【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、硫化水素とアセトニトリルからチオアセトアミドを製造する改良方法を提供する。 【0002】 【従来の技術】チオアセトアミドは多数の工業用途を有する市販の化学物質であり、別の化学物質の合成においても多目的に使用される試薬である。 硫化水素とアセトニトリルが反応するとチオアセトアミドを生成することはよく知られている。 米国特許第2,421,031号は、約500°Fの温度で触媒8−14メッシュSiO 2 Al 2 O 3ゲルを使用し、硫化水素を基準にして収率8 5%が得られることを開示している。 該反応は種々の塩基によっても触媒される。 Jaworskiらは、ベンゼンまたはトルエン中で実施される220時間の反応にトリエチルアミンを使用することを開示している〔 Po lish J. Chem . ,52(10):2067− 8,1978〕。 Girgisは、第二級アミンを含むアミン触媒の使用を開示している〔カナダ国特許第94 6,392号(1974);米国特許第3,852,2 87号(1974);米国特許第3,700,664号(1972)〕。 より最近では、アミノチオアセトアミド製造のためのアミノニトリルと硫化水素の反応の触媒として、アルカリ金属スルフィド及びヒドロスルフィドが開示されている〔Moder et al. ,欧州特許公開第0 272909号〕。 Moderらは、かねてから使用されているアミンベースの触媒は反応完了後に除去するのが困難であるため、上記触媒が好ましいとしている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、反応後の処理が最少限であり、触媒が再使用可能である、収率及びコスト効率の高いチオアセトアミド製造方法を提供する。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、ポリマー担持(polymer−supported)アミン触媒の存在下に硫化水素とアセトニトリルからチオアセトアミドを製造する方法を提供する。 反応は、硫化水素ガスを使用することから加圧下に実施する。 反応温度は限定的ではないが、工業的に合理的な反応時間のために、約1 00〜200℃に維持されるのが好ましい。 これより高い温度では所望の生成物が一部分解し得る。 従って、1 50℃を超えない温度が好ましく、約120〜130℃ に維持されればより好ましい。 【0005】本発明に使用される反応物質は市販されている。 これらは実質的に等モル量で使用してもよいし、 アセトニトリルを硫化水素に対してモル過剰量で使用してもよい。 モル過剰量のアセトニトリルを使用するとアセトニトリル中にチオアセトアミドを含む溶液が生成される。 そうするとチオアセトアミドの取り扱いは容易になり、これは、以下に示すような後続反応のためには望ましい形態のチオアセトアミドである。 【0006】反応は、バッチで行なうこともできるし、 管状反応器内で行われるような連続反応で行なうこともできる。 本発明の方法を効率的に実施するのに必要な相対的触媒量は、反応器の大きさ及び形状、並びに混合及び熱交換の効率に従う。 本発明に有用なポリマー担持アミン触媒は広範な効力を有する。 最適条件を決定するためには、当業者には周知の慣用プロセス開発実験が必要であるが、後述の実施例は、有効な組合せについての指標となろう。 【0007】ポリマー担持アミン触媒は、側鎖アミノ官能性を有する任意のポリマーとし得る。 アミンはアルキルもしくはアリールアミン、またはピリジンのような複素環式アミンであり得る。 ポリマー担持アミンは、第2 ポリマー種で架橋することもできる。 除去及びリサイクルが容易なよう、ポリマー担持アミン触媒はアセトニトリルに不溶性であるのが好ましい。 その例としては、異種ゲルまたはマクロレティキュラー樹脂、例えばジビニルベンゼンポリマーで架橋されたポリ(4−ビニルピリジン)を挙げることができる。 この場合には、25%架橋が本発明において有効であることが判明した。 別の例としては、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)基または4−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)ピリジン(BMAP)を側鎖に有するポリマーを挙げることができる。 主鎖ポリマーは例えばポリスチレンとすることができる。 DMAP基を有するポリマーは本発明の好ましい実施態様である。 【0008】ポリマー担持アミン触媒は、多数の供給源から多数の形態で入手し得る。 その1つは、Reill ey Tar & Chemical Corpora tion(Indianapolis)である。 かかるポリマー担持アミン触媒をどのように製造するかについてはPCT出願第WO 90/03368号(1990 年4月)で検討されており、該出願は参照により本明細書の一部を構成するものとする。 欧州特許出願第0 2 77 824号は、かかるポリマー担持アミン触媒及び酢酸製造におけるそれらの使用を開示している。 【0009】ポリマー担持アミン触媒は多くの利点を有する。 第1に、アセトニトリルに不溶性であり、反応液から濾過によって回収することができる。 或いは、反応物質は透過する(porous)が触媒は透過しない容器、例えば反応容器内に懸吊した、または反応管内の壁もしくはバッフルに取り付けたバスケット内に入れた触媒に、反応物質を暴露する。 【0010】第2に、該触媒は、再生ステップの必要なしにそれを再び使用し得る。 反応物質またはチオアセトアミドによる汚染によって、次の反応におけるその効力が低下することがない。 第3に、反応を中温で実施することができ、分解が僅かしかまたは全くなくて実質的に100%の収率が得られる。 【0011】 【実施例】 実施例1 500mlのアセトニトリルと10gのReilex (登録商標)425またはReilly Poly−D MAP樹脂(Reilly Tar & Chemic als)との混合液を1リットルオートクレーブに導入した。 溶液を撹拌し、110〜130℃に加熱した。 硫化水素ガス(34g,1.0mol)を導入した。 硫化水素がアセトニトリルと反応するにつれて、圧力が約1 45psiから40psiに低下した。 反応を2〜18 時間実施し、次いで混合液を反応器から取り出し、濾過した。 濾液は、アセトニトリル中のチオアセトアミドの約2M溶液であった。 上記反応の変形実験の収率を以下に記す。 収率は、反応における硫化水素の消費のパーセントで表してある。 【0012】 【表1】 【0013】上記各触媒を3回の連続反応に使用したが、本発明の有効性に損失はなかった。 ポリマー担持アミン触媒は、触媒の効力を実質的に失うことなく、本発明方法に何回も使用し得ることが推定される。 【0014】アセトニトリル中にチオアセトアミドを含む溶液の1つの用途は、チアゾールまたはその誘導体を製造することである。 以下の実施例は、チオアセトアミドとエチル 4,4,4−トリフルオロ−2−クロロアセトアセテートから、エチル2−メチル−4−(トリフルオロメチル)トリアゾール−5−カルボキシラートを製造する反応を示す。 この生成物は更に殺菌性のチアゾールカルボキサニリドを製造するために使用し得る。 以下の実施例に使用する方法は、同時出願の同時係属米国特許出願第 号(代理人整理番号41−21(295 1)A)に十分に記載及び開示されており、該特許は参照により本明細書の一部を構成するものとする。 【0015】 実施例2 チアゾール誘導体の製造実施例1で調製したアセトニトリル中にチオアセトアミドを含む溶液(6.66mol)をフラスコに入れた。 エチル 2−クロロ−4,4,4−トリフルオロアセトアセテート(5.06mol)を加えると発熱が認められた。 トリエチルアミン(13.64mol)を加え、 混合液を1時間加熱還流した(約76℃)。 得られた溶液を冷却した。 エチル 2−メチル−4−(トリフルオロメチル)−チアゾール−5−カルボキシラートは標準手段によって単離することができる。 |