クロスメタセシスおよび閉環メタセシスによる、官能性および非官能性オレフィンの合成

申请号 JP2012140269 申请日 2012-06-21 公开(公告)号 JP5779142B2 公开(公告)日 2015-09-16
申请人 カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー; 发明人 グラブズ、ロバート エイチ.; チャッタージー アーナブ、ケイ.; モーガン、ジョン ピー.; ショール、マティアス; チョイ、ティー−リム;
摘要
权利要求

二または三置換オレフィンを調製する方法であって、金属カルベンメタセシス触媒の存在下において、第1オレフィンを第2オレフィンと接触させる工程から成り、 第1オレフィンはスチレンであり、第2オレフィンはα−カルボニルオレフィンであり、 前記スチレンは1つ以上の置換基によって置換されているかまたは非置換であり、置換されている場合、前記1つ以上の置換基は、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択され、該置換基は任意選択で、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分によってさらに置換されており、前記スチレンは任意選択で、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される1つ以上の官能基を含み、 前記金属カルベンメタセシス触媒が次式によって表され、 式中、 Mはルテニウムであり; XとX1は各々独立して、ハロゲン、CF3CO2、CH3CO2、CFH2CO2、(CH3)3CO、(CF3)2(CH3)CO、(CF3)(CH3)2CO、PhO、MeO、EtO、トシレート、メシレートおよびトリフルオロメタンスルホネートから選択され; Lは式PR3R4R5を有するホスフィンであり、R3,R4およびR5は各々独立してアリール、C1−C10アルキル、またはシクロアルキルであり; Rは素であり; R1,R6,R7,R8およびR9は、各々独立して水素またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、アリールチオール、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される置換基であり、該置換基は、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、アリール、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される官能基から選択される1または複数の部分によって任意選択で置換される、方法。第2オレフィンがアクリレートまたはアクリルアミドであって、1つ以上の置換基によって置換されているかまたは非置換であり、置換されている場合、前記1つ以上の置換基は、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択され、該置換基は任意選択で、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分によってさらに置換されており、第2オレフィンは任意選択で、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される1つ以上の官能基を含む、請求項1に記載の方法。前記スチレンは1つ以上の置換基によって置換されており、前記1つ以上の置換基は、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択され、該置換基は任意選択で、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分によってさらに置換されており、該置換が1または複数の芳香族炭素上で起こり、前記スチレンは任意選択で、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される1つ以上の官能基を含む、請求項1に記載の方法。前記スチレンは1つ以上の置換基によって置換されており、前記1つ以上の置換基は、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択され、該置換基は任意選択で、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分によってさらに置換されており、該置換がオレフィン炭素上で起こり、前記スチレンは任意選択で、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される1つ以上の官能基を含む、請求項1に記載の方法。第1オレフィンがスチルベンである、請求項1に記載の方法。

说明书全文

本発明は、クロスメタセシスおよび閉環メタセシスによる、官能性および非官能性オレフィンの合成に関する。

(背景) メタセシス(複分解)触媒は、例えばこれまでに、米国特許第5,312,940号、第5,342,909号、第5,728,917号、第5,750,815号、第5,710,298号および第5,831,108号およびPCT国際公開公報WO 97/20865およびWO 97/29135に説明されており、これらはすべて引用により本明細書に組み込まれる。これらの刊行物は、いくつかの有利な特性を有する明確に定義された単一成分のルテニウムまたはオスミウム触媒について説明している。例えばこれらの触媒は様々な官能基に対する許容度があり、以前から知られていたメタセシス触媒よりも一般に活性が高い。予期せず驚くべき結果では、これらの金属カルベン錯体中にイミダゾリジン配位子を含めると、これらの触媒の既に有利な特性が劇的に改良されることがわかった。例えば、イミダゾリジンをベースとする触媒は、閉環メタセシス(「RCM」)反応だけでなく、クロスメタセシス(「CM」)反応、非環式オレフィンの反応、開環メタセシスポリマー重合(「ROMP」)反応を含めた他のメタセシス反応でも、活性と選択性の増加を示す。

三置換の炭素−炭素二重結合は有機分子の種々の配列における繰り返しモチーフである。特に、α−β不飽和アルデヒド、ケトンおよびエステルのような電子求引性の官能性を備えたオレフィンの生成は、依然、有機化学での実現困難な反応である。したがって、官能性三置換オレフィンを生成する新規な立体選択的方法は、合成有機化学の分野における目下の課題である。これまでに、フッ素化三置換アルケンを調製するために、分子内クライゼン転位反応、ウィッティヒ型オレフィン化反応、ジュリア型カップリング反応、ピーターソン型オレフィン化反応、スルホニルヒドラゾンのアルキル化、および直接法を含む種々の方法が検討された。ヒドロマグネシウム化、ヒドロジルコノ化および有機銅酸化物の使用を含む、遷移金属を媒介とした経路も報告されているが、厄介な厳しい化学試薬の使用を伴うことが多い。

最近、以下のモリブデンアルコキシイミドアルキリデン1やルテニウムベンジリデン2のような明確に定義された遷移金属触媒の商業的利用性の点で、オレフィンメタセシス反応が合成有機化学において目立つようになってきた。

詳しくは、様々な有機分子の構築に、閉環オレフィンメタセシス(RCM)反応が広く利用されるようになっている。オレフィンクロスメタセシスの利用を通じてビニル基の官能性を備えたオレフィンを生成するアプローチは、限られた成功しか叶えない。オレフィンメタセシスの分子間の変形型である末端オレフィンクロスメタセシスは、生成物とオレフィン立体異性体選択性の問題により論文では注目をあまり集めていなかった。しかしながら、この分野への新たな関心により、1と2の両方を使用した末端オレフィンの選択的クロスメタセシスのための新たな方法が最近開発された。その初期の報告書の1つであるCroweとGoldbergによる報告書は、アクリロニトリルが様々な末端オレフィンとのクロスメタセシス反応に関与すると報告した。しかしながら、α−オレフィン以外のクロスメタセシスに拡張する試みにおいて、Croweらは、二置換オレフィンが、1を使用した時にスチレンと反応しないクロスメタセシスパートナーであると報告した。さらに、エノンやエノン酸エステル等の他のα,β−不飽和カルボニルオレフィンはアルキリデン1と相溶性でないため、上記方法は一般性を欠いていた。最近、1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン配位子を含む活性の非常に高いルテニウムをベースとするオレフィンメタセシス触媒3a,bが、優れた官能基許容度を示すと同時に様々な非環式ジエンの閉環メタセシス(RCM)を効率的に触媒することが分かった。ルテニウムアルキリデン3a,bは、ベンジリデン2を使用した時に、以前のメタセシス不活性基質に対して固有の活性を表示したため、これによりα−官能性オレフィンのメタセシス研究が刺激された。立体選択的な様式での様々な官能基との末端オレフィンのホモロゲーションは、合成上有効な変換になるだろう。特に、立体選択的な様式での三置換オレフィンの形成は、医薬、天然生成物および官能性ポリマーの生産に非常に有効となろう。

本発明は、一般に、ルテニウムまたはオスミウムの金属カルベン錯体を使用する、ジェミナル二置換オレフィンと末端オレフィン間のクロスメタセシスおよび閉環メタセシス反応に関する。

より詳細には、本発明は、ルテニウムアルキリデン錯体を使用する、分子間クロスメタセシスおよび分子内閉環メタセシスを介したα−官能性または非官能性オレフィンの合成に関する。α−官能性オレフィンとは、オレフィンをアリル位で置換することを意味する。官能基には例えば、カルボニル、エポキシド、シロキサンまたはペルフルオロアルケンが含まれ、共鳴または誘起効果によってオレフィンを電子不足にする官能基を表わす。官能性オレフィンは置換されていても非置換でもよい。そのような置換基は、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される。さらに、官能基または置換基は、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンからも選択することができる。本発明で好ましく使用される触媒は、以下の一般式を有する。

式中、 Mはルテニウムまたはオスミウムであり; XとX1は各々独立して陰イオン配位子であり; Lは中性の電子供与体配位子であり; R,R1,R6,R7,R8およびR9は、各々独立して素またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、アリールチオール、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される置換基である。任意選択で、R,R1,R6,R7,R8およびR9置換基の各々は、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、およびアリールから選択される1または複数の部分で置換される。C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、およびアリールの各々はさらに、ハロゲン、C1−C5アルキル、C1−C5アルコキシ、およびフェニルから選択される1または複数の基で置換され得る。さらに、任意の上記触媒配位子はさらに1または複数の官能基を有する。適切な官能基の例としては、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。先に説明したルテニウムまたはオスミウム触媒にイミダゾリジン配位子を含めると、これらの錯体の特性が劇的に改良されることがわかった。イミダゾリジン配位子は4,5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリデン配位子とも称される。イミダゾリジンをベースとする錯体は非常に活性が高いので、触媒の必要量が減少される。本発明の方法は、穏和な反応条件下での官能性三置換オレフィンの効率的な1段階形成を可能にすると共に、有機合成におけるオレフィンメタセシスの利用性をさらに実証する。

(好ましい実施形態の詳細な説明) 本発明は、一般に、ルテニウムアルキリデンを使用する、ジェミナル二置換オレフィンと末端オレフィン間のクロスメタセシスおよび閉環メタセシス反応に関する。詳細には、本発明は、イミダゾリジンをベースとするルテニウムおよびオスミウムカルベン触媒を使用する、分子間クロスメタセシスおよび分子内閉環メタセシスを介した非官能性または官能性の三置換およびビシナル二置換のオレフィンの合成に関する。ここで、用語「触媒」および「錯体」は互換的に使用される。

非修飾ルテニウムとオスミウムのカルベン錯体については、米国特許番号第5,312,940号、第5,342,909号、第5,728,917号、第5,750,815号および第5,710,298号、米国出願出願番号第09/539,840号および第 09/576,370号、ならびにPCT国際公開公報第WO00/58322およびWO00/15339に説明されている。これらはすべて引用により本明細書に組み込まれる。これらの特許で開示されたルテニウムとオスミウムのカルベン錯体はすべて、形式的に+2の酸化状態にあり、16の電子数を有し、ペンタ座標の金属中心を有する。これらの触媒は以下の一般式を有する。

式中、 Mはルテニウムまたはオスミウムであり; XとX1は各々独立して任意の陰イオン配位子であり; LとL1は各々独立して任意の中性の電子供与体配位子であり; RとR1は各々独立して水素またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される置換基である。任意選択で、RとR1置換基の各々を、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分で置換してもよい。C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールの各々はさらに、ハロゲン、C1−C5アルキル、C1−C5アルコキシおよびフェニルから選択される1または複数の基で置換され得る。さらに、上記触媒配位子のいずれもが、1または複数の官能基をさらに含んでよい。適切な官能基の例としては、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。

L1が非置換または置換のN−複素環カルベンであるという点を除いて、本発明で使用される好ましい触媒は、上述した通りである。好ましくは、N−複素環カルベンは以下の式を有し、

以下の一般式を有する錯体を生じさせる。

式中、 R6、R7、R8およびR9は各々独立して水素またはC1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニル、およびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される置換基である。イミダゾリジン配位子は4,5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリデン配位子とも称される。

触媒の好ましい実施形態では、R置換基が水素であり、R1置換基はC1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、およびアリールから選択される。さらにより好ましい実施形態では、R1置換基は、任意選択でC1−C5アルキル、C1−C5アルコキシ、フェニルおよび官能基から選択される1または複数の部分で置換されたフェニルまたはビニルである。特に好ましい実施形態では、R1は、塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物、—NO2、—NMe2、メチル、メトキシおよびフェニルから選択される1または複数の部分で置換されたフェニルまたはビニルである。最も好ましい実施形態では、R1置換基はフェニルまたは−C=C(CH3)2である。

触媒の好ましい実施形態では、Lはホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスフォナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジンおよびチオエーテルから選択される。より好ましい実施形態では、Lは式PR3R4R5を有するホスフィンであり、R3,R4およびR5は各々独立してアリール、C1−C10アルキル、特に一級アルキル、二級アルキル、またはッシクロアルキルである。最も好ましい実施形態では、Lは各々−P(シクロヘキシル)3、−P(シクロペンチル)3、−P(イソプロピル)3および−P(フェニル)3から選択される。またLはN−複素環カルベンであってもよい。例えば、Lは以下の一般式を有する配位子であり、

R6,R7,R8およびR9は上述の通りである。 触媒の好ましい実施形態では、XとX1は各々独立して水素、ハライド、または以下の基のうちの1つである:C1−C20アルキル、アリール、C1−C20アルコキシド、アリールオキシド、C3−C20アルキルジケトネート、アリールジケトネート、C1−C20カルボキシレート、アリールスルホネート、C1−C20アルキルスルホネート、C1−C20アルキルチオール、アリールチオール、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニル。任意選択で、XとX1をC1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択される1または複数の部分と置き換えてもよい、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールはさらに、ハロゲン、C1−C5アルキル、C1−C5アルコキシおよびフェニルから選択される1または複数の基で置換され得る。より好ましい実施形態では、XおよびX1は、ハライド、ベンゾエート、C1−C5カルボキシレート、C1−C5アルキル、フェノキシ、C1−C5アルコキシ、C1−C5アルキルチオ、アリールおよびC1−C5のアルキルスルホネートである。さらにより好ましい実施形態では、XとX1の各々は、ハライド、CF3CO2、CH3CO2、CFH2CO2、(CH3)3CO、(CF3)2(CH3)CO、(CF3)(CH3)2CO、PhO、MeO、EtO、トシレート、メシレートおよびトリフルオロメタンスルホネートである。最も好ましい実施形態では、XとX1の各々は塩化物である。

触媒の好ましい実施形態では、R6とR7が各々独立して、水素またはフェニルであるか、もしくはC1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、アリール、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される官能基から選択される1または複数の部分で任意選択で置換されたシクロアルキルまたはアリールを共に形成し;R8とR9は各々独立してC1−C5アルキル、C1−C5アルコキシ、アリール、ならびにヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される官能基と任意選択で置換されたC1−C10アルキルまたはアリールである。

より好ましい実施形態では、R6とR7がいずれも水素またはフェニルであるかまたはR6とR7が共にシクロアルキル基を形成し、;R8とR9が各々置換または非置換のアリールである。理論に束縛されるわけではないが、よりかさばったR8とR9基が、触媒に耐熱性のような改良された特性を備えさせる原因であると考えられている。特に好ましい実施形態では、R8とR9は同じであり、各々独立して以下の式を有する。

式中、 R10、R11およびR12は各々独立して、水素、C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、アリール、またはヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、ア ルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから選択される官能基である。

特に好ましい実施形態では、R10、R11およびR12が各々独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヒドロキシルおよびハロゲンから選択される。最も好ましい実施形態では、R10、R11およびR12は同じであり、各々がメチルである。

本発明は、図式1に示すように、ジェミナル二置換オレフィンと末端オレフィンの分子間オレフィンクロスメタセシスまたは分子内閉環メタセシスによる三置換アルケンの新規な調製方法を開示する。

図式中、X,X1,L,R,R1,R6,R7,R8およびR9は、先に定義した通りである。上述したように、不飽和N−複素環カルベン錯体(例えば以下の一般式を有するもの)の使用も利用される。

式中、X,X1,L,R,R1,R6,R7,R8およびR9は、先に定義した通りである。好ましくは、使用される錯体は、1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデンルテニウムアルキリデン錯体である。

R13とR14は各々独立して、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される部分である。任意選択で、R13とR14の置換基の各々をC1−C10アルキル、C1−C10アルコキ シ、およびアリールから選択される1または複数の部分で置換してもよい。C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシ、およびアリールの各々はさらに、ハロゲン、C1−C5アルキル、C1−C5アルコキシおよびフェニルから選択される1または複数の基で置換され得る。さらに、R13とR14は、1または複数の官能基をさらに含んでもよい。適切な官能基の例としては、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、R13とR14は、ヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンから成る群より選択された置換または非置換の官能基であってよい。

図式1の反応により、適度なE選択性で良好な収率が得られる。さらに、ジェミナル二置換オレフィン付近の保護アルコールは、クロスメタセシスの反応性を改善する。 表1は、クロスメタセシスのための非官能性ジェミナル二置換オレフィンとして2−メチル−1−ウンデセンを使用した研究の結果を示す(表1、項目1〜4)。基質4はクロスメタセシス反応性基質であることが証明され、共役ビニリルジオキソラン、アリルスルホン、および1,4−ジアセトキシ−cis−2,3−ブテンに適度なtrans立体選択性で優れた収率でカップリングした。特に注意すべきは、アリルスルホンは、3a,bを使用するクロスメタセシス(単離収率87%、表1、項目2)のための非常に反応性の基質であるが、2を使用してもクロスメタセシス生成物を生成しない。

官能性二置換オレフィン(表1、項目5,6)も、この反応のための優れた基質であることが証明され、2−メチル−1−ウンデセンに対する収率が改良された。理論に束縛されるわけではないが、安息香酸エステルの官能性が、触媒ルテニウム種とのジェミナルオレフィンの反応性を増大させる可能性がある。さらに、末端オレフィンホモダイマーの濃度を低く維持しても、やはりクロスメタセシスの収率は増加する。表1の項目1に示される反応では、6時間にわたって4等分してビニルジオキソラン成分(3当量)を添加した。これによりジオキソランホモダイマーの濃度が低く維持され、クロスメタセシス生成物の単離収率は約10パーセント増加した。すべての反応で、二置換オレフィンが自己メタセシスを受けず、未反応物質は定量的に回収できることにも留意すべきである。保護アリルアルコールやホモアリルアルコールも、上記反応条件下で適当である。

本発明の方法の別の態様は、金属カルベンメタセシス触媒を使用する、分子間クロスメ タセシスおよび分子内閉環メタセシスを介した官能性オレフィンの合成である。 クロスメタセシスにおける種々のジェミナル二置換オレフィンを調べるにあたっては、メタクリル酸メチル4が末端オレフィン5〜7との新規で予期しなかったクロスメタセシス反応に関与し、優れた立体選択性かつ適度な収率で三置換エノンエステルを生成することに留意した(図式2)。

図式中、M,L,X,X1,R,R1,R6,R7,R8,R9およびR14は、先に定義した通りである。好ましくは、図式2に見られるように、R1はビニリデンである。しかしながら、反応では先に説明したメタセシス触媒のいずれをも使用することができる。

種々のα−含カルボニル化合物のクロスメタセシスの結果を表2に見ることができる。

特に注目すべきは、ケトンとアルデヒド(表2,項目3〜7)を使用すると優れた収率が達成されることである。さらに、これらの反応の立体選択性は優れており、反応を二および三置換オレフィンの合成を実際的なものにしている。特に注目すべきは、エステルとアルデヒド(表2、項目1〜3)を使用すると優れた収率が達成されることである。関連する結果として、末端オレフィン7とのアクリル酸のクロスメタセシス(CM)は、クロス生成物の定量的収率を与えた。この経路は、アルコールの酸への酸化のような厳しい反応条件を回避し、かつ酸性部分上の保護基の使用を回避する、種々のアクリル酸の合成のための穏和で効率的な方法を提供する。さらに、反応条件の最適化において、約23℃〜約25℃まで反応温度を下げ、非過剰の1つのオレフィンパートナーと反応させても、CMは首尾良いものとなった。予期しなかった結果は、室温で行われた反応が、実質的な収率のクロス生成物を十分に生じさせるだけでなく、過剰の1つのオレフィンパートナーを必要としないということだった。末端アルデヒドCMの場合には特に興味深く予期しない結果が得られた。市販のアクロレインには不純物が存在するため、CM中のアルデヒド源としてtrans−クロトンアルデヒドを調べた。表1の項目4,5に実証されるように、クロトンアルデヒドの使用は、有意に収率がより高い反応である。2つの反応での認識できる差は、気体副産物エチレン(項目4)対プロピレン(項目5)の損失である。理論に束縛されるわけではないが、アクロレートの代わりにクロトネートを使用しても、類似の反応条件下での関連触媒中間体により、CM収率はやはり増加することが提案される。

本発明の別の創作的態様は、アクリルアミドのクロスメタセシスに関する。 表3は、複合体3aを使用した、例としてのアクリルアミドと末端オレフィンのクロスメタセシスの結果を列挙している。

最初、ジメチルアクリルアミド(項目1a)を試みたが、失望するほどに低い約39%のCM生成物の収率を得た。しかしながら、より高い触媒量(触媒1を10mol%)と約1.5当量のオレフィンを使用すると、収率は約83%(項目1b)まで改善した。他の基質は、優れたジアステレオ選択性で(>25:1 trans:cis)約77%〜約100%に及ぶ良好〜優れた収率を示す。特に意義があるのは、Weinrebアミド(項目4)とオキサゾリジノンイミド(項目9)との相容性である。これらの官能基は有機合成では広く使用されており、CMはさらなる操作のためのシントンを与える。特に、オキサゾリジノンイミドは、マイケル付加反応、アルドール反応、およびディールス−アルダー(Diels-Alder)反応のような不斉反応で広く使用される。オキサゾリジノン化学の代表的な例については、(a)D.A.Evans、M.C.Willis、J.N.Johnston、Org.Lett.1999、1、865。(b)D.A.Evans、J.Bartroli、T.L.Shih、J.Am.Chem.Soc.1981、103、2127;b);D.A.Evans、M.D.Ennis、D.J.Mathre、J.Am.Chem.Soc.1982、104、1737。(c)D.A.Evans、S.J.Miller、T.Lectka、P.von、Matt、J.Am.Chem.Soc.1999、121、7559;これらはすべて引用により本明細書に組み込まれる。CM効率に対するアクリルアミド置換基の効果がある。アルキル基のような電子供与置換基は、カルボニル酸素の求核性を増大させ、CM生成の結果をより少なくする。理論に束縛されるわけではないが、これは、Ru金属中心に対するキレート化効果に起 因し、そのためにCM反応速度全体が下がる可能性がある。興味深いことに、電子的寄与が類似する場合には、キレート化効果は、カルボニル酸素をより立体的にアクセス可能にしにくくするアミド窒素上のかさばった置換基により減少することができる(表3の項目1a対項目2)する。

ビニル位置の他の官能基もクロスメタセシスにて調べ、その結果を表4に要約している。

一酸化ブタジエン19のようなビニルエポキシドや電子不足ペルフルオロアルケン20が、適度な収率でクロスメタセシスに関与しており(表4、項目1−3)CMに関与する他のα−官能性オレフィンを示す。4当量のエポキシド19の付加は、クロス生成物22(表4、項目2)の収率を増加させたが、これは一酸化ブタジエンの揮発性と相関し得る。ビニルシロキサンも3a,bを用する非常によいクロスメタセシスパートナーであるが(表4、項目4)、ルテニウムベンジリデン2で約36%のクロス生成物24しか生成しなかった。これらのシロキサンは、鈴木型ハロゲン化アリールクロスカップリング反応のようなさらなる共役反応に有用なシントンを提供する。

最後に、ビニル官能基を担持する基質の閉環メタセシス(RCM)反応を表5に要約する。

三置換ラクトン(表5、項目1)を含む六および五員環α−β不飽和エノン(表5、項目1−2)が優れた収率で生成された。また、ビニルエーテルの新規な閉環反応により良好な転化が進行し、環状生成物(表5、項目3)が生成した。理論に束縛されるわけではないが、アリル型エーテルは最初触媒と反応し、その後ビニルエーテルと迅速に反応する可能性がある。これは触媒による安定したフィッシャー型カルベンの形成を最小限にし、触媒のターンオーバーを許容する。このことは、触媒3bを使用して両方のアルケンがビニルエーテルである場合に基質を環閉鎖できないことにより、さらに証拠づけられる。さらに、α−官能基を含むより大きな環構造も、本発明の方法を使用して合成することができる。そのような官能基は例えば、エポキシド、ペルフルオロオレフィンおよびシロキサンである。

本発明の別の創作的態様は、電子不足オレフィンを芳香族オレフィンと反応させるか、または、2つの異なる組の電子不足オレフィンを互いに反応させるプロセスである。詳細には、本発明は、金属カルベンメタセシス触媒の存在下で置換または非置換の芳香族オレフィンを置換または非置換の電子不足オレフィンと接触させる工程から成る、二または三置換オレフィンを調製するプロセスを提供する。置換芳香族オレフィンには、オレフィンがアルキル基を含む、いかなる一、二、または三置換オレフィンも含まれる。芳香族オレフィンが末端オレフィンであるこのプロセスの例を表2に見ることができる。しかしながら、芳香族オレフィンが内部オレフィンである置換オレフィンを調製してもよい。本発明は、金属カルベンメタセシス触媒の存在下で置換または非置換の電子不足オレフィンを別の置換または非置換の電子不足オレフィンと接触させる工程から成る、二または三置換オレフィンを調製するプロセスも提供する。第1および第2の電子不足オレフィンは同じであってもよいし異なっていてもよい。好ましくは、一方のオレフィンは置換または非置換のスチレンであり、他方のオレフィンはα−カルボニル基、例えばアクリレートまたはアクリルアミドを含む。代わりに、両方のオレフィンがα−カルボニル基を含んでいてもよい。一方または両方の電子不足オレフィンが置換されていても非置換でもよい。電子不足オレフィンおよび芳香族オレフィンの上の置換基としては、C1−C20アルキル、C2−C20アルケニル、C2−C20アルキニル、アリール、C1−C20カルボキシレート、C1−C20アルコキシ、C2−C20アルケニルオキシ、C2−C20アルキニルオキシ、アリールオキシ、C2−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニルおよびC1−C20アルキルスルフィニルから選択される1または複数の基が含まれ得る。任意選択で、置換基はC1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールから選択された1または複数の部分で置換されてもよい。C1−C10アルキル、C1−C10アルコキシおよびアリールはさらに、ハロゲン、C1−C5アルキル、C1−C5アルコキシおよびフェニルから選択される1または複数の基で置換され得る。さらに、オレフィンは1または複数の官能基を含み得る。適切な官能基の例としてはヒドロキシル、チオール、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エーテル、アミン、イミン、アミド、ニトロ、カルボン酸、ジスルフィド、カルボネート、イソシアネート、カルボジイミド、カルボアルコキシ、カーバメートおよびハロゲンが含まれるが、これらに限定されるわけではない。

スチレンは、先の不均質系およびモリブデンに基づく系に関するオレフィンクロスメタセシスにて以前に検討された電子不足オレフィンの1つのクラスである。これらの両方の場合、他方のオレフィンパートナーとして末端オレフィンが使用された。単純なターミナルオレフィンを使用する実施例に加えて、スチレンが触媒1を用いて高収率でアクリルアミドと反応することが実証されている。スチレンを用いたときの収率は、触媒3aを使用する窒素置換基と比較して、同様の収率の傾向(約25%〜約87%に及ぶ)を示す(表6)。

この反応は、クロスメタセシス(CM)により種々の様々なシンアミド(cinnamide)の可能性を提供するという点で価値がある。 本発明のさらに別の創作的態様は、特に触媒3aまたは3bを用いた、CMパートナーとしてのスチレンの使用である。ある以前の技術は、トリアルキルオキシシランのように2を使用して、CM中のスチレン反応性が限定的であることを実証した。さらに、2を使用して、様々なパラ置換スチレンとのアリルグリコシドの反応を調べた。しかしながら、本発明以前に、触媒3a,bまたは末端オレフィンに関してまでスチレンの拡張範囲を調べてはいない。本発明の新規な態様は、スチレンの置換が芳香族炭素またはオレフィン炭素もしくはその両方上で起こる、α−官能性オレフィンと置換または非置換のスチレンとの反応である。スチレンは電子不足オレフィンであるため、置換スチレンとしては電子不足オレフィンについて上記に列挙した置換基のいずれかが含まれ得る。特に、ヘック(Heck)型反応生成物を生成する種々の置換スチレンとアクリレートとの反応をオレフィンメタセシスにより合成した(表7)。

特に注意すべきは、前例のないオルト置換基の使用である(表7、項目4,11−13)。さらに、ニトロ基やベンズアルデヒドのような様々な反応的な官能基が反応条件に適している。理論に束縛されるわけではないが、カップリングストラテジーのスチレン部分に対しては、もっと広範な置換基を使用すること思われる。反応に対する重要な2つの追加は、スチレンへのα,β−不飽和ケトンとアルデヒドの使用である。さらに、本発明のさらに別の予期しない結果として、反応に対応するスチルベンを使用してもよいことがあり、これはクロスメタセシスの反応の可逆性を実証する。例えば、α−官能性オレフィンによる置換スチレンを使用する場合、副産物であるスチルベンは、α−官能性オレフィンと反応してより多くのクロス生成物を生成することができる(表8)。これは、任意の均 一触媒によるスチレンクロスメタセシスの論文では未発見であった。また、理論に束縛されるわけではないが、アクリレートの代わりにβ−メチルスチレンを使用しても、類似反応条件下の関連触媒中間体により、CM収率はやはり増加することが提案される。

さらに、スチレンを用いたクロスメタセシスでは、スチルベンの迅速な生成後に、生産的クロスメタセシスが起こることが判明していた。しかしながら、新しいクラスのスチレンは、スチルベンがゆっくり生成することが分かり、末端オレフィンによる選択的クロスメタセシス生成物の生成が許容された。これらのスチレンの例を表9に列挙する。

注意するべき点は、表9、項目2,3のオルト置換が選択的CM反応を表わし、項目4のホモアリル置換も選択的CMを示すことである。 α,β−不飽和カルボニルが化合物に関する先に述べた反応では、機構の研究により、末端オレフィン成分のルテニウムカルベン種を通じて表2,3に示された反応が優先的に起こり、その後、アクリレートのような電子不足成分による迅速な反応が起こることが示されていた。しかし実際には、休止ルテニウムカルベン状態が電子不足成分と共に存在するときに様々な反応を行なうことができることが判明した。これにより、クロスメタセシスにより利用可能な、非常に広範な生成物が許容される。表10はいくつかの例の結果を列挙する。

二量体化に加えて、これらの反応は、表11に要約したような1,1−ジェミナル二置換とのアクリレートの反応にも適用することができる。

スチレン同様、オレフィンの炭素でも置換は起こり得る。ジェミナル置換は末端オレフィンまたはα−官能性オレフィン上で起こり得る。 最後に、クロスメタセシスにおいて、様々な反応で、アクリレートと共にアリル置換末端オレフィンを使用した。例えば、アクリル酸メチルとアリルアルコールのクロスメタセシスは、表2に列挙した反応条件で約92%の単離収率で進行した。さらに、1,5−ヘキサジエンと4当量のアクリレートでは、約91%の収率で二重のCM反応が達成された。エステル基や遊離水酸基のようなホモアリル置換も反応条件に適合できる。

以下の実施例は、ルテニウムアルキリデン3a,bを使用する、様々な電子不足オレフィンのクロスメタセシスおよび閉環メタセシスを示す。これらの実施例はあくまで例であって、本発明の範囲を制限することを意図しない。

実施例1 ルテニウムアルキリデン3a,bの調製の代表的手順 磁気撹拌棒を装備した250mLの炎熱乾燥した丸底フラスコを、窒素雰囲気下で、1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロ−テトラフルオロホウ酸イミダゾリウム(3.08g、7.80mmol、1.6当量)および乾燥THE(30mL)で満たした。第三ブトキシドカリウム(0.88g、7.80mmol、1.6当量)の乾燥THF(30mL)溶液を、室温でゆっくり加えた。反応混合物を、1/2時間撹拌したのち、RuCl2(=CH=C(CH3)2)(PCp3)2(3.50g、4.88mmol、1.0当量)の乾燥トルエン(200mL)溶液を含む500mLの炎熱乾燥したSchlenkフラスコにゆっくり移した。この混合物を80℃で15分間撹拌し、この時点で‘H NMRに示すように反応を完了した。反応混合物をアルゴン下でガラスフリットに通じてろ過し、すべての揮発物質を高真空下で除去した。残留物を無水メタノール(40mL)から−78℃にて3回再結晶し、3を77%の収率で薄桃茶色の微細結晶固形物(2.95g)として得た:‘H NMR(400MHz、C6N、PPM)8 19.16(1H,d,J=11Hz)、7.71(1H,d,J=11Hz)、6.89(2H,s )、6.62(2H,s)、3.36−3.24(4H,s)、2.80(6H,s)、2.54(6H,s)、2.41−1.26(27H、br m)、2.20(3H,s)、2.02(3H,s)、1.06(3H,s)、0.90(3H,s);3’P NMR(161.9MHz、CA、ppm)8 28.05;HRMS(FAB)C4,H6,C12NZPRu[M+jに対する計算値784.2993、実測値784.2963。

実施例2 三置換オレフィン生成物の形成のための代表的手順 a)2−メチル−1−ウンデセン(110μL、0.5mmol)と5−ヘキセニル−1−アセテート(170μL、1.0mmol)を同時に、3(20mg、0.024mmol、4.8mol%)のCH2Cl2(2.5mL)撹拌溶液にシリンジにより加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、12時間窒素下で環流した。その後、反応混合物の体積を0.5mlまで減らし、シリカゲルカラム(2×10cm)上で直接精製し、9:1ヘキサン:酢酸エチルで溶出した。透明な油を得た(83mg、収率60%、2.3:1 trans/cis、125.0および124.2ppmのアルケン13Cピークの相対強度で決定)1H NMR(300MHz、CDCl3、ppm):5.08(1H,t,J=2.0Hz)、4.04(2H,t,J=6.0Hz)、2.03(3H,obs s)、2.01−1.91(2H,m)、1.69−1.59(2H,m)、1.56(3H,obs s)、1.47−1.05(16H、broad、m)、1.05−0.84(3H、t、J=6.8Hz) 13C NMR(75Mhz,CDCl3,ppm):171.7、136.7、136.4、150.0、124.2、123.3、65.1、40.3、32.5、32.3、30.2、29.9、28.8、28.6、28.5、28.0、26.7、23.2、21.5、16.4、14.7.Rf=0.35。

実施例3 表2の項目1の生成物の調製の代表的手順 9−デセン−1(tert−ブチルジメチルシラン)−イル(165μL、0.51mmol)とメタクリル酸メチル(110μl、1.00mmol)を同時に、3(21mg、0.026mmol、5.2mol%)のCH2Cl2(2.5ml)の撹拌溶液にシリンジにより加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、12時間窒素下で環流した。その後、反応混合物の体積を0.5mlまで減らし、シリカゲルカラム(2×10cm)上で直接精製し、9:1 ヘキサン:酢酸エチルで溶出した。粘性の油を得(123mg、収率72%、13C NMRスペクトルの143.2および143.1ppmの相対高さによって決定されたtrans/cis)、この表中のすべての反応の代表例である。

室温での反応 例えば、表2の項目2の反応では、反応は以下のように行った:23〜25℃の3aのCH2Cl2(0.2M)溶液に、シリンジにより、5−アセトキシ−1−ヘキセン(1当量)とアクリル酸メチル(1.05当量)を連続的に加えた。フラスコを窒素流下に置き、反応混合物を23〜23℃の温度範囲で撹拌し、その温度で12時間維持した。黒色の反応混合物をロータリーエバポレーションにより0.5mLまで濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(2×10cm(9:1 ヘキサン:酢酸エチル)で精製し、92%の単離収率でクロス生成物を得た。

実施例4 表3の反応のための代表的手順 アミド(1.0当量)のCH2Cl2(0.2M)溶液を満たしたフラスコに、カニューレ挿入により触媒1(0.05当量、CH2Cl2中)を加え、続いてシリンジにより 末端オレフィン(1.25当量)を加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、15時間アルゴン下で環流した。反応をモニタするためにTLC分析を使用した。溶媒を蒸発させた後、生成物をシリカゲルカラム上で直接精製し、生成物を粘性の油または白色固形物のいずれかとして得た。表3の項目1bの反応に対して少し修正を行い、1.5当量の末端オレフィン使用し、より高い触媒量を使用した(10mol%)。これらの条件により、表3に記載されているすべての反応のCM収率が増加する。

実施例5 表4の項目1の生成物の調製の代表的手順 反応は上述の反応と同様に行った:9−デセン−1−イルベンゾエート(145μl、0.52mmol)と一酸化ブタジエン(160μl、1.98mmol)を同時に、3a,b(21mg、0.027mmol、5.0mol%)のCH2Cl2(2.5ml)の撹拌溶液にシリンジにより加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、12時間窒素下で環流した。その後、反応混合物の体積を0.5mlまで減らし、シリカゲルカラム(2×10cm)上で直接精製し、20:1 ヘキサン:酢酸エチルで溶出した。透明な油を得た(95mg、収率55%、5:1 trans/cis、5.94と5.75ppmの1Hピークの相対積分で決定)。実験手順の唯一の違いは、項目2で、2当量の追加の(合計4当量の)一酸化ブタジエンが12時間の間シリンジポンプによって加えられることである。すべての反応収率を手順におけるこの変化で最適化することができる。

実施例6 表5の項目3の生成物の調製の代表的手順 磁気撹拌棒を装備した250mLの炎熱乾燥した丸底フラスコを、CH2Cl2(156mL)、混合エーテルジエン(1.00g、7.80mmol、1当量)および触媒3b(331mg、0.42mmol、0.05当量)で満たした。反応混合物を一晩環流し、その時点で1H NMRは出発物質の完全な消失を示した。CH2Cl2を大気圧で蒸留し、生成物をバルブ対バルブ(bulb-to-bulb)蒸留により精製しは、生成物を無色の油(382mg、3.78mmol、収率49%)として得た。表4の項目1,2との唯一の違いは、反応精製が10:1 ヘキサン:酢酸エチル溶出液でのカラムクロマトグラフィーによるものであったことである。溶媒の蒸発により、生成物を透明の油として得た。

実施例7 表6の反応のための代表的手順 すべての項目に同じ一般的手順を使用した。その手順は以下の通りである:アミド(1.0当量)のCH2Cl2(0.2M)溶液で満たしたフラスコに、カニューレ挿入により触媒3a(0.05当量、CH2Cl2中)を加え、続いてシリンジによりスチレン(1.9当量)を加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、15時間アルゴン下で環流した。反応をTLC分析によりモニタする。溶媒を蒸発させた後、生成物をシリカゲルカラム上で直接精製した。この手順から唯一外れているのは表6の項目1bであり、この場合は、他の残りの反応で使用される0.05当量の代わりに、0.1当量の触媒3aを使用した。

実施例8 表7の反応のための代表的手順 エチルビニルケトン(1.0当量)のCH2Cl2(0.2M)溶液で満たしたフラスコに、カニューレ挿入により触媒3a(0.05当量、CH2Cl2中)を加え、続いてシリンジによりスチレン(1.9当量)を加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、15時間アルゴン下で環流した。反応をTLC分析によりモニタする。溶媒を蒸発させた後、定量的収率でクロスメタセシス生成物を得るために生成物をシリカゲルカラム上で直接精製 し、生成物を1H−NMRによりtrans異性体としてのみキャラクタライズした。表7に列挙した反応を、表に列挙したようなアクリレートの当量で、同じ反応条件下にて行った。

実施例9 表9の反応のための代表的手順 反応条件は表7の反応と同様である。スチレン対末端オレフィンの比を表9に列挙する。

実施例10 表10の反応のための代表的手順 項目1−4のアクリレート二量化のために同様の反応条件のセットを使用する。室温の3a(5mol%)のCH2Cl2(0.4M)溶液中に、シリンジにより適切なアクリレートを加えた。フラスコを窒素流下で環流凝縮器に取り付け、反応混合物を40℃に加熱し、その温度で3時間維持した。黒色の反応混合物を室温まで冷却した後、ロータリーエバポレーションにより0.5mLまで濃縮した。得られた残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(2×10cm)で精製し、1H−NMRによりtrans異性体としてのフマレート二量体を得た。

表10の項目5−7に関しては、基質の濃縮がCH2Cl2中で0.4Mから0.05Mに下げられる以外は、上記に列挙したのと同じ反応条件を適用する。理論に束縛されるわけではないが、反応条件のこの変化により、ケトンカルベン対エステルカルベンの2分子触媒分解経路はより好都合となる。

実施例11 表11の反応のための代表的手順 これらの反応に使用される反応条件は3セット存在する。表11の項目1−2に関しては、触媒3a(0.05当量)、で満たしたフラスコに、シリンジによりα,β−不飽和ケトン(1当量)とα,β−不飽和エステル(2当量)を加えた。フラスコを凝縮器に取り付け、3時間アルゴン下で環流した。反応をモニタするためにTLC分析を使用する。溶媒を蒸発させた後、生成物をシリカゲルカラム上で直接精製した。表11の項目3−5に関しては、1,1−二置換オレフィンをアクリレート成分に対して4当量だけ過剰に使用する以外は、同様の反応を使用する。さらに、上記反応から生じた生成物を2:1比のtrans:cisジアステレオ異性体として分離し、1H−NMR nOe測定により測定した。最後に、表11の項目6−7に関しては、項目1−5に関しては、メチレンシクロヘキサンをアクリル酸塩クロスパートナーに対して2当量だけ過剰に加えること以外は、同一の反応条件を使用する。

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