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Method of separating a chroman compounds as well as chiral isomer of the derivative and precursor

申请号 JP2014509706 申请日 2012-05-08 公开(公告)号 JP2014520074A 公开(公告)日 2014-08-21
申请人 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.; 发明人 ゲルハルト シーファー,; トーマス ネッチェル,; アレクサンダー ルチア レオナルドゥス デュシャトー,;
摘要 本発明は、クロマン化合物、特にトコフェロール及びトコトリエノール並びにそれらのエステル及び中間体の、キラル異性体を分離する方法に関する。 本方法は、所望の異性体のより高い収率での分離を可能にし、かつ非常に効率的なやり方で非所望の異性体の使用を可能にすることが見出された。 前記方法は、工業プロセスにおいて実施される場合に特に有用である。 更に、本方法は、従来の工業的合成から生じる異性体混合物を使用することを可能にすることが見出された。
权利要求
  • 式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体


    [式中、R 、R 及びR は、互いに独立して、水素またはメチル基であり、
    は、水素またはフェノール保護基を表し、
    は、完全に飽和した直鎖もしくは分岐のC 6〜25 −アルキル基か、または少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖もしくは分岐のC 8〜25 −アルキル基を表し、
    そして式中、 は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記キラル異性体のキラル中心を表す]
    を分離する方法であって、
    a)式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物を供給する工程と、
    b)所望の異性体(I)と残りの部分(I')とへの、キラル相による、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体の前記混合物のクロマトグラフィー分離の工程と、
    c)工程b)で分離される前記残りの部分(I')の前記異性体の、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中の で示された前記中心におけるキラリティーを異性化する工程と、
    d)工程c)で得られた異性化した異性体を、更なる分離の対象である式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物に添加する工程と、
    e)前記所望の異性体(I)を回収する工程とを含む、方法。
  • 工程c)における前記異性化が、150℃より高い、特に160〜500℃の間、好ましくは160〜300℃の間の温度への、前記残りの部分(I')の曝露により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  • 工程c)における前記異性化が、2より小さい、特に1より小さいpK の酸への、前記残りの部分(I')の曝露により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  • 2より小さいpK を有する前記酸が、p−トルエンスルホン酸であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
  • 工程c)における前記異性化が、対応する酸が13より大きいpK を有する塩基への、前記残りの部分(I')の曝露により行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  • 前記方法が連続法であること、特に、前記更なる分離の対象である式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物が、工程a)の前記式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
  • が、式(II)


    のものであることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の方法であって、
    式中、m及びpは、互いに独立して、0〜5の値を表し、但し、mとpとの合計は1〜5であり、
    そして、s1及びs2で表される式(II)中の部分構造は、任意の配列であることができ、
    そして、点線は、式(II)の置換基を式(I−A)または(I−B)または(I−C)の残部に結合している結合を表す、
    方法。
  • =R =R =CH
    またはR =R =CH 、R =H
    またはR =H、R =R =CH
    またはR =R =H、R =CH
    であることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
  • がHであることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
  • 式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記所望のキラル異性体が、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中の の付いた炭素においてR配置を有することを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
  • 式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記所望のキラル異性体が、トコトリエノールの異性体、特に(2R)−トコトリエノール、好ましくは(2R)−α−トコトリエノール、またはその酢酸エステルであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
  • 式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記所望のキラル異性体が、異性体(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールまたは異性体(2R,4'R,8'R)−α−トコフェリルアセテートであることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法。
  • 前記所望のキラル異性体が、工程b)の前または工程e)の後の何れかに行われるキラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化の工程によりトコトリエノールまたはトコトリエニルアセテートからそれぞれ得られたトコフェロールまたはトコフェリルアセテートであることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
  • 前記キラル相が、セルロース、アミロース、デキストラン及びシクロデキストリン及びそれらの誘導体からなる群のキラル相であることを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
  • 前記キラルクロマトグラフィー分離が、擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーを用いることを特徴とする、請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
  • 工程b)における前記クロマトグラフィー分離が、少なくとも1種のアルコールの存在下、特に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert. −ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール及びアリルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコール、好ましくは1−プロパノールの存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜15の何れか一項に記載の方法。
  • 工程b)における前記クロマトグラフィー分離が、6.0未満、特に3.0〜6.0の間のpK を有する少なくとも1種の有機酸(S1)、好ましくは酢酸の存在下で行われることを特徴とする、請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
  • 請求項1〜17の何れか一項により分離される式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記所望のキラル異性体を含む、食料または飼料または飲料。
  • 請求項1〜17の何れか一項により分離される式(I−A)または(I−B)または(I−C)の前記所望のキラル異性体を含む、薬学的組成物。
  • 说明书全文

    発明の詳細な説明

    [技術分野]
    本発明は、キラル異性体を互いに分離する分野に関する。 詳細には、本発明は、クロマン化合物、特にトコフェロール及びトコトリエノール並びにそれらのエステル及び中間体の、キラル異性体の分離の分野に関する。

    [発明の背景]
    分子中のキラル中心の存在は、多くの場合、異なるキラル異性体をもたらす。 分子中のキラル中心の数が多ければ多いほど、異なる異性体の数は多くなる。 そのようなキラル分子の合成においては、通常、キラル異性体の混合物が形成される。 しかしながら、キラル化合物を、例えばそれらは異なる特性を有しているので、互いに分離することが望ましいことが非常に多い。

    クロマン化合物は、キラル天然物及び生物活性化合物の重要なクラスを代表する。 クロマン化合物の1つの重要なクラスは、ビタミンE及びそのエステルである。 多くの場合、ビタミンEは、そのエステルの形態で商品化されており、というのは、後者は向上した安定性を示すからである。

    一方において、ビタミンEの典型的な技術的合成は、異性体の混合物をもたらす。 また他方において、分子の環中のエーテル原子の隣に位置しているキラル中心(本書面において後で用いられる式の中でで示される)においてR配置(即ち、2R配置)を有するトコフェロール及びトコトリエノールによって、S配置を有する対応する異性体と比較して、概してより高い対生物活性(生物作用能)が生ずることが示されている。 特に活性があるのは、例えばH. Weiser et al. によりJ. Nutr. 1996,126(10),2539−49において開示されているように、全てのキラル中心において天然配置を有するトコフェロールの異性体(例えば、(R,R,R)−トコフェロール)である。 このことは、異性体を分離するための効率的な方法に対する強い欲求に繋がる。 従って、ビタミンEの、またそれのみならずそのエステルの、特にその酢酸エステルの、及びその前駆体の、異性体分離に主要な関心がある。

    S. K. JensenによりVitamins and Hormones 2007,Vol. 76,281−308において開示されているように、キラル化合物のクロマトグラフィー分離は、特定のキラル異性体の分離のための適切な方法であることが分かっている。 工業的クロマトグラフィー分離プロセスに特に適しているのは、擬似移動床(Simulated Moving Bed:SMB)クロマトグラフィーであり、というのはこれは、分離効率の向上及び分離に必要な溶離剤の量の低減に繋がるからである。

    キラル異性体の一部のみが所望の配置を有しているので、いずれの公知の分離方法も、本来的に、所望の異性体を少量しかもたらさない。 所望の異性体のこの量は、キラル中心の数が増加するにつれて少なくなる。 説明のために、以下のことが述べられる:各キラル中心における統計的分布を仮定するならば、所望の異性体の量は、1個のキラル中心の場合は50%、2個のキラル中心の場合は25%、3個のキラル中心の場合は12.5%である。 所望の異性体のみが標的分子であるので、合成された生成物の大半、即ち非所望の異性体は、典型的には、処理または廃棄されることになり、これは非常に高くつく。

    こうした固有の問題を克服するために、所望の異性体のみの選択的形成を可能にする立体特異的合成を提供することが試みられてきた。 しかしながら、こうした方法は、異性体混合物をもたらす従来の工業的合成と比較して、非常に費用がかかり、複雑で、かつ/または珍しい。

    [発明の概要]
    従って、本発明が解決しようとする課題は、クロマン化合物のキラル異性体、特にトコフェロール及びトコトリエノール並びにそれらのエステル及び中間体のキラル異性体を、所望の異性体についてより高い収率で分離する方法であって、従来の合成方法により調製される異性体混合物の使用を可能にするであろう方法を提供することである。

    驚くべきことに、請求項1に記載の方法が、この課題を解決できることが見出された。 この方法は、クロマトグラフィー分離を調整することと非所望の異性体の異性化とによって、主として所望の異性体の任意のものについて収率を最適化することを可能にする。

    工業生産における本方法の実施においては非所望の異性体が異性化され、従って部分的に所望の異性体に変換されるので、立体特異的な合成経路を採用する必要なしに、異性体の混合物からの所望の異性体についてのほぼ100%の収率を可能にする方法が、今回提供され得る。 本発明の方法が容易であり、かつ特定の必要に適合され得ることが示された。

    更には、少量のアルコール及び/または6.0未満のpK を有する有機酸(S1)が添加された主として炭化素からなる溶離剤が使用される場合に、キラル相による特に良好な分離が得られることも見出された。

    本発明の更なる態様は、更なる独立請求項の主題である。 特に好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。

    図1は、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール(R

    =H)または(2R,4'R,8'R)−トコフェリルアセテート(R

    =COCH

    )を生成する好ましい実施形態を、それぞれ概略的に示している。

    図2は、種々の実行可能な事柄を概略的に示している。

    図3は、キラル相が所望の異性体(I)(本図においてはR−異性体)を第1の溶出成分として完全に分離する場合を、概略的なクロマトグラムで示している。

    図4は、キラル相が所望の異性体(I)(本図においてはR−異性体)を部分的にしか分離しない場合を、同様に概略的なクロマトグラムによって示している。

    図5は、図4の例において溶出液(実線)が二重線で示された保持時間まで回収され、残りの部分(I')が100%のS−異性体と約85%の所望のR−異性体とを含む場合を、残りの部分(I')及びその異性体R(点線)またはS(破線)の概略的なクロマトグラムによって示している。

    図6は、R配置にある分子の数とS配置にある分子の数との比が工程c)における異性化後に50:50となる最適な場合を、概略的なクロマトグラムによって示している。

    図7は、更なる分離の対象である式(I−A)の異性体の混合物が貯蔵される場合の実施形態についての概念図を示している。

    図8は、工程c)において得られた異性化した異性体が、工程a)における式(I−A)の異性体の流れに添加される場合を、概略的に示している。

    図9は、複数の分離カラムまたは複数のSMBユニット1を用いたプロセスの概念図を示している。

    図10b)は、実施例1において調製された6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,5,11−トリエニル)クロマン−4−オンをHPLCにより分析した際のクロマトグラムを示し、図10a)は、これの調製用HPLC分離のクロマトグラムを示し、図10c)または図10d)は、それぞれ回収された第1の画分または第2の画分のクロマトグラムを示している。

    図11b)は、実施例2において(全−rac)−α−トコフェロール(DSM Nutritional Products)をHPLCにより分析した際のクロマトグラムを示し、図11a)は、これの調製用HPLC分離のクロマトグラムを示し、図11c)または図11d)は、それぞれ回収された第1の画分または第2の画分のクロマトグラムを示している。

    図12b)は、実施例3において2−ambo−α−トコフェロールをHPLCにより分析した際のクロマトグラムを示し、図12a)は、これの調製用HPLC分離のクロマトグラムを示し、図12c)または図12d)は、それぞれ回収された第1の画分または第2の画分のクロマトグラムを示している。

    図13は、実施例7の異性化生成物のクロマトグラムを示している。

    図14は、実施例9の異性化生成物のクロマトグラムを示している。

    図15は、溶離剤中に異なるアルコールを用いた異性体の分離を示している。

    図15は、溶離剤中に異なるアルコールを用いた異性体の分離を示している。

    図15は、溶離剤中に異なるアルコールを用いた異性体の分離を示している。

    図16は、溶離剤中の6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)の有益な効果を示している。

    図16は、溶離剤中の6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)の有益な効果を示している。

    図16は、溶離剤中の6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)の有益な効果を示している。

    図16は、溶離剤中の6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)の有益な効果を示している。

    図17は、負荷能に対する、溶離剤中のアルコールと6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)との組み合わせの有益な効果を示している。

    図17は、負荷能力に対する、溶離剤中のアルコールと6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)との組み合わせの有益な効果を示している。

    図17は、負荷能力に対する、溶離剤中のアルコールと6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)との組み合わせの有益な効果を示している。 。

    図17は、負荷能力に対する、溶離剤中のアルコールと6.0未満のpK

    を有する有機酸(S1)との組み合わせの有益な効果を示している。

    [発明の詳細な説明]
    第1の態様において、本発明は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体



    [式中、R

    、R

    及びR

    は、互いに独立して、水素またはメチル基であり、


    は、水素またはフェノール保護基を表し、


    は、完全に飽和した直鎖もしくは分岐のC

    6〜25 −アルキル基か、または少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む直鎖もしくは分岐のC

    8〜25 −アルキル基を表し、


    そして式中、

    は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体のキラル中心を表す]


    を分離する方法であって、


    a)式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物を供給する工程と、


    b)所望の異性体(I)と残りの部分(I')とへの、キラル相による、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体の混合物のクロマトグラフィー分離の工程と、


    c)工程b)で分離される残りの部分(I')の異性体の、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中の

    で示された中心におけるキラリティーを異性化する工程と、


    d)工程c)で得られた異性化した異性体を、更なる分離の対象である式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物に添加する工程と、


    e)所望の異性体(I)を回収する工程とを含む、方法に関する。

    用語「ビタミンE」は、α−トコフェロールの生物学的活性を定性的に示す全てのトコール誘導体及びトコトリエノール誘導体に対する包括的な記述語として、本書面において使用される(IUPAC−IUB Recommendation 1981、Eur.J.Biochem.123,473−475(1982))。

    用語「(全−rac)−α−トコフェロール」は、(2RS,4'RS,8'RS)−α−トコフェロール、即ち、全てのキラル中心(2、4'及び8')において混合配置を有するα−トコフェロールを特定するものである。

    本書面における用語「互いに独立して」とは、置換基、部分または基の文脈において、同様に示された置換基、部分または基が、同じ分子内において異なる意味を持って同時に存在し得ることを意味している。

    本書面においては、点線はいずれも、置換基を分子の残部に結合している結合を表す。

    「C x〜y −アルキル」基、「C x〜y −アシル」基は、それぞれ、x〜y個の炭素原子を含むアルキル基、アシル基である。

    用語「アルキル基」は、本書面において、C及びHからなる全飽和の(即ち完全に飽和した)置換基だけに限定されるのではなく、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するC及びHからなるかかる置換基をも含むというように理解されるべきである。 従って、例えば−CH −CH −CH −CH −CH(CH )−CH 及び−CH −CH=CH−CH −CH(CH )−CH は、両方ともC −アルキル基と見なされる。

    用語「実質的に」は、例えば、95%より多く、特に98%より多く、好ましくは99%より多くの量を示すために本書面において使用される。

    「pK 」は、酸解離定数の負の10進法対数(pK =−log 10 )として一般に知られている。 有機酸が数個のプロトンを有する場合、pK は、第1のプロトンの解離(K a1 )に関する。 示されるpK 値は、室温におけるものである。 当業者は、特定の酸の酸性度が、適切な溶媒中で測定され、個々の測定法によって、またはpK の測定が異なる溶媒中で測定されたという事実に起因して異なり得、従って異なるpK 値が、ある特定の酸について見出され得るということを理解している。 従って、ある酸について異なるpK 値が文献において見出され得、そのうちの少なくとも1つは本書面で示されるpK 範囲の中にあるが、他の値は前記範囲の外にあるのが見出されるという、臨界的な場合において、そのような酸は、そのpK 値の範囲内にあるものと見なされると定義される。

    本書面において、用語「異性化した(isomerized)」または「異性化(isomerization)」または「異性化する(isomerizing)」は、キラリティーの変更に関する。 従って、別の原子連結(connectivity of atoms)をもたらす構造異性化は、この用語によって意味されない。 更に、本書面については、この用語は、シス/トランス異性化も除外する。

    当該方法は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体の分離を可能にする。 詳細には、この分離は、キラル中心(1つまたは複数)において異なる配置を有しているが、同じ化学構造(即ち同じ原子連結)を有しているキラル異性体の分離に関する。

    残基R は、長鎖残基を表し、特に、問題になっている分子の疎水性挙動に係わっている。

    好ましくは、基R は、式(II)



    のものである。

    式(II)中、m及びpは、互いに独立して、0〜5の値を表し、但し、mとpとの合計は1〜5である。 更に、s1及びs2で表される式(II)中の部分構造は、任意の配列であることができる。 点線は、式(II)の置換基を式(I−A)または(I−B)または(I−C)の残部に結合している結合を表す。

    1つの好ましい実施形態において、mは3を表し、pは0を表す。

    別の好ましい実施形態において、pは3を表し、mは0を表す。

    別の好ましい実施形態において、m=1及びp=0である。 特に好ましくは、コルジアクロメン(2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)−2H−クロメン−6−オール)であり、これは、非常に特異的な生物学的活性(例えば、抗炎症活性)を示す公知の化合物である。

    従って、R は、好ましくは、式(II−A)、特に(II−ARR)、または(II−B)のものである。


    好ましくは、以下の組み合わせのR 、R 及びR である。
    =R =R =CH
    またはR =R =CH 、R =H
    またはR =H、R =R =CH
    またはR =R =H、R =CH

    1つの実施形態において、式(I−B)のキラル異性体は、コルジアクロメン(2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)−2H−クロメン−6−オール)の異性体である。

    最も好ましくは、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体は、
    ・α−トコフェロール(R =R =R =CH 、R =(II−A)、特に(II−ARR)、R =H)、
    ・β−トコフェロール(R =R =CH 、R =H、R =(II−A)、特に(II−ARR)、R =H)、
    ・γ−トコフェロール(R =H、R =R =CH 、R =(II−A)、特に(II−ARR)、R =H)、
    ・δ−トコフェロール(R =R =H、R =CH 、R =(II−A)、特に(II−ARR)、R =H)、
    ・α−トコトリエノール(R =R =R =CH 、R =(II−B)、R =H)、
    ・β−トコトリエノール(R =R =CH 、R =H、R =(II−B)、R =H)、
    ・γ−トコトリエノール(R =H、R =R =CH 、R =(II−B)、R =H)、
    ・δ−トコトリエノール(R =R =H、R =CH 、R =(II−B)、R =H)、
    及びそれらのエステル、特に酢酸エステル(R =COCH )からなる群から選択される異性体である。

    は、Hか、またはフェノール保護基を表す。 保護基は、フェノール基(R =H)を保護する基であって、容易に(即ち、従来技術の方法により)脱保護されて再びフェノール基とし得る基である。

    これらの2つの実施形態は、構造的に強く関連している、というのは、それらは、それぞれ保護反応または脱保護反応により、容易に相互に変換され得るからである。

    特に、フェノール保護基は、エステル、エーテルまたはアセタールからなる群から選択される化学官能基を、分子の残部と共に形成している。

    フェノール保護基が分子の残部と共にエステルを形成する場合、このエステルは、有機酸または無機酸のエステルである。

    エステルが有機酸のエステルである場合、この有機酸は、モノカルボン酸またはポリカルボン酸(即ち、2個以上のCOOH基を有する酸)であり得る。 ポリカルボン酸は、好ましくは、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸またはフマル酸である。

    好ましくは、有機酸は、モノカルボン酸である。

    従って、置換基R は、好ましくはアシル基である。 このアシル基は、特に、直鎖または分岐のC 1〜10 −アルキル基またはシクロアルキル基またはアラルキル基である。 好ましくは、置換基R は、ベンジル基または置換ベンジル基であり、特に好ましくは、ベンジル基である。

    保護基は、水素化により容易に脱保護され得る。

    エステルが無機酸のエステルである場合、無機酸は、好ましくは、硝酸または多塩基酸(即ち、酸分子1個当たり1個より多くのプロトンを供与することができる酸)、特に、リン酸、ピロリン酸、亜リン酸、硫酸及び亜硫酸からなる群から選択されるものである。

    保護基は、ベンゾイル基またはC 1〜4 −アシル基、特にアセチル基であることが好ましい。 それぞれ、R がアシル基、特にアセチル基を表す分子は、対応するフェノール(R =H)化合物からエステル化により容易に調製され得、このフェノール化合物は、対応するエステルからエステル加水分解により得られ得る。 そうした反応及びその反応条件は、当業者によく知られている。 トコフェリルエステル、特にトコフェリルアセテートは、それらの著しくより高い安定性のため、ビタミンEサプリメントとして一般的に使用されることが既に知られている。 トコフェリルエステルは、例えば生体内で、対応する遊離トコフェロールに容易に加水分解される。

    フェノール保護基が分子の残部と共にアセタールを形成する場合、置換基R は、好ましくは、



    であり、n=0または1である。

    従って、そのように形成されたアセタールは、好ましくは、メトキシメチルエーテル(MOM−エーテル)、β−メトキシエトキシメチルエーテル(MEM−エーテル)またはテトラヒドロピラニルエーテル(THP−エーテル)である。 保護基は、酸によって容易に脱保護され得る。

    =Hを有する式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体は、保護剤と反応されて、R =フェノール保護基を有する式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体を生じ得る。

    対応するフェノール保護基をもたらす保護剤、並びにこの反応の化学プロセス及び条件は、当業者に知られている。 例えばフェノール保護基が分子の残部と共にエステルを形成する場合、好適な保護剤は、例えば酸、無水物またはハロゲン化アシルである。

    =Hを有する式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体と保護剤との反応によりエステルが形成され、前記エステルが有機ポリカルボン酸または無機多塩基酸のエステルである場合においては、必ずしも全ての酸基がエステル化されるとは限らない。 無機多塩基酸の好ましいエステルは、トコフェリルホスフェート及びジトコフェリルホスフェート、特にα−トコフェリルホスフェート及びα−ジトコフェリルホスフェートである。

    好ましい実施形態において、R は、Hである。

    特に、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の所望のキラル異性体は、トコトリエノールの異性体、特に(2R)−トコトリエノール、好ましくは(2R)−α−トコトリエノール、またはそれらの酢酸エステルである。

    の付いたキラル中心において天然配置を有する異性体が、特に生理学的に活性であることが認められている。 多くの場合において、とりわけR配置が、生理学的に特に活性である。

    これは、例えば、S. K. JensenによりVitamins and Hormones 2007,Vol. 76,281−308において示されており、その全内容が参照により本明細書に援用される。

    従って、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の所望のキラル異性体は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中のの付いた炭素においてR配置を有することが好ましい。

    残基R に起因して、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体は、他のキラル中心を有し得る。 特に、異性体が式(II−A)の残基R を含む、好ましい実施形態の1つにおいて、更なるキラル中心が存在する。

    とりわけ側鎖R におけるそのような更なるキラル中心におけるR配置が、生理学的に特に有利であることが見出されている。

    最も好ましい実施形態において、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の所望のキラル異性体は、異性体(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールまたは異性体(2R,4'R,8'R)−α−トコフェリルアセテートである。

    [式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体の合成]
    式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体は、構造的に関連し合っており、容易に相互に変換され得る。 式(I−B)の分子は、式(I−A)の分子から、対応するアルコールへの還元とそれに続く水の除去により得られ得る。 式(I−C)の分子は、式(I−B)の分子から、還元により(例えば接触水素化により)得られ得る。

    式(I−A)の化合物を合成する好ましいやり方は、その開示内容全体が参照により本明細書において援用されるKabbe and Heitzer,Synthesis 1978;(12):888−889により詳細に開示されているように、それぞれ式(III−A)の対応する2−アセチル−メチルヒドロキノン、2−アセチル−ジメチルヒドロキノンまたは2−アセチル−トリメチルヒドロキノン及び式(IV−A)のメチルケトンから、特にファルネシルアセトンまたはテトラヒドロゲラニルアセトンからの、塩基の存在下、特にピロリジンの存在下のものである。 フェノール保護基は、R がHである式(I−A)の化合物を、対応する保護剤と反応させることにより導入され得る。 Kabbe and Heitzerは、ピリジン及びトルエンの存在下におけるそれの無水酢酸との反応によるアセチル基の導入を開示している。


    式(I−B)の化合物は、例えば、Kabbe and Heitzer,Synthesis 1978;(12):888−889により開示されているように水素化ホウ素ナトリウム(sodium boranate)による式(I−A)の還元により得られ得る。

    式(I−C)の化合物は、還元による、例えば部分水素化による、特にその開示内容全体が参照により本明細書において援用されるManecke and Bourwieg,Chem. Ber. 95,1413(1962)に記載されているようなナトリウム/エタノールによる式(I−B)の化合物の化学変換から得られ得る。

    式(I−C)の化合物はまた、式(I−A)の化合物の化学変換からも得られ得る。 詳細には、この化学変換は、例えばその開示内容全体が参照により本明細書において援用される米国特許第6,096,907号明細書に開示されているように、酸または酸混合物の存在下における金属亜鉛の反応により行われる。

    完全に飽和したC 6〜25 −アルキル基を置換基R として有する式(I−C)の化合物はまた、公知のやり方で、それぞれ式(III−C)の対応するメチルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノンまたはトリメチルヒドロキノン及び式(IV−C1)または(IV−C2)の対応するアルコールからも合成され得る(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry,Release 2010,7 th Edition,“Vitamins”,page 44−46)。


    前記反応は、立体特異的でないか、立体特異的であり、従って、 の付いたキラル中心においてR配置及びS配置を有する式(I−C)の異性体の混合物が形成される。 典型的に、約50%のS−異性体と50%のR−異性体とのラセミ混合物が形成される。

    残基R が少なくとも1つのキラル炭素中心を含む場合、式(IV−C1)または(IV−C2)の対応するアルコールもまた、それぞれ典型的に、前記更なるキラル炭素中心(1つまたは複数)において異なる配置を有する異性体の混合物である。 従来の工業的合成は、個々の異性体の混合物を生じる。

    例えば、R が式(II−A)の残基である場合、使用される式(IV−C1)または(IV−C2)のアルコールは、それぞれイソフィトールまたはフィトールであり、これは、それぞれ典型的に、従来の方法に従って合成される4種の異性体((R,R)−、(R,S)−、(S,R)−及び(S,S)−異性体)の異性体混合物である。

    これとは対照的に、天然フィトールは、R,R−異性体のみからなり、従って、異性体的に純粋である。

    従って、1つの好ましい実施形態において、式(I−C)の化合物は、天然フィトールから調製される。 しかしながら、天然フィトールまたはイソフィトールは、それぞれかなり少ない量でしか市販されておらず、かつかなり高価であるので、天然フィトールまたはイソフィトールをそれぞれトコフェロールの工業規模の合成のために使用する可能性は、かなり限られている。

    しかしながら、新たな開発は、単一異性体の選択的形成でフィトールを合成することを可能にする。 例えばその全内容が参照により本明細書に援用される国際公開第2006/066863A1号パンフレットは、キラルイリジウム錯体を用いたアルケンの不斉水素化の方法を開示している。 この方法を用いることで、選択性を以って対応するアルケンのキラル水素化生成物の所望の異性体がもたらされ、次いでこれが、それぞれフィトールまたはイソフィトールの所望の異性体に化学的に変換され得ることが見出された。 次いで、フィトールまたはイソフィトールは、それぞれ更なる公知の化学変換により、最終的にトコフェロールの所望の異性体に変換され得る。

    従って、別の好ましい実施形態において、式(I−C)の化合物は、キラルイリジウム錯体の存在下におけるアルケンの不斉水素化を含む多段反応で得られるイソフィトールから調製される。

    トコフェロールまたはそれらのエステル、特にそれらの酢酸エステル、即ちR が式(II−ARR)のものである式(I−C)の分子を合成する更なる実行可能な手段は、トコトリエノールまたはそのエステル、特にその酢酸エステル、即ちR が式(II−B)のものである式(I−C)の分子からの、上記のキラルイリジウム錯体を用いたアルケンの不斉水素化によるものである。

    図1は、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール(R =H)または(2R,4'R,8'R)−トコフェリルアセテート(R =COCH )を生成する好ましい実施形態を、それぞれ概略的に示している。

    図1において反応スキームRS1で示される第1の実施形態において、まずトコトリエノールまたはその酢酸エステルが、 で示されたキラル原子においてR配置またはS配置をそれぞれ有する異性体に(本発明に従う分離プロセスを用いて)分離され、続いてR異性体が、キラルイリジウム錯体を用いて不斉水素化される。

    図1において反応スキームRS2で示される他の実施形態において、まずトコトリエノールまたはその酢酸エステルが、キラルイリジウム錯体を用いて不斉水素化されて、2−ambo−トコフェロールとしても知られる(2R,4'R,8'R)−トコフェロールと(2S,4'R,8'R)−トコフェロールとの混合物またはそれらの酢酸エステルの混合物をそれぞれもたらし、次いでこれが、更なる工程において本発明に従う分離プロセスを用いて分離されて、所望の異性体を生じる。

    両方の実施形態において、キラルイリジウム錯体及びキラルイリジウム錯体を用いたアルケンの不斉水素化の方法は、好ましくは、その全内容が参照により本明細書に援用される国際公開第2006/066863A1号パンフレットに開示されているものである。

    第1の工程で、
    a)式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物を供給する工程を含む式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離する方法。

    工程a)における用語「式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物」は、主としてで示された炭素原子において異なるキラリティーを有する同じ式の異性体の混合物に関し、即ち、そのような混合物は、第1の場合は式(I−A)の異性体のR配置とS配置との混合物、第2の場合は式(I−B)の異性体のR配置とS配置との混合物、並びに第3の場合は式(I−C)のR配置とS配置との混合物である。

    上で既に述べたように、式(I−A)及び(I−B)及び(I−C)の化合物は、構造的に関連し合っており、相互に変換され得る。

    図2は、種々の実行可能な事柄を概略的に示している。 式(I−A)のR−異性体とS−異性体との混合物は、式(I−B)のR−異性体及びS−異性体に化学的に変換され得る(水平矢印)。 式(I−A)のR−異性体とS−異性体との混合物はまた、本発明の方法により式(I−A)の所望の(本図においてはR−異性体)異性体に分離され得る(垂直矢印)。

    同様に、式(I−B)または(I−C)の所望の異性体が、それぞれ図2のスキームで示されているように得られ得る。

    当然、式(I−B)及び(I−C)の異性体の混合物は、別の仕方でも、即ちそれぞれ式(I−A)または(I−B)からではなくても、得られ得る。 例えば、式(I−C)の異性体は、式(IV−C1)または(IV−C2)のアルコールをそれぞれ用いた合成について述べた時に既に説明した方法により得られ得る。

    側鎖、即ち置換基R が更なるキラル炭素中心を有する場合は、2種より多くの異性体が上記の混合物中に存在し得る。

    [クロマトグラフィー分離]
    当該式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離する方法は、
    b)所望の異性体(I)と残りの部分(I')とへの、キラル相による、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体の混合物のクロマトグラフィー分離という更なる工程を含む。

    クロマトグラフィーは、ずっと以前から知られている分離技術である。 キラル化合物がキラル相を用いることによって分離され得ることも知られている。

    本発明については、キラル相は、キラル静的相(chiral stationary phase:CSP)である。 キラル静的相は、アキラル固体担体(例えば、シリカゲル)の表面に好適なキラル化合物を結合させることによって調製され得る。 キラル化合物は、担体材料上に固定化されていてもよいし、被膜を形成していてもよい。 キラル化合物は、担体に吸着または化学結合され得る。 好ましくは、キラル化合物は、担体に化学結合される。

    そのようなキラル相は、欧州特許出願公開第0157365A2号明細書、欧州特許出願公開第0155637A2号明細書、米国特許第7,772,153B2号明細書、米国特許第4,619,970号明細書及び米国特許第4,861,872号明細書に記載されており、その全内容が参照により本明細書に援用される。

    キラル化合物がキラル分離においてそのままで直接使用され得るということも、場合によってはあり得る。 これは特に、キラル化合物が鉱物起源のものである場合、または、担体材料が何ら必要とされない高分子の不溶性キラルポリマー(highly molecular insoluble chiral polymer)が使用される場合に当てはまる。

    好ましくは、キラル相は、特にアキラル固体担体(例えば、シリカゲル)上に固定化された、多糖またはその誘導体である。 多糖またはその誘導体は、例えばその全内容が参照により本明細書に援用されるPure Appl. Chem. ,Vol. 79,No. 9,2007,1561−1573において、好適なキラル相として記載されている。

    特に好適なキラル相は、セルロース、アミロース、キチン、キトサン、キシラン、カードラン、デキストラン、イヌリン及びシクロデキストリン及びそれらの誘導体からなる群のキラル相である。

    更に、ある場合においては、タルトレート相、ポリアクリルアミド相、キラル配位化合物相もしくは電荷移動相(Charge−Transfer Phase)、キラルイオン交換相またはPirkle相から選択されるキラル相が、本発明の目的のために使用され得る。

    特に好ましいキラル相は、セルロース、アミロース、デキストラン及びシクロデキストリン並びにそれらの誘導体からなる群のキラル相である。

    特に適しているのは、シリカ担体上に固定化または塗布された、アミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)、セルローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)、セルローストリス(3,5−ジクロロフェニルカルバメート)、セルローストリス(4−メチルフェニルカルバメート)またはセルローストリス(4−メチルベンゾエート)である。 最も好ましいキラル相は、シリカ担体上に固定化または塗布された、アミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)である。

    特に好適であるのは、Eurocel(登録商標)(Knauer GmbH、ドイツ)、Regispack(登録商標)(Regis Technologies,Inc.,USA)、Chiralcel(登録商標)及びChiralpak(登録商標)(ダイセル化学工業株式会社(Daicel Chemical Industries Ltd.)、日本)、好ましくはChiralpak(登録商標)IA、Chiralpak(登録商標)IB、Chiralpak(登録商標)IC及びChiralcel(登録商標)OD、Chiralcel(登録商標)OD−I(ダイセル化学工業株式会社、日本)という商標で市販されているキラル相である。

    キラル相の粒径は、1つの実施形態において、25マイクロメートルより小さく、特に3〜25マイクロメートルの間、好ましくは5〜25マイクロメートルの間である。 この場合に特に好ましいのは、クロマトグラフィー分離が、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により行われることである。 そのような小さな粒径を用いることにより、より良好な(1回のクロマトグラフィー実験での)異性体分離が達成され得るが、より高い圧力が必要とされることが見出された。 この粒径の場合の圧力は、典型的には20barより大きい。

    別の実施形態において、キラル相の粒径は、25マイクロメートルより大きく、特に、50〜70マイクロメートルの間である。 そのようなより大きな粒径を用いれば、より低い圧力が必要とされるが、しかしながら、(1回のクロマトグラフィー実験での)異性体分離ははるかに少ないことが見出された。 クロマトグラフィー分離のために使用されるべき圧力は、この粒径の場合は、好ましくは1〜18barの間、特に2〜17barの間、好ましくは5〜15barの間である。

    炭化水素溶媒が溶離剤として使用される場合に、効率的な分離が好ましく達成され得ることが示された。 特に好適な炭化水素溶媒は、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素または芳香族炭化水素(例えば、C 〜C −アルカン、特にn−オクタン、n−ヘプタン、n−ヘキサン、及びそれらの全ての構造異性体;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン;ベンゼン、エチルベンゼン、キシレン、及びトルエンまたはそれらの混合物)である。 好ましくは、単一の炭化水素、特にヘキサンまたはヘプタンのみが、溶離剤としての炭化水素溶媒として使用される。

    工程b)におけるクロマトグラフィー分離を少なくとも1種のアルコールの存在下で行うことが選択的(preferential)であることが見出された。

    アルコールとして特に好適であるのは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert. −ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール及びアリルアルコールからなる群から選択されるアルコールである。 好ましくは、アルコールは、n−プロパノールまたはイソプロパノールである。 最も好ましくは、1−プロパノールである。

    アルコールの混合物もまた、使用され得る。

    アルコールが溶離剤の一部であり、特に炭化水素溶媒と組み合わされて存在することが好ましい。

    更に、工程b)におけるクロマトグラフィー分離を、6.0未満、特に0.5〜6.0の間、好ましくは3.0〜6.0の間のpK を有する少なくとも1種の有機酸(S1)、特に酢酸の存在下で行うことが選択的であることが見出された。

    3.0〜6.0の間のpK を有する有機酸についての例は、特に、クエン酸、フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、桂皮酸、ギ酸、乳酸、酢酸、アスコルビン酸、安息香酸、ブタン酸、プロパン酸及びオクタン酸である。

    6.0未満のpK を有する酸は、上述の酸に加えてスルホン酸またはハロゲン化酸などの酸であり、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びノナフルオロブタンスルホン酸である。

    意外なことに、6未満、特に3.0〜6.0の間のpK を有する有機酸(S1)、好ましくは酢酸の、少量の存在が、キラル相の負荷能力(loadability)を高めることが示された。 換言すれば、少量の有機酸を添加することにより、より多くの量の異性体が所与のキラル相によって分離され得る。 この発見は、工業的分離のための設備のコスト計算を考慮すると、非常に重要である。

    工程b)におけるクロマトグラフィー分離のために使用される溶離剤は、
    85〜100重量%、特に90〜98重量%の、炭化水素、特にC 〜C −アルカン;
    0〜10重量%、特に0.1〜5重量%の、アルコール、好ましくは1−プロパノールまたは2−プロパノール;
    0〜5重量%、特に0.1〜2重量%の、6.0未満、特に3.0〜6.0の間のpK を有する有機酸(S1)、好ましくは酢酸を含むことが好ましい。

    好ましくは、溶離剤は、少なくとも1種の炭化水素と、少なくとも1種のアルコールと、6.0未満、特に3.0〜6.0の間のpK を有する少なくとも1種の有機酸とを含む。

    溶離剤としてはC 〜C −アルカンと1−プロパノールまたは2−プロパノールとを含む上記の溶離剤、及びキラル相としてはシリカ担体上に固定化または塗布されたアミローストリス(3,5−ジメチルフェニルカルバメート)が、極めて良好な分離特性を示すことが認められた。

    特に良好な分離のためには、擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーがキラルクロマトグラフィー分離のために使用されることが見出された。 擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーは、ラセミ混合物を分離するための公知の方法であり、例えばその全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第5,518,625号明細書及び国際公開第03/051867A1号パンフレットに開示されている。

    所望の異性体(I)と残りの部分(I')とへの、キラル相による、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体の分離は、完全または部分的であり得る。

    1つの実施形態において、分離は、実質的に完全、好ましくは完全である。

    分離及び異性化をより詳細に説明するために、本発明のこれらの態様の更なる詳細を、概略的なクロマトグラムまたはダイアグラムによってそれぞれ示す、図3〜9が参照される。 簡潔にするために、小さい方の保持時間(t ret )を有するピークは、 で示されたキラル中心においてR配置を有し、大きい方の保持時間(t ret )におけるピークは、S配置を有するものと仮定される。 当然、実際は、R−異性体及びS−異性体の配列は、システム及びカラム材料に強く依存し、従って、更なる測定または誘導体化法によって特定される必要がある。

    図3は、キラル相が所望の異性体(I)(本図においてはR−異性体)を第1の溶出成分として完全に分離する場合を、概略的なクロマトグラムで示している。 この概略的クロマトグラムのx軸は、任意単位(a.u.)での保持時間(t ret )を示している。 概略的クロマトグラムのy軸は、任意単位(a.u.)での吸光度(A)を示しており、これにより異性体分布が検出される。 溶出液(実線)が二重線で示された保持時間まで回収される場合、異性体R(点線)は、異性体S(破線)から完全に分離され得る。

    一方、図4は、キラル相が所望の異性体(I)(本図においてはR−異性体)を部分的にしか分離しない場合を、同様に概略的なクロマトグラムによって示している。 溶出液(実線)が二重線で示された保持時間まで回収される場合、所望の異性体R(点線)の一部が残りの部分から分離され得る。 この場合の残りの部分は、異性体S(破線)だけでなく所望の異性体Rの一部も含む。 この概略的な例においては、分離工程b)により、約15%の所望の異性体しか分離されず、従って、残りの部分(I')は、100%のS−異性体と約85%の所望のR−異性体とを含む。 図5は、この場合を、残りの部分(I')及びその異性体R(点線)またはS(破線)それぞれの概略的クロマトグラムによって示している。

    当業者には、先の記述が、R−異性体が所望の異性体である場合に関するものであることが明らかである。 しかしながら、S−異性体が所望の異性体であるならば、図4中の概略的クロマトグラムにおいて、前記概念図における22a. u. より大きな保持時間を有する部分を回収することによって、S−異性体を残りの部分から分離し、22a. u. までの保持時間を有する部分を、次に続く工程で次いで異性化されることになる残りの部分として用い得るであろう。

    [異性化]
    当該式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離する方法は、
    c)工程b)で分離される残りの部分(I')の異性体の、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中ので示された中心におけるキラリティーを異性化するという更なる工程を含む。

    工程c)における異性化は、様々な方法で行われ得る。

    1つの実施形態において、工程c)における異性化は、150℃より高い、特に160〜500℃の間の温度への、残りの部分(I')の曝露により行われる。 しかしながら、この温度は、異性体の望まれない分解を回避するためにあまり高くなりすぎるべきではない。 160〜300℃の間の温度が、良好な結果をもたらすことが見出された。 この異性化方法は、式(I−B)の異性体の異性化に非常に好適であることが分かった。

    別の実施形態において、工程c)における異性化は、対応する酸が13より大きいpK を有する塩基への、残りの部分(I')の曝露により行われる。 この塩基は、ケト−エノールプロトンを脱プロトン化するのに好適な塩基性を有する。 塩基として特に適しているのは、アルカリ金属のアルコラート、特にナトリウム、カリウム及びリチウムのアルコラートである。 好ましい塩基は、ナトリウムメタノラート及びナトリウムエタノラートである。 この異性化方法は、式(I−A)の異性体の異性化に非常に好適であることが分かった。

    この異性化は、バッチ式または連続的に行われ得る。

    添加される塩基は、工程d)の前に除去されることが好ましい。 好ましくは、除去は完全である。

    塩基は、好ましくは工程d)の前、即ち異性化後に、除去される。 これは、最終異性体の異性化安定性の点から見て有利である。

    別の実施形態において、工程c)における異性化は、2より小さい、特に1より小さいpK の酸への、残りの部分(I')の曝露により行われる。

    この異性化方法は、式(I−C)の異性体の異性化に非常に好適であることが分かった。

    一方において、好適な酸は、有機酸、特にスルホン酸またはハロゲン化酸、強酸イオン交換樹脂(特にSO H基を含有するもの)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド及びメタントリスルホネートである。

    好適なスルホン酸またはハロゲン化酸についての例は、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸及びノナフルオロブタンスルホン酸、またはそれらのポリマー結合形態である。

    他方において、好適な酸は、無機酸(鉱酸)である。 特に好ましい酸は、硫酸、塩酸、リンモリブデン酸及びリンタングステン酸である。

    好ましくは、p−トルエンスルホン酸が、工程c)における異性化のための2より小さいpK を有する酸として使用される。

    異性化のために酸が使用される場合、その異性化は、典型的には50〜200℃の間の温度で行われる。

    式(I−C)の異性体の異性化は、90℃より高い温度、特に90℃〜160℃の間の温度での、2より小さい、特に1より小さいpK の酸への、残りの部分(I')の曝露により起こることが見出された。

    この異性化は、バッチ式または連続的に行われ得る。

    2より小さいpK を有する酸は、工程b)において分離される残りの部分(I')に、特に水溶液の形態で添加されることが好ましい。

    別の実施形態において、2より小さいpK を有する酸、または塩基は、固体担体上に固定化される。 この実施形態において、工程b)において分離される残りの部分(I')は、好ましくは、例えば固定化された酸を含むカラムまたは充填床を通過することによって、接触させられる。

    添加される2より小さいpK を有する酸は、工程d)の前に除去されることが好ましい。 好ましくは、除去は完全である。 しかしながら、残った少量の酸は、ある場合には許容され得る。 少なくとも95%の酸が、除去されることが好ましい。

    2より小さいpK を有する酸は、好ましくは工程d)の前、即ち異性化後に、除去される。 これは、工程e)において回収される異性体の異性化安定性の点から見て有利である。

    除去は、特に、抽出または相分離により行われ得る。

    当該異性化は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)中ので示されたキラル中心における配置の変更をもたらす。 工程c)における異性化は、R配置にある分子の数とS配置にある分子の数との比が異性化後に約50:50となるような、 で示された中心における配置の変更をもたらす。 当業者には、実際の異性化は、異性化が完全であるにも関わらず、50:50の比と異なり得ることが明らかである。 完全な異性化が望ましいのであるが、不完全な異性化もまた、所望の異性体の量がその異性化によって増大する限り、本発明にとって有用である。 所望の異性体の量:非所望の異性体の量の比は、異性化工程後は、少なくとも25:75、特に少なくとも30:70、好ましくは少なくとも40:60であることが見出された。

    50:50の比という最適な場合が、図6の概略的クロマトグラムにより示されている。 当該異性化は、図4の分離の例について、または所望の異性体(I)の分離後の図5の残りの部分(I')について上でそれぞれ述べたように、異性化された残りの部分(実線)及び個々の異性体R(点線)または異性体S(破線)それぞれを示す図6の概略的クロマトグラムを、この例においてもたらす。

    当該異性化は、 で示されたキラル中心のキラリティーのみに影響を及ぼし、他のキラル中心(即ち、側鎖中のキラル中心、換言すれば、残基R 中のキラル中心)のキラリティーは変化しないまま残すということを認識することが重要である。

    [再混合]
    当該式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離する方法は、
    d)工程c)で得られた異性化した異性体を、更なる分離の対象である式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物に添加するという更なる工程を含む。

    前記混合物は、貯蔵され輸送されることもできるし、直ちに使用されることもできる。

    図7は、前記混合物が貯蔵される場合の実施形態についての概念図を示している。 この例示的な図において、工程a)で式(I−A)のキラル異性体の混合物が供給され;工程b)でキラル相1を用いてクロマトグラフィーにより所望の異性体(I)と残りの部分(I')とに分離され;工程c)で残りの部分(I')の異性体が異性化され、次いで式(I−A)の異性体の混合物に添加される。 この混合物は、更なる分離が望まれるまで貯蔵され得る。 示された図において、異性化は、固定化された酸を含むカラム2と残りの部分(I')を接触させることにより行われる。 所望の異性体(I)は、工程e)で回収される。

    しかしながら、本発明の方法は、連続法であること、特に、更なる分離の対象である式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物が工程a)の式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物である連続法であることが好ましい。 従って、換言すれば、工程c)において得られる異性化した異性体は、工程a)における式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の流れに添加されることが好ましい。

    この場合は、図8に概略的に示されている。 この例示的な図において、工程a)で式(I−A)のキラル異性体の混合物が供給され、工程b)でキラル相1を用いてクロマトグラフィーにより所望の異性体(I)と残りの部分(I')とに分離され;工程c)で残りの部分(I')の異性体が異性化され、次いで工程a)における異性体の混合物の入来する流れに供給される。 示された図において、異性化は、固定化された酸を含むカラム2と残りの部分(I')を接触させることにより行われる。

    この方法は、非常に費用効率の高いやり方で、工程e)において、即ち工程b)における所望の異性体(I)と残りの部分(I')との分離のすぐ後に回収される所望の異性体(I)を連続的に生成することを可能にするので、この方法は、非常に好ましい。

    [回収]
    当該式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離する方法は、
    e)所望の異性体(I)を回収するという更なる工程を含む。

    所望の異性体(I)は、好ましくは工程b)におけるクロマトグラフィー分離のすぐ後に回収される。

    前記方法は、効率的なやり方で、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の少なくとも2種の異性体の混合物から所望の異性体(I)を生成する。 当該方法は、工程b)において異性体の分離が良好であればあるほど効率的になる。

    前記分離効率は、キラル相の粒径が1つの実施形態において25マイクロメートルより小さく、特に3〜25マイクロメートルの間であり、HPLCと組み合わせて使用される場合、特に工程b)におけるクロマトグラフィー分離のために使用される溶離剤が、炭化水素及びアルコール及び/または6.0未満、特に3.0〜6.0の間のpK を有する有機酸(S1)を含む場合に、より高いことが認められた。

    しかしながら、クロマトグラフィーにおいて高圧が使用される場合、特に擬似移動床(SMB)クロマトグラフィーが使用される場合には、信頼性の高い連続生産を可能にする設備に対する高い要求が生じる。 特に高い技術的要求は、ポンプ、弁及び接続部に対する要求である。 こうした高い要求は、著しい多額の費用に繋がる。

    本方法の条件は、式(I−A)または(I−B)または(I−C)の化合物の劣化にも著しい分解にも繋がることはないので、サイクルb)−c)−d)の数は、さほど重要ではない。 従って、より低い圧力と組み合わされたキラル相のより大きな、即ち25マイクロメートルより大きな粒径に起因する、異性体(I−A)または(I−B)または(I−C)の異性体を分離することにおけるより低い効率は、設備及び維持を考慮するとより低い費用が必要であるので、本質的に必ずしも不利とは限らない。 従って、高い分離効率を有する3〜25マイクロメートルの間の粒子を充填したカラムを備えた高圧SMB装置を用いるよりもむしろ、低圧で運転される低コストのカラムまたはSMBユニットのマニホールドによって、及びいくつかの追加のサイクルを用いて分離プロセスを運転することが、財政的にかなり有利であり得る。

    図9は、複数の分離カラムまたは複数のSMBユニット1を用いたプロセスの概念図を示している。 この図において、式(I−A)の異性体の混合物は、平行配置で使用されるカラムまたは複数のSMBユニット1により分離されて、そのそれぞれにより、回収される所望の異性体(I)と、次いで異性化されて式(I−A)の異性体の流れの中に再供給される残りの部分(I')とがもたらされる。 分離プロセスにおいて示されているカラムまたはSMBユニット1は、それぞれ典型的に5〜15barの間の低い圧力で運転され、25マイクロメートルより大きな粒径のキラル相を使用する。 分離効率は比較的低く、これは、図4で示される概略的クロマトグラムにより視覚化され得る。 示された図において、異性化は、固定化された酸を含むカラム2と残りの部分(I')を接触させることにより行われる。

    開示された方法は、工業規模で異性体を分離することを可能にする。 連続的なやり方で当該方法を使用する際は、異性化工程のおかげで、ほぼ全ての非所望の異性体が所望の異性体に変換され得る。 従って、非立体特異的な合成により生成される非所望の異性体は、殆ど廃棄される必要はなく、従って、所望の異性体においてほぼ100%の収率が得られ得る。 これは、経済的にも生態学的にも特に有利であり、従って、この技術分野での開発における顕著かつ重要な前進を意味する。

    本発明の更なる態様は、式(II−ARR)の置換基R を有しかつで示されたキラル中心において所望の配置、特にR配置を有する式(I−C)の化合物を製造する方法である。

    この方法においては、第1の工程で、 で示されたキラル中心において所望の配置、特にR配置を有する異性体が、式(II−B)の置換基R を有する式(I−C)のキラル異性体を分離する、上で詳細に説明したプロセスを用いることにより回収される。 次いで、第2の工程で、所望の異性体が、キラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化により水素化されて、式(II−ARR)の置換基R を有しかつで示されたキラル中心において所望の配置、特にR配置を有する式(I−C)の化合物を生じる。 キラルイリジウム錯体及び不斉水素化は、特に、国際公開第2006/066863A1号パンフレットに記載されているものである。

    従って、好ましい実施形態において、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール、または(2R,4'R,8'R)−トコフェリルアセテート、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェリルアセテートは、それぞれトコトリエノールまたはトコトリエニルアセテート、特にそれぞれα−トコトリエノールまたはα−トコトリエニルアセテートから上述の分離プロセスを用いて先に得られた(2R)−トコトリエノール、特に(2R)−α−トコトリエノールから、キラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化により得られ得る(図1における反応スキームRS1も参照されたい)。

    前記方法の変形例において、第1の第2の工程で、式(II−B)の置換基R を有する式(I−C)の異性体が、キラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化により水素化されて、式(II−ARR)の置換基R を有しかつで示されたキラル中心においてR/S配置の混合を有する式(I−C)の化合物を生じ、次いでこれが、第2の工程で、上で詳細に説明したプロセスを用いて分離されて、式(II−ARR)の置換基R を有しかつで示されたキラル中心において所望の配置、特にR配置を有する式(I−C)の化合物を生じる。 キラルイリジウム錯体及び不斉水素化は、特に、国際公開第2006/066863A1号パンフレットに記載されているものである。

    従って、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール、または(2R,4'R,8'R)−トコフェリルアセテート、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェリルアセテートを生成する更なる方法は、それぞれトコトリエノールまたはトコトリエニルアセテート、特にそれぞれα−トコトリエノールまたはα−トコトリエニルアセテートからキラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化により先に得られた2−ambo−トコフェロールまたは2−ambo−トコフェリルアセテートからの、上述の分離プロセスによるものである(図1における反応スキームRS2も参照されたい)。

    従って、1つの好ましい実施形態において、当該方法は、所望のキラル異性体が、工程b)の前または工程e)の後の何れかに行われるキラルイリジウム錯体を用いた不斉水素化の工程により、トコトリエノールまたはトコトリエニルアセテートからそれぞれ得られたトコフェロールまたはトコフェリルアセテートであるというようなものである。

    本発明の更なる実施形態において、R が水素を表す式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体が分離され、次いで工程f)で保護剤と反応されて、式(I−A)または(I−B)または(I−C)のトコフェロールの保護されたキラル異性体を生じる。 従って、当該方法は、
    f)所望の異性体(I)を保護剤と反応させるという工程を更に含む。

    従って、好ましくは(2R,4'R,8'R)−トコフェロール、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールは、上で詳細に説明したように、所望の異性体(I)として分離され、回収され、工程f)で保護剤と反応されて、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールの保護された形態にあるもの、好ましくは(2R,4'R,8'R)−トコフェロールアセテート、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールアセテートを生ずる。

    本発明の方法により分離される式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体は、いくつかの応用分野において使用され得る。 特に、それらは、食料または飼料または飲料または製剤の分野における用途を見出す。 特にこれらの分野において、所定のキラリティーでキラル化合物を提供することは非常に有利である、または必要でさえある。 これらの応用分野にとって特に有益であるのは、初期異性体混合物から単一の所望の異性体のみが分離され得る場合である。 本発明の分離プロセスは、そうした目標を可能にする。

    更なる態様において、本発明は、従って、上で説明したように式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離するプロセスによって分離された式(I−A)または(I−B)または(I−C)の所望のキラル異性体を含む食料または飼料または飲料に関する。 特に、そのような食料または飼料または飲料は、(2R,4'R,8'R)−トコフェロール、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール、または(2R,4'R,8'R)−トコフェリルアセテート、特に(2R,4'R,8'R)−α−トコフェリルアセテートを含む。

    なお更なる態様において、本発明は、従って、上で説明したように式(I−A)または(I−B)または(I−C)のキラル異性体を分離するプロセスによって分離された式(I−A)または(I−B)または(I−C)の所望のキラル異性体を含む薬学的組成物に関する。 特に、そのような薬学的組成物は、コルジアクロメン(2−メチル−2−(4−メチルペンタ−3−エニル)−2H−クロメン−6−オール)の所望の異性体を含む。

    [参照符号一覧]
    1 キラル相、カラム、SMBユニット2 固定化された酸を含むカラムI 所望の異性体I' 残りの部分I−A 式(I−A)のキラル異性体の混合物

    [実施例]
    本発明を、以下の実験により更に説明する。

    [1. クロマトグラフィー分離]
    出発材料 入手したまま使用した溶媒及び試薬は、ヘプタン(Fluka、51750)、エタノール(Merck、1.00983)、イソプロパノール(Sigma−Aldrich、59300)及び酢酸(Fluka、45730)であった。

    クロマトグラフィー Agilent 1100デガッサー、Agilent 1100分取ポンプ、Agilent 1100ダイオードアレイ検出器、Agilent 1100 MPS G2250Aオートサンプラー/フラクションコレクターからなる、ケムステーション/CC−モードソフトウェアパッケージにより制御されたAgilent 1100シリーズhplcシステムによって、調製用分離を行った。

    調製用分離のためのHPLC条件 カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×20mm;溶離剤 n−ヘプタン中の0.5%イソプロパノール、0.2%酢酸;流量13ml/分;検出220nm、400μl注入。

    [(R)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−4−オンと(S)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−4−オンとの分離]
    [実施例1]
    6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2−((3E,7E)−4,8,12−トリメチルトリデカ−3,7,11−トリエニル)クロマン−4−オンを、Kabbe and Heitzer,Synthesis 1978;(12):888−889の実施例6aに従って調製した。

    生成物を、HPLC(カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘキサン中の1%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)により分析した。 図10b)が、このクロマトグラムを示している。 これは、生成物が49.5:50.5の混合物であることを示している(保持時間13.2分及び14.2分)。

    ヘプタン中の87.5mgのこの生成物を注入し、35.4分(1)(50.9%)または43.5分(2)(49.1%)の最大での保持時間を有する2つのピークを、それぞれ調製用HPLC分離により分離した。 図10a)が、その調製用HPLC分離のクロマトグラムを示している。

    蒸発乾固及び溶解後、その2つの回収した画分を、分析用カラム(Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘキサン中の1%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)によって再分析した。

    図10c)または図10d)は、それぞれ第1の画分または第2の画分のクロマトグラムを示している。 2つの画分中の2種の異性体の分離(保持時間 それぞれ13.2分または14.2分)が、それぞれ94.9:5.1(図10c))または7.1:92.9(図10d))であることを示している。 従って、2種の異性体は、調製用クロマトグラフィーによってほぼ完全に分離された。

    [(2R)−トコフェロールと(2S)−トコフェロールとの分離]
    [実施例2]
    [(全−rac)−α−トコフェロールの分離]
    (全−rac)−α−トコフェロール(DSM Nutritional Productsを、HPLC(カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)により分析した。図11b)が、このクロマトグラムを示している(保持時間 それぞれ7.2分または8.2分、50:50)。

    ヘプタン中の140mgの(全−rac)−α−トコフェロール(DSM Nutritional Products)を注入し、12.6分(1)(50.1%)及び14.2分(2)(49.9%)の最大での保持時間を有する2つのピークを、調製用HPLC分離により分離した。 図11a)が、その調製用HPLC分離のクロマトグラムを示している。

    蒸発乾固及び溶解後、その2つの回収した画分を、分析用カラム(Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)によって再分析した。

    図11c)または図11d)は、それぞれ第1の画分(保持時間7.2分)または第2の画分(保持時間8.2分)のクロマトグラムを示している。 2種の異性体の分離が、完全であることが示された。

    これらの異性体は、(2R)−α−トコフェロール(図11c)及び(2S)−α−トコフェロール(図11d)であると特定された。

    [実施例3]
    [2−ambo−α−トコフェロールの分離]
    2−ambo−α−トコフェロールを、HPLC(カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入により分析した。図12b)が、このクロマトグラムを示している(保持時間 それぞれ7.2分または8.2分、50.2:49.2)。

    ヘプタン中の140mgの2−ambo−α−トコフェロールを注入し、13.4分(1)(50.1%)及び15.0分(2)(49.9%)の最大での保持時間を有する2つのピークを、調製用HPLC分離により分離した。 図12a)が、その調製用HPLC分離のクロマトグラムを示している。

    蒸発乾固及び溶解後、その2つの回収した画分を、分析用カラム(Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘプタン中の0.5%エタノール;流量1ml/分;検出220nm、2μl注入)によって再分析した。

    図12c)または図12d)は、それぞれ第1の画分または第2の画分のクロマトグラムを示している。 2つの画分中の2種の異性体の分離(保持時間 それぞれ7.2分または8.2分)が、それぞれ99.5:0.5(図12c))または0.8:99.2(図12d)であることを示している。 従って、2種の異性体は、調製用クロマトグラフィーによってほぼ完全に分離された。

    これらの異性体は、(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール(保持時間7.2分)及び(2S,4'R,8'R)−α−トコフェロール(保持時間8.2分)であると特定された。

    [2. 異性化]
    出発材料 異性化反応のために使用されたビタミンE化合物は、全ての例において>99%の(2R)−立体異性体を含有していた。 (2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール(Covitol(登録商標)F1490、最小含有量96%)は、Henkel(Lot 4C11504)及びCognis(Lot U40C03F002からのものであり、(2R,4'R,8'R)−β−トコフェロール、(2R,4'R,8'R)−γ−トコフェロール、(2R,4'R,8'R)−δ−トコフェロール及び(2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロールは、天然源材料からのクロマトグラフィー単離及び化学的改質により調製した。入手したまま使用した溶媒及び試薬は、アセトニトリル(LiChrosolv Merck 1.00030)、水(クロマトグラフィー用 Merck 1.15333)、トルエン(Fluka、89681)、n−ヘプタン(Fluka、purum 51750、含有量99%)、炭酸エチレン(Aldrich、E26258、含有量99.9%)、p−トルエンスルホン酸一水和物(Fluka、89760)、ポリタングステン酸水和物(Aldrich 455970、含有量88.9%)であった。

    [分析方法]
    HPLC方法1
    カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−H、250mm×4.6mm;溶離剤 n−ヘキサン中の0.5%EtOH;流量1ml/分;検出220nm。

    HPLC方法2
    カラム:Daicel Chiracel(登録商標)OD−RH、150mm×4.6mm、粒径5μm;溶離剤 アセトニトリル/水 80/20(体積/体積);流量1ml/分;検出210nm;温度23℃;保持時間:(2R)−α−トコフェロール 13.6分、(2S)−α−トコフェロール 15.7分、(2R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロール 17.7分、(2S)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロール 21.4分、(2R/2S)−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2−((4'RS,8'RS)−4,8,12−トリメチルトリデシル)−クロマン−4−オン 13.8分及び14.6分。

    [(2R)−トコフェロールの(2R/S)−トコフェロールへの異性化]
    [実施例4]
    [(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールの異性化]
    トルエン(10ml)中の(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール(0.448g、96.2wt%、1.0mmol)の磁気撹拌溶液に、アルゴン雰囲気下において、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.19g、1.0mmol)を添加した。 この溶液を、還流下(浴温度140℃)において3時間にわたり加熱した。 25℃まで冷却した後、褐色の反応混合物を、n−ヘキサン(25ml)で希釈し、連続的に水(20ml)、飽和NaHCO 溶液(10ml)及び飽和NaCl溶液(10ml)で洗浄し、MgSO 上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した:0.424gの帯黄色の油状物、収率95%、異性体比2R:2S=52.9:47.1(HPLC方法1により測定)。 クロマトグラムは、図12b)に示されているクロマトグラムに実質的に一致する。

    [実施例4A]
    [(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールの異性化]
    トルエン(25ml)中の(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール(4.44g、97.0wt%、10.0mmol)の溶液に、41℃で、アルゴン雰囲気下において、リンタングステン酸水和物(0.32g、0.1mmol)を添加した。 この混合物を、還流下(浴温度140℃、内部温度112〜113℃)において4時間にわたり磁気撹拌した。 30℃まで冷却した後、褐色の反応混合物を、トルエン(10ml)で希釈し、飽和NaHCO 溶液(15ml)で洗浄した。 水性相をトルエン(5ml)で抽出し、合わせた有機層をNa SO (10g)上で乾燥させ、濾過し、固体をトルエン(5ml)で洗浄し、合わせた濾液を、50℃/16mbar/15分及び25℃/0.1mbar/16時間で蒸発乾固した:4.50gの褐色の油状物、内容物93.1wt%のα−トコフェロール(GC、内部標準)、異性体比2R:2S=51.7:48.3(HPLC方法2により測定)。

    [実施例4B]
    [(2R,4'R,8'R)−α−トコフェロールの異性化]
    (2R,4'R,8'R)−α−トコフェロール(4.44g、97.0wt%、10.0mmol)と、n−ヘプタン(25ml)と、25gの炭酸エチレン(50℃で溶融)との混合物に、62℃で、アルゴン雰囲気下において、リンタングステン酸水和物(0.65g、0.2mmol)を添加した。 この混合物を、還流下(浴温度140℃、内部温度105〜106℃)において6時間にわたり磁気撹拌した。 80℃まで冷却した後、反応混合物を、100ml分液漏斗に移した。 上方の黄色のヘプタン相を、36℃(炭酸エチレンの融点)より上で、下方の黒色の炭酸エチレン相から分離した。 下方の相を、n−ヘプタン(15ml)で抽出し、合わせたヘキサン抽出物を飽和NaHCO 溶液(15ml)で洗浄し、Na SO (10g)上で乾燥させ、濾過し、固体をn−ヘプタン(2×5ml)で洗浄し、合わせた濾液を50℃/16mbar/15分及び25℃/0.1mbar/16時間で蒸発乾固した:4.42gの褐色の油状物、内容物94.2wt%α−トコフェロール(GC、内部標準)、異性体比2R:2S=53.7:46.3(HPLC方法2により測定)。

    [実施例5]
    [(2R,4'R,8'R)−β−トコフェロールの異性化]
    トルエン(10ml)中の(2R,4'R,8'R)−β−トコフェロール(0.417g、99.2wt%、1.0mmol)の磁気撹拌溶液に、アルゴン雰囲気下において、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.19g、1.0mmol)を添加した。 この溶液を、還流下(浴温度140℃)において14時間にわたり加熱した。 25℃まで冷却した後、褐色の反応混合物を、n−ヘキサン(25ml)で希釈し、連続的に水(20ml)、飽和NaHCO 溶液(10ml)及び飽和NaCl溶液(10ml)で洗浄し、MgSO 上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した:0.378gの帯黄色の油状物、異性体比2R:2S=51.5:48.5(HPLC方法1により測定)。

    [実施例6]
    [(2R,4'R,8'R)−γ−トコフェロールの異性化]
    トルエン(10ml)中の(2R,4'R,8'R)−γ−トコフェロール(0.428g、97.4wt%、1.0mmol)の磁気撹拌溶液に、アルゴン雰囲気下において、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.19g、1.0mmol)を添加した。 この溶液を、還流下(浴温度140℃)において3時間にわたり加熱した。 25℃まで冷却した後、褐色の反応混合物を、n−ヘキサン(25ml)で希釈し、連続的に水(20ml)、飽和NAHCO 溶液(10ml)及び飽和NaCl溶液(10ml)で洗浄し、MgSO 上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した:0.424gの帯黄色の油状物、異性体比2R:2S=47.8:52.2(HPLC方法1により測定)。

    [実施例7]
    [(2R,4'R,8'R)−γ−トコフェロールの異性化]
    トルエン(1000ml)中の(2R,4'R,8'R)−γ−トコフェロール(43.94g、96.95wt%、102.25mmol)の磁気撹拌(550rpm)溶液に、アルゴン雰囲気下において、p−トルエンスルホン酸一水和物(19.65g、102.25mmol)を添加した。 この溶液を、約1時間にわたり還流(浴温度140℃)まで加熱し、この温度で更に7時間撹拌した。 試料のキラルHPLC分析は、6.5時間の反応時間後に、異性化の完了を示した(2R:2S=51:49)(HPLC方法1により測定)。 この混合物を冷却し、室温で一晩維持し、真空中で蒸発させ、n−ヘキサン(500ml)に吸収させ、濾過した。 残渣をn−ヘキサン(125ml)で洗浄し、合わせた濾液を水(各500ml)で3回洗浄し、MgSO 上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した:41.21gの褐色の油状物、収率91.9%、純度95.0wt%、異性体比2R:2S=50.7:49.3。 カラムクロマトグラフィー(2kgのシリカゲル60、0.063〜0.2mm、酢酸エチル/n−ヘキサン 1:9)による更なる精製及び蒸発乾固(40℃/16mbar→23℃/0.3mbar)により、37.3gの帯褐色の油状物(収率87.3%、純度99.65wt%、異性体比2R:2S=50.6:49.4)が得られた。

    図13は、実施例7の異性化生成物のクロマトグラムを示している。

    [実施例8]
    [(2R,4'R,8'R)−δ−トコフェロールの異性化]
    トルエン(10ml)中の(2R,4'R,8'R)−δ−トコフェロール(0.415g、96.96wt%、1.0mmol)の溶液に、アルゴン雰囲気下において、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.19g、1.0mmol)を添加した。 この溶液を、還流下(浴温度140℃)において7時間にわたり加熱した。 25℃まで冷却した後、褐色の反応混合物を、n−ヘキサン(25ml)で希釈し、連続的に水(20ml)、飽和NaHCO 溶液(10ml)及び飽和NaCl溶液(10ml)で洗浄し、MgSO 上で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した:0.430gの帯黄色の油状物、異性体比2R:2S=49.3:50.7(HPLC方法1により測定)。

    [デヒドロトコフェロールの異性化]
    [実施例9]
    [(2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロールの異性化]
    (2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロール(98.9mg、87.2wt%、0.201mmol)を、Kugelrohrオーブン中で真空下(約11mbar)において、7時間にわたり200℃で加熱した。 25℃まで冷却した後、黒色の油状物を、異性体比について分析した(2R:2S=51.0:49.0(HPLC方法1により測定))。

    図14は、実施例9の異性化生成物のクロマトグラムを示している。

    [実施例9A]
    [(2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロールの異性化]
    トルエン(2.5ml)中の(2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロール(521mg、82.3wt%、1.0mmol)の溶液に、34℃で、アルゴン雰囲気下において、リンタングステン酸水和物(32mg、0.01mmol)を添加した。 この混合物を、還流下(浴温度140℃、内部温度112℃)において2時間にわたり磁気撹拌した。 25℃まで冷却した後、暗褐色の反応混合物を、トルエン(3ml)で希釈し、飽和NaHCO 溶液(5ml)で洗浄した。 有機層を、Na SO (2g)上で乾燥させ、濾過し、固体をトルエン(5ml)で洗浄し、合わせた濾液を、50℃/16mbar/15分及び25℃/0.1mbar/1時間で蒸発乾固した:514mgの暗褐色の油状物、異性体比2R:2S=50.3:49.7(HPLC方法2により測定)。

    [実施例9B]
    [(2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロールの異性化]
    (2R,4'R,8'R)−3,4−デヒドロ−α−トコフェロール(521mg、82.3wt%、1.0mmol)と、n−ヘプタン(2.5ml)と、2.5gの炭酸エチレン(50℃で溶融)との混合物に、44℃で、アルゴン雰囲気下において、リンタングステン酸水和物(65mg、0.02mmol)を添加した。 この混合物を、還流下(浴温度140℃、内部温度101℃)において2.5時間にわたり磁気撹拌した。 60℃まで冷却した後、黒色の2相の反応混合物を、分液漏斗に移した。 飽和NaHCO 溶液(5ml)を添加し、この混合物をn−ヘプタン(3ml)で抽出した。 上方のヘプタン相を分離し、Na SO (2g)上で乾燥させ、濾過し、固体をn−ヘプタン(5ml)で洗浄し、合わせた濾液を、50℃/16mbar/15分及び25℃/0.1mbar/1時間で蒸発乾固した:509mgの暗褐色の油状物、異性体比2R:2S=49.0:51.0(HPLC方法2により測定)。

    [3. 分離の質]
    以下の実験は、異なる溶離剤を用いた、キラル相(Daicel Chiralpak(登録商標)IA(3μm)、250mm×4.6mm)による、(全−rac)−α−トコフェロール(DSM Nutritional Products)(100mg/ml)の異性体のクロマトグラフィー分離の質に関する流量1ml/分;検出280nm)。

    図15は、溶離剤中に異なるアルコールを用いた異性体の分離を示している。 全ての例において、0.5mgの(全−rac)−α−トコフェロールの絶対量に相当する5μlを注入した。


    この比較は、アルコールの種類が、異性体の分離の質に強い影響を及ぼすということを示している。 図15c)は、特に1−プロパノールが選択良好な分離特性を示すことを示している。

    図16は、溶離剤中の6.0未満のpK を有する有機酸(S1)の有益な効果を示している。 全ての例において、0.5mgの(全−rac)−α−トコフェロールの絶対量に相当する5μlを注入した。


    図17は、負荷能力に対する、溶離剤中のアルコールと6.0未満のpK を有する有機酸(S1)との組み合わせの有益な効果を示している。 異なる量を注入した。


    この比較は、エタノールの場合(図17a)及びb))は、カラムに注入された異性体混合物の量が比較的少ない時に既に2つのピークがかなり重なり合っているが、1−プロパノール及び酢酸の場合(図17c)及びd))は、分離がはるかに良好であり、カラムに注入された異性体混合物の注入量がはるかに多い時でさえも優れた分離が得られ得るということを示している。

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