【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、各種部品や製品における比較的小径の透孔又は穴の内周面付近を確実に焼入れするための高周波焼入れ装置に関する。 【0002】 【従来の技術】高周波焼入れは、例えば歯車における各歯の側面のみを硬くするため、略矩形の銅製コイルで一つの歯の周囲を囲い、高周波電流を流し各歯の側面付近に誘導電流(渦電流)を流して短時間に表層のみを焼入れしている(一歯一発焼入れ)。 また、シリンダのような中空部品に形成された透孔の内周面付近を硬くして耐摩耗性を高めるため、図5に示すような焼入れ装置100が使用されている。 即ち、焼入れ装置100は、中空部品102を貫通する透孔104内に、U字形で銅製の中空コイル106を挿入し、このコイル106に高周波電流を流す。 コイル106の中空部108には冷却水Wが循環して供給される。 また、図5でコイル106の先(上) 端を囲うように、平面視でリング状の冷却水供給盤11 0が配置され、その内周面に設けた複数のノズル孔11 2からコイル106と透孔104の内周面との間に冷却水Wを噴射可能とされている。 【0003】更に、中空部品102は図示しない手段により、透孔104を中心にして回転可能とされている。 尚、前記コイル106はその基端で図示しない高周波電源に接続されている。 図5に示す状態で、中空部品10 2を回転しつつコイル106に高周波電流を流すと、透孔104の内周面付近に渦電流VEが誘起され、係る内周面の表層を急速に加熱する。 係る加熱状態の内周面に対し、前記冷却水供給盤110から冷却水Wを噴射することにより、透孔104の内周面付近が均一な硬さに焼入れされ、所要の耐摩耗性が付与される。 【0004】しかしながら、前記焼入れ装置100では、中空コイル106を構成するパイプ107の外径が4mmで且つU字形を形成するパイプ107同士の間隔が4mmであり、コイル106と透孔104の内周面との間隔に1.5mmを要する。 このため、中空部品102の透孔104の内径は、少なくとも15mm以上のサイズでないと焼入れが行えない。 従って、内径が15mm未満の透孔104の内周面付近を焼入れするには、中空部品10 2全体を焼入れし且つ焼戻しせざるを得ず、装置が大型になり取扱いも煩雑になると共に、不必要な部分まで焼きが入ってしまう、という問題点があった。 【0005】更に、前記焼入れ装置100では、U字形のコイル106を用いるため、一方のパイプ107から発生する誘導磁界が他方のパイプ107からの磁界に干渉され、誘導電流が近接する内周面に生じにくくなる。 しかも、係る各パイプ107の表面から離れた位置の内周面は、中空部品102の回転により追って順次加熱されるものの、加熱効率が低く且つ焼入れ硬さや深さにバラツキを招き易い、という別の問題点もあった。 加えて、中空部品の透孔の内周面に施した焼きが、所定の硬さと深さを有しているか否かは、各被処理品の透孔ごとに事前にテストを繰返して行い、前記コイルへの供給電流、被処理品の回転速度、及び、冷却水の噴射タイミングを定めている。 このため、多種少量生産の被処理品における透孔の内周面に焼入れを施すには、前記焼入れ装置100を用いる方法では、効率が悪く不向きであった。 【0006】 【発明が解決すべき課題】本発明は、以上において説明した従来の技術における問題点を解決し、例えば被処理品における内径が15mm未満の比較的小径の透孔又は穴における内周面付近を、所望の硬さに精度良く焼入れすることが容易且つ確実にできる高周波焼入れ装置を提供することを課題とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、比較的小径の透孔等の内周面付近における加熱温度をリアルタイムで測定しつつ、焼入れ条件を設定し所望の硬さと深さで精度良く、容易且つ確実に焼入れを施すことに着想して成されたものである。 即ち、本発明の高周波焼入れ装置は、予め拘束した被処理品の透孔又は穴内に間隔を置いて略同心に挿入する通電管と、 この通電管の一端に導通する高周波電源とを備え、上記通電管の他端を上記被処理品と導通し、被処理品の透孔又は穴の内周面と上記通電管との間及び通電管の中空部内に冷却媒体を供給し、且つ、上記通電管及び被処理品への通電により、上記透孔又は穴の内周面付近を誘導加熱と通電加熱とを併用して、上記透孔又は穴の内周面付近を焼入れする装置であって、上記通電管の中空部内を通り且つ通電管に穿設した通孔から突出する光ファイバの一端を上記透孔又は穴の内周面に近接し、且つ上記光ファイバの他端を通電管から外部に導出すると共に、光ファイバからの光信号を光/電気変換手段によって電気信号として出力することにより、上記透孔又は穴の内周面付近の加熱温度を測定する、ことを特徴とする。 【0008】これによれば、内径が15mm未満の小径の透孔又は穴における内周面付近を確実に焼入れできると共に、その加熱温度を即座に測定できるため、精度の良い焼入れ処理を施すことが可能となる。 上記光/電気変換手段は、例えばシリコンフォトセル等からなる光量検出部を含み、光ファイバを経て送られる赤外線等の光信号をその波長又は強度に応じて電気信号に変換するものが用いられる。 尚、本明細書においては、「透孔」とは部品や製品(被処理品)を貫通する細径の中空部を、「穴」とは部品等でその表面から進入して途中で止り且つ底を有する細径の凹みを指称するものとする。 【0009】また、前記測定された加熱温度の電気信号を取り込み、予め設定された焼入れ温度と比較して差を演算し、その演算結果に基づいて高周波加熱装置に加熱温度を調整するための指示を出力する温度制御手段を更に有する、高周波焼入れ装置も含まれる。 これにより、 前記透孔等の内周面付近の加熱温度を可及的に予め設定した焼入れ温度に近付けることができ、精度良く焼入れすることが可能となる。 更に、前記演算された演算結果に基づき、前記加熱温度が適正になった時点で前記被処理品の透孔又は穴の内周面付近に焼きを入れる冷却媒体を透孔又は穴の内周面に対し噴射する電磁弁等の噴射手段を更に有する、高周波焼入れ装置も含まれる。 これによれば、所要の加熱(焼入れ)温度においてタイミング良く冷却媒体を前記透孔等の内周面に噴射でき、所望の焼入れを確実に施すことができる。 【0010】また、前記焼入れ処理を施された前記被処理品の透孔又は穴の内周面付近における焼入れ硬化深さを測定する硬化深さ測定手段と、測定された硬化深さと予め設定された硬化深さ設定値とを比較・演算し、その演算結果に基づき最適焼入れ温度を再設定する焼入れ温度再設定手段とを、更に有する、高周波焼入れ装置も含まれる。 これによれば、焼入れによって硬くなる硬化層の厚みを所望の厚さに容易にすることができ、一層精度の良い焼入れ処理を行うことが可能となる。 【0011】更に、前記硬化深さ測定手段が、前記焼入れされた透孔又は穴の内周面の長手方向に沿って被処理品の外周面の2個所で接触する一対のプローブと、各プローブを接続するコアと、このコアの両端又はこれに連続する各プローブの基部の周面に巻付けた一対のコイルと、上記コアの中間に貫通して配置した磁束検出手段と、を含む、高周波焼入れ装置も含まれる。 これによれば、各プローブ間において被処理品の内部を通る磁束が、焼入れによる硬化層の厚みに応じて貫通し易くなるため、コア側の磁束検出手段により、焼入れ硬化深さを精度良く検出することが可能となる。 尚、磁束検出手段には、例えばホール素子が用いられる。 【0012】 【発明の実施の形態】以下において本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。 図1は、本発明による高周波焼入れ装置1の全体の概略を示す。 この装置1は、 図示で左側の焼入れ部2と、右側の温度制御手段70、 硬化深さ測定手段80、及び、焼入れ温度再設定手段92 とを主な構成要素とする。 焼入れ部2は、図1及び図2 に示すように、被処理品4の透孔6内に同心に挿入する通電管(コイル)10と、この通電管10をその上下から嵌合して保持する上ホルダ12及び下ホルダ20と、下ホルダ20の下方に絶縁体30を介して配置される支持材34とを有する。 被処理品4は、全体が略円筒形状でその中心における透孔6の上端にはリング片7とその内側の段部5が、透孔6の下端には段部9がそれぞれ形成されている。 また、通電管10は、銅製の円形管で外径が約4mm、その中空部10aの内径が約2mmであり、中間には光ファイバ40の先端41を貫通させる通孔10bが穿設されている。 【0013】また、図2に示すように、上ホルダ12は金属製の略円筒体で通電管10の中空部10aに連続する同径の中空部13と、その上端から立設するリング鍔14と、中空部13の下端に同心に位置する凹所15 と、その周囲を囲んで垂下するリング片16、及びその外側に位置するリング溝17とを有する。 上記凹所15 には、水平に貫通する給水路18の一端が開口し、加熱後の被処理品4を冷却する冷却水(冷却媒体)Wが供給される。 更に、下ホルダ20も金属製の略円筒体で、被処理品4の透孔6に連続する同径の中空部22と、その上端に立設するリング片24と、図1,2で左側に突出する端子部28とを有し、円筒形の本体21の底面に沿って中空部22に連通する水平な排水路26が形成されている。 上記端子部28は、後述する高周波電源(74)と接続されている。 【0014】前記絶縁体30は、セラミック等からなる円筒体で、その中心部に前記通電管10を貫通させる中空部32を有する。 該絶縁体30は、下ホルダ20と次述する支持材34との間を電気的に絶縁する。 また、絶縁体30の下側に隣接する支持材34は、金属製で円筒形の本体35の中心部に前記通電管10の下端(一端)を接触して貫通させる中空部36を有し、図1及び図2で左側に突出する端子部38と、その反対側に突出する固定部37とを有する。 端子部38は後述する高周波電源 (74)と接続される。 更に、前記被処理品4と下ホルダ20との嵌合部の外側には、絶縁性のリング板42が配置され、支持材34の固定部37との間にボルト・ナット39が配設されることにより、互いに位置固定している。 【0015】また、図1,2に示すように、被処理品4 を貫通させる中心孔43を挟んで、リング板42上の左右にロッド44,46が立設し、ロッド44の上端には水平なピン45が、ロッド46の上端には垂直なボルト47が設けてある。 ピン45には押え板48の右端が回転自在に支持され、ボルト47は押え板48の左端に明けた通し孔を貫通してナット49とネジ結合する。 係る水平な押え板48は、前記上ホルダ12の上面を押圧し、被処理品4を下ホルダ20寄りに押し付ける。 即ち、図3に示すように、下ホルダ20の前記リング片2 4は、被処理品4の透孔6の下端における段部9に嵌合し、被処理品4の前記リング片7は上ホルダ12のリング溝17内に嵌合すると共に、上ホルダ12のリング片16は被処理品4のリング片7の内側に位置する段部5 内に嵌合する。 また、通電管10の上端(他端)は、上ホルダ12の凹所15の水平面に当接する。 【0016】従って、図3に示すように、通電管10の外周面と上・下ホルダ12,20、及び被処理品4の透孔6との間には、垂直なパイプ形の冷却水(冷却媒体)W の流路が形成される。 この冷却水流路の上・下端に前記給水路18と排水路26とが連通している。 これらにより、図3中に破線で示すように、追って加熱された被処理品4を焼入れするための冷却水Wの循環路が形成される。 また、図3に示すように、例えば支持材34の端子部38を経て供給される高周波の交流電流Eは、通電管10を通じで上ホルダ12、被処理品4、及び下ホルダ2 0に供給され、下ホルダ20の端子部28から高周波電源74に還流する。 即ち、高周波電流Eは上記の経路全体を一巻きのコイルとして流れる。 係る電流Eが通電管10を通過する際、上記冷却水流路を介して近接して対向する被処理品4の透孔6の内周面付近を誘導加熱すると共に、電流Eが被処理品4自体を通過する際に被処理品4を更に通電加熱する。 【0017】更に、通電管10の中空部10a内には、 下方から光ファイバ40が挿入され、その先端(一端)4 1が前記通孔10bを貫通して焼入れされる透孔6の内周面に近接して配置される。 係る光ファイバ40は、直径約250μmの石英ガラス線を内蔵し、その外側面及び先端41は防水構造とされている。 また、上ホルダ1 2のリング鍔14にはホース50が接続され、通電管1 0の下端にはホース54が接続される。 図3中に破線で示すように、ホース50から通電管10の中空部10a 内に予め通電管10自体を常に冷却する冷却水Wが送られる。 尚、図1〜図3中の符号52,56は各接続部の防水用シールを示す。 従って、図1,3のようにセットされた焼入れ部2において、高周波電流Eを通電し、被処理品4の透孔6の内周面付近を誘導加熱及び通電加熱し、所定の焼入れ温度に達するよう加熱する。 所定の加熱温度と時間を経た後、給水路18から冷却水Wを供給し、被処理品4の透孔6の内周面付近を急冷して焼きを入れる。 これにより、透孔6の内周面付近に所要硬さの焼入れを施すことができる。 【0018】図1に示すように、通電管10とホース5 4の下端から焼入れ部2の外部に導出し、且つ右側に延びた光ファイバ40の基端(他端)41aは、光/電気変換手段60に接続される。 変換手段60は、シリコンフォトセルからなる光量検出部(光/電気変換素子)62、 電気信号増幅部63、A/D変換器64、リニアライズ回路66、及び、D/A変換器68からなる。 光量検出部6 2は光ファイバ40から送られた赤外線(光信号)Lをその波長又は強度に対応して電気信号に変換する。 得られた加熱温度の電気信号は、上記増幅部63で増幅され、上記変換器68からアナログ信号として、次述する温度制御手段70に送られる。 尚、上記回路66から符号69 で示す矢印のように、上記電気信号をデジタル表示することもできる。 また、光/電気変換手段60は、少なくとも光量検出部62、又はこれと同等の機能を有する素子等を含んでいれば、その形態を特に限定されるものではない。 【0019】温度制御手段70には、例えばパソコン7 2が用いられ、上記加熱温度の電気信号を取り込み且つ予め設定された焼入れ用加熱温度をそのRAMから引き出して、そのCPUで比較して両者の差を演算(差分処理を含む)する。 得られた演算結果(差の値)に基付き、 高周波加熱装置(高周波電源)74に加熱温度を調整すべく指示(矢印73)を出力する。 高周波加熱装置74は、 上記指示に基付き、供給する高周波電流の出力値を変更するか、或いは図示しない加熱時間のタイマーを変更させる。 これにより、ケーブル76から前記端子部28, 38を経て焼入れ部2へ供給される高周波電流の出力値を変えたり、又はその通電時間が変更される。 その結果、被処理品4における透孔6の内周面を所定の焼入れ温度によって精度良く加熱・保持することができる。 【0020】また、温度制御手段70は、図1に示すように、上記操作により被処理品4が所定の焼入れ温度に加熱された時点で電磁弁78に開く指示77を出力し、 図中の破線で示すように、冷却水Wを前記給水路18から被処理品4と通電管10間の冷却水流路に噴出させる。 この結果、被処理品4の透孔6の内周面付近は急冷され焼きが適正に入るため、所要硬さの焼入れを一層確実に施すことができる。 以上のような高周波焼入れ装置1によれば、光ファイバ40により被処理品4の焼入れ部分(6)の加熱温度を当該部分が発する光信号Lである赤外線等により、リアルタイムで正確に測定できるため、所定の加熱温度に容易に是正して保持でき、且つタイミング良く急冷して、所望の焼入れを施すことが容易に行える。 【0021】ところで、被処理品4に形成した焼入れ層の深さ(硬化深さ)は、以上に説明した温度管理と急冷タイミングの管理のみで、且つ1個〜数個程度の処理ではバラツキが生じ易い。 そこで、図1の右下に示した焼入れによる硬化深さを測定する硬化深さ測定手段80、及び焼入れ温度再設定手段92が更に用いられる。 図4 (A)及び(B)に示すように、測定手段80は、電磁ステンレス鋼からなる凹形のコア82と、その両端に固着した長短一対のプローブ83,84と、コア82の両端付近に巻付けた一対の銅線コイル86を有する。 プローブ83,84の上端には被処理品4の異なる外径の外周面8に面接触するため、互いに半径の異なる湾曲面fが形成されている。 また、コア82の中央に穿設された細径で垂直な透孔85内には、細いホール素子(磁束検出手段)88が挿入されている。 【0022】図4(A)に示すように、各プローブ83, 84上に予め焼入れ処理を施した被処理品4を載置し、 上方から図示しないプレスで下向きに押し付ける。 この状態で各コイル86に電流を流すと、右ネジの法則によりコア82内に磁力線が生じる。 この磁力線は、図中の破線で示すようにプローブ84から多数の磁束Gとなって被処理品4の内に進入し、プローブ83からコア82 に戻る。 ところで、被処理品4の透孔6の内周面付近に形成された硬い焼入れ層hが厚いと、磁束Gは通過し易くなる。 従って、被処理品4を通過してコア82内に戻った磁束Gの数又は密度を上記ホール素子88により検出することにより、焼入れ層hの厚みを検知することが可能となる。 【0023】即ち、ホール素子88からの電気信号は、 硬化深さ測定部90に送られ、既知のデータとの対比等により、被処理品4における焼入れ層hの厚みを演算する。 係る厚み値は、図1に示すように、焼入れ温度再設定手段92の演算処理部94に送られ、該処理部94で予め設定された焼入れ硬化深さとの差を演算される。 得られた演算結果に基付き、焼入れ温度再設定部96において焼入れ温度が変更される。 この再設定部96から前記温度制御手段70に加熱温度を調整する指示が出力される。 尚、再設定手段92は前記パソコン72内に併設しても良い。 係る硬化深さ測定手段80によって、焼入れ済みの被処理品4における焼入れ層hが所定の厚みより外れている場合、焼入れ温度再設定手段92から所定の焼入れ硬化深さに是正すべく新たな焼入れ温度が温度制御手段70に出力される。 従って、上記測定及び是正の後においては、焼入れ層hが所定の厚みを有する被処理品4を確実且つ容易に前記焼入れ部2おいて精度良く得ることができる。 尚、上記焼入れ温度の変更に対応して、高周波電流値は勿論、その通電(加熱)時間もこれを管理するタイマーを調整することにより変更される。 【0024】本発明は、以上に説明した形態に限定されるものではない。 例えば、被処理品における焼入れ部分には、その表面から進入して途中で止り且つ底を有する細径の凹みである穴の内周面付近も含まれる。 この際、 通電管を冷却する冷却水は例えば通電管内の中空部内をUターンさせ、且つ通電管と穴の内周面との間に供給する冷却水も穴の開口部寄りから噴射し且つ排出させる。 また、前記透孔や上記穴の断面形状には、円形に限らず、楕円形、長円形、四角形以上の正多角形又は変形多角形も含まれ、これらに挿入する通電管の断面形状もそれぞれと相似形のものが用いられる。 或いは、前記透孔や上記穴が、その長手方向に沿って緩いテーパを有する場合でも、係るテーパに倣った傾斜した外周面を有する通電管を用いることにより、その内周面付近を焼入れすることができる。 加えて、比較的大径の透孔や穴の内周面に形成されたキー溝等の一部分に対しても、上記キー溝等の断面形状と相似形の通電管を用いることで、その内周面付近を焼入れすることが可能となる。 【0025】更に、1つの通電管に挿入する光ファイバは2本以上としても良い。 例えば、通電管の両端から個別に2本の光ファイバを導入し、異なる位置でそれらの先端を当該通電管を貫通させ、焼入れされる透孔や穴の内周面に近接させることも可能である。 望ましくは透孔や穴の内周面に対し、その軸方向に沿って3個所以上で3本の光ファイバの先端を配置すると、一層精度良く加熱温度を測定できる。 また、1つの前記光/電気変換手段及び1つの温度制御手段により、複数の前記焼入れ部における被処理品の加熱温度を個別に測定し、且つ各加熱温度を調整する操作を並行して行うことも可能である。 この場合、各焼入れ部にセットされる被処理品が互いに異なり且つ透孔や穴の寸法等が相違していても、それぞれに対応して温度測定と温度調整を並行して行うことができる。 【0026】尚、加熱された被処理品の透孔や穴の内周面付近に焼きを入れる冷却媒体は、前記冷却水に限らず、油や冷風を用いることにより、油焼入れ又は衝風焼入れすることも可能である。 付言すると、前記焼入れした後に行う焼戻しには、当該被処理品全体を再度所定温度域に加熱する方法の他に、焼入れされた透孔や穴内にピン形状のヒータ等を挿入して施す方法、或いは、焼入れ後の被処理品をそのまま常温中に放置して自然に焼き戻す方法等が用いられる。 【0027】 【発明の効果】以上において説明した本発明の高周波焼入れ装置によれば、被処理品における内径が例えば15 mm未満の比較的小径の小径の透孔又は穴における内周面付近を確実に焼入れできると共に、その加熱温度を即座に測定できるため、精度の良い焼入れ処理を施すことが可能となる。 また、請求項2に記載の高周波焼入れ装置によれば、前記透孔等の内周面付近の加熱温度を可及的に予め設定した焼入れ温度に可及的に近付けることができ、精度良く焼入れすることが可能となる。 更に、請求項3に記載の高周波焼入れ装置によれば、所要の加熱温度においてタイミング良く冷却媒体を前記透孔等の内周面に対して噴射でき、所望の焼入れを一層確実に施すことができる。 加えて、請求項4に記載の高周波焼入れ装置によれば、焼入れによる硬化深さを所望の厚さに容易に操作することができ、一層精度の良い焼入れ処理を効率良く行うことが可能となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の高周波焼入れ装置の全体を示す概略図。 【図2】図1の高周波焼入れ装置に用いる焼入れ部を示す分解斜視図。 【図3】図1,図2の焼入れ部を示す垂直断面図。 【図4】(A)は本発明の高周波焼入れ装置に用いる硬化深さ測定手段の概略図、(B)は(A)中のコア等を示す斜視図。 【図5】従来の高周波焼入れ装置を示す部分断面図。 【符号の説明】 1……………高周波焼入れ装置 2……………焼入れ部 4……………被処理品 6……………透孔 8……………外周面 10…………通電管 10a………中空部 10b………通孔 40…………光ファイバ 41…………先端(一端) 41a………基端(他端) 60…………光/電気変換手段 62…………光量検出部(光/電気変換素子) 70…………温度制御手段 73…………指示 74…………高周波加熱装置(高周波電源) 78…………電磁弁(噴射手段) 80…………硬化深さ測定手段 82…………コア 83,84…プローブ 86…………コイル 88…………ホール素子(磁束検出手段) 92…………焼入れ温度再設定手段 E……………高周波電流(通電) L……………赤外線(光信号) W……………冷却水(冷却媒体) 【手続補正書】 【提出日】平成11年3月29日(1999.3.2 9) 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】請求項2 【補正方法】変更 【補正内容】 【手続補正2】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0009 【補正方法】変更 【補正内容】 【0009】また、前記測定された加熱温度の電気信号を取り込み、予め設定された焼入れ温度と比較して差を演算し、その演算結果に基づいて前記高周波電源に加熱温度を調整するための指示を出力する温度制御手段を更に有する、高周波焼入れ装置も含まれる。 これにより、 前記透孔等の内周面付近の加熱温度を可及的に予め設定した焼入れ温度に近付けることができ、精度良く焼入れすることが可能となる。 更に、前記演算された演算結果に基づき、前記加熱温度が適正になった時点で前記被処理品の透孔又は穴の内周面付近に焼きを入れる冷却媒体を透孔又は穴の内周面に対し噴射する電磁弁等の噴射手段を更に有する、高周波焼入れ装置も含まれる。 これによれば、所要の加熱(焼入れ)温度においてタイミング良く冷却媒体を前記透孔等の内周面に噴射でき、所望の焼入れを確実に施すことができる。 |