【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、フォトレジスト材料、電子線レジスト材料として有用なポリ(ヒドロキシスチレン)を合成するための重合用モノマーとして使用される置換オキシスチレン誘導体の有利な製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 近年、半導体デバイスの微細化、高集積化が急速に進展し、リソグラフィー用レジスト材料について益々高解像度と高現像性が要求されている。 この要求に沿って、従来ノボラック樹脂に変わるものとしてKrF,ArFエキシマレーザー等の短波長光用の化学増幅型レジスト材料が開発されている。 このレジスト材料においては、露光によって発生した酸によって容易に脱離する保護基を有するとともに、その保護基の脱離前後で溶解性の異なるものが賞用されている。 かかるレジスト材料としては耐プラズマ性に優れたポリ(ヒドロキシスチレン)誘導体が特に好適なものとして知られている。 そして、このポリ(ヒドロキシスチレン)誘導体を製造するモノマーとして、ヒドロキシスチレンの水酸基を酸又は塩基によって容易に離脱される保護基で保護した置換オキシスチレン誘導体が用いられている。 【0003】 これらの置換オキシスチレン誘導体の製造方法としては現在多くの製法が知られている。 従来の製造方法を大別すると次の通りである。 1)フェノールを原料としてp−置換オキシスチレンを製造する方法a)J. Org. Chem. 23 ,544(1958)には、フェノールをトリフルオロホウ素の存在下酢酸と反応してp−ヒドロキシアセトフェノンとし、これをアセチル化してp−アセトキシフェニルメチルカルビノールとし、後酸性硫酸カリ触媒の存在下脱水してp−アセトキシスチレンを得る方法が開示されている。 b)特開平5−201912号公報には、p−クロロフェノールをナトリウムメチラートで水酸基をナトリウム塩とし、クロロメチルエーテルと反応してp−メトキシクロロベンゼンとし、これをテトラヒドロフラン溶媒中でマグネシウムによりグリニヤール試薬とし、これを臭化ビニルとカップリングしてp−メトキシメトキシスチレンを得る方法が開示されている。 2)p−置換スチレンよりp−置換オキシスチレンを製造する方法a)米国特許第5,082,966号には、p−アセトキシスチレンに水酸化カリウムを作用させ、後相関移動触媒の存在下にジ−tert−ブチルジカーボネートと反応させてp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 b)欧州特許第486,267号には、p−アセトキシスチレンに酢酸エチル溶媒中水酸化カリウムを作用させ、後ジ−tert−ブチルカーボネートと反応させてp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 c)特開平4−253939号公報には、p−アセトキシスチレンにカリウム−tert−ブトキシドを作用させ、次いで、ジ−tert−ブチルジカーボネートを反応させてp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 d)米国特許第4,603,101号には、p−クロロスチレンをグリニヤール試薬とした後、過安息香酸tert−ブチルと反応させてp−tert−ブチルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 3)p−ヒドロキシベンズアルデヒドよりp−置換オキシスチレンを製造する方法欧州特許第104,250号には、p−ヒドロキシベンズアルデヒドにカリウム−tert−ブトキシドを作用させ、次いで、tert−ブトキシジカーボネートを反応させてp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドとし、更に臭化メチルトリフェニルホスフィンを作用させるウイッチヒ反応によって、p−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 4)p−置換オキシベンズアルデヒドからp−置換オキシスチレンを製造する方法a)J. Am. Chem. Soc. , 80 ,3645(1985)には、p−アセトキシベンズアルデヒドをグリニヤール試薬を用いてアルデヒドをメチレン化してp−アセトキシスチレンを得る方法が開示されている。 b)Z. Chem. , 4 ,30(1964)には、p−トリメチルシリルオキシベンズアルデヒドをグリニヤール試薬を用いてアルデヒドをメチレン化してp−トリメチルシリルオキシスチレンを得る方法が開示されている。 c)Polymer. 24 ,995(1983)には、p−アセトキシベンズアルデヒドに臭化メチルトリフェニルホスフィンを作用させるウイッチヒ反応によってp−アセトキシスチレンを得る方法が開示されている。 5)p−tert−ブトキシクロロベンゼンよりp−tert−ブトキシスチレンを製造する方法特開平1−106835号公報には、p−tert−ブトキシクロロベンゼンをグリニヤール試薬と反応させた後、ニッケルフォスフィン錯体の存在下で塩化ビニルを反応させて、p−tert−ブトキシスチレンを得る方法が開示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 上記従来法による置換オキシスチレン誘導体の製法は、グリニヤール試薬、ウイッチヒ試薬等の高価な試薬を使用したリ、特殊の反応を行なうために設備、操作に種々の難点がある。 更に、収量も低くなる欠点があった。 本発明はこのような工業上の各種難点のない操作容易でかつ収量のよい置換オキシスチレン誘導体の製法を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、置換オキシベンズアルデヒドを置換オキシ基をそのままで、アルデヒド基のみを操作容易にかつ特殊の試薬並びに設備を使用することなく、メチレン化する方法を達成するために鋭意研究を行なった結果、置換オキシベンズアルデヒドを活性塩化物と亜鉛金属の存在下で有機溶媒中においてジブロムメタンと反応せしめると、選択的にアルデヒド基がエチレン基になり、所望の置換オキシ基を有するスチレンが操作容易に、特別の設備を使用することなくしかも高収率で得る方法を見出し本発明を完成した。 【0006】 本発明は、一般式〔化1〕で示されるベンズアルデヒド誘導体とジブロムメタンとを、亜鉛金属とアルキルクロロシラン化合物、塩化アシル化合物、無水塩化水素及び塩化チオニルのうちから選ばれる1種以上の活性な塩化物との存在下で有機溶媒中で反応させることを特徴とする一般式〔化2〕で示されるスチレン誘導体の製造方法である 。 【化1】
(式中Rは、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、酸素原子を含む5又は6原子複素環基もしくはアルキルシリル基を表す) 【化2】
(式中Rは前記と同一意義を有す)
【0007】
本発明の〔化1〕で示される置換オキシベンズアルデヒドは、ベンズアルデヒドにアルコキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、酸素原子を含む5又は6原子複素環オキシ基、アルキルシリルオキシ基が置換されている。 そして、上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられ、アルコキシアルキルオキシ基としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、1−エトキシエトキシ基、1−イソプロポキシエトキシ基、2−メトキシプロポキシ基等が挙げられ、アルキルカルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基等が挙げられ、アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基等が挙げられ、酸素原子を含む5又は6原子複素環基としては、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基等が挙げられる。 アルキルシリルオキシ基としては、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基等が挙げられる。
【0008】
上記、〔化1〕の化合物としては、o,m又はp−メトキシベンズアルデヒド、o,m又はp−tert−ブトキシベンズアルデヒド等のアルコキシベンズアルデヒド類、o,m又はp−メトキシメトキシベンズアルデヒド等のアルコキシアルキルオキシベンズアルデヒド類、o,m又はp−アセトキシベンズアルデヒド、o,m又はp−プロピオニルオキシベズアルデヒド、o,m又はp−ブチリルオキシベンズアルデヒド等のアルキルカルボニルオキシベンズアルデヒド類、o,m又はp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド等のアルコキシカルボニルオキシベンズアルデヒド類、o,m又はp−テトラヒドロピラニルオキシベンズアルデヒド、o,m又はp−テトラヒドロフラニルオキシベンズアルデヒド等の酸素原子を有する5又は6原子複素環置換ベンズアルデヒド類、o,m又はp−tert−ブチルジメチルシリルオキシベンズアルデヒド、o,m又はp−トリメチルシリルオキシベンズアルデヒド等のアルキルシリルオキシベンズアルデヒド類が挙げられる。
【0009】
本発明に使用されるジブロムメタンは〔化1〕で示される上記ベンズアルデヒド誘導体のアルデヒド基をメチレン基とするメチレン化剤として使用され、通常のジブロムメタンである。 本発明において、このジブロムメタンの使用量は該ベンズアルデヒド誘導体1モルに対し、通常1〜10モルの範囲で用いられる、好適には1〜2モルである。 なお、このジブロムメタンの使用量が1モルより少ない範囲では目的物の〔化2〕で示されるスチレン誘導体の収率が低下するので好ましくない。 また、10モルを超える範囲では反応には何等の影響はないが、反応器単位容積当りの生産性が悪くなること及び未反応のジブロムメタンの量が増加して経済的に好ましくない。
【0010】
本発明に使用される亜鉛金属は市販されている亜鉛金属の純度が高純度品(99.9%)及び低純度品(85%)の2種類があるが、何れの亜鉛金属も本発明に使用して円滑に反応は進行し使用することができる。 また、市販されている亜鉛金属の形状として、粉末、砂状、顆粒状、華状のものがあるが、何れも使用できるが、反応を円滑に進め反応速度を高める上から粒径の小さい粉末状のものが好ましい。 亜鉛金属の使用量は〔化1〕で示されるベンズアルデヒド誘導体1モルに対し通常2〜20モルの範囲であるが、好ましくは3〜5モルの範囲で使用される。 この使用量が2モルより少ない範囲では目的物〔化2〕で示されるスチレン誘導体の収率が低下するので好ましくなく、また、20モルを超える範囲では反応上支障はないが、未反応亜鉛金属が過大になること及びそれに付随して反応溶媒の使用量が増大するので工業上不利である。
【0011】
本発明に使用される活性な塩化物は、亜鉛金属を活性化してジブロムメタンの反応を選択的に円滑に進行するために使用される試薬である。 この、
亜鉛金属を活性化する塩化物としては、 アルキルクロロシラン化合物、塩化アセチル等の塩化アシル化合物、無水塩化水素及び塩化チオニル等の塩化物が挙げられる。 特に、一般式〔化3〕で示される アルキルクロロシラン化合物、及び塩化アシル化合物が好適である。 【化3】
RlSiHmCln
(式中、Rはメチル基、又はエチル基、mは0〜3の整数、nは1〜3の整数、l+m+n=4を示す)
この例として、エチルクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、トリクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルクロロシラン等が挙げられる。
上記活性な塩化物の使用量は亜鉛金属1モルに対して通常0.002〜1モルの範囲であり、特に、0.005〜0.5モルの範囲が好適である。 この使用量が0.002モルより少ない範囲では目的物〔化2〕で示されるスチレン誘導体の収率が低下し、1モルを超える場合は未反応塩化物が増大し経済的に不利になる。
【0012】
上記亜鉛金属と活性塩化物は〔化1〕で示される原料のベンズアルデヒド誘導体、反応剤であるジブロムメタンと共に反応装置中に仕込んで本発明の方法を実施してもよい。 この場合は反応装置中で亜鉛金属は塩化物により活性化され原料とジブロムメタンの反応を円滑に進行させる。 しかし、反応初期に急激な発熱を伴い反応温度の制御を考慮する必要があるので、予め、亜鉛金属を活性な塩化物で活性化してから、原料の置換オキシベンズアルデヒドとジブロムメタンを反応溶剤に溶解した調製液を徐々に添加して反応させた方が工業的に好ましい。 この場合、反応溶媒に亜鉛金属粉末を撹拌懸濁せしめ、反応温度まで加温した後、所定量の活性塩化物を滴下して活性化処理操作を行なう。
【0013】
本発明に使用する反応溶媒は、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素極性有機溶媒を使用すると反応は円滑に進行し、目的物の〔化2〕で示されるスチレン誘導体が収率よく得られる。
本発明の方法において、好適な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが挙げられる。
【0014】
本発明の反応は、上記〔化1〕で示されるベンズアルデヒド誘導体原料、ジブロムメタン及び予め活性化塩化物で活性化した亜鉛金属又は活性化塩化物と亜鉛金属を上記反応溶媒中で、通常100℃以下の温度、好ましくは80℃以下の温度で反応させる。 反応温度が100℃を超えると目的物である〔化2〕で示されるスチレン誘導体の収率が低下するので好ましくない。
反応終了後、反応生成物中に目的物の他に未反応の亜鉛金属、活性化された亜鉛金属、臭化亜鉛等の亜鉛化合物が存在して目的物である〔化2〕で示されるスチレン誘導体を分離精製する際の障害となる恐れがある。 特に、活性化された塩化亜鉛金属及びルイス酸である塩化亜鉛等によって、目的物の置換オキシスチレンの重合が起こる恐れがある。
そこで、この活性化された亜鉛化合物を無害にするために、飽和塩化アンモニウム水溶液を反応生成物に添加すれば、この活性化された亜鉛化合物は、水により活性を失い、臭化亜鉛は塩化アンモニウムと錯塩を形成して水溶液に移行し不活性化できる。 この場合飽和塩化アンモニウム水溶液の添加量は通常仕込み亜鉛金属1モルに対し、塩化アンモニウム1〜3モルの範囲が好ましい。 飽和臭化アンモニウム水溶液を用いても同様の効果を示す。
また、本発明においてアシルオキシスチレンを合成する際に、目的物が加水分解された形のビニルフェノールが一部生成してくるので目的物の収率を向上させる上からは、メチレン化反応終了後に相当する酸無水物を添加してアシル化反応を再度行なうことが望ましい。
なお、本発明の置換オキシベンズアルデヒドをジブロムメタンと亜鉛金属、活性塩化物により置換オキシスチレンを得る反応は新規である。
【0015】
次に本発明の実施例を挙げ本発明の方法を更に詳細に説明する。
【0016】
【実施例1】
原料p−アセトキシベンズアルデヒド(PABA)の合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量3リットルの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド300g(2.459モル)と水574gを仕込み、48%NaOH水溶液410g(4.918モル)室温下で滴下した。 次いで、無水酢酸450g(3.688モル)を室温下2時間かけて滴下した。 滴下終了後、後反応を2時間行なった。
得られた反応生成物にトルエン600gを加えて撹拌混合した後、静置分液した。 水層を分離除去した。 得られたトルエン層を水400gを用いて洗浄した。
かくして得られたトルエン層から減圧蒸留によりトルエンを留去した。 得られた釜残物の重量は380gでp−アセトキシベンズアルデヒドの含有率は98.8%であった。
p−ヒドロキシベンズアルデヒド基準の収率は94%であった。
上記釜残物の次のメチレン化反応の原料に供した。
【0017】
p−アセトキシスチレンの合成 <亜鉛金属の活性化>
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量5リットルの四つ口フラスコに亜鉛粉末(片山化学社製、純度85%)418.7g(6.40モル)と無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1400gとを仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで、50℃まで昇温した塩化アセチル12.3g(0.157モル)を15分間かけて滴下した。 引き続き同温度で15分間撹拌を続けZn金属の活性化を終了した。
<メチレン化反応>
次いで、p−アセトキシベンズアルデヒド280g(1.707モル)とジブロムメタン445g(2.561モル)からなる混合液を内温を50℃に保ちながら2時間かけて滴下した。 引き続き同温度で後反応を30分間行なった。 次いで同温度に保ちながら無水酢酸174g(1.708モル)を15分間かけて滴下し、後反応を更に30分間続けた。
ここで使用した原料の仕込み比を纏めると、表1のようになる。
【0018】
【表1】
【0019】
反応生成物の一部をサンプリングし液体クロマトグラフィーで組成分析を行なったところ、表2の通りであった。
【0020】
【表2】
【0021】
表2の分析結果から、表3の如き反応結果が得られた。
【0022】
【表3】
【0023】
<後処理>
反応終了後、反応生成物を0℃まで冷却した。 しかる後、反応生成物に飽和塩化アンモニウム水溶液(NH
4 C1濃度 約29%)1169gを冷却しながら添加し、撹拌混合した。 次いで濾過助剤としてラジオライト57g加えて懸濁している未反応亜鉛を濾別した。 そして得られたケーキ上にトルエン300gを振りかけ洗浄した。 洗浄トルエン液と濾液とを合併しこれにトルエン553gを加えて抽出操作を行ない目的物であるp−アセトキシスチレンをトルエン層に抽出した。 同様な抽出操作をトルエン415gを加えて2回繰り返した。 得られたトルエン抽出液の総重量は1603gであった。
次に10〜140mmHgの減圧下内温を60℃以下に保ちながら、トルエン抽出液からトルエンを留去した。 得られた釜残物は261gであった。
次いで、この釜残物を単蒸留装置に移し変えて、重合防止剤として2−tert−ブチルハイドロキノン0.02gを添加して1〜2mmHgの減圧で蒸留を行なった。 初留分をカットした後、沸点75〜76℃/1mmHg(文献値:73〜75℃/0.6mmHg)のp−アセトキシスチレン留分176gを得られた。
得られたp−アセトキシスチレンは無色透明な液体で、その純度は98.5%(GC)であった。 また、GPCで分析したところ、重合物は検出されなかった。
反応から分離生成工程までの通算収率は63モル%(p−アセトキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0024】
上記の如く得られたp−アセトキシスチレンのスペクトルデータは次の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 1755,1500,1365,1190,1180
H 1 −NMRスペクトル δppm:2.30(s),5.25(d),5.71(d),6.71(dd),7.05〜7.44(m)
MASSスペクトル(m / e) 【外1】
【0025】
【実施例2】
p−アセトキシスチレンの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコに亜鉛金属粉末(片山化学製 純度85%)58.9g(0.9モル)と無水DMF164gとを仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで、トリメチルクロロシラン3.9g(0.036モル)と無水DMF19.6gとからなる溶液を内温を50℃に保ちながら15分間かけて滴下した。 引き続き同温度で15分間撹拌を続けた。
次いで、p−アセトキシベンズアルデヒド(PABA)32.8g(0.2モル)とジブロムメタン52.15g(0.3モル)を無水DMF85gに溶解した混合液を内温を50℃に保ちながら1時間かけて滴下した。 引き続き同温度で後反応を40分間行なった。
上記の原料仕込み比を纏めると、表4のようになる。
【0026】
【表4】
【0027】
反応終了後、反応生成物の一部をサンプリングして液体クロマトグラフィーで組成分析した結果、表5の通りであった。
【0028】
【表5】
【0029】
表5の分析結果から、反応成績を求めると表6のようになる。
【0030】
【表6】
【0031】
【実施例3】
p−アセトキシスチレンの合成 <亜鉛金属の活性化>
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコに亜鉛金属粉末(片山化学製 純度85%)73.6g(1.126モル)と無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)246gとを仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで、50℃まで昇温しトリメチルクロロシラン3g(0.0276モル)を5分間かけて滴下した。 引き続き同温度で15分間撹拌を続けZn金属の活性化を終了した。
<メチレン化反応>
次いで、p−アセトキシベンズアルデヒド49.2g(0.3モル)とジブロムメタン78.2g(0.45モル)からなる混合液を内温を50℃に保ちながら1時間30分かけて滴下した。 引き続き同温度で後反応を30分間行なった。
次いで同温度に保ちながら無水酢酸32g(0.3モル)を55分間かけて滴下した。
ここで使用した原料の仕込み比を纏めると、表7のようになる。
【0032】
【表7】
【0033】
反応生成物の一部をサンプリングし液体クロマトグラフィーで組成分析を行なったところ、表8の通りであった。
【0034】
【表8】
【0035】
<後処理>
反応終了後、反応生成物を0℃まで冷却した。 しかる後、反応生成物に飽和塩化アンモニウム水溶液(NH
4 Cl濃度 約29%)208gを冷却しながら添加し、撹拌混合した。 次いで濾過助剤としてラジオライト10gを加えて懸濁している未反応亜鉛を濾別した。 そして得られたケーキ上にDMF60gを振りかけ洗浄した。 洗浄DMF液と濾液とを合併し、これにトルエン253gを加えて抽出操作を行ない目的物であるp−アセトキシスチレンをトルエン層に抽出した。 同様な抽出操作を2回繰り返した。
次に10〜140mmHgの減圧下内温を60℃以下に保ちながら、トルエン抽出液からトルエンを留去した。 得られた釜残物は53.1gであった。
次いで、この釜残物を単蒸留装置に移し変えて、重合防止剤として2−tert−ブチルハイドロキノン0.005gを添加して1〜2mmHgの減圧下で蒸留を行なった。 初留分をカットした後、沸点82〜83℃/2mmHgp−アセトキシスチレン留分28gを得た。
得られたp−アセトキシスチレンは無色透明な液体で、その純度は98.6%(GC)であった。 また、GPCで分析したところ、重合物は検出されなかった。
反応から分離生成工程までの通算収率は57モル%(p−アセトキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0036】
【実施例4】
原料o−アセトキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコにサリチルアルデヒド150g(1.23モル)、トリエチルアミン149g(1.48モル)及びトルエン300gを仕込み、無水酢酸151g(1.48モル)を反応温度21〜26℃に保ちながら1時間かけて滴下した。 滴下終了後、後反応温度を50℃まで上げて2時間行なった。
得られた反応生成物に水150gを加えて撹拌混合した後、静置分液した。 次いで、水層を分離除去した。 同じ洗浄操作を更に1回繰り返した。
上記の洗浄したルエン層を減圧蒸留にかけトルエンを留去した。 得られた釜残物207gを単蒸留装置に移し、圧力3mmHgの減圧下で蒸留し、沸点86〜92℃/3mmHgの留分137gを得た。 この留分のo−アセトキシベンズアルデヒドの含有率は99.6%であった。
o−ヒドロキシベンズアルデヒド基準の収率は68モル%であった。
【0037】
o−アセトキシスチレンの合成 <亜鉛金属の活性化>
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量2リットルの四つ口フラスコに亜鉛粉末(片山化学社製、純度85%)193.7g(2.96モル)と無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)650gとを仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで、50℃まで昇温し塩化アセチル6.2g(0.1モル)を10分間かけて滴下した。 引き続き同温度で20分間撹拌を続けZn金の活性化を終了した。
<メチレン化反応>
次いで、上記のo−アセトキシベンズアルデヒド114g(0.79モル)とジブロムメタン207g(1.19モル)からなる混合液を内温を50℃に保ちながら3時間かけて滴下した。 引き続き同温度で後反応を30分間行なった。
次いで同温度に保ちながら無水酢酸80.6g(0.79モル)を30分間かけて滴下し、後反応を更に30分間続けた。
反応生成物の一部をサンプリングし液体クロマトグラフィーで組成分析を行なったところ、o−アセトキシベンズアルデヒド転化率99.4%、o−アセトキシスチレン収率48モル%であった。
<後処理>
反応終了後、反応生成物を0℃まで冷却した。 しかる後、反応生成物に飽和塩化アンモニウム水溶液(NH4Cl濃度 約29%)587gを冷却しながら添加し、十分に撹拌混合した。 次いで濾過助剤としてラジオライト26g加えて懸濁している未反応亜鉛を濾別した。
次いで濾液にトルエン256gを加えて抽出操作を行ない目的物であるo−アセトキシスチレンをトルエン層に抽出した。 同様な抽出操作をトルエン192gをそれぞれ加えて3回繰り返し反応収率は48モル%(o−アセトキシスチレン基準)であった。
次に10〜140mmHgの減圧下内温を60℃以下に保ちながら、トルエン抽出液からトルエンを留去した。 得られた釜残物は130gであった。
次いで、この釜残物を単蒸留装置に移し変えて、重合防止剤として2−tert−ブチルハイドロキノン0.02gを添加して1〜2mmHgの減圧で蒸留を行なった。 初留分をカットした後、沸点72〜85℃/4mmHgのo−アセトキシスチレン留分70gを得た。
得られたo−アセトキシスチレンは無色透明な液体で、その純度は91.7%(GC)であった。 また、GPCで分析したところ、重合物は検出されなかった。
反応から分離生成工程までの通算収率は33モル%(o−アセトキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0038】
【実施例5】
原料m−アセトキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコにm−ヒドロキシベンズアルデヒド100g(0.82モル)、トリエチルアミン138.4g(0.984モル)及びトルエン200gを仕込み、無水酢酸100g(0.98モル)を氷冷しながら2時間かけて滴下した。 滴下終了後、後反応を1時間行なった。
得られた反応生成物に水100gを加えて撹拌混合した後、静置分液した。 次いで、水層を分離除去した。 同じ洗浄操作を更に2回繰り返し、水洗した。
上記の洗浄したルエン層を減圧蒸留にかけトルエンを留去した。 得られた釜残物156gを単蒸留装置に移し、圧力5mmHgの減圧下で蒸留し、沸点124〜127℃/5mmHgの留分114gを得た。 この留分のm−アセトキシベンズアルデヒドの含有率は98.8%であった。
m−ヒドロキシベンズアルデヒド基準の収率は85%であった。
【0039】
m−アセトキシスチレンの合成 <亜鉛金属の活性化>
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量2リットルの四つ口フラスコに亜鉛粉末(片山化学社製、純度85%)170.5g(2.61モル)と無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)570gとを仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで、50℃まで昇温し塩化アセチル5.5g(0.157モル)を15分間かけて滴下した。 引き続き同温度で15分間撹拌を続けZn金属の活性化を終了した。
<メチレン化反応>
次いで、m−アセトキシベンズアルデヒド114g(0.695モル)とジブロムメタン181g(1.04モル)からなる混合液を内温を50℃に保ちながら2時間かけて滴下した。 引き続き同温度で後反応を30分間行なった。
次いで同温度に保ちながら無水酢酸70.9g(0.695モル)を15分間かけて滴下し、後反応を更に30分間続けた。
反応生成物の一部をサンプリングし液体クロマトグラフィーで組成分析を行なったところ、m−アセトキシベンズアルデヒド転化率99.7%、m−アセトキシスチレン収率77%であった。
<後処理>
反応終了後、反応生成物を0℃まで冷却した。 しかる後、反応生成物に飽和塩化アンモニウム水溶液(NH4Cl濃度 約29%)439gを冷却しながら添加し、十分に撹拌混合した。 次いで濾過助剤としてラジオライト23g加えて懸濁している未反応亜鉛を濾別した。
次いで濾液にトルエン200gを加えて抽出操作を行ない目的物であるm−アセトキシスチレンをトルエン層に抽出した。 同様な抽出操作をトルエン150g、100gをそれぞれ加えて2回繰り返した。 得られたトルエン抽出液の総重量は609gであった。
次に10〜140mmHgの減圧下内温を60℃以下に保ちながら、トルエン抽出液からトルエンを留去した。 得られた釜残物は117gであった。
次いで、この釜残物を単蒸留装置に移し変えて、重合防止剤として2−tert−ブチルハイドロキノン0.02gを添加して1〜2mmHgの減圧で蒸留を行なった。 初留分をカットした後、沸点98〜102℃/2.5mmHgのm−アセトキシスチレン留分64gを得た。
得られたm−アセトキシスチレンは無色透明な液体で、その純度は98.7%(GC)であった。 また、GPCで分析したところ、重合物は検出されなかった。
反応から分離生成工程までの通算収率は57モル%(m−アセトキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0040】
【実施例6】
原料p− tert −ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの合成 滴下ロート、冷却管、温度計及び撹拌機を備えた容量1リットルの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド100g(0.8モル)、ジオキサン300g、ジ−ブチルジカーボネイト197g(0.9モル)を仕込み、反応温度を30℃に保ちながらトリエチルアミン91.1g(0.9モル)を1時間かけて滴下した。 その後、同温度で2時間かけて後反応を行なった。 p−ヒドロキシベンズアルデヒドの反応率は98%であった。 反応終了後、反応生成物を水600gとエチルエーテル1500gを添加して撹拌混合した後静置し水層を分離した。 しかる後、油層部を水洗いした後MgSO
4で乾燥した。 ついでエチルエーテルを蒸留回収し、その残液にn−ヘキサン366gを添加して20℃まで冷却し晶析操作を行なった。 析出した結晶を濾取した後湿潤結晶を30℃で20mmHgの減圧下で4時間乾燥したところ、p−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド結晶149g(0.6モル)が得られた。 得られたp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの純度は99.5%で、収率は82%(p−ヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。 【0041】
p− tert −ブトキシカルボニルオキシスチレン合成 <亜鉛金属の活性化>
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコに亜鉛粉末(片山化学製 純度85%)49g(0.75モル)を仕込み、撹拌しながら系内を窒素置換した。 次いで50℃まで昇温して塩化アセチル1.4g(0.018モル)を内温を50℃に保ちながら30分間かけて滴下ロートから徐々に滴下した。 引き続き15分間撹拌を続け亜鉛金属の活性化処理を終了した。
<メチレン化反応>
次いで、上記の亜鉛金属懸濁液に上記の如く合成したp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド44g(0.2モル)とジブロムメタン52g(0.3モル)の混合液を反応温度を50〜53℃に保ちながら1時間かけて滴下した。 反応は発熱を伴いながら進行した。 その後、同温度に保ちながら後反応を30分間続けた。
<後処理>
反応終了後、反応混合物を室温まで冷却した。 しかる後、該反応生成物に飽和塩化アンモニウム水溶液(NH
4 Cl濃度 約29%)138gを加え撹拌混合した。 次いで濾過助剤として市販のラジオライト6.7を加え、未反応亜鉛金属を濾別した。
得られた濾液にトルエン220gを加えて目的物であるp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンをトルエン層に抽出した。 この抽出操作を2回繰り返した。 この抽出液を液体クロマトグラフィーで分析し反応収率を求めたところ、93%であった。
次に上記抽出液を内温を100℃以下に保ちながら減圧蒸留にかけトルエンを留去した。 次いで、得られた釜残物を単蒸留装置に移し変えて1〜2mmHgの減圧下で蒸留を行なった。 初留分をカットした後、沸点115〜120℃/1〜2mmHg(文献値:90〜92℃/0.2mmHg)のp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン留分38.3gを得た。
得られたp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンは無色の液体で、その純度は97%(GC)であった。 p−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンの通算収率(p−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド基準)は87モル%であった。
上記の如く得られたp−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンの構造確認を行なった。
【0042】
MASS:スペクトル(m / e) 【外2】
H 1 −NMR(CDC 13 )スペクトル δppm:1.55(S),5.29(d),5.73(d),6.69(dd),7.25〜7.42(m)
IRスペクトル(ν max ) cm ̄ 1 2980,1755,1510,1375,1280,1260,1220,1150
元素分析: 【0043】
【実施例7】
原料p−テトラヒドロピラノ ( 2 ) オキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量500mlの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド28.5g(0.234モル)、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン59g(0.701モル)及び酢酸エステル57gを仕込み、フラスコを氷冷しながら塩化水素を飽和溶解させた酢酸エステル溶液12.7mlを滴下した。 次いで室温下で撹拌しながら47時間反応を行なった。
反応終了後、反応生成物を187gの5%NaOH水溶液にあけ、酢酸エチル500gで目的物を抽出した。 水層を分離除去した後、更に187gの5%NaOH水溶液を用いて、未反応p−ヒドロキシベンズアルデヒドを抽出した。 次いで、得られた油層部を水洗いした後、硫酸マグネシウムで乾燥し更に受酸剤としてハイドロタルサイトを少量添加して微量の塩化水素を除去した。 次に減圧蒸留により酢酸エチル及び過剰の3,4−ジヒドロ−2H−ビランを留去した。
得られた釜残物には目的物のp−テトラヒドロピラノ(2)オキシベンズアルデヒドが67重量%含まれ、その得量は67.7gであった。 p−テトラヒドロピラノ(2)オキシベンズアルデヒド基準の収率は97%モルであった。
【0044】
p−テトラヒドロピラノ ( 2 ) オキシスチレンの合成 実施例6において、原料のp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの代りに上記p−テトラヒドロピラノ(2)オキシベンズアルデヒド61.5(0.2モル)を用いて実施例6と同じ方法を用いて合成を行なった。
その結果、反応収率89%で目的物であるp−テトラヒドロピラノ(2)オキシベンズアルデヒドが生成していた。 単蒸留により単離した104〜106℃/2mmHg(文献値:82℃/0.2mmHg)のp−テトラヒドロピラノ(2)オキシスチレン留分は23.7gで、その純度は96%(HPLC)であった。 又、反応から分解までの通算収率はp−テトラヒドロピラノ(2)オキシベンズアルデヒド基準で58%であった。
上記の如く得られたp−テトラヒドロピラノ(2)オキシスチレンのスペクトルは次の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 2940,1605,1510,1240,1200,1175,1120,1110,1035,1020
H 1 −NMR(CDC 13 )スペクトル δppm:1.50〜2.10(m),3.55〜4.10(m),5.14(d),6.95〜7.45(m)
【0045】
【実施例8】
p−t−ブチルジメチルシリルオキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド50g(0.4モル)とDMF500gを仕込み、系内を窒素置換をした。 続いてイミダゾール69.8g(1.03モル)を滴下した。 引き続きt−ブチルジメチルクロロシラン92.7g(0.615モル)をフラスコを氷冷しながら滴下した。 氷冷しながら15時間反応を続けた。
反応終了後、反応生成物を500gの水をあけ、酢酸エチル500gで目的物を抽出した。 更にこの抽出操作を2回続けた。 得られた抽出液を5%NaOH水溶液で洗浄した後、水洗いした。 次いで減圧蒸留により酢酸エチルを回収した後、更に温度と減圧度を高め(100℃、3mmHg)揮発分を留去した。 得られた釜残物は88.5gで、目的物のp−t−ブチルジメチルシリルオキシベンズアルデヒドの含有率は91.4%(0.34モル)で、収率は85%(p−ヒドロキシベンズアルデヒド基準)であった。
【0046】
p−t−ブチルジメチルシリルオキシスチレンの合成 実施例6の方法において、原料のp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの代りに原料に上記のp−t−ブチルジメチルシリルオキシベンズアルデヒド51.6g(0.2モル)を用いて、実施例6と同じ方法を用いて合成を行なった。
その結果、反応収率84モル%で目的物であるp−t−ブチルジメチルシリルオキシスチレンが得られた。 蒸留により単離された沸点90〜92℃/3mmHg(文献値:80℃/0.1mmHg)のp−t−ブチルジメチルシリルオキシスチレン留分は25.7gで、その純度は97%(HPLC)であった。 反応から分解までの通算収率(p−ブチルジメチルシリルオキシベンズアルデヒド基準)は55モル%であった。
上記の如く得られたp−t−ブチルジメチルシリルオキシスチレンのスペクトルは次の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 1600,1505,1260
H 1 −NMR δppm:0.40(s),1.00(s),5.20(d),5.60(d),6.55〜7.45(m)
【0047】
【実施例9】
p−テトラヒドロフリル ( 2 ) オキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド62.2g(0.510モル)、2,3−ジヒドロフラン107.2g(1.530モル)及び酢酸エチル124gを仕込み、フラスコを氷冷しながら塩化水素を飽和溶解させた酢酸エチル溶液27.7mlを滴下した。 次いで、室温下で撹拌しながら5時間反応させた。
反応終了後、反応生成物を408gの5%NaOH水溶液にあけ、酢酸エチル500gで目的物を抽出した。 水層を分離除去した後、更に408gの5%NaOH水溶液を用いて、未反応p−ヒドロキシベンズアルデヒドを抽出除去した。 次いで、得られた油層部を水洗いした後、硫酸マグネシウムで乾燥し更に受酸剤としてハイドロタルサイトを少量添加して微量の塩化水素を除去した。 次いで減圧蒸留により酢酸エチル及び過剰の2,3−ジヒドロフランを留去した。
得られた釜残物には目的物のp−テトラヒドロフリル(2)オキシベンズアルデヒドが59重量%含まれ、その得量は68.1gであった。 p−テトラヒドロフリル(2)オキシベンズアルデヒド基準の収率は41モル%であった。
【0048】
p−テトラヒドロフリル ( 2 ) オキシスチレンの合成 実施例6において、原料のp−tert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの代りに原料に上記のp−テトラヒドロフリル(2)オキシベンズアルデヒド65.1(0.2モル)を用いて、実施例6と同じ方法によって合成を行なった。
その結果、反応収率42モル%で目的物であるp−テトラヒドロフリル(2)オキシスチレン留分の得量は11.4gで、その純度は92%(HPLC)であった。 又、反応から分解までの通算収率はp−テトラヒドロフリル(2)オキシベンズアルデヒド基準で30モル%であった。
上記の如く得られたp−テトラヒドロフリル(2)オキシスチレンのスペクトルは下記の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 1605,1505,1240,1075,1040
H 1 −NMRスペクトル(CDC 13 ) δppm:1.80〜2.90(m),3.60〜4.60(m),5.22(d),5.55〜5.90(m), 6.69(dd),7.00〜7.53(m)
【0049】
【実施例10】
原料p−メトキシメトキシベンズアルデヒドの合成 撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた容量1リットルの四つ口フラスコにp−ヒドロキシベンズアルデヒド69.5g(0.57モル)、トルエン500g、メタノール30gを仕込み、系内を窒素置換した後、撹拌しながら70℃まで加温した。 次いで、28%CH
3 ONa溶液131g(0.68モル)を25分かけて滴下し、同温度で更に2時間反応させた。 次いで、メタノールを留去した後、反応生成物を5℃まで冷却した。 次にモノクロロメチルエーテル(ClCH 2 OH 3 )54.7g(0.68モル)を5℃に保ちながら30分かけて滴下し、さらに20時間反応を続けた。 得られた反応生成物に5%NaOH水溶液328g及びトルエン500gを加えて未反応p−ヒドロキシベンズアルデヒドを水層部に抽出した。 次いで、油層部を水洗いした後、硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下でトルエン及び未反応モノクロロメチルエーテルを瑠去した。 得られた釜残物の得量は35gで純度99.1%のp−メトキシメトキシベンズアルデヒドあった。 p−ヒドロキシベンズアルデヒド基準の収率は37モル%であった。
【0050】
p−メトキシメトキシスチレンの合成 実施例6において、原料のtert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの代りに上記p−メトキシメトキシベンズアルデヒド33.2g(0.2モル)を用いて、実施例6と同じ方法によって合成を行なった。
その結果、蒸留により分離した沸点92〜93℃/4mmHg(文献値:93〜94℃/4mmHg)のp−メトキシメトキシスチレン留分が19.0g得られ、その純度は94.8%であった。
反応から分離までの通算収率はp−メトキシメトキシベンズアルデヒド基準で58モル%であった。
得られたp−メトキシメトキシスチレンの各種スペクトルを測定したところ、下記の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 1601,1510,1236,1153,1080,1005
H 1 −NMRスペクトル δppm:3.50(s),5.20(d),5.22(s),5.68(d),6.70(dd),7.0
0〜7.52(m)
【0051】
【実施例11】
原料p−メトキシスチレンの合成 実施例6において、原料のtert−ブトキシカルボニルオキシベンズアルデヒドの代りに原料に上記p−アニスアルデヒド27.2g(0.2モル)を用いて実施例6と同じ方法で合成を行なった。
その結果、目的物の反応収率は87%であった。
蒸留により単離されたp−メトキシスチレンの得量は19.9gで、その純度は98.3%であった。 反応から分離までの通算収率は74モル%(p−アニスアルデヒド基準)であった。
上記の如く得られたp−メトキシスチレンのスペクトルは下記の通りであった。
赤外吸収スペクトル(KBr) 極大吸収波数(νmax) cm ̄
1 1605,1510,1245,1175
H 1 −NMRスペクトル (CDC13) δppm:3.80(s),5.08(d),5.60(d),6.52(dd),6.85〜7.50(m)
【0052】
【実施例12】
実施例2の方法において、純度85%のZn粉末の代りに純度99.9%の亜鉛粉末(高純度化学品社製)を用いて実施例2に準じて反応を行なった。
その結果、p−アセトキシスチレンが転化率99.8%において反応収率68%(p−アセトキシベンズアルデヒド基準)で得られた。
【0053】
【実施例13−18】
実施例2の方法において、反応溶媒DMFの代りにN,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びアセトニトリル溶媒をそれぞれ用いて、実施例2の方法に準じて反応を行なった。
得られた反応結果を表9に示す。
【0054】
【表9】
【0055】
【実施例19−20】
実施例2の方法において、活性な塩化物としてトリメチルクロロシランの代りに無水塩化水素及び塩化チオニルを同モル用いて実施例2の方法に準じて反応を行なった。
得られた反応結果を表10に示した。
【0056】
【表10】
【0057】
【実施例21−23】
実施例2において、反応温度を7℃、31℃及び80℃に変えて実施例2の方法に準じてそれぞれ反応を行なった。
得られた反応結果を表11に示した。
【0058】
【表11】
【0059】
【実施例24−27】
実施例2において、p−アセトキシベンズアルデヒドに対するZn金属粉末の仕込量を2.4,3.0,3.3,3.75モル倍に変えて、実施例2の方法に準じて反応をそれぞれ行なった。
得られた反応結果を表12に示した。
【0060】
【表12】
【0061】
【実施例28−29】
実施例2において、DMF溶媒量をp−アセトキシベンズアルデヒド1重量部に対して3重量部、5重量部と変えて、実施例2の方法に準じて反応実験を行なった。
得られた反応結果を表13に示した。
【0062】
【表13】
【0063】
【実施例30−31】
実施例2において、ジブロムメタンの使用量をp−アセトキシベンズアルデヒドに対して1.0,1.25モル倍にして実施例2の方法に準じて反応を行なった。
得られた反応結果を表14に示した。
【0064】
【表14】
【0065】
【実施例32−33】
実施例2において、Zn金属に対するトリメチルクロロシランの添加量を0.02,0.002モル倍に変えて、実施例2の方法に準じて反応を行なった。
得られた反応結果を表15に示した。
【0066】
【表15】
【0067】
【実施例34】
実施例2において、反応温度を110℃に変えて実施例2の方法に準じて反応を行なった。
その結果、p−アセトキシベンズアルデヒド基準の転化率及び反応収率はそれぞれ98,28モル%であった。
【0068】
【比較例1】
実施例2において、トリメチルクロロシランを添加せずに実施例2の方法に準じて反応を行なった。
その結果、p−アセトキシベンズアルデヒド基準の転化率及び反応収率はそれぞれ25,19モル%であった。
【0069】
【発明の効果】
以上述べた通り、本発明の方法により高密度集積回路プロセスに用いられるフォトレジスト材料の重合用モノマーである各種の置換オキシスチレンが入手及び取扱いが容易な原料から1段階の反応により収率よく、操作簡易に製造することができる工業的に極めて有用な方法である。
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