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Production method of alcohol by hydrogen reduction of esters or lactones

申请号 JP2009197124 申请日 2009-08-27 公开(公告)号 JP5477557B2 公开(公告)日 2014-04-23
申请人 高砂香料工業株式会社; 发明人 亙 栗山; 恭規 猪野; 理 小形;
摘要 Provided is an alcohol production method comprising the step of reducing an ester or a lactone with hydrogen to produce a corresponding alcohol without addition of a base compound by using, as a catalyst, a ruthenium complex represented by the following general formula (1): €ƒ€ƒ€ƒ€ƒ€ƒ€ƒ€ƒ€ƒ RuH(X)(L 1 )(L 2 ) n €ƒ€ƒ€ƒ€ƒ€ƒ(1) wherein X represents a monovalent anionic ligand, L 1 represents a tetradentate ligand having at least one coordinating phosphino group and at least one coordinating amino group or a bidentate aminophosphine ligand having one coordinating phosphino group and one coordinating amino group, and L 2 represents a bidentate aminophosphine ligand having one coordinating phosphino group and one coordinating amino group, provided that n is 0 when L 1 is the tetradentate ligand, and n is 1 when L 1 is the bidentate aminophosphine ligand.
权利要求
  • 次の一般式(1)
    RuH(X)(L 1 )(L 2 ) n (1)
    (式中、Xは1価のアニオン性配位子を表し、L 1は少なくともひとつの配位性ホスフィノ基と少なくともひとつの配位性アミノ基を有する4座配位子又はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表し、L 2はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表す。ただし、L 1が4座配位子の場合はn=0で 1 は下記一般式(2)で表される4座配位子であり、L 1が2座のアミノホスフィン配位子の場合はn=1で 1 及びL 2 は同一又は異なる下記一般式(3)で表される2座のアミノホスフィン配位子である。)
    で表されるルテニウム錯体を触媒として、塩基化合物を添加することなくエステル又はラクトンを水素還元することによる対応するアルコール類の製造方法。
    (式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6 は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 1 同士、R 1 とR 2 又はR 3 又はR 4 、R 3 とR 4 、又はR 5 とR 6 が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 1 は置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。Q 2 は置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。)
    (式中、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 及びR 11 は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 7 とR 8 又はR 9 、R 8 とR 9 、又はR 10 とR 11 が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 3 は置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。)
  • 一般式(1)で表される錯体におけるXがBH 4である請求項1に記載の製造方法。
  • 調製した錯体を反応溶液から単離することなく触媒として用いる請求項1 又は2に記載の製造方法。
  • エステル又はラクトンが光学活性体であり、得られるアルコール類の光学純度が、水素還元されるエステル又はラクトンの光学純度の90%以上の数値を保持していることを特徴とする請求項1〜 に記載の製造方法。
  • 说明书全文

    本発明はエステル又はラクトンを素還元してアルコール類を製造する方法に関する。

    エステル及びラクトンを還元してアルコール類を得る方法は化学合成において重要である。 この反応は化学量論量以上のシリルヒドリド、水素化ホウ素ナトリウムや水素化アルミニウムリチウムなどの水素化金属化合物を用いる方法と分子状水素を用いる触媒的水素化還元する方法が提案されてきた。 前者は還元剤に由来する多量の廃棄物が生じることや非常に反応性の高い還元剤を使用することによる安全性の問題等があり、近年においては環境調和型技術である分子状水素を用いた触媒的水素化還元による方法が不均一系及び均一系を問わず積極的に開発検討されている。

    不均一系による水素化還元としてはたとえば特許文献1や非特許文献1に示される例が提案されているが高温または高圧、あるいはその両方の条件が必要であるなどの問題点がある。 また非特許文献2では光学活性エステルのラセミ化を伴わないような条件での製造が記されているが、基質であるエステルが芳香環を持つ場合には芳香環が還元されたアルコールが多く副生するなどの選択性が低い問題や、非常に高価な触媒を大量に用いなければならないというコスト面での不利があり工業的には問題があった。
    均一系ではホスフィン配位子を持つルテニウム錯体の利用が多く提案されてきている。
    例えば非特許文献3、非特許文献4や非特許文献5にはモノホスフィン,ジホスフィン、トリホスフィン及びテトラホスフィン配位子などを用いた方法が開示されており、特に3座トリホスフィン配位子の場合には比較的高い水素化活性を示すものの活性化されていないエステルの場合には環境負荷の大きいフッ素化化合物を溶媒として使用する必要などがあり工業的には問題があった。 非特許文献6や非特許文献7には三座のジアミノホスフィンやアミノジホスフィン配位子を有するルテニウム錯体によるエステルの水素化還元が開示されているが、非特許文献6の方法では配位子や錯体を調製する際に環境に有害で世界的に製造そのものが禁止されつつある四塩化炭素を用いていることや低温反応が必要であり工業化には不利な点が多く、非特許文献7に開示されている方法では錯体調製をマイクロ波を照射しながら行うことや、エステル水素化においても140〜150℃といった高温が必要でかつフッ素化された活性なエステルの場合においてのみ高収率が得られるなどの難点があった。 特許文献2、特許文献3,特許文献4及び非特許文献8には2座及び4座のアミノホスフィン及びイミノホスフィンを配位子としたルテニウム触媒を用いた効率的なエステルの水素化還元法が開示されているが、反応の実施には塩基としてアルカリ金属アルコキシドを使用する必要があり塩基性に不安定な官能基を持つ基質の還元や、不斉炭素を有するエステルの還元においては化合物の分解やラセミ化を起こすといった問題を生じる。 また塩基を添加することなくカルボニル基を還元することが報告されているアミノホスフィンやジホスフィンとジアミンを配位子として持つルテニウム錯体はケトンのみを還元し、同時に存在するエステル基の還元が困難であることが非特許文献9や特許文献5などに示されている。 また本発明で使用するような錯体は、例えば非特許文献10や11に開示されるようにイミノホスフィン配位子をあらかじめ還元し、ルテニウム前駆体と錯体を調製した後にさらに還元をするような多段階を経る方法で調製されていた。

    特開昭51−8203号公報

    WO2006/106483

    WO2006/106484

    WO2008/065588

    特開2003−104993

    Org. React. ,1954,8,1 Adv. Synth. Cat. ,2001,343,802 J. Am. Chem. Soc. 1981,103,7536. Chem. Commun. 1998,1367 J. Mol. Catal. A:Chem. ,2003,206,185. Angew. Chem. Int. Ed. 2006,45,1113. Organomet. 2007,26,16 Angew. Chem. Int. Ed. 2007,46,7473. J. Am. Chem. Soc. 2005,127,516. Organomet. 2004,23,6239. Organomet. 2007,26,5940.

    従って本発明の目的は比較的温和な条件下で比較的簡便に調製できる配位子や錯体を用いてエステル又はラクトンから副反応などを抑制し、高収率かつ高触媒効率で、さらに比較的簡便に錯体を調製することで、工業的に効率よくアルコール類を製造する方法を提供することにある。

    本発明者らは上記事情に鑑み鋭意検討を行った結果、塩基性化合物を添加することなく、少なくともひとつの配位性ホスフィノ基と少なくともひとつの配位性アミノ基を有する4座配位子又はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を2つ有するルテニウム錯体を触媒として用いることにより、副反応などを抑制し、高収率かつ高触媒効率でエステル又はラクトンからアルコール類を製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。

    本発明をより詳細に説明すれば、本発明は、以下の[1]〜[9]に関するものである。
    [1]次の一般式(1)

    RuH(X)(L 1 )(L 2 ) n (1)

    (式中、Xは1価のアニオン性配位子を表し、L 1は少なくともひとつの配位性ホスフィノ基と少なくともひとつの配位性アミノ基を有する4座配位子又はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表し、L 2はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表す。ただし、L 1が4座配位子の場合はn=0であり、L 1が2座配位子の場合はn=1である。)
    で表されるルテニウム錯体を触媒として、塩基化合物を添加することなくエステル又はラクトンを水素還元することによる対応するアルコール類の製造方法。
    [2]一般式(1)で表される錯体におけるXがBH 4である[1]に記載の製造方法。
    [3]一般式(1)で表される錯体においてL 1で表される4座配位子において、残りの2座のうちの1つが配位性リン原子及び1つが配位性窒素原子で配位する配位子である[1]又は[2]に記載の製造方法。
    [4]一般式(1)で表される錯体のL 1が下記一般式(2)で表される4座配位子である[3]に記載の製造方法。

    (式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 1同士、R 1とR 2又はR 3又はR 4 、R 3とR 4 、又はR 5とR 6が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 1及びQ 2は同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    [5]一般式(1)で表される錯体のL 1及びL 2が同一又は異なる下記一般式(3)で表される2座のアミノホスフィン配位子である[1]又は[2]に記載の製造方法。

    (式中、R 7 、R 8 、R 9 、R 10及びR 11は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 7とR 8又はR 9 、R 8とR 9 、又はR 10とR 11が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 3は置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    [6]下記一般式(4)又は(5)

    (式中、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 、R 19 、R 20及びR 21は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 12同士、R 12とR 13又はR 14 、R 13とR 14 、R 15とR 16 、R 17同士、R 19とR 17又はR 18 、又はR 20とR 21が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 4 、Q 5 、Q 6及びQ 7は同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    で表される4座配位子を有する一般式(6)

    [Ru(X 1k (X 2l (Y 1m (Y 2o (L 1' )](Z) q (6)

    (式中、X 1及びX 2はそれぞれ独立して1価のアニオン性配位子を表し、Y 1及びY 2はそれぞれ独立して中性の単座配位子を表し、Zは金属に配位していない1価のアニオンを表し、L 1'は一般式(4)又は一般式(5)で表される4座配位子を表す。ただし、k、l、m、oは0≦k+l+m+o≦2を満たす0〜2の自然数であり、k+l=2のときはq=0、k+l=1のときはq=1、k+l=0のときはq=2である。)
    で表されるルテニウム錯体を還元して得られる錯体を用いる[4]に記載の製造方法。
    [7]下記一般式(7a)及び(7b)

    (式中、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 100 、R 101 、R 102 、R 103 、R 104及びR 105は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 22とR 23 、R 24とR 25 、又はR 104とR 105が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 7a及びQ 7bは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    で表される2座のアミノホスフィン配位子を有する一般式(6')

    [Ru(X 3k' (X 4l' (Y 3m' (Y 4o' (L 1'' )(L 2'' )](Z') q' (6')

    (式中、X 3及びX 4はそれぞれ独立して1価のアニオン性配位子を表し、Y 3及びY 4はそれぞれ独立して中性の単座配位子を表し、Z'は金属に配位していない1価のアニオンを表し、L 1''及びL 2''は同一又は異なっていてもよく一般式(7a)又は(7b)で表される2座のアミノホスフィン配位子を表す。ただし、k'、l'、m'、o'は0≦k'+l'+m'+o'≦2を満たす0〜2の自然数であり、k'+l'=2のときはq'=0、k'+l'=1のときはq'=1、k'+l'=0のときはq'=2である。)で表されるルテニウム錯体を還元して得られる錯体を用いる[5]に記載の製造方法。
    [8]調製した錯体を反応溶液から単離することなく触媒として用いる[1]〜[7]に記載の製造方法。
    [9]エステル又はラクトンが光学活性体であり、得られるアルコール類の光学純度が、水素還元されるエステル又はラクトンの光学純度の90%以上の数値を保持していることを特徴とする[1]〜[8]に記載の製造方法。

    本発明の製造方法によれば、工業的に有利な比較的低い水素圧及び反応温度で、エステル及びラクトンから高収率、高触媒効率でアルコール類を製造することが可能である。 また、還元されるエステル又はラクトンが塩基に不安定な場合にも分解や重合などの必要としない化学変換をおこすことなく、また光学活性体である場合でも、光学純度の低下を伴うことなくアルコール類へ還元することができる。 また触媒を簡便に調製することで工業的により有利な方法とすることができる。

    以下、本発明について詳細に説明する。
    本発明において原料の水素化基質としてエステル又はラクトンが用いられる。 水素化基質として用いられるエステルとしては、脂肪族カルボン酸エステル又は芳香族カルボン酸エステル等が挙げられる。 該エステルはモノカルボン酸由来でもポリカルボン酸由来でも良い。 また、これらのエステル類やラクトン類は、本発明の水素化方法において悪影響を及ぼさないいかなる置換基で置換されていてもよい。

    本発明において水素化基質として用いられるエステル類としては、例えば、下記の脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステル、シクロアルキルエステル等が挙げられる。

    脂肪族カルボン酸としては、炭素数2〜50、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜15の鎖状または環状の脂肪族基を持つモノ又はポリカルボン酸や、炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、3〜8員、好ましくは4〜6員の単環、多環、又は縮合環の脂肪族複素環基を持つモノ又はポリカルボン酸等が挙げられる。 具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、シュウ酸、プロパンジカルボン酸、ブタンジカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アクリル酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、2−アゼチジンカルボン酸、2−ピロリジンカルボン酸(プロリン)、3−ピロリジンカルボン酸、2−ピペリジンカルボン酸、3−ピペリジンカルボン酸、4−ピペリジンカルボン酸、ピペラジン−2−カルボン酸等が挙げられる。

    また、これら脂肪族カルボン酸は置換基で置換されていてもよい。 置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
    上記脂肪族カルボン酸の置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜50、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。

    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアリール基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられ、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜15のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。

    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのシクロアルキル基としては炭素数3〜30、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10の単環式、多環式、又は縮合環式のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖若しくは分岐又は環状(環状の場合は炭素数3以上である。)のアルキル基またはシクロアルキル基が酸素に結合したアルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。

    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアリールオキシ基としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜14の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が酸素に結合したアリールオキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、フェノキシ基、トリロキシ基、キシリロキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのアラルキルオキシ基としては前記アルコキシ基のアルキル基またはシクロアルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜15のアラルキルオキシ基が好ましく、具体的にはベンジルオキシ基、1−フェニルエトキシ基、2−フェニルエトキシ基、1−フェニルプロポキシ基、2−フェニルプロポキシ基、3−フェニルプロポキシ基、4−フェニルブトキシ基、1−ナフチルメトキシ基、2−ナフチルメトキシ基等を挙げることができる基等が挙げられる。
    また、脂肪族カルボン酸の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。

    さらに、脂肪族カルボン酸の置換基としての複素環基としては、脂肪族複素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。 脂肪族複素環基としては、例えば、炭素数2〜14で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいる、3〜8員、好ましくは4〜6員の単環の脂肪族複素環基、多環又は縮合環の脂肪族複素環基が挙げられる。 脂肪族複素環基の具体例としては、例えば、アゼチジル基、アゼチジノ基、ピロリジル基、ピロリジノ基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、ピペラジノ基、モルホリニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロチオフェニル基等が挙げられる。 芳香族複素環基としては、例えば、炭素数2〜15で、異種原子として少なくとも1個、好ましくは1〜3個の窒素原子、酸素原子及び/又は硫黄原子等の異種原子を含んでいる、3〜8員、好ましくは5又は6員の単環式ヘテロアリール基、多環式又は縮合環式のヘテロアリール基が挙げられる。 その具体例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、ピリダジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フタラジル基、キナゾリル基、ナフチリジル基、シンノリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、アクリジル基、アクリジニル基等が挙げられる。

    さらに、脂肪族カルボン酸の置換基としての保護されていてもよいアミノ基としては、無保護のアミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N−シクロヘキシルアミノ基等のモノ又はジアルキルアミノ基;N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−ナフチルアミノ基、N−ナフチル−N−フェニルアミノ基等のモノ又はジアリールアミノ基;N−ベンジルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等のモノ又はジアラルキルアミノ基;ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ペンタノイルアミノ基、ヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基;メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、n−ブトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、ペンチルオキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基;フェニルオキシカルボニルアミノ基等のアリールオキシカルボニルアミノ基;ベンジルオキシカルボニルアミノ基等のアラルキルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。 さらに保護されていてもよいアミノ基としては、例えば参考文献1(Protective Groups in Organic Synthesis Second Edition, JOHN WIREY & SONS,INC.1991)に記載されている一般的なアミノ基の保護基で保護されたアミノ基が挙げられる。

    脂肪族カルボン酸の置換基としての保護されていてもよい水酸基としては、無保護の水酸基または例えば、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリアルキルシリル基などのシリル基、ベンジル基やメトキシメチル基など例えば前記の参考文献1に記載されている一般的な水酸基の保護基で保護されていてもよい水酸基などが挙げられる。 ただし、保護基がアシル基の場合には保護基が還元された生成物が得られる場合がある。

    脂肪族カルボン酸の置換基として示したアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、複素環基は前記したアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等でさらに置換されていてもよい。

    芳香族カルボン酸としては、炭素数6〜36、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12の単環式、多環式、若しくは縮合環式のアリール基;又は、1個〜4個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の窒素原子、酸素原子、若しくは硫黄原子からなる異種原子を含有する3〜8員、好ましくは5〜8員の環を有する単環式、多環式、若しくは縮合環式のヘテロアリール基を有するモノまたはポリ芳香族カルボン酸が挙げられ、例えば、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、キノリンカルボン酸、フランカルボン酸、チオフェンカルボン酸等が挙げられる。

    また、これらの芳香族カルボン酸は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。

    一方、本発明において用いられるラクトン類としては、β−ラクトン、γ−ラクトン、δ−ラクトン等が挙げられ、これらのラクトン類は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。 また、ビシクロ環構造や芳香族環と縮合環構造を有していても良い。
    アルキルエステルのアルキル基、アリールエステルのアリール基、アラルキルエステルのアラルキル基、シクロアルキルエステルのシクロアルキル基としてはそれぞれ脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたものが挙げられる。 さらにこれらの基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。

    好ましいエステル類としては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルなどの炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキルエステルが挙げられる。 より好ましいエステル類としてはメチルエステルが挙げられる。
    これらのエステルは不斉中心を持っている必要はないが、光学活性体や各種異性体の混合物であってもよい。

    本発明のアルコール類の製造方法は、無溶媒又は溶媒中で好適に実施することができるが、溶媒を使用することが好ましい。 用いられる溶媒としては、基質および触媒を溶解できるものが好ましく、単一溶媒あるいは混合溶媒が用いられる。 具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。 この中でもエーテル類が好ましく、特に好ましい溶媒としては、テトラヒドロフランが挙げられる。 溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができる。 反応は必要に応じ撹拌下に行われる。

    触媒の使用量は、水素化基質、反応条件や触媒の種類等によって異なるが、通常、水素化基質に対するルテニウム金属としてのモル比で0.001モル%〜10モル%、好ましくは0.05モル%〜5モル%の範囲である。
    本発明の方法において、水素還元を行う際の反応温度は、50℃〜150℃、好ましくは60℃〜120℃である。 反応温度が低すぎると未反応の原料が多く残存する場合があり、また高すぎると、原料、触媒等の分解が起こる場合があり、好ましくない。
    本発明において、水素還元を行う際の水素の圧は、1MPa〜10MPa、好ましくは3MPa〜6MPaである。
    また反応時間は2時間〜20時間程度で十分に高い原料転化率を得ることができる。
    反応終了後は、抽出、濾過、結晶化、蒸留、各種クロマトグラフィー等、通常用いられる精製法を単独又は適宜組み合わせることにより目的のアルコール類を得ることができる。

    本発明における塩基化合物の有機塩基化合物の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリ−n−ブチルアミン及びN−メチルモルホリン等のアミン類が挙げられる。
    また無機塩基化合物の具体例としては、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、カリウムt−ブトキシド、リチウムメトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムt−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド、水素化ナトリウム、水素化カルシウム等の金属水素化物が挙げられる。

    本発明で用いられるルテニウム錯体を製造するための出発原料であるルテニウム化合物としては、例えば、RuCl 3水和物、RuBr 3水和物、RuI 3水和物等の無機ルテニウム化合物、RuCl 2 (DMSO) 4 、[Ru(cod)Cl 2n 、[Ru(nbd)Cl 2n 、(COD)Ru(2−メタリル) 2 、[Ru(ベンゼン)Cl 22 、[Ru(ベンゼン)Br 22 、[Ru(ベンゼン)I 22 、[Ru(p−シメン)Cl 22 、[Ru(p−シメン)Br 22 、[Ru(p−シメン)I 22 、[Ru(メシチレン)Cl 22 、[Ru(メシチレン)Br 22 、[Ru(メシチレン)I 22 、[Ru(ヘキサメチルベンゼン)Cl 22 、[Ru(ヘキサメチルベンゼン)Br 22 、[Ru(ヘキサメチルベンゼン)I 22 、RuCl 2 (PPh 33 、RuBr 2 (PPh 33 、RuI 2 (PPh 33 、RuH 4 (PPh 33 、RuClH(PPh 33 、RuH(OAc)(PPh 33 ,RuH 2 (PPh 34等が挙げられる。 例示中、DMSOはジメチルスルホキシド、codは1,5−シクロオクタジエン、nbdはノルボルナジエン、Phはフェニル基をそれぞれ表す。

    次に、本発明において触媒として用いられる下記一般式(1)で表されるルテニウム錯体について説明する。

    RuH(X)(L 1 )(L 2 ) n (1)

    (式中、Xは1価のアニオン性配位子を表し、L 1は少なくともひとつの配位性ホスフィノ基と少なくともひとつの配位性アミノ基を有する4座配位子又はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表し、L 2はひとつの配位性ホスフィノ基とひとつの配位性アミノ基を有する2座のアミノホスフィン配位子を表す。ただし、L 1が4座配位子の場合はn=0であり、L 1が2座配位子の場合はn=1である。)

    まず、一般式(1)におけるXで表される1価のアニオン性配位子について説明する。 1価のアニオン性配位子としては、例えば水素原子(ヒドリド)、AlH 4 、BH 4 、下記一般式(8)、(9a)及び(9b)で表される配位子,ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ヒドロキシ基又はアシルオキシ基,スルホニルオキシ基が挙げられる。

    MH r25 (4-r) (8)

    (式中、Mはアルミニウムまたはホウ素を表し、rは0〜3の自然数であり、R 25は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基又は置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基を表し、R 26及びR 26 'は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 26同士、又はR 26とR 26'とが結合して環を形成してもよい。Q 9a及びQ 9bはそれぞれ独立して、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基又は置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基としては、脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。

    9a及びQ 9bで表される二価のアリーレン基としては、炭素数6〜12の単環式又は縮合環式のアリール基からなる2価の基が挙げられ、例えば、フェニレン基、2,3−ナフタレンジイル基等が挙げられる。 フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられる。 また、アルキレン基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。 さらに、アルキレン基はシクロアルキレン基であってもよく、シクロアルキレン基としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは3〜6の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基からなる2価の基が挙げられ、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。 これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
    これらのアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及び複素環は前記したアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。 Q 9a及びQ 9bとしては、例えば2,2,2−トリフルオロエトキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基、1−ペンタフルオロフェニルエトキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基などが挙げられる。 一般式(9a)や(9b)で表される1価のアニオン性配位子としては下記構造式9Aや9Bで表されるもの等が挙げられる。

    アシルオキシ基としては(R a CO 2 )で表されるものが挙げられる。 アシルオキシ基R a CO 2におけるR aとしては、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。 アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基としては例えば脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらはさらに脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等で置換されていてもよい。 R aとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基等が挙げられる。

    スルホニルオキシ基としては(R S SO 3 )で表されるものが挙げられる。 スルホニルオキシ基R S SO 3におけるR Sとしてはアシルオキシ基におけるR aと同様のものがあげられる。

    一般式(1)で表されるルテニウム錯体は、例えば、Chem. Eur. J. 2003,9,4954. やAdv. Synth. Catal. 2005,347,571. に記載の方法などにより得ることができる。 このように調製される錯体は、配位子の配位様式やコンホメーションによって立体異性体を生じることがあるが、反応に用いる錯体はこれら立体異性体の混合物であっても純粋なひとつの異性体であっても構わない。
    また、例えば前記した非特許文献9や非特許文献11に記載の方法などにより、X=BH 4であるような一般式(1)で表されるルテニウムヒドリド錯体を得ることができる。 これらの錯体は比較的安定に存在し、比較的取り扱いが容易である。
    次に、本発明に用いられる4座配位子について説明する。 一般式(1)におけるL 1で表される4座配位子としては、少なくともひとつの配位性ホスフィノ基及び少なくともひとつの配位性アミノ基で配位する配位子が好ましく、残りの2座のうちの1つが配位性リン原子及び1つが配位性窒素原子で配位する配位子がより好ましく、2つの配位性ホスフィノ基及び2つの配位性アミノ基で配位するアミノホスフィン配位子がさらにより好ましい。

    具体的な4座配位子としては例えば下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。

    (式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 1同士、R 1とR 2又はR 3又はR 4 、R 3とR 4 、又はR 5とR 6が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 1及びQ 2は同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    上記式中、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6で表される、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。

    1及びQ 2で表される二価のアリーレン基としては、炭素数6〜12の単環式又は縮合環式のアリール基からなる2価の基が挙げられ、例えば、フェニレン基、2,3−ナフタレンジイル基等が挙げられる。 フェニレン基としては、o又はm−フェニレン基が挙げられる。 また、アルキレン基としては、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜6の鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。 さらに、アルキレン基はシクロアルキレン基であってもよく、シクロアルキレン基としては、炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは3〜6の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基からなる2価の基が挙げられ、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。 有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
    また一般式(2)で表される配位子は光学活性体である必要はないが、Q 1 、Q 2 、R 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5及びR 6次第では光学活性体、ラセミ体、または各種立体異性体の混合物であってもよい。

    続いて、本発明に用いられる2座配位子について説明する。
    一般式(1)におけるL 1及びL 2で表される2座配位子としては、配位性リン原子及び配位性窒素原子で配位するアミノホスフィン配位子が好ましい。
    具体的な2座配位子としては例えば下記一般式(3)で表されるものが挙げられる。

    (式中、R 7 、R 8 、R 9 、R 10及びR 11は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 7とR 8又はR 9 、R 8とR 9 、又はR 10とR 11が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 3は置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    一般式(3)における、R 7 、R 8 、R 9 、R 10及びR 11としては、一般式(2)の説明におけるR 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6と同様のものが挙げられ、一般式(3)におけるQ 3としては、一般式(2)の説明におけるQ 1及びQ 2と同様のものが挙げられる。
    また、一般式(3)で表される配位子は光学活性体である必要はないが、Q 3 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10及びR 11次第では光学活性体、ラセミ体、または各種立体異性体の混合物であってもよい。

    続いて、本発明に用いられるイミン構造を持つ一般式(4)または(5)で表される4座配位子について説明する。

    (式中、R 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 、R 19 、R 20及びR 21は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 12同士、R 12とR 13又はR 14 、R 13とR 14 、R 15とR 16 、R 17同士、R 19とR 17又はR 18 、又はR 20とR 21が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 4 、Q 5 、Q 6及びQ 7は同一又は異なっていてもよく、置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    一般式(4)及び(5)におけるR 12 、R 13 、R 14 、R 15 、R 16 、R 17 、R 18 、R 19 、R 20及びR 21としては、一般式(2)の説明におけるR 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6と同様のものが挙げられ、一般式(4)及び(5)におけるQ 4 、Q 5 、Q 6及びQ 7としては、一般式(2)の説明におけるQ 1及びQ 2と同様のものが挙げられる。

    続いて、本発明に用いられるイミン構造を持つ一般式(7a)及び(7b)で表される2座配位子について説明する。

    (式中、R 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 100 、R 101 、R 102 、R 103 、R 104及びR 105は同一又は異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基及び置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表し、R 22とR 23 、R 24とR 25 、又はR 104とR 105が互いに結合し環を形成していてもよい。Q 7a及びQ 7bは置換基を有していてもよい二価のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルキレン基又は結合手を表す。)
    一般式(7a)及び(7b)におけるR 22 、R 23 、R 24 、R 25 、R 100 、R 101 、R 102 、R 103 、R 104及びR 105としては、一般式(2)の説明におけるR 1 、R 2 、R 3 、R 4 、R 5 、及びR 6と同様のものが挙げられ、一般式(7a)及び(7b)におけるQ 7a及びQ 7bとしては、一般式(2)の説明におけるQ 1及びQ 2と同様のものが挙げられる。

    続いて、本発明において触媒として用いられる一般式(6)及び(6')で表されるルテニウム錯体について説明する。

    [Ru(X 1k (X 2l (Y 1m (Y 2o (L 1' )](Z) q (6)

    [Ru(X 3k' (X 4l' (Y 3m' (Y 4o' (L 1'' )(L 2'' )](Z') q' (6')

    (式中、X 1 、X 2 、X 3 、及びX 4はそれぞれ独立して1価のアニオン性配位子を表し、Y 1 、Y 2 、Y 3 、及びY 4は中性の単座配位子を表し、Z及びZ'は金属に配位していない1価のアニオンを表し、L 1'は一般式(4)又は一般式(5)で表される4座配位子を表し、L 1''及びL 2''は同一又は異なっていてもよく、一般式(7a)又は(7b)で表される2座配位子を表す。ただし、k、l、m、oは0≦k+l+m+o≦2を満たす0〜2の自然数であり、k+l=2のときはq=0、k+l=1のときはq=1、k+l=0のときはq=2であり、k'、l'、m'、o'は0≦k'+l'+m'+o'≦2を満たす0〜2の自然数であり、k'+l'=2のときはq'=0、k'+l'=1のときはq'=1、k'+l'=0のときはq'=2である。)

    一般式(6)及び(6')におけるX 1 、X 2 、X 3 、及びX 4としては、一般式(1)の説明におけるXと同様のものが挙げられ、一般式(6)及び(6')におけるY 1 、Y 2 、Y 3 、及びY 4としては、水、アルコール、エーテル、アミン、アミド、ニトリル、スルフィド、スルホキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシドなどが挙げられる。

    アルコールとしては、例えば下記一般式(10)で表されるアルコールが挙げられる。

    27 −OH (10)

    (式中、R 27は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
    好ましいアルコールとしては、例えば炭素数1〜4の低級アルコールが挙げられ、より具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールなどが挙げられる。

    エーテルとしては、例えば下記一般式(11)で表されるエーテルが挙げられる。

    28 −O−R 29 (11)

    (式中、R 28及びR 29は同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 28とR 29が互いに結合した環状エーテルであってもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいエーテルとしては、例えば、炭素数2〜12の環式又は非環式エーテルが挙げられ、より具体的にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。

    アミンとしては、例えば下記一般式(12)で表されるアミンが挙げられる。

    303132 N (12)

    (式中、R 30 、R 31及びR 32は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 30とR 31及び/又はR 32が互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいアミンとしては、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリフェニルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ピリミジン等の脂肪族・芳香族アミン類等が挙げられる。

    アミドとしては、例えば下記一般式(13)で表されるアミドが挙げられる。

    (式中、R 33 、R 34及びR 35は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 33とR 34及び/又はR 35が互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいアミドの例としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ベンズアミド等が挙げられる。

    ニトリルとしては、例えば下記一般式(14)で表されるニトリルが挙げられる。

    36 −CN (14)

    (式中、R 36は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいニトリルとしては、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられる。

    スルフィドとしては、例えば下記一般式(15)で表されるスルフィドが挙げられる。

    37 −S−R 38 (15)

    (式中、R 37及びR 38は同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 37とR 38が互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいスルフィドとしては、例えばジメチルスルフィド、テトラヒドロチオフェン、チオアニソール、チオフェン等が挙げられる。

    スルホキシドとしては、例えば、下記一般式(16)で表されるスルホキシドが挙げられる。

    (式中、R 39及びR 40は同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 39とR 40とが互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいスルホキシドとしては、例えばジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシドが挙げられる。

    ホスフィンとしては、例えば、下記一般式(17)で表されるホスフィンが挙げられる。

    414243 P (17)

    (式中、R 41及びR 42 、R 43は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基及び置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 41とR 42及び/又はR 43とが互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいホスフィンとしては、例えばトリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン等が挙げられる。

    ホスフィンオキシドとしては、例えば、下記一般式(18)で表されるホスフィンオキシドが挙げられる。

    (式中、R 44及びR 45 、R 46は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。また、R 44とR 45及び/又はR 46とが互いに結合して環を形成してもよい。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。 好ましいホスフィンオキシドとしては、例えば前記したホスフィンのオキシドが挙げられる。

    一般式(6)及び(6')におけるZ及びZ'としては、BF 4 、B(C 654 、BPh 4 、PF 6 、ClO 4 、OTf等のアニオンが挙げられる。 Tfはトリフルオロメタンスルホニル基を表す。

    さらに一般式(6)及び(6')を還元して得られる錯体で反応を実施する方法について説明する。 還元剤としては例えば、水素化アルミニウムリチウム(LAH)、下記一般式(19)で表される水素化アルコキシアルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Red−Al)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)などの水素化アルミニウム化合物や、例えば水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、下記一般式(20)で表される水素化ホウ素テトラアルキルアンモニウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化シアノホウ素ナトリウム、下記一般式(21)で表される水素化シアノホウ素テトラアルキルアンモニウム、水素化トリエチルホウ素リチウム(Super−Hydride),水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素リチウム(L−Selectride),水素化トリ(sec−ブチル)ホウ素カリウム(K−Selectride),水素化−9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(Li 9−BBN hydride)、ボラン・ジメチルスルフィド錯体、ボラン・テトラヒドロフラン錯体、9−ボラビシクロ[3.3.1]ノナン(9−BBN)、カテコールボランなどの水素化ホウ素化合物、又は分子状水素が挙げられる。

    Li(R 47 O) j AlH (4-j) (19)

    (R 484 NBH 4 (20)

    (R 494 NCNBH 3 (21)

    (式中、R 47は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよいシクロアルキル基を表す。R 48及びR 49は置換基を有していてもよいアルキル基を表し、jは1〜3の自然数を表す。)
    ここで、アルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基は脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基と同じものが挙げられ、これらの基が有していてもよい置換基としては脂肪族カルボン酸の置換基における説明中で述べたようなアルキル基、アリール基、アラルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、複素環基、保護されていてもよいアミノ基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。

    一般式(6)及び(6')の還元は溶媒中で実施される。 用いられる溶媒は単一溶媒あるいは混合溶媒が用いられる。 具体的にはトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類が挙げられる。 中でも溶媒中には1または2級アルコールが含まれていることが望ましい。 特に好ましい溶媒としては、メタノールやエタノール及びこれらとトルエンとの混合溶媒が挙げられる。 溶媒の使用量は、反応条件等により適宜選択することができる。 反応は必要に応じ撹拌下に行われる。

    こうして従来イミノホスフィンタイプの配位子を持つルテニウム錯体から一工程では得られなかった一般式(2)や(3)のようなアミノホスフィン配位子を持つ一般式(1)で表されるルテニウムヒドリド錯体が、本発明中に記載されている方法を用いれば短工程で効率よく調製することができ、工程の簡略化が可能となる。

    また、還元工程によって得られる錯体は反応溶液から単離することなく触媒として利用することも可能である。
    このようなルテニウム錯体を触媒として用いることで、工業的に有利な比較的低い水素圧及び反応温度で、エステル及びラクトンからアルコール類を高収率、高触媒効率で製造することが可能である。 また、本反応で用いられるルテニウム錯体は塩基を添加することなく反応を触媒するため、還元されるエステル又はラクトンが塩基に弱い場合にも分解や重合などの好ましくない副反応をおこすことなく、また光学活性体である場合でも、光学純度の低下を伴うことなくアルコール類へ還元することができる。

    以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
    なお、 1 H−NMRスペクトル及び31 P−NMRスペクトルの測定はバリアン社製のMERCURY plus 300を使用した。 また、転化率、選択率、光学純度の測定はガスクロマトグラフィー(GC)及び液体クロマトグラフィー(LC)で行った。 用いた装置は次のとおりである。
    A. 転化率・選択率A−1. 転化率・選択率分析条件A:実施例1〜5、8、11〜15、19,20,23及び比較例1〜4の分析に使用
    キャピラリー;HP−INNOWax
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    80℃(1分)−10℃/分−250℃(12分)
    A−2. 転化率・選択率分析条件B:実施例9,10及び比較例10の分析に使用
    GC; キャピラリー RTx−5
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    80℃(10分)−10℃/分−270℃(1分)
    A−3. 転化率・選択率分析条件C:実施例16,21の分析に使用
    GC; キャピラリー TC−FFAP
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    80℃−5℃/分−220℃(2分)
    B. 光学純度B−1. 光学純度:2−Boc−アミノプロパノールの光学純度分析 p−ニトロ安息香酸エステルに変換した後分析した。
    HPLC;カラム ダイセルCHIRALCEL OD−H
    オーブン;40℃、溶離液;ヘキサン:2−プロパノール=95:5
    B−2. 光学純度:実施例8及び比較例9
    HPLC;カラム ダイセルCHIRALCEL OJ−H
    オーブン;30℃、溶離液;ヘキサン:2−プロパノール=98:2
    B−3. 光学純度:3−アミノ−1−ブタノールの光学純度分析 アミノ基及び水酸基をトリフルオロアセチル化した後分析した。
    GC;キャピラリー β−DEX225
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    160℃(15分)
    B−4. 光学純度:1,2−プロパンジオールの光学純度分析 水酸基をトリフルオロアセチル化した後分析した。
    GC;キャピラリー CHIRASIL−DEX−CB
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    45℃(15分)−10℃/分−125℃
    B−5. 光学純度:1,3−ブタンジオールの光学純度分析
    GC;キャピラリー BETA−DEX TM 225
    注入温度 250℃, 検出温度 250℃
    120℃(30分)

    (実施例1)ルテニウム錯体1の合成とこれを用いたエステル還元

    [RuClH(PPh 33 ](1.73mmol)とL 1a (1.73mmol)を100mLのフラスコに仕込み窒素置換したのち、テトラヒドロフラン(25mL)を加えて溶解した。 1時間加熱還流しテトラヒドロフランの大部分を減圧回収したのちヘキサン(25mL)を加え結晶をろ別し、ヘキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルで洗浄した。
    減圧乾燥しルテニウム錯体2(743mg)を得た。
    1 HNMR (300MHz C 66 ):
    δ = −15.92(t,J=27.2Hz、1H)、3.31(m、2H)、3.96(m、2H)、6.88−8.20(m、30H)
    31 P NMR (121.5MHz C 66 ):
    δ = 59.9(d,J=22Hz)

    窒素気流下、ルテニウム錯体2(0.2mmol)をトルエン(20mL)に懸濁し水素化ホウ素ナトリウム(5.4mmol)のエタノール(20mL)溶液を加え1時間加熱還流した。 空冷し減圧濃縮したのち、トルエン(20mL)を加えて30分攪拌しセライトろ過した。 セライトはトルエン(20mL)で洗浄した。 減圧下、大部分のトルエンを回収しヘキサン(20mL)を加え析出した結晶をろ別した。 結晶はヘキサンで洗浄しルテニウム錯体1(80mg)を得た。 1 HNMRによるルテニウム上のヒドリドの面積比より異性体比は4:3であった。
    ルテニウム上のヒドリドのシグナルは下記の通りであった。
    1 HNMR (300MHz C 66 ):
    主異性体;δ −15.13(dd,J=21.9Hz,25.8Hz)
    副異性体;δ −14.30(t,J=26.1Hz)
    また31 PNMRのシグナルは下記の通りであった。
    31 PNMR (121.5MHz C 66 ):
    主異性体;δ 66.4(d,J=32Hz),64.7(d,J=32Hz)
    副異性体;δ 65.4(s)

    こうして調製されたルテニウム錯体1(0.0181mmol)を撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに仕込み窒素置換したのち、L−Boc−アラニンメチルエステル(3.16mmol)のテトラヒドロフラン(1.4mL)溶液を加え、水素圧5MPa、80℃で16.0時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率68.0%、選択率97.4%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。

    (実施例2)安息香酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、安息香酸メチル(7.99mmol)、ルテニウム錯体1(0.004mmol)、テトラヒドロフラン(6mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で15.5時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率96.2%、選択率86.7%でベンジルアルコールが生成していた。

    (実施例3)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(2.46mmol)、ルテニウム錯体1(0.005mmol)、テトラヒドロフラン(1mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で15.5時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率38.0%、選択率95.3%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。 得られたアルコールの光学純度は98.8%eeであった。

    (実施例4)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化 撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(2.46mmol)、ルテニウム錯体1(0.005mmol)、テトラヒドロフラン(1mL)を加え、水素圧5MPa、100℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率51.9%、選択率89.7%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。

    (実施例5)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化 撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(2.46mmol)、ルテニウム錯体1(0.005mmol)、テトラヒドロフラン(1mL)を加え、水素圧5MPa、120℃で8.0時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率77.7%、選択率93.4%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。 得られたアルコールの光学純度は98.2%eeであった。

    (実施例6)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化 撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.025mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応溶液を20mLのジエチルエーテルで希釈し、10gのシリカゲルを通した。 シリカゲルはジエチルエーテルで洗浄し得られた溶液を減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル15g、ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)で精製した。 98.4%eeの2−Boc−アミノプロパノール(739mg)が得られた。

    (実施例7)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化 撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.025mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、100℃で16時間水素化を行った。 反応溶液を20mLのジエチルエーテルで希釈し、10gのシリカゲルを通した。 シリカゲルはジエチルエーテルで洗浄し得られた溶液を減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル15g、ヘキサン/酢酸エチル=2/1〜1/1)で精製した。 98.0%eeの2−Boc−アミノプロパノール(719mg)が得られた。

    (実施例8)(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、78.4%eeの(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.01mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率99.0%、選択率98.6%で(S)−2−メチル−3−フェニルプロパノールが得られた。 得られたアルコールの光学純度は77.9%eeであった。

    (実施例9)(R)−3−アミノブタン酸メチルの水素化

    攪拌機付の100mLのオートクレーブに、ルテニウム錯体1(0.333mmol)を仕込み窒素置換した。 ここにテトラヒドロフラン(40mL)と99%ee以上の(R)−3−アミノブタン酸メチルエステル(100mmol)を加え、水素圧3.5〜5MPa、80℃で14時間水素化を行った。 反応液を濃縮し、得られた残渣を蒸留して(R)−3−アミノブタノール(7.39g;沸点84〜86℃/14Torr)が得られた。 得られたアルコールの光学純度は99%ee以上であった。

    (実施例10)3−ジメチルアミノプロピオン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、3−ジメチルアミノプロピオン酸メチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率100%、選択率97.5%で3−ジメチルアミノプロパノールが得られた。

    (実施例11)フタリドの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、フタリド(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.025mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、100℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率66%、選択率99%以上で1,2−ベンゼンジメタノールが得られた。

    (実施例12)ニコチン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、ニコチン酸メチル(8mmol)、ルテニウム錯体1(0.008mmol)、テトラヒドロフラン(3.2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率42%、選択率99%以上で3−ピリジンメタノールが得られた。

    (実施例13)安息香酸ベンジルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、安息香酸ベンジル(8mmol)、ルテニウム錯体1(0.008mmol)、テトラヒドロフラン(3.2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率23%、選択率98%でベンジルアルコールが得られた。

    (実施例14)2−フラン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、2-フラン酸メチル(8mmol)、ルテニウム錯体1(0.016mmol)、テトラヒドロフラン(3.2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率33%、選択率99%以上でフルフリルアルコールが得られた。

    (実施例15)コハク酸ジメチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、サクシン酸ジメチル(8mmol)、ルテニウム錯体1(0.016mmol)、テトラヒドロフラン(3.2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率50%、選択率71%で1.4−ブタンジオールが得られた。

    (実施例16)(R)−2−ヒドロキシプロピオン酸メチルの水素化

    攪拌機付の100mLのオートクレーブに、ルテニウム錯体1(0.125mmol)を仕込み窒素置換した。 ここにテトラヒドロフラン(40mL)と99.3%eeの(R)−2−ヒドロキシプロピオン酸メチル(25mmol)を加え、水素圧4.6〜5MPa、80℃で5時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率98.6%、選択率98.4%で(R)−1,2−プロパンジオールが得られた。 得られたアルコールの光学純度は96.6%eeであった。

    (実施例17)ルテニウム錯体3の合成

    [RuClH(PPh 33 ](1.22mmol)とL 3a (2.44mmol)を100mLのフラスコに仕込み窒素置換したのち、トルエン(15mL)を加えて溶解した。 70℃で1時間30分加熱した後、氷浴で30分冷却、析出した結晶を窒素雰囲下でろ別し、ジエチルエーテルで洗浄した。 減圧乾燥しルテニウム錯体4(790mg)を得た。 1 H NMRによるルテニウム上のヒドリドの面積比より異性体比は2:1であった。
    ルテニウム上のヒドリドのシグナルは下記の通りであった。
    1 H NMR (300MHz CD 2 Cl 2 ):
    主異性体;δ −19.79(t,J=28.2Hz)
    副異性体;δ −19.58(dd,J=24.9Hz,30.0Hz)
    31 P NMR (121.5MHz CD 2 Cl 2 ):
    主異性体;δ 75.48(d,J=24.7Hz)
    副異性体;δ 77.1(d,J=36.2Hz),73.2(d,J=36.2Hz)

    窒素気流下、ルテニウム錯体4(0.7mmol)をトルエン(15mL)に懸濁し水素化ホウ素ナトリウム(11.1mmol)のエタノール(15mL)溶液を加え70℃で15分加熱、その後室温で1時間撹拌した。 空冷し減圧濃縮したのち、トルエン(30mL)を加えて20分攪拌しセライトろ過した。 セライトはトルエン(10mL)で洗浄した。 減圧下、大部分のトルエンを回収しヘキサン(10mL)を加え、析出した結晶をろ別した。 結晶はジエチルエーテルで洗浄しルテニウム錯体3(390mg)を得た。
    1 H NMR (300MHz CD 2 Cl 2 ):
    δ = −15.70(t,J=26.7Hz、1H)、−1.8(br、4H)、2.25(m、2H)、2.39(m、2H)、2.65(m、2H)、2.92(m、2H)、3.86(t,J=12.3Hz、2H)、4.16−4.52(m、4H)、6.87−7.50(m、30H)
    31 P NMR (121.5MHz CD 2 Cl 2 ):
    δ = 77.4

    (実施例18)ルテニウム錯体3の合成

    [RuCl 2 (PPh 33 ](0.75mmol)とL 4a (1.58mmol)を100mLのフラスコに仕込み窒素置換したのち、トルエン(5mL)を加えて溶解した。 80℃で40分加熱した後、室温に冷却、析出した結晶を窒素雰囲下でろ別し、トルエン、ジエチルエーテルで洗浄した。 減圧乾燥しルテニウム錯体5(450mg)を得た。
    1 H NMR (300MHz C 66 ):
    δ = 2.50(m、4H)、4.72(m、4H)、6.90−7.10(m、22H)、7.48−7.54(m、8H)、9.22(S,2H)
    31 P NMR (121.5MHz C 66 ):
    δ = 55.9

    窒素気流下、ルテニウム錯体5(0.12mmol)をトルエン(4mL)に溶解し水素化ホウ素ナトリウム(1.3mmol)のエタノール(4mL)溶液を加え80℃で1時間加熱、その後水素化ホウ素ナトリウム(1.3mmol)を加えて80℃で1時間加熱、さらに水素化ホウ素ナトリウム(1.3mmol)を加えて80℃で10分、その後室温で30分撹拌した。 空冷し減圧濃縮したのち、トルエン(10mL)を加えて30分攪拌しセライトろ過した。 減圧下、大部分のトルエンを回収しヘプタン(3mL)を加え、析出した結晶を窒素雰囲気下でろ別した。 結晶はヘプタンで洗浄しルテニウム錯体3(20mg)を得た。
    1 H NMR (300MHz CD 2 Cl 2 ):
    δ = −15.70(t,J=26.7Hz、1H)、−1.8(br、4H)、2.25(m、2H)、2.39(m、2H)、2.65(m、2H)、2.92(m、2H)、3.86(t,J=12.3Hz、2H)、4.16−4.52(m、4H)、6.87−7.50(m、30H)
    31 P NMR (121.5MHz CD 2 Cl 2 ):
    δ = 77.4

    (実施例19)安息香酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、安息香酸メチル(8mmol)、ルテニウム錯体3(0.008mmol)、テトラヒドロフラン(4mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率100%、選択率99.1%でベンジルアルコールが得られた。

    (実施例20)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体3(0.01mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率77.9%、選択率80.3%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。 得られたアルコールの光学純度は99.3%eeであった。

    (実施例21)(R)−3−ヒドロキシブタン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、98.9%eeの(R)−3−ヒドロキシブタン酸メチル(5mmol)、ルテニウム錯体3(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率57.8%、選択率95.0%で(R)−1,3−ブタンジオールが得られた。 得られたアルコールの光学純度は98.9%eeであった。

    (実施例22)ルテニウム錯体6の合成

    [RuCl 2 (PPh 33 ](0.93mmol)とL 6a (1.86mmol)を100mLのフラスコに仕込み窒素置換したのち、トルエン(10mL)を加えて溶解した。 100℃で1時間30分加熱した後、減圧下、大部分のトルエンを回収しヘキサン(6mL)を加え、析出した結晶を窒素雰囲気下でろ別した。 減圧乾燥しルテニウム錯体7(578mg)を得た。
    31 P NMR (121.5MHz C 66 ):
    δ 53.5

    窒素気流下、ルテニウム錯体7(0.81mmol)をトルエン(9mL)に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム(12.2mmol)のエタノール(9mL)溶液を加え70℃で30分加熱、その後室温で30分撹拌した。 空冷し減圧濃縮したのち、トルエン(18mL)を加えて20分攪拌しセライトろ過した。 セライトはトルエン(2mL)で洗浄した。 減圧下、大部分のトルエンを回収しヘキサン(4mL)を加え、析出した結晶を窒素雰囲気下でろ別した。 結晶はジエチルエーテルで洗浄しルテニウム錯体6(348mg)を得た。
    1 H NMR (300MHz C 66 ):
    δ = −15.26(dd,J=23.4Hz、J=26.7Hz、1H)、−1.1(br、4H)、1.02−1.11(m、1H)、1.28−1.63(m、7H)、2.12−2.55(m、6H)、2.98−3.14(m、3H)、3.43−3.51(m、1H)、4.41(br、1H)、4.88−4.99(m、1H)、6.88−7.17(m、12H)、7.32−7.39(m、2H)、7.46−7.52(m、2H)、7.60−7.70(m、4H)
    31 P NMR (121.5MHz C 66 ):
    δ = 74.5(d、J=34.5Hz)、79.7(d、J=34.5Hz)

    (実施例23)L−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5mmol)、ルテニウム錯体6(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率99.8%、選択率98.3%で2−Boc−アミノプロパノールが生成していた。 得られたアルコールの光学純度は98.6%eeであった。

    (比較例1)ジクロロルテニウム錯体8を用いた塩基を添加しない条件でのL−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5.0mmol)、ジクロロルテニウム錯体8(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で18.0時間水素化を行いガスクロマトグラフィーで反応を分析したが、アルコールは確認できず原料のエステルが残っていた。

    (比較例2)ジクロロルテニウム錯体8を用いて塩基を添加した条件でのL−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5.0mmol)、ナトリウムメトキシド(5mmol)、ジクロロルテニウム錯体8(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で18.0時間水素化を行った。 反応溶液を5mLのメタノールと20mLのジエチルエーテルで希釈し、10.0gのシリカゲルにて精製した(ジエチルエーテル/メタノール=10/1)。 ラセミ体の4−メチルー2−オキサゾリジノン(356mg)が得られた。

    (比較例3)ジクロロルテニウム錯体8を用いた塩基を添加しない条件での(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、78.4%eeの(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルエステル(5mmol)、ジクロロルテニウム錯体8(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行いガスクロマトグラフィーで反応を分析したが、アルコールは確認できず原料のエステルが残っていた。

    (比較例4)ジクロロルテニウム錯体8を用いて塩基を添加した条件での(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、78.4%eeの(S)−2−メチル−3−フェニル−プロピオン酸メチルエステル(5mmol)、ジクロロルテニウム錯体8(0.05mmol)、ナトリウムメトキシド(5mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応溶液を20mLのジエチルエーテルで希釈し、8.9gのシリカゲルを通した。 シリカゲルはジエチルエーテルで洗浄し得られた溶液を減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル13.4g、ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で精製した。 18.4%eeの(S)−2−メチル−3−フェニルプロパノール(645mg)が得られた。

    (比較例5)塩基を添加して行うL−Boc−アラニンメチルエステルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、L−Boc−アラニンメチルエステル(5mmol)、ナトリウムメトキシド(5mmol)、ルテニウム錯体1(0.025mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、100℃で16時間水素化を行った。 反応溶液を5mLのメタノールと20mLのジエチルエーテルで希釈し、10.0gのシリカゲルを通した。 シリカゲルはジエチルエーテルで洗浄し得られた溶液を減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル15.0g、ヘキサン/酢酸エチル=1/2)で精製した。 ラセミ体の4−メチル−2−オキサゾリジノン(322mg)が得られた。

    (比較例6)塩基を添加して行う(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、78.4%eeの(S)−2−メチル−3−フェニルプロピオン酸メチルエステル(5mmol)、ナトリウムメトキシド(1mmol)、ルテニウム錯体1(0.01mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応溶液を20mLのジエチルエーテルで希釈し、8.9gのシリカゲルを通した。 シリカゲルはジエチルエーテルで洗浄し得られた溶液を減圧濃縮した。 残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル13.4g、ヘキサン/酢酸エチル=8/1)で精製した。 1%eeの(S)−2−メチル−3−フェニルプロパノール(657mg)が得られた。

    (比較例7)塩基を添加して行う(R)−3−アミノブタン酸メチルの水素化

    撹拌子を入れた100mLのオートクレーブに、(R)−3−アミノブタン酸メチルエステル(5mmol)、ナトリウムメトキシド(1mmol)、ルテニウム錯体1(0.05mmol)、テトラヒドロフラン(2mL)を加え、水素圧5MPa、80℃で16時間水素化を行った。 反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、反応は複雑な混合物を与え原料は消失していたが目的のアルコールは生成していなかった。

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