本発明は、皮膚洗浄料に関し、詳しくはベースの水なじみが良く、泡立ち、泡質が良好であり、すすぎ時のぬるつき、洗浄後のべたつきがなく、適度なしっとり感を有する皮膚洗浄料に関する。

従来、皮膚洗浄料として最も広く普及しているものとしては固形石鹸があるが、顔面を洗浄するものとしてはクリーム状洗浄料が一般的である。クリーム状洗浄料には脂肪酸石鹸を使用することが多い。脂肪酸石鹸とは高級脂肪酸を塩基で中和することで得られる脂肪酸塩である。脂肪酸石鹸は洗浄力、起泡性、水への溶解性、使用後のさっぱり感等に優れる一方で、脱脂性が強く使用後に肌につっぱりを感じる、皮膚刺激性が強い等の問題がある。

洗浄性を向上したり、皮膚刺激を低減したりする目的で、これらの脂肪酸石鹸にヤシ油脂肪酸メチルタウリン塩などのタウリン系界面活性剤、ラウロイルサルコシン塩などのアシルアミノ酸系界面活性剤などの陰イオン性界面活性剤やラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン系界面活性剤などの両性界面活性剤などを含有することも多い。また、保湿性の向上や皮膚刺激の低減を目的に、グリセリンなどの多価アルコールを含有することも一般的である。

起泡性が高く、きめ細かい良質な泡の洗浄料を得る手段として、水溶性高分子であるポリグルタミン酸を含有した皮膚洗浄料(特許文献1)や、カチオン化高分子を含有した皮膚洗浄料(特許文献2)などがある。またシリコーン類や炭化水素類などを含有する皮膚洗浄料(特許文献3)が知られている。

最近では、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含有することで泡質が改善された皮膚洗浄料(特許文献4、特許文献5)が報告されているが、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含有する皮膚洗浄料は水になじみにくい特徴を有する。また、ショ糖脂肪酸エステルを含有することで起泡性を高めた皮膚洗浄料(特許文献6)が報告されているが、ショ糖脂肪酸エステルを含有する皮膚洗浄料は、すすぎ時のぬるつきや洗浄後のべたつきが気になる傾向があった。

特開2011−26242

特開2008−179583

特開2006−257128

特開2013−163659

特開2014−125434

特開2013−170183

本発明の目的は、ベースの水なじみが良く、泡立ち、泡質が良好であり、すすぎ時のぬるつき、洗浄後のべたつきがなく、適度なしっとり感を有する皮膚洗浄料を提供することを課題とする。

即ち、本発明は、(A)炭素数が12〜18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステル、(B)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸、(C)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体を含有する皮膚洗浄料を提供する。

また、本発明は、(D)多価アルコールを含有することを特徴とする皮膚洗浄料を提供する。

また、本発明は、(E)炭素数12〜18の脂肪酸石鹸を含有することを特徴とする皮膚洗浄料を提供する。

また、本発明は、(F)アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を含有することを特徴とする皮膚洗浄料を提供する。

本発明の皮膚洗浄料は、ベースの水なじみが良く、泡立ち、泡質が良好であり、すすぎ時のぬるつき、洗浄後のべたつきがなく、適度なしっとり感を有する皮膚洗浄料である。

本発明の(A)炭素数が12〜18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、パルミチン酸スクロース及びステアリン酸スクロースがある。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。起泡力の観点から、ラウリン酸スクロースが好ましい。

(A)炭素数が12〜18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルの含有量は、皮膚洗浄料に対して、0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.01〜3.0重量%である。0.01重量%未満であると、本発明の課題である良好な泡立ちが得られない場合がある。一方、5.0重量%を超えると、洗浄料が硬くなり水に溶解しにくくなる場合がある。

本発明の(B)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸は、ヒドロキシプロピル変性デンプンがリン酸によって架橋された高分子化合物である。官能基、架橋基を有するため安定性に優れており、洗浄料の泡質、泡持ちを改善することが可能である。ヒドロキシプロピルデンプンリン酸は、市販品を使用することができ、例えばSTRUCTURE XL(アクゾノーベル社製)が挙げられる。

(B)ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量は、皮膚洗浄料に対して0.1〜5.0重量%であり、好ましくは0.1〜4.0重量%である。この範囲内であれば、泡質及び泡持ちが良好な皮膚洗浄料を得ることが可能である。

本発明の(C)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体は、細胞膜を構成するホスファチジルコリンの極性基と同一の構造をもつ2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成単位とする非水溶性ポリマーである。皮膚上でラメラ層を形成することで外的刺激から皮膚を保護する特徴を持ち、べたつきのないしっとりした感触を付与することができる。市販のものでは、例えばLipidure−NR、Lipidure−NA(日油社製)を用いることができる。

(C)2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体の含有量は、0.02〜3.0重量%であり、好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.02重量%未満の場合、洗浄後のしっとり感が得られない可能性がある。一方、3.0重量%を超えると、すすぎ時のぬるつきや洗浄後のべたつきが生じる場合がある。

本発明の(D)多価アルコールは、特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、3−メチル−1,3ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。

上記の(D)多価アルコールのうち、グリセリン、ジグリセリン及びポリエチレングリコールを用いることが特に好ましい。

また(D)多価アルコールの含有量は、皮膚洗浄料に対して5〜30重量%であることが好ましい。これらの条件を満たす場合、良好な泡立ち、泡質を持ち適度な硬度の皮膚洗浄料を得ることが可能である。

本発明における脂肪酸石鹸とは高級脂肪酸の一部又は全部を塩基で中和したものをいう。脂肪酸を中和する塩基としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。取り扱いの簡便性から特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。

本発明の(E)炭素数12〜18の脂肪酸石鹸を構成する脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸などが挙げられる。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。

上記の脂肪酸のうち、泡立ちの速さ、泡の量、泡質の観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸が特に好ましい。

脂肪酸石鹸の含有量は、皮膚洗浄料に対して10〜50重量%であり、好ましくは15〜45重量%である。10重量%未満であると、十分な洗浄力や良好な泡立ち、泡質が得られない場合がある。一方、50重量%を超えると、使用性および安定性が悪くなる場合がある

(F)アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルメチルアミノ酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンマグネシウム、ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、N−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(12,13)エーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。

(F)両性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えばラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ステアリルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ラウロイル−N’−カルボキシメチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、ヒドロキシアルキル(C12−14)ヒドロキシエチルサルコシン等が挙げられる。これらの成分は、単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。

アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の合計の含有量は、皮膚洗浄料に対して1〜20重量%である。好ましくは5〜15重量%である。この範囲内であれば、刺激性が比較的少なく良好な泡立ち、泡質の皮膚洗浄料を得ることができる。

本発明の皮膚洗浄料は、液状、ペースト状、クリーム状等の如何なる剤型であっても限定されない。また用途に関しては、洗顔料、クレンジング、ボディーシャンプー、ハンドソープなどの洗浄料として使用することができる。洗浄力、泡性能、使用感の観点から、洗顔料及びボディーシャンプーとしての用途が好ましい。

以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれらに限定されるものではない。なお、含有量については、他に指定のない限り重量%で表す。

表1〜3に示す洗顔料を以下に示す方法により調製した。 (調製方法) 成分a部を70〜75℃で加温し、撹拌しながら成分b部の混合物を成分a部に少しずつ加えて鹸化し、その後成分c部を加え、30℃まで冷却し調製した。

(評価方法) 20名の専門パネルにより、各洗顔料を使用し、「洗顔料の水なじみ」、「使用時の泡立ち」、「使用時の泡質」、「すすぎ時のぬるつきの無さ」、「洗い上がりのべたつき及びしっとり感」について評価を行った。尚、評価基準は以下の通りである。 [水なじみの評価] ◎:16名以上が、水なじみが良いと評価した。 ○:11〜15名が、水なじみが良いと評価した。 △:6〜10名が、水なじみが良いと評価した。 ×:水なじみが良いと評価した人が、5名以下。 [使用時の泡立ちの評価] ◎:16名以上が、泡立ちが良いと評価した。 ○:11〜15名が、泡立ちが良いと評価した。 △:6〜10名が、泡立ちが良いと評価した。 ×:泡立ちが良いと評価した人が、5名以下。 [使用時の泡質の評価] ◎:16名以上が、きめ細やかな泡を形成していると評価した。 ○:11〜15名が、きめ細やかな泡を形成していると評価した。 △:6〜10名が、きめ細やかな泡を形成していると評価した。 ×:きめ細やかな泡を形成していると評価した人が、5名以下。 [すすぎ時のぬるつきの無さの評価] ◎:16名以上が、すすぎ時にぬるつきが無いと評価した。 ○:11〜15名が、すすぎ時にぬるつきが無いと評価した。 △:6〜10名が、すすぎ時にぬるつきが無いと評価した。 ×:すすぎ時にぬるつきが無いと評価した人が、5名以下。 [洗い上がりのべたつきの無さ及びしっとり感の評価] ◎:16名以上が、洗い上がりにべたつきが無くしっとり感を感じると評価した。 ○:11〜15名が、洗い上がりにべたつきが無くしっとり感を感じると評価した。 △:6〜10名が、洗い上がりにべたつきが無くしっとり感を感じると評価した。 ×:洗い上がりにべたつきが無くしっとり感を感じると評価した人が、5名以下。

表1の結果より、各実施例に示した量のラウリン酸スクロース、ステアリン酸スクロースを含有した場合、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。一方、比較例1に示したように、炭素数が12〜18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルの代わりにオレイン酸スクロースを用いた場合、あるいは比較例2〜5に示したように炭素数が12〜18の直鎖飽和脂肪酸から構成されるショ糖脂肪酸エステルの含有量が所定量よりも少ない場合又は多い場合は、泡立ちについて満足する結果が得られなかった。

表2の結果より、各実施例に示した量のヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含有した場合は、評価した全ての項目において満足する結果が得られた。一方、比較例6に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量が所定量よりも少ない場合や、比較例8〜10に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸を含有しない場合は、泡質、すすぎ時のぬるつきの無さの項目で満足な結果が得られなかった。また、比較例7に示したように、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸の含有量が所定量よりも多い場合は、水なじみや泡立ちの項目で評価が悪かった。

表3の結果より、各実施例に示した量の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体を用いた場合、洗い上がりのしっとり感の項目で満足する結果が得られた。一方で比較例11〜12に示したように、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体の含有量が所定量よりも少ない場合又は多い場合、比較例13〜15に示したように、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重合体を含有しない場合は、しっとり感について満足する結果が得られなかった。

以下に、本発明に係る皮膚洗浄料の処方例を示す。

(処方例1;洗顔料) (成分) (重量%) 1.ラウリン酸 5.0 2.ミリスチン酸 20.0 3.パルミチン酸 10.0 4.ポリエチレングリコール1500 3.0 5.グリセリン 12.0 6.ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 4.0 7.ラウリン酸スクロース 0.01 8.ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム 3.0 9.ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5.0 10.ポリリン酸ナトリウム 0.1 11.精製水 残 余 12.水酸化カリウム 7.5 13.2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重 合体 0.5 14.植物抽出エキス 適 量 15.香料 適 量 (調製方法) 成分1〜10を70〜75℃で加温し、撹拌しながら成分11,12の混合物を成分1〜10に少しずつ加えて鹸化し、その後成分13〜15を加え、30℃まで冷却する。

(処方例2;ボディーシャンプー) (成分) (重量%) 1.ラウリン酸 2.0 2.ミリスチン酸 2.0 3.ジグリセリン 3.0 4.グリセリン 12.0 5.ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 1.0 6.パルミチン酸スクロース 1.0 7.ヤシ油脂肪酸エチルエステルスルホン酸ナトリウム 1.0 8.ラウリン酸アミドプロピルベタイン 5.0 9.エデト酸四ナトリウム四水塩 0.1 10.精製水 残 余 11.水酸化カリウム 1.25 12.2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重 合体 1.0 13.植物抽出エキス 適 量 14.香料 適 量 (調製方法) 成分1〜9を70〜75℃で加温し、撹拌しながら成分10,11の混合物を成分1〜9に少しずつ加えて鹸化し、その後成分12〜14を加え、30℃まで冷却する。

(処方例3;ハンドソープ) (成分) (重量%) 1.ラウリン酸 3.0 2.パルミチン酸 1.0 3.プロピレングリコール 5.0 4.グリセリン 5.0 5.ヒドロキシプロピルデンプンリン酸 0.1 6.ミリスチン酸スクロース 3.0 7.ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム 1.0 8.ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5.0 9.エデト酸四ナトリウム四水塩 0.1 10.精製水 残 余 11.水酸化カリウム 1.25 12.2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリル共重 合体 0.1 13.植物抽出エキス 適 量 14.香料 適 量 (調製方法) 成分1〜9を70〜75℃で加温し、撹拌しながら成分10,11の混合物を成分1〜9に少しずつ加えて鹸化し、その後成分12〜14を加え、30℃まで冷却する。

本発明によれば、皮膚洗浄料に関し、詳しくはベースの水なじみが良く、泡立ち、泡質が良好であり、すすぎ時のぬるつき、洗浄後のべたつきがなく、適度なしっとり感を有する皮膚洗浄料を提供できる。