首页 / 国际专利分类库 / 化学;冶金 / C07有机化学 / 有机化学的一般方法;所用的装置 / 一般的还原 / 水素または重水素の製造方法およびそれを利用した有機化合物の水素化または重水素化

素または重水素の製造方法およびそれを利用した有機化合物の水素化または重水素化

申请号 JP2013124465 申请日 2013-06-13 公开(公告)号 JP5894117B2 公开(公告)日 2016-03-23
申请人 シオノケミカル株式会社; 发明人 佐治木 弘尚; 門口 泰也; 澤間 善成; 近藤 伸一;
摘要
权利要求

または重水を、ステンレスボールと反応容器のみを用いる遊星型ボ−ルミルでメカノケミカル反応させることを特徴とする水素または重水素の製造方法。メカノケミカル反応を、反応容器に0.1〜20質量%の水または重水と、1〜100個のステンレスボールを入れ、400〜1,200rpmで0.1〜12時間行うものである請求項1記載の水素または重水素の製造方法。反応容器が、ステンレスの反応容器である請求項1記載の水素または重水素の製造方法。

说明书全文

本発明は、メカノケミカル反応を利用した素または重水素の製造方法およびそれを利用した有機化合物の水素化または重水素化に関する。

従来より、水素は、種々の多方面の工業分野に利用されている。例えば、ハ−バ−・ボッシュ法によるアンモニアの製造、塩素ガスとの光反応による塩酸の製造、トウモロコシ油や綿実油等の油脂に添加し、これを硬化(固体化)する改質などの原料として、また、金属鉱石(酸化物)の還元、ニトロベンゼンを還元しアニリンの製造、ナイロン66製造におけるベンゼンの触媒還元、一酸化炭素を還元するメチルアルコ−ル合成、あるいは脱硫などの還元剤などとして使われている。

更には、水素は燃やしても水以外の排出物、例えば、粒子状物質や二酸化炭素などの排気ガスを出さないことから、代替エネルギ−として期待されており、内燃機関の燃料として水素燃料エンジンを積んだ水素自動車が発売されている他、ロケットの燃料や燃料電池に使用されている。

この水素は、工業的には、炭化水素の水蒸気改質や部分酸化の副生成物として大量に生産される(炭化水素ガス分解法)。この方法は、天然ガス中のメタンガスや、パラフィン類やエチレン・プロピレンなどを高温下、ニッケルを触媒としながら水蒸気と反応させて水素と一酸化炭素とし、副生される一酸化炭素は更に水蒸気と反応させ、二酸化炭素と水素ガスにする方法である。また、別の方法としては、ソ−ダ工業や製塩業において海水電気分解の副生品として発生する水素が利用されることもある。

一方、有機化合物に水素を反応させる水素化反応は、有機合成化学において広く使用される反応であり、この方法で多くの有用な化合物が生成される。水素化反応には、アルカリ金属等を利用する反応、金属水素化物あるいは金属水素錯体を利用する反応、ジボランあるいはヒドラジンを利用する反応、接触水素化を利用する反応等、多くの方法が知られている。

しかし、前記した工業的な水素の製造方法は、大規模な装置を必要とするものであり、簡単に水素ガスを入手したいというときに利用できるものではない。また、実験的には、希酸やアルコ−ル中に金属を溶解させることで発生する水素ガスを利用するという方法もあるが、金属を不可逆的に溶解させることや、金属の溶解した溶液の処理が必要であるという点での問題がある。

また、上記の水素化反応においても、アルカリ金属、金属水素化物、金属水素錯体、ジボラン、ヒドラジン等を用いる方法は、使用する反応試薬のコストが高いという問題や、それらに危険性があるという問題があり、また、接触水素化を利用する方法でも、特殊な金属触媒を利用する必要があるという問題があった。

本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、大規模な装置を必要とすることなく、簡単に水素を取得する方法や、高価な反応試薬や特殊な触媒を利用することなく、簡単に水素化反応を実施できる方法の提供を課題とするものである。

本発明者らは、有機合成反応に関して数多くの実験を行っていたところ、有機化合物と水とを、特定の反応系で反応させることにより、投入した有機化合物が水素化されることを知った。また、上記反応を水のみで行えば水素ガスが発生することを知った。更に、水にかえて重水を用いても、有機化合物の重水素化や重水素ガスの発生が行えることを確認し、本発明を完成した。

すなわち本発明は、水または重水を、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させることを特徴とする水素または重水素の製造方法である。

また本発明は、有機化合物と、水または重水とを、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させることを特徴とする水素化または重水素化有機化合物の製造方法である。

更に本発明は、有機化合物と、水または重水とを、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させることを特徴とする有機化合物の水素化または重水素化方法である。

また更に本発明は、ハロゲンを有する有機化合物と、水または重水とを、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させることを特徴とするハロゲンを有する有機化合物の脱ハロゲン化方法である。

本発明の水素または重水素の製造方法によれば、大規模な装置を必要とせず、また廃棄物等の問題を生じることなく水または重水から水素または重水素を得ることが可能である。

また、本発明の水素化または重水素化有機化合物の製造方法や有機化合物の水素化または重水素化方法によれば、高価な反応試薬や触媒を利用することなく、簡単に水素化または重水素化した有機化合物を得ることが可能である。

特に重水素化有機化合物の製造方法や有機化合物の重水素化方法により重水素化した有機化合物は、ラベル化合物として有用である。また、公知の有機化合物からなる薬物を重水素化した場合、薬効が高くなる可能性がある。

更に、本発明の脱ハロゲン化方法によれば、高価な反応試薬や触媒を利用することなく、簡単にハロゲンを有する有機化合物を脱ハロゲン化することが可能である。特にこの方法はポリ塩化ビフェニル(PCB)のような人体に有害なハロゲンを有する有機化合物の無害化に利用できる。

本発明の水素または重水素の製造方法に関する発明(以下、「第一態様発明」ということがある)、水素化または重水素化有機化合物の製造方法に関する発明(以下、「第二態様発明」ということがある)、有機化合物の水素化または重水素化方法(以下、「第三態様発明」ということがある)および脱ハロゲン化方法(以下、「第四態様発明」ということがある)は、触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させることが必須である。

なお、本発明において重水とは、水素(1H)の同位体である2H(D)や3H(T)、酸素(16O)の同位体である17Oや18Oおよびこれらの組み合わせからなる水であり、具体的には、D2O、T2O等が挙げられる。また、重水素とは、水素の同位体からなる水素であり、D2、T2等が挙げられる。更に、重水素化とは、通常の水素化における水素の一部または全部がDやTに置き換えられることである。

これらの発明で行われるメカノケミカル反応は、衝撃、摩擦等の機械的エネルギ−により反応物の活性を高めることにより行われるものであり、通常、メカノケミカル反応が行える装置で行われる。このような装置としては、反応容器と機械的エネルギ−を与える撹拌媒体とを備えたものが挙げられ、例えば、遊星型ボ−ルミル、ミキサ−ミル等のボ−ルミル、振とう機等の混合機等が挙げられる。これらの中でも、遊星型ボ−ルミルを用いることが撹拌効率や与えるエネルギ−の点から好ましい。

この遊星型ボ−ルミル装置は、金属やセラミックスの粉末を均一に混合したり、細かく粉砕する働きを持った機器であり、遊星型ボ−ルミル反応容器本体と雰囲気制御区画からなるものである。そして、金属やセラミックスの粉末(被粉砕体)と撹拌媒体となるボ−ルをボ−ルミル反応容器の中に入れて、機器にセットした後、ボ−ルミル反応容器が雰囲気制御区画の中で自転運動しながら、遊星の動きに似た動きで公転運動することにより、粉末は短時間で効率よく混合・粉砕される。しかも、遊星型ボ−ルミル全体が雰囲気制御される構造となっているため、空気中では変質してしまうような粉末でも混合・粉砕が可能である。

また、遊星型ボ−ルミル装置に用いられる反応容器および攪拌媒体であるボ−ルとしては、例えば、ステンレススチ−ル、メノウ、アルミナ、タングステンカ−バイド、クロムスチ−ル、ジルコニア、窒化ケイ素等の材質で形成されたものが挙げられる。これら材質の中でも鉄とクロム、ニッケル等との合金であるステンレススチ−ルが好ましい。遊星型ボ−ルミル装置に用いられる容器の大きさは、特に限定するものではないが、1〜1,000cm3程度のものである。また、ボ−ルの大きさも、特に限定するものではないが、その直径が2〜20mm程度のものである。特に好ましい遊星型ボ−ルミルの具体例としては、例えば、遊星型ボ−ル ミルカルテットP−7(ドイツ フリッチュ社製)、遊星型ボ−ルミル プレミアムライン−7(ドイツ フリッチュ社製)、遊星型ボ−ルミル PM−100(ドイツ レッチェ社製)等を挙げることができる。

これらの発明において、触媒金属の存在下でメカノケミカル反応をさせるには、触媒金属をメカノケミカル反応系に、触媒作用を発揮する量、例えば、水に対し、0.001モル%より多い量で存在させるだけでよい。触媒金属としては、パラジウム、鉄、ニッケル、クロム等の遷移金属やそれらの酸化物等が挙げられ、好ましくは鉄、水酸化鉄(II)、ニッケル、酸化ニッケル(II)、クロム、酸化クロム(III)、パラジウム等が挙げられる。これらの触媒金属は1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。なお、これらの触媒金属は、メカノケミカル反応に用いられる反応容器中に、ワイヤ−やホイル等の形態で添加しても良いし、メカノケミカル反応に用いられる反応容器、ボ−ル、撹拌棒等の撹拌媒体に含まれていても良いし、前記撹拌媒体にメッキ等しても良い。

本発明の第一態様発明である水素または重水素の製造方法を実施するには、水または重水を触媒金属、好ましくは 鉄、水酸化鉄(II)、クロム、酸化クロム(III)から選ばれる1種または2種以上の触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させればよい。具体的には、上記したメカノケミカル反応が行える装置の反応容器中に、水または重水を入れ、触媒金属の存在下、撹拌媒体を作動させ、メカノケミカル反応を行い、水素または重水素を発生させればよい。そして最終的に反応容器中に蓄積された水素または重水素を常法に従って採取すればよい。

以下、第一態様発明を具体的に遊星型ボ−ルミルを用いて行う場合について説明する。まず、遊星型ボ−ルミル装置の反応容器に、容器容量の0.1〜20質量%(以下、単に「%」という)程度の水または重水を入れ、これに1〜100個程度の撹拌媒体(ボ−ル)と、反応容器や撹拌媒体に含まれる触媒金属に加えて、必要により触媒金属を水または重水に対し0.01〜100モル%程度入れ、0.1〜12時間程度、好ましくは0.5〜6時間程度、400〜1,200rpm程度、好ましくは 800〜1,100rpmで回転させ、撹拌を行えばよい。なお、撹拌の際には、必要に応じて回転方向を適宜逆転させることが好ましく、また、撹拌を連続で行う場合には休止時間を設けることが好ましい。なお、第一態様発明での水または重水から水素または重水素への変換効率は、使用する装置、反応条件等によっても相違するが、20〜100%程度である。

上記した第一態様発明により得られる水素または重水素は燃料電池や重水素による常温核融合を利用した発電に利用できる。

本発明の第二態様発明である水素化または重水素化有機化合物の製造方法を実施するには、有機化合物と水または重水素とを、触媒金属、好ましくはニッケル、酸化ニッケル(II)、クロム、酸化クロム(III)、パラジウムから選ばれる1種または2種以上の触媒金属の存在下、メカノケミカル反応させればよい。具体的には、上記したメカノケミカル反応が行える装置の反応容器中に、有機化合物と水または重水とを入れ、触媒金属の存在下、撹拌媒体を作動させ、メカノケミカル反応を行い、有機化合物を水素化または重水素化させればよい。なお、有機化合物が水素化または重水素化されたことは、1H NMR、GC/MS等の公知の方法で確認することができる。

第二態様発明において用いられる有機化合物としては、水素化または重水素化される有機化合物であれば、特に限定するものではないが、例えば、二重結合、三重結合等の不飽和結合、アルデヒド基、ケトン基、ニトロ基、アジド基等の酸化度の高い置換基、ハロゲン等をその骨格中に有する有機化合物が挙げられる。

また、第二態様発明において有機化合物と共に添加される水または重水は、水素または重水素を導くため、添加量により有機化合物の水素化または重水素化の程度を調整することができる。水素化または重水素化の程度を高くしたい場合は、水または重水の添加量を多く、水素化または重水素化の程度が低くて良い場合は、水または重水の添加量を控えめにすればよい。この水または重水の添加量は、有機化合物の水素化または重水素化のされやすさに大きく影響されるので、実験的に確認して実施すればよい。更に、第二態様発明において、有機化合物の水素化または重水素化の程度は、メカノケミカル反応における衝撃、摩擦等の機械的エネルギ−の制御によっても調整することができる。水素化または重水素化の程度を高くしたい場合は、ボ−ルの大きさを大きく、ボ−ルの数を多くまたは回転速度を早くすればよく、水素化または重水素化の程度が低くて良い場合は、ボ−ルの大きさを小さく、ボ−ルの数を少なくまたは回転速度を遅くすればよい。

上記のようにして第二態様発明を実施すると、まず、反応容器中の水または重水が水素または重水素化に変換され、それにより有機化合物が水素化または重水素化される。なお、第二態様発明での有機化合物から水素化または重水素化有機化合物への変換効率は、使用する装置、反応条件等によっても相違するが、70〜100%程度である。

この第二態様発明によれば、有機化合物の骨格中の不飽和結合(二重結合あるいは三重結合)を飽和結合に変換できる他、酸化度の高い置換基(アルデヒド基、ケトン基、ニトロ基)を酸化度の低い置換基(ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基)に変換することや、ハロゲン化物中のハロゲンを除去し、脱ハロゲン化物とすることも可能である。

具体的に、以下の基本骨格を有する化合物であれば、水素化または重水素化により対応する還元体とすることができる。なお、以下では水素化または重水素化できる化合物も例示しているが、第二態様発明により水素化または重水素化できる化合物はこれらに限定されるものではない。また、これらの化合物の中で、メチル基は、アルキル基(官能基化脂肪鎖)を代表して記載され、ベンゼンもしくはフェニルはアリ−ル基[官能基化芳香環(ベンゼン、フラン、ピロ−ル、チオフェン等を含む)]の代表として記載されている。 <三重結合含有化合物> 末端アルキン体:メチルアセチレン、エチニルベンゼン 2置換アルキン体:ジフェニルアセチレン、ジメチルアセチレン、メチルフェニルアセチレン <二重結合含有化合物> 1置換アルケン体:フェニルエチレン、メチルエチレン 2置換アルケン体:(E)−1,2−ジフェニルエチレン、(Z)−1,2−ジフェニルエチレン、(E)−1,2−ジメチルエチレン、(Z)−1,2−ジメチルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、1,1−ジメチルエチレン、1−メチル−1−フェニルエチレン、(E)−1−メチル−2−フェニルエチレン、(Z)−1−メチル−2−フェニルエチレン 3置換アルケン体:1,1,2−トリフェニルエチレン、1,1,2−トリメチルエチレン、1,1−ジフェニル−2−メチルエチレン、1−フェニル−1,2−ジメチルエチレン 4置換アルケン体:1,1,2,2−テトラフェニルエチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、1,1,2−トリフェニル−2−メチルエチレン、1,1−ジフェニル−2,2−ジメチルエチレン、1−フェニル−1,2,2−トリメチルエチレン、(E)−1,2−ジフェニル−1,2−ジメチルエチレン、(Z)−1,2−ジフェニル−1,2−ジメチルエチレン 芳香環:ベンゼン、ビフェニル、ピリジン、フラン、ピロ−ル、チオフェン、ナフタレン、キノリン、アントラセン、イミダゾ−ル、インド−ル、ベンゾフラン、オキサゾ−ル <カルボニル基含有化合物*> アルデヒド体:メチルアルデヒド、フェニルアルデヒド ケトン体:ジメチルケトン、ジフェニルケトン、メチルフェニルケトン イミン体:N−メチル−メチルイミン、N−フェニル−メチルイミン、N−メチル−ジメチルイミン、N−メチル−ジフェニルイミン、N−メチル−メチルフェニルイミン、N−フェニル−ジメチルイミン、N−フェニル−ジフェニルイミン、N−フェニル−メチルフェニルイミン、オキシム:N−ヒドロキシ−メチルイミン、N−ヒドロキシ−ジメチルイミン、N−ヒドロキシ−ジフェニルイミン、N−ヒドロキシ−メチルフェニルイミン *:カルボニル基の酸素原子が他の原子や基に置換されたものを含む <ニトロ基含有化合物> ニトロ体:ニトロメタン、ニトロベンゼン <アジド基含有化合物> アジド体:アジ化メタン、アジ化ベンゼン <ハロゲン含有化合物> フッ素体:メチルフルオライド、フルオロベンゼン クロロ体:メチルクロライド、クロロベンゼン ブロモ体:メチルブロマイド、ブロモベンゼン ヨウ素体:メチルヨ−ダイド、ヨ−ドベンゼン <ベンジルエ−テル基含有化合物> ベンジルエ−テル体:フェニルメチルオキシメタン、フェニルメチルオキシベンゼン

第二態様発明で水素化または重水素化される化合物と、その還元体の特に好ましい具体例を以下に示す。 (水素化または重水素化される化合物) (還元体) エチニルベンゼン エチルベンゼン ジフェニルアセチレン 1,2−ジフェニルエタン フェニルエチレン エチルベンゼン (E)−1,2−ジフェニルエチレン 1,2−ジフェニルエタン (Z)−1,2−ジフェニルエチレン 1,2−ジフェニルエタン 1,1−ジフェニルエチレン 1,1−ジフェニルエタン フェニルアルデヒド ベンジルアルコ−ル メチルフェニルケトン 1−フェニルエタノ−ル ニトロベンゼン アミノベンゼン アジ化ベンゼン アミノベンゼン クロロベンゼン ベンゼン フェニルメチルオキシベンゼン フェノ−ル

第二態様発明を遊星型ボ−ルミルを用いて行う場合の条件は、遊星型ボ−ルミル装置の反応容器に、容器容量の0.1〜20%程度の水または重水と、0.01〜20%程度の有機化合物を入れる以外は、第一態様発明と同様でよい。なお、第二態様発明で有機化合物から水素化または重水素化有機化合物への変換効率は、使用する装置、反応条件等によっても相違するが、70〜100%程度となる。

上記した第二態様発明により重水素化された有機化合物は、構造解析やメカニズムの解明に用いられるラベル化合物として有用である。また、第二態様発明により公知の有機化合物からなる薬物を重水素化した場合、薬物の薬効が高くなる可能性がある。

更に、本発明の第三態様発明である有機化合物の水素化または重水素化方法の実施は、第二態様発明と同様にして行えばよい。

上記した本発明の第四態様発明である脱ハロゲン化方法の実施も、第二態様発明と同様にして行えばよい。特にこの方法はポリ塩化ビフェニル(PCB)のような人体に有害なハロゲンを有する有機化合物を脱ハロゲン化できるので、これらの有機化合物の無害化に利用できる。

次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例で使用した遊星型ボ−ルミルは、下記仕様のものである。また、以下の実施例では、特に記載されていない場合であっても、生成物の構造等はGC/MSおよび1H NMRで確認している。

<実施例1〜15、18〜20、22〜23> 使用機器:ドイツ フリッチュ社製 遊星型ボ−ルミル カルテットP−7 自転:公転比率=1:−2 ボ−ル:直径 5〜6mm、材質 ステンレススチ−ル 容 器:内容量 12mL、材質 ステンレススチ−ル ステンレススチ−ルの組成; Fe(approx.) 67〜70%、 C 0.12%、 Si 1%、 Mn 2%、 P 0.06%、 S 0.15〜0.35%、 Cr 17〜19%、 Ni 8〜10% <実施例16> 使用機器:ドイツ レッチェ社製 遊星型ボ−ルミル PM−100 自転:公転比率=1:−2 ボ−ル:直径 10mm、材質 ステンレススチ−ル 容 器:内容量 250mL、材質 ステンレススチ−ル ステンレススチ−ルの組成; Fe 82.925%、 Cr 14.5%、 Mn 1%、 Si 1%、 C 0.5%、 P 0.045%、 S 0.03% <実施例17、21> 使用機器:ドイツ フリッチュ社製 遊星型ボ−ルミル プレミアムライン−7 自転:公転比率=1:−2 ボ−ル:直径 5〜6mm、材質 ステンレススチ−ル 容 器:内容量 20mL(実施例17)または 80mL(実施例21) 材質 ステンレススチ−ル ステンレススチ−ルの組成; Fe(approx.) 67〜70%、 C 0.12%、 Si 1%、 Mn 2%、 P 0.06%、 S 0.15〜0.35%、 Cr 17〜19%、 Ni 8〜10%

実 施 例 1 水の水素への分解: 遊星型ボ−ルミル容器に、蒸留水(Wako 046−16971)270μL(15mmol)と、ステンレスボ−ル(50個)を入れた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。攪拌終了後に容器を開封し、容器内のガスに点火したところ燃焼した。この燃焼現象から、可燃性ガスである水素ガスの生成を確認した。この反応は、下式で示される。

実 施 例 2 ジフェニルアセチレンの水素添加反応: (1)1,2−ジフェニルエタン(2)の合成 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)89.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、1,2−ジフェニルエタン(2)89.4mg(0.49mmol)を得た。収率は、98%であった。

(2)1,2−ジフェニルエタン(2)、1−シクロヘキシル−2−フェニル エタン(3)および1,2−ジシクロヘキシルエタン(4)の合成 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)89.1mg(0.50mmol)、蒸留水900μL(50mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、反応生成物を得た。これをGC/MSおよび1H NMRで確認したところ、1,2−ジフェニルエタン(2)、1−シクロヘキシル−2−フェニルエタン(3)および1,2−ジシクロヘキシルエタン(4)の混合物であった。この反応は下式で示される。

以上の結果より、有機化合物に添加する水の量を調整することにより、有機化合物の水素化の程度を調整できることがわかった。

実 施 例 3 4−アジドベンゾフェノンの水素添加反応による4−アミノベンゾ フェノンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、4−アジドベンゾフェノン(5)111.6 mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、4−アミノベンゾフェノン(6)87.7mg(0.45mmol)を得た。収率は89%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 4 3−ベンジルオキシ−4−メトキシベンズアルデヒドの水素添加反応 による3−ベンジルオキシ−4−メトキシベンジルアルコ−ルならび に3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコ−ルの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、3−ベンジルオキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(7)121.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、3−ベンジルオキシ−4−メトキシベンジルアルコ−ル(8)74.0mg(0.31mmol)および3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコ−ル(9)6.9mg(0.05mmol)を得た。収率はそれぞれ61%および9%であった。この反応式は、下式で示される。なお、未反応の3−ベンジルオキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(7)23.7mg(0.10mmol)を回収した。

実 施 例 5 1−メトキシ−4−ニトロベンゼンの水素添加反応による4−アミノ −1−メトキシベンゼンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、1−メトキシ−4−ニトロベンゼン(10)76.6mg(,0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、4−アミノ−1−メトキシベンゼン(11)48.2mg(0.39mmol)を得た。収率は78%であった。この反応式は、下式で示される。

実 施 例 6 4−エチニル−1−メトキシベンゼンの水素添加反応による4−エチ ル−1−メトキシベンゼンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、4−エチニル−1−メトキシベンゼン(12)64.8μL (0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、4−エチル−1−メトキシベンゼン(13)を47.0mg(0.35mmol)得た。収率は、69%であった。この反応式は、下式で示される。

実 施 例 7 4−クロロ−1−メトキシベンゼンの水素添加反応によるメトキシベ ンゼンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、4−クロロ−1−メトキシベンゼン(14)61.3μL(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、メトキシベンゼン(15)を得た。転換効率は100%であった。この反応は、下式で示される。

実 施 例 8 重水(D2O)を用いたジフェニルアセチレンの重水素化反応: 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)89.1mg(0.50mmol)、重水(Cambridge Isotope Laboratories, Inc.:Cat.No.15,188−2)272μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転、撹拌した。12時間経過後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、1,2−ジフェニル−1,1,2,2−テトラジュ−トロエタン(16)85.9mg(0.46mmol)を得た。収率は93%であった。なお、このものの構造は、1H NMR、GC/MSにより確認した。また、この反応は、下式で示される。

実 施 例 9 1−ニトロナフタレンの水素添加反応による1−アミノナフタレン の合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、1−ニトロナフタレン(17)86.6mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、1−アミノナフタレン(18)44.3mg(0.31mmol)を得た。収率は62%であった。転換収率は100%であったが、一部減圧留去したため、単離収率に低下が見られた。この反応は、下式で示される。

実 施 例 10 1−クロロナフタレンの水素添加反応によるナフタレンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、1−クロロナフタレン(19)68.4μL(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、ナフタレン(20)を10.4mg(0.08mmol)得た。収率は16%であった。転換収率は100%であるが、一部減圧留去したため、単離収率に低下が見られた。この反応は、下式で示される。

実 施 例 11 テトラシアノキノジメタン(TCNQ)による水素添加反応抑制 効果: 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)89.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)10.1mg(0.05mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。この系では撹拌を12時間継続させても反応は全く進行しなかった。その理由は本反応がラジカル経由で進行すると推測される。この反応は、下式で示される。

実 施 例 12 4−ニトロベンゾフェノンの水素添加反応による4−アミノベンゾ フェノンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、4−ニトロベンゾフェノン(21)91.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、1H NMRより4−アミノベンゾフェノン(22)と4−アミノベンズヒドロ−ル(23)を83:17の比率で得た。この反応は、下式で示される。

実 施 例 13 4−ベンジルオキシブロモベンゼンの水素添加反応による4−ベンジ ルオキシベンゼンの合成 遊星型ボ−ルミル容器に、4−ベンジルオキシブロモベンゼン(24)131.6mg( 0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、遊星型ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮後、1H NMRより4−ベンジルオキシブロモベンゼン(24)と4−ベンジルオキシベンゼン(25)を9:91の比率で得た。この反応は、下式で示される。

実 施 例 14 パラジウムホイル添加による水素添加反応: 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)89.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)、ステンレスボ−ル(50個)およびパラジウムホイル(Aldrich製)を下表の量で加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で下表の時間、800rpm(30分毎に逆回転)で回転させ、撹拌した。撹拌後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、反応生成物を得た。これを1H NMRで確認したところ、シス−1,2−ジフェニルエチレン(26)、トランス−1,2−ジフェニルエチレン(27)および1,2−ジフェニルエタン(2)の混合物であった。これらの生成比率を下表の通りであった。この系ではパラジウムホイルを添加することにより、生成に要する時間の短縮や生成比率を改善することができた。また、この反応は下式で示される。

実 施 例 15 パラジウムホイル添加による脱塩素化反応: 遊星型ボ−ルミル容器に、4−クロロドデシルオキシベンゼン(28)148.5mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびパラジウムホイル(1.9mg(3.6mol%)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で12時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。12時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮し、ドデシルオキシベンゼン(29)58.7mg(0.22mmol)を45%の収率で得た。転換効率は100%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 16 ジフェニルアセチレンの水素添加反応: 遊星型ボ−ルミル容器に、ジフェニルアセチレン(1)1.34g(7.5mmol)、蒸留水4.01mL(225mmol)およびステンレスボ−ル(25個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミルを用い、6時間、650rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト200mlを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。濾液を濃縮し、反応生成物を得た。これを1H NMRで確認したところ、シス−1,2−ジフェニルエチレン(26)、トランス−1,2−ジフェニルエチレン(27)および1,2−ジフェニルエタン(2)の混合物を92:0:8の混合比で得た。収率は92%であった。また、この反応は下式で示される。

実 施 例 17 水素発生条件の検討: 遊星型ボ−ルミル容器に、蒸留水(Wako 046−16971)270μL(15mmol)と、ステンレスボ−ル(50個)を入れた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で1時間、400〜1,000rpm(30分毎に反転)または0.3時間、1,100rpm(反転なし)で回転させ、撹拌した。攪拌終了後の容器内のガスの組成をGC/TCD(島津製作所製:GC−2014)で分析した。その結果を表2に示した。

以上の結果から、ボ−ルミルによる水の分解では水素のみが発生し、酸素は増加しないことがわかった。そのため本発明方法は酸素含有の少ない極めて安全な水素発生法である。なお、本発明方法において、予め、ボ−ルミル内を真空にすることで高純度の水素の発生ならびに捕集が可能と考えられる。

実 施 例 18 6−ドデシンの水素添加反応によるドデカンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、6−ドデシン(30)83.2mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、ドデカン(31)51.1mg(0.30mmol)を得た。収率は、60%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 19 1−フェニルエタノンの水素添加反応による1−フェニルエタノ−ル の合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、1−フェニルエタノン(32)60.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、1−フェニルエタノ−ル(33)42.8mg(0.35mmol)を得た。収率は、70%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 20 3−フェニル−2−プロペン−1−オ−ルの水素添加による3−フェ ニル−1−プロパノ−ルの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、3−フェニル−2−プロペン−1−オ−ル(34)67.1mg(0.50mmol)、蒸留水270μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、3−フェニル−1−プロパノ−ル(35)64.7mg(0.475mmol)を得た。収率は、95%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 21 1−クロロ−3,5−ジメトキシベンゼンの水素添加による1,3−ジ メトキシベンゼンの合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、1−クロロ−3,5−ジメトキシベンゼン(36)86.3mg(0.50mmol)、蒸留水 45μL(2.5mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で30分間、1,100rpmで回転させ、撹拌した。30分経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、1,3−ジメトキシベンゼン(37)36.6mg(0.265mmol)を得た。収率は、53%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 22 3−フェニル−2−プロペン−1−オ−ルの重水素添加による 3−フェニル−2,3−ジジュ−トロ−1−プロパノ−ルの 合成: 遊星型ボ−ルミル容器に、3−フェニル−2−プロペン−1−オ−ル(34)67.1mg(0.50mmol)、重水272μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、3−フェニル−2,3−ジジュ−トロ−1−プロパノ−ル(38)60.1mg(0.435mmol)を得た。2位、3位の重水素化率は50%で、収率は、87%であった。この反応は下式で示される。

実 施 例 23 ベンジル−4−ブロモフェニルケトン(39)の重水素添加反応: (1)1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジジュ−トロ−2−フェニル エタン(40)の合成 遊星型ボ−ルミル容器に、ベンジル−4−ブロモフェニルケトン(39)137.6mg(0.50mmol)、重水272μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、650rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジジュ−トロ−2−フェニルエタン(40)128.9mg(0.465mmol)を得た。2位の重水素化率は77%で、収率は、93%であった。この反応は下式で示される。

(2)1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジジュ−トロ−2−フェニル エタン(40)および 2,2−ジジュ−トロ1,2−ジフェニルエ タノン(41)の合成 遊星型ボ−ルミル容器に、ベンジル−4−ブロモフェニルケトン(39)137.6mg(0.50mmol)、272μL(15mmol)およびステンレスボ−ル(50個)を加えた後、蓋をし、遊星型ボ−ルミル装置で6時間、800rpm(30分毎に反転)で回転させ、撹拌した。6時間経過後、ボ−ルミル容器中にエチルアセテ−ト10mLを加え、反応混合物を含む溶液を得、これをセライト濾過した。この操作を5回繰り返して得られた濾液を濃縮したところ、1−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジジュ−トロ−2−フェニルエタン(40)124.7mg(0.45mmol)および2,2−ジジュ−トロ1,2−ジフェニルエタノン(41)5.9mg(0.03mmol)を得た。2位の重水素化率はそれぞれ、96%および98%で、収率は、それぞれ90%および6%であった。この反応は下式で示される。

以上の結果より、ボ−ルの回転数を少ない方が、ケトンα位の重水素化のみが進行し、ボ−ルの回転数が多い方が、高重水素化率でケトンα位の重水素化体が得られるが、一部ブロモ基の還元が進行することがわかった。従って、撹拌媒体の回転数、つまり、機械的エネルギ−を制御することにより、有機化合物の重水素化の程度を調整できることがわかった。

本発明によれば、大規模で複雑な装置を必要とすることなく、簡単に水素または重水素を発生させることができ、この水素または重水素をガスとして取得したり、水素化または重水素化反応に使用することができるものである。

従って本発明は、小規模な水素または重水素ガス製造装置において、あるいは簡単な有機化合物の水素化または重水素化反応装置において有利に利用することができるものである。

QQ群二维码
意见反馈