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原子プラントの構造部材への貴金属付着方法

阅读:83发布:2024-02-25

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還元除染剤及びpH調整剤を含む溶液を用いて、原子プラントの構造部材の炉水と接触する表面の還元除染を実施し、前記還元除染において前記水溶液を複数の陽イオン交換樹脂を含む陽イオン交換樹脂層に供給して前記複数の陽イオン交換樹脂に前記pH調整剤を吸着させるステップと、 前記還元除染後に実施される、前記還元除染剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液に含まれる前記還元除染剤及び前記pH調整剤を分解する最初の還元除染剤分解工程と前記最初の還元除染剤分解工程が終了した後に実施される前記水溶液の浄化を行う浄化工程との間の第1期間、及び前記浄化工程終了後の第2期間のいずれかの期間において、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を前記水溶液に注入することにより生成された、前記錯イオン形成剤、前記貴金属イオン及び前記還元剤を含む前記水溶液である第1水溶液を、前記構造部材の前記還元除染が実施された前記表面に接触させ、前記表面に貴金属を付着させるステップと、 前記貴金属を付着させるステップが終了した後、前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップとを有することを特徴とする原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記陽イオン交換樹脂層に供給される前記第1水溶液に含まれる前記錯イオン形成剤の、前記陽イオン交換樹脂層内の前記陽イオン交換樹脂への吸着によりこの陽イオン交換樹脂から前記第1水溶液に放出された前記pH調整剤、及び前記第1水溶液に含まれる前記還元剤を分解する請求項1に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記最初の還元除染剤分解工程が、前記第1水溶液に含まれる前記還元除染剤の一部を分解する工程であり、 前記還元除染剤の一部の分解が行われた後の前記第1期間内で、前記貴金属を付着させるステップ、及び前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップが実施され、 前記第1水溶液に含まれる残りの前記還元除染剤の分解が、前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への供給と並行して行われる請求項1に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記還元剤を前記第1水溶液に注入したときから前記貴金属を付着させるステップが終了するまでの間で、前記構造部材の前記表面に接触した前記第1水溶液の鉄イオンの濃度が設定濃度以上になったとき、この第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給してこの第1水溶液に含まれる前記鉄イオン、前記貴金属イオン及び前記錯イオン形成剤を前記陽イオン交換樹脂層内の前記陽イオン交換樹脂に吸着させて除去し、 前記鉄イオン、前記貴金属イオン及び前記錯イオン形成剤の前記陽イオン交換樹脂への前記吸着によりこの陽イオン交換樹脂から前記第1水溶液に放出された前記pH調整剤、及び前記第1水溶液に含まれる前記還元剤を分解し、 前記鉄イオン、前記貴金属イオン及び前記錯イオン形成剤が除去されて前記pH調整剤及び前記還元剤が分解された前記第1水溶液に、前記貴金属イオン及び前記錯イオン形成剤を新たにそれぞれ注入し、 前記貴金属イオン及び前記錯イオン形成剤が新たに注入されたこの第1水溶液を前記構造部材の前記表面に接触させる請求項3に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記貴金属イオンの前記水溶液への注入を、前記錯イオン形成剤を前記水溶液に注入した後に行う請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への供給により前記第1水溶液に含まれる前記錯イオン形成剤が除去された前記第1水溶液を、前記浄化工程において、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂層に供給する請求項3に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記還元除染剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液に含まれる前記還元除染剤及び前記pH調整剤の分解が終了した後の前記還元除染剤分解工程において、この水溶液を陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂層に供給し、 前記第2期間内で、前記貴金属を付着させるステップ、及び前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップが実施され、 前記第1水溶液に含まれる前記還元剤の分解が、前記第2期間内で、前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への前記供給と並行して行われる請求項1に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記構造部材の前記表面に接触させる前記第1水溶液のpHが、4.0〜9.0の範囲内にある請求項1ないし7のいずれか1項に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記錯イオン形成剤及び前記貴金属イオンを前記水溶液に注入することにより生成された、前記錯イオン形成剤及び前記貴金属イオンを含み前記還元剤を含まない第2水溶液を前記構造部材の前記表面に接触させ、 前記第2水溶液を前記構造部材の前記表面に接触させた後、前記第2水溶液に前記還元剤を注入して生成された前記第1水溶液を、前記構造部材の前記表面に接触させる請求項1に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記第2水溶液の生成する前記貴金属イオンの注入から5分〜1時間の範囲内の時間が経過したときに、前記第2水溶液に前記還元剤を注入することにより前記第1水溶液を生成する請求項9に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記構造部材の前記表面に接触させる前記第1水溶液及び前記第2水溶液のそれぞれのpHが、4.0〜9.0の範囲内にある請求項9または10に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記錯イオン形成剤が、アンモニア、アミン化合物及び尿素のうちの少なくとも1つである請求項1ないし11のいずれか1項に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。原子炉圧力容器に連絡される、原子力プラントの構造部材である第1配管に、第2配管を通して還元除染剤及びpH調整剤を含む水溶液を供給して前記水溶液を用いて前記第1配管の内面の還元除染を実施するステップと、 前記還元除染において前記第1配管から排出された前記水溶液を複数の陽イオン交換樹脂を含む陽イオン交換樹脂層に供給して前記複数の陽イオン交換樹脂に前記pH調整剤を吸着させるステップと、 前記還元除染後に実施される、前記第1配管から排出されて前記還元除染剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液に含まれる前記還元除染剤及び前記pH調整剤を分解する最初の還元除染剤分解工程と前記最初の還元除染剤分解工程が終了した後に実施される前記水溶液の浄化を行う浄化工程との間の第1期間、及び前記浄化工程終了後の第2期間のいずれかの期間において、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を前記第2配管内の前記水溶液に注入することにより生成された、前記錯イオン形成剤、前記貴金属イオン及び前記還元剤を含む前記水溶液である第1水溶液を、前記第1配管の前記還元除染が実施された前記内面に接触させ、前記内面に貴金属を付着させるステップと、 前記貴金属を付着させるステップが終了した後、前記第1配管から排出された前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップとを特徴とする原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記貴金属を付着させるステップにおいて、前記第1水溶液が、前記第1配管及び前記第2配管によって形成される閉ループ内を循環し、前記第1配管から排出された前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への供給は、前記第1配管から前記第2配管に排出された前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に導くことによって行われる請求項13に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記陽イオン交換樹脂層に供給される前記第1水溶液に含まれる前記錯イオン形成剤の、前記陽イオン交換樹脂層内の前記陽イオン交換樹脂への吸着によりこの陽イオン交換樹脂から前記第1水溶液に放出された前記pH調整剤、及び前記第1水溶液に含まれる前記還元剤を分解する請求項13または14に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記最初の還元除染剤分解工程が、前記第1水溶液に含まれる前記還元除染剤の一部を分解する工程であり、 前記還元除染剤の一部の分解が行われた後の前記第1期間内で、前記貴金属を付着させるステップ、及び前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップが実施され、 前記第1配管から排出された前記第1水溶液に含まれる残りの前記還元除染剤の分解が、前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への供給と並行して行われる請求項13または14に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への供給により前記第1水溶液に含まれる前記錯イオン形成剤が除去された前記第1水溶液を、前記浄化工程において、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂層に供給する請求項16に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記還元除染剤及び前記pH調整剤を含む前記水溶液に含まれる前記還元除染剤及び前記pH調整剤の分解が終了した後の前記還元除染剤分解工程において、この水溶液を陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂層に供給し、 前記第2期間内で、前記貴金属を付着させるステップ、及び前記第1水溶液を前記陽イオン交換樹脂層に供給するステップが実施され、 前記第1配管から排出された前記第1水溶液に含まれる前記還元剤の分解が、前記第2期間内で、前記第1水溶液の前記陽イオン交換樹脂層への前記供給と並行して行われる請求項13に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記錯イオン形成剤及び前記貴金属イオンを前記水溶液に注入することにより生成された、前記錯イオン形成剤及び前記貴金属イオンを含み前記還元剤を含まない第2水溶液を、前記第2配管から前記第1配管に供給して前記第1配管の前記内面に接触させ、 前記第2水溶液を前記第1配管の前記内面に接触させた後、前記第2配管内の前記第2水溶液に前記還元剤を注入して生成された前記第1水溶液を、前記第2配管から前記第1配管に供給して前記第1配管の前記内面に接触させる請求項13に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。前記第1水溶液に含まれる前記pH調整剤及び前記還元剤の分解が、前記第2期間内で、酸化剤が供給されて内部に触媒を有する分解装置内で行われ、 前記分解装置から排出された前記第1水溶液が、前記第2期間内で、前記分解装置に連絡される第3配管を通して前記陽イオン交換樹脂、及び陰イオン交換樹脂を含むイオン交換樹脂層に供給され、 前記イオン交換樹脂層から、前記イオン交換樹脂層に連絡される第4配管に排出された前記第1水溶液は、前記第2期間内で、前記第4配管を通して前記第2配管に導かれる請求項15に記載の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法。

说明书全文

本発明は、原子プラントの構造部材への貴金属付着方法に係り、特に、沸騰型原子力プラントに適用するのに好適な原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法に関する。

例えば、沸騰水型原子力発電プラント(以下、BWRプラントという)は、原子炉圧力容器(以下、RPVと称する)内に炉心を内蔵した原子炉を有する。再循環ポンプ(またはインターナルポンプ)によって炉心に供給された炉水は、炉心内に装荷された燃料集合体内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、一部が蒸気になる。この蒸気は、RPVからタービンに導かれ、タービンを回転させる。タービンから排出された蒸気は、復水器で凝縮され、水になる。この水は、給水としてRPVに供給される。給水は、RPV内での放射性腐食生成物の発生を抑制するため、給水配管に設けられたろ過脱塩装置で主として金属不純物が除去される。

また、RPV内に存在する冷却水である炉水に接触する構造部材には、腐食の少ないステンレス鋼及びニッケル基合金などの不銹鋼が使用され、放射性核種の元になる腐食生成物の生成を抑制している。その炉水に含まれる金属不純物は、原子炉浄化系のろ過脱塩装置によって除去される。

しかしながら、前述の腐食対策を講じても、極僅かな金属不純物が炉水中に残ることが避けられないため、除去されない一部の金属不純物が、金属酸化物として、炉心内の燃料棒の表面に付着する。この付着した金属不純物(例えば、金属元素)は、燃料棒内の核燃料物質の核分裂により放出される中性子の照射によって原子核反応を起こし、コバルト60,コバルト58,クロム51,マンガン54等の放射性核種になる。

これらの放射性核種の一部は、取り込まれている酸化物の溶解度に応じて炉水中にイオンとして溶出したり、クラッドと呼ばれる不溶性固体として炉水中に再放出されたりする。原子炉浄化系で除去されなかった、炉水に含まれる放射性物質は、炉水とともに再循環系などを循環している間に、BWRプラントの構造部材(例えば、配管)の炉水と接触する表面に蓄積される。蓄積された放射性物質は、BWRプラントの保守点検作業を行う従事者の放射線被曝の原因となる。

その従業者の被曝線量は、各人毎に規定値を超えないように管理されている。近年この規定値が引き下げられ、各人の被曝線量を可能な限り低くする必要が生じている。

そこで、配管の炉水と接触する表面にフェライト皮膜を形成してその表面への放射性核種の付着を低減する方法が、特開2006−38483号公報等に提案されている。この放射性核種付着抑制方法では、鉄(II)イオン、過酸化水素及びヒドラジンを含み、pHが5.5〜9.0の範囲内にあって温度が常温から100℃の範囲内である皮膜形成液を、その構造部材の表面に接触させてその表面にフェライト皮膜を形成する。

特開2006−38483号公報は、原子力プラントの運転停止中において原子力プラントの構造部材の表面の化学除染を行い、その表面にフェライト皮膜を形成し、このフェライト皮膜の表面に白金を付着させることを記載している。この化学除染は、例えば、特開2000−105295号公報に記載され、酸化除染液を用いた構造部材の酸化除染及び還元除染液を用いた還元除染を含んでいる。化学除染では、放射性核種を含む酸化皮膜が構造部材の表面から除去される。

原子力プラントの構造部材における応力腐食割れの進展を抑制するために、炉水に水素及び白金を注入する技術が存在する。この白金注入技術は、Proceeding of water chemistry 2004, p1054-1059に記載されている。この白金注入技術では、原子力プラントの運転開始後、給水配管に白金を溶解した水溶液を注入することで炉水に白金を導入し、白金を含む炉水と接触する構造部材(例えば、再循環系配管、炉心隔壁等)の表面に白金が付着される。これにより、構造部材表面の腐食電位が低く抑えられ、応力腐食割れの進展が抑制される。

特開平10−186085号公報は、原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を記載している。この貴金属付着方法では、原子炉の化学除染後の洗浄液に貴金属化合物溶液を流通させ、除染用薬液または除染された放射能を除去しながら、構造部材に貴金属を付着させている。この結果、除染の一工程中に貴金属付着を行うことができ、時間の短縮を図ることができる。

特開2014−44190号公報では、原子力プラントの構造部材表面に効率良く貴金属を付着させる方法を記載している。この貴金属付着方法では、原子力プラントの構造部材表面を対象にした還元除染終了後における還元除染剤分解工程の途中において、貴金属イオン及び還元剤を含む水溶液をその構造部材の表面に接触させ、貴金属イオンの還元反応を促進することにより構造部材の表面に貴金属を効率良く付着させている。これにより、構造部材表面への貴金属の付着作業に要する時間が短縮される。

特開2006−38483号公報

特開2010−127788号公報

特開2000−105295号公報

特開平10−186085号公報

特開2014−44190号公報

Proceeding of water chemistry 2004, p1054-1059

前述したように、特開2014−44190号公報に記載された原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法では、原子力プラントの構造部材表面を対象にした還元除染終了後における還元除染剤分解工程の途中において、貴金属イオン及び還元剤を含む水溶液をその構造部材の表面に接触させ、貴金属イオンの還元反応を促進することにより構造部材の表面に貴金属を効率良く付着させている関係上、構造部材の表面への貴金属の付着作業に要する時間が短縮される。構造部材の表面への貴金属の付着作業に要する時間を短縮できる、特開2014−44190号公報に記載された原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、非常に有益な方法である。

特開2014−44190号公報に記載された、有益な原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法では、放射性廃棄物の量を低減するために、化学除染に用いた還元除染液に含まれる還元除染剤であるシュウ酸及びpH調整剤であるヒドラジン、さらには、貴金属の付着に用いられる貴金属イオンを含む水溶液に含まれる、還元除染剤であるシュウ酸及び還元剤であるヒドラジンを、酸化剤(例えば、過酸化水素)及び触媒の作用により分解している。また、化学除染により構造部材の表面から酸化除染液及び還元除染液中に溶出した鉄イオン、コバルト60イオン及びコバルト58イオン等の金属イオンは、カチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂で除去される。貴金属イオンを含む水溶液を用いた構造部材の表面への貴金属(例えば、白金)の付着が終了し、この水溶液に含まれたシュウ酸の分解が終了した後、浄化工程が実施される。この浄化工程では、その水溶液は、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填された混床樹脂塔に導かれ、その水溶液に含まれる陽イオン及び陰イオンがイオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂によって除去される。いずれ放射性廃棄物となる陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂のそれぞれの、混床樹脂塔内への充填量は、構造部材の表面への貴金属付着処理に用いられる上記水溶液に含まれる不純物を除去するために増える恐れがある。

このため、発明者らは、特開2014−44190号公報に記載された原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法では、放射性廃棄物の発生量の低減が新たな課題になることを見出した。

本発明の目的は、放射性廃棄物の発生量を低減できる原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を提供することにある。

上記した課題を解決する本発明の特徴は、還元除染剤及びpH調整剤を含む水溶液を用いて、原子力プラントの構造部材の炉水と接触する表面の還元除染を実施し、この還元除染においてその水溶液を複数の陽イオン交換樹脂を含む陽イオン交換樹脂層に供給して複数の陽イオン交換樹脂にpH調整剤を吸着させるステップと、 その還元除染後に実施される、還元除染剤を分解する最初の還元除染剤分解工程と最初の還元除染剤分解工程が終了した後に実施されるその水溶液の浄化を行う浄化工程との間の第1期間、及び浄化工程終了後の第2期間のいずれかの期間において、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤をその水溶液に注入することにより生成された、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を含むその水溶液を、その構造部材の還元除染が実施されたその表面に接触させ、その表面に貴金属を付着させるステップと、 その貴金属を付着させるステップが終了した後、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を含むその水溶液を陽イオン交換樹脂層に供給するステップとを有することにある。

上記の貴金属を付着させるステップが終了した後、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を含むその水溶液を陽イオン交換樹脂層に供給するので、この陽イオン交換樹脂層においてpH調整剤が吸着されている陽イオン交換樹脂にその水溶液に含まれる錯イオン形成剤を吸着させることができる。水溶液に含まれる錯イオン形成剤の除去に、陽イオン交換樹脂層内のpH調整剤を吸着している陽イオン交換樹脂を利用することができる、すなわち、陽イオン交換樹脂に吸着されているpH調整剤を錯イオン形成剤と置換させて陽イオン交換樹脂に錯イオン形成剤を吸着させることができるため、錯イオン形成剤の除去に新たな陽イオン交換樹脂の使用が抑制される。このため、原子力プラントの構造部材の表面への貴金属の付着作業において、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。

好ましくは、錯イオン形成剤は、貴金属イオンを含む薬剤を注入する前にその水溶液に注入することが望ましい。

本発明によれは、原子力プラントの構造部材の表面への貴金属の付着において、放射性廃棄物の発生量を低減することができる。

本発明の好適な一実施例である、沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管に適用される実施例1の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の手順を示すフローチャートである。

実施例1の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を実施する際に用いられる貴金属供給装置を沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管に接続した状態を示す説明図である。

図2に示す貴金属注入装置の詳細構成図である。

未処理試験片及び白金付着試験片のそれぞれへの放射性核種(コバルトー60)の付着状態を示す説明図である。

白金付着量の、処理溶液に含まれるNH

3濃度の依存性を示す説明図である。

白金イオンを含む水溶液溶液の含有成分、及びその成分の注入時期がステンレス鋼試験片の表面の白金の付着量に及ぼす影響を示す説明図である。

白金イオン、アンモニア及びヒドラジンを含む水溶液をヒドラジンで飽和したカチオン交換樹脂層に通水したときの、その樹脂層の前後における水溶液中のアンモニア及びヒドラジンの各濃度を示す説明図である。

本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管に適用される実施例2の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の手順を示すフローチャートである。

本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管に適用される実施例3の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の手順を示すフローチャートである。

実施例3の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を実施する際に用いられる貴金属供給装置の詳細構成図である。

本発明の好適な他の実施例である、沸騰水型原子力発電プラントの再循環系配管に適用される実施例4の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の手順を示すフローチャートである。

特開2014−44190号公報に記載された原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の概要を以下に説明する。

原子力プラントの構造部材の、酸化皮膜が形成されていない金属の表面に、酸化皮膜形成前に白金を付着させた場合には、Co−60を含む炉水を接触させてその構造部材の表面に酸化皮膜が形成されても、この酸化皮膜へのCo−60を取り込みが抑制され、結果的に、その構造部材の表面におけるCo−60の付着量を抑制できる。さらには、構造部材の応力腐食割れの進展を抑制することができる。

沸騰水型原子力プラントでは、ステンレス鋼製の構造部材(例えば、再循環系配管等)が使用されており、このステンレス鋼製の構造部材を模擬したステンレス鋼製の試験片を用いて以下の検討を行った。

ステンレス試験片を研磨しただけの未処理試験片、及びこの未処理試験片を白金溶液に浸漬して白金を付着させて試験片(白金付着試験片)を、沸騰水型原子力プラントの原子炉圧力容器内の炉水を模擬した、Co−60を含む280℃の高温水に浸漬し、それぞれの試験片に取り込まれたCo−60の量の測定結果を図4(特開2014−44190号公報の図5)に示す。図4に示すように、その高温水に浸漬した白金付着試験片の表面に形成された酸化皮膜へのCo−60の取り込みが、未処理試験片に比べて抑制される。この結果、酸化皮膜が形成されていない状態で原子力プラントの構造部材の表面に白金を付着させ、その後、原子力プラントの運転を開始して定格出力条件での高温の炉水を構造部材の表面に接触させれば、その表面に形成される酸化皮膜へのCo−60の取り込みが抑制されると共に、炉水中の水素及び付着したその白金の作用によって構造部材における応力腐食割れの発生及び進展も抑制できる。

すなわち、実際の原子力プラントでは、例えば、運転が停止されている間に実施される化学除染の期間中で、構造部材の、酸化皮膜が除去された表面に白金を付着させることにより、原子力プラントの運転後に構造部材の表面に形成される酸化皮膜へのCo−60の取り込みが、白金を付着しない場合に比べて抑制される。

原子力プラントの運転停止期間中に実施される化学除染の期間中における、構造部材の、酸化皮膜が除去された表面への白金の付着は、化学除染に用いられる還元除染液に含まれる還元除染剤(例えば、シュウ酸)の一部を分解した後、白金イオン及び還元剤を添加した還元除染液を原子力プラントの構造部材の表面に接触させることにより実現される。還元除染液中の白金イオンを還元剤で還元することによって、特開2006−38483号公報及び特開平10−186085号公報のそれぞれに記載された貴金属の付着処理よりも、白金がその構造部材の表面に効率良く付着すると共に、白金の付着に要する時間を短縮することができる。還元除染液に還元剤を注入することにより100℃以下の低温においても白金イオンを還元できる。

化学除染の一工程である還元除染剤の分解工程の期間中で、除染された構造部材の表面に効率良く白金を付着させるためには、還元除染剤の一部を分解処理した還元除染液に白金イオンを注入し、この白金イオンを還元して金属として構造部材の表面に析出させるため、還元剤をその還元除染液に注入する。白金イオン及び還元剤を含む還元除染液を構造部材の表面に接触させることにより、その表面において特開2014−044190号公報に記載された式(1)または下記の式(1)の反応により、その表面に白金粒子を付着させる、またはその表面に白金皮膜を形成させることができる。

Pt4++4e- → Pt ……(1) 還元剤としては、ヒドラジン、ホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミド及びカルボヒドラジド等のヒドラジン誘導体及びヒドロキシルアミンのいずれかを用いることができる。水と一緒に供給できる還元剤であれば使用可能であるが、白金は、元々、還元され易いため、還元作用があまり強くないヒドラジンが好適である。また、廃液処理の観点からも、化学除染の分解装置内で触媒及び酸化剤の作用により容易に水と窒素に分解できるヒドラジンが好適である。ヒドラジンを用いた場合の白金イオンの還元反応は、例えば、式(2)のように表される。

Pt2++2OH-+N2H4 = Pt+2NH2OH ……(2) 還元除染工程で使用される還元除染液は、例えば、シュウ酸濃度が2000ppmでヒドラジン濃度が600ppmであるpH2.5の水溶液である。このような還元除染液は、シュウ酸(還元除染剤)の作用により構造部材の表面を溶解するので、構造部材の表面への白金付着にふさわしい条件になっていない。

このため、特開2014−44190号公報に記載されているように、化学除染の工程において、還元除染剤の分解工程及び浄化工程を含む、還元除染工程終了後の期間内で貴金属、例えば、白金イオンをその水溶液に注入することが望ましい。特に、構造部材表面の還元除染終了後に、還元除染剤(例えば、シュウ酸)及びpH調整剤(例えば、ヒドラジン)を含みpHが2.5である水溶液の還元除染剤の一部を分解し、還元除染剤の一部の分解によりその水溶液のpHが上昇して4以上になった時点以降において、その水溶液に白金イオンを注入すればよい。なお、pHが4に上昇したとき、pH4のその水溶液に含まれるシュウ酸濃度は50ppmであり、ヒドラジンは完全に分解されてその水溶液には含まれていない。

白金イオン及び還元剤を含む純水(処理水溶液)をステンレス鋼製の試験片の表面に接触させた場合におけるその試験片の表面への白金付着量は、ステンレス鋼製の試験片の表面への白金付着量(従来法)の約9倍になる。また、処理水溶液の白金濃度を低下させたときには、白金粒子がステンレス鋼製の試験片の表面に付着する。

本出願の出願人の従業員ら(本出願の発明者1名を含む)(以下、単に、従業員らという)は、還元除染中である還元除染工程終了後における還元除染剤の分解工程において、原子力プラントの構造部材を模擬したステンレス鋼製の試験片の表面に白金粒子を付着できるかを確認する実験を、還元除染剤の分解工程での還元除染剤の分解途中の還元除染液を模擬した、シュウ酸の濃度が50ppmであってヒドラジンが含まれていないpH4のシュウ酸水溶液(模擬還元除染液)を用いて行った。このシュウ酸水溶液に白金イオン及び還元剤(例えば、ヒドラジン)を添加して生成された、50ppmのシュウ酸、100ppbの白金イオン及び300ppmのヒドラジンを含むpHが8で90℃のシュウ酸水溶液に、ステンレス鋼製の試験片を、20分間、浸漬させた。この結果、そのシュウ酸水溶液から取り出したステンレス鋼製の試験片の表面には、白金粒子が均一に分散して緻密に付着していた。

貴金属注入により原子力プラントの構造部材の表面に付着させる貴金属としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム及びイリジウムのいずれかを用いてもよい。また、還元剤としては、ヒドラジン、ホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミド及びカルボヒドラジド等のヒドラジン誘導体及びヒドロキシルアミンのいずれかを用いても良いが、廃液の分解処理を考慮するとヒドラジンが好適である。

特開2014−44190号公報に記載された、貴金属イオン(例えば、白金イオン)、還元剤(例えば、ヒドラジン)及び還元除染剤(例えば、シュウ酸)を含むpH4以上の水溶液を還元除染が実施された構造部材の表面に接触させて、その表面に貴金属を付着させる場合には、以下に述べる課題が生じる。

還元除染液に含まれる還元除染剤であるシュウ酸が一部分解されたとき(例えば、還元除染液のpHが4に上昇したとき)、分解されていないシュウ酸以外に、シュウ酸よりも濃度が少ないが、化学除染により発生して陽イオン交換樹脂で除去しきれなかった鉄イオン及びクロムイオンがその還元除染液内にシュウ酸錯体の形で存在する場合がある。これらのシュウ酸錯体は、還元剤の添加による還元除染液のpHの上昇により分解し、鉄イオン及びクロムイオンが不純物として還元除染液中に存在するようになる。

そこで、従業員らは、ステンレス鋼製の試験片への白金の付着に及ぼす還元除染液に含まれる不純物の影響を調べるため、浄化工程終了後の還元除染液を想定した純水と、浄化工程前の還元除染液を想定した濃度のシュウ酸、及びその1/10の濃度の鉄イオン及びクロムイオン(不純物)を含む水溶液をそれぞれ90℃に加熱し、加熱したその水溶液にステンレス鋼試験片を浸漬した後、その水溶液中の白金イオン濃度が1ppmになるように、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウムをその水溶液に添加した。また、ヒドラジンの濃度が100ppmになるように、ヒドラジンをその水溶液にさらに添加した。ステンレス鋼製試験片を、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム及びヒドラジンを含むその水溶液に4時間浸漬させて、そのステンレス鋼製試験片に白金を付着させた。

浸漬時間である4時間が経過したとき、その試験片を水溶液から取り出す。取り出した試験片を王水で溶解して白金濃度を測定し、ステンレス鋼製試験片への白金付着量を求めた。この結果、浄化工程後の還元除染液を模擬した純水では試験片への白金の付着を確認することができた。しかしながら、不純物(鉄イオン及びクロムイオン)を添加した、浄化工程の前の還元除染液を模擬したその水溶液では、ステンレス鋼製試験片への白金の付着がほとんど見られなかった。

この違いは、不純物を添加したケースでは、鉄イオンが水酸化鉄及びマグネタイトとして水溶液中に析出したことに起因しており、この比表面積が大きい鉄の析出物に白金が付着してしまい、ステンレス鋼製試験片への付着が少なくなったと、従業員らは考えた。そこで、従業員らは、鉄イオンの析出を抑制する方法として、鉄イオンと錯イオンを形成する錯イオン形成剤をその水溶液に添加することにより、その水溶液中での鉄イオンの析出を抑える方法を検討した。ここでは、錯イオン形成剤として、アンモニアを用いた。鉄イオンとアンモニアは、式(3)、式(4)及び式(5)で表される各反応を生じ、鉄−アンモニア錯イオンを生成する。

Fe3++NH3 → [Fe(NH3)]3+ ……(3) Fe3++2NH3 → [Fe(NH3)2]3+ ……(4) Fe3++3NH3 → [Fe(NH3)3]3+ ……(5) このように、鉄−アンモニア錯イオンが還元除染液である水溶液中に生成されると、還元剤であるヒドラジンが添加されてその水溶液のpHが8程度以上のアルカリ性になったとしても、その水溶液内で鉄イオンの析出が抑制される。しかし、生成されるシュウ酸錯体の量そのものが少ないときには、鉄イオンの析出を抑える錯イオン形成剤を還元除染液に添加しなくても、ステンレス鋼製の構造部材の炉水と接触する表面に、必要量の白金を付着させることができる。このような場合でも、錯イオン形成剤を還元除染液に添加することにより、還元除染液に含まれる白金イオンを、還元剤の助けをかりて、効率良く原子力プラントの構造部材の表面に付着させることができる。このため、構造部材の表面の化学除染及びその表面への貴金属の付着に要する時間をさらに短縮することができる。

白金の付着に及ぼす還元除染液に含まれる不純物の影響を調べる試験に用いた、シュウ酸、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム、ヒドラジン及び不純物(鉄イオン及びクロムイオン)を含む上記の水溶液(模擬還元除染水溶液)に、錯イオン形成剤であるアンモニアを添加して、上記の不純物の影響を調べる試験と同様な試験を行った。アンモニアを添加することにより、鉄析出物の形成が抑制され、その水溶液は透明な状態を維持した。

アンモニアを添加した上記の水溶液を用いた白金付着処理が終了した後におけるステンレス鋼製試験片への白金の付着量を、図5に示す。ステンレス鋼製試験片への白金の付着量が、アンモニアの添加によって、不純物を添加していないケースと同程度まで回復することが分かった。

以上の試験結果に基づいて、化学除染の還元除染剤分解工程において還元除染液中にシュウ酸、鉄イオン及びクロムイオンが残留している場合であっても、還元除染液内での鉄イオンの析出を抑制する、アンモニアのような鉄イオンと錯イオンを形成する物質(錯イオン形成剤)を、還元除染液に添加することにより、白金イオンと還元剤(例えばヒドラジン)の働きで白金イオンを白金として構造部材の表面に付着させることができることを、従業員らは新たに見出した。錯イオン形成剤としては、還元剤(例えば、ヒドラジン)の添加により還元除染液のpHが増加した場合においても、錯イオンの形成によってFe(III)の溶解度を上昇させ、水酸化鉄及びマグネタイトの析出を抑制できる物質で、白金イオン(貴金属イオン)を金属まで還元させないものであれば良く、メチルアミン及びエタノールアミン等のアミン類の化合物(アミン化合物)、アンモニア及び尿素のうち少なくとも1つを用いることができる。

また、従業員らは、還元剤の使用により貴金属イオン(例えば、白金イオン)の還元反応によって原子力プラントの構造部材(例えば、配管系)の表面への貴金属粒子の付着が促進されるため、白金付着対象物であるその構造部材の下流側の表面には、その上流側の表面よりも、貴金属粒子の付着性が低下した、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液が接触することになり、貴金属の付着量が、構造部材の下流側の表面で減少するという新たな課題が生じることを見出した。

この課題は、従業員らが、還元除染の不純物である鉄イオン及びクロムイオンを含み、アンモニア(錯イオン形成剤)、白金イオン及びヒドラジン(還元剤)を添加して生成されたシュウ酸水溶液に、ヒドラジンの添加により白金イオンの還元反応が開始されて30分を経過した後にステンレス鋼製の研磨試験片を浸漬することによって確認した。すなわち、ヒドラジンの添加により白金イオンの還元反応が開始されて30分を経過した後にその研磨試験片をそのシュウ酸水溶液に浸漬しても、研磨試験片の表面への白金の付着が認められなかった。これは、そのシュウ酸水溶液中で白金イオンの白金金属微粒子への還元反応が進行したため、研磨試験片の表面で還元反応を生じて付着する白金イオンが減少したためであると、従業員らは考えた。

この課題に対する対策を種々検討した結果、従業員らは、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含む水溶液を構造部材の表面に接触させ、その後、この水溶液に還元剤を注入し、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を構造部材の表面に接触させることにより、構造部材の下流側の表面への貴金属の付着量が増加することを見出した。この貴金属付着量の増加を確認した試験を以下に説明する。

貴金属付着量の違いを確認するために、従業員らは、以下に述べるA〜Eの5つのケースについて試験を行った。ケースAの試験では、ステンレス鋼製の研磨試験片を、30分間、還元除染の不純物である鉄イオン及びクロムイオンを含むシュウ酸溶液に10ppmのアンモニア及び1ppmの白金イオンを添加して生成された、鉄イオン、クロムイオン、アンモニア及び白金イオンを含むシュウ酸水溶液に浸漬させ、この水溶液から取り出した。ケースAの試験において、その水溶液から取り出した試験片Aには、図6に示すように、計測誤差範囲の僅かな白金が付着しただけである。

ケースBの試験では、ステンレス鋼製の研磨試験片を、鉄イオン、クロムイオン、10ppmのアンモニア、1ppmの白金イオン及び10ppmのヒドラジン(還元剤)を含むシュウ酸水溶液に4時間浸漬させ、この水溶液から取り出した。ケースBの試験において、その水溶液から取り出した試験片Bには、図6に示すように、約1μg/cm2の白金が付着した。

ケースCの試験では、ステンレス鋼製の研磨試験片をケースAで用いたシュウ酸水溶液に30分浸漬させ、その後、この水溶液に10ppmのヒドラジンを添加し、さらに、ヒドラジンの添加から4時間が経過したとき、その試験片を、ヒドラジンを含むこの水溶液から取り出した。ケースCの試験において、その水溶液から取り出した試験片Cには、図6に示すように、ケースBに比べて1.6倍の約1.6μg/cm2の白金が付着した。

ケースDの試験では、鉄イオン、クロムイオン、10ppmのアンモニア及び1ppmの白金イオンを含むシュウ酸水溶液に10ppmのヒドラジンを添加して30分が経過したとき、ステンレス鋼製の研磨試験片を、鉄イオン、クロムイオン、アンモニア及び白金イオン及びヒドジンを含むそのシュウ酸水溶液に浸漬し、4時間経過後にこの水溶液から取り出した。ケースDの試験において、その水溶液から取り出した試験片Dには、図6に示すように、白金がほとんど付着しなかった。これは、ヒドラジンの添加によって白金イオンの還元反応が進行し、シュウ酸溶液中に白金の微細粒子が析出して試験片の表面への白金の付着性が低下したためと考えられる。

ケースEの試験では、ステンレス鋼製の研磨試験片をケースAで用いたシュウ酸水溶液に30分浸漬させてこの水溶液から取り出し、その後、この水溶液に10ppmのヒドラジンを添加し、ヒドラジンの添加から30分が経過したとき、取り出した試験片を、ヒドラジンを含むその水溶液に浸漬させ、さらに4時間が経過したとき、その試験片をこの水溶液から取り出した。ケースEの試験において、その水溶液から取り出した試験片Eには、図6に示すように、ケースCよりも多い、約3.5μg/cm2の白金が付着した。

ケースCの試験における鉄イオン、クロムイオン、アンモニア及び白金イオンを含むシュウ酸水溶液にステンレス鋼製の試験片を浸漬させてからその水溶液にヒドラジンを添加するまでの時間、及びケースEの試験における、ステンレス鋼製の試験片を鉄イオン、クロムイオン、アンモニア及び白金イオンを含むシュウ酸水溶液に一度浸漬させてから取り出し、試験片を取り出したその水溶液にヒドラジンを添加した時点から試験片を再浸漬するまでの時間を、それぞれ5分及び1時間に変えた試験をそれぞれ行った。ケースC及びEでは、アンモニア及び白金イオンを含むシュウ酸水溶液に試験片を浸漬させてからその水溶液にヒドラジンを添加するまでの時間が、5分及び1時間であっても、各試験片には、30分の場合と同様に、試験片Bよりも白金の付着量が多くなった。ただし、ケースC及びEにおいても、アンモニア及び白金イオンを含むシュウ酸水溶液に試験片を浸漬させてからその水溶液にヒドラジンを添加するまでの時間が5分未満のときには、試験片への白金の付着量は試験片Bと同等であった。

以上の試験結果から、従業員らは、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含み、還元剤(例えばヒドラジン)を含まない水溶液を、原子力プラントの構造部材の表面に接触させ、この水溶液の構造部材の表面への接触後、5分から1時間の範囲内の時間が経過した時点で、その表面に、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を接触させることにより、構造部材表面への貴金属の付着量を回復させることができ、その付着量を増加させることができることを見出した。これは、錯イオン形成剤及び還元除染剤を含む水溶液に注入した貴金属イオンが貴金属として構造部材の表面に付着する効率を向上させる。

特に、ケースEのように、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含み、還元剤を含まない水溶液を原子力プラントの構造部材の表面に接触させ、その後、この水溶液と構造部材の表面の接触から、5分〜1時間の範囲内の時間が経過した時点で、その構造部材の表面に、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を接触させた場合に、従業員らは、構造部材表面への貴金属の付着量を大幅に増加できることを見出した。このようなケースEの状態は、貴金属イオン注入後、還元剤注入までに時間差を設けることよって実現することができる。

錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含み、還元剤を含まない水溶液の、原子力プラントの構造部材の表面への接触後、5分から1時間の範囲内の時間が経過した時点で、その表面に、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を接触させることは、実際の原子力プラントにおいては、原子力プラントの構造部材の表面に接触する、錯イオン形成剤及び還元除染剤を含み、還元剤を含まない水溶液に貴金属イオンを注入した時点から、5分〜1時間の範囲内の時間が経過したときにその水溶液に還元剤を注入することによって実現することができる。白金イオンを注入した時点から還元剤を注入するまでの時間が1時間を超える場合には、原子力プラントの貴金属付着対象物の表面への貴金属の付着に要する時間が長くなり、実機の原子力プラントにとっては定検工程短縮の観点から好ましくない。

錯イオン形成剤の、還元除染剤を含む水溶液への注入、及び還元剤の、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含む水溶液への注入は、上記した、錯イオン形成剤及び還元除染剤を含み、還元剤を含まない水溶液への貴金属イオンの注入から、5分〜1時間の範囲内の時間が経過した時点における還元剤のその水溶液への注入との併用により、貴金属の構造部材の表面への付着効率の向上を図ることができ、さらに、原子力プラントの構造部材の表面の化学除染及びその表面への貴金属の付着に要する時間をさらに短縮することができる。

従業員らは、還元除染剤の分解工程において還元除染剤の分解を開始した以降に原子力プラントの構造部材の炉水に接触する表面に貴金属粒子、例えば、白金粒子を付着させる条件について検討した。還元除染剤の分解を開始した後において、還元除染剤(例えば、シュウ酸)を含む還元除染液(還元除染剤水溶液)に、錯イオン形成剤及び貴金属イオン(例えば、白金イオン)を含む薬剤を添加し、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含み還元剤を含まない第1水溶液を、原子力プラントの構造部材の炉水に接触する面に接触させ、その表面に貴金属イオンを吸着させるためには、その第1水溶液のpHを4.0以上にする必要がある。その水溶液のpHの上限は9.0である。また、第1水溶液を構造部材の表面に接触させた後、この表面に貴金属を付着させるために、その表面に接触される、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む第2水溶液のpHも、4.0〜9.0の範囲内にする。この結果、原子力プラントの構造部材の表面に貴金属粒子(例えば白金粒子)を付着させるためにその表面に接触させる、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液のpHは、4.0〜9.0の範囲にすることが望ましい。その水溶液のpHが4.0未満であるときは、還元除染液に含まれている還元除染剤の作用により、その構造部材の表面が溶解するため、貴金属粒子が構造部材の表面に付着しなくなる。

錯イオン形成剤、白金イオンを含む薬剤、還元剤、及び還元除染剤を含む水溶液の温度を、60℃から100℃の範囲内に調節することが望ましい。その水溶液の温度が60℃よりも低くなると貴金属が原子力プラントの構造部材の表面に付着しにくくなり、所定量の貴金属がその表面に付着するまで長時間を要することになる。このため、錯イオン形成剤、白金イオンを含む薬剤、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液の温度は60℃以上にすることにより、原子力プラントの構造部材の表面に短時間に貴金属を付着させることができ、原子力プラントの定期検査の他の工程に悪影響を与えることを避けることができる。また、その水溶液の温度が100℃よりも高くなると、その水溶液の沸騰を抑制するために水溶液を加圧しなければならない。このため、仮設設備である貴金属注入装置に耐圧性が要求され、その装置が大型化する。したがって、その水溶液の温度が100℃よりも高くすることは好ましくない。

錯イオン形成剤の使用は、構造部材の表面への貴金属の付着を増大させてその表面への貴金属の付着に要する時間の短縮をもたらすが放射性廃棄物を増加させる恐れがあるという新たな課題を、本出願の発明者ら(以下、単に、発明者らという)が見出した。そして、発明者らは、放射性廃棄物の発生量を低減するために、種々の検討を行った。この検討結果を以下に説明する。

特開2014−44190号公報では、還元除染剤の一部を分解した後に、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を構造部材の表面に接触させてその構造部材の表面に貴金属を付着させる場合、及び還元除染剤の分解が終了した後に、貴金属イオン及び還元剤を含み還元除染剤を含まない水溶液を構造部材の表面に接触させてその構造部材の表面に貴金属を付着させる場合のそれぞれにおいて、その表面への貴金属の付着が終了した後、放射性廃棄物の発生量を低減するために、前者の水溶液を用いる場合には還元剤(例えば、ヒドラジン)及び還元除染剤(例えば、シュウ酸)を、後者の水溶液を用いる場合には還元剤を分解している。還元剤等の分解は、特開2014−44190号公報に記載されているように、Ruを添着した活性炭触媒を含む分解装置に酸化剤である過酸化水素を供給しながら分解装置内で行われる。さらに、特開2014−44190号公報では、ヒドラジン(還元剤)及びシュウ酸、またはヒドラジン(還元剤)の分解が終了した後、Ptイオン及び析出したPt粒子を含む水溶液を、冷却器で冷却して温度を低下させて(例えば、60℃に)、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填した混床樹脂塔に導いている。この水溶液に含まれるPtイオン及び析出したPt粒子は、混床樹脂塔内で除去される。

前述のように、錯イオン形成剤(例えば、アンモニア)が、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液または貴金属イオン及び還元剤を含み還元除染剤を含まない水溶液に注入された場合で構造部材の表面への貴金属の付着が終了したとき、還元剤及び還元除染剤(または還元剤)は分解装置内で触媒及び酸化剤の作用により分解されるが、アンモニアは触媒及び酸化剤の作用により分解されない。このため、その水溶液に含まれるアンモニアは混床樹脂塔内の陽イオン交換樹脂で除去される。混床樹脂塔には、アンモニアを除去するために、陽イオン交換樹脂の充填量を多くする必要がある。

このように、特開2014−44190号公報に記載された、Ptイオン及び析出したPt粒子を含む水溶液を、冷却器で冷却して、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を充填した混床樹脂塔に導く方法では錯イオン形成剤であるアンモニアは触媒では分解されないためイオン交換樹脂の負荷となって、放射性廃棄物(使用済のイオン交換樹脂)を増加させることになる。そこで、発明者らは、放射性廃棄物の発生量を低減できる原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を実現するために、種々の検討を行った。この検討の結果、発明者らは、化学除染で使用した、pH調整剤(例えば、ヒドラジン)で飽和している陽イオン交換樹脂を用いて、アンモニアを除去する新たな方法を考え出した。

化学除染の還元除染工程では、原子力プラントの構造部材の腐食を抑制する目的で還元除染剤であるシュウ酸の他にpH調整剤としてヒドラジンを注入し、還元除染液のpHを2.5程度に調整している。そして、シュウ酸及びヒドラジン(pH調整剤)を含むその還元除染液を用いて構造部材の表面に形成された、放射性物質を含む酸化皮膜を溶解し、溶解により還元除染液に溶出した、酸化皮膜に含まれていた鉄イオン、及びCo−60イオン等の放射性核種の陽イオンは、還元除染液を、陽イオン交換樹脂を充填したカチオン交換樹脂塔に通水することで除去される。このとき、ヒドラジンもカチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂で除去されるが、還元除染液のpHを2.5に維持するためにヒドラジンを還元除染液に注入し続けるので、カチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂は、やがて、吸着されたヒドラジン(pH調整剤)で飽和してしまう。

このような状態では、そのヒドラジンは、もはや、カチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂では除去されなくなるので、還元除染液へのヒドラジンの注入は停止される。鉄イオンやCo−60イオン等の金属イオンはヒドラジンよりも陽イオン交換樹脂に吸着し易いので、ヒドラジンによって飽和された陽イオン交換樹脂でも、鉄イオン及びCo−60イオン等の金属イオンを除去することができる。

ここで、発明者らは、還元除染工程において使用されてヒドラジン(pH調整剤)によって飽和された陽イオン交換樹脂を充填したカチオン交換樹脂塔に、白金付着処理が終了した後で、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を通水することを考えた。ヒドラジン(pH調整剤)で飽和したカチオン交換樹脂によってアンモニアが除去可能かを調べるため、発明者らは、ヒドラジン(還元剤)及びアンモニアを含む水溶液をヒドラジン(pH調整剤)で飽和した陽イオン交換樹脂が充填されているカチオン交換樹脂塔に通水し、カチオン交換樹脂塔に供給される前のその水溶液におけるヒドラジン(還元剤)及びアンモニアの各濃度と、そのカチオン交換樹脂塔から排出されたその水溶液におけるヒドラジン及びアンモニアの各濃度を比較した。この結果を図7に示す。図7に示された結果は、カチオン交換樹脂塔から排出された水溶液におけるヒドラジン(pH調整剤及び還元剤)の濃度がカチオン交換樹脂塔に供給されるその水溶液におけるヒドラジン(還元剤)の濃度よりも増加し、カチオン交換樹脂塔から排出された水溶液にはアンモニアが含まれていないことを示している。このような現象は、カチオン交換樹脂塔に供給されるその水溶液に含まれていたアンモニアがカチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂に吸着され、その陽イオン交換樹脂に吸着されていたヒドラジン(pH調整剤)がその水溶液中に放出されると共に、カチオン交換樹脂塔に供給されるその水溶液に含まれるヒドラジン(還元剤)はこの水溶液にアンモニアが含まれているために陽イオン交換樹脂に吸着されずにカチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂層を通過することによって生じるのである。したがって、発明者らは、白金付着処理が終了した後に、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を、ヒドラジン(pH調整剤)で飽和した陽イオン交換樹脂を充填しているカチオン交換樹脂塔に供給することにより、カチオン交換樹脂塔に供給される水溶液に含まれているアンモニアを除去できるという新たな知見を得ることができた。

白金付着処理が終了した後で錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液が陽イオン交換樹脂に接触したときにおいてイオン交換により陽イオン交換樹脂からその水溶液中に放出されるヒドラジン(pH調整剤)は、還元剤であるヒドラジンと同じ物質であり、触媒が充填されて酸化剤が供給される分解装置内において触媒及び酸化剤の作用によって分解される。つまり、白金付着処理が終了した後に、錯イオン形成剤、貴金属イオン、還元剤及び還元除染剤を含む水溶液を、ヒドラジンで飽和した陽イオン交換樹脂が充填されているカチオン交換樹脂塔に供給し、さらに、カチオン交換樹脂塔から排出されたその水溶液を、酸化剤である過酸化水素が注入された後に、Ruを担持した活性炭触媒を充填した分解装置に供給することによって、錯イオン形成剤としてのアンモニア、Pt2+或いはPt4+イオン、還元剤、アンモニアとイオン交換して陽イオン交換樹脂から放出される成分であるヒドラジン、及び還元除染剤であるシュウ酸が、貴金属付着処理に用いられた蒸気水溶液から除去される。ヒドラジンで飽和した陽イオン交換樹脂は、化学除染の還元除染工程においてカチオン交換樹脂塔内で使用されたものであり、白金付着処理に用いられたその水溶液が供給されるからと言って、そのカチオン交換樹脂塔内の陽イオン交換樹脂の使用量が増えるわけではない。また、アンモニアを混床樹脂塔で処理する必要が無くなり、新たな放射性廃棄物の発生を抑制することができる。

以上に述べた検討結果を反映した、本発明の実施例を、以下に説明する。

本発明の好適な一実施例である実施例1の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図1、図2及び図3を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、沸騰水型原子力発電プラント(BWRプラント)の再循環系配管に適用される。本実施例では、貴金属である白金の注入は、BWRプラントの起動前の運転停止中に行われる。

このBWRプラントの概略構成を、図2を用いて説明する。BWRプラントは、原子炉1、タービン3、復水器4、再循環系、原子炉浄化系及び給水系等を備えている。原子炉1は、炉心13を内蔵する原子炉圧力容器(以下、RPVという)12を有し、RPV12内に複数のジェットポンプ14を設置している。炉心13には多数の燃料集合体(図示せず)が装荷されている。燃料集合体は、核燃料物質で製造された複数の燃料ペレットが充填された複数の燃料棒を含んでいる。再循環系は、ステンレス鋼製の複数の再循環系配管22、及び再循環系配管22のそれぞれに設置された再循環ポンプ21を有する。給水系は、復水器4とRPV12を連絡する給水配管10に、復水ポンプ5、復水浄化装置(例えば、復水脱塩器)6、低圧給水加熱器8、給水ポンプ7及び高圧給水加熱器9を、復水器4からRPV12に向って、この順に設置して構成されている。水素注入装置28が、復水器4と復水ポンプ5の間で給水配管10に接続されている。原子炉浄化系は、再循環系配管22と給水配管10を連絡する浄化系配管20に、浄化系ポンプ24、再生熱交換器25、非再生熱交換器26及び炉水浄化装置27をこの順に設置している。浄化系配管20は、再循環ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。原子炉1は、原子炉建屋(図示せず)内に配置された原子炉格納容器11内に設置されている。

RPV12内の冷却水(以下、炉水という)は、再循環ポンプ21で昇圧され、再循環系配管22を通ってジェットポンプ14内に噴射される。この噴射により、ジェットポンプ14のノズルの周囲に存在する炉水も、ジェットポンプ14内に吸引されて炉心13に供給される。炉心13に供給された炉水は燃料集合体の各燃料棒内の核燃料物質の核分裂で発生する熱によって加熱され、加熱された炉水の一部が蒸気になる。この蒸気は、RPV12内に設けられた気水分離器(図示せず)及び蒸気乾燥器(図示せず)にて水分が除去された後に、RPV12から主蒸気配管2を通ってタービン3に導かれ、タービン3を回転させる。タービン3に連結された発電機(図示せず)が回転し、電力が発生する。

タービン3から排出された蒸気は、復水器4で凝縮されて水になる。この水は、給水として、給水配管10を通りRPV12内に供給される。給水配管10を流れる給水は、復水ポンプ5で昇圧され、復水浄化装置6で不純物が除去され、給水ポンプ7でさらに昇圧される。給水は、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9で加熱されてRPV12内に導かれる。抽気配管15によりタービン3から抽気された抽気蒸気が、低圧給水加熱器8及び高圧給水加熱器9にそれぞれ供給され、給水を加熱する。

給水として炉心に持ち込まれた水は、核燃料物質の核分裂に伴って発生する放射線の照射を受けて放射線分解され、過酸化水素及び酸素などの酸化性化学種を生成する。この酸化性化学種によって、炉水と接触する、BWRプラントの構造部材(例えば、再循環系配管22)の腐食電位が上昇する。構造部材の腐食電位の増大は、この構造部材の応力腐食割れの要因となる。このため、応力腐食割れに対する環境緩和対策として、水素が、水素注入装置28から給水配管12内を流れる給水に注入され、RPV12内の炉水に注入される。この注入された水素を炉水中の酸化性化学種(例えば、溶存酸素)と反応させることにより、炉水中の酸化性化学種の濃度を低減させて構造部材の腐食電位を低下させることが行われている。炉水に水素を注入しながら行うBWRプラントの運転を水素注入水質運転(HWC:Hydrogen Water Chemistry)と呼び、その水素注入を行わないBWRプラントの運転を通常水質運転(NWC:NOrmal Water Chemistry)と呼んでいる。

再循環系配管22内を流れる冷却水の一部は、浄化系ポンプ24の駆動によって原子炉浄化系の浄化系配管20内に流入し、再生熱交換器25及び非再生熱交換器26で冷却された後、炉水浄化装置27で浄化される。浄化された冷却水は、再生熱交換器25で加熱されて浄化系配管20及び給水配管10を経てRPV12内に戻される。

BWRプラントは、1つの運転サイクルでの運転が終了した後に停止される。この運転停止後に、炉心13に装荷されている燃料集合体の一部が使用済燃料集合体として取り出され、燃焼度0GWd/tの新しい燃料集合体が炉心13に装荷される。この燃料交換が終了した後、BWRプラントが再度起動される。燃料交換のためにBWRプラントが停止されている期間を利用して、BWRプラントの保守点検が行われる。

BWRプラントの保守点検の期間中において、RPV12に接続された配管系(例えば、再循環系配管22及び浄化系配管20等)の、炉水と接触するする内面への白金の付着処理が行われる。この白金の付着処理には、仮設の設備である貴金属供給装置30が用いられる。貴金属供給装置30の循環配管35の両端部が、BWRプラントの運転が停止された後、貴金属付着対象物である、例えば、再循環系配管22に接続される。再循環系配管22はBWRプラントの構造部材の一つである。貴金属供給装置30は、再循環系配管22の内面への貴金属(例えば、白金)の付着処理が終了した後でBWRプラントの運転開始前に再循環系配管22から取り外される。貴金属供給装置30は、BWRプラントの運転が停止されている期間において、BWRプラントの運転中において構造部材の表面に形成された放射性核種を含む酸化皮膜の溶解除去、還元除染液に含まれる還元除染剤の分解、化学除染後の構造部材の表面への貴金属の付着、及び貴金属付着の際に還元除染液に添加した薬剤(還元剤及び錯イオン形成剤)の除去の各処理に用いられる。

本実施例では、貴金属付着対象物として再循環系配管22を選択したが、給水系、冷却材浄化系、及び補機冷却水系の各配管を貴金属付着対象物にする場合には、該当する貴金属付着対象物の配管系に循環配管35を接続する。

貴金属供給装置30の詳細な構成を、図3を用いて説明する。貴金属供給装置30は、サージタンク31、循環ポンプ33,29、加熱器56、循環配管35、エゼクタ37、貴金属イオン注入装置39、還元剤注入装置44、錯イオン形成剤注入装置49、酸化剤供給装置54、カチオン交換樹脂塔66、混床樹脂塔69及び分解装置77を備えている。

開閉弁59、循環ポンプ29、弁60,61及び62、サージタンク31、循環ポンプ33、弁34及び開閉弁36が、上流よりこの順に循環配管35に設けられている。弁60をバイパスする配管65が循環配管35に接続され、冷却器63及び弁64が配管65に設置される。両端が循環配管35に接続されて弁61をバイパスする配管68に、カチオン交換樹脂塔66及び弁67及び79が設置される。両端が配管68に接続されてカチオン交換樹脂塔66及び弁67をバイパスする配管71に、混床樹脂塔69及び弁70が設置される。配管71の一端部は、弁67と弁79の間で配管68に接続される。カチオン交換樹脂塔66は陽イオン交換樹脂が堆積された公知の陽イオン交換樹脂層(図示せず)を内部に有しており、混床樹脂塔69は陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が混合して堆積された公知のイオン交換樹脂層(図示せず)を内部に有している。

弁72及び74及び分解装置77が設置される配管73の一端が、配管68の、弁79より下流側の一端と循環配管35との接続点と弁62との間で循環配管35に接続される。配管73の他端がサージタンク31に接続される。弁72が分解装置77の下流に、弁74が分解装置77の上流にそれぞれ配置される。分解装置77は、内部に、例えば、ルテニウムを活性炭の表面に添着した活性炭触媒を充填している。弁81を設けた配管78の一端部が弁67と弁79の間で配管68に接続され、配管78の他端部が弁74と分解装置77の間で配管73に接続される。サージタンク31が弁62と循環ポンプ33の間で循環配管35に設置される。加熱器32がサージタンク31に取り付けられてサージタンク31内に配置される。弁38及びエゼクタ37が設けられる配管19が、弁34と循環ポンプ33の間で循環配管35に接続され、さらに、サージタンク31に接続されている。再循環系配管22の内面の汚染物を酸化溶解するために用いる過マンガン酸カリウム(酸化除染剤)、さらには再循環系配管22の内面の汚染物を還元溶解するために用いるシュウ酸(還元除染剤)をサージタンク31内に供給するためのホッパ(図示せず)がエゼクタ37に設けられている。

貴金属イオン注入装置39が、薬液タンク40、注入ポンプ41及び注入配管43を有する。薬液タンク40は、注入ポンプ41及び弁42を有する注入配管43によって循環配管35に接続される。白金錯体を水に溶解して調製した白金イオンを含む薬剤(第1薬剤)が、薬液タンク40内に充填されている。白金錯体としては、例えば、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム水和物(Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を用いる。

還元剤注入装置44が、薬液タンク45、注入ポンプ46及び注入配管48を有する。薬液タンク45は、注入ポンプ46及び弁47を有する注入配管48によって循環配管35に接続される。還元剤であるヒドラジンが薬液タンク45内に充填される。

錯イオン形成剤注入装置49が、薬液タンク50、注入ポンプ51及び注入配管53を有する。薬液タンク50は、注入ポンプ51及び弁52を有する注入配管53によって循環配管35に接続される。錯イオン形成剤であるアンモニア水が薬液タンク50内に充填される。

酸化剤供給装置54が、薬液タンク55、供給ポンプ56及び供給配管58を有する。薬液タンク55は、供給ポンプ56及び弁57を有する供給配管58によって分解装置77より上流で配管73に接続される。酸化剤である過酸化水素が薬液タンク55内に充填される。酸化剤としては、オゾン、または酸素を溶解した水を用いてもよい。

pH計75が、注入配管48と循環配管35の接続点と開閉弁36の間で循環配管35に取り付けられる。導電率計18が、注入配管53と循環配管35の接続点と弁34の間で循環配管35に取り付けられる。

弁80を設けた配管76の両端部が、pH計75と開閉弁36の間に存在する循環配管35、及び開閉弁59と循環ポンプ29の間に存在する循環配管35にそれぞれ接続される。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法及び廃液処理方法を、図1を用いて詳細に説明する。本実施例では、貴金属の一種である白金がステンレス鋼製の再循環系配管22の内面に付着される。この白金付着は、化学除染の還元除染の終了後における還元剤の分解工程の途中で行われる。本実施例で行われる化学除染は、再循環系配管22を対象に行われるため、酸化除染液による酸化除染工程及び酸化除染剤分解工程を含んでおり、これらの工程以外に、還元除染液による還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程を含んでいる。貴金属供給装置30を用いて行われる図1に示す手順は、白金の、その構造部材の表面(再循環系配管22の内面)への付着工程だけでなく、その構造部材の表面の化学除染、白金の付着に用いた処理液に含まれる還元剤(例えば、ヒドラジン)の分解、及び錯イオン形成剤の除去の各工程を含んでいる。

まず、貴金属供給装置を貴金属付着対象物の配管系に接続する(ステップS1)。BWRプラントの運転が停止されているときに、例えば、再循環系配管22に接続されている浄化系配管20に設置されている弁23のボンネットを開放して浄化系ポンプ24側を封鎖する。循環配管35の一端が弁23のフランジに接続される。これにより、循環配管35の一端が再循環系ポンプ21の上流で再循環系配管22に接続される。他方、再循環ポンプ21の下流側で再循環系配管22に接続されたドレン配管または計装配管などの枝管を切り離し、その切り離された枝管に、循環配管35の他端を接続する。循環配管35の両端が再循環系配管22に接続され、再循環系配管22及び循環配管35を含む閉ループが形成される。再循環系配管22の両端部におけるRPV12内での各開口部は、後述する酸化除染液、還元除染液、及び白金イオン、ヒドラジン及びシュウ酸を含む水溶液がRPV12内に流入しないように、プラグ(図示せず)でそれぞれ封鎖される。

貴金属付着対象物に対して化学除染における酸化除染及び還元除染を実施する(ステップS2)。運転を経験したBWRプラントでは、RPV12内の炉水と接触する、配管系の内面に、放射性核種を含む酸化皮膜が形成されている。このため、白金をその配管系の内面に付着させる前に、放射性核種を除去することが好ましい。皮膜形成対象物の配管系への白金の付着は、その配管系内面の放射性核種の付着抑制及び応力腐食割れ抑制を目的とするものであるが、事前にその酸化皮膜を除去することは、形成される白金付着物が放射性核種を取り込んだ酸化皮膜を覆うことを防ぎ、配管系の線量を低減させることになる。本実施例では、配管系の内面に形成された、放射性核種を取り込んだ酸化皮膜の除去が、化学除染により行われる。

ステップS2以降で適用する化学除染は、公知の方法(特開2000−105295号公報参照)である。化学除染等に用いられる水が、サージタンク31に充填されている。弁36,34,62,61,60及び59をそれぞれ開き、他の弁を閉じた状態で、循環ポンプ29及び33を駆動する。サージタンク31内で加熱器32により加熱された水が、循環配管35及び再循環系配管22によって形成される閉ループ内を循環する。循環する水の温度は、加熱器32により90℃に調節される。必要量の過マンガン酸カリウムは、エゼクタ37を通して水が流れる配管19内に供給され、サージタンク31に導かれ、過マンガン酸カリウム水溶液(酸化除染液)を生成する。この酸化除染液は、サージタンク31から循環配管35を経て再循環系配管22内に供給され、再循環系配管22の内面に形成されている酸化皮膜などの汚染物(放射性核種を含む)を溶解する(酸化除染工程)。

酸化除染が終了した後、エゼクタ37から配管19内に供給されるシュウ酸をサージタンク31内に注入する。このシュウ酸によって酸化除染液に含まれている過マンガン酸カリウムが分解される(酸化除染剤分解工程)。その後、シュウ酸の供給によりサージタンク31内で生成されてヒドラジン(pH調整剤)によりpHが調整されたシュウ酸水溶液(還元除染液)が、循環配管35から再循環系配管22内に供給され、再循環系配管22の内面に付着している腐食生成物(放射性核種を含む)の還元溶解を行う(還元除染工程)。薬液タンク45内のヒドラジンは、還元剤注入装置44において弁47を開き、注入ポンプ46を駆動することにより、注入配管48を通して循環配管35内に注入される。pH計75で測定されたシュウ酸水溶液のpH値に基づいて注入ポンプ46(または弁47の開度)を制御してヒドラジン注入量を調節することにより、再循環系配管22に供給されるシュウ酸水溶液のpHが2.5に調節される。本実施例では、再循環系配管22の内面に白金を付着させるときに用いられる還元剤であるヒドラジンが、還元除染工程でシュウ酸水溶液のpH調整剤として利用される。再循環系配管22に供給されるシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が2000ppmであり、シュウ酸水溶液のpHは2.5である。再循環系配管22の内面に付着している、放射性核種を含む腐食生成物が、そのシュウ酸水溶液に含まれたシュウ酸によって溶解され除去される。本実施例ではpH調整剤としてヒドラジンを用いたが、代わりにホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミド及びカルボヒドラジド等のヒドラジン誘導体を用いてもよい。

放射性核種及び腐食生成物が溶解しているシュウ酸水溶液が、再循環系配管22から循環配管35に排出される。弁67及び79を開いて弁61の開度を調節することにより、循環配管35に排出されたシュウ酸水溶液の一部が、配管68を通して、カチオン交換樹脂塔66に導かれる。シュウ酸水溶液に含まれる放射性核種の金属陽イオン等の金属陽イオンは、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層の各陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。シュウ酸水溶液に含まれるpH調整剤のヒドラジンも、その陽イオン交換樹脂に吸着されて除去されるが、シュウ酸溶液のpHを2.5に維持するように薬液タンク45からのヒドラジンの注入を継続するので、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層の各陽イオン交換樹脂はやがて吸着されたヒドラジンで飽和してしまう。この状態では薬液タンク45から循環配管35へのヒドラジンの注入は不要になるので、注入ポンプ46の駆動を停止し、バルブ47を閉じる。ヒドラジンで飽和した、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂への吸着性の違いから、ヒドラジンよりも吸着し易い金属陽イオンを吸着してシュウ酸水溶液から除去することができる。カチオン交換樹脂塔66から排出されたシュウ酸水溶液及び弁61を通過したシュウ酸水溶液は、循環配管35から再循環系配管22内に再び供給される。このように、シュウ酸水溶液は、循環配管35及び再循環系配管22を含む閉ループ内を循環しながら、再循環系配管22の内面の還元除染を行う。pH調整剤としてヒドラジン誘導体を用いた場合には、還元除染工程において、ヒドラジン誘導体は、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層の各陽イオン交換樹脂に吸着される。このため、各陽イオン交換樹脂は、吸着されたヒドラジン誘導体で飽和する。

還元除染剤及びpH調整剤が分解される(ステップS3)。ステップS2における還元除染が終了した後、ステップS3の工程が以下のように実施される。弁81及び72を開いて弁79を閉じる。カチオン交換樹脂塔66から排出されたシュウ酸水溶液が、配管78を通して分解装置77に供給される。弁57を開いて供給ポンプ56を駆動することにより、薬液タンク55内の過酸化水素が、配管58及び73を通って分解装置77に供給される。分解装置77に供給されたシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンは、分解装置77に供給された過酸化水素、及び分解装置77内の活性炭触媒の作用によって分解される。分解装置77内におけるシュウ酸及びヒドラジンの分解は、シュウ酸水溶液を再循環系配管22及び循環配管35により形成される閉ループ内を循環させながら行われる。過酸化水素によるシュウ酸及びヒドラジンの活性炭触媒上での分解反応は、式(7)及び式(8)で表される。

(COOH)2+H2O2 → 2CO2+2H2O ……(7) N2H4+2H2O2 → N2+4H2O ……(8) シュウ酸水溶液のpHが4.5以上であるかを判定する(ステップS4)。シュウ酸水溶液のpHがpH計75で測定される。pH計75で測定されたpHが4.5未満であるとき、ステップS4の判定が「No」になり、ステップS3の工程におけるシュウ酸及びヒドラジンの分解が継続される。

ステップS3における、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解により、シュウ酸水溶液のpHは徐々に大きくなる。pH計75で測定したシュウ酸水溶液のpHが、例えば、約4.5になったとき、供給ポンプ56を停止して弁57を全閉し、分解装置77への過酸化水素の供給を停止する。さらに、弁61を全開にし、弁67,72及び81を全閉にする。これにより、分解装置77における、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解が停止され、ステップS3の工程が終了する。ステップS3の工程は、シュウ酸に含まれるシュウ酸の一部を分解する工程である。ヒドラジンは分解され易いので、ステップS3の工程におけるシュウ酸の分解によりpHが4.5になったシュウ酸水溶液は、ヒドラジンを含んでいない。なお、pH4.5のシュウ酸水溶液は、シュウ酸濃度が約20ppmであり、ヒドラジンが存在していない。

還元除染工程において、pH調整剤として、ヒドラジンの代わりに、ホルムヒドラジン、ヒドラジンカルボアミドまたはカルボヒドラジドのヒドラジン誘導体をシュウ酸水溶液に注入した場合には、ステップS3の工程の実施によりシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が約20ppmになったとき、ヒドラジン誘導体は分解されて消失している。

シュウ酸の一部の分解が終了したとき、例えば、シュウ酸濃度が約20ppmになったとき、シュウ酸水溶液は、シュウ酸、及びシュウ酸によって溶解された酸化被膜成分であるFe(III)イオン及びCr(III)イオンを含んでいる。シュウ酸濃度が約20ppmであるシュウ酸水溶液は、Fe(III)イオン及びCr(III)イオンを2ppm含んでいる。BWRプラントの構造部材の表面に白金を付着させるために、シュウ酸濃度が約20ppmであるシュウ酸水溶液に白金イオン及び還元剤であるヒドラジンを注入すると、ヒドラジン(還元剤)の注入によるシュウ酸水溶液のpHの上昇の度合いによっては、Fe(III)イオンが水酸化鉄やマグネタイトを形成してその水溶液中に析出する可能性がある。水酸化鉄やマグネタイトが析出した場合には、析出した水酸化鉄やマグネタイトに注入した白金イオンが白金として付着してしまうために、還元除染された構造物表面への白金の付着量が減少することが、前述したように、従業員らの検討により分かった。そこで、還元除染された構造部材表面への白金付着量の減少を抑制するために、発明者らも、Fe(III)イオンと錯イオンを形成する錯イオン形成剤、例えば、アンモニアを、後述するように、シュウ酸濃度が約20ppmであるシュウ酸水溶液に添加することにした。

錯イオン形成剤を注入する(ステップS5)。シュウ酸の一部の分解により、シュウ酸水溶液のpHが約4.5になったとき、錯イオン形成剤注入装置49から循環配管35内に錯イオン形成剤であるアンモニアを含むアンモニア水が注入される。弁52を開いて注入ポンプ51を駆動すると、薬液タンク50内のアンモニア水が、注入配管53を通して循環配管35内に注入される。アンモニア水の注入前に、注入されたアンモニアがカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂で除去されるのを防ぐために、弁61が全開にされて弁67及び弁70が全閉にされている。シュウ酸濃度が約20ppmのシュウ酸水溶液では、このシュウ酸水溶液のアンモニアの濃度が約20ppmになるように、アンモニア水が循環配管35内に注入される。シュウ酸水溶液のアンモニア濃度は、このシュウ酸水溶液のFe(III)イオンの濃度よりも高くする必要がある。しかし、アンモニア濃度があまり高いと、廃液処理に要する時間が長くなるので、例えば、シュウ酸溶液のFe(III)イオンの濃度が2ppmであるときには、シュウ酸水溶液のアンモニア濃度が20ppmになるように、アンモニアが注入される。

ステップS4におけるアンモニアの注入は、例えば、以下のように行う。予め、注入開始直後の循環配管35の注入点でのアンモニア濃度が設定濃度になるように、アンモニア水の循環配管35への注入速度を計算し、さらに、循環配管35内を流れるシュウ酸水溶液内のアンモニアを設定濃度にするのに必要な、薬液タンク50に充填するアンモニア水の量を計算し、計算されたアンモニア水の量を薬液タンク50に充填する。計算されたアンモニア水の注入速度に合わせて注入ポンプ51の回転速度を制御し、薬液タンク50内のアンモニア水がなくなったときに、注入ポンプ51を停止し、薬液タンク50から循環配管35へのアンモニア水の注入を停止する。

この結果、Fe(III)イオン及びアンモニアが、循環配管35内を流れるシュウ酸水溶液内に共存することになる。式(4)、式(5)及び式(6)のそれぞれの反応により、その水溶液内でFe(III)イオンのアンモニア錯イオンが形成され、Fe(III)イオンの溶解度が増加する。このため、シュウ酸水溶液へのヒドラジンの注入により、その水溶液のpH上昇による水酸化鉄及びマグネタイトの析出が抑制される。

貴金属イオンを含む薬剤を注入する(ステップS6)。弁42を開いて注入ポンプ41を駆動する。薬液タンク40内の貴金属である白金イオンを含む薬剤の水溶液、すなわち、ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム水和物(Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液(白金イオンを含む水溶液)が注入配管43を通って循環配管35内を流れているアンモニアを含むシュウ酸水溶液に注入される。Na2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液内では、白金はイオン状態になっている。白金イオンを含む薬剤の注入によって生成された、白金イオン及びシュウ酸を含む水溶液が、循環配管35から再循環系配管22内に供給され、再循環系配管22から循環配管35に戻され、循環配管35及び再循環系配管22で形成される閉ループ内を循環する。

Na2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液は、注入されたアンモニアを含んだシュウ酸水溶液が、再循環系配管22内に流入して循環配管35内に排出され、アンモニア水の注入点である注入配管53と循環配管35の接続点に到達した以降であれば、アンモニア水の注入終了前でも循環配管35に注入しても良い。白金イオンの注入は、アンモニアの注入と同様に行われる。予め、注入開始直後の循環配管35の注入点での白金イオン濃度が設定濃度、例えば、1ppmとなるように、Na2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の循環配管35への注入速度を計算し、さらに、循環配管35内を流れるシュウ酸水溶液内の白金イオンを設定濃度にするのに必要な、薬液タンク40に充填するNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の量を計算し、計算されたNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の量を薬液タンク40に充填する。計算されたNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の注入速度に合わせて注入ポンプ41の回転速度を制御し、薬液タンク40内のNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液を循環配管35に注入する。

錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元除染剤を含み、還元剤を含まない水溶液を、所定時間の間、配管系に供給する(ステップS7)。白金イオンを含む水溶液であるNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の、循環配管35への注入を開始した後、5分から1時時間の範囲内の時間、例えば、30分が経過するまで、薬剤タンク45から還元剤であるヒドラジンを循環配管35に注入せず、アンモニア及び白金イオンを含み、還元剤であるヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液を、貴金属付着対象物である再循環系配管22に供給する。このため、再循環系配管22の、循環配管35から供給されるそのシュウ酸水溶液を受け入れる流入口と、この部分の下流に位置し、再循環系配管22の、循環配管35へのそのシュウ酸水溶液の排出口の間の、再循環系配管22の全内面は、アンモニア、白金イオン及び後述のステップS8で注入されるヒドラジン(還元剤)を含む、90℃のシュウ酸水溶液に接触する前に、アンモニア及び白金イオンを含み、ヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液に接触される。

還元剤を注入する(ステップS8)。Na2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液を、循環配管35内を流れるアンモニアを含むシュウ酸水溶液に注入して30分が経過したとき、還元剤であるヒドラジンを循環配管35に注入する。原子力プラントの配管系の内面への貴金属の付着時において、配管系に供給する錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を含む水溶液を形成するために使用されるヒドラジンは、還元剤である。

還元剤であるヒドラジンの、還元剤注入装置44からの注入は、以下のように行われる。弁47を開いて注入ポンプ46を駆動する。薬液タンク45内の還元剤であるヒドラジンが注入配管48を通って循環配管35内を流れている白金イオン及びアンモニアを含んでいるシュウ酸水溶液に注入される。このようなヒドラジンの注入は、アンモニア水の注入と同様に行われる。予め、注入開始直後の循環配管35の注入点でのヒドラジン濃度が設定濃度、例えば、100ppmとなるように、薬剤タンク45内のヒドラジン水溶液の循環配管35への注入速度を計算し、さらに、循環配管35内を流れる白金イオン及びアンモニアを含むシュウ酸水溶液内のヒドラジンを設定濃度にするのに必要な、薬液タンク45に充填するヒドラジン水溶液の量を計算し、計算されたヒドラジン水溶液の量を薬液タンク45に充填する。計算されたヒドラジン水溶液の注入速度に合わせて注入ポンプ46の回転速度を制御し、薬液タンク45内のヒドラジン水溶液を循環配管35に注入する。

アンモニア、白金イオン及びヒドラジンを含む90℃のシュウ酸水溶液が、再循環系配管22に供給される。アンモニア、白金イオン及びヒドラジンを含む90℃のシュウ酸水溶液は、30分の時間遅れをもって、20ppmのアンモニア及び1ppmの白金イオンを含み、ヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液と既に接触した、再循環系配管22の内面に接触しながら、再循環系配管22の、循環配管35へのそのシュウ酸水溶液の排出口に向かって流れる。アンモニア及び白金イオンを含み、ヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液が、30分間先行して再循環系配管22の内面に接触することにより、既に、白金イオンが、再循環系配管22の、還元除染が終了した内面に吸着されている。このため、アンモニア、白金イオン及びヒドラジンを含む90℃のシュウ酸水溶液が、30分遅れで、再循環系配管22の内面と接触し、この水溶液に含まれるヒドラジンとこの内面に吸着された白金イオンの還元反応が生じる(下記の式(9)参照)。この還元反応により、再循環系配管22の内面に吸着された白金イオンが、還元され、白金粒子になって効率良くその内面に付着される。

白金イオンの循環配管35への注入からヒドラジンの循環配管35への注入までの時間は、貴金属イオン注入装置39の注入配管43と循環配管35の接続点から、再循環系配管22の前述の流入口を経て再循環系配管22の前述の排出口までの循環配管35の容積及び再循環系配管22の容積の合計を、循環配管35から再循環系配管22に供給するシュウ酸水溶液の流量で割って得られる時間(30分)にすることが望ましい。

また、アンモニアを含みヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液に白金イオンを注入した時点から5分後にヒドラジンを循環配管35内のアンモニア及び白金イオンを含みヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液に注入した場合においても、このシュウ酸水溶液の白金イオンの濃度が1ppmであるため、アンモニア及び白金イオンを含みヒドラジンを含まない90℃のシュウ酸水溶液が先行して再循環系配管22内を流れることにより、再循環系配管22の前述の流入口を経て再循環系配管22の前述の排出口までの、再循環系配管22の内面全体に亘って、白金イオンが吸着される。吸着された白金イオンは、前述したように、注入されたヒドラジンの作用により白金に還元される。

ヒドラジンによる白金イオンの還元反応は、式(9)のように表される。

Pt4++4OH-+2N2H4 → Pt+4NH2OH ……(9) シュウ酸水溶液に注入した白金イオンを有効に使用するため、注入するヒドラジンの量は、式(9)の当量よりも多くする必要がある。一方で、過剰なヒドラジンの注入は、後の還元剤の分解処理で負担となるので、ヒドラジンの循環するシュウ酸水溶液への注入量は多くても式(9)の当量の5000倍以下にすることが好ましい。

白金イオン、アンモニア、ヒドラジン(還元剤)及び20ppmのシュウ酸を含む90℃のシュウ酸水溶液が、循環配管35から再循環系配管22に供給される。アンモニアの作用によってシュウ酸水溶液中の鉄イオンが水酸化鉄及びマグネタイトとして析出しなく、再循環系配管22の内面に吸着された白金イオンが、式(9)の還元反応で白金となって再循環系配管22の内面に付着する。

貴金属イオンを含む薬剤及び還元剤の注入を停止する(ステップS9)。貴金属イオン注入装置39から循環配管35へのNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の注入により、薬液タンク40内のNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液がなくなったとき、注入ポンプ41を停止して弁42を閉じ、薬液タンク40から循環配管35へのNa2[Pt(OH)6]・nH2Oを含む水溶液の注入を停止する。還元剤注入装置44から循環配管35への還元剤であるヒドラジンの注入により、薬液タンク45内のヒドラジン水溶液がなくなったとき、注入ポンプ46を停止して弁47を閉じ、薬液タンク45から循環配管35へのヒドラジン水溶液の注入を停止する。

還元剤であるヒドラジンの水溶液への注入が停止された後においても、所定時間の間、例えば4時間程度、白金イオン、アンモニア、ヒドラジン(還元剤)及び20ppmのシュウ酸を含む90℃のシュウ酸水溶液を、循環配管35及び再循環系配管22で形成された閉ループで循環させる。この循環によって、シュウ酸水溶液に含まれる白金イオンが、前述したように、式(9)に示される反応により白金として析出し、この白金が再循環系配管22の内面に付着する。

錯イオン形成剤の除去及び還元除染剤及び還元剤の分解を実施する(ステップS10)。還元剤の注入が停止されて前述の所定時間(例えば、4時間)が経過した後、還元除染剤の分解工程が再開される。弁67,81及び72を開いて弁61の開度を調整して循環配管35内を流れるアンモニア(錯イオン形成剤)、白金イオン、ヒドラジン(還元剤)及びシュウ酸を含む水溶液の一部を、カチオン交換樹脂塔66に通水する。この水溶液に含まれる白金イオン、アンモニア及び不純物として存在する鉄イオン及び鉄アンミン錯体などの陽イオン成分が、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。ステップS6において薬液タンク40から循環配管35に注入される白金イオンを含む水溶液(ヘキサヒドロキソ白金酸ナトリウム水和物(Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液)に含まれるナトリウムイオンも、その陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。陽イオン交換樹脂は還元除染の際にヒドラジン(pH調整剤)で飽和しているため、アンモニア等の陽イオン成分の吸着によるイオン交換によりそのヒドラジン(pH調整剤)が、陽イオン交換樹脂からその水溶液中に放出され、カチオン交換樹脂塔66から排出される。カチオン交換樹脂塔66に供給されるシュウ酸水溶液にはアンモニアが含まれるため、このシュウ酸水溶液に含まれるヒドラジン(還元剤)は、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層を通過してカチオン交換樹脂塔66から排出される。カチオン交換樹脂塔66から排出された、シュウ酸、pH調整剤であるヒドラジン及び還元剤であるヒドラジンを含む水溶液は、配管78を通して分解装置77に供給される。このとき、弁57を開いて注入ポンプ56を駆動し、薬液タンク55内の過酸化水素(酸化剤)を分解装置77に注入する。これにより、カチオン交換樹脂塔66から排出されたそのシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸、ヒドラジン(pH調整剤)及びヒドラジン(還元剤)が分解装置77内で、過酸化水素、及び分解装置77内に充填された、ルテニウムを担持した活性炭触媒の作用によって分解される。ステップS3において分解されずにシュウ酸水溶液中に残っていたシュウ酸が、ステップS10において、分解装置77内で分解される。このシュウ酸(還元除染剤)の分解、及びヒドラジン(pH調整剤)及びヒドラジン(還元剤)の分解は、カチオン交換樹脂塔66へのシュウ酸水溶液の供給、及びカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層における陽イオン交換樹脂によるアンモニアの除去と並行して行われる。

分解装置77から排出された水溶液が配管73によりサージタンク31に供給され、循環配管35及び再循環系配管22を含む閉ループを循環する。閉ループを循環する水溶液の導電率が導電率計18で測定される。測定された水溶液の導電率が設定導電率に低下したとき、循環する水溶液中のシュウ酸濃度及びアンモニア濃度がそれぞれ10ppmに低下し、還元除染剤であるシュウ酸の分解工程が終了する。このとき、アンモニアの、ヒドラジンで飽和した陽イオン交換樹脂による除去、及びシュウ酸及びヒドラジン(還元剤)の分解も終了する。なお、ヒドラジンは全て分解されている。弁61が全開にされて供給ポンプ56が停止され、弁67,81,72及び57が全閉にされる。

ステップS5の工程で、錯イオン形成剤として、アンモニアの代わりにアミン化合物または尿素を用い、アミン化合物または尿素をシュウ酸水溶液に注入したとき、ステップS10の工程では、錯イオン形成剤であるアミン化合物または尿素、白金イオン、ヒドラジン(還元剤)及びシュウ酸を含む水溶液の一部が、カチオン交換樹脂塔66に供給される。このため、アミン化合物または尿素が、還元除染工程においてヒドラジン(pH調整剤)の吸着によりヒドラジン(pH調整剤)で飽和している、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂層の各陽イオン交換樹脂に吸着されてシュウ酸水溶液から除去される。陽イオン交換樹脂によるアミン化合物または尿素の吸着により、吸着されていたヒドラジン(pH調整剤)が各陽イオン交換樹脂からシュウ酸水溶液に放出される。

pH調整剤としてヒドラジン誘導体を用いた場合には、前述のように、還元除染工程において、カチオン交換樹脂塔66内の各陽イオン交換樹脂は吸着されたヒドラジン誘導体で飽和している。ステップS10の工程において、錯イオン形成剤であるアンモニア、アミン化合物または尿素、白金イオン、ヒドラジン(還元剤)及びシュウ酸を含む水溶液の一部が、カチオン交換樹脂塔66に供給され、アンモニア、アミン化合物または尿素が、ヒドラジン誘導体で飽和している、カチオン交換樹脂塔66内の各陽イオン交換樹脂に吸着される。このため、吸着されていたヒドラジン誘導体が、各陽イオン交換樹脂からシュウ酸水溶液に放出される。放出されたヒドラジン誘導体は分解装置77内で分解される。

ステップS8の工程において、ヒドラジン(還元剤)の代わりに還元剤としてヒドラジン誘導体またはヒドロキシルアミンをシュウ酸水溶液に注入したとき、シュウ酸水溶液に含まれる、還元剤であるヒドラジン誘導体またはヒドロキシルアミンは、ステップS10の工程において分解装置77内で、ヒドラジン(還元剤)と同様に、分解される。ステップS10の工程が終了したとき、還元剤であるヒドラジン誘導体またはヒドロキシルアミンは全て分解されている。

還元除染剤の分解が終了した後、水溶液の浄化を実施する(ステップS11)。ステップS10の工程が終了した後、加熱器32による、アンモニアが除去されてシュウ酸及びヒドラジン(還元剤)が分解された水溶液の加熱が停止される。弁64を開いて弁60を全閉にし、この水溶液が、例えば、60℃になるまで、冷却器63によって冷却される。水溶液が60℃になったとき、弁70及び79を開く。60℃の水溶液が、混床樹脂塔69に供給される。その水溶液に残留している金属イオン成分、還元除染剤成分、錯イオン形成剤、還元剤及び水溶液中に析出した白金粒子が混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に捕集されて水溶液から除去される。ステップS10の工程が終了した時点でその水溶液に含まれている他の不純物、すなわち、放射性核種を含む金属陽イオン、及び陰イオンが混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂で除去される。

廃液を処理する(ステップS12)。ステップS11の工程(浄化工程)終了後に循環配管35及び再循環系配管22内に存在する水溶液は、放射性廃液である。浄化工程終了後に、ポンプ(図示せず)を有する高圧ホース(図示せず)により循環配管35と廃液処理装置(図示せず)を接続する。その水溶液は高圧ホースに設けられたポンプを駆動して循環配管35から高圧ホースを通して原子力プラントに設置されている廃液処理装置(図示せず)に排出され、廃液処理装置で処理される。循環配管35及び再循環系配管22内の全ての水溶液が、廃液処理装置に排出される。

その後、開閉弁36及び59を閉じて弁80を開いて、循環配管35及び配管76内に水を充填し、循環ポンプ29及び33を駆動する。その水が、循環配管35及び配管81で形成される閉ループ内を循環し、循環配管35等の内面を洗浄する。洗浄終了後、循環配管35及び配管81内の水は、廃液であるため、循環配管35から前述の廃液処理装置に排出され、廃液処理装置で処理される。これにより、ステップS12の工程が終了し、本実施例における再循環系配管22に適用された、原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法が終了する。

酸化除染工程、酸化除染剤分解工程、還元除染工程、還元除染剤分解工程及び浄化工程が複数回、例えば、2〜3回繰り返される場合には、ステップS5〜S10の各ステップは最後の還元除染剤分解工程で行われる。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の全工程が終了した後、循環配管35と廃液処理装置を接続している高圧ホースを取り外し、循環配管35の両端部が再循環系配管22から取り外される。再循環系配管22及び浄化系配管20が循環配管35の接続前の状態に復旧され、その後、BWRプラントの運転が開始される。

本実施例では、ステップS5〜S10の各工程は、ステップS3の工程(還元除染剤の一部分解)とステップS11の工程(浄化工程)の間の期間(第1期間)で実施される。

本実施例によれば、還元剤であるヒドラジンの注入を停止してから所定時間、例えば、4時間が経過した後、白金イオン、アンモニア、ヒドラジン(還元剤)及び20ppmのシュウ酸を含むシュウ酸水溶液を、還元除染工程においてヒドラジンで飽和した陽イオン交換樹脂が充填されているカチオン交換樹脂塔66に供給するので、その水溶液に含まれる白金イオン及びアンモニアは、カチオン交換樹脂塔66内の、ヒドラジンで飽和した陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。これらのイオンの吸着によりその陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンは、分解装置77内で前述したように分解される。このように、本実施例では、カチオン交換樹脂塔66に供給される前のシュウ酸水溶液に含まれていたアンモニアはカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着されて除去され、アンモニアの吸着によってその陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンは分解装置77内で分解される。

この結果、分解装置77からサージタンク31に供給されるシュウ酸水溶液の、アンモニア、白金イオン、ヒドラジン及びシュウ酸のそれぞれの濃度は減少する。そのシュウ酸水溶液を循環配管35及び再循環系配管22により形成される閉ループ内を循環させることによって、その水溶液中のシュウ酸濃度が低下するとともに、アンモニア及び白金イオンがその水溶液から除去され、陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンもその水溶液から除去される。

陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンを含んでカチオン交換樹脂塔66から排出されたシュウ酸水溶液は、配管78を通って分解装置77に供給される。このため、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンを、分解装置77内で確実に分解することができる。

その水溶液に含まれるアンモニアは、ステップS2の還元除染工程においてヒドラジンで飽和された、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂で除去できるため、アンモニアを除去する新たな陽イオン交換樹脂が不要になる。すなわち、本実施例では、アンモニアの除去のために、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂の充填量を増加する必要がない。このため、本実施例では、放射性廃棄物となる陽イオン交換樹脂の使用量を削減でき、結果として放射性廃棄物の発生量を低減できる。アンモニアの吸着によりカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンは、分解装置77で分解され、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂の負荷にはならない。

また、アンモニアを混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂に吸着させて除去することも考えられる。しかしながら、混床樹脂塔69内には、スッテップS11の浄化工程においてその水溶液に残留する金属イオン成分、還元除染剤成分、錯イオン形成剤、還元剤及びその水溶液中に析出した白金粒子を除去するのに必要な量の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が充填されている。その水溶液に含まれるアンモニアを混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂で除去する場合には、混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂の量を増加する必要があり、前述したように、放射性廃棄物の発生量の増加につながる。しかしながら、本実施例では、前述したように、その水溶液に含まれるアンモニアはカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂で除去し、アンモニアの除去により陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジンが分解装置77で分解されるので、放射性廃棄物の発生量を低減できる。

アンモニアを混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂で除去する場合には、その陽イオン交換樹脂への負荷を減らすため、その水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジンを分解装置77で分解した後にアンモニアを混床樹脂塔69内で処理する必要がある。その後、高濃度のアンモニアを混床樹脂塔69内で処理する必要が有り、水溶液中のアンモニアの濃度が下がるまでに時間がかかる。しかし、本実施例のように、アンモニアを、ヒドラジンで飽和された、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂で除去し、アンモニア濃度が低下した状態の水溶液を分解装置77に供給してシュウ酸及びヒドラジンを分解する場合には、アンモニアの除去及びヒドラジンの分解をシュウ酸の分解工程で実施できるので水溶液中のアンモニア、シュウ酸及びヒドラジンのそれぞれの濃度を下げるのに要する時間を短縮することができる。

また、本実施例では、BWRプラントの運転が停止されている期間において、貴金属供給装置30を用いて再循環系配管22の、白金を付着させる内面への化学除染を実施し、この還元除染における還元除染工程が終了した後に実施される還元除染剤の分解工程において、還元除染剤であるシュウ酸の分解途中、すなわち、シュウ酸水溶液(還元除染液)内にシュウ酸の分解途中でシュウ酸が20ppm残っている状態で、白金イオン及びヒドラジン(還元剤)を含むシュウ酸水溶液を貴金属供給装置30から再循環系配管22に供給し、白金イオン及びヒドラジン(還元剤)を含むシュウ酸水溶液を再循環系配管22の内面に接触させて再循環系配管22の内面に白金を付着させる。このため、本実施例は、BWRプラントの構造部材の表面への貴金属、例えば、白金の付着に要する時間を、シュウ酸の分解が終了した後に再循環系配管22の内面に白金を付着させる場合に比べて短縮することができる。

さらに、本実施例では、錯イオン形成剤であるアンモニアをシュウ酸水溶液に注入している。このため、化学除染により再循環系配管22の内面の酸化被膜の溶解によって生じたFe(III)イオンが注入されたアンモニアと反応し、Fe(III)イオンのアンモニア錯イオンが生成される。Fe(III)イオンのアンモニア錯イオンの溶解度がFe(III)イオンの溶解度よりも増大する。この結果、再循環系配管22の内面に白金を付着させるために、Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液及びヒドラジン(還元剤)がアンモニアを含むシュウ酸水溶液に注入されたとき、シュウ酸水溶液内のFe(III)イオンが水酸化鉄及びマグネタイトになって析出することを著しく抑制することができる。したがって、シュウ酸水溶液に含まれている白金イオンが再循環系配管22の内面に吸着されてヒドラジンの作用によって白金として再循環系配管22の内面に付着する量が著しく増大する。再循環系配管22の内面に所定量の白金が付着するのに要する時間が短縮される。

本実施例では、錯イオン形成剤(例えば、アンモニア)がシュウ酸水溶液に注入された後で、Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液、すなわち、白金イオンを含む水溶液がそのシュウ酸水溶液に注入される。このため、化学除染により再循環系配管22の内面の酸化被膜の溶解によって生じたFe(III)イオンが、注入されたアンモニアと反応し、Fe(III)イオンのアンモニア錯イオンが生成される。Fe(III)イオンのアンモニア錯イオンの溶解度がFe(III)イオンの溶解度よりも増大する。この結果、再循環系配管22の内面に白金を付着させるために、Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液及びヒドラジン(還元剤)がアンモニアを含むシュウ酸水溶液に注入されたとき、このシュウ酸水溶液のpHがそのヒドラジンの作用により上昇したとしても、シュウ酸水溶液内のFe(III)イオンが水酸化鉄及びマグネタイトになって析出することを著しく抑制することができる。したがって、シュウ酸水溶液に含まれている白金イオンが再循環系配管22の内面に吸着されてヒドラジンの作用によって白金として再循環系配管22の内面に付着する量が著しく増大し、再循環系配管22の内面に所定量の白金が付着するのに要する時間が短縮される。

本実施例によれば、アンモニア(錯イオン形成剤)を含みヒドラジン(還元剤)を含まないシュウ酸水溶液に白金イオンを注入してから5分〜1時間の範囲内の時間である30分が経過した時点で、ヒドラジンを循環配管35に注入するので、前述したように、再循環系配管22の内面への白金の付着効率が向上し、注入した白金イオンを有効に再循環系配管22の内面に付着させることができる。本実施例では、再循環系配管22の前述の流入口を経て再循環系配管22の前述の排出口までの、再循環系配管22の内面全体に亘って、白金の付着量を増加させることができる。

本実施例によれば、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が20ppm(pHが約4.5)であり、再循環系配管22がそのシュウ酸水溶液によって溶解されないため、再循環系配管22の内面に接触される水溶液がシュウ酸を含んでいる状態で再循環系配管22の内面に白金粒子を効率良く付着させることができる。特に、この水溶液が還元剤であるヒドラジンを含んでいるので、白金イオンがヒドラジンにより再循環系配管22の内面付近で効率的に白金に還元される。このため、再循環系配管22の内面に接触するその水溶液が90℃の低温であっても、白金粒子が再循環系配管22の内面に効率良く付着し、付着した白金粒子がその内面において緻密になっている。

BWRプラントの運転が停止されている期間で、再循環系配管22の内面に白金粒子を付着させるので、再循環系配管22の内面に白金粒子が付着した状態でBWRプラントを起動することができる。このため、BWRプラントの起動後、特に、BWRプラントの起動から3ヶ月の間に、放射性核種であるCo−60を取り込み易い酸化皮膜が再循環系配管22の内面に形成されることが、再循環系配管22の内面に付着した白金粒子によって抑制される。これは、再循環系配管22の表面線量率を低下させることに貢献する。

BWRプラントの起動時からRPV12内の炉水に水素を注入したとき、再循環系配管22の内面に付着した白金の触媒作用により、再循環系配管22内を流れる炉水に溶存している酸素とその水素の反応が促進され、再循環系配管22の腐食電位を下げることができる。このため、BWRプラントの起動時における、ステンレス鋼製の再循環系配管22における応力腐食割れの発生を抑制することができる。

本実施例では、pH調整剤として使用できる還元剤であるヒドラジンを用いているので、貴金属供給装置30がコンパクト化される。

本実施例では、Na2[Pt(OH)6]・nH2O)を含む水溶液及びヒドラジン(還元剤)を含むシュウ酸水溶液を用いて再循環系配管22の内面に白金を付着させる前におけるシュウ酸及びヒドラジン(pH調整剤)を分解装置77で分解し、その内面への白金の付着後における、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジン(還元剤)の分解も、分解装置77を用いて行われる。このため、還元剤の分解に別の分解装置を用いる必要がなく、貴金属供給装置30の構成を単純化することができる。

本実施例では、60℃〜100℃の範囲内の90℃に加熱するので、再循環系配管22の内面への白金粒子の付着を短時間に行うことができ、貴金属供給装置30を耐圧構造にする必要がなく小型化できる。

ステップS3においてシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸及びヒドラジン(pH調整剤)を分解装置77内で分解し、シュウ酸の一部が分解されてシュウ酸水溶液のpHが4になったとき、シュウ酸の分解を停止して、再循環系配管22の内面への白金の付着を行ってもよい。シュウ酸水溶液のpHが4のとき、その水溶液のシュウ酸濃度は50ppmであり、約5ppmのFe(III)イオン及びCr(III)イオンがその水溶液に含まれている。ステップS5で、シュウ酸水溶液のアンモニア濃度が約50ppmになるように、アンモニア水がそのシュウ酸水溶液に注入される。このため、ステップS8で注入される還元剤によるシュウ酸水溶液のpHの増大による水酸化鉄及びマグネタイトの析出がアンモニアの作用により抑制される。したがって、ステップS6でシュウ酸水溶液に注入した白金イオンが再循環系配管22の内面に白金として付着する量を、前述したように、増大させることができる。

本発明の好適な他の実施例である実施例2の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図8を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、BWRプラントの再循環系配管に適用される。本実施例における、貴金属である白金の注入も、BWRプラントの起動前の運転停止中に行われる。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法に用いられる貴金属供給装置30は、実施例1で用いられる貴金属供給装置30である。貴金属供給装置30を用いた本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図8を用いて詳細に説明する。

本実施例の貴金属付着方法は、ステップS1〜S12の各工程を実施する実施例1の貴金属付着方法に、ステップS13〜S16の各工程を追加した方法である。ステップS13〜S16の各工程は、ステップS9とステップS10の間で実施される。

ステップS15では、カチオン交換樹脂塔66における、シュウ酸水溶液に含まれる鉄イオンの除去、及び分解装置77における、シュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の分解が行われ、鉄イオンが除去されてシュウ酸が分解されたシュウ酸水溶液に白金イオン、アンモニア及び還元剤であるヒドラジンの注入が行われる。このステップS15の工程は、白金イオン、アンモニア、及びヒドラジン(還元剤)を含むシュウ酸水溶液の、BWRプラントの配管系、例えば、再循環系配管22の内面への接触による、その内面への白金の付着処理が行われている間に実施される。

貴金属付着対象物である、BWRプラントの配管系(例えば、再循環系配管22)には、計装用の配管及び排水用のドレン配管など、内部に滞留水が存在する滞留水の滞留箇所が多数存在する。これらの滞留箇所内の滞留水には、化学除染に用いられたシュウ酸、及びこのシュウ酸によって貴金属付着対象物の構造部材である配管系(例えば、再循環系配管22)から溶出された鉄イオンが存在する。その配管系の内面に貴金属(例えば、白金)を付着させるために、配管系及び循環配管35で形成された閉ループ内で貴金属イオンを含むシュウ酸水溶液を循環させているうちに、これらの滞留箇所内の滞留水からシュウ酸及び鉄イオンが循環しているそのシュウ酸水溶液内にゆっくりと拡散し、このシュウ酸水溶液のシュウ酸及び鉄イオンのそれぞれの濃度を増加させる可能性があるという課題を、発明者らが見出した。発明者らは、この課題を改善する新たな解決策を検討した。この検討結果を以下に説明する。

これらの不純物は、配管系の内面への貴金属付着を阻害する要因となるため、ある程度の濃度になると除去することが好ましい。そのシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度が、例えば、2ppmを越えた場合には、循環するシュウ酸水溶液の一部を冷却器63に通水して60℃以下に温度を下げ、その後、冷却したシュウ酸水溶液を混床樹脂塔69に導いてシュウ酸及び鉄イオンの各濃度を下げることができる。しかしこの方法では、通水によってシュウ酸、鉄イオンが吸着した、混床樹脂塔69内のイオン交換樹脂が放射性廃棄物となり、放射性廃棄物の発生量が増加する。

そこで、発明者らは、配管系の内面への貴金属の付着を行っている間に、前述の滞留箇所内に存在する、例えば、鉄イオンが循環するシュウ酸水溶液内に拡散してそのシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度が設定濃度よりも上昇した場合には、その鉄イオンの除去を目的として、化学除染の還元除染工程においてヒドラジンで飽和された、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂を使用すれば良いとの結論に達した。循環するシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度の上昇は、循環配管35からシュウ酸水溶液をサンプリングして分析することによって知ることができる。

以上に述べた滞留箇所内の鉄イオンに起因した、循環するシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度の上昇時における鉄イオンの除去を考慮した、すなわち、発明者らが見出した上記の結論を反映した本実施例を、以下に具体的に説明する。

ステップS9における白金イオン及びヒドラジン(還元剤)の注入が停止された後、還元剤の注入からの経過時間が4時間以上になったかが判定される(ステップS13)。還元剤の注入からの経過時間が4時間以上であるとき、すなわち、ステップS13の判定が「Yes」であるとき、実施例1で実施されたステップS10〜S12の各工程が実施される。

ステップS13の判定が「No」であるとき、すなわち、還元剤の注入からの経過時間が4時間未満であるとき、シュウ酸水溶液の鉄イオン濃度が2ppm以上であるかが判定される(ステップS14)。還元剤の注入からの経過時間が4時間未満であるときに循環配管35からサンプリングしたシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度が2ppm未満であると、ステップS14の判定が「No」になり、ステップS14の判定が、再度、実施される。循環配管35からのシュウ酸水溶液のサンプリングが、例えば、15分間隔で行われるとき、ステップ14の判定も15分ごとに実施される。

還元剤の注入からの経過時間が4時間未満であるときに循環配管35からサンプリングしたシュウ酸水溶液の鉄イオン濃度が2ppm以上であると、ステップS14の判定が「Yes」になる。このとき、還元除染剤を含む水溶液のカチオン交換樹脂塔及び分解装置への供給、及び分解装置から排出された還元除染剤を含む水溶液への錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤の注入を実施する(ステップS15)。再循環系配管22に存在する滞留箇所内の滞留水に含まれて再循環系配管22内を流れるシュウ酸水溶液内に拡散した鉄イオンを除去するために、このシュウ酸水溶液をカチオン交換樹脂塔66に供給する。再循環系配管22から循環配管35に排出された、上記の鉄イオン、錯イオン形成剤であるアンモニア、貴金属イオンである白金イオン及び還元剤であるヒドラジンを含むシュウ酸水溶液が、実施例1におけるステップS10と同様に、カチオン交換樹脂塔66に供給される。そのシュウ酸水溶液に含まれる白金イオン、アンモニア及び前述の鉄イオンが、カチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着されて除去される。白金イオン、鉄イオン及びアンモニアの陽イオン交換樹脂への吸着により、還元除染工程においてその陽イオン交換樹脂に吸着されているヒドラジン(pH調整剤)が、その陽イオン交換樹脂から放出されてカチオン交換樹脂塔66から排出される。カチオン交換樹脂塔66に供給されるシュウ酸水溶液に含まれているヒドラジン(還元剤)は、その陽イオン交換樹脂に吸着されずにカチオン交換樹脂塔66から排出される。これらのヒドラジンは、配管78を通して、カチオン交換樹脂塔66から排出されたシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸(滞留箇所内の滞留水に含まれてそのシュウ酸水溶液に拡散したシュウ酸を含む)と共に、分解装置77内に供給され、分解装置77内で実施例1のステップS10と同様に分解される。

上記のカチオン交換樹脂塔66への供給により、分解装置77から排出されたシュウ酸水溶液の白金イオン、アンモニア及びヒドラジン(還元剤)のそれぞれの濃度が低下し、再循環配管22の内面への白金の付着度合いが低減されるため、循環配管35から再循環系配管22に供給されるシュウ酸水溶液に、貴金属イオン注入装置39、還元剤注入装置44及び錯イオン形成剤注入装置49から白金イオン、ヒドラジン及びアンモニアのそれぞれを新たに注入する。これらの注入によって白金イオン、ヒドラジン及びアンモニアのそれぞれの濃度が設定濃度になったシュウ水溶液が再循環系配管22内に供給され、再循環系配管22の内面への白金の適切な付着が継続される。

ステップS13の判定が「Yes」になるまで、ステップS14及びS13の各判定が繰り返えして行われ、ステップS14の判定が「Yes」になった場合には、ステップS15の工程は、ステップS14の判定が「No」になるまで継続して実施される。ステップS14の判定結果が「Yes」及び「No」にかかわらず、ステップS13の判定が「Yes」になるまで、シュウ酸水溶液の閉ループ内での循環が継続され、再循環系配管22の内面への白金の付着が継続される。還元剤の循環配管35への注入から4時間が経過したとき、ステップS13の判定が「Yes」になり、その後、実施例1と同様に、ステップS10〜S12の各工程が実施される。ステップS12の工程が終了したとき、実施例2における原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法が終了する。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の全工程が終了した後、循環配管35と廃液処理装置を接続している高圧ホースを取り外し、循環配管35の両端部が再循環系配管22から取り外される。再循環系配管22及び浄化系配管20が循環配管35の接続前の状態に復旧され、その後、BWRプラントの運転が開始される。

本実施例では、ステップS5〜S10の各工程は、ステップS3の工程(還元除染剤の一部分解)とステップS11の工程(浄化工程)の間の期間(第1期間)で実施される。

本実施例は、実施例1で生じる各効果を得ることができる。さらに、本実施例では、貴金属、例えば、白金の再循環系配管22内面への付着を妨げる、前述の滞留箇所から再循環系配管22内のシュウ酸水溶液に拡散した鉄イオンを除去することができ、白金の再循環系配管22内面への付着を促進できる。また、その鉄イオンの除去は、カチオン交換樹脂塔66内の、pH調整剤であるヒドラジンを吸着している陽イオン交換樹脂を用いて行われるので、陽イオン交換樹脂を増加する必要がなく、放射性廃棄物の発生量を低減できる。なお、滞留箇所からシュウ酸水溶液に拡散する鉄イオンの量は多くなく、ステップS15の工程においてその鉄イオンをカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着させて除去する期間が短いので(最長でも、1時間程度)、分解装置77から排出されて白金イオン、アンモニア及びヒドラジン(還元剤)のそれぞれの濃度が低下しているシュウ酸水溶液に新たに注入された白金イオン及びアンモニアが、ステップS15においてカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着されてもカチオン交換樹脂塔66内には、まだ、ヒドラジン(pH調整剤)を吸着している陽イオン交換樹脂が残っている。このため、本実施例では、ステップS10においても、アンモニア等の陽イオンをカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂に吸着させて除去することができ、放射性廃棄物の発生量が低減される。

本発明の好適な他の実施例である実施例3の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図9及び図10を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、BWRプラントの再循環系配管に適用される。本実施例における、貴金属である白金の注入も、BWRプラントの起動前の運転停止中に行われる。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法に用いられる貴金属供給装置30Aを、図10を用いて説明する。貴金属供給装置30Aは、実施例1で用いられる貴金属供給装置30に配管83及び85を付加した構成を有する。弁84を設けた配管83の一端が分解装置77と弁72の間で配管73に接続され、配管83の他端が弁81と混床樹脂塔69の間で配管71に接続される。弁86を設けた配管85の一端が混床樹脂塔69と弁70の間で配管71に接続され、配管85の他端がサージタンク31に接続される。貴金属供給装置30Aの他の構成は貴金属供給装置30と同じである。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図9に示された処理手順に基づいて説明する。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、実施例1で実施される図1に示された処理手順においてステップS4を削除し、ステップS3及びS10のそれぞれをステップS3A及びS17に替え、さらに、ステップS5〜S9の各工程をステップS11の後に実施する手順により実施される。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法で実施される他の各工程は、実施例1で実施されるそれらの工程と同じである。

本実施例では、まず、ステップS1において、貴金属供給装置30Aの循環配管35の両端部を、図2に示すように、運転が停止されているBWRプラントの再循環系配管22に接続する。その後、ステップS2において、貴金属供給装置30Aを接続した再循環系配管22の内面に対する化学除染、すなわち、酸化除染及び還元除染を実施する。

そして、還元除染剤及びpH調整剤が分解される(ステップS3A)。還元除染工程が終了した後、実施例1のステップS3と同様に、シュウ酸水溶液に含まれているシュウ酸(還元除染剤)及びヒドラジン(pH調整剤)が、過酸化水素が供給される分解装置77内で分解される。実施例1のステップS3では、シュウ酸水溶液のpHが4.5になるまでこのシュウ酸水溶液に含まれるシュウ酸の一部が分解される。しかしながら、本実施例のステップS3Aの工程では、シュウ酸水溶液のpHが5.6になってシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が10ppmに低下するまで、シュウ酸の分解が実施される。シュウ酸濃度が10ppmに低下したときに、還元除染剤であるシュウ酸の分解が終了する。このとき、シュウ酸水溶液に含まれるヒドラジン(pH調整剤)の分解は、既に、終了している。

水溶液の浄化を実施する(ステップS11)。シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が10ppmまで低下したとき、ステップS3Aの工程(還元除染剤の分解工程)が終了し、その後、加熱器32による、シュウ酸水溶液の加熱が停止される。弁79を開いて弁61,67,81及び72を全閉にする。カチオン交換樹脂塔66から排出されたシュウ酸水溶液が、弁61より下流側の循環配管35を通してサージタンク31に導かれる。弁64を開いて弁60を全閉にし、再循環配管22から循環配管35に戻されたシュウ酸水溶液が、例えば、60℃未満になるまで、冷却器63によって冷却される。その水溶液が60℃未満になったとき、弁70を開いて弁67を全閉にする。冷却器63で60℃未満に冷却されたシュウ酸水溶液が、混床樹脂塔69に供給される。その水溶液に残留している金属イオン成分及びシュウ酸が混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂に捕集されてその水溶液から除去される。この水溶液が混床樹脂塔69を通って再循環系配管22及び循環配管35により形成された閉ループ内を循環している間に、水溶液のシュウ酸濃度が例えば1ppm以下に低下し、その水溶液に含まれる酸化皮膜溶解成分の鉄イオンが例えば0.1ppmまで低下する。

ステップS11の工程が終了した後、弁60及び61を開いて弁64及び70を全閉にする。再循環系配管22から循環配管35に戻された水溶液は、サージタンク31内で加熱器32により加熱され、その水溶液の温度が60℃になる。その後、本実施例においても、実施例1において実施されるステップS5〜S9の各工程が順番に実施される。

ステップS9における、還元剤であるヒドラジンの水溶液への注入が停止された後においても、所定時間の間、例えば4時間程度、白金イオン、アンモニア、ヒドラジン(還元剤)を含む60℃の水溶液が、循環配管35及び再循環系配管22で形成された閉ループで循環される。この循環の間に、水溶液に含まれる白金イオンが、前述したように、白金として析出し、この白金が再循環系配管22の内面に付着する。

錯イオン形成剤の除去、還元剤の分解及び残留するイオン成分の除去を実施する(ステップS17)。還元剤の注入が停止されて前述の所定時間(例えば、4時間)が経過したとき、弁67,81,84及び86を開いて弁61の開度を調整し、循環配管35内を流れて弁60を通過した、アンモニア(錯イオン形成剤)、白金イオン、ヒドラジン(還元剤)を含む水溶液の一部を、カチオン交換樹脂塔66に供給する。このとき、弁72は閉じている。カチオン交換樹脂塔66から排出されたその水溶液は、配管78を通って分解装置77に供給され、配管83を通って混床樹脂塔69に供給され、さらに、配管85を通ってサージタンク31に導かれる。

上記の弁操作により、循環配管35内を流れて弁60を通過した、アンモニア(錯イオン形成剤)、白金イオン、ヒドラジン(還元剤)を含む水溶液を、カチオン交換樹脂塔66、分解装置77及び混床樹脂塔69に導く経路が形成される。このため、カチオン交換樹脂塔66内では、その水溶液に含まれるアンモニア、白金イオン、ナトリウムイオン、及び不純物として存在する鉄イオン及び鉄アンミン錯体が陽イオン交換樹脂に吸着され、この結果、この陽イオン交換樹脂に吸着されていたヒドラジン(pH吸着剤)がシュウ酸水溶液に放出される。このシュウ酸水溶液が導かれて過酸化水素が供給される分解装置77内では、シュウ酸、ヒドラジン(還元剤)及び陽イオン交換樹脂から放出されたヒドラジン(pH調整剤)が分解される。分解装置77から排出された水溶液が導かれる混床樹脂塔69内では、その水溶液に残留しているイオン成分が陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂で除去される。このため、その水溶液の導電率が低下する。

混床樹脂塔69から排出された、導電率が低下した水溶液は、配管83を通してサージタンク31内に導かれ、サージタンク31内に存在する水溶液と混合される。サージタンク31内に存在していた水溶液の導電率も低下する。導電率が低下した水溶液が、サージタンク31、循環ポンプ33、再循環系配管22、循環ポンプ29、カチオン交換樹脂塔66、分解装置77、混床樹脂塔69及びサージタンク31を含む閉ループを循環しながらさらに導電率を低下させる。この導電率は導電率計18で測定され、測定された導電率が設定値まで低下したとき、ステップS17及びS11Bの各工程が終了する。

ステップS17の工程が終了した後、実施例1と同様に、ステップS12の工程が実施される。ステップS12の工程が終了したとき、実施例3における原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法が終了する。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法の全工程が終了した後、循環配管35と廃液処理装置を接続している高圧ホースを取り外し、循環配管35の両端部が再循環系配管22から取り外される。再循環系配管22及び浄化系配管20が循環配管35の接続前の状態に復旧され、その後、BWRプラントの運転が開始される。

本実施例では、ステップS5〜S10の各工程は、ステップS11の工程(浄化工程)の後の期間(第2期間)で実施される。

本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。本実施例では、実施例1において還元除染剤分解工程の途中で実施している、原子力プラントの構造部材である配管系(例えば、再循環系配管22)の内面への貴金属付着工程(ステップS5〜S8の各工程)を、浄化工程(ステップS11の工程)の終了後に実施しているため、ステップS2における還元除染が終了した時点からその貴金属付着工程が開始される時点(錯イオン形成剤の注入開始時点)までに要する時間は、実施例1におけるその時間よりも長くなる。しかしながら、本実施例では、貴金属付着工程で再循環系配管22から循環配管35に排出された、錯イオン形成剤、貴金属イオン及び還元剤を含む水溶液のシュウ酸及び鉄イオンのそれぞれの濃度は、実施例1における貴金属付着工程で再循環系配管22から循環配管35に排出された水溶液のそれらの濃度よりも低くなっており、このため、循環配管35内を流れる水溶液に注入する、錯イオン形成剤であるアンモニアの量を低減することができ、ステップS17の工程においてアンモニアを除去する時間を短縮することができる。アンモニアの注入量の低減は、放射性廃棄物の発生量のさらなる低減につながる。

さらに、本実施例では、配管83及び85の設置によりカチオン交換樹脂塔66から排出された水溶液を、分解装置77を経由して混床樹脂塔69に供給することができ、カチオン交換樹脂塔66における錯イオン形成剤の除去及び分解装置77における、還元剤であるヒドラジン及びカチオン交換樹脂塔66内の陽イオン交換樹脂から放出されたpH調整剤であるヒドラジンの分解と、混床樹脂塔69における水溶液に残留するイオン成分の除去とを並行して行うことができる。このため、本実施例における浄化工程(ステップS11)に要する時間は、実施例1における浄化工程S11に要する時間よりも短くなる。

本発明の好適な他の実施例である実施例4の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図11を用いて説明する。本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、BWRプラントの再循環系配管に適用される。本実施例における、貴金属である白金の注入も、BWRプラントの起動前の運転停止中に行われる。

本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法に用いられる貴金属供給装置30は、実施例1で用いられる貴金属供給装置30である。貴金属供給装置30を用いた本実施例の原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法を、図11を用いて詳細に説明する。

本実施例の貴金属付着方法は、実施例3の貴金属付着方法においてステップS17を実施例1で実施するステップS10に替え、ステップS5〜S10の各工程をステップS3AとステップS11の間で実施する方法である。

本実施例では、ステップS1〜S3Aの各工程が、実施例3と同様に、順次、実施され、ステップS3Aの工程が終了した後、ステップS5〜S12の各工程が、実施例1と同様に、順次、実施される。ステップS3Aの工程(最初の還元剤分解工程)が終了したとき、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が10ppmである。

本実施例では、ステップS5〜S10の各工程は、ステップS3Aの工程(還元除染剤の分解)とステップS11の工程(浄化工程)の間の期間(第1期間)で実施される。

本実施例は実施例1で生じる各効果を得ることができる。

なお、本実施例のステップ10の工程は、主に、水溶液に含まれる錯イオン形成剤であるアンモニアを陽イオン交換樹脂で除去し、ヒドラジン(還元剤)を分解装置77で分解する工程であり、水溶液に含まれるアンモニア及びヒドラジンがなくなったとき、ステップ10の工程が終了する。ただし、ステップS3Aの工程が終了した時点で、前述したように、その水溶液に10ppmのシュウ酸が残っており、このシュウ酸もステップ10の工程において分解装置77で分解される。ステップS10の工程が終了した時点で、水溶液中にシュウ酸が残っている場合には、このシュウ酸は、ステップS11の工程(浄化工程)において混床樹脂塔69内の陽イオン交換樹脂で除去される。

実施例1〜4のいずれかの原子力プラントの構造部材への貴金属付着方法は、加圧水型原子力発電プラントの原子炉圧力容器に接続される配管に対して適用することができる。

12…原子炉圧力容器、18…導電率計、20…浄化系配管、22…再循環系配管、29,33…循環ポンプ、30,30A…貴金属供給装置、31…サージタンク、32…加熱器、35…循環配管、37…エゼクタ、39…貴金属イオン注入装置、40,45,50…薬液タンク、41,46,51…注入ポンプ、44…還元剤注入装置、49…錯イオン形成剤注入装置、54…酸化剤供給装置、56…供給ポンプ、63…冷却器、66…カチオン交換樹脂塔、69…混床樹脂塔、75…pH計、77…分解装置、83,85…配管。

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