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摩擦伝動ベルト及びその製造方法

阅读:335发布:2024-01-12

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少なくとも一部がプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、かつゴム成分、短繊維及び滑剤を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮ゴム層を備えたローエッジコグドVベルトであって、前記滑剤がワックスを含み、前記滑剤の割合がゴム成分100質量部に対して2〜6質量部であり、かつ前記摩擦伝動面の少なくとも一部に前記滑剤が存在し、前記摩擦伝動面全体に対して前記滑剤が占める面積割合が50%以上であるローエッジコグドVベルト。滑剤の融点が圧縮ゴム層の加硫温度以下である請求項1記載のローエッジコグドVベルト。滑剤が、ベルトの使用温度との差が±30℃以内の融点を有する滑剤を含む請求項1又は2記載のローエッジコグドVベルト。滑剤がさらに脂肪酸アマイドを含む請求項1〜3のいずれかに記載のローエッジコグドVベルト。短繊維の割合が、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載のローエッジコグドVベルト。短繊維が摩擦伝動面で突出している請求項1〜5のいずれかに記載のローエッジコグドVベルト。摩擦伝動面で滑剤が滑剤層を形成し、かつ滑剤層の表面から短繊維が突出している請求項6記載のローエッジコグドVベルト。短繊維がベルト幅方向に配向している請求項1〜7のいずれかに記載のローエッジコグドVベルト。ゴム成分がクロロプレンゴムを含む請求項1〜8のいずれかに記載のローエッジコグドVベルト。摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤を存在させる滑剤露出工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載のローエッジコグドVベルトの製造方法。滑剤露出工程が、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物を加硫してベルトスリーブを得る加硫工程、得られたベルトスリーブをベルト長手方向に切断加工して圧縮ゴム層を形成するカット工程を含む請求項10記載の製造方法。滑剤露出工程が、カット工程で得られた圧縮ゴム層の側面を研磨して短繊維を突出させる研磨工程を含む請求項11記載の製造方法。

说明书全文

本発明は、VベルトやVリブドベルトなどの摩擦伝動面がV字状に傾斜して形成される摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関し、詳しくはプーリから受ける耐側圧性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法に関する。

従来から、動を伝達する伝動ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトが知られている。摩擦伝動面(V字状側面)がV度で形成されるVベルトやVリブドベルトは、駆動プーリと従動プーリとの間に張力をかけて巻き掛けられ、V字状側面がプーリのV溝と接触した状態で二軸間を回転走行する。その過程において、V字状側面とプーリV溝との間の推力により発生する摩擦に伴うエネルギーを利用して動力の伝達を行う。これらの摩擦伝動ベルトは、ゴム本体中(圧縮ゴム層と伸張ゴム層との間)にベルト長手方向に沿って芯体(心線)が埋設されており、この芯体(心線)が駆動プーリからの動力を従動プーリへ伝達する役割を担っている。また、芯体(心線)とゴムとの接着性を高めるために、通常、接着ゴム層が設けられている。

Vベルトには、摩擦伝動面(V字状側面)が露出したゴム層であるローエッジ(Raw-Edge)タイプ(ローエッジVベルト)と、摩擦伝動面(V字状側面)がカバー布で覆われたラップド(Wrapped)タイプ(ラップドVベルト)とがあり、摩擦伝動面の表面性状(ゴム層とカバー布との摩擦係数)の違いから用途に応じて使い分けられている。また、ローエッジタイプのベルトには、ベルトの下面(内周面)のみ、又はベルトの下面(内周面)及び上面(外周面)の両方にコグを設けて屈曲性を改善したローエッジコグドVベルトがある。

ローエッジVベルトやローエッジコグドVベルトは、主として、一般産業機械、農業機械の駆動、自動車エンジンでの補機駆動などに用いられる。また、他の用途として自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトと呼ばれるローエッジコグドVベルトがある。

ベルト式無段変速装置30は、図1に示すように、駆動プーリ31と従動プーリ32に摩擦伝動ベルト1を巻き掛けて、変速比を無段階で変化させる装置である。各プーリ31,32は、軸方向に固定された固定プーリ片31a,32aと、軸方向に移動可能とされた可動プーリ片31b,32bとからなり、これらの固定プーリ片31a,32aと可動プーリ片31b,32bとで形成されるプーリ31,32のV溝の幅を連続的に変更できる構造を有している。前記伝動ベルト1は、幅方向の両端面が各プーリ31,32のV溝の対向面と傾斜が合致するテーパ面で形成され、変更されたV溝の幅に応じて、V溝の対向面における任意の上下方向の位置に嵌まり込む。例えば、駆動プーリ31のV溝の幅を狭く、従動プーリ32のV溝の幅を広くすることにより、図1(a)に示す状態から図1(b)に示す状態に変更すると、伝動ベルト1は、駆動プーリ31側ではV溝の上方へ、従動プーリ32側ではV溝の下方へ移動し、各プーリ31,32への巻き掛け半径が連続的に変化して、変速比を無段階で変化できる。このような用途で用いる変速ベルトは、ベルトが大きく屈曲されるとともに高負荷での過酷なレイアウトで用いられる。すなわち、駆動プーリと従動プーリとの二軸間の巻き掛け回転走行だけでなく、プーリ半径方向への移動、巻き掛け半径の連続的変化による繰り返される屈曲動作など、高負荷環境での過酷な動きに耐用すべく特異的な設計がなされている。

そのため、このような変速ベルトなどの摩擦伝動ベルトの耐久性を担う重要な因子の1つは、プーリから受ける耐側圧性である。従来から、耐側圧性を向上させる処方として、圧縮ゴム層や伸張ゴム層には短繊維などの配合により補強した力学特性の大きいゴム組成物が用いられる。その一方、接着ゴムは力学特性を過度に高めると耐屈曲疲労性が低下するので、比較的力学特性の小さいゴム組成物が用いられている。

例えば、特開平10−238596号公報(特許文献1)には、伸張及び圧縮ゴム層の少なくとも一方のゴム硬度を90〜96°、接着ゴム層のゴム硬度を83〜89°の範囲に設定し、伸張及び圧縮ゴム層にはアラミド短繊維をベルト幅方向に配向させた伝動用Vベルトが開示されている。この文献では、クラックや各ゴム層及びコードのセパレーション(剥離)が早期に発生することを防止し、耐側圧性を向上させて高負荷伝動能力を向上させている。

しかし、このようなゴム組成物の配合設計の観点においては、高負荷環境でのベルト走行に伴い発生し、耐久性(寿命)低下の要因となる以下の(1)〜(4)の不具合が懸念される。 (1)心線と接着ゴムとの接着性が低いと、心線と接着ゴム間で剥離する (2)プーリとの接触面(伝動面)の摩擦係数が高いとベルトがスムーズに移動しないため、ベルトが変形(特に、ディッシングと称される座屈)し易くなる (3)ベルトのプーリ半径方向への移動や変形(座屈)に伴って、ベルト内部にせん断応力が発生し、特に、力学特性に差がある界面(この場合、圧縮ゴム又は伸張ゴムと接着ゴムとの界面)にせん断応力が集中し易く界面剥離(亀裂)が生じる (4)プーリとの接触面(伝動面)がプーリとの摺動により摩耗する。

さらに、近年では、耐久性(耐側圧性)以外にも、省燃費性を向上することが要求され、そのために伝達効率を向上(伝動ロスを低減)して燃費性を改善することも必要である。しかし、伝動ベルトにおいて耐側圧性と省燃費性とは二律背反の関係にある。例えば、Vベルトの圧縮ゴム層を短繊維、カーボンブラック、シリカなどの補強材を配合してゴム硬度を上げて耐側圧性を高めると、曲げ剛性が高くなることで、特に小プーリ径のレイアウトでは伝動ロスが生じることが知られている。

特に、自動二輪車などのベルト式無段変速装置に用いられる変速ベルトにおいては、耐側圧性と省燃費性とを両立させることが大きな課題となっており、例えば、特開2012−241831号公報(特許文献2)には、脂肪酸アマイドと短繊維とを含む圧縮ゴム層を備えた伝動用ベルトが開示されている。また、特開2013−24349号公報(特許文献3)には、圧縮ゴム層及び伸張ゴム層に、短繊維が幅方向に配向して埋設され、少なくとも前記伸張ゴム層の側面で短繊維が突出した伝動用Vベルトが開示されている。さらに、特開2015−152101号公報(特許文献4)には、下コグ形成部及び上コグ形成部が、ゴム100重量部に対して40〜80重量部のフィラーを含み、かつ前記フィラーが30%以上のシリカを含むことにより、特定の動的粘弾性を有するゴム組成物で形成されたダブルコグドVベルトが開示されている。すなわち、これらの文献には、耐側圧性と省燃費性とを両立させる種々の技術が開示されている。

なお、伝達効率に影響する因子は、(1)ベルト周方向への屈曲性、(2)ベルト幅方向への剛性(耐側圧性)、(3)摩擦伝動面の摩擦係数であり、それぞれ、(1)ベルト周方向への屈曲性を高める(曲げ剛性を下げて曲がりやすくする)、(2)ベルト幅方向への剛性(耐側圧性)を高める、(3)摩擦伝動面の摩擦係数を小さくする(摩擦伝動面の摩擦力を下げ、プーリとの摺動を円滑にさせる)という手段で、伝達効率を高める(伝達ロスを低減する)ことができる。特許文献2〜4では(1)〜(3)のいずれかの因子に着目した設計思想にて、伝達効率を向上させつつ、耐久性や変速特性(加速性能)などとのバランスを図る手段が提案されている。

例えば、摩擦伝動面の摩擦力を小さくするために、ベルト幅方向に配向させて圧縮ゴム層に配合した短繊維を摩擦伝動面に露出又は突出させて摩擦伝動面の摩擦係数を低くできる方法が知られている。しかし、露出又は突出する短繊維が多いと摩擦伝動面の摩擦係数が小さくなり伝達効率が向上する反面、短繊維を起点とするクラックが生じ易くなる。クラックはベルトの外観不良となり、さらにクラックが成長するとベルトの破壊に至る。一方で短繊維が少ないと、摩擦伝動面の摩擦係数が大きくなり、伝達効率が低下する(耐側圧性も低下する)。このように短繊維の配合量や露出(又は突出)具合の調整により耐久性(耐側圧性)と省燃費性(摩擦係数低下、伝達効率)とのバランスを取る方法では限界がある。そのため、特許文献2〜4のベルトでも、耐側圧性と省燃費性とを高度に両立できているとはいえない。

特開2007−92987号公報(特許文献5)には、摩擦伝動面の一部がエチレン・α−オレフィンエラストマー100重量部に対して、エーテルエステル系可塑剤10〜25重量部、無機充填剤60〜110重量部を配合したゴム組成物で構成されたベルト伝動装置が開示されている。この文献には、短繊維が幅方向に配向した短繊維を含有する圧縮層が開示されている。

さらに、特開2010−151209号公報(特許文献6)には、圧縮ゴム層としてゴムに短繊維及び潤滑剤を配合することにより、ベルト側面のベルト移動法における摩擦係数が0.3〜0.8の範囲に調整された伝動ベルトが開示されている。この文献には、潤滑剤として、グラファイト、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、マイカ、タルク、ポリオレフィン樹脂粉末、パラフィン系ワックス等の固体潤滑剤、シリコーンオイル、パラフィン系オイル等の液体潤滑剤が記載され、グラファイト、二硫化モリブデン、マイカ、タルクが好ましいと記載されている。実施例では、クロロプレンゴム100質量部に対して15〜45質量部のアラミド短繊維が配合され、潤滑剤として、グラファイト及びシリコーンオイルが配合されている。

しかし、特許文献5及び6のベルトでも、耐側圧性と省燃費性とを高度に両立できているとはいえない。すなわち、耐側圧性と省燃費性とは二律背反の関係にあり、両者を充足させるのは困難であった。

特開平10−238596号公報(特許請求の範囲、段落[0008][0048])

特開2012−241831号公報(請求項1)

特開2013−24349号公報(請求項1)

特開2015−152101号公報(特許請求の範囲、段落[0010])

特開2007−92987号公報(請求項1、段落[0072])

特開2010−151209号公報(請求項1、段落[0030]、実施例)

本発明の目的は、省燃費性を維持しながら、耐側圧性を向上できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。

本発明の他の目的は、変速ベルトに適用しても、高負荷条件及び/又は高速条件において伝達効率を向上でき、かつ長期間に亘り使用してもクラックの発生を抑制できる摩擦伝動ベルト及びその製造方法を提供することにある。

本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮ゴム層を備えた摩擦伝動ベルトの摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤を存在させることにより、省燃費性を維持しながら、耐側圧性を向上できることを見出し、本発明を完成した。

すなわち、本発明の摩擦伝動ベルトは、少なくとも一部がプーリと接触可能な摩擦伝動面を有し、かつゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮ゴム層を備えた摩擦伝動ベルトであって、前記摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤が存在する。前記摩擦伝動面全体に対して滑剤が占める面積割合は50%以上であってもよい。前記滑剤の融点は圧縮ゴム層の加硫温度以下であってもよい。前記滑剤は、ベルトの使用温度との差が±30℃以内の融点を有する滑剤を含んでいてもよい。前記滑剤はさらに脂肪酸アマイドを含んでいてもよい。前記ゴム組成物は滑剤を含んでいてもよい。滑剤の割合はゴム成分100質量部に対して0.5〜10質量部程度であってもよい。前記短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下であってもよい。前記短繊維は摩擦伝動面で突出していてもよく、特に、摩擦伝動面で滑剤が滑剤層を形成し、かつ滑剤層の表面から短繊維が突出していてもよい。前記短繊維はベルト幅方向に配向していてもよい。前記ゴム成分はクロロプレンゴムを含んでいてもよい。本発明の摩擦伝動ベルトは、ローエッジコグドVベルトであってもよい。

本発明には、摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤を存在させる滑剤露出工程を含む前記摩擦伝動ベルトの製造方法も含まれる。前記滑剤露出工程は、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物を加硫してベルトスリーブを得る加硫工程、得られたベルトスリーブをベルト長手方向に切断加工して圧縮ゴム層を形成するカット工程を含んでいてもよい。前記滑剤露出工程は、カット工程で得られた圧縮ゴム層の側面を研磨して短繊維を突出させる研磨工程をさらに含んでいてもよい。

本発明では、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮ゴム層を備えた摩擦伝動ベルトの摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤が存在するため、省燃費性(伝達効率)と耐側圧性(耐久性)とを向上できる。特に、ワックスを含むゴム組成物で圧縮ゴム層を形成すると、表面処理をしなくても、ワックスがブルーム(滲出)して圧縮ゴム層表面(摩擦伝動面)を覆って固着するため、摩擦伝動面の摩擦係数が低下してプーリとの摺動性が向上し、伝動ロスを低減できる。また、短繊維を適度に配合すると、耐側圧性とベルトの曲げ易さとを両立できる。すなわち、ワックスにより摩擦伝動面の摩擦係数が低下するため、短繊維を過度に増量することがなく、短繊維を起点とするクラックの発生を抑制できる。さらに、短繊維を摩擦伝動面に突出させると、短繊維とワックスとの併用効果で摩擦係数をより低減できる。そのため、変速ベルトに適用しても、高負荷条件及び/又は高速条件において伝達効率を向上でき、かつ長期間に亘り使用してもクラックの発生を抑制できる。

図1は、ベルト式無段変速装置の変速機構を説明するための概略図である。

図2は、本発明の摩擦伝動ベルトの一例を示す概略斜視図である。

図3は、図2の摩擦伝動ベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。

図4は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層の一例を示す概略断面図である。

図5は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層の他の例を示す概略断面図である。

図6は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層のさらに他の例を示す概略断面図である。

図7は、伝達効率の測定方法を説明するための概略図である。

図8は、実施例での摩擦係数の測定方法を説明するための概略図である。

図9は、実施例での高負荷走行試験を説明するための概略図である。

図10は、実施例での高速走行試験を説明するための概略図である。

図11は、実施例での耐久走行試験を説明するための概略図である。

図12は、実施例4で得られたベルトにおける圧縮ゴム層表面の電子顕微鏡写真である。

[摩擦伝動ベルトの構造] 本発明の摩擦伝動ベルトは、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物の加硫物で形成された圧縮ゴム層の摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤が存在していればよいが、通常、ベルトの長手方向に延びる芯体と、この芯体を埋設した接着ゴム層と、この接着ゴム層の一方の面に形成された圧縮ゴム層と、前記接着ゴム層の他方の面に形成された伸張ゴム層とを備えている。

本発明の摩擦伝動ベルトとしては、例えば、Vベルト[ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト(ローエッジベルトの内周側にコグが形成されたローエッジコグドVベルト、ローエッジベルトの内周側及び外周側の双方にコグが形成されたローエッジダブルコグドVベルト)]、Vリブドベルト、平ベルトなどが例示できる。これらの摩擦伝動ベルトのうち、プーリからの側圧を大きく受ける点から、摩擦伝動面がV字状に傾斜して(V角度で)形成されているVベルト又はVリブドベルトが好ましく、耐側圧性と省燃費性との高度な両立を要求されるベルト式無段変速装置に用いられる点から、ローエッジコグドVベルトが特に好ましい。

図2は、本発明の摩擦伝動ベルト(ローエッジコグドVベルト)の一例を示す概略斜視図であり、図3は、図2の摩擦伝動ベルトをベルト長手方向に切断した概略断面図である。

この例では、摩擦伝動ベルト1は、ベルト本体の内周面に、ベルトの長手方向(図中のA方向)に沿って所定の間隔をおいて形成された複数のコグ部1aを有しており、このコグ部1aの長手方向における断面形状は略半円状(湾曲状又は波形状)であり、長手方向に対して直交する方向(幅方向又は図中のB方向)における断面形状は台形状である。すなわち、各コグ部1aは、ベルト厚み方向において、コグ底部1bからA方向の断面において略半円状に突出している。摩擦伝動ベルト1は、積層構造を有しており、ベルト外周側から内周側(コグ部1aが形成された側)に向かって、補強布2、伸張ゴム層3、接着ゴム層4、圧縮ゴム層5、補強布6が順次積層されている。ベルト幅方向における断面形状は、ベルト外周側から内周側に向かってベルト幅が小さくなる台形状である。さらに、接着ゴム層4内には、芯体4aが埋設されており、前記コグ部1aは、コグ付き成形型により圧縮ゴム層5に形成されている。

[圧縮ゴム層] 本発明では、圧縮ゴム層は、ゴム成分及び短繊維を含むゴム組成物の加硫物で形成され、摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤が存在している。本発明では、プーリからの側圧と摩擦力を大きく受ける圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に短繊維を配合し、短繊維をベルト幅方向に配向させて耐側圧性を確保する。短繊維の配合量は耐側圧性を確保するだけの必要最小限とするのが好ましい。さらに、摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤を存在させることにより、摩擦伝動面の摩擦係数が低減(摺動性が向上)する。図4は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層の一例を示す概略断面図である。図4に示すように、この摩擦伝動ベルトでは、圧縮ゴム層5及び伸張ゴム層3の内部に、ベルト幅方向に沿って短繊維7がそれぞれ配向しており、圧縮ゴム層5の摩擦伝動面には滑剤8が固着されている。滑剤は、摩擦伝動面に存在すればよいが、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に滑剤を含有させて加硫した後、ベルトスリーブをベルト長手方向に切断加工することにより、滑剤を圧縮ゴム層内部からブルームさせて表面(摩擦伝動面)に固着させてもよい。本発明では、滑剤の存在により、短繊維の配合量を必要最小限に調整できるため、耐側圧性を維持したままベルトの曲げ剛性も小さく維持できる。そのため、摩擦係数(摺動性向上)及び曲げ剛性(柔軟性の向上)の両者を低減でき、伝達ロスが小さく省燃費性を確保できる。すなわち、短繊維と滑剤(ワックス)との併用で、耐側圧性と省燃費性(柔軟性と摺動性との両方)とを向上できる。

図5は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層の他の例を示す概略断面図である。この摩擦伝動ベルトでは、摩擦伝動面に滑剤8が存在するとともに、摩擦伝動面で短繊維7が突出(又は露出)している。詳しくは、摩擦伝動面で、突出した短繊維7の周りに滑剤8が固着して摩擦伝動面を覆っており、突出した短繊維7の先端は覆われず露出している。この態様では、短繊維が突出することにより、摩擦伝動面の摺動性をより向上できる。

図6は、本発明の摩擦伝動ベルトの圧縮ゴム層の他の例を示す概略断面図である。この摩擦伝動ベルトでは、滑剤8は、表面ゴム層9に含まれており、表面ゴム層9の表面でブルームして存在している。

(滑剤) 摩擦伝動面の表面に存在する滑剤は、前述のように、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に含まれる滑剤を滲出させた滑剤であってもよく、摩擦伝動面に固着された滑剤であってもよく、滑剤を含む表面ゴム層に含まれる滑剤であってもよい。これらのうち、長期間に亘り滑剤の効果を持続できる点から、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物から滲出させた滑剤が好ましい。

滑剤は、ベルトの使用温度において液状であると潤滑性が低下するため、ベルトの使用温度に適した融点を有する滑剤を選択する必要がある。

特に、圧縮ゴム層を形成するゴム組成物から滑剤を滲出させる場合、摩擦伝動面に滑剤をブルームさせるためには、圧縮ゴム層を形成するゴム成分との相溶性が低く、融点及び分子量が比較的低い滑剤を用いるのが好ましい。滑剤は、融点に近づくと分子が動き易くなり、圧縮ゴム層表面側に移動し易くなるためである。まず、滑剤は、ベルトの製造過程における加硫工程において、溶融してゴム組成物の内部において摩擦伝動面が形成される表面側に移行する。さらに、滑剤は、カット工程において、摩擦伝動面に露出するとともに、カット工程及び続く研磨工程においても、カットや研磨の摩擦熱で溶融して圧縮ゴム層の内部からブルームして摩擦伝動面に移行するのが促進される。さらに、ベルトの走行中においても、ベルトの屈曲変形によって圧縮ゴム層内部から滑剤が押し出されて摩擦伝動面にブルームする。その際に、ベルトの使用温度よりも滑剤の融点が高すぎると、滑剤が圧縮ゴム層の表面にブルームし難くなり、ベルトの使用温度よりも滑剤の融点が低すぎると、滑剤が液体となり潤滑性が低下する。そのため、滑剤としては、ベルトの使用温度に適した融点(使用温度付近の融点)の滑剤が選択される。なお、前述のように、カット工程及び研磨工程でも滑剤は溶融して摩擦伝動面にブルームするが、圧縮ゴム層は短繊維を含むため、滑剤は、ゴム成分と短繊維との界面を通過してブルームし易い。そのため、摩擦伝動面に短繊維が突出(又は露出)した圧縮ゴム層が好ましい。

滑剤の融点(又は軟化点)は、圧縮ゴム層の加硫温度以下であるのが好ましく、例えば(加硫温度−150)℃〜(加硫温度−10)℃、好ましくは(加硫温度−130)℃〜(加硫温度−30)℃、さらに好ましくは(加硫温度−120)℃〜(加硫温度−50)℃程度である。

さらに、滑剤は、ベルトの使用温度(表面温度)付近の融点を有する滑剤を含むのが好ましく、例えば、ベルトの使用温度との差が±30℃以内、好ましくは±20℃以内、さらに好ましくは±10℃以内(特に±5℃以内)の融点を有する滑剤を含むのが好ましい。本発明では、ベルトの使用温度が広い範囲に亘る場合には、最大温度をベルトの使用温度と定義する。そのような場合には、融点の異なる複数の滑剤を組み合わせるのが好ましい。

滑剤の融点(又は軟化点)は、具体的には150℃以下であってもよく、例えば35〜140℃、好ましくは45〜130℃、さらに好ましくは50〜120℃程度である。なお、本発明では、滑剤の融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定でき、混合物の場合は、各融点の平均値を意味する。

摩擦伝動面全体に対して滑剤が占める面積割合は50%以上が好ましく、例えば50〜100%、好ましくは80〜100%程度である。滑剤の占有面積が小さすぎると、潤滑性が低下する虞がある。本発明では、滑剤の占有面積は、走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、型番:JSM5900LV)を用いて、摩擦伝動面を撮影し、計測ソフト(オリンパス(株)製、「Stream」)により、滑剤とその他(繊維及びゴム)とを濃淡の違いを認識させる方法で測定できる。

本発明では、摩擦伝動面に短繊維が突出していない場合は、摩擦伝動面全体が滑剤で被覆された滑剤層を形成するのが好ましく、摩擦伝動面に短繊維が突出している場合は、摩擦伝動面のうち短繊維の突出部(又は突出部の先端近傍)を除いた領域全体が滑剤で被覆された滑剤層を形成するのが好ましい。

圧縮ゴム層が滑剤を含む場合、滑剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜30質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.3〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部(例えば2〜6質量部)、さらに好ましくは3〜8質量部(特に4〜7質量部)程度である。滑剤の割合が少なすぎると、潤滑性が低下する虞があり、多すぎると、圧縮ゴム層の機械的特性が低下する虞がある。

(A)ワックス 滑剤は、摩擦伝動面の摺動性の向上効果が高く、圧縮ゴム層内部に含まれていても摩擦伝動面にブルームし易い点から、ワックスを含む。

ワックスとしては、例えば、脂肪族炭化素系ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリC2−4オレフィン系ワックス、天然パラフィンや合成パラフィンなどのパラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、植物性又は動物性ワックス(例えば、カルナウバワックス、ミツロウ、セラックワックス、モンタンワックスなど)などが挙げられる。

これらのワックスは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのワックスのうち、摺動性に優れる点から、ノルマルパラフィン(直鎖状炭化水素)、イソパラフィン、シクロパラフィンなどのパラフィン、マイクロクリスタリンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス(特にパラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの組み合わせ)が好ましい。パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとを組み合わせる場合、両者の質量割合は、パラフィン/マイクロクリスタリンワックス=10/1〜1/10程度の範囲から選択できる。

ワックスの融点(又は軟化点)は35℃以上であってもよく、例えば35〜120℃、好ましくは40〜120℃(特に50〜100℃)、さらに好ましくは45〜90℃(特に50〜80℃)程度である。融点が低すぎると、潤滑性が低下する虞があり、高すぎると、圧縮ゴム層内部に配合した場合、ブルームが抑制される虞がある。

(B)脂肪酸アマイド 滑剤は、ベルトの使用温度が比較的高い場合、前記ワックスに加えて脂肪酸アマイドを含むのが好ましい。

脂肪酸アマイドとしては、高級脂肪酸モノアマイド、例えば、ベヘン酸アマイド、アラキン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、リシノール酸アマイドなどの飽和又は不飽和高級脂肪酸アマイド又はモノアマイド;飽和又は不飽和高級脂肪酸ビスアマイド、例えば、アルキレンビス飽和又は不飽和高級脂肪酸アマイド(例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、イソステアリン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、テトラメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイドなどのC1−10アルキレンビス飽和又は不飽和高級脂肪酸アマイドなど)、ジカルボン酸と飽和又は不飽和高級アミンとのビスアマイド(例えば、N,N’−ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アマイド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アマイドなどのC6−12アルカンジカルボン酸と飽和又は不飽和高級アミンとの反応により生成するビスアマイドなど)などが例示できる。

また、脂肪酸アマイドには、芳香族ビスアマイド(キシリレンビスステアリン酸アマイドなどの芳香族ジアミンと飽和又は不飽和高級脂肪酸とのビスアマイド、N,N’−ジステアリルフタル酸アマイドなどの芳香族ジカルボン酸と飽和又は不飽和高級アミンとのビスアマイドなど)の他、置換アマイド(N−ラウリルラウリン酸アマイド、N−パルミチルパルミチン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−ステアリルオレイン酸アマイド、N−オレイルステアリン酸アマイド、N−ステアリルエルカ酸アマイド、N−ステアリルヒドロキシステアリン酸アマイドなどのアミド基の窒素原子に飽和又は不飽和高級脂肪酸残基がアミド結合した高級脂肪酸アマイド)、エステルアマイド(エタノールアミンジベへネート、エタノールアミンジステアレート、エタノールアミンジパルミテート、プロパノールアミンジステアレート、プロパノールアミンジパルミテートなどのアルカノールアミンのヒドロキシル基と高級脂肪酸とがエステル結合し、アルカノールアミンのアミノ基と高級脂肪酸とがアミド結合したエステルアマイド)、アルカノールアマイド(メチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイドなどのメチロール高級脂肪酸モノアマイドなどのメチロールアマイド類;ステアリン酸モノエタノールアマイド、エルカ酸モノエタノールアマイドなどのN−ヒドロキシC2−4アルキル高級脂肪酸モノアマイド)、置換尿素(N−ブチル−N’−ステアリル尿素、N−フェニル−N’−ステアリル尿素、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素などの尿素の窒素原子に高級脂肪酸がアミド結合した置換尿素)などが例示できる。なお、これらの脂肪酸アマイドにおいて、高級脂肪酸及び高級アミンの炭素数は、10〜34(例えば、10〜30、好ましくは10〜28、さらに好ましくは12〜24)程度であってもよい。

これらの脂肪酸アマイドは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの脂肪酸アマイドのうち、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイドなどの飽和又は不飽和高級脂肪酸モノアマイド(特に高級脂肪酸の炭素数が16〜20である飽和又は不飽和高級脂肪酸モノアマイド)が好ましい。

脂肪酸アマイドの融点は、50〜200℃程度の範囲から選択でき、通常、65〜150℃、好ましくは80〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃(特に100〜120℃)程度であってもよい。

脂肪酸アマイドの割合は、ワックス100質量部に対して、例えば25〜100質量部、好ましくは30〜80質量部、さらに好ましくは40〜50質量部程度である。脂肪酸アマイドの割合が少なすぎると、高温での使用における潤滑性が低下する虞があり、逆に多すぎると、圧縮ゴム層内部に配合した場合、ブルームが抑制される虞がある。

(C)他の滑剤 滑剤は、ワックス(及び脂肪酸アマイド)に加えて、他の滑剤を含んでいてもよい。他の滑剤としては、例えば、シリコーン系化合物(例えば、シリコーンオイル、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、ポリオキシアルキレン単位を有するポリオルガノシロキサンなど)、フッ素含有化合物(例えば、フッ素オイル、ポリテトラフルオロエチレンなど)などが挙げられる。これら他の滑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。

他の滑剤の割合は、滑剤全体に対して50質量%以下、例えば0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%程度である。

滑剤全体に対してワックスの割合は、例えば30質量%以上、好ましくは30〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%程度である。また、滑剤全体に対して、ワックス及び脂肪酸アマイドの合計割合は、例えば50質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。

(短繊維) 短繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリアルキレンアリレート系繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2−4アルキレンC6−14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維;炭素繊維などの無機繊維が汎用される。これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの短繊維のうち、合成繊維や天然繊維、特に合成繊維(ポリアミド繊維、ポリアルキレンアリレート系繊維など)、中でも剛直で高い強度、モジュラスを有し、圧縮ゴム層表面で突出し易い点から、少なくともアラミド繊維を含む短繊維が好ましい。アラミド短繊維は、高い耐摩耗性をも有している。アラミド繊維は、例えば、商品名「コーネックス」、「ノーメックス」、「ケブラー」、「テクノーラ」、「トワロン」などとして市販されている。

短繊維は、プーリからの押圧に対するベルトの圧縮変形を抑制するため、ベルト幅方向に配向して圧縮ゴム層中に埋設されることが好ましい。また、圧縮ゴム層の表面より短繊維を突出させることにより、表面の摩擦係数を低下させてノイズ(発音)を抑制したり、プーリとの擦れによる摩耗を低減できるため、好ましい。短繊維の平均長さは、例えば1〜20mm、好ましくは1.2〜15mm(例えば1.5〜10mm)、さらに好ましくは2〜5mm(特に2.5〜4mm)程度であってもよい。短繊維の平均長さが短すぎると、列理方向の力学特性(例えばモジュラスなど)を十分に高めることができない虞があり、逆に長すぎると、ゴム組成物中の短繊維の分散不良が生じ、ゴムに亀裂が発生してベルトが早期に損傷する虞がある。

摩擦伝動面全体における短繊維の平均突出高さは、50μm以上であることが好ましく、例えば50〜200μm、好ましくは60〜180μm、さらに好ましくは70〜160μm(特に80〜150μm)程度である。平均突出高さが小さすぎると、表面の摩擦係数を充分に低減できない虞があり、逆に大きすぎると、破損や脱落が起こり易くなる。平均突出高さは、例えば、ベルト幅方向に切断した断面を電子顕微鏡などで拡大観察し、ベルト側面より突出する短繊維の長さ(突出高さ)を複数本(例えば10〜1000本、好ましくは30〜500本、さらに好ましくは50〜200本、特に100本程度)測定し、これらを平均して算出することができる。

短繊維の平均繊維径は、例えば1〜100μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm(特に10〜20μm)程度である。平均繊維径が大きすぎると、圧縮ゴム層の機械的特性が低下する虞があり、小さすぎると、表面の摩擦係数を充分に低減できない虞がある。

突出部における短繊維の形状は、特に限定されず、側面より略垂直に突出した形状、一方向(例えば、研磨方向)にカールした形状、先端部がフィブリル化した形状、研磨時の熱で溶融した開花状などの形状であってもよい。さらに、特開平7−98044号公報や特開平7−151191号公報に記載された形状であってもよい。

本発明では、摩擦伝動面に存在する滑剤との組み合わせにより、短繊維の割合を少量に抑制できるため、ベルトの曲げ剛性を低下でき、ベルトの伝達効率を向上できる。短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して30質量部以下であってもよく、例えば10〜25質量部、好ましくは12〜23質量部、さらに好ましくは15〜20質量部程度であってもよく、例えば10〜20質量部(特に12〜18質量部)程度であってもよい。短繊維の割合が少なすぎると、圧縮ゴム層の力学特性が低下する虞がある。逆に多すぎると、伝達効率の低下に加えて、短繊維のゴム組成物中の分散性が低下して分散不良が生じ、その箇所を起点にして圧縮ゴム層に亀裂が早期に発生する虞もある。

ゴム組成物中の短繊維の分散性や接着性の観点から、少なくとも短繊維は接着処理(又は表面処理)するのが好ましい。なお、全ての短繊維が接着処理されている必要はなく、接着処理した短繊維と、接着処理されていない短繊維(未処理短繊維)とが混在し又は併用されていてもよい。

短繊維の接着処理では、種々の接着処理、例えば、フェノール類とホルマリンとの初期縮合物(ノボラック又はレゾール型フェノール樹脂のプレポリマーなど)を含む処理液、ゴム成分(又はラテックス)を含む処理液、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液、シランカップリング剤、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)を含む処理液などで処理することができる。好ましい接着処理では、短繊維は、前記初期縮合物とゴム成分(ラテックス)とを含む処理液、特に少なくともレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)液で処理する。このような処理液は組み合わせて使用してもよく、例えば、短繊維を、慣用の接着性成分、例えば、エポキシ化合物(エポキシ樹脂など)、イソシアネート化合物などの反応性化合物(接着性化合物)で前処理した後、RFL液で処理してもよい。

このような処理液、特にRFL液で処理すると、短繊維とゴム成分とを強く接着できる。RFL液は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物と、ゴムラテックスとの混合物である。レゾルシンとホルムアルデヒドとのモル比は、ゴム成分と短繊維との接着性を向上できる範囲、例えば、前者/後者=1/0.5〜1/3、好ましくは1/0.6〜1/2.5、さらに好ましくは1/0.7〜1/1.5程度に設定でき、1/0.5〜1/1(例えば1/0.6〜1/0.8)程度であってもよい。ラテックスの種類は特に限定されず、接着対象となるゴム成分の種類に応じて、後述するゴム成分から適宜選択できる。例えば、接着対象となるゴム成分がクロロプレンゴムを主成分とする場合、ラテックスは、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム)など)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴムなどであってもよい。これらのラテックスは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。好ましいラテックスは、ジエン系ゴム(スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、クロロプレンゴム、ブタジエンゴムなど)、クロロスルフォン化ポリエチレンゴムであり、接着性を一層向上させる上ではスチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体が好ましい。短繊維を少なくともスチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体を含む処理液(RFL液など)で接着処理すると、ゴム組成物(クロロプレンゴム組成物など)と短繊維との接着性を向上できる。

レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物の割合は、ラテックスのゴム分100質量部に対して10〜100質量部(例えば12〜50質量部、好ましくは15〜30質量部)程度であってもよい。なお、RFL液の全固形分濃度は、5〜40質量%の範囲で調整できる。

短繊維に対する接着成分(固形分)の付着率[(接着処理後の質量−接着処理前の質量)/(接着処理後の質量)×100]は、例えば1〜25質量%、好ましくは3〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%であり、3〜10質量%(特に4〜8質量%)程度であってもよい。接着成分の付着率が少なすぎると、短繊維のゴム組成物中の分散性や、短繊維とゴム組成物との接着性が不十分であり、逆に多すぎると、接着成分が繊維フィラメント同士を強固に固着し、却って分散性が低下する虞がある。

接着処理された短繊維の調製方法は特に限定されず、例えば、マルチフィラメントの長繊維を接着処理液に含浸し、乾燥させた後に所定長さにカットする方法、未処理短繊維を接着処理液に所定時間浸漬し、次いで、遠心分離などの方法で余剰の接着処理液を除去した後、乾燥させる方法などが利用できる。

(ゴム成分) ゴム成分としては、公知のゴム成分及び/又はエラストマー、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など]、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。

これらのゴム成分のうち、加硫剤及び加硫促進剤が拡散し易い点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)、クロロプレンゴムが好ましく、クロロプレンゴムが特に好ましい。クロロプレンゴムは、硫黄変性タイプであってもよく、非硫黄変性タイプであってもよい。

ゴム成分がクロロプレンゴムを含む場合、ゴム成分中のクロロプレンゴムの割合は50質量%以上(特に80〜100質量%)程度であってもよく、100質量%(クロロプレンゴムのみ)が特に好ましい。

(添加剤) ゴム組成物には、必要により、加硫剤又は架橋剤(又は架橋剤系)、共架橋剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、増強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩など)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。

加硫剤又は架橋剤としては、ゴム成分の種類に応じて慣用の成分が使用でき、例えば、前記金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)、硫黄系加硫剤などが例示できる。硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、塩化硫黄(一塩化硫黄、二塩化硫黄など)などが挙げられる。これらの架橋剤又は加硫剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。ゴム成分がクロロプレンゴムである場合、加硫剤又は架橋剤として金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化亜鉛など)を使用してもよい。なお、金属酸化物は他の加硫剤(硫黄系加硫剤など)と組み合わせて使用してもよく、金属酸化物及び/又は硫黄系加硫剤は単独で又は加硫促進剤と組み合わせて使用してもよい。

加硫剤の割合は、加硫剤及びゴム成分の種類に応じて、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部程度の範囲から選択できる。例えば、加硫剤としての有機過酸化物の割合は、ゴム成分100質量部に対して1〜8質量部、好ましくは1.5〜5質量部、さらに好ましくは2〜4.5質量部程度の範囲から選択でき、金属酸化物の割合は、ゴム成分100質量部に対して1〜20質量部、好ましくは3〜17質量部、さらに好ましくは5〜15質量部(特に7〜13質量部)程度の範囲から選択できる。

共架橋剤(架橋助剤、又は共加硫剤co-agent)としては、公知の架橋助剤、例えば、多官能(イソ)シアヌレート[例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)など]、ポリジエン(例えば、1,2−ポリブタジエンなど)、不飽和カルボン酸の金属塩[例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなど]、オキシム類(例えば、キノンジオキシムなど)、グアニジン類(例えば、ジフェニルグアニジンなど)、多官能(メタ)アクリレート[例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど]、ビスマレイミド類(脂肪族ビスマレイミド、例えば、N,N’−1,2−エチレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)シクロヘキサンなど;アレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド、例えば、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレビスマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼンなど)などが挙げられる。これらの架橋助剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの架橋助剤のうち、ビスマレイミド類(N,N’−m−フェニレンジマレイミドなどのアレーンビスマレイミド又は芳香族ビスマレイミド)が好ましい。ビスマレイミド類の添加により架橋度を高め、粘着摩耗などを防止できる。

共架橋剤(架橋助剤)の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して0.01〜10質量部程度の範囲から選択でき、例えば0.1〜5質量部(例えば0.3〜4質量部)、好ましくは0.5〜3質量部(例えば、0.5〜2質量部)程度であってもよい。

加硫促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤[例えば、テトラメチルチウラム・モノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラム・ジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラム・ジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラム・ジスルフィド(TBTD)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラム・ジスルフィドなど]、チアゾ−ル系促進剤[例えば、2−メルカプトベンゾチアゾ−ル、2−メルカプトベンゾチアゾ−ルの亜鉛塩、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなど)など]、スルフェンアミド系促進剤[例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミドなど]、ビスマレイミド系促進剤(例えば、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−1,2−エチレンビスマレイミドなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジン、ジo−トリルグアニジンなど)、ウレア系又はチオウレア系促進剤(例えば、エチレンチオウレアなど)、ジチオカルバミン酸塩類、キサントゲン酸塩類などが挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの加硫促進剤のうち、TMTD、DPTT、CBSなどが汎用される。

加硫促進剤の割合は、固形分換算で、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.1〜15質量部、好ましくは0.3〜10質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部程度であってもよい。

増強剤(カーボンブラック、シリカなど)の割合は、ゴム成分の総量100質量部に対して10〜100質量部(好ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部)程度であってもよい。また、軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)の割合は、ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば1〜30質量部、好ましくは3〜20質量部(例えば5〜10質量部)程度であってもよい。老化防止剤の割合は、ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば0.5〜15質量部、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは2.5〜7.5質量部(特に3〜7質量部)程度であってもよい。

[伸張ゴム層] 伸張ゴム層は、圧縮ゴム層で例示されたゴム成分を含む加硫ゴム組成物で形成されていてもよく、圧縮ゴム層と同様に短繊維が含まれていてもよい。さらに、伸張ゴム層は、圧縮ゴム層と同一の加硫ゴム組成物で形成された層であってもよく、滑剤を除いて圧縮ゴム層と同一の加硫ゴム組成物で形成された層であってもよい。

[接着ゴム層] 接着ゴム層を形成するためのゴム組成物は、圧縮ゴム層の加硫ゴム組成物と同様に、ゴム成分(クロロプレンゴムなど)、加硫剤又は架橋剤(酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物、硫黄などの硫黄系加硫剤など)、共架橋剤又は架橋助剤(N,N’−m−フェニレンジマレイミドなどのマレイミド系架橋剤など)、加硫促進剤(TMTD、DPTT、CBSなど)、増強剤(カーボンブラック、シリカなど)、軟化剤(ナフテン系オイルなどのオイル類)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂(窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの縮合物、例えば、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサアルコキシメチルメラミン(ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなど)などのメラミン樹脂、メチロール尿素などの尿素樹脂、メチロールベンゾグアナミン樹脂などのベンゾグアナミン樹脂など)、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などを含んでいてもよい。なお、接着性改善剤において、レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物及びアミノ樹脂は、レゾルシン及び/又はメラミンなどの窒素含有環状化合物とホルムアルデヒドとの初期縮合物(プレポリマー)であってもよい。

なお、このゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮ゴム層のゴム組成物のゴム成分と同系統(ジエン系ゴムなど)又は同種(クロロプレンゴムなど)のゴムを使用する場合が多い。また、加硫剤又は架橋剤、共架橋剤又は架橋助剤、加硫促進剤、増強剤、軟化剤及び老化防止剤の使用量は、それぞれ、前記圧縮ゴム層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。また、接着ゴム層のゴム組成物において、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸など)の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは1〜3質量部程度であってもよい。また、接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなど)の割合は、ゴム成分100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは2〜8質量部程度であってもよい。

[芯体] 芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、ベルトの長手方向に延びて配設され、通常、ベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に延びて配設されている。心線は、少なくともその一部が接着ゴム層と接していればよく、接着ゴム層が心線を埋設する形態、接着ゴム層と伸張ゴム層との間に心線を埋設する形態、接着ゴム層と圧縮ゴム層との間に心線を埋設する形態のいずれの形態であってもよい。これらのうち、耐久性を向上できる点から、接着ゴム層が心線を埋設する形態が好ましい。

心線を構成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維が例示できる。前記繊維のうち、高モジュラスの点から、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレートなどのC2−4アルキレンアリレートを主たる構成単位とするポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、アラミド繊維などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用され、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリエチレンナフタレート系繊維)、ポリアミド繊維が好ましい。繊維はマルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸の繊度は、例えば2000〜10000デニール(特に4000〜8000デニール)程度であってもよい。マルチフィラメント糸は、例えば100〜5,000本であってもよく、好ましくは500〜4,000本、さらに好ましくは1,000〜3,000本程度のモノフィラメント糸を含んでいてもよい。

心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mmであってもよく、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。

心線は、ゴム成分との接着性を改善するため、短繊維と同様の方法で接着処理(又は表面処理)されていてもよい。心線も短繊維と同様に、少なくともRFL液で接着処理するのが好ましい。

[補強布] 摩擦伝動ベルトにおいて、補強布を使用する場合、圧縮ゴム層の表面に補強布を積層する形態に限定されず、例えば、伸張ゴム層の表面(接着ゴム層と反対側の面)に補強布を積層してもよく、圧縮ゴム層及び/又は伸張ゴム層に補強層を埋設する形態(例えば、特開2010−230146号公報に記載の形態など)であってもよい。補強布は、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材(好ましくは織布)などで形成でき、必要であれば、前記接着処理、例えば、RFL液で処理(浸漬処理など)したり、接着ゴムを前記布材にすり込むフリクションや、前記接着ゴムと前記布材とを積層した後、圧縮ゴム層及び/又は伸張ゴム層の表面に積層してもよい。

[摩擦伝動ベルトの製造方法] 本発明の摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動面の少なくとも一部にワックスを含む滑剤を存在させる滑剤露出工程を経て得られる。滑剤露出工程は、摩擦伝動面の少なくとも一部に前記滑剤を露出させることができる方法であれば、特に限定されず、例えば、ベルトの摩擦伝動面に滑剤又は滑剤を含むゴム組成物を付着させる方法[塗布や接着などによって滑剤を摩擦伝動面に付着する方法、滑剤を含むゴム組成物(例えば、滑剤を含む液状ゴム組成物など)を摩擦伝動面に積層して滑剤を含む表面ゴム層を形成する方法など]、ベルトの製造過程で圧縮ゴム層内部に含まれる滑剤を摩擦伝動面にブルームさせる方法などが挙げられる。これらの方法のうち、長期間に亘り摩擦伝動面に滑剤を存在させることができ、かつベルトの生産性も向上できる点から、ベルトの製造過程で圧縮ゴム層内部に含まれる滑剤を摩擦伝動面にブルームさせる方法、すなわちゴム成分、短繊維及び滑剤を含むゴム組成物を加硫してベルトスリーブを得る加硫工程、得られたベルトスリーブをベルト長手方向に切断加工して圧縮ゴム層を形成するカット工程(特に、さらにカット工程で得られた圧縮ゴム層の側面を研磨して短繊維を突出させる研磨工程)を経て摩擦伝動面に滑剤を滲出させる方法が好ましい。この方法では、摩擦伝動ベルトを製造するための従来の工程が滑剤露出工程を兼ねることになる。

前記滑剤露出工程以外は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、ベルトの種類に応じて、慣用の方法を利用できる。

例えば、コグドVベルトの場合、補強布(下布)と圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴムシート)からなる積層体を、前記補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、温度60〜100℃(特に70〜80℃)程度でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にあるパッド)を作製した後、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断してもよい。さらに、円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に第1の接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未加硫ゴムシート)を積層した後、芯体を形成する心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、この上に第2の接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未加硫ゴムシート)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製してもよい。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度120〜200℃(特に150〜180℃)程度で加硫してベルトスリーブを調製する加硫工程を経た後、カッターなどを用いて、V字状断面となるように切断加工するカット工程を経てもよい。カット工程では、カッターなどでベルトスリーブを切断する際に発生する摩擦熱により、圧縮ゴム層内部に含まれる滑剤が摩擦伝動面にブルームするのを促進することができる。

圧縮ゴム層内部に含まれる滑剤を摩擦伝動面にブルームさせる方法では、圧縮ゴム層を形成するためのゴム組成物に、滑剤及び短繊維を配合して混合(混練り)することにより、滑剤及び短繊維は混練り工程でゴム組成物中に分散される。

なお、伸張ゴム層用シート及び圧縮ゴム層用シートにおいて、短繊維の配向方向をベルト幅方向に配向させる方法としては、慣用の方法、例えば、所定の間隙を設けた一対のカレンダーロール間にゴムを通してシート状に圧延し、圧延方向に短繊維が配向した圧延シートの両側面を圧延方向と平行方向に切断するとともに、ベルト成形幅(ベルト幅方向の長さ)となるように圧延シートを圧延方向と直角方向に切断し、圧延方向と平行方向に切断した側面同士をジョイントする方法などが挙げられる。例えば、特開2003−14054号公報に記載の方法などを利用できる。このような方法で短繊維を配向させた未加硫シートは、前記方法において、短繊維の配向方向がベルトの幅方向となるように配置して加硫される。

本発明の製造方法は、摩擦伝動面のうち少なくとも圧縮ゴム層の側面を研磨して短繊維を突出させる研磨工程をさらに含んでいてもよい。圧縮ゴム層の研磨方法としては、慣用の方法を利用でき、例えば、ベルトを駆動プーリと従動プーリの間に懸架し、ベルトをベルト長手方向に所定の張力下で走行回転させながら、回転させた研磨具をベルトの側面に当接させて研磨する方法などが利用できる。研磨具としては、例えば、サンディングペーパーなどを用いることができる。研磨方法は、例えば、特開2008−44017号公報に記載された研磨方法であってもよい。研磨工程でも、研磨の際に発生する摩擦熱により、圧縮ゴム層内部に含まれる滑剤が摩擦伝動面にブルームするのを促進することができる。

[伝達効率] 本発明の圧縮ゴム層を備えた摩擦伝動ベルトを用いると、伝達効率を大きく向上できる。伝達効率とは、ベルトが駆動プーリからの回転トルクを従動プーリに伝える指標であり、この伝達効率が高いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れることを意味する。図7に示す駆動プーリ(Dr.)12と従動プーリ(Dn.)13との二つのプーリにベルト11を掛架した二軸レイアウトにおいて、伝達効率は以下のようにして求めることができる。

駆動プーリの回転数をρ1、プーリ半径をr1としたとき、駆動プーリの回転トルクT1は、ρ1×Te×r1で表すことができる。Teは張り側張力(ベルトが駆動プーリに向かう側の張力)から緩み側張力(ベルトが従動プーリに向かう側の張力)を差し引いた有効張力である。同様に、従動プーリの回転数をρ2、プーリ半径をr2としたとき、従動プーリの回転トルクT2は、ρ2×Te×r2で示される。そして、伝達効率T2/T1は、従動プーリの回転トルクT2を駆動プーリの回転トルクT1で除して算出され、次式で表すことができる。

T2/T1=(ρ2×Te×r2)/(ρ1×Te×r1)=(ρ2×r2)/(ρ1×r1)

なお、伝達効率の値は、伝動ロスがなければ1であり、伝動ロスがあればそのロス分だけ値が小さくなる。すなわち、1に近いほどベルトの伝動ロスが小さく、省燃費性に優れていることを表す。

以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において、実施例に用いた原料、各物性における測定方法又は評価方法を以下に示す。なお、特にことわりのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。

[原料] クロロプレンゴム:デンカ(株)製「デンカクロロプレンDCR」 アラミド短繊維:帝人テクノプロダクツ(株)製「コーネックス短繊維」、平均繊維長3mm、平均繊維径14μm ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス:日本ゼオン(株)製 ワックスA:精工化学(株)製「サンタイトC」、パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物、融点約50℃ ワックスB:精工化学(株)製「サンタイトR」、パラフィンとマイクロクリスタリンワックスとの混合物、融点約80℃ ワックスC:精工化学(株)製「サンタイトSW」、パラフィンとオレイン酸アマイドとの混合物、融点約120℃ 脂肪酸アマイド:日本化成(株)製「アマイドAP−1」、ステアリン酸アマイド、融点101℃ エーテルエステル系可塑剤:(株)ADEKA製「アデカサイザーRS−700」 グラファイト:オリエンタル産業(株)製「AT−20」 シリコーンオイル:東レ・ダウコーニング(株)製「SH200」 可塑剤:DIC(株)製、セバケート系オイル カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」 シリカ:東ソー・シリカ(株)製「Nipsil VN3」 老化防止剤:精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」 心線:1,000デニールのPET繊維を2×3の撚り構成で、上撚り係数3.0、下撚り係数3.0で諸撚りしたトータルデニール6,000のコードを接着処理した繊維。

[ベルト物性の測定] (1)摩擦係数測定 ベルトの摩擦係数は、図8に示すように、切断したベルト21の一方の端部をロードセル22に固定し、他方の端部に3kgfの荷重23を載せ、プーリ24へのベルトの巻き付け角度を45°にしてベルト21をプーリ24に巻き付けた。そして、ロードセル22側のベルト21を30mm/秒の速度で15秒程度引張り、摩擦伝動面の平均摩擦係数を測定した。なお、測定に際して、プーリ24は回転しないように固定した。表4及び5では、比較例1の摩擦係数を「100」とした場合に、各実施例及び比較例の摩擦係数を換算した相対値で示した。

(2)高負荷走行試験(伝達効率) この走行試験では、ベルトが大きく曲げられた状態(小プーリに巻き付いた状態)で走行させたときのベルトの伝達効率を評価した。

高負荷走行試験は、図9に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリ42と、直径125mmの従動(Dn.)プーリ43とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリ42,43にローエッジコグドVベルト41を掛架し、駆動プーリ42の回転数3000rpmで、従動プーリ43に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にてベルト41を走行させた。走行中のベルトの表面温度は最大90℃に達した。そして、走行させて直ちに従動プーリ43の回転数を検出器より読取り、前記計算式より伝達効率を求めた。表4及び5では、比較例1の伝達効率を「100」とした場合に、各実施例及び比較例の伝達効率を換算した相対値で示した。

(3)高速走行試験(伝達効率) この走行試験では、ベルトがプーリ上をプーリ半径方向外側に摺動させた状態で走行させたときのベルトの伝達効率を評価した。特に、駆動プーリの回転数が大きくなると、ベルトに遠心力が強く作用する。また、駆動プーリの緩み側(図10参照)の位置ではベルト張力が低く作用しており、上記遠心力との複合作用により、この位置でベルトはプーリ半径方向外側に飛び出そうとする。この飛び出しがスムーズに行なわれない、すなわちベルトの摩擦伝動面とプーリとの間に摩擦力が強く作用すると、その摩擦力によりベルトの伝動ロスが生じ、伝達効率が低下することになる。

高速走行試験は、図10に示すように、直径95mmの駆動(Dr.)プーリ52と、直径85mmの従動(Dn.)プーリ53とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリ52,53にローエッジコグドVベルト51を掛架し、駆動プーリ52の回転数5000rpm、従動プーリ53に3N・mの負荷を付与し、室温雰囲気下にてベルト51を走行させた。走行中のベルトの表面温度は最大60℃に達した。そして、走行させて直ちに従動プーリ53の回転数を検出器より読取り、前記計算式より伝達効率を求めた。表4及び5では、比較例1の伝達効率を「100」とした場合に、各実施例及び比較例の伝達効率を換算した相対値で示した。

なお、前記伝達効率試験については、(2)高負荷走行試験及び(3)高速走行試験の結果を総合して、以下の基準で評価した。

◎:高負荷条件、高速条件ともに100以上、かついずれかが102超 ○:高負荷条件、高速条件ともに100以上102以下 ×:高負荷条件、高速条件のいずれかが100未満。

(4)耐久走行試験(耐側圧性) 耐久走行試験は、図11に示すように、直径50mmの駆動(Dr.)プーリ62と、直径125mmの従動(Dn.)プーリ63とからなる2軸走行試験機を用いて行なった。各プーリ62,63にローエッジコグドVベルト61を掛架し、駆動プーリ62の回転数5000rpm、従動プーリ63に10N・mの負荷を付与し、雰囲気温度80℃にてベルト61を最大40時間走行させた。走行中のベルト表面温度は最大120℃に達した。走行後のローエッジコグドVベルト61のコグ部の側面を目視で観察し、コグ部100個あたりの短繊維を起点とするクラックが発生したコグ部の個数からクラック発生割合を算出し、以下の基準で評価した。

◎:クラック発生が0% ○:クラック発生が0超〜10%未満 ×:クラック発生が10%以上。

実施例1〜11及び比較例1〜7 (ゴム層の形成) 表1〜2(圧縮ゴム層、伸張ゴム層)及び表3(接着ゴム層)のゴム組成物は、それぞれ、バンバリーミキサーなどの公知の方法を用いてゴム練りを行い、この練りゴムをカレンダーロールに通して圧延ゴムシート(圧縮ゴム層用シート、伸張ゴム層用シート、接着ゴム層用シート)を作製した。なお、短繊維は、RFL液(レゾルシン及びホルムアルデヒドと、ラテックスとしてのビニルピリジン−スチレン−ブタジエンゴムラテックスとを含有)で接着処理し、固形分の付着率6質量%の短繊維を用いた。RFL液として、レゾルシン2.6質量部、37%ホルマリン1.4質量部、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス17.2質量部、水78.8質量部を用いた。

(ベルトの製造) 補強布と、圧縮ゴム層用シート(未加硫ゴム)との積層体を、補強布を下にして歯部と溝部とを交互に配した平坦なコグ付き型に設置し、75℃でプレス加圧することによってコグ部を型付けしたコグパッド(完全には加硫しておらず、半加硫状態にある)を作製した。次に、このコグパッドの両端をコグ山部の頂部から垂直に切断した。

円筒状の金型に歯部と溝部とを交互に配した内母型を被せ、この歯部と溝部に係合させてコグパッドを巻き付けてコグ山部の頂部でジョイントし、この巻き付けたコグパッドの上に接着ゴム層用シート(下接着ゴム:未加硫ゴム)を積層した後、心線を螺旋状にスピニングし、この上に接着ゴム層用シート(上接着ゴム:前記接着ゴム層用シートと同じ)、伸張ゴム層用シート(未加硫ゴム)、補強布(上布)を順次巻き付けて成形体を作製した。その後、ジャケットを被せて金型を加硫缶に設置し、温度160℃、時間20分で加硫してベルトスリーブを得た。このスリーブをカッターでV字状断面形状になるように切断し、さらにベルト両側面を研磨し、図2に示す構造のベルト、すなわちベルト内周側にコグを有する変速ベルトであるローエッジコグドVベルト(サイズ:上幅22.0mm、厚み11.0mm、外周長800mm)を作製した。なお、実施例で得られたベルトにおいて、研磨後の圧縮ゴム層表面(摩擦伝動面)には滑剤層が形成されており、滑材層の表面から平均高さ60μmで短繊維が突出していた。さらに、実施例4の圧縮ゴム層表面の電子顕微鏡写真を図12に示す。図面の白い部分が短繊維であり、黒い部分が滑剤である。

実施例及び比較例で得られたベルトの評価結果を表4及び5に示す。

表4及び5の結果から明らかなように、比較例2及び3は、ワックスを添加せず、短繊維の配合量を比較例1より増やした例である。短繊維量が増えるほど、摩擦係数が低下し、伝達効率(省燃費性)は向上したが、耐久性試験において、クラックの発生割合が増加した。

比較例4〜7は、ワックスを含まず、脂肪酸アマイド(比較例4)、エーテルエステル系可塑剤(比較例5)、グラファイト(比較例6)、シリコーンオイル(比較例7)を使用したが、摩擦係数は比較例1からあまり低下せず、伝達効率も向上しなかった。また、比較例5〜7はクラックの発生割合がやや増加した。

ワックスを添加した実施例1〜11は、比較例1より摩擦係数が低下し、伝達効率が向上した。また、実施例1、5及び10を除くとクラックが発生せず、耐久性に優れていた。なお、ワックスを10質量部配合した実施例5と、短繊維を20質量部配合した実施例10は、クラックが若干発生したものの、短繊維量のみを増量した比較例2、3に比べるとクラックの発生割合が大幅に減少した。

実施例1〜5は、比較例1にワックスA(融点約50℃)を配合した例であり、配合量が増えるほど比較例1よりも高速条件(ベルト表面温度最大60℃)での伝達効率が向上した。一方、高負荷条件(最大90℃)の伝達効率は、ワックスAの配合量を増やした実施例3〜5では比較例1より低下した。ワックスAの融点(約50℃)より、ベルト表面温度が最大90℃と高くなるため、摩擦伝動面に析出したワックスが溶解し、潤滑効果が低下したためと考えられる。

融点が高いワックスC(融点約120℃)を6質量部配合した実施例9は、融点が低いワックスA(融点約50℃)を同じく6質量部配合した実施例4と比べると、高負荷条件(最大90℃)の伝達効率が高く、高速条件(ベルト表面温度最大60℃)の伝達効率は低かった。高速条件で伝達効率が低かった理由として、ベルト表面温度よりワックスの融点が60℃程度も高く、摩擦伝動面にブルームし難かったためと考えられる。

特に、実施例の中では、融点の異なるワックスを併用した実施例6〜8が、高負荷条件(最大90℃)、高速条件(最大60℃)ともに伝達効率が良く、クラック発生も無い点で、伝達効率と耐久性のバランスが取れていた。

実施例10は、ワックスA、B、Cを各2質量部配合した点では実施例8と同じで、伝達効率が良いが、短繊維の量が実施例8より多いためか、クラック発生割合がやや増加した。

実施例11は滑剤としてワックスと脂肪酸アマイドを併用した例である。脂肪酸アマイドのみを配合した比較例4では耐久性が不足し、ワックスのみを配合した実施例3では高負荷条件での伝達効率が若干低かったのに対して、ワックスと脂肪酸アマイドを併用した実施例11では伝達効率及び耐久性が共に◎の判定であり、これらの滑剤を組み合わせることで顕著な効果が得られた。また、実施例9で用いたワックスCはパラフィンとオレイン酸アマイドの混合物であり、別途脂肪酸アマイドを加えることなく、伝達効率と耐久性が両立できた。

本発明の摩擦伝動ベルトは、例えば、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト、ローエッジコグドVベルト)、Vリブドベルト、平ベルトなどに適用できる。特に、ベルト走行中に変速比が無段階で変わる変速機(無段変速装置)に使用されるVベルト(変速ベルト)、例えば、自動二輪車やATV(四輪バギー)、スノーモービルなどの無段変速装置に使用されるローエッジコグドVベルト、ローエッジダブルコグドVベルトに適用するのが好ましい。

1…摩擦伝動ベルト 2,6…補強布 3…伸張ゴム層 4…接着ゴム層 4a…芯体 5…圧縮ゴム層 7…短繊維 8…滑剤

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