【発明の詳細な説明】 【0001】 発明の背景 化合物(R * ,R * )-2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1-(3-メトキシフェニル)シクロヘキサノール塩酸塩は、常習性のない(非習慣性)鎮痛薬であり、トラマドール(Tramadol)としても知られている。 この化合物はドイツのGruenenthal GmbHで製造されており、商品名TramalおよびCrispinで販売されている。 トラマドールの合成方法は米国特許第3,652,589号に記載されており、これらは出典明示により本明細書に組込まれている。 この合成ではトランスおよびシス形化合物の混合が生じる。 本明細書中ではトランスおよびシス形のトラマドールと呼ぶ(但し、 トラマドールの名称を単独で使用する場合は、一般的に実質的に純粋なトランス形の化合物をいう)。 文献中では、シスとうべきものとトランスというべきものとに幾らか混同がみられる。 本明細書の開示では、トランス形のトラマドールと言えば、下記の2つの構造で示されるR,RおよびS,S異性体が含まれる: 【化1】 【0002】 シス形のトラマドールには(本明細書中でこの言い方を使用するとき)、下記の2つの構造で示すS,RおよびR,S異性体が含まれる: 【化2】 【0003】 各製造方法は、シスおよびトランス異性体の混合物を生じるグリニャール反応で始まる。 これらは、その後、従来技術で教示された方法で分離される。 米国特許第5,652,589号は、混合物を、無水ジオキサンおよび水の混合物を用いて、撹拌しながら1時間還流下で加熱し、濾過する方法を教示している。 得られたフィルターの残渣には、トランス形のトラマドール塩酸塩が含まれる。 濾液は約20 -30%のシス形および70-80%のトランス形の混合物である。 この濾液を、 さらに冷却して結晶を分離することができ、それから粉末化し室温でジクロロメタンと撹拌する。 シス異性体は溶けないが、トランス異性体は溶ける。 この溶液を濾過する。 濾液から実質的に純粋なトランス異性体が得られる。 このフィルター残渣をメタノールに溶かし、エーテルを加えて結晶化させる。 得られた結晶は、実質的に純粋なトラマドールのシス異性体である。 【0004】 米国特許第5,414,129号(出典明示により本明細書に組込まれている)は、トラマドールのシスおよびトランス異性体の、改良された精製および分離のプロセスを教示している。 この'129特許は、医薬の一部として使用されることになる化合物の製造でジオキサンを使用することについての多くの問題を記載している。 この記載に含まれるものは次のものである:ジオキサンは、OSHA(Kirk & Othm er, 3rd edition vol. 9, page 386)によってカテゴリーI発癌性物質として記載されており、そしてこれはCNS抑制および肝臓および腎臓の壊死を引き起こす(Kirk & Othmer, 3rd edition vol. 13, page 267)。 故に、残渣としてのジオキサンの存在はモニターされ、10億分の幾らかという制限が設定されている。 この'129特許はジオキサン使用を避ける方法を教示している。 トラマドールは、 まずグリニャール反応を経て合成されるが、それはシスおよびトランス形の混合物およびグリニャール反応副生物を生じるものである。 この混合生成物を、低分子量アルコール中の塩酸溶液、または中分子量アルコール、ケトン、エステルおよびエーテルまたは芳香族エーテルから選択される有機溶媒の存在下に、気体の塩化水素と混合し、トランス異性体(トラマドール)を選択的に沈殿させる。 この '129特許は、シスおよびトランス異性体を効果的に分離するジオキサンに代わる溶媒を見つけ出すのは非常に難しいが、特許中に記載のものは使用できることがわかったと記載している。 【0005】 発明の概要 本発明は、1)該添加剤の存在が該添加剤を使用せずに得られる場合より高度なトランス:シス比のトラマドールをもたらすような添加剤の存在下でのグリニャール反応、を含む工程手順での、トラマドールの合成、2)トルエンの存在下にトラマドール塩基にHClを加えることを本質的に含む工程を実施する、トランス:シスの割合を増加させないトラマドール塩酸塩の合成、および、3)トランスおよびシス形のトラマドールを塩酸塩形態に変換し、ニトリル溶媒から該塩酸塩形態を再結晶することにより、その間にトランス:シス比を増加させる、トラマドール塩酸塩の合成、からなるグループから選択されるプロセスにより、( R * ,R * )-2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1-(3-メトキシフェニル)シクロヘキサノール(トラマドール)を含む生成物を形成させる方法を提供するものである。 【0006】 発明の詳細な説明 ある実施態様によると、本発明は(R * ,R * )-2-[(ジメチルアミノ)メチル]-1 -(3-メトキシフェニル)シクロヘキサノール塩酸塩の合成および精製の改良方法である。 この方法で、改良されたトランス/シス割合が得られる。 アミン、ジグリムなどのエーテル、または類似物などの添加剤の存在下で、トラマドール塩基を合成する。 この塩基はその塩酸塩形態に変え、次いで、98%以上のトランス /シス割合が得られるまで、アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどの低分子量ニトリルから再結晶することができる。 これをその後、最終的にイソプロパノールから再結晶し、実質的にニトリル溶媒を含まないトランス異性体を生成させることができる。 この実施態様は、添加剤および新たな結晶化溶媒を利用するものであり、ジオキサンの使用を避け、非常に高度なトランス/シス生成物を生ずる。 【0007】 本明細書に記載の方法は、米国特許第5,652,589号に記載の先行技術(78-8 2%トランスのグリニャール生成物を生ずる方法)の改良である。 このグリニャール反応を添加剤の存在下で行なうと、85-92%トランス生成物が得られる。 アミンおよびエーテル添加剤はグリニャール試薬と錯体化すると考えられる( 例えばTDA-1[トリス(2-(2-メトキシエトキシ)エチルアミン]は幾つかのグリニャール試薬と錯体化する(Boudin et al., Tetrahedron 45:171-180 (1989) 、出典明示により本明細書に組込まれている))。 この錯体はスキーム1で大括弧して示す。 このグリニャールは、ジエチルエーテルまたはTHF(テトラヒドロフラン)、またはTHFとtBuOMe(t-ブチルメトキシエーテル)またはトルエンなど他の溶媒との混合物などの、標準的な溶媒中で行なわせることができる。 生成物は、慣用方法(エーテル、HCl、またはエタノールHCl/エーテル) またはTHF中またはアセトニトリル中(トルエンの存在下または非存在下)で、 塩酸塩に変換することができる。 最後の場合では、再結晶するために溶媒を粗塩酸塩から厳密に取り除く必要はない。 粗塩酸塩は、次いでアセトニトリルから再結晶し、98%以上のトランス異性体を得ることができる。 アセトニトリルからの2度目の再結晶で99.9%のトランス生成物を得ることができる。 イソプロパノールからの再結晶で、残存するアセトニトリルを取り除くことができる。 【0008】 ある実施態様によると、このプロセスは2つの部分を含む:(1)添加剤の存在下でのグリニャール反応の推進、および(2)先行技術の再結晶工程と比べて、新たな再結晶溶媒の使用。 グリニャール反応でのこの添加剤の使用はトランス生成物の収率を改善する。 【0009】 本発明の1つの態様(下記実施例6に示す)は、アセトニトリル中での注意深いアミンおよび塩化水素の濃度の制御により、塩酸塩形成工程中でより良いトランス/シス混合物への精製が生じること、を説明する。 この加えた修飾は、実施例8と比べて、必要とされる再結晶回数を減少させる。 【0010】 下記実施例について、精製した生成物のトランス/シス割合を測定する分析を行なった。 これらの分析を実施する方法は、下記のHPLC方法である:Phenon enex Prodigy 5, C8, 250 x 4.6 mm カラムを、検出を272nmでセットして使用した。 カラムを処理する緩衝剤は:25nM KH 2 PO 4 、HPLCグレード8 5% H 3 PO 4 (ホスフェート緩衝剤)でpH3.4に調製。 移動相Aは、ホスフェート緩衝剤 90%:アセトニトリル 10%からなる。 移動相Bは、ホスフェート緩衝剤 80%:アセトニトリル 20%からなる。 カラムおよび緩衝剤勾配を次の通りとした:100% 移動相Aに3分間保ち、それから直線的に0-75% 移動相Bを20分かけた。 75% 移動相Bに7分間保ち、それから0.1分で100% 移動相Aに戻した。 100% 移動相Aを用いて、カラムを9.9分間再平衡させた。 使用した流速は1.5mL/分であり、カラムを45°に保った。 シス異性体が最初に溶出し(11.2分)、それからトランス(RS,RS)異性体が最後に溶出する(12.1分)。 【0011】 トラマドール合成の総括的概略を図に示す。 図示の通り、3-ブロモアニソールを、1-メチルイミダゾールまたは下記実施例に記載の他の添加剤などの添加剤の存在下で、マグネシウムおよびテトラヒドロフラン(THF)と共にグリニャール反応に付し、グリニャール反応生成物を形成させる。 添加剤はより良いトラマドールのトランス:シス比をもたらす。 グリニャール反応生成物を、公知のマンニッヒ反応(例えばK. Flick, E. Frankus and E Friderichs, Arzneim-Forsch , 28(l): 107-113 (1978)およびC. Mannich and R. Braun. Chem. Berichte, 53 :1874-1876 (1920)参照)で調製できるマンニッヒ塩基Bと反応させる。 得られる生成物は、本明細書中に記載の通り処理して、高度なトランス:シス比を有するトラマドールを調製することができる。 【0012】 トラマドールの合成および精製の具体的な概略を、異なる添加剤を使用した下記の実施例に記載する。 最初の幾つかの実施例は、グリニャール反応へのトランス:シス比を増加させる添加剤の使用を例示説明し、そして後の実施例は、さらにトランス:シス比を改良する再結晶方法を例示説明する。 これらの実施例は例示説明の目的で提示しており、本発明をいかなる意味でも限定するものではない。 当業者に周知の標準技術または本明細書中に特記した技術を利用する。 【0013】 実施例1 添加剤 TDA-1の存在下での、トラマドール塩基の合成 THF 70mL中のMg旋削(5.8g、0.239モル)に、THF 5mL(洗浄分も含む)中3-ブロモアニソール 42.5g(0.227モル、1.5当量)を(機械的撹拌しながら)加え、最初に約1/5を加え、発熱反応が開始した後25分間かけて残部を加えた。 この混合物をさらに1時間還流した。 42℃まで放冷し、TD A-1[トリス(2-(2-メトキシエトキシ)エチルアミン、95%](36.5g、0. 113モル)を加え、次いでTHF 5mLで洗浄した。 乾燥tBuOMe中にマンニッヒ塩基 23.5g(0.151モル)を10分以上かけて加え、温度が32℃から67℃まで上昇した。 これを1.5時間還流し、次いで氷水浴中で16℃まで冷却し、 そして4M 塩化アンモニウム溶液 70mL(0.28モル)で中和した。 あるポイントでのポット温度は最大43℃になった。 17℃で4M HCl 12 0mLを加え、そして透明な溶液が得られた。 これにヘプタン 100mLを加え、 この混合物を濾過して少量のマグネシウムを取り除いた。 4M HClを5ml以上加えpH 1.4にした後、この層を分離した。 ヘプタン層を廃棄した。 水層をヘプタン 150mLで覆い、濃水酸化アンモニウムを用いてpH 9.3にした。 この層を分離し、水層を別のヘプタン(2×100mL)で抽出した。 併せたヘプタンを水(2×100mL)で洗浄した。 ヘプタンを硫酸マグネシウム(10g)で乾燥し、濃縮して油状物 28.68g(72%)を得た(NMRで溶媒は極微量しか検出されなかった)。 HPLCは、トランス/シス生成物の89/11混合物であることを示した。 この89%ものトランストラマドール生成は、従来技術の78-89 % トランス生成を改善したものである。 【0014】 実施例2 添加剤 1-メチルイミダゾールの存在下での、トラマドールの合成マンニッヒ反応を実施し、水中にマンニッヒ塩酸塩を生成させた。 これをpH 10.8に調節し、トルエンで抽出し、それから硫酸マグネシウムで乾燥した。 トルエン中にマンニッヒ塩基B 98gを含む溶液 200mLをこうして得た。 【0015】 乾燥THF 425mL中のマグネシウム旋削 24gに、メタブロモアニソール 177gを、還流温度で反応を保持する程度の速さで加えた。 添加後、1時間還流を続けた。 60℃の温度で、1-メチルイミダゾール 77gを加えた。 沈殿物が生じた。 沈殿物が全部溶解するまで混合物を撹拌した。 放冷して温度を28℃ にし、それからマンニッヒ塩基Bのトルエン溶液(上述)を15分以上かけて加え、そのとき温度が60℃まで上昇した。 反応混合物を2時間撹拌し、放置して室温まで冷却した。 混合物を15℃まで冷却し、4M塩化アンモニウム水溶液 4 20mLを、温度を30℃以下に保ちながらゆっくり加えた。 混合物に水 350m Lを加えた。 この混合物を冷却し、濃塩酸 215mLを加え、pH1.0にした。 上方の有機層を分離し、廃棄した。 水層をトルエン 150mLで洗浄し、トルエンを廃棄した。 水性混合物を氷浴中で冷却し、それから濃水酸化アンモニウム 355mLでpH 9.5にした。 この混合物をトルエン 140mLで抽出した。 分離前に2相混合物を濾過して、不溶物を取り除いた。 水層を第2のトルエン 14 0mLで抽出し、このトルエン抽出物を併せた。 移すために少量のトルエンを加えた。 約90mLのトルエンを留出し、水を取り除いた。 このトルエン溶液を分析し、Cのトランス/シス異性体混合物 106gが、90.3/9.7割合(HPLC)であることが示された。 溶液の単純な分析では、サンプル 数ミリリットルから溶媒をロータリーエバポレーターで取り除き、次いで高減圧下で乾燥した。 この溶液は、そのまま実施例8のタイプの実験に使用することができ、またはさらに濃縮することができる。 最初の水層をトルエンでさらに抽出して、所望生成物 5. 4g以上が得られた。 【0016】 実施例1のとおり、グリニャール反応で添加剤を使用しない従来技術の方法と比べて、添加剤の存在がトランス:シス比の改善をもたらすことが分かる。 さらなる精製のために、この生成物を塩酸塩に変え、実施例5のようにアセトニトリルから再結晶させるか、または実施例8のように幾らかのトルエンを戻して加えて使用することができる。 【0017】 実施例3 添加剤 ジグリムの存在下におけるトラマドールの合成乾燥THF 15mL中のマグネシウム 1.88gに、THF 2mL中のm-ブロモアニソール 14.5をゆっくり加えた。 その後、この混合物を40分間以上還流した。 それから乾燥9-メトキシエチルエーテル(ジグリム) 20mLを加え、得られた沈殿物が全て溶解するまで撹拌した。 THF 3mL中のマンニッヒ塩基B 6 .0gを15分後に加えた。 温度が62℃まで上昇し、さらに30分間、60−8 0℃に保った。 この混合物を4M塩化アンモニウムで中和し、実施例1のように後処理した。 ヘプタン抽出物を水で洗浄し、濃縮して、トランス/シス 88.2/ 11.8(HPLC)の油状物C 5.9gを得た。 上述の実施例1および2のとおり、グリニャール反応中の添加剤の存在はトランス形トラマドールの収率改善をもたらす。 【0018】 実施例4 グリニャール中のアミンおよびエーテル添加剤エーテル添加剤と同様に、様々なアミン添加剤をグリニャール反応中で試験した。 これらを次の表に示す。 これらの添加剤の幾らか(TDA-1、1-メチルイミダゾール、およびジグリム)の使用については、それぞれ実施例1、2および3で既に記載してある。 添加剤を使用していない文献手順(米国特許第5,652,589 号)により実施した反応結果2例も示す。 実施例1のTDA-1については、2当量のグリニャールを使用し、TDA-1は実験量(当量)である。 残りの実施例中では、1.5-1.6当量のグリニャールを使用し、1モルのグリニャールに1モルのアミンを加えた。 【0019】 表 グリニャール中のアミンおよびエーテル添加剤および生成物の比 【表1】 【表2】 【0020】 上述の実施例のとおり、添加剤はトランス/シス割合に効果を及ぼす。 従来技術実施例では78/22または81/19の割合を生じた。 添加剤を用いる本発明の操作では82/18の低い比から90.6/9.4の高い比までが得られた。 数種の添加剤は比率に小さな効果しか及ぼさないが(例えば僅か82/18比しか生じない)、他のものは劇的な効果を及ぼした。 例えば、約90/10の割合の生成物は、望ましくいシス生成物の量が従来技術の方法と比べて僅かに約半分である。 高度な割合の結果は、必要な結晶化工程の実施が少なくなることを示している。 【0021】 実施例5 塩酸塩のアセトニトリルからの再結晶による、トラマドールのさらなる精製実施例1で残存した油状物 28.04g(107ミリモル)を、例えば米国特許第3,652,589号等の標準方法で塩酸塩に変換した。 この生成物を空気乾燥し、塩酸塩 28.7gを白色固体として得た(89%・この工程で)。 HPLCはトランス/シスが91/9割合であることを示した。 この28.53gを機械的撹拌(および冷却)しながら、アセトニトリル 255mL(化合物に対して8.5-9mL/g)から再結晶し、18.8gを得た。 アセトニトリル 170mLからの2回目の再結晶で16.49gを得た。 イソプロパノール 62mL(化合物に対して約3.8mL/g使用) からの最後の再結晶で13.39gを得た。 HPLCはトランス/シスが99.99 /0.01比であることを示した。 アセトニトリルからの再結晶は、塩基の形成中で形成された初期の割合と比べて、改良されたトランス:シス比となることが分かった。 ここで初期生成物(実施例1で調製したトラマドール塩基C)は89:1 1のトランス:シス比であるのに対して、塩酸塩に変換した後アセトニトリルからの結晶化を3回行なうと、割合は99.99:0.01に改良されていた。 【0022】 実施例6 アセトニトリル中での塩酸塩の生成およびそこからの結晶化最も有利な方法は、アセトニトリル中、1.2-1.3当量のHClを使用して塩酸塩を調製し、結晶化し、アセトニトリルから2回目の結晶化を行ない、イソプロパノールから最終結晶化を行ない極微量のアセトニトリルを取り除くというものであることが判明している。 実施例2由来のグリニャール生成物Cの乾燥トルエン溶液のサンプルをロータリーエバポレーターで濃縮し、18gを得た。 サンプルの試験で、15.5gのアミンが含まれ、残りはトルエン(2.5g)であることが示された。 サンプルをアセトニトリル 120mL中で撹拌し、HCl 2.6g のアセトニトリル溶液(29mLの溶液)を加えた。 温度は42℃まで上がり、それから放冷した。 29℃で沈殿物の形成が始まった。 混合物をさらに1.5時間撹拌し、それから23℃で濾過し、次いでアセトニトリル 15mLで洗浄した。 減圧乾燥し、トランス:シス 99.3/0.7の塩酸塩を得た。 【0023】 実施例7 粗製トラマドール塩基(グリニャール 生成物)からのトラマドール塩酸塩の調製氷冷した乾燥アセトニトリル 40mLに塩化水素ガスを吹き込んだ。 重量が3. 7g上昇し、容積を測定すると43mLであった。 この40mL(3.44g HCl; 94.5ミリモルを含む)を下記に使用した。 トラマドール塩基C(15.4g、8 9.8/10.2のトランス/シス異性体含有)を乾燥アセトニトリル 105mLに溶かした。 この40mLに増分の10mLを加え、温度を18℃から35℃まで上げた。 1時間後、混合物を20℃まで冷却し、濾過し、アセトニトリル 10mLで洗浄した。 乾燥後、11.6gが得られ(収率67%)、98%以上がトランスであった。 【0024】 実施例8 トランス:シスの割合を改良することなく形成される塩酸塩再結晶工程がトラマドールのトランス:シス比を改善するか否かは、再結晶を行なう溶媒組成に依存する。 トラマドールの塩酸塩形態を調製し、それから高トルエン濃度溶媒の存在下で結晶化すると、トランス:シスの割合は本質的に変化しないままであった。 これは、実施例5-7の場合での高アセトニトリル濃度を有する溶媒からの再結晶とは対照的である。 【0025】 HClガス 1.8g(5℃で吹き込み)のアセトニトリル溶液 21mL(2.0M溶液)を、トルエン 30mL中のグルニャール生成物C(トランス/シス 90/10) 10.2gに加え、3時間機械的撹拌を行なった。 この混合物を濾過し、トルエンで洗浄した。 減圧乾燥し、11.2g(96%回収)を得た。 得られた塩酸塩のトランス:シス比は92:8であり、グリニャール生成物C 10.2gと実質的に同じトランス:シス比であった。 【0026】 アセトニトリル 90mLからの再結晶では8.83gが得られ、これはトランス/ シスが96.6/3.4(HPLCによる)であった。 この8.6gをアセトニトリル 75mLから再結晶し、99.6/0.4のトランス/シス割合、7.44g、を得た。 【0027】 この実施例は、比較的多量のトルエン(ここでは約60%)の存在下での塩酸塩の形成およびトルエン-アセトニトリルからの結晶化は、トランス:シス比を改良しないことを示している。 結晶化工程中のトルエンおよびアセトニトリル混合物中のトルエンのパーセンテージが減少すると、回収される生成物のトランス: シス比が増加する。 アセトニトリルから塩酸塩を再結晶すると各工程でトランス:シス比が改善される。 【0028】 本発明は、本特許出願中で、本発明の好ましい実施態様の詳細を参照して開示しているが、この開示は限定的な意味ではなく例示を意図するものであると理解されるべきであり、その修飾は、本発明の精神と付属の請求項の範囲内で、当業者は容易に思い浮かぶであろう。 【図面の簡単な説明】 【図1】 スキーム1は、本発明によるトラマドール合成の概略を示す。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ロバート・イー・ハルバックス アメリカ合衆国62223イリノイ州ベルビル、 フレデリックスバーグ・ドライブ309番 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC22 AC27 AC90 AD15 BA50 BA51 BB11 BB15 BB21 BB25 BJ20 BJ50 BN20 BP30 BU34 |