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パワー半導体モジュールおよびパワーモジュール

阅读:728发布:2024-02-27

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  • 半導体素子と、
    一面に前記半導体素子が搭載された導体板と、
    前記導体板の側面部を覆い、前記一面に対向する他面の少なくとも一部を露出する樹脂封止部と、
    前記樹脂封止部の下面および前記導体板の前記樹脂封止部から露出した前記他面の一部に設けられた溶射膜と、を備え、
    前記樹脂封止部の下面に凹部が形成され、前記凹部の平面サイズは、前記溶射膜を構成する各扁平体の平面サイズより大き く形成され、前記凹部の前記導体板側の端部が、前記導体板の前記露出した他面の一部と前記樹脂封止部との境界面から所定の長さ離間した位置に設けられていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項 に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記所定の長さは、前記溶射膜中に、ボイドが形成されている状態においても、前記半導体素子の最大定格で前記樹脂封止部に放電が発生しない距離以上であることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項 に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記所定の長さは、下記の式(I)により算出されるXよりも大きいことを特徴とするパワー半導体モジュール。
    X=tε{(V /U )−1} 式(I)
    但し、tは放電が最も発生し易い空隙の大きさ、εは封止樹脂の誘電率、U は空隙の放電開始電圧、V は部分放電開始電圧である。
  • 請求項1 乃至3のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記溶射膜の厚さは、前記樹脂封止部に形成された前記凹部の深さよりも大きいことを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記樹脂封止 の下面または前記導体板における前記樹脂封止部から露出した前記他面の少なくとも一方に微細な凹凸が形成されており、前記微細な凹凸は、前記溶射膜の前記凹部の平面サイズよりも小さいことを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記樹脂封止部には、セラミックフィラーが混入されており、前記樹脂封止部に形成された前記凹部内において前記セラミックフィラーが露出され、前記溶射膜が前記セラミックフィラーに接合されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、さらに、前記溶射膜上に配置され、セラミックフィラーが混入された絶縁膜と、前記絶縁膜の周囲に形成された応力緩和用樹脂層と、を備えることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項 に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記応力緩和用樹脂層の熱伝導率は、前記絶縁膜よりも小さいことを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前 記溶射膜には空孔が形成され、前記空孔には、絶縁性の樹脂が含浸されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールにおいて、前記樹脂封止部に形成された前記凹部の側面は、底面部から開口部に向かって平面サイズが拡大する方向に傾斜する傾斜状に形成されていることを特徴とするパワー半導体モジュール。
  • 請求項1乃至 10のいずれか1項に記載のパワー半導体モジュールと、放熱用部材とを備え、前記放熱用部材は、前記溶射膜を介して前記パワー半導体モジュール対し熱伝導可能に設けられていることを特徴とするパワーモジュール。
  • 請求項 11に記載のパワーモジュールにおいて、前記パワー半導体モジュールの導体板は、前記半導体素子の表面側に熱伝導可能に接合された表面側導体部と前記半導体素子の裏面側に熱伝導可能に接合された裏面側導体部とを含み、前記放熱用部材は、それぞれ、複数の放熱用フィンを有し、前記溶射膜を介して前記表面側導体部および前記裏面側導体部に熱伝導可能に接合された第1の放熱部および第2の放熱部と、それぞれ、前記第1の放熱部および前記第2の放熱部の周囲に形成された、塑性変形可能な薄肉部を有することを特徴とするパワーモジュール。
  • 請求項 11に記載のパワーモジュールにおいて、前記放熱用部材は、前記第1および第2の放熱部に一体に、または別体として形成された連接部を有し、一側部に開口を有する筒形状のCAN型冷却器であることを特徴とするパワーモジュール。
  • 说明书全文

    本発明は、放熱性および信頼性に優れたパワー半導体モジュールおよびパワーモジュールに関する。

    省エネルギーの観点から、自動車には高燃費化が求められ、モータで駆動する電気自動車や、モータ駆動とエンジン駆動を組み合わせたハイブリッドカーが注目されている。 自動車に用いる大容量の車載用モータは、バッテリの直流電圧では駆動や制御が困難であり、昇圧し交流制御するためパワー半導体素子のスイッチングを利用した電変換装置が不可欠である。 また、パワー半導体素子は通電により発熱するため、パワー半導体素子を搭載するパワー半導体モジュールには、高い放熱能力を持つ絶縁層が求められる。

    例えば、このようなパワー半導体モジュールとしては、パワー半導体素子とパワー半導体素子が搭載された導体板とを樹脂により封止して一体化し、導体部および樹脂部の下面に溶射によりセラミックス絶縁層を形成した構造体としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。 セラミック絶縁層は熱伝導率が良好であるため、このセラミック絶縁層に冷却用のヒートシンクを積層することにより、放熱性の良いパワー半導体モジュールを安価に作製することが可能となる。

    特許第4023397号公報

    上述したパワー半導体モジュールでは、パワー半導体素子が搭載された導体板および封止樹脂に溶射膜を形成するだけであるため、封止樹脂と溶射膜との密着力が小さい。 このため、導体板と封止樹脂との熱膨張係数の差に起因した熱応力により溶射膜が樹脂封止部から剥離し、信頼性を確保することができない。

    本発明のパワー半導体モジュールは、半導体素子と、一面に半導体素子が搭載された導体板と、導体板の側面部を覆い、一面に対向する他面の少なくとも一部を露出する樹脂封止部と、樹脂封止部の下面および導体板の樹脂封止部から露出した他面の一部に設けられた溶射膜と、を備え、樹脂封止部の下面に凹部が形成され、凹部の平面サイズは、溶射膜を構成する各扁平体の平面サイズより大きく形成され、凹部の導体板側の端部が、導体板の露出した他面の一部と樹脂封止部との境界面から所定の長さ離間した位置に設けられていることを特徴とする。

    本発明によれば、樹脂封止部に凹部を設けたことにより、溶射膜と樹脂封止部の密着強度が増大するので、溶射膜の樹脂封止部からの剥離が防止され、信頼性を向上することができる。

    本発明に係るパワー半導体モジュールを含むパワーモジュールの一実施の形態を示し、パワーモジュールの外観斜視図。

    図1に図示されたパワーモジュールにおけるII−II断面図。

    (a)は、パワーモジュールのモジュールケースを取り外した斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb断面図。

    パワー半導体モジュールの回路図。

    パワー半導体モジュールの製造工程を説明するための斜視図。

    図5に続く工程を説明するための斜視図。

    図6に続く工程を説明するための斜視図。

    図7に続く工程を説明するための斜視図。

    封止樹脂を形成するトランスファーモールド工程を説明する図であり、(a)は型締め前、(b)は型締め後の断面図。

    図8に続く工程を説明するための斜視図。

    (a)は、補助パワーモジュールの斜視図、(b)は、図11(a)のXIb−XIb断面図。

    図2における領域XIIの拡大断面図。

    溶射膜が形成される前のパワー半導体モジュールの断面図。

    (a)は、溶射膜が形成された状態のパワー半導体モジュールの断面図、(b)は、図14(a)における領域XIVbの拡大図。

    (a)は溶射膜の形成工程を説明するための半導体モジュールおよびモジュールケースの断面図であり、(b)は、図15(a)に続く工程を説明するための図。

    樹脂封止部の凹部形状を示す拡大断面図。

    図16とは溶射膜の被着面の傾斜度が異なる凹部形状を示す拡大断面図。

    導体板の端部から凹部端部までの距離を見積もるための部分放電開始モデルを示す図。

    0.685気圧、120℃、ε=3.8におけるパッシェンカーブを示す図。

    導体板の端部から凹部端部までの距離とパワー半導体モジュールに付与される最大電圧との関係を示す特性図。

    (a)は、樹脂封止部中に混在するフィラーが凹部から露出しない構造の断面図、(b)は、本発明の実施形態2に係り、樹脂封止部中に混在するフィラーが凹部から露出した構造の断面図。

    本発明の実施形態3を示す図であり、パワー半導体モジュールの要部を示す拡大断面図。

    本発明の実施形態4を示す図であり、モジュールケース内にパワー半導体モジュールが収容された状態の断面図。

    本発明の実施形態5を説明するための図であり、樹脂封止型の片面冷却パワー半導体モジュールの平面図。

    図23に図示されたパワー半導体モジュールの断面図であり、(a)は端子を折曲した状態図、(b)は端子を折曲する前の状態図。

    本発明の実施形態6を説明するための図であり、パワー半導体モジュールを冷却する冷却器を備えたパワーモジュールの断面図。

    溶射膜の絶縁性能(絶縁破壊電圧)を説明する図。

    溶射膜の絶縁性能(部分放電電圧)を説明する図。

    絶縁層の構成に関する比較例を示す図。

    比較例と本発明の熱伝導率を説明する図。

    ハイブリッド自動車の制御ブロックを示す図。

    インバータ部の電気回路構成を説明する図。

    電力変換装置の設置場所を説明するための分解斜視図。

    電力変換装置の分解斜視図。

    流路19を有する冷却ジャケット12の下面図。

    コンデンサモジュール500の分解斜視図。

    (a)は、冷却ジャケット12にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図、(b)は、図37(a)の矩形囲み部の拡大図。

    パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図。

    保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図。

    パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワー半導体モジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図。

    制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分解斜視図。

    図41に示された電力変換装置200を、図41における面Bで切り取った場合の、図41のC方向から見た断面図。

    以下、図を参照して、本発明に係るパワー半導体モジュールおよびパワーモジュールの適切な実施形態を説明する。
    −実施形態1−
    [パワーモジュール全体構造]
    図1〜15は、本発明によるパワー半導体モジュールの第1の実施の形態を示す図である。 図1はパワー半導体モジュールを有するパワーモジュールの外観斜視図である。 図2は、図1のII−II断面図である。
    パワーモジュール300は、スイッチング素子を含みトランスファーモールドされたパワー半導体モジュールを、モジュールケース304内に収納したものである。 パワーモジュール300は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の電気車両に搭載される電力変換装置に用いられる。

    図2に示すように、パワーモジュール300は、図3に示すパワー半導体モジュール302をCAN型冷却器であるモジュールケース(放熱用部材)304の内部に収納したものである。 ここで、CAN型冷却器とは、一面に挿入口306(図2参照)と他面に底を有する筒形状をした冷却器である。 モジュールケース304は、電気伝導性を有する部材、例えばCu、Cu合金、Cu−C、Cu−CuOなどの複合材、あるいはAl、Al合金、AlSiC、Al−Cなどの複合材などから形成されている。 また、溶接など防性の高い接合法で、あるいは鍛造、鋳造法などにより、つなぎ目の無い状態でケース状に一体成型されている。

    モジュールケース304は、一側部に設けられた挿入口306以外に開口を設けない扁平状のケースであり、扁平状ケースの挿入口306にはフランジ304Bが設けられている。 扁平状ケースの面積の広い対向する2つの面の一方には放熱部307Aが設けられ、他方の面には放熱部307Bが設けられている。 放熱部307Aおよび放熱部307Bはモジュールケース304の放熱壁として機能するものであり、それらの外周面には複数のフィン305が均一に形成されている。 放熱部307Aおよび放熱部307Bを囲む周囲の面は、厚さが極端に薄く容易に塑性変形可能な薄肉部304Aとなっている。 薄肉部304Aを極端に薄くすることで、放熱部307Aおよび放熱部307Bをケース内側方向に加圧した際に、容易に変形することができる。 なお、モジュールケース304の形状は、正確な直方体である必要がなく、図1に示すように角が曲面を形成していても良い。

    図3(a)は、パワーモジュール300のモジュールケース304を取り外した斜視図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb-IIIb断面図である。
    モジュールケース304内には一次封止体であるパワー半導体モジュール302が収容されており、パワー半導体モジュール302には、補助パワーモジュール600が接続部370で接続されて、一体化されている。 接続部370における金属接合には、たとえばTIG溶接などを用いることができる。 補助パワーモジュール600に設けられた配線絶縁部608を、図1に示すようにネジ309によってモジュールケース304のフランジ304Bに固定することにより、モジュールケース304内においてパワー半導体モジュール302が位置決めされる。

    [パワー半導体モジュール]
    次に、図4〜10を用いて、パワー半導体モジュール302の構成を説明する。 図4は、パワーモジュール300の回路図である。 図5〜10は、パワー半導体モジュール302の製造工程を示す図である。 パワーモジュール300は、上アーム用IGBT328と下アーム用IGBT330とを直列したものであり、半導体素子としては、IGBT328、330およびダイオード156、166を備えている。 これらの半導体素子は、図5に示すようにフラットパッケージ構造を有し、パッケージの表裏面に電極が形成されている。

    上アーム用IGBT328のコレクタ電極と上アーム用ダイオード156のカソード電極は導体板315に接続され、IGBT328のエミッタ電極とダイオード156のアノード電極は導体板318に接続されている。 下アーム用IGBT330のコレクタ電極と下アーム用ダイオード166のカソード電極は導体板320に接続され、IGBT330のエミッタ電極とダイオード166のアノード電極は導体板319に接続されている。 導体板318と導体板320とは、中間電極329を介して接続されている。 中間電極329により上アーム回路と下アーム回路とが電気的に接続され、図4に示すような上下アーム直列回路が形成される。 なお、導体板315、320、318、319としては、Cu、Al、Ni、Au、Ag、Mo、Fe、Coなどの金属、それらの合金、複合体が用いられる。

    図5に示すように、直流正極側の導体板315および交流出力側の導体板320と、上アーム用信号接続端子327Uおよび下アーム用信号接続端子327Lとは、共通のタイバー372に繋がれた状態で、これらが略同一平面状の配置となるように一体的に加工される。 上アーム用信号接続端子327Uには、IGBT328の制御電極328Aがボンディングワイヤ371(図7参照)により接続される。 下アーム用信号接続端子327Lには、IGBT330の制御電極330Aがボンディングワイヤ371(図7参照)により接続される。 導体板315、320の半導体素子(IGBT328、330、ダイオード156、166)が接合される部分には凸状の素子固着部322がそれぞれ形成されている。 各半導体素子は、それらの素子固着部322の上に金属接合材160によって接合される。 金属接合材160には、例えば、はんだ材や銀シート及び微細金属粒子を含んだ低温焼結接合材等が用いられる。 金属接合材160には錫を主成分としたハンダを用いる事が望ましいが、金、銀、銅のいずれかを主成分としたものやロウ材やペースト等を用いることもできる。

    IGBT328、330およびダイオード156、166の上には、金属接合材160を介して導体板318と導体板319が略同一平面状に配置され、金属接合される。 図4に示すように、導体板318には、上アーム側のIGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極が接合される。 導体板319には、下アーム側のIGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極が接合される。 導体板315には直流正極接続端子315Dが形成されている。 導体板320には交流接続端子320Dが形成されている。 導体板319には直流負極接続端子319Dが形成されている。

    上述したように、導体板315と導体板318の間にIGBT328及びダイオード156を挟み込むと共に、導体板320と導体板319の間にIGBT330及びダイオード166を挟み込み、導体板320と導体板318とを中間電極329により接続すると、図6に示す状態となる。 さらに、IGBT328の制御電極328Aと信号接続端子327Uとをボンディングワイヤ371により接続すると共に、IGBT330の制御電極330Aと信号接続端子327Lとをボンディングワイヤ371により接続すると、図7に示す状態となる。

    図7に示す状態に組み立てた後、半導体素子(IGBT328、330、ダイオード156、166)およびボンディングワイヤ371を含む部分を樹脂封止部348により封止する。 この封止はトランスファーモールドにより行われる。 図8に示すように、タイバー372の内側における符号373a、373bで示す部分(金型押圧面)を上下からトランスファーモールド用金型374で押さえ、金型押圧面373a-373b間の領域内に封止用の樹脂を充填して樹脂封止部348を形成する。 樹脂封止部348は、表面側においては導体板318、319が露出されるように形成され、裏面側においては導体板315、320の一面が露出されるように形成される。 樹脂封止部348の表面には、図8に図示されるように、タイバー372と平行な方向に延出される複数の溝状の凹部348Cが形成されている。 詳細は後述するが、すべての凹部348Cの端部は、樹脂封止部348から露出された導体板318、319の端部から離間して位置している。 なお、後述するが、樹脂封止部348の裏面には、凹部348Cと同様な凹部348Dが形成されており、この凹部348Dの端部は、樹脂封止部348から露出された導体板315、320の端部から離間して位置している。

    図9(a)、(b)は、封止樹脂を形成するトランスファーモールド工程を説明する図であり、図9(a)は型締め前、図9(b)は型締め後の断面図である。 図9(a)に示すように、図7に図示された封止前のパワー半導体モジュール302は、上側金型374Aと下側金型374Bの間に設置される。 上側金型374Aおよび下側金型374Bがパワー半導体モジュール302を上下から金型押圧面373a、373bにおいて挟み込んで型締めすることで、図9(b)に示すように金型空間375が金型内に形成される。 この金型空間375に封止樹脂を充填して成型し、一次封止体であるパワー半導体モジュール302を作製する。 パワー半導体モジュール302は、図5を参照して理解される如く、導体板318、315の内面に、IGBT328、ダイオード156の表裏両面が密着し、導体板319、320の内面に、IGBT330、ダイオード166の表裏両面が密着された状態で、導体板318、315、319、320の周側面を樹脂封止されて一体化されている。

    図9(a)に図示されるように、上側金型374Aの内面には、封止樹脂が充填される領域に凸部374Cが、また、下側金型374Bの内面には、封止用の樹脂が充填される領域に凸部374Dが形成されている。
    図9(b)に図示されるように、樹脂封止前のパワー半導体モジュール302は、導体板318および319の表面(上面)が上側金型374Aの内面に密着し、導体板315および320の表面(下面)が下側金型374Bの内面に密着した状態で成型される。
    これにより、樹脂封止部348の表面は、それぞれ、導体板318、319の表面と、ほぼ同一面となり、導体板318、319の表面が樹脂封止部348から露出する。 また、樹脂封止部348の裏面は、それぞれ、導体板315、320の表面と、ほぼ同一面となり、導体板315、320の表面が樹脂封止部348から露出する。

    また、上側金型374Aの内面には凸部374Cが、下側金型374Bの内面には凸部374Dが形成されているため、上述した如く、樹脂封止部348の表裏両面には、図8に図示されるように、複数の溝状の凹部348Cが形成される。
    図8において、凹部348Cは、平行な複数の溝形状として図示されているが、格子状に形成してもよい。 また、凹部348Cは、ドット状に形成して、直線状、あるいはマトリクス状に配列してもよい。 このことは、凹部348Dについても同様である。 凹部348C間の間隔に形成する凸部は、封止樹脂が折損しない強度を有するようにすればよく、特に、寸法に制限はないが、例えば、200μm程度の幅を残すように形成すれば強度的にも十分である。

    樹脂封止部348を形成する封止樹脂としては、例えば、ノボラック系、多官能系、ビフェニル系のエポキシ樹脂系を基とした樹脂を用いることができる。 これらの樹脂に、SiO 2、 Al 3、 AlN、BNなどのセラミックスやゲル、ゴムなどのフィラーを含有させ、熱膨張係数を導体板315、320、318、319に近づけて、導体板315、320、318、319との熱膨張係数の差を低減する。 このような樹脂を用いることにより、使用環境時の温度上昇に伴って発生する熱応力が大幅に低下するため、パワー半導体モジュール302の寿命を延ばすことが可能となる。 セラミックスフィラーの最大粒径は、凹部348C、または348D同士の間隔の凸部の平面サイズ(面積)よりも小さいものを用いることが望ましい。 凹部348C、348D同士の間隔の凸部の平面サイズ(面積)よりも大きいフィラー粒径を用いた場合、封止樹脂348に未充填箇所が形成され、溶射膜710の接着強度が低下する。

    なお、図9(a)、(b)に示すように、金型押圧面373a、373bでは、直流正極接続端子315D、直流負極接続端子319D、交流接続端子320D、信号接続端子327Uおよび信号接続端子327Lが一列に並べて配置されている。 こうした端子配置とすることで、上側金型374Aおよび下側金型374Bを用いて、各端子と半導体素子との接続部において余分な応力を発生させずに、かつ、隙間なく型締めを行うことができる。 したがって、半導体素子との破損を招いたり、あるいは樹脂封止部348を構成する封止樹脂が金型の隙間から漏出したりすることなく、半導体素子との封止を行うことができる。

    図9(a)、(b)に示すように封止樹脂により封止した後、タイバー372を切除して、直流正極接続端子315D、交流接続端子320D、信号接続端子327U、327Lをそれぞれ分離する。 そして、パワー半導体モジュール302の一辺側に一列に並べられている直流正極接続端子315D、直流負極接続端子319D、交流接続端子320D、信号接続端子327U、327Lの各端部を、図10に図示されるように、それぞれ、同一方向に折り曲げる。 これにより、接続部370においてパワー半導体モジュール302と補助パワーモジュール600とを金属接合する際の作業を容易化して生産性を向上すると共に、金属接合の信頼性を向上することができる。

    図11(a)は補助パワーモジュール600の斜視図であり、図11(b)は、図11(a)のXIb−X1b断面図である。
    補助パワーモジュール600は、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324U、324Lを備えている。 直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号配線324Lは、樹脂材料で成型された配線絶縁部608によって、相互に絶縁された状態で一体に成型されている。 配線絶縁部608は各配線を支持するための支持部材としても作用し、配線絶縁部608に用いる樹脂材料には、絶縁性を有する熱硬化性樹脂かあるいは熱可塑性樹脂が適している。 これにより、直流正極配線315A、直流負極配線319A、交流配線320A、信号配線324Uおよび信号接続端子324Lの間の絶縁性を確保でき、高密度配線が可能となる。

    直流正極配線315Aの上端には直流正極端子315Bが形成され、下端には、直流正極接続端子315Cが直角に折れ曲がるように形成されている。 直流負極配線319Aの上端には直流負極端子319Bが形成され、下端には、直流負極接続端子319Cが直流正極接続端子315Cと同方向に折れ曲がるように形成されている。 交流配線320Aの上端には交流端子320Bが形成され、下端には、交流接続端子320Cが直流正極接続端子315Cと同方向に折れ曲がるように形成されている。 信号配線324U、324Lの上端には、それぞれ信号端子325U、325Lが形成されている。 一方、信号配線324U、324Lの下端には、信号接続端子326Uおよび信号接続端子326Lが直流正極接続端子315Cと同方向に折れ曲がるように形成されている。

    このように、補助パワーモジュール600側の接続部370を構成する直流正極接続端子315C、直流負極接続端子319C、交流接続端子320C、信号接続端子326Uおよび信号接続端子326Lは、図11(a)に示すように一列に並べて配置されている。 そして、補助パワーモジュール600側の接続部370(326U、315C、319C、326L、320C)は、図10に示すように一列に並べて配置されているパワー半導体モジュール302側の接続部370(327U、315D、319D、327L、320D)と接続される。 接続には、例えば、TIG溶接などを用いることができる。

    [パワー半導体モジュールとモジュールケースの接合]
    図2に図示されたパワーモジュール300において、パワー半導体モジュール302は、絶縁層700によりモジュールケース304に接着されている。
    すなわち、パワー半導体モジュール302における導体板318、319とモジュールケース304の放熱部307Aとの間、および導体板315、320とモジュールケース304の放熱部307Bとの間には、それぞれ、絶縁層700が介装されている。 導体板318、319と放熱部307Aとの接着構造、および導体板315、320と放熱部307Bとの接着構造は同様であり、以下、両者を代表して導体板315、320と放熱部307Bとの接合構造について説明する。

    図12は、図2の領域XIIの拡大断面図である。
    パワー半導体モジュール302と放熱部307Bの間には絶縁層700が設けられている。
    絶縁層700は、絶縁性の酸化物やセラミックスの粉体を溶射して形成された溶射膜710の層と、溶射膜710に積層して設けられた樹脂性の絶縁膜720と、溶射膜710と絶縁膜720の積層体の周囲の側部に設けられた絶縁性の樹脂層730とを備えている。 溶射膜710は、パワー半導体モジュール302の導体板315、320の放熱面である表面315a、320a上および樹脂封止部348の表面上に形成されている。

    上述した如く、パワー半導体モジュール302の樹脂封止部348の表面側には、複数の凹部348Dが設けられている。 凹部348Dは、その断面が、底面部が開口部よりも平面サイズ(面積)が大きい逆台形形状に形成されている。 換言すれば、底面部から開口部に向かって平面サイズが拡大する方向に傾斜する側面を有している。 溶射膜710は、この凹部348Dの深さよりも厚く形成され、各凹部348Dを充填して、樹脂封止部348の表面上に、切れ目の無いべた状に形成されている。

    溶射膜710は、熱伝導率の良好な絶縁性の酸化物やセラミックス(以下、「セラミックス等」とする)により構成されている。 セラミックス等の粉末を、部分的あるいは完全溶融状態で導体板315、320および樹脂封止部348(以下、「基材」とする)に衝突させると、セラミックス等は基材表面に扁平形状で溶着する。 扁平形状に溶着して凝固した扁平体711の上にもセラミックス等の扁平体711がさらに溶着する。 このようにして、溶射膜710を構成する扁平体711は、溶射膜710内に三次元系な空孔712を形成しながら、基材および扁平体711同士で強固に接合される。
    扁平体711の最大粒径は、凹部348C、または348Dにおける開口部の平面サイズ(面積)よりも小さいものを用いることが望ましい。 凹部348C、348Dにおける開口部の面積よりも大きいフィラー粒径を用いた場合、凹部348C、348Dの内部にボイドが生じ、溶射膜710の接着強度が低下する。

    溶射膜710の樹脂に対する接着強度は、アルミニウムや銅などの金属に対する接着強度に対して1/100程度と小さい。 従って、本発明のように、パワー半導体モジュール302の金属部分と樹脂部分に溶射膜を形成する構造の場合、特に、樹脂部分において溶射膜の接着力が小さくなる。
    これに対し、本発明の一実施の形態では、パワー半導体モジュール302の樹脂封止部348に複数の凹部348Dが形成されており、溶射膜710は、各凹部348Dの深さよりも厚く形成され、各凹部348Dを充填して、樹脂封止部348の表面上にべた状に形成されている。 このため、溶射膜710は、アンカー効果により、樹脂封止部348に強固に接合される。

    溶射膜710に形成される空孔712には絶縁性の樹脂が含浸されている。 溶射膜710中に含浸される樹脂は、絶縁膜720の基材材料である樹脂と同一材料であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。 絶縁膜720の基材材料である樹脂と同一とすると、後述する如く、作業能率を向上することが可能となる。

    絶縁膜720は、溶射膜710に積層して形成されている。 絶縁膜720は、放熱部307Bを、溶射膜710を介してパワー半導体モジュール302の導体板315、320および樹脂封止部348に接着するものである。 このため、絶縁膜720には、高い熱伝導と強い接着力を有することが必要とされる。 従って、絶縁膜720は接着力が大きい樹脂材料が用いられる。 また、樹脂中に、セラミックス等が混入された樹脂を用いることにより、熱伝導率を一層向上することができる。

    樹脂層730は、溶射膜710と絶縁膜720の積層体の周囲の側部に設けられている。
    パワー半導体モジュール302は、図12に示すように、金属の導体板315(320)、樹脂が含浸された溶射膜710、絶縁膜720および金属の放熱部307Bのように様々な熱膨張係数の部材を積層した構造を有している。 このように、様々な熱膨張係数の部材を接合や接着すると、応力が積層体の端部に集中し、端部から剥離が発生、進展していくことになる。 例えば、導体板315にCuを用いた場合にはその熱膨張係数αは17程度となり、モジュールケース304にAlを用いた場合には放熱部307Bの熱膨張係数αは23程度となる。 この熱膨張係数の違いにより、パワー半導体モジュール302全体の温度が上昇すると積層体に剥離や割れ等が発生しやすくなる。
    樹脂層730は、このような積層体の端部に発生する応力集中を緩和する応力緩和用として形成されている。

    [絶縁層の形成]
    次に、図13〜15を参照して、絶縁層700の形成方法を説明する。
    図13は、タイバー372が切り取られておらず、溶射膜710が形成される前のパワー半導体モジュール302の断面図である。 図14(a)は、溶射膜が形成された状態のパワー半導体モジュールの断面図であり、図14(b)は、図14(a)における領域XIVbの拡大図である。
    上述したように、導体板315と導体板320、および導体板318と導体板319は、それぞれ、図13の紙面に垂直な方向に並ぶように配置されている。 導体板315と導体板318に挟まれるようにIGBT328およびダイオード156が配置され、導体板320と導体板319に挟まれるようにIGBT330およびダイオード166が配置されている。 これらは樹脂封止部348によって封止されているが、導体板315、320、318、319の表面315a、318a、319a、320a(半導体素子が接合されている面と反対側の面)は樹脂封止部348から露出している。 また、表面315a、318a、319a、320aと略同一平面にある樹脂封止部348には、凹部348C、348Dが形成されている。 図13は、図3のIIIb−IIIbと同一部分を切断した断面図であって、導体板315、318の部分の断面図である。

    (溶射膜の形成)
    図12に示した絶縁層700を形成するために、まず、図14(a)に示すようにパワー半導体モジュール302の両面に溶射膜710を形成する。 図14(b)は、図14(a)の領域XIVbの拡大図である。 溶射膜710は、表面315a、318a、319a、320aの領域が含まれるように形成され、溶射膜710の周側縁は、略同一平面上の樹脂封止部348上に形成されている。 溶射膜710は絶縁体であり、酸化物やセラミックスの粉体を溶射して形成する。 本実施の形態ではプラズマ溶射法によりセラミックスの溶射膜710を形成しているが、他の溶射法、例えばアーク溶射法、高速フレーム溶射法等を用いても良い。 この時、図14(a)に示すように、パワー半導体モジュール302は樹脂封止部348によって封止されているため、溶射処理時に半導体素子(IGBT328、330およびダイオード156、166)やボンディングワイヤ371などへの物理的、化学的な影響を、樹脂封止部348によって防止することができる。 そのため、溶射のための複雑なマスキングを施す必要がなく、多数並べて一括で処理できるため生産性に優れる。

    溶射による導体板315、320、318、319の温度上昇は、例えばろう材を用いて導体板315、320、318、319とセラミックス板を接合するよりもはるかに小さく、溶融、熱劣化、反りなどの熱変形も小さい。 例えば、溶射膜710をプラズマ溶射法により形成する場合には、パワー半導体モジュール302の温度上昇は100〜180℃程度となる。 そのため、樹脂封止部348、金属接合材160、IGBT328、330およびダイオード156、166の熱劣化を防止できる。 金属接合材160による半導体素子の接合は220〜300℃程度の温度範囲でなされるので、この接合後に溶射膜710を形成しても金属接合部160の接合に影響が生じることはない。

    一方、導体板315に溶射膜710を形成してから半導体素子を接合するような逆の手順で行なった場合には、半導体素子の接合温度が220〜300℃程度と溶射膜形成時の温度上昇より高いため、熱膨張係数の小さい溶射膜710と熱膨張係数の大きな導体板315、320、318、319との積層部に発生する熱応力が溶射時よりも大きくなる。 すなわち、半導体素子を接合してから溶射膜710を形成する手順の方が、熱応力は低減される。

    また、導体板315、320、318、319の溶射膜710が形成される表面315a、318a、319a、320aを、エッチングにより化学粗化することによって、導体板315、320、318、319と溶射膜710との間の接合強度を向上させることができる。 この時も、図14(a)に示すように、パワー半導体モジュール302は樹脂封止部348によって封止されているため、半導体素子(IGBT328、330およびダイオード156、166)やボンディングワイヤ371などへの物理的、化学的な影響を、樹脂封止部348によって防止することができ生産性に優れる。

    溶射膜710を形成するための粉末としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベリリアなどの酸化物、窒化アルミ、窒化珪素、窒化素などの窒化物、シリコンカーバイドなどの炭化物といった高熱伝導なセラミックスの粉体から選ぶのが好ましい。 また、これら単体組成に限らず、単体組成や酸化物と窒化物あるいは炭化物との複合組成、あるいは混合粉末を用いても良い。
    酸化物からなる粉末は、表面の酸化層がバインダーとしての機能を果たし、溶射材である扁平体711相互間の接合力を大きいものとなる。 窒化物などからなる粉末は、溶融状態で溶射する際に、表面に酸化物が形成され、この酸化物により、扁平体711相互間の接合力が大きなものとなる。

    導体板315、320、318、319および樹脂封止部348上に形成される溶射膜710は、図14(b)に示すように、上述のセラミックスが凝固し形成された扁平体711の集合体状になっており、扁平体711が層を成すように堆積している。 このように、プラズマ溶射法などにより、セラミックスの粉末を部分的あるいは完全溶融状態で基材に衝突させると、セラミックスは基材表面に扁平形状で溶着し、溶着して凝固した扁平体711の上にもさらに溶着することになる。

    扁平体711同士の界面、扁平体711と導体板315、320、318、319との界面、および扁平体711と凹部348C、348Dが形成された樹脂封止部348との界面は、三次元的に溶着面を形成し強固に接合している。 そのため、パワー半導体モジュール302に溶射膜710を形成した後に、前述のように接続部370においてパワー半導体モジュール302と補助パワーモジュール600とをTIG溶接等により金属接合する際に(図3参照)、溶射膜710に剥離や欠けなどが生じにくくなる。

    溶射膜710を構成する各扁平体711の平面サイズ(面積)は、溶射時に、扁平体711により樹脂封止部348の凹部348C、348Dとの間に空隙が発生するのを防止して、溶射膜710と樹脂封止部348との接合力を大きくするために、図12に図示されるように、凹部348C、348Dの平面サイズより小さくする必要がある。 換言すれば、樹脂封止部348の凹部348C、348Dの平面サイズを、溶射膜710を構成する各扁平体711の平面サイズより大きくすることが望ましい。

    なお、マスキングをすれば部分的に溶射膜710を形成できるので、パワー半導体モジュール302と補助パワーモジュール600とを金属接合した後に、溶射膜710を形成するようにしても良い。 しかし、使用中に発生する熱応力により剥離しないよう、この場合も溶射膜710が形成される樹脂封止部348の表面には凹部348C、348Dを設け、溶射膜710の接着強度を増加した方がよい。 また、図14(b)に示すように、溶射プロセスにおいて溶射物である扁平体711の付着率が高く、扁平体711の第一層に欠陥が生じないようにするには、溶射膜の被着面の傾斜角度が45°より大きく135°より小さい角度とする必要がある。 このため、凹部348C、348Dの被着面に対する傾斜角度θは0°より大きく45°より小さく(または135°より大きく180°より小さく)した方がよい。 さらに、凹部348C、348Dの深さとしては、付与する溶射膜710よりも浅くすることで、樹脂封止部348の凹凸部での溶射膜710の割れを防止することができる。

    (絶縁膜および樹脂層の形成)
    次に、絶縁層を構成する絶縁膜720および樹脂層730の形成方法について説明する。
    図15(a)は溶射膜の形成工程を説明するための図であり、図15(b)は図15(a)に続く工程を説明するための図である。
    図14に示すようにパワー半導体モジュール302の両面に溶射膜710を形成した後、図12に示すように、その溶射膜710の上に絶縁膜720を形成し、溶射膜710の内部に樹脂を含浸し、さらに外周部に樹脂層730を形成する。 これらの層の形成は、一度のプロセスで行うことができる。 その方法を以下に示す。

    パワー半導体モジュール302の両面に溶射膜710を形成し、次に、図15(a)に示すように、溶射膜710の上に絶縁シート720Aを配置する。 絶縁シート720Aは、樹脂基材内にセラミックス等のフィラーが混入されたシート状の部材であり、この絶縁シート720Aの量は、形成する絶縁膜720の量よりも多く設定される。 つまり、絶縁シート720Aは、絶縁膜720よりも厚く形成される。 絶縁シート720Aが形成されたパワー半導体モジュール302は、モジュールケース304内に挿入される。 パワー半導体モジュール302をモジュールケース304に挿入する場合、接続部370でパワー半導体モジュール302が接合された補助パワーモジュール600の配線絶縁部608(図3参照)をモジュールケース304のフランジ304Bに固定すると位置合わせできる。

    次いで、図15(b)の矢印で示すように、放熱部307A、307BをZ方向に加圧して、薄肉部304Aをケース内側に変形させ、放熱部307A、307Bをパワー半導体モジュール302に密着させる。 この時、絶縁シート720Aは、パワー半導体モジュール302に圧着され絶縁膜720が形成される。 この圧着の際に、絶縁シート720Aは絶縁膜720の厚さまで加圧されるため、絶縁シート720Aの樹脂成分は溶射膜710の空孔712に含浸されるとともに、溶射膜710の周側部に溢れ出る。 溶射膜710の周側部に溢れ出た絶縁シート720Aの樹脂成分により樹脂層730が形成される。

    例えば、絶縁シート720Aはフィラーの混入量が20vol. %であるとする。 そして、フィラーの大きさは、溶射膜710の表面凹部の大きさよりも小さく、溶射膜710内の空孔712よりも大きく設定されている。 絶縁シート720Aの樹脂成分が溶射膜710内の空孔712に含浸されるとともに、周囲の側部に樹脂が流れ出るように加圧し、絶縁シート720Aの樹脂成分が半分に減ったとする。 この場合、絶縁シート720Aの樹脂成分のみが周側部に流れ出るものとすると、樹脂層730内部にはフィラーは混入されておらず、絶縁膜720のフィラー混入率は約40vol. %程度まで増加することになる。 また、絶縁シート720Aの樹脂成分と共に絶縁シート720Aに含有されているフィラーの一部が周方向端部に流れ出るものとすると、樹脂層730にもフィラーが混入されることになる。
    なお、樹脂層730の形成は、絶縁シート720Aを用いる方法でなく、フィラーが混入した樹脂を塗布またはディップ等の方法により溶射膜710上に被着させる方法とすることもできる。

    絶縁膜720を構成する樹脂には、接着性のあるフェノール系、アクリル系、ポリイミド系、ポリアミドイミド系、エポキシ系、シリコン系、ビスマレイミドトリアジン系、シアネートエッセル系を基にした樹脂等が用いられる。 特に、接着性が高いビスマレイミドトリアジン系、ポリアミドイミド系、ポリイミド系、シアネートエッセル系、エポキシ系、フェノール系を基にした樹脂を用いるのが好ましく、接着後に剥離し難くパワー半導体モジュール302の寿命が高まる。

    また、半導体素子(IGBT328、330およびダイオード156、166)から発生する熱をモジュールケース304の放熱部307A、307Bに効率良く伝えるため、絶縁膜720には高い熱伝導率が要求される。 そのため、上記樹脂に熱伝導性向上のための良熱伝導性のフィラーを混入したものが、絶縁膜720に用いられる。 絶縁膜720に混入させるフィラーは絶縁性を有したものが良く、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベリリアなどの酸化物、窒化アルミ、窒化珪素、窒化硼素などの窒化物、シリコンカーバイドなど炭化物などの高熱伝導なセラミックスのフィラーがより好ましい。 しかし、樹脂を含浸した絶縁シート320Aが絶縁膜として機能するため、銀や銅やはんだやカーボンなど電気伝導性を有するフィラーも用いることが可能である。

    絶縁膜720の形成範囲については、導体板315、318の表面315a、318aの面積(図14参照)よりも広い範囲で行うと、放熱性を最も高くできる。 ただし、樹脂封止部348の熱伝導率が導体板315、320、318、319の熱伝導率よりも十分小さいため、熱伝導率が高い絶縁膜720の形成範囲は、図15(a)に示すように導体板315、320、318、319よりもやや広い範囲で十分である。

    次に、溶射膜710内への樹脂含浸について説明する。 溶射膜710は、セラミックス充填率で最大95%程度まで充填することができる。 しかし、図12に示すように三次元的な空孔712が形成されているため、樹脂が含浸される前の溶射膜710の絶縁特性や熱伝導率は空孔712の影響によって大幅に低下する。 そこで、絶縁性の材料を用いて封孔処理を行う必要がある。 また、溶射膜710内に三次元的な貫通孔が形成されているため、そのままでは温度昇降に伴う熱応力での割れ感受性が高いという問題がある。 そこで、空気よりも熱伝導率が高く、溶射膜710を構成するセラミックスよりも熱膨張係数が大きい樹脂を含浸することで、これらの問題を解決することができる。

    溶射膜710内の空孔712に樹脂を含浸することで、絶縁、放熱および熱サイクル耐性を向上できる。 ここで、含浸用の樹脂は、絶縁膜720に用いられる樹脂と同一にする方が、硬化時の親和性が高く接着性を高めることができるので好ましい。 また、含浸を行う際には、溶射膜710の空孔712とそこに含浸する樹脂との密着性を高めるために、空孔712にエッチング処理やカップリング処理を施すことが好ましい。

    上述した如く、樹脂層730は、積層膜構造を有する絶縁層700、導体板315および放熱部307Bからなる積層体の応力緩和機能を有する。
    図12に示す例では、樹脂層730は、絶縁膜720および溶射膜710の端部を覆うとともに、それらの外周方向に延在している。 本実施の形態では、樹脂層730は、絶縁膜720と同一の樹脂が用いられている。 しかし、絶縁膜720よりもフィラーの含有率を低くすることで、樹脂が含浸された溶射膜710およびフィラーを含む絶縁膜720に比べて熱伝導率が低く、弾性係数が小さいか、または接着強度が高いものとしている。

    なお、樹脂層730は、樹脂封止部348と放熱部307Bの周側部との間に配置されるものであるため、絶縁層700における樹脂層730の熱伝導率が低くても、パワー半導体モジュール302の放熱性に対する影響はほとんど無い。 樹脂封止部348に凹部348C、348Dを設け、その凹部348C、348Dの凹凸形状を反映する形で溶射膜710が形成させることで、樹脂層730との接着面積を大きくすることができる。 また、樹脂層730の厚さを大きくすることで応力緩和効果を高めることができる。

    絶縁層700を形成後、モジュールケース304内に封止樹脂351(図2参照)を充填して封止することで、接続部370とモジュールケース304との間で必要な絶縁距離を安定的に確保することができる。 封止樹脂351としては、例えばノボラック系、多官能系、ビフェニル系のエポキシ樹脂系を基とした樹脂を用いることができる。 また、エポキシ樹脂に対してはSiO 、Al 、AlN、BNなどのセラミックスやゲル、ゴムなどを含有させ、熱膨張係数をモジュールケース304や導体板315、320、318、319に近づける。 これにより、部材間の熱膨張係数差を低減でき、使用環境時の温度上昇にともない発生する熱応力が大幅に低下するため、パワーモジュール300の寿命をのばすことが可能となる。

    次に、樹脂封止部348に形成された凹部348C、348Dと、最も電界集中する導体板315、320、318、319の端部との距離Xについて述べる。
    図16は、実施例1でのパワーモジュールの導体板315、320、318、319の端部と樹脂封止部348の拡大断面図である。 凹部348C、348Dの側面348Eの溶射膜の被着面の傾斜角度θは、溶射膜710の未接着を防止するために、0°より大きく45°よりも小さい範囲とする必要があることを説明した。 しかし、溶射膜710と樹脂封止部348の接着強度をさらに増加するには、図17に示すように側面348Eの溶射膜の被着面の傾斜角度θを45°よりも大きくした方がよい。 これにより、樹脂封止部348の単位面積あたりの凹部348C、348Dの数を増加したり、より強いアンカー効果によって、剥離進展を抑制可能なせん断強度を上昇したりできる。 しかし、上述した如く、側面348Eと溶射膜710との間に未接着によるボイドが形成する可能性が高まる。

    電界集中する導体板315、320、318、319周辺でのボイドの形成は、稼動中の電圧による部分放電を発生させ、部分放電により樹脂封止部348が劣化し絶縁破壊を生じるため、これを防止する必要がある。 ここで、導体板315、320、318、319から側面348Eまでの距離、すなわち導体板315、320、318、319の端部から凹部348C、348Dの端部までの距離をXとする。

    図18は、最も安全な距離(長さ)Xを見積もるための部分放電開始モデルである。 パワーモジュール300に付与される最大電圧(最大定格)をVとし、導体板315、320、318、319の端部から最も近い凹部348C、348Dの端部の距離Xに大きさtの空隙が形成し、絶縁層700の厚さが0の時(いずれの絶縁層厚でも放電しない)が、部分放電開始構造としてワーストケースである。 封止樹脂の誘電率をε、空隙の放電開始電圧Uiとすると、発生する部分放電開始電圧Viは、次の式(1)で表される。
    Vi=Ui(1+X/tε) 式(1)
    式(1)を変形して式(2)が得られる。
    X=tε{(V /-U )―1} 式(2)

    は気圧と温度により変化するため、車両動作環境で最も放電しやすい環境を想定すると、0.685気圧、125℃である。 図19はこの条件下で、樹脂封止部348の誘電率εを3.8、空隙に存在する気体を空気とした際、導体板315、318、319、(以下、代表して「318」を用いる)端部から樹脂封止部348の凹部348C、348Dの端部(導体板318に最寄りの端部)との距離X毎のパッシェンカーブである。 図19の横軸は、空隙の大きさtであり、縦軸が部分放電開始電圧となる。 距離X毎に放電しやすいtの大きさは異なるが、Xを増加することで部分放電開始電圧が上昇することがわかる。 この関係を用い、いずれの空隙の大きさ、絶縁層700の層厚でも放電しない距離Xとモジュール最大電圧の関係を導出することができる。 図20に樹脂封止部348の誘電率εを2.0、3.8、6.0、8.0とした場合を示す。 図20に示すように、一例として樹脂封止部348の誘電率εを3.8とした場合、500Vの電圧が想定される場合は、Xを50μm以上、800Vの場合は150μm以上にすることで、絶縁劣化しないで接着強度を上昇させ寿命を向上できるパワーモジュール300にすることができる。

    図20において、樹脂封止部348の誘電率が3.8よりも小さい場合には、相関曲線が点線で示す下方側に移動し、距離Xが小さくなる。 一方、樹脂封止部348の誘電率εが3.8よりも大きい場合には、相関曲線が二点鎖線で示す上方側に移動し、距離Xが大きくなる。 従って、誘電率εが3.8より小さい樹脂を用いることにより、距離Xを、上記一例の場合より小さくすることができる。

    また、より高い絶縁特性、放熱性、熱サイクル耐性が必要なパワー半導体モジュール302の場合、溶射膜710の形成時に側面348Eが剥離していると、その後の樹脂含浸で補修されるが、含浸前に接着していて含浸後に剥離するとコロナ放電劣化が生じるので、樹脂含浸する場合でも、図20に示す距離Xを適用することで信頼性が向上する。

    本発明によるパワー半導体モジュールの一実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
    (1)半導体素子が搭載された導体板315、320、318、319の周囲を封止する樹脂封止部348に、複数の凹部348C、348Dを設け、この凹部348C、348D内を含め、樹脂封止部348の表面に溶射膜710を形成した。 このため、溶射膜710と樹脂封止部348との接着強度を向上することができる。

    (2)樹脂封止部348に形成される凹部348C、348Dの平面サイズを、溶射膜710を構成する各扁平体711の平面サイズよりも大きくした。 このため、溶射時に、扁平体711が部分的あるいは全面的に凹部348C、348Dを塞ぐことにより、樹脂封止部348との間に大きな空隙が発生するのを防止して、溶射膜710と樹脂封止部348との接合力を、一層、向上することができる。

    (3)樹脂封止部348に形成される凹部348C、348Dを、断面形状が底部側よりも開口部側の平面サイズが大きい逆台形形状とした。 これによって、溶射時に、扁平体711と樹脂封止部348との間にボイドが発生する確率を低減することができる。

    (4)溶射膜710上に、セラミックス等の含有率が小さい絶縁膜720を形成したので、パワー半導体モジュール302とモジュールケース304の放熱部307A、307B間の熱伝達率を大きいものとすることができる。 また、絶縁膜720として接着力の大きい樹脂基材を用いるので、放熱部307A、307Bとの接着強度を大きいものとすることができる。
    (5)セラミックス等を含有する絶縁シート720Aを圧着し、絶縁シート720Aから溢れ出る樹脂成分を溶射膜710の空孔712に含浸させた。 これにより、溶射膜710の絶縁性および熱伝導性を向上することができる。 また、溶射膜710のクラック等に対する強度を向上することができる。 また、絶縁シート720Aを圧着して絶縁膜720を形成するので、溶射膜710の空孔712の含浸および絶縁膜720を形成する際の作業効率が向上する。

    (6)絶縁膜720および溶射膜710の周側部にフィラーを含有しないか、あるいはごく少量含有する樹脂層730を形成したため、絶縁層700、導体板315および放熱部307Bからなる積層体に発生する応力を緩和することができる。 この場合、樹脂封止部348に凹部348C、348Dを設け、その凹部348C、348Dの凹凸形状を反映する形で溶射膜710が形成させることで、樹脂層730との接着面積を大きくすることができる。 また、樹脂層730の厚さを大きくすることで応力緩和効果が高まる。

    (7)樹脂封止部348に形成される凹部348C、348Dを導体板315、320、318、319の端部から所定距離だけ離間した。 このため、樹脂封止部348の凹部348C、348D内にボイドが生じた場合でも、部分放電の発生を抑止することができる。
    特に、導体板318の端部から凹部348C、348Dの端部までの長さを式(2)により算出される距離Xより大きくすることにより、部分放電条件に最悪なサイズのボイドが形成されている場合であっても、部分放電を確実に抑止することができる。

    (8)樹脂封止部348に形成される凹部348C、348Dの側面348Eの溶射膜の被着面の傾斜角度θを45°よりも大きくし、単位面積あたりの凹部348C、348Dの数を増加させ、これにより、溶射膜710の接着強度を一層大きくすることができる。
    なお、本発明によるパワー半導体モジュール302は、上記一実施の形態以外の形態とすることが可能である。
    以下に、本発明の他の実施形態を示す。

    -実施形態2-
    図21(a)は、樹脂封止部中に混在するフィラーが凹部から露出しない構造の断面図であり、図21(b)は、本発明の実施形態2に係り、樹脂封止部中に混在するフィラーが凹部から露出した構造の断面図である。
    図21(a)に示すように、樹脂封止部348は、半導体素子(IGBT328、330およびダイオード156、166)、導体板315、320、318、319、モジュールケース304などの熱膨張係数が異なる材料が接続されることで発生する熱応力を緩和するために、例えばノボラック系、多官能系、ビフェニル系のエポキシ樹脂系を基とした樹脂348Gに、SiO 、Al 、AlN、BNなどのセラミックスフィラー348Fを含有させ、熱膨張係数を制御する。 樹脂封止部348には、最表面や導体板315、320、318、319との界面に、スキン層と呼ばれる樹脂348Gが存在する。

    樹脂348Gの表面に、溶射膜710を形成する際、溶射膜710と樹脂封止部348との界面は、スキン層である樹脂348Gとなるため、接着強度は樹脂348Gと溶射膜710との接着強度を反映する。 これに対し、ブラスト処理を行うと樹脂348Gが優先的に除去され、図21(b)に示すように、最表面にSiO 、Al 、AlN、BNなどのセラミックスフィラー348Fが露出する。 これにより、フィラー348Fと溶射膜710との接着面積が増加し、樹脂封止部348との接着強度が上昇する。 一般的に、溶射膜710のセラミックスに対する接着強度は、樹脂に対する接着強度に対して10〜20倍の強度を有しており、セラミックスフィラー348Fが露出されることによりこの両者間の接着強度が反映される。

    一方、上述したように、溶射プロセスにて付着率が高く溶射物である扁平体711の第一層に欠陥が生じないようにするには、側面348Eの溶射膜の被着面の傾斜角度θは0°より大きく45°にした方がよい。 しかし、図21(b)に示すように、ブラスト処理により凹部348C、348Dの側壁面348H部において0°より大きく45°を外れる領域が発生する。 側壁面348H部では、接着強度が上昇するが、ボイドが形成しやすくなる。 そこで、図20に示す所定の距離Xを設けることで絶縁特性の劣化が防止できる。 また、ブラスト条件によっては、導体板315、320、318、319よりも封止樹脂348の方が削れやすく段差ができる場合があるが、この場合は封止樹脂348の凹み量をその後形成する溶射膜710の厚さよりも小さくすることで段差による割れを防止することができる。 さらに、導体板315、320、318、319の角をテーパー、曲面にすると割れや電界集中を防止できるので好ましい。

    -実施形態3-
    図22は、本発明の実施形態3を示す図であり、パワー半導体モジュールの要部を示す拡大断面図である。
    図22は、実施形態1における図12に対応するパワー半導体モジュール302の部分を示しており、実施形態1との相違は、導体板315、320の表面315a、320aおよび樹脂封止部348の表面348Jに微細な凹凸が形成されている点である。

    微細な凹凸は、溶射膜710を構成する扁平体711の平面サイズよりも小さい平面サイズに形成されている。 このことは、微細な凹凸は、溶射膜710に形成された凹部348C、348Dよりも平面サイズが小さいことを意味する。 このような微細な凹凸は、ブラスト処理、CVD装置を用いたドライエッチング、あるいはエッチング液によるウエットエッチング等により形成される。 導体板318、319の発熱面となる表面318a、319aおよび樹脂封止部348の表面348Jに微細な凹凸を形成することにより、溶射膜710との接着強度を増大することができる。 また、トランスファーモールド等により樹脂封止部348を形成した後の樹脂のバリ等を除去することができる。
    なお、上記において、微細な凹凸を、導体板315、320の表面315a、320aおよび樹脂封止部348の表面348Jに設けた構造として例示した。 しかし、微細な凹凸を、導体板315、320の表面315a、320aまたは樹脂封止部348の表面348Jのどちらか一方のみに設けるようにしてもよい。

    -実施形態4-
    図23は、本発明の実施形態4を示す図であり、モジュールケース304内にパワー半導体モジュール302が収容された状態の断面図である。
    図23は、実施形態1における図15(b)に対応する状態の図である。
    実施形態4における特徴は、モジュールケース304が、ケース本体(連接部)361と、ケース本体361とは別体に形成された多数のフィン305を有する放熱部362A、362Bとにより構成されている点である。
    モジュールケース304のケース本体361には、正面および背面に放熱部362A、362Bを嵌合する大きさの開口部363a、363bが形成されている。 放熱部362A、362Bは、超音波溶接あるいはTIG溶接などにより、開口部363a、363b周縁のケース本体361に接合される。
    他の構造は実施形態1と同様であり、対応する部材、部位に同一の符号を付して説明を省略する。

    -実施形態5-
    上述した各実施の形態では、CAN型のモジュールケース304内にパワー半導体モジュール302が挿入されたパワーモジュール300について説明した。 実施形態5では、その他の構造のパワーモジュールに対して、本発明のパワー半導体モジュールを適用した場合を示す。

    図24、25を用いて片面冷却パワーモジュール300の構成を説明する。 図24は、図4の回路を実現する半導体素子と導体板の配置を示している。 この配置では、導体板318、320が同電位となり一枚の導体板で形成できる。 IGBT328、330およびダイオード156、166の表面主電極は、複数の金属ワイヤあるいは金属リボンにより接続され、さらに導体板318、319に接続される。 ワイヤやリボンの材質は、Al、Al合金、Cu、Cu合金の単体および複合材である。 IGBT328およびダイオード156の裏面電極は、金属接合材(図示せず)により導体板315に金属接合される。 導体板315、318と放熱部307は、絶縁層700により接合される。 IGBT330およびダイオード166の裏面電極は、金属接合材(図示せず)により導体板318に金属接合される。 導体板315、318、319と放熱部307とは、絶縁層700により接合される。

    図25(a)、(b)は、図24の破線で示した部分の断面図である。 半導体素子から発熱した熱が導体板315、絶縁層700、放熱部307を通り効率良く外部に放熱される。
    樹脂封止部348には、凹部348Dが形成されている。 凹部348Dを含み、樹脂封止部348、および導体板315、318、319の表面に溶射膜710が形成されている。

    溶射膜710上面に、高熱伝導なフィラーを分散した絶縁膜720が形成されている。
    溶射膜710の空孔(図示せず)には、絶縁膜720の樹脂成分が含浸されている。 ここでも、積層体の周方向端部に樹脂層730が形成されるように樹脂の含浸を行う。 放熱部307の上面には、樹脂層730の流動を阻止する枠部364が形成されている。 含浸後、図25(a)に示すように、圧着して一体化する。

    パワー半導体素子裏面の導体板への接合とワイヤやリボンを用いた表面電極への接合した後に、樹脂封止部348により封止することで、導体板と放熱部接着時の加圧力による機械的な損傷を防止することができる。

    このように、片面冷却パワーモジュール300においても、樹脂封止部348に凹部348Dを形成し、凹部348Dを含め樹脂封止部348の表面に溶射膜710を形成することにより、アンカー効果により、溶射膜710の樹脂封止部348に対する接着強度を増大することができる。 導体板と放熱部307との間に配置される絶縁層700の構成を、樹脂が含浸された溶射膜710とフィラーが混入された絶縁膜720との積層体としたことにより、パワー半導体素子から放熱部307への放熱性能の向上を図ることができる。 さらに、積層体の周方向端部に樹脂層730を設けたので、積層体端部における応力を緩和することができる。

    -実施形態6-
    上記各実施形態では、パワー半導体モジュール302を多数のフィン305を有する放熱部307A、307Bにより冷却する構造であった。 しかし、他の冷却器により冷却するようにすることもできる。
    図26は、本発明の実施形態6を説明するための図であり、冷却器を備えたパワーモジュール300の断面図である。
    パワー半導体モジュール302は、樹脂層730の流動を阻止する枠部364を備えていない点を除けば、実施形態5に示した構造と同一である。 絶縁層700の絶縁膜720には、冷却器380が密着して配置されている。 冷却器380内には、冷媒流路381が形成されていて、ここを冷媒が流れることにより、パワー半導体モジュール302が冷却される。
    他の構成は、実施形態5と同様であり、対応する構成に同一の符号を付して説明を省略する。

    なお、図26では、パワー半導体モジュール302の片面のみに冷却器380を配置した構造として例示した。 しかし、冷却器380は、パワー半導体モジュール302の両面に配置する構造とすることもできる。
    また、実施形態1〜5に示したパワーモジュール300においても、パワー半導体モジュール302を冷却する放熱部307A、307Bに代えて、図26に図示された冷却器380を用いることもできる。

    [絶縁層の絶縁性能]
    図27と図28を用いて本発明に用いられる絶縁層700の絶縁性能を説明する。 図27の横軸は基材に溶射膜710を形成した際の膜厚であり、縦軸は100μm厚の溶射膜単体の絶縁破壊電圧を1とした場合の規格化絶縁破壊電圧である。 図28の横軸は基材に溶射膜710を形成した際の膜厚であり、縦軸は100μm厚の溶射膜単体のコロナ放電開始電圧を1とした場合の規格化部分放電開始電圧である。 部分放電開始電圧は、部分放電測定システムを用いて、Al板に溶射膜単体あるいは樹脂を含浸した溶射膜710上にAl電極を設けて、交流電圧を0Vから印加し、電圧を100V/sの速度で上昇させ、部分放電が開始する電圧を測定した。 ここで、部分電圧開始の閾値は2pcとした。

    図27、28に示すように、溶射膜単体では膜中に空孔を有しているため絶縁性能に劣るが、樹脂が含浸されることで絶縁破壊電圧とコロナ放電開始電圧が向上する。 特に、コロナ放電開始電圧は著しく向上する。 このように、樹脂を含浸した溶射膜710とフィラーを混入させた絶縁膜720との積層体から成る絶縁層700は、溶射膜単体よりも絶縁性能に優れており、それをパワーモジュールに適用する際に、絶縁に必要な厚さを薄くできる。 絶縁層700の厚さを薄くできることで、絶縁層700の熱抵抗が低下し、パワーモジュールの放熱性を向上できる。

    (比較例1)
    図29は絶縁層の構成に関する比較例である。 ここでは、厚さ2mmの150mm角のAl板を、アルミナを用いてサンドブラスト処理した後、粒径10〜30μmのアルミナ粒子を出力40kWにてプラズマ溶射して溶射膜を形成した。 この時、Al板に形成する溶射膜の気孔率を抑制し、冷却時の溶射膜の割れを防止するために、溶射されるAl板は180℃に予熱した。

    比較する絶縁層の構成は、樹脂含浸無しのアルミナ溶射膜単体(比較例A)と、空孔内にエポキシ樹脂を含浸したアルミナ溶射膜(比較例B)である。 作製した溶射膜は気孔率が10%のもので厚さが1mmである。 比較例Aおよび比較例Bに対して、Al板をエッチングで除去しアルミナ溶射膜単体とした。 密度計による密度の測定、レーザフラッシュ法による熱拡散率の測定、示差走査熱量測定による比熱容量の測定をそれぞれ行い、アルミナ溶射膜単体の熱伝導率を算出した。

    比較例A、Bとは別に、以下のようにして比較例Cを作成した。 アルミナを用いてサンドブラスト処理した厚さ2mmの150mm角のAl板を180℃に予熱し、粒径10〜30μmのアルミナ粒子を用いてプラズマ溶射し、100μmの溶射膜を形成した。 次に、アルミナ溶射膜へのエポキシ樹脂を含浸し、それを厚さ2mm、100mm角のAlへ接着した。

    一方、比較例Dは、厚さ2mm、100mm角のAlへの接着を、アルミナフィラーを混合したエポキシ樹脂層を用いて行った点が比較例Cと異なり、その他の構成は比較例Cと同じである。 ここで、比較例Dでは、アルミナ溶射膜の凹部にフィラーが入らないように、フィラー粒径を溶射膜の凹凸よりも大きくして作製した。

    なお、比較例C、Dのいずれの場合も、接着樹脂の厚さが25μmとなるように、スペーサを挿入して接着を行った。 接着後に、超音波探傷にて樹脂接着層にボイドや未接合部がない10mm角の領域を選定し、その領域を切り出して熱抵抗を測定した。 また、実際のAl板、絶縁層内の溶射膜、接着樹脂層の厚さは、測定後に絶縁層に対し垂直方向に切り出した断面を走査型電子顕微鏡で観察し、測長して確認した。 これにより接合体全体の熱抵抗値から絶縁層自体の熱伝導率を算出した。 図30の縦軸は、樹脂含浸無しの溶射膜単体の熱伝導率(W/m・K)を1と規格化した熱伝導率であり、溶射膜の気孔率は10%である。

    図30を参照して、本実施の形態の絶縁層700の放熱特性を説明する。 上述した比較例の場合と同様に、厚さ2mmの150mm角のAl板を、アルミナを用いてサンドブラスト処理した後、粒径10〜30μmのアルミナ粒子をプラズマ溶射し100μmの溶射膜を形成した。 その後、アルミナフィラー40vol%を混入した30μm厚のエポキシ絶縁シートを110℃、加圧2MPa、1分で仮付けした。 その後、減圧下でエポキシ樹脂をアルミナ溶射膜中に含浸させた。 次に、スペーサを挿入して厚さ2mm、100mm角のAl板を接着した。 なお、フィラーの粒径を1〜5μmとして溶射膜の凹部にもフィラーが配置できるようにした。 さらに、接着時に加圧し樹脂層厚が25μmとなるようにした。
    接着後に、超音波探傷にて樹脂接着層にボイドや未接合部がない10mm角の領域を選定し、その領域を切り出して熱抵抗を測定した。 また、実際のAl板、絶縁層内の溶射膜、接着樹脂層の厚さは、測定後に絶縁層に対し垂直方向に切り出した断面を走査型電子顕微鏡で観察し、測長して確認した。 これにより接合体全体の熱抵抗値から絶縁層自体の熱伝導率を算出した。

    図30に示すように、比較例A、Bを比べると、溶射膜単体に樹脂を含浸することで5倍以上熱伝導率が向上することがわかった。 これは、溶射膜孔内に存在する空気よりも含浸したエポキシ樹脂の方が、熱伝導率が大きいためである。 しかし、比較例Cに示すように、フィラーがない樹脂層が層状に複合化されると、絶縁層の熱伝導率が大きく低下することがわかる。 さらに、比較例Dに示すように、溶射膜凹部にもフィラーを設置しないと樹脂濃縮層が島状に形成しても熱伝導率が低下することがわかった。 このように、樹脂含浸した溶射膜を接合する際には接着する樹脂領域を減少することが重要となる。

    これに対し、溶射膜凹部にフィラーを配置した場合は、樹脂領域を減少することができ比較例C、Dを上回る熱伝導率を発現することがわかった。 なお、比較しやすいように絶縁膜720の厚さを25μmとしたが、スペーサを挿入しないで接合することで混入する最大フィラー径近くまで薄くすることが可能である。 また、溶射膜の組成として、アルミナよりも熱伝導率が高い窒化アルミなどを溶射原料粉末に混合すれば、樹脂含浸後の溶射膜の熱伝導率をより高めることができる。 同様に、樹脂接着層に混在するフィラーについても、アルミナよりも熱伝導率が高いセラミックスを用いれば絶縁層700の熱伝導率を向上させることが可能となる。

    以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。 例えば、絶縁膜720の代わりに高熱伝導なグリスを用いてもよいし、接着性のない弾性シートを用いてもよい。 溶射膜710に樹脂を含浸させる代わりに、ガラスを含浸させるようにしてもよい。 また、以上の説明で用いた弾性係数とは、硬化後のヤング率のことを意味しており、動的粘弾性試験にて周波数10Hz、昇温速度が3℃/minで測定した貯蔵弾性率のことである。 接着力は、JISK6850で測定した値である。

    [車載電気システムへの適用]
    上述したパワーモジュールは、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される電力変換装置、電車や船舶、航空機などの電力変換装置、さらに工場の設備を駆動する電動機の制御装置として用いられる産業用電力変換装置、或いは家庭の太陽光発電システムや家庭の電化製品を駆動する電動機の制御装置に用いられたりする家庭用電力変換装置に適用可能である。 以下では、図31〜42を用いてハイブリッド自動車の電力変換装置に適用した場合を例に説明する。

    (制御ブロック)
    図31は、ハイブリッド電気自動車の制御ブロックを示す図である。 図31において、ハイブリッド電気自動車(以下、「HEV」と記述する)110は1つの電動車両であり、2つの車両駆動用システムを備えている。 その1つは、内燃機関であるエンジン120を動力源としたエンジンシステムである。 エンジンシステムは、主としてHEVの駆動源として用いられる。 もう1つは、モータジェネレータ192、194を動力源とした車載電機システムである。 車載電機システムは、主としてHEVの駆動源及びHEVの電力発生源として用いられる。 モータジェネレータ192、194は例えば同期機あるいは誘導機であり、運転方法によりモータとしても発電機としても動作するので、ここではモータジェネレータと記す。

    車体のフロント部には前輪車軸114が回転可能に軸支され、前輪車軸114の両端には1対の前輪112が設けられている。 車体のリア部には後輪車軸が回転可能に軸支され、後輪車軸の両端には1対の後輪が設けられている(図示省略)。 本実施形態のHEVでは、いわゆる前輪駆動方式を採用しているが、この逆、すなわち後輪駆動方式を採用しても構わない。 前輪車軸114の中央部には前輪側デファレンシャルギア(以下、「前輪側DEF」と記述する)116が設けられている。 前輪側DEF116の入力側にはトランスミッション118の出力軸が機械的に接続されている。 トランスミッション118の入力側にはモータジェネレータ192の出力側が機械的に接続されている。 モータジェネレータ192の入力側には動力分配機構122を介してエンジン120の出力側及びモータジェネレータ194の出力側が機械的に接続されている。

    インバータ部140、142は、直流コネクタ138を介してバッテリ136と電気的に接続される。 バッテリ136とインバータ部140、142との相互において電力の授受が可能である。 本実施形態では、モータジェネレータ192及びインバータ部140からなる第1電動発電ユニットと、モータジェネレータ194及びインバータ部142からなる第2電動発電ユニットとの2つを備え、運転状態に応じてそれらを使い分けている。 なお、本実施形態では、バッテリ136の電力によって第1電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータ192の動力のみによって車両の駆動ができる。 さらに、本実施形態では、第1電動発電ユニット又は第2電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジン120の動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。

    バッテリ136はさらに補機用のモータ195を駆動するための電源としても使用される。 補機としては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。 バッテリ136からインバータ部43に直流電力が供給され、インバータ部43で交流の電力に変換されてモータ195に供給される。 インバータ部43は、インバータ部140や142と同様の機能を持ち、モータ195に供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。 モータ195の容量がモータジェネレータ192や194の容量より小さいので、インバータ部43の最大変換電力がインバータ部140や142より小さいが、インバータ部43の回路構成は基本的にインバータ部140や142の回路構成と同じである。 なお、電力変換装置200は、インバータ部140、インバータ部142、インバータ部43に供給される直流電流を平滑化するためのコンデンサモジュール500を備えている。

    (電力変換装置の制御回路)
    図32を用いてインバータ部140やインバータ部142あるいはインバータ部43の電気回路構成を説明する。 なお、図32では、代表例としてインバータ部140の説明を行う。

    インバータ回路144は、上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、からなる上下アーム直列回路150をモータジェネレータ192の電機子巻線の各相巻線に対応して3相(U相、V相、W相)分を設けている。 それぞれの上下アーム直列回路150は、その中点部分(中間電極329)から交流端子159及び交流コネクタ188を通してモータジェネレータ192への交流電力線(交流バスバー)186と接続する。

    上アームのIGBT328のコレクタ電極153は正極端子(P端子)167を介してコンデンサモジュール500の正極側のコンデンサの電極に、下アームのIGBT330のエミッタ電極は負極端子(N端子)168を介してコンデンサモジュール500の負極側にコンデンサ電極にそれぞれ電気的に接続されている。

    制御部170は、インバータ回路144を駆動制御するドライバ回路174と、ドライバ回路174へ信号線176を介して制御信号を供給する制御回路172と、を有している。 IGBT328やIGBT330は、制御部170から出力された駆動信号を受けて動作し、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。 この変換された電力は、モータジェネレータ192の電機子巻線に供給される。

    IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極151と、ゲート電極154を備えている。 また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164を備えている。 ダイオード156が、IGBT328と電気的に並列に接続されている。 また、ダイオード158が、IGBT330と電気的に並列に接続されている。 スイッチング用パワー半導体素子としてはMOSFET(金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ)を用いてもよいが、この場合はダイオード156やダイオード158は不要となる。 コンデンサモジュール500は、正極側コンデンサ端子506と負極側コンデンサ端子504と直流コネクタ138を介して電気的に接続されている。 なお、インバータ部140は、直流正極端子314を介して正極側コンデンサ端子506と接続され、かつ直流負極端子316を介して負極側コンデンサ端子504と接続される。

    制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。 マイコンには入力情報として、モータジェネレータ192に対して要求される目標トルク値、上下アーム直列回路150からモータジェネレータ192の電機子巻線に供給される電流値、及びモータジェネレータ192の回転子の磁極位置が入力されている。 目標トルク値は、不図示の上位の制御装置から出力された指令信号に基づくものである。 電流値は、電流センサ180から信号線182を介して出力された検出信号に基づいて検出されたものである。 磁極位置は、モータジェネレータ192に設けられた回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。 本実施形態では3相の電流値を検出する場合を例に挙げて説明するが、2相分の電流値を検出するようにしても構わない。

    制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータ192のd、q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd、q軸の電流指令値と、検出されたd、q軸の電流値との差分に基づいてd、q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd、q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。 そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号として、信号線176を介してドライバ回路174に出力する。

    ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。 また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。

    また、制御部170は、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、上下アーム直列回路150を保護している。 このため、制御部170にはセンシング情報が入力されている。 例えば各アームの信号用エミッタ電極151及び信号用エミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。 これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328、IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328、IGBT330を過電流から保護する。 上下アーム直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは上下アーム直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。 また、マイコンには上下アーム直列回路150の直流正極側の電圧の情報が入力されている。 マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328、IGBT330のスイッチング動作を停止させる。

    なお、図32におけるゲート電極154および信号用エミッタ電極155は図1の信号端子325Uに対応し、ゲート電極164およびエミッタ電極165は図1の信号端子325Lに対応する。 また、正極端子157は図1の直流正極端子315Bと同一のものであり、負極端子158は図1の直流負極端子319Bと同一のものである。 また、交流端子159は、図1の交流端子320Bと同じものである。

    (電力変換装置の設置構造)
    図33は、電力変換装置200の設置場所を説明するための分解斜視図を示す。 電力変換装置200は、トランスミッション118を収納するためのAlまたはAl合金製の筐体119に固定される。 電力変換装置200は、底面及び上面の形状を略長方形としたことで、車両への取り付けが容易となり、また生産し易いという効果がある。 冷却ジャケット12は、後述するパワーモジュール300a〜300f及びコンデンサモジュール500を保持するとともに、冷却媒体によって冷却する。 また、冷却ジャケット12は、筐体119に固定され、かつ筐体119との対向面に入口配管13と出口配管14が形成されている。 入口配管13と出口配管14が筐体119に形成された配管と接続されることにより、トランスミッション118を冷却するための冷却媒体が、冷却ジャケット12に流入及び流出する。

    ケース10は、電力変換装置200を覆って、かつ筐体119側に固定される。 ケース10の底は、制御回路172を実装した制御回路基板20と対向するように構成される。 またケース10は、ケース10の底から外部に繋がる第1開口202と第2開口204を、ケース10の底面に形成する。 コネクタ21は、制御回路基板20に接続されており、外部からの各種信号を当該制御回路基板20に伝送する。 バッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、バッテリ136とコンデンサモジュール500とを電気的に接続する。

    コネクタ21とバッテリ負極側接続端子部510とバッテリ正極側接続端子部512は、ケース10の底面に向かって延ばされ、コネクタ21は第1開口202から突出し、かつバッテリ負極側接続端子部510及びバッテリ正極側接続端子部512は第2開口204から突出する。 ケース10には、その内壁の第1開口202及び第2開口204の周りにシール部材(不図示)が設けられる。

    コネクタ21等の端子の勘合面の向きは、車種により種々の方向となるが、特に小型車両に搭載しようとした場合、エンジンルーム内の大きさの制約や組立性の観点から勘合面を上向きにして出すことが好ましい。 特に、本実施形態のように、電力変換装置200が、トランスミッション118の上方に配置される場合には、トランスミッション118の配置側とは反対側に向かって突出させることにより、作業性が向上する。 また、コネクタ21は外部の雰囲気からシールする必要があるが、コネクタ21に対してケース10を上方向から組付ける構成となることで、ケース10が筐体119に組付けられたときに、ケース10と接触するシール部材がコネクタ21を押し付けることができ、気密性が向上する。

    (電力変換装置の分解構造)
    図34は、電力変換装置200の分解斜視図である。 冷却ジャケット12には、流路19が設けられ、該流路19の上面には、開口部400a〜400cが冷媒の流れ方向418に沿って形成され、かつ開口部402a〜402cが冷媒の流れ方向422に沿って形成される。 開口部400a〜400cがパワーモジュール300a〜300cによって塞がれるように、かつ開口部402a〜402cがパワーモジュール300d〜300fによって塞がれる。

    また、冷却ジャケット12には、コンデンサモジュール500を収納するための収納空間405が形成される。 コンデンサモジュール500は、収納空間405に収納されることにより、流路19内に流れる冷媒によって冷却されることになる。 コンデンサモジュール500は、冷媒の流れ方向418を形成するための流路19と、冷媒の流れ方向422を形成するための流路19に挟まれるため、効率良く冷却することができる。

    冷却ジャケット12には、入口配管13と出口配管14と対向する位置に突出部407が形成される。 突出部407は、冷却ジャケット12と一体に形成される。 補機用パワー半導体モジュール350は、突出部407に固定され、流路19内に流れる冷媒によって冷やされることになる。 補機用パワー半導体モジュール350の側部には、バスバーモジュール800が配置される。 バスバーモジュール800は、交流バスバー186や電流センサ180等により構成される。

    このように冷却ジャケット12の中央部にコンデンサモジュール500の収納空間405を設け、その収納空間405を挟むように流路19を設け、それぞれの流路19に車両駆動用のパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール300d〜300fを配置し、さらに冷却ジャケット12の上面に補機用パワー半導体モジュール350を配置することで、小さい空間で効率良く冷却でき、電力変換装置全体の小型化が可能となる。 また冷却ジャケット12の流路19の主構造を冷却ジャケット12と一体にAlまたはAl合金材の鋳造で作ることにより、流路19は冷却効果に加え機械的強度を強くする効果がある。 またAl鋳造で作ることで冷却ジャケット12と流路19とが一体構造となり、熱伝達が良くなり冷却効率が向上する。

    なお、パワーモジュール300a〜300cとパワーモジュール300d〜300fを流路19に固定することで流路19を完成させ、水路の水漏れ試験を行う。 水漏れ試験に合格した場合に、次にコンデンサモジュール500や補機用パワー半導体モジュール350や基板を取り付ける作業を行うことができる。 このように、電力変換装置200の底部に冷却ジャケット12を配置し、次にコンデンサモジュール500、補機用パワー半導体モジュール350、バスバーモジュール800、基板等の必要な部品を固定する作業を上から順次行えるように構成されており、生産性と信頼性が向上する。

    ドライバ回路基板22は、補機用パワー半導体モジュール350及びバスバーモジュール800の上方に配置される。 また、ドライバ回路基板22と制御回路基板20の間には金属ベース板11が配置される。 金属ベース板11は、ドライバ回路基板22及び制御回路基板20に搭載される回路群の電磁シールドの機能を奏すると共にドライバ回路基板22と制御回路基板20とが発生する熱を逃がし、冷却する作用を有している。

    (冷却ジャケット)
    図35は、流路19を有する冷却ジャケット12の下面図である。 冷却ジャケット12と当該冷却ジャケット12の内部に設けられた流路19は、一体に鋳造されている。 冷却ジャケット12の下面には、1つに繋がった開口部404が形成されている。 開口部404は、中央部に開口を有する下カバー420によって塞がれる。 下カバー420と冷却ジャケット12の間には、シール部材409a及びシール部材409bが設けられ気密性を保っている。

    下カバー420には、一方の端辺の近傍であって当該端辺に沿って、入口配管13を挿入するための入口孔401と、出口配管14を挿入するための出口孔403が形成される。 また下カバー420には、トランスミッション118の配置方向に向かって突出する凸部406が形成される。 凸部406は、パワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール300d〜300f毎に設けられる。

    冷媒は、流れ方向417のように、入口孔401を通って、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第1流路部19aに向かって流れる。 そして冷媒は、流れ方向418のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第2流路部19bを流れる。 また冷媒は、流れ方向421のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第3流路部19cを流れる。 第3流路部19cは折り返し流路を形成する。 また、冷媒は、流れ方向422のように、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って形成された第4流路部19dを流れる。 第4流路部19dは、コンデンサモジュール500を挟んで第2流路部19bと対向する位置に設けられる。 さらに、冷媒は、流れ方向423のように、冷却ジャケット12の短手方向の辺に沿って形成された第5流路部19e及び出口孔403を通って出口配管14に流出する。

    第1流路部19a、第2流路部19b、第3流路部19c、第4流路部19d及び第5流路部19eは、いずれも幅方向より深さ方向が大きく形成される。 パワーモジュール300a〜300cが、冷却ジャケット12の上面側に形成された開口部400a〜400cから挿入され(図34参照)、第2流路部19b内の収納空間に収納される。 なお、パワーモジュール300aの収納空間とパワーモジュール300bの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408aが形成される。 同様に、パワーモジュール300bの収納空間とパワーモジュール300cの収納空間との間には、冷媒の流れを澱ませないための中間部材408bが形成される。 中間部材408a及び中間部材408bは、その主面が冷媒の流れ方向に沿うように形成される。 第4流路部19dも第2流路部19bと同様にパワーモジュール300d〜300fの収納空間及び中間部材を形成する。 また、冷却ジャケット12は、開口部404と開口部400a〜400c及び402a〜402cとが対向するように形成されているので、アルミ鋳造により製造し易い構成になっている。

    下カバー420には、筐体119と当接し、電力変換装置200を支持するための支持部410a及び支持部410bが設けられる。 支持部410aは下カバー420の一方の端辺に近づけて設けられ、支持部410bは下カバー420の他方の端辺に近づけて設けられる。 これにより、電力変換装置200を、トランスミッション118やモータジェネレータ192の円柱形状に合わせて形成された筐体119の側壁に強固に固定することができる。

    また、支持部410bは、抵抗器450を支持するように構成されている。 この抵抗器450は、乗員保護やメンテナンス時における安全面に配慮して、コンデンサセルに帯電した電荷を放電するためのものである。 抵抗器450は、高電圧の電気を継続的に放電できるように構成されているが、万が一抵抗器もしくは放電機構に何らかの異常があった場合でも、車両に対するダメージを最小限にするように配慮した構成とする必要がある。 つまり、抵抗器450がパワーモジュールやコンデンサモジュールやドライバ回路基板等の周辺に配置されている場合、万が一抵抗器450が発熱、発火等の不具合を発生した場合に主要部品近傍で延焼する可能性が考えられる。

    そこで、パワーモジュール300a〜300cやパワーモジュール300d〜300fやコンデンサモジュール500は、冷却ジャケット12を挟んで、トランスミッション118を収納した筐体119とは反対側に配置され、かつ抵抗器450は、冷却ジャケット12と筐体119との間の空間に配置される。 これにより、抵抗器450が金属で形成された冷却ジャケット12及び筐体119で囲まれた閉空間に配置されることになる。 なお、コンデンサモジュール500内のコンデンサセルに貯まった電荷は、図34に示されたドライバ回路基板22に搭載されたスイッチング手段のスイッチング動作によって、冷却ジャケット12の側部を通る配線を介して抵抗器450に放電制御される。 本実施形態では、スイッチング手段によって高速に放電するように制御される。 放電を制御するドライバ回路基板22と抵抗器450の間に、冷却ジャケット12が設けられているので、ドライバ回路基板22を抵抗器450から保護することができる。 また、抵抗器450は下カバー420に固定されているので、流路19と熱的に非常に近い位置に設けられているので、抵抗器450の異常な発熱を抑制することができる。

    (コンデンサモジュール)
    図36は、コンデンサモジュール500の分解斜視図である。 積層導体板501は、薄板状の幅広導体で形成された負極導体板505及び正極導体板507、さらに負極導体板505と正極導体板507に挟まれた絶縁シート517により構成されているので、低インダクタンス化が図られている。 積層導体板501は、略長方形形状を成す。 バッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509は、積層導体板501の短手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。

    コンデンサ端子503a〜503cは、積層導体板501の長手方向の一方の辺から立ち上げられた状態で形成される。 また、コンデンサ端子503d〜503fは、積層導体板501の長手方向の他方の辺から立ち上げられた状態で形成される。 なお、コンデンサ端子503a〜503fは、積層導体板501の主面を横切る方向に立ち上げられている。 コンデンサ端子503a〜503cは、パワーモジュール300a〜300cとそれぞれ接続される。 コンデンサ端子503d〜503fは、パワーモジュール300d〜300fとそれぞれ接続される。 コンデンサ端子503aを構成する負極側コンデンサ端子504aと正極側コンデンサ端子506aとの間には、絶縁シート517の一部が設けられ、絶縁が確保されている。 他のコンデンサ端子503b〜503fも同様である。 なお、本実施形態では、負極導体板505、正極導体板507、バッテリ負極側端子508、バッテリ負極側端子509、コンデンサ端子503a〜503fは、一体に成型された金属製板で構成され、インダクタンス低減及び生産性の向上を図っている。

    コンデンサセル514は、積層導体板501の下方に複数個設けられる。 本実施形態では、8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べられ、かつさらに別の8つのコンデンサセル514が積層導体板501の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べられ、合計16個のコンデンサセルが設けられる。 積層導体板501の長手方向のそれぞれの辺に沿って並べられたコンデンサセル514は、図36に示される破線部A−A'を境に対称に並べられる。 これにより、コンデンサセル514によって平滑化された直流電流をパワーモジュール300a〜300c及びパワーモジュール300d〜300fに供給する場合に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化され、積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができる。 また、電流が積層導体板501にて局所的に流れることを防止できるので、熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。

    また、バッテリ負極側端子508とバッテリ負極側端子509も、図36に示される点線A−A'を境にて対称に並べられる。 同様に、コンデンサ端子503a〜503cとコンデンサ端子503d〜503fとの間の電流バランスが均一化されて積層導体板501のインダクタンス低減を図ることができ、かつ熱バランスが均一化されて耐熱性も向上させることができる。

    本実施形態のコンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にAlなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極、負極としたフィルムコンデンサを用いる。 コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極、負極電極となり、Snなどの導電体を吹き付けて製造される。 セル端子516及びセル端子518は、正極電極及び負極電極に接続され、かつ積層導体板501の開口部を通ってコンデンサセル514配置側とは反対側まで延ばされ、正極導体板507及び負極導体板505とはんだあるいは溶接により接続される。

    本実施形態のコンデンサセル514は、コンデンサモジュール500の蓄電部の単位構造体であり、片面にAlなどの金属を蒸着したフィルムを2枚積層し巻回して、2枚の金属の各々を正極、負極としたフィルムコンデンサを用いる。 コンデンサセル514の電極は、巻回した軸面がそれぞれ、正極、負極電極となり、Snなどの導電体を吹き付けて製造される。 セル端子516及びセル端子518は、正極電極及び負極電極に接続され、かつ積層導体板501の開口部を通ってコンデンサセル514配置側とは反対側まで延ばされ、正極導体板507及び負極導体板505とはんだあるいは溶接により接続される。

    収納部511の底面部513は、円筒形のコンデンサセル514の表面形状に合わせるように、なめらかな凹凸形状若しくは波形形状を成している。 これにより、積層導体板501とコンデンサセル514が接続されたモジュールをコンデンサケース502に位置決めさることが容易になる。 また、積層導体板501とコンデンサセル514がコンデンサケース502に収納された後に、コンデンサ端子503a〜503fとバッテリ負極側端子508及びバッテリ負極側端子509を除いて、積層導体板501が覆われるようにコンデンサケース502内に充填材(図示せず)が充填される。 底面部513がコンデンサセル514の形状に合わせて波形形状となっていることにより、充填材がコンデンサケース502内に充填される際に、コンデンサセル514が所定位置からずれることを防止できる。

    また、コンデンサセル514は、スイッチング時のリップル電流により、内部のフィルム上に蒸着された金属薄膜、内部導体の電気抵抗により発熱する。 そこで、コンデンサセル514の熱をコンデンサケース502に逃がし易くするために、コンデンサセル514を充填材でモールドする。 さらに樹脂製の充填材を用いることにより、コンデンサセル514の耐湿も向上させることができる。

    さらに、本実施形態では、コンデンサモジュール500は、収納部511の長手方向の辺を形成する側壁が流路19に挟まれように配置されているので、コンデンサモジュール500を効率良く冷やすことができる。 また、コンデンサセル514は、当該コンデンサセル514の電極面の一方が収納部511の長手方向の辺を形成する内壁と対向するように配置されている。 これにより、フィルムの巻回軸の方向に熱が伝達し易いので、熱がコンデンサセル514の電極面を介してコンデンサケース502に逃げやすくなっている。

    (パワーモジュールの取付け構造)
    図37(a)は、冷却ジャケット12内にパワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュールを組み付けた外観斜視図である。 図37(b)は、図37(a)の矩形囲み部の拡大図である。

    図37(b)に示されるように、直流負極端子315B、直流正極端子319b、交流端子321及び第2封止部601bは、コンデンサケース502の貫通孔519を通って、フランジ515aの上方まで延びている。 直流負極端子317b及び直流正極端子319bの電流経路の面積は、積層導体板501の電流経路の面積より非常に小さい。 そのため、電流が積層導体板501から直流負極端子317b及び直流正極端子319bに流れる際には、電流経路の面積が大きく変化することになる。 つまり、電流が直流負極端子317b及び直流正極端子319bに集中することになる。 また、直流負極端子317b及び直流正極端子319bが積層導体板501を横切る方向に突出する場合、言い換えると、直流負極端子317b及び直流正極端子319bが積層導体板501とねじれの関係にある場合、新たな接続用導体が必要になり生産性低下やコスト増大の問題が生じる。

    そこで、負極側コンデンサ端子504aは、積層導体板501から立ち上がっている立ち上がり部540と、当該立ち上がり部540と接続されかつU字状に屈曲した折返し部541と、当該折返し部541と接続されかつ立ち上がり部540とは反対側の面が直流負極端子319bの主面と対向する接続部542とにより構成される。 また、正極側コンデンサ端子506aは、積層導体板501から立ち上がっている立ち上がり部543と、折返し部544と、当該折返し部544と接続されかつ立ち上がり部543とは反対側の面が直流負極端子317bの主面と対向する接続部545と、により構成される。 特に、折返し部544は、立ち上がり部543と略直角に接続されかつ負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子317bと直流正極端子319bの側部を跨ぐように構成される。 さらに、立ち上がり部540の主面と立ち上がり部543の主面は絶縁シート517を介して対向する。 同様に、折返し部541の主面と折返し部544の主面は絶縁シート517を介して対向する。

    これにより、コンデンサ端子503aが接続部542の直前まで絶縁シート517を介した積層構造を成すため、電流が集中する当該コンデンサ端子503aの配線インダクタンスを低減することができる。 また、折返し部544が負極側コンデンサ端子504aと直流負極端子317bと直流正極端子319bの側部を跨ぐように構成される。 さらに、直流正極端子319bの先端と接続部542の側辺とは溶接により接続され、同様に直流負極端子317bの先端と接続部545の側辺とは溶接により接続される。

    これにより、直流正極端子319b及び直流負極端子317bの溶接接続するための作業方向と折返し部544とが干渉することがなくなるので、低インダクタンスを図りながら生産性を向上させることができる。

    また、交流端子321の先端は交流バスバー802aの先端とは溶接により接続される。 溶接をするための生産設備において、溶接機械を溶接対象に対して複数方向に可動出来るように作ることは、生産設備を複雑化させることにつながり生産性及びコスト的な観点から好ましくない。 そこで、本実施形態では、交流端子321の溶接箇所と直流正極端子319bの溶接箇所は、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。 これにより、溶接機械を一方向に可動する間に、複数の溶接を行うことができ、生産性が向上する

    さらに、図34及び図37(a)に示されるように、複数のパワーモジュール300a〜300cおよびパワーモジュール300d〜300fは、冷却ジャケット12の長手方向の辺に沿って一直線状に配置される。 これにより、複数のパワーモジュール300a〜300cを溶接する際に、更に生産性を向上させることができる。

    (バスバーモジュールと冷却ジャケットの組付け)
    図38は、パワーモジュールとコンデンサモジュールを組み付けた冷却ジャケット12とバスバーモジュール800の分解斜視図である。 図39は、保持部材803を除いたバスバーモジュール800の外観斜視図である。

    図38及び図39に示されるように、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの設置箇所まで、当該第1交流バスバー802a〜802fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。 また、第1交流バスバー802a〜802fは、電流センサ180aの貫通孔又は電流センサ180bの貫通孔の直前で略直角に折り曲げられる。 これにより、電流センサ180a又は電流センサ180bを貫通する第1交流バスバー802a〜802fの部分は、その主面が積層導体板501の主面と略平行になる。 そして、第1交流バスバー802a〜802fの端部には、第2交流バスバー804a〜804fと接続する為の接続部805a〜805fが形成される(接続部805d〜805fは図示せず)。

    第2交流バスバー804a〜804fは、接続部805a〜805fの近傍で、コンデンサモジュール500側に向かって略直角に折り曲げられる。 これにより、第2交流バスバー804a〜804fの主面がコンデンサモジュール500の積層導体板501の主面と略垂直になるように形成される。 さらに第2交流バスバー804a〜804fは、電流センサ180a又は電流センサ180bの近傍から、図39に示された冷却ジャケット12の短手方向の一方の辺12aに向かって延ばされ、当該辺12aを横切るように形成される。 つまり、複数の第2交流バスバー804a〜804fの主面が向かい合った状態で、当該第2交流バスバー804a〜804fが辺12aを横切るように形成される。

    これにより、装置全体を大型化させることなく、冷却ジャケット12の短い辺側から複数の板状交流バスバーを外部に突出させることができる。 そして、冷却ジャケット12の一面側から複数の交流バスバーを突出させることで、電力変換装置200の外部での配線の取り回しが容易になり、生産性が向上する。

    図38に示されるように、第1交流バスバー802a〜802f、電流センサ180a〜180b及び第2交流バスバー804a〜804fは、樹脂で構成された保持部材803によって、保持及び絶縁されている。 この保持部材803により、第2交流バスバー804a〜804fが金属製の冷却ジャケット12及び筐体119との間の絶縁性を向上させる。 また保持部材803が冷却ジャケット12に熱的に接触又は直接接触することにより、トランスミッション118側から第2交流バスバー804a〜804fに伝わる熱を、冷却ジャケット12に逃がすことができるので、電流センサ180a〜180bの信頼性を向上させることができる。

    図38に示されるように、保持部材803は、図32に示されたドライバ回路基板22を支持するための支持部材807a及び支持部材807bを設ける。 支持部材807aは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の一方の辺に沿って一列に並べて形成される。 また、支持部材807bは、複数設けられ、かつ冷却ジャケット12の長手方向の他方の辺に沿って一列に並べて形成される。 支持部材807a及び支持部材807bの先端部には、ドライバ回路基板22を固定するための螺子穴が形成されている。

    さらに、保持部材803は、電流センサ180a及び電流センサ180bが配置された箇所から上方に向かって延びる突起部806a及び突起部806bを設ける。 突起部806a及び突起部806bは、それぞれ電流センサ180a及び電流センサ180bを貫通するように構成される。 図38に示されるように、電流センサ180a及び電流センサ180bは、ドライバ回路基板22の配置方向に向かって延びる信号線182a及び信号線182bを設ける。 信号線182a及び信号線182bは、ドライバ回路基板22の配線パターンとはんだによって接合される。 本実施形態では、保持部材803、支持部材807a〜807b及び突起部806a〜806bは、樹脂で一体に形成される。

    これにより、保持部材803が電流センサ180とドライバ回路基板22との位置決め機能を備えることになるので、信号線182aとドライバ回路基板22との間の組み付け及びはんだ接続作業が容易になる。 また、電流センサ180とドライバ回路基板22を保持する機構を保持部材803に設けることで、電力変換装置全体としての部品点数を削減できる。

    電力変換装置200はトランスミッション118を収納した筐体119に固定されるので、トランスミッション118からの振動の影響を大きく受ける。 そこで、保持部材803は、ドライバ回路基板22の中央部の近傍を指示するための支持部材808を設けて、ドライバ回路基板22に加わる振動の影響を低減している。 なお、保持部材803は、冷却ジャケット12に螺子により固定される。

    また、保持部材803は、補機用パワー半導体モジュール350の一方の端部を固定するためのブラケット809を設ける。 また図34に示されるように、補機用パワー半導体モジュール350は突出部407に配置されることにより、当該補機用パワー半導体モジュール350の他方の端部が当該突出部407に固定される。 これにより、補機用パワー半導体モジュール350に加わる振動の影響を低減するとともに、固定用の部品点数を削減することができる。

    (電力変換装置の組付け構造)
    図40は、パワーモジュールとコンデンサモジュールとバスバーモジュール800と補機用パワー半導体モジュール350を組み付けた冷却ジャケット12の外観斜視図である。 電流センサ180は、約100℃の耐熱温度以上に熱せられると破壊するおそれがある。 特に車載用の電力変換装置では、使用される環境の温度が非常に高温になるため、電流センサ180を熱から保護することが重要になる。 特に、本実施形態に係る電力変換装置200はトランスミッション118に搭載されるので、当該トランスミッション118から発せられる熱から保護することが重要になる。

    そこで、電流センサ180a及び電流センサ180bは、冷却ジャケット12を挟んでトランスミッション118とは反対側に配置される。 これにより、トランスミッション118が発する熱が電流センサに伝達し難くなり、電流センサの温度上昇を抑えられる。 さらに、第2交流バスバー804a〜804fは、図35に示された第3流路19cを流れる冷媒の流れ方向810を横切るように形成される。 そして、電流センサ180a及び電流センサ180bは、第3流路部19cを横切る第2交流バスバー804a〜804fの部分よりもパワーモジュールの交流端子321に近い側に配置される。 これにより、第2交流バスバー804a〜804fが冷媒によって間接的に冷却され、交流バスバーから電流センサ、更にはパワーモジュール内の半導体素子に伝わる熱を和らげることができるため、信頼性が向上する。

    図40に示される流れ方向811は、図35にて示された第4流路19dを流れる冷媒の流れ方向を示す。 同様に、流れ方向812は、図35にて示された第2流路19bを流れる冷媒の流れ方向を示す。 本実施形態に係る電流センサ180a及び電流センサ180bは、電力変換装置200の上方から投影したときに、電流センサ180a及び電流センサ180bの投影部が流路19の投影部に囲まれるように配置される。 これにより電流センサをトランスミッション118からの熱から更に保護することができる。

    図41は、制御回路基板20と金属ベース板11を分離した電力変換装置200の分割斜視図である。 図40にて示されたように、電流センサ180は、コンデンサモジュール500の上方に配置される。 ドライバ回路基板22は、電流センサ180の上方に配置され、かつ図8に示されたバスバーモジュール800に設けられる支持部材807a及び807bによって支持される。 金属ベース板11は、ドライバ回路基板22の上方に配置され、かつ冷却ジャケット12から立設された複数の支持部材15によって支持される。 制御回路基板20は、金属ベース板11の上方に配置され、かつ金属ベース板11に固定される。

    電流センサ180とドライバ回路基板22と制御回路基板20が高さ方向に一列に階層的に配置され、かつ制御回路基板20が強電系のパワーモジュール300a〜fから最も遠い場所に配置されるので、スイッチングノイズ等が混入することを抑制することができる。 さらに、金属ベース板11は、グランドに電気的に接続された冷却ジャケット12に電気的に接続されている。 この金属ベース板11によって、ドライバ回路基板22から制御回路基板20に混入するノイズを低減している。

    流路19に流れる冷媒の冷却対象が主に駆動用のパワーモジュール300a〜fであるので、当該パワーモジュール300a〜fは流路19内に収納されて直接と冷媒と接触して冷却される。 一方、補機用パワー半導体モジュール350も、駆動用パワーモジュールほどではないが冷却することが求められる。

    そこで、補機用パワー半導体モジュール350の金属ベースで形成された放熱面が、流路19を介して、入口配管13及び出口配管14と対向するように形成される。 特に、補機用パワー半導体モジュール350を固定する突出部407が入口配管13の上方に形成されているので、下方から流入する冷媒が突出部407の内壁に衝突して、効率良く補機用パワー半導体モジュール350から熱を奪うことができる。 さらに、突出部407の内部には、流路19と繋がる空間を形成している。 この突出部407内部の空間によって、入口配管13及び出口配管14近傍の流路19の深さが大きくなっており、突出部407内部の空間に液溜りが生じることになる。 この液溜りにより効率良く補機用パワー半導体モジュール350を冷却することができる。

    電流センサ180とドライバ回路基板22を電気的に繋ぐ際に、配線コネクタを用いると接続工程の増大や、接続ミスの危険性を招くことになる。

    そこで、図41に示されるように、本実施形態のドライバ回路基板22には、当該ドライバ回路基板22を貫通する第1孔24及び第2孔26が形成される。 また第1孔24にはパワーモジュール300a〜300fの各信号端子325U及び各信号端子325Lが挿入され、信号端子325U及び信号端子325Lはドライバ回路基板22の配線パターンと半田により接合される。 さらに第2孔26には電流センサ180の信号線182が挿入され、信号線182はドライバ回路基板22の配線パターンとはんだにより接合される。 なお、冷却ジャケット12との対向面とは反対側のドライバ回路基板22の面側からはんだ接合が行われる。

    これにより、配線コネクタを用いることなく信号線が接続できるので生産性を向上させることができる。 また、パワーモジュール300a〜300fの各信号端子325と電流センサ180の信号線182を、同一方向からはんだにより接合されることにより、生産性を更に向上させることができる。 また、ドライバ回路基板22に、信号端子325を貫通させるための第1孔24や、信号線182を貫通させるための第2孔26をそれぞれ設けることにより接続ミスの危険性を少なくすることができる。

    また、ドライバ回路基板22は、冷却ジャケット12と対向する面側に、ドライバICチップ等の駆動回路(図示せず)を実装している。 これにより、はんだ接合の熱がドライバICチップ等に伝わることを抑制して、はんだ接合によるドライバICチップ等の損傷を防止している。 また、ドライバ回路基板22に搭載されているトランスのような高背部品が、コンデンサモジュール500とドライバ回路基板22との間の空間に配置されるので、電力変換装置200全体を低背化することが可能となる。

    図42は図41に示された電力変換装置200を、図41における面Bで切り取った場合の、図41のC方向から見た断面図である。
    モジュールケース304に設けられたフランジ304Bは、コンデンサケース502に設けられたフランジ515a又はフランジ515bによって冷却ジャケット12に押し付けられる。 つまり、コンデンサセル514を収納したコンデンサケース502の自重を利用して、冷却ジャケット12にモジュールケース304を押しつけることにより、流路19の気密性を向上させることができる。

    パワーモジュール300a〜300fの冷却効率を向上させるために、流路19内の冷媒をフィン305が形成された領域に流すようにする必要がある。 モジュールケース304は薄肉部304Aのスペースを確保するために、モジュールケース304の下部にはフィン305が形成されていない。 そこで下カバー420は、モジュールケース304の下部が、当該下カバー420に形成された凹部430に勘合されるように形成される。 これにより、冷却フィンが形成されていない空間に冷媒が流れ込むことを防止することができる。

    図42に示されるように、パワーモジュール300a〜300fとコンデンサモジュール500との配列方向は、制御回路基板20とドライバ回路基板22とトランスミッション118の配列方向を横切るように並べて配置されている。 特に、パワーモジュール300a〜fとコンデンサモジュール500とは、電力変換装置200の中では、最下層に並べて配置されている。 これにより、電力変換装置200全体の低背化が可能となるとともに、トランスミッション118からの振動の影響を低減することができる。

    以上の通り、本発明によるパワー半導体モジュールの各実施形態によれば、半導体素子が搭載された導体板318、319、315、320の周囲を封止する樹脂封止部348に、複数の凹部348C、348Dを設け、この凹部348C、348D内を含め、樹脂封止部348の表面に溶射膜710を形成した。 このため、溶射膜710と樹脂封止部348との接着強度を向上することができる、という効果を奏する。

    なお、上記各実施形態において、樹脂封止部348の凹部348C、348Dを金型に設けた凸部にて形成する方法で例示した。 しかし、樹脂封止部348の凹部348C、348Dの形成は他の方法により形成することが可能であり、例えば、レーザ加工によって行うことができる。 レーザ加工により樹脂封止部348に凹部348C、348D凹部を形成する場合、ブラスト処理等の場合と同様に、側壁面348H部において溶射膜の被着面の傾斜角度θが0°〜45°の範囲を外れる領域が発生する。 これに対し、図20に示す所定の距離Xを設けることで絶縁特性の劣化を防止することができる。

    その他、本発明のパワー半導体モジュールは、発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して適用することが可能である。

    156、166 ダイオード 300、300a〜300f パワーモジュール 302 パワー半導体モジュール 304 モジュールケース(放熱用部材)
    304A 薄肉部 307A、307B、362A、362B 放熱部 315、318、319、320 導体板 328、330 IGBT
    348 樹脂封止部 348C、348D 凹部 348E 側面 348F セラミックスフィラー 348G 樹脂 348H 側壁面 361 ケース本体(連接部)
    374 トランスファーモールド用金型 380 冷却器 381 冷媒流路 700 絶縁層 710 溶射膜 711 扁平体 712 空孔 720 絶縁膜 720A 絶縁シート 730 樹脂層

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