Production of organic compound by using imide as catalyst

申请号 JP2000179185 申请日 2000-06-14 公开(公告)号 JP2001354596A 公开(公告)日 2001-12-25
申请人 Daicel Chem Ind Ltd; ダイセル化学工業株式会社; 发明人 KITAYAMA KENJI; TATSUMI JUNRO; TERADA MASAHIKO; HIRAI NARIHISA;
摘要 PROBLEM TO BE SOLVED: To provide a chemical process that can produce the objective organic compound in higher conversion and selectivity by using an imide, for example, N-hydroxy-phthalimide, as a reaction catalyst.
SOLUTION: In this process for producing an organic compound according to this invention, an imide represented by the following formula (1) (wherein R1 and R2 are each an alkyl, an aryl, a cycloalkyl and the like and they may be connected to each other to form a double bond or an aromatic or nonaromatic ring; X is an O atom or a hydroxyl group) is used as a catalyst. This imide catalyst is sequentially added to the reaction system whereby the reaction is carried out. As examples of the reactions, are cited oxidation, carboxylation, nitration, sulfonation, carbon - carbon bond formation, and the like.
COPYRIGHT: (C)2001,JPO
权利要求 【特許請求の範囲】
  • 【請求項1】 下記式(1) 【化1】 (式中、R 1及びR 2は、同一又は異なって、水素原子、
    ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R 1及びR 2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。 Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。 前記R 1 、R 2 、又はR 1及びR 2
    が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)で表されるイミド化合物を触媒として用いる有機化合物の製造法であって、前記イミド化合物触媒を反応系に逐次添加して反応を行う有機化合物の製造法。
  • 【請求項2】 反応が酸化反応、カルボキシル化反応、
    ニトロ化反応、スルホン化反応及び炭素−炭素結合生成反応から選択された反応である請求項1記載の有機化合物の製造法。
  • 说明书全文

    【発明の詳細な説明】

    【0001】

    【発明の属する技術分野】本発明は、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド化合物を触媒として用いて各種の有機化合物を製造する方法に関する。

    【0002】

    【従来の技術】N−ヒドロキシフタルイミド等のイミド化合物は、分子状酸素による酸化、カルボキシル化、ニトロ化、スルホン化、炭素−炭素結合生成反応(アシル化、ラジカルカップリング反応等)などの諸反応を温和な条件下で円滑に進行させる触媒として注目されている。

    【0003】例えば、特開平8−38909号公報及び特開平9−327626号公報には、イミド化合物触媒の存在下、炭化素やアルコールなどの基質を分子状酸素で酸化して、対応するアルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸などを製造する方法が開示されている。
    特開平9−278675号公報には、前記イミド化合物触媒を用いた共役化合物の酸化方法が開示されている。
    特開平10−316610号公報には、前記イミド化合物触媒の存在下、エーテル類を酸化すると、エステル、
    酸無水物、ラクトン等が生成することが記載されている。 WO99/50204には、前記イミド化合物触媒と共酸化剤の存在下、非芳香族性のエチレン結合を有する化合物を分子状酸素により酸化して対応するエポキシドを製造する方法、及び前記イミド化合物触媒と共酸化剤の存在下、ケトンを分子状酸素で酸化して対応するエステル又はラクトンを製造する方法が記載されている。

    【0004】また、特開平11−239730号公報には、イミド化合物触媒の存在下、基質を窒素酸化物と反応させて対応するニトロ化合物を得る方法、及び前記触媒の存在下、基質を一酸化炭素及び酸素と反応させて対応するカルボン酸を製造する方法が開示されている。 W
    O99/41219には、イミド化合物触媒の存在下、
    基質を酸素及びビアセチルなどの1,2−ジカルボニル化合物等と反応させると、温和な条件下でアシル化反応が進行することが記載されている。 日本化学会1999
    年春季年会予稿集には、N−ヒドロキシフタルイミドを触媒とし、α,β−不飽和エステルとアルコールと酸素とを反応させると、ラジカルカップリング反応が進行して、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが良好な収率で生成することが報告されている。 また、同予稿集には、N−ヒドロキシフタルイミドを触媒とし、アダマンタンなどの炭化水素類を酸素及び二酸化硫黄と反応させると、対応するスルホン酸が生成することが報告されている。

    【0005】このように、イミド化合物触媒は酸化反応を初めとする広範な有機合成反応の触媒として極めて有用であるが、該触媒を用いてより高い転化率や選択率で目的化合物を製造できる方法が求められている。

    【0006】

    【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド化合物触媒を用いて有機化合物を製造するに際し、より高い転化率や選択率で目的化合物を製造できる方法を提供することにある。

    【0007】

    【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討の結果、イミド化合物触媒を反応系に逐次添加して反応を行うと、反応原料(基質)
    の転化率及び/又は目的化合物の選択率が顕著に向上することを見出し、本発明を完成した。

    【0008】すなわち、本発明は、下記式(1)

    【化2】

    (式中、R

    1及びR

    2は、同一又は異なって、水素原子


    ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基を示し、R

    1及びR

    2は互いに結合して二重結合、又は芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成してもよい。 Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示す。 前記R

    1 、R

    2 、又はR

    1及びR

    2


    が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)で表されるイミド化合物を触媒として用いる有機化合物の製造法であって、前記イミド化合物触媒を反応系に逐次添加して反応を行う有機化合物の製造法を提供する。

    【0009】前記反応として、酸化反応、カルボキシル化反応、ニトロ化反応、スルホン化反応及び炭素−炭素結合生成反応などが挙げられる。

    【0010】

    【発明の実施の形態】[イミド化合物]前記一般式(1)で表されるイミド化合物において、置換基R 1及びR 2のうちハロゲン原子には、ヨウ素、臭素、塩素およびフッ素が含まれる。 アルキル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、
    ヘプチル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含まれる。 好ましいアルキル基としては、例えば、炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が挙げられる。

    【0011】アリール基には、フェニル、ナフチル基などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチル、
    シクロヘキシル、シクロオクチル基などが含まれる。 アルコキシ基には、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−
    ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度、好ましくは炭素数1〜6程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が含まれる。

    【0012】アルコキシカルボニル基には、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度のアルコキシカルボニル基が含まれる。 好ましいアルコキシカルボニル基にはアルコキシ部分の炭素数が1〜6程度、特に1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。

    【0013】アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6
    程度のアシル基が例示できる。

    【0014】前記置換基R 1及びR 2は、同一又は異なっていてもよい。 また、前記一般式(1)において、R 1
    およびR 2は互いに結合して、二重結合、または芳香族性又は非芳香族性の環を形成してもよい。 好ましい芳香族性又は非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度であり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水素環である場合が多い。 このような環には、
    例えば、非芳香族性脂環式環(シクロヘキサン環などの置換基を有していてもよいシクロアルカン環、シクロヘキセン環などの置換基を有していてもよいシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基を有していてもよい芳香族性環(縮合環を含む)が含まれる。 前記環は、芳香族性環で構成される場合が多い。 前記環は、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有していてもよい。 前記一般式(1)において、Xは酸素原子又はヒドロキシル基を示し、窒素原子NとXとの結合は単結合又は二重結合である。

    【0015】前記R 1 、R 2 、又はR 1及びR 2が互いに結合して形成された二重結合又は芳香族性若しくは非芳香族性の環には、上記式(1)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい。 例えば、R 1又はR 2が炭素数2以上のアルキル基である場合、このアルキル基を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。 また、R 1及びR 2が互いに結合して二重結合を形成する場合、該二重結合を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。 さらに、R 1及びR 2が互いに結合して芳香族性若しくは非芳香族性の環を形成する場合、該環を構成する隣接する2つの炭素原子を含んで前記N−置換環状イミド基が形成されていてもよい。
    一般式(1)で表されるイミド化合物は反応において一種又は二種以上使用できる。

    【0016】好ましいイミド化合物には、下記式で表される化合物が含まれる。

    【化3】

    (式中、R

    3 〜R

    6は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示す。R

    3 〜R

    6は、隣接する基同士が互いに結合して芳香族性又は非芳香族性の環を形成していてもよい。式(1f)中、Aはメチレン基又は酸素原子を示す。R

    1


    2 、Xは前記に同じ。 式(1c)のベンゼン環には、式(1c)中に示されるN−置換環状イミド基がさらに1又は2個形成されていてもよい)

    【0017】置換基R 3 〜R 6において、アルキル基には、前記例示のアルキル基と同様のアルキル基、特に炭素数1〜6程度のアルキル基が含まれ、ハロアルキル基には、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜4程度のハロアルキル基、アルコキシ基には、前記と同様のアルコキシ基、特に炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基、
    アルコキシカルボニル基には、前記と同様のアルコキシカルボニル基、特にアルコキシ部分の炭素数が1〜4程度の低級アルコキシカルボニル基が含まれる。 また、アシル基としては、前記と同様のアシル基、特に炭素数1
    〜6程度のアシル基が例示され、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素原子が例示できる。 置換基R 3
    〜R 6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級アルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子である場合が多い。 R 3 〜R 6が互いに結合して形成する環としては、前記R 1及びR 2が互いに結合して形成する環と同様であり、特に芳香族性又は非芳香族性の5〜12
    員環が好ましい。

    【0018】式(1)で表されるイミド化合物は、慣用のイミド化反応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンNH 2 OHとを反応させ、酸無水物基の開環及び閉環を経てイミド化する方法により調製できる。

    【0019】前記酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環式多価カルボン酸無水物(脂環式多価カルボン酸無水物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,
    5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族多価カルボン酸無水物が含まれる。

    【0020】好ましいイミド化合物としては、例えば、
    脂肪族多価カルボン酸無水物から誘導されるイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミドなど)、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるイミド化合物(例えば、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−
    ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N′−
    ジヒドロキシピロメリット酸イミド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン酸イミドなど)などが挙げられる。

    【0021】特に好ましいイミド化合物には、脂環式多価カルボン酸無水物又は芳香族多価カルボン酸無水物、
    なかでも芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN
    −ヒドロキシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イミドなどが含まれる。 式(1)で表されるイミド化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。

    【0022】なお、前記イミド化合物は担体に担持した形態で用いてもよい。 担体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が多い。

    【0023】前記イミド化合物の使用量は、基質や反応の種類によっても異なるが、一般には、基質1モルに対して0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜
    0.5モル、さらに好ましくは0.01〜0.4モル程度であり、0.05〜0.35モル程度である場合が多い。

    【0024】[助触媒]前記イミド化合物は助触媒とともに使用することもできる。 助触媒を用いることにより反応速度や反応の選択性を向上できる場合がある。 助触媒は一種又は二種以上組合わせて使用できる。

    【0025】助触媒としては、例えば、遷移金属や周期表13族元素を含む化合物(例えば、酸化物、水素化物、窒化物、酸素酸又はその塩、酸素酸エステル、ヘテロポリ酸又はその塩、有機酸塩、無機酸塩、ハロゲン化物、錯体など)などが使用できる。 前記遷移金属の元素としては、例えば、周期表3族元素(例えば、スカンジウムSc、イットリウムYの外、セリウムCe、サマリウムSmなどのランタノイド元素、アクチノイドAcなどのアクチノイド元素)、4族元素(チタンTi、ジルコニウムZrなど)、5族元素(バナジウムV、ニオブNbなど)、6族元素(クロムCr、モリブデンMo、
    タングステンWなど)、7族元素(マンガンMn、テクネチウムTc、レニウムReなど)、8族元素(鉄F
    e、ルテニウムRuなど)、9族元素(コバルトCo、
    ロジウムRhなど)、10族元素(ニッケルNi、パラジウムPd、白金Ptなど)、11族元素(銅Cuなど)などが挙げられる。 好ましい元素には、Ce,V,
    Nb,Cr,Mo,W,Mn,Fe,Ru,Co,R
    h,Ni,Cuなどが含まれる。 周期表13族元素には、ホウ素B、アルミニウムAlなどが含まれる。

    【0026】また、助触媒として、系内に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の重合開始剤、ラジカル発生剤やラジカル反応促進剤[硝酸若しくは亜硝酸又はこれらの塩、ハロゲン(塩素、臭素など)、過酸、過酸化物、アルデヒド(カルボン酸を製造する場合においては該カルボン酸に対応するアルデヒド等)など]などを存在させてもよい。 このような成分を系内に存在させると反応が促進される場合がある。 また、基質濃度が高いと反応が阻害されることがあるが、AIBN等の重合開始剤や前記アルデヒド等を添加すると、基質濃度が高濃度であっても反応が円滑に進行する。

    【0027】助触媒の使用量は、助触媒や反応の種類によっても異なるが、一般には、基質1モルに対して0.
    00001〜0.8モル、好ましくは0.0001〜
    0.3モル、さらに好ましくは0.001〜0.1モル程度である。

    【0028】[基質及び反応生成物]本発明において、
    反応原料(基質)として用いられる化合物には、前記イミド化合物触媒の存在下で、分子状酸素による酸化、カルボキシル化、ニトロ化、スルホン化、炭素−炭素結合生成反応(アシル化、ラジカルカップリング等)などの反応が可能な部位を有する種々の化合物が含まれる(前記従来の技術の項に示した文献参照)。 これらの化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用される。

    【0029】基質の代表的な例として、例えば、炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、複素環化合物、チオール類、スルフィド類、アミド類などが挙げられる。 なかでも好ましい基質には、炭化水素類、アルコール類、アルデビド類、ケトン類などが含まれる。

    【0030】炭化水素類としては、例えば、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和脂環式炭化水素類、完全又は部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環を含む縮合環式炭化水素類、第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素類、芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素類などが挙げられる。

    【0031】飽和又は不飽和脂肪族炭化水素類としては、例えば、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカンなどのC 4-20飽和炭化水素;2−
    ブテン、イソブテンなどのC 4-20オレフィン炭化水素;
    ブタジエン(1,3−ブタジエン)、イソプレン(2−
    メチル−1,3−ブタジエン)などの共役ジエン類などの直鎖及び分枝状の脂肪族炭化水素(好ましくは、イソブタンなどの分枝状飽和炭化水素、イソブテンなどの分枝状不飽和炭化水素、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類など)などが例示される。

    【0032】飽和又は不飽和脂環式炭化水素類には、例えば、シクロアルカン類(例えば、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリデカン、シクロテトラデカン、シクロオクタデカン、シクロエイコサン、シクロドコサン、シクロテトラコサン、シクロトリアコンタンなど)、環状オレフィン類(例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、
    シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセンなど)、シクロアルカジエン類(例えば、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4
    −シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンなどのシクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエンなどのシクロオクタジエンなど)、シクロアルカトリエン類(例えば、シクロオクタトリエンなど)、シクロアルカテトラエン類(例えば、シクロオクタテトラエンなど)、テルペン類(例えば、リモネン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、
    1−p−メンテン、3−p−メンテン、cis−カルベオール、trans−カルベオール、α−セドレン、バレンセン、イソロンギホレンなど)などが挙げられる。
    好ましい脂環式炭化水素類には、3〜30員環、好ましくは3〜25員環、特に3〜20員環(例えば5〜20
    員環、とりわけ5〜16員環)程度の脂環式炭化水素類が含まれる。 なお、上記テルペン類のうち多環式化合物は、多環式炭化水素類にも分類される。

    【0033】縮合多環式炭化水素類又は橋かけ環式炭化水素類などの多環式炭化水素類には、少なくとも一つのメチリジン基(すなわち、メチン炭素−水素結合−CH
    <)を橋頭位及び/又は接合位(環と環との接合位)に有する化合物が含まれる。 完全又は部分水素添加縮合多環式炭化水素などの非芳香族性環を含む縮合多環式炭化水素類には、例えば、アセナフテン、フルオレン、テトラリン、インデン、インダン、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロフェナレン、パーヒドロアセナフチレン、デカリン、ヘキサヒドロインダンなどが挙げられ、5〜8員環(特に5又は6
    員環)が縮合している場合が多い。

    【0034】橋かけ環式炭化水素類には、例えば、二環式炭化水素(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカンなど)、三環式炭化水素(例えば、アダマンタン、エキソトリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカン、エンドトリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンなど)、四環式炭化水素(例えば、テトラシクロ[4.4.0.1 2,5
    7,10 ]ドデカンなど)などの他、ジシクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエンなどのジエンの二量体、これらの二量体の水素添加物(例えば、ジシクロヘキサン、
    ジシクロペンタンなど)およびこれらの誘導体やテルペン類(例えば、単環式モノテルペン、二環式モノテルペン、単環式セスキテルペン、二環式セスキテルペン、三環式セスキテルペン、ジテルペン、トリテルペン、テトラテルペン、ポリテルペン及びこれらの誘導体など)などが挙げられる。 橋かけ環式炭化水素類としては、環を構成する炭素数が7〜16程度(特に炭素数6〜14程度)の二環式ないし四環式炭化水素(例えば、ピナン、
    ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタンなど)を用いる場合が多い。

    【0035】芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素類は、少なくとも一つのメチル基又はメチレン基が芳香族性環に置換した化合物であればよく、芳香族性環は、芳香族性炭化水素環、芳香族性複素環の何れであってもよい。 このような化合物として、
    例えば、トルエン、(o−,m−,p−)キシレン、
    1,2,3−トリメチルベンゼン、メシチレン、1,
    2,3,4−テトラメチルベンゼン、デュレン、4−t
    −ブチル−1−メチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、o−,m−又はp−エチルトルエン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、
    1,5−ジメチルナフタレン、2,5−ジメチルナフタレン、1−メチルアントラセン、2−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、4,4′−ジメチルビフェニル、ジベンジル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタンなどが挙げられる。 これらのなかでも、メチル基の置換数が、分子中1〜4個程度のC 6-10芳香族炭化水素などが特に好ましい。

    【0036】前記炭化水素類は、その炭化水素の種類に応じて、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環式基、オキソ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アミノ基、置換アミノ基、シアノ基、ニトロ基などが置換していてもよい。

    【0037】好ましい炭化水素類には、(1)共役ジエン類(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)(2)不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物(例えば、2−ブテンなどのC 4-20オレフィン炭化水素など)、(3)脂環式炭化水素(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの5〜16員環のシクロアルカン、シクロヘキセンなどの5〜16員環のシクロアルケン、バレンセンなどのテルペン類など)、
    (4)非芳香族性環(例えば、シクロアルカン環又は複素環)を含む縮合環式化合物(例えば、デカリン、テトラリン、フルオレンなど)、(5)第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素(例えば、アダマンタン、ノルボルネンなど)、(6)芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素(例えば、トルエン、(o−,m−,p−)キシレン、p−t
    −ブチルトルエンなどの1〜4個のメチル基を有するC
    6-10芳香族炭化水素;ジフェニルメタンなどのメチレン基が芳香環に結合した芳香族炭化水素等)などが含まれる。

    【0038】前記炭化水素類を、前記イミド化合物触媒の存在下、酸素で酸化することにより、対応するアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エポキシ化合物、ラクトン、酸無水物、アセタール類、エステル類などの酸化物が生成する。 例えば、共役ジエン類の酸化により、対応するアルケンジオール類が生成する。 例えば、ブタジエンの酸化により生成する酸化物はブテンジオール類(2−ブテン−1,4−ジオール又は1−ブテン−3,4−ジオールのシス体又はトランス体)であり、特にヒドロキシル基の位置は制限されない。 不飽和結合に隣接する部位に炭素−水素結合を有する化合物を酸化すると、該不飽和結合に隣接する部位が酸化される。 脂環式炭化水素を酸化すると、環にヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、条件によっては環が酸化的に開裂してジカルボン酸などが生成する。 非芳香族性環を含む縮合環式化合物を酸化すると、該非芳香族性環にヒドロキシル基又はオキソ基が導入され、条件によっては環が開裂してジカルボン酸などが生成する。 第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素を酸化すると該第三級炭素原子(橋頭位など)にヒドロキシル基が導入されたり、反応条件により、その隣接位にオキソ基が導入される。 芳香族性環にメチル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素を酸化すると、該メチル基又はメチレン基が酸化され、条件により、対応するアルコール、アルデヒド、ケトン又はカルボン酸が生成する。

    【0039】また、前記炭化水素類を前記イミド化合物触媒の存在下、酸素及び一酸化炭素、窒素酸化物(N
    O、NO 2 、N 23など)、硫黄酸化物(SO 2など)、
    1,2−ジカルボニル化合物、又はラジカル的な炭素−
    炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させることにより、それぞれ、対応するカルボン酸、ニトロ化合物、有機硫黄酸(スルホン酸など)、アシル化反応生成物(アルデヒド、ケトン)又は炭素−炭素結合形成反応生成物若しくはその誘導体(例えば、酸化体、ラクトン等の環化体など)が生成する。 例えば、第三級炭素原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素を、前記イミド化合物触媒の存在下、酸素及び一酸化炭素、窒素酸化物(N
    O、NO 2 、N 23など)、硫黄酸化物(SO 2など)、
    1,2−ジカルボニル化合物、又はラジカル的な炭素−
    炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させると、前記第三級炭素原子に、カルボキシル基、ニトロ基、スルホン酸基、アシル基、炭化水素基等が導入された化合物又はその誘導体が生成する。

    【0040】前記ラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物としては、例えば、不飽和化合物、メチン炭素原子を有する化合物などのラジカルを捕捉可能な化合物が挙げられる。 前記不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、桂皮酸エステル、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、スチレン等の炭素−炭素不飽和結合の隣接位に電子吸引基を有する不飽和化合物(活性オレフィン類など);メチルアセチレン等の炭素−炭素三重結合を有する化合物;ベンゼン環などの芳香族性炭素環を有する化合物;ケテン類;イソシアネート又はチオシアネート化合物;プロピレン、1−オクテンなどの非活性オレフィンなどが挙げられる。 前記メチン炭素原子を有する化合物としては、デカリン、アダマンタンなどの橋かけ環式化合物;1−メチルシクロヘキサンなどの環に炭化水素基が結合した非芳香族性環状化合物;イソブタンなどの第3級炭素原子を有する鎖状炭化水素類などが挙げられる。 これらの化合物は、不飽和結合を構成する炭素原子やメチン炭素原子の部位で、基質と炭素−炭素結合を形成する。

    【0041】基質としてのアルコール類には、前記炭化水素類のアルコール誘導体が含まれ、例えば、脂肪族一価アルコール類、脂肪族多価アルコール類、脂環式一価アルコール類、脂環式多価アルコール類又は芳香族アルコール類などが含まれる。

    【0042】脂肪族一価アルコール類には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、
    1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ミリスチルアルコール、1−ヘキサデカノールなどのC 1-20飽和脂肪族アルコール;アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール、シトロネロール、ゲラニオールなどの不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。 脂肪族多価アルコール類には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ピナコール、グリセリンなどが挙げられる。 脂環式一価アルコール類には、例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロデカノール、シクロウンデカノール、シクロドデカノール、シクロテトラデカノール、シクロエイコサノール、
    メチルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オール、シクロオクテン−1−オール、シクロゲラニオール、ボルネオール、メントールなどの5〜30員環の脂肪式一価アルコールなどが挙げられる。 好ましい脂環式一価アルコール類には、5〜30員環、好ましくは5〜
    25員環、特に5〜20員環(例えば、5〜16員環)
    の化合物が含まれる。 脂環式多価アルコール類には、例えば、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどが挙げられ、芳香族アルコール類には、例えば、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、ベンズヒドロール、フェネチルアルコールなどが挙げられる。

    【0043】これらのアルコールのうち第一級又は第二級アルコールが好ましく、脂肪族アルコール、脂環式アルコール及び芳香族アルコールの何れであってもよい。

    【0044】好ましいアルコール類には、(1)不飽和結合に隣接する部位にヒドロキシル基を有する化合物(例えば、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ベンズヒドロールなどの不飽和脂肪族アルコールや芳香族アルコールなど)、(2)脂環式アルコール(例えば、
    シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノールなどのC 5-16シクロアルカノールなど)、(3)第三級炭素原子(メチン炭素)を有する脂環式アルコール(例えば、
    ボルオネールなど)などが含まれる。

    【0045】これらのアルコール類を、前記イミド化合物触媒の存在下、酸素で酸化することにより、対応するアルデヒド類、ケトン類又はカルボン酸類が生成する。
    例えば、脂環式アルコール類は、酸化の程度に応じて、
    対応する脂環式ケトン類又は多価カルボン酸が生成する。 例えば、2−メチルシクロヘキサノールの酸化により、2−メチルシクロヘキサノン、さらには、2−メチルアジピン酸が生成する。 また、第1級又は第2級アルコールを前記イミド化合物触媒の存在下、前記ラジカル的な炭素−炭素結合形成反応の可能な化合物と反応させることにより、対応する炭素−炭素結合形成反応生成物若しくはその誘導体(例えば、酸化体、ラクトン等の環化体など)が生成する。 この場合、第1級又は第2級アルコールのヒドロキシル基が結合している炭素原子部位で炭素−炭素結合が形成される。

    【0046】基質としてのアルデヒド類には、前記炭化水素類のアルデヒド誘導体が含まれ、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、
    ブチルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、ノナナールなどのC 1-20飽和脂肪族アルデヒド;アクロレイン、ゲラニアール、シトロネラールなどの不飽和脂肪族アルデヒド;グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデビド、ピメリンアルデヒド、スベリンアルデヒド、セバシンアルデヒドなどの脂肪族ポリアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド類などの他、例えば、ベンズアルデヒド、
    オキシベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、サルチルアルデヒド、アニスアルデヒド、1−ナフチルアルデヒド、バニリン(バニルアルデヒド)、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどの芳香族アルデヒド;ホルミルシクロヘキサンなどの脂環式アルデヒド;ニコチンアルデヒド、フルフラールなどの複素環アルデヒドなどが挙げられる。

    【0047】アルデヒド類を、前記イミド化合物触媒の存在下、酸素で酸化すると、対応するカルボン酸が生成する。 例えば、アジピンアルデヒドの酸化により、アジピンが生成する。

    【0048】基質として用いるケトン類には、前記炭化水素類のケトン誘導体が含まれ、例えば、脂肪族ケトン類、脂環式ケトン類、芳香族ケトン類、複素環ケトン類などが含まれる。 脂肪族ケトン類には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、
    ピナコロンなどのC 2-20脂肪族ケトンなどが含まれる。
    脂環式ケトン類には、例えば、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロオクタノン、シクロノナノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン、
    シクロドデカノン、シクロテトラデカノン、シクロオクタデカノン、シクロエイコサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2−エチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、4−クロロシクロヘキサノン、
    4−メトキシシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、シクロペンテノン、シクロヘキセノン、シクロオクテノン、シクロデセノン、メントン、カンファーなどの4〜30員環の脂環族ケトン(環状ケトン)などが含まれる。 好ましい脂環式ケトン類には、5〜20員環、特に5〜16員環の化合物が含まれる。 芳香族ケトン類としては、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、
    ベンゾフェノン、デオキシベンゾイン、1−ナフタレノンなどが挙げられる。 複素環ケトン類としては、例えば、インデン−1−オン、1,2,3−インダントリオン、フルオレン−9−オン、4−ピラノンなどの複素環ケトンなどが挙げられる。

    【0049】ケトン類を前記イミド化合物触媒の存在下で酸素酸化すると、対応するカルボン酸が生成する。 例えば、ジエチルケトンの酸化により、酢酸とプロピオン酸が生成し、シクロオクタノンの酸化により、スベリン酸が生成する。

    【0050】基質として用いるアミン類としては、第一級又は第二級アミンが好ましく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ヒドロキシルアミン、エタノールアミンなどの脂肪族アミン類;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン類;ベンジルアミン、トルイジンなどの芳香族アミン類などが例示される。 アミン類を前記イミド化合物触媒の存在下で酸化すると、対応するシッフ塩基、オキシムなどが生成する。

    【0051】基質として用いる複素環化合物としては、
    (a)非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素(例えば、ピラン、ピラゾリン、
    ピペリジン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、クロメン、キサンテン、クロマン、イソクロマンなど)、及び非芳香族性複素環にアルキル基(例えば、メチル、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基など)が置換している、前記非芳香族性複素環化合物又は非芳香族性複素環を含む縮合環式炭化水素、(b)芳香族性複素環を有し、且つ芳香族性複素環の隣接位にメチル基またはメチレン基を有する複素環化合物(例えば、
    2−メチルフラン、2,5−ジメチルフラン、2−メチルチオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、3−エチルピリジン、
    2−メチルキノリンなどの、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択された1〜3個のヘテロ原子を含む芳香族性複素環に炭素数1〜6程度のアルキル基が置換している複素環化合物など)などが例示される。

    【0052】これらの複素環化合物の酸化により、対応するアルコール類、ケトン類又はカルボン酸類が生成する。 例えば、前記複素環化合物(a)を酸化すると、非芳香族性複素環において、ヘテロ原子(例えば、酸素、
    硫黄又は窒素原子など)の隣接位のメチレン基がカルボニル基に変換され、対応するカルボニル基を有する化合物が生成する。 また、前記複素環化合物(b)を酸化すると、芳香族性複素環の隣接位にメチル基を有する化合物からは、対応する複素環アルデヒド又は複素環カルボン酸が生成し、芳香族性複素環の隣接位にメチレン基を有する化合物からは、対応する複素環ケトンが生成する。

    【0053】基質として用いるチオール類としては、例えば、エタンチオール、フェニルメタンチオールなどが挙げられ、スルフィド類としては、例えば、ジエチルスルフィド、メチルプロピルスルフィド、ジフェニルスルフィドなどが挙げられる。 また、アミド類には、例えば、ホルムアミド、アセトアミドなどが含まれる。 なお、2種以上の基質を併用することにより、酸化反応等の反応速度を著しく向上できる場合がある。

    【0054】[反応]反応は溶媒の存在下又は非存在下で行われる。 前記溶媒としては、基質や反応の種類等により適宜選択でき、例えば、酢酸、プロピオン酸などの有機酸;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;
    酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;これらの混合溶媒などが挙げられる。 溶媒としては、酢酸などの有機酸類、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル類、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、酢酸エチルなどのエステル類などを用いる場合が多い。

    【0055】本発明の重要な特徴は、前記イミド化合物触媒を反応系に逐次添加して反応を行う点にある。 前記イミド化合物触媒を反応系に逐次添加すると、反応系に一括添加した場合と比較して、原料化合物の転化率が向上したり、副反応が抑制されて目的化合物の選択率が向上する。 また、基質濃度が高い場合に触媒活性が損なわれることがあるが、イミド化合物触媒を逐次添加することにより反応が円滑に進行し、目的化合物を高い収率で得ることができる。 触媒の逐次添加によりこのような優れた効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、
    触媒を一括して系内に添加した場合には、触媒が反応の進行とともに劣化して、有効な触媒活性種の濃度が適切な値を下回るようになるのに対し、触媒を逐次添加する場合には、新触媒が系内に適宜補充されるので、有効な触媒活性種濃度が反応終了に至るまで適切な値に維持されるためと推測される。

    【0056】前記イミド化合物触媒は系内にそのまま添加してもよいが、適当な溶媒に溶解若しくは分散させて添加することもできる。 また、イミド化合物触媒は系内に連続的に添加してもよく、間欠的に添加してもよい。
    なお、前記助触媒も反応系に逐次的に添加してもよい。

    【0057】反応温度は、基質や反応の種類に応じて適宜選択できるが、一般には0〜300℃、好ましくは1
    0〜250℃、さらに好ましくは20〜200℃程度である。 反応は常圧又は加圧下で行うことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜100atm(=
    0.101〜10.1MPa)[好ましくは、1.5〜
    80atm(=0.152〜8.08MPa)]程度である。

    【0058】反応は回分式、半回分式、連続式などの慣用の方法により行うことができる。 反応終了後、反応生成物等は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離精製手段やこれらの組み合わせにより、容易に分離精製できる。

    【0059】

    【発明の効果】本発明の方法によれば、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド化合物触媒を用いて有機化合物を製造するに際し、触媒を特定の方法により反応系内に供給するため、より高い転化率や選択率で目的化合物を得ることができる。

    【0060】

    【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。

    【0061】実施例1 フラスコに、バレンセン10ミリモル、N−ヒドロキシフタルイミド1ミリモル、酢酸コバルト(II)4水塩0.2ミリモル、コバルト(III)アセチルアセトナト0.6ミリモル、及びアセトニトリル20mlを入れ、
    酸素雰囲気下(1atm=0.101MPa)、40℃
    で2時間攪拌した後、N−ヒドロキシフタルイミドをさらに1ミリモル添加し、40℃でさらに2時間攪拌した。 反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率62%、ヌートカトールが収率1%、バレンセンエポキシドが収率3%で生成していた。 バレンセンの転化率は99%であった。

    【0062】比較例1 N−ヒドロキシフタルイミド(2ミリモル)を反応開始時に一括して添加した点以外は実施例1と同様の操作を行った(反応時間4時間)。 反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、目的化合物であるヌートカトンが収率52%、ヌートカトールが収率10%、バレンセンエポキシドが収率3%で生成していた。 バレンセンの転化率は100%であった。

    【0063】実施例2 フラスコに、アダマンタン3g(22ミリモル)、N−
    ヒドロキシフタルイミド0.36g(10モル%)、6
    0重量%硝酸0.010g(0.4モル%)、バナジウムアセチルアセトナトV(acac) 3 0.023g
    (0.3モル%)、及び酢酸27gを入れ、酸素雰囲気下(1atm=0.101MPa)、55℃で3時間攪拌した後、窒素雰囲気下で冷却してN−ヒドロキシフタルイミドをさらに0.36g(10モル%)追加し、上記と同じ条件でさらに3時間反応を続けた。 反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−アダマンタノールが選択率50%、1,3−アダマンタンジオールが選択率31%、1,3,5−アダマンタントリオールが選択率2%、2−アダマンタノンが選択率7%
    で生成していた。 アダマンタノール類の選択率の合計は83%であった。 アダマンタンの転化率は80%であった。

    【0064】比較例2 N−ヒドロキシフタルイミド(0.72g;20モル%)を反応開始時に一括して添加した点以外は実施例1
    と同様の操作を行った(反応時間6時間)。 反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1−アダマンタノールが選択率45%、1,3−アダマンタンジオールが選択率27%、1,3,5−アダマンタントリオールが選択率2%、2−アダマンタノンが選択率7%
    で生成していた。 アダマンタノール類の選択率の合計は74%であった。 アダマンタンの転化率は79%であった。

    【0065】実施例3 冷却管、圧調整器、マスフローを備え付けた1Lのチタン製オートクレーブに、β−ピコリン40.0g(4
    30ミリモル)、N−ヒドロキシフタルイミド7.01
    g(43ミリモル)、酢酸マンガン(II)[Mn(OA
    c) 2・4H 2 O]1.05g(4ミリモル)、酢酸コバルト(II)[Co(OAc) 2・4H 2 O]1.07g
    (4ミリモル)、ピリジン−3−カルバルデヒド(ニコチンアルデヒド)8.00g(75ミリモル)及び酢酸342.9gを入れ、空気を流通しながら(80L(標準状態)/hr)、140℃で10kgf/cm 2 (=
    0.981MPa)の圧力下、2時間攪拌を行った。 窒素雰囲気下で冷却して、N−ヒドロキシフタルイミドをさらに7.01g(43ミリモル)、ピリジン−3−カルバルデヒド(ニコチンアルデヒド)をさらに8.00
    g(75ミリモル)添加し、上記と同じ条件でさらに2
    時間反応を続けた。 反応混合液をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、ニコチン酸が収率67.7%(選択率95.7%)で生成していた。 β−ピコリンの転化率は70.7%であった。

    【0066】比較例3 N−ヒドロキシフタルイミド(14.00g;86ミリモル)を反応開始時に一括して添加した点以外は実施例1と同様の操作を行った(反応時間4時間)。 反応混合液をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、ニコチン酸が収率58.9%
    (選択率95.3%)で生成していた。 β−ピコリンの転化率は61.8%であった。

    ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 7識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 45/28 C07C 45/28 45/51 45/51 49/653 49/653 51/235 51/235 51/245 51/245 C07D 213/80 C07D 213/80 213/803 213/803 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 Fターム(参考) 4C055 AA01 BA01 CA02 CA57 DA01 FA11 FA32 FA37 4G069 AA06 BA21A BC54B BC62B BC67B BE14A BE14B BE19A BE33A BE36A BE37B BE38B CB07 CB25 CB74 CB78 CB79 DA02 4H006 AA02 AC41 AC44 AC46 AC51 AC61 BA08 BA10 BA12 BA14 BA16 BA18 BA22 BA51 BA93 BB11 BB12 BB17 BB18 BB20 BB21 BB70 BC34 BE30 4H039 CA60 CA65 CA72 CA80

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