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Using a crystal oscillator, the measuring method of the yeast aggregation activity of the malt

申请号 JP2008018890 申请日 2008-01-30 公开(公告)号 JP4309459B1 公开(公告)日 2009-08-05
申请人 麒麟麦酒株式会社; 发明人 味 雅 裕 五; 田 秀 樹 津;
摘要 【課題】 酵母 を用いて実際に発酵試験を行うことなく、迅速かつ簡便に原料となる麦芽に含まれる酵母凝集活性を測定する方法を提供すること。
【解決手段】本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法は、被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した 水 晶発振子とを緩衝液中において 接触 させ、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周 波数 の変化を測定することを含んでなる。
【選択図】なし
权利要求
  • 麦芽の酵母凝集活性の測定方法であって、
    被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを緩衝液中において接触させ、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定 し、
    得られた振動周波数の変化から、予め得られている酵母凝集活性の値と振動周波数の変化との相関関係に基づいて、被検麦芽の酵母凝集活性の値を得ることを含んでなる、方法。
  • 被検麦芽から、濃縮された高分子多糖分を得る工程として、
    被検麦芽を糖化して得られる麦汁に、エタノールを加えて、高分子多糖を含むエタノール沈殿を生じさせて分離し、得られた沈殿物を緩衝液に溶解させた後、これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに付して、高分子多糖分を含む濃縮画分を分取する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
  • 高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを、酸性緩衝液中において接触させる、請求項1または2に記載の方法。
  • 麦芽中の酵母早期凝集性因子の定量方法であって、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法を 用いることを含んでなる、方法。
  • 請求項1〜 のいずれか一項に記載の方法を用いて、麦芽原料、製造途中の麦芽、または製造麦芽の酵母凝集活性を判定することにより、麦芽製造工程を管理することを特徴とする、麦芽の製造方法。
  • 請求項1〜 のいずれか一項に記載の方法を用いて、麦芽中の酵母凝集活性を測定することにより、用いる麦芽原料の選択および調整を行うことを特徴とする、発酵アルコール飲料の製造方法。
  • 说明书全文

    発明の背景

    発明の分野
    本発明は、晶発振子を用いる、麦芽の酵母凝集活性の測定方法に関する。 より詳しくは、本発明は、実際に発酵を行うことなく、ビール、発泡酒、ウイスキーなどの酒類製造に用いる麦芽において、酵母の凝集沈降を引き起こす凝集活性を測定する方法に関する。

    関連技術
    麦芽を原料とする酒類を製造する際に、下面発酵酵母といわれる種類の酵母を用いて発酵を行うと、発酵工程終了間際に酵母同士が凝集塊を形成して沈降する現象が観察できる。 この酵母凝集塊の沈降によって、酒類製造の次回の発酵に必要な酵母を得ることができる。 このような現象のメカニズムは、次のように考えられている。

    即ち、酵母細胞表面にはレクチンと糖鎖が存在し、発酵液中に含まれるグルコースなどの糖によって、隣り合う酵母細胞同士のレクチン−糖鎖間の結合が阻害され、通常、発酵液中に酵母が浮遊している。 しかしながら、発酵が進行すると、つまりグルコースなどの糖が酵母に取り込まれてアルコールに代謝されると、レクチン−糖鎖間の結合の阻害因子が低下することとなり、その結果、隣り合う酵母細胞同士のレクチン−糖鎖間の結合が進行して、徐々に凝集塊が形成され、沈降が起こると考えられている。

    ところが、時として、これとは別に、「早期酵母凝集現象」(以下「早凝現象」ということがある)と呼ばれる現象が観察されることが報告されている。

    「早期酵母凝集現象」とは、酵母による発酵工程、特に発酵後期に、酵母の資化可能な糖分がまだ発酵液中に残っているにもかかわらず、酵母が凝集して沈降してしまう現象のことをいい、この早期凝集現象により、酵母が凝集・沈降してしまうと発酵の進行が停止してしまう。 したがって、この現象が見られると、発酵不足によるアルコール含量の低下や、アセトアルデヒドやジアセチル等の未熟成分の消失不良等の品質の著しい低下をまねき、製造された製品が規格外のものとなってしまい、発酵麦芽飲料等の醸造において、大きな損害を蒙ることにもなる。

    麦芽を原料とする酒類を製造する際の早凝現象という問題を解消すべく、古くから多くの研究が進められてきており、早期凝集現象の原因物質(早凝因子:Premature Yeast Flocculation Factor, PYF)は、原料大麦または麦芽中に含まれるある種の高分子多糖であることが報告されている(Rept.Res.Lab.Kirin Brewery Co.,Ltd.,No.19,45-53,1976(非特許文献1))。 この高分子多糖が存在すると、酵母細胞表面でのレクチン−糖鎖結合を阻害しているグルコースなどの糖が存在するにもかかわらず、酵母細胞表面レクチン−早凝因子(高分子多糖)−酵母細胞表面レクチンが結合し、酵母の凝集塊形成が促進されると考えられている。
    よって、早凝因子である、ある種の高分子多糖を多く含む麦芽は、酵母凝集活性が強く、早期凝集現象を発生させやすい麦芽であると言える。

    従来より、大麦を原料とする発酵麦芽飲料等の醸造においては、発酵工程における早期凝集現象を避けるために、麦芽、大麦の酵母凝集活性を確認して、早期凝集現象を引き起こさない麦芽を予め選別し、用いることが望まれていた。

    麦芽、大麦等の酵母凝集活性の強弱を評価するためには、従来は、目的とする麦芽から実際に麦汁を調製した後、酵母を添加して発酵試験を行い、発酵の進行状況によって評価する方法が行われてきた。

    しかしながら、このような方法はいずれも、発酵試験は実際の醸造のスケール(発酵試験のスケール)を小規模にした試験であって、麦汁を実際に発酵させる必要があり、結果を得るために長期間が必要とされた。 また、実際の発酵では、被検麦芽に含まれる早凝因子以外の成分(例えばアミノ酸、亜鉛などの微量金属)や、使用する酵母の活性によって発酵の進行状況が大きな影響を受けることがあり、酵母凝集活性を精度よく測定することは容易でなかった。

    発酵試験の期間を短縮するために、被検原料麦に酵素を添加して原料麦を酵素処理し、得られた酵素処理物または酵素処理物から分離された高分子画分を合成麦汁に添加して発酵試験原料とし、48時間後の発酵試験原料の濁度を測定することにより原料麦中の早期凝集性因子の有無を判定する方法が開発された(特許第3121552号公報(特許文献1))。 この方法により、試験の期間を大幅に短縮することができたものの、この方法は発酵試験による方法であり、実際の発酵処理に伴う上記のような問題点については依然として検討すべき余地があった。

    水晶発振子とは、水晶の結晶を薄い板状に切り出した切片の両側に金属薄膜を付けた構造をしたものを言い、金属薄膜に交流電場を印加すると、一定の周波数で振動する性質を示すことが知られている。 金属薄膜上に微量の物質が吸着すると、物質の質量に比例して振動周波数が減少するため、これを利用して質量等を求めることができることも知られている(QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶発振子マイクロバランス)。

    このようなQCMを利用したセンサーもしくは技術として、例えば、コンカナバリンAを水晶発振子表面上のポリビニルブチラール膜にジアルデヒド化合物を介して結合させた構造を有する、炭水化物センサー(特開昭63−196832号公報(特許文献2))、水晶発振子の電極表面にプロテインAを介して抗生物抗体を固定化した微生物センサー(特開2002−340766号公報(特許文献3))、生細胞を水晶発振子の電極表面に固定化して、レセプター−リガンド間相互作用を解析する方法(特開2003−83973号公報(特許文献4))、および、脂質膜センサーとして脂質膜で被覆した水晶発振子を使用する、酒類の味評価方法(特開2000−183333号公報(特許文献5)および特開2001−215183号公報(特許文献6))などが挙げられる。

    しかしながら、麦芽における酵母凝集活性の測定等に水晶発振子を利用することについては、本発明者等の知る限りこれまで何ら検討もされていない。

    特開平10−179190号公報(特許第3121552号公報)

    特開昭62−196832号公報

    特開2002−340766号公報

    特開2003−83973号公報

    特開2000−183333号公報

    特開2001−215183号公報

    Rept.Res.Lab.Kirin Brewery Co.,Ltd.,No.19,45-53,1976

    発明の概要

    本発明者等は、発酵試験を行うことなく、麦芽の酵母凝集活性を測定する方法を検討した。 このとき、麦芽に含まれる酵母凝集を促す早凝因子が高分子多糖であり、これが、酵母細胞表面のレクチンに結合するものであることに着目した。 そこで、まず、酵母細胞そのものを水晶発振子に固定化し、酵母細胞によって麦芽中の早凝因子を捕捉し、測定することを検討した。 しかしながら、酵母細胞そのものを固定化する場合、酵母細胞の固定化が困難であることに加え、酵母細胞表面のレクチン量を常に一定とした酵母細胞を供給することが困難であり、酵母細胞表面のレクチン量の違いに起因して感度が変動するという不都合が考えられた。 次に、酵母細胞表面レクチンそのものを取得し、これを水晶発振子に固定化して、該レクチンによって麦芽中の早凝因子を捕捉し、測定することを検討した。 しかしながら、酵母細胞表面レクチンを固定化するため、精製した当該レクチンを大量に取得することは実際上、困難であった。

    ここで本発明者らは、麦芽に含まれる早凝因子が、ナタ豆( Canavalia ensiformis )由来レクチンであるコンカナバリンA(サブユニット分子量 25,572、pHによって2ないし4量体を形成する。以下「ConA」という)に特異的に結合することを見いだした。 そこで本発明者らはさらに、水晶発振子表面にConAを固定化したセンサーを作製し、センサーを緩衝液中に浸して、該緩衝液中に麦芽から分離した高分子画分を添加し、ConAと高分子画分に含まれる早凝因子とを反応させた後、ConAと早凝因子との結合の結果生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定することに成功した。 酵母凝集活性の強度と、得られた周波数の変化とに良好な相関があることが確認できた。 さらに、麦芽からの高分子画分である高分子多糖を、エタノールを用いた沈殿と、イオン交換カラムクロマトグラフィーとを併用することによって、高濃度の高分子多糖分を得ることができ、振動周波数を測定するに際しては、予め高分子多糖分を濃縮しておくことが非常に有効であった。 本発明はこれら知見に基づくものである。

    したがって、本発明は、酵母を用いて実際に発酵試験を行うことなく、迅速かつ簡便に原料となる麦芽に含まれる酵母凝集活性を測定する方法を提供することをその目的とする。

    本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法は、
    被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを緩衝液中において接触させ、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定することを含んでなる。

    本発明の好ましい態様によれば、本発明による測定方法は、被検麦芽から、濃縮された高分子多糖分を得る工程として、
    被検麦芽を糖化して得られる麦汁に、エタノールを加えて、高分子多糖を含むエタノール沈殿を生じさせて分離し、得られた沈殿物を緩衝液に溶解させた後、これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに付して、高分子多糖分を含む濃縮画分を分取する工程をさらに含んでなる。

    本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明による測定方法において、高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを、酸性緩衝液中において接触させる。

    本発明の一つのより好ましい態様によれば、本発明による測定方法において、
    得れた振動数の変化から、予め得られている酵母凝集活性の値と振動数の変化との相関関係に基づいて、被検麦芽の酵母凝集活性の値を得ることをさらに含んでなる。

    本発明の別の態様によれば、
    麦芽中の酵母早期凝集性因子の定量方法であって、
    本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法を用い、かつ、
    得れた振動数の変化から、予め得られている酵母早期凝集因子の量と振動数の変化との相関関係に基づいて、原料麦芽中の酵母早期凝集因子の量を得ることを含んでなる、方法が提供される。

    本発明のさらに別の態様によれば、本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法を用いて、麦芽原料、製造途中の麦芽、または製造麦芽の酵母凝集活性を判定することにより、麦芽製造工程を管理することを特徴とする、麦芽の製造方法が提供される。

    本発明のより別の態様によれば、本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法を用いて、麦芽中の酵母凝集活性を測定することにより、用いる麦芽原料の選択および調整を行うことを特徴とする、発酵アルコール飲料の製造方法が提供される。

    前記したように、従来、麦芽に含まれる酵母凝集活性の強弱の評価は、いずれの方法であっても酵母を用いることが必須であり、そのため使用する酵母の影響を免れることは出来なかった。 加えて、従来の発酵試験法では、大掛かりな専用の発酵装置を用いた数日間の発酵が必要であった。 しかしながら、本発明の方法によれば、大掛かりな発酵装置を用いることなく、従来の発酵試験法と同等以下の日数で、かつ酵母を使用することなく、原料となる所望の麦芽の酵母凝集活性の評価を行うことが可能となる。 また、本発明の方法によれば、酵母を用いた発酵を行わないため、麦芽や、製麦前の大麦はもとより、製麦途中の大麦、または、醸造に用いられるその他の穀類やエキス等における酵母凝集活性の評価にも適用することができる。 その結果、麦芽を含む醸造原料の発酵特性に応じた緻密な酒類製造の工程管理、品質管理に貢献するだけでなく、早期酵母凝集現象を引き起こす麦芽の製造条件の解明にも貢献することができる。

    発明の具体的説明

    本発明による測定方法は、前記したように、麦芽の酵母凝集活性の測定方法であって、
    被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを緩衝液中において接触させ、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定することを特徴とする。

    本発明においては、被検麦芽サンプルから分離し濃縮された高分子多糖分を使用する。 すなわち、本発明では、麦芽に含まれる酵母凝集因子を測定するが、水晶発振子に固定されたコンカナバリンAと、早凝因子を反応させるに際して、早凝因子を予め精製されて濃縮しておくことが重要である。

    本発明において、被検麦芽サンプルからの高分子多糖分の分離、濃縮は、例えば、下記のように行うことが好ましい。 すなわち、まず被検麦芽を慣用の方法に従い、必要に応じて粉砕処理および水抽出した後、糖化し麦汁を得、ここにエタノールを加える。 このとき、エタノールは、麦汁に対して約2倍量のエタノールを加えるのが好ましく、またここでエタノール濃度は、例えば60〜70%程度であることが好ましい。 エタノールが加えられると、高分子成分が析出して、沈殿物(以下、「麦芽高分子抽出物」ということがある)を生ずる。 これを遠心分離等の手段により分離して回収する。 このようにして原料麦芽から、高分子酸性多糖である早凝因子を、沈殿物として分離することが出来る。

    次いで、得られた早凝因子を含む沈殿物(麦芽高分子抽出物)を濃縮する。
    麦芽高分子抽出物をリン酸緩衝液に溶解し、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにに付して、早凝因子を含む、早凝因子が濃縮された画分を分取する。 各画分の早凝因子の有無は、別途行った発酵試験で確認するか、あるいは予め行っておいた発酵試験に基づいて分取すべき画分を特定することができる。 具体的には、カラムクロマトグラフィーにより得られた各分画物を凍結乾燥し、これらを麦芽以外の成分(糖、アミノ酸、無機塩類など)で調製された合成麦汁にそれぞれ加え、さらに酵母を加えて、温度20℃で48時間発酵させる。 発酵後、濁度計を用いて波長800nmにおける吸光度(OD800)を測定し、対照区のOD800から試験区のOD800を差し引いた値DPF(Degree of Premature Flocculation)48を比較し、各画分における酵母凝集活性の強度を求めることができる。 この結果に基づいて、早凝因子が多く含まれ、濃縮されている分画を特定することができる。 酵母凝集活性が高く、早凝因子を多く含む画分を集め、必要に応じて凍結乾燥させ、所望の高分子多糖分(以下、「麦芽高分子濃縮物」ということがある)を得ることができる。
    なお合成麦汁の調製方法は特許文献1の記載にしたがって行うことができる。
    またここで使用される陰イオン交換カラムクロマトグラフィーとしては、GEヘルスケア バイオサイエンス社製 Mono−Qカラム、または、Q Sepharoseカラムを用いることができる。

    よって本発明の好ましい態様によれば、前記したように、本発明による測定方法は、被検麦芽から、濃縮された高分子多糖分を得る工程として、
    被検麦芽を糖化して得られる麦汁に、エタノールを加えて、高分子多糖を含むエタノール沈殿を生じさせて分離し、得られた沈殿物を緩衝液に溶解させた後、これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに付して、高分子多糖分を含む濃縮画分を分取する工程をさらに含んでなる。

    ここで、コンカナバリンAは、前記したように、ナタ豆(Canavalia ensiformis)由来レクチンであり、サブユニット分子量が25,572であり、pHによって2ないし4量体を形成する。

    本発明の測定方法においては、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子を使用する。 ここで水晶発振子は、水晶発振子センサーを構成し、該センサーとしては市販品を使用することができる。 具体的には、水晶発振子センサーは、例えば、株式会社イニシアム(initium)より入手可能である。

    ここで、水晶発振子へのコンカナバリンAの固定化は、コンカナバリンAの懸濁液を水晶発振子センサーの電極部分上に滴下した後放置する。 その後、蒸留水等で固定化されていないコンカナバリンAを洗い流し、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子を用意することができる。
    水晶発振子へのコンカナバリンAの固定化の具体例を示すと、コンカナバリンAを0.5〜1.0mg/Lの濃度となるよう水に懸濁し、50μLを水晶発振子センサーチップ表面に滴下して約30分間放置する。 その後、蒸留水で固定化しなかったコンカナバリンAを洗い流し、コンカナバリンAが固定化した水晶発振子を得ることができる。

    本発明の測定方法においては、被検麦芽から分離し濃縮された高分子多糖分と、コンカナバリンAを固定化した水晶発振子とを緩衝液中において接触させる。 好ましくはこのとき緩衝液は、酸性緩衝液である。 そして、高分子多糖分とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化を測定する。

    ここでの具体的な手順を例示的に説明すれば下記の通りである。
    前記したようにコンカナバリンAを固定化した水晶発振子センサーを、リン酸緩衝液(例えば、0.1%Tween20、1mg/mLマンノースを含む10mMリン酸緩衝液)に浸す。 このとき、リン酸緩衝液は、酸性側に調整することが望ましく、好ましくはそのpH値は5.0付近である。 この緩衝液中に、所定の濃度(マンノース相当量、蒸留水)に調整した高分子多糖分(麦芽高分子濃縮物)を所定量(例えば、5μL)添加して、コンカナバリンAと高分子多糖分に含まれる早凝因子とを結合反応させる。 このとき、反応温度は特に制限はないが、例えば室温(例えば25℃程度)で行うことができる。 一方、水晶発振子センサーを接続した分子間相互作用測定装置(例えば、株式会社イニシアム製AFFINIX Q4)を用いて、高分子多糖分(特に早凝因子)とコンカナバリンAとの結合により生じる水晶発振子の振動周波数の変化(減少)を測定する。 測定の開示時および測定時間は、結合反応の開始時点からの反応の進行状況や周波数の減衰状態を考慮して適宜選択して設定することができ、例えば、高分子多糖分添加後60秒間の周波数変化測定する。 なお本発明では、添加後60秒間の周波数変化を、もともとの麦芽が特徴的にもつConAとの結合活性と仮定して実験を行っている。

    本発明の別の態様によれば、本発明による測定方法は、
    得れた振動数の変化から、予め得られている酵母凝集活性の値と振動数の変化との相関関係に基づいて、被検麦芽の酵母凝集活性の値を得ることをさらに含んでなる。
    すなわち、予め既知の濃度の早凝因子を含む麦芽を用意し、これを用いて、酵母凝集活性の値と振動数の変化との相関関係(例えば検量線)を求めておく。 未知の被検麦芽の測定を行った場合には得られた振動数の変化結果から、被検麦芽における酵母凝集活性の値を算出することができる。 従来、麦芽の酵母凝集活性の測定法は、酵母凝集活性の有無や、その強弱を判別することはできたが、数値化までするには十分ではなかった。 本発明によれば、被検麦芽の酵母凝集活性の値を得ることができるので、より精度が高く緻密な測定および判別が可能となる。 これは、麦芽製造や、アルコール飲料製品の製造や、そこにおける工程管理等の面から極めて有効であると言える。

    同様に、本発明の別の態様によれば、前記したように、
    麦芽中の酵母早期凝集性因子の定量方法であって、
    本発明による麦芽の酵母凝集活性の測定方法を用い、かつ、
    得れた振動数の変化から、予め得られている酵母早期凝集因子の量と振動数の変化との相関関係に基づいて、原料麦芽中の酵母早期凝集因子の量を得ることをさらに含んでなる、方法が提供される。

    なお本明細書において、「約」や「程度」を用いた値の表現は、その値を設定することによる目的を達成する上で、当業者であれば許容することができる値の変動を含む意味である。

    本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    実験方法の概要
    1) 麦芽からの麦汁の調製
    従来から麦芽の評価に幅広く用いられているコングレス麦汁(European Brewery Convention,Analytica-EBC(4th ed.),Method 4.4,p.E59,Braurei-und Getrauke-Rundschau,CH-8047)を調製した。

    2) 麦汁からの高分子多糖を含む高分子成分の抽出
    麦汁に対して約2倍量のエタノールを加え、析出した高分子成分を沈殿物(麦芽高分子抽出物)として分離回収した。 この方法はエタノール沈殿と呼ばれる方法である。 高分子酸性多糖である早凝因子はこの方法によって、沈殿物として分離することが出来る。

    3) 発酵試験による酵母凝集活性の評価方法
    麦芽以外の成分(糖、アミノ酸、無機塩類など)で調製された合成麦汁に、麦汁から分離回収した高分子成分、酵母を加え温度20℃で48時間発酵させた後の濁度によって評価した。 この場合、濁度計を用いて波長800nmにおける吸光度(OD800)を測定し、対照区のOD800から試験区のOD800を差し引いた値DPF(Degree of Premature Flocculation)48を比較した。 合成麦汁の調製方法は特許文献1の記載にしたがった。

    4) 麦芽高分子抽出物の濃縮
    前記2)で得られた麦芽高分子抽出物を、リン酸緩衝液に溶解し、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーによって酵母凝集活性を含む画分を分取した。 酵母凝集活性の有無は、分画物を凍結乾燥し、これを加えた発酵試験を行い、発酵の進行状況を上記3)の方法と同様に判定した。 酵母凝集活性を含む画分を集めて凍結乾燥した。

    5) ConAを固定化した水晶発振子センサーの作製
    ConAを0.5から1.0mg/Lの濃度に懸濁し、50μLを水晶発振子センサーチップ表面に滴下して30分間放置した。 その後、蒸留水で固定化しなかったConAを洗い流した。

    6) ConA固定化水晶発振子センサーと麦芽高分子濃縮物(高分子多糖分)との結合反応の測定
    ConA固定化水晶発振子センサーを分子間相互作用測定装置に装着し、センサー部分を0.1%Tween20、1mg/mLマンノースを含む10mMリン酸緩衝液に浸した。 この中に先に所定の濃度(マンノース相当量、蒸留水)に調製した麦芽高分子濃縮物5μLを添加して結合反応を開始した。 分子間相互作用測定装置で周波数変化(減少)を測定した。

    以下に具体的な実験手順と結果を述べる。

    実施例1: 麦芽に含まれる酵母凝集活性の評価(従来法)
    被検サンプルとして、さまざまな由来の麦芽試料9点を用意した。
    まず、糖化ビーカーに水320mLを入れ、水温を45℃に保った。 ここにディスクミルを用いて粉砕した粉砕麦芽(被検サンプル)50gを加えて、均一になるように良く攪拌した。 次に粉砕麦芽からの早凝因子の抽出処理を行った。 抽出の温度プログラムの設定は、45℃、30分保持→1℃/分で昇温→70℃、2時間保持であった。 抽出処理後、これをよく攪拌し、濾紙(東洋濾紙No.2)を用いて濾過し、この濾液を200mLのメスシリンダーを用いて正確に200mLを分取した。

    分取した濾液200mLを、強火によって液量が半分以下になるまで煮沸させ、蒸留水を用いて100mLに調整し、再度同様に濾過を行った。 得られた濾液に、攪拌しながら徐々にエタノール200mLを加え、5分間攪拌後、遠心分離処理をして、上清を廃棄した。 得られた沈殿物に沸騰水を加え、全量を45mLに調整した後、再度遠心分離を行い、上清(以下「麦芽高分子画分抽出物」ということがある)を発酵試験に供した。

    合成麦汁160mLに対し、麦芽高分子画分抽出物40mLを加えてpH5.7に調整して、試験区とした。 一方、麦芽高分子画分抽出物の代わりに蒸留水を使用して、pH5.7の調製したものを対照区として用意した。
    これらにビール酵母0.70gをそれぞれ添加した後に、直径27mmの発酵管(100mL容)に入れて20℃で発酵させ、48時間後、液面から5cmのところから2mLずつ分取して、そのOD800をそれぞれについて測定した。 対照区の値から試験区の値を差し引いて、酵母凝集の度合を示すDPF(Degree of Premature Flocculation)48を求めた。 DPF48は2連の試験の平均値とした。

    結果は、表1に示されるとおりであった。
    結果から、麦芽サンプル番号「No.1」、「No.3」の麦芽が持つ酵母凝集活性は弱く、「No.2」、「No.8」、および「No.9」の麦芽が持つ酵母凝集活性は著しく強いことが判明した。

    実施例2: 高分子多糖分(麦芽高分子濃縮物)の調製
    実際の酒類製造に用いた結果、酵母凝集活性が強いことが判明している麦芽を用意した。
    まず、糖化ビーカーに水320mLを入れ、水温を45℃に保った。 ここにディスクミルを用いて粉砕した粉砕麦芽(被検サンプル)50gを加えて、均一になるように良く攪拌した。 次に粉砕麦芽からの早凝因子の抽出処理を行った。 抽出の温度プログラムの設定は、45℃、30分保持→1℃/分で昇温→70℃、2時間保持であった。 抽出処理後、これをよく攪拌し、濾紙(東洋濾紙No.2)を用いて濾過し、この濾液を200mLのメスシリンダーを用いて正確に200mLを分取した。

    分取した濾液200mLを、強火によって液量が半分以下になるまで煮沸させ、蒸留水を用いて100mLに調整し、再度同様に濾過を行った。 得られた濾液に、攪拌しながら徐々にエタノール200mLを加え、5分間攪拌後、遠心分離処理をして、上清を廃棄した。 得られた沈殿物に沸騰水を加え、全量を45mLに調整した。 これを透析チューブ(分子量6000−8000カット)に移し、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析を行った。 チューブ内の透析液を回収、遠心分離処理し、上清を得た。 この上清を、陰イオン交換カラム(Mono−Q、GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、流速:1mL/分、A液:50mMリン酸緩衝液(pH7.0)、B液:50mMリン酸緩衝液−0.5M塩化ナトリウムを用い、B液が0%から100%かつ総溶出量20mLのグラジエント条件で分画を行い、最初の溶出物4mLを素通り画分として分取し、その後フラクションコレクターを用いて1mLずつ34の区分に分画した。 34区分を2〜5区分ずつまとめて、「Fr.1」〜「Fr.10」の10試料に再構成した。

    次に、「Fr.1」〜「Fr.10」をそれぞれ1mLずつ、麦芽高分子画分抽出物の代わりとして用いた以外は、実施例1における合成麦汁を用いた発酵試験と同様にして、酵母凝集の度合を示すDPF48を求めた。

    結果は、表2および図1に示される通りであった。
    結果から、ここでの実施例2における条件を用いることによって、「Fr.4」または「Fr.5」に酵母凝集活性が濃縮されることが明らかになった。 以下においては、「Fr.4」または「Fr.5」を、高分子多糖分(麦芽高分子濃縮物)として用いた。

    実施例3: ConA固定化水晶発振子センサーと麦芽高分子濃縮物(高分子多糖分)との結合反応の測定
    実施例1の発酵試験の結果、酵母凝集活性が強いこと(DPF48値:1.364(サンプル番号2))、および、弱いこと(DPF48値:0.202(サンプル番号1))が判明している麦芽試料2種類を実施例1のサンプルの中から選択した。 (なお図−2では、「凝集強」、「凝集弱」と表示している)。
    これら選択した2つの麦芽試料から、実施例2に従って、10mg/mL(マンノース相当量、蒸留水)とした高分子多糖分(麦芽高分子濃縮物)を調製した。

    次に、コンカナバリンA(ConA)固定化水晶発振子センサーを以下の手順で作成した。
    市販の水晶発振子センサー(イニシャム社製セラミックセンサーチップ 27MHz)の金電極部分に、ピランハ溶液(過酸化水素:濃硫酸=1:3混合液)、または1%SDS溶液を滴下し表面を洗浄した後、十分量の蒸留水で洗い流し、表面に残った水分を紙に吸い取って除去した。 次に、金電極部分に0.5から1.0mg/mL蒸留水の濃度に調製したConA(和光純薬株式会社より入手、カタログ番号594−02833)懸濁液50μLを滴下し、これが乾ききらないように湿度を維持できる箱(例えば湿らせた濾紙を入れたシャーレなど)の中で30分間静置した後、金電極部分に残っているConA懸濁液を十分量の蒸留水で洗い流した。 これにより、ConA固定化水晶発振子センサーを得た。

    次に、このConA固定化水晶発振子センサーを、分子間相互作用測定装置(イニシャム社製AFFINIX Q4)に装着した。 このようにして得られた装置を用いて、以下の手順に従ってConAと麦芽高分子濃縮物の結合の結果生じる水晶発振子の周波数変化を測定した。

    先ず、ConA固定化センサー部分を所定のpH(pH5.0またはpH8.0)に調製した10mMリン酸緩衝液500μLに浸漬して振動数が安定したことを確認した。 次に、10mg/mL(マンノース相当量、蒸留水)とした麦芽高分子濃縮物Fr. 5 5μLを添加し、25℃で添加3分後までの周波数変化を測定した。
    測定結果は、図2に示される通りであった。

    結果に示されるように、リン酸緩衝液のpHを8.0に調製した場合には、いずれの麦芽高分子濃縮物を添加しても水晶発振子センサーの振動周波数はほとんど減少しないことが観察された。
    一方、リン酸緩衝液のpHを5.0に調製した場合には、麦芽高分子濃縮物を添加した直後から急激に振動周波数が減少すること、振動周波数の減少は、酵母凝集活性が強い麦芽から得られた高分子濃縮物の方が、酵母凝集活性が弱い麦芽から得られた高分子濃縮物よりも大きいことが観察された。

    これらの結果は、振動周波数の減少は即ちセンサー表面に何らかの物質が結合したことによる重量増加であるから、実際の酒類の発酵状態に近い酸性環境下でConAと麦芽から分取した多糖との結合が促進されること、酵母凝集活性が強い麦芽から分取した高分子濃縮物にConAと結合する多糖が多く含まれており、その量は酵母凝集活性が弱い麦芽から分取した高分子濃縮物よりも多く含まれていると考えられた。 また、添加後の経過時間と周波数変化(減少)の関係は、添加1分以内に急速に周波数は減少し、その後は徐々に減少してゆくことから、高分子濃縮物に含まれる多糖との特異的な結合反応は1分以内に終了しその後非特異的な結合が進行すると考えられた。 このことから、麦芽高分子濃縮物添加1分後の振動周波数変化をConA結合活性とした。

    実施例4: 発酵試験による酵母凝集強度と麦芽高分子濃縮物のConA固定化水晶発振子センサーへの結合量との相関
    ConA固定化水晶発振子センサーを装着した分子間相互作用測定装置(イニシャム社製AFFINIX Q4)を用い、また、実施例1の発酵試験の結果から様々な酵母凝集強度を持つことが判明している麦芽試料9点を用いて、麦芽試料から分離した麦芽高分子濃縮物のConAへの結合の結果生じる振動周波数変化を測定した。
    実験の手順は実施例3に従った。
    振動周波数変化の測定は、麦芽高分子濃縮物1点につき3ないし4回の測定を行い、その平均値を用いた。 発酵試験による酵母凝集活性強度(DPF)と麦芽高分子濃縮物添加1分後の振動周波数変化の相関を求めた。

    結果は、図3に示される通りであった。 結果に示されるように、両者には良好な相関が認められた。

    図は、実施例2における測定結果を示す。

    図は、実施例3における測定結果を示す。

    図は、実施例4において得られた、酵母凝集活性強度(DPF)と麦芽高分子濃縮物添加1分後の振動周波数変化との相関関係を示すグラフである。

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