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光硬化型インクジェットインクセット及びこれを用いたインクジェット記録方法

阅读:392发布:2024-01-15

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下記一般式(I): CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I) (式中、R1は原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。) で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用光硬化型インクジェットインクと、上層用光硬化型インクジェットインクと、を含む光硬化型インクジェットインクセットであって、 前記下層用光硬化型インクジェットインクと前記上層用光硬化型インクジェットインクとは、それぞれ色材を含有し、 前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張が、前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力よりも大きく、 前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力と前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力との差が、常温下で8mN/m以上であり、 前記下層用光硬化型インクジェットインクが、ホワイトインクであり、前記上層用光硬化型インクジェットインクが、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクのいずれかである、光硬化型インクジェットインクセット。前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力と前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力との差が、常温下で10mN/m以上である、請求項1に記載の光硬化型インクジェットインクセット。前記下層用光硬化型インクジェットインクに含まれる前記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクの総質量に対して、20〜80質量%である、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェットインクセット。前記上層用光硬化型インクジェットインクが前記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有し、かつ、 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクが前記上層用光硬化型インクジェットインクよりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェットインクセット。前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクの方が前記上層用光硬化型インクジェットインクよりも10質量%以上大きい、請求項4に記載の光硬化型インクジェットインクセット。前記下層用光硬化型インクジェットインクは、アクリル系界面活性剤を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェットインクセット。前記上層用光硬化型インクジェットインクは、シリコーン系界面活性剤を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェットインクセット。被記録媒体上に請求項1〜7のいずれか1項に記載の下層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成し、該塗膜の上に請求項1〜7のいずれか1項に記載の上層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成することを含む、インクジェット記録方法。

说明书全文

本発明は、光硬化型インクジェットインクセット及びこれを用いたインクジェット記録方法に関する。

従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。

近年、耐性、耐溶剤性、及び耐擦過性などに優れた印字を被記録媒体の表面に形成するため、インクジェット方式の記録方法において、光(紫外線)を照射すると硬化する光硬化型インクが使用されている。

一方、種々の光硬化型インクを順次重ね塗りする記録方法が広く行われている。例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、及びホワイト(W)等の互いに色の異なるインクを重ね塗りしてカラー画像を形成したり、画像の保護や光沢の付与といった目的でカラー画像に無色透明のクリアインクを重ね塗りしたりする場合がある。このような場合に、所望の画質の画像を得るための技術が要求されている。

例えば、特許文献1は、エネルギー線硬化型インクジェット記録用カラーインク組成物(Ia)を用いて、被記録部材に印刷塗膜を形成後、該塗膜の上にエネルギー線硬化型インクジェット記録用クリアインク組成物(Ib)を用いてクリア塗膜を形成し、かつ、下層に塗布するIaの表面張Sa(mN/m)と上層に塗布するIbの表面張力Sb(mN/m)との間に、31.5≦Sa<35.0又は27.0≦Sa<31.5、且つSb

特開2006−181801号公報

しかしながら、特許文献1に開示された重ね塗り方法によれば、下層用に塗布したカラーインクの塗膜上に上層用のクリアインクを塗布する際に、このクリアインクの線幅が非常に小さいため、インクの濡れ広がり性が劣るという問題が生じる。

そこで、本発明は、インクの濡れ広がり性に優れた光硬化型インクジェットインクセットを提供することを目的の一つとする。

本願発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、インクの組成、特に下層用光硬化型インクジェットインクの組成と、当該インク及び上層用光硬化型インクジェットインクの間の表面張力の関係と、が相関していることを見出した。より具体的に言えば、下層用光硬化型インクジェットインク及び上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力が特許文献1に開示されたような関係にある場合でも、下層用光硬化型インクジェットインクが所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することにより、上層用光硬化型インクジェットインクの塗れ広がり性が優れることを見出した。

そこで、本願発明者らがさらに検討を重ねたところ、所定のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用光硬化型インクジェットインク(以下、単に「下層用インク」とも言う。)と、上層用光硬化型インクジェットインク(以下、単に「上層用インク」とも言う。)と、を含み、かつ、下層用インクの表面張力が上層用インクの表面張力よりも大きい光硬化型インクジェットインクセット(以下、単に「インクセット」とも言う。)により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。

すなわち、本発明は下記のとおりである。 [1] 下記一般式(I): CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I) (式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。) で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用光硬化型インクジェットインクと、上層用光硬化型インクジェットインクと、を含む光硬化型インクジェットインクセットであって、前記下層用光硬化型インクジェットインクと前記上層用光硬化型インクジェットインクとは、それぞれ色材を含有し、前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力が、前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力よりも大きく、前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力と前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力との差が、常温下で8mN/m以上であり、前記下層用光硬化型インクジェットインクが、ホワイトインクであり、前記上層用光硬化型インクジェットインクが、ブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクのいずれかである、光硬化型インクジェットインクセット。 [2] 前記下層用光硬化型インクジェットインクの表面張力と前記上層用光硬化型インクジェットインクの表面張力との差が、常温下で10mN/m以上である、[1]に記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [3] 前記下層用光硬化型インクジェットインクに含まれる前記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクの総質量に対して、20〜80質量%である、[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [4] 前記上層用光硬化型インクジェットインクが前記一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有し、かつ、前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクが前記上層用光硬化型インクジェットインクよりも大きい、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [5] 前記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、前記下層用光硬化型インクジェットインクの方が前記上層用光硬化型インクジェットインクよりも10質量%以上大きい、[4]に記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [6] 前記下層用光硬化型インクジェットインクは、アクリル系界面活性剤を含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [7] 前記上層用光硬化型インクジェットインクは、シリコーン系界面活性剤を含有する、[1]〜[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェットインクセット。 [8] 被記録媒体上に[1]〜[7]のいずれかに記載の下層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成し、該塗膜の上に[1]〜[7]のいずれかに記載の上層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成することを含む、インクジェット記録方法。

本発明の一実施形態で使用可能な記録装置のヘッドユニット及び搬送ユニットの一例を説明するための概念図である。

以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

本明細書において、「インクの濡れ広がり性」とは、下層用インクの塗膜上に上層用インクを線状に重ね塗った際に、線幅が比較的広くなる性質をいう。「硬化」とは、重合性化合物を含むインクに放射線を照射すると、重合性化合物が重合してインクが固化することをいう。「硬化性」とは、光を感応して硬化する性質をいう。「埋まり性」とは、充填性とも言い、記録物を硬化物(画像)が形成された側から見たときに、下地である被記録媒体が見えない性質をいう。「吐出安定性」とは、ノズルの目詰まりがなく常に安定したインクの液滴をノズルから吐出させる性質をいう。「保存安定性」とは、インクを保存したときに、保存前後における粘度が変化しにくい性質をいう。

本明細書において、「下層」及び「上層」とは、インクを重ね塗りして得られる画像中の相対的な位置関係を表すものにすぎず、それぞれ「下塗り」及び「上塗り」と言い換えることができる。

本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味する。

本明細書において、「記録物」とは、被記録媒体上にインクが記録されて硬化物が形成されたものをいう。また、本明細書において、硬化物は硬化された物質を意味し、インクの塗膜は、インクが塗布され硬化されてなる膜、すなわち硬化塗膜を意味する。後述の下層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成し、当該塗膜の上に上層用光硬化型インクジェットインクの塗膜を形成する場合の、下層用光硬化型インクジェットインクの塗膜における硬化は、硬化の中でも後述の硬化性試験で硬化したと判断した状態をいう。塗膜は、ベタパターン画像でもよく、絵、文字、及び模様などのデザインパターン画像でもよい。 なお、本明細書における「ベタパターン画像」とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像を意味する。

[光硬化型インクジェットインクセット] 本発明の一実施形態に係る光硬化型インクジェットインクセットは、後述の一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用光硬化型インクジェットインクと、上層用光硬化型インクジェットインクと、を含む。これに加えて、当該インクセットは、下層用インクの表面張力が上層用インクの表面張力よりも大きいという関係を満たすものである。 なお、上記インクセットは、下層用光硬化型インクジェットインク及び上層用光硬化型インクジェットインク以外のインクをさらに含んでもよい。

まず、上記の表面張力について説明する。本実施形態のインクセットは、上記の関係を満たす必要があるが、その上で、下層用インクの表面張力と上層用インクの表面張力との差(「下層用インクの表面張力」−「上層用インクの表面張力」)は、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。当該差が上記範囲内であると、インクの濡れ広がり性が一層優れたものとなる。

下層用インク及び上層用インクの各表面張力は、上記の関係を満たすことを前提として、下記の範囲内である場合に好適と言える。つまり、上層用インク及び下層用インクの表面張力を共に20〜40mN/mの範囲とすることが好ましく、上層用インクの表面張力を20〜30mN/mとし、かつ、下層用インクの表面張力を25〜40mN/mとすることがより好ましい。上層用インク及び下層用インクの表面張力がそれぞれ上記の範囲内であると、インクジェットヘッドからの吐出安定性が優れたものとなる。

ここで、インクの表面張力はその組成(各成分の種類及び含有量)によって決まるものであるが、その主たる要因として、インクに含まれる界面活性剤の種類及び含有量が挙げられる。当該界面活性剤については後述する。なお、本明細書における表面張力は、後述の実施例欄で行った測定方法により得られる値を採用している。

以下、本実施形態におけるインク(組成物)に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。なお、以下では、上層用インク及び下層用インクを纏めて「インク」と称することもある。

〔重合性化合物〕 本実施形態における上層用インク及び下層用インクに含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により放射線照射時に重合し、印刷されたインクを硬化させることができる。

(1.ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類) 本実施形態におけるインクのうち少なくとも下層用インクは、重合性化合物として下記一般式(I): CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I) (上記式(I)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。) で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する。

インクが当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することにより、インクの硬化性を優れたものとすることができ、さらにインクを低粘度化することもできるという効果が得られる。さらに言えば、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリル基を有する化合物を別々に使用するよりも、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリル基を一分子中に共に有する化合物を使用する方が、インクの硬化性を良好にする上で好ましい。

特に、下層用インクが当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することにより、上層用インクの濡れ広がり性が優れ、さらには下層用インクの硬化性、及び被記録媒体上における下層用インクの埋まり性も優れたものとなる。

一方で、上層用インクは、当該ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有してもよく含有しなくてもよいが、下記の効果が得られるため、含有する方が好ましい。なお、上層用インクもビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する場合、下層用インク及び上層用インクは、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類として、互いに同一の化合物を含有してもよく、異なる化合物を含有してもよい。

上記の一般式(I)において、R2で表される炭素数2〜20の2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する置換されていてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。

上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていてもよいアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。

上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。

上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。

これらの中でも、インクをより低粘度化でき、引火点が高く、かつ、インクの硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、すなわち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。特にアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、何れも単純な構造であって分子量が小さいため、インクを顕著に低粘度化することができる。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。なお、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルの方が、メタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルに比べて硬化性の面で優れている。

ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

下層用インクに含まれる上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、下層用インクの総質量(100質量%)に対して、20〜80質量%が好ましく、30〜80質量%がより好ましい。含有量が20質量%以上であると、下層用インクを低粘度化でき、下層用インクの硬化性を優れたものとすることができ、かつ、上層用インクの濡れ広がり性を一層優れたものとすることができる。一方で、含有量が80質量%以下であると、下層用インクの保存安定性を優れたものとすることができる。

特に、下層用インクだけでなく上層用インクも、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する場合、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の含有量は、下層用インクの方が上層用インクよりも大きいことが好ましく、下層用インクの方が上層用インクよりも10質量%以上大きいことがより好ましい。これにより、上層用インクの濡れ広がり性を一層優れたものとし、かつ、種々の性能に優れたインクセットとすることができる。 なお、上記の場合における上層用インクの含有量は、硬化性以外の性能も考慮して決めるのが好ましいため、特に制限されない。本実施形態において、下層用インクの表面張力が下層用インクの表面張力よりも大きく、かつ、下層用インクが上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する場合に、下層用インクの塗膜上での上層用インクの濡れ広がり性が優れる原因は、上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類のビニルエーテル基に由来する塗膜が、上層用インクの濡れ広がり性に何らかの影響を及ぼすためと推測される。ただし、当該原因はこれに限られるものではない。

上記ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法B)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸エステルと水酸基含有ビニルエーテルとをエステル交換する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテルとをエステル化する方法(製法G)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとアルキルビニルエーテルとをエーテル交換する方法(製法I)が挙げられる。

これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Eが好ましい。

(2.上記以外の重合性化合物) 上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。

また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。

その他の重合性化合物のうち、(メタ)アクリル酸のエステル、即ち(メタ)アクリレートが好ましい。

上記(メタ)アクリレートのうち、単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。

上記(メタ)アクリレートのうち、2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。

上記(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カウプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。

これらの中でも、上記インクは、その他の重合性化合物として単官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。この場合、インクが低粘度となり、光重合開始剤その他の添加剤の溶解性に優れ、かつ、インクジェット記録時の良好な吐出安定性が得られやすい。さらに塗膜の強靭性、耐熱性、及び耐薬品性が増すため、単官能(メタ)アクリレート及び2官能(メタ)アクリレートを併用することがより好ましく、中でもフェノキシエチル(メタ)アクリレート及びジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートを併用することがさらに好ましい。

上記その他の重合性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

上記その他の重合性化合物の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、10〜90質量%が好ましく、30〜90質量%がより好ましく、60〜90質量%がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、粘度及び臭気を低下させることができるとともに、光重合開始剤の溶解性及び反応性を優れたものとすることができる。

〔界面活性剤〕 本実施形態におけるインクは界面活性剤を含有することが好ましい。特に上層用インクが界面活性剤を含有することにより、下層用インクの表面張力が上層用インクの表面張力よりも大きいという関係をより確実に満たすことができる。さらに、上層用インクだけでなく下層用インクも界面活性剤を含有することにより、被記録媒体上における下層用インクの埋まり性も優れたものとなる。

上記界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、表面張力を大幅に低下させることができ、かつ、ヘッドやインク供給装置などの、インクと接触する部材への損傷を防ぐことができるため、シリコーン系界面活性剤及びアクリル系界面活性剤のうち少なくともいずれかが好ましい。

上記のシリコーン系界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーンを用いることができる。これらの中でも、表面張力を大幅に低下させることができ、これによりインクの被記録媒体上での濡れ広がり性が一層優れたものとなるため、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。

上記のポリエーテル変性シリコーンとしては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく用いられ、上記のポリエステル変性シリコーンとしては、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく用いられる。

上記のシリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3530、BYK−UV3570(以上、BYK社製商品名)等が挙げられる。これらの中でも、上層用インクの濡れ広がり性が一層優れたものとなるため、BYK−UV3500が好ましい。

また、上記のアクリル系界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体が好ましく挙げられる。

上記のアクリル系界面活性剤の市販品としては、例えば、1970,230,LF−1980,LF−1982(−50),LF−1983(−50),LF−1984(−50),LHP−95,LHP−96,UVX−35,UVX−36,UVX−270、UVX−271,UVX−272,AQ−7120,AQ−7130(以上、楠本化成社製商品名)、BYK−350,BYK−352,BYK−354,BYK−355,BYK−358,BYK−380,BYK−381,BYK−392(以上、BYK社製商品名)、ポリフローNo.57,95(以上、共栄社油脂化学工業社製商品名)等が挙げられる。これらの中でも、下層用インクがアクリル系界面活性剤を含有する場合は、下層用インクの吐出安定性が優れたものとなるため、BYK−350が好ましい。

上層用インク及び下層用インクにそれぞれ含まれるか、あるいは含まれ得る、界面活性剤の組み合わせとしては、上述の表面張力の関係をより確実に満たすことができるため、下記第一〜第三の場合のいずれかが好ましく、中でも下記第三の場合がより好ましい。

第一に、上層用インク及び下層用インクが互いに同一の界面活性剤を含有し、かつ、界面活性剤の含有量は上層用インクの方が下層用インクよりも大きいことが好ましい。当該含有量の差は、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。 上記第一の場合の上層用インク及び下層用インクに含まれる各界面活性剤の含有量は、各インクの総質量(100質量%)に対して0.1〜0.5質量%が好ましく、さらに下層用インクにおける含有量は0.1〜0.3質量%がより好ましい。 なお、上記第一の場合、上層用インクの濡れ広がり性が一層優れたものとなり、上層用インク及び下層用インク間における界面活性剤の共通化による、インク材料のコストダウンが可能である。

第二に、上層用インク及び下層用インクが共に変性シリコーン系界面活性剤を含有し(ただし、化合物は互いに同一でも異なってもよい。)、かつ、界面活性剤の含有量は上層用インクの方が下層用インクよりも大きいことが好ましい。当該含有量の差は、0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。

上記第二の場合の変性シリコーン系界面活性剤としては、上層用インク及び下層用インクは、互いに独立して、ポリエーテル変性シリコーン及びポリエステル変性シリコーンのうち少なくともいずれかが好ましく、ポリエーテル変性シリコーンがより好ましい。また、同一の変性シリコーン系界面活性剤とすることが、界面活性剤の共通化に起因したインク材料のコストダウンが図れるため好ましい。

上記第二の場合の上層用インク及び下層用インクに含まれる各界面活性剤の含有量は、各インクの総質量(100質量%)に対して0.1〜0.5質量%が好ましく、さらに下層用インクにおける含有量は0.1〜0.3質量%がより好ましい。 なお、上記第二の場合、被記録媒体上での下層用インクの埋まり性が優れたものとなる。

第三に、上層用インクは、変性シリコーン系界面活性剤を含有することが好ましい。一方で、下層用インクは界面活性剤を含有してもよいし含有しなくてもよい。ただし、下層用インクが界面活性剤を含有する場合、当該界面活性剤はアクリル系界面活性剤であることが好ましい。上層用インクが変性シリコーン系界面活性剤を含有することで、上層用インクの濡れ広がり性が一層優れたものとなる。当該変性シリコーン系界面活性剤としては、以下に限定されないが、例えばポリエーテル変性シリコーン及びポリエステル変性シリコーンが挙げられ、中でも、入手がしやすいとともに、被記録媒体上での下層用インクの埋まり性が優れたものとなるため、ポリエーテル変性シリコーンが好ましい。

上記第三の場合の上層用インク及び下層用インクに含まれる各界面活性剤の含有量は、各インクの総質量(100質量%)に対して0.1〜0.5質量%が好ましく、さらに下層用インクにおける含有量は0.1〜0.3質量%がより好ましい。 なお、上記第三の場合、インクの濡れ広がり性が一層優れたものとなり、上層用インク及び下層用インク間の表面張力の差を安定して確保する点で有利である。

〔光重合開始剤〕 本実施形態におけるインクに含まれ得る光重合開始剤は、放射線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。放射線(光)の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。

上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。

これらの中でも、インクの硬化性を一層良好にすることができるため、少なくともアシルフォスフィンオキサイド化合物を用いることが好ましい。また、当該アシルフォスフィンオキサイド化合物に加えてチオキサントン化合物を用いることも好ましい。

光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。

光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、Speedcure TPO、Speedcure DETX(2,4−ジエチルチオキサントン)、Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントン)(以上、Lambson社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。

光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化速度を向上させて硬化性を優れたものとすることができ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、インクの総質量(100質量%)に対して、3〜20質量%であることが好ましい。

〔重合禁止剤〕 本実施形態におけるインクは、重合禁止剤をさらに含有してもよい。インクが重合禁止剤を含有することにより、硬化前における上記重合性化合物の重合反応を防止でき、インクの保存安定性を優れたものとすることができる。

上記の重合禁止剤としては、以下に制限されないが、例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、及び4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系重合禁止剤、並びにヒンダードアミン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、及びヒドロキノンが挙げられる。

重合禁止剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合禁止剤の含有量は、他の成分の含有量との関係で決まるため、特に制限されない。

〔色材〕 本実施形態におけるインクは、色材を含有してもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。

(顔料) 本実施形態では、色材として顔料を用いることにより、インクの耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。

無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。

有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。

更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社(Cabot JAPAN K.K.)製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ(Degussa)社製商品名)が挙げられる。

ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。

イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。

マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメント ヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。

シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60が挙げられる。

また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、及びC.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。

上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インクにおける吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。

(染料) 本実施形態では、色材として染料を用いることができる。当該染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。上記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。 上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

色材の含有量は、優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インクの総質量(100質量%)に対して0.5〜20質量%が好ましい。

〔その他の添加剤〕 本実施形態におけるインクは、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含有してもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、及び増粘剤が挙げられる。

以上より、本実施形態によれば、下層用インクの塗膜上に重ね塗られた上層用インクの線幅が狭くならないため、上層用インクの濡れ広がり性に優れた光硬化型インクジェットインクセットを提供することができる。さらに、本実施形態によれば、上層用インク及び下層用インク双方の硬化性及び吐出安定性、並びに被記録媒体上における下層用インクの埋まり性にも優れた、光硬化型インクジェットインクセットを提供することができる。このように、当該光硬化型インクジェットインクセットにおいて、下層用インク及び上層用インクは、組成面及び物性面で互いに影響を及ぼし合う関係にある。換言すれば、下層用インク及び上層用インクの組成や物性を決定する場合はそれぞれ、上層用インク及び下層用インクの組成や物性を考慮する必要がある。

[被記録媒体] 本実施形態の光硬化型インクジェットインクセットは、後述するインクジェット記録方法を用いて、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。後述する実施形態のインクジェット記録方法は、インクの浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、インクの浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。

吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。

非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルム、シート、及びプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。

[インクジェット記録方法] 本発明の一実施形態は、インクジェット記録方法に係る。上記実施形態のインクセットは、本実施形態のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。

〔インクジェット記録方法を実施するためのインクジェット記録装置〕 上記実施形態のインクセットを用いて、上記インクジェット記録方法を実施するためのインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」とも言う。)の一例を説明する。当該記録装置は、第1の記録モードと、第2の記録モードと、記録制御部と、を備える。

当該第1の記録モードは、下層用インクで形成された塗膜の上に上層用インクを重ね塗りして塗膜を形成するものである。

当該第2の記録モードは、上層用インクで形成された塗膜の上に下層用インクを重ね塗りして塗膜を形成するものである。

上記記録制御部は、第1の記録モード及び第2の記録モードにおいて、下層用インクで形成されるベタパターン画像のドット当たりのインク量を制御するものである。 以下、上記の記録装置の一例を詳細に説明する。

図1は、本実施形態で使用可能な記録装置のヘッドユニット及び搬送ユニットの一例を説明するための概念図である。連続シート状の被記録媒体Sは、上流側ローラー12A、搬送ドラム12、下流側ローラー12Bの回転に伴い、搬送方向の上流側から下流側へ搬送される。ヘッドユニットは、ホワイトインクWを吐出する1つ目のホワイトヘッドユニット30A(紙面上、図1の左側のもの)、イエローインクYを吐出するイエローヘッドユニット30B、マゼンタインクMを吐出するマゼンタヘッドユニット30C、シアンインクCを吐出するシアンヘッドユニット30D、ブラックインクKを吐出するブラックヘッドユニット30E、及びホワイトインクWを吐出する2つ目のホワイトヘッドユニット30A(紙面上、図1の右側のもの)を備える。照射ユニット40は、ヘッドユニット毎にその搬送方向の下流側に設けられた照射部42a,41a,41b,41c,41d,42bと、搬送方向の最後に設けられた照射部43と、を備えている。このような記録装置は、例えば特開2010−208218号における図2のように構成することができる。

ここで、第1の記録モードが行われる場合は、搬送ドラム上の各ヘッドユニットと対向する位置に搬送されてきた被記録媒体Sに対し、被記録媒体Sが搬送されてくる順に、まず、1つ目のホワイトヘッドユニット30Aから下層用インクが吐出され、照射部42aから照射が行われて下層用インクによる塗膜が形成される。次に、当該塗膜の上に、イエローヘッドユニット30B、マゼンタヘッドユニット30C、シアンヘッドユニット30D、及びブラックヘッドユニット30Eのうち少なくともいずれかから上層用インクが吐出され、当該ヘッドの下流側に設けられた照射部から照射が行われる。最後に、照射部43から照射が行われて塗膜が形成される。なお、2つ目のホワイトヘッドユニット30A及び照射部42bは使用しない。

一方、第2の記録モードが行われる場合は、搬送ドラム上の各ヘッドユニットと対向する位置に搬送されてきた被記録媒体Sに対し、被記録媒体Sが搬送されてくる順に、まず、イエローヘッドユニット30B、マゼンタヘッドユニット30C、シアンヘッドユニット30D、及びブラックヘッドユニット30Eの少なくともいずれかから上層用インクが吐出され、当該ヘッドの下流側に設けられた照射部から照射が行われて上層用インクの塗膜が形成される。次に、当該塗膜の上に、2つ目のホワイトヘッドユニット30Aから下層用インクが吐出され、照射部42bから照射が行われる。最後に、照射部43から照射が行われて塗膜が形成される。なお、1つ目のホワイトヘッドユニット30A及び照射部42aは使用しない。

上記の記録制御部は、下層用インクの塗膜をベタパターンとするとき、第2の記録モードの方が第1の記録モードよりも、下層用インクの1ドット当たりのインク量が、好ましくは10%以上大きく、より好ましくは10〜50%大きくなるよう調節するとよい。これにより、第2の記録モードでも第1の記録モードと同等の下層用インクの濡れ広がり性を確保する。なお、当該1ドットは、記録解像度で規定される最小記録単位である画素の1画素当たりに付着させるインク滴を意味する。

ここで、第2の記録モードは必ずしも備えなくてよく、この場合、2つ目のホワイトヘッドユニット30A及び照射部42bは備えなくてもよい。また、インクのうち後から塗膜形成されるインク、すなわち、第1の記録モードにおける上層用インク及び第2の記録モードにおける下層用インクは、ヘッドユニットの下流側に設けられた照射部(41a〜41d,42b)による照射及び照射部43による照射のうち少なくともいずれかにより硬化されればよく、ヘッドユニットの下流側に設けられた照射部によって硬化される場合は、照射部43は無くてもよい。

[上層用インクと下層用インク] 本実施形態において、下層用インクは、第1の記録モードにおいて被記録媒体に上層用インクより先に塗膜を形成するインクであり、上層用インクは、第1の記録モードにおいて被記録媒体の下層用インクによる塗膜の上に塗膜を形成するインクである。上層用インク及び下層用インクは、例えば、一方を主インクとし、他方を補助インクとすればよい。そして、当該主インクは、例えばカラーインク等の塗膜を視認して用いるインクとすればよい。また、当該補助インクは、例えば、ホワイトインク、クリアインク、及びメタリックインク等の特色インク、又は、主インクの密着性、濡れ広がり性、及び耐擦性などの性能を向上させる機能インク等とすればよい。 ここで、上層用インク及び下層用インクを、共に主インクとしてもよいし、あるいは共に補助インクとしてもよいが、一方を主インクとし他方を補助インクとすることが、記録物の用途が広がり、かつ、主インクの性能が向上するため好ましい。一方を主インクとし他方を補助インクとする場合、上層用インクと下層用インクのいずれを主インクとするかは、上述した主インク及び補助インクの各々の性質を考慮して決めればよい。したがって、上記図1では、第1の記録モードで下層用インクを吐出するヘッドを1つ目のホワイトヘッドユニット30Aとしているが下層用インクがホワイトインクに限られるものではない。

このように、第1の記録モード及び第2の記録モードの間でインク量を異ならせるのは、第2の記録モードでは、上層用インクの塗膜上の下層用インクの線幅が狭くなることから、下層用インクのベタパターン画像の埋まり性が悪化するためである。そこで、上記のようにインク量を増やすことにより、下層用インクの埋まり性を良好にすることができる。

〔インクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法〕 本実施形態のインクジェット記録方法は、被記録媒体上に上記実施形態における下層用インクの塗膜を形成する第1の記録工程と、当該塗膜の上に上記実施形態における上層用インクを重ね塗りして当該インクの塗膜を形成することにより画像を形成する第2の記録工程と、を含むものである。

第1の記録工程及び第2の記録工程はそれぞれ、インクを被記録媒体上に吐出する吐出段階と、吐出された当該インクに紫外線を照射して、当該インクを硬化させる硬化段階と、を含むものである。このようにして、被記録媒体上で硬化したインクにより、画像、即ち硬化されたインク塗膜が形成される。以下、これらの段階について説明する。

〔吐出段階〕 吐出段階では、被記録媒体に向けてインクが吐出され、下層用インクが被記録媒体に、上層用インクが下層用インクの塗膜に、それぞれ付着する。吐出時におけるインクの粘度は、15mPa・s以下が好ましく、12mPa・s以下がより好ましい。インクの粘度が、インクの温度を室温として、あるいは、インクを加熱しない状態として上記のものであれば、インクの温度を室温として、あるいはインクを加熱せずに吐出させればよい。その際、吐出時のインクの温度は20〜30℃であることが好ましい。一方、インクを所定の温度に加熱することによって粘度を好ましいものとして吐出させてもよい。このようにして、良好な吐出安定性が実現される。

本実施形態における下層用インク及び上層用インクはいずれも光硬化型インクであり、通常の水性インクより粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。このようなインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。

〔硬化段階〕 次に、硬化段階は、被記録媒体に向けて吐出されて付着(着弾)したインクが、紫外線の照射によって硬化するというものである。これは、インクに含まれ得る光重合開始剤が光(紫外線)の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インクにおいて光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。

紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、光硬化型インクジェットインクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。

ここで、LEDの出力を上げやすいため、発光ピーク波長が好ましくは350〜420nmの範囲にあるUV−LEDを用いて、好ましくは200mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化可能な光硬化型インクジェットインクのセットをインクジェット記録方法に用いることが好適である。この場合、低コスト印刷且つ大きな印刷速度が実現できる。このようなインクは、上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤、及び上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物のうち少なくともいずれかを含むことにより得られる。

このように、本実施形態によれば、上層用インクの濡れ広がり性、上層用インク及び下層用インク双方の硬化性及び吐出安定性、並びに被記録媒体上における下層用インクの埋まり性のいずれにも優れた、光硬化型インクジェットインクセットを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。

以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。

[使用材料] 下記の実施例及び比較例において使用した材料は、以下の通りである。 〔顔料〕 ・C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニンブルー、DIC社製、以下では「PB15:3」と略記した。) ・C.I.ピグメントホワイト6(酸化チタン、テイカ社製、以下では「PW6」と略記した。) 〔重合性化合物〕 (1.ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類) ・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社(Nippon Shokubai Co., Ltd.)製商品名、以下では「VEEA」と略記した。) (2.その他の重合性化合物) ・ビスコート#192(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社(OSAKA ORGANIC CHEMICAL INDUSTRY LTD.)製商品名、以下では「PEA」と略記した。) ・NKエステル APG−100(新中村化学工業社(SHIN-NAKAMURA CHEMICAL CO., LTD.)製商品名、ジプロピレングリコールジアクリレート、以下では「DPGDA」と略記した。) 〔重合禁止剤〕 ・MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル、関東化学社製) 〔界面活性剤〕 ・BYK−UV3500(BYK社製商品名、シリコーン系、以下では「UV3500」と略記した。) ・BYK−UV3570(BYK社製商品名、シリコーン系、以下では「UV3570」と略記した。) ・BYK−350(BYK社製商品名、アクリル系、以下では「BYK350」と略記した。) ・BYK−381(BYK社製商品名、アクリル系、以下では「BYK381」と略記した。) 〔光重合開始剤〕 ・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「819」と略記した。) ・DAROCUR TPO(BASF社製商品名、固形分量100%、以下では「TPO」と略記した。) ・KAYACURE DETX−S(日本化薬社製商品名、固形分量100%、以下では「DETX」と略記した。)

[上層用インク及び下層用インクの調製] 下記表1及び表2に記載の組成(単位:質量%)となるように各材料を添加し、これを高速水冷式撹拌機で撹拌することにより、シアン色の上層用インク及びホワイト色の下層用インクを調製した。 なお、表1は各上層用インクの組成を示すものであり、上層用インク1,2,3,及び4を以下ではそれぞれ上層1,2,3,及び4と略記した。また、表2は各下層用インクの組成を示すものであり、下層用インク1,2,3,4,5,6,及び7を以下ではそれぞれ下層1,2,3,4,5,6,及び7と略記した。

[実施例1〜7、比較例1〜5] 下記表3及び表4の各上段に記載した、上層用インク及び下層用インクの組み合わせでインクセットを作製した。なお、各実施例及び各比較例における、上層用インク及び下層用インクの表面張力γ(mN/m)は、表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製商品名)を用いて、Wilhelmy法にて常温常圧下で測定した値であり、下記表3及び表4に示した。

[評価項目] 各実施例及び各比較例で作製したインクセットについて、以下の方法により濡れ広がり性、埋まり性、吐出安定性、及び硬化性を評価した。

(1.濡れ広がり性) 被記録媒体(PET50A、リンテック社(Lintec Corporation)製)に向けて、下層用インクを720×720dpi及び15ng/ドットの条件で吐出し、その後硬化して硬化物を形成した。その後、上層用インクを用いて720dpi及び10ng/ドットの条件下、当該硬化物上に1ライン(1ドット列)を形成した。

なお、各インク共に、粘度10mPa・sとなるようインクを温度調節してから吐出した。評価は、硬化物(下層用インクの硬化膜)上における硬化した上層用インクの線幅(X)を測定することにより行った。 評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。 A:70μm≦X B:65μm≦X<70μm C:60μm≦X<65μm D:X<60μm

(2.埋まり性) 被記録媒体(PET50A)に向けて、下層用インクを720×720dpi及び10ng/ドットの条件で吐出し、硬化させた。

なお、各インク共に、粘度が10mPa・sとなるようインクを温度調節してから吐出した。得られた硬化物について、下層用インクの上での埋まり性を目視で観察することにより、本評価を行った。 評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。 A:被記録媒体から30cmの高さからの目視で、埋まっていた(下地の筋が見えなかった。)。 B:被記録媒体から30cmの高さからの目視で、下地の筋が見えた。

(3.吐出安定性) 上層用インク及び下層用インク各々の吐出安定性を評価した。180個のノズルを有するヘッドから、上層用インク及び下層用インクの各々を60分間連続で吐出した。このようにして、上層用インク及び下層用インクの各々を吐出したときの、ヘッドにおける吐出安定性を評価した。 評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。 A:連続吐出中にノズル抜けが発生しなかった。 B:連続吐出中にノズル抜けが発生した。

(4.硬化性) 上層用インク及び下層用インク各々の硬化性を評価した。ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、各実施例及び各比較例における上層用インク及び下層用インクをそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下で被記録媒体(PET50A)に向けて、720×720dpi及び10ng/ドットの条件で上層用インク及び下層用インクの各々を吐出し、印刷物(記録物)の膜厚が7〜8μmとなるようにベタパターン画像を印刷した。

その後、キャリッジの横に搭載した紫外線照射装置内のUV−LEDから、照射強度が1W/cm2であり且つピーク波長が395nmである紫外線を、1パス当たり最大200mJ/cm2まで徐々に照射エネルギー量を上げていき、上記ベタパターン画像に向けて照射した。このようにして記録物を作製した。当該照射中、記録物上の塗膜表面のタック感がなくなったら、その時点で硬化したものとした。 なお、タック感がなくなったか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のベタパターン画像に擦り傷が付くか否かで判断し、綿棒にインクが付着せず、かつ被記録媒体上のベタパターン画像に擦り傷が付かない場合をタック感がなくなったものとした。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。 また、「パス数」は、ヘッドが記録物に対して移動し、ヘッドに搭載した紫外線照射装置から塗膜に向けて紫外線照射した回数を意味する。また、照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社(KONICA MINOLTA SENSING, INC.)製)を用いて行った。 評価基準は下記のとおりである。評価結果を下記表3及び表4に示す。 A:200mJ/cm2以下の照射エネルギーで硬化した。 B:200mJ/cm2の照射エネルギーで硬化しなかった。

以上の結果より、一般式(I)で表されるビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有する下層用インクと、上層用インクと、を含み、かつ、当該下層用インクの表面張力が当該上層用インクの表面張力よりも大きい関係を満たすインクセット(各実施例)は、そうでないインクセット(各比較例)と比較して、上層用インクの濡れ広がり性に優れ、さらには、上層用インク及び下層用インク双方の硬化性及び吐出安定性、並びに被記録媒体上における下層用インクの埋まり性にも優れることが分かった。

また、上記表には記載しなかったが、下層用インク3のうちDPGDAの含有量を26.75質量%とした上で界面活性剤としてUV3500を0.05質量%加えた点以外は、下層用インク3と同様に調整したインクを用い、上層用インクに上層用インク1及び上層用インク4を用い、下層用インクとして当該下層用インクを用いて、上記実施例と同様に評価を行った。その結果、被記録媒体上での下層用インクの埋まり性がB、下層用インクの吐出安定性がA、下層用インクの硬化性がAである一方、上層用インクは共に、下層用インクγ−上層用インクγが5[mN/m]、上層用インクの濡れ広がり性がBとなった。

12…搬送ドラム、12A…上流側ローラー、12B…下流側ローラー、30A…ホワイトヘッドユニット、30B…イエローヘッドユニット、30C…マゼンタヘッドユニット、30D…シアンヘッドユニット、30E…ブラックヘッドユニット、40…照射ユニット、41a,41b,41c,41d,42a,42b,43…照射部、S…被記録媒体、W…ホワイトインク、Y…イエローインク、M…マゼンタインク、C…シアンインク、K…ブラックインク。

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