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Polymer, material for luminescent layer, material for organic electroluminescent element, composition for organic electroluminescent element, and organic electroluminescent element, organic solar cell element, organic el display device, and organic el lighting utilizing the same

阅读:646发布:2024-02-09

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  • 熱解離可溶性基を有することを特徴とする、重合体。
  • 繰り返し単位内に芳香族環を有し、前記芳香族環に縮合した炭化水素環に、前記熱解離可溶性基が結合していることを特徴とする、請求項1に記載の重合体。
  • 前記芳香族環が、芳香族炭化水素環であることを特徴とする、請求項2に記載の重合体。
  • 前記熱解離可溶性基は、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合体。
  • 前記熱解離可溶性基は、100℃以上300℃以下で熱解離する基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の重合体。
  • 前記炭化水素環が、エテノ基またはエタノ基を含む環であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか一項に記載の重合体。
  • 前記重合体が、下記化学式(U3)または下記化学式(U4)で表される構造を繰り返し単位中に含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の重合体。
    (式(U3)中、環A は芳香族環を表す。前記芳香族環は置換基を有していてもよい。また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    21 、S 22 、R 21 〜R 26は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
    1及びX は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数3以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
    式(U4)中、環B は芳香族環を表す。 前記芳香族環は置換基を有していてもよい。 また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    31 〜S 34 、R 31 〜R 36 、X 及びX は、それぞれ独立に、上記S 21 、S 22 、R 21 〜R 26 、X 及びX として示したものと同様である。
    〜n はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。 )
  • 前記化学式(U3)および前記化学式(U4)において、環A および環B が、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の重合体。
  • 前記重合体が、下記式(X)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の重合体。
    (式(X)中、mは0〜3の整数を表し、
    Ar 11及びAr 12は各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、
    Ar 13 〜Ar 15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
    但し、Ar 11及びAr 12のいずれもが直接結合であることはない。 )
  • 請求項1〜9のいずれか一項に記載の重合体と溶媒とを含有することを特徴とする電子デバイス用組成物。
  • 陽極及び陰極、さらに前記陽極と前記陰極との間に有機層を有する有機電界発光素子であって、
    前記有機層として請求項10に記載の電子デバイス用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
  • 陽極及び陰極、さらに陽極と陰極との間に有機層を有する有機太陽電池素子であって、
    前記有機層として請求項10に記載の電子デバイス用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を有することを特徴とする、有機太陽電池素子。
  • 熱解離可溶性基を有する低分子化合物からなることを特徴とする、発光層材料。
  • 下記化学式(U1)で表される部分構造を有することを特徴とする、請求項13に記載の発光層材料。
    (式(U1)中、環A は芳香族環を表す。前記芳香族環は置換基を有していてもよい。また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    、S 、R 、R は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。
    〜R は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
    ただし、R 〜R が全て水素原子であることはない。 )
  • 下記化学式(U2)で表される部分構造を有することを特徴とする、請求項13に記載の発光層材料。
    (式(U2)中、環B は芳香族環を表す。前記芳香族環は置換基を有していてもよい。また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    11 〜S 14 、R 11 〜R 16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。 )
  • 前記芳香族環である環A 又は環B が芳香族炭化水素環であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の発光層材料。
  • 請求項13〜16のいずれか一項に記載の発光層材料および溶媒を含有することを特徴とする、有機電界発光素子用組成物。
  • 陽極及び陰極、さらに前記陽極と前記陰極の間に有機層を有する有機電界発光素子であって、前記有機層として、請求項17に記載の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を有することを特徴とする、有機電界発光素子。
  • 請求項11又は18に記載の有機電界発光素子を用いることを特徴とする、有機EL表示装置。
  • 請求項11又は18に記載の有機電界発光素子を用いることを特徴とする、有機EL照明。
  • 分子内に芳香族炭化水素環または芳香族複素環を有する化合物であって、前記芳香族炭化水素環または前記芳香族複素環に縮合した炭化水素環に熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する化合物を加熱して得られることを特徴とする、有機電界発光素子材料。
  • 下記繰り返し単位群Xから選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を含むことを特徴とする、重合体。
  • 说明书全文

    本発明は有機電界発光素子又は有機太陽電池素子に用いられる材料に関する。

    近年、有機薄膜を用いた電界発光素子(有機電界発光素子)の開発が行われている。 有機電界発光素子における有機薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と湿式成膜法が挙げられる。 真空蒸着法は積層化が容易であるため、陽極及び/又は陰極からの電荷注入の改善、励起子の発光層封じ込めが容易であるという利点を有する。 一方、湿式成膜法は真空プロセスが要らず、大面積化が容易で、1つの層(塗布液)に様々な機能をもった複数の材料を含有させることが容易である等の利点がある。

    しかしながら、湿式成膜法は積層化が困難であるため、真空蒸着法による素子に比べて駆動安定性が低く、一部を除いて実用レベルに至っていないのが現状である。 特に、湿式成膜法で有機薄膜を積層する際には、有機電界発光素子材料に長鎖アルキル基を導入する等して、塗布溶媒に対する溶解性を付与することが求められる。 また、有機薄膜上に、さらに湿式成膜法にて異なる有機薄膜(上層)を形成する場合には、上層成膜用の塗布溶液に対して、下層に含まれる有機電界発光素子材料が不溶性であることも求められる。 従来、このような積層を行なう場合には、下層に含まれる有機電界発光素子材料に架橋性基等を導入し、下層を成膜後、加熱処理やエネルギー照射等により架橋性基を架橋させ、上層成膜用の塗布溶液に対して不溶化させる方法等が採用されていた。 例えば非特許文献1及び非特許文献2では、下記のような架橋性基を有する化合物が提案され、架橋性基が反応することによって有機溶媒に不溶となる有機薄膜の積層方法が提案されている。

    Applied Physics Letters 2005年, 86巻, 221102頁 Macromolecules 2006年, 39巻, 8911頁

    しかしながら、上記方法では、有機薄膜中に長鎖アルキル基や、架橋性基が残留することとなる。 このような長鎖アルキル基や架橋性基は、電荷輸送効率の低下や、有機電界発光素子の発光効率の低下、駆動安定性の低下を招く場合がある、という課題があった。

    また、有機薄膜が積層された構造を有する素子に用いられる有機絶縁膜や、有機薄膜を積層した構成とされる有機太陽電池、カラーフィルター用着色レジスト、カラーフィルター用透明レジスト、有機TFT材料、電子写真感光体等に用いられる材料においても同様の課題があった。

    そこで、湿式成膜法による成膜が可能であり、成膜後の膜安定性が高く、他の層を湿式成膜法等により積層可能であり、かつ電荷輸送効率や発光効率の低下が少なく、駆動安定性に優れた、有機電界発光素子材料として用いられる重合体や発光層材料等の提供が望まれていた。

    本発明者らの鋭意研究により、熱解離可溶性基を有する重合体や発光層材料は、湿式成膜の際、塗布溶媒に可溶であり、湿式成膜後に加熱を行なうことによって、他の塗布溶液等に不溶化可能であることを見出し、本発明に至った。

    本発明の要旨は、熱解離可溶性基を有することを特徴とする、重合体、電子デバイス用組成物、有機電界発光素子、有機太陽電池素子、並びに有機EL表示装置及び有機EL照明に存する。
    本発明の別の要旨は、熱解離可溶性基を有する低分子化合物からなることを特徴とする、発光層材料、有機電界発光素子用組成物、有機電界発光素子、並びに有機EL表示装置及び有機EL照明に存する。
    更に、本発明の別の要旨は、分子内に芳香族炭化素環または芳香族複素環を有する化合物であって、前記芳香族炭化水素環または前記芳香族複素環に縮合した炭化水素環に熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する化合物を加熱して得られることを特徴とする、有機電界発光素子材料に存する。

    また、本発明のさらに別の要旨は、下記繰り返し単位群Xから選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を含むことを特徴とする、重合体に存する。

    本発明の重合体や発光層材料は、熱解離可溶性基が結合している部分構造を有することから、湿式成膜の際に塗布溶媒に可溶なものとすることができる。 またさらに、成膜後の加熱により該熱解離可溶性基が解離するため、他の塗布溶媒等に対する溶解性を大幅に低下させることができる。 したがって、重合体や発光層材料を用いて形成された有機層上に、他の有機層を、例えば湿式成膜法等により積層することも可能である。
    また本発明の重合体や発光層材料は、分子内に、塗布溶媒へ可溶化するための長鎖アルキル基や、他の溶媒に不溶化するための架橋性基を含む必要性が少ない。 したがって、該重合体や発光層材料を有機電界発光素子材料として用いて形成した有機電界発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が低い等の駆動安定性に優れる。

    本発明の有機電界発光素子の一例を示す概略断面図である。

    本発明の実施例及び比較例で作製した測定用素子の層構成を模式的に示す断面図である。

    本発明の実施例8及び比較例3において測定した電流−電圧特性を示す図である。 なお、縦軸は電流密度[A/cm

    ]を表し、横軸は電圧[V]を表す。

    本発明の有機太陽電池素子の一例を示す概略断面図である。

    以下に例示する物や方法等は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、これらの内容に特定はされない。
    尚、本願発明において、重合体とは、構造中に2価の繰り返し単位を複数含み、分子量分布をもつものを示す。 一方、分子量が単一な化合物を、低分子化合物と示すものとする。
    また、本発明の重合体を含む電子デバイス用組成物中、有機電界発光素子用組成物を、「有機電界発光素子用組成物A」とし、本発明の発光層材料を含む組成物を「有機電界発光素子用組成物B」とする。 「本発明の有機電界発光素子用組成物」は、有機電界発光素子用組成物Aと有機電界発光素子用組成物Bの総称である。

    A. 重合体 本発明の重合体は、熱解離可溶性基を有することを特徴とし、例えば有機電界発光素子材料等として用いることができる。 具体例としては、有機電界発光素子の正孔注入材料、正孔輸送材料、発光材料、ホスト材料、電子注入材料、電子輸送材料等として適用可能であり、好ましくは湿式成膜法により形成される層に用いられる。

    重合体の重量平均分子量は、通常3,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下であり、また通常1,000以上、好ましくは2,500以上、より好ましくは5,000以上である。

    また、数平均分子量は、通常2,500,000以下、好ましくは750,000以下、より好ましくは400,000以下であり、また通常500以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上である。

    通常、上記重量平均分子量はSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)測定により決定される。 SEC測定では高分子量成分ほど溶出時間が短く、低分子量成分ほど溶出時間が長くなるが、分子量既知のポリスチレン(標準試料)の溶出時間から算出した校正曲線を用いて、サンプルの溶出時間を分子量に換算することによって、重量平均分子量及び数平均分子量が算出される。

    重合体の分子量が上記上限値を超えると、不純物の高分子量化によって高分子化合物の精製が困難となる可能性がある。 また重合体の分子量が上記下限値を下回ると、成膜性が低下する可能性があり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる可能性がある。

    (熱解離可溶性基)
    熱解離可溶性基とは、溶媒に対して可溶性を示す基であり、結合している基(例えば、炭化水素環)から70℃以上で熱解離する基を表す。 また、熱解離可溶性基が解離することにより、重合体の溶媒への溶解度は低下する。
    但し、解離後に、他の原子が結合する反応、例えば加水分解で解離する基などは除く。 加水分解で分解する基は、解離後、分子内に活性プロトンを有することになる。 この活性プロトンが素子中に存在すると、素子特性に影響する場合がある。
    本発明の重合体は、20℃〜25℃でトルエンに通常0.1重量%以上溶解し、重合体のトルエンへの溶解性は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。
    このような熱解離可溶性基は、炭化水素環に縮合し、該炭化水素環は極性基を有さない芳香族炭化水素環に結合していることが好ましく、逆ディールスアルダー反応により熱解離する基であることがより好ましい。
    また熱解離する温度は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは120℃以上、また好ましくは300℃以下、さらに好ましくは240℃以下である。 上記範囲内であると、重合体の合成が容易であり、また成膜時に化合物が分解がすることが少ない。

    また特に、分子間のスタッキングを抑制する立体構造を有する基が可溶性に優れるため好ましい。 化合物から熱解離可溶性基が脱離する反応の一例を下記に示す。

    尚、上記反応式の場合、熱解離可溶性基は、以下に示す構造の丸枠で囲った部分である。


    このような熱解離可溶性基の脱離の例としては、例えば脱スルフィニルアセトアミド(JACS,V124,No.30,2002,8813参照)、脱オレフィン、脱アルコール、脱アルキル(H.Kwart and K.King,Department of Chemistry,University of Delaware,Nework,Delaware 19771,p415−447(1967),O.Diels and K.Alder,Ber.,62,554(1929)及びM.C.Kloetzel,Org.Reactions,4,6(1948)参照)、脱1,3−ジオキソール(N.D.Field,J.Am.Chem.Soc.,83,3504(1961)参照)、脱ジエン(R.Huisgen,M.Seidel,G.Wallbillich,and H.Knupfer,Tetrahedron,17,3(1962)参照)、脱イソキサゾール(R.Huisgen and M,Christi,Angew.Chem.Intern.Ed.Engl.,5,456(1967)参照)、脱トリアゾール(R.Kreher and J.Seubert,Z.Naturforach.,20B,75(1965)参照)等が挙げられる。
    本発明においては特に、熱解離可溶性基が結合する炭化水素環が、エテノ基またはエタノ基を含む環であることが、熱解離可溶性基がより安定であり、合成がし易い点で好ましい。

    このような熱解離可溶性基は、加熱処理前において、その嵩高い分子構造から、分子間のスタッキングを防止したり、有機塗布溶媒に対して該重合体が良好な溶解性を有するものとすることができる。 また、加熱処理によって該重合体から熱解離可溶性基が脱離するため、加熱後の化合物の溶媒への溶解性を著しく抑制することができ、該化合物を含む有機層に耐有機溶媒塗布性を付与することが出来る。 したがって、本発明の重合体を用いて形成された有機層上に、さらに湿式成膜法によって有機薄膜を積層して形成することが容易となる。

    また、従来の多層塗布の際に用いられてきた重合体のように、分子内に塗布溶媒への溶解性を高めるための長鎖アルキル基や、他の有機溶媒への耐性を付与するための架橋基等が必要なく、これらを有さないものとすることができる。 したがって、従来の有機電界発光素子材料として用いられていた重合体とは異なり、成膜後(加熱後)、熱架橋性基や長鎖アルキル基が有機層内に残存しないものとすることができ、有機電界発光素子の発光効率や寿命の低下等が生じることがなく、素子安定性が良好となる。

    [熱解離可溶性基の割合]
    熱解離可溶性基は、該重合体の繰り返し単位以外の部分に含まれていてもよい。 重合体の1つの重合体鎖の中に含まれる熱解離可溶性基は、好ましくは平均5以上、より好ましくは平均10以上、より好ましくは平均50以上である。 この下限値を下回ると加熱前の該重合体の塗布溶媒に対する溶解性が低い場合があり、またさらに加熱後の化合物の、有機溶媒に対する溶解性の低下の効果も低くなる可能性がある。

    [繰り返し単位の配列および割合等]
    重合体は、その構造中に熱解離可溶性基を有するものであれば、その繰り返し単位等の構造は特に制限はないが、繰り返し単位内に芳香族環を有し、この芳香族環に縮合した炭化水素環に上記熱解離可溶性基が結合していることが好ましい。

    また中でもエテノ基、あるいは、エタノ基を含む炭化水素環に熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位を含む重合体であることが、成膜性が優れる点から好ましい。
    尚、エテノ基又はエタノ基が結合している炭化水素環はさらに6員環であることが好ましい。

    このような重合体における繰り返し単位の配列として、特に、下記式(X)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。

    (式(X)中、mは0〜3の整数を表し、


    Ar

    11及びAr

    12は各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、


    Ar

    13 〜Ar

    15は、各々独立に置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。


    但し、Ar

    11及びAr

    12が同時に直接結合であることはない。 )

    上記式(X)中、mは0〜3の整数を表す。
    mは、0であることが重合体の、有機溶媒に対する溶解性及び成膜性が高められる点で好ましい。 また、mが1〜3であることが、重合体の正孔輸送能が向上する点で好ましい。

    式(X)中、Ar 11及びAr 12は、各々独立して、直接結合、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Ar 13 〜Ar 15は、各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。

    置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、フルオランテン環等の、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の1価または2価の基が挙げられる。

    置換基を有していてもよい芳香族複素環基としては、例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の1価または2価の基が挙げられる。

    得られる化合物の電気化学的安定性の点から、Ar 11 〜Ar 15は、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、フルオレン環からなる群より選ばれる環由来の1価または2価の基が好ましい。 またAr 11 〜Ar 15としては、前記群から選ばれる1種または2種以上の環を直接結合により連結した2価の基も好ましく、ビフェニレン基、ターフェニレン基がさらに好ましい。

    またAr 11 〜Ar 15の置換基の具体例としては、置換基を有していてもよい直鎖または分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1以上、8以下の直鎖または分岐のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいアルケニル基(好ましくは炭素数2以上、9以下のアルケニル基であり、例えばビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいアルキニル基(好ましくは炭素数2以上、9以下のアルキニル基であり、例えばエチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいアラルキル基(好ましくは炭素数7以上、15以下のアラルキル基であり、例えばベンジル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいアルコキシ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数1以上、8以下のアルコキシ基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいアリールオキシ基(好ましくは炭素数6以上、12以下の芳香族炭化水素環基を有するものであり、例えばフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいヘテロアリールオキシ基(好ましくは5または6員環の芳香族複素環基を有するものであり、例えばピリジルオキシ基、チエニルオキシ基等が挙げられる。);置換基を有していてもよいアシル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2以上10以下のアシル基であり、例えばホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2以上10以下のアルコキシカルボニル基であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいアリールオキシカルボニル基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数7以上13以下のアリールオキシカルボニル基であり、例えばフェノキシカルボニル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいアルキルカルボニルオキシ基(好ましくは置換基を有していてもよい炭素数2以上10以下のアルキルカルボニルオキシ基であり、例えばアセトキシ基などが挙げられる。);ハロゲン原子(特に、フッ素原子または塩素原子);カルボキシ基;シアノ基;水酸基;メルカプト基;置換基を有していてもよいアルキルチオ基(好ましくは炭素数1以上8以下のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。 );置換基を有していてもよいアリールチオ基(好ましくは炭素数6以上12以下のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいスルホニル基(例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいシリル基(例えばトリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいボリル基(例えばジメシチルボリル基などが挙げられる。);置換基を有していてもよいホスフィノ基(例えばジフェニルホスフィノ基などが挙げられる。);置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基(例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環などの、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の1価の基が挙げられる。);置換基を有していてもよい芳香族複素環基(例えばフラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環などの、5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。);置換基を有していてもよいアミノ基(好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1以上8以下のアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基であり、例えばメチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。);置換基を有していてもよい炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素環基を有するアリールアミノ基(例えばフェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等が挙げられる。)等が挙げられる。 また、上記置換基がさらに置換基を有する場合、その置換基としては、上記例示置換基が挙げられる。
    これらの置換基の個数に制限はなく、1種、または2種以上が任意の組み合わせで、1つまたは2つ以上置換しているもの等とすることができる。

    また、重合体内には、上記の化学式(X)で表される繰り返し単位以外に、熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位、及び化学式(X)で表される繰り返し単位以外の、他の繰り返し単位が分子内に含まれていてもよい。 また、それぞれ独立して、異なる2種以上の熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位、または2種以上の化学式(X)で表される繰り返し単位が重合体鎖中に含まれていてもよい。

    重合体鎖中に含まれる、熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する繰り返し単位に対する化学式(X)で表される繰り返し単位の割合は、正孔輸送能に優れ、還元耐久性に優れる点から、0.1倍以上であることが好ましく、また5倍以下であることが好ましい。

    本発明の重合体は、下記化学式(U3)または(U4)で表される構造を繰り返し単位中に含むことが好ましい。 この場合、重合体鎖中の繰り返し単位(U3)あるいは(U4)の含有量は、好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。

    (式(U3)中、環A

    は芳香族環を表す。前記芳香族環は1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。


    21 、S

    22 、R

    21 〜R

    26は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。


    1及びX

    は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数5以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。


    式(U4)中、環B

    は芳香族環を表す。 前記芳香族環は1又は2以上の置換基を有していてもよい。 また、前記置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。


    31 〜S

    34 、R

    31 〜R

    36 、X

    及びX

    は、それぞれ独立に、上記S

    21 、S

    22 、R

    21 〜R

    26 、X

    及びX

    として示したものと同様である。


    〜n

    はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。 )

    化学式(U3)及び(U4)中における、環A 、環B は、それぞれ熱解離可溶性基を含む炭化水素環が縮合する芳香族環を表し、芳香族炭化水素環であってもよく、芳香族複素環であってもよいが、電気化学的安定性に優れるため、電荷が局在化しにくいため、芳香族炭化水素環であることが好ましい。 また、該芳香族環は1又は2以上の置換基を有していてもよい。 また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。
    環A 及びB が、芳香族炭化水素環である場合に、該芳香族炭化水素環の核炭素数は通常6以上である。 また通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。 また、環A 及びB が、芳香族複素環である場合に、該芳香族複素環の核炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、より好ましくは5以上である。 また通常50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。

    該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
    上記の中でも環A および環B が、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。

    また芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、等が挙げられる。

    また、上記化学式(U3)及び(U4)中の環A 及び環B は、同種または異なる2種以上の環構造単位が1以上10以下、直接、もしくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、核炭素数1以上20以下のヘテロ原子を含んでも良い鎖状基、及び炭素数が1以上20以下の脂肪族基から選ばれる1種以上の2価の連結基を介して連結した構造とすることも可能である。 なお連結される環構造単位としては、上記芳香族炭化水素環や芳香族複素環と同様、または異なる芳香族炭化水素環や芳香族複素環とすることができる。 またこれらの芳香族炭化水素環及び芳香族複素環は置換基を有していてもよい。

    環A または環B の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上10以下の直鎖または分岐のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数1以上8以下のアルキニル基;ベンジル基等の炭素数2以上8以下のアラルキル基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のヘテロアリールアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上8以下のアルコキシ基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルアオキシル基、エチルカルボニルアオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の炭素数1以上15以下のアシルオキシル基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、等の炭素数10以上20以下のアリールオキシル基;等が挙げられる。 これらの置換基はお互いに直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO 、−(C 2x )−、−O−(C 2y )−、置換もしくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等、2価の連結基を介して結合し、環状構造を形成してもよい。 上記xおよびyは、それぞれ1以上20以下の整数を表す。
    これらの置換基は1種のみ、または2種以上が任意の組み合わせで1つ、または2つ以上が環A または環B に置換していてもよい。

    上記化学式(U3)及び化学式(U4)におけるS 21 、S 22 、R 21 〜R 26 、S 31 〜S 34 、R 31 〜R 36は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは10以下の直鎖または分岐のアルキル基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい核炭素数が5以上40以下の芳香族複素環基;ベンジル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常50以下、好ましくは8以下のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは8以下のアルコキシ基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上、好ましくは6以上、通常50以下、好ましくは15以下のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上50以下のアシル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパギル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルキニル基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルオキシル基、エチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上、通常50以下、好ましくは15以下のアシルオキシ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上50以下のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下のへテロアリールアミノ基;またはアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常2以上50以下のアシルアミノ基を表す。

    また、X 1 、X 、X 及びX は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上50以下の2価の芳香族炭化水素環基、または置換基を有していてもよい炭素数3以上50以下の2価の芳香族複素環基を表す。
    1 、X 、X 及びX における芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基の具体例は、前記環A 又は環B におけるものと同様である。
    〜n はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。

    上記繰り返し単位を有する重合体としては、下記化学式(U7)あるいは(U8)で表される2価の繰り返し単位を有する化合物である場合に、電気化学的耐久性がさらに向上し、好ましい。

    ここで化学式(U7)及び(U8)中、vは0〜4の整数を表す。 vはベンゼン環の数を表し、vが0の場合、熱解離可溶性基が結合する芳香族炭化水素環はベンゼン環であり、vが1の場合はナフタレン環、vが2の場合はアントラセン環やフェナントレン環等となる。


    また化学式(U7)及び(U8)中のS

    21' 、S

    22' 、R

    21' 〜R

    26' 、S

    31' 〜S

    34' 、及びR

    31' 〜R

    36'は、それぞれ独立に、上記化学式(U3)及び(U4)においてS

    21 、S

    22 、S

    31 〜S

    34 、R

    21 〜R

    26 、R

    31 〜R

    36として例示したものと同様である。 また複数のTはそれぞれ独立である。 Tについては、上記化学式(U3)及び(U4)における環A

    及び環B

    の置換基と同様である。 また、複数のTはそれぞれ独立であり、同一であってもよくまた異なっていてもよい。 また複数のTは、直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO

    、−(C

    2x )−、−O−(C

    2y )−、置換基を有してもよい炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有してもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等の2価の連結基を介して結合していてもよく、環状構造を形成していてもよい。 上記xおよびyは、それぞれ0以上20以下の整数を表す。


    またX

    〜X

    についてはそれぞれ独立に、2価の連結基を表し、例えば上記化学式(U3)及び(U4)においてX

    〜X

    として例示したものと同様とすることができる。 n

    〜n

    はそれぞれ独立に、0〜5の整数を表す。

    [重合体の合成方法及び化合物の具体例]
    前述の重合体の合成方法は特に制限はなく、重合体の構造等により適宜選択される。 以下にその例を示すが、これらに限定されるものではない。

    例えば、下記式で示すように、化学式(IIIa)で表される1種または2種以上のハロゲン化物のみを、Ar−Ar結合を形成する反応によって逐次重合させることによって、本発明の有機電界発光素子材料に用いられる重合体を得ることができる。 反応は、通常、銅やパラジウム、ニッケル錯体等の遷移金属触媒存在下で行われる。

    (式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、Ar

    pは熱解離可溶性基を有する置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素環または芳香族複素環を示す。nは1以上の整数を表す。)

    また本発明の有機電界発光素子材料に用いられる重合体は、例えば下記式に示すように、化学式(IIIa)で表されるハロゲン化物と化学式(IIIb)で表される二級アミン化合物とを、N−Ar結合を形成する反応(例えば、Buchwald−Hartwingカップリング、Ullmannカップリング等)によって逐次重合させることによっても得られる。 N−Ar結合を形成する反応は、通常、炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行い、必要に応じて、銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。

    (式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、Ar

    、Ar

    eは、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示す。またAr

    、Ar

    はそれぞれ独立に置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。Ar

    、Ar

    、Ar

    、Ar

    のうち少なくとも一つは、熱解離可溶性基が結合した2価の芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を含む基である。nは1以上の整数を表す。)

    Ar 、Ar の置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基としては、例えば上記式(X)におけるAr 11 〜Ar 15として説明した置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい芳香族複素環基の2価の基が挙げられ、置換基についても上記式(X)におけるAr 11 〜Ar 15における置換基として説明したものが挙げられる。

    また、本発明の有機電界発光素子材料に用いられる重合体は、例えば、化学式(IIIa)で表されるハロゲン化物と化学式(IIIc)で表されるホウ素化合物とを、Ar−Ar結合を形成する反応(例えば、Suzukiカップリング等)によって逐次重合させることによっても得られる。 Ar−Ar結合を形成する反応は、通常、炭酸カリウム、tert-ブトキシナトリウム、トリエチルアミン等の塩基存在下で行い、必要に応じて、 銅やパラジウム錯体等の遷移金属触媒存在下で行うこともできる。

    (式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、R'はヒドロキシ基または互いに結合して環を形成していてもよいアルコキシ基を示す。またAr

    a 、Ar

    cはそれぞれ独立に置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。Ar

    a及びAr

    cのうち少なくとも一つは熱解離可溶性基が結合した置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基である。nは1以上の整数を表す。)


    以下繰り返し単位群Aに、式(U3)、(U4)、(U7)、及び(U8)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。

    <繰り返し単位群A>

    各化学式(B1)〜(B10)中の各基の組み合わせについては、下記の表1または2に示す。

    本発明の重合体に、前記繰り返し単位Aとともに含まれていてもよい繰り返し単位について、以下繰り返し単位群B及び構造式群Eに示す。 なお、構造式群Eについては、構造式群E由来の2価基が重合体中に含まれる。

    <繰り返し単位群B>

    <構造式群E>

    なお、本発明の重合体は、上述した重合方法以外にも、例えば特開2001−223084号公報に記載の重合方法、特開2003−213002号公報に記載の重合方法、特開2004−2740号公報に記載の重合方法、さらには、不飽和二重結合を有する化合物のラジカル重合、エステル結合やアミド結合を形成する反応による逐次重合等の公知の方法により合成することができる。

    上記重合体を合成後、精製する方法としては、例えば「分離精製技術ハンドブック」(1993年、(財)日本化学会編)、「化学変換法による微量成分および難精製物質の高度分離」(1988年、(株)アイ ピー シー発行)、あるいは「実験化学講座(第4版)1」(1990年、(財)日本化学会編)の「分離と精製」の項に記載の方法をはじめとし、公知の技術を利用可能である。 具体例としては、抽出(懸濁洗浄、煮沸洗浄、超音波洗浄、酸塩基洗浄を含む)、吸着、吸蔵、融解、晶析(溶媒からの再結晶、再沈殿を含む)、蒸留(常圧蒸留、減圧蒸留)、蒸発、昇華(常圧昇華、減圧昇華)、イオン交換、透析、濾過、限外濾過、逆浸透、圧浸透、帯域溶解、電気泳動、遠心分離、浮上分離、沈降分離、磁気分離、各種クロマトグラフィー(形状分類:カラム、ペーパー、薄層、キャピラリー、移動相分類:ガス、液体、ミセル、超臨界流体。分離機構:吸着、分配、イオン交換、分子ふるい、キレート、ゲル濾過、排除、アフィニティー)などが挙げられる。

    生成物の確認や純度の分析方法としては、例えばガスクロマトグラフ(GC)、高速液体クロマトグラフ(HPLC)、高速アミノ酸分析計(有機化合物)、キャピラリー電気泳動測定(CE)、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、交差分別クロマトグラフ(CFC)、質量分析(MS、LC/MS,GC/MS,MS/MS)、核磁気共鳴装置(NMR( HNMR, 13 CNMR))、フーリエ変換赤外分光高度計(FT−IR)、紫外可視近赤外分光高度計(UV.VIS,NIR)、電子スピン共鳴装置(ESR)、透過型電子顕微鏡(TEM−EDX)電子線マイクロアナライザー(EPMA)、金属元素分析(イオンクロマトグラフ、誘導結合プラズマ−発光分光(ICP−AES)原子吸光分析(AAS)、蛍光X線分析装置(XRF))、非金属元素分析、微量成分分析(ICP−MS,GF−AAS,GD−MS)等を必要に応じ、適用可能である。

    [重合体である理由]
    熱解離可溶性基を有する化合物の場合、重合体は、一分子内に含まれる熱解離可溶性基を調整し易い。 その為、熱解離可溶性基の解離前後での、溶媒に対する有機溶媒への溶解性の差がつけやすい。
    また、重合体は低分子化合物より結晶化しにくいため、成膜性に優れる。 このため、素子とした場合に、電流の集中が起きないため、短絡などが生じ難く、駆動寿命の長い素子が得られる。

    また、本発明の重合体は、下記繰り返し単位群Xから選ばれる少なくとも一つの繰り返し単位を含む重合体であることが特に好ましい。

    重合体中に、上記繰り返し単位は1種のみ含まれていてもよく、また2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。 また、上記繰り返し単位以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。
    本発明においては、重合体鎖中における上記繰り返し単位群Xから選ばれる繰り返し単位の含有量は、好ましく20モル%以上、更に好ましくは40モル%以上である。 なお、上記繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、上記で説明した繰り返し単位等が挙げられる。

    [用途]
    上記重合体の用途としては、有機電界発光素子材料だけでなく、例えばカラーフィルター用着色レジストやリブ、オーバーコート、フォトスペーサー等のカラーフィルター用透明レジスト、有機絶縁膜、有機TFT材料、有機太陽電池等の有機電子材料、電子写真感光体材料、及びこれらを含む有機デバイス全般があげられ、本発明の重合体を用いることにより、これらのデバイスの電気安定性や絶縁性等が優れたものとすることができる。

    また、上記重合体は、例えばレジスト材料等として用いることも可能である。 なおレジスト材料に適応する場合には、アルカリ現像液に対する溶解性あるいは光感光性を付与するため、熱解離可溶性基中にカルボン酸を有する置換基、あるいは、アクリレート基、ビニルエーテル基などのネガ型感光性基、または炭酸エステル基、ナフトキノンジアミド基、アセタール基、オルトニトロベンゼン基等のポジ型感光性基を導入することが好ましい。

    [電子デバイス用組成物]
    本発明の電子デバイス用組成物は、本発明の重合体及び溶媒を含むものであり、電子デバイスに好適に用いられる。 電子デバイスの中でも、特に有機電界発光素子又は有機太陽電池素子に用いることが好ましい。
    つまり、本発明の電子デバイス用組成物は、有機電界発光素子用組成物(以下、有機電界発光素子用組成物A)、又は有機太陽電池素子用組成物(以下、有機太陽電池素子用組成物A)であることが好ましい。

    (有機電界発光素子用組成物A)
    本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、陽極と陰極との間に配置された有機層を有する有機電界発光素子の有機層を湿式成膜法により成膜する際の塗布液として好適に用いられる。
    なお、本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、本発明の重合体の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで含むものであってもよい。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、該有機電界発光素子における正孔注入層または正孔輸送層を形成するために用いられることが特に好ましい。
    なお、ここでは、有機電界発光素子における陽極−発光層間の層が1つの場合には、これを「正孔輸送層」と称し、2つ以上の場合は、陽極に接している層を「正孔注入層」、それ以外の層を総称して「正孔輸送層」と称す。 また、陽極−発光層間に設けられた層を総称して「正孔注入・輸送層」と称する場合がある。

    有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒は、本発明の重合体を溶解するものが好ましく、通常、本発明の重合体を0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶媒である。

    なお、本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、本発明の重合体を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下含有する。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒の種類は、特に制限されるものではない。 本発明の重合体を溶解させるものとして、好ましくは、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の含ハロゲン溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等のエステル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。 これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで併用してもよい。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒の濃度は、通常40重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
    なお、水分は有機電界発光素子の性能低下、中でも特に連続駆動時の輝度低下を促進する可能性があることが広く知られている。 したがって有機層中に残留する水分をできる限り低減することが好ましく、これらの溶媒の中でも、25℃における水の溶解度が1重量%以下であるものが好ましく、0.1重量%以下である溶媒がより好ましく、これらの溶媒を通常、有機電界発光素子用組成物A中に10重量%以上含有することが好ましく、30重量%以上がより好ましく、50重量%以上がさらに好ましい。

    また、一般に、有機電界発光素子は、陰極等の水分により著しく劣化する可能性のある材料が多く使用されているため、素子の劣化の観点からも、有機電界発光素子用組成物A中に水分が存在することは好ましくない。 有機電界発光素子用組成物A中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシール、乾燥剤の使用、溶媒を予め脱水する、水の溶解度が低い溶媒を使用する等が挙げられる。 なかでも、水の溶解度が低い溶媒を使用する場合には、塗布工程中に、溶液塗膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐことができるため好ましい。

    また本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒として、20℃における表面張が好ましくは40dyn/cm未満、より好ましくは36dyn/cm以下、さらに好ましくは33dyn/cm以下である溶媒が挙げられる。
    本発明の重合体を含有する層を湿式成膜法により形成する場合、下地との親和性が重要である。 膜質の均一性は有機電界発光素子の発光の均一性、安定性に大きく影響するため、湿式成膜法に用いる塗布液には、よりレベリング性が高く均一な塗膜を形成し得るように表面張力が低いことが求められる。 このような溶媒を使用することにより、本発明の重合体を含有する均一な層を形成することができる。

    このような低表面張力を有する溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族系溶媒、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、アニソール等のエーテル系溶媒、トリフルオロメトキシアニソール、ペンタフルオロメトキシベンゼン、3−(トリフルオロメチル)アニソール、エチル(ペンタフルオロベンゾエート)等が挙げられる。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒としてはまた、25℃における蒸気圧が通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、通常0.1mmHg以上の溶媒が挙げられる。 このような溶媒を使用することにより、有機電界発光素子を湿式成膜法により製造するプロセスに好適なものとすることができ、また、本発明の重合体の性質に適した組成物とすることができる。 このような溶媒の具体例としては、前述したトルエン、キシレン、メチシレン等の芳香族系溶媒、エーテル系溶媒およびエステル系溶媒が挙げられる。 これらの溶媒の組成物中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。

    また本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含有される溶媒として、25℃における蒸気圧が通常2mmHg以上、好ましくは3mmHg以上、より好ましくは4mmHg以上であり、好ましくは10mmHg以下である溶媒と、25℃における蒸気圧が通常2mmHg未満、好ましくは1mmHg以下、より好ましくは0.5mmHg以下である溶媒との混合溶媒も挙げられる。 このような混合溶媒を使用することにより、湿式成膜法により本発明の重合体、更には電子受容性化合物を含む均質な層を形成することができる。 このような混合溶媒の有機電界発光素子用組成物A中の濃度は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。

    また、本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、必要に応じ、電子受容性化合物や、有機電界発光素子用組成物Aを用いて形成した有機層の溶解性を低下させ、該有機層上へ他の層を塗布することを可能とする、架橋反応を促進するための添加物等の添加剤を含んでいてもよい。 また架橋反応を促進する添加物は、本発明の重合体を含有する層に隣接する層に添加することも可能である。
    有機電界発光素子用組成物A中に上記添加剤を用いる場合、本発明の重合体と上記添加剤との双方を通常0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上溶解する溶媒を使用することが好ましい。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Aに用いられる、本発明の重合体の架橋反応を促進する添加物としては、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩などの重合開始剤や重合促進剤、縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物などの光増感剤等が挙げられる。 これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

    また、本発明の有機電界発光素子用組成物Aに含まれる電子受容性化合物としては、後述する有機電界発光素子の正孔注入層の欄で説明する電子受容性化合物を1種または2種以上を使用することができる。

    また上述した溶媒以外の溶媒も用いることができ、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等を用いることも可能である。

    またさらに、本発明の有機電界発光素子用組成物Aは、レベリング剤や消泡剤等の塗布性改良剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。 また、例えば有機電界発光素子用組成物Aが発光層を形成する際に用いられるものである場合等には、後述する有機電界発光素子の欄で説明する発光材料等を含んでいてもよい。

    (有機太陽電池素子用組成物A)
    本発明の有機太陽電池素子用組成物Aは、本発明の重合体及び溶媒を含有する。 本発明の効果を損なわない限り、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。

    (有機電界発光素子用組成物Aを用いた有機層の成膜)
    有機電界発光素子は、通常、多数の重合体からなる有機層を積層して形成するため、膜質が均一であることが非常に重要である。
    本発明の有機電界発光素子用組成物Aを用いて有機層を形成する場合、通常湿式成膜法により成膜を行なう。

    尚、本発明において湿式成膜法とは、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法、キャピラリーコート法、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法等の湿式で成膜される方法をいう。 これらの成膜方法の中でも、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法が好ましい。 これらが、上記有機電界発光素子用組成物Aの液性に合うためである。

    本発明においては、上記有機電界発光素子用組成物Aを用いて形成した有機層上に、さらに他の有機層を湿式成膜法等により形成する場合、有機電界発光素子用組成物Aを用いて形成した層を他の溶媒に不溶化させるため、成膜後、通常加熱処理を行なう。

    加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。 加熱乾燥の場合の条件としては、通常100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上、また通常400℃以下、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下に、有機電界発光素子用組成物Aを用いて形成された層を加熱する。 加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。 加熱手段としては特に限定されないが、形成された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。 例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。

    また、加熱と合わせて、光などの電磁エネルギー照射を行なってもよい。 電磁エネルギーの照射は、例えば超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。 光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。

    照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
    加熱および光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。 組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
    加熱および光を含む電磁エネルギー照射は、実施後に層に含有する水分および/または表面に吸着する水分の量を低減するために、窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが好ましい。 同様の目的で、加熱および/または光などの電磁エネルギー照射を組み合わせて行う場合には、少なくとも有機発光層の形成直前の工程を窒素ガス雰囲気等の水分を含まない雰囲気で行うことが特に好ましい。
    また、本発明の有機太陽電池素子用組成物Aを用いた有機層の成膜も上記と同様である。

    B. 発光層材料 本発明の発光層材料は、熱解離可溶性基を有する低分子化合物からなることを特徴とする。 発光層材料を低分子化合物(分子量が単一な化合物)とした場合、高純度化が容易であり、かつ有機層を形成した際の性能のぶれを小さくできるという利点がある。 以下、本発明の発光層材料を低分子化合物、と称する場合がある。

    本発明の発光層材料が、低分子化合物(分子量が単一な化合物)である場合、該化合物の分子量は、通常300以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、通常20000以下、好ましくは10000以下、より好ましくは5000以下である。 分子量がこの上限値を上回ると、合成経路が煩雑となり高純度化が困難となる場合がある。 また不純物の高分子量化によって化合物の精製が困難となる場合がある。 また、分子量がこの下限値を下回ると、成膜性が低下する場合があり、ガラス転移温度、融点および気化温度が低下するため、耐熱性が著しく損なわれる場合がある。

    [熱解離可溶性基の割合]
    また、低分子化合物の分子量/熱解離可溶性基数の比率は、通常200以上であり、好ましくは300以上、より好ましくは500以上である。 また通常4000以下、好ましくは3500以下、より好ましくは3000以下である。 この下限値を下回ると、熱解離可溶性基が熱解離後の化合物の電気的耐久性が低下したり、結晶性が過多になりすぎて膜のクラッキングが起きる可能性がある。 また反対に上限値を大きく上回ると、熱解離可溶性基の熱解離による溶解性抑制の効果が低くなりやすく、電気的耐久性が低下したり、電荷輸送性が低下したり、耐熱性が低下したりする可能性がある。

    [低分子化合物の構造]
    本発明の熱解離可溶性基を有する、低分子化合物として、例えば、下記化学式(U1)あるいは(U2)で表される化合物が挙げられる。

    (式(U1)中、環A

    は芳香族環を表す。該芳香族環は1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。


    、S

    、R

    、R

    は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。


    〜R

    は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。


    ただし、R

    〜R

    が全てが同時に水素原子であることはない。 )

    (式(U2)中、環B

    は芳香族環を表す。該芳香族環は1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、該置換基同士が直接または2価の連結基を介して環を形成していてもよい。


    11 〜S

    14 、R

    11 〜R

    16は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアミノ基、置換基を有していてもよいへテロアリールアミノ基または置換基を有していてもよいアシルアミノ基を表す。 )


    ここで、化学式(U1)中、環A

    は、芳香族環を表す。 また化学式(U2)中、環B

    は、芳香族環を表す。 環A

    及び環B

    で表される該芳香族環は、それぞれ1又は2以上の置換基を有していてもよい。 芳香族環は、芳香族炭化水素環であってもよくまた、芳香族複素環であってもよい。


    該芳香族炭化水素環の核炭素数は通常6以上である。 また通常40以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。

    該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、トリフェニレン環、フルオランテン環、フルオレン環等が挙げられる。
    上記の中でも環A および環B が、それぞれ独立に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびテトラセン環からなる群から選ばれることが好ましい。

    また、該芳香族複素環の核炭素数は、通常3以上である。 また通常50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。

    また芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、等が挙げられる。

    また、上記化学式(U1)及び(U2)中の環A 及び環B は、同種または異なる2種以上の環構造単位が1以上10以下、直接、もしくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子、核炭素数1以上20以下のヘテロ原子を含んでも良い鎖状基、及び炭素数が1以上20以下の脂肪族基から選ばれる1種以上の2価の連結基を介して連結した構造とすることも可能である。 なお連結される環構造単位としては、上記芳香族炭化水素環や芳香族複素環と同様、または異なる芳香族炭化水素環や芳香族複素環とすることができる。 またこれらの芳香族炭化水素環及び芳香族複素環は置換基を有していてもよい。

    環A または環B の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1以上10以下の直鎖または分岐のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基等の炭素数1以上8以下のアルキニル基;ベンジル基等の炭素数2以上8以下のアラルキル基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等のヘテロアリールアミノ基;アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素数1以上8以下のアルコキシ基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルアオキシル基、エチルカルボニルアオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の炭素数1以上15以下のアシルオキシル基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、等の炭素数10以上20以下のアリールオキシル基;等が挙げられる。 これらの置換基はお互いに直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO 、−(C 2x )−、−O−(C 2y )−、置換もしくは無置換の炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等、2価の連結基を介して結合し、環状構造を形成してもよい。 上記xおよびyは、それぞれ1以上20以下の整数を表す。
    これらの置換基は1種のみ、または2種以上が任意の組み合わせで1つ、または2つ以上が環A または環B に置換していてもよい。

    上記化学式(U1)及び化学式(U2)におけるS 、S 、S 11 〜S 14 、R 、R 、及びR 11 〜R 16は、それぞれ独立に、水素原子;水酸基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは10以下の直鎖または分岐のアルキル基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下の芳香族炭化水素環基;置換基を有していてもよい核炭素数が5以上40以下の芳香族複素環基;ベンジル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常50以下、好ましくは8以下のアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上、通常50以下、好ましくは8以下のアルコキシ基;フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上、好ましくは6以上、通常50以下、好ましくは15以下のアリールオキシ基;置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上50以下のアシル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルケニル基;エチニル基、プロパギル基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常1以上8以下のアルキニル基;アクリロイルオキシル基、メチルカルボニルオキシル基、エチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルメチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシカルボニルエチルカルボニルオキシル基、ヒドロキシフェニルカルボニルオキシル基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常2以上、通常50以下、好ましくは15以下のアシルオキシ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常6以上50以下のアリールアミノ基;ピリジルアミノ基、チエニルアミノ基、ジチエニルアミノ基等の置換基を有していてもよい核炭素数が通常5以上50以下のへテロアリールアミノ基;またはアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の置換基を有していてもよい炭素数が通常2以上50以下のアシルアミノ基を表す。

    上記化学式(U1)におけるR 〜R は、それぞれ独立に、水素原子、または置換基を有していてもよい核炭素数が通常1以上、好ましくは2以上、また通常20以下、好ましくは10以下のアルキル基を表す。 ただし、R 〜R 全てが同時に水素原子であることはない。
    式(U1)において、R 〜R 全てが同時に水素原子であることがない理由は下記の通りである。
    低分子化合物の場合、一つの分子内に有する熱解離可溶性基の数が、重合体の場合と比べて少ない。 つまり、熱解離可溶性基の解離前後で、溶媒に対する溶解性の差が付き難い。 しかしながら、R 〜R の少なくとも一つにアルキル基が導入されることにより、R 〜R が同時に水素原子である場合に比べて、熱解離可溶性基の解離前後での、溶媒に対する溶解性が付き易い。
    また、式(U2)ではR 12 〜R 15の全てが同時に水素原子であってもよく、R 12 〜R 15の全てが同時に水素原子でなくてもよい。 式(U2)ではR 12 〜R 15全てが同時に水素原子であってもよい理由は下記の通りである。
    式(U2)では、もう一つの(ビシクロ環の)架橋部分がアルキレン基(−CS 1113 −CS 1214 −)であり、(U1)におけるアルケニル基(−CS =CS −)よりも溶解性を向上させる効果が高いためR 12 〜R 15はすべて水素原子であってもよい。
    また、式(U2)では、2段階に熱解離するため、式(U1)に比べ、溶解性のオンオフがつきやすいことも挙げられる。

    上記化合物の中でも、下記化学式(U5)あるいは下記化学式(U6)で表される化合物が、電気化学的耐久性がさらに向上するため、より好ましい。

    ここで化学式(U5)及び(U6)中、uは0〜4の整数を表す。 uはベンゼン環の数を表し、uが0の場合、熱解離可溶性基が結合する芳香族炭化水素環はベンゼン環であり、uが1の場合はナフタレン環、uが2の場合はアントラセン環やフェナントレン環等となる。
    また、S 1' 、S 2' 、R 1' 〜R 6' 、S 11' 〜S 14' 、及びR 11' 〜R 16'については、上記化学式(U1)及び(U2)におけるS 、S 、R 〜R 、S 11 〜S 14 、及びR 11 〜R 16と同様であり、Tは、上記化学式(U1)及び(U2)における環A 及び環B の置換基と同様である。 また、複数のTはそれぞれ独立であり、同一であってもよくまた異なっていてもよい。 また複数のTは、直接、あるいは、−O−、−S−、>CO、>SO 、−(C 2x )−、−O−(C 2y )−、置換基を有してもよい炭素数2以上20以下のアルキリデン基、置換基を有してもよい炭素数2以上20以下のアルキレン基等の2価の連結基を介して結合していてもよく、環状構造を形成していてもよい。 上記xおよびyは、それぞれ0以上20以下の整数を表す。

    また、本発明の発光層材料は、前記「A.重合体」の項で説明した、化学式(U3)又は(U4)で表される、2価の繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。
    さらに、化学式(U3)又は化学式(U4)で表される化合物は、各々、「前記A.重合体」の項で記載した化学式(U7)又は化学式(U8)で表される2価の繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。
    また、低分子化合物(分子量が単一な化合物)は、正孔をトラップし発光効率を高める点で、下記式(II)で表される2価の基を分子内に含むことが好ましい。

    (化学式(II)中、Ar

    a1及びAr

    a2は、各々独立に、置換基を有していていてもよい芳香族炭化水素環基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。


    但し、Ar

    a2が末端にある場合には、連結部位の一方が水素で置換される。 )


    上記化学式(II)中、Ar

    a1及びAr

    a2は、同一であってもよく、また異なっていてもよい。 Ar

    a1及びAr

    a2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有してもよい芳香族複素環基を表す。 Ar

    a2が末端にある場合には、連結部位の一方が水素で置換される。


    Ar

    a1及びAr

    a2における置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基、及び置換基を有していてもよい芳香族複素環基の具体例は、前記「A.重合体」の項の、式(X)におけるAr

    11 〜Ar

    15におけるものと同様である。


    また、Ar

    a1及びAr

    a2における芳香族炭化水素環基、及び芳香族複素環基が有していてもよい置換基の具体例は、前記「A.重合体」の項の、式(X)におけるAr

    11 〜Ar

    15におけるものと同様である。

    [発光層材料(低分子化合物)の具体例]
    以下に、発光層材料(低分子化合物)の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。

    化学式(A1)及び(A2)中の、S

    a1 、S

    a2 、R

    a1 〜R

    a6 、S

    a11 〜S

    a14 、R

    a11 〜R

    a16 、Z

    a1 、Z

    a2 、Z

    a11 、及びZ

    a12の組み合わせについては、それぞれ下記の表3〜表8に示される。 以下、表中、Phはフェニル基を表す。

    上記化合物において、エタノ基およびエテノ基上のS a2またはS a12に置換基を有する場合には、S a1またはS a11にアルキル基を有することが熱解離可溶性基の熱解離反応効率が向上するため、好ましい。 また好ましい化合物として以下に示すものも挙げられる。

    各化学式(A1)〜(A10)中の各基の組み合わせについては、下記の表9〜11に示す。

    また本発明の発光層材料が、その構造中に有していてもよい基を以下構造式群Cに示す。

    <構造式群C>

    [発光層材料(低分子化合物)の合成方法]
    上述の発光層材料(低分子化合物)の合成は、目的とする化合物の構造に応じて原料を選択し、公知の手法を用いることにより行なうことができる。 例えば以下の方法により合成可能であるが、これらに限定されるものではない。

    以下の式1または式2で例示するように、ジエン化合物とアセチレンあるいはキノン化合物とを付加させることにより、目的とする、エテノ構造を有する熱解離可溶性基を有する低分子化合物を合成することができる。

    上記方法による合成の際、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどアルコール系のプロティック溶媒、好ましくは5重量%以上、50重量%以下エタノールを含有する水溶液中で、ジエン化合物(DDI)とキノン化合物(EEI)とを反応させることが、付加反応時の副生成物が少なく、高い収率で目的物が得られることから好ましい。

    <DDI>

    またエタノ基型の熱解離可溶性基を有する化合物のジブロモ体は、下記の式3及び式4で表される反応により得られる。 式1で得られたエテノ基型の熱解離可溶性基を有する化合物のジヒドロキシ体(Q2)を2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノーp−ベンゾキノン(DDQ)によりキノン化した後(Q4)、p−ブロモフェニル基を導入しジヒドロキシ体(Q5)とする(式3)。 さらに、該ジヒドロキシ体(Q5)を沃化水素水溶液と反応させることによって、ヒドロキシ置換エタノ基型の熱解離可溶性基を有する化合物のジブロモ体(Q6)が得られる。
    さらに、このエタノ基上の水酸基に水酸基と反応する各種官能基を有する化合物を反応させることにより、様々な機能を有する置換基を導入することができ、目的とする化合物(Q7)を得ることが出来る(式4)。

    また、エテノ基型の熱解離可溶性基を有する化合物のジアミノ体は、式5で示すように、式1で得られたエテノ基型の熱解離可溶性基を有する化合物のジヒドロキシ体(Q2)にp−アミドフェニル基を導入し(Q8)、水酸化カリウムによりアミド基をアミノ化することにより合成される。

    また、低分子化合物についても、重合体の項で説明したN−Ar結合を形成する反応やAr−Ar結合を形成する反応など公知のカップリング手法を用いて合成することができる。
    以下に、分子量が単一である化合物のN−Ar結合を形成する反応やAr−Ar結合を形成する反応を用いた合成法を示す。

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF SO O−基等のスルホン酸エステル基を示す。Ar a 、Ar 及びAr は、それぞれ独立に置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、Ar は置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。Ar 、Ar 、Ar 及びAr のうち少なくとも一つは、熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、Ar 、Ar 、Ar 、及びAr のうちいずれか1つ以上が架橋性基を有していてもよい。)

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示す。Ar

    及びAr

    は、それぞれ独立に置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、Ar

    aは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。


    Ar

    a 、Ar

    、及びAr

    のうち少なくとも一つは、熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、これらは架橋性基を有してもよい。 )

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示す。Ar

    a 、Ar

    及びAr

    は、それぞれ独立に置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示す。


    Ar

    a 、Ar

    、及びAr

    のうち少なくとも一つは、熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、これらは架橋性基を有していてもよい。 )

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、R'はヒドロキシ基または互いに結合して環を形成してもよいアルコキシ基を示す。Ar

    aは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、Ar

    は置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。


    Ar

    a 、Ar

    のうち少なくとも一つは熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、これらは架橋性基を有していてもよい。 )

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、R'はヒドロキシ基または互いに結合して環を形成してもよいアルコキシ基を示す。Ar

    は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、Ar

    は置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい2価の芳香族複素環基を示す。


    Ar

    a 、Ar

    のうち少なくとも一つは熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、これらは架橋性基を有していてもよい。 )

    (上記式中、Xはハロゲン原子又は、CF

    SO

    O−基等のスルホン酸エステル基を示し、R'はヒドロキシ基または互いに結合して環を形成してもよいアルコキシ基を示す。Ar

    a 、Ar

    は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい芳香族炭化水素環基又は置換基を有してもよい芳香族複素環基を示す。Ar

    a 、Ar

    のうち少なくとも一つは熱解離可溶性基が結合した部分構造を有し、これらは架橋性基を有していてもよい。)

    [低分子化合物からなる発光層材料である理由]
    発光層では、他の層に比べて、微量の不純物がクエンチャーとして働いたり、電荷バランスを崩して、発光効率を低下させる可能性があるため、発光層材料は他の層に比べて高純度化する必要がある。
    発光層材料は、分子量単一で純度の決定が容易な点、及び、分子量分布のブレが素子性能のブレにつながる可能性がない点、末端基を持たない点から低分子化合物であることが好ましい。
    発光効率が高い材料は、通常、対称性が高く、有機溶媒に対する溶解性に乏しく、高純度化が困難な傾向がある。 熱解離可溶性基を有することによって、発光効率が高い材料の溶解性向上が可能となり、高純度化が容易となる。

    [有機電界発光素子用組成物B]
    本発明の有機電界発光素子用組成物Bは、少なくとも上記発光層材料及び溶媒を含有する。
    発光材料(ドーパント材料)が最も高純度であることが要求される点から、本発明の有機電界発光素子用組成物Bは、発光材料(ドーパント材料)として、熱解離可溶性基を有する材料を含むことが好ましい。
    該有機電界発光素子用組成物Bにおける発光層材料の含有量は、通常0.5重量部以上、好ましくは1重量部以上、通常50重量部以下、好ましくは10重量部以下である。 この範囲とすることにより、発光効率の向上及び素子の低電圧化の効果が得られる。 尚、前記発光層材料は組成物B中に、1種のみ含まれていてもよく、2種以上が組み合わせて含まれていてもよい。

    有機電界発光素子用組成物Bに含有される溶媒は、湿式成膜により発光層材料を含む層を形成するために用いる、揮発性を有する液体成分である。
    溶媒は、溶質が良好に溶解する溶媒であれば特に限定されないが、以下の例が好ましい。
    例えば、n−デカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、ビシクロヘキサン等のアルカン類;トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル類;シクロヘキサノン、シクロオクタノン、フェンコン等の脂環族ケトン類;シクロヘキサノール、シクロオクタノール等の脂環族アルコール類;メチルエチルケトン、ジブチルケトン等の脂肪族ケトン類;ブタノール、ヘキサノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル類;等が挙げられる。
    中でも好ましくは、アルカン類や芳香族炭化水素類である。 これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。

    また、より均一な膜を得るためには、成膜直後の液膜から溶媒が適当な速度で蒸発することが好ましい。 このため、溶媒の沸点は通常80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、また、通常270℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは沸点230℃以下である。
    溶媒の使用量は、有機電界発光素子用組成物B100重量部に対して、好ましくは10重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは80重量部以上、また、好ましくは99.95重量部以下、より好ましくは99.9重量部以下、特に好ましくは99.8重量部以下である。 含有量が下限を下回ると、粘性が高くなりすぎ、成膜作業性が低下する可能性がある。 一方、上限を上回ると、成膜後、溶媒を除去して得られる膜の厚みが稼げなくなるため、成膜が困難となる傾向がある。

    本発明の有機電界発光素子用組成物Bには、本発明の発光層材料や溶媒の他、有機電界発光素子、特に発光層に用いられる電荷輸送性化合物を含有することができる。
    本発明の有機電界発光素子用組成物Bを用いて、発光層を形成する場合には、本発明の発光層材料をドーパント材料とし、他の電荷輸送性化合物をホスト材料として含んでいてもよい。

    他の電荷輸送性化合物としては、従来有機電界発光素子用材料として用いられているものを使用することができる。 例えば、ナフタレン、ペリレン、アントラセン、ピレン、トリフェニレン、クリセン、ナフタセン、フェナントレン、コロネン、フルオランテン、ベンゾフェナントレン、フルオレン、アセトナフトフルオランテン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体、キナクリドン誘導体、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン、アリールアミノ基が置換された縮合芳香族環化合物、アリールアミノ基が置換されたスチリル誘導体等が挙げられる。

    他の電荷輸送性化合物は、該組成物Bを100重量部とすると、通常1重量部以上、また、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
    有機電界発光素子用組成物Bには、必要に応じて、上記の化合物等の他に、更に他の化合物を含有していてもよい。 例えば、上記の溶媒の他に、別の溶媒を含有していてもよい。 そのような溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。 これらは1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
    また、成膜性の向上を目的として、レベリング剤や消泡剤等の各種添加剤を含有してもよい。

    (有機電界発光素子用組成物Bを用いた有機層の成膜)
    有機電界発光素子用組成物Bを用いた有機層の成膜は、前記(有機電界発光素子用組成物Aを用いた有機層の成膜)の項に記載の方法と同様である。 好ましい態様も同様である。

    C. 有機電界発光素子材料 また、本発明の有機電界発光素子材料は、分子内に芳香族炭化水素環または芳香族複素環を有する化合物であって、該芳香族炭化水素環または該芳香族複素環に縮合した炭化水素環に熱解離可溶性基が結合している部分構造を有する化合物を加熱して得られるものであってもよい。
    該有機電界発光素子材料としては、上記で説明した重合体または発光層材料を加熱して得られる構造を有するものとすることができる。 具体的には、上述した重合体または発光層材料(低分子化合物)から熱解離可溶性基が脱離した構造等とすることができる。
    なお、上記加熱は、通常70℃以上、好ましくは100℃以上で行なわれ、また好ましくは300℃以下で行なわれる。

    D. 有機電界発光素子 本発明の有機電界発光素子は、陽極および陰極、該陽極と該陰極の間に有機層を有するものであり、該有機層として、前述の有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成された層を有することを特徴とする。 本発明においては、特に有機層の中でも正孔注入層、正孔輸送層、または発光層を、上記有機電界発光素子用組成物を用いて湿式成膜法により形成することが好ましい。
    尚、本発明の有機電界発光素子用組成物Aを用いて湿式成膜法で形成された層が、正孔注入層又は正孔輸送層であることが特に好ましい。
    また、本発明の有機電界発光素子用組成物Bを用いて湿式成膜法で形成された層が、発光層であることが好ましい。

    <有機電界発光素子の構成>
    以下に、本発明の有機電界発光素子の層構成およびその形成方法等について、図1を参照して説明する。
    図1は本発明にかかる有機電界発光素子の構造例を示す断面の模式図であり、図1において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は正孔阻止層、7は電子輸送層、8は電子注入層、9は陰極をそれぞれ表す。

    (基板)
    基板1は有機電界発光素子の支持体となるものであり、例えば石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。 これらは1種類のみ用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせで用いてもよい。 上記の中でも特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。 合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意する必要がある。 基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機電界発光素子が劣化する可能性がある。 このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。

    (陽極)
    陽極2は発光層5側の層への正孔注入の役割を果たすものである。
    この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。 これらは1種類のみ用いてもよく、また2種類以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。

    陽極2の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われることが多い。 また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。 さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。

    陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
    陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。 透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが好ましい。 この場合、陽極2の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。 不透明でよい場合は陽極2の厚みは任意であり、陽極2は基板1と同一でもよい。 また、さらには、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。

    陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極2表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。

    (正孔注入層)
    正孔注入層3は、陽極2から発光層5へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極2上に形成される。
    本発明に係る正孔注入層3の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔注入層3を湿式成膜法により形成することが好ましく、この際、前述の有機電界発光素子用組成物Aを用いることが好ましい。

    正孔注入層3の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。

    <湿式成膜法による正孔注入層の形成>
    湿式成膜により正孔注入層3を形成する場合、通常は、正孔注入層3を構成する材料を適切な溶媒(正孔注入層用溶媒)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。

    (正孔輸送性化合物)
    正孔注入層形成用組成物は通常、正孔注入層の構成材料として正孔輸送性化合物および溶媒を含有する。
    正孔輸送性化合物は、通常、有機電界発光素子の正孔注入層に使用される、正孔輸送性を有する化合物であれば、高分子化合物であっても、低分子化合物であってもよい。 本発明においては、正孔輸送性化合物として前述の本発明の重合体を用いることができる。

    また、正孔輸送性化合物としては、陽極2から正孔注入層3への電荷注入障壁の観点から4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。 正孔輸送性化合物の他の例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン化合物、シラザン化合物、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン系化合物等が挙げられる。

    正孔注入層3の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、このような化合物のうち何れか1種を単独で含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。 2種以上の正孔輸送性化合物を含有する場合、その組み合わせは任意であるが、芳香族三級アミン高分子化合物1種または2種以上と、その他の正孔輸送性化合物1種または2種以上とを併用することが好ましい。
    上記例示した中でも非晶質性、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。 ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。

    芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果による均一な発光の点から、重量平均分子量が1000以上、1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)がさらに好ましい。 芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。

    (式(I)中、Ar

    およびAr

    は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Ar

    〜Ar

    は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。Yは、下記の連結基群の中から選ばれる連結基を表す。また、Ar

    〜Ar

    のうち、同一のN原子に結合する二つの基は互いに結合して環を形成してもよい。

    (上記各式中、Ar

    〜Ar

    16は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基または置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。R

    およびR

    は、それぞれ独立して、水素原子または任意の置換基を表す。)

    Ar 〜Ar 16の芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の基が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環由来の基がさらに好ましい。

    Ar 〜Ar 16の芳香族炭化水素環基および芳香族複素環基は、さらに置換基を有していてもよい。 置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。 置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが好ましい。
    およびR が任意の置換基である場合、該置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基などが挙げられる。

    式(I)で表される繰り返し単位を有する芳香族三級アミン高分子化合物の具体例としては、国際公開第2005/089024号パンフレットに記載のものが挙げられる。

    正孔注入層形成用組成物中の、正孔輸送性化合物の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜厚の均一性の点で通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、また、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。 この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると成膜された正孔注入層に欠陥が生じる可能性がある。

    (電子受容性化合物)
    正孔注入層形成用組成物は正孔注入層3の構成材料として、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
    電子受容性化合物とは、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、5eV以上の化合物である化合物がさらに好ましい。

    このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物等が挙げられる。 さらに具体的には、4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩(国際公開第2005/089024号パンフレット);塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。

    これらの電子受容性化合物は、正孔輸送性化合物を酸化することにより正孔注入層3の導電率を向上させることができる。
    正孔注入層3或いは正孔注入層形成用組成物中の電子受容性化合物の正孔輸送性化合物に対する含有量は、通常0.1モル%以上、好ましくは1モル%以上である。 但し、通常100モル%以下、好ましくは40モル%以下である。

    (その他の構成材料)
    正孔注入層3の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述の正孔輸送性化合物や電子受容性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させてもよい。 その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。 なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。

    (溶媒)
    湿式成膜法に用いる正孔注入層形成用組成物の溶媒のうち少なくとも1種は、上述の正孔注入層の構成材料を溶解しうる化合物であることが好ましい。 また、この溶媒の沸点は通常110℃以上、好ましくは140℃以上、中でも200℃以上、通常400℃以下、中でも300℃以下であることが好ましい。 溶媒の沸点が低すぎると、乾燥速度が速すぎ、膜質が悪化する可能性がある。 また、溶媒の沸点が高すぎると乾燥工程の温度を高くする必要があり、他の層や基板に悪影響を与える可能性がある。
    溶媒として例えば、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、アミド系溶媒などが挙げられる。

    エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル、等が挙げられる。

    エステル系溶媒としては、例えば、酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル、等が挙げられる。

    芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イロプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルナフタレン等が挙げられる。
    アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
    その他、ジメチルスルホキシド、等も用いることができる。
    これらの溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いてもよい。

    (成膜方法)
    正孔注入層形成用組成物を調製後、この組成物を湿式成膜により、正孔注入層3の下層に該当する層(通常は、陽極2)上に塗布成膜し、乾燥することにより正孔注入層3を形成する。
    成膜工程における温度は、組成物中に結晶が生じることによる膜の欠損を防ぐため、10℃以上が好ましく、50℃以下が好ましい。
    成膜工程における相対湿度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.01ppm以上、通常80%以下である。

    成膜後、通常加熱等により正孔注入層形成用組成物の膜を乾燥させる。 特に、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて正孔注入層3を形成する場合には、通常、加熱工程が行なわれる。 加熱工程において使用する加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。 中でも、膜全体に均等に熱を与えるためには、クリーンオーブンおよびホットプレートが好ましい。

    加熱工程における加熱温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り、正孔注入層形成用組成物に用いた溶媒の沸点以上の温度で加熱することが好ましい。 また、正孔注入層中に本発明の有機電界発光素子材料が含有される場合、熱解離可溶性基が解離する温度以上の温度で加熱することが好ましい。 また、正孔注入層形成用組成物に用いた溶媒が2種類以上含まれている混合溶媒の場合、少なくとも1種類がその溶媒の沸点以上の温度で加熱されるのが好ましい。 溶媒の沸点上昇を考慮すると、加熱工程においては、好ましくは120℃以上、好ましくは410℃以下で加熱することが好ましい。
    加熱工程において、加熱温度が正孔注入層形成用組成物の溶媒の沸点以上であり、かつ塗布膜の十分な不溶化が起こらなければ、加熱時間は限定されないが、好ましくは10秒以上、通常180分以下である。 加熱時間が長すぎると他の層の成分が拡散する傾向があり、短すぎると正孔注入層3が不均質になる傾向がある。 加熱は2回にわけて行ってもよい。

    <真空蒸着法による正孔注入層の形成>
    真空蒸着により正孔注入層3を形成する場合には、正孔注入層3の構成材料(前述の正孔輸送性化合物、電子受容性化合物等)の1種または2種以上を真空容器内に設置されたるつぼに入れ(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼに入れ)、真空容器内を適当な真空ポンプで10 −4 Pa程度まで排気した後、るつぼを加熱して(2種以上の材料を用いる場合は各々のるつぼを加熱して)、蒸発量を制御して蒸発させ(2種以上の材料を用いる場合はそれぞれ独立に蒸発量を制御して蒸発させ)、るつぼと向き合って置かれた基板1の陽極2上に正孔注入層3を形成させる。 なお、2種以上の材料を用いる場合は、それらの混合物をるつぼに入れ、加熱、蒸発させて正孔注入層3を形成することもできる。

    蒸着時の真空度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1×10 −6 Torr(0.13×10 −4 Pa)以上、通常9.0×10 −6 Torr(12.0×10 −4 Pa)以下である。 蒸着速度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常0.1Å/秒以上、通常5.0Å/秒以下である。 蒸着時の成膜温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、好ましくは10℃以上で、好ましくは50℃以下で行われる。

    [正孔輸送層]
    本発明に係る正孔輸送層4の形成方法は真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポット低減の観点から正孔輸送層4を湿式成膜法により形成することが好ましい。 この際、前述の本発明の有機電界発光素子用組成物Aを用い、湿式成膜することが好ましい。

    正孔輸送層4は、正孔注入層3がある場合には正孔注入層3の上に、正孔注入層3が無い場合には陽極2の上に形成することができる。 また、本発明の有機電界発光素子は、正孔輸送層4を省いた構成であってもよい。

    正孔輸送層4を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。 そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光の光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。 また、多くの場合、発光層5に接するため、発光層5からの発光を消光したり、発光層5との間でエキサイプレックスを形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。

    このような正孔輸送層4の材料としては、例えば本発明の重合体や、従来、正孔輸送層の構成材料として用いられている材料を用いることができ、従来用いられている材料としては、例えば、前述の正孔注入層3に使用される正孔輸送性化合物として例示したものが挙げられる。 また、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4''−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール誘導体などが挙げられる。 また、例えばポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン(特開平7−53953号公報)、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン(Polym.Adv.Tech.,7巻、33頁、1996年)等が挙げられる。

    湿式成膜で正孔輸送層4を形成する場合は、上記正孔注入層3の形成と同様にして、正孔輸送層形成用組成物を調製した後、湿式成膜後、加熱乾燥させる。
    正孔輸送層形成用組成物には、上述の正孔輸送性化合物の他、溶媒を含有する。 用いる溶媒は上記正孔注入層形成用組成物に用いたものと同様である。 また、成膜条件、加熱乾燥条件等も正孔注入層3の形成の場合と同様である。 なお、正孔輸送層形成用組成物として、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いることが可能である。

    真空蒸着により正孔輸送層4を形成する場合もまた、その成膜条件等は上記正孔注入層3の形成の場合と同様である。
    正孔輸送層4は、上記正孔輸送性化合物の他、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダー樹脂、塗布性改良剤などを含有していてもよい。

    正孔輸送層4はまた、架橋性化合物を架橋して形成される層であってもよい。 架橋性化合物は、架橋性基を有する化合物であって、架橋することによりポリマーを形成する。
    この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタンなどが挙げられる。

    架橋性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。 架橋性化合物は1種のみを有していてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で有していてもよい。
    この架橋性基の例を挙げると、オキセタン、エポキシなどの環状エーテル;ビニル基、トリフルオロビニル基、スチリル基、アクリル基、メタクリロイル、シンナモイル等の不飽和二重結合;ベンゾシクロブタンなどが挙げられる。

    架橋性化合物としては、架橋性基を有する正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。 正孔輸送性化合物の例を挙げると、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体等の含窒素芳香族化合物誘導体;トリフェニルアミン誘導体;シロール誘導体;オリゴチオフェン誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが挙げられる。 その中でも、ピリジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、フェナントロリン誘導体、カルバゾール誘導体等の含窒素芳香族誘導体;トリフェニルアミン誘導体、シロール誘導体、縮合多環芳香族誘導体、金属錯体などが好ましく、特に、トリフェニルアミン誘導体がより好ましい。
    架橋性化合物を架橋して正孔輸送層4を形成するには、通常、架橋性化合物を溶媒に溶解または分散した正孔輸送層形成用組成物を調製して、湿式成膜により成膜して架橋させる。

    正孔輸送層形成用組成物には、架橋性化合物の他、架橋反応を促進する添加物を含んでいてもよい。 架橋反応を促進する添加物の例を挙げると、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシムエステル化合物、アゾ化合物、オニウム塩等の重合開始剤および重合促進剤;縮合多環炭化水素、ポルフィリン化合物、ジアリールケトン化合物等の光増感剤;などが挙げられる。
    また、さらに、レベリング剤、消泡剤等の塗布性改良剤;電子受容性化合物;バインダー樹脂;などを含有していてもよい。

    正孔輸送層形成用組成物は、架橋性化合物を通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.1重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下含有する。
    このような濃度で架橋性化合物を含む正孔輸送層形成用組成物を下層(通常は正孔注入層3)上に成膜後、加熱および/または光などの電磁エネルギー照射により、架橋性化合物を架橋させてポリマー化する。
    成膜時の温度、湿度などの条件は、前記正孔注入層3の湿式成膜時と同様である。
    成膜後の加熱の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。 加熱乾燥の場合の加熱温度条件としては、通常120℃以上、好ましくは400℃以下である。

    加熱時間としては、通常1分以上、好ましくは24時間以下である。 加熱手段としては特に限定されないが、成膜された層を有する積層体をホットプレート上に載せたり、オーブン内で加熱するなどの手段が用いられる。 例えば、ホットプレート上で120℃以上、1分間以上加熱する等の条件を用いることができる。

    光などの電磁エネルギー照射による場合には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、赤外ランプ等の紫外・可視・赤外光源を直接用いて照射する方法、あるいは前述の光源を内蔵するマスクアライナ、コンベア型光照射装置を用いて照射する方法などが挙げられる。 光以外の電磁エネルギー照射では、例えばマグネトロンにより発生させたマイクロ波を照射する装置、いわゆる電子レンジを用いて照射する方法が挙げられる。 照射時間としては、膜の溶解性を低下させるために必要な条件を設定することが好ましいが、通常、0.1秒以上、好ましくは10時間以下照射される。
    加熱および光などの電磁エネルギー照射は、それぞれ単独、あるいは組み合わせて行ってもよい。 組み合わせる場合、実施する順序は特に限定されない。
    このようにして形成される正孔輸送層4の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。

    [発光層]
    正孔注入層3の上、または正孔輸送層4を設けた場合には正孔輸送層4の上には発光層5が設けられる。 発光層5は、電界を与えられた電極間において、陽極2から注入された正孔と、陰極9から注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
    発光層を形成する方法は、真空蒸着法でも、湿式成膜法でもよく、特に制限はないが、ダークスポットの低減の観点から、発光層を湿式成膜法により形成することが好ましい。 この際、前述の本発明の有機電界発光素子用組成物Bを用い、湿式成膜することが好ましい。

    <発光層の材料>
    発光層5は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、あるいは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)を含有する。 発光材料をドーパント材料として使用し、正孔輸送性化合物や電子輸送性化合物などをホスト材料として使用してもよい。 発光層の材料としては、熱解離前の溶解性が高く成膜性に優れ、熱解離後の耐熱性が高く駆動安定性に優れる点で、本発明の発光層材料を用いることが好ましい。 更に、発光層5は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。 なお、湿式成膜法で発光層5を形成する場合は、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。

    (発光材料)
    発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。 例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。 また、青色は蛍光発光材料を用い、緑色や赤色は燐光発光材料を用いるなど、組み合わせて用いてもよい。
    なお、溶媒への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
    以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。

    青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ナフタレン、クリセン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼンおよびそれらの誘導体等が挙げられる。
    緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(C NO) などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
    黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
    赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。

    燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
    周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。
    錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。 ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
    燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。

    発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。 発光材料の分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。 一方、発光材料の分子量が大き過ぎると、有機電界発光素子材料の精製が困難となってしまったり、溶媒に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
    なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。

    発光層5における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05重量%以上、通常35重量%以下である。 発光材料が少なすぎると発光ムラを生じる可能性があり、多すぎると発光効率が低下する可能性がある。 なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。

    (正孔輸送性化合物)
    発光層5には、その構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。 ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、例えば、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91, pp.209)等が挙げられる。
    なお、発光層5において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。

    発光層5における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。 正孔輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。 なお、2種以上の正孔輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。

    (電子輸送性化合物)
    発光層5には、その構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。 ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6'−(2',2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4'−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、発光層5において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。

    発光層5における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.1重量%以上、通常65重量%以下である。 電子輸送性化合物が少なすぎると短絡の影響を受けやすくなる可能性があり、多すぎると膜厚ムラを生じる可能性がある。 なお、2種以上の電子輸送性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。

    <発光層の形成>
    発光層5を形成する場合は、上記材料を適切な溶媒に溶解させて発光層形成用組成物を調製し、それを用いて成膜することにより形成する。 この際、本発明の有機電界発光素子用組成物Bを用いることが好ましい。
    発光層5を湿式成膜法で形成するための発光層形成用組成物に含有させる発光層用溶媒としては、発光層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。 発光層用溶媒の好適な例は、上記正孔注入層形成用組成物で説明した溶媒と同様である。
    発光層5を形成するための発光層形成用組成物に対する発光層用溶媒の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下、である。 なお、発光層用溶媒として2種以上の溶媒を混合して用いる場合には、これらの溶媒の合計がこの範囲を満たすようにする。

    また、発光層形成用組成物中の発光材料、正孔輸送性化合物、電子輸送性化合物等の固形分濃度としては、通常0.01重量%以上、通常70重量%以下である。 この濃度が大きすぎると膜厚ムラが生じる可能性があり、また、小さすぎると膜に欠陥が生じる可能性がある。

    発光層形成用組成物を湿式成膜後、得られた塗膜を乾燥し、溶媒を除去することにより、発光層が形成される。 具体的には、上記正孔注入層の形成において記載した方法と同様である。 湿式成膜法の方式は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されず、前述のいかなる方式も用いることができる。

    発光層5の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。 発光層5の膜厚が、薄すぎると膜に欠陥が生じる可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。

    [正孔阻止層]
    発光層5と後述の電子注入層8との間に、正孔阻止層6を設けてもよい。 正孔阻止層6は、発光層5の上に、発光層5の陰極9側の界面に接するように積層される層である。
    この正孔阻止層6は、陽極2から移動してくる正孔を陰極9に到達するのを阻止する役割と、陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とを有する。
    正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。 このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。 更に、国際公開第2005−022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層6の材料として好ましい。
    なお、正孔阻止層6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
    正孔阻止層6の形成方法に制限はない。 従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
    正孔阻止層6の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。

    [電子輸送層]
    発光層5と後述の電子注入層8の間に、電子輸送層7を設けてもよい。
    電子輸送層7は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極9から注入された電子を効率よく発光層5の方向に輸送することができる化合物より形成される。

    電子輸送層7に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極9または電子注入層8からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。 このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N'−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。

    なお、電子輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
    電子輸送層7の形成方法に制限はない。 従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。
    電子輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。

    [電子注入層]
    電子注入層8は、陰極9から注入された電子を効率良く発光層5へ注入する役割を果たす。 電子注入を効率よく行なうには、電子注入層8を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。 例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられ、その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。

    更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。 この場合の膜厚は、通常、5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
    なお、電子注入層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
    電子注入層8の形成方法に制限はない。 従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。

    [陰極]
    陰極9は、発光層5側の層(電子注入層8または発光層5など)に電子を注入する役割を果たすものである。
    陰極9の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金が用いられる。 具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。
    なお、陰極9の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
    陰極9の膜厚は、通常、陽極2と同様である。

    さらに、低仕事関数金属から成る陰極9を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。 この目的のために、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。 なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。

    [その他の層]
    本発明に係る有機電界発光素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。 例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極9との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。 例えば、後述の実施例で作製した有機電界発光素子は、図1の有機電界発光素子に対して、正孔阻止層6、および電子輸送層7が省略されている。

    <電子阻止層>
    上記各層以外に有機電界発光素子が有していてもよい層としては、例えば、電子阻止層が挙げられる。
    電子阻止層は、正孔注入層3または正孔輸送層4と発光層5との間に設けられ、発光層5から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、発光層5内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層5内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく発光層5の方向に輸送する役割とがある。 特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は電子阻止層を設けることが効果的である。

    電子阻止層に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。 更に、本発明においては、発光層5を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層にも湿式成膜の適合性が求められる。 このような電子阻止層に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号パンフレット記載)等が挙げられる。
    なお、電子阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
    電子阻止層の形成方法に制限はない。 従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成することができる。

    <その他>
    さらに陰極9と発光層5または電子輸送層7との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF 2 )、酸化リチウム(Li 2 O)、炭酸セシウム(II)(CsCO 3 )等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年,Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。

    また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。 例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極9、電子注入層8、電子輸送層7、正孔阻止層6、発光層5、正孔輸送層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けてもよい。
    更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明に係る有機電界発光素子を構成することも可能である。
    また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。 その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V 25 )等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。

    更には、本発明に係る有機電界発光素子は、単一の有機電界発光素子として構成してもよく、複数の有機電界発光素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。

    また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていてもよい。

    本発明の有機EL表示装置及び有機EL照明は、上述のような本発明の有機電界発光素子を用いたものである。 本発明の有機EL表示装置及び有機EL照明の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
    例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社,平成16年8月20日発行,時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で有機EL表示装置及び有機EL照明を形成することができる。

    また本発明の熱解離可溶性基を有する有機電界発光素子材料を含有する有機層を有する有機電界発光素子は、フラットパネル・ディスプレイ(例えばOAコンピュータ用や壁掛けテレビ)、車載表示素子、携帯電話表示や面発光体としての特徴を生かした光源(例えば、複写機の光源、液晶ディスプレイや計器類のバックライト光源)、表示板、標識灯への応用が考えられ、その技術的価値は大きいものである。
    が好ましい。

    <有機太陽電池素子>
    本発明の有機太陽電池素子は、陽極と、陰極との間に、有機層を有する有機太陽電池素子であって、該有機層が、本発明の重合体を含有する有機太陽電池素子用組成物Aを用いて湿式成膜法により形成された層(解離層)を有する有機太陽電池素子である。
    さらに、本発明の有機太陽電池素子は、有機層として光電変換層及び正孔取出し層を含み、該正孔取出し層が解離層であることが好ましい。

    [基板]
    基板は有機半導体素子(有機半導体層を含む素子)を支持する支持部材である。 基板を形成する材料としては、例えば、ガラス、サファイア、チタニア等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、フッ素樹脂フィルム、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、セルロース、アセチルセルロース、ポリ塩化ビニリデン、アラミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリノルボルネン等の有機材料;ステンレス、チタン、ニッケル、銀、金、銅、アルミニウム等の金属材料;などが挙げられる。
    これらの中でも、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂フィルム、ステンレス、アルミニウムが有機半導体素子の形成しやすさの点で好ましい。
    なお、基板の材料は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。 また、これら有機材料に炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維を含ませ、機械的強度を補強させてもよい。 また、これら金属材料に絶縁性を付与するために表面をコートあるいはラミネートしたものなどの複合材料としてもよい

    [有機半導体素子]
    有機半導体素子として、下記に有機薄膜太陽電池素子(本明細書では、単に有機太陽電池素子ともいう)について記載するが、本発明を著しく損なわない限り他の有機電子デバイスを排除するものではない。 さらに、有機薄膜太陽電池素子も、以下に説明される例に限定されるものではない。
    有機薄膜太陽電池素子は、少なくとも一対の電極の間に設けられた有機半導体を含有する有機半導体層(本明細書では、単に有機層ともいう)から構成される。 かかる有機半導体層で光を吸収して電力が発生し、発生した電力が電極から取り出されるようになっている。

    [有機半導体層]
    任意の有機半導体により形成できる。 有機半導体は半導体特性により、p型、n型に分けられる。 p型、n型は、電気伝導に寄与するのが、正孔、電子いずれであるかを示しており、材料の電子状態、ドーピング状態、トラップ状態に依存する。 したがって、以下に有機半導体の例を挙げるが、p型、n型は必ずしも明確に分類できない場合があり、同一物質でp型、n型両方の特性を示すものもある。

    p型半導体の例として、テトラベンゾポルフィリン、テトラベンゾ銅ポルフィリン、テトラベンゾ亜鉛ポルフィリン等のポルフィリン化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン等のフタロシアニン化合物;ナフタロシアニン化合物;テトラセンやペンタセンのポリアセン;セキシチオフェン等のオリゴチオフェンおよびこれら化合物を骨格として含む誘導体が挙げられる。 さらに、ポリ(3−アルキルチオフェン)などを含むポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリフェニレンビニレン、ポリトリアリルアミン、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール等の高分子等が例示される。

    n型半導体の例として、フラーレン(C 60 、C 70 、C 76 );オクタアザポルフィリン;上記p型半導体のパーフルオロ体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物; 及び、これら化合物を骨格として含む誘導体などが挙げられる。

    少なくともp型の半導体およびn型の半導体が含有されていれば、有機半導体層の具体的な構成は任意である。 単層の膜のみによって構成されていてもよく、2以上の積層膜によって構成されていてもよい。 例えば、n型の半導体とp型の半導体とを別々の膜に含有させるようにしてもよく、n型の半導体とp型の半導体とを同じ膜に含有させてもよい。
    また、n型の半導体及びp型の半導体は、それぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

    有機半導体層の具体的な構成例としては、p型半導体とn型半導体が層内で相分離した層(i層)を有するバルクヘテロ接合型、それぞれp型半導体を含む層(p層)とn型半導体を含む層(p層)が界面を有する積層型(ヘテロpn接合型)、ショットキー型およびそれらの組合せが挙げられる。 これらの中でもバルクへテロ接合型およびバルクへテロ接合型と積層型を組み合わせた(p−i―n接合型)が高い性能を示すことから好ましい。
    有機半導体層のp層、i層、n層各層の厚みに制限はないが、通常3nm以上、中でも10nm以上、また、通常200nm以下、中でも100nm以下とすることが好ましい。 層厚を厚くすることで膜の均一性が高まる傾向にあり、薄くすることで透過率が向上する、直列抵抗が低下する傾向にある。

    [正孔取出し層]
    正孔取出し層は、有機半導体層側に面した電極界面に電気特性等の改良のために設ける層である。
    正孔取出し層を形成する為の材料としては、本発明の重合体を用いることが特に好ましいが、その他の材料を用いることもできる。 その他の材料としては、例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)、酸化モリブデン、フッ化リチウム、2,9ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。

    [電極]
    電極としては導電性を有する任意の材料により形成することが可能である。 電極の材料の例を挙げると、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金;酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl 等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。 なかでも、正孔の捕集する電極には、Au、ITO等の深い仕事関数を有する材料が好ましい。 一方、電子の捕集する電極には、Alのような浅い仕事関数を有する材料が好ましい。 仕事関数を最適化することにより、光吸収により生じた正孔及び電子を良好に捕集する利点がある。

    一対の電極のうち、少なくとも受光面側の電極は、発電のために光透過性を有していることが好ましい。 但し、発電層の面積に比べて電極の面積が小さいなど、電極が透明でなくても発電性能に著しく悪影響を与えない場合は必ずしも透明でなくてもよい。 透明な電極の材料を挙げると、例えば、ITO、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の酸化物;金属薄膜などが挙げられる。 また、この際、光の透過率の具体的範囲に制限は無いが、有機太陽電池素子の発電効率を考慮すると、光学界面での部分反射によるロスを除き、80%以上が好ましい。
    なお、電極の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。

    また、電極の形成方法に制限はない。 例えば、真空蒸着、スパッタ等のドライプロセスにより形成することができる。 また、例えば、導電性インク等を用いたウェットプロセスにより形成することもできる。 この際、導電性インクとしては任意のものを使用することができ、例えば、導電性高分子、金属粒子分散液等を用いることができる。
    さらに、電極は2層以上積層してもよく、表面処理による特性(電気特性やぬれ特性等)を改良してもよい。

    [その他の層]
    上記の例に示した有機太陽電池素子 は、上述した有機半導体層、電極以外に、その他の層を備えてもよい。 なお、その他の層を形成する位置は有機太陽電池素子の発電を阻害しない限り任意である。

    <有機太陽電池素子の性能評価>
    本発明に係る有機太陽電池素子は、以下のような性能を持つ。
    下記に示す加速試験を行ない、試験前後での光電変換特性の変化を比較することで性能を評価することができる。
    評価方法:加速試験は、環境試験機(例えば、エスペック社製SH−241)中にて高温高湿環境に設置することとする。 高温高湿環境は、40℃90%RHもしくは85℃85%RHとすることが好ましい。 試験期間は、デバイス構成材料により適宜選択できるが、24時間以上は行なうことが好ましい。 また、光電変換特性は、有機薄膜太陽電池素子にソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度100mW/cm 照射して、電流・電圧特性の測定を行なう。 かかる測定から得られる電流・電圧曲線から、エネルギー変換効率(PCE)、短絡電流、開放電圧、FF(フィルファクター)、直列抵抗、シャント抵抗を求めることができる。
    光電変換特性の加速試験前後を比較する式としては、例えば、PCE変化率=(加速試験後のPCE)/(加速試験前のPCE)が挙げられる。
    つまり本発明に係る有機太陽電池素子のエネルギー変換効率(PCE)変化率は、上式で定義されるように通常、初期性能に対して加速試験後の値が、0.86以上であり、好ましくは、0.88以上、より好ましくは0.90以上である。

    本発明に係わる有機電子デバイスは、荷重がかかった時にも捕捉剤を含む層と素子電極が接触せず、劣化防止効果が高い性能もある。 評価としては、ガスバリアフィルム側から捕捉剤を含む層を有機半導体素子方向に押しつけるときに接触有無を確認すればよい。
    本発明に係わる有機電子デバイスは、耐候性良好である。 屋外暴露試験、耐候性試験機により耐候性試験を実施しても、性能を維持し、高い耐久性能を示す。 防食層の存在により電極劣化が抑制されているためと考えられる。 また、耐候性保護シートを積層した場合にはより高い耐候性を有する。

    本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。

    [合成例]
    (合成例1)化合物Q2の合成

    空気気流中、水(4500ml)にアルファ-フェランドレン(42.12g)とベンゾキノン(33.8g)を添加し、2日間、室温、超音波にて攪拌し、析出してきた結晶を濾取、水洗、乾燥させ、化合物Q1を得た。


    続いて、攪拌しながらエタノール(200ml)に化合物Q1(39g)を溶解、ついで35%NaOH溶液0.1gを添加し、30分間攪拌を保持した後、水(400ml)を加え、析出してくる結晶を濾取、水洗、乾燥させ、化合物Q2(39g)を得た。

    (NMR測定の結果)
    化合物Q2: H NMR(CDCl ,400MHz) δ0.84(d,3H)、0.93(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.80(s、3H),3.94−3.97(m、1H),4.22(d、1H),5.84(d、1H),6.45(s、2H)、

    (合成例2)化合物Q6の合成

    窒素気流中、化合物Q2(30.6g)と2,3−ジクロロー5,6−ジシアノーp−ベンゾキノン(DDQ)(33g)とをトルエン溶液(700ml)に溶解させ、2時間攪拌反応させた後、析出してきた複精製物を濾取し、濾液を濃縮ヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、乾燥化合物Q4(24.5g)を得た。 1,4−ジブロモベンゼン(29.5g)をテトラヒドロフラン(THF)100ml溶液に溶解させ、−78℃に冷却、攪拌しながらn−ブチルリチウム1.6M/L 70mlを30分かけ滴下し、3時間攪拌した。 この溶液に、化合物Q1(10.24g)を溶解させたTHF溶液100mlを1時間かけて滴下した後、−78℃にて2時間攪拌保持した。 この反応溶液を室温に戻し一晩放置させた。 続いて、この溶液に水200mlを加え攪拌、有機層を分取、さらにMgSO

    乾燥した後、ヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、乾燥化合物Q5(24.5g)を得た。


    次に空気気流中、化合物Q5(24.5g)をTHF(500ml)に溶解した後、55%沃化水素を2g添加、60分間攪拌を保持し、続いて、この溶液に水(200ml)を添加し、粗品化合物Q6を析出させた。 この粗品化合物Q6をヘキサンおよび酢酸エチルを展開溶媒としたシリカゲルカラムによって精製し、さらに日本分析工業社製リサイクル分取HPLCLC−9204型(分取カラムJAIGEL−1H−40)により精製して化合物Q6(0.8g)を得た。

    (NMR測定の結果)
    化合物Q4: H NMR(CDCl ,400MHz) δ0.834(d,3H)、1.1019(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−3.97(m、1H),4.22(d、1H),5.83(d、1H),6.59(s、2H)

    (Mass測定の結果)
    化合物Q6のMASS分析手法は、下記の方法にて行なった。
    DEI法、DCI法(日本電子社製質量分析計 JMS−700/MStation)
    イオン化法 DEI(positive ion mode)、
    DCI(positive ion mode)−イソブタンガス 加速電圧:70eV
    エミッター電流変化率:0Aから0.9A
    走査質量数範囲:m/z100−1300 2.0sec/scan
    結果はm/z=M+538であった。

    (合成例3)化合物Q10の合成

    窒素気流中、攪拌しながら化合物Q2(5.08g)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)アセトアニリド(5.2g)と炭酸ソーダ(4.3g)とをトルエン(260ml)、エタノール(130ml)、及び水(240ml)の混合溶媒に溶解し、40分間窒素バブリングを施した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを0.25g加え100℃にて6時間反応させた。 次いで室温に戻し1晩放置し結晶を析出させた。 結晶を濾取、エタノールにて洗浄して化合物Q8(4.3g)を得た。


    化合物Q8(4.3g)と水酸化カリウム(15g)とを75%エタノール水溶液(250ml)に溶解させ、100℃にて10時間加熱したのち室温に戻し、水を100ml添加析出してくる結晶を濾取し、化合物Q9(2g)を得た。


    10分間窒素バブリングしたトルエン(10g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.015g)と1,1'−フェロセンビス(ジフェニルフォスフィン)(0.056g)とを溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。 その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q9(2g)、ブロモベンゼン(1.6g)とターシャリーブトキシナトリウム(3,4g)とをトルエン(200ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、100℃にて4時間攪拌した。 この溶液を室温に戻し、水を100ml添加して析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q10(1.3g)を得た。

    (Mass測定の結果)
    化合物Q10のMASS分析手法は下記の方法により行なった。
    DEI法、DCI法(日本電子社製 質量分析計 JMS−700/MStation)
    イオン化法 DEI(positive ion mode)、
    DCI(positive ion mode)−イソブタンガス 加速電圧:70eV
    エミッター電流変化率: 0Aから0.9A
    走査質量数範囲: m/z 100−800 2.0sec/scan
    結果は、m/z=M+546であった。

    (合成例4)化合物Q11の合成

    10分間窒素バブリングしたトルエン(10g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.015g)とトリス−ターシャリーブチルフォスフィン(0.015g)を溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。 その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q9(2g)、ブロモベンゼン(3.2g)とターシャリーブトキシナトリウム(3.4g)とをトルエン(200ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、100℃にて4時間攪拌した。 この溶液を室温に戻し、水を100ml添加し、析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q11(1.5g)を得た。


    (NMR測定の結果)


    化合物Q11:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ0.83(d,3H)、0.93(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−4.05(m、1H),4.26(d、1H),5.90(d、1H),6.90−7.3(m、30H)

    (実施例1)
    化合物Q11に230℃で30分間加熱処理を施すと、NMRの同定から化合物Q11から2−ビニルプロパンが脱離した化合物Q12が得られた。
    前述した化合物Q11 2mgをトルエン100gに溶解させた溶液に、紫外光(366nm)を照射すると、紫青発光が観測されたが、230℃で30分間の加熱処理を施して得られた化合物Q12 2mgをトルエン100gに溶解させた溶液に、紫外光(366nm)を照射すると、真青発光が得られた。

    <Ethanolに対する溶解性の評価>
    エタノール10mgが入った2本の5mlサンプル瓶に10mgの化合物Q11を添加、超音波攪拌機により、20分間攪拌処理を施したところ化合物Q11は完全に溶解した。 一方、同様の実験を化合物Q12に対して行ったところ80%以上が溶解できずに残留した。

    (NMR測定の結果)
    化合物Q12: H NMR(CDCl ,400MHz) δ2.4(s,3H)、6.9−7.85(m、33H)

    (実施例2)
    化合物Q6に230℃で30分間加熱処理を施すと、化合物Q6から2−ビニルプロパンと水が脱離した化合物Q14が得られた。

    <Ethanolに対する溶解性の評価>
    エタノール10mgが入った2本の5mlサンプル瓶に10mgの化合物Q6を添加し、超音波攪拌機により、20分間攪拌処理を施したところ化合物Q6は完全に溶解した。 一方、同様の実験を化合物Q14に対して行ったところ90%以上が溶解できずに残留した。

    (NMR測定の結果)
    化合物Q14: H NMR(CDCl ,400MHz) δ2.4(s,1H)、7.2−7.85(m、13H)

    (Mass測定の結果)
    化合物Q14のMASS分析手法は以下のように行なった。
    DEI法、DCI法(日本電子社製 質量分析計 JMS−700/MStation)
    イオン化法 DEI(positive ion mode)
    DCI(positive ion mode)−イソブタンガス 加速電圧:70eV エミッター電流変化率: 0Aから0.9A
    走査質量数範囲: m/z 100−800 2.0sec/scan
    結果はm/z=M+450であった。

    (合成例5)重合体1の合成

    上記で合成された化合物Q10(0.71g、1.30mmol)、4,4'−ジブロモビフェニル(0.39g、1.26mmol)、tert−ブトキシナトリウム(0.47g、4.86mmol)、及びトルエン(7ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液A)。


    トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.013g、0.0013mmol)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.0210g、0.0104mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液B)。


    窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、2時間加熱還流反応した。 反応液を放冷して、反応液をメタノール200ml中に滴下し、粗ポリマー1を晶出させた。


    この粗ポリマー1をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。 得られた粗ポリマー1をトルエン45mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.041g、0.3mmol)、及びtert−ブトキシナトリウム(1.80g、2mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、50℃まで加温した(溶液C)。


    トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.013g、1.2mmol)のトルエン5ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.003g、1.6mmol)を加え、50℃まで加温した(溶液D)。


    窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。 この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.22g、1.3mmol)のトルエン(34ml)溶液を添加し、さらに、8時間、加熱還流反応した。 反応液を放冷し、メタノールに滴下し、粗ポリマー1を得た。


    得られた粗ポリマー1をトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。 濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、本発明に係る重合体1を得た(0.29g)。


    重量平均分子量(Mw)=106696


    数平均分子量(Mn)=47937


    分散度(Mw/Mn)=2.23


    重合体1の熱解離を示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製:DSC6220)により観測した。 熱解離は、温度が230℃で効率よく起こることが確認された。

    (合成例6)
    合成例1においてアルファ-フェランドレン(42.1g)を1,3−シクロヘキサジエン(24.7g)に変更した外は、同様に反応および、精製処理を行い化合物Q15(29.6g)を得た。

    (NMR測定の結果)


    化合物Q15:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ1.5−1.6(m,4H)、4.32(m,2H)、6.45(s,2H)

    (合成例7)
    合成例2において得られた、粗品化合物Q6中に副精製物として含まれる化合物Q16をリサイクル分取HPLCLC−9204型(分取カラムJAIGEL−1H−40:日本分析工業社製)により分取し化合物Q16(0.5g)を得た。

    (NMR測定の結果)


    化合物Q16:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ0.834(d,3H)、0.92(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−3.97(m、1H),4.22(d、1H),5.83(d、1H),6.9−7.4(m、10H)

    (合成例8)
    (合成例2)においてQ2(30.6g)の代わりにQ5(22.4g)に変えた他は、同様にして下記構造式で表される化合物Q17(0.3g)を得た。

    (NMR測定の結果)


    化合物Q17:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ1.5−1.6(m,4H)、4.32(m,2H)、6.45(m,2H)、7.0−7.7(m、10H)

    (合成例9)

    10分間窒素バブリングしたトルエン(30g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.28g)とトリス−ターシャリーブチルフォスフィン(0.29g)を溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。 その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q16(0.84g)(合成例7で合成した化合物Q16)、N−フェニル-1-アミノピレン(1.08g)とターシャリーブトキシナトリウム(1.07g)とをトルエン(100ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、80℃にて3時間攪拌した。 この溶液を室温に戻し、水を10ml添加し、析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q19(0.7g)を得た。

    (NMR測定の結果)
    化合物Q19: H NMR(CDCl ,400MHz) δ0.83(d,3H)、0.93(d,3H)、1.04−1.118(m,1H)、1.19−1.23(m,3H)、1.87(s、3H),3.94−4.05(m、1H),4.26(d、1H),5.90(d、1H),6.90−3.3(m、38H)

    (合成例10)

    10分間窒素バブリングしたトルエン(10g)にジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン)クロロフォルム(0.025g)とトリス−ターシャリーブチルフォスフィン(0.027g)を溶解したのち、70℃にて10分間加熱した。 その後、このパラジウム触媒溶液を、化合物Q17(0.067g)(合成例8で合成した化合物Q17)、N−フェニル-1-アミノピレン(0.098g)とターシャリーブトキシナトリウム(0.098g)とをトルエン(10ml)に溶解、40分間窒素バブリングを施した溶液に添加、窒素気流中、80℃にて3時間攪拌した。 この溶液を室温に戻し、水を10ml添加し、析出してくる結晶を濾取、エタノールで洗浄し化合物Q20(0.06g)を得た。


    (NMR測定の結果)


    化合物Q20:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ1.5−1.6(m,4H)、4.32(m,2H)、6.45(m,2H)、6.9−8.3(m、38H)

    (合成例11)
    化合物Q19に230℃で30分間加熱処理を施すと、NMRの同定から化合物Q19から2−ビニルプロパンが脱離した化合物Q21が得られた。

    (NMR測定の結果)


    化合物Q21:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ2.4(s,3H)、6.9−8.3(m、41H)

    <有機溶媒に対する溶解性の評価>
    トルエン:ヘキサン(10:1重量比)の混合溶液100mgが入った2本の5mlサンプル瓶に5mgの化合物Q19を添加、超音波攪拌機により、5秒間攪拌処理を施したところ化合物Q19は完全に溶解した。 一方、同様の実験を化合物Q21に対して行ったところ80%以上が溶解できずに残留した。

    (合成例12)
    化合物Q20に230℃で30分間加熱処理を施すと、NMRの同定から化合物Q20からエチレンが脱離した化合物Q22が得られた。

    (NMR測定の結果)


    化合物Q22:

    H NMR(CDCl

    ,400MHz) δ6.9−8.3(m、42H)

    <有機溶媒に対する溶解性の評価>
    トルエン:ヘキサン(1:1重量比)の混合溶液100mgが入った2本の5mlサンプル瓶に5mgの化合物Q20を添加、超音波攪拌機により、5秒間攪拌処理を施したところ化合物Q20は完全に溶解した。 一方、同様の実験を化合物Q22に対して行ったところ80%以上が溶解できずに残留した。
    トルエン:ヘキサン(10:1重量比)の混合溶液に対する溶解性を評価したところ、Q20とQ22ともに80%以上溶解できずに残留した。

    (合成例13)

    トルエン(60ml)、EtOH(30ml)の混合溶媒にQ23(6.91g)、ボロン酸エステル(3.54g)を加え、40分間窒素バブリングした。 反応溶液に炭酸ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム 6.6gを水30mlに溶解した後、30分窒素バブリング)を加えた。 続いて、Pd(PPh

    0.78gを加え、反応溶液を2時間還流した。 有機層を分取したのち、水で2回洗浄した。 有機層を減圧乾固した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、Q24(4.6g、収率:69%)を得た。

    (合成例14)

    トルエン(60ml)、EtOH(30ml)の混合溶媒にQ24(6.9g)、フェニルボロン酸エステル(1.25g)を加え、40分間窒素バブリングした。 反応溶液に炭酸ナトリウム水溶液(炭酸水素ナトリウム 6.6gを水30mlに溶解した後、30分窒素バブリング)を加えた。 続いて、Pd(PPh

    0.54gを加え、反応溶液を8時間還流した。 有機層を分取したのち、水で2回洗浄した。 有機層を減圧乾固した後、カラムクロマトグラフィーにより精製し、Q25(2.6g、収率:66%)を得た。

    (合成例15)

    200mLのナスフラスコにQ25(2.6g)、エタノール(80ml)を加え攪拌した。 溶液に水酸化カリウム水溶液(KOH 13.8g/水 15ml)を加えた後、溶液を85℃オイルバスにつけ7時間反応した。 溶液を室温まで放冷したのち、氷で冷却し、生成物を結晶化した。 結晶をろ過した後、水で懸洗、乾燥し、Q26(1.66g、収率:71%)を得た。

    (合成例16)

    Q26(2.23g)、4,4'−ジブロモビフェニル(0.92g)、tert−ブトキシナトリウム(1.81g)、及びトルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液A)。


    一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(60mg)のトルエン溶液(5ml)に、トリ−t−ブチルホスフィン95mgを加え、65℃まで加温した(溶液B)。


    窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、加熱還流反応した。 2時間後、ジブロモベンゼン(0.68g)を加え、120分還流した。 反応溶液に再度溶液Bを加え、30分後、ジブロモベンゼン(15mg)を追加し、このまま2時間反応した。


    反応液を放冷して、反応液をエタノール中に滴下し、粗ポリマー2を晶出させた。


    得られた粗ポリマー2をトルエン100mLに溶解させ、ブロモベンゼン0.18g、tert−ブトキシナトリウム1.81gを仕込み、系内を十分に窒素置換して、65℃まで加温した(溶液C)。


    一方、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体30mgのトルエン溶液6mLに、トリ−t−ブチルホスフィン45mgを加え、65℃まで加温した(溶液D)。


    窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。 この反応液に、N,N−ジフェニルアミン0.99gを添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。 反応液を放冷し、エタノールに滴下し、エンドキャップした粗ポリマー2を得た。


    このエンドキャップした粗ポリマー2をトルエン250mLに溶解し、希塩酸200mLにて洗浄し、アンモニア含有エタノール400mLにて再沈殿した。 得られたポリマーをアセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。 濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合体2(1.04g)を得た。 なお、重合体2の重量平均分子量及び数平均分子量を測定したところ、以下の通りであった。


    重量平均分子量(Mw)=31000


    数平均分子量(Mn)=18400


    分散度(Mw/Mn)=1.68

    (合成例17)

    攪拌しながらQ27(3.4g)に室温で塩酸(3.8g)を滴下し、30分後水10mlを加え、0℃で冷やしたNaNO

    (1.3g)溶液を滴下、このまま1時間反応した。 この反応液を60℃のヨウ化カリウム(5.7g)溶液に加え、析出した沈殿を集めて塩化メチレンに溶かして分液を行った。 硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。 さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で精製することにより、Q28(3.6g)を得た。

    (合成例18)

    Q28(2.0g、3.2454mmol)、Q29(1.77g、3.245mmol)およびtert−ブトキシナトリウム(0.84g、8.76mmol)、トルエン(30ml)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液A)。


    トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.034g、0.033mmol)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.053g、0.26mmol)を加え、60℃まで加温した(溶液B)。


    窒素気流中、溶液Aに溶液Bを添加し、50分間、加熱還流反応した。 反応液を放冷して、反応液をエタノール300ml中に滴下し、粗ポリマー3を晶出させた。


    得られた粗ポリマー3をトルエン100mlに溶解させ、ブロモベンゼン(0.1g、0.649mmol)、tert−ブトキシナトリウム(0.84g、8.76mmol)を仕込み、系内を十分に窒素置換して、60℃まで加温した(溶液C)。


    トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムクロロホルム錯体(0.034g)のトルエン2ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン(0.053g)を加え、60℃まで加温した(溶液D)。


    窒素気流中、溶液Cに溶液Dを添加し、2時間、加熱還流反応した。 この反応液に、N,N−ジフェニルアミン(0.55g、3.245mmol)のトルエン(3ml)溶液を添加し、さらに、4時間、加熱還流反応した。 反応液を放冷し、エタノール/水(250ml/50ml)溶液に滴下し、粗ポリマー3を得た。


    この粗ポリマー3をトルエンに溶解し、アセトンに再沈殿し、析出したポリマーを濾別した。 得られたポリマーをトルエンに溶解させ、希塩酸にて洗浄し、アンモニア含有エタノールにて再沈殿した。 濾取したポリマーをカラムクロマトグラフィーにより精製し、重合体3を得た(0.6g)。


    重量平均分子量(Mw)=37000


    分散度(Mw/Mn)=1.7

    (実施例3)有機電界発光素子の作製[陽極]
    ガラス基板の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nmの厚みで成膜した(スパッタ成膜品、シート抵抗15Ω)。 この透明導電膜を、通常のフォトリソグラフィー技術により、2mm幅のストライプにパターニングし、陽極を形成した。
    陽極が形成された基板を、アセトンによる超音波洗浄、純水による水洗、イソプロピルアルコールによる超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、紫外線オゾン洗浄を行った。

    [正孔注入層]
    続いて、陽極の上に正孔注入層を形成した。 正孔注入層の材料として、下記に示す構造式の芳香族アミン系高分子化合物(PB−1:重量平均分子量29,400、数平均分子量12,600)および電子受容性化合物(A−1)、溶媒として、安息香酸エチルを含有する、正孔注入層形成用組成物を調製した。 正孔注入層形成用組成物の固形分濃度(PB−1およびA−1)は2重量%であり、PB−1:A−1=10:4(重量比)とした。 この組成物を上記陽極が形成された基板上にスピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒)により成膜した。 スピンコートを行なった後、260℃で180分の乾燥を行ない、膜厚30nmの均一な正孔注入層の薄膜を形成した。

    [正孔輸送層]
    正孔輸送層の材料として上記重合体1、溶媒としてトルエンを含有する正孔輸送層形成用組成物(有機電界発光素子用組成物)を調製した。 正孔輸送層形成用組成物の固形分濃度は、0.4重量%とした。 この組成物を用いて、スピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒)により、正孔注入層の上に正孔輸送層を成膜した。 スピンコートを行なった後、230℃で60分の加熱乾燥を行ない、膜厚20nmの均一な正孔輸送層の薄膜を形成した。

    [発光層]
    発光層の材料として、以下に示す化合物(DDD−1)と、以下に示す化合物(D−1)、溶媒としてトルエンを含有する発光層形成用組成物を調製した。 発光層形成用組成物の固形分濃度(DDD−1およびD−1)は0.75重量%であり、(DDD−1):(D−1)=10:1(重量比)とした。 この組成物を用いて、スピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒)により、正孔輸送層の上に発光層を成膜した。 スピンコートを行なった後、100℃で60分の加熱乾燥を行ない、膜厚50nmの均一な発光層の薄膜を形成した。

    [正孔阻止層・電子輸送層]
    続いて、形成した発光層の上に正孔阻止層を形成し、さらに、正孔阻止層の上に電子輸送層を形成した。 正孔阻止層の材料として、下記に示すHB−1を用いて、真空蒸着法により膜厚10nmの正孔阻止層を形成した。 次に、電子輸送層の材料として、下記に示すET−1を用いて、真空蒸着法により膜厚30nmの電子輸送層を形成した。

    [電子注入層・陰極]
    次に、電子輸送層の上に電子注入層を形成し、さらに、電子注入層の上に陰極を形成した。
    電子注入層は、フッ化リチウム(LIF)を用い、電子輸送層と同様に真空蒸着法によって膜厚0.5nmの電子注入層を形成した。
    また、陰極の材料としてアルミニウムを用い、膜厚80nmの陰極を、それぞれ陽極であるITOストライプと直交する形状の2mm幅のストライプ状に積層した。
    以上の操作によって作製した大きさ2mm×2mmの発光面積部分を有する有機電界発光素子に、7Vの電圧を印加した際の、発光素子としての発光の有無と発光色を評価した。
    その結果、化合物DDD−1を用いて作製した有機電界発光素子から、青色発光が得られた。 さらに、1000cd/m にて発光させた際の駆動電圧は、7.0Vであった。

    (比較例1)
    正孔輸送層形成用組成物に用いた重合体1を下記のポリマー(HT−1)に変更した以外は、実施例3と同様にして、有機電界発光素子を作製した。 その結果、青色の発光が観測された。 しかし、1000cd/cm に発光させた際の駆動電圧は8.1Vと高電圧であった。

    (実施例4)
    まず、ガラス基板上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜(三容真空社製、スパッタ成膜品)が、2mm幅のストライプ状にパターニングされている基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行なった。
    (正孔注入層の形成)
    下記に示す構造式の芳香族アミン系高分子化合物(PB−3:重量平均分子質量60000)2重量%と、前記電子受容性化合物(A−1)0.8重量%を、溶媒として安息香酸エチルに溶解し、固形分濃度2重量%の正孔注入層用塗布液を調製した。

    洗浄処理したITO基板上に、上記正孔注入層用塗布溶液を用いてスピンコート法にて正孔注入層を形成した。 スピンコートは気温23℃、相対湿度50%の大気中で行ない、回転数は1500rpm、回転時間は30秒とした。 塗布後、ホットプレート上で80℃1分間加熱乾燥した後、電極上の不要部分を拭き取り、オーブン大気中で230℃1時間ベークし、膜厚30nmの正孔注入層を形成した。

    (正孔輸送層の形成)
    次に、下記式(V)で表されるポリマー(重量平均分子質量95000)0.4重量%を、溶媒としてトルエンに溶解し、正孔輸送層用塗布液を作製した。 トルエンは市販品の脱水グレードを使用し、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で正孔輸送層用塗布液を調製した。

    正孔注入層を塗布した基板を窒素グローブボックスに入れ、正孔注入層上に、上記正孔輸送層用塗布液を用いてスピンコート法にて正孔注入層を形成した。 回転数は1500rpm、回転時間は30秒とした。 塗布後、電極上の不要部分を拭き取り、ホットプレート上で230℃1時間ベークし、膜厚30nmの正孔輸送層(B1)を形成した。


    正孔輸送層用塗布液調製、スピンコート、ベークすべて、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で大気暴露させずに行った。

    (発光層の形成)
    次に、発光層を塗布成膜するための発光層塗布液を調製した。
    ・発光層塗布液の調製 下記式(VI)で表される化合物を100重量部、下記化合物Q19を10重量部を、溶媒としてトルエンに溶解させ、0.8重量%の溶液を調製した。 この溶液を、0.2μmのPTFEフィルターでろ過し、発光層塗布液(D1)を調製した。 発光層塗布液(D1)は、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で行った。

    (発光層塗布成膜)
    正孔輸送層上に、発光層塗布液(D1)を用いてスピンコート法にて発光層を形成した。 スピンコートは、酸素濃度1.0ppm、水分濃度1.0ppmの窒素グローブボックス中で行い、回転数は1500rpm、回転時間は30秒とした。 塗布後、電極上の不要部分を拭き取り、ホットプレート上で230℃1時間加熱し、化合物Q19(合成例9で合成された化合物Q19)で表される化合物を化合物Q21(合成例11で合成された化合物Q21)で表される化合物に変換し、膜厚65nmの発光層を形成した。

    この基板を一旦大気中に取り出し、真空蒸着装置のチャンバー内に設置した。 チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。 真空度は1.0×10

    −4 Paであった。 基板には、所定の領域に、蒸着用マスクを配置し、チャンバーにはあらかじめ必要な蒸着材料をそれぞれ別のモリブデン製ボートに入れて配置しておいた。

    (正孔阻止層の形成)
    前記式HB−1で表される材料を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、発光層の上に蒸着した。 蒸着時の真空度は1.0×10 −4 Pa、蒸着速度1.0Å/sとし、正孔阻止層を膜厚10nmで形成した。
    (電子輸送層の形成)
    次に、前記式ET−1で表されるAlq を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、正孔阻止層の上に蒸着した。 蒸着時の真空度は1.0×10 −4 Pa、蒸着速度1.0Å/sとし、電子輸送層を膜厚30nmで形成した。

    (陰極形成)
    次に、基板を一旦大気中に取り出し、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極のITOストライプと直交するように配置し、蒸着装置に設置した。 チャンバーはロータリーポンプで粗引きした後、クライオポンプにて減圧した。 真空度は3.0×10 −4 Paであった。 陰極として、先ず、フッ化リチウム(LiF)を入れたモリブデン製ボートを通電加熱し、電子輸送層の上に蒸着した。 蒸着条件は、蒸着時の真空度は3.0×10 −4 Pa、蒸着速度0.05Å/sとし、膜厚0.5nmで成膜した。 最後に、アルミニウムを入れたモリブデン製ボートを通電加熱して陰極を蒸着した。 蒸着条件は、蒸着時の真空度は5.0×10 −4 Pa、蒸着速度2.0Å/sとし、膜厚70nm成膜した。

    (封止)
    次に、基板を一旦大気中に取り出し、窒素置換されたグローブボックスに移した。 窒素置換されたグローブボックス中では封止ガラス板の凹部に吸湿剤シートを貼り付け、封止ガラス板の凹部の周囲にUV硬化樹脂塗をディスペンサーにて塗布し、蒸着を行なった基板の蒸着領域を封止ガラス板で密封するように密着させ、UVランプにてUV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させた。
    以上の様にして、有機電界発光素子を得た。
    (素子評価確認)
    この素子に通電したところ、青色発光が得られた。 この素子を1000cd/m の輝度で発光させたときの電圧は9.2V、電流発光効率は3.1cd/Aであった。

    (実施例5)
    (有機電界発光素子作製)
    実施例4の発光層の材料のうち、化合物Q19の代わりに下記式で表される化合物Q20(合成例10で合成された化合物Q20)を用いた以外は実施例4と同様にして、有機電界発光素子を作製した。
    下記式で表される化合物Q20は、発光層塗布後、ホットプレート上で230℃1時間加熱した際に、下記式で表される化合物Q22に変換されている。

    (素子評価確認)
    この素子に通電したところ、青色発光が得られた。 この素子を1000cd/m の輝度で発光させたときの電圧は9.8V、電流発光効率は3.1cd/Aであった。

    (実施例6)
    実施例5において、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層5を下記のようにして形成した他は、実施例5と同様にして有機電界発光素子を形成した。
    (正孔注入層の形成)
    正孔注入層3を形成する材料として、下記式に示す構造の高分子化合物PB−2(重量平均分子量(Mw):93000、分散度:1.69)、電子受容性化合物として、下記式に示す構造の化合物A−1および溶媒として安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用組成物を調製した。 組成物中、該高分子化合物PB−2は2.0重量%、該化合物A−1は0.4重量%の濃度とした。 この組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、大気中にてスピンコート法により、上記陽極上に成膜し、230℃で3時間加熱することにより、該高分子化合物PB−2を架橋させ、乾燥させることにより、膜厚45nmの均一な薄膜(正孔注入層3)を形成した。

    (正孔輸送層の形成)
    正孔輸送層4を形成する材料として、本発明の重合体NH−1(合成例5で合成された重合体1、重量平均分子量(Mw):70000、分散度:1.9)および溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含有する正孔輸送層形成用組成物を調製した。 組成物中、重合体NH−1は、1.4重量%の濃度とした。 この組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、窒素中にてスピンコート法により、上記正孔注入層上に成膜し、230℃で1時間、窒素中にて加熱することにより、膜厚20nmの均一な薄膜(正孔輸送層)を形成した。

    (発光層の形成)
    発光層5を形成する材料として、前記化合物(DDD−1)と、前記化合物(D−1)、溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含有する発光層形成用組成物を調製した。 発光層形成用組成物の固形分濃度(DDD−1およびD−1)は3.1重量%であり、(DDD−1):(D−1)=10:1(重量比)とした。 この組成物を用いて、スピンコート(スピナ回転数:1500rpm、スピナ回転時間:30秒)により、正孔輸送層の上に発光層を成膜した。 スピンコートを行なった後、減圧下、130℃で60分の加熱乾燥を行ない、膜厚50nmの均一な発光層の薄膜を形成した。
    得られた素子の発光特性は以下の通りである。
    電圧:9.5[V] (2,500cd/m の輝度で発光時)
    輝度/電流:4.8[cd/A] (2,500cd/m の輝度で発光時)
    この素子の特性を表12に示す。 本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高い素子であることが分かる。

    (実施例7)
    実施例6において、正孔注入層3を下記のようにして形成したほかは、実施例6と同様にして有機電界発光素子を形成した。
    (正孔注入層の形成)
    正孔注入層3を形成する材料として、本発明の重合体NH−2(合成例15で合成された重合体2、重量平均分子量(Mw):31000、分散度:1.68)、電子受容性化合物として、下記式に示す構造の化合物A−1および溶媒として安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用組成物を調製した。 組成物中、該重合体NH−2は2.0重量%、該化合物A−1は0.4重量%の濃度とした。 この組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、大気中にてスピンコート法により、上記陽極上に成膜し、230℃で3時間加熱することにより、膜厚45nmの均一な薄膜(正孔注入層3)を形成した。

    得られた素子の発光特性は以下の通りである。


    電圧:7.4[V] (2,500cd/m

    の輝度で発光時)


    輝度/電流:4.6[cd/A] (2,500cd/m

    の輝度で発光時)


    この素子の特性を表12示す。 本発明の有機電界発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率が高い素子であることが分かる。

    (比較例2)
    実施例6において、正孔輸送層3を下記のようにして形成したほかは、実施例6と同様にして有機電界発光素子を形成した。
    (正孔輸送層の形成)
    正孔輸送層4を形成する材料として、下記に示す構造の高分子化合物HT−2(重量平均分子量(Mw):95000、分散度:2.2)および溶媒としてシクロヘキシルベンゼンを含有する正孔輸送層形成用組成物を調製した。 組成物中、重合体HT−2は、1.4重量%の濃度とした。 この組成物を、スピナ回転数1500rpm、スピナ回転時間30秒、窒素中にてスピンコート法により、上記正孔注入層上に成膜し、230℃で1時間、窒素中にて加熱することにより、膜厚20nmの均一な薄膜(正孔輸送層)を形成した。

    得られた素子の発光特性は以下の通りである。


    電圧:10.6[V] (2,500cd/m

    の輝度で発光時)


    輝度/電流:4.5[cd/A] (2,500cd/m

    の輝度で発光時)


    この素子の特性を表12に示す。


    (実施例8)単層素子の電流−電圧特性 図2に示す単層素子を作製した。
    ガラス基板1上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を120nmの厚さに堆積したもの(三容真空社製、スパッタ成膜品)を、通常のフォトリソグラフィー技術と塩酸エッチングを用いて2mm幅のストライプにパターニングして陽極2を形成した。 パターン形成したITO基板を、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気で乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
    前記本発明の重合体(NH−2)4.5重量%及び、構造式(A1)に示す4−イソプロピル−4'−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート0.9重量%を、溶媒としての安息香酸エチルに溶解した後、孔径0.2μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターを用いて濾過し、塗布組成物を作製した。 この塗布組成物を上記基板1上にスピンコートした。 スピンコートは気温23℃、相対湿度60%の大気中で行い、スピナ回転数は1500rpm、スピナ時間は30秒とした。 スピンコート後、オーブンにて常圧大気雰囲気中、230℃で1時間加熱した。 このようにして、サンプル層10を形成した。
    続いて、陰極蒸着用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、陽極2のITOストライプと直交するように素子に密着させた。 油回転ポンプにより装置の粗排気を行った後、クライオポンプを用いて装置内の真空度が3×10 -4 Pa以下になるまで排気した。
    陰極9としてアルミニウムをモリブデンボートにより加熱し、蒸着速度0.5〜5Å/秒、真空度2〜3×10 -4 Paで制御して膜厚80nmのアルミニウム層を形成した。 以上の陰極の蒸着時の基板温度は室温に保持した。
    以上の様にして、2mm×2mmのサイズの素子面積を有する単層素子が得られた。
    得られた単層素子をKeithley社製2400型ソースメーターに接続し、電圧を順次印加していき電流値を読み取った。
    この素子の電流-電圧特性を図3に表す。
    図3に示すが如く、本発明の重合体を用いた素子は、比較例3の素子に比べて、低い電圧で電流が流れた。 このことから、本発明の重合体は、比較例3で使用したポリマーよりも電荷輸送能に優れることは明らかである。

    (比較例3)
    本発明の重合体(NH−2)を前記高分子化合物(PB−2)に代えた以外は、実施例8と同様に、図2に示す単層素子を作製した。
    得られた単層素子をKeithley社製2400型ソースメーターに接続し、電圧を順次印加していき電流値を読み取った。 この素子の電流-電圧特性を図3に表す。

    (実施例9)本発明の重合体を用いた有機太陽電池の作製 図4に示す有機太陽電池素子を作成した。
    溶媒としてトルエンを用い、下記式で表されるNH−1(合成例5で合成された重合体1)を0.9重量%、A−1を0.09重量%溶解させ正孔取り出し層用組成物を調製した。 電極(陽極2)としてITO電極がパターニングされたガラス基板1上に、正孔取り出し層11として、正孔取り出し層用組成物をスピンコート(1500rpm)により塗布した後、基板を230℃のクリーンオーブンで1時間、加熱処理を施した。

    真空蒸着装置内に配置されたメタルボートに、下記式(A)で表される化合物 テトラベンゾポルフィリン(三菱化学社製)を入れ、蒸着及び窒素雰囲気下での加熱処理(180℃20分間)により、正孔取り出し層の上に、約75nmのp型半導体の層を形成した。


    次に、下記式(B)で表されるフェニルC

    61 ―酪酸ブチル[60]フラーレン(フロンティアカーボン製)を1.2重量%溶解したトルエン溶液を、窒素雰囲気下でスピンコート(3000rpm)して、65℃5分間の加熱処理によって、p型半導体の層上に、フラーレン誘導体の層を形成し光電変換層12とした。


    真空蒸着装置内に配置されたメタルボートに下記式(C)で表される化合物2,9−ジメチルー4,7−ジフェニルー1,10−フェナントロリン(BCP、同仁化学製)を入れ、真空蒸着により、フラーレン誘導体の層上に約6nmの電子取り出し層13を形成した。


    更に、電子取り出し層の上に真空蒸着により厚さが80nmのアルミニウム電極(陰極9)を設けて、有機太陽電池素子を作製した。


    作製した有機太陽電池素子にITO電極側からソーラシミュレーター(AM1.5G)で100mW/cm

    の強度の光を照射し、ソースメーター(ケイスレー社製、2400型)にて、ITO電極とアルミニウム電極と間における電流−電圧特性を測定し、光電変換効率を算出したところ、1.33%であった。

    (比較例4) 正孔取り出し層を用いない有機太陽電池の作製 正孔取り出し層を用いずに、ITO電極がパターニングされたガラス基板上に約75nmのp型半導体の層を形成した以外は、実施例9と同様に有機太陽電池素子を作製した。
    作製した有機太陽電池素子の光電変換効率を実施例9と同様に算出したところ、0.83%であった。

    表13に示すが如く、本発明の重合体を用いて形成した層を有する有機太陽電池素子は、光電変換効率(PCE)が高く、また開放電圧(Voc)も高いことが分かる。

    1 基板2 陽極3 正孔注入層4 正孔輸送層5 発光層6 正孔阻止層7 電子輸送層8 電子注入層9 陰極10 サンプル層11 正孔取出し層12 光電変換層13 電子取出し層

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