低放射化硬性組成物、低放射化セメント、及びそれら製造方法

申请号 JP2009505267 申请日 2008-03-17 公开(公告)号 JPWO2008114877A1 公开(公告)日 2010-07-08
申请人 電気化学工業株式会社; 发明人 森泰一郎; 吉野亮悦; 樋口隆行;
摘要 放射線遮蔽性能を有する低放射化セメントコンクリート構造物を提供することを課題とする。カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al2O3、SiO2、MgO、及びZrO2の合計中、CaOが25〜55部、Al2O3が16〜45部、SiO2が23〜40部、MgOが0〜1部、ZrO2が0〜4部であり、カルシウムアルミノシリケート中、Eu含有量が0.3mg/kg未満、Co含有量が15mg/kg未満である低放射化 水 硬性組成物及びその製造方法である。カルシウムアルミナシリケートのガラス化率が70%以上であり、遊離 酸化 カルシウムの含有量がカルシウムアルミネートシリケート中0〜2部未満であることが好ましい。 石膏 やセメントを含有しても良い。
权利要求
  • カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al 、SiO 、MgO、及びZrO の合計中、CaOが25〜55部、Al が16〜45部、SiO が23〜40部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜4部であり、カルシウムアルミノシリケート中、Eu含有量が0.3mg/kg未満、Co含有量が15mg/kg未満である低放射化水硬性組成物。
  • カルシウムアルミノシリケートのガラス化率が70%以上であり、遊離酸化カルシウムの含有量がカルシウムアルミノシリケート中0〜2部未満である請求の範囲第1項に記載の低放射化水硬性組成物。
  • 請求の範囲第1項又は第2項に記載の低放射化水硬性組成物の製造方法であって、CaO原料、Al 原料、SiO 原料、MgO原料、及びZrO 原料を溶融し、急冷却して製造することを特徴とする低放射化水硬性組成物の製造方法。
  • 請求の範囲第1項又は第2項に記載の低放射化水硬性組成物と、セメントを混合してなる低放射化セメント。
  • さらに、石膏を含有することを特徴とする請求の範囲第4項に記載の低放射化セメント。
  • 低放射化セメント100部中、低放射化水硬性組成物を35〜98部含有してなる請求の範囲第4項に記載の低放射化セメント。
  • 請求の範囲第1項又は第2項に記載の低放射化水硬性組成物を、低放射化セメント100部に対して35〜98部混合し、低放射化セメントを製造することを特徴とする低放射化セメントの製造方法。
  • 说明书全文

    本発明は、低放射化コンクリートに使用する低放射化硬性組成物、低放射化セメント、及びそれら製造方法に関する。

    低放射化コンクリートとは、放射線遮蔽機能のみならず残留放射能の低減機能を兼ね備えたコンクリートであり、原子関連施設や加速器施設等で使用されている。 従来、この低放射化コンクリートに使用するセメントとして、白色セメントやハイアルミナセメントが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。 これらのセメントは、クリアランスレベル濃度比に対する支配核種となる152 Eu(半減期 T 1/2 =13.54年)や154 Eu(半減期 T 1/2 =8.593年)や60 Co(半減期 T 1/2 =5.271年)の親元素であるEuやCoの含有量が、普通ポルトランドセメントや高炉セメントをはじめとする他のセメントに比べて少ないことが特徴である(例えば、非特許文献2、非特許文献3参照)。
    しかしながら、白色セメントはハイアルミナセメントに比べて低放射化機能が劣り、また、ハイアルミナセメントは相転移(コンバージョン)により長期強度の維持が困難といった課題があった。 なお、クリアランスレベルを満足するためのEuやCoの含有限界量として、例えばEuで0.3mg/kg未満、Coで15mg/kg未満にする必要があると言われている(例えば、非特許文献3参照)。
    一方、CaO−Al −SiO 系ガラスからなる水硬性化合物が知られている(例えば、特許文献2、非特許文献4参照)。 これは、水と反応してハイドロガーネット(3CaO・Al ・6H O)やストラトリンガイト(2CaO・Al ・SiO ・8H O)を主体とする水和物を生成し、耐硫酸塩抵抗性や耐酸性に優れることが知られている(例えば、非特許文献4参照)。 しかしながら、混和材として使用することや、低放射化セメントに応用することについては、記載がない。
    セメント質物質、超微粉、高性能減水剤及び水を主成分とする材料、カルシウムアルミネート、超微粉及び高性能減水剤を主成分とする材料も知られている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。 しかしながら、CaO、Al 、SiO の化学組成は本発明と異なる(例えば、非特許文献5参照)。

    特開昭62−133394号公報

    米国特許公開第4605443号明細書

    特許第2501576号公報

    特開昭61−215999号公報

    金野正晴、「低放射化コンクリートの開発の現況」、コンクリート工学、社団法人日本コンクリート工学協会、2004年6月、第42巻、第6号、p. 3−10 Masaharu KINNO,Ken−ichi KIMURA and Takashi NAKAMURA," Raw Materialsfor Low−Activation Concrete Neutron Shields ",Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY,December 2002,Vol. 39,No. 12,p. 1275−1280 白井孝治、園部亮二、「コンクリートキャスク用低放射化・高性能材料の開発」、電力中央研究所報告、財団法人電力中央研究所、2005年7月、N04033号 JOHN F. MacDOWELL," STRATLINGITEAND HYDROGARNET FROM CALCIUM ALUMINOSILICATE GLASS CEMENTS ",Mat. Res. Soc. Symp. Proc. ,Materials Research Society,1991,Vol. 179,p. 159−179 セメントの材料化学、荒井康夫著、大日本図書、第204−205頁、表6・1、第210−211頁、表6・4

    本発明の課題は、低放射化水硬性組成物、低放射化セメント、及びそれら製造方法を提供することである。

    本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
    (1)カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al 、SiO 、MgO、及びZrO の合計中、CaOが25〜55部、Al が16〜45部、SiO が23〜40部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜4部であり、カルシウムアルミノシリケート中、Eu含有量が0.3mg/kg未満、Co含有量が15mg/kg未満である低放射化水硬性組成物である。
    (2)カルシウムアルミノシリケートのガラス化率が70%以上であり、遊離酸化カルシウムの含有量がカルシウムアルミノシリケート中0〜2部未満である前記(1)の低放射化水硬性組成物である。
    (3)前記(1)又は(2)の低放射化水硬性組成物の製造方法であって、CaO原料、Al 原料、SiO 原料、MgO原料、及びZrO 原料を溶融し、急冷却して製造することを特徴とする低放射化水硬性組成物の製造方法である。
    (4)前記(4)低放射化水硬性組成物と、セメントを混合してなる低放射化セメントである。
    (5)さらに、石膏を含有することを特徴とする前記(4)の低放射化セメントである。
    (6)低放射化セメント100部中、低放射化水硬性組成物を35〜98部含有してなる前記(4)の低放射化セメントである。
    (7)前記(1)又は(2)の低放射化水硬性組成物を、低放射化セメント100部に対して35〜98部混合し、低放射化セメントを製造することを特徴とする低放射化セメントの製造方法である。

    本発明によれば、放射線遮蔽性能を有する低放射化セメントコンクリート構造物を提供できる。

    本発明でいう「クリアランスレベル」とは、放射線防護に係る規制の体系から外してもよい物を区分するための判断基準となる放射性核種の濃度を指す。 例えば国際原子力機関(IAEA)の技術文書「Clearance levels for radionuclides in solid materials」(TECDOC−855、1996年1月)によれば、10μ Sv/年に相当する放射性核種の濃度は、 152 Eu、 154 Eu、 60 Coの各放射性核種で0.1Bq/g未満とされている。
    本発明で使用する部や%は、特に規定のない限り質量基準である。 また、本発明でいうセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル及びコンクリートを総称するものである。
    本発明でいうカルシウムアルミノシリケートとは、クリアランスレベル濃度比に対する支配核種となる152 Euや60 Coの親元素となるEuやCoの含有量が、Euで0.3mg/kg未満、Coで15mg/kg未満である水硬性組成物を指す。 これらの範囲を超える水硬性組成物を原子力施設等で使用すると、セメントコンクリート中に含まれるEuやCoが152 Euや60 Coに壊変して放射能を帯び、メンテナンス時に作業員が被爆したり、施設解体時に大量の放射性廃棄物が発生したりするおそれがある。
    カルシウムアルミノシリケート中に含まれるEuやCo含有量は、Euで0.3mg/kg未満、Coで15mg/kg未満であることが好ましく、Euで0.08mg/kg未満、Coで2mg/kg未満であることがより好ましい。
    次に、本発明のカルシウムアルミノシリケートの製造方法について説明する。 本発明のカルシウムアルミノシリケートは、化学成分としてCaO、Al 、SiO を主成分とする。
    CaO原料は特に限定されないが、例えば生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH) )、石灰石(CaCO )等の使用が挙げられる。 いずれもクリアランスレベルを満足するCaO原料の使用が好ましい。
    本発明で使用するAl 原料の選択は特に限定されないが、クリアランスレベルを満足するAl 原料の使用が好ましい。 コスト面、入手し易さの点からバイヤー法アルミナの使用が好ましい。
    バイヤー法アルミナとは、原料であるボーキサイトをオートクレーブで苛性ソーダに溶解させ、精製溶液から水酸化アルミニウムを晶出させ、それをロータリーキルン中1200℃以上で焼成することによって得られるα−アルミナである。 本発明に使用するバイヤー法アルミナは特に限定されないが、化学組成でAl 成分が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。 また、本発明に使用するバイヤー法アルミナに含まれるNa O含有量は0.5%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましい。 Na O含有量が0.5%を超えると、低放射化水硬性組成物にしたときに、流動性の低下が生じたり、あるいは中性子の捕獲反応によって短寿命核種である24 Na(半減期 T 1/2 =14.96時間)が生成したりするため、好ましくない。
    本発明で使用するSiO 原料は特に限定されないが、例えばケイ石、ケイ砂、石英、ケイ藻土等の使用が挙げられる。 いずれもクリアランスレベルを満足するSiO 原料の使用が好ましい。
    本発明のカルシウムアルミネートは、CaO、Al 、SiO の3成分を基本化学構成とし、流動性の向上を目的にMgOやZrO を少量含むことが好ましい。
    本発明で使用するMgO原料は特に限定されないが、例えば溶融マグネシア、焼結マグネシア、天然マグネシア、および軽焼マグネシアなどのマグネシアが使用可能である。 ここでいうMgO原料とは、海水法により海水から抽出された水酸化マグネシア(Mg(OH) )、炭酸マグネシア(MgCO )、天然MgOであるマグネサイト、または、天然炭酸マグシアをロータリーキルンなどで焼成して得られる焼結マグネシアクリンカー、その焼結マグネシアクリンカーを電気炉などで溶融して得られる電融マグネシアクリンカーを、所定のサイズに粉砕し、篩い分けしたものである。
    本発明で使用するZrO 原料は特に限定されないが、クリアランスレベルを満足するZrO 原料の使用が好ましい。 なかでも、ジルコンやバデレアイトなどの鉱物をアルカリ分解して抽出した酸溶液オキシ塩化ジルコニウムを原料とするZrO 原料の使用が好ましく、例えば酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、有機酸ジルコニウム等の使用が挙げられる。 なお、CaO原料、Al 原料、SiO 原料、ZrO 原料にMgOやZrO が含まれる場合は、MgO原料やZrO 原料を新たに加える必要はない。
    カルシウムアルミノシリケートの原料中に含まれる成分について、Eu含有量が0.3mg/kg未満、Co含有量が15mg/kg未満であることが好ましく、Eu含有量が0.08mg/kg未満、Co含有量が2mg/kg未満であることがより好ましい。 これら原料を所定の割合で配合した後、電気炉や高周波炉、もしくはキルン炉で溶融し、急冷却し、ガラス化することにより、セメントクリンカーを製造する。 溶融温度は1500℃以上が好ましく、1600℃以上がより好ましい。 1500℃未満では原料の溶融が不十分であったり、急冷却によりガラス化できなかったりする場合がある。
    セメントクリンカーのガラス化率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が最も好ましい。 ガラス化率が70%未満では十分な水和活性が得られない場合がある。 ガラス化率の測定方法は、下記に示すX線回折リートベルト法により行なった。 粉砕した試料に酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等の内部標準物質を所定量添加し、メノウ乳鉢で十分混合したのち、粉末X線回折測定を実施する。 測定結果を定量ソフトで解析し、ガラス化率を求める。 定量ソフトには、Sietronics社製の「SIROQUANT」等を用いることができる。
    本発明のカルシウムアルミノシリケートは、セメントクリンカーを粉砕することにより製造することも可能である。 カルシウムアルミノシリケートは、カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al 、SiO 、MgO、及びZrO の合計中、CaOが25〜55部、Al が16〜45部、SiO が23〜40部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜4部を含有することがより好ましく、CaOが27〜53部、Al が17〜43部、SiO が25〜38部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜3部を含有することが最も好ましい。 この範囲外では十分な流動性、強度発現性、そして寸法安定性が得られなかったり、水和発熱が大きくなったりする場合がある。 MgOは、モルタルコンクリートにしたときの流動性が良好となったり、圧縮強度の向上を図ったりするため、0.05部以上を含有することが好ましい。 ただし、MgOが1部を超えると、自己収縮が大きくなるばかりでなく、熱中性子によって短寿命核種である24 Na(半減期 T 1/2 =4.96時間)が生成するため、好ましくない場合がある。
    一方でZrO は、熱中性子の吸収断面積が小さいために放射化しなかったり、モルタルコンクリートにしたときの流動性が良好となったり、流動性や圧縮強度の向上を図ったりするため、0.5部以上を含有することが好ましい。 ただし、ZrO が4部を超えると、自己収縮が大きくなるため、好ましくない場合がある。
    また、本発明のカルシウムアルミノシリケートの特性を損なわない範囲内で、未反応のCaO(遊離酸化カルシウム)や未反応のAl 、あるいはダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO )やゲーレナイト(2CaO・Al ・SiO )を少量含有することも可能である。 ただし、カルシウムアルミノシリケートの最終製品となったときに、未反応のCaO(遊離酸化カルシウム(遊離石灰))は、カルシウムアルミノシリケート中、2部未満であることが好ましく、1部未満がより好ましくい。 遊離酸化カルシウムが2部以上となると、モルタル・コンクリートにしたときのワーカビリティーが著しく悪化するため好ましくない場合がある。
    カルシウムアルミノシリケートクリンカーのみの粉砕方法、もしくはカルシウムアルミノシリケートクリンカーとセメントの混合・粉砕方法は特に限定されないが、例えば、ローラーミル、ジェットミル、チューブミル、ボールミル、振動ミル等の粉砕機を使用する方法が挙げられる。 いずれの装置を用いる場合でも、耐磨耗性に優れ、かつEuやCo含有量の少ない材質からなる粉砕機を使用する方法が好ましい。
    これらの粉砕機により、セメントクリンカーのみを粉砕して得られるカルシウムアルミノシリケート、もしくはセメントクリンカーとセメントを混合・粉砕して得られる低放射化水硬性組成物、もしくは低放射化セメントの粒度は、ブレーン比表面積で2000〜8000cm /gが好ましく、4000〜6000cm /gがより好ましい。 2000cm /g未満では、水和活性が不十分で強度が不足する場合があり、8000cm /g以上では粉砕動力がかかりすぎて不経済になる場合がある。
    低放射化水硬性組成物、及び低放射化セメント中のEuやCo含有量は、例えばJIS R 2522に準じて前処理を行なった後、ICP−AESやICP−MSを用いて分析を行なうことにより求めることができる。 また、放射化分析法によっても低放射化水硬性組成物、及び低放射化セメント中のEuやCo含有量を求めることができる。
    本発明で使用するセメントは特に限定されるものではなく、通常のセメントが使用可能であり、具体的には、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、また、石灰石微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、廃棄物利用型セメント、いわゆるエコセメント、アルミナセメント、ハイアルミナセメント等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が併用可能である。
    本発明の低放射化セメントは、石膏を含有することが好ましい。
    石膏としては、無水石膏、半水石膏、及び二水石膏等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が使用可能である。 これらの中では、強度発現性の点から、無水石膏の使用が好ましい。 石膏の粒度は、通常セメントに使用される程度、例えば、ブレーン比表面積で2500cm /g以上が好ましく、3000cm /g以上がより好ましい。
    本発明の石膏の使用量は、カルシウムアルミノシリケートとセメントと必要に応じて添加する石膏を含有する低放射化セメント100部中、1〜10部が好ましく、3〜7部が好ましい。 1部未満では、収縮が大きくなったり、水和発熱温度の低下効果が得られなかったりする場合がある。 10部を超えると十分な流動性が得られなかったり、強度発現性が不良となったりする場合がある。
    本発明のカルシウムアルミノシリケートの使用量は、カルシウムアルミノシリケートとセメントと必要に応じて添加する石膏を含有してなる低放射化セメント100部中、35〜98部が好ましく、38〜96部がより好ましく、45〜80部が最も好ましい。 35部未満では、本発明の効果である低放射化セメント中のCo含有量やEu含有量の低減が得られないほか、収縮が大きくなったり、水和発熱温度の低下効果が得られなかったりする場合がある。 96部を超えると強度発現性が不良となる場合がある。
    本発明でいう低放射化セメントとは、クリアランスレベル濃度比に対する支配核種となる152 Euや60 Coの親元素となるEuやCoの含有量は、使用する部位により一義的に決めることはできないが、例えば加圧水型軽水炉(P PWR)使用済燃料用コンクリート製貯蔵容器(最高燃焼度 55GWD/tU、10年冷却×21体)に用いる場合、非特許文献3よりEuで0.3mg/kg未満、Coで15mg/kg未満である水硬性組成物であることが好ましい。 これらの範囲を超える水硬性組成物を原子力施設等で使用すると、セメントコンクリート中に含まれるEuやCoが152 Euや60 Coに壊変して放射能を帯び、メンテナンス時に作業員が被爆したり、施設解体時に大量の放射性廃棄物が発生したりするおそれがある。
    低放射化セメント中に含まれるEuやCo含有量は、Euで0.3mg/kg未満、Coで15mg/kg未満であることが好ましく、Euで0.08mg/kg未満、Coで2mg/kg未満であることがより好ましい。
    本発明の低放射化セメントを用いる場合、水粉体比は特に限定されないが70%以下であることが好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下が最も好ましい。 水粉体比が70%より大きくなると、低放射化硬化体の組織が粗となり、遮蔽性能が劣るために好ましくない。 水粉体比の下限値は20%以上である。 より好ましくは25%以上である。
    本発明と併用する骨材としては、低放射化機能を有する骨材、例えば電溶アルミナ、石灰石等を使用することが好ましい。 また、低放射化セメントに減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、流動化剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結調整剤、シリカ、アルミナ、石灰石微粉末、コレマナイト、ジルコニア、ボロンカーバイド、ベントナイト等の粘土鉱物及びハイドロタルサイト等のアニオン交換体、ビニロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維等の繊維状物質のうち一種または二種以上を本発明の目的を阻害しない範囲で使用することができる。
    本発明により、放射線遮蔽性能のみならず、残留放射能の原因となるEu含有量やCo含有量を低減した低放射化水硬性組成物、及び低放射化セメントが得られる。 本発明により、良好な流動性と強度発現性、そして寸法安定性が得られ、なおかつ温度ひび割れの原因となる水和発熱温度を低減がさせられる低放射化水硬性組成物、低放射化セメント、及びそれら製造方法が得られる。

    表1に示す組成のカルシウムアルミノシリケートを調製した。 表2に示す組成の低放射化セメントを調製し、各低放射化セメント中に含まれるEuとCo含有量を所定の方法で測定した。 結果を表2に示す。
    (使用材料)
    カルシウムアルミノシリケートa1〜i6: 表1中a1〜i6の組成となるようにCaO原料、Al 原料1、SiO 原料、MgO原料、ZrO 原料を混合して混合粉砕した後、白金皿に入れて1650℃で1時間溶融した。 溶融後、サンプルの入った白金皿をウォーターバス上に入れて急冷却し、ガラス化率の異なるサンプルを作製した。 サンプルは、粉砕機を用いてブレーン比表面積4000cm /gに粉砕した。
    CaO原料: 新潟県糸魚川産、石灰石焼成品、CaO 99%、Al 0%、SiO 1%、MgO 0%、ZrO 0%、Co 0.23mg/kg、Eu 0.083mg/kg
    Al 原料1: 日本軽金属社製、バイヤー法により得られた酸化アルミニウム(原料であるボーキサイトをオートクレーブで苛性ソーダに溶解させ、精製溶液から水酸化アルミニウムを晶出させ、それをロータリーキルン中1200℃以上で焼成することによって得られた酸化アルミニウム)、CaO 0%、Al 100%、SiO 0%、MgO 0%、ZrO 0%、Co 0.013mg/kg、Eu 0.0005mg/kg
    Al 原料2: 中国産、ボーキサイト、CaO 1%、Al 92%、SiO 7%、MgO 0%、ZrO 0%、Co 39mg/kg、Eu 1.6mg/kg
    SiO 原料: オーストラリア産、珪砂、CaO 0%、Al 2%、SiO 98%、MgO 0%、ZrO 0%、Co 0.013mg/kg、Eu 0.001mg/kg
    MgO原料: 関東化学社製、CaO 0%、Al 0%、SiO 0%、MgO 100%、ZrO 0%、Co 0.18mg/kg、Eu 0.057mg/kg
    ZrO 原料: 第一希元素化学工業社製、CaO 0%、Al 0%、SiO 0%、MgO 0%、ZrO 100%、Co 0.025mg/kg、Eu 0.0007mg/kg
    白色セメント: 太平洋セメント社製、商品名「ホワイトセメント」、密度3.05g/cm 、ブレーン比表面積3,700cm /g
    普通ポルトランドセメント: 電気化学工業社製、商品名「普通ポルトランドセメント」、密度3.15g/cm 、ブレーン比表面積3,400cm /g
    中庸熱ポルトランドセメント: 電気化学工業社製、商品名「デンカ中庸熱ポルトランドセメント」、密度3.20g/cm 、ブレーン比表面積3,100cm /g
    低熱ポルトランドセメント: 太平洋セメント社製、商品名「低熱ポルトランドセメント」、密度3.21g/cm 、ブレーン比表面積3,400cm /g
    フライアッシュセメント: 電気化学工業社製、商品名「デンカフライアッシュセメント(B種)」、密度2.96g/cm 、ブレーン比表面積3,300cm /g
    高炉セメント: 電気化学工業社製、商品名「デンカ高炉セメント」、密度3.05g/cm 、ブレーン比表面積3,800cm /g
    アルミナセメント1号: 電気化学工業社製、商品名「デンカアルミナセメント1号」、密度3.00g/cm 、ブレーン比表面積4,800cm /g
    ハイアルミナセメント: 電気化学工業社製、商品名「デンカハイアルミナセメント」、密度3.13g/cm 、ブレーン比表面積4,800cm /g
    フライアッシュ: 石炭火力発電所産、JIS II種適合品、密度2.3g/cm 、ブレーン値3500cm /g
    高炉スラグ: 新日鐵高炉セメント社製、商品名「エスメント」、密度2.9g/cm 、ブレーン値4000cm /g
    石膏: 無水石膏、密度2.94g/cm 、ブレーン比表面積4000cm /g、市販品(測定方法)
    化学組成: JIS R 5202−1999「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて、CaO、Al 、SiO の組成を求めた。 また、JIS R 2013−1998「アルミナ−ジルコニア−シリカ質耐火物の化学分析方法」に準じて、ZrO を求めた。
    放射化成分含有量(Eu、Co含有量試験): 低放射化セメント中のEuやCo含有量の測定は、まずJIS R 2522−1995「耐火物用アルミナセメントの化学分析方法」に準じてセメントの前処理を行なったあと、ICP−AES(SII ナノテクノロジー社製、VISTA−PRO型)を用いてEu含有量とCo含有量の測定を行なった。
    ガラス化率: 低放射化水硬性組成物4.5部に酸化マグネシウム0.5部を添加し、メノウ乳鉢で十分混合したのち、粉末X線回折測定を実施した。 測定結果をSietronics社製定量ソフト「SIROQUANT」で解析し、ガラス化率を求めた。

    表2に示す低放射化セメントの残留放射能を所定の方法で測定した。 結果を表3に示す。
    (測定方法)
    Σ D/C: 熱中性子照射後の残留放射能の測定は以下のように行った。 試料をアルミナ製乳鉢で粒度が1mm以下となるように粉砕し、100mgを石英管(外径7mm、長さ40mm、厚さ1mm、SiO 純度99.99997%)に封入した。 石英管に封入した試料は、日本原子力機構東海研究所JMTR(材料試験炉)にて40分間、熱中性子を照射(公称熱中性子束 5.3×10 13 ncm −2−1 (5.3MW 最大出力時))し、6ヶ月間冷却した。 その後、各試料に残留する154 Eu、 152 Eu、 60 Coの放射能濃度をGe半導体検出器により測定した。 得られた結果をもとに、数式1で示されるΣ D/Cを計算して評価した。

    (但し、D

    152−Eu 、D

    154−Eu 、D

    60−Coは、それぞれ熱中性子束が2.0×10

    ncm

    −2 sec

    −1のみと仮定して計算した、

    152 Eu、

    154 Eu、

    60 Coの放射能濃度を示す。また、C

    152−Eu 、C

    154−Eu 、C

    60−Coは、日本の原子炉に対するクリアランスレベル(2005.12.1施行)の値を示し、いずれも0.1を示す。)


    表2、表3から、本発明のカルシウムアルミノシリケートを使用した場合、EuやCo含有量が少ないため、低放射化機能に優れていることがわかる。

    表2に示す低放射化セメントを用いて、モルタルコンクリート試験をした。 結果を表4に示す。
    (使用材料)
    標準砂: セメント協会製、商品名「セメント強さ試験用標準砂」、比重2.64
    砂:新潟県青海産石灰砂、比重2.68
    砂利: 新潟県青海産石灰砕石、G max (骨材の最大寸法)=20mm、比重2.74
    水: 水道水(測定方法)
    フロー試験: JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じてモルタルを混練し、練り上り直後の15打点フロー値を測定した。 温度、湿度、モルタルの配合は、圧縮強度試験と同一にした。 試験では標準砂を使用した。
    圧縮強度試験: JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて40mm×40mm×160mmのモルタル供試体を作製し、アルミテープで封かんした後、7日、28日の圧縮強度を測定した。 試験では標準砂を使用した。
    長さ変化率測定: JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に準じて40mm×40mm×160mmのモルタル供試体を作製し、アルミテープで封かんした後、7日、28日の長さ変化率をJIS A 6202−1997「コンクリート用膨張材」附属書2(参考)膨張コンクリートの拘束膨張及び収縮試験方法 B法(膨張及び収縮を対象とした試験方法)に準じて測定した。 試験では標準砂を使用した。
    断熱温度上昇量: 低放射化セメントの単位セメント組成物量300kg/m 、単位水量150kg/m 、水粉体比=50%、細骨材率s/a=42%からなるコンクリートを20℃環境下で調製した。 このコンクリートを40mm×40mm×160mmに成型して材齢1日後に脱型し、断熱温度上昇量を測定した。 断熱熱量計(東京理工株式会社製、ACM−202L型)を用いて、打設温度20℃の条件で、材齢7日まで測定した。 測定では砂と砂利を使用した。

    表4から、本発明の低放射化セメントを用いた場合、白色セメントに比べて流動性が良好であり、ハイアルミナセメントに比べて自己収縮が小さいことがわかる。 また、本発明の低放射化セメントを用いた場合、セメントの種類によらず、断熱温度上昇量が小さいことがわかる。

    本発明の低放射化水硬性組成物は、残留放射能の原因となるEu含有量やCo含有量を低減するのみならず、温度ひび割れの原因となる水和発熱温度を低下させ、かつ良好な強度発現性を得ることができる。 本発明の低放射化水硬性組成物は、原子力施設や加速器施設等のセメントコンクリート構造物に好適に使用できる。

    【0003】
    発明の開示発明が解決しようとする課題 本発明の課題は、低放射化水硬性組成物、低放射化セメント、及びそれら製造方法を提供することである。
    課題を解決するための手段 本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
    (1)カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al 、SiO 、MgO、及びZrO の合計中、CaOが25〜55部、Al が16〜39部、SiO が26〜40部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜4部であり、カルシウムアルミノシリケート中、Eu含有量が0.08mg/kg未満、Co含有量が、2mg/kg未満である低放射化水硬性組成物である。
    (2)カルシウムアルミノシリケートのガラス化率が70%以上であり、遊離酸化カルシウムの含有量がカルシウムアルミノシリケート中0〜2部未満である前記(1)の低放射化水硬性組成物である。
    (3)前記(1)又は(2)の低放射化水硬性組成物の製造方法であって、CaO原料、Al 原料、SiO 原料、MgO原料、及びZrO 原料を溶融し、急冷却して製造することを特徴とする低放射化水硬性組成物の製造方法である。
    (4)前記(4)低放射化水硬性組成物と、セメントを混合してなる低放射化セメントである。
    (5)さらに、石膏を含有することを特徴とする前記(4)の低放射化セメントである。
    (6)低放射化セメント100部中、低放射化水硬性組成物を35〜98部含有してなる前記(4)の低放射化セメントである。
    (7)前記(1)又は(2)の低放射化水硬性組成物を、低放射化セメント100部に対して35〜98部混合し、低放射化セメントを製造することを特徴とする低放射化セメントの製造方法である。

    【0007】
    ベルト法により行なった。 粉砕した試料に酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等の内部標準物質を所定量添加し、メノウ乳鉢で十分混合したのち、粉末X線回折測定を実施する。 測定結果を定量ソフトで解析し、ガラス化率を求める。 定量ソフトには、Sietronics社製の「SIROQUANT」等を用いることができる。
    本発明のカルシウムアルミノシリケートは、セメントクリンカーを粉砕することにより製造することも可能である。 カルシウムアルミノシリケートは、カルシウムアルミノシリケートの化学組成が、CaO、Al 、SiO 、MgO、及びZrO の合計中、CaOが25〜55部、Al が16〜39部、SiO が26〜40部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜4部を含有するものであり、CaOが27〜53部、Al が17〜39部、SiO が26〜38部、MgOが0〜1部、ZrO が0〜3部を含有することが好ましい。 この範囲外では十分な流動性、強度発現性、そして寸法安定性が得られなかったり、水和発熱が大きくなったりする場合がある。 MgOは、モルタルコンクリートにしたときの流動性が良好となったり、圧縮強度の向上を図ったりするため、0.05部以上を含有することが好ましい。 ただし、MgOが1部を超えると、自己収縮が大きくなるばかりでなく、熱中性子によって短寿命核種である24 Na(半減期T 1/2 =4.96時間)が生成するため、好ましくない場合がある。
    一方でZrO は、熱中性子の吸収断面積が小さいために放射化しなかったり、モルタルコンクリートにしたときの流動性が良好となったり、流動性や圧縮強度の向上を図ったりするため、0.5部以上を含有することが好ましい。 ただし、ZrO が4部を超えると、自己収縮が大きくなるため、好ましくない場合がある。
    また、本発明のカルシウムアルミノシリケートの特性を損なわない範囲内で、未反応のCaO(遊離酸化カルシウム)や未反応のAl 、あるいはダイカルシウムシリケート(2CaO・SiO )やゲーレナイト(2CaO・Al ・SiO )を少量含有することも可能である。 ただし、カルシウムアルミノシリケートの最終製品となったときに、未反応のCaO(遊離酸化カルシウム(遊離石灰))は、カルシウムアルミノシリケー

    【0013】
    メノウ乳鉢で十分混合したのち、粉末X線回折測定を実施した。 測定結果をSietronics社製定量ソフト「SIROQUANT」で解析し、ガラス化率を求めた。

    【0014】

    【0016】

    【0018】
    社製、ACM−202L型)を用いて、打設温度20℃の条件で、材齢7日まで測定した。 測定では砂と砂利を使用した。

    QQ群二维码
    意见反馈