に受信され、図3の説明で詳述したように電子的検出シグナルを発生する。

図5は、培養またはインビボ/移植における組織発達を管理するのに適したマルチチャネルの刺激・モニタリングシステムを示す。主要サブユニットは、コンピュータ502によって制御される、マルチチャネルパルス出力発生器504およびマルチチャネル検出シグナル受信機550である。マルチチャネルパルス出力発生器504は、装置の出力部に選択的にシグナルを送信する。シグナルがチャネル1の出力505からチャネル1のスイッチングトランジスタ510を介してパルスされると、動力501がチャネル1のLED512に与えられる。同様に、シグナルがチャネル2の出力506からチャネル2のスイッチングトランジスタ522を介してパルスされると、チャネル2のLED522が点灯される。同様に、シグナルがチャネル3の出力507からチャネル3のスイッチングトランジスタ530を介してパルスされると、チャネル3のLED532が点灯される。マルチチャネル検出シグナル入力550は、組織培養領域または移植領域をモニターするセンサーからシグナルを受信する。チャネル4の入力551は、チャネル4のフォトダイオード561が作動されたときにチャネル4のフォトダイオード561からのシグナルを受信する。同様に、チャネル5の入力552は、チャネル5のフォトダイオード562が作動されたときにチャネル5のフォトダイオード562からのシグナルを受信する。同様に、チャネル6の入力553は、チャネル6のフォトダイオード563が作動されたときにチャネル6のフォトダイオード563からのシグナルを受信する。上記回路機構は、動力501とアース508の間で作動する。コンピュータ502は、パルス出力発生器504を介して刺激シグナルを送信するための、およびマルチチャネルシグナル検出受信機550によって受信されたシグナルのパターンに応じてこれらのシグナルを修正するための知識ベース、アルゴリズム、またはプロトコールを含む。

図6は、本発明により発達を促進する、生きた生物への培養組織の生体内移植および組込みを模式的に示した図である。図中にこの目的のための2個の装置、2次元グリッドアレイ660(エミッタおよび検出器のアレイ)および3次元多面深部エミッタ・検出器プローブ650を示す。グリッドアレイ660はリード665を有し、プローブアレイ650はリード655を有する。インターベンションゾーン630は、組織の修復または発達が必要な指定部位である。インターベンション部位630は、脳600のダメージを受けているか他の点で不全な領域でもよく、そこに未成熟細胞が移植される。あるいは、元々これらの領域のものであるか天然の手段によってこれらの領域に輸送された細胞が、グリッドアレイ660またはプローブアレイ650からの刺激に反応性であってもよい。グリッドアレイ660は、脳600表面上の発達中の組織の挙動を管理するのに最適であり、一方、プローブアレイ650は、組織発達の表面下領域に到達するのに最適である。別の実施形態では、600は、身体の脳以外の別の臓器を代わりに表してもよい。両方のインターベンションゾーン630に示されているのは、I型細胞620および640(移植されたもの)並びにII型細胞625および645(移植されたものまたは天然のもの)である。別の実施形態では、個別的な連絡チャネルは、非天然の化学物質または分子性物質であり得る。例えば、ニューロンは、ニューロンに影響を与える機能を本来有しない任意の分子に感受性にされてよい。これは、例えばこの任意に選択された分子の受容体の遺伝子を挿入し、この受容体がその細胞型の所望の出力機能に機能的に連結されることで達成してもよい。この新規な形態では、この任意の分子が培養中に添加されるたびに細胞が反応する。ニューロンの例では、ニューロンは活動電位を発火するか、過分極される。環境中の他の型の細胞はいずれも選択された分子に感受性でないので、アストロサイトおよび内皮細胞は反応しない。

本発明の別の態様は、迅速な光学要素およびイオン流の光遺伝学的制御を利用して胚性幹細胞分化を非侵襲的に調節するための新規な自動化されたシステムを用いる幹細胞工学用途向けの光遺伝学的技術を開発するための、胚性幹細胞への微生物オプシンの使用および導入に関する。

実験に基づく一実施形態では、マウス胚性幹細胞(ESC)にChR2−YFPを安定的に形質導入し、FACSで精製した。得られたChR2−ESCに青色光パルスを照射すると、強い内向き電流が生じた。これらの標識ESCは、機能的成熟ニューロンへの分化能を保持しており、このことは、電位依存性ナトリウム流、活動電位、速い興奮性シナプス伝達の存在、および成熟ニューロンタンパク質の発現並びに形態により評価した。光刺激と自動化されたイメージングとを一緒に行う特別仕様のロボットステージおよび環境チャンバーで高速光スイッチングを用いて、ニューロン分化の最初の5日間ChR2−ESCを光刺激すると、神経マーカーの発現増大が誘導された。これらのデータは、幹細胞分化の非侵襲的制御から、移植細胞が組織およびネットワークの機能に特定の寄与を与えるかどうかの評価にまでにわたる、インビトロおよびインビボの両方における長期的且つ時間的に正確な胚性幹細胞の非侵襲的な光制御のためのChR2技術の潜在的用途を示している。

単独または本明細書に開示する別の態様との組合せで有用な本発明の別の態様として、光遺伝学的技術(例えば本明細書に記載したような)を用いて、特定の細胞型に選択的に影響を与え、標的細胞型に光感受性を付与し、その他の細胞型は光に非感受性のままにしておいてもよい。これにより、そのような系は種々の細胞型間で効果的に分化する。この点で、ChR2またはNpHR等のオプシンをコードする部分にすぐ隣接して細胞型特異的プロモーター遺伝子配列を有するウイルスベクターを作出することで、1つの細胞型の発達を他の細胞型から区別することができる。具体例として、GFAPプロモーターを用いてグリア細胞を、シナプシンIプロモーターでニューロン全般を、CaMK−2アルファプロモーターで興奮性ニューロンを、VGATプロモーターで抑制性ニューロンを、TIE−1プロモーターで内皮細胞を、ネスチンプロモーターで前駆細胞を含む幹細胞を標的にしてもよい。

実験結果

ChR2を用いたマウスESCの形質導入 幹細胞中における光遺伝学の可能性を評価するために、EFlaプロモーター制御下のレンチウイルスChR2−YFP−コンストラクトをマウスESCに形質導入し、YFP蛍光強度に基づいて上位5%を選んだ後、本発明者らは、得られたChR2−YFP−ESCの集団倍加時間および生存能力に非形質導入ESC(図示せず)と比べて有意な差がないことを見出し、共焦点顕微鏡により、ESC集団中において、強い均一な発現レベルのChR2−YFPが膜局在していることを実証した。ChR2−ESCは胚性幹細胞マーカーSSEA1およびOct4を発現し続け(データ示さず)、非形質導入対照細胞と同じように未分化状態を維持していた。電気生理学的には、ChR2−ESCは典型的な外向き整流性の受動的流れを示し、青色光(470nm、パルス時間500ms)を照射すると内向きの光電流が惹起された(図7a、7b)。定常状態の光電流はほとんど不活化を示さなかったのに対し、ピーク光電流は、以前にニューロン30で示されているのと同様な動態の不活化および回復を示した(図7c)。

ChR2等の微生物オプシンは、入射する青色フォトンを吸収してタンパク質のコンホメーション変化をゲート制御するために発色団(オールトランスレチナール)を必要とする。神経生物学向けの微生物オプシン開発中に、驚くべきことに、哺乳動物のニューロン(無脊椎動物のニューロンではない)には化学的補因子を何も添加しなくてもChR2が機能するのに十分な内因性レチノイドが含まれているようであるということが見出された。光遺伝学が幹細胞工学の有用なツールになる場合、インビトロおよびインビボの両方においてレチノイド等の外来性化学物質に依存する程度を幹細胞中で決定することが重要であろう。上記のインビトロ実験ではレチノイドは添加しなかった。外来性レチノイドに対する依存性または独立性を更にインビボで決定するために、5×105のChR2−YFP発現ESCを健常ラットの皮質に定位的に注入した。移植から1週間後、動物を屠殺し、急性スライス中で、YFP蛍光によって移植細胞を確認することができた。移植されたChR2−ESCが依然として光刺激に対する反応性を有しているかどうかを調べるため、パッチクランプ記録を行い、ピーク電流の典型的な不活化および定常状態電流の安定性を示す青色光照射後の内向き電流を明らかにした(図7d)。これらのデータを合わせると、光遺伝学的インターベンションが、哺乳動物ES細胞中で、効果的で許容性が高く、外来性の化学的補因子に依存しないものであり得ることが示される。

ChR2−ESCの分化 細胞内のCa2+は、幹細胞およびその子孫、特に神経の分化系列において、分化および生存の主要な仲介物質である。ChR2はそれ自体は、細胞中にCa2+をすぐに流入させる非選択的陽イオンチャネルである。光で惹起されるCa2+流入の更なる経路としては、ChR2により誘導される膜電位変化による電位依存性Ca2+チャネル(VGCC)の活性化が含まれる。特に、本発明者らは、マウスES細胞が、RTPCRおよび免疫反応性による評価で4種類の主要なVGCCを発現しており(図8a、8b)、細胞が神経細胞系列に分化して過分極膜電位が発生するとこの光活性化Ca2+流入の補助的機序がますます強力になり得ることを見出した。しかし、ChR2自体に公知のCa2+流は、幹細胞のプロセスを光制御できる可能性を示唆していた。

本発明者らは、レチノイン酸を用いた神経分化プロトコールを用いて、ChR2−ESCが神経系列に分化できることを初めて確認した(図8c)。分化8日目に、細胞の40±10%が神経系列マーカーネスチンを発現した。14日目までに、β−3−チューブリン陽性ESC由来未熟ニューロンの密なネットワークを検出することができ、その後、成熟ニューロン細胞骨格タンパク質MAP2および小胞グルタミン酸輸送体II(vGlutII)が発現した。28日目までに、得られたChR2−ESC由来ニューロンは、成熟ニューロンの形態、ナトリウム流、活動電位、および興奮性シナプス後電流を示し、これは興奮性シナプス伝達グルタミン酸受容体アンタゴニストCNQXおよびD−AP5によってブロックすることができた(図9a〜d)。

神経分化の光調節 ES細胞から代わりの組織を派生させる際の課題の1つは、細胞型を特定して表現型を固定(phenotype consolidation)するプロセスであり、したがってパターン形成および分化刺激にも、多くの日数がかかり、よって、光遺伝学的刺激が適用可能であるためには、光遺伝学的刺激は長期間送達可能である必要がある。この問題に適うシステムの設計には、幹細胞分化に必要なシグナル伝達イベントの正確な組合せおよびタイミングについての知見が限定的であるため、研究室でセルライン、条件、および「分化空間」の迅速な光学的マッピングを可能にするには原則的にマルチウェルの形態が望ましいことを考慮することも重要である。そこで、本発明者らは、複数の目的領域(ROI)に正確に再度アクセスし、規定したパターンで長期間光刺激するように設計された、自動マルチウェル光遺伝学的刺激アプローチを開発した(図10a)。

マルチウェルプレート中のROIは、カスタムGUI中でユーザ定義され、ロボットステージによって素早く再現可能にアクセスされるように、それらの位置を保存した(図10a)。刺激パラメータ(興奮刺激用フィルタの波長、光スイッチパルス期間、および興奮刺激の頻度/デューティサイクル)は、顕微鏡用ステージの3つの空間次元を制御し且つミリ秒未満の精度で光を送達するための回転検流計を用いたDG−4光スイッチの作動を制御するソフトウェアをベースにした機器によって構築されたパラメータに従って設定した(図10a)。顕微鏡自体は、気候制御されたプレキシガラス製チャンバーに囲まれており、チャンバー中では、温度およびCO2レベルの両方が厳密に制御されており、光刺激と並行して時間的に正確なイメージングを行うことができる(図10a)。胚性幹細胞を、標準的なインキュベータ中ではなくこの環境中で何週間にもわたり培養および光刺激することで、本発明者らは、制御された再現可能な方法で胚性幹細胞の分化に対する光遺伝学的刺激の影響を研究することができた。

典型的な実験では、ESCを、100,000細胞/mlの密度および1ml/ウェルで24ウェルプレートに播種した。マルチウェルプレート方式の利点を直接利用するために、特定のウェルに未処理ESCを播種し、別のウェルにChR2−YFP ESCを播種した。更に、特定のウェルが光刺激を受けるようにプログラムした。最後に、様々な組合せで、グループ内の異なるウェルに異なる濃度の分化因子(例えば、0、1、または2.5μMの神経系列因子レチノイン酸)を加えた。このようにすることで、装置または照射に関連する非特異的影響を制御しながら分化空間を効率的にマッピングすることができる。10倍の対物レンズを用いて60分毎に送達される青色光(470nm、15Hz、10秒)で5日間細胞を刺激した。8時間ごとのコマ撮り撮影を用いて細胞の生存および形態をモニターし(図10b)、また、これにより、同じROIに正確に再度アクセスする能力について、自動化された装置の精度および正確さも実証された。

ESC分化に対する作用の速い光刺激の影響を確認するために、刺激(図8c)完了後に細胞を同時にアッセイした。神経マーカーネスチンの免疫染色後に共焦点分析により蛍光ヒストグラムを作成し、DAPIを用いた細胞核のイメージングと共にこれを用い、神経系列の分化を定量した。図11aおよび11bは、1つのROIの2つの典型的な共焦点Zスタックの3D投射を示し、DAPI(青)およびネスチン(赤)の両方の蛍光が示されている。光刺激された細胞は一貫して、ネスチンに対する免疫反応性が非刺激細胞(図11a)よりも高く(図11b)、一方、興味深いことに、レチノイン酸(RA)非存在下では光刺激は影響を与えなかった(図11c)。この影響を定量するために、本発明者らは、各条件中の全ウェルにわたって全ROIの蛍光強度ヒストグラムを作成した(1条件当たり150枚を超える共焦点画像)。これらの強度ヒストグラムから、刺激されたChR2−ESCと刺激されなかったChR2−ESCにかなりの差があることが明らかになった(図11d〜h;p<0.01、コルモゴロフ・スミルノフ検定)。本発明者らは次に、光刺激された未修飾(「未処理」)ESCおよび光刺激されたChR2−YFP ESCのネスチン分布(それぞれ図11gおよび図11e)が同じ分布に由来するサンプルを表し得る可能性を検定するために実験を行い、上記の実験と同様に自動光刺激を繰り返した後の盲検解析から、この仮説が棄却できることを見出した(p<0.001;両側K−S、Z=5.43;図11e、gは、ChR2−YFP細胞中において観察された高レベルの光誘導ネスチン発現の増加を示している)。各条件において平均ネスチン蛍光強度を計算し、全条件について、光刺激細胞と非光刺激細胞を比較したところ、2.5μMのRAとインキュベートしたChR2−YFP ESCだけが、平均ネスチン発現量の光遺伝学的に誘導される有意な増加を示した(p<0.01、両側t検定;図11f、11h)。1μMのRA存在下では、光刺激環境で有意ではないがネスチンの発現が多くなる傾向が観察されたが、0μMのRA中では、光刺激の影響は全く観察されなかった(例えば図11c)。

したがって、本発明は、幹細胞工学への光学的制御技術の応用を提示し、光依存性の陽イオンチャネルであるチャネルロドプシン2をマウス胚性幹細胞中で正常に発現および作動させることで、光遺伝学的アプローチの可能性を実証する。本発明者らは、ChR2−YFP ESCが、生存可能であり、未分化状態を維持していること、および分化して電気生理学的に成熟したニューロンとなる能力を維持していることを見出した。更に、青色光をパルス照射することで、ESC中で正確且つ強力な陽イオン流が惹起され、インビトロまたはインタクトな脳組織内で化学的補因子を添加することなく再現可能で予測可能なイオン流の制御が可能になった。本発明者らは、自動化されたマルチウェルの光遺伝学的刺激ツールを開発することで、組合せ的実験において高い時空間的精度でより長期間にわたって光刺激を送達することに成功し、2.5μMのRA存在下において光遺伝学的刺激が神経の分化系列の進行を調節できることを見出した。

基礎となる仮出願文書との関連で具体的に記載したように、分裂細胞中で神経分化プロセスを調節するための別の研究において脱分極が報告されており、実際、in situで、増殖中のCNS前駆細胞において脱分極およびカルシウム波の両方が観察された。例えば、初期のCNSの発達において、Momose-Sato et al.は自然発生的な脱分極波を実証しており、Kriegsteinとその同僚は皮質前駆細胞におけるカルシウム波を観察している。同様に、有糸分裂後ニューロンでも、脱分極はCNSの発達において更なる重要な役割を果たしており、脊椎の発達とシナプス可塑性に影響を与えている。本発明に関連して、初期の発達において膜脱分極イベントの影響を仲介する具体的なシグナル伝達カスケードは未だ明らかにされていないが、Ca2+およびCa2+チャネルが重要な役割を果たしているであろうし、ChR2がこれらの機序の動員に非常に適していると現在考えられている。新規な証拠から、胚の初期段階にVGCCが発現することが示されており、本発明の態様によれば、これにより、ChR2は、自身の光活性化型Ca2+流を介してだけでなく、分化細胞が成熟する際に元々あるVGCCを活性化することによっても、Ca2+依存性細胞プロセスを動員することができる。他の態様によれば、心臓細胞などのESCから生じる系列もCa2+で調節され、ヒトESCの長期間の脱分極が血液内皮分化を促進することも報告されている。これら全ての場合において、本発明者らが光遺伝学的調節のRAによるゲート開閉で観察したように、脱分極またはCa2+流入は、他のパターン形成因子および系列特異的分化因子の作用である。

最近の研究で体細胞からの多能性幹細胞(iPS)の誘導が示され、再生医療における幹細胞の供給源の可能性が大きく広がったが、選択的で感受性の高い幹細胞分化および制御のためのツールが現在必要とされていることが更に明確になった。成長因子および有機化合物等の広範に適用される刺激は、幹細胞ニッチの非分裂構成要素並びに幹細胞およびその子孫を含む存在する全細胞に影響を与えるが、典型的な分化環境に存在する非常に多様な細胞の全てにこれらの成長因子が同じ所望の効果を与えるとは考えられない。増殖中の細胞またはアストロサイト等のニッチ構成要素に光制御をターゲティングすることで、細胞内シグナル伝達の光遺伝学的制御は、所望の細胞型を選択的に制御することを可能にする。

実際、この光特異性の原理は、in situの完全に分化した幹細胞子孫の選択的制御にも拡大される。侵襲性が最小限な光ファイバーを用いた戦略によって、完全に無傷の行動下の哺乳動物中に光遺伝学が用いられるようになった。移植された細胞は、最終段階の表現型固定を誘導するためおよび幹細胞を用いた再生医療の主な目標である宿主神経回路中への完全な組込みのために、電気的活性を必要とし得る。

従来の電気刺激または薬物と比べて、ChR2の遺伝学的ターゲティングは、移植ESCおよびその子孫において特異的且つ可逆的に正確な量の活性を誘導することを可能にし、これは更に、ChR2を機能させるために生体内に化学的補因子を添加する必要がない。最後に、移植細胞だけを光学的に誘導することは、行動の読取りまたはfMRIのような非侵襲性のイメージング読取り法(および金属電極に由来するシグナル干渉という深刻な問題がないこと)と共に、例えばパーキンソン病の、ネットワーク活性および回路動態の修復における移植細胞の具体的寄与をイメージングおよび調整するためのドアを開く。これらのアプローチ等を用いて、光遺伝学的技術を、幹細胞生物学および再生医療における有用なツールとして適用することができる。

実験方法

マウス胚性幹細胞の培養 フィーダー細胞(CRL−1503、ATCC)、15%ウシ胎児血清(ギブコ社製)、15ng/mlの白血病抑制因子(LIF;シグマ−アルドリッチ社製)、0.1mMの2−メルカプトエタノール(シグマ−アルドリッチ社製)、および1%のペニシリン−ストレプトマイシン(シグマ−アルドリッチ社製)で馴化した培地を含むDMEM培地(ATCC)中でマウス胚性幹細胞(CRL−1934、米国マナッサス、ATCC)を増殖させた。20mlの培地を用いて、37℃および5%CO2にて、3日ごとに継代しながら75cm2の細胞培養フラスコ(ファルコン社製)中で細胞を培養した。浮遊液中の未分化細胞のみを実験に用いた。リン酸緩衝生理食塩(PBS)(ギブコ社、インビトロジェン社)中で洗浄した後、ノイバウアー計数器を用いて細胞を計数した。トリパンブルー溶液(0.4%;シグマ−アルドリッチ社製)で染色することで生存率を決定した。

ChR2を用いたESCの形質導入 以前に記載したように、EF−1−アルファプロモーターの制御下にChR2−EYFP融合遺伝子を有するレンチウイルスを作製した。ウイルスを、超遠心で濃縮し、元の体積の1/1000になるようにPBSに再分散させた。次いで、濃縮ウイルスをESCと一緒に24時間インキュベートし、形質導入から1週間後に蛍光顕微鏡を用いて形質導入効率を評価した。高度且つ均一に発現しているChR2−ESCコロニーを得るために、FACSを用いて細胞を分別し、上位5%のYFP発現細胞からなる亜集団を回収した。

胚性幹細胞のニューロン分化 以前記載した方法に変更を加えて、ニューロンへの分化を行った。胚様体段階にあるESCを完全ESC培地(上記参照)に入れ、マトリゲルコートディッシュに蒔いた。24時間後、LIFを含まず、5μMのレチノイン酸を含むESC培地に培地を交換し、5日間、培地を隔日で交換した。分化の第2工程として、N2サプリメント、SHH(50ng/ml)、FGF−8b(100ng/ml)、bFGF(10ng/ml)、およびアスコルビン酸(200μM、シグマ社製)を含むDMEM/F12から構成される神経伸長(neural expansion)培地を用いて細胞を7日間インキュベートし、2日ごとに交換した。その後、N2およびアスコルビン酸を含むDMEM/F12中で細胞を培養した。

培養細胞の免疫組織化学的染色 4%パラホルムアルデヒド/PBSを用いて室温で30分間細胞を固定した。0.1Mのグリシン/PBSで細胞を3回洗浄して固定を停止した。細胞を透過処理し、30分間ブロッキング(4%BSA/0.4%サポニン/PBS)し、一次抗体溶液中で4℃にて一晩インキュベートした。細胞を4回洗浄し、二次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。細胞をPBSで3回洗浄し、最終洗浄工程でDAPI(1:50,000)を添加した。抗クエンチング剤入りFluoromountを用いてカバースリップをマウントした。一次抗体は、マウス抗SSEA1(ケミコン社製、1:300)、マウス抗ネスチン(ケミコン社製、1:200)、ニワトリ抗βillチューブリン(ケミコン社製、1:200)、マウス抗MAP2ab(シグマ社製、1:500)、ウサギ抗vGlut2(ケミコン社製、1:200)、およびウサギ抗alC、同a1D、同a1G、および同a1H(全てAlomone labs社製;1:200)を用いた。Cy3またはCy5をコンジュゲートした、ロバ抗マウス、ロバ抗ニワトリ、およびロバ抗ウサギ二次抗体(ジャクソン社(Jackson)製)を全て1:200で用いた。

RT−PCR 細胞をホモジナイザー(インビトロジェン社製)でホモジナイズした。Micro−to−Midi Total RNA Purification System(インビトロジェン社製)を用いてRNAを分離した。RT−PCRの前に、RNAサンプルを、DNaseI(インビトロジェン社製)で前処理し、メーカーのプロトコールに従って逆転写を行った。逆転写酵素を含まない陰性対照では配列は増幅されなかった。マウス海馬の全RNAをクロンテック社から購入し、得られたcDNAを陽性対照とした。PCR分析では、以下のように、L型およびT型のVGCCファミリーの両方に由来するそれぞれ2個のサブユニットのコード領域を標的としたプライマ−を用いた:L型a1Cフォワードプライマー:GTGGTTAGCGTGTCCCTCAT、リバースプライマー:GTGGAGACGGTGAAGAGAGC;L型a1Dフォワードプライマー:AATGGCACGGAATGTAGGAG、リバースプライマー:GACGAAAAATGAGCCAAGGA;T型a1Gフォワードプライマー:CTGAGCGGATCTTCCTAACG、リバースプライマー:TGAAAAAGGCACAGCAGATG;T型a1Hフォワードプライマー:TGGGAACGTGCTTCTTCTCT、リバースプライマー: TGGGCATCCATGACGTAGTA;ハウスキーピング遺伝子(アクチン)フォワードプライマー:GGCATTGTGATGGACTCCGG、リバースプライマー:TGCCACAGGATTCCATACCC。293FT腎細胞は、予想された通り、これらのチャネルサブユニットを発現せず(図8a)、アクチン並びにL型およびT型サブユニットのPCR産物をクローニングおよびシークエンスし配列の確認を行った。

ESCの長期間光刺激 ハードウェアインタフェースの主要な要素には、(a)Oasis4iコントローラ(オブジェクティブイメージング社(Objective Imaging)製)(x−y−zの3軸および焦点を制御するためのハードウェア)(http://ww.objectiveimaging.com/Download/OI_Download.htm(Oasis4iコントローラ用のソフトウェア開発キット(SDK))、(b)DG4超高速波長切替器(Ultra High Speed wavelength switcher)(サッター社(Sutter)製)、(c)Retiga SRV Camera(Qイメージング社製)、および(d)AHM(Abstract Hardware Model)コントローラで制御されたLeica DM6000顕微鏡が含まれる。パラレルポートは、DLPORTIOライブラリファイル(www.driverlinx.com/DownLoad/DIPortIO.htm(パラレルポートを制御するためのDll))およびQCam SDK(Ver.5.1.1.14)(http://ww.qimaging.com/support/downloads/(Retiga SRV/Exi Cameraを制御するためのSDK)を用いて設定したカメラパラメータ(ゲイン、露光)を用いて制御する。Microsoft Foundation Library(MFC;Ver.8.0)を用いて、光遺伝学的刺激装置に接続するためのカスタムソフトウェアユーザインタフェースを開発し、要求に応じて利用できるようにした。簡潔に述べると、Oasis4iコントローラを用いて、刺激および/またはイメージングする目的領域(例えば、胚様体またはマルチウェルプレート中の小さいウェル)を選択し、MFCインタフェースを用いてそれらの位置を保存する。次いで、刺激パラメータ(興奮刺激用フィルタの波長、興奮性パルス期間、並びに興奮刺激の頻度およびデューティサイクル)をカスタムGUI中で設定する。刺激空間をマッピングできるように、各目的領域を、異なる刺激パターンを受容して何日にも及ぶ刺激およびイメージングが行われるように、容易にプログラムすることができる。同様に、領域および露出当たりの画像数、ゲイン、励起フィルタ、並びにエミッションフィルタを含むイメージングのパラメータも選択された領域向けに変更することもできる。

24ウェルプレートのマトリゲル(BD社)コートカバースリップ上に、完全ESC培地中100,000細胞/ウェルの密度で未分化細胞を播種した。同じプレート上の異なるウェル中で野生型ESCおよびChR2発現ESCの両方を用いた。播種の24時間後に、完全ESC培地、LIFおよびフィーダー細胞由来の馴化培地(分化培地)のどちらも含まないESC培地、1μMのレチノイン酸(RA)(シグマ社製)を含む分化培地、並びに2.5μMのRAを含む分化培地を含む種々の実験条件に培地を変換した。前述したツールを用いて光刺激を行った(図4)。各ウェルにつき最大30個までの目的領域(ROI)を決定し、カバースリップ上の細胞含有領域が全て確実に刺激されるようにした。ROIに、10倍の対物レンズ(NA 0.3)を用いて、青色光(470nm)パルスを10秒間、15Hzで5日間休みなく連続して照射した。選択されたROIの顕微鏡写真が8時間ごとに撮影されるようにプログラムした。実験の最後に、カバースリップをプレートから取り、パラホルムアルデヒドですぐに固定し、前述したように染色した。マウントしたスライドを暗号化した番号で同僚がラベルし、共焦点分析を行う研究者に処置条件が分からないようにした。

共焦点顕微鏡観察および画像解析 ライカ社製SP2共焦点顕微鏡および40倍の油浸対物レンズ(NA 0.75)を用いて共焦点イメージングを行った。DAP1の励起には402nmのダイオードレーザを用いた。Cy5−ネスチンは633nmのHeNeレーザを用いて励起した。カバースリップ当たり6個のROIを解析用にランダム且つ盲検的に選択し、1024×1024の8ビット共焦点画像を得た。各ROIについて、zの刻み幅0.98μmで8〜12個のx−y面からなるzスタックを収集することで、ROI中に存在する全細胞を含めた。ImageJ(米国、NIH)ソフトウェアを用いてデータ解析を行い、非盲検にした後、各条件(例えばChR2−ESC、光刺激あり、2.5μm RA)の全カバースリップの全ROIの共焦点画像を1つのzスタックに変換した。DAPlおよびネスチンのチャネルについて、蛍光強度ヒストグラムを算出した。細胞数を反映するDAP1ヒストグラムからネスチンのヒストグラムの標準化をすることができた。全ネスチンボクセル数をこのDAPl係数で割った。SPSS(米国、シカゴ)ソフトウェアを用いて統計分析を行った。ヒストグラムを統計的に比較するためにパラメータによらないコルモゴルフ・スミルノフ検定を行い、平均値を比較するためにt検定を用いて統計的有意性を計算した。

定位的細胞移植 ラット(雄のウィスター系、250〜350g)をこれらの実験の対象とした。動物の管理および本発明者らの動物の実験操作の全ての状況は、アメリカ国立衛生研究所の指針に厳密に従い、スタンフォード動物実験委員会のメンバーの承認を受けた。腹腔内投与(ラット体重1kg当たり90mgのケタミンおよび5mgのキシラジン)によりラットに麻酔をかけた。細胞移植のために、運動皮質の上に1mmの開頭切開部を穿孔した。50k細胞/μLの密度でPBSに懸濁したChR2−EYFP融合タンパク質を発現するESC1μLをラット運動皮質(AP+1.5mm、ML+1.5mm、DV+1.5mm)に注入した(26gのハミルトンシリンジ)。注入は10分間行い、更に10分間留置した後、シリンジを引き抜き、1週間後に電気生理学的実験を行った。

電気生理学 急性スライスの電気生理学的実験のために、細胞移植の1週間後、氷冷した切断用緩衝液(64mMのNaCl、25mMのNaHCO3、10mMのグルコース、120mMのスクロース、2.5mMのKCl、1.25mMのNaH2PO4、0.5mMのCaCl2、および7mMのMgCl2、95%O2/5%CO2で平衡化)中でビブラトーム(VT1000 S、ライカ社製)を用いて250μmの皮質スライスを調製した。切断用緩衝液における32〜35℃で30分間の回復期の後、スライスをゆっくりと取り出し、正立顕微鏡(DM LFSA、ライカ社製)上にマウントした記録チャンバーに移し、カーボン化ACSF(124mMのNaCl、3mMのKCl、26mMのNaHCO3、1.25mMのNaH2PO4、2.4mMのCaCl2、1.3mMのMgCl2、10mMのグルコース)で3〜5ml/分の速度で連続的に灌流し、95%O2/5%CO2で換気した。20倍の0.5NA水浸対物レンズおよびYFPフィルタセットを備えた正立蛍光顕微鏡(DM LFSA、ライカ社製)上でChR2−YFP−ESCを確認した。CCDカメラ(Retiga Exi、Qイメージング社製)を用いてQイメージングソフトウェアにより画像を記録した。以前に記載したように、NaClを125mM、KClを2mM、CaCl2を3mM、MgCl2を1mM、グルコースを30mM、およびHEPESを25mMで含むタイロード液(NaOHでpH7.3に調整)中で培養ChR2−YFP ESCの電気生理学的記録を行った。Axon Multiclamp 700B(アクソン・インスツルメンツ社(Axon Instruments)製)増幅器を用いて、ホールセルパッチクランプ法で膜電流を測定した。ピペット液は、97mMのグルコン酸カリウム、38mMのKCl、6mMのNaCl、0.35mMのATPナトリウム、4mMのATPマグネシウム、0.35mMのEGTA、7mMのホスホクレアチン、および20mMのHEPESから構成される(KOHでpH7.25に調整)。ピペット抵抗は4〜8MΩであった。ホールセルの配置ができたときに膜電位を記録した。本発明者らは、pClamp9取得ソフトウェア(アクソン・インスツルメンツ社製)、300Wのキセノンランプを備えたDG−4高速光スイッチ(サッター・インスツルメンツ社製)、およびGFPフィルタセット(励起フィルタHQ470/40倍、二色性Q495LP;クロマ社(Chroma)製)を用いて、ChR2活性化のための青色光を送達した。20倍の対物レンズを通した青色光の出力密度は、電力計(ニューポート社製)による測定で8〜12mW/mm2であった。実験は全て室温(22〜24℃)で行った。

上記の種々の実施形態は、単なる例として記載したものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。上記の説明および図解に基づき、本明細書中に図解および記載した例示的な実施形態および応用例に厳密に従わずに本発明に種々の修正および変更がなされ得ることが当業者には容易に理解されよう。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に記載する本発明の真の精神および範囲から逸脱しない。

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