精製された酸組成物の製造方法

申请号 JP2017563081 申请日 2016-06-06 公开(公告)号 JP2018521978A 公开(公告)日 2018-08-09
申请人 センヴィナ・セー・フェー; 发明人 アナ・リタ・マルティンス・ゲレイロ・ロチャ・アルメイダ; マルティヌス・マティルダ・ピーテル・ジーフェリンク; アナ・ソフィア・ヴァゲイロ・デ・ソウサ・ディアス; イネス・ダチル・ゴンザレス・ジメネス;
摘要 (i) 5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料を 酸化 して、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)及び2-ホルミルフラン-5-カルボン酸(FFCA)並びにFDCAエステル及び任意選択によりFFCAエステルを含む酸化生成物にする工程、(ii) 任意選択により、酸化生成物の少なくとも一部を極性溶媒に溶解させて、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及び任意選択によりFFCAエステルを含む酸化生成物の溶液を得る工程、(iii) 水 の存在下で酸化生成物の少なくとも一部を加水分解し、これにより、FDCAエステル及び任意選択によりFFCAエステルを少なくとも加水分解して、酸化生成物の溶液中におけるFDCAエステルの量より少ない量のFDCA、FFCA及びFDCAエステルを含む酸組成物の水溶液を得る工程、(iv) 工程(iii)で得られた酸組成物の溶液の少なくとも一部を、水素化触媒の存在下において水素と 接触 させて、FFCを水素化することにより水素化生成物にし、水素化溶液を得る工程並びに(v) 水素化された溶液の少なくとも一部から、結晶化によってFDCAの少なくとも一部を分離する工程を含む方法によって、2,5-フランジカルボン酸を含む精製酸組成物が調製される。
权利要求

2,5-フランジカルボン酸を含む精製された酸組成物の製造方法であって、 (i) 5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料を酸化して、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)及び2-ホルミルフラン-5-カルボン酸(FFCA)並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物にする工程、 (ii) 任意選択により場合によっては、酸化生成物の少なくとも一部を極性溶媒に溶解させて、FDCA、FFCA、並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物の溶液を得る工程、 (iii) の存在下で酸化生成物の少なくとも一部を加水分解し、これにより、少なくともFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを加水分解して、FDCA、FFCA、及び前記酸化生成物の溶液中のFDCAエステルの量より少ない量のFDCAエステルを含む酸組成物の水溶液を得る工程、 (iv) 工程(iii)で得られた酸組成物の溶液の少なくとも一部を、水素化触媒の存在下において水素と接触させて、FFCAを水素化することにより水素化生成物にし、水素化された溶液を得る工程、並びに (v) 水素化された溶液の少なくとも一部から、結晶化によってFDCAの少なくとも一部を分離する工程 を含む、方法。加水分解される酸化生成物の少なくとも一部に含まれるFDCAエステルの量が、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及びFFCAエステルの量に基づいて、0.5〜60質量%のFDCAエステルである、請求項1に記載の方法。加水分解が、FDCA、FFCA、並びにFDCAエステル及びFFCAエステルの量に基づいて、FDCAエステルの量が最大1.0質量%である酸組成物の水溶液を得る条件において実施される、請求項1又は2に記載の方法。工程(ii)において、酸化生成物の少なくとも一部が、1〜360分までの期間にわたって、酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって加水分解される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。工程(ii)において、酸化生成物の少なくとも一部が、120〜200℃の温度及び5〜80barの圧において酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって加水分解される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。工程(ii)において、酸化生成物の少なくとも一部が、加水分解触媒の存在下で酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって加水分解される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。工程(ii)において、酸化生成物の少なくとも一部が、加水分解触媒の非存在下で酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって加水分解される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。加水分解される酸化生成物の部分が、 酸化生成物を、FDCAを含む酸化生成物固体画分とFDCAエステルを含む酸化生成物液体画分とに少なくとも分離する工程、 酸化生成物液体画分の少なくとも一部を水と接触させることによって、酸化生成物液体画分の少なくとも一部を予備加水分解して、FDCA及びFDCAエステルを含む予備加水分解された組成物を得る工程、並びに 酸化生成物固体画分の少なくとも一部を、予備加水分解された組成物の少なくとも一部と混合する工程 によって得られたものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。予備加水分解物固体画分が、予備加水分解された組成物から分離され、前記予備加水分解物固体画分の少なくとも一部が、酸化生成物固体画分の少なくとも一部と混合される、請求項8に記載の方法。工程(iv)において、FFCAが、水素化生成物が含有する2-メチルフラン-5-カルボン酸(MFA)が最大でも少量であるように水素化される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。工程(i)において、供給原料が、コバルト及びマンガンを含む触媒の存在下で酸素含有気体によって酸化される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。触媒が、コバルト及びマンガンを含み、臭素を更に含む、請求項11に記載の方法。供給原料が、5〜100barまでの圧力及び0.1〜48時間までの滞留時間において、60〜220℃までの温度で酸化される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。酸組成物溶液が、150〜200℃までの範囲の温度において、5秒〜15分までの範囲の水素化触媒との接触時間で、水素と接触させられる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。酸組成物溶液が、150〜200℃までの範囲の温度において、最長10分の水素化触媒との接触時間で、水素と接触させられる、請求項14に記載の方法。工程(iv)において、圧力が1〜80barまでの範囲である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。極性溶媒が、水、アルコール、酸、及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。連続プロセスとして実施される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。工程(iii)及び(iv)が、加水分解ゾーン及び水素化ゾーンを含む単一の反応器内で実施される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。2,5-フランジカルボン酸を含む精製された酸組成物の製造方法であって、 (a) 5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料を酸化して、FDCA、FFCA、並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物にする工程、 (b) 酸化生成物を、少なくとも、FDCAを含む酸化生成物固体画分と、FDCAエステルを含む酸化生成物液体画分に分離する工程、 (c) 酸化生成物液体画分の少なくとも一部を予備加水分解して、FDCA及びFDCAエステルを含む予備加水分解された組成物を得る工程、 (d) 酸化生成物固体画分の少なくとも一部を、予備加水分解された組成物の少なくとも一部と混合して、酸化生成物の複合部分を得る工程、 (e) 任意選択により場合によっては、酸化生成物の複合部分の少なくとも一部を極性溶媒に溶解させて、FDCA、FFCA、並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物の溶液を得る工程、 (f) 水の存在下において、酸化生成物の複合部分の少なくとも一部を加水分解し、これにより、少なくともFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを加水分解して、酸組成物の水溶液を得る工程、 (g) 工程(f)で得られた酸組成物の溶液を、水素化触媒の存在下において水素と接触させて、FFCAを水素化することにより水素化生成物にし、水素化された溶液を得る工程、並びに (h) 結晶化によって、水素化された溶液の少なくとも一部からFDCAの少なくとも一部を分離する工程 を含む、方法。

说明书全文

本発明は、精製された酸組成物を調製するための方法に関する。特に、本発明は、2,5-フランジカルボン酸を含む精製された組成物の調製に関する。

2,5-フランジカルボン酸(FDCA)は、最近関心が増してきている化学物質である。FDCAは例えば、ポリエステル製造におけるテレフタル酸の代替品として考えられている。FDCAの利点は、再生可能資源から得ることができるという点にあるが、テレフタル酸は、化石燃料から回収されたp-キシレンから得られる。FDCAは、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)並びに/又はHMFのエーテル及び/若しくはエステルの酸化によって合成することができる。酸化反応は、特に、WO 2011/043661及びUS 8,519,167に記述されている。

このような酸化反応においては、FDCAが生成されるだけでなく、着色体(color body)としても知られる着色剤を含む幾らかの副生成物も生成される。このような副生成物の別の一つが、5-ホルミル-2-フランカルボン酸(FFCA)である。この副生成物は、モノカルボン酸である。FFCAがFDCA組成物中に存在することは、このモノカルボン酸が重合中の連鎖成長を終了させるため、望ましくない。FDCA及びFFCAを含む酸組成物からの結晶化によってFFCAを除去することは、困難であることが判明した。この課題は、当技術分野において認識されている。US 8969404において、着色体及びFFCA等の副生成物を変換して、FDCAからより容易に分離できるより無害な生成物にするために、FDCAを含有する粗製組成物に選択的素化を施す精製法が記述されている。この精製法は、副生成物として4-カルボニル安息香酸を含有する粗製テレフタル酸の精製と同様である。テレフタル酸の場合、4-カルボニル安息香酸を選択的に水素化して、テレフタル酸から容易に分離できるp-トルイル酸にする。

US 8969404は、FFCAの水素化により、5-ヒドロキシメチル-2-フランカルボン酸(HMFA)、5-メチル-2-フランカルボン酸(MFA)、2-ヒドロキシメチルフラン及びフラン-2-カルボン酸(FCA)が生じ得ることを教示している。更に、水素化により、FDCA中のフラン環の飽和を起こし、2,5-テトラヒドロフラン-ジカルボン酸(THFDCA)を生じさせることもできる。US 8969404によれば、これらのすべての水素化生成物は、結晶化等の任意の数の手段によってFDCAから容易に分離することができる。水素化は、非常に多様な条件で実施することができ、即ち、10〜900psi (0.69〜62.05bar)の水素分圧において、130〜225℃までの温度で、15分〜10時間までの範囲の期間にわたって実施することができる。実験において、水素化反応は、75〜231psi (5.17〜15.93bar)までの水素分圧において150〜200℃までの温度で1又は3時間実施される。より高い圧が使用された場合、過剰な環の水素化が起きて、THFDCAを形成したため、結果が著しく悪化した。

これらの実験データによって、US 8969404は、水素化触媒の量の制限及び滞留時間の制限によって、高い水素分圧又は高い水素化温度でTHFDCAの量を制御できることを示唆している。US 8969404は、水素化FDCA組成物中のFFCA及びTHFDCAの量を示しているが、他の副生成物のレベルが、水素化及び精製されたFDCA組成物中においてどれほどであるかを示していない。US 8969404は、FDCAの損失が、適用された反応条件においてどれほどであるかにも言及していない。しかしながら、US 8969404は、過酷な水素化条件、即ち、高温及びパラジウム触媒の存在下において、FDCA又はTHFDCAの脱カルボキシル化又は加水分解が起き得ることには言及している。このような脱カルボキシル化反応が、所望のFDCA生成物の更なる損失につながることは、明らかである。US 8748479は、同様の方法を教示している。

US 2014/128623は、可塑剤として精製FDCAエステルを調製することを主張している。US 2014/128623は、汚染FDCAの水素化によって精製FDCAを製造し、水素化生成物から水素化種を分離する、実現可能性のある方法を記述している。何の種が分離されるかも示されていなかったし、どのように種が分離されるかも示されていなかった。US 2014/128623の明細書は、水素化反応が4時間かかることを教示している。

US 2014/142328は、少なくとも1種の酸化可能な化合物を含む供給物流を酸化して、FDCAを含む粗製カルボン酸スラリーを生成することによって、フラン-2,5-ジカルボン酸(FDCA)を含む乾燥した精製カルボン酸生成物を製造するための方法を開示している。したがって、不純物は、後酸化ゾーンにおいて酸化的精製によって除去される。更に、FDCAは、水素化によって更に脱色してもよい。水素化に関する更なる詳細は、提供されていない。

US 8969404において示されているように、FDCAを含む粗製酸組成物は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)又はHMFのエステル若しくはエーテル又はHMFとHMFのエステル又はエーテルとの混合物の接触酸化から得ることができる。HMFエーテルの酸化により、FDCAとFDCAエステルとの混合物が生じることは公知である。このことは、例えば、US 8519167において示されている。US 8969404によれば、ある量のFDCAエステルを後で更に含むことになる粗製FDCA組成物である酸化生成物を、水素化溶媒と合わせて、溶媒和したFDCA及びFFCAを得る。溶媒和したFDCAは、FDCAエステルも含有する。次いで、溶媒和した組合せに水素化を施すが、この水素化は、US 8969404によれば、1〜3時間かかる可能性がある。溶媒和したFDCA組成物に接触水素化を施すことは望ましくなく、理由としては、一般に、カルボン酸からアルコールへの接触変換が、エステルからアルコールへの変換より困難であると記述されてきたという点がある。このことは、US 6441241において確認されている。したがって、US 8969404において教示されているように、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む溶媒和したFDCA組成物に、接触水素化を施す場合、溶媒和したFDCA組成物中に存在するエステルがアルコールに変換され、これにより、収率の低下が起きる可能性がある。

WO 2011/043661

US 8,519,167

US 8969404

US 8748479

US 2014/128623

US 2014/142328

US 8519167

US 6441241

EP 2486027

したがって、本発明者らは、このような溶媒和したFDCA組成物に加水分解工程を施した後、得られた変換済み組成物に水素化を施すべきであることを発見した。

更に、US 8969404の教示を確認すると、幾らかのFCAがFDCA含有組成物の水素化中に形成されることが判明した。モノカルボン酸であるFCAは、FFCAと同じくらい望ましくない。ここで、水素化された生成物の精製は、FDCAエステルの存在によって悪影響されることが明らかになった。水素化された生成物中に存在するエステルが多いほど、水素化された生成物中に保持されるFCAが多くなっていく。したがって、酸化生成物中におけるFDCAエステルのレベルを低下させた後、水素化された生成物に取り込まれた所望の純度のFDCAの分離を容易にするために、このような酸化生成物に水素化を施すことが重要である。

したがって、本発明は、2,5-フランジカルボン酸を含む精製された酸組成物の調製のための方法であって、 (i) 5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料を酸化して、2,5-フランジカルボン酸(FDCA)及び2-ホルミルフラン-5-カルボン酸(FFCA)並びにFDCAエステル(esters of FDCA)及び任意選択により場合によってはFFCAエステル(esters of FFCA)を含む酸化生成物にする工程、 (ii) 任意選択により場合によっては、極性溶媒中に酸化生成物の少なくとも一部を溶解させて、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル(esters of FDCA)及び任意選択により場合によってはFFCAエステル(esters of FFCA)を含む酸化生成物の溶液を得る工程、 (iii) 水の存在下で酸化生成物の少なくとも一部を加水分解し、これにより、少なくともFDCAエステル(esters of FDCA)及び任意選択により場合によってはFFCAエステル(esters of FFCA)を加水分解して、FDCA、FFCA、及び酸化生成物の溶液中のFDCAエステル(esters of FDCA)の量より少ない量のFDCAエステル(esters of FDCA)を含む酸組成物の水溶液を得る工程、 (iv) 工程(iii)で得られた酸組成物の溶液の少なくとも一部を、水素化触媒の存在下において水素と接触させて、FFCAを水素化することにより水素化生成物にし、水素化溶液を得る工程、並びに (v) 水素化された溶液の少なくとも一部から、結晶化によってFDCAの少なくとも一部を分離する工程 を含む方法、を提供する。工程(v)で分離されたFDCA又はFDCAの一部は、所望の精製されたFDCA含有酸組成物である。

加水分解反応は、平衡反応である。驚くべきことに、本発明者らは、粗製酸組成物がFDCAエステル(esters of FDCA、FDCAのエステル)を更に含有する場合、水素化触媒上での粗製酸組成物の水素化が、FDCAエステルの変換を増進するように思われることを発見した。したがって、本発明による方法は、粗製酸組成物が、5-アルコキシメチルフルフラールの酸化生成物の加水分解によって得られる状況に非常に適している。精製されたFDCA組成物を得るために、酸化生成物を加水分解して、アルキルエステルをFDCAそのものに変換する。水素化触媒の存在もまた、FDCAエステルの変換に役立つと思われるという発見のため、加水分解反応は、いかなる特定の手段も用いずに達成することができる。したがって、加水分解反応からの流出物は、幾らかのFDCAエステルを依然として含有し得る。

5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料の酸化は、当技術分野において公知である。これに関しては、EP 2486027を参照する。この特許明細書の教示によれば、工程(i)の供給原料は、コバルト及びマンガンを含む触媒の存在下で酸素含有気体によって適切に酸化される。酸素含有気体は、空気、酸素に富んだ空気、酸素が激減した空気又は純粋な酸素から選択することができる。任意選択により、窒素、ヘリウム、ネオン又はアルゴン等の他の不活性気体を、これらの酸素含有気体のいずれかに添加してもよい。好ましくは、触媒は、コバルト及びマンガンに加えて臭素を更に含む。供給原料は、5〜100barまでの圧力及び0.1〜48時間までの滞留時間において、60〜220℃の温度で適切に酸化される。酸化は、溶媒の存在下で適切に実施される。適切な溶媒は、カルボン酸、典型的には1〜4個までの炭素原子を有するカルボン酸を含む。より好ましくは、溶媒は、酢酸及び/又は無水酢酸である。5-アルコキシメチルフルフラール中のアルキル基は適切には、1〜4個までの炭素原子を含有するアルキル基であり、好ましくはメチルである。したがって、5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料は、特に好ましくは、5-メトキシメチルフルフラール(MMF)を含有する。供給原料は、アルコキシメチルフルフラールのみからなる必要はない。供給原料は、他の成分、適切には最大20質量%の量の他の成分を含んでもよい。供給原料中に含有され得る適切な成分は、5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)であり、したがって、HMFが、供給原料中に最大20質量%の量で存在してもよい。このようにして得られた酸化生成物は任意選択により、生成物として回収され、1種又は複数の処理を施される。そのような処理は、酸化において存在していた可能性がある他の成分のいずれかから酸化生成物を分離することによって、酸化生成物を回収することを含む。そのような成分は、触媒及び溶媒であってよい。適切な分離処理には、洗浄処理及び/又は結晶化が含まれる。このような処理の後、酸化生成物は、主に、FDCA、FFCA、並びにFDCAエステル(すなわちFDCAのエステル)及びFFCAエステル(すなわちFFCAのエステル)からなる。

酸化が溶媒としてのカルボン酸中で起きる場合、酸化生成物に加水分解を施し、これにより、酸化生成物溶液を生成するために、極性溶媒、好ましくは水性の極性溶媒によって酸を置きかえることが適切である。したがって、非常に適切には、極性溶媒は水である。

工程(iii)において、酸化生成物の少なくとも一部に加水分解を施す。酸化生成物が結晶化され、加水分解前に触媒及び溶媒の残り部分を除去するために洗浄されていたかもしれないとしても、適切には、酸化生成物全体を加水分解する。酸化生成物の少なくとも一部は、加水分解触媒の存在下で酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって、適切に加水分解される。触媒は、多様な酸化合物又はアルカリ化合物から選択することができる。無機酸、例えば、硫酸、塩酸、硝酸及びリン酸を利用することが、最も好都合である。三塩化アルミニウム等のルイス酸の使用も、採用され得る。ブレンステッド酸とルイス酸との両方で、酸を組み合わせて使用することが可能である。適切なアルカリ触媒には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が含まれるが、有機弱酸の塩が使用されてもよい。ギ酸、酢酸、プロピオン酸又は酪酸の塩が、適切な例である。カチオンは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオン等の任意の金属イオンであってよい。亜鉛塩等、このような有機弱酸の他の金属塩が使用されてもよい。塩が水に可溶である場合は有利である。当業者は、加水分解触媒の性質が決定的に重要なものではないことを認識されよう。更に、酸性イオン交換樹脂及び酸性ゼオライト等の不均一酸触媒も使用することができる。酸性イオン交換樹脂の例は、スルホン酸基等の酸基を含有するスチレン-ジビニルベンゼン樹脂である。市販の樹脂は、商標Amberlystという商標で(Rohm and Haas社から)販売されている。酸性ゼオライトは、ゼオライトX、ゼオライトY、モルデナイト、ゼオライトβ、ZSM-5、ZSM-11及び他のゼオライトを含み得るが、これらのゼオライトは、少なくとも部分的にプロトン化形態に変換されている。

酸化生成物は、FDCA及びFFCAの形態の著しい量の酸を既に含んでいるため、更なる酸触媒を添加する必要がないこともある。したがって、加水分解触媒の非存在下で酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって、酸化生成物の少なくとも一部を加水分解することが好ましい。

酸化生成物中におけるFDCAエステルの量は、多様であり得る。酸化すべき供給原料が5-アルコキシメチルフルフラールのみを含む場合、FDCAエステルの比率は、非常に高くなりうる。5-アルコキシメチルフルフラールのアルキル基によっては、その比率は非常に高いこともあり、例えば、FDCA及びFDCAエステルの量に対して最大90質量%であることもある。EP2784069において、5-ブトキシメチルフルフラールの酸化の例が記述されており、そこでは主な生成物は、FDCAのモノブチルエステルである。しかしながら、WO 2014/163500は、5-メトキシメチルフルフラールの酸化のための方法の例を開示しており、そこでは85質量%超のFDCAが得られ、FDCAモノメチルエステルは15質量%未満である。したがって、酸化生成物中のFDCAエステルの量は、90質量%超という多さであってもよい。本発明による方法において、加水分解される酸化生成物の少なくとも一部に含まれるFDCAエステルの量は、適切には、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及びFFCAエステルの量に対して、FDCAエステルの0.5〜90質量%まで、好ましくは0.5〜60質量%までを占める。

加水分解においては、エステルの比率が低下する。元々の比率に対するいかなる低下であっても、すでに有利である。酸組成物の水溶液中のFDCAエステルの量が、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及びFFCAエステルの量に対して最大5.0質量%、好ましくは最大1.0質量%である場合、特に有利である。このような場合、水素化条件は、結晶化後に得られた精製FDCA中のFDCAエステルの最終的なレベルを、例えば最大5000ppm以下等の無害なレベル、より好ましくは最大2500ppm以下のレベル、最も好ましくは1000ppm以下のレベルに低下させるのに十分であり得る。

加水分解条件は、当技術分野において周知である。酸又は塩基の存在下又は非存在下において、水中でエステルを加熱することは、慣例的なことである。適切な温度範囲は、100〜220℃までであってよい。この場合、100℃超の温度で加水分解を実施することが有利であると判明したため、1bar超の圧力を負荷することが望ましい。したがって、工程(iii)において、酸化生成物の少なくとも一部が、120〜200℃までの温度及び5〜80barまで、好ましくは5〜40barまでの圧力において水と接触することが好ましい。

加水分解の条件は、平衡にほぼ到達するように選択することができる。それにはある程度の滞留時間がかかる可能性がある。しかしながら、FDCAエステルの量が比較的少ない場合、平衡に到達する必要はなく、このとき、接触時間は、比較的短くてもよい。したがって、工程(ii)において、1〜360分までの期間、好ましくは1〜300分までの期間、より好ましくは1〜5時間までの期間にわたって酸化生成物の少なくとも一部を水と接触させることによって、酸化生成物の少なくとも一部が適切に加水分解される。

上で示したように、FDCAエステルのレベルは広い範囲で変わり得る。FDCAエステルのレベルは、比較的高くてもよい。一方、限定的な量のエステルを含む組成物を対象にして加水分解を実施することも有利であり、理由としては、水素化が、FDCAエステルの変換を容易にするように思われるという点がある。このとき、最終的な加水分解により、エステルのレベルが加水分解の平衡を下回ることさえあり得る。したがって、各工程の後に幾らかのFDCA又はアルコールを除去して、平衡をそれに続く工程のために移す、酸化生成物を対象にした複数の加水分解工程を実施することが可能である。次いで、最後の加水分解工程におけるFDCAエステルのレベルを十分に低下させて、加水分解に対する水素化処理の効果から満足に利益を得る。このような一連の手順(シーケンス)は、複数の加水分解反応器及びFDCA除去処理を含む。好ましくは、加水分解される酸化生成物の部分は以下の工程: 酸化生成物を、FDCAを含む酸化生成物固体画分と、FDCAエステルを含む酸化生成物液体画分とに少なくとも分離する工程; 酸化生成物液体画分の少なくとも一部を水と接触させることによって、酸化生成物液体画分の少なくとも一部を予備加水分解して、FDCA及びFDCAエステルを含む予備加水分解された組成物を得る工程、並びに 酸化生成物固体画分の少なくとも一部を、予備加水分解された組成物の少なくとも一部と混合する工程、 によって得られることが判明した。

この場合、一般的に溶媒又は希釈剤中のスラリーの形態で利用可能になる酸化生成物に、固液分離工程、例えばろ過工程を適切に施す。このような固液分離工程は、非常に有利なことであり得るが、理由としては、このとき、固体は、酸化生成物中のFDCAエステルの量と比べて少なくなった量のFDCAエステルを含有する比較的純粋なFDCAを含有することができる一方、FDCAエステルは、母液中で濃縮されるという点がある。酢酸等の溶媒又は希釈剤の少なくとも一部の分離後、FDCAエステルに富んだ残りの組成物の少なくとも一部を水性液体と混合して、予備加水分解を達成するために水と確実に接触させる。予備加水分解は、実質的に完全なものになるように実施してもよいが、このことは、必要とされているわけではない。このようにして得られた予備加水分解物は、酸化生成物固体画分の少なくとも一部と部分的に又は完全に混合される。予備加水分解物が水溶液の形態で利用可能である場合、固体状の酸化生成物画分を予備加水分解物と混合し、予備加水分解物に溶解させることができる。あるいは、予備加水分解物が、予備加水分解物固体画分の形態で利用可能にされている場合、この固体画分を酸化生成物の固体画分と混合し、続いて溶解させてもよい。このような場合、予備加水分解物固体画分は一般的に、予備加水分解された組成物から分離され、前記予備加水分解物固体画分の少なくとも一部は、酸化生成物固体画分の少なくとも一部と混合される。混合された画分は、任意選択により場合によっては水等の極性溶媒に溶解させた後、FDCAエステルを依然として含有するが、FDCAエステルの比率は、酸化生成物中におけるFDCAエステルの比率と比べて低減されている。有利には、FDCAエステルのレベルは、0.5〜5.0質量%までの範囲、好ましくは0.5〜2.0質量%までの範囲である。これらの低いレベルは、工程(iii)における非常に効率的な加水分解を可能にし、この加水分解は、工程(iv)における水素化中にほぼ完了することになる。

工程(iii)の加水分解から得られた生成物は、粗製酸組成物の水溶液である。この組成物は、その中で加水分解が実施された溶媒中のこの組成物の水溶液の形態で利用可能になる。この溶媒は、水を一般的に含有するが、アルコール、例えば、エステル含有酸化生成物の加水分解によって遊離したアルコールを更に含んでもよい。供給原料が5-アルコキシメチルフルフラールを含むため、加水分解後の溶媒は、対応するアルキルアルコールを含む。この溶液は、得られた状態のままで使用することができる。あるいは、加水分解生成物を、例えば結晶化によって、加水分解反応の排出物から回収してもよい。このような回収が実施された場合、結晶化した加水分解生成物に、更なる処理、例えば、洗浄処理及び/又は任意選択により場合によっては乾燥処理を施してもよい。

一般的に、酸化生成物と水とが接触すると、水素化すべき酸組成物溶液を構成する、FDCA、FDCAエステル及びFFCAの溶液が生じる。何らかの処理によってFDCA及びFFCAを含む加水分解後の生成物が固体材料として得られた場合、この生成物を、極性溶媒に少なくとも部分的に溶解させて、本発明による方法の工程(iv)に従って水素と接触させることになる酸組成物溶液を得る。加水分解後の酸化生成物が、FDCA及びFFCAを含む溶液として得られた場合、溶液は、本発明による方法の工程(iv)において言及された酸組成物溶液として使用することができる。

本方法の工程(iv)において、酸組成物溶液中に存在するFFCAを水素化するために、水素化触媒の存在下で酸組成物溶液の少なくとも一部を水素と接触させる。適切には、酸組成物溶液全体を水素と接触させる。ここで、US 8969404の教示に反して、FDCAからFFCAの水素化生成物の一部を分離することは容易でないことが判明した。特に、FDCAとMFAとの両方を含有する溶媒和した混合物からMFAを分離することは、かなり困難であることが判明した。従来技術文献のいずれにおいても、MFAの存在が、粗製FDCAの精製において重要なパラメータであることが判明していなかった。本発明は、FDCAとFFCAの両方を含有する組成物の精製は、製造されるMFAの量が低減されるように当該組成物の水素化を実施することによって、実施すべきであるという発見にも基づいている。適切には、工程(iv)において、FFCAは、水素化生成物が含有する2-メチルフラン-5-カルボン酸(MFA)が最大でも少量であるように水素化される。「少量」という表現は、FFCAの水素化生成物の最大で50質量%であると理解される。工程(iv)は、MFAが全く存在しない状況も含む。

工程(iv)は、下で説明するようにして、適切に実施される。水素化条件の調節によって、製造されるMFAの量を当業者が制御できることが判明した。特に、US 8969404によって教示された反応持続期間より著しく短い値に滞留時間を調節することによって、MFAのレベルを制御することができることが判明した。この制御は、所望のFDCAの分離を容易にするだけでなく、FDCAの環の水素化も起こさないようにし、これにより、所望のFDCAの収率に貢献するという更なる利点を有する。更に、US 8969404において提案されたFDCAからFCAへの脱カルボキシ化は、滞留時間を短縮することによって、満足に低いレベルに保持され得る。150〜200℃までの範囲の温度において、0.25時間未満の水素化触媒との接触時間にわたって、酸組成物溶液を水素と接触させることが、好ましいことが判明した。接触時間は、適切には5秒〜15分までの範囲、好ましくは5秒〜14分までの範囲、より好ましくは5秒〜12分までの範囲、最も好ましくは5秒〜10分までの範囲である。理論に束縛されることを望むわけではないが、最初にFFCAが水素化されて5-ヒドロキシメチル-2-フランカルボン酸(HMFA)に変わり、次いで、HMFAが更に水素化されてMFAに変わるのだと考えられる。得られたHMFA及びMFAは、他の生成物へと水素化されてもよい。FFCAから5-ヒドロキシメチル-2-フランカルボン酸(HMFA)への変換が、非常に速く進行することが更に判明した。HMFAから例えばMFAへの更なる水素化を防止するために、FFCAと水素化触媒との接触時間は、好ましくは最大10分、より好ましくは最大3分、最も好ましくは最大1分である。接触時間は、酸組成物溶液中のFDCAの濃度によっては、より短くてもよい。例えば、この溶液中の濃度が40質量%未満になっている場合、接触時間は、好ましくは、10分未満である。酸組成物溶液中のFDCAの濃度が0.5〜35質量%までであるとき、接触時間は、好ましくは5秒〜3分まで、より好ましくは5秒〜1分までである。接触時間は、水素化温度に応じて短縮することもできる。接触時間は、反応温度が、150〜200℃までの範囲のうち高い方の部分である場合、非常に短く、すべてのFDCAが、例えば5秒〜1分までの範囲で溶解される。反応温度が上記150〜200℃までの範囲のうち低い方の部分であるとき、接触時間は、約1分になり得る。接触時間が短いと、MFAの生成は、もしあったとしても非常にわずかになり、一方で、FFCAの水素化生成物の主要部分はHMFAからなる。FDCAよりHMFAの方が水等の極性溶媒に良く溶けることができるため、水素化された溶液からFDCAが結晶化する一方で、HMFAが母液中に残留することによって、粗製酸組成物を精製することができる。このとき、結晶化したFDCAは、精製酸組成物に相当する。HMFAは、母液から回収し、酸化へとリサイクルすることができ、これにより、FDCAの収率向上が可能になる。

あるいは、150〜200℃までの範囲の温度において、3〜15分まで、好ましくは3〜10まで、より好ましくは3〜8分までの水素化触媒との接触時間にわたって、酸組成物溶液を水素と適切に接触させる。水素化触媒との接触時間を最大で4分の1時間に延長することによって、FFCAの水素化生成物は、もはやHMFAを全く含有しておらず、更にはMFAも含有しないか又は少量のMFAしか含有せず、一方で、テトラヒドロフラン-2,5-ジカルボン酸等の2,3,4,5-テトラヒドロフラン化合物の量は、ほぼ0のままであるように思われた。

したがって、150〜200℃までの範囲の温度において、0.25時間未満の水素化触媒との接触時間にわたって、酸組成物溶液を水素と接触させることが好ましい。接触時間は、適切には5秒〜15分までの範囲、好ましくは5秒〜14分までの範囲である。更により好ましくは、酸組成物溶液と水素化触媒との接触時間は、最大10分である。あるいはは、接触時間は、適切には3〜15分までである。

水素化触媒は、利用できる多種多様な触媒から選択することができる。一般的に、水素化触媒は、担体に担持された元素周期表の第8〜10族の金属から選択される1種又は複数の金属又は金属化合物を含む。このような適切な金属は、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os、Ni、Co及びこれらの混合物を含む。

これらの金属のための担体は、種々の慣例的な担体から選択することができる。好ましくは、担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ及び活性炭等の炭素から選択されている。当業者は、活性炭が、少なくとも600m2/gの表面積を有する炭素の非晶性形態であることを知っている。したがって、このような活性炭は、多孔性構造を有する。

水素化触媒は、好ましくは、パラジウム炭素を含む。

担体への1種又は複数の金属の担持量もまた、広い範囲で変えうる。水素化触媒上の金属の含量は、水素化触媒の質量に対して0.1〜25質量%までの範囲、より適切には0.2〜10質量%までの範囲、好ましくは0.3〜5質量%までの範囲であってよい。

FFCAの水素化反応における水素の量は、水素含有気体の圧力及び/又は反応中に存在する気体雰囲気中の水素の百分率を調節することによって制御される。適切には、反応における全圧は、1〜80barまでの範囲、好ましくは2〜50barまでの範囲、より好ましくは5〜40barまでの範囲である。したがって、圧力範囲の下限は、1bar又は2bar又は5barであってよく、一方で、圧力範囲の上限は、80bar又は50bar又は40barであってよい。水素は、純粋な水素ガスとして供給してもよいし、又は、水素と窒素、アルゴン、ネオン、キセノン若しくはこれらの混合物等の不活性気体との混合物として供給してもよい。水素含有気体中の水素含量は、適切には1〜100体積%までの範囲、好ましくは2〜100体積%までの範囲、より好ましくは5〜100体積%までの範囲である。一部の実施形態において、水素含有気体は、窒素、ヘリウム、ネオン又はアルゴン等の不活性気体の主要部分を含有する。このようにすれば、水素分圧を限定することができる一方で、反応における全圧を十分に高いレベルに維持することができる。したがって、反応における水素分圧は適切には、全圧及び水素含有気体中の水素の比率に応じて、0.1〜80barまでの範囲であってよい。

特に、US 8969404における反応時間に比較すると、水素化触媒との接触時間が比較的短いため、本方法は、連続プロセスとして実施するのに非常に良く適している。これは、US 8969404において例示された方法を上回る著しい利点を伴う。この公知の方法の例は、1〜3時間までの期間にわたって、バッチプロセスとして実施されている。このような長い反応時間を利用しようとする場合、大きな反応器及び/又は反応器への供給原料の緩やかな供給を採用すべきである。US 8969404とは対照的に、本発明による方法は、15分未満という短い接触時間を含み得る。このような短い接触時間の場合、本方法を連続モードで実施することが好ましい。このような連続プロセスが起きる反応器は、連続撹拌槽反応器、気泡塔反応器、細流反応器又は栓流反応器を含むことができる。好ましくは、本方法は、酸組成物溶液が水素化触媒層を通過する、好ましくは下方に向かって通過する、固定床反応器内で実施される。このようなプロセスにおいて、任意選択により場合によっては、酸組成物溶液を水素と接触させた後、水素化触媒と接触させ、この結果、酸組成物溶液を水素によってあらかじめ飽和させる。あるいは、水素は、水素化触媒の固定床に沿って並流方向に移送されてもよいし、又は向流方向に移送されてもよい。

粗製酸組成物は、極性溶媒に溶解されている。極性溶媒は、粗製酸組成物を満足な濃度で溶解させることが可能な任意の液体から適切に選択することができる。したがって、極性溶媒は、水、アルコール、酸及びこれらの混合物からなる群より適切に選択される。アルコールは、C1〜C4モノアルコール及びこれらの混合物からなる群より適切に選択される。極性溶媒として使用され得る適切な酸の例は、C1〜C6カルボン酸、特に酢酸又は無水酢酸である。このような溶媒中で、粗製酸組成物は、例えばHMFエーテルの酸化によって得ることができる。このような酸化において、水が遊離する。このようなカルボン酸の使用は、粗製酸組成物を水素化するために溶媒交換を実施しなくてもよいという利点を有する。最も好ましくは、溶媒は、水、メタノール及びこれらの混合物から選択される。所望ならば、極性溶媒は、1種又は複数のアルコールを実質的に不含の状態にすることができる。これは、ストリッピング法によって実施することができる。ストリッピングのために、任意の不活性気体、例えば窒素、二酸化炭素又は水蒸気を使用することができる。同様に、水素化のために使用される水素含有気体も、ストリッピングガスとして使用することができる。このようにすれば、粗製酸組成物が、単一の溶媒、例えば水中に存在してもよい。粗製酸組成物の濃度は、粗製酸組成物と極性溶媒との合計に対して35質量%という高さであってよく、一般的に、少なくとも5質量%である。好ましくは、極性溶媒中の粗製酸組成物の濃度は、粗製酸組成物と極性溶媒との合計に対して7〜30質量%までの範囲である。

したがって、適切な水素化条件は、次のようにまとめることができる。水素分圧は、好ましくは0.1〜80barまでの範囲又は0.2bar〜80barまでの範囲又は0.5bar〜80barまでの範囲であり、より好ましくは0.2〜50barまでの範囲であり、最も好ましくは0.5〜40barまでの範囲である。水素化触媒は、上述したとおりであってよく、即ち、担体に担持された元素周期表の第8〜10族の金属から選択される1種又は複数の金属又は金属化合物を含むことが好ましい。そのような適切な金属は、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os、Ni、Co及びこれらの混合物を含む。水素化触媒に担持された金属の含量は、水素化触媒の質量に対して0.1〜25質量%までの範囲、より適切には0.2〜10質量%までの範囲、好ましくは0.3〜5質量%までの範囲であってよい。

これらの金属のための担体は、種々の慣例的な担体から選択することができる。好ましくは、担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ及び活性炭等の炭素から選択されている。当業者は、活性炭が、少なくとも600m2/gの表面積を有する炭素の非晶性形態であることを知っている。したがって、このような活性炭は、多孔性構造を有する。木及び泥炭から製造された多孔性木炭並びにヤスガラ等のより斬新な材料に由来した多孔性木炭の非常に大きな表面積は、触媒支持体として良く適している。これらの多孔性木炭は、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os及びこれらの混合物等の貴金属を含有する触媒を調製するために、幅広く使用されている。

水素化触媒は、好ましくは、パラジウム炭素を含む。

本発明による方法の工程(iv)により、水素化溶液が生じる。この溶液は、FDCA及び幾らかの水素化生成物を含む。水素化生成物は適切にはHMFAを含まないか又は少量のみのHMFAを含む。HMFAは少量でのみ存在するため、水素化された溶液中のFDCAは、結晶化によって満足な純度で回収することができる。結晶化条件は、当業者に周知である。結晶化は、水素化された溶液を水素化温度から0〜80℃までの範囲の温度に冷却し、これにより、水素化された溶液中のFDCAが結晶化し始めることによって、容易に達成することができる。この後、結晶化したFDCAを、水素化された溶液中の極性溶媒から例えばろ過によって適切に分離する。FDCAよりHMFAの方が極性溶媒に良く溶けることができるため、ろ液は、HMFA及び他のFFCAの水素化生成物を含有し、ろ過されたFDCAは、高い純度を有する。所望ならば、ろ過されたFDCAは、例えば1回若しくは複数回の再結晶又は再スラリー化によって更に精製されてもよい。HMFAは、本発明による方法の工程(i)における酸化プロセスに適切にリサイクルされる。

本発明による方法の工程(i)から(v)は、バッチモード又は連続モードで実施することができる。工程(i)から(v)を含む本方法は、好ましくは、連続プロセスとして実施される。本方法は、直列になった複数の反応器内で実施してもよい。本方法は、別個の酸化反応器、別個の加水分解反応器、及び別個の水素化反応器を含んでもよい。反応器どうしの間には、分離及び/又は洗浄若しくはろ過若しくは結晶化等の他の処理法のための他の設備が、設置されていてもよい。反応器は、種々の反応器の種類から選択することができる。適切な反応器は、連続撹拌槽反応器、気泡塔反応器、トリクルベッド反応器(trickle bed reactor)及びプラグフロー反応器である。これらの反応器は、本方法が連続プロセスとして実施される場合に特に適している。

水素化触媒の存在もFDCAエステルの変換に役立つことが判明したため、加水分解ゾーン及び水素化ゾーンを含む単一の反応器内で本発明の方法の工程(iii)及び(iv)を実施することが有利となった。このような反応器において、最初にエステル含有溶液を加水分解ゾーンに通し、加水分解ゾーンでは、加水分解の達成に十分な長い時間にわたって溶液が保持される。持続期間は当業者が決定することができる。一般的に、溶液は、加水分解を達成するために、1分〜6時間までの範囲、好ましくは1〜5時間までの範囲の期間にわたって保持される。加水分解ゾーン内への溶液の移送前には、水素が溶液に溶解するように、溶液を水素含有気体と接触させる。続いて、加水分解されたFDCA及びFFCAを含有する溶液を、次に、FFCAを所望する水素化生成物へと水素化するのに十分な時間にわたって触媒床に通す。

単一の反応器は、US 5420344による反応器と同様に形成され得る。このような反応器は、反応器の頂部にある水素のための入口及び反応器の上側部分にある酸組成物溶液のための入口を適切に備える。溶液は、任意選択により場合によってはHMFと混合されたMMF等のアルコキシメチルフルフラールの酸化生成物を適切に含有してもよい。酸化生成物を水及び任意選択により場合によっては別の溶媒に適切に溶解させた後、反応器内に移送して、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及びFFCAエステルを含む溶液を得る。溶液のための入口は、溶液が保持されることになる領域の中にまで届いており、この領域では、溶液が、オーバーフロー壁(overflow wall)を介して反応器の空間内に流れ込むことが可能になっている。水素は、塔の頂部にある入口から供給される。水素は一般的に、通常の温度及び圧力において、酸組成物溶液中に十分に溶解する。しかしながら、更なる水素含有気体が、オーバーフロー後に流れ落ちている酸組成物溶液の流路に沿って供給されてもよく、この結果、豊富な水素が溶液に溶解する。

次いで、溶液を加水分解ゾーンに相当する反応器の空間内に移送する。溶液は、加水分解を達成するのに十分な時間にわたって、この反応器の空間内に保持される。加水分解ゾーンは、加水分解触媒を備えていてもよい。しかしながら、上で示したように、このような触媒の存在は、溶液自体の酸がすでに触媒活性を提供し得るため、必要とされているわけではない。加水分解触媒が想定されている場合、固体状の加水分解触媒を利用することが望ましい。適切な加水分解触媒は、酸ゼオライト及び酸性イオン交換剤を含む。これらの触媒は、プラグフローモードの容易な利用を可能にする。このようにすれば、逆混合のレベルになることが回避され、加水分解反応は、平衡に達するまで進行することができる。しかしながら、加水分解触媒の存在は、必要とされているわけではない。加水分解触媒が存在しない場合、逆混合を回避するためのインターナル及び/又は充填物に沿って溶液を移送できるようにすることが、望ましいこともある。

続いて、水素化ゾーンに相当する反応器の本体内に存在する触媒床に、溶液を分配する。分配は、任意の手段、例えば仕切り板によって達成することができる。触媒床は、水素化触媒層を含む。溶液は、水素と一緒になって触媒床を通過する。もし存在するならば、あらゆる残りのFDCAエステルを加水分解し、あらゆるFFCAエステル又はFFCAエステルを触媒床内で水素化する。最後に、水素化された溶液が、反応器の底部にある出口を介して反応器から抜き出される。

加水分解ゾーンにおける溶液の滞留時間は、FDCAエステルとFFCAエステルとの加水分解反応が平衡に到達するように調節することができる。FDCAエステルの変換は、水素化ゾーン内において水素化触媒の存在下で更に加速されるため、加水分解ゾーンの滞留時間は、少量のエステルが残留するように調節することができる。連続的に、加水分解生成物、即ち、粗製酸組成物溶液の一部を水素化ゾーンに通す。運転中には、炭素に担持された第8族、第9族又は第10族の金属等の不均一触媒層が、水素化ゾーンに設置されている。粗製酸組成物溶液を、水素化ゾーン内の不均一触媒に沿って通す。水素化のために必要な水素は、溶存水素から供給される。粗製酸組成物溶液と水素化触媒及び水素との接触時間は比較的短いため、水素化ゾーンは、加水分解ゾーンより比較的小さくてもよい。有利には、供給される水素の量は、水素の量が、何らかの過剰な水素を除去する必要がほんのわずかでしかないほどにまで粗製酸組成物溶液中のFFCAを水素化するのに十分であるように調節される。これにより、反応器が気体の出口を必要としない状況がもたらされる。何らかの過剰な水素が存在する場合又は水素含有気体中に含まれた何らかの希釈剤ガスが存在する場合、このような気体を水素化された生成物と一緒に反応器から抜き出し、例えばフラッシュ蒸発によって回収してもよい。

単一の反応器内で加水分解ゾーンと水素化ゾーンとを結合させることによって、当業者は、効率的で経済的な態様で2つの工程を実施することが可能になっている。

工程(v)において、分離により、2,5-フランジカルボン酸を含む精製された酸組成物が得られる。分離は、結晶化によって達成される。精製された酸組成物の回収は、ろ過又は何らかの他の固液分離法、洗浄法及び/又は乾燥法を更に含んでもよい。精製された酸組成物は、再結晶させてもよい。

本発明は、酸化生成物の一部に予備加水分解工程を施す方法に特に適しているため、本発明は、2,5-フランジカルボン酸を含む精製された酸組成物の調製のための方法であって、以下の工程: (a) 5-アルコキシメチルフルフラールを含有する供給原料を酸化して、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物にする工程、 (b) 酸化生成物を、FDCAを含む酸化生成物固体画分と、FDCAエステルを含む酸化生成物液体画分とに少なくとも分離する工程、 (c) 酸化生成物液体画分の少なくとも一部を予備加水分解して、FDCA及びFDCAエステルを含む予備加水分解された組成物を得る工程、 (d) 酸化生成物固体画分の少なくとも一部を予備加水分解された組成物の少なくとも一部と混合して、酸化生成物の複合部分を得る工程、 (e) 任意選択により場合によっては、酸化生成物の複合部分の少なくとも一部を極性溶媒に溶解させて、FDCA、FFCA並びにFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを含む酸化生成物の溶液を得る工程、 (f) 水の存在下において、酸化生成物の複合部分の少なくとも一部を加水分解し、これにより、少なくともFDCAエステル及び任意選択により場合によってはFFCAエステルを加水分解して、酸組成物の水溶液を得る工程、 (g) 工程(f)で得られた酸組成物の溶液の少なくとも一部を、水素化触媒の存在下において水素と接触させて、FFCAを水素化することにより水素化生成物にし、水素化された溶液を得る工程、並びに (h) 結晶化によって、水素化された溶液の少なくとも一部からFDCAの少なくとも一部を分離する工程 を含む方法も提供する。工程(h)で得られた生成物は、所望の精製された酸組成物である。

流れ図及び本発明における使用のための設備を概略的に示した図面によって、本発明を説明する。

本発明による加水分解及び水素化の方法を実施するための適切な一態様に関する、概略的なプロセススキームを示す図である。

そのような方法の別の実施形態を示す図である。

加水分解ゾーン及び水素化ゾーンを含む適切な反応器を示す図である。

図1は、メトキシメチルフルフラール(MMF)を主に含有する流れ(1)を示しており、流れ(1)は、リサイクルされた酢酸に富んだ流れ(2)及びリサイクルされた触媒も含有する水に富んだ流れ(3)と混合される。これらの流れが混合されて、酸化反応器(5)に供給される流れ(4)になる。空気等の酸素含有気体が、圧縮機(図示せず)によって、ライン(6)を介して酸化反応器(5)に移送される。Co及びMnを含むことが一般的で任意選択により場合によってはBrも含む補給用触媒が、ライン(7)を介して酸化反応器(5)内に供給される。他の酸化触媒が使用されてもよいことが理解される。酸化反応器において、触媒、例えば溶媒としての酢酸中のCo、Mnを含む触媒の存在下で、酸素含有気体によってMMFをFDCAに酸化する。図1は、1個の反応器を示している。当業者は、直列になった2個以上の反応器が使用されてもよいことを認識するだろう。過剰な酸素は、酸化反応器(5)からライン31を介して排出される。酸化された生成物が、酸化反応器からライン(29)を介して抜き出され、結晶化容器(8)内に供給される。結晶化は、蒸発冷却結晶化装置内で実施することができる。蒸発結晶化において遊離したあらゆる酢酸及び/又は水は、結晶化容器(8)からライン(32)を介して排出することができる。幾らかのFFCA、FDCAメチルエステル及び触媒を含有する粗製FDCAのスラリーが、ライン(33)を介してろ過設備(9)に供給され、スラリーが、酢酸含有母液流(10)と、ライン(34)を介して洗浄装置(12)に移送される固体状の粗製生成物とに分離される。酢酸含有母液流(10)を、ライン(11)を介して供給された補給用酢酸の流れと混合して、流れ(2)を形成し、流れ(2)を、流れ(1)中のMMF及び流れ(3)中の水と混合する。一部の実施形態において、ライン(8)内の蒸発した酢酸及び/又は水の少なくとも一部を、流れ(10) (図示せず)と混合する。このような場合、流れ(8)中のあらゆる水は、一般的に、酢酸から分離され、酢酸は、流れ(10)中の化合物と混合される。

洗浄装置(12)において、固体状の粗製FDCA酸組成物が、ライン(13)を介して供給された水によって洗浄される。水は、酢酸及び触媒を取り込む。得られた液体は、ライン(14)を介して排出され、蒸留塔(15)に供給される。蒸留塔(15)において、一部の水が留去され、ライン(38)を介して塔頂から除去される。蒸留塔(15)の底部生成物は、水、酢酸及び触媒を含有しており、流れ(3)として抜き出され、流れ(3)は、流れ(1)中のMMF及び流れ(2)中の酢酸と混合される。図は、別々になった2個の設備としてろ過装置及び洗浄装置を示している。当業者は、ろ過工程及び洗浄工程を合わせて1個の設備にしてもよいことを認識されよう。このような場合、ろ過により、ろ過ケーキが生成され、ろ過ケーキには、水による洗浄処理を施す。

洗浄後に得られた固体状の粗製FDCA酸組成物は、ライン39を介して抜き出され、ライン(35)及び別のライン(30)から出た幾らかの水と混合され、混合された流れ(16)として加水分解反応器(17)に移送される。加水分解反応器(17)内の滞留時間は、エステルがメタノール及びFDCAに加水分解されるように選択される。上で示したように、加水分解反応器には、加水分解を触媒するための酸性ゼオライト又はイオン交換樹脂の層を詰めてもよい。加水分解反応器は、概ね120〜200℃までの範囲の温度、例えば160℃で運転することができる。FDCA、水及びメタノールを含む加水分解生成物が、ライン(18)を介して抜き出され、水素化反応器(20)に供給される。水素化反応器(20)は、水素化触媒床を含む。ライン(19)を介して水素化反応器(20)内に供給された水素は、主要な水素化生成物がHMFAになるようにFFCAと反応するが、水素化生成物は、FDCA、水及び幾らかのメタノールと一緒に、反応器から取り除かれ、ライン(21)を介して第2の結晶化装置(22)内に供給される。

上で示したように、加水分解反応器(17)及び水素化反応器(20)を結合して1個の複合反応器にすることもできる。次いで、混合された流れ(16)及び水素流(19)を、この複合反応器の上側部分にある複合反応器内に供給してもよい。流れ(16)は、反応器の加水分解ゾーン内に維持されており、このようにして加水分解された生成物と水素との組合せ物が、複合反応器の下側部分に含まれる水素化触媒層を通過する。水素化生成物は、複合反応器の底部から抜き出される。水素化生成物が過剰な水素等の何らかの気体を含有する場合、このようなガスは、フラッシュカラム(図示せず)によって分離されてもよい。FDCA、水及びメタノールを含有する水素化生成物である残りの液体流は、ライン21を介して第2の結晶化装置(22)に移送される。

結晶化装置(22)は、幾らかの水及びメタノールが遊離し、ライン(23)を介して抜き出される、蒸発冷却結晶化装置である。ライン(23)内の水及びメタノールは分離することができ、本方法において再使用してもよい。メタノールは例えば、メタノールを有する炭水化物がMMFに変換される工程にリサイクルすることができる。ライン(23)内の混合物から分離された水は、本方法の洗浄工程の1つにおいて、洗浄水として使用することができる。

結晶化装置(22)内で得られた固体FDCAが、ライン(36)内をスラリーとしてろ過設備(24)に移送され、ろ過設備(24)では、湿潤したFDCAが母液から分離される。母液は、水、任意選択により場合によっては幾らかのメタノール、HMFA、及び任意選択により場合によってはFFCAの水素化から生じた幾らかの他の化合物を含有する。母液は、ライン(25)を介してろ過設備(24)から抜き出される。ライン(25)は、洗浄装置(12)からの固体状の粗製FDCA酸組成物の輸送を容易にするためのライン(35)と、固体状の粗製FDCA酸組成物を洗浄するために使用されるライン(13)とに分割されている。所望ならば、パージ流をライン25から抜き出してもよい(図示せず)。上で示したように、洗浄用の液体が、ライン(14)を介して抜き出される。ライン(13)内の液体に含有されるあらゆるHMFAは、ライン(14)に入るように抜き出され、蒸留塔(15)を経由し、ライン(3)に入った蒸留塔(15)の底部生成物は酸化反応器にリサイクルされる。このようにすれば、価値ある生成物が失われない。

ろ過設備(24)内で得られた精製された固体FDCAは、ライン(37)を通して洗浄装置(26)に移送され、洗浄装置(26)では、ライン(27)によって供給された水によって洗浄される。洗浄水は、ライン(30)を介して回収され、再使用される。洗浄済みの精製されたFDCA酸組成物は、洗浄装置(26)から生成物流(28)として回収される。

上記に示されたように、ろ過設備及び洗浄装置を結合して1つの設備にすることができる。当業者ならば、結晶化装置(22)が、1個又は複数の結晶化装置からなり得ることを更に認識するであろう。このような場合、第2の又は後続する結晶化装置を使用して、更により純粋な生成物を得るために生成物を再結晶させてもよい。

図2は、本発明による方法の異なる一実施形態を示している。図2において、幾つかの流れには、図1において対応する流れと同じ番号が与えられている。

流れ(1)中のMMFが、酢酸流(2)及び水/触媒流(3)と混合されて流れ(4)になり、流れ(4)が酸化反応器(5)に移送される。反応器(5)において、圧縮機によってライン(6)を介して反応器(5)内に供給された空気及びライン(7)を介して供給された触媒を、MMFと混合し、反応させて、粗製FDCA含有酸組成物を得る。過剰な酸素は、ライン(31)を介して放出される。粗製FDCA含有酸組成物は、ライン(29)を介して第1の結晶化装置(101)に移送される。結晶化装置(101)において、粗製酸組成物の一部のみを結晶化し、比較的純粋なFDCAを得る。結晶化装置(101)は、蒸発冷却結晶化装置であり、ライン(32)を介して排出される酢酸及び水の流れと、FDCA含有酸組成物及び酢酸のスラリーを含む流れ(120)とを生成する。FDCAと酢酸とに富んだスラリーが、ライン(120)を介してろ過設備(102)に移送される。ろ過設備(102)において、酢酸含有母液(かなりの量のFDCAメチルエステル及び幾らかのFFCAを依然として含有する)が、結晶化したFDCAから分離され、ライン(104)を介して抜き出される。ろ過された固体FDCAは、ライン(121)を介して洗浄装置(103)に移送され、洗浄装置(103)では、固体FDCAが、ライン(13)を介して供給された水によって洗浄される。酢酸及び触媒を含有する使用された洗浄水は、ライン(122)を介して抜き出される。洗浄済みFDCAは、ライン(111)を介して抜き出される。

ライン(104)内の酢酸含有母液は、蒸発による第2の結晶化装置(105)に移送される。更なる酢酸及び水が、ライン(123)を介して放出される。ライン(124)を介して、FFCA及びFDCAメチルエステルを含有する結晶化したFDCAのスラリーが、ろ過設備(106)内に供給され、ろ過設備(106)では、固体材料が母液から分離される。母液は、酢酸を含み、ライン(10)を介して抜き出される。任意選択により場合によっては流れ(32)及び(123)中に含有される水の少なくとも一部を分離した後、流れ(32)及び(123)は流れ(10)と混合されてもよい。混合された流れ(10)に、ライン(11)からの補給用酢酸が追加され、混合された流れは流れ(2)として、流れ(1)中のMMF供給原料及び酸化反応器(5)に移送される。

ろ過ケーキとして回収された粗製FDCA含有酸組成物は、ライン(125)を介して洗浄装置(107)に移送され、ライン(108)を介して供給された水によって洗浄される。

あるいは、蒸発による結晶化装置(105)は、すべての液体が蒸発してライン(123)を通り、固体が残留するように運転される。明らかに、ろ過は必要とされず、固体は、洗浄装置(107)に直接移送される。次いで、ライン(123)を介して抜き出された気化した液体は、ライン(11)内で補給用酢酸と混合され、次いでライン(2)として更に移送される。

洗浄水を流れ(126)として回収する。流れ(126)及び(122)は混合されて、流れ(14)を形成するが、流れ(14)は、水、酢酸及び酸化触媒を含む底部生成物からライン(16)を介して排出された水を分離するために、蒸留塔(15)に移送され、ライン(3)を介して抜き出され、MMF及び酢酸と混合され、酸化反応器にリサイクルされる。

洗浄装置(107)内で回収された粗製酸組成物は、ある量のFDCAモノメチルエステル、即ち、FDCA-MEを含有する。したがって、この回収された粗製酸組成物は、ライン(127)を介して加水分解反応器(110)に移送される。リサイクルされた水を含む流れを、ライン(109)を介してライン(127)に供給して、酸組成物の輸送を促進する。加水分解反応器は、加水分解を促進するための不均一触媒層を備えていてもよい。より小さな流れが加水分解反応器を通過する場合、加水分解反応器は、図1による方法の場合より小さくてもよいことが認められている。

FDCA、水、メタノール並びに幾らかのFFCA及び幾らかのFDCA-MEを含む加水分解生成物が、加水分解反応器(110)からライン128を介して抜き出され、ライン(112)内の水性流に加えられる。ライン(112)内の水性流はライン(111)内の洗浄済みFDCAと混合されて、流れ(113)を形成し、流れ(113)が水素化反応器(20)に移送される。ライン(19)を介して水素化反応器(20)に供給された水素は、水素化触媒床上において、ライン(113)によってFDCAと一緒に供給されたFFCAと反応する。HMFAを含む水素化された生成物が、ライン(129)を介して蒸発冷却結晶化装置(22)に移送され、幾らかの水及びメタノールが遊離し、ライン(23)を介して抜き出される。メタノール及び水は、上述したように、本方法において再使用してもよい。

あるいは、反応器(110)において、予備加水分解が実施される。次いで、予備加水分解物がライン(128)内で得られた後、予備加水分解物はライン(112)内の水性流と混合される。このような場合、ライン(112)の水性流中の水は、蒸発又は結晶化及びろ過によって除去されて(図示せず)、固体状の予備加水分解物固体画分が得られる。予備加水分解物固体画分は、ライン(111)からの洗浄済みFDCAと混合されることができ、この組合せ物は溶解させてもよい。固体画分の組合せ物もまた、幾らかのFDCA-MEを含有するため、混合された固体画分の溶液が、ライン(113)を介して、図3に示された加水分解反応器(20)の一変更形態に供給される。この図は、水素がライン19を介して供給される反応器(220)を示しており、混合された固体画分の溶液が、ライン(113)を介して反応器に供給される。ライン(113)からの溶液は、加水分解ゾーン(221)に移送される。このゾーンは、反応器(220)内部の環状領域によって形成されており、このゾーンは、オーバーフロー壁(222)を備える。溶液は、加水分解反応を実施できるある期間にわたって、加水分解ゾーン内に保持される。過剰な溶液は、壁(222)を越えて流れていき、水素化触媒床(223)上に滴る。溶液は、水素化触媒及びライン(19)を介して供給された水素と接触する。この接触中には、更なる加水分解が起きる可能性があり、FDCA及び溶媒を主に含む排出物が、ライン(129)を介して反応器(220)から抜き出される。HMFA及び任意選択により場合によってはMFA等の他の化合物を更に含む排出物は、上述したように処理され、即ち、ライン(129)を介して蒸発冷却結晶化装置(22)に移送され、結晶化装置(22)では、幾らかの水及びメタノールが遊離し、ライン(23)を介して抜き出される(図2を参照されたい)。メタノール及び水は、上述したように、本方法において再使用してもよい。加水分解ゾーン及び水素化ゾーンを有する反応器内での加水分解に加えて、予備加水分解が実施される方法において、予備加水分解の持続期間は、1〜5時間まで、好ましくは1〜4時間までが適切である。このとき、加水分解ゾーンにおける加水分解は、適切には1〜60分まで、適切には1〜15分までである。

図2に示したように、ライン(36)を介して、結晶化した精製されたFDCAのスラリーをろ過設備(24)に移送し、ろ過設備(24)では、湿潤した精製FDCAが、水及びHMFAを含む母液から分離される。母液は、ライン(114)を介して抜き出される。湿潤した精製されたFDCAは、ライン(37)を介して回収され、洗浄装置(26)に供給され、ライン(27)を介して供給された水によって洗浄される。洗浄水は、ライン(114)内の流れが加えられる流れ(115)によって抜き出される。ライン(115)内の流れは、ライン(112)、(109)、(108)及び(13)内の流れに分割される。ライン(115)、(13)、(122)、(14)及び(3)を介して、HMFAを酸化反応器(5)にリサイクルし、酸化反応器(5)では、HMFAをFDCAに酸化することができる。必要に応じて、ライン(115)内の水の量は、ライン(130)を介して供給できる補給用水によって追加することができる。

洗浄済みの精製されたFDCA酸組成物は、洗浄装置(26)から生成物流(28)として回収される。任意選択により、精製された酸組成物は、乾燥装置内で更に乾燥させることができる。

図1及び図2のプロセススキームは概略的なものである。ポンプ、加熱手段又は冷却手段、圧縮機又はエキスパンダ、バルブ及び制御手段等の補助設備は、図面において示されていない。

本発明は、次の例によって更に説明する。

固体触媒床が配置されたステンレス鋼反応器内で、次の試験を実施した。触媒床は、同じ温度に保持した。FDCA及びFFCAを含有する供給原料を、触媒層を通り抜けるように供給した。供給原料は、0.5質量%の粗製FDCA組成物を含有する水性流だった。粗製FDCA組成物は、98.0質量%のFDCA、1.0質量%のFFCA、及び約1.0質量%のFDCAモノメチルエステル(FDCA-ME)からなっていた。組成物は、数ppmの酸化触媒の成分、即ち、コバルト、マンガン及び臭素を更に含有していた。

10体積%の水素及び90体積%の窒素からなる水素含有気体を、水素化のために使用した。

使用された触媒は、5質量%パラジウム炭素(5wt% palladium on carbon)を含む触媒1及び0.43質量%パラジウム炭素(0.43 wt% palladium on carbon)を含む触媒2だった。

試験は、次のとおりに実施した。反応器に、所望の担持量の所望の触媒を装入した。触媒床を水素によって数回ガス抜きして、あらゆる酸素を除去した。別段の記載がない限り、続いて、反応器を、水素含有気体によって15barの圧力(20℃で)に加圧し、所望の反応温度に加熱した後、1時間毎の触媒1グラム当たりの供給原料のグラムである質量毎時空間速度(WHSV)として表される所望の空間速度によって供給原料を触媒床に通した。表は、接触時間又は滞留時間も収載していることがある。

(実施例1) FFCAからHMFA及びMFAへの変換に及ぼす反応温度の影響を示すために、触媒1及び2を試験において使用したが、上記供給原料を、異なる空間速度によって異なる反応温度で2個の触媒床に通した。反応器の排出物から、FFCA、HMFA、及びMFAの量を測定した。結果をTable 1 (表1)に示している。FFCA、HMFA、及びMFAの量は、供給原料中のFFCAの量に対する質量%として表されている。

(実施例2) 加水分解反応に及ぼす水素化触媒の触媒効果を示すために、空間速度及び温度が異なる水素化条件において、触媒1及び2を試験した。更に、ブランク試験を同じ条件において、ただし、触媒粒子の代わりに不活性セラミック粒子が存在する状況下で実施した。供給原料は、実施例1に記載の供給原料と同様であった。FDCA-MEの量を、排出物のそれぞれについて測定し、合計での液体排出物の質量パーセントとして表した。結果をTable 2 (表2)に示している。

(実施例3) FFCAの水素化生成物からFDCAを分離する困難さを示すために、次の試験を実施した。

純粋なFDCAを、FDCAの量に対して最大2質量%の量の純粋な汚染物質と混合した。混合物を、FDCAの濃度が約4質量%になるまで加熱によって水に溶解した。冷却速度を制御しながら溶液を冷却することによって、FDCAが結晶化した。FDCA結晶を80℃、50℃、及び20℃でろ過し、湿潤した結晶中の各汚染物質のレベルを測定した。結果を下記Table 3 (表3)に示している。これらのレベルは、純粋なFDCAに添加された汚染物質の量に対する百分率として示されている。

上記結果は、FFCAの水素化において生産され得る数多くの化合物は、FDCAから分離することが困難であることが示されている。最良の分離は、HMFAの場合に達成され得る。

(実施例4) より濃厚なFDCA溶液に対する本方法の効力を示すために、溶液全体に基づいて最大30質量%のFDCA溶液を試験した。この溶液は、10質量%、20質量%、又は30質量%の粗製FDCAを水に溶解することによって調製した。粗製FDCA (cFDCA)は、98.0質量%のFDCA、1.0質量%のFFCA、並びに約0.9質量%のFDCAのモノメチルエステル(FDCA-ME)及び0.1質量%のFCA (フランカルボン酸)を含有していた。異なる温度において異なる空間速度で、その溶液を、0.43質量%パラジウム炭素を含む触媒のスラリーと接触させた。空間速度は、質量毎時空間速度として(cFDCAのグラム/触媒のグラム/時間として)表した。水素化された溶液を、水素化生成物の存在について分析した。水素化された溶液については、回収されたFDCAの百分率を測定した。

Table 4から6(表4から6)において、160℃、180℃、及び190℃における水素化試験の結果を示しているが、室温における水素含有気体(10vol%のH2/90vol%のN2)の圧力は、それぞれ5bar、10bar、及び15barだった。FFCA、HMFA、及びMFAの量は、水素化された溶液から分析したものとして示されている。更に、出発物質の脱カルボキシル化の結果として形成され得るFCAの量及びFDCA-MEの量を測定した。示されているFDCAの量は、触媒層に移送されたFDCAの量に対する百分率として計算されている。

上の結果は、望ましくないMFA副生成物の形成は、様々な温度及び高いWHSV値において粗製FDCA組成物に水素化を施すことによって実質的に回避できることを示している。

(実施例5) 結晶化した精製されたFDCAの純度、特に、結晶化したFDCA中のFCAのレベルに及ぼすFDCA-MEの存在の影響を示すために、1質量%のFCA、様々な量のFDCA-ME、及びFDCAである残部を含むFDCA組成物から水溶液を調製した。水中のFDCA組成物の濃度は、0.04g/mlだった。140〜25℃から冷却することによって、溶液にFDCAの結晶化を起こさせた。得られた固体をろ過して、湿潤したケーキを得、この湿潤したケーキを分析した。同様に、FDCA組成物から溶液を調製したが、FDCA-MEの量は0.5質量%において一定に保持されていたが、FCAの量は相違していた。Table 7 (表7)に、出発溶液中のFDCA組成物の組成が与えられており、湿潤したケーキ中のFCAの相対量は全て、FCA、FDCA-ME、及びFDCAの量に基づいて示されている。

これらの結果からは、FDCA-MEの量が、湿潤したケーキ、即ち、結晶化した精製されたFDCA組成物中のFCAの相対量に影響することが明らかである。このことは、酸化生成物中に存在するFDCA-MEを可能な限り完全に加水分解することが望ましいことを強く示している。

1 流れ 2 酢酸流 3 水/触媒流 4 流れ 5 酸化反応器 6 ライン 7 ライン 8 結晶化容器 9 ろ過設備 10 酢酸含有母液流 11 ライン 12 洗浄装置 13 ライン 14 ライン 15 蒸留塔 16 流れ 17 加水分解反応器 18 ライン 19 ライン 20 水素化反応器 21 ライン 22 結晶化装置 23 ライン 24 ろ過設備 25 ライン 26 洗浄装置 27 ライン 28 生成物流 29 ライン 30 ライン 31 ライン 32 ライン 33 ライン 34 ライン 35 ライン 36 ライン 37 ライン 38 ライン 39 ライン 101 第1の結晶化装置 102 ろ過設備 103 洗浄装置 104 ライン 105 蒸発による第2の結晶化装置 106 ろ過設備 107 洗浄装置 108 ライン 109 ライン 110 加水分解反応器 111 ライン 112 ライン 113 流れ 114 ライン 115 流れ 120 ライン 121 ライン 122 ライン 123 ライン 124 ライン 125 ライン 126 流れ 127 ライン 128 ライン 129 ライン 220 反応器 221 加水分解ゾーン 222 越流壁 223 水素化触媒層

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