【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は天井壁や側壁として使用するのに好適なホーロー製壁板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来のホーロー製壁板として、例えば特公昭62−61503号公報、特公昭62−61504 号公報および特公昭62−60354号公報に記載されたエレベータの乗かご用側壁が知られている。 これらは図3に示すように素地金属板1bにうわ薬1cを塗布し、乾燥後750℃乃至850℃の温度で焼成して表面をホーロー処理したホーロー製壁板1で形成されていた。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし上述した従来のホーロー製壁板は、剛性の点で難点があり、荷物などを衝突すると比較的簡単に変形してしまう。 この点、例えば鋼板製の乗かご側壁では、図2に示すように側壁の裏面に山形状の補強板1aを固着し、この補強板1aによつて側壁の剛性を高め、荷物などの衝突によつて容易に変形しないようにしている。 そこで、この種の補強板1 aによつて上述のホーロー製壁板1を補強することが考えられるが、ホーロー製壁板1が反つてしまい、さらにその一部が変色してしまう。 つまり図4に示すように素地金属1bの裏面に補強板1aを固着すると共に、素地金属板1bの表面にうわ薬1cを塗布して焼成すると図示のように反りが発生してしまう。 【0004】これは、素地金属板1bとうわ薬1cの間には、両者の熱膨張係数の差による焼成歪みが発生するのに対し、補強板1a自体には焼成歪みが発生しないためであり、図4に示すようにホーロー製壁板1には中央部が補強板1a方向に変形した反りAが発生する。 またホーロー製壁板1は、図4に示す補強板1aが裏面から固着されている領域Bで、冷却速度が他の部分と異なるために変色してしまう。 このため十分な強度を有するホーロー製壁板を得ることができなかつた。 【0005】本発明の目的は、反りと変色を防止すると共に十分な強度を有するホーロー製壁板の製造方法を提供するにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、焼成後のホーロー製壁板の裏面に接着剤を介して補強板を配置し、この補強板に焼成時の熱変形を補正する圧力を加えながら上記ホーロー製壁板と上記補強板間を接着したことを特徴とする。 【0007】 【作用】本発明によるホーロー製壁板の製造方法は上述の如きであるから、ホーロー製壁板の裏面に設けられた補強板は、焼成後にホーロー製壁板の裏面に接着されるので、従来のように補強板によつてホーロー製壁板に反りが生じることはなく、また、焼成の過程で冷却速度の異なる領域も生じないので、ホーロー製壁板に変色部分が発生することもない。 また補強板に圧力を加えながらホーロー製壁板との間の接着を行なうので、焼成時の熱変形の補正も同時に行なうことができる。 【0008】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面によつて説明する。 【0009】図1は本発明の一実施例によるホーロー製壁板の製造工程を示すフローチヤートである。 【0010】先ず、工程10の如く板厚1.2〜1.6 mmの素地金属板1bに両端部を同一方向に屈折する曲げ加工を施した後、素地金属板1bの外表面にホーローのうわ薬1cを全面にわたつて塗布する。 次の工程11 では、うわ薬1cが乾燥したことを確認して、炉内において温度750℃〜850℃で焼成して、ホーロー製壁板1を形成する。 【0011】このホーロー製壁板1を常温まで冷却した後に、工程12の如く平坦なテーブル2上にホーロー製壁板1の表面が接するように載せ、裏面にけい酸カルシウム板等の補強板1eを接着剤を介して配置する。 このときの補強板1eは、ホーロー製壁板1の端から寸法l だけ離れた幅を有したものとする。 また、このとき工程13として示すように補強板1eの裏面側から一様にP Kg/m 2の圧力を加えながら補強板1eをホーロー製壁板1に接着させる。 【0012】次に工程12における寸法Lと、工程13 における圧力Pについて説明する。 一般に天井壁や側壁は、複数枚のホーロー製壁板1が接続されて使用されるため、ホーロー製壁板1の両側に折り曲げられて形成された起立部を必要とし、この起立部はねじ固定用などの目的で利用される。 その場合の作業性を考慮するとL= 25mm以上とするのが望ましい。 しかし、この実施例では25mm<L<35mmの範囲に制限して、補強板1eに圧力Pを加えることを補つている。 つまり、圧力Pとしては、素地金属板1bを1.2〜1.6mmとした場合、150Kg/m 2 〜200Kg/m 2とするなら焼成時の熱変形を接着と共に除去できることが分かつた。 この圧力Pは使用している素地金属が1.2〜1. 6mmと薄板を使用していることなどにより、上述のように規定して熱変形を除去できる。 一方、寸法Lを上述した値よりも大きくしたり、圧力Pを上述した値よりも大きくすると、補強板1eに対向する部分のホーロー製壁板1が圧力Pの方向に浮き出てしまうことが分かつた。 従つて、素地金属板の厚みと、寸法Lと、圧力Pは上述のように規定するのが良い。 【0013】このようにホーロー製壁板1は、その焼成後に、ホーロー製壁板1の裏面に補強板1eが接着されるので、焼成時の反りや冷却速度の差で変色が生ずることがなく、また、裏面に設けた補強板1eによつて充分な剛性を有するので、荷物などが突き当つて変形したり破損したりするのを防ぐことができる。 尚、補強板1e としてアスベストを含有しないけい酸カルシウム板を用いたため、建屋の空気環境を悪化させることもなく、乗かご外の機械音などの騒音を遮断する防音効果も有するが、補強板1eとして例えば酸化アルミニウム板を使用することもできる。 【0014】 【発明の効果】以上説明したように本発明は、焼成後のホーロー製壁板の裏面に補強板を接着するようにし、しかも、この接着時に補強板の裏面から圧力を加えるようにしたため、ホーロー製壁板の反りや変色を生ずることなく剛性を高めることができると共に、焼成時の熱変形を吸収しながら補強板の接着を行なうことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例によるホーロー製壁板の製造工程を示すフローチヤートである。 【図2】従来のホーロー製壁板の構成を示す縦断面図である。 【図3】本発明の一実施例によるホーロー製壁板の縦断面図である。 【図4】図3に示すホーロー製壁板に補強板を取り付けた場合の反りの発生を示す縦断面図である。 【符号の説明】 1 ホーロー板 1a 補強板 1b 素地金属板 1c うわ薬 2 テーブル l 寸法 P 圧力 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 郷古 洋 東京都千代田区神田錦町1丁目6番地 株 式会社日立ビルシステムサービス内 |