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放射性セシウムの除去方法

阅读:909发布:2024-01-31

专利汇可以提供放射性セシウムの除去方法专利检索,专利查询,专利分析的服务。并且【課題】廃棄物から 放射性 セシウムを分離するための加熱処理の 温度 を十分に低くできるとともに、放射性セシウムの高い除去率と放射性セシウム汚染物の減容化の両方を十分高 水 準に達成できる放射性セシウムの除去方法を提供する。 【解決手段】放射性セシウムで汚染された廃棄物と、2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む分離促進剤を混合する混合工程と、混合した処理対象物を加熱することによって処理対象物に含まれる放射性セシウムを揮発させる加熱工程とからなる。 【選択図】図13,下面是放射性セシウムの除去方法专利的具体信息内容。

放射性セシウムで汚染された廃棄物と分離促進剤との混合物である処理対象物を得る混合工程と、 前記処理対象物を加熱することによって前記処理対象物に含まれる放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、 を備え、 前記分離促進剤は、2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む、放射性セシウムの除去方法。前記2種類以上の塩化物は、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。前記2種類以上の塩化物は、CaCl2、MgCl2、NaCl、KCl、LiCl、FeCl3及びFeCl2からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。前記加熱工程における加熱温度は、800℃以上1200℃未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記分離促進剤はカルシウム源を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記分離促進剤はカルシウム源として炭酸カルシウムを含む、請求項5に記載の放射性セシウムの除去方法。前記処理対象物の全質量を100質量部とすると、前記処理対象物に含まれるCaO換算のカルシウム量は5.0質量部以上であり且つ前記処理対象物に含まれるCl量は1.0〜15.0質量部である、請求項5又は6に記載の放射性セシウムの除去方法。前記分離促進剤の全質量100質量部に対し、前記分離促進剤における前記混合物及び前記複塩の含有量の合計は1〜65質量部であり且つ前記カルシウム源の含有量は35〜99質量部である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記処理対象物の全質量を100質量部とすると、前記混合工程において前記廃棄物と混合される前記分離促進剤の量は5〜80質量部である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記混合物又は前記複塩は、以下の第1塩化物と第2塩化物の組合せ1〜6のいずれかを用いて調製されたものであり且つ前記混合物又は前記複塩における第1塩化物のモル数M1と第2塩化物のモル数M2の比(M1/M2)が以下の範囲である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。 組合せ1:第1塩化物CaCl2と第2塩化物NaCl、3/7≦M1/M2≦7/3 組合せ2:第1塩化物KClと第2塩化物CaCl2、2/8≦M1/M2≦3/7又は65/35≦M1/M2≦85/15 組合せ3:第1塩化物MgCl2と第2塩化物NaCl、2/8≦M1/M2≦8/2 組合せ4:第1塩化物MgCl2と第2塩化物KCl、2/8≦M1/M2≦85/15 組合せ5:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl3、15/85≦M1/M2≦35/65 組合せ6:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl2、4/6≦M1/M2≦8/2

放射性セシウムで汚染された廃棄物と分離促進剤との混合物である処理対象物を得る混合工程と、 前記処理対象物を加熱することによって前記処理対象物に含まれる放射性セシウムを揮発させる加熱工程と、 を備え、 前記分離促進剤は、2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含み且つカルシウム源を更に含む、放射性セシウムの除去方法。前記2種類以上の塩化物は、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。前記2種類以上の塩化物は、CaCl2、MgCl2、NaCl、KCl、LiCl、FeCl3及びFeCl2からなる群から選ばれたものである、請求項1に記載の放射性セシウムの除去方法。前記加熱工程における加熱温度は、800℃以上1200℃未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記分離促進剤はカルシウム源として炭酸カルシウムを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記処理対象物の全質量を100質量部とすると、前記処理対象物に含まれるCaO換算のカルシウム量は5.0質量部以上であり且つ前記処理対象物に含まれるCl量は1.0〜15.0質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記分離促進剤の全質量100質量部に対し、前記分離促進剤における前記混合物及び前記複塩の含有量の合計は1〜65質量部であり且つ前記カルシウム源の含有量は35〜99質量部である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記処理対象物の全質量を100質量部とすると、前記混合工程において前記廃棄物と混合される前記分離促進剤の量は5〜80質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。前記混合物又は前記複塩は、以下の第1塩化物と第2塩化物の組合せ1〜6のいずれかを用いて調製されたものであり且つ前記混合物又は前記複塩における第1塩化物のモル数M1と第2塩化物のモル数M2の比(M1/M2)が以下の範囲である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の放射性セシウムの除去方法。 組合せ1:第1塩化物CaCl2と第2塩化物NaCl、3/7≦M1/M2≦7/3 組合せ2:第1塩化物KClと第2塩化物CaCl2、2/8≦M1/M2≦3/7又は65/35≦M1/M2≦85/15 組合せ3:第1塩化物MgCl2と第2塩化物NaCl、2/8≦M1/M2≦8/2 組合せ4:第1塩化物MgCl2と第2塩化物KCl、2/8≦M1/M2≦85/15 組合せ5:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl3、15/85≦M1/M2≦35/65 組合せ6:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl2、4/6≦M1/M2≦8/2

说明书全文

本発明は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するための方法に関する。

原子発電所の事故によって放出された放射性物質は土壌、下汚泥、ごみ焼却灰などに濃縮され、これらに汚染された廃棄物の処理に苦慮している状況にある。一般に放射性物質量が8000Bq/kgを超える汚染物は管理型処分場に入れる必要があり、この処分場の容量も限界があることから、このような廃棄物はできるだけ減容化することが望まれる。

放射性物質の中でも放射性セシウムが大部分を占めており、これを除去及び濃縮することが廃棄物の減容化につながる。廃棄物中の放射性セシウムの除去と減容化の方法としては、加熱処理によって廃棄物中の放射性セシウムを揮発させてバグフィルターなどで捕集する方法が挙げられる。また、水洗処理によって廃棄物中の放射性セシウムを溶出させ、溶出させた放射性セシウムを吸着剤で捕集する方法が挙げられる。

特許文献1は廃棄物から放射性セシウムを除去する方法を開示する。この方法は、放射性セシウムで汚染された廃棄物を1200〜1350℃で加熱して廃棄物中の放射性セシウムを揮発させる加熱工程を含む。この加熱工程において、CaO、MgO、及びSiO2の各々の質量が特定の条件を満たすように、廃棄物、CaO源及びMgO源の各々の種類及び配合割合が定められる。

特許文献2は土壌からの放射性セシウムの除去方法を開示する。この方法は、放射性セシウムに汚染された土壌に、無機カルシウム化合物の割合が3質量%以上30質量%以下、塩化ナトリウムを0.5質量%を超え5質量%以下で添加する添加工程と、900℃以上1200℃以下で30分以上120分以下の時間加熱処理することにより、添加工程後の土壌から放射性セシウムを揮発させる加熱工程とを有する。

特許第5159971号公報

特許第5175995号公報

しかしながら、特許文献1に記載の方法はセシウムの除去率は高いものの、(1)1200〜1350℃の高温処理に非常に大きな熱量を必要とする点、(2)処理すべき廃棄物に対して多くのCaO源及びMgO源を添加する必要があり、処理後の廃棄物を十分に減容化できない点において改善の余地がある。上記の改善点(2)に関し、例えば処理すべき廃棄物がSiO2を多く含む土壌である場合、CaO源としての炭酸カルシウム等の添加量が非常に多くなり、処理した後の廃棄物量が大幅に増加する問題があった。

なお、特許文献1は、廃棄物に含まれる放射性セシウムを揮発によって効率的に除去するため、他の成分の液相がなるべく生じないようにすべきことを開示する。すなわち、特許文献1の段落[0010]には、特定式で算出されるCaO、MgO及びSiOの質量比の範囲(1.0〜1.9)の下限値に関し、「該質量比が1.0未満であると、焼成温度が高温になるにつれて液相が生じやすくなり、放射性セシウムの揮発量が少なくなる。」と記載され、段落[0012]には「加熱温度が1200℃未満では放射性セシウムの揮発量が少なくなる。1350℃を超えると、液相が形成されることで放射性セシウムが取り込まれて揮発しにくくなるので好ましくない。」と記載されている。また、特許文献1の段落[0011]には「放射性セシウムの塩化揮発を促進し、かつ揮発回収物を減容化する目的」で塩化カルシウム等の塩化物を用いてもよいことが記載され、更に「混合物中の塩素量が1500mg/kg以下であると、高温でも液相が生じにくくなり、放射性セシウムが多く揮発する」と記載されている。

他方、特許文献2に記載の方法の加熱工程は、特許文献1に記載の方法の加熱工程と比較して低温(900℃以上1200℃以下)であるという点でメリットがあると認められるものの、放射性セシウムの除去率の点において改善の余地がある。すなわち、土壌の化学組成によっては無機カルシウム化合物と塩化ナトリウムとの添加量を上記範囲に調整するだけでは放射性セシウムの除去率を十分に高めることができない場合がある。なお、特許文献2の段落[0020]には無機カルシウムとともに塩化ナトリウムを使用する理由として、塩化ナトリウムは「従来セシウム除去促進剤として使用されていた塩化カルシウムよりも安価」であることが記載されている。

本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くできるとともに、放射性セシウムの高い除去率と放射性セシウム汚染物の減容化の両方を十分高水準に達成できる放射性セシウムの除去方法を提供することを目的とする。

本発明者らは、廃棄物に含まれる放射性セシウムを除去しやすいか否かが廃棄物中における放射性セシウムの態様に依存することに着目し、検討を進めた。例えば、放射性セシウムを含む焼却灰(主灰及び飛灰)のうち、主灰に含まれるセシウムはセシウムアルミノシリケートの状態で主に存在し、他方、飛灰に含まれるセシウムは塩化セシウムの状態で主に存在する。セシウムアルミノシリケートは難揮発性であり且つ不溶性であるのに対し、塩化セシウムは易揮発性であり且つ水溶性である。したがって、これらのうち塩化セシウムの方が除去しやすい態様であるといえる。また、放射性セシウムで汚染された土壌においては、粘土鉱物に放射性セシウムがイオンとして吸着されており、土壌を水洗しても溶け出しにくい状態となっている。土壌はシリカとアルミニウムを含んでいることから、放射性セシウムで汚染された土壌を加熱すると、上述のセシウムアルミノシリケート(難揮発性且つ不溶性)が生じやすい。

以上の検討結果から、本発明者らは廃棄物から放射性セシウムを効率的に除去するには、(1)放射性セシウムの塩化物化を促進すること、(2)セシウムアルミノシリケートの生成を抑制することが有効であるとの知見を得た。これらの知見に基づき、本発明者らは種々の化合物について評価試験及びシミュレーション等を実施した結果、2種類以上の塩化物を組み合わせからなり且つそれぞれ単独の塩化物の融点と比較して融点が低温化された混合物又は複塩を使用することが上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。

すなわち、本発明に係る放射性セシウムの除去方法は、放射性セシウムで汚染された廃棄物と分離促進剤との混合物である処理対象物を得る混合工程と、処理対象物を加熱することによって処理対象物に含まれる放射性セシウムを揮発させる加熱工程とを備え、分離促進剤は2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む。なお、混合工程を経て廃棄物と分離促進剤の混合物(処理対象物)が得られる限り、分離促進剤は混合工程前に2種類以上の塩化物を用いて予め調製されたものであってもよく、あるいは混合工程において2種類以上の塩化物が混合されて調製されるものであってもよい。

本発明に係る放射性セシウムの除去方法によれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くできるとともに、放射性セシウムの高い除去率と放射性セシウム汚染物の減容化の両方を十分高水準に達成できる。このような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推察する。すなわち、複数の塩化物を使用し、その融点を低温化させることで、比較的低い温度で処理設備(例えば加熱炉)内に部分的に生じた溶融塩に放射性セシウムを取り込むことができる。これにより、易揮発性であり且つ水溶性である塩化セシウムの生成を促進できるとともに(上記知見(1))、難揮発性であり且つ不溶性であるセシウムアルミノシリケートの生成を抑制できる(上記知見(2))。

放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、上記分離促進剤はカルシウム源を含んでもよい。分離促進剤の全質量を100質量部とすると、混合物及び複塩の含有量の合計は1〜65質量部とすればよく、カルシウム源の含有量は35〜99質量部とすればよい。カルシウムを添加すると、カルシウムがセシウムよりも優先的にアルミノシリケートを生成し、塩化物のみを添加した場合よりもセシウムアルミノシリケートの生成をより効率良く抑制できる。また、放射性廃棄物に含まれるセシウムアルミノシリケートの分解も促進することが可能である。

加熱処理によって効率的に放射性セシウムを揮発させる観点から、処理対象物の全質量を100質量部とすると、処理対象物のCaO換算のカルシウム量は5.0質量部以上であり且つ処理対象物のCl量は1.0〜15.0質量部であることが好ましい。ここで処理対象物の全質量とは可燃物及び水分を除いた質量ベースである。例えば、水分を多く含む下水汚泥などや、可燃物を多く含む草木や木屑などを含む廃棄物の場合はそれらを加熱した後の灰分ベースでの質量を用いることが好ましい。なお、可燃物や水分を余り含まない土壌や焼却灰などはそのものの質量を用いてもよい。

本発明において、2種類以上の塩化物はアルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群から選ぶことができ、より具体的には、CaCl2、MgCl2、NaCl、KCl、LiCl、FeCl3及びFeCl2からなる群から選ぶことができる。

加熱工程における加熱温度は800℃以上1200℃未満であることが好ましい。加熱温度を800℃以上とすることで放射性セシウムの高い除去率を達成しやすく、他方、1200℃未満とすることで加熱に要するエネルギーを節減できるとともにこれに応じた耐熱性を有する加熱設備を準備すればよいという利点がある。

処理対象物の全質量を100質量部とすると、混合工程において廃棄物と混合される分離促進剤の量は5〜80質量部であることが好ましい。分離促進剤の量を5質量部以上とすることで放射性セシウムのより高い除去率を達成しやすく、他方、80質量部以下とすることで放射性セシウム汚染物をより高度に減容化しやすい。

本発明において、混合物又は複塩は、以下の第1塩化物と第2塩化物の組合せ1〜6のいずれかを用いて調製されたものであってもよく、混合物又は複塩における第1塩化物のモル数M1と第2塩化物のモル数M2の比(M1/M2)は以下の範囲とすればよい。 組合せ1:第1塩化物CaCl2と第2塩化物NaCl、3/7≦M1/M2≦7/3 組合せ2:第1塩化物KClと第2塩化物CaCl2、2/8≦M1/M2≦3/7又は65/35≦M1/M2≦85/15 組合せ3:第1塩化物MgCl2と第2塩化物NaCl、2/8≦M1/M2≦8/2 組合せ4:第1塩化物MgCl2と第2塩化物KCl、2/8≦M1/M2≦85/15 組合せ5:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl3、15/85≦M1/M2≦35/65 組合せ6:第1塩化物NaClと第2塩化物FeCl2、4/6≦M1/M2≦8/2

本発明によれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くできるとともに、放射性セシウムの高い除去率と放射性セシウム汚染物の減容化の両方を十分高水準に達成できる放射性セシウムの除去方法が提供される。

NaCl−CaCl

2の相平衡図である。

CaCl

2−KClの相平衡図である。

NaCl−MgCl

2の相平衡図である。

KCl−MgCl

2の相平衡図である。

1100℃での揮発処理に供される処理対象物に含まれるカルシウム量と、Cl量の適正範囲を示すグラフである。

1100℃での揮発処理に供される処理対象物に含まれるカルシウム量と、低融点塩化物量と、放射性セシウムの除去率との関係を示すグラフである。

実施例で合成したセシウムアルミノシリケートのX線回折プロファイルである。

セシウム除去処理(揮発)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.1〜6)。

セシウム除去処理(揮発)における加熱温度とセシウム除去率との関係を示すグラフである(添加条件No.7〜11)。

加熱温度700℃で揮発除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。

加熱温度900℃で揮発除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。

加熱温度1100℃で揮発除去されるセシウムの割合を示すグラフであって、(a)は添加条件No.1〜6の結果を示し、(b)添加条件No.7〜11の結果を示す。

実施例14及び実施例15等の結果を示すグラフである。

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る分離促進剤は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するためのものである。この分離促進剤は2種類以上の塩化物を用いて調製され且つ融点が700℃以下である混合物又は複塩を含む。まず、2種類の塩化物の混合物を含む分離促進剤について説明する。

<放射性セシウムの分離促進剤> 本実施形態に係る分離促進剤は、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去するためのものであり、第1の塩化物と、第1の塩化物と異なる種類の塩化物であって第1の塩化物とともに融点が700℃以下の複塩(以下、「低融点塩化物」という。)を生成する第2の塩化物とを含む。低融点塩化物の融点は、第1の塩化物の融点及び第2の塩化物の融点のいずれもよりも低い温度であることが好ましい。第1の塩化物、第2の塩化物及び低融点塩化物はいずれも粉状又は粒状(平均粒径1μm〜5mm程度)であることが好ましい。

第1の塩化物と第2の塩化物の混合物が加熱されることによって生じる低融点塩化物の融点は700℃以下に調整されている。低融点塩化物の融点を700℃以下とするには、特定の第1及び第2の塩化物を使用するとともに、これら2種類の塩化物の配合比率(モル比)を調整すればよい。低融点塩化物の融点は、廃棄物を処理する加熱温度よりも低い温度である。低融点塩化物の融点は好ましくは150℃以上700℃以下であり、より好ましくは150℃以上600℃以下であり、更に好ましくは300℃以上600℃以下である。低融点塩化物の融点が700℃以下であれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くでき且つ十分に少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。低融点塩化物の融点が150℃以上であれば、廃棄物を処理する加熱装置への塩化物の付着を十分に抑制できる。

第1の塩化物及び第2の塩化物は、アルカリ土類金属の塩化物、アルカリ金属の塩化物及び塩化鉄からなる群からそれぞれ選ぶことができ、より具体的には、CaCl2、MgCl2、NaCl、KCl、LiCl、FeCl3及びFeCl2からなる群からそれぞれ選ぶことができる。

2種類の塩化物の配合比率は、相平衡図に基づいて決定することができる。相平衡図は、市販の熱力学平衡計算ソフト(例えばFactSage Ver.6.4(商品名、株式会社計算力学研究センター製)によって作成することができる。ここでは、2種類の塩化物の組合せ1〜6を例に挙げて説明する。

(組合せ1) 図1は、NaCl−CaCl2の相平衡図である。NaCl単独の融点は802℃であり且つCaCl2単独の融点は775℃であるのに対し、モル比でCaCl2:NaCl=50:49である複塩(49NaCl・50CaCl2)の融点は502.5℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるCaCl2(第1塩化物)のモル数M1とNaCl(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは3/7〜7/3であり、より好ましくは4/6〜6/4であり、更に好ましくは45/55〜55/45である。

(組合せ2) 図2は、CaCl2−KClの相平衡図である。CaCl2単独の融点は775℃であり且つKCl単独の融点は772℃であるのに対し、KCl含有率75モル%であり且つCaCl2含有率25モル%である複塩(25CaCl2・75KCl)の融点は599℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるKCl(第1塩化物)のモル数M1とCaCl2(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは65/35〜85/15であり、より好ましくは7/3〜8/2であり、更に好ましくは72/28〜78/22である。

(組合せ3) 図3は、NaCl−MgCl2の相平衡図である。NaCl単独の融点は802℃であり且つMgCl2単独の融点は714℃であるのに対し、MgCl2含有率43モル%であり且つNaCl含有率57モル%である複塩(57NaCl・43MgCl2)の融点は458℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるMgCl2(第1塩化物)のモル数M1とNaCl(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは2/8〜8/2であり、より好ましくは25/75〜7/3であり、更に好ましくは3/7〜6/4、最も好ましくは35/65〜48/52である。

(組合せ4) 図4は、KCl−MgCl2の相平衡図である。KCl単独の融点は770℃であり且つMgCl2単独の融点は714℃であるのに対し、MgCl2含有率30モル%であり且つKCl含有率70モル%である複塩(3MgCl2・7KCl)の融点は421.7℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるMgCl2(第1塩化物)のモル数M1とKCl(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは2/8〜85/15であり、より好ましくは25/75〜65/35であり、更に好ましくは25/75〜6/4、最も好ましくは25/75〜4/6である。

(組合せ5) FeCl3単独の融点は306℃であり且つNaCl単独の融点は802℃であるのに対し、NaCl含有率25モル%であり且つFeCl3含有率75モル%である複塩(25NaCl・75FeCl3)の融点は156℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるNaCl(第1塩化物)のモル数M1とFeCl3(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは15/85〜35/65であり、より好ましくは20/80〜30/70である。

(組合せ6) FeCl2単独の融点は677℃であり且つNaCl単独の融点は802℃であるのに対し、NaCl含有率58モル%であり且つFeCl2含有率42モル%である複塩(58NaCl・42FeCl2)の融点は370℃である。融点が十分に低い複塩(低融点塩化物)を得るには、混合物中におけるNaCl(第1塩化物)のモル数M1とFeCl2(第2塩化物)のモル数M2の比(M1/M2)は、好ましくは4/6〜8/2であり、より好ましくは5/5〜65/35であり、更に好ましくは55/45〜60/40である。

(その他の組合せ) 上記組合せの他に、二種類の塩化物から調製される低融点塩化物として、37PbCl2−63FeCl3(融点175℃)、60SnCl2−40KCl(融点176℃)、70SnCl2−30NaCl(融点183℃)、60KCl−40FeCl2(融点355℃)、70PbCl2−30NaCl(融点410℃)、52PbCl2−48KCl(融点411℃)、80PbCl2−20CaCl2(融点475℃)なども挙げられる。これらの塩化物は調達可能な材料を選択して適宜調製すればよい。

本実施形態に係る分離促進剤は、第1塩化物と第2塩化物の混合物からなるものであってもよく、他の成分を更に含んでもよい。他の成分としては、カルシウム源が挙げられる。なお、低融点塩化物を構成する塩化物として塩化カルシウムを使用した場合、この塩化カルシウムはここでいう「カルシウム源」には該当しないものとする。カルシウム源を含む原料としては、例えば石灰石(炭酸カルシウム)、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)及びドロマイト(CaMg(CO3)2)が挙げられる。分離促進剤に添加する成分は、セシウムアルミノシリケートをできるだけ生成させない観点から、なるべくケイ素及びアルミニウムの含有量が少ないものが好ましい。放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、分離促進剤の全質量を100質量部とすると、分離促進剤におけるカルシウム源の含有量は好ましくは35〜99質量部であり、より好ましくは54〜91質量部であり、更に好ましくは57〜88質量部、最も好ましくは70〜88質量部である。

また放射性セシウムのより高い除去率を達成する観点から、第1塩化物と第2塩化物の混合物の含有量は好ましくは1〜65質量部であり、より好ましくは9〜46質量部であり、更に好ましくは12〜43質量部、最も好ましくは12〜30質量部である。

本実施形態に係る分離促進剤は以下の2種類の分離処理に適用可能である。なお、下記方法(1)については後述する。 (1)加熱処理(800℃以上1200℃未満)によって放射性セシウムを揮発させる方法。 (2)加熱処理(600℃以上900℃以下)によって放射性セシウムを揮発させるとともに、その後、水洗処理によって放射性セシウムを溶出させる方法。

カルシウム源を予め含む分離促進剤を調製する場合、上記2種類の分離処理のいずれを適用するかに応じてカルシウム源の配合量を調節してもよい。

図5は、上記(1)の方法(揮発処理)において、分離促進剤を添加後の処理対象物に含まれるカルシウム量(CaO換算、水分及び可燃物を除いた処理対象物全質量基準)と、Cl量(水分及び可燃物を除いた処理対象物全質量基準)との関係を示すグラフである。揮発処理に供される処理対象物のカルシウム量(CaO換算)及びCl量は、図5の(CaO、Cl)が(5.0、13.0)、(5.0、6.0)、(20.0、2.0)、(40.0、1.0)、(50.0、1.0)、(50.0、10.0)および(25.0、10.0)で囲われた範囲(点線で囲われた領域)に調整することが好ましく、(CaO、Cl)が(10.0、10.0)、(20.0、3.0)、(50.0、3.0)、(50.0、8.0)および(25.0、8.0)の点に囲われた範囲(実線で囲われた領域)に調整することがより好ましい。更に、CaO量が20.0〜40.0質量%、Cl量が4.0〜8.0質量%に調整することが最も好ましい。

図5において、○および×で示した「FactSageによる推定値」は、株式会社計算力学研究センター製の熱力学平衡計算ソフトであるFactSage Ver.6.4を用いて気体として存在する塩化セシウムの割合を推定したものである。なお、熱力学平衡計算は、熱力学データベースに通常計算に用いられるNaCl、CaCl2及びCsClのような単独物質のデータベースだけでなく、NaCl−CaCl2−CsClの複塩(溶体)や、セシウムアルミノシリケートの熱力学データも加え、電気炉中のガス条件等を設定して実験データに合うようにチューニングした上で行った。図5において、●で示した「実験値」は表2及び表5に示す実施例に基づくデータをプロットしたものである。

図6は、上記(1)の方法(揮発処理)において、分離促進剤を添加後の処理対象物に含まれるカルシウム量(CaO換算、処理対象物全質量基準)と、低融点塩化物量(処理対象物全質量基準)との関係を示すグラフである。揮発処理に供される処理対象物のカルシウム量(CaO換算)及び低融点塩化物量は、図6の実線で囲われた領域に調整することが好ましい。

図6の点Aはカルシウムを含まず且つ塩素も含まない、分離促進剤を添加前の廃棄物の組成を示す点であり、当該廃棄物は放射性セシウムの分離が最も困難なものの一つである。当該廃棄物に対してカルシウム源と低融点塩化物との両方を添加し、これによって処理対象物の組成を例えば図6中の点B〜Eに調整することにより、廃棄物に含まれる放射性セシウムを比較的容易に分離可能にすることができる。分離促進剤の使用量を抑制し且つ処理対象物に含まれる塩化物量をなるべく低く維持することを勘案し、処理対象物の組成を例えば図6中の点D又は点Eに調整することがより好ましい。なお、点B及び点Cは放射性汚染物を1100℃で加熱した場合にセシウム除去率50%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点B)及び下限値(点C)であり、点D及び点Eは放射性汚染物を1100℃で加熱した場合にセシウム除去率70%を達成し得る低融点塩化物量の上限値(点D)及び下限値(点E)である。

点Aの組成を有する廃棄物に分離促進剤を添加することによって図6中の点B〜点Eの組成の処理対象物を得るには、CaCO3(カルシウム源)と低融点塩化物との比率(質量比)が以下のとおりの分離促進剤をそれぞれ使用すればよい。ここでCaCO3の量は図6中のCaO量をCaCO3換算量に計算したものである。 点B CaCO3:低融点塩化物=35:65 点C CaCO3:低融点塩化物=99:1 点D CaCO3:低融点塩化物=54:46 点E CaCO3:低融点塩化物=88:12

分離促進剤のCaCO3(カルシウム源)の配合率をx質量%、分離促進剤の低融点塩化物の配合率をy質量%とすると、図6に基づく検討結果から上記(1)の方法で使用する分離促進剤は以下の条件を全て満たすことが好ましい。 (条件) 35≦x≦99(より好ましくは54≦x≦88) 1≦y≦65(より好ましくは12≦y≦46)

上記実施形態においては、低融点塩化物(融点700℃以下)が2種類の塩化物の混合物からなる場合を例示したが、低融点塩化物は3種以上の塩化物の混合物からなるものであってもよい。

また、低融点塩化物は2種類以上の塩化物の複塩からなるものであってもよい。2種類以上の塩化物の複塩は、以下のようにして調製することができる。まず、それぞれ所定量の塩化物を混合して混合物を得る。この混合物を加熱することによって溶融させた後、冷却して複塩が得られる。これを粉砕することによって粉状の複塩(低融点塩化物)を得ることができる。

上記低融点塩化物を含む分離促進剤によれば、廃棄物から放射性セシウムを分離するための加熱処理の温度を十分に低くできる。具体的には、廃棄物からの放射性セシウムの除去処理を加熱による揮発によって行うプロセスに上記分離促進剤を使用する場合、加熱処理の温度は好ましくは800℃以上1200℃未満であり、より好ましくは900〜1100℃であり、更に好ましくは900〜1000℃である。廃棄物からの放射性セシウムの除去処理を加熱による揮発と、その後の水洗処理によって行うプロセスに上記分離促進剤を使用する場合、加熱処理の温度は好ましくは600〜900℃であり、より好ましくは700〜850℃であり、更に好ましくは700〜800℃である。

また、上記分離促進剤によれば、公知の分離促進剤よりも少ない添加量で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。

<放射性セシウム除去方法> 次に、放射性セシウムで汚染された廃棄物から放射性セシウムを除去する方法について説明する。処理対象の廃棄物は、例えば、土壌、下水汚泥乾粉、都市ごみ焼却灰、ごみ由来の溶融スラグ、貝殻、草木等の一般廃棄物、下水汚泥、下水スラグ、浄水汚泥、建設汚泥等の産業廃棄物、がれき等の災害廃棄物であって放射性セシウムを含むものである。これらの廃棄物のうちの一種のみを処理対象としてもよいし、2種以上が組み合わされたものを処理対象としてもよい。

なお、ここでいう「放射性セシウムで汚染された廃棄物」は、放射性セシウムをほとんど含まない部分(例えば、土壌の場合、砂、石)を予め取り除いて得られる、放射性セシウムが濃縮されたもの(中間処理物)も包含する概念である。また、ここでいう「放射性セシウム」は、セシウムの放射性同位体であるセシウム134及びセシウム137を意味する。これらの放射性セシウムが原子力発電所などの事故によって放散されると、廃棄物の中においてセシウムアルミノシリケートの状態で存在したり、粘土鉱物に吸着して存在したりし、いずれも従来の加熱処理(揮発)又は水洗処理では除去しにくい態様である。

上記低融点塩化物(混合物もしくは複塩)又は分離促進剤を使用した除去処理によって、処理対象の廃棄物、特に放射性セシウムの除去効率の低い土壌及び下水汚泥などであっても、高い除去率で放射性セシウムを除去することができる。

以下、廃棄物から放射性セシウムを加熱処理によって除去する方法(上記方法(1))について具体的に説明する。加熱処理による除去方法は、処理対象の廃棄物を加熱することによって放射性セシウムを揮発除去するものである。この除去方法は以下の工程を備える。 ・処理対象の廃棄物と上記低融点塩化物との混合物を得る混合工程。 ・上記混合物を加熱することによって放射性セシウムを揮発させる加熱工程。

上記混合工程において、予め調製した分離促進剤を廃棄物に添加してもよく、あるいは、低融点塩化物を生成する2種類以上の塩化物及び必要に応じてカルシウム源を準備し、それぞれ所定量を廃棄物に添加してもよい。なお、混合工程を実施する設備としては例えばリボンミキサー、スクリューミキサー、ロッキングミキサーなどの容器回転型ミキサーを使用でき、加熱工程を実施する設備としては例えばストーカ炉やキルン炉などを使用できる。混合工程及び加熱工程を同じ設備(例えばキルン炉やストーカ炉内で混合しながら加熱)で実施してもよい。

廃棄物に対して上記カルシウム源を添加する場合、上述のとおり、カルシウム源の添加量(CaCO3換算、x質量%)及び2種以上の塩化物の添加量(y質量%)は、以下の条件を全て満たすことが好ましい(図6参照)。 (条件) 35≦x≦99(より好ましくは54≦x≦88) 1≦y≦65(より好ましくは12≦y≦46)

処理対象物の全質量を100質量部とすると、処理対象物に含まれるCaO換算のカルシウム量は5.0質量部以上(より好ましくは5.0〜40質量部、更に好ましくは10.0〜35質量部)であり且つ処理対象物に含まれるCl量は1.0〜15.0質量部(より好ましくは3.0〜10.0質量部、最も好ましくは4.0〜8.0質量部)であることが好ましい。

上記分離促進剤の添加量は、処理対象の廃棄物の種類にもよるが、廃棄物と分離促進剤(2種以上の塩化物とカルシウム源)の合量に対する分離促進剤の添加量(割合)は、5〜80質量%(より好ましくは10〜75質量%、更に好ましくは15〜70質量%、最も好ましくは20〜50質量%)で放射性セシウムの十分に高い除去率を達成できる。2種以上の塩化物とカルシウム源との合計量が5質量%未満であると放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、80質量%を超えると処理後に得られる放射性セシウムを含む廃棄物の減量化が不十分となりやすい。

加熱工程に使用する設備としては、連続式でもバッチ式でもよく、具体例として焼却炉、電気炉、ロータリーキルンなどが挙げられる。放射性物質の放散を防ぐためには、加熱設備にシールを設ければよい。

加熱工程における処理温度は、好ましくは800℃以上1200℃未満であり、より好ましくは900℃以上1200℃未満であり、更に好ましくは1000℃以上1200℃未満である。加熱工程における処理温度の上限値は1150℃であってもよく、1100℃であってもよい。処理温度が700℃以下であると揮発除去による放射性セシウムの除去率が不十分となりやすく、他方、1200℃以上であると加熱処理に要する燃料等のコストが増大しやすく且つより高い耐熱性を有する設備を使用する必要がある。これに加え、廃棄物が溶融し加熱設備に付着し過ぎるなどのトラブルが生じやすい。

加熱工程における処理時間は、長ければ長いほど放射性セシウムの除去率は高まるが、廃棄物処理の効率性の観点から好ましくは30分〜6時間であり、より好ましくは1〜4時間である。なお、加熱処理後の廃棄物中の放射能レベルをモニタリングし、この値に応じて加熱工程の処理時間及び処理温度、並びに、混合工程における各種成分の添加量などを調節してもよい。

本実施形態に係る除去方法は、廃棄物と分離促進剤等の添加剤との混合度を高めたり、放射性セシウムの除去効率を高めたりする観点から、混合工程後に混合物を粉砕する粉砕工程を更に備えてもよい。また、加熱処理によって揮発した放射性セシウムを他の塩化物及びダスト分とともに集塵機(例えばバグフィルタ)で回収する回収工程を更に備えてもよい。

本実施形態の分離促進剤は、処理対象の廃棄物のカルシウム量や塩素量が少ないものほど、従来の分離促進剤よりも高いセシウム分離効果を得られる。処理対象の廃棄物のカルシウム量(CaO換算)は処理対象の廃棄物の全質量基準で0〜30質量%(好ましくは0〜20質量%、更に好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%)、塩素量は0〜10質量%(好ましくは0〜7%、更に好ましくは0〜5%、最も好ましくは0〜1%)であると、本実施形態の分離促進剤の効果が顕著に発揮される。

以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

[セシウム吸着粘土の作製] 放射性セシウムと安定型セシウムは同様の挙動をとると想定し、実験は放射性セシウムの代わりに安定型セシウムである炭酸セシウムを使用して行った。また、既往の検討で、放射性セシウムは土壌中では粘土鉱物に吸着されて水に溶けにくい形態で存在することが明らかとなったため、安定型セシウムを以下の方法で粘土鉱物に吸着させて試験に供した。セシウム吸着粘土試料の作製方法は以下のとおりである。粘性土1000gに炭酸セシウムをCs換算で250〜300mg/kg加え、水を粘性土に対して40質量%加え、ホバートミキサーで練り混ぜた。その後、一週間程度放置し、粘土鉱物にセシウムを十分吸着させた。そして、セシウムを吸着させた粘性土は100℃で乾燥し余分な水分を除去してセシウム吸着粘土試料とした。

[セシウム含有焼却灰の作製] 既往の検討で、焼却灰中の放射性セシウムはアルミノシリケートの形態で存在することが明らかとなったため、試薬の炭酸セシウム、Al2O3およびSiO2とをCsAlSiO4の化学成分となるように調合し、900℃で1時間加熱して合成したセシウムアルミノシリケートを、セシウム換算で250〜300mg/kgとなるようにごみ焼却灰に添加して、セシウム含有焼却灰を作製した。図7は、合成したセシウムアルミノシリケートのX線回折プロファイルである。このプロファイルは、大部分がCsAlSiO4として生成し、少量のCsAlSi2O6を含み且つ未反応のSiO2及びCsOが若干残っていることを示している。

セシウムを添加した粘性土(セシウム吸着粘土)及び焼却灰(セシウム含有焼却灰)の化学組成は表1のとおりである。

[セシウム分離促進剤の調製] セシウム分離促進剤は、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウムを使用し、表2の配合で調製した。また、CaCl2とNaClを共に添加した場合、その比率によって図1に示すA→B→Cのラインで示される融点となる。表2の実施例1〜4の条件は塩化物の融点が504℃となる比率(モル比でCaCl2:NaCl=50:49)としたものである。表3に未加熱時の処理対象物のCaO及びCl量を示した。

※表2における「添加量」はセシウム吸着粘土と分離促進剤の合量(質量)に対する分離促進剤の質量の割合である。

[加熱処理] セシウム含有土及び焼却灰はセシウム分離促進剤を所定量添加した後、試料10gを量り取り、アルミナボートの上に試料の深さが1cm程度となるように乗せて、電気炉にて加熱処理を行った。加熱温度は700℃、900℃及び1100℃とし、いずれも加熱時間は2時間とした。

[セシウム量及びセシウム除去率の測定] セシウムの除去率は、揮発除去と水洗除去を考慮して、未処理の粘土中のセシウム量に対する、加熱処理後の粘土に含まれる揮発セシウム量及び水溶性セシウム量の割合とした。揮発セシウムと水溶性セシウムの測定方法は以下のとおりである。 (1)全セシウム量 試料に含まれる全セシウム量は、アルカリ溶融等で試料を全溶融させた後、ICPにより定量した。分離促進剤無添加及び非加熱の試料に含まれる全セシウム量を基準とし、加熱後の試料に含まれるセシウム量は、試料の一部が揮発して非加熱時のセシウム量よりも濃縮されているので、以下の式によって非加熱時のセシウム量に換算し、更に添加物量も補正して、加熱後の残存セシウム量とした。なお、加熱時の質量減少量にはセシウムや塩化物の揮発に加え、カルシウム源として用いたCaCO3の脱炭酸分などが含まれる。 残存セシウム量(加熱処理後の全セシウム量(未処理ベース))= 加熱処理試料中の全セシウム量×{100/(100−加熱時の質量減少量%)} ×{100/(100−分離促進剤量%)}

(2)揮発セシウム量 揮発セシウムは未処理のセシウム含有粘性土あるいは焼却灰中の全セシウム量から、加熱処理後の試料中の全セシウム量を差し引くことで求めた。加熱処理後の全セシウム量、すなわち残存セシウム量は上式で求めた。 揮発セシウム量=未処理試料の全セシウム量−加熱後の残存セシウム量(未処理ベース) (3)セシウム除去率 セシウム除去率は以下のように求めた。 セシウム除去率%= (揮発セシウム量)÷未処理時の全セシウム量×100% ※揮発セシウム量は未処理時ベースの換算値を使用。

1.放射性セシウム分離促進剤の効果確認(セシウム吸着粘土による実験) 各種分離促進剤を添加した場合の加熱処理後のセシウムの存在形態と揮発および水洗で除去可能なセシウム除去率の結果を表4に示した。セシウム量はいずれも未処理試料ベースでの量を記載した。 [未処理試料] 未処理試料(セシウム吸着粘土)のセシウム量は240mg/kgである。

[比較例1(無添加)] 分離促進剤無添加であるNo.1(表4中の比較例1−1〜1−3)では、1100℃まで加熱温度を高めても揮発セシウムは少なく、セシウム除去率は12.5〜25.0%と低い。また、水溶性セシウムを含めてもセシウム除去率は低く、加熱による分離は難しい。

[表4の添加条件No.2〜4] 分離促進剤としてCaCO3を用いた場合(表2のNo.2〜4)、添加量を20〜60%とし、1100℃まで加熱温度を高めても揮発セシウムはあまり増加せず、セシウムの分離促進効果が得られなかった(表4の比較例2−1〜4−3)。また、水溶性セシウムもあまり増加しなかった。

[表4の添加条件No.5〜6] CaCl2及びCaCO3からなる分離促進剤(表2のNo.5〜6)は、その添加量を50%とし且つ1100℃まで加熱した参考例6−3を除き、揮発セシウムおよび水溶性セシウムは増加せず、セシウムの分離促進効果は得られなかった(比較例5−1〜6−3)。この分離促進剤の場合は添加量を増やし、1100℃以上の高温で加熱する必要があるため、経済的に好ましくない。

[表5の添加条件No.7〜9] CaCO3に塩化物が700℃以下の低い温度で溶融するようにCaCl2とNaClを適量配合(モル比で50:49)した添加条件No.7〜10は、700℃を超えた温度(900℃及び1100℃)で加熱するとセシウム除去率はいずれも5割以上であり、高いセシウム分離促進効果が得られた。

[表5の添加条件No.10] 塩化物が700℃以下の低い温度で溶融するようにCaCl2とNaClを適量配合(モル比で50:49)した分離促進剤も、900℃及び1100℃で加熱するとセシウム除去率は5割以上であり、高いセシウム分離促進効果が得られた。

[表5の添加条件No.11] NaClとCaCO3を配合した分離促進剤は、1100℃まで加熱してもセシウム除去率は5割以下であり、セシウム分離促進効果は高くなかった。

表4,5にセシウムを吸着させた粘性土に分離促進剤を添加したものを2時間加熱処理した時のセシウム(Cs)存在形態と除去率を示す。なお、Cs除去率が50%以上を「○」で示し、50%未満を「×」で示した。図8〜9は、表4,5に示す結果をグラフ化したものである。

2.放射性セシウム分離促進剤の効果確認(セシウム含有焼却灰による実験) セシウム含有焼却灰についてもセシウム吸着粘土と同様に実験を行った。表6にセシウム含有焼却灰を使用した場合の分離促進剤種別及び添加量を示す。表7にセシウム分離促進剤の配合及び添加量を示す。表8に焼却灰で2時間加熱処理した時のセシウム(Cs)存在形態及び除去率を示す。なお、Cs除去率が50%以上を「○」で示し、50%未満を「×」で示した。表8に示すように、900℃及び1100℃でセシウム除去効率は50%以上となり、土壌(セシウム吸着粘土)だけでなく焼却灰に対してもセシウム分離促進効果が認められた。

3.CaCl2−NaCl系以外の低融点塩化物の効果確認(セシウム吸着粘土による実験) セシウム吸着粘土を用いて、CaCl2−NaCl系以外の低融点塩化物の効果確認を行った。

(実施例14) 本例は上述の「組合せ2」に関し、低融点塩化物として25CaCl2・75KCl(融点599℃)を使用した。本例においては、低融点塩化物を得るためにCaCl2とKClとをモル比で3:7となるように混合し、更に炭酸カルシウム(CaCO3)と低融点塩化物とを混合比が互いに異なる以下の2種類の分離促進剤を調製した。

実施例14に係る分離促進剤はCaCO3:低融点塩化物(質量比)を40:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を50質量%添加することによって加熱対象物を調製した。この場合の未加熱時の処理対象物中のCaO量およびCl量は22.5質量%及び5.3質量%であった。この処理対象物を900℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表9に加熱処理によるセシウムの揮発除去率の結果を示す。

(実施例15) 本例は、上述の「組合せ4」に関し、低融点塩化物として35MgCl2・65KCl(融点423℃)を使用した。本例においては、低融点塩化物を得るためにMgCl2とKClとをモル比で35:65となるように混合し、さらに炭酸カルシウム(CaCO3)と低融点塩化物とを混合比が互いに異なる以下の2種類の分離促進剤を調製した。

実施例15に係る分離促進剤はCaCO3:低融点塩化物(質量比)を40:10としたものである。当該分離促進剤とセシウム吸着粘土の合量に対し、当該分離促進剤を50質量%添加することによって加熱対象物を調製した。この場合の未加熱時の処理対象物中のCaO量およびCl量は22.5質量%及び5.9質量%であった。この処理対象物を900℃に加熱することによって加熱処理物を得た。更にこの加熱処理物を水洗処理した。表9に加熱処理によるセシウムの揮発除去率の結果を示す。

図13は、CaCl2単独又はNaCl単独で添加した場合の結果と、49NaCl・50CaCl2を添加した場合の結果と、実施例14,15の結果とをまとめてグラフ化したものである。低融点塩化物を分離促進剤に配合することで、単独の塩化物(CaCl2又はNaCl)を配合する場合と比較してセシウム分離促進効果が非常に高くなることが確認できた。

表4,5及び図13に示したとおり、上記実施例で使用した分離促進剤は、800〜1200℃といった焼却炉やロータリーキルンで可能な加熱温度域において、放射性セシウムの十分な除去効果を有する。図10〜12は、表4,5に示す結果をグラフ化したものであって、廃棄物から揮発除去されるセシウムの割合を示すグラフである。低融点塩化物を使用し、且つ未加熱時の処理対象物のCaO量とCl量とを適正範囲にすることで、より低温で、且つ分離促進剤の添加量が少ない領域で高いセシウム除去効果を得ることができる。本発明に係る分離促進剤は、原子力発電所の事故などで放散した放射性セシウムで汚染された土壌、焼却灰、下水汚泥等の廃棄物の除染、放射性廃棄物の減容化に有用である。

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