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向上した強度および向上した損傷耐久性を有するガラス製容器

阅读:287发布:2024-01-06

专利汇可以提供向上した強度および向上した損傷耐久性を有するガラス製容器专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】層剥離に対する耐性、向上した強度、高い損傷耐性から選択される少なくとも2つの性能特性を有するガラス製容器を提供する。 【解決手段】一実施形態においては、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。圧縮応 力 層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に 位置 され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。 【選択図】なし,下面是向上した強度および向上した損傷耐久性を有するガラス製容器专利的具体信息内容。

コーティングされたガラス製医薬品パッケージであって、 内表面および外表面、ならびにそれらの間に延在する壁を有し、USP<660>に準拠するType Iの基準を満たすホウケイ酸ガラス組成物、またはISO 720−1985試験規格に準拠して試験したときにクラスHGA1加分解耐性を有するアルカリアルミノケイ酸ガラスのうちの1つから形成されたガラス製容器;および 前記外表面の少なくとも一部に配置された100μm以下の厚さを有する平滑コーティング; を備え、 該コーティングされたガラス製医薬品パッケージの前記平滑コーティングを備える外表面の部分が、コーティングされていないガラス製医薬品パーケージよりも少なくとも20%低い摩擦係数を有し、かつ該摩擦係数は発熱物質除去サイクルを受けた後に30%を超えて増大せず、さらに 該コーティングされたガラス製医薬品パッケージの前記平滑コーティングを備える外表面の部分の水平圧縮強度が、コーティングされていないガラス製医薬品パーケージよりも少なくとも10%高く、かつ該水平圧縮強度は発熱物質除去サイクルを受けた後に20%を超えて低下しない、コーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記平滑コーティングは、少なくとも約280℃の温度で30分間熱的に安定である、請求項1に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。少なくとも前記ガラス製容器の内表面が、10以下の層剥離係数を有する、請求項1または2に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記平滑コーティングが、金属窒化物コーティング、金属酸化物コーティング、金属硫化物コーティング、SiO2、ダイアモンドライクカーボン、グラフェンまたはカーバイドコーティングのうちの少なくとも1つを含む無機コーティングである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。該コーティングされたガラス製医薬品パッケージの摩擦係数が0.7以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記発熱物質除去サイクルが、少なくとも30分間、少なくとも250℃の温度に該コーティングされたガラス製医薬品パッケージを加熱することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。発熱物質除去サイクルを受けた後に、約400nm〜約700nmの光波長について、該コーティングされたガラス製医薬品パッケージを通した光透過率が、コーティングされていないガラス製医薬品パッケージを通した光透過率の約55%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記平滑コーティングがポリマーを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記平滑コーティングがカップリング剤をさらに含む、請求項8に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。前記発熱物質除去サイクルが、少なくとも30分間の時間、約250℃〜約400℃の温度に該コーティングされたガラス製医薬品パッケージを加熱することを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコーティングされたガラス製医薬品パッケージ。

说明书全文

関連出願の相互参照

本明細書は、本明細書における参照によりその全体が援用されている、2012年11月30日に出願され、「Glass Containers With Improved Attributes」と題された米国仮特許出願第61/731,767号に対する優先権を主張する。本明細書はまた、本明細書における参照によりそのすべてが援用されている、2013年6月7日に出願され、「Delamination Resistant Glass Containers」と題された米国特許出願第13/912,457号、2013年2月28日に出願され、「Glass Articles With Low−Friction Coatings」と題された米国特許出願第13/780,754号、および、2013年11月8日に出願され、「Glass Containers With Improved Strength and Improved Damage Tolerance」と題された米国特許出願第14/075,630号に対する優先権を主張する。

本明細書は、一般に、ガラス製容器に関し、より具体的には、医薬品配合物の保管に用いられるガラス製容器に関する。

歴史的に、ガラスは、他の材料と比したその気密性、光学的透明性および優れた化学的耐久性のために、医薬品をパッケージングするための好ましい材料として用いられている。特に、医薬品のパッケージングに用いられるガラスは、中に入れられる医薬品配合物の安定性に影響を及ぼすことがないよう十分な化学的耐久性を有していなければならない。好適な化学的耐久性を有するガラスは、化学的耐久性に関して実績を有する、ASTM規格「Type IA」および「Type IB」ガラス組成物におけるガラス組成物を含む。

Type IAおよびType IBガラス組成物が医薬品のパッケージに通例用いられるが、これらは、医薬品溶液に曝露された後に、医薬品パッケージの内表面においてガラス微粒子の脱落または「層剥離」が生じる傾向といった数々の不具合を有するものである。

特に、生産、および、ガラス医薬品パッケージへの充填における高速の処理速度によって、パッケージが処理器具、取り扱い器具および/または他のパッケージと接触することとなり、パッケージの表面に擦傷などの機械的損傷がもたらされる可能性がある。この機械的損傷によってガラス医薬品パッケージの強度が顕著に低減してしまい、ガラスにおいて亀裂が拡大する可能性が高まり、パッケージ中に含まれる医薬品の無菌状態が損なわれるか、または、パッケージが完全に破壊されてしまうことになりかねない。

従って、層剥離に対する向上した耐性、高い強度および/または損傷耐久性の少なくとも2つを組み合わせて示す、医薬品パッケージとして用いられる代替的なガラス製容器に対する要求が存在している。

一実施形態によれば、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。圧縮応層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に位置され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。

他の実施形態において、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。本体は、ASTM規格E438−92に準拠したType1、クラスBガラスから形成され得る。圧縮応力層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に位置され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。

本明細書に記載のガラス製容器の実施形態の追加の特性および利点が以下の発明を実施するための形態に記載されており、これらは、この記載によりある程度において当業者とって容易に明らかとなるか、または、以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲および添付の図面を含む本明細書に記載の実施形態の実施によって、当業者により認識されることとなる。

前述の概要および以下の発明を実施するための形態は共に種々の実施形態を記載するものであり、特許請求されている主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供するものであることが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、種々の実施形態の理解をさらに深めるために含まれており、この明細書に組み込まれていると共にその一部を構成するものである。図面は、本明細書に記載の種々の実施形態を図示するものであり、説明を伴うことにより、特許請求されている主題の原理および作用の説明に役立つものである。

本明細書に記載の実施形態の1つ以上に係るガラス製容器の断面を概略的に図示する。

図1のガラス製容器のサイドウォールの一部分における圧縮応力層を概略的に図示する。

積層ガラスから形成されたガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に図示する。

ガラス製容器の平圧縮強度をテストするための水平圧縮装置を概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係るガラス製容器の内表面の少なくとも一部分に位置されているバリアコーティングを有するガラス製容器を概略的に図示する。

連続層均質性を有するガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に図示する。

連続表面均質性を有するガラス製容器のサイドウォールの一部分を概略的に図示する。

ガラス製容器の外表面に位置された平滑コーティングを備えるガラス製容器を概略的に図示する。

2つのガラス製容器間の摩擦係数を測定するテスト治具を概略的に図示する。

ガラス製容器に適用されるコーティングの熱安定性を評価するための装置を概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、コーティング済みのバイアルおよび未コーティングのバイアルに係る400〜700nmの可視光スペクトルで測定した光透過率データを図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係るガラス製容器の外表面に位置された堅牢性有機平滑コーティングを概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係るガラス製容器の外表面に位置された堅牢性有機平滑コーティングを概略的に図示する。

ポリイミドコーティング層の形成に用いられ得るジアミンモノマーの化学構造を概略的に図示する。

ポリイミドコーティング層の形成に用いられ得る他のジアミンモノマーの化学構造を概略的に図示する。

ガラス製容器に適用されるポリイミドコーティングとして用いられ得る数種のモノマーの化学構造を概略的に図示する。

Type IBガラスおよび非ホウ素含有ガラスに係る揮発に対する組成および温度の影響を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、基材に結合するシランの反応ステップを概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、シランに結合するポリイミドの反応ステップを概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、Type IBガラスバイアルとイオン交換およびコーティングを行った基準ガラス組成物から形成したバイアルとに係る荷重および実測した摩擦係数を報告する表を含む。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、入手状態、イオン交換状態(コーティング無し)、イオン交換状態(コーティングされ、擦過されたもの)、イオン交換状態(未コーティングおよび擦過されたもの)で基準ガラス組成物から形成した管、ならびに、入手状態およびイオン交換状態でType IBガラスから形成した管に対する、4点曲げにおける適用応力に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APS/Novastrat(登録商標)800コーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを概略的に図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、DC806Aコーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、凍結乾燥条件下でテストした異なる平滑コーティング組成物を報告する表である。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、バイアル重畳治具においてテストした、コーティングを有さないガラスバイアルおよびシリコーン樹脂コーティングを有するバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APS/PMDA−ODA(ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)ポリイミドコーティングでコーティングし、バイアル重畳治具において異なる負荷荷重で複数回擦過したバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APSコーティングでコーティングし、バイアル重畳治具において異なる負荷荷重で複数回擦過したバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APS/PMDA−ODA(ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)ポリイミドコーティングでコーティングし、バイアルを300℃に12時間曝露した後にバイアル重畳治具において異なる負荷荷重で複数回擦過したバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APSコーティングでコーティングし、バイアルを300℃に12時間曝露した後にバイアル重畳治具において異なる負荷荷重で複数回擦過したバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、PMDA−ODA(ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)ポリイミドコーティングでコーティングし、バイアル重畳治具において異なる負荷荷重で複数回擦過したType IBバイアルに対する摩擦係数を報告するチャートである。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APS/Novastrat(登録商標)800でコーティングしたバイアルに係る、凍結乾燥前後の摩擦係数を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、APS/Novastrat(登録商標)800でコーティングしたバイアルに係る、オートクレービング前後の摩擦係数を図示する。

異なる温度条件に曝露されたコーティングされたガラス製容器およびコーティングされていないガラス製容器に対する摩擦係数を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に記載のガラス製容器に適用される平滑コーティングのカップリング剤の組成における変更に伴う摩擦係数の変化を示す表である。

発熱物質除去の前後におけるコーティングされたガラス製容器に対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、発熱物質除去の前後におけるコーティングされたガラス製容器に対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、発熱物質除去の前後におけるコーティングされたガラス製容器に対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を図示する。

異なる発熱物質除去条件に係る、コーティングされたガラス製容器に対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、熱処理回数を変更した後の摩擦係数を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、コーティング済みのバイアルおよび未コーティングのバイアルに係る400〜700nmの可視光スペクトルで測定した光透過率データを図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、発熱物質除去の前後におけるコーティングされたガラス製容器に対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、コーティングの顕微鏡写真である。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、コーティングの顕微鏡写真である。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、コーティングの顕微鏡写真である。

比較例の素コーティングバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

比較例の熱処理したバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

比較例の素コーティングバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

比較例の熱処理したバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

コーティングしたままの状態における、粘着促進剤層を有するバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

コーティングしたままの状態における、粘着促進剤層を有するバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

発熱物質除去後における、粘着促進剤層を有するバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

発熱物質除去後における、粘着促進剤層を有するバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、粘着促進剤層を有するバイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

本明細書に示されていると共に記載されている実施形態の1つ以上に係る、粘着促進剤層を有するバイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。

ここで、添付の図面に例を図示したガラス製容器の実施形態をより詳細に説明する。同一または類似の部品の参照には、可能な場合には常に図面全体を通して同一の符号を使用する。本明細書に記載のガラス製容器は、層剥離に対する耐性、向上した強度、および、高い損傷耐性から選択される少なくとも2つの性能特性を有する。例えば、ガラス製容器は、層剥離に対する耐性および向上した強度;向上した強度および高い損傷耐性;または、層剥離に対する耐性および高い損傷耐性の組合せを有し得る。特定の一実施形態において、本明細書に記載のガラス製容器は、層剥離に対する耐性、向上した強度、および、高い損傷耐性から選択される少なくとも2つの性能特性を有する。一実施形態においては、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。圧縮応力層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に位置され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。層剥離に対する耐性、向上した強度、および、高い損傷耐性の種々の組合せを有するガラス製容器を、添付の図面を特定的に参照して本明細書においてより詳細に説明する。

本明細書に記載のガラス組成物の実施形態において、構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、B2O3等)の濃度は、別段の規定がある場合を除き、酸化物を基準としてモルパーセント(mol.%)で明記されている。

「実質的に含まない」という用語は、ガラス組成物における特定の構成成分の濃度および/または不在の説明に用いられる場合、その構成成分がガラス組成物に意図的に加えられていないことを意味する。しかしながら、ガラス組成物は、汚染物または混入物として、微量の構成成分を0.1mol.%未満の量で含有していてもよい。

本明細書において用いられるところ、「化学的耐久性」という用語は、特定の化学的条件に曝露された場合における劣化に対するガラス組成物の耐性能を指す。具体的には、本明細書に記載のガラス組成物の化学的耐久性は、3種の確立された材料テスト規格:2001年3月付けの「Testing of glass−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of hydrochloric acid−Method of test and classification」と題されたDIN 12116;「Glass−−Resistance to attack by a boiling aqueous solution of mixed alkali−−Method of test and classification」と題されたISO 695:1991;「Glass−−Hydrolytic resistance of glass grains at 121 degrees C−−Method of test and classification」と題されたISO 720:1985;および、「Glass−Hydrolytic resistance of glass grains at 98 degrees C−−Method of test and classification」と題されたISO 719:1985に従って評価され得る。各規格および各規格における分類は本明細書においてさらに詳細に説明されている。あるいは、ガラス組成物の化学的耐久性は、ガラス表面の耐久度を評価する、「Surface Glass Test」と題されたUSP<660>、および/または、「Glass Containers For Pharmaceutical Use」と題されたヨーロッパ薬局方3.2.1に従って評価され得る。

「歪点」および「T歪み」という用語は、本明細書において用いられるところ、ガラスの粘度が3×1014ポアズである温度を指す。

本明細書において用いられるところ、「軟化点」という用語は、ガラス組成物の粘度が1×107.6ポアズである温度を指す。

医薬品および/または他の消耗製品の保管に用いられる従来のガラス製容器は、充填、パッケージングおよび/または輸送に際して損傷が生じる可能性がある。このような損傷は表面擦り傷、擦過および/またはスクラッチの形態であり得、過度に深い場合には、貫通き裂、または、さらにはガラス製容器の完全な破壊をもたらし得、これにより、ガラスパッケージの内容物が損なわれてしまう。

加えて、ある種の従来のガラス製容器は、特にガラス製容器がアルカリホウケイ酸ガラス製の場合に、層剥離が生じ易い場合がある。層剥離とは、一連の浸出、浸食および/または風化反応を経てガラスの表面からガラス粒子が放出される現象を指す。普通、このガラス粒子は、パッケージに含まれる溶液中への変性剤イオンの浸出により、パッケージの内表面からもたらされるシリカに富むガラスフレークである。これらのフレークは、一般に、厚さが約1nm〜約2マイクロメートル(μm)であり、幅が約50μmを超えるものであり得る。これらのフレークは主にシリカからなるため、フレークは、一般に、ガラスの表面から放出された後、さらに分解することはない。

従前においては、層剥離は、ガラスを容器形状に再成形する際に用いられる高温にガラスが曝露される場合にアルカリホウケイ酸ガラスにおいて生じる相分離が原因であると仮説が立てられていた。

しかしながら、現在においては、ガラス製容器の内表面からの富シリカガラスフレークの層剥離は、形成直後のガラス製容器の組成上の特徴が原因であると考えられている。具体的には、アルカリホウケイ酸ガラスのシリカ含有量が高いために、ガラスの溶融温度および成形温度は比較的高いものとなる。しかしながら、ガラス組成物中のアルカリおよびホウ酸塩成分は、これよりもかなり低い温度で溶融および/または揮発する。特に、ガラス中のホウ酸塩種は揮発性が高く、ガラスの成形および再成形に必要とされる高温ではガラスの表面から気化してしまう。

具体的には、ガラスストックは、高温で、および、火炎中においてガラス製容器に再成形される。器具速度が高い場合には高い温度が必要とされ、これにより、ガラスの表面の一部からの揮発性ホウ酸塩種の気化が増加してしまう。この蒸発がガラス製容器の内部空間中で生じた場合、揮発したホウ酸塩種はガラス製容器表面の他の領域に再付着して、特にガラス製容器内部の近表面領域(すなわち、ガラス製容器の内表面における領域またはガラス製容器の内表面に隣接する領域)に対し、ガラス製容器表面における組成不均質性を生じさせてしまう。例えば、ガラス管の一端が封止されて容器の底または床が形成されているため、ホウ酸塩種は管の底部分から気化して、管の他の箇所に再付着し得る。容器のヒールおよび床部分からの材料の蒸発が特に顕著であるが、これは、容器のこれらの領域は最も大きく再成形され、従って、最も高い温度に曝露されるためである。その結果、より高い温度に曝露される容器の領域が富シリカ表面を有し得る。ホウ素が付着し易い容器の他の領域は表面に富ホウ素層を有し得る。ガラス組成物の徐冷点よりも高いが、再成形中にガラスが受ける最も高い温度よりは低い温度であるホウ素が付着し易い領域では、ガラスの表面に対するホウ素の取り込みがもたらされる可能性がある。容器中に含まれる溶液は、富ホウ素層からホウ素を浸出し得る。富ホウ素層がガラスから浸出されるに伴って、高シリカガラスネットワーク(ゲル)が残り、水和中に膨潤および歪みを生じ、最終的には表面から剥落してしまう。

本明細書に記載のガラス製容器は、前述の問題の少なくとも2つを軽減させる。具体的には、ガラス製容器は、層剥離に対する耐性、向上した強度、高い損傷耐性から選択される少なくとも2つの性能特性を有する。例えば、ガラス製容器は、層剥離に対する耐性および向上した強度;向上した強度および高い損傷耐性;または、層剥離に対する耐性および高い損傷耐性の組合せを有し得る。各性能特性およびこれらの性能特性を達成する方法を、本明細書においてさらに詳細に説明する。

ここで図1および図2を参照すると、医薬品配合物を保管するためのガラス製容器100の一実施形態が、断面で概略的に図示されている。ガラス製容器100は、一般に、本体102を備える。本体102は内表面104と外表面106との間に延在し、内部空間108を略囲っている。図1に示されているガラス製容器100の実施形態において、本体102は、一般に、壁部分110および床部分112を備える。壁部分110はヒール部分114を介して床部分112に続いている。本体102は、図1に示されているとおり、内表面104と外表面106との間に延在する肉厚部TWを有する。

ガラス製容器100は特定の形状の形態(すなわち、バイアル)を有するものとして図1に図示されているが、ガラス製容器100は、特に限定されないが、Vacutainers(登録商標)、カートリッジ、シリンジ、アンプル、ボトル、フラスコ、小びん、管、ビーカ等を含む他の形状形態を有していてもよいことが理解されるべきである。さらに、本明細書に記載のガラス製容器は、特に限定されないが、医薬品パッケージ、飲料容器等を含む多様な用途に用いられ得ることが理解されるべきである。 強度 図1および2をさらに参照すると、本明細書に記載のいくつかの実施形態において、本体102は、本体102の外表面106から層深度DOLまで、肉厚部TW中に本体102の少なくとも外表面106から延在する圧縮応力層202を備える。圧縮応力層202は、一般に、ガラス製容器100の強度を高めると共に、ガラス製容器の損傷耐久性をも向上させる。具体的には、圧縮応力層202を有するガラス製容器は、一般に、圧縮応力層202が表面損傷から圧縮応力層202におけるき裂の進行を軽減させるため、非強化ガラス製容器と比して、スクラッチ、欠け等などの程度のひどい表面損傷に対して破壊を伴うことなく耐えることが可能である。

本明細書に記載の実施形態において、圧縮応力層の層深度は、約3μm以上であり得る。いくつかの実施形態において、層深度は、10μm超、または、さらには20μm超であり得る。いくつかの実施形態において、層深度は、約25μm以上、または、さらには約30μm以上であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、層深度は、約25μm以上および約150μm以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、層深度は、約30μm以上および約150μm以下であり得る。さらに他の実施形態において、層深度は、約30μm以上および約80μm以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、層深度は、約35μm以上および約50μm以下であり得る。

圧縮応力層202は、一般に、150MPa以上の表面圧縮応力(すなわち、外表面106で測定された圧縮応力)を有する。いくつかの実施形態において、表面圧縮応力は、200MPa以上、または、さらには250MPa以上であり得る。いくつかの実施形態において、表面圧縮応力は、300MPa以上、または、さらには350MPa以上であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、表面圧縮応力は、約300MPa以上および約750MPa以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、表面圧縮応力は、約400MPa以上および約700MPa以下であり得る。さらに他の実施形態において、表面圧縮応力は、約500MPa以上および約650MPa以下であり得る。イオン交換ガラス物品における応力は、FSM(ファンダメンタルストレスメータ(Fundamental Stress Meter))機器で測定が可能である。この機器は、複屈折性ガラス表面に出入りする光を組み合わせる。次いで、測定した複屈折が、物質定数、応力光学係数または光弾性係数(SOCまたはPEC)を介して応力と関連付けられる。2つのパラメータが入手される:最大表面圧縮応力(CS)および層の交換深さ(DOL)。あるいは、圧縮応力および層深度は、リフラクティブニアフィールドストレス(refractive near field stress)測定技術を用いて測定され得る。

圧縮応力層202が、外表面106から本体102の肉厚部TW中に延在しているものとして示され、本明細書に記載されているが、いくつかの実施形態において、本体102は、内表面104から本体102の肉厚部TW中に延在する第2の圧縮応力層をさらに備えていてもよいことが理解されるべきである。この実施形態において、第2の圧縮応力層の層深度および表面圧縮応力は、本体102の肉厚部TWの中心線について、圧縮応力層202の鏡像を形成し得る。

数々の異なる技術を利用して、ガラス製容器100の本体102中に圧縮応力層202を形成し得る。例えば、本体102がイオン交換可能なガラスから形成されている実施形態においては、圧縮応力層202は、本体102においてイオン交換により形成され得る。これらの実施形態において、圧縮応力層202は、溶融塩中の比較的大きなイオンとガラス中の比較的小さなイオンの交換を促進するために、溶融塩浴中にガラス製容器を入れることにより形成される。数々の異なる交換反応を利用して圧縮応力層202を達成し得る。一実施形態において、この浴は、溶融KNO3塩を含有し得、一方で、ガラス製容器100が形成されるガラスは、リチウムイオンおよび/またはナトリウムイオンを含有する。この実施形態においては、浴中のカリウムイオンがガラス中の比較的小さいリチウムおよび/またはナトリウムイオンと交換され、これにより、圧縮応力層202が形成される。他の実施形態において、浴はNaNO3塩を含有し得、ガラス製容器100が形成されるガラスはリチウムイオンを含有する。この実施形態においては、浴中のナトリウムイオンがガラス中の比較的小さいリチウムイオンと交換され、これにより、圧縮応力層202が形成される。

特定の一実施形態において、圧縮応力層202は、KNO3100%の溶融塩浴、あるいは、KNO3およびNaNO3の混合物の溶融塩浴中にガラス製容器を浸漬することにより形成され得る。例えば、一実施形態において、溶融塩浴は、NaNO3を約10%以下で伴うKNO3を含み得る。この実施形態において、容器が形成されるガラスは、ナトリウムイオンおよび/またはリチウムイオンを含んでいてもよい。溶融塩浴の温度は350℃以上および500℃以下であり得る。いくつかの実施形態において、溶融塩浴の温度は400℃以上および500℃以下であり得る。さらに他の実施形態において、溶融塩浴の温度は450℃以上および475℃以下であり得る。ガラス製容器は、塩浴中の比較的大きなイオンとガラス中の比較的小さなイオンとの交換を促進させるのに十分な時間の間溶融塩浴中に保持され得、これにより、所望の表面圧縮応力および層深度が達成される。例えば、ガラスは、所望の層深度および表面圧縮応力を達成するために、0.05時間以上〜約20時間以下の時間、溶融塩浴中に保持され得る。いくつかの実施形態において、ガラス製容器は、4時間以上および約12時間以下の間溶融塩浴中に保持され得る。他の実施形態において、ガラス製容器は、約5時間以上および約8時間以下の間溶融塩浴中に保持され得る。例示的な一実施形態において、ガラス製容器は、KNO3を100%含有する溶融塩浴中において、約400℃以上および約500℃以下の温度で、約5時間以上および約8時間以下の時間をかけてイオン交換され得る。

典型的には、イオン交換プロセスは、高温による応力緩和を抑えるために、ガラスの歪点(T歪み)よりも150℃を超えて低い温度で実施される。しかしながら、いくつかの実施形態において、圧縮応力層202は、ガラスの歪点を超える温度である溶融塩浴中で形成される。この種のイオン交換強化は、本明細書において、「高温イオン交換強化」と称される。高温イオン交換強化において、ガラス中の比較的小さなイオンは、上記のとおり、溶融塩浴由来の比較的大きなイオンと交換される。歪点を超える温度で比較的小さなイオンが比較的大きなイオンで交換されると、発生する応力は解放または「緩和」される。しかしながら、大きなイオンによってガラス中の小さなイオンが置き換えられることで、ガラスの残りの部分よりも熱膨張係数(CTE)が小さい表面層がガラスに形成される。ガラスが冷めるに伴って、ガラスの表面とガラスの残りの部分との間のCTEの差によって圧縮応力層202が形成される。この高温イオン交換技術は、複雑な幾何学的形状を有するガラス製容器などのガラス物品の強化に特に好適であり、典型的には、典型的なイオン交換プロセスと比して強化プロセス時間を短縮すると共に、より深い層深度をも可能とする。

図1および2をさらに参照すると、代替的な実施形態において、圧縮応力層202は、熱強化によってガラス製容器100の本体102に導入され得る。圧縮応力層は、ガラス製容器を加熱し、ガラスのバルク部分と比してガラスの表面を、差異をもって冷却することによる熱強化を介して形成される。具体的には、急速に冷却されたガラスは、ゆっくりと冷却されたガラスよりもモル体積が大きくなる(または密度が低くなる)。従って、ガラスの表面を意図的に急速に冷却した場合には、ガラスの表面は大きな体積を有することとなり、また、ガラスの内部(すなわち、外表面下のガラスの残りの部分)は、熱は表面を介してバルク部分から放出されなければならないために、必然的により遅い速度で冷却されることとなる。本体102の外表面106から肉厚部TWまでにおいてモル体積(または、熱履歴/密度)の連続勾配を形成することにより、放射線状の応力プロファイル(すなわち、本体102の外表面106からの距離が大きくなるに伴って圧縮応力が放射線状に低下する)を有する圧縮応力層202が形成される。熱強化プロセスは、一般に、イオン交換プロセスよりも速く、かつ、安価である。しかしながら、熱強化プロセスによる表面圧縮応力はイオン交換プロセスによる表面圧縮応力よりも一般的に低い。ガラス製容器が熱強化される実施形態においては、得られる圧縮応力層は、ガラス製容器の肉厚部TWの22%以下の層深度DOLまで外表面106から延在している。例えば、いくつかの実施形態において、DOLは、肉厚部TWの約5%〜約22%であり得、または、さらには肉厚部TWの約10%〜約22%であり得る。

典型的な熱強化プロセスにおいて、ガラス製容器100は先ず軟化点まで加熱され、その後、本体102の外表面106がガスジェット等などの流体により軟化点より低い温度まで急速に冷却されて、上記のとおり、本体102の外表面106と本体102の残りの部分との間に温度差が形成される。外表面106と本体の残りの部分との間のこの温度差によって、外表面106から本体102の肉厚部TWに延在する圧縮応力層202が形成される。例えば、ガラスは、最初にその軟化点よりも50〜150℃高い温度まで加熱され、その後、流体をガラスに向けることにより室温まで急速に冷却され得る。この流体としては、特に限定されないが、空気、オイルまたはオイル系流体が挙げられ得る。

ここで図1〜3を参照すると、他の実施形態において、ガラス製容器100は、本体102の少なくとも外表面106における圧縮応力層202の形成に便利である積層ガラス管から成形され得る。積層ガラスは、一般に、ガラスコア層204および少なくとも1つのガラスクラッディング層206aを備える。図3に図示されているガラス製容器100の実施形態において、積層ガラスは、一対のガラスクラッディング層206a,206bを備える。この実施形態において、ガラスコア層204は一般に、第1の表面205aと、この第1の表面205aと反対側の第2の表面205bを備える。第1のガラスクラッディング層206aはガラスコア層204の第1の表面205aと融合されており、また、第2のガラスクラッディング層206bはガラスコア層204の第2の表面205bと融合されている。ガラスクラッディング層206a,206bは、ガラスコア層204とガラスクラッディング層206a,206bとの間に接着剤、コーティング層等などのいずれかの追加の材料を伴うことなく、ガラスコア層204に融合される。

図3に示されている実施形態において、ガラスコア層204は平均コア熱膨張係数CTEcoreを有する第1のガラス組成物から形成されており、また、ガラスクラッディング層206a,206bは平均熱膨張係数CTEcladを有する異なる第2のガラス組成物から形成されている。本明細書に記載の実施形態において、コア層またはクラッディング層の少なくとも一方に圧縮応力層が存在することとなるよう、CTEcoreはCTEcladとは等しくない。いくつかの実施形態において、CTEcoreはCTEcladよりも大きく、これにより、イオン交換または熱強化によることなく、ガラスクラッディング層206a,206bに圧縮応力が生成される。積層ガラスが単一のコア層および単一のクラッディング層を備える場合などのいくつかの他の実施形態においては、CTEcladがCTEcoreよりも大きくてもよく、これにより、イオン交換または熱強化によることなく、ガラスコア層に圧縮応力が生成される。

ガラス製容器が成形される積層ガラス管は、本明細書において参照により援用されている米国特許第4,023,953号明細書に記載されているとおり形成され得る。実施形態において、ガラスコア層204を形成するガラスは、ガラスクラッディング層206a,206bの一方の平均熱膨張係数CTEcladよりも大きい平均熱膨張係数CTEcoreを有するガラス組成物から形成されている。従って、ガラスコア層204およびガラスクラッディング層206a,206bが冷えるに伴って、ガラスコア層204の平均熱膨張係数とガラスクラッディング層206a,206bの平均熱膨張係数との差異によって、ガラスクラッディング層206a,206b中に圧縮応力層が生成される。積層ガラスを用いて容器が成形される場合、これらの圧縮応力層はガラス製容器100の外表面106から肉厚部TWに延在して、肉厚部TW中にガラス製容器の内表面104を形成する。いくつかの実施形態において、圧縮応力層は、ガラス製容器の本体の外表面から、約1μm〜肉厚部TWの約90%である層深度まで肉厚部TW中に延在し得る。いくつかの他の実施形態において、圧縮応力層は、ガラス製容器の本体の外表面から、約1μm〜肉厚部TWの約33%である層深度まで肉厚部TW中に延在し得る。さらに他の実施形態において、圧縮応力層は、ガラス製容器の本体の外表面から、約1μm〜肉厚部TWの約10%である層深度まで肉厚部TW中に延在し得る。

積層管を形成した後、管は、従来の管変換技術を用いて容器形状に成形され得る。

ガラス製容器が積層ガラスから成形されているいくつかの実施形態においては、少なくとも1つのガラスクラッディング層がガラス製容器中に保管されている製品と直接接触するよう、少なくとも1つのクラッディング層がガラス製容器の本体の内表面を形成している。これらの実施形態において、少なくとも1つのクラッディング層は、本明細書においてさらに詳細に記載されているとおり、層剥離に耐性であるガラス組成物から形成され得る。従って、少なくとも1つのクラッディング層は、本明細書においてさらに詳細に記載されているとおり、10以下の層剥離係数を有し得ることが理解されるべきである。

他の代替的な実施形態において、ガラス製容器は、コーティングをガラス本体に適用することにより強化され得る。例えば、チタニアなどの無機材料のコーティングを、すす蒸着または蒸着プロセスによりガラス本体の外表面の少なくとも一部分に適用し得る。チタニアコーティングは、蒸着されるガラスよりも低い熱膨張係数を有する。コーティングおよびガラスの冷却に際して、チタニアの収縮はガラスよりも小さく、その結果、ガラス本体の表面に張力が生じる。これらの実施形態において、表面圧縮応力および層深度はコーティングされたガラス本体の表面ではなくコーティングの表面から測定されることが理解されるべきである。無機コーティング材料はチタニアを含むとして本明細書に記載されているが、好適に低い熱膨張係数を有する他の無機コーティング材料もまた想定されることが理解されるべきである。実施形態において、無機コーティングは、同様のコーティングされた容器と比して0.7未満の摩擦係数を有し得る。本明細書においてさらに記載されているとおり、無機コーティングはまた、250℃以上の温度で熱的に安定であり得る。

他の代替的な実施形態において、ガラス本体は、下位のガラス本体と等しいかそれを超える熱膨張係数を有する高モジュラスコーティングを備えるガラス本体によって強化可能である。強化は、損傷耐性を付与する弾性モジュラスにおける差によって達成され、その一方で、熱膨張における差によって、ガラス表面に圧縮応力がもたらされる(高モジュラスコーティングにおける張力との平衡)。これらの実施形態において、表面圧縮応力および層深度はコーティングされたガラス本体の表面ではなくガラス本体の表面から測定されることが理解されるべきである。高モジュラスのためにスクラッチおよび損傷の発生は困難であり、下位の圧縮層によりスクラッチおよび欠陥の進行が防止される。この効果を示す例示的な材料対は、33expansionホウケイ酸ガラス上のサファイアコーティング、または、51−expansionホウケイ酸ガラスに蒸着された酸化ジルコニウムコーティングである。

上記に基づいて、いくつかの実施形態においてガラス製容器は、本体の少なくとも外表面からガラス製容器の肉厚部中に延在する圧縮応力層を備え得ることが理解されるべきである。圧縮応力層により、圧縮応力層を備えていないガラス製容器と比して、ガラス製容器の機械的強度が向上する。圧縮応力層はまたガラス製容器の損傷耐久性を向上させ、これにより、ガラス製容器は、圧縮応力層を備えていないガラス製容器と比してより重度な表面損傷(すなわち、ガラス製容器の肉厚部の内部深くに延在するスクラッチ、欠け等)にも破壊を伴うこと無く耐えることが可能である。さらに、いくつかの実施形態においてイオン交換により、熱強化により、ガラス製容器を積層ガラスから成形することにより、または、ガラスの本体にコーティングを施すことによりガラス製容器中に圧縮応力層を形成し得ることもまた理解されるべきである。いくつかの実施形態において、圧縮応力層は、これらの技術の組合せによって形成され得る。

層剥離耐性 いくつかの実施形態においてガラス製容器100はまた、容器中に保管された一定の化学組成物に対する長期にわたる曝露後においても層剥離に耐性であり得る。上記のとおり、層剥離は、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期の曝露後における、富シリカガラスフレークのこの溶液中への放出によりもたらされ得る。従って、層剥離に対する耐性は、特定の条件下におけるガラス製容器中に含まれる溶液への曝露後における、この溶液中に存在するガラス微粒子の数によって特徴付けられ得る。層剥離に対するガラス製容器の長期耐性を評価するために、加速層剥離テストが利用される。このテストは、イオン交換および非イオン交換ガラス製容器の両方に対して行われ得る。このテストは、ガラス製容器を室温で1分間洗浄する工程、約320℃で1時間容器に発熱物質除去を行う工程からなる。その後、pH10の20mMグリシン水溶液をガラス製容器の8割から9割まで入れ、ガラス製容器に蓋をし、ガラス製容器を100℃まで急速に加熱し、次いで、2気圧の圧力で、1deg/minの昇温速度で100℃から121℃まで加熱する。ガラス製容器および溶液をこの温度で60分間保持し、0.5deg./minの速度で室温に冷却し、この加熱サイクルおよび保持を繰り返す。次いで、ガラス製容器を50℃に加熱し、高温条件のために10日間以上保持する。加熱後、ガラス製容器を少なくとも18インチ(45.72センチメートル)の高さからラミネートタイルフロアなどの堅固な表面上に落とし、ガラス製容器の内表面に弱く付着しているフレークまたは粒子をすべて取り除く。落下高さは、衝撃による大型のバイアルの欠損を防止するために、適切に見積もられ得る。

その後、ガラス製容器中に含まれる溶液を分析して、1リットルの溶液当たりに存在するガラス粒子の数を判定する。具体的には、ガラス製容器からの溶液を、減圧吸引に接続したMillipore Isoporeメンブランフィルタ(Millipore #ATTP02500を部品番号AP1002500およびM000025A0でアセンブリに保持)の中心に直接注ぎ入れて、5mLを10〜15秒間以内でフィルタを介して溶液をろ過する。その後、さらなる5mLの水をすすぎに用いてフィルタ媒体から緩衝剤残渣を除去する。次いで、粒状フレークを、「Differential interference contrast (DIC) microscopy and modulation contrast microscopy」,Fundamentals of light microscopy and digital imaging.New York:Wiley−Liss,pp153−168に記載されているとおり、微分干渉顕微鏡(DIC)により反射モードでカウントする。視野をおよそ1.5mm×1.5mmに設定し、50μmより大きい粒子を手作業でカウントする。各フィルタメンブランの中心において、イメージの重畳を伴わない3×3パターンで、このような測定を9回行う。フィルタ媒体のより大きな面積を分析した場合は、結果を相当面積(すなわち、20.25mm2)に対して基準化することが可能である。光学的顕微鏡から回収したイメージをイメージ分析プログラム(Media Cybernetic’s ImagePro Plus version 6.1)で調べて存在するガラスフレークの数を測定しカウントする。これは以下の通り達成される:単純なグレースケールセグメント化により背景より暗く見えるイメージ中の特性のすべてをハイライトし;次いで、25マイクロメートルを超える長さを有するハイライトした特性のすべての長さ、幅、面積および周囲長を測定し;次いで、明らかにガラス粒子ではないものをすべてデータから除去し;次いで、測定データをスプレッドシートにエクスポートする。次いで、長さが25マイクロメートルを超えると共に、背景より明るい特性のすべてを抽出し、測定し;25マイクロメートルを超える長さを有するハイライトした特性のすべての長さ、幅、面積、周囲長およびX−Yアスペクト比を測定し;明らかにガラス粒子ではないものをすべてデータから除去し;ならびに、測定データをスプレッドシート中の既にエクスポートしたデータに加える。次いで、スプレッドシート中のデータを特性の長さにより仕分けし、サイズに応じてビンに分ける。報告された結果は長さが50マイクロメートルより大きい特性に関する。次いで、これらのグループの各々をカウントし、カウントをサンプルの各々について報告する。

最低で100mLの溶液をテストする。従って、複数の小さな容器から溶液をプールしておき、溶液の総量を100mLとしてもよい。10mLを超える容積を有する容器については、テストを同一のガラス組成物から同一の加工条件下で形成した10個の容器の試験について繰り返し、粒子のカウント結果を10個の容器について平均して平均粒子カウントを判定する。あるいは、小型の容器の場合には、テストを10個のバイアルの試験について繰り返し、その各々を分析し、粒子のカウント複数の試験について平均して、試験毎の平均粒子カウントを判定する。複数の容器に係る粒子カウントの平均は、個別の容器の層剥離挙動における潜在的な違いを包含する。表1に、テストに係る容器のサンプル体積および数のいくつかの非限定的な例がまとめられている。

前述のテストは、成形プロセスから容器中に存在する混入粒子、または、溶液とガラスとの反応によりガラス製容器中に含まれている溶液から析出する粒子ではなく、層剥離によりガラス製容器の内壁から脱落される粒子を識別するために用いられることが理解されるべきである。具体的には、層剥離粒子は、粒子のアスペクト比(すなわち、粒子の最大長対粒子の厚さの比、または、最大寸法対最小寸法の比)に基づいて、混入ガラス粒子とは区別され得る。層剥離では、不規則な形状を有し、典型的には約50μmを超え、度々、約200μmを超える最大長を有する粒状フレークまたは薄板が生成される。フレークの厚さは通常、約100nmを超え、約1μmもの厚さであり得る。それ故、フレークの最低アスペクト比は、典型的には約50超である。アスペクト比は、約100超、度々、約1000超であり得る。対照的に、混入ガラス粒子は、一般に、約3未満という低いアスペクト比を有することとなる。従って、層剥離に由来する粒子は、顕微鏡による観察におけるアスペクト比に基づいて、混入粒子とは区別され得る。他の一般的な非ガラス粒子は、毛髪、繊維、金属粒子、プラスチック粒子および他の汚染物を含み、それ故、検査の過程で排除される。結果の検証は、テストした容器の内部領域を評価することにより達成可能である。観察の過程において、「Nondestructive Detection of Glass Vial Inner Surface Morphology with Differential Interference Contrast Microscopy」,Journal of Pharmaceutical Sciences,101(4),2012,pages 1378−1384に記載されている表皮浸食/点食/フレーク除去の証拠が注目される。

加速層剥離テスト後に存在する粒子の数を利用して、テストを行ったバイアルセットに係る層剥離係数が確立され得る。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で10個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が10であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で9個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が9であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で8個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が8であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で7個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が7であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で6個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が6であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で5個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が5であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で4個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が4であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で3個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が3であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で2個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が2であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が平均で1個未満であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が1であるとみなされる。加速層剥離テスト後に、1試験当たり、約50μmの最低長および約50超のアスペクト比を有するガラス粒子が0であるガラス製容器の試験では、層剥離係数が0であるとみなされる。従って、層剥離係数が小さいほど、ガラス製容器の層剥離に対する耐性は高くなることが理解されるべきである。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス製容器の本体の少なくとも内表面は10以下の層剥離係数(例えば、3、2、1または0の層剥離係数)を有する。いくつかの他の実施形態において、内表面および外表面の両方を含むガラス製容器の本体全部は、10以下の層剥離係数(例えば、3、2、1または0の層剥離係数)を有する。

いくつかの実施形態において、10以下の層剥離係数を有するガラス製容器は、バリアコーティングが本体の内表面にあるよう本体の内表面上にバリアコーティングを備えるガラス製容器を形成することにより、入手され得る。一例として図5を参照すると、本体102の内表面104の少なくとも一部分に設けられたバリアコーティング131を備えるガラス製容器100が概略的に図示されている。バリアコーティング131は、層剥離または分解されることがなく、医薬品組成物等などのガラス製容器100の内部空間108中に保管された製品と本体102の内表面104との接触を防止し、これにより、ガラス製容器の層剥離を軽減させる。バリアコーティングは一般に、水溶液に対して非透過性であり、不水溶性であり、および、加水分解的に安定である。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、バリアコーティング131は、ガラス製容器100の内表面104に永久的に接着された堅牢性無機コーティングである。バリアコーティング131は、金属窒化物コーティング、金属酸化物コーティング、金属硫化物コーティング、SiO2、ダイアモンド様カーバイド、グラフェンまたはカーバイドコーティングであり得る。例えば、いくつかの実施形態において、堅牢性無機コーティングは、Al2O3、TiO2、ZrO2、SnO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、Cr2O3、V2O5、ZnOまたはHfO2などの少なくとも1種の金属酸化物から形成され得る。いくつかの他の実施形態において、堅牢性無機コーティングは、Al2O3、TiO2、ZrO2、SnO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、Cr2O3、V2O5、ZnOまたはHfO2などの金属酸化物の2種以上の組合せから形成され得る。いくつかの他の実施形態において、バリアコーティング131は、ガラス製容器の内表面に堆積された第1の金属酸化物の第1の層と、第1の層の上に堆積された第2の金属酸化物の第2の層とを備えていてもよい。これらの実施形態において、バリアコーティング131は、特に限定されないが、原子層堆積、化学蒸着、物理蒸着等を含む多様な堆積技術を用いて堆積され得る。あるいは、バリアコーティングは、ディップコーティング、噴霧コーティングまたはプラズマコーティングなどの1種以上の液体適用技術で適用され得る。噴霧コーティング技術は、大量低圧(HVLP)および低量低圧(LVLP)噴霧コーティング、静電噴霧コーティング、無気噴霧コーティング、無気噴霧コーティングによる超音波噴霧、エアロゾルジェットコーティングおよびインクジェットコーティングを含み得る。プラズマコーティング技術としては、標準的なプライマリおよびセカンダリプラズマコーティング、マイクロ波補助プラズマコーティング、ならびに、大気圧プラズマコーティング等が挙げられ得る。

バリアコーティング131の実施形態は無機材料を含むと本明細書において記載されているが、いくつかの実施形態において、バリアコーティング131は有機コーティングであり得ることが理解されるべきである。例えば、バリアコーティング131が有機コーティングである実施形態において、有機コーティングは、ポリベンズイミダゾール、ポリビスオキサゾール、ポリビスチアゾール、ポリエーテルイミド、ポリキノリン、ポリチオフェン、フェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリシアヌレート、パリレン、ポリテトラフルオロエチレンおよび他のフルオロ置換ポリオレフィンを含むフッ素化ポリオレフィン、パーフルオロアルコキシポリマー、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、エポキシ、ポリポリフェノール、ポリウレタンアクリレート、環式オレフィンコポリマーおよび環式オレフィンポリマー、ポリエチレンを含むポリオレフィン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/プロピレンコポリマー、ポリエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリテルペン、ポリ酸無水物、ポリ無水マレイン酸、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタールおよびポリアセタールのコポリマー、ジメチルまたはジフェニルまたはメチル/フェニル混合物のポリシロキサン、過フッ素化シロキサンおよび他の置換シロキサン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、パラフィンおよびワックス、または、種々のこれらの組合せを含み得る。いくつかの実施形態において、バリアコーティング131として用いられる有機コーティングは、ジメチル、ジフェニルまたはメチル/フェニル混合物のポリシロキサンを含み得る。あるいは、有機コーティングは、ポリカーボネートまたはポリエチレンテレフタレートであり得る。いくつかの実施形態において、バリアコーティング131は、前述のポリマーおよび/またはコポリマーを1種以上含む積層構造から形成され得る。

バリアコーティングは、如何なるガラス組成物から形成されたガラス製容器とも併せて利用され得る。しかしながら、バリアコーティングは、ガラス製容器に形成した場合に層剥離に対する耐性を示さないガラス組成物から形成されたガラス製容器と併せて用いることが特に好適である。このようなガラス組成物としては、特に限定されないが、「Standard Specification for Glasses in Laboratory Apparatus」と題されたASTM規格E438−92(2011)に準拠した、Type IクラスA、Type IクラスB、および、Type IIガラス組成物と称されるガラス組成物が挙げられ得る。このようなガラス組成物は、ASTM規格における化学的耐久性に係る必須要件を有し得るが、層剥離に対する耐性は示さない。例えば、以下の表2に、層剥離に対する耐性を示さないType IクラスBガラス組成物の数々の非限定的な例が列挙されている。従って、本明細書に記載のバリアコーティングはこれらの組成物から形成された容器の少なくとも内表面において用いられ得、これにより、容器は10以下の層剥離係数を有することとなる。

いくつかの代替的な実施形態において、10以下の層剥離係数を有するガラス製容器は、2013年6月7日に出願され、「Delamination Resistant Glass Containers」と題され、Corning Incorporatedに譲渡された同時継続中の米国特許出願第13/912,457号明細書に記載されているとおり、ガラス製容器が均質な組成上の特徴を有し、これにより、ガラス製容器の層剥離されやすさが低減されるよう、ガラス製容器を形成することにより達成される。具体的には、ガラス製容器の層剥離は、上記のとおり、少なくとも部分的において、ガラス製容器の少なくとも内部におけるガラス組成の不均質性に起因し得ると考えられている。このような組成不均質性を抑制することで、10以下の層剥離係数を有するガラス製容器がもたらされる。

ここで図1および図6を参照すると、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のガラス製容器は、壁、ヒールおよび床部分の各々においてガラス本体102の厚さにわたって組成が均質であり、その結果、本体の少なくとも内表面104は10以下の層剥離係数を有することとなる。具体的には、図6は、ガラス製容器100の壁部分110の一部断面を概略的に図示する。ガラス製容器100のガラス本体102は、ガラス製容器100の内表面104の下約10nm(図6においてDLR1で示されている)から、ガラス製容器の内表面104より深さDLR2まで壁部分110の肉厚部中に延在する内部領域120を有する。内表面104の下約10nmから延在する内部領域は、実験上のアーチファクトにより表面下最初の5〜10nm中の組成物とは区別される。ガラスの組成を判定する動的二次イオン質量分光(DSIMS)分析の開始時には、以下の3つの懸念のために、分析に最初の5〜10nmは含まれない:外因性炭素を原因とする表面からのイオンの変動的なスパッタリング割合、変動的なスパッタリング割合による部分的な定常状態電荷の確立、および、定常状態スパッタリング条件が確立する一方での種の混合。その結果、最初の2つの分析データポイントは排除する。従って、内部領域120は、DLR2〜DLR1に等しい厚さTLRを有することが理解されるべきである。内部領域中のガラス組成は、内部領域の厚さTLRとの関連において、ガラス製容器の内部空間中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露後においてもガラス本体の層剥離を防止するために十分な連続層均質性を有する。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約100nmである。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約150nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約200nm、または、さらには約250nmである。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約300nm、または、さらには約350nmである。さらに他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約500nmである。いくつかの実施形態において、内部領域120は、少なくとも約1μm、または、さらには少なくとも約2μmの厚さTLRまで延在し得る。

内部領域は、ガラス製容器100の内表面104の下10nmから、ガラス製容器の内表面104より深さDLR2まで部分110の肉厚部中に延在すると本明細書に記載されているが、他の実施形態が可能であることが理解されるべきである。例えば、上記の実験上のアーチファクトに関わらず、連続層均質性を有する内部領域は、実際には、ガラス製容器100の内表面104から壁部分の肉厚部中に延在し得、従って、いくつかの実施形態において、厚さTLRは内表面104から深さDLR2までであり得るという仮説が立てられている。これらの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約100nmであり得る。いくつかの実施形態において、厚さTLRは少なくとも約150nmであり得る。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約200nm、または、さらには約250nmであり得る。いくつかの他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約300nm、または、さらには約350nmであり得る。さらに他の実施形態において、厚さTLRは少なくとも約500nmであり得る。いくつかの実施形態において、内部領域120は、少なくとも約1μm、または、さらには少なくとも約2μmの厚さTLRに延在していてもよい。

ガラス製容器が連続層均質性を有するようガラス製容器が形成されている実施形態において、「連続層均質性」という句は、内部領域中のガラス組成物の構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Na2O等)の濃度と、内部領域を含むガラス層の厚さの中間点における同一の構成成分の濃度とが、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露でガラス本体の層剥離がもたらされることとなる程度には異なっていないことを意味する。例えば、ガラス製容器が単一のガラス組成物から形成される実施形態においては、ガラス本体は単一のガラスの層を含んでおり、内部領域中の構成成分の濃度が、ガラス本体を内表面104と外表面106との間を二等分する中間点ラインMPに沿った点における同一の成分の濃度と比較されて、連続層均質性が存在しているかが判定される。しかしながら、積層ガラスのガラスクラッディング層がガラス製容器の内部表面を形成している積層ガラスからガラス製容器が形成される実施形態においては、内部領域中の構成成分の濃度が、ガラス製容器の内部表面を形成するガラスクラッディング層を二等分する中間点ラインに沿った点における同一の成分の濃度と比較される。本明細書に記載の実施形態において、ガラス本体の内部領域における連続層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値(すなわち、最低または最大)が、内部領域120を含むガラス層の中間点における同一の構成成分の約80%以上および約120%以下であるようなものである。本明細書において用いられるところ、連続層均質性とは、ガラス製容器が、成形されたままの状態、または、エッチング等などのガラス製容器の少なくとも内部表面に適用される表面処理を一回以上行った後である場合におけるガラス製容器の状態を指す。他の実施形態において、ガラス本体の内部領域における連続層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、内部領域120を含むガラス層の厚さの中間点における同一の構成成分の約90%以上および約110%以下であるようなものである。さらに他の実施形態において、ガラス本体の内部領域における連続層均質性は、内部領域120におけるガラス組成物の構成成分の各々の層濃度の極値が、内部領域120を含むガラス層のガラスの肉厚部の中間点において同一の構成成分の約92%以上および約108%以下であるようなものである。いくつかの実施形態においては、連続層均質性に、約2mol.%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分は含まれない。

本明細書において用いられるところ、「成形されたままの状態」という用語は、ガラス製容器がガラスストックから成形された後であるが、イオン交換強化、コーティング、硫酸アンモニウム処理等などの追加の加工ステップのいずれかに容器を供する前のガラス製容器100の組成を指す。いくつかの実施形態において、「成形されたままの状態」という用語は、ガラス製容器が成形され、および、エッチング処理に供されて、ガラス製容器の少なくとも内部表面のすべてまたは一部が選択的に除去されたガラス製容器100の組成を含む。本明細書に記載の実施形態において、ガラス組成物における構成成分の層濃度は、動的二次イオン質量分光(DSIMS)分析を用いて関心領域におけるガラス本体の肉厚部から組成物サンプルを回収することにより判定される。本明細書に記載の実施形態において、組成物プロファイルは、ガラス本体102の内表面104の領域からサンプルされる。サンプルされた領域は1mm2の最大面積を有する。この技術では、サンプル領域について、ガラス本体の内表面からの深さに応じたガラス中の種の組成プロファイルが得られる。

上記のとおり連続層均質性を備えるガラス製容器を形成することにより、一般に、ガラス製容器の層剥離に対する耐性が向上する。具体的には、組成が均質である(すなわち、内部領域における構成成分の濃度の極値が、内部領域を含むガラス層の肉厚部の中間点における同一の構成成分の+/−20%の範囲内である)内部領域を設けることにより、浸出されやすい可能性があるガラス組成物の構成成分の局所的な濃縮が防止され、その結果、これらの構成成分がガラス表面から浸出される場合においても、ガラス製容器の内表面からのガラス粒子の損失が軽減される。

本明細書において記載されているとおり、成形されたままの状態で連続層均質性を有する容器は、ガラス本体の内表面に適用された無機コーティングおよび/または有機コーティングを含むコーティングを有していない。従って、ガラス製容器の本体は、本体の内表面から少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深さにまで延在する実質的に単一の組成物から形成されていることが理解されるべきである。「単一の組成物」という用語は、内表面から少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深さにまで本体の肉厚部中に延在する本体の一部分を形成するガラスが、組成が同一または異なる他の材料に適用されるコーティング材料と比して、物質の単一の組成物であるという事実を指す。例えば、いくつかの実施形態において、容器の本体は単一のガラス組成物から構成され得る。他の実施形態において、容器の本体は、本体の内表面が、内表面から少なくとも250nm、または、さらには少なくとも300nmの深さにまで延在する単一の組成物を有するよう、積層ガラスから構成され得る。ガラス製容器は、上記のとおり、内表面から、または、内表面下10nmから少なくとも100nmの深さにまで延在する内部領域を備えていてもよい。この内部領域は連続層均質性を有し得る。

ここで図1および図7を参照すると、いくつかの実施形態において、本明細書に記載のガラス製容器はまた、ガラス製容器が成形されたままの状態で、壁、ヒールおよび床部分中を含む本体102の少なくとも内表面104が10以下の層剥離係数を有するよう、本体102の内表面104全体において均質な表面組成を有し得る。図7は、ガラス製容器100の壁部分110の一部断面を概略的に図示する。ガラス製容器100は、ガラス製容器の内表面上全体に延在する表面領域130を有する。表面領域130は、ガラス製容器100の内表面104からガラス本体の肉厚部中に外部表面に向かう深さDSRを有する。従って、表面領域130は、深さDSRと等しい厚さTSRを有することが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、この表面領域は、ガラス製容器100の内表面104から少なくとも約10nmの深さDSRまで延在する。いくつかの他の実施形態において、表面領域130は、少なくとも約50nmの深さDSRまで延在し得る。いくつかの他の実施形態において、表面領域130は、約10nm〜約50nmの深さDSRまで延在し得る。従って、表面領域130は、内部領域120よりも浅い深さまで延在することが理解されるべきである。表面領域のガラス組成は、内部領域の深さDSRとの関連において、ガラス製容器の内部空間中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露後においてもガラス本体の層剥離を防止するために十分な連続表面均質性を有する。

本明細書に記載の実施形態において、「連続表面均質性」という句は、表面領域中の独立した点におけるガラス組成物の構成成分(例えば、SiO2、Al2O3、Na2O等)の濃度と、表面領域中のいずれかの第2の独立した点における同一の構成成分の濃度とが、ガラス製容器中に含まれる溶液に対する長期にわたる曝露でガラス本体の層剥離がもたらされることとなる程度には異なっていないことを意味する。本明細書に記載の実施形態において、表面領域における連続表面均質性は、ガラス製容器の内表面104における独立した点について、独立した点における表面領域130中の構成成分の各々の表面濃度の極値(すなわち、最低または最大)が、ガラス製容器100が成形されたままの状態において、ガラス製容器100の内表面104上のいずれかの第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約70%以上および約130%以下であるようなものである。例えば、図7には、3つの独立した点(A、BおよびC)が壁部分110の内表面104上に図示されている。各々の点は、隣接する点から少なくとも約3mm離間している。表面領域130中の点「A」における構成成分の各々の表面濃度の極値は、点「B」および「C」における表面領域130中の同一の構成成分の約70%以上および約130%以下である。容器のヒール部分について言及すると、独立した点は、略ヒールの頂点を中心としていてもよく、隣接する点は、容器の床部分および容器の壁部分に沿ってヒールの頂点から少なくとも3mmの場所に位置しており、点同士の距離は容器の半径およびサイドウォールの高さ(すなわち、サイドウォールから容器のショルダーに遷る点)によって限定されている。

いくつかの実施形態において、表面領域における連続表面均質性は、表面領域130におけるガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の内表面104上のいずれかの独立した点について、ガラス製容器100の内表面104におけるいずれかの第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約75%以上および約125%以下であるようなものである。いくつかの他の実施形態において、表面領域における連続表面均質性は、表面領域130におけるガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の内表面104上のいずれかの独立した点について、ガラス製容器100の内表面104におけるいずれかの第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約80%以上および約120%以下であるようなものである。さらに他の実施形態において、表面領域における連続表面均質性は、表面領域130におけるガラス組成物の構成成分の各々の表面濃度の極値が、ガラス製容器100の内表面104上のいずれかの独立した点について、ガラス製容器100の内表面104におけるいずれかの第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の約85%以上および約115%以下であるようなものである。本明細書に記載の実施形態において、表面領域におけるガラス組成物の構成成分の表面濃度は、X線光電子分光により測定される。いくつかの実施形態において、表面領域における連続表面均質性から、約2mol.%未満の量で存在するガラス組成物の構成成分は排除される。

表面領域130におけるガラス構成成分の表面濃度の均質性は、一般に、ガラス製容器100の内表面104からガラス粒子が層剥離して脱落するガラス組成物に係る傾向の指標である。ガラス組成物が表面領域130において連続表面均質性を有する場合(すなわち、内表面104上の独立した点における表面領域130中のガラス構成成分の表面濃度の極値が、内表面104上のいずれかの第2の独立した点における表面領域130中の同一の構成成分の+/−30%である場合)、ガラス組成物は層剥離に対する向上した耐性を有する。

連続層均質性および/または連続表面均質性を有するガラス製容器は、種々の技術を用いて達成され得る。例えば、いくつかの実施形態においては、ガラス製容器の少なくとも内表面が10以下の層剥離係数を有するよう、ガラス製容器の本体102の少なくとも内表面104がエッチングされて、連続層均質性および/または連続表面均質性を有するガラス製容器がもたらされる。具体的には、上記のとおり、ガラスからの種の揮発、および、容器の成形中におけるその後の揮発した種の再付着に起因するガラスにおける組成変動が、層剥離をもたらすメカニズムの1つであると考えられている。ガラス製容器の内表面上の揮発し再付着した種の薄い表皮は、組成的に不均質であり、加水分解的に弱く、従って、アルカリおよびホウ素種は、医薬品組成物に対する曝露の最中に、表皮から急速に失われていく。この挙動により、大表面積の富シリカ層が残される。富シリカ層に対して医薬品組成物が曝露されることにより、層が膨潤し、最終的には、本体の内表面からはがれ落ちてしまう(すなわち、層剥離)。しかしながら、ガラス製容器の本体の内表面をエッチングすることによりこの薄い表皮層が取り除かれ、連続層均質性および/または連続表面均質性がガラス製容器の本体の少なくとも内表面にもたらされる。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス製容器の本体はエッチングされてガラス本体の内表面からガラス材料の層が除去される。エッチングは揮発し再付着した種の薄い表皮層を除去するのに十分なものであり、これにより、ガラス本体の少なくとも内表面が10以下の層剥離係数を有するよう、連続層均質性および/または連続表面均質性がガラス製容器の本体の少なくとも内表面にもたらされる。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス製容器の本体は、1μm、または、さらには1.5μmの深さまでガラス本体の内表面からガラス材料が除去されるようエッチングされる。いくつかの他の実施形態において、ガラス製容器の本体は、エッチングされて、特に限定されないが、2μm、3μm、または、さらには5μmを含む1.5μmを超える深さまでガラス材料が除去され得る。これらの実施形態において、ガラス製容器の少なくとも内部表面は、「Standard Specification for Glasses in Laboratory Apparatus」と題されたASTM規格E438−92(2011)に従う、Type I、クラスA(Type IA)またはType I、クラスB(Type IB)ガラスに係る基準を満たすガラス組成物から形成され得る。ホウケイ酸ガラスはType I(AまたはB)基準を満たすものであり、医薬品パッケージングにルーチン的に用いられる。ホウケイ酸ガラスの例としては、特に限定されないが、Corning(登録商標)Pyrex(登録商標)7740、7800、Wheaton 180、200および400、Schott Duran(登録商標)、Schott Fiolax(登録商標)、KIMAX(登録商標)N−51A、Gerresheimer GX−51 Flint、ならびに、他のものが挙げられる。

一実施形態においては、エッチングは、ガラス製容器の内表面を酸溶液、または、酸溶液の組合せに曝露させることにより達成され得る。酸溶液としては、特に限定されないが、硫酸、硝酸、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸およびリン酸が挙げられ得る。例えば、酸溶液は、1.5Mのフッ化水素酸と0.9Mの硫酸との混合物を含み得る。これらの酸溶液は、ガラス製容器の内表面上に欠乏した「浸出層」を残留させることなく、揮発され、再付着した有機溶液の薄い表皮層を効果的に除去する。あるいは、エッチングは、ガラス製容器の内表面を塩基溶液、または、塩基溶液の組合せに曝露させることにより達成され得る。好適な塩基溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、または、これらの組合せが挙げられる。あるいは、エッチングは、酸溶液、続いて塩基溶液の順序で、または、逆の順序により達成され得る。

特定のエッチング処理の一つが本明細書に記載されているが、他のエッチング処理もまた用いられ得ることが理解されるべきである。例えば、米国特許第2,106,744号明細書、米国特許出願公開第2011/0165393号明細書、米国特許出願公開第2013/0122306号明細書および米国特許出願公開第2012/0282449号明細書に開示されているエッチング処理もまた、ガラス製容器の少なくとも内部表面のエッチングに用いられ得る。

さらに他の実施形態においては、ガラスストックからの所望される容器形状のガラス製容器への再成形に必要とされる温度で、ガラス組成物の構成成分が比較的低い蒸気圧を有する種(すなわち、揮発度が低い種)を形成するガラス組成物からガラス製容器を形成することによって、ガラス製容器に連続層均質性および/または連続表面均質性がもたらされ得る。これらの構成成分は再成形温度で比較的蒸気圧が低い種を形成するため、構成成分はガラスの表面から揮発および気化しにくく、これにより、ガラス製容器の内表面上およびガラス製容器の肉厚部中に組成的に均質な表面を有するガラス製容器が形成される。

ガラス組成物の一定の構成成分はガラス成形および再成形温度で十分に揮発性であり得、これは、結果として、組成不均質性、その後の層剥離をもたらす可能性がある。ガラス組成物の成形および再成形温度は、一般に、ガラス組成物が約200ポアズ〜約100キロポアズの範囲内の粘度を有する温度に対応する。従って、いくつかの実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物は、約200ポアズ〜約100キロポアズの範囲内の粘度に相当する温度で顕著に揮発する種を形成する(すなわち、約10−3atmを超える平衡分圧で気相種を形成する)構成成分を含んでいない。いくつかの実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物は、約1キロポアズ〜約50キロポアズの範囲内の粘度に相当する温度で顕著に揮発する構成成分を含んでいない。いくつかの他の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物は、約1キロポアズ〜約20キロポアズの範囲内の粘度に相当する温度で顕著に揮発する構成成分を含んでいない。いくつかの他の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物は、約1キロポアズ〜約10キロポアズの範囲内の粘度に相当する温度で顕著に揮発する構成成分を含んでいない。理論に束縛されることは望まないが、これらの条件下で顕著に揮発する化合物としては、特に限定されないが、ホウ素およびホウ素の化合物、リンおよびリンの化合物、亜鉛および亜鉛の化合物、フッ素およびフッ素の化合物、塩素および塩素の化合物、錫および錫の化合物、ならびに、ナトリウムおよびナトリウムの化合物が挙げられる。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス製容器は、一般に、例えばアルカリアルミノケイ酸ガラス組成物またはアルカリ土類アルミノケイ酸ガラス組成物などのアルミノケイ酸ガラス組成物から形成される。本明細書中において上記されているとおり、ガラス中のホウ素含有種はガラスの成形および再成形に用いられる高温で高揮発性であり得、これにより、得られるガラス製容器の層剥離がもたらされる。しかも、ホウ素を含有するガラス組成物は相分離を受けやすいものでもある。従って、本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物中のホウ素濃度は、層剥離および相分離の両方を軽減するために制限されている。いくつかの実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物は、特に限定されないが、B2O3を含むホウ素および/またはホウ素含有化合物の酸化物を約1.0mol.%以下で含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中のホウ素および/またはホウ素含有化合物の酸化物の濃度は、約0.5mol.%以下、約0.4mol.%以下、または、さらには約0.3mol.%以下であり得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中のホウ素および/またはホウ素含有化合物の酸化物の濃度は、約0.2mol.%以下、または、さらには約0.1mol.%以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、ホウ素およびホウ素含有化合物を実質的に含まない。

ホウ素と同様に、リンも、一般に、ガラスの成形および再成形に用いられる高温で高揮発性である種をガラス組成物中において形成する。従って、ガラス組成物中のリンは、最終ガラス製容器において組成不均質性をもたらす可能性があり、これは、結果として、層剥離をもたらし得る。従って、本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物中のリンおよびリン含有化合物(P2O5等など)の濃度は層剥離を軽減するために制限される。いくつかの実施形態において、ガラス製容器が形成されるガラス組成物は、約0.3mol.%以下のリンおよび/またはリン含有化合物の酸化物を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中のリンおよび/またはリン含有化合物の酸化物の濃度は、約0.2mol.%以下、または、さらには約0.1mol.%以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、リンおよびリン含有化合物を実質的に含まない。

ホウ素およびリンと同様に、亜鉛も、一般に、ガラスの成形および再成形に用いられる高温で高揮発性である種をガラス組成物中において形成する。従って、ガラス組成物中の亜鉛は、最終ガラス製容器において組成不均質性をもたらす可能性があり、これは、結果として、層剥離をもたらし得る。従って、本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物中の亜鉛および亜鉛含有化合物(ZnO等など)の濃度は層剥離を軽減するために制限される。いくつかの実施形態において、ガラス製容器が形成されるガラス組成物は、約0.5mol.%以下の亜鉛および/または亜鉛含有化合物の酸化物を含む。いくつかの他の実施形態において、ガラス製容器が形成されるガラス組成物は、約0.3mol.%以下の亜鉛および/または亜鉛含有化合物の酸化物を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中の亜鉛または亜鉛含有化合物の酸化物の濃度は、約0.2mol.%以下、または、さらには約0.1mol.%以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、亜鉛および亜鉛含有化合物を実質的に含まない。

鉛およびビスマスもまた、ガラスの成形および再成形に用いられる高温で高揮発性の種をガラス組成物中において形成する。従って、本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器を形成するガラス組成物中の鉛、ビスマス、鉛含有化合物およびビスマス含有化合物の濃度は層剥離を軽減するために制限される。いくつかの実施形態において、鉛の酸化物、ビスマスの酸化物、鉛含有化合物および/またはビスマス含有化合物は各々、ガラス組成物中において、約0.3mol.%以下の濃度で存在する。これらの実施形態のいくつかにおいて、鉛の酸化物、ビスマスの酸化物、鉛含有化合物および/または、ビスマス含有化合物の各々は、約0.2mol.%以下の濃度、または、さらには約0.1mol.%未満の濃度でガラス組成物中に存在する。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、鉛および/またはビスマス、ならびに、鉛および/またはビスマスを含有する化合物を実質的に含まない。

錫の酸化物、塩素およびフッ素を含有する種もまた、ガラスの成形および再成形に用いられる高温で高揮発性である。従って、本明細書に記載の実施形態において、塩素、フッ素、および、錫の酸化物、ならびに、錫含有化合物、塩素含有化合物またはフッ素含有化合物は、得られるガラスの層剥離に対する耐性に悪影響を及ぼさない濃度でガラス組成物中に存在している。具体的には、塩素、フッ素、および、錫の酸化物、ならびに、錫含有化合物、塩素含有化合物またはフッ素含有化合物は、約0.5mol.%以下、または、さらには約0.3mol.%以下の濃度でガラス製容器を形成するガラス組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、錫、塩素およびフッ素、ならびに、錫含有化合物、塩素含有化合物またはフッ素含有化合物を実質的に含まない。

ガラス製容器のいくつかの実施形態は上記のとおり易揮発性構成成分を含まない可能性があるが、一定の他の実施形態において、ガラス製容器は、ガラス製容器がバリア層を備える場合など、これらの揮発性構成成分を含むガラス組成物から形成される場合もある。

容器が形成されるガラス組成物は、相分離を生じないものである。本明細書において用いられるところ、「相分離」という用語は、それぞれの相が異なる組成上の特徴を有する別個の相にガラス組成物が分離することを指す。例えば、アルカリホウケイ酸ガラスは、一般に、高温(成形および再成形温度など)で富ホウ素相および富シリカ相に相分離することが知られている。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス組成物中のホウ素の酸化物の濃度は、ガラス組成物が相分離を生じないよう、十分に低い(すなわち、約1.0mol.%以下)。

例示的な一実施形態において、ガラス製容器は、その全体が本明細書において参照により援用されている、2012年10月25日に出願され、「Alkaline Earth Alumino−Silicate Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」(代理人整理番号SP11−241)と題された米国特許出願第13/660,141号明細書に記載のアルカリ土類アルミノケイ酸ガラス組成物などの層剥離耐性ガラス組成物から形成される。この第1の例示的なガラス組成物は、一般に、SiO2、Al2O3、少なくとも1種のアルカリ土類酸化物、ならびに、少なくともNa2OおよびK2Oを含むアルカリ酸化物の組合せを含む。いくつかの実施形態において、ガラス組成物はまた、ホウ素およびホウ素含有化合物を含まない可能性がある。これらの成分の組合せにより、化学的分解に対して耐性であると共に、イオン交換による化学強化にも好適であるガラス組成物が実現される。いくつかの実施形態において、ガラス組成物はさらに、例えばSnO2、ZrO2、ZnO等などの1種以上の追加の酸化物を微量で含んでいてもよい。これらの成分は、清澄剤として、および/または、ガラス組成物の化学的耐久性をさらに高めるために添加され得る。

第1の例示的なガラス組成物の実施形態において、ガラス組成物は、一般に、SiO2を約65mol.%以上および約75mol.%以下の量で含む。いくつかの実施形態において、SiO2は、ガラス組成物中に、約67mol.%以上および約75mol.%以下の量で存在する。いくつかの他の実施形態において、SiO2は、約67mol.%以上および約73mol.%以下の量でガラス組成物中に存在する。これらの実施形態の各々において、ガラス組成物中に存在するSiO2の量は、約70mol.%以上であり得、または、さらには約72mol.%以上であり得る。

また、第1の例示的なガラス組成物はAl2O3を含む。Al2O3は、ガラス組成物中に存在するNa2O等などのアルカリ酸化物と一緒になって、イオン交換強化に対するガラスの感受性を向上させる。しかも、Al2O3を組成物に添加することにより、アルカリ構成成分(NaおよびKなど)がガラスから浸出する傾向が低減され、その結果、Al2O3の添加により組成物の加水分解に対する耐性が高められる。加えて、約12.5mol.%を超えてAl2O3を添加することによりガラスの軟化点も高まり得、これにより、ガラスの成形性が低減してしまう。従って、本明細書に記載のガラス組成物は、一般に、Al2O3を約6mol.%以上および約12.5mol.%以下の量で含む。いくつかの実施形態において、ガラス組成物中のAl2O3の量は、約6mol.%以上および約10mol.%以下である。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物中のAl2O3の量は約7mol.%以上および約10mol.%以下である。

第1の例示的なガラス組成物はまた、少なくとも2種のアルカリ酸化物を含む。アルカリ酸化物はガラス組成物のイオン交換性を促進させ、結果として、ガラスの化学強化を促進させる。また、アルカリ酸化物はガラスの軟化点を低下させ、これにより、ガラス組成物中における高いSiO2濃度による軟化点の上昇が相殺される。また、アルカリ酸化物はガラス組成物の化学的耐久性の向上を補助する。アルカリ酸化物は、一般に、ガラス組成物中において約5mol.%以上および約12mol.%以下の量で存在する。これらの実施形態のいくつかにおいて、アルカリ酸化物の量は、約5mol.%以上および約10mol.%以下であり得る。いくつかの他の実施形態において、アルカリ酸化物の量は、約5mol.%以上および約8mol.%以下であり得る。本明細書に記載のガラス組成物のすべてにおいて、アルカリ酸化物は少なくともNa2OおよびK2Oを含む。いくつかの実施形態において、アルカリ酸化物はLi2Oをさらに含む。

ガラス組成物のイオン交換性は主に、イオン交換に先立ってガラス組成物中に最初に存在するアルカリ酸化物Na2Oの量によって、ガラス組成物に付与される。具体的には、イオン交換強化に際して、ガラス組成物において所望の圧縮応力および層深度を達成するために、ガラス組成物は、ガラス組成物の分子量に基づいて、Na2Oを約2.5mol.%以上および約10mol.%以下の量で含む。いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、Na2Oを約3.5mol.%以上および約8mol.%以下の量で含んでいてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物は、Na2Oを約6mol.%以上および約8mol.%以下の量で含んでいてもよい。

上記のとおり、ガラス組成物中のアルカリ酸化物はK2Oをも含んでいる。ガラス組成物中に存在するK2Oの量はまた、ガラス組成物のイオン交換性に関連している。具体的には、ガラス組成物中に存在するK2Oの量が増加するに伴って、イオン交換を介して得られる圧縮応力が低下する。従って、ガラス組成物中に存在するK2Oの量を制限することが望ましい。いくつかの実施形態において、K2Oの量は、ガラス組成物の分子量基準で、0mol.%超および約2.5mol.%以下である。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中に存在するK2Oの量は、ガラス組成物の分子量基準で約0.5mol.%以下である。

いくつかの実施形態において、第1の例示的なガラス組成物中のアルカリ酸化物は、Li2Oをさらに含む。ガラス組成物中にLi2Oを含んでいることにより、ガラスの軟化点がさらに低下する。アルカリ酸化物がLi2Oを含む実施形態において、Li2Oは、約1mol.%以上および約3mol.%以下の量で存在していてもよい。いくつかの実施形態において、Li2Oは、ガラス組成物中に約2mol.%超および約3mol.%以下である量で存在し得る。しかしながら、いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、リチウムおよびリチウム含有化合物を実質的に含んでいない場合がある。

第1の例示的なガラス組成物中のアルカリ土類酸化物は、ガラスバッチ材料の溶融性を向上させると共に、ガラス組成物の化学的耐久性を高める。また、ガラス組成物中にアルカリ土類酸化物が存在していることにより、層剥離に対するガラスの感受性が低減される。本明細書に記載のガラス組成物において、ガラス組成物は、一般に、少なくとも1種のアルカリ土類酸化物を、約8mol.%以上、または、さらには8.5mol.%、および、約15mol.%以下の濃度で含む。いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、約9mol.%〜約15mol.%のアルカリ土類酸化物を含んでいてもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、ガラス組成物中のアルカリ土類酸化物の量は約10mol.%〜約14mol.%であり得る。

第1の例示的なガラス組成物中のアルカリ土類酸化物は、MgO、CaO、SrO、BaO、または、これらの組合せを含み得る。例えば、本明細書に記載の実施形態において、アルカリ土類酸化物はMgOを含み得る。いくつかの実施形態において、MgOは、ガラス組成物中に、ガラス組成物の分子量を基準として約2mol.%以上および約7mol.%以下である量、または、さらにはガラス組成物の分子量を基準として約3mol.%以上および約5mol.%以下である量で存在し得る。

いくつかの実施形態において、第1の例示的なガラス組成物中のアルカリ土類酸化物はまたCaOを含む。これらの実施形態において、CaOは、ガラス組成物中に、ガラス組成物の分子量を基準として、約2mol.%〜7mol.%以下の量で存在する。いくつかの実施形態において、CaOは、ガラス組成物中に、ガラス組成物の分子量を基準として約3mol.%〜7mol.%以下の量で存在する。これらの実施形態のいくつかにおいて、CaOは、ガラス組成物中に、約4mol.%以上および約7mol.%以下の量で存在し得る。いくつかの他の実施形態においては、液体温度を低下させると共に液体粘度を高めるために、CaOがアルカリ土類酸化物におけるMgOを置換する場合などにおいて、CaOは、ガラス組成物中に、約5mol.%以上および約6mol.%以下の量で存在し得る。さらに他の実施形態においては、液体温度を低下させると共に液体粘度を高めるために、SrOがアルカリ土類酸化物におけるMgOを地下する場合などにおいて、CaOは、ガラス中に約2mol.%以上および約5mol.%以下の量で存在し得る。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、アルカリ土類酸化物はSrOまたはBaOの少なくとも一方をさらに含む。SrOが含まれていることによってガラス組成物の液体温度が低くなり、その結果、ガラス組成物の成形性が向上される。いくつかの実施形態において、ガラス組成物はSrOを0mol.%超および約6.0mol.%以下の量で含み得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物はSrOを約0mol.%超および約5mol.%以下の量で含み得る。これらの実施形態のいくつかにおいては、液体温度を低下させると共に液体粘度を高めるために、CaOがアルカリ土類酸化物におけるMgOを地下する場合などにおいて、ガラス組成物は約2mol.%以上および約4mol.%以下でSrOを含み得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は約1mol.%〜約2mol.%でSrOを含み得る。さらに他の実施形態においては、液体温度を低下させると共に液体粘度を高めるために、SrOがアルカリ土類酸化物におけるMgOを地下する場合などにおいて、SrOは、ガラス組成物中に、約3mol.%以上および約6mol.%以下の量で存在し得る。

ガラス組成物がBaOを含む実施形態において、BaOは、約0mol.%超および約2mol.%未満の量で存在し得る。これらの実施形態のいくつかにおいて、BaOは、ガラス組成物中に約1.5mol.%以下、または、さらには約0.5mol.%以下の量で存在し得る。しかしながら、いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は、バリウムおよびバリウムの化合物を実質的に含まない。

本明細書に記載のガラス組成物の実施形態において、ガラス組成物は、一般に、約1mol.%未満のB2O3などのホウ素またはホウ素の酸化物を含有する。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス組成物は約0mol.%以上のB2O3および1mol.%以下のB2O3を含み得る。いくつかの他の実施形態において、ガラス組成物は約0mol.%以上のB2O3および0.6mol.%以下のB2O3を含み得る。さらに他の実施形態において、ガラス組成物は、B2O3などのホウ素およびホウ素の化合物を実質的に含まない。具体的には、比較的少量のホウ素もしくはホウ素の化合物(すなわち、1mol.%以下)を伴って、または、ホウ素もしくはホウ素の化合物を伴わずにガラス組成物を形成することにより、ガラス組成物の化学的耐久性が顕著に高まることが判定した。加えて、比較的少量のホウ素もしくはホウ素の化合物を伴って、または、ホウ素もしくはホウ素の化合物を伴わずにガラス組成物を形成することにより、特定の圧縮応力および/または層深度の値を達成するために必要とされるプロセス時間の短縮および/またはプロセス温度の低下によって、ガラス組成物のイオン交換性が向上することも判定した。

本明細書に記載のガラス組成物のいくつかの実施形態において、ガラス組成物は、特に限定されないが、P2O5を含むリンおよびリン含有化合物を実質的に含まない。具体的には、リンまたはリンの化合物を伴わずにガラス組成物を形成することにより、ガラス組成物の化学的耐久性が高まることが判定した。

SiO2、Al2O3、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物に追加して、本明細書に記載の第1の例示的なガラス組成物は、任意選択により、例えばSnO2、As2O3および/またはCl(NaCl由来等)などの1種以上の清澄剤をさらに含んでいてもよい。清澄剤がガラス組成物中に存在している場合、清澄剤は、約1mol.%以下、または、さらには約0.5mol.%以下の量で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態において、ガラス組成物は、SnO2を清澄剤として含んでいてもよい。これらの実施形態において、SnO2は、ガラス組成物中に、約0mol.%超および約0.30mol.%以下の量で存在し得る。

しかも、本明細書に記載のガラス組成物は、ガラス組成物の化学的耐久性をさらに向上させるために1種以上の追加の金属酸化物を含んでいてもよい。例えば、ガラス組成物は、ZnOまたはZrO2をさらに含んでいてもよく、これらの各々は、ガラス組成物の化学的な作用に対する耐性をさらに向上させる。これらの実施形態において、追加の金属酸化物は、約0mol.%以上および約2.0mol.%以下である量で存在し得る。例えば、追加の金属酸化物がZrO2である場合、ZrO2は、約1.5mol.%以下の量で存在し得る。あるいは、または、追加的に、追加の金属酸化物は、ZnOを約2.0mol.%以下の量で含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ZnOは、アルカリ土類酸化物の1種以上の置換として含まれていてもよい。例えば、ガラス組成物がアルカリ土類酸化物MgO、CaOおよびSrOを含む実施形態において、MgOの量は、上記のとおり、液体温度を低下させると共に液体粘度を高めるために低減されてもよい。これらの実施形態においては、CaOもしくはSrOの少なくとも一方に追加して、または、その代わりに、ZnOが、MgOに対する部分的な置換としてガラス組成物に添加されてもよい。

上記に基づいて、一実施形態において、第1の例示的なガラス組成物は、約65mol.%〜約75mol.%のSiO2;約6mol.%〜約12.5mol.%のAl2O3;および、約5mol.%〜約12mol.%のアルカリ酸化物を含み得、アルカリ酸化物は、Na2OおよびK2Oを含むことが理解されるべきである。K2Oは0.5mol.%以下の量で存在し得る。ガラス組成物はまた、約8.0mol.%〜約15mol.%のアルカリ土類酸化物を含み得る。ガラス組成物は、イオン交換により強化されやすいものであり得る。

第1の例示的なガラス組成物の他の実施形態において、ガラス組成物は、約67mol.%〜約75mol.%のSiO2;約6mol.%〜約10mol.%のAl2O3;約5mol.%〜約12mol.%のアルカリ酸化物;および、約9mol.%〜約15mol.%のアルカリ土類酸化物を含む。アルカリ酸化物は、少なくともNa2OおよびK2Oを含む。ガラス組成物はホウ素およびホウ素の化合物を含まず、イオン交換を受けやすく、これにより、ガラスの化学強化が促進されて機械的耐久度が向上される。

第1の例示的なガラス組成物のさらに他の実施形態において、ガラス組成物は、約67mol.%〜約75mol.%のSiO2;約6mol.%〜約10mol.%のAl2O3;約5mol.%〜約12mol.%のアルカリ酸化物;および、約9mol.%〜約15mol.%のアルカリ土類酸化物を含み得る。アルカリ土類酸化物は、SrOおよびBaOの少なくとも一方を含む。ガラス組成物はホウ素およびホウ素の化合物を含まず、イオン交換を受けやすく、これにより、ガラスの化学強化が促進されて機械的耐久度が向上される。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、連続表面均質性および/または連続層均質性を有するガラス製容器は、ガラス製容器の本体の少なくとも内表面に対して均一な温度履歴をもたらす成形プロセスを利用して入手され得る。例えば、一実施形態においては、ガラス製容器の本体は、本体が形成されるガラス組成物からの化学種の揮発が軽減される成形温度および/または成形速度で成形され得る。具体的には、ガラス流を所望の形状に成形するためには、ガラスの粘度および成形の速度の両方を制御する必要がある。粘度が高い場合には成形速度を遅くする必要があり、一方で、粘度が低い場合には成形速度を高くすることが可能である。ガラスのバルク組成物および温度が、粘度に影響を与える最も大きな要因である。温度を調節して成形プロセスにおける各段階における粘度を適合させることにより、異なるガラスに同一の成形プロセスを用いることが可能である。従って、ガラス溶融物からの揮発を低減させる一つのアプローチは、プロセスをより低い温度(より高い粘度)で実施することである。このアプローチは、成形器具の収率および能力を低下させる必要もあり、最終的にコストが高くなってしまうために不利である。2種の例示的な組成物における揮発に関して温度は大きな影響因子であり、すべての事例において、温度(および、従って速度)を低減させると揮発による損失に係る原動力が低減することが図16に示されている。管−バイアル変換プロセスに関連する粘度は、200P(最高温度、切断および穿孔作業時)〜20,000P(最低温度、管成形および仕上げステップ時)の範囲である。典型的な51−expansionホウケイ酸ガラスに関して、これらの粘度は、およそ1100〜1650℃である。低い温度では揮発が顕著に低減されるため、関連する主な温度範囲は1350〜1650℃である。

他の実施形態において、連続表面均質性および/または連続層均質性を有するガラス製容器は、本体をモールド成形することにより入手され得る。ガラス溶融物を、モールドを用いて容器形状に成形する数々の方法が存在する。すべては、一様に高温である溶融ガラスの「ゴブ」を成形機に導入することに基づく。ブロー−ブロー成形においては、先ず、ゴブを、加圧空気を用いてオリフィス(リップ/仕上がりを形作る)を通してブローしてプリフォーム(最終製品より小さい)を形成する。次いで、プリフォーム(またはパリソン)を第2のモールドに入れ、ここで、モールド表面に接触するようさらにブローし、容器の最終形状が画定される。プレス−ブロー成形においては、ゴブをリップ/仕上がりを画定するリングによって保持し、プランジャーをゴブ中に押し込んでプリフォームを形成する。次いで、プリフォームを第2のモールドに入れ、ブローしてモールド表面に接触させ、最終容器形状を成形する。モールド成形プロセスは、一般に、成形中に本体に対して均一な温度履歴をもたらし、結果として、ガラス本体の少なくとも内表面に連続表面均質性および/または連続層均質性がもたらされ、これにより、層剥離に対するガラス本体の感受性が低減され得る。例えば、溶融ガラスは、ガラス本体がガラス溶融物から単調に冷却されるよう、容器形状に成形され、冷却中のガラスの温度が制御され得る。単調な冷却は、途中で昇温をまったく伴わずに溶融状態から固化するまでガラス本体の温度を低下させた場合に達成される。これにより、管をバイアルに変換するプロセスと比して揮発が少なくなる。この種の冷却は、ブロー成形、プレス−ブロー成形、ブロー−ブロー成形などのモールド成形プロセスを用いることで促進され得る。いくつかの実施形態において、これらの技術はType IクラスBガラス組成物から10以下の層剥離係数を有するガラス製容器を成形するために用いられ得る。

本明細書に記載のガラス組成物は、ガラス原料のバッチが所望の組成を有するよう、ガラス原料(例えば、SiO2、Al2O3、アルカリ酸化物、アルカリ土類酸化物等などの粉末)のバッチを混合することにより形成される。その後、ガラス原料のバッチを加熱して溶融ガラス組成物を形成し、その後、これを冷却および固化してガラス組成物を形成する。固化の最中(すなわち、ガラス組成物が可塑的に変形可能である場合)、ガラス組成物は、ガラス組成物を所望の最終形態に形状化する標準的な形状化技術を用いて成形され得る。あるいは、ガラス組成物は、シート、管等などのストック形態に形状化され得、その後、再加熱されてガラス製容器100に成形される。

本明細書に記載のガラス組成物は、例えば、シート、管等などの種々の形態に形状化され得る。化学的に耐久性であるガラス組成物は、液体、粉末等などの医薬品配合物を内包するための医薬品パッケージの形成に特に好適に用いられる。例えば、本明細書に記載のガラス組成物は、バイアル、アンプル、カートリッジ、シリンジ本体、および/または、医薬品配合物を保管するためのいずれかの他のガラス製容器などのガラス製容器の形成に用いられ得る。しかも、イオン交換を介してガラス組成物を化学的に強化可能であることを利用して、このような医薬品パッケージングの機械的耐久度を向上させることが可能である。従って、少なくとも一実施形態において、ガラス組成物は、医薬品パッケージングの化学的耐久性および/または機械的耐久度を向上させるために、医薬品パッケージに組み込まれることが理解されるべきである。

さらに、いくつかの実施形態において、ガラス製容器は、DIN 12116規格、ISO 695規格、ISO 719規格、ISO 720規格、USP<660>テストおよび/またはヨーロッパ薬局方3.2.1テストによる判定で、化学的に耐久性であると共に劣化に対して耐性であるガラス組成物から形成され得る。

具体的には、DIN 12116規格は、酸性の溶液中に入れられた場合のガラスの分解に対する耐性の基準である。DIN 12116規格は個別のクラスに分かれている。クラスS1には、0.7mg/dm2以下の重量損失が規定されており;クラスS2には、0.7mg/dm2〜1.5mg/dm2以下の重量損失が規定されており;クラスS3には、1.5mg/dm2〜15mg/dm2以下の重量損失が規定されており;および、クラスS4には、15mg/dm2を超える重量損失が規定されている。本明細書に記載のガラス組成物はDIN 12116に準拠したクラスS3の酸耐性またはそれ以上を有し、いくつかの実施形態は、少なくともクラスS2の酸耐性もしくはそれ以上、または、さらにはクラスS1を有する。低いクラスランクは向上した酸耐性性能を有することが理解されるべきである。従って、S1とグレード付けされた組成物は、クラスS2とグレード付けされた組成物よりも優れた酸耐性を有する。

ISO 695規格は、塩基性の溶液中に入れられた場合のガラスの分解に対する耐性の基準である。ISO 695規格は個別のクラスに分かれている。クラスA1には、75mg/dm2以下の重量損失が規定されており;クラスA2には、75mg/dm2〜175mg/dm2以下の重量損失が規定されており;およびクラスA3には、175mg/dm2を超える重量損失が規定されている。本明細書に記載のガラス組成物は、ISO 695に準拠したクラスA2の塩基耐性またはそれ以上を有し、いくつかの実施形態は、クラスA1塩基耐性を有する。低いクラスランクは向上した塩基耐性性能を有することが理解されるべきである。従って、A1とグレード付けされた組成物は、クラスA2とグレード付けされた組成物よりも優れた塩基耐性を有する。

ガラス製容器を形成するガラス組成物は、ISO 720規格による判定で、化学的に耐久性であると共に、劣化に対して耐性である。ISO 720規格は、蒸留水中における劣化に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。ガラスの非イオン交換サンプルがISO 720プロトコルに従って評価される。ガラスのイオン交換サンプルは、ガラスをISO 720規格において要求される粒子サイズに破砕し、100%KNO3の溶融塩浴中において450℃の温度で少なくとも5時間かけてイオン交換し、個別のガラス粒子中に圧縮応力層を誘起させ、次いで、ISO 720規格に従ってテストする改変したISO 720プロトコルで評価される。ISO 720規格は個別の種類に分けられる。Type HGA1には、62μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;Type HGA2には、62μg超および527μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;およびType HGA3には、527μg超および930μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されている。本明細書に記載のガラス組成物は、Type HGA2またはそれ以上のISO 720加水分解耐性を有し、いくつかの実施形態は、Type HGA1加水分解耐性またはそれ以上を有する。低いクラスランクは向上した加水分解耐性性能を有することが理解されるべきである。従って、HGA1とグレード付けされた組成物は、HGA2とグレード付けされた組成物よりも優れた加水分解耐性を有する。

ガラス製容器を形成するガラス組成物はまた、ISO 719規格による判定で、化学的に耐久性であると共に、劣化に対して耐性である。ISO 719規格は、蒸留水中における劣化に対するガラスの耐性(すなわち、ガラスの加水分解耐性)の基準である。ガラスの非イオン交換サンプルがISO 719プロトコルに従って評価される。ガラスのイオン交換サンプルは、ガラスをISO 719規格において要求される粒子サイズに破砕し、100%KNO3の溶融塩浴中において450℃の温度で少なくとも5時間かけてイオン交換し、個別のガラス粒子中に圧縮応力層を誘起させ、次いで、ISO 719規格に従ってテストする改変したISO 719プロトコルで評価される。ISO 719規格は個別の種類に分けられる。Type HGB1には、31μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;Type HGB2には、31μg超および62μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;Type HGB3には、62μg超および264μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;Type HGB4には、264μg超および620μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されており;およびType HGB5には、620μg超および1085μg以下の抽出されたNa2O当量が規定されている。本明細書に記載のガラス組成物は、Type HGB2またはそれを超えるISO 719加水分解耐性を有し、いくつかの実施形態はType HGB1加水分解耐性を有する。低いクラスランクは向上した加水分解耐性性能を有することが理解されるべきである。従って、HGB1とグレード付けされた組成物は、HGB2とグレード付けされた組成物よりも優れた加水分解耐性を有する。

USP<660>テストおよび/またはヨーロッパ薬局方3.2.1テストに関して、本明細書に記載のガラス製容器は、Type1化学的耐久性を有する。上記のとおり、USP<660>およびヨーロッパ薬局方3.2.1テストは破砕したガラス粒子ではなく完全な状態のガラス製容器で実施され、従って、USP<660>およびヨーロッパ薬局方3.2.1テストは、ガラス製容器の内表面の化学的耐久性を直接評価するために用いられ得る。

ISO 719、ISO 720、ISO 695およびDIN 12116に準拠した上記において言及した分類を参照する場合、特定の分類「またはそれ以上」を有するガラス組成物またはガラス物品は、ガラス組成物の性能が、特定の分類と同程度もしくはそれ以上に良好であることを意味する理解されるべきである。例えば、「HGB2」またはそれ以上のISO 719加水分解耐性を有するガラス物品は、HGB2またはHGB1のISO 719分類を有し得る。

損傷耐性 本明細書において上記に記載されているとおり、ガラス製容器は、容器が加工されて充填されるに伴って、衝撃損傷、スクラッチおよび/または擦過などの損傷を受けてしまう場合がある。このような損傷は、度々、別々のガラス製容器同士の接触により、または、ガラス製容器と製造器具との接触により生じる。この損傷は一般に、容器の機械的強度を低減させて、容器の内容物の完全性を損なわせてしまう可能性がある貫通き裂をもたらし得る。従って、本明細書に記載のいくつかの実施形態において、ガラス製容器100は、図8に示されているとおり、本体102の外表面106の少なくとも一部分の周辺に位置された平滑コーティング160をさらに備える。いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は、ガラス製容器の本体102の少なくとも外表面106に位置され得るが、一方で、他の実施形態においては、無機コーティングが本体102の表面に圧縮応力をもたらすために用いられる場合など、1つ以上の中間体コーティングが平滑コーティングと本体102の外表面106との間に位置され得る。平滑コーティングは、本体102の一部分の摩擦係数をコーティングにより低減させ、これにより、ガラス本体102の外表面106における擦過および表面損傷の発生を低減させる。要するに、コーティングは容器を他の物体(または容器)に対して「滑らせ」、これにより、ガラスに表面損傷が発生する可能性を低減させる。しかも、平滑コーティング160はガラス製容器100の本体102において緩衝材としても作用し、これにより、ガラス製容器に対する鈍い衝撃による損傷の影響が低減される。

本明細書において用いられるところ、平滑という用語は、ガラス製容器の外表面に適用されるコーティングの摩擦係数がコーティングされていないガラス製容器よりも低いことを意味し、これにより、擦り傷、擦過等などの損傷に対する耐性が向上したガラス製容器がもたらされる。

コーティングされたガラス製容器の種々の特性(すなわち、摩擦係数、水平圧縮強度、4点曲げ強度、透明度、無色性等)は、コーティングされたガラス製容器がコーティングされたままの状態(すなわち、コーティングの適用後であって、追加の処理がまったく行われていない状態)にある状態で、または、特に限定されないが、洗浄、凍結乾燥、発熱物質除去、オートクレーブ等を含む医薬品充填ラインで行われる処理と同様または同等のものなどの1種以上の加工処理の後に、測定され得る。

発熱物質除去は、物質から発熱物質を除去するプロセスである。医薬品パッケージなどのガラス製物品の発熱物質除去は、サンプルに熱処理を行うことにより実施可能であり、ここで、サンプルは一定の時間の間、高温に加熱される。例えば、発熱物質除去は、ガラス製容器を、約250℃〜約380℃の温度で、特に限定されないが、20分間、30分間40分間、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間および72時間を含む約30秒〜約72時間の間加熱するステップを含み得る。熱処理の後、ガラス製容器は室温に冷却される。医薬品産業において通例採用される従来の発熱物質除去条件の1つは、約250℃の温度で約30分間の熱処理である。しかしながら、より高い温度が用いられる場合には、熱処理時間を短縮し得ることが予期されている。本明細書に記載のコーティングされたガラス製容器は、一定の時間、高温に曝され得る。本明細書に記載の加熱ステップに係る高温および時間は、ガラス製容器の発熱物質除去に十分であってもなくてもよい。しかしながら、本明細書に記載の加熱ステップに係る温度および時間のいくつかは、本明細書に記載のコーティングされたガラス製容器などのコーティングされたガラス製容器の脱水素に十分であることが理解されるべきである。例えば、本明細書に記載のとおり、コーティングされたガラス製容器は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に、30分間の時間曝露され得る。

本明細書において用いられるところ、凍結乾燥条件(すなわち、凍結乾燥ステップ)とは、サンプルがタンパク質を含有する液体で充填され、次いで、−100℃で凍結され、続いて、−15℃、減圧下で20時間かけて水が昇華されるプロセスを指す。

本明細書において用いられるところ、オートクレーブ条件とは、サンプルを100℃で10分間水蒸気パージし、続いて、20分間の停止時間でサンプルを121℃の環境に曝露させ、続いて、121℃で30分間熱処理することを指す。

平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数(μ)は、同一のガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス製容器の表面よりも低い摩擦係数を有し得る。摩擦係数(μ)は、2つの表面間の摩擦の定量的な測定値であり、表面粗度、ならびに、特にこれらに限定されないが温度および湿度などの環境的条件を含む、第1の表面および第2の表面の機械的特性および化学的特性に応じる。本明細書において用いられるところ、コーティングされたガラス製容器100に係る摩擦係数の測定値は、第1のガラス製容器(約16.00mm〜約17.00mmの外径を有する)の外表面と、第1のガラス製容器と同等の第2のガラス製容器の外表面との間の摩擦係数として報告され、ここで、第1のガラス製容器および第2のガラス製容器は、同一の本体および同一のコーティング組成(適用される場合)を有し、製造の前後および製造の最中には同一の環境に曝露されていたものである。本明細書において別段の定めがある場合を除き、摩擦係数とは、本明細書に記載のとおり、バイアル重畳テスト治具における測定で、30Nの垂直荷重で測定される最大摩擦係数を指す。しかしながら、特定の負荷荷重で最大摩擦係数を示すコーティングされたガラス製容器はまた、荷重が小さい場合には、同一またはより良好な(すなわち、より小さい)最大摩擦係数を示すこととなることが理解されるべきである。例えば、コーティングされたガラス製容器が50Nの負荷荷重下で0.5以下の最大摩擦係数を示す場合、コーティングされたガラス製容器はまた、25Nの負荷荷重下で0.5以下の最大摩擦係数を示すこととなる。

本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器(コーティング済および未コーティングの両方)の摩擦係数は、バイアル重畳テスト治具で測定される。テスト治具300が図9に概略的に図示されている。同一の装置は、治具中に配置された2つのガラス製容器間の摩擦力を測定するためにも用いられ得る。バイアル重畳テスト治具300は、交差する構成で配置された第1のクランプ312および第2のクランプ322を備える。第1のクランプ312は、第1のベース316に連結する第1の固定アーム314を備える。第1の固定アーム314には第1のガラス製容器310が取り付けられており、第1のガラス製容器310は第1のクランプ312に対して固定して保持されている。同様に、第2のクランプ322は第2のベース326に連結する第2の固定アーム324を備える。第2の固定アーム324には第2のガラス製容器320が取り付けられており、ガラス製容器320は第2のクランプ322に対して固定して保持されている。第1のガラス製容器310の長軸と第2のガラス製容器320の長軸とがx−y軸によって定義される水平面上で互いに約90°の度で配置されるよう、第1のガラス製容器310は第1のクランプ312で位置決めされていると共に第2のガラス製容器320は第2のクランプ322で位置決めされている。

第1のガラス製容器310は、接触点330で第2のガラス製容器320と接触するよう配置されている。垂直力は、x−y軸によって定義される水平面とは直交する方向に加えられる。垂直力は、固定式の第1のクランプ312に対して第2のクランプ322に加えられる静重量または他の力によって適用され得る。例えば、重しを第2のベース326上に置き、第1のベース316を安定した表面に配置し、これにより、接触点330で第1のガラス製容器310と第2のガラス製容器320との間に測定可能な力が誘起させてもよい。あるいは、力は、UMT(ユニバーサル機械式テスタ)マシンなどの機械装置で加えられてもよい。

第1のクランプ312または第2のクランプ322は、第1のガラス製容器310の長軸および第2のガラス製容器320の長軸と共に、45°の角度の方向に、他方と相対的に動かされてもよい。例えば、第1のクランプ312が固定され、第2のクランプ322が、第2のガラス製容器320が第1のガラス製容器310をx−軸の方向に横切るよう動かされてもよい。同様の機構が、R.L.De Rosa et al.,「Scratch Resistant Polyimide Coatings for Alumino Silicate Glass surfaces」,The Journal of Adhesion,78:113−127、2002によって記載されている。摩擦係数を測定するために、第2のクランプ322を動かすために必要とされる力と、第1および第2のガラス製容器310、320に加えられた垂直力とが荷重計で測定され、摩擦係数は摩擦力および垂直力の比率の商として算出される。治具は25℃および相対湿度50%の環境で操作される。

本明細書に記載の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、上記のバイアル重畳治具による測定で、同様のコーティングされたガラス製容器に対して約0.7以下の摩擦係数を有する。他の実施形態において、摩擦係数は約0.6以下、または、さらには約0.5以下であり得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、約0.4以下、または、さらには約0.3以下の摩擦係数を有する。約0.7以下の摩擦係数を有するコーティングされたガラス製容器は、一般に、摩擦による損傷に対して高い耐性を示し、その結果、高い機械特性を有する。例えば、従来のガラス製容器(平滑コーティングを有さない)は、0.7を超える摩擦係数を有し得る。

本明細書に記載のいくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、同一のガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス製容器の表面の摩擦係数よりも少なくとも20%低い。例えば、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、同一のガラス組成物から形成されたコーティングされていないガラス製容器の表面の摩擦係数よりも、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、または、さらには少なくとも50%小さければよい。

いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に、30分間の間曝露した後(すなわち、発熱物質除去条件)に約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に、30分間の間曝露した後に、約0.7以下の摩擦係数(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、または、さらには約0.3以下)を有し得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約260℃の温度に30分間曝露された後に、約30%を超えては増大し得ない。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に30分間曝露された後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、または、さらには約10%)を超えて増大し得ない。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に30分間曝露された後に、約0.5(すなわち、約0.45、約.04、約0.35、約0.3、約0.25、約0.2、約0.15、約0.1、または、さらには約0.5)を超えて増大し得ない。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に30分間曝露された後に、まったく増大し得ない。

いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、約70℃の温度で10分間水浴中に浸漬された後に、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、約70℃の温度で5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、または、さらには1時間水浴中に浸漬された後に、約0.7以下の摩擦係数(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、または、さらには約0.3以下)を有し得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約70℃の温度で10分間水浴中に浸漬された後に、約30%を超えて増大し得ない。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約70℃の温度で5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、または、さらには1時間水浴中に浸漬された後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、または、さらには約10%)を超えて増大し得ない。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、約70℃の温度で5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、または、さらには1時間水浴中に浸漬された後に、まったく増加し得ない。

いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、凍結乾燥条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、凍結乾燥条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、または、さらには約0.3以下)を有し得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、約30%を超えて増大し得ない。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、または、さらには約10%)を超えて増大し得ない。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、凍結乾燥条件への曝露後に、まったく増加し得ない。

いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数を有し得る。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分は、オートクレーブ条件への曝露後に、約0.7以下の摩擦係数(すなわち、約0.6以下、約0.5以下、約0.4以下、または、さらには約0.3以下)を有し得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、約30%を超えて増大し得ない。他の実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、約30%(すなわち、約25%、約20%、約15%、または、さらには約10%)を超えて増大し得ない。いくつかの実施形態において、平滑コーティングを有するコーティングされたガラス製容器の一部分の摩擦係数は、オートクレーブ条件への曝露後に、まったく増加し得ない。

いくつかの実施形態において、平滑コーティング160を有するガラス製容器100が同等のガラス製容器によって30N垂直力で擦過された後、ガラス製容器100の擦過領域の摩擦係数は、同一箇所における30N垂直力での同等のガラス製容器によるさらなる擦傷後に、約20%を超えて増加しない。他の実施形態において、平滑コーティング160を有するガラス製容器100が同等のガラス製容器によって30N垂直力で擦過された後、ガラス製容器100の擦過領域の摩擦係数は、同一箇所における30N垂直力での同等のガラス製容器によるさらなる擦傷後に、約15%を超えて、または、さらには10%を超えて増加しない。しかしながら、平滑コーティング160を有するガラス製容器100のすべての実施形態がこのような特性を示すことは必須ではない。

本明細書に記載のコーティングされたガラス製容器は水平圧縮強度を有する。本明細書に記載の水平圧縮強度は、図4に概略的に図示されている水平圧縮装置500により測定される。コーティングされたガラス製容器100は、図4に示されているとおり、ガラス製容器の長軸と平行に配向された2つのプラテン502a,502bの間に容器を水平に配置することによりテストされる。次いで、プラテン502a,502bによって、機械荷重504がコーティングされたガラス製容器100に対して、ガラス製容器の長軸と直交する方向に加えられる。バイアルの圧縮に係る荷重速度は0.5in/minであり、これは、プラテンが、0.5in/minの速度で互いに向かって動くことを意味する。水平圧縮強度は25℃および相対湿度50%で測定される。水平圧縮強度の測定値は、選択された垂直圧縮荷重における破壊の確率として求められることが可能である。本明細書において用いられるところ、水平圧縮下で少なくともサンプルの50%においてガラス製容器が破損した場合に破壊が生じたものとする。いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、未コーティングのバイアルよりも少なくとも10%、20%または30%大きい水平圧縮強度を有し得る。

ここで図8および図9を参照すると、水平圧縮強度の測定は、擦過ガラス製容器においても実施され得る。具体的には、テスト治具300が操作されることにより、コーティングされたガラス製容器100の強度を低下させる表面スクラッチまたは擦傷などの損傷がコーティングされたガラス製容器の外表面に形成され得る。次いで、ガラス製容器が上記の水平圧縮法に供されるが、ここでは、容器は、スクラッチがプラテンと並行に外側に向くよう2つのプラテンの間に配置される。スクラッチは、バイアル重畳治具によって加えられる選択された垂直圧力とスクラッチ長さとによって特徴付けられることが可能である。別段の定めがある場合を除き、水平圧縮法に係る擦過ガラス製容器に対するスクラッチは、30Nの垂直荷重で形成された20mmのスクラッチ長さにより特徴付けられる。

コーティングされたガラス製容器は、熱処理の後に水平圧縮強度について評価することが可能である。熱処理は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃の温度に対する30分間の曝露であり得る。いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器の水平圧縮強度は、上記のものなどの熱処理に曝露され、次いで、上記のとおり擦過された後に、約20%、30%、または、さらには40%を超えて低減されない。一実施形態において、コーティングされたガラス製容器の水平圧縮強度は、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃で、30分間の熱処理に曝露され、次いで、擦過された後に、約20%を超えて低減されない。

いくつかの他の実施形態において、平滑コーティング160を有するガラス製容器100は、高温で熱的に安定であり得る。本明細書において用いられるところ、「熱的に安定」という句は、曝露後に、具体的には摩擦係数および水平圧縮強度といったコーティングされたガラス製容器の機械特性が影響を受けたとしても最低限であるよう、ガラス製容器に適用された平滑コーティング160が高温に対する曝露の後においてもガラス製容器の表面上で実質的に無傷のままであることを意味する。これは、平滑コーティングは高温への曝露後においてもガラスの表面に接着したままであり、擦過、衝撃等などの機械的な傷からガラス製容器を継続して保護していることを示している。本明細書に記載の平滑コーティングを有するガラス製容器は、少なくとも約250℃、または、さらには約260℃の温度に対する30分間の加熱後においても熱的に安定であり得る。

本明細書に記載の実施形態においては、平滑コーティングを有するガラス製容器(すなわち、コーティングされたガラス製容器)が、特定の温度への加熱および特定の時間のその温度での保持後に、摩擦係数基準および水平圧縮強度基準の両方を満たす場合には、コーティングされたガラス製容器は熱的に安定であるとみなされる。摩擦係数基準が満たされているかを判定するために、第1のコーティングされたガラス製容器の摩擦係数は、入手したままの状態(すなわち、熱曝露の前)において、図9に示されているテスト治具を用いて30N負荷荷重で測定される。第2のコーティングされたガラス製容器(すなわち、第1のコーティングされたガラス製容器と同一のガラス組成および同一のコーティング組成を有するガラス製容器)は規定の条件下で熱に曝露され、室温に冷却される。その後、第2のガラス製容器の摩擦係数は、図9に示されているテスト治具を用いて、コーティングされたガラス製容器を30N負荷荷重で擦過しておよそ20mmの長さを有する擦過(すなわち、「スクラッチ」)をもたらすことにより測定される。第2のコーティングされたガラス製容器の摩擦係数が0.7未満であり、擦過領域における第2のガラス製容器のガラスの表面に観察可能な損傷をまったく有さない場合、摩擦係数基準は、平滑コーティングの熱安定性を測定する目的を満たしている。本明細書において用いられるところ、「観察可能な損傷」という用語は、ガラス製容器の擦過領域におけるガラスの表面が、LEDまたはハロゲン光源を用いるノマルスキーまたは微分干渉コントラスト(DIC)分光顕微鏡で、100倍の倍率で観察した場合に、長さ0.5cmの擦過領域あたり6個未満のガラス割目が含まれることを意味する。ガラス割目またはガラス割れの基準の定義は、G.D.Quinn、「NIST Recommended Practice Guide:Fractography of Ceramics and Glasses」,NIST special publication,960−17(2006)に記載されている。

水平圧縮強度基準が満たされているかを判定するために、第1のコーティングされたガラス製容器は、図9に示されているテスト治具において30Nの荷重下で擦過されて20mmスクラッチが形成される。次いで、第1のコーティングされたガラス製容器は本明細書に記載の水平圧縮テストに供されて、第1のコーティングされたガラス製容器の残留強度が測定される。第2のコーティングされたガラス製容器(すなわち、第1のコーティングされたガラス製容器と同一のガラス組成および同一のコーティング組成を有するガラス製容器)は規定の条件下で熱に曝露され、室温に冷却される。その後、第2のコーティングされたガラス製容器は図9に示されているテスト治具において30N荷重下で擦過される。次いで、第2のコーティングされたガラス製容器は、本明細書に記載のとおり水平圧縮テストに供され、第2のコーティングされたガラス製容器の残留強度が測定される。第2のコーティングされたガラス製容器の残留強度が第1のコーティングされたガラス製容器と比して約20%を超えて低減しない場合、水平圧縮強度基準は、平滑コーティングの熱安定性の判定に係る目的を満たしている。

本明細書に記載の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、コーティングされたガラス製容器を少なくとも約250℃、または、さらには約260℃の温度に約30分間曝露させた後に摩擦係数基準および水平圧縮強度基準が満たされた場合に熱的に安定であるとみなされる(すなわち、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約250℃、または、さらには約260℃の温度で約30分間の時間は熱的に安定である)。熱安定性は、約250℃〜約400℃以下の温度でも評価され得る。例えば、いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約270℃の温度、または、さらには約280℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。さらに他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約290℃の温度、または、さらには約300℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。さらなる実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約310℃の温度、または、さらには約320℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。さらに他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約330℃の温度、または、さらには約340℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。さらに他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約350℃の温度、または、さらには約360℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。いくつかの他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約370℃の温度、または、さらには約380℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。さらに他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約390℃の温度、または、さらには約400℃の温度で約30分間の時間で基準が満たされた場合は、熱的に安定であるとみなされるであろう。

本明細書に開示のコーティングされたガラス製容器はまた、一連の温度にわたって熱的に安定であり得、これは、コーティングされたガラス製容器が、範囲における各温度で摩擦係数基準および水平圧縮強度基準を満たすことにより熱的に安定であることを意味する。例えば、本明細書に記載の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約250℃またはさらには約260℃〜約400℃以下の温度で熱的に安定であり得る。いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約250℃またはさらには約260℃〜約350℃の範囲において熱的に安定であり得る。いくつかの他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約280℃〜約350℃以下の温度で熱的に安定であり得る。さらに他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、少なくとも約290℃〜約340℃で熱的に安定であり得る。他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、約300℃〜約380℃の一連の温度で熱的に安定であり得る。他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器は、約320℃〜約360℃の一連の温度で熱的に安定であり得る。

質量損失とは、コーティングされたガラス製容器が選択された高温に選択された時間曝露された場合にコーティングされたガラス製容器から遊離される揮発物の量に関連する、コーティングされたガラス製容器の測定可能な特性を指す。質量損失は一般に、熱曝露によるコーティングの機械的劣化を示すものである。コーティングされたガラス製容器のガラス本体は測定温度では測定可能な質量損失を示さないために、質量損失テストでは、本明細書において詳述されているとおり、ガラス製容器に適用された平滑コーティングについてのみ質量損失データが得られる。質量損失には複数の要因が影響し得る。例えば、コーティングから除去可能である有機材料の量が質量損失に影響を及ぼし得る。ポリマーにおける炭素主鎖および側鎖の破断では、理論上は100%のコーティングの除去がもたらされることとなる。有機金属ポリマー材料は、典型的には、有機成分のすべてを損失するが、無機成分は残される。それ故、質量損失結果は、完全な理論的な酸化において、コーティングのどの程度が有機および無機であるか(例えば、コーティングの%シリカ)に基づいて基準化される。

質量損失を測定するために、コーティングされたガラス製容器などのコーティングしたサンプルを最初に150℃に加熱し、この温度で30分間の間維持してコーティングを乾燥させ、コーティングからH2Oを完全に蒸発させる。次いで、サンプルを、空気などの酸化性環境において、10℃/分の昇温速度で150℃から350℃まで加熱する。質量損失を測定する目的のために、150℃〜350℃に回収されたデータのみが考慮される。いくつかの実施形態において、平滑コーティングは、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合にその質量の約5%未満の質量損失を有する。他の実施形態において、平滑コーティングは、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合に約3%未満、または、さらには約2%未満の質量損失を有する。いくつかの他の実施形態において、平滑コーティングは、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合に約1.5%未満の質量損失を有する。いくつかの他の実施形態において、平滑コーティングは、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合に約0.75%未満の質量損失を有する。いくつかの他の実施形態において、平滑コーティングは、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合に、その質量を失うことは実質的にない。

質量損失結果は、本明細書に記載のとおり、150℃から350℃までの10°/分間の昇温などの熱処理の前後で、コーティングされたガラス製容器の重量を比較する手法に基づいている。コーティングの熱処理前重量(容器のガラス本体を含まず、予加熱ステップ後の重量)をコーティングされていないガラス製容器の重量と処理前のコーティングされたガラス製容器の重量とを比較することにより分かるように、熱処理前のバイアルと熱処理後のバイアルとの重量差がコーティングの重量損失であり、これを、コーティングの重量損失割合として標準化することが可能である。あるいは、コーティングの総質量は、総有機炭素テストまたは他の同様の手段によって判定され得る。

ここで図10を参照すると、脱ガスとは、コーティングされたガラス製容器が選択された高温に選択された時間曝露された場合にコーティングされたガラス製容器100から遊離される揮発物の量に関連する、コーティングされたガラス製容器100の測定可能な特性を指す。脱ガス測定値は、本明細書において、高温に対する一定の時間での曝露中における、コーティングを有するガラス製容器の表面積あたりの遊離した揮発物の重量による量として報告される。コーティングされたガラス製容器のガラス本体は脱ガスについて報告された温度では測定可能な程度で脱ガスを示さないために、脱ガステストでは、上記において詳述されているとおり、実質的に、ガラス製容器に適用された平滑コーティングについてのみ脱ガスデータが得られる。脱ガス結果は、コーティングされたガラス製容器100が、図10に図示されている装置400のガラスサンプルチャンバ402に置かれる手法に基づいている。空のサンプルチャンバのバックグラウンドサンプルを各サンプル試験に先行して収集する。サンプルチャンバをロトメータ406による測定で100ml/minの一定の空気パージ下に保持する一方で、加熱炉404を350℃に加熱し、その温度で1時間保持してチャンバのバックグラウンドサンプルを収集する。その後、コーティングされたガラス製容器100をサンプルチャンバ402中に配置し、サンプルチャンバを100ml/minの一定の空気パージ下に保持し、高温に加熱し、その温度で一定時間保持してコーティングされたガラス製容器100からのサンプルを収集する。ガラスサンプルチャンバ402は「Pyrex」製であり、最高分析温度が600℃に限定されている。Carbotrap 300吸着媒トラップ408をサンプルチャンバの排出ポートに構築して、サンプルから放出され、揮発性種吸着用の吸収剤樹脂に空気パージガス410によって吹き込ませることで、もたらされた揮発性種を吸着させる。次いで、吸収剤樹脂が、Hewlett Packard 5890 Series IIガスクロマトグラフィ/Hewlett Packard 5989 MSエンジンと直接組み合わされたGerstel Thermal Desorptionユニットに直接置かれる。脱ガス種は350℃で吸着媒樹脂から熱的に脱着され、非極性ガスクロマトグラフィカラム(DB−5MS)のヘッドに極低温で集められる。ガスクロマトグラフィ中の温度は325℃の最終温度まで10℃/minの速度で昇温されて、揮発性および半揮発性有機種の分離および精製が行われる。分離メカニズムは、実質的に沸点または蒸留クロマトグラムがもたらされる異なる有機種の蒸発熱に基づくものとして実証されている。分離の後、精製された種が従来の電子衝撃イオン化質量分析プロトコルによって分析される。標準条件下で操作されることにより、得られる質量スペクトルが既存の質量スペクトルライブラリと比較され得る。

いくつかの実施形態において、本明細書に記載のコーティングされたガラス製容器は、約250℃、約275℃、約300℃、約320℃、約360℃、または、さらには約400℃の高温への約15分間、約30分間、約45分間または約1時間の時間の曝露の最中に、約54.6ng/cm2以下、約27.3ng/cm2以下、または、さらには、約5.5ng/cm2以下の脱ガスを示す。さらに、コーティングされたガラス製容器は特定の温度範囲において熱的に安定であり得、これは、コーティングされた容器は、特定の範囲中のすべての温度で上記のとおり一定の脱ガスを示すことを意味する。脱ガス測定に先立って、コーティングされたガラス製容器は、素コーティング状態(すなわち、平滑コーティングを適用した直後)、または、発熱物質除去、凍結乾燥もしくはオートクレービングのいずれか1つの後であり得る。いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器100は実質的に脱ガスを示し得ない。

いくつかの実施形態において、脱ガスデータは、平滑コーティングの質量損失率を測定するために用いられ得る。熱処理前コーティング質量は、コーティングの厚さ(SEMイメージまたは他の様式により測定)、平滑コーティングの密度およびコーティングの表面積により測定可能である。その後、コーティングされたガラス製容器は脱ガス法に供されることが可能であり、質量損失率は、脱ガスにおいて放出される質量対熱処理前質量の比を見出すことにより測定可能である。

本明細書に記載のコーティングされたガラス製容器は4点曲げ強さを有する。ガラス製容器の4点曲げ強さを測定するためには、コーティングされたガラス製容器100の前駆体となるガラス管が測定に用いられる。ガラス管は、ガラス製容器と同一の直径を有するが、ガラス製容器の底またはガラス製容器の口を備えていない(すなわち、管からガラス製容器を形成する前)。次いで、ガラス管は4点曲げ応力テストに供されて機械的な破壊が誘起される。テストは、相対湿度50%で、外側接触部材を9インチ(22.86センチメートル)離間させ、内側接触部材を3インチ(7.62センチメートル)離間させ、10mm/minの荷重速度で行われる。

4点曲げ応力測定はまた、コーティングされ、擦過された管についても行われ得る。擦過バイアルの水平圧縮強度の測定において記載されているとおり、テスト治具300が操作されることにより、管の強度を低下させる表面スクラッチなどの擦傷が管表面に形成され得る。次いで、ガラス管が4点曲げ応力テストに供されて機械的な破壊が誘起される。テストは、25℃および相対湿度50%で、9インチ(22.86センチメートル)離間した外側プローブおよび3インチ(7.62センチメートル)離間した内側接触部材を10mm/minの荷重速度で用い、一方で、管がテスト中に張力下でスクラッチが形成されるよう配置されて行われる。

いくつかの実施形態において、擦傷後の平滑コーティングを備えるガラス管の4点曲げ強さは、同一の条件下で擦過されたコーティングされていないガラス管に対するものよりも、平均で、少なくとも10%、20%、または、さらには50%高い機械的強度を示す。

図11を参照すると、コーティングされた容器の透明度および色は、400〜700nmの一連の波長において分光測光計を用いて容器の光透過率を測定することにより評価され得る。測定は、光ビームが、容器への入射時に1回、次いで、出射時に1回と平滑コーティングを2回通過するように、容器の壁に対して垂直になるよう光ビームを容器に指向させることにより行われる。いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器の光透過率は、約400nm〜約700nmの波長について、コーティングされていないガラス製容器の光透過率の約55%以上であり得る。本明細書に記載されているとおり、光透過率は、本明細書に記載の熱処理などの熱処理の前または熱処理の後に測定可能である。例えば、約400nm〜約700nmの各波長について、光透過率は、コーティングされていないガラス製容器の光透過率の約55%以上であり得る。他の実施形態において、コーティングされたガラス製容器の光透過率は、約400nm〜約700nmの波長について、コーティングされていないガラス製容器の光透過率の約55%以上、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または、さらには約90%である。

本明細書に記載されているとおり、光透過率は、本明細書に記載の熱処理などの環境処理の前、または、環境処理の後に測定可能である。例えば、約250℃、約260℃、約270℃、約280℃、約290℃、約300℃、約310℃、約320℃、約330℃、約340℃、約350℃、約360℃、約370℃、約380℃、約390℃または約400℃で30分間の熱処理後、または、凍結乾燥条件への曝露後に、または、オートクレーブ条件への曝露後に、コーティングされたガラス製容器の光透過率は、約400nm〜約700nmの波長について、コーティングされていないガラス製容器の光透過率の約55%以上、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または、さらには約90%である。

いくつかの実施形態において、コーティングされたガラス製容器100は、すべての角度から見たときにヒトの裸眼に対して無色および透明として認識され得る。いくつかの他の実施形態において、平滑コーティング160は、平滑コーティング160がAldrichから市販されている、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸から形成されたポリイミドを含む場合など、知覚可能な色合いを有していてもよい。

いくつかの実施形態において、平滑コーティング160を有するガラス製容器100は、接着ラベルが貼り付け可能である外表面を有し得る。換言すると、平滑コーティング160は低い摩擦係数を有するものであるが、コーティングは、接着ラベルがしっかりと取り付けられるよう、接着ラベルを貼り付けることが可能である。しかしながら、接着ラベルを取り付けることが可能であることは、本明細書に記載の平滑コーティング160を有するガラス製容器100のすべての実施形態について必要とされるものではない。

図8を再度参照すると、いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は、仮コーティングであり得る。本明細書において用いられるところ、「仮コーティング」という句は、コーティングがガラス製容器100に対して永久的に接着されるのではなく、洗浄、加熱(すなわち、熱分解)等などによってガラス製容器100から除去され得ることを意味する。例えば、平滑コーティング160が熱分解により除去され得る仮コーティングである実施形態において、コーティングは、約300℃以下の温度で熱分解され得る。あるいは、平滑コーティング160は、洗浄剤および水の溶液でガラス製容器を洗浄することにより除去され得る仮コーティングであってもよい。

本明細書に記載の実施形態において、ガラス製容器は、所望の低摩擦係数および損傷に対する耐性を達成するために、無機コーティング、仮有機コーティングおよび/または堅牢性有機コーティングでコーティングされ得る。

無機コーティング 図8をさらに参照すると、本明細書に記載のいくつかの実施形態において、平滑コーティング160は無機コーティングである。無機コーティングは、ガラス製容器の本体102の外表面106に永久的に接着された堅牢性無機コーティングであり得る。堅牢性無機コーティングの特性は高温に対する曝露によっては劣化されず、従って、堅牢性無機コーティングを有するガラス製容器の摩擦係数および水平圧縮強度は、特に限定されないが、約250℃〜約400℃の範囲内の温度を含む高温に対する曝露の前後において実質的に同一である。堅牢性無機コーティングは、少なくとも本体の外表面の一部分に適用された連続コーティングであり、また、一般に、水および/または有機溶剤に不溶性である。例えば、いくつかの実施形態において、堅牢性無機コーティングは、金属窒化物コーティング、金属硫化物コーティング、金属酸化物コーティング、SiO2、ダイアモンドライクカーボンまたはカーバイドコーティングを含み得る。例えば、堅牢性無機コーティングは、類似するコーティングされたガラス製容器と比して比較的低い摩擦係数を示すと共に、比較的高い熱安定性を有する、錫、BN、hBN、TiO2、Ta2O5、HfO2、Nb2O5、V2O5、SnO、SnO2、ZrO2、Al2O3、SiO2、ZnO、MoS2、BC、SiC、または、同様の金属酸化物、金属窒化物およびカーバイドコーティングの少なくとも1種を含み得る。これらの実施形態において、コーティングは、蒸着、電子ビーム蒸着、dcマグネトロンスパッタリング、非平衡dcマグネトロンスパッタリング、acマグネトロンスパッタリングおよび非平衡acマグネトロンスパッタリングなどの物理蒸着法によりガラス製容器の外表面に適用され得る。あるいは、コーティングは、粉末コーティングにより適用され得る。化学蒸着(CVD)技術もまたコーティングの適用に用いられ得、超高真空CVD、低圧CVD、大気圧CVD、金属−有機CVD、レーザCVD、光化学CVD、エアロゾルアシストCVD、マイクロ波プラズマアシストCVD、プラズマ援用CVD、直接液体注入CVD、原子層CVD、燃焼CVD、ホットワイヤCVD、高速熱CVD、化学蒸着浸透および化学ビームエピタクシーが挙げられる。

特定の一実施形態において、堅牢性無機コーティングはダイアモンドライクカーボンである。ダイアモンドライクカーボンから形成されたフィルムまたはコーティングは、一般に、低い摩擦係数および高い硬度を示す。具体的には、DLCコーティングにおける相当量の炭素がSP3混成炭素である。この材料は、高い硬度および優れた摩耗耐性などのダイアモンドの一定の特性をこれらのコーティングに付与する。DLCコーティングの硬度は、SP3混成含有物の含有量に対して正比例する。DLCコーティングは、イオンビーム蒸着、陰極アークスプレー、パルスレーザアブレーション、アルゴンイオンスパッタリングおよびプラズマ援用化学蒸着により、ガラス製容器の外表面に蒸着され得る。蒸着されるDLCコーティングの厚さ、特定の蒸着法、および、コーティングの組成に応じて、蒸着層の色を、光学的に透明な黄色(すなわち、0.1μm厚のDLCフィルムは、わずかに黄色い色合いを伴いつつ光学的に透明であり得る)から琥珀色および黒色に変えることが可能である。

あるいは、平滑コーティング160は、仮コーティングなどのガラス製容器の外表面に一時的に固定される無機コーティングであり得る。これらの実施形態において、仮コーティングは、MgSO4、CaSO4、Ca3(PO4)2、Mg3(PO4)2、KNO3、K3PO4等などの無機塩を含み得る。

有機コーティング いくつかの代替的な実施形態において、平滑コーティング160は、仮コーティングなどの、ガラス製容器の外表面に一時的に固定される有機コーティングであっても、または、ガラス製容器の外表面に永久的に固定される堅牢性有機コーティングであってもよい。

有機仮コーティングに関して、ガラスとの接触によって生じる表面欠陥によるガラスの機械的強度の低下を軽減するために、ガラス物品(ガラス製容器等など)の表面を製造中の損傷から保護することが望ましい。これは一般に、上記のとおり、低摩擦係数を有するコーティングを適用することにより達成される。しかしながら、ガラス製容器はさらなる加工に供され得るため、コーティングをガラス製容器の外表面に永久的に接着しておく必要性はなく、代わりに、コーティングがガラス物品を保護する目的を果たした後に、下流の加工ステップにおいて除去され得る。例えば、仮コーティングは、熱分解によって除去され得る。本明細書に記載の実施形態において、仮コーティングは、300℃以下の温度で1時間以下の時間で熱分解され得る。あるいは、仮コーティングは、265℃の温度で2.5時間、または、さらには360℃の温度で10分間以内に熱分解され得る。

種々の有機材料が仮コーティングの形成に利用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、仮コーティングは、米国特許第3,577,256号明細書において開示されているとおり、例えば、ポリオキシエチレングリコール、メタアクリレート樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂およびポリビニルアルコールの混合物を含み得る。このようなコーティングは、成形後のガラス製容器の外表面に適用され得、また、アニーリング徐冷がまの中においてガラス表面から熱分解され得る。

他の実施形態において、仮有機コーティングは、除去可能な保護コーティングが記載されている米国特許第6,715,316B2号明細書において開示されているとおり、1種以上の多糖類を含み得る。このようなコーティングは、例えば水中の2%Semiclean KGなどの温和な水性洗浄剤を用いて、ガラス表面から除去可能である。

他の実施形態において、仮有機コーティングは、米国特許第4,055,441号明細書に記載の「コールドエンド」コーティング、または、同様のコーティングであり得る。このようなコーティングは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、ポリビニル−ピロリジノン、ポリエチレンアミン、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリウレタン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルホルマール、ポリアセタールおよびアセタールコポリマーを含むポリホルムアルデヒド、ポリ(アルキルメタクリレート)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸)およびその塩、ポリ(メタクリル酸)およびその塩、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル−ビニルアルコールコポリマー、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、乳化性ポリウレタン、ポリオキシエチレンステアレート、および、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのコポリマーを含むポリオレフィン、デンプンおよび改質デンプン、親水コロイド、ポリアクリロアミド、植物性脂肪および動物性脂肪、ワックス、獣脂、石けん、ステアリン−パラフィンエマルジョン、ジメチルまたはジフェニルまたはメチル/フェニル混合物のポリシロキサン、過フッ素化シロキサンおよび他の置換シロキサン、アルキルシラン、芳香族シラン、ならびに、酸化ポリエチレンおよびそれらの組合せまたは類似のコーティングの少なくとも1種から形成され得る。

仮有機コーティングは、このようなコーティングをガラス製容器に直接接触させることにより適用され得る。例えば、コーティングは、浸漬プロセスによって、あるいは、スプレーまたは他の好適な手段によって適用され得る。次いで、コーティングは、乾燥され、および、任意選択により、高温で硬化され得る。

ここで図8および図12Aを参照すると、いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は、ガラス本体102の外表面106の少なくとも一部分に接着された堅牢性有機コーティングである。堅牢性有機コーティングは、上記のとおり、低摩擦係数を有すると共に、高温で熱的に安定でもある。平滑コーティング160は、外表面162およびガラス接触表面164を有する。平滑コーティング160が堅牢性有機コーティングである実施形態において、平滑コーティング160は、ガラス本体102の外表面106に直接接触するカップリング剤層180と、カップリング剤層180と直接接触するポリマー層170を含んでいてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、平滑コーティング160はカップリング剤層180を含んでいなくてもよく、ポリマー層170がガラス本体102の外表面106と直接接触していてもよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は、2013年2月28日に出願され、「Glass Articles with Low Friction Coatings」と題された、その全体が本明細書において参照により援用されている米国仮特許出願第13/780,754号明細書に記載のコーティング層である。

ここで図8および12Aを参照すると、一実施形態においては、平滑コーティング160は2積層構造を備える。図12Aにはコーティングされたガラス製容器の一部分の断面が示されており、ここで、平滑コーティング160は、ポリマー層170およびカップリング剤層180を含む。ポリマー化学組成物がポリマー層170中に含有され得、カップリング剤がカップリング剤層180中に含有され得る。カップリング剤層180はガラス本体102の外表面106と直接接触していてもよい。ポリマー層170は、カップリング剤層180と直接接触していてもよく、平滑コーティング160の外表面162を形成していてもよい。いくつかの実施形態において、カップリング剤層180はガラス本体102の外表面106に接着されており、ポリマー層170は界面174でカップリング剤層180に接着されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、平滑コーティング160はカップリング剤を含んでいなくてもよく、ポリマー化学組成物がガラス本体102の外表面106と直接接触しているポリマー層170中に存在していてもよいことが理解されるべきである。他の実施形態において、ポリマー化学組成物およびカップリング剤は、単一の層において実質的に混合されていてもよい。いくつかの他の実施形態において、ポリマー層170はカップリング剤層180の上面に位置されていてもよく、これは、ポリマー層170がカップリング剤層180とガラス本体102の外表面106と比して外側層であることを意味する。本明細書において用いられるところ、第2の層の「上面」に位置された第1の層とは、第1の層が、第2の層と直接接触していること、または、第1の層と第2の層との間に第3の層が配置されているなど、第2の層とは離れていることが可能であることを意味する。

ここで図12Bを参照すると、一実施形態において、平滑コーティング160は、カップリング剤層180とポリマー層170との間に位置された界面層190をさらに含んでいてもよい。界面層190は、カップリング剤層180の1種以上の化学組成物と結合されたポリマー層170の1種以上の化学組成物を含んでいてもよい。この実施形態において、カップリング剤層180とポリマー層170との界面により界面層190が形成されており、ここで、ポリマー化学組成物とカップリング剤との間で結合が生じている。しかしながら、いくつかの実施形態においては、図12Aを参照して上記されているとおり、カップリング剤層180とポリマー層170との界面に相当する層がない場合もあり、この場合、ポリマーとカップリング剤とが互いに化学的に結合していることが理解されるべきである。

他の実施形態において、ポリマー化学組成物およびカップリング剤は、単一の層中において実質的に混合されて、平滑コーティングの均質な層が形成されていてもよい。このような混合された単一の層は、ガラス本体102の外表面106と直接接触していてもよい。本明細書に記載のとおり、ポリマー層170およびカップリング剤層180の材料(すなわち、それぞれ、少なくともポリマーおよび少なくともカップリング剤)は、平滑コーティング160の少なくとも1つの層を形成するために混合されていてもよい。混合層平滑コーティング160は、ポリマー化学組成物およびカップリング剤以外の材料をさらに含んでいてもよい。混合層平滑コーティング160を形成するために、このような層の種々の材料は、ガラス製容器100への平滑コーティング160の適用前に、溶液中において一緒に混合され得る。他の実施形態において、混合層は、例えば、実質的にポリマー材料のみからなる層の下のポリマーおよびカップリング剤の混合層など、非混合層の上または下であってもよい。他の実施形態において、平滑コーティングは、3または4層などの3つ以上の層を含んでいてもよい。

ガラス本体102の外表面106に適用された平滑コーティング160は、約100μm未満、または、さらには約1μm以下の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティング160の厚さは約100nm厚以下であり得る。他の実施形態において、平滑コーティング160は、約90nm厚未満、約80nm厚未満、約70nm厚未満、約60nm厚未満、約50nm未満、または、さらには約25nm未満であり得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は、ガラス本体102の全面上において厚さが均一でなくてもよい。例えば、コーティングされたガラス製容器100は、ガラス本体102の外表面106と平滑コーティング160を形成する1種以上のコーティング溶液とを接触させるプロセスのために、一定の領域において平滑コーティング160が厚い場合がある。いくつかの実施形態において、平滑コーティング160は不均一な厚さを有し得る。例えば、コーティングの厚さはコーティングされたガラス製容器100の異なる領域にわたって様々であり得、これにより、選択された領域における保護が促進され得る。他の実施形態においては、ガラス本体の外表面106の選択された部分のみが平滑コーティング160でコーティングされる。

ポリマー層170、界面層190および/またはカップリング剤層180などの少なくとも2つの層を含む実施形態において、各層は、約100μm未満、または、さらには約1μm以下の厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、各層の厚さは、約100nm以下であってもよい。他の実施形態において、各層は、約90nm厚未満、約80nm厚未満、約70nm厚未満、約60nm厚未満、約50nm未満、または、さらには約25nm厚未満であり得る。

本明細書において記載されているとおり、いくつかの実施形態において、平滑コーティング160はカップリング剤を含む。カップリング剤は、ポリマー化学組成物のガラス本体102の外表面106に対する固着もしくは接着を向上し得、また、一般に、ガラス本体102と化学組成物層170のポリマー化学組成物との間に位置されるか、または、ポリマー化学組成物と混合される。本明細書において用いられるところ、固着性とは、熱処理などのコーティングされたガラス製容器に適用される処理の前後におけるポリマー層の固着または接着の強度を指す。熱処理としては、特に限定されないが、オートクレービング、発熱物質除去、凍結乾燥等が挙げられる。

一実施形態において、カップリング剤は、少なくとも1種のシラン化学組成物を含み得る。本明細書において用いられるところ、「シラン」化学組成物は、オルガノシラン官能基、ならびに、水溶液中においてシランから形成されるシラノールを含むシラン部分を含むいずれかの化学組成物である。カップリング剤のシラン化学組成物は芳香族または脂肪族であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のシラン化学組成物は、第一級アミン部分または第二級アミン部分などのアミン部分を含み得る。さらに、カップリング剤は、1種または複数種のシラン化学組成物から形成される1種または複数種のシルセスキオキサン化学組成物などの、このようなシランの水解物および/またはオリゴマーを含み得る。シルセスキオキサン化学組成物は、完全ケージ構造、部分ケージ構造または非ケージ構造を含み得る。

カップリング剤は、1種の化学組成物、2種の異なる化学組成物、または、2種以上の単量体化学組成物から形成されるオリゴマーを含む2種を超える異なる化学組成物などの、任意の数の異なる化学組成物を含み得る。一実施形態において、カップリング剤は、(1)第1のシラン化学組成物、その加水分解物もしくはそのオリゴマー、ならびに、(2)少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含み得る。他の実施形態において、カップリング剤は、第1および第2のシランを含む。本明細書において用いられるところ、「第1の」シラン化学組成物および「第2の」シラン化学組成物は、異なる化学組成を有するシランである。第1のシラン化学組成物は、芳香族または脂肪族化学組成物であり得、任意によりアミン部分を含み得、任意によりアルコキシシランであり得る。同様に、第2のシラン化学組成物は芳香族または脂肪族化学組成物であり得、任意によりアミン部分を含み得、任意によりアルコキシシランであり得る。

例えば、一実施形態においては、1種のシラン化学組成物のみがカップリング剤として適用される。このような実施形態において、カップリング剤は、シラン化学組成物、その加水分解物またはそのオリゴマーを含み得る。

他の実施形態においては、複数種のシラン化学組成物がカップリング剤として適用され得る。このような実施形態において、カップリング剤は、(1)第1のシラン化学組成物と第2のシラン化学組成物との混合物、ならびに、(2)少なくとも第1のシラン化学組成物および第2のシラン化学組成物のオリゴマー化から形成される化学組成物の少なくとも一方を含み得る。

上記の実施形態を参照すると、第1のシラン化学組成物、第2のシラン化学組成物、または、その両方が芳香族化学組成物であり得る。本明細書において用いられるところ、芳香族化学組成物は、ベンゼン系および関連する有機部分の特徴である6員炭素環を1つまたは複数含有する。芳香族シラン化学組成物は、特にこれらに限定されないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物もしくはそのオリゴマー、または、トリアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物もしくはそのオリゴマーなどのアルコキシシランであり得る。いくつかの実施形態において、芳香族シランはアミン部分を含み得、アミン部分を含むアルコキシシランであり得る。他の実施形態において、芳香族シラン化学組成物は、芳香族アルコキシシラン化学組成物、芳香族アシルオキシシラン化学組成物、芳香族ハロゲンシラン化学組成物または芳香族アミノシラン化学組成物であり得る。他の実施形態において、芳香族シラン化学組成物は、アミノフェニル、3−(m−アミノフェノキシ)プロピル、N−フェニルアミノプロピル、または、(クロロメチル)フェニル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、もしくはアミノシランからなる群から選択され得る。例えば、芳香族アルコキシシランは、特に限定されないが、アミノフェニルトリメトキシシラン(本明細書においては時に、「APhTMS」と称される)、アミノフェニルジメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、アミノフェニルジエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルジエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルジエトキシシラン、その水解物またはそのオリゴマー化化学組成物であり得る。例示的な実施形態において、芳香族シラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであり得る。

上記の実施形態を再度参照すると、第1のシラン化学組成物、第2のシラン化学組成物、または、その両方が脂肪族化学組成物であり得る。本明細書において用いられるところ、脂肪族化学組成物は、特にこれらに限定されないが、アルカン、アルケンおよびアルキンなどといった、開環鎖構造を有する化学組成物などの非芳香族である。例えば、いくつかの実施形態において、カップリング剤は、アルコキシシランといった化学組成物を含み得、特にこれらに限定されないが、ジアルコキシシラン化学組成物、その加水分解物もしくはそのオリゴマーなどの脂肪族アルコキシシラン、または、その加水分解物もしくはそのオリゴマーなどのトリアルコキシシラン化学組成物であり得る。いくつかの実施形態において、脂肪族シランはアミン部分を含み得、アミノアルキルトリアルコキシシランなどのアミン部分を含むアルコキシシランであり得る。一実施形態において、脂肪族シラン化学組成物は、3−アミノプロピル、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル、ビニル、メチル、N−フェニルアミノプロピル、(N−フェニルアミノ)メチル、N−(2−ビニルベンジルアミノエチル)−3−アミノプロピル置換アルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、または、アミノシラン、その水解物もしくはそのオリゴマーからなる群から選択され得る。アミノアルキルトリアルコキシシランとしては、これらに限定されないが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(本明細書においては時に、「GAPS」と称される)、3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジエトキシシラン、その水解物およびそのオリゴマー化化学組成物が挙げられる。他の実施形態において、脂肪族アルコキシシラン化学組成物は、アルキルトリアルコキシシランまたはアルキルビアルコキシシランなどのアミン部分を含み得る。このようなアルキルトリアルコキシシランまたはアルキルビアルコキシシランとしては、これらに限定されないが、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、その加水分解物、または、特にこれらに限定されないが、Gelest製WSA−7011、WSA−9911、WSA−7021、WSAV−6511などのアミノ官能性シルセスキオキサンオリゴマーを含むそのオリゴマー化化学組成物が挙げられる。例示的な実施形態において、脂肪族シラン化学組成物は3−アミノプロピルトリメトキシシランである。

他の実施形態において、カップリング剤層180は、特にこれらに限定されないが、(3−アミノプロピル)シラントリオール、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−シラントリオールおよび/またはこれらの混合物などのアミノアルコキシシランの加水分解された類似体である化学種を含み得る。

他の実施形態において、カップリング剤層180は、アミノアルキルシルセスキオキサンである化学種を含み得る。一実施形態において、カップリング剤層180は、アミノプロピルシルセスキオキサン(APS)オリゴマー(Gelestから水溶液として市販されている)を含む。

他の実施形態において、カップリング剤層180は、金属および/またはセラミックフィルムなどの無機材料であり得る。カップリング剤層180として用いられる好適な無機材料の非限定的な例としては、錫、チタンおよび/またはその酸化物が挙げられる。

異なる化学組成物の組合せ、特にシラン化学組成物の組合せからカップリング剤を形成することにより、平滑コーティング160の熱安定性を向上させ得ることが見出された。例えば、上記のものなどの芳香族シランおよび脂肪族シランの組合せにより、平滑コーティングの熱安定性が向上され、これにより、高温での熱処理後においても摩擦係数および固着性能などのその機械特性が保持されるコーティングがもたらされることが見出された。従って、一実施形態において、カップリング剤は芳香族および脂肪族シランの組合せを含む。これらの実施形態において、脂肪族シラン対芳香族シラン(脂肪族:芳香族)の比は、約1:3〜約1:0.2であり得る。カップリング剤が少なくとも脂肪族シランおよび芳香族シランなどの2種以上の化学組成物を含む場合、これら2種の化学組成物の重量比は、約0.1:1〜約10:1の第1のシラン化学組成物対第2のシラン化学組成物(第1のシラン:第2のシラン)の重量比など、いかなる比であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、比は、2:1、1:1、0.5:1などの0.5:1〜約2:1であり得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤は複数種の脂肪族シランおよび/または複数種の芳香族シランの組合せを含み得、これは、有機もしくは無機充填材を伴ってまたは伴わずに、1回もしくは複数回のステップでガラス製容器に適用されることが可能である。いくつかの実施形態において、カップリング剤は、脂肪族および芳香族シランの両方から形成されるシルセスキオキサンなどのオリゴマーを含む。

例示的な実施形態において、第1のシラン化学組成物は芳香族シラン化学組成物であり、第2のシラン化学組成物は脂肪族シラン化学組成物である。例示的な一実施形態において、第1のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む芳香族アルコキシシラン化学組成物であり、第2のシラン化学組成物は少なくとも1つのアミン部分を含む脂肪族アルコキシシラン化学組成物である。他の例示的な実施形態において、カップリング剤は1種または複数種のシラン化学組成物のオリゴマーを含み、オリゴマーはシルセスキオキサン化学組成物であり、シラン化学組成物の少なくとも1種は、少なくとも1つの芳香族部分および少なくとも1つのアミン部分を含む。特定の例示的な一実施形態において、第1のシラン化学組成物はアミノフェニルトリメトキシシランであり、第2のシラン化学組成物は3−アミノプロピルトリメトキシシランである。芳香族シラン対脂肪族シランの比は約1:1であり得る。他の特定の例示的な実施形態において、カップリング剤は、アミノフェニルトリメトキシおよび3−アミノプロピルトリメトキシから形成されるオリゴマーを含む。他の実施形態において、カップリング剤は、アミノフェニルトリメトキシおよび3−アミノプロピルトリメトキシの混合物と、この2種から形成されるオリゴマーとの両方を含み得る。

一実施形態において、カップリング剤は、浸漬プロセスによって希釈されたカップリング剤と表面を接触させることによりガラス本体102の外表面106に適用される。カップリング剤は、ガラス本体102に適用される際に溶剤中に混合されてもよい。他の実施形態において、カップリング剤は、噴霧または他の好適な手段によってガラス本体102に適用され得る。カップリング剤が適用されたガラス本体102は、次いで、約120℃で約15分間、または、壁部分110の外表面106上に存在する水および/もしくは他の有機溶剤を適切に遊離させるのに十分な任意の時間および温度で乾燥され得る。

図12Aを参照すると、一実施形態において、カップリング剤は、ガラス製容器にカップリング剤層180として位置されており、特にこれらに限定されないが、メタノールなどの有機溶剤および水の少なくとも一方と混合された約0.5重量%の第1のシランおよび約0.5重量%の第2のシラン(合計で1重量%のシラン)を含む溶液として適用される。しかしながら、溶液中の合計シラン濃度は、約0.1重量%〜約10重量%、約0.3重量%〜約5.0重量%または約0.5重量%〜約2.0重量%などの約1重量%超もしくは未満であり得ることが理解されるべきである。例えば、一実施形態において、有機溶剤対水の重量比(有機溶剤:水)は約90:10〜約10:90であり得、一実施形態においては、約75:25であり得る。シラン対溶剤の重量比はカップリング剤層の厚さに影響し得、ここで、カップリング剤溶液中のシラン化学組成物の割合が大きいと、カップリング剤層180の厚さが厚くなり得る。しかしながら、特に限定されないが、浴からの引き上げ速度などのディップコーティングプロセスの詳細などの他の可変要素がカップリング剤層180の厚さに影響し得ることが理解されるべきである。例えば、引き上げ速度が速いほど形成されるカップリング剤層180は厚くなり得る。

一実施形態において、カップリング剤層180は、平滑コーティング160の熱安定性および/または機械特性を向上させ得る第1のシラン化学種および第2のシラン化学種を含む溶液として適用される。例えば、第1のシラン化学種はGAPSなどの脂肪族シランであり得、第2のシラン化学種はAPhTMSなどの芳香族シランであり得る。この例において、脂肪族シラン対芳香族シランの比(脂肪族:芳香族)は約1:1であり得る。しかしながら、上記のとおり、約1:3〜約1:0.2を含む他の比も可能であることが理解されるべきである。芳香族シラン化学種および脂肪族シラン化学種は、特にこれらに限定されないが、メタノールなどの有機溶剤および水の少なくとも1種と混合されてもよい。次いで、この溶液がガラス本体102の外表面106にコーティングされ、硬化されてカップリング剤層180が形成される。

他の実施形態において、カップリング剤層180は、0.1vol%の市販されているアミノプロピルシルセスキオキサンオリゴマーを含む溶液として適用される。特にこれらに限定されないが、0.01〜10.0vol%アミノプロピルシルセスキオキサンオリゴマー溶液を含む他の濃度のカップリング剤層溶液が用いられ得る。

いくつかの実施形態において、カップリング剤層180は、カップリング剤層180が、化学組成物層170等などの追加のコーティングを全く伴わずに単独で平滑コーティング160として作用し得るよう、十分に熱的に安定である。従って、これらの実施形態において、平滑コーティング160は、具体的にはカップリング剤といった単一の組成物を含むことが理解されるべきである。

本明細書において記載されているとおり、平滑コーティング160が堅牢性有機コーティングである場合、コーティングはポリマー化学組成物層170としてポリマー化学組成物も含んでいてもよい。ポリマー化学組成物は、有機充填材または無機充填材を含む、および、含まない、特にこれらに限定されないが、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリフェニル、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾキサゾール、ポリビスチアゾールおよびポリ芳香族複素環式ポリマーなどの熱的に安定なポリマー、または、ポリマーの混合物であり得る。ポリマー化学組成物は、250℃、300℃および350℃を含む200℃〜400℃の範囲内の温度で劣化しないポリマーなどの他の熱的に安定なポリマーから形成され得る。これらのポリマーは、カップリング剤を伴って、または、伴わずに適用され得る。

一実施形態において、ポリマー化学組成物はポリイミド化学組成物である。平滑コーティング160がポリイミドを含む場合、ポリイミド組成物は、モノマーの重合により溶液中で形成されるポリアミド酸由来のものであり得る。このようなポリアミド酸の一種はNovastrat(登録商標)800(NeXolveから市販されている)である。硬化ステップによりポリアミド酸がイミド化されてポリイミドが形成される。ポリアミド酸は、ジアミンなどのジアミンモノマーと、二無水物などの無水物モノマーとの反応から形成され得る。本明細書において用いられるところ、ポリイミドモノマーは、ジアミンモノマーおよび二無水物モノマーとして記載される。しかしながら、ジアミンモノマーは2つのアミン部分を含むが、以下の記載においては、少なくとも2つアミン部分を含むいずれかのモノマーがジアミンモノマーとして好適であり得ることが理解シラン化学組成物からなるされるべきである。同様に、二無水物モノマーは2つの無水物部分を含むが、以下の記載においては、少なくとも2つの無水物部分を含むいずれかのモノマーが二無水物モノマーとして好適であり得ることが理解されるべきである。無水物モノマーの無水物部分とジアミンモノマーのアミン部分との反応によりポリアミド酸が形成される。従って、本明細書において用いられるところ、特定のモノマーの重合から形成されるポリイミド化学組成物とは、これらの特定のモノマーから形成さえるポリアミド酸のイミド化後に形成されるポリイミドを指す。一般に、無水物モノマーの合計とジアミンモノマーとのモル比は約1:1であり得る。ポリイミドは相違する2種の化学組成物(1種の無水物モノマーと1種のジアミンモノマー)のみから形成され得るが、少なくとも1種の無水物モノマーは重合されていてもよく、また、少なくとも1種のジアミンモノマーはポリイミドから重合されていてもよい。例えば、1種の無水物モノマーは2種の異なるジアミンモノマーと重合されていてもよい。任意の数のモノマー種の組合せが用いられ得る。さらに、1種の無水物モノマー対異なる無水物モノマーの比、または、1種もしくは複数種のジアミンモノマー対異なるジアミンモノマーの比は、約1:9、1:4、3:7、2:3、1:1、3:2、7:3、4:1または9:1などの約1:0.1〜0.1:1などのいずれかの比であり得る。

ジアミンモノマーと共にポリイミドが形成される無水物モノマーは、いずれかの無水物モノマーを含み得る。一実施形態において、無水物モノマーはベンゾフェノン構造を含む。例示的な実施形態において、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドが形成される無水物モノマーの少なくとも1種であり得る。他の実施形態において、ジアミンモノマーは、上記の二無水物の置換されたものを含む、アントラセン構造、フェナントレン構造、ピレン構造またはペンタセン構造を有し得る。

無水物モノマーと共にポリイミドが形成されるジアミンモノマーは、いずれかのジアミンモノマーを含み得る。一実施形態において、ジアミンモノマーは少なくとも1つの芳香族環部分を含む。図13および図14は、1種または複数種の選択された無水物モノマーと共にポリマー化学組成物を含むポリイミドを形成し得るジアミンモノマーの例を示す。ジアミンモノマーは、図13に示されているとおり、2つの芳香族環部分を結合する1つまたは複数の炭素分子を有していてもよく、図13中のRは、1つまたは複数の炭素原子を含むアルキル部分に相当する。あるいは、ジアミンモノマーは、図14に示されているとおり、直接結合されている2つの芳香族環部分を有しており、少なくとも1つの炭素分子によって分離されていなくてもよい。ジアミンモノマーは、図13および図14においてR’およびR’’により表されている1つまたは複数のアルキル部分を有していてもよい。例えば、図13および図14において、R’およびR’’は、メチル、エチル、プロピルまたはブチル部分などの、1つまたは複数の芳香族環部分に結合されたアルキル部分を表し得る。例えば、ジアミンモノマーは2つの芳香族環部分を有し得、各芳香族環部分は、これに結合するアルキル部分を有し、また、芳香族環部分に結合された隣接するアミン部分を有する。図13および図14の両方におけるR’およびR’’は、同一の化学的部分であっても、異なる化学的部分であってもよいことが理解されるべきである。あるいは、図13および図14の両方におけるR’および/またはR’’は、原子を表さないものであってもよい。

ジアミンモノマーの2種の異なる化学組成物はポリイミドから形成され得る。一実施形態において、第1のジアミンモノマーは、直接結合されており、結合する炭素分子によって分離されていない2つの芳香族環部分を含み、また、第2のジアミンモノマーは、2つの芳香族環部分を結合する少なくとも1つの炭素分子で結合された2つの芳香族環部分を含む。例示的な一実施形態において、第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有する。しかしながら、第1のジアミンモノマーと第2のジアミンモノマーとの比は、約0.01:0.49〜約0.40:0.10の範囲内で様々であり得、一方で、無水物モノマー比は約0.5に保持される。

一実施形態において、ポリイミド組成物は、少なくとも第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーの重合から形成され、第1および第2のジアミンモノマーは異なる化学組成物である。一実施形態において、無水物モノマーはベンゾフェノンであり、第1のジアミンモノマーは直接結合された2つの芳香族環を含み、また、第2のジアミンモノマーは第1の芳香族環と第2の芳香族環とを結合する少なくとも1つの炭素分子で結合された2つの芳香族環を含む。第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有し得る。

例示的な実施形態において、第1のジアミンモノマーはオルトトリジンであり、第2のジアミンモノマーは4,4’−メチレン−ビス(2−メチルアニリン)であり、また、無水物モノマーはベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物である。第1のジアミンモノマー、第2のジアミンモノマーおよび無水物モノマーは、約0.465:0.035:0.5のモル比(第1のジアミンモノマー:第2のジアミンモノマー:無水物モノマー)を有し得る。

いくつかの実施形態において、ポリイミドは:ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボキシル1,2;3,4−二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4arH,8acH)−デカヒドロ−1t,4t:5c,8c−ジメタノナフタレン−2t,3t,6c,7c−テトラカルボキシル2,3:6,7−二無水物、2c,3c,6c,7c−テトラカルボキシル2,3:6,7−二無水物、5−エンド−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]−ヘプタン−2−エクソ、3−エクソ、5−エクソ−トリカルボン酸2,3:5,5−二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ビス(アミノエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの異性体、または、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)3,3’,4,4’−ビフェニル二無水物(4,4’−BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノン二無水物(4,4’−BTDA)、3,3’,4,4’−オキシジフタル酸無水物(4,4’−ODPA)、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシル−フェノキシ)ベンゼン二無水物(4,4’−HQDPA)、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシル−フェノキシ)ベンゼン二無水物(3,3’−HQDPA)、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシルフェノキシフェニル)−イソプロピリデン二無水物(4,4’−BPADA)、4,4’−(2,2,2−トリフルオロ−1−ペンタフルオロフェニルエチリデン)二フタル酸二無水物(3FDA)、4,4’−オキシジアニリン(ODA)、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、m−トルエンジアミン(TDA)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(1,4,4−APB)、3,3’−(m−フェニレンビス(オキシ))ジアニリン(APB)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン(DMMDA)、2,2’−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(BAPP)、1,4−シクロヘキサンジアミン2,2’−ビス[4−(4−アミノ−フェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロイソプロピリデン(4−BDAF)、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン(DAPI)、無水マレイン酸(MA)、無水シトラコン酸(CA)、ナド酸無水物(NA)、4−(フェニルエチニル)−1,2−ベンゼンジカルボン酸無水物(PEPA)、4,4’−ジアミノベンズアニリド(DABA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6−FDA)、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、米国特許第7,619,042号明細書、米国特許第8,053,492号明細書、米国特許第4,880,895号明細書、米国特許第6,232,428号明細書、米国特許第4,595,548号明細書、国際公開第2007/016516号、米国特許出願公開第2008/0214777号明細書、米国特許第6,444,783号明細書、米国特許第6,277,950号明細書および米国特許第4,680,373号明細書に記載の材料の1種または複数種の重合から形成され得る。図15は、ガラス本体102に適用されるポリイミドコーティングの形成に用いられ得るいくつかの好適なモノマーの化学構造を表す。他の実施形態において、ポリイミドが形成されるポリアミド酸溶液は、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミック酸(Aldrichから市販されている)を含み得る。

他の実施形態において、ポリマー化学組成物はフッ素化ポリマーを含み得る。フッ素化ポリマーは、両方のモノマーが高度にフッ素化されているコポリマーであり得る。フッ素化ポリマーのモノマーのいくつかはフルオロエチレンであり得る。一実施形態において、ポリマー化学組成物は、特にこれらに限定されないが、Teflon AF(DuPontから市販されている)などのアモルファスフッ素化ポリマーを含む。他の実施形態において、ポリマー化学組成物は、特にこれらに限定されないが、Teflon PFA TE−7224(DuPontから市販されている)などのパーフルオロアルコキシ(PFA)樹脂粒子を含む。

他の実施形態において、ポリマー化学組成物はシリコーン樹脂を含み得る。シリコーン樹脂は、一般式RnSi(X)mOy(式中、Rは非反応性置換基であって、通常はメチルまたはフェニルであり、また、XはOHまたはHである)を有する分岐ケージ様オリゴシロキサンによって形成される多分岐三次元ポリマーであり得る。理論に束縛されることは望まないが、Si−O−Si結合の形成を伴うSi−OH部分の縮合反応を介して樹脂の硬化が生じると考えられている。シリコーン樹脂は、M−樹脂、D−樹脂、T−樹脂およびQ−樹脂を含む可能な4種のシロキサン官能性単量体ユニットの少なくとも1つを有し得、M−樹脂は一般式R3SiOを有する樹脂を指し、D−樹脂は一般式R2SiO2を有する樹脂を指し、T−樹脂は一般式RSiO3を有する樹脂を指し、Q−樹脂は一般式SiO4(溶融水晶)を有する樹脂を指す。いくつかの実施形態において、樹脂は、DおよびTユニット(DT樹脂)、または、MおよびQユニット(MQ樹脂)から形成される。他の実施形態において、他の組合せ(MDT、MTQ、QDT)もまた用いられる。

一実施形態において、ポリマー化学組成物は、メチルまたはフェニルシリコーン樹脂と比して高い熱安定性のために、フェニルメチルシリコーン樹脂を含む。シリコーン樹脂中におけるフェニル対メチル部分の比は、ポリマー化学組成物において様々であり得る。一実施形態において、フェニル対メチルの比は約1.2である。他の実施形態において、フェニル対メチルの比は約0.84である。他の実施形態において、フェニル対メチル部分の比は、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.3、1.4または1.5であり得る。一実施形態において、シリコーン樹脂はDC255(Dow Corningから市販されている)である。他の実施形態において、シリコーン樹脂はDC806A(Dow Corningから市販されている)である。他の実施形態において、ポリマー化学組成物は、DCシリーズの樹脂(Dow Corningから市販されている)、および/または、Hardsil Series APおよびAR樹脂(Gelestから市販されている)のいずれかを含み得る。シリコーン樹脂は、カップリング剤を伴わずに、または、カップリング剤を伴って用いられることが可能である。

他の実施形態において、ポリマー化学組成物は、特にこれらに限定されないが、T−214(Honeywellから市販されている)、SST−3M01(Gelestから市販されている)、POSS Imiclear(Hybrid Plasticsから市販されている)およびFOX−25(Dow Corningから市販されている)などのシルセスキオキサン系ポリマーを含み得る。一実施形態において、ポリマー化学組成物はシラノール部分を含み得る。

図8および図12Aを再度参照すると、平滑コーティング160は多段プロセスで適用され得、ガラス本体102とカップリング剤溶液とが接触させられてカップリング剤層180が形成され(上記のとおり)、乾燥され、次いで、浸漬プロセスなどによりポリマーもしくはポリマー前駆体溶液などのポリマー化学組成物溶液と接触され、または、あるいは、ポリマー層170が噴霧もしくは他の好適な手段により適用され、乾燥され、次いで、高温で硬化され得る。あるいは、カップリング剤層180が用いられない場合、ポリマー層170のポリマー化学組成物は、ガラス本体102の外表面106に直接適用され得る。他の実施形態において、ポリマー化学組成物およびカップリング剤は平滑コーティング160中で混合され得、ポリマー化学組成物およびカップリング剤を含む溶液が単一のコーティングステップでガラス本体102に適用され得る。

一実施形態においては、ポリマー化学組成物はポリイミドを含み、ここでは、ポリアミド酸溶液がカップリング剤層180上に適用される。他の実施形態においては、例えば、ポリアミド酸塩、ポリアミド酸エステル等などのポリアミド酸誘導体が用いられ得る。例えば、好適なポリアミド酸塩は、トリエチルアミンから形成されるポリアミド酸塩を含み得る。他の好適な塩は、得られるカルボキシレート基とその共役酸とのイオン相互作用をもたらす塩基性添加剤によるポリアミド酸のカルボン酸基の脱プロトン化によって形成される塩を含み得る。塩基性添加剤は、有機、無機もしくは有機金属種、または、これらの組合せを含み得る。無機種は、アルカリ、アルカリ土類または金属塩基などの部分を含み得る。有機塩基(プロトン受容体)は、脂肪族アミン、芳香族アミンまたは他の有機塩基を含み得る。脂肪族アミンは、特にこれらに限定されないがエチルアミンなどの第一級アミン、特にこれらに限定されないがジエチルアミンなどの第二級アミン、および、トリエチルアミンなどの第三級アミンを含む。芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジンおよびイミダゾールが挙げられる。有機金属塩基としては、2,2ジメチルプロピル塩化マグネシウムまたは他のものを挙げることが可能である。一実施形態において、ポリアミド酸溶液は、1vol.%ポリアミド酸および99vol%有機溶剤の混合物を含み得る。有機溶剤は、トルエンと、N,N−ジメチルアセタミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)および1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)溶剤またはこれらの混合物の少なくとも1種との混合物を含み得る。一実施形態において、有機溶剤溶液は、約85vol%のDMAc、DMFおよびNMPの少なくとも1種、ならびに、約15vol%トルエンを含む。しかしながら、他の好適な有機溶剤が用いられ得る。次いで、コーティングされたガラス製容器100は、約150℃で約20分間、または、平滑コーティング160中に存在する有機溶剤を好適に遊離させるのに十分な任意の時間および温度で乾燥され得る。

積層された仮有機平滑コーティング実施形態においては、ガラス本体102に、カップリング剤層180を形成するためにカップリング剤を接触させ、また、ポリマー層170を形成するためにポリアミド酸溶液を接触させた後、コーティングされたガラス製容器100は高温で硬化に供され得る。コーティングされたガラス製容器100は300℃で約30分間以下硬化され得、または、少なくとも320℃、340℃、360℃、380℃または400℃などの300℃超の温度で、短時間で硬化されてもよい。硬化ステップでは、カルボン酸部分とアミド部分との反応によりポリマー層170中のポリアミド酸がイミド化されて、ポリイミドを含むポリマー層170が形成されると考えられている。硬化ステップはまた、ポリイミドとカップリング剤との間の結合を促進し得る。次いで、コーティングされたガラス製容器100は室温に冷却される。

さらに、限定によっては束縛されないが、カップリング剤、ポリマー化学組成物、または、この両方の硬化ステップにより、水および他の有機分子などの揮発性材料が留去されると考えられている。従って、硬化ステップの最中に遊離されるこれらの揮発性材料は、容器として用いられる場合に、物品が熱処理(発熱物質除去のためなど)されるか、または、物品がパッケージされる医薬品などの材料に接触する際に存在していない。本明細書に記載の硬化プロセスは、発熱物質除去などの医薬品パッケージ産業におけるプロセスと同様もしくは同等の加熱処理、または、本明細書に記載されている熱安定性を定義するために用いられる加熱処理などの本明細書に記載の加熱処理とは異なる別個の加熱処理であることが理解されるべきである。

一実施形態において、カップリング剤は、ポリマー化学組成物のガラス本体に対する固着性を改善させ得るアルコキシシランなどのシラン化学組成物を含む。理論によって束縛はされないが、アルコキシシラン分子は水中で急速に加水分解されて、単離されたモノマー、環式オリゴマーおよび大型の分子内環を形成すると考えられている。種々の実施形態において、どの種が優勢となるかの制御は、シランタイプ、濃度、pH、温度、保管条件および時間によって決定され得る。例えば、水溶液中において低濃度であるとき、アミノプロピルトリアルコキシシラン(APS)は安定であり得、トリシラノールモノマーおよび超低分子量オリゴマー系環を形成し得る。

なお、理論によって束縛はされないが、1種または複数種のシラン化学組成物のガラス本体に対する反応には数々のステップが関与し得ると考えられている。図17に示されているとおり、いくつかの実施形態において、シラン化学組成物の加水分解後に反応性シラノール部分が形成され得、これは、例えば、ガラス本体などの基材の表面上の他のシラノール部分と縮合可能である。第1および第2の加水分解可能な部分が加水分解された後、縮合反応が開始され得る。いくつかの実施形態において、自己縮合に向かう傾向は、新しい溶液、アルコール系溶剤、希釈の使用、および、pH範囲の注意深い選択によって制御可能である。例えば、シラントリオールはpH3〜6で最も安定であるが、pH7〜9.3で急速に縮合し、シラノールモノマーの部分縮合によりシルセスキオキサンが生成され得る。図17に示されているとおり、形成された種のシラノール部分が基材上のシラノール部分と水素結合を形成し得、乾燥ステップまたは硬化ステップの最中に、水の脱離を伴いながら基材と共有結合が形成され得る。例えば、適度の硬化サイクル(110℃で15分間)ではシラノール部分が遊離形態で残され得、いずれかのシラン有機官能基と共に、その後のトップコートと結合して向上した固着性をもたらし得る。

いくつかの実施形態において、カップリング剤のシラン化学組成物の1種または複数種はアミン部分を含み得る。なお、理論によって束縛はされないが、このアミン部分は加水分解および共縮合重合において塩基性触媒として作用して、ガラス表面上へのアミン部分を有するシランの吸着率を高め得ると考えられている。これはまた、水溶液中において高pH(9.0〜10.0)をもたらし得、これによりガラス表面がコンディショニングされ、表面シラノール部分の密度が高められる。水とプロトン性溶剤との強固な相互作用によって、APSなどのアミン部分化学組成物を有するシランの溶解度および安定性が維持される。

例示的な実施形態において、ガラス本体はイオン交換ガラスを含み得、カップリング剤はシランであり得る。いくつかの実施形態において、平滑コーティングのイオン交換ガラス本体に対する固着性は、平滑コーティングの非イオン交換ガラス本体に対する固着性よりも強固であり得る。理論によって束縛はされないが、イオン交換ガラスの数々の態様のいずれかは、非イオン交換ガラスと比して結合および/または固着性を促進し得ると考えられている。第1に、イオン交換ガラスは、カップリング剤の安定性および/またはガラス表面に対する固着性に影響し得る高い化学的安定性/加水分解に対する安定性を有し得る。非イオン交換ガラスは、典型的には加水分解に対する安定性が低く、湿性条件および/または高温条件下では、アルカリ金属が、ガラス本体から、ガラス表面とカップリング剤層(存在する場合)との界面に移動する可能性、または、さらには存在する場合にはカップリング剤層にまで移動する可能性がある。上記のとおりアルカリ金属が移動する場合であって、pHに変化がある場合、ガラス/カップリング剤層界面、または、カップリング剤層自体におけるSi−O−Si結合の加水分解によって、カップリング剤機械特性またはそのガラスへの固着性が弱まってしまう場合がある。第2に、イオン交換ガラスは、400℃〜450℃などの高温で亜硝酸カリウム浴などの強酸化剤浴に曝露され、取り出されると、ガラスの表面上の有機化学組成物が除去されて、さらなるクリーニングを伴わずにシランカップリング剤に対して特に好適とされる。例えば、非イオン交換ガラスは追加の表面クリーニング処理に供される必要があり得、プロセスに時間および経費が加わってしまう。

例示的な一実施形態において、カップリング剤はアミン部分を含む少なくとも1種のシランを含み得、ポリマー化学組成物はポリイミド化学組成物を含み得る。ここで、図18を参照すると、理論によって束縛はされないが、このアミン部分相互作用とポリイミドのポリアミド酸前駆体との相互作用は段階的なプロセスによって進行すると考えられている。図18に示されているとおり、第1のステップは、ポリアミド酸のカルボキシル部分とアミン部分との間におけるポリアミド酸塩の形成である。第2のステップは、塩からアミド部分への熱転換である。第3のステップは、ポリマーアミド結合の切断を伴う、アミド部分のイミド部分へのさらなる転換である。結果的には、図18に示されているとおり、短縮されたポリマー鎖(ポリイミド鎖)のカップリング剤のアミン部分への共有結合イミド結合がもたらされる。

向上した特性を有するガラス製容器の種々の実施形態を、以下の実施例によりさらに説明する。これらの実施例は、例示的なものであり、本開示の主題を限定するものとして理解されるべきではない。

実施例1 ガラスバイアルを、上記実施例2の表2と同じ組成物を持つType IBガラス、および、2012年10月25日に出願され、「Glass Compositions with Improved Chemical and Mechanical Durability」と題され、Corning Incorporatedに譲渡された米国特許出願第13/660,394号明細書における表1の「実施例E」と特定されているガラス組成物(本明細書において以降「基準ガラス組成物」)から形成した。バイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素を吹き付けて乾燥させ、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液でディップコーティングした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間乾燥させた。次いで、バイアルを、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸の15/85トルエン/DMF(ジメチルホルムアミド)溶液中の0.1%溶液、または、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%〜1%のポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(PMDA−ODA(ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)))に浸漬した。コーティングしたバイアルを150℃に加熱し、20分間保持して溶剤を気化させた。その後、コーティングを、コーティングしたバイアルを予熱した加熱炉に、300℃で30分間の間入れることにより硬化した。硬化させた後、Novastrat(登録商標)800の0.1%溶液でコーティングしたバイアルは視認可能な色を有していなかった。しかしながら、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)の溶液でコーティングしたバイアルは、コーティングの厚さのために色は視覚的に黄色であった。両方のコーティングが、バイアル重畳接触テストにおいて低摩擦係数を示した。

実施例2 上記実施例2の表2と同じ組成物から形成されたType IBガラスバイアルから形成したガラスバイアル(入手状態/未コーティング)および平滑コーティングでコーティングしたバイアルを比較して、擦傷による機械的強度の損失を評価した。コーティングされたバイアルは、先ず、基準ガラス組成物から製造したガラスバイアルをイオン交換強化することにより製造した。イオン交換強化は、100%KNO3浴において450℃で8時間かけて行った。その後、これらのバイアルを脱イオン水で洗浄し、窒素で通風乾燥させ、水中でAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液で浸漬コーティングをした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間かけて乾燥させた。次いで、これらのバイアルを、15/85トルエン/DMF溶液中のNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸の0.1%溶液に浸漬した。コーティングされたバイアルを150℃に加熱し、20分間保持して溶剤を蒸発させた。その後、コーティングされたバイアルを予熱した加熱炉中に入れることにより、コーティングを300℃で30分間硬化させた。次いで、コーティングされたバイアルを70℃の脱イオン水中に1時間浸漬し、空気中に320℃で2時間加熱して実際の処理条件をシミュレートした。

上記実施例2の表2と同じ組成物から形成されたType IBガラスから形成した未擦過バイアル、ならびに、イオン交換強化およびコーティングされた基準ガラス組成物から形成した未擦過バイアルを、水平圧縮テストにおいて破壊に対してテストした(すなわち、プレートをバイアルの上部に置くと共にプレートをバイアルの下部に置き、両方のプレートを一緒に押して破壊時の負荷荷重を荷重計で測定した)。図19は、基準ガラス組成物から形成したバイアル、コーティングされた擦過状態の基準ガラス組成物から形成したバイアル、Type IBガラスから形成したバイアル、および、擦過状態のType IBガラスから形成したバイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。未擦過バイアルの破壊荷重がワイブルプロットで図示されている。次いで、Type IBガラスから形成したサンプルバイアルおよびイオン交換強化されコーティングされたガラスから形成した未擦過バイアルを図9のバイアル重畳治具に配置してバイアルを擦過して、こすりあわすことでバイアル間の摩擦係数を測定した。テスト中のバイアルに対する荷重は、UMTマシンで加え、24N〜44Nの間で変化させた。負荷荷重および対応する最大摩擦係数は、図20に含まれている表に報告されている。未コーティングのバイアルについては、最大摩擦係数は0.54〜0.71で変化させ(図20において、それぞれ、バイアルサンプル「3&4」および「7&8」として示されている)、一方で、コーティングされたバイアルについては、最大摩擦係数は0.19〜0.41で変化させた(図20において、それぞれ、バイアルサンプル「15&16」および「12&14」として示されている)。その後、スクラッチしたバイアルを水平圧縮テストにおいてテストして未擦過バイアルに対する機械的強度の損失を評価した。未擦過バイアルに加わった破壊荷重は図19のワイブルプロット中に図示されている。

図19に示されているとおり、未コーティングのバイアルは擦傷後には強度が顕著に低下し、一方で、コーティングされたバイアルは、擦傷後の強度の低下は比較的軽微であった。これらの結果に基づくと、バイアル重畳擦傷後の強度の損失を軽減するためには、バイアル間の摩擦係数は、0.7もしくは0.5未満、または、さらには0.45未満であるべきであると考えられている。

実施例3 本実施例においては、複数の組のガラス管を4点曲げでテストしてそれぞれの強度を評価した。基準ガラス組成物から形成した1組目の管を入手状態(未コーティングで、非イオン交換強化済)で4点曲げにおいてテストした。基準ガラス組成物から形成した2組目の管を、100%KNO3浴中において450℃で8時間イオン交換強化した後4点曲げにおいてテストした。基準ガラス組成物から形成した3組目の管を、100%KNO3浴中において450℃で8時間イオン交換強化し、実施例2において記載のとおり0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800でコーティングした後に、4点曲げにおいてテストした。コーティングされた管をまた、70℃脱イオン水中に1時間浸し、空気中で、320℃で2時間加熱して実際の処理条件をシミュレートした。これらのコーティングされた管をまた、曲げテストの前に、30N荷重下で図9に示すバイアル重畳治具において擦過した。基準ガラス組成物から形成した4組目の管を、100%KNO3浴中において450℃で1時間イオン交換強化した後に4点曲げにおいてテストした。これらの未コーティングのイオン交換強化管をまた、曲げテストの前に、30N荷重下で図9に示すバイアル重畳治具において擦過した。Type IBガラスから形成した5組目の管を、入手状態(未コーティング、非イオン交換強化済)で4点曲げにおいてテストした。Type IBガラスから形成した6組目の管を、100%KNO3浴中において450℃で1時間イオン交換強化した後に4点曲げにおいてテストした。テスト結果は、図21に示されているワイブルプロットで図示されている。

図21を参照すると、擦過しておらず、基準ガラス組成物から形成し、イオン交換強化した2組目の管は、壊れる前に最も高い応力に耐えた。擦過前の0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800でコーティングされた3組目の管は、未コーティングの擦過していない同等の物(すなわち、2組目の管)と比して強度のわずかな低下を示した。しかしながら、コーティング後に擦過に供したにもかかわらず強度の低下は比較的軽微であった。

実施例4 2組のバイアルを調製し、医薬品充填ラインに通した。感圧テープ(富士フィルム株式会社から市販されている)をバイアルの間に差し込んで、バイアル間、ならびに、バイアルと器具との間の接触/衝撃力を測定した。1組目のバイアルは、Type IBガラスから形成し、コーティングされていないものであった。2組目のバイアルは、上記のとおり、基準ガラス組成物から形成し、約0.25の摩擦係数を有する低摩擦ポリイミド系コーティングでコーティングされたものであった。感圧テープを、バイアルを医薬品充填ラインに通した後に分析したところ、2組目のコーティングされたバイアルは1組目の未−コーティングのバイアルと比して応力の2〜3倍の低減を示すことが実証された。

実施例5 3組の4つのバイアルの各々を調製した。すべてのバイアルは、基準ガラス組成物から形成した。1組目のバイアルを、実施例2において記載のとおり、APS/Novastrat(登録商標)800コーティングでコーティングした。2組目のバイアルを、トルエン中の0.1%DC806Aで浸漬コーティングした。溶剤を50℃で蒸発させ、コーティングを300℃で30分間硬化させた。バイアルの各組を管中に入れ、空気パージ下に320℃で2.5時間加熱して、実験室の環境においてバイアル吸着された微量の汚染物を除去した。次いで、サンプルの各組を管の中でさらに30分間加熱し、脱ガスした揮発物を活性炭素吸着剤トラップで捕集した。トラップを30分間かけて350℃に加熱して捕集した材料をすべて脱着させて、これをガスクロマトグラフィ−質量分光計に供給した。図22は、APS/Novastrat(登録商標)800コーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを示す。図23は、DC806Aコーティングに対するガスクロマトグラフィ−質量分光計出力データを示す。0.1%APS/0.1%Novastrat(登録商標)800コーティングまたはDC806Aコーティングから脱ガスは検出されなかった。

4本のバイアル1組に、メタノール/水混合物中の0.5%/0.5%GAPS/APhTMS(3−アミノプロピルトリメトキシシラン/アミノフェニルトリメトキシシラン)溶液を用いて結束層をコーティングした。各バイアルのコーティング表面積は約18.3cm2であった。溶剤を、120℃で15分間かけてコーティングしたバイアルから気化させた。次いで、ジメチルアセタミド中の0.5%Novastrat(登録商標)800溶液をサンプルに適用した。溶剤を、150℃で20分間かけて気化させた。これらの未硬化のバイアルを上記の脱ガステストに供した。バイアルを空気流(100mL/min)中において320℃に加熱し、320℃に到達した後、放出された揮発物を活性化炭素吸着剤トラップで15分間毎に捕集した。次いで、このトラップを350℃で30分間以上加熱して捕集した材料を脱着させ、これをガスクロマトグラフィ−質量分光計に入れた。表3には、サンプルを320℃で保持した時間セグメントにわたって捕集された物質の量が示されている。時間ゼロは、サンプルが最初に320℃の温度に到達した時間に相当する。表3に示されているとおり、30分間加熱した後、揮発物の量は、機器の検出限界である100ng未満に低減した。表3にはまた、コーティング表面1平方センチメートル当たりの揮発物の損失が報告されている。

実施例6 カップリング剤を伴う、および、伴わない、ケイ素樹脂またはポリイミド系の種々のコーティングで、複数のバイアルを調製した。カップリング剤を用いた場合、カップリング剤は、APS、および、APSの前駆体であるGAPSを含んでいた。外側コーティング層を、上記のNovastrat(登録商標)800、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)、または、DC806AおよびDC255などのシリコーン樹脂から調製した。APS/ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングを、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液、および、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸(PMDA−ODA−ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド))のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%溶液、0.5%溶液または1.0%溶液を用いて調製した。ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングもまた、カップリング剤を伴わずに、ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’オキシジアニリン)のNMP中の1.0%溶液を用いて適用した。APS/Novastrat(登録商標)800コーティングを、APSの0.1%溶液、および、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸の15/85トルエン/DMF溶液中の0.1%溶液を用いて調製した。DC255コーティングを、カップリング剤を伴わずに、DC255のトルエン中の1.0%溶液を用いてガラスに直接適用した。APS/DC806Aコーティングを、先ず、APSの0.1%水溶液、次いで、DC806Aのトルエン中の0.1%溶液または0.5%溶液を適用することにより調製した。GAPS/DC806Aコーティングを、GAPSの水中の95重量%エタノール中の1.0%溶液をカップリング剤として用い、次いで、DC806Aのトルエン中の1.0%溶液を用いて適用した。カップリング剤およびコーティングを本明細書に記載のディップコーティング法を用いて適用し、ここで、カップリング剤は適用後に加熱処理し、ケイ素樹脂およびポリイミドコーティングは適用後に乾燥および硬化させた。コーティングの厚さは用いた溶液の濃度に基づいて推定した。図24中に含まれる表には、種々のコーティング組成物、推定コーティング厚およびテスト条件が列挙されている。

その後、バイアルのいくつかをコーティングの損傷をシミュレーションするためにタンブラーにかけ、他のものを図9に示すバイアル重畳治具において、30Nおよび50N荷重下で擦傷に供した。その後、すべてのバイアルを、バイアルに0.5mLの塩化ナトリウム溶液を充填し、次いで、−100℃で凍結させる凍結乾燥(凍結乾燥プロセス)に供した。次いで、凍結乾燥を20時間かけて−15℃、減圧下で行った。これらのバイアルを光学品質保証器具で、および、顕微鏡下で検査した。凍結乾燥によるコーティングに対する損傷は観察されなかった。

実施例7 3組の6つのバイアルを調製して、未コーティングのバイアルおよびDow Corning DC 255 シリコーン樹脂でコーティングしたバイアル摩擦係数に対する荷重を増加した場合の影響を評価した。1組目のバイアルはType IBガラスから形成し、未コーティングのままとした。2組目のバイアルは、基準ガラス組成物から形成し、トルエン中のDC255の1%溶液でコーティングし、300℃で30分間硬化させた。3組目のバイアルは、Type IBガラスから形成し、トルエン中のDC255の1%溶液でコーティングした。各組のバイアルを図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、同様にコーティングしたバイアルに対する摩擦係数を、10N、30Nおよび50Nの静荷重下での擦傷の最中に測定した。結果が図25に図示にて報告されている。図25に示されているとおり、コーティングしたバイアルは、ガラス組成物に関係なく同一の条件下で擦過した場合に、未コーティングのバイアルと比してかなり低い摩擦係数を示した。

実施例8 2本のガラスバイアル3組を、APS/ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングと共に調製した。先ず、バイアルの各々をAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中でディップコーティングした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間乾燥させた。次いで、バイアルを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(PMDA−ODA(ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)))の中に浸漬した。その後、コーティングを、コーティングしたバイアルを予熱した加熱炉に、300℃で30分間の間入れることにより硬化した。

2本のバイアルを図9に示したバイアル重畳治具に置き、10N荷重で擦過した。擦過手法を同一の領域についてさらに4回繰り返し、摩擦係数を各擦過について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して図26に図示されている。図26に示されているとおり、APS/ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングしたバイアルの摩擦係数は、すべての荷重でのすべての擦過について全般的に0.30未満であった。この実施例は、カップリング剤で処理されたガラス表面上に適用された場合のポリイミドコーティングに係る擦傷に対する向上した耐性を実証するものである。

実施例9 3組の2つのガラスバイアルをAPSコーティングと共に調製した。バイアルの各々をAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中で浸漬コーティングし、対流オーブン中で、100℃で15分間加熱した。2つのバイアルを図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して図27に図示されている。図27に示されているとおり、APSのみでコーティングしたバイアルの摩擦係数は、一般に、0.3より高く、度々0.6、または、それ以上に達している。

実施例10 2本のガラスバイアル3組を、APS/ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングで調製した。バイアルの各々を、APS(アミノプロピルシルセスキオキサン)の0.1%溶液中でディップコーティングした。APSコーティングを対流オーブン中において100℃で15分間加熱した。次いで、バイアルを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(PMDA−ODA−ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド))中に浸漬した。その後、コーティングを、コーティングしたバイアルを予熱した加熱炉に、300℃で30分間の間入れることにより硬化した。次いで、コーティングしたバイアルを、300℃で12時間、発熱物質除去(加熱)を行った。

2本のバイアルを図9に示したバイアル重畳治具に置き、10N荷重で擦過した。擦過手法を同一の領域についてさらに4回繰り返し、摩擦係数を各擦過について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を既に擦過した領域に配置し、各擦過を同一の「トラック」上で実施した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して図28に図示されている。図28に示されているとおり、APS/ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングしたバイアルの摩擦係数は、全般的に均一であり、10Nおよび30Nの荷重で導入した擦過についてはおよそ0.20以下であった。しかしながら、負荷荷重を50Nに増加した場合、各連続する擦過について摩擦係数が増加し、5番目の擦傷は0.40よりわずかに小さい摩擦係数を有していた。

実施例11 3組の2つのガラスバイアルをAPS(アミノプロピルシルセスキオキサン)コーティングと共に調製した。バイアルの各々を、APSの0.1%溶液中で浸漬コーティングし、対流オーブン中で、100℃で15分間加熱した。次いで、コーティングされたバイアルについて、300℃で12時間、発熱物質除去(加熱)を行った。2つのバイアルを図9中に図示したバイアル重畳治具に配置し、10N荷重下で擦過した。擦傷法を同一の領域に対してさらに4回繰り返し、摩擦係数を擦傷の各々について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を既に擦過した領域に配置し、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して図29に図示されている。図29に示されているとおり、12時間発熱物質除去したAPSコーティングしたバイアルの摩擦係数は、図27に示されているAPSコーティングしたバイアルよりも顕著に高く、コーティングされていないガラスバイアルにより示される摩擦係数と同様であり、これにより、バイアルが擦傷のために機械的強度を顕著に失った可能性があることを示している。

実施例12 Type IBガラスから形成した2本のガラスバイアル3組を、ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングと共に調製した。バイアルをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中の0.1%ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸溶液(PMDA−ODA−ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド))に浸漬した。その後、コーティングを150℃で20分間乾燥させ、次いで、コーティングしたバイアルを予熱した加熱炉に、300℃で30分間の間入れることにより硬化させた。

2本のバイアルを図9に示したバイアル重畳治具に置き、10N荷重で擦過した。擦過手法を同一の領域についてさらに4回繰り返し、摩擦係数を各擦過について測定した。これらのバイアルの擦傷の間を拭き、各擦傷の開始点を未だ擦過されていない領域に配置した。しかしながら、各擦傷は同一の「トラック」上を移動した。同一の手法を30Nおよび50Nの荷重について繰り返した。各擦傷の摩擦係数(すなわち、A1〜A5)が、各荷重に対して図30に図示されている。図30に示されているとおり、ポリ(4,4’−オキシジフェニレン−ピロメリトイミド)コーティングしたバイアルの摩擦係数は、全般的に最初の擦過後に増加し、カップリング剤を伴わずにガラスに適用したポリイミドコーティングの耐摩耗性が劣っていることが実証された。

実施例13 実施例6のAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルを、凍結乾燥後に、30N荷重で図9に示すバイアル重畳治具を用いて摩擦係数についてテストした。摩擦係数における増加は凍結乾燥後に検出されなかった。図31は、凍結乾燥の前後におけるAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルに対する摩擦係数を示す表を含む。

実施例14 基準ガラス組成物バイアルを、実施例2において記載のとおりイオン交換し、コーティングした。コーティングされたバイアルを以下のプロトコルを用いてオートクレーブに供した:100℃での10分間水蒸気パージ、続いて、20分間の停止時間(コーティングされたガラス製容器100は121℃環境に曝露される)、続いて、121℃での30分間の処理。オートクレーブバイアルおよび非オートクレーブバイアルに係る摩擦係数を30N荷重で図9に示すバイアル重畳治具を用いて測定した。図32は、オートクレービングの前後におけるAPS/Novastrat(登録商標)800コーティングしたバイアルに対する摩擦係数を示す。摩擦係数における増加はオートクレービング後に検出されなかった。

実施例15 3組のバイアルをAPS/APhTMS(1:8比)結束層でコーティングし、外側層を、ポリアミド酸のジメチルアセタミド中の溶液として適用し、300℃でイミド化したNovastrat(登録商標)800ポリイミドから構成した。1組について320℃で12時間発熱物質除去を行った。2組目については、320℃で12時間発熱物質除去を行い、次いで、121℃で1時間オートクレーブにかけた。3組目のバイアルは未コーティングのままとした。次いで、各組のバイアルを30N荷重下でバイアル重畳テストに供した。各組のバイアルに係る摩擦係数が図33に報告されている。各バイアルに生じた損傷(または、損傷が存在しないこと)を示すバイアル表面の写真もまた図33に示されている。図33に示されているとおり、未コーティングのバイアルは、一般に、約0.7を超える摩擦係数を有していた。未コーティングのバイアルではまた、テストの結果、視覚的に知覚可能な損傷が生じていた。しかしながら、コーティングしたバイアルは、視覚的に知覚可能な表面損傷をまったく伴わずに0.45未満の摩擦係数を有していた。

コーティングされたバイアルをまた、上記のとおり発熱物質除去、オートクレーブ条件、または、両方に供した。図34は、バイアルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。発熱物質除去バイアルと発熱物質除去およびオートクレーブバイアルとの間で統計的な差異は見られなかった。

実施例16 Type IBイオン交換ガラスから形成したバイアルを様々なシラン比を有する平滑コーティングと共に調製した。ここで図35を参照すると、バイアルを3種の異なるコーティング組成物と共に調製して、適用したコーティングの摩擦係数に対する異なるシランの比の硬化を評価した。第1のコーティング組成物は、1:1のGAPS対アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)比を有するカップリング剤層、および、1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を備えていた。第2のコーティング組成物は、1:0.5のGAPS対APhTMS比を有するカップリング剤層、および、1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を備えていた。第3のコーティング組成物は、1:0.2のGAPS対APhTMS比を有するカップリング剤層、および、1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を備えていた。すべてのバイアルについて、320℃で12時間発熱物質除去を行った。その後、バイアルを、20Nおよび30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。各バイアルに係る平均適用垂直力、摩擦係数および最大摩擦による力(Fx)が図35に報告されている。図35に示されているとおり、芳香族シラン(すなわち、アミノフェニルトリメチルオキシシラン)の量が低下すると、バイアル間の摩擦係数、ならびに、バイアルが受ける摩擦による力が増加する。

実施例17 Type IBイオン交換ガラスから形成したバイアルを、様々なシラン比を有する平滑コーティングと共に調製した。

サンプルを、0.125%APSおよび1.0%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)(1:8のAPS/APhTMS比を有する)から形成したカップリング剤層、および、0.1%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。適用したコーティングの熱安定性を、発熱物質除去を行う前後にバイアルに係る摩擦係数および摩擦による力を測定することにより評価した。具体的には、コーティングしたバイアルを、30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦による力を測定し、これが時間に対して図36にプロットされている。2組目のバイアルを320℃で12時間発熱物質除去を行い、30Nの荷重下で同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。発熱物質除去の前後の両方において摩擦係数は同じままであり、コーティングは熱的に安定であること、および、ガラス表面を摩擦による損傷から保護していたが示された。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。

サンプルを、0.0625%APSおよび0.5%APhTMS(1:8のAPS/APhTMS比を有する)から形成したカップリング剤層、および、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。適用したコーティングの熱安定性を、発熱物質除去を行う前後にバイアルに係る摩擦係数および摩擦による力を測定することにより評価した。具体的には、コーティングしたバイアルを、30Nの荷重下でバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦による力を測定し、これが時間/距離に対して図37にプロットされている。2組目のバイアルを、320℃で12時間発熱物質除去を行い、30Nの荷重下で同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。発熱物質除去の前後の両方において摩擦係数は同じままであり、コーティングは熱的に安定であることが示された。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。

図38は、0.125%APSおよび1.0%APhTMSから形成した平滑コーティングを有するバイアル、0.1%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層(図38で「260」として示されている)を有するバイアル、0.0625%APSおよび0.5%APhTMSから形成した平滑コーティングを有するバイアル、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミド外側コーティング層(図38で「280」として示されている)を有するバイアルに係る水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じた破壊確率を図示する。データは、未コーティングで未スクラッチのサンプルから、コーティングされ、発熱物質除去され、および、スクラッチされたサンプルまで破壊荷重が変化しなかったことを示しており、これは、コーティングによる損傷からのガラスの保護が実証している。

バイアルを、GAPS加水分解物を用いて平滑コーティングと共に調製した。サンプルを、0.5%Dynasylan(登録商標)Hydrosil 1151(3−アミノプロピルシラン加水分解物)および0.5%アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)(1:1の比を有する)から形成したカップリング剤層、ならびに、0.05%Novastrat(登録商標)800ポリイミドから形成した外側コーティング層を含む組成で調製した。コーティング性能を、発熱物質除去を行う前後にバイアルに係る摩擦係数および摩擦による力を測定することにより評価した。具体的には、イオン交換強化(100%KNO3,450℃で8時間)したType IBバイアルを、30Nの荷重下のバイアル重畳摩擦テストに供した。摩擦係数および摩擦による力を測定し、これが時間/距離に対して図39にプロットされている。2組目のバイアルを320℃で12時間発熱物質除去を行い、30Nの荷重下で同一のバイアル重畳摩擦テストに供した。発熱物質除去の前後の両方において摩擦係数は同じままであり、コーティングは熱的に安定であることが示された。ガラスの接触領域の写真もまた示されている。これは、アミノシランの加水分解物がコーティング配合物においても有用であることを示唆する。

適用したコーティングの熱安定性を、一連の発熱物質除去条件についても評価した。具体的には、Type IBイオン交換ガラスバイアルを、1:1のGAPS(0.5%)対アミノフェニルトリメチルオキシシラン(APhTMS)(0.5%)比を有するカップリング剤層、および、0.5%Novastrat(登録商標)800ポリイミドからなる外側コーティング層を含む組成で調製した。バイアルを、溶液中において、2mm/sの引き上げ速度で自動ディップコータを用いてディップコーティングした。サンプルバイアルを、以下の発熱物質除去サイクル:320℃で12時間;320℃で24時間;360℃で12時間;または、360℃で24時間の1つに供した。次いで、摩擦係数および摩擦による力を、バイアル重畳摩擦テストを用いて測定し、図40に示されているとおり、各発熱物質除去条件について時間に対してプロットした。図40に示されているとおり、バイアルの摩擦係数は発熱物質除去条件によっては変化せず、コーティングは熱的に安定であったことが示された。図41は、360℃および320℃で様々な熱処理回数後の摩擦係数を図示する。

実施例18 バイアルを、実施例2に記載のとおり、APS/Novastrat800コーティングでコーティングした。コーティングしたバイアルの光透過率、ならびに、未コーティングのバイアルの光透過率を、分光測光計を用いて400〜700nmの波長範囲内で測定した。測定は、光ビームが、容器への入射時に1回、次いで、出射時に1回と平滑コーティングを2回通過するように、容器の壁に対して垂直になるよう光ビームを指向させることにより行われる。図11は、コーティング済みのバイアルおよび未コーティングのバイアルに係る400〜700nmの可視光スペクトルで測定した光透過率データを図示する。ライン440はコーティングされていないガラス製容器を示し、また、ライン442はコーティングされたガラス製容器を示す。

実施例19 バイアルを、0.25%GAPS/0.25%APhTMSカップリング剤、および、1.0%Novastrat(登録商標)800ポリイミドでコーティングし、320℃で12時間の発熱物質除去の前後で光透過率についてテストした。未コーティングのバイアルもテストした。結果が図42に示されている。

実施例20 ポリイミドコーティングの均一性を向上させるために、4gのトリエチルアミンを1Lのメタノール中に添加し、次いで、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸を添加して0.1%溶液を形成することにより、Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸をポリアミド酸塩に転換させ、ジメチルアセタミドと比して蒸発が顕著に速い溶剤であるメタノール中に溶解させた。ポリ(ピロメリト酸二無水物−コ−4,4’−オキシジアニリン)アミド酸のメタノール可溶塩が生成可能であった。

Type IBイオン交換バイアル上のコーティングをメタノール/水混合物中の1.0%GAPS/1.0%APhTMSおよびメタノール中の0.1%Novastrat(登録商標)800ポリアミド酸塩から形成した。コーティングしたバイアルを360℃で12時間発熱物質除去に供し、発熱物質除去に供していないサンプルおよび発熱物質除去に供したサンプルを、バイアル重畳治具において10N、20Nおよび30N垂直荷重で擦過した。10N、20Nおよび30Nの垂直力ではガラスの損傷は観察されなかった。図43は、360℃で12時間の熱処理後のサンプルに対する摩擦係数、加えた力および摩擦による力を示す。図44は、サンプルに対する水平圧縮テストにおける負荷荷重に応じる破壊確率を図示する。統計的に、10N、20Nおよび30Nでの一連のサンプルは相互に区別可能であった。低荷重破壊サンプルはスクラッチから離れた基点から壊れた。

図45〜47にそれぞれ示されているとおり、コーティング層の厚さを偏光解析法および走査電子顕微鏡検査(SEM)を用いて推定した。コーティング厚測定用のサンプルをケイ素ウェハ(偏光解析法)およびスライドガラス(SEM)を用いて作製した。この方法は、結束層について55〜180nmおよびNovastrat(登録商標)800ポリアミド酸塩について35nmと様々な厚さを示す。

実施例21 プラズマクリーニングしたSiウェハ片を、75/25メタノール/水vol/vol混合物中の0.5%GAPS/0.5%APhTMS溶液を用いてディップコーティングした。コーティングを120℃に15分間曝露した。コーティング厚を、偏光解析法を用いて測定した。3つのサンプルを調製したところ、厚さは、それぞれ、92.1nm、151.7nmおよび110.2nmであり、標準偏差は30.6nmであった。

スライドガラスをディップコーティングし、走査型電子顕微鏡で試験した。図45は、1.0%GAPS、1.0%APhTMS、および、0.3%NMPの75/25メタノール/水混合物中のコーティング溶液中において、8mm/sの引き上げ速度でディップコーティングし、続いて150℃で15分間の硬化したスライドガラスのSEMイメージを示す。コーティングは約93nm厚であるように見える。図46は、1.0%GAPS、1.0%APhTMS、および、0.3NMPの75/25メタノール/水混合物中のコーティング溶液中において、4mm/sの引き上げ速度でディップコーティングし、続いて、150℃で15分間の硬化したスライドガラスのSEMイメージを示す。コーティングは約55nm厚であるように見える。図47は、0.5%Novastrat(登録商標)800溶液のコーティング溶液中において、2mm/sの引き上げ速度でディップコーティングし、150℃で15分間の硬化し、320℃で30分間の熱処理したスライドガラスのSEMイメージを示す。コーティングは約35nm厚であるように見える。

比較例A Type IBガラスから形成したガラスバイアルを、固形分含有量が約1〜2%であるBaysilone MのBayer Silicone水性エマルジョンの希釈コーティングでコーティングした。これらのバイアルを150℃で2時間処理して、表面から水を留去させて、ポリジメチルシロキサンコーティングをガラスの外表面に残留させる。コーティングの公称厚は約200nmであった。1組目のバイアルを未処理状態(すなわち、「素コーティングバイアル」)のままとした。2組目のバイアルを280℃で30分間処理した(すなわち、「処理済バイアル」)。各組からのバイアルのいくつかを、0から48Nに線形に増加する荷重で、およそ20mmの長さのスクラッチをUMT−2摩擦計およびバイアル重畳テスト治具を用いて加えることにより先ず機械的にテストした。スクラッチを摩擦係数および形態学について評価して、スクラッチ手法がガラスに損傷を与えたか、または、コーティングがスクラッチによる損傷からガラスを保護したかについて判定した。

図48は、素コーティングバイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。図48において図示されているとおり、素コーティングバイアルは、約30Nの荷重以下でおよそ0.03の摩擦係数を示していた。データは、およそ30N未満では、COFは常に0.1未満であることを示している。しかしながら、30Nを超える垂直力では、スクラッチの長さに沿ったガラス割れの存在によって示されているとおり、コーティングは破損し始める。ガラス割れはガラス表面損傷を示しており、その損傷の結果によりガラスが破損する傾向が高まる。

図49は、処理済バイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。処理済バイアルについては、負荷荷重がおよそ5Nの値に達するまで摩擦係数は低いままであった。この時点でコーティングは破損し始め、荷重の増加に伴って生じた大量のガラス割れから明らかであるとおり、ガラス表面が激しく損傷していた。処理済バイアルの摩擦係数は約0.5に増加した。しかしながら、コーティングは熱曝露後には30Nの荷重でガラスの表面を保護することができず、コーティングは熱的に不安定であったことが示された。

次いで、20mmスクラッチの全長にわたって30N静荷重を加えることによりバイアルをテストした。素コーティングバイアルの10個のサンプルおよび処理済バイアルの10個のサンプルを、20mmスクラッチの全長にわたって30N静荷重を加えることにより、水平圧縮においてテストした。素コーティングサンプルではスクラッチで破損したものはなかったが、一方で、10個の処理済バイアルのうち6個がスクラッチで破損し、処理済バイアルでは残留強度が低下していたことが示された。

比較例B Wacker Silres MP50(製品番号60078465番ロット番号EB21192番)の溶液を2%に希釈し、これを基準ガラス組成物から形成したバイアルに適用した。これらのバイアルは、コーティング前に、先ずプラズマを10秒間印加することによりクリーニングした。これらのバイアルを315℃で15分間乾燥させて水をコーティングから留去させた。1組目のバイアルは「素コーティング」状態に維持した。2組目のバイアルは250℃〜320℃の範囲の温度で30分間した(すなわち、「処理済バイアル」)。各組からのバイアルのいくつかを、0から48Nに線形に増加する荷重で、およそ20mmの長さのスクラッチを、UMT−2摩擦計を用いて加えることにより先ず機械的にテストした。スクラッチを摩擦係数および形態学について評価して、スクラッチ手法がガラスに損傷を与えたか、または、コーティングがスクラッチによる損傷からガラスを保護したかについて判定した。

図50は、素コーティングバイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。

図51は、280℃で処理した処理済バイアルに対する、加えたスクラッチの長さ(x座標)に応じる摩擦係数、スクラッチ侵入度、加わった垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。処理済バイアルは、約20Nを超える負荷荷重で顕著なガラス表面損傷を示した。ガラス損傷に対する荷重閾値は、熱曝露温度の上昇に伴って低下し、コーティングは高い温度で劣化したことが示された(すなわち、コーティングは熱的に不安定)こともまた判定した。280℃未満の温度で処理したサンプルは30Nを超える荷重でガラス損傷を示した。

比較例C 基準ガラス組成物から形成したバイアルを、水中で2%固形分に希釈したEvonik Silikophen P 40/Wで処理した。次いで、サンプルを150℃で15分間乾燥させ、その後、315℃で15分間硬化させた。1組目のバイアルは「素コーティング」状態に維持した。2組目のバイアルは260℃の温度で30分間処理した(すなわち、「260℃処理済バイアル」)。3組目のバイアルは280℃の温度で30分間処理した(すなわち、「280℃処理済バイアル」)。これらのバイアルを、図9に示されているテスト治具を用いて30Nの静荷重でスクラッチした。次いで、これらのバイアルを水平圧縮においてテストした。260℃処理済バイアルおよび280℃処理済バイアルは圧縮で損傷し、一方で、16個の素コーティングバイアルのうち2個がスクラッチで損傷した。これは、コーティングは高温への曝露で劣化しており、その結果、コーティングは30N荷重から表面を十分に保護しなかったことを示す。

実施例22 基準ガラス組成物から形成したバイアルを、1.0%/1.0% GAPS/m−APhTMS溶液の75/25濃度のメタノール/水中の溶液でコーティングした。バイアルを、溶液中において、2mm/sの引き上げ速度でディップコーティングした。コーティングを150℃で15分間硬化させた。1組目のバイアルを、未処理状態(すなわち、「素コーティングバイアル」)に維持した。2組目のバイアルを300℃で12時間発熱物質除去に供した(すなわち、「処理済みバイアル」)。各組のバイアルのいくつかを、UMT−2摩擦計およびバイアル重畳テスト治具を用いてバイアルのショルダーからバイアルのヒールに向け、10N荷重でスクラッチを加えることにより機械的にテストした。各組の追加のバイアルを、UMT−2摩擦計およびバイアル重畳テスト治具を用いてバイアルのショルダーからバイアルのヒールに向け、30N荷重でスクラッチを加えることにより機械的にテストした。スクラッチを摩擦係数および形態学について評価して、スクラッチ手法がガラスに損傷を与えたか、または、コーティングがスクラッチによる損傷からガラスを保護したかを判定した。

図52および53は、素コーティングバイアルに対する、適用したスクラッチの長さ(x座標)に応じた摩擦係数、スクラッチ侵入度、加えた垂直力および摩擦力(y座標)を示すプロットである。図52および53において図示されているとおり、素コーティングバイアルは、テストの後にいくらかの擦り傷およびガラス損傷を示した。しかしながら、摩擦係数は、テスト中でおよそ0.4〜0.5であった。図54および55は、処理済みのバイアルについて行った同様のテストの結果を示す。テストの後、処理済みのバイアルは、コーティングの表面のいくらかの擦過、ならびに、ガラスに対するいくらかの損傷を示した。摩擦係数は、テスト中でおよそ0.7〜0.8であった。

実施例23 基準ガラス組成物から形成したバイアルを、1.0%/1.0% GAPS/m−APhTMS溶液の75/25濃度のメタノール/水中の溶液でコーティングした。バイアルを、溶液中において、0.5mm/s〜4mm/sの範囲の引き上げ速度で引き上げ、それぞれのバイアルにおけるコーティングの厚さを変化させてディップコーティングした。コーティングを150℃で15分間硬化させた。1組目のバイアルを、未処理状態(すなわち、「素コーティングバイアル」)で維持した。2組目のバイアルを300℃で12時間発熱物質除去に供した(すなわち、「処理済みバイアル」)。各組のバイアルのいくつかを、UMT−2摩擦計を用いてバイアルのショルダーからバイアルのヒールに向け、10N荷重でスクラッチを加えることにより機械的にテストした。各組の追加のバイアルを、UMT−2摩擦計を用いてバイアルのショルダーからバイアルのヒールに向け、30N荷重でスクラッチを加えることにより機械的にテストした。次いで、バイアルを水平圧縮においてテストした。水平圧縮テストの結果が図56および57に報告されている。10N荷重下でスクラッチしたバイアルは、コーティング厚が様々であったにも関わらず、機械的強度の差異はかなり小さいことを示した。30Nでスクラッチし、より薄いコーティング(すなわち、0.5mm/sの引き上げ速度に対応するコーティング)を有するバイアルは、比較的厚いコーティングを有するバイアルと比して、水平圧縮における破壊に係る傾向が高いものであった。

本明細書に記載のガラス製容器は、層剥離に対する耐性、向上した強度、および、高い損傷耐性から選択される少なくとも2つの性能特性を有することがここに理解されるべきである。例えば、ガラス製容器は、層剥離に対する耐性および向上した強度;向上した強度および高い損傷耐性;または、層剥離に対する耐性および高い損傷耐性の組合せを有し得る。これらのガラス製容器は、種々の態様で理解され得る。

第1の態様において、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。圧縮応力層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に位置され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。

第2の態様において、ガラス製容器は、内表面、外表面、および、外表面と内表面との間に延在する肉厚部を有する本体を備え得る。本体は、ASTM規格E438−92に準拠したType1、クラスBガラスから形成され得る。圧縮応力層は本体の外表面から肉厚部中に延在し得る。圧縮応力層は、150MPa以上の表面圧縮応力を有し得る。平滑コーティングは、本体の外表面の少なくとも一部分の周辺に位置され得る。平滑コーティングを備える本体の外表面は、0.7以下の摩擦係数を有し得る。

第3の態様は、表面圧縮応力が200MPa以上である、第1の態様〜第2の態様のガラス製容器を含む。

第4の態様は、表面圧縮応力が300MPa以上である、第1の態様〜第3の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第5の態様は、圧縮応力層が層深度3μm以上に延在している、第1の態様〜第4の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第6の態様は、圧縮応力層が25μm以上の層深度以上に延在している、第1の態様〜第5の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第7の態様は、本体がイオン交換強化されている、第1の態様〜第6の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第8の態様は、本体高温イオン交換強化されている、第1の態様〜第7の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第9の態様は、本体が熱強化されている、第1の態様〜第6の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第10の態様は、圧縮応力層が、肉厚部の約22%以下の層深度まで肉厚部に延在している、第9の態様のガラス製容器を含む。

第11の態様は、本体が積層ガラスを備えている、第1の態様〜第6の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第12の態様は、積層ガラスが:コア熱膨張係数CTEcoreを有するコア層;および、コア層と融合していると共に第2の熱膨張係数CTEcladを有する少なくとも1つのクラッディング層を備え、ここで、CTEcoreはCTEcladとは異なっている、第11の態様のガラス製容器を含む。

第13の態様は、少なくとも1つのクラッディング層が第1のクラッディング層および第2のクラッディング層を備え;第1のクラッディング層はコア層の第1の表面と融合しており、また、第2のクラッディング層はコア層の第2の表面と融合しており;ならびに、CTEcoreはCTEcladよりも大きい、第12の態様のガラス製容器を含む。

第14の態様は、圧縮応力層が、肉厚部中に約1μm〜肉厚部の約90%である層深度まで延在している、第12の態様〜第13の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第15の態様は、圧縮応力層が、肉厚部中に約1μm〜肉厚部の約33%である層深度まで延在している、第12の態様〜第13の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第16の態様は、少なくとも1つのクラッディング層が本体の内表面を形成する、第12の態様〜第15の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第17の態様は、ガラス本体の外表面の少なくとも一部分に位置された無機コーティングをさらに備え、無機コーティングは、ガラス本体の熱膨張係数より小さい熱膨張係数を有している、第1の態様〜第16の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第18の態様は、平滑コーティングが、少なくとも約250℃の温度で30分間の間熱的に安定である、第1の態様〜第17の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第19の態様は、平滑コーティングが、少なくとも約260℃の温度で30分間の間熱的に安定である、第1の態様〜第18の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第20の態様は、平滑コーティングが、少なくとも約280℃の温度で30分間の間熱的に安定である、第1の態様〜第19の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第21の態様は、平滑コーティングが堅牢性無機コーティングである、第1の態様〜第20の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第22の態様は、堅牢性無機コーティングが、金属窒化物コーティング、金属酸化物コーティング、金属硫化物コーティング、SiO2、ダイアモンドライクカーボン、グラフェンまたはカーバイドコーティングである、第21の態様のガラス製容器を含む。

第23の態様は、堅牢性無機コーティングが、錫、BN、HBN TiO2、Ta2O5、HfO2、Nb2O5、V2O5、SiO2、MoS2、SiC、SnO、SnO2、ZrO2、Al2O3、BN、ZnOおよびBCの少なくとも1種を含んでいる、第21の態様のガラス製容器を含む。

第24の態様は、平滑コーティングが、約10℃/分間の昇温速度で150℃から350℃の温度まで加熱された場合にその質量の約5%未満の質量損失を有する堅牢性有機コーティングを含んでいる、第1の態様〜第20の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第25の態様は、堅牢性有機コーティングはポリマー化学組成物を含んでいる、第24の態様のガラス製容器を含む。

第26の態様は、堅牢性有機コーティングがカップリング剤をさらに含んでいる、第25の態様のガラス製容器を含む。

第27の態様は、平滑コーティングが仮コーティングである、第1の態様〜第17の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第28の態様は、仮コーティングが、300℃以下の温度で1時間以内に熱分解する、第27の態様のガラス製容器を含む。

第29の態様は、仮コーティングが、ポリオキシエチレングリコール、メタアクリレート樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、およびポリビニルアルコールの混合物を含んでいる、第27の態様および第28の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第30の態様は、仮コーティングが1種以上の多糖類を含んでいる、第27の態様および第29の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第31の態様は、仮コーティングが、ポリアクリル酸またはポリアクリル酸の誘導体を含んでいる、第27の態様〜第30の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第32の態様は、仮コーティングが無機塩を含んでいる、第27の態様〜第31の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第33の態様は、仮コーティングが:ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー、ポリビニル−ピロリジノン、ポリエチレンアミン、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリウレタン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルホルマール、ポリアセタールおよびアセタールコポリマーを含むポリホルムアルデヒド、ポリ(アルキルメタクリレート)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(アクリル酸)およびその塩、ポリ(メタクリル酸)およびその塩、エチレン−無水マレイン酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、酢酸ビニル−ビニルアルコールコポリマー、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸コポリマー、乳化性ポリウレタン、ポリオキシエチレンステアレート、および、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそのコポリマーを含むポリオレフィン、デンプンおよび改質デンプン、親水コロイド、ポリアクリロアミド、植物性脂肪および動物性脂肪、ワックス、獣脂、石けん、ステアリン−パラフィンエマルジョン、ジメチルまたはジフェニルまたはメチル/フェニル混合物のポリシロキサン、過フッ素化シロキサンおよび他の置換シロキサン、アルキルシラン、芳香族シラン、ならびに、酸化ポリエチレンの少なくとも1種を含んでいる、第27の態様〜第32の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

第34の態様は、平滑コーティングを備えるガラス製容器に係る光透過率が、約400nm〜約700nmの光波長について、コーティングされていないガラス製容器に係る光透過率の約55%以上である、第1の態様〜第33の態様のいずれかのガラス製容器を含む。

特許請求された主題の趣旨および範囲から逸脱しない限りにおいて、本明細書に記載の実施形態に対して種々の変更および変形を行うことが可能であることは当業者に明らかであろう。それ故、変更および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に含まれる場合に限り、本明細書は、本明細書に記載の種々の実施形態の変更および変形を包含することが意図される。

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