Processing method of the ceramic substrate and improved thin film magnetic recording head

申请号 JP2000617148 申请日 2000-05-01 公开(公告)号 JP4947838B2 公开(公告)日 2012-06-06
申请人 グリーンリーフ テクノロジー コーポレイションGreenleaf Technology Corporation; 发明人 アーン,ジャンジー;
摘要
权利要求
  • 磁気記録ヘッドであって、
    セラミック材料からなる基板であって、端面及び磁気記録媒体に対向する面を有し、前記端面に、電気抵抗率が前記基板の他の部分よりも高い一体の領域を含む基板と、
    基板の前記端面に形成された、少なくとも1つのセンサー要素を有する層と、を具えて おり、
    前記一体の領域により、前記端面と前記少なくとも1つのセンサー要素を有する層とが電気的に絶縁されている磁気記録ヘッド。
  • 前記一体の領域の電気抵抗率は、基板の前記他の部分の電気抵抗率よりも 1×10 7 以上大きい請求項1の磁気記録ヘッド。
  • センサー要素は磁極である請求項1の磁気記録ヘッド。
  • 前記一体の領域の表面の電気抵抗率は、10 5 ohm-cm以上である請求項1の磁気記録ヘッド。
  • 前記一体の領域の厚さは、約100Å〜約1000Åの範囲である請求項1の磁気記録ヘッド。
  • セラミック材料はカーバイド材料を含んでいる請求項1の磁気記録ヘッド。
  • セラミック材料は、炭化ケイ素、炭化チタン及び炭化ホウ素からなる群から選択される少なくとも一種の材料を含んでいる請求項6の磁気記録ヘッド。
  • セラミック材料は、アルミナと炭化チタンを含んでいる請求項7の磁気記録ヘッド。
  • セラミック材料は、アルミナを約60〜約80重量%、炭化チタンを約20〜40重量%含んでいる請求項8の磁気記録ヘッド。
  • 電気抵抗率の高い前記一体の領域は、基板の前記他の部分よりも炭化チタンが少ない請求項8の磁気記録ヘッド。
  • 電気抵抗率の高い前記一体の領域は、SiO X (但しx≦2)、オキシフッ化アルミニウム錯体、酸化チタン錯体及びAlF 3のうちの少なくとも一種を含んでいる請求項10の磁気記録ヘッド。
  • 電気抵抗率の高い前記一体の領域は、イオンを基板に衝突させることにより形成される請求項1の磁気記録ヘッド。
  • イオンは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ハロゲン化合物、ケイ素及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも一種のイオン源から得られる請求項12の磁気記録ヘッド。
  • 磁気記録ヘッドを含む磁気メモリデバイスであって、前記磁気記録ヘッドは、
    セラミック材料からなる基板であって、端面及び磁気記録媒体に対向する面を有し、前記端面に、電気抵抗率が前記基板の他の部分よりも高い一体の領域を含む基板と、
    基板の前記端面の少なくとも一部分に形成された、少なくとも1つの磁極を有する層と、を具え
    前記一体の領域により、前記端面と前記少なくとも1つの磁極を有する層とが電気的に絶縁されている磁気メモリデバイス。
  • 前記一体の領域の電気抵抗率は、基板の前記他の部分の電気抵抗率よりも 1×10 7 以上大きい請求項14の磁気メモリデバイス。
  • 高い電気抵抗率を有する前記一体の領域は、基板にイオンを衝突させることによって形成される請求項15の磁気メモリデバイス。
  • 磁気記録媒体をさらに具えており、前記磁気記録ヘッドは、磁気記録媒体の読出し及び磁気記録媒体への書込みのうちの少なくとも一方を行なう請求項15の磁気メモリデバイス。
  • 磁気メモリデバイスを具える電子デバイスであって、前記磁気メモリデバイスは磁気記録ヘッドを含んでおり、前記磁気記録ヘッドは、
    セラミック材料からなる基板であって、端面及び磁気記録媒体に対向する面を有し、前記端面に、電気抵抗率が前記基板の他の部分よりも高い一体の領域を含む基板と、
    基板の前記端面の少なくとも一部分に形成された、少なくとも1つの磁極を有する層と、を具えて おり、
    前記一体の領域により、前記端面と前記少なくとも1つの磁極を有する層とが電気的に絶縁されている、電子デバイス。
  • 磁気メモリデバイスを製造する方法であって、
    セラミック基板を形成し、
    ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ハロゲン化合物、ケイ素及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも一種のイオン源からのイオンを用い、前記セラミック基板の表面に対して、イオン注入及びプラズマ浸漬のうちの少なくとも一方を施すことにより、基板の表面から基板の内部に亘る領域に、基板の前記表面で測定したときの電気抵抗率が10 5 ohm-cm以上である変質領域を形成し、
    セラミック基板の前記表面の少なくとも一部分に少なくとも1つの磁極を形成する、ことを含んでいる方法。
  • イオンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ケイ素、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びフルオロシラン(SiF 4 )からなる群から選択される少なくとも一種のイオン源からのイオンを含んでいる請求項19の方法。
  • イオン注入は、約10 14 〜約10 18イオン/cm 2の量のイオンを、セラミック基板の少なくとも一部分に衝突させることを含んでいる請求項19の方法。
  • 変質領域は、セラミック基板の約100Å〜約1000Åの深さまで形成されている請求項19の方法。
  • セラミック基板は、アルミナと炭化チタンを含み、変質領域は、基板の他の部分よりも炭化チタンが少ない請求項19の方法。
  • イオンは、SiF 3 +を含み、変質領域は、SiO X (但しx≦2)、オキシフッ化アルミニウム錯体、酸化チタン錯体及びAlF 3のうちの少なくとも一種を含んでいる請求項23の方法。
  • セラミック基板は、薄膜磁気記録ヘッドの基板である請求項19の方法。
  • 磁気メモリデバイスを製造する方法であって、
    アルミナ及び炭化チタンを含むセラミック基板を形成し、
    フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ハロゲン化合物、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、酸素、ケイ素及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも一種のイオン源からのイオンであって、約10 14 〜約10 18イオン/cm 2の量のイオンを、約1〜約150KeVのエネルギーにて、前記セラミック基板の表面の少なくとも一部分に衝突させることにより、基板の表面から基板の内部に亘る領域に、基板の前記表面で測定したときの電気抵抗率が10 5 ohm-cm以上、厚さが約100Å〜約1000Åである変質領域を形成し、
    セラミック基板の前記表面の少なくとも一部分に少なくとも1つの磁極を形成する、ことを含んでいる方法。
  • 薄膜磁気記録ヘッドを作製する方法であって、
    端面及び磁気記録媒体に対向する面を有するセラミック基板を形成し、
    該セラミック基板の前記端面に、イオン注入及びプラズマ浸漬のうちの少なくとも一方を施すことにより、セラミック基板の前記端面から内部に向かって電気抵抗率の高い領域を形成し、
    セラミック基板の前記端面の少なくとも一部分に少なくとも1つの磁極を含む層を形成する、ことを含んでいる方法。
  • 前記領域の表面で測定された電気抵抗率は10 5 ohm-cm以上である請求項27の方法。
  • イオン注入及びプラズマ浸漬のうちの少なくとも一方を施す工程は、
    ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、酸素、ハロゲン化合物、ケイ素及びアンチモンからなる群から選択される少なくとも一種のイオン源からのイオンであって、セラミック基板を表面から約100Å以上の深さまで化学的に変質させるのに有効な量のイオンを、前記セラミック基板の少なくとも一部分に衝突させることを含んでいるセラミック28の方法。
  • イオンは、エネルギーが約1〜約150KeVの範囲である請求項29の方法。
  • セラミック基板は、アルミナ及び炭化チタンを含んでおり、
    イオンは、少なくとも一種のフッ素化合物からのイオンを含んでおり、
    化学的変質領域は、セラミック基板の他の部分よりも炭化チタンが少ない請求項30の方法。
  • 化学的変質領域は、SiO X (但しx≦2)、オキシフッ化アルミニウム錯体、酸化チタン錯体及びAlF 3のうちの少なくとも一種を含んでいる請求項31の方法。
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の分野】
    本発明は、セラミック基板の少なくとも一部の領域の電気抵抗率(electrical resistivity)を高める方法に関する。 本発明はまた、本発明の方法によって電気抵抗率が高められた領域を有するセラミック基板に関する。 さらにまた、本発明は、インダクティブセンサー又は磁気抵抗センサーを有し、電子層がセラミック材料の基板の領域に形成され、該領域は主としてセラミック材料からなる基板の残部よりも電気抵抗率が高い薄膜磁気記録用ヘッドに関する。 電気抵抗率の高い領域は、本発明の方法によって形成される。
    【0002】
    本発明の方法は、セラミック基板の少なくとも一部の領域の電気抵抗率を高めることが望まれるいかなる分野にも適用できる。 本発明の方法の具体的適用例として、インダクティブ及び磁気抵抗(AMR、巨大磁気抵抗、又はスピンバルブ)薄膜磁気記録ヘッドの製造における例が挙げられる。
    【0003】
    【発明の背景】
    セラミック材料は、インダクティブ及び磁気抵抗薄膜磁気記録ヘッドの基板として一般的に用いられる。 これらセラミック材料の一例として、主にアルミナ(Al 23 )及び炭化チタン(TiC)から構成されるものがある。 このタイプのセラミック材の具体例はAlTiCであり、これは、約60〜80重量%のアルミナと約20〜40重量%の炭化チタンと、少量のその他成分を含んでいる。 AlTiCは、記録用ヘッド及びその空気軸受面(Air Bearing Surface; ABS)を形成するための幾つかの加工工程(スライシング、ラッピング、ポリッシング等)において、すぐれた加工性をもたらす。
    【0004】
    一般的に、薄膜磁気記録ヘッドは次の要領にて作られる。 ヘッド製造における基板として用いられるAlTiC又は他のセラミック材料は、典型的には、ウエハつまり「パック(puck)」の形態で提供される。 未加工のウエハの表面に対し、典型的には、シード層の形成、ホトレジスト、パーマロイの電解めっき、レジストの剥離、シード層の除去、スパッタコーティング、金属及び絶縁膜の除去の工程のうち1又は2以上の工程を含むリソグラフィー法を用いることにより、一連の薄膜層が形成される。 ウエハの上に形成された薄膜層は、記録用ヘッドの磁極要素(magnetic pole elements)を含んでいる。 また、この明細書では、セラミックの基板材料を有する層に対して、ウエハの上に形成された幾つかの薄膜層の全体を「電子層(electronic layer)」と称する。 セラミック基板は、単に電子層を支持するための役割を果たすだけにすぎず、電子的な読出し/書込みには関わらない。 ウエハの上に電子層が形成された後、ウエハは、ウエハの仕上がり厚さ分を所定の間隔をあけて平行にカットすることにより、ロウバー(rowbar)と称される単列のデバイスに分離される。 各ロウバーは、セラミックウエハの一部分と、該ウエハに形成された電子層の部分を含んでいる。
    【0005】
    電子層内の読出し及び書込み用磁極の形態は、ヘッドの適当な性能を得る上で重要である。 各ロウバーは仕上がりウエハからソーカットされた後、トランスファーツールの上に載せられ、ロウバーのソーカットされたエッジ部は注意深くラップされ、電子層の寸法が調節される。 ロウバーの電子層のラップ表面は、磁極チップが露出しており、この表面は、磁気記録用ヘッドの後縁上で、回転磁気媒体の最も近くで飛行するヘッドの作用端(operative end)となる。 ラッピング作業の後、ロウバーの露出したセラミック表面上に、数多くの空気軸受面が形成される。 各ロウバーは、次に、独立したユニットにソーカットされる。 独立ユニットの各々はセラミックウエハの一部分と、その上に形成された電子層の部分を含んでいる。 独立ユニットの各々は、読出し及び書込み用磁極とABSを含んでおり、磁気記録用ヘッド又は「スライダー」と称される。 磁気記録ヘッドがディスクドライブに用いられる場合、サスペンションに搭載される。 ヘッドとサスペンションの組合せは、「ヘッド・ジンバルアッセンブリ」として知られており、ハードディスクドライブの中へ組み込まれる。 サスペンションにより、ピッチ、ロール、垂直、及び磁気記録ヘッドの磁気媒体に対する高さが決まる。 磁気記録ヘッドは、ビデオ又はテープ装置にも用いることはできるが、その場合は、サスペンションに搭載されない。
    【0006】
    磁気記録用ヘッドがサスペンションに搭載されるとき、その向きは、ヘッド・ジンバルアッセンブリがディスク装置に組み立てられたときにABSが磁気媒体に面する向きである。 ABSは、媒体が回転したとき、磁気記録媒体がマイクロインチの間隔で磁気媒体の上を空気力学的に飛行できるようになっており、電子層の磁極を磁気媒体と磁気的に相互作用させることができる。 サスペンションは、電子層が回転磁気媒体の表面に関して磁気記録ヘッドの後縁となるように、磁気記録ヘッドを磁気媒体の上に位置決めする。 磁気記録媒体の後縁位置の磁極と回転磁気媒体の表面との間の距離は、「浮上高さ(flying head)」と称される。 一般的に、浮上高さが低くなると、ヘッドの性能は向上する。
    【0007】
    ウエハを作るためのセラミック材料は、読出し及び書込みの作業中に蓄積される静電気が逸散するように、電気抵抗率は十分に低いものであらねばならない。 例えばAlTiCのように電気抵抗率が十分に低いセラミック材料から作られたウエハは、伝導性が高すぎるため、電子層をセラミック材料の表面に直接形成することができない。 それゆえ、ウエハ材料としてAlTiCを用いた磁気記録ヘッドを製造する際、セラミックウエハと電子層の中間に、アルミナ(典型的にはアモルファスのアルミナ)の厚い電気絶縁層(3〜10μm)が形成される。 電気絶縁層は、一般的に、下地層(undercoat layer)又は基地(basecoat)と呼ばれ、電子層が形成される前にセラミックウエハの表面に形成されなければならない。 下地層の形成はコストが非常に高い。 例えば、AlTiCウエハの上にアルミナの下地層を形成するには、クリーンルームの中で行わねばならず、高価なスパッタリング装置を必要とし、ウエハのスパッタリング装置へのローディングに時間がかかり、このローディングが下地層の形成に重要である。 スパッタリングを行なう間、セラミックウエハは冷されたフィクスチャーの上に置かれる。 ウエハを効果的に冷却するには、ウエハと水冷フィクスチャーとの間に、インジウム−ガリウム液体を手操作で施して熱接触させる。 コーティング工程が終了すると、インジウム−ガリウム液体を手操作でぬぐい取らねばならない。 このインジウム−ガリウム液体の付与及び除去の工程に時間がかかる。 ウエハの表面に液体が残ると、後の工程で汚染の原因となる。 下地層が形成された後、下地表面の全体を、例えばラッピング又は化学機械的ポリッシングにより平坦化せねばならない。 下地層はまた、その露出面の上に電子層を形成する前に、所定の厚さ、表面粗さ及び平坦度に調節せねばならない。 下地層の形成工程は、要求される厚さにより異なるが、10時間も要する。
    【0008】
    図1は、従来の磁気記録ヘッドの一部分を表しており、読出し及び書込みを行なう際の回転磁気媒体に関するヘッドの位置を示している。 磁気記録ヘッド(12)のABS(10)は、磁気媒体(14)に対向している。 磁気記録用ヘッド(12)はAlTiCのセラミック基板(16)と、該基板に形成されたアルミナの下地層(18)と、該下地層(18)の上に形成された電子層(20)を含んでいる。 矢印は、磁気ヘッドに対する磁気媒体(14)の移動方向を示している。 このように、電子層(20)はヘッド(12)の後縁部に形成される。 磁気記録ヘッド(12)の磁気媒体(14)上の浮上高さが測定される位置は、"A"で示している。 アルミナの下地層(18)は一般的にはスパッタリングにより形成され、該下地層はセラミック基板材料(16)よりも柔らかい。 例えば、アルミナの下地層の硬さの測定値は、AlTiC基板の硬さの約半分である。 それゆえ、ABSと極チップのラッピング中、アルミナ下地層(18)と、該下地層の上で読出し及び書込み用磁極を含む電子層(20)の摩耗は、セラミック層(16)よりも大きい。 図2は、ABS(10')と、アルミナ下地層(18')と、電子層(20')を有する磁気記録用ヘッド(12')を示している。 磁気記録用ヘッド(12')は、回転する磁気媒体(14')の上方に配置される。 ABSと極チップが"X"で示される領域でラッピングが行われるとき、下地層(18')と電子層(20')は、ABS(10')よりも優先的に腐食する。 ABSと極チップのラッピング中、磁極が基板よりも優先的に腐食すると、ABSの表面と、読出し及び書込み磁極のチップとの垂直距離(「極チップ凹み(pole tip recession)」として定義される)が大きくなる。 極チップの凹みが大きくなるにつれて、浮上高さが大きくなる。 例えば、図2の磁気記録ヘッド(12')の浮上高さA'は、極チップの凹み分だけ、図1の磁気ヘッド(12)よりも大きくなる。
    【0009】
    浮上高さが殆んど接触するほどにまで接近すると、極チップ凹みの増加分が、記録ヘッドと磁気媒体との全距離を表すことになる。 それゆえ、ヘッドの性能を向上させるには、極チップ凹みが最小となるようにしなければならない。 極チップのABSに対する凹みが大きすぎると、信号の劣化又は欠落を引き起こす。 磁極が磁気媒体に接触することなく、磁気信号の損失を殆んど起こさない極チップの凹みの最少量がある。 極チップの凹みが許容範囲内にあるかどうかを判断するために、ABSと極チップのラッピング後、全ての磁気記録ヘッドの検査が行われている。 この検査工程は、磁気記録ヘッドの最終製品のコスト高を招き、またヘッドには、検査で不合格となり、廃棄されものもある。
    【0010】
    アルミナ下地層を用いることによる更なる問題は、アルミナ下地層とAlTiC基板との熱膨張係数に差があることである。 更に、アルミナ下地層を基板に形成したとき、ある程度の残留応力が残る。 下地層に残留応力があり、熱膨張に違いがあるため、電子層形成のための加熱(一般的には200〜250℃)中、下地層が反り変形する。 磁気記録ヘッドの業界からは、ウエハの大径化(現在、4インチから6インチへ移行しつつあり、8インチへの移行さえある)と、ウエハの厚さの薄肉化(現在0.080インチから0.052インチへ移行しつつあり、0.030インチへの移行さえある)の要請があるので、アルミナ下地層が形成されたAlTiCウエハに反り変形があると、これら要請に応えることができなくなる。 反り変形のあるウエハからソーカットされたロウバーは屈曲するであろう。 この屈曲が大きすぎると、ロウバーのトランスファーツール上で極チップのラッピングを行なうことが困難又は不可能となる。 反り変形が大きなアルミナ下地層が形成されたウエハから切断された磁気記録用ヘッドは、幾何学的変形が大きすぎて不合格となることがある。 これらの変形は、ツイスト、キャンバー、クラウンなどと称される。
    【0011】
    このように、極チップの凹みを小さくすることができ、ヘッド製造に要する時間及びコストを低減できる磁気記録ヘッドの製造方法が要請されている。 さらにまた、電子層の形成の際、下地層が形成されたウエハに反り変形が生じず、またそのウエハからソーカットされたロウバーに曲がりを生ずることなく、ツイスト、キャンバー又はクラウンを低減できる薄膜磁気記録ヘッドを製造する方法が要請されている。
    【0012】
    【発明の要旨】
    本発明は、基板の少なくとも一部分の電気抵抗率を大きくする方法に関する。 本発明の方法は、セラミック基板の少なくとも一部分に対して、イオン源からのイオンを用いて、イオン注入及び/又はプラズマ浸漬を行なうことを含んでいる。 イオン源は、希ガス、窒素、酸素、ハロゲン、ハロゲン化合物、ケイ素及びアンチモンからなる群から選択される。 イオン注入及び/又はプラズマ浸漬処理により、変質領域(modified region)が形成さる。 該変質領域は、セラミック基板の中へ延びており、基板表面で測定した電気抵抗率の値が、基板の非変質部よりも高くなっている。
    【0013】
    本発明は、例えば、薄膜磁気記録用ヘッドの製造工程に適用することができる。 その場合、適当なセラミック基板が配備され、イオン注入及びプラズマ浸漬のどちらか又は両方がセラミック基板に施され、電気抵抗率が適当に高められた領域が形成される。 少なくとも1つの磁極を具える電子層は、電気抵抗率の高い領域の少なくとも一部分に形成される。 この領域は、電子層をセラミック基板から電気的に絶縁する。
    【0014】
    本発明の方法は、セラミック基板の全部又は一部分に、電気抵抗率が高く非常に薄い(100〜1000Å)層を形成するのに用いられる。 本発明の方法によって作られた電気抵抗率の高い領域は、基板と一体の部分であり、極めて薄い(約100Å)。 発明者は、本発明の方法を用いることにより、セラミック基板の表面の電気抵抗率が少なくとも1×10 7 (seven orders)以上高められること、そして、本発明の方法により、電気抵抗率が1×10 14 もの増加を達成できたことを示した。 従来、薄膜磁気記録ヘッドの作製中にセラミックウエハの電気抵抗率を高めるために、セラミックウエハの上に約3〜10μmのアルミナ層をスパッタコーティングし、次に層表面をラッピングしていたが、本発明の方法を適用することにより、それらは全く不要となる。
    【0015】
    本発明の方法により作り出される電気抵抗率の高い領域は、基板と一体の部分であるので、前述したように、薄膜磁気記録ヘッドの作製に従来用いられていたアルミナ下地層形成による優先腐食の問題は、本発明では解消される。 さらにまた、本発明の方法は、当初の厚さ、平坦度及びセラミックウエハの表面粗さに影響を与えないので、高い電気抵抗率の領域を形成した後に追加の表面仕上げは不要である。
    【0016】
    本発明の方法は、従来の薄膜磁気記録ヘッドの製造技術におけるコストを低減できることは理解されるであろう。 本発明の方法は、ヘッドの不良品の数を少なくすると共に、完成品についてツイスト、キャンバー、クラウンなどの極チップ凹みが合格レベルにあるかどうかを検査することが不要になる。 本発明の方法は、スパッタリング設備並びにその関連設備及び人件費が不要である。 セラミックウエハをイオン注入又はプラズマ浸漬によって処理するので、ウエハをスパッタコーティング及びラッピングするよりもコストは著しく低減される。
    【0017】
    本発明の前記詳細及び利点については、その他のものと同様、発明の詳細な説明又は実施例を参照することによって理解されるであろう。 また、本発明を使用することにより、本発明の追加の詳細及び利点についても理解されるであろう。
    【0018】
    [発明の詳細な説明]
    本発明の方法及び物品については、多くの異なる形態の実施例が可能であるが、この発明の詳細な説明では、発明の実施例として特定の形態についてのみ開示する。 しかしながら、発明は、開示された実施例に限定されるものでなく、発明の範囲は特許請求の範囲の中により良く記載されている。 特に、本発明の方法は、主として、薄膜磁気記録用ヘッドの製造に関して説明するが、ここでの発明の説明に精通した当該分野の専門家であれば、本発明の方法は、セラミック材料からなる物品の少なくとも一部分の電気抵抗率を高めることが望まれるその他の用途に適用できることは理解し得るであろう。 そのような他の適用例はここに十分に記載されていなくても、1又は2以上の請求項によって包含されるものであることは理解されるべきである。
    【0019】
    本発明の方法は、ウエハ、パックの他に、セラミック材料からなる他の物品の少なくとも表面に対して、励起イオン(energized ions)を衝突させることにより、少なくとも一部の領域を、ウエハ、パックその他物品の中まで変質させ、これにより、該領域の電気抵抗率を高めることができる。 そのような領域は、ウエハ、パック又はその他物品の表面の少なくとも一部分を含むことは勿論である。 この方法は、イオン注入又はプラズマ浸漬技術のどちらかにより実行することができる。 イオン注入は、見通しのきくラインオブサイト処理技術であり、プラズマ源から放出されたエネルギーイオンのビームは、注入されるべき固体の表面に向けて加速される。 固体表面に高エネルギーで衝突する(bombarding)イオンは、固体の表面下の領域内に入る。 この結果、表面下領域の原子組成及び格子構造は変質するが、その際、表面粗さ、寸法特性及びバルク材料特性は影響を受けない。 プラズマ浸漬は、見通しが不可能(non-line-of-sight)な技術であり、固体ターゲットはプラズマ中に浸漬され、プラズマ電位よりも高い負電圧へのパルス偏向が繰り返される。 プラズマシーズが固体の周囲に生成し、イオンはシースの電界を通って加速する。 プラズマシースは、保護されていない固体の全ての露出表面に、イオンと同時に衝突する。 それゆえ、イオン源からのイオンが加速され、固体の1又は2以上の表面に衝突させられ、固体の表面下の領域内に注入されるという点において、両技術は本質的に同一である。
    【0020】
    本発明の方法に用いられるイオン注入及びプラズマ浸漬技術は、公知の要領にて実施されるが、イオンの種類、注入量及びエネルギー等のパラメータに関しては、以下に説明する。 イオン注入とプラズマ浸漬は両方とも周知のプロセスであり、当該分野の専門家であれば、本発明の説明を参照することにより、どちらの方法も特別の経験を必要とすることなく完全に実施することができるであろう。 それゆえ、イオン注入及びプラズマ浸漬についての詳細な説明はここでは省略する。
    【0021】
    薄膜磁気記録ヘッドの製造に適用されるとき、本発明の方法は、下地層の形成と平坦化の工程に取って代わるものである。 それゆえ、ヘッドを作製するためのセラミックウエハの領域に本発明の方法が実施された後、1又は2以上の磁極を含む電子層が、本発明の方法によって処理されるウエハの露出された表面領域に直接形成される。
    【0022】
    本発明の方法により電気抵抗率が高められたセラミック材料は、何らかのカーバイド(炭化物)材料を含有する材料である。 そのようなカーバイド材料の例として、炭化ケイ素、炭化チタン及び炭化ホウ素が挙げられる。 当該分野の専門家であれば、その他のカーバイド材料をセラミック材料に含有できることは理解されるであろう。 本発明が使用できるセラミック材料には、例えばAlTiCのように、薄膜磁気記録ヘッド製造における基板として用いられるセラミック材料も含まれる。 本発明の方法におけるイオン注入及びプラズマ浸漬技術に用いることのできるイオンとして、希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン及びキセノン)、窒素、酸素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、ハロゲンの化合物、ケイ素及びアンチモンのうちのどのガスから得られたイオンであってよい。 前記イオン源の一種又は二種以上のイオンを、本発明の方法に用いることができると考えられる。 本発明の方法に有用なイオン源であるハロゲン化合物として、例えば、フルオロシラン(SiF 4 )及びBF 3を挙げることができる。 SiF 4から得られるイオンであって、本発明の方法に用いられるイオンの例として、SiF 3 + 、SiF 2 + 、SiF + 、Si + 、F +及びSi 2+を挙げることができる。 励起イオンを基板に衝突させることにより、イオンの少なくとも一部分は基板の中に入り、これにより、基板の他の部分と比べて物理的及び/又は化学的に変質した変質領域が基板内に形成される。 電気抵抗率は、この変質によって高められるものと考えられる。
    【0023】
    本発明の方法において用いられるイオン注入及びプラズマ浸漬技術は、有効と考えられるイオン注入量及びエネルギー範囲によって特徴づけられ、薄膜磁気記録用ヘッドの電子層が該ヘッドのセラミック基板と電気的に十分に絶縁される値まで、セラミック基板の表面の電気抵抗率は高められる。 イオン注入量の範囲が約10 14 〜約10 18イオン/cm 2であれば、電子層とセラミック基板を十分に絶縁するのに十分な電気抵抗率が得られる。 妥当なコストによって十分な電気抵抗率向上効果を得るには、イオン注入量の範囲は約10 15 〜約10 17イオン/cm 2であることが好ましい。 イオンエネルギーは、約1〜150KeVの範囲のとき、十分な電気抵抗率が得られると考えられ、約10〜約75KeVの範囲が望ましい。 本発明に用いられる注入及び浸漬技術の実際の効果は、処理パラメータ(イオン源、注入量及びエネルギーを含む)の具体的な組合せに依存することは理解されるであろう。 それゆえ、当該分野の専門家であれば、特別の経験がなくても、処理される表面の電気抵抗性を適当に高めることができるパラメータの組合せを決定することができるであろう。
    【0024】
    本発明の方法を用いて作られた磁気記録用ヘッドは、アルミナの下地層を設ける必要はない。 本発明の方法を用いて作られた磁気記録用ヘッドは、前記下地層の代わりに変質領域を含んでおり、これは、セラミック基板と一体の部分であるが、セラミック基板の変質領域以外の非変質領域と比べて、電気抵抗率が著しく高くなっている。 これは、公知の薄膜磁気記録ヘッドのものと異なる。 公知の薄膜磁気記録ヘッドは、別個に形成されたアルミナの下地層を含んでいる(この下地層は、基板と一体の部分ではない)。
    【0025】
    図面を参照すると、図3は、本発明の方法を用いて作られた薄膜磁気記録用ヘッド(100)を示している。 磁気記録用ヘッド(100)は、セラミックの基板部(105)と電子層(110)を含んでいる。 電子層(110)は、リソグラフィ技術によりセラミックウエハの表面(ヘッド内における元のウエハ表面の位置は符号(114)で示される)に形成された読出し及び書込み用の磁極(図示せず)を含んでいる。 それゆえ、セラミックウエハの当初の厚さは、寸法"A"で表される。 磁気記録用ヘッド(100)はサスペンションに取り付けられて、ヘッド・ジンバルのアッセンブリが得られる。 ヘッド(100)の向きは、ABS領域(120a)(120b)(120c)が、回転磁気媒体と対向する向きになっている。 ABS領域(120a)(120b)(120c)の境界は、電子層(110)の一部分と、セラミック基板部(105)の表面(116)の一部分に対してイオンミリング又は反応性イオンエッチングを施すことにより、セラミック基板部(105)の中に形成された凹部(122)により定められる。 ABSの形状は、各々のヘッド製造メーカーによって異なる。 図3に示されるABSは、単なる例示であって、発明の範囲を限定するものではない。
    【0026】
    従来の方法で作製された薄膜磁気記録ヘッドは、ヘッドの電子層とセラミック基板部との中間に、典型的には3〜19μmの電気絶縁用下地層を有している。 これに対し、本発明の磁気記録ヘッド(100)のセラミック基板部は、図3に示されるように、ハッチング(124)で示される変質領域を含んでおり、該領域はセラミック基板部(105)の他の部分よりも電気抵抗率が著しく高くなっている。 領域(124)はセラミックウエハの表面に本発明の方法を適用することによって形成される。 本発明の方法は、セラミックウエハに適用した後に、電子層を形成する工程、ロウバーに分割する工程、ABS及び極チップのラッピング工程、ABS形成工程、及び個々の磁気記録ヘッドに分離する工程がある。 図3における領域(124)の厚さは、その位置を誇張して示してある。 実際の厚さは約100Å以下である。 領域(124)は、磁気記録ヘッド(100)の電子層(110)を、セラミック基板部分から電気的に絶縁する。 本発明の方法によって電気抵抗率の高い領域を形成することにより、アルミナの下地層を設ける必要がなくなり、また、下地層を平坦化する工程が不要となるから、ABS及び極チップのラッピング工程において、極チップに大きな凹所が形成されることはない。
    【0027】
    本発明の方法を用いて作られた磁気記録ヘッドは、磁気メモリデバイス(例えば、ハードディスクドライブのように、磁気データの格納及び検索デバイス)の中に、ヘッド・ジンバルアッセンブリの構成要素として組み込むことができる。 そのような磁気メモリデバイスは、電子デバイスに組み込むことができる。 ここで用いられる「電子デバイス(electronic device)」とは、ヘッドがサスペンションの上に搭載されるかどうかとは関係なく、本発明の方法を用いて作られた磁気記録ヘッドを組み込んだデータ格納デバイスを含む全てのデバイスを意味するものとする。 そのような電子デバイスの例として、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、ハンドヘルドなど)、ビデオプレーヤ及びレコーダ、デジタルカメラ、及び携帯電話などを挙げることができる。 このように、本発明は、本発明の方法により作られたヘッド及びここに定義した電子デバイスを含む磁気メモリデバイスに関するものでもある。
    【0028】
    本発明の利点を明らかにするために、直径125mm、厚さ1.2又は2.0mmのAlTiCウエハを、イオン注入を用いた本発明の方法により、様々なイオン源を用い、イオン注入量及びエネルギーを変えて処理した。 イオン注入は、バリアンXPシリーズ120−10注入機を用いて行ない、各ウエハにイオン注入した。 基板処理技術に関する専門家であれば、このような注入機の使用要領を知っているので、ここでの説明は省略する。 ウエハはペンシルベニア州シーガータウンのグリーンリーフ・コーポレイションから入手したGS−1材で作られたものである。 GS−1材は、薄膜磁気記録ヘッド用のセラミック基板材として用いられることを企図している。 GS−1材は薄膜磁気記録ヘッド用基板材として一般的に使用されている材料と組成は同一である。 未加工のGS−1は下記の特性及び組成を有する:
    密度 4.25g/cc
    硬度 1954Hv
    電気抵抗率 0.008ohm−cm
    曲げ強さ 835MPa
    ヤング率 386×10 3 MPa
    破壊靱性 4.6MPa/√m
    熱膨張 7.5ppm/℃
    熱伝導率 17.4W/m o
    平均粒度 0.9μm
    光学指数(λ=546nm) n=2.204,K=0.402
    組成Al 23 66重量%
    TiC 30重量%
    ZrO 2 4.0重量%
    MgO <0.3重量%
    【0029】
    表1は、幾つかの供試ウエハと、イオン注入のために用いたパラメータを示している。 このパラメータには、注入イオンのイオン源、イオン注入量及びイオンエネルギーが含まれる。 処理が施されたウエハ表面のイオン注入後における電気抵抗率を記している。 電気抵抗率は、ウエハ表面とほぼ完全に電気接触させるための水銀毛細管を用いた水銀プローブ装置により測定した。 電気抵抗率の測定では、イオン注入により、各ウエハ内に、平均で約100Å厚さの高電気抵抗率の層が生成されたものと仮定している。 この仮定の正確さは、処理を施したウエハについて行なった他の分析結果から確認された。 表1に報告した電気抵抗率の値は、処理が施されたウエハ上の幾つかの点における抵抗率の測定値の平均である。
    【0030】
    薄膜磁気記録ヘッドの電子層の作製には、典型的には、200〜250℃の高温で行われる幾つかの薄膜加工工程が含まれる。 従って、この方法によって高められた電気抵抗率は、高温の加工温度でも維持され、元に戻らないことが重要である。 本発明の方法によって増大した電気抵抗率が、ウエハが高温に晒された後でも維持されているかどうかを調べるために、表1の供試ウエハを高温に晒し、室温まで冷却した。 処理が施された表面の熱処理後の電気抵抗率を、水銀プローブ装置を使用して再度測定した。 表1中、「HT1」と記載している第1の熱処理は、260℃の大気雰囲気中で2時間加熱した後、室温まで冷却したものである。 表1中、「HT2」と記載している第2熱処理は、大気雰囲気の石英水銀灯の下で、10秒間急速加熱した後、室温まで冷却したものである。 ウエハ表面に配置された熱電対は600℃の一定温度を示した。 試験後の各ウエハについて、熱処理後の電気抵抗率を表1に記載している。
    【0031】
    【表1】

    【0032】


    表1のデータを参照すると、本発明の方法により、セラミックウエハの表面で測定した電気抵抗率が非常に大きくなっていることを示している。 未加工のGS−1材の値0.008ohm-cmからの抵抗率の増加は、約

    1×10

    7

    以上であり、

    1×10

    14

    もの増加が達成されたものもある。 イオン注入に使用された各種のイオンは電気抵抗率を大きく高め、薄膜磁気記録ヘッドの電子層とセラミック基板の導電性部分とを適当に電気的に絶縁することのできる電気抵抗率が得られた。 フルオロシラン(SiF

    4 )をイオン源とするイオンは、イオンの注入量とエネルギーを変えて行なった各試験において、特に高い電気抵抗率をもたらした。 イオン注入工程でも、ウエハの寸法変化や、イオン注入されたウエハ表面の平坦度及び粗さに対する影響は観察されなかった。


    【0033】


    熱処理実験の結果に示されるように、本発明の方法によって処理されたウエハは、前記の高温におかれた後でも、高い抵抗率を維持した。 なお、ここでのウエハの熱処理条件は、電子層の形成中にウエハが晒される条件と同等か又はそれ以上に過酷なものである。 熱処理後の各ウエハは、薄膜磁気記録ヘッドの製造の際にも、電気抵抗率の十分高い状態を維持した。 実際、イオン注入されたNo.2〜9の供試ウエハの電気抵抗率は、熱処理により上昇した。 アンチモンをイオン源とするイオンが注入されたウエハの電気抵抗率は僅かに低下したが、それでも約8×10

    5 ohm-cm以上あった。


    【0034】


    本発明の方法によって注入されたGS−1ウエハの化学的又は物理的な変化の性質を調べるために、GS−1材のウエハの処理後の組成及び化学的性質を、SiF

    4をイオン源とするSiF

    3

    +イオンの注入深さの関数として特徴付けられるかを調べた。 より具体的には、二次イオン質量分析(SIMS)及びX線光電子分光/電子分光化学分析(XPS/ESCA)の技術を用いて、表1中、イオン注入されたNo.18の供試ウエハを調べた。 また、XPS/ESCAを用いて、表1中、イオン注入と熱処理が施されたNo.19の供試ウエハを調べた。 No.18とNo.19のウエハのイオン注入は、同一条件(イオン源SiF

    4 、イオン注入量4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギー12.5KeV)で行ない、No.19のウエハについては、その後に、600℃、10秒間の熱処理を施した。 No.18とNo.19のウエハについて、SIMS及びXPS/ESCA分析の結果は同じであった。


    【0035】


    SIMS技術のPHI6700四極質量分析計を用いて、No.18のウエハの処理表面の近傍におけるフッ素及びケイ素の分布形態を調べた。 また、炭化チタン(TiC)及びアルミナ(Al

    2

    3 )のマトリックスを表すために、アルミニウム、チタン、炭素及び酸素をモニターした。 Ti+O及びTi+Cの分子結合についてもモニターした。 図4は、No.18のウエハへの注入深さと、前述した全てのモニター対象の相対イオン信号との関係をプロットしたものである。 図5は、ケイ素及びフッ素の原子濃度と、深さに対してプロットしたものである。 深さゼロは、本発明によってSiF

    3

    +イオンを衝突させたウエハの表面を表している。 原子C信号は、表面から100Åのところに炭素の欠乏(depletion)があることを示している。 Ti+C曲線もまた、表面付近に炭素の欠乏があることを示唆している。 O曲線とTi+O曲線は、TiCの代わりの表面酸化物の可能性があることを示唆している。 Si曲線とF曲線は、イオンが単一で滑らかな状態に分配されるのではなく、2つの明確なピークがあることを示している。 ピークの1つは表面酸化物の領域に現れている。 他方のピークはより深いところにあり、表面酸化物の領域を越えて、AlTiC基板材の内部にある。


    【0036】


    また、SIMS技術をNo.18ウエハの非処理裏面に適用し、図4に示されるように、ウエハの処理面と表面下領域の組成を比較した。 図6は、二次イオン信号と、処理されていない裏面の表面及び表面下領域の深さの関係をプロットしたものである。 図4と図6の違いは、表面からの二次イオン信号と、処理されていない裏面の深さとの間に本質的に変化がないという点において顕著である。


    【0037】


    また、XPS/ESCA技術を用いて、GS−1材を処理した後のNo.18及びNo.19のウエハの組成及び化学的性質を、深さの関数として評価した。 約10μmのスポットサイズに集束できるX線源を有する物理エレクトロニクス量子(Phisical Electronics Quantum)2000 ESCAシステムを使用して、スペクトルを獲得した。 サーベイスペクトル、高解像度スペクトル、合成(montage)プロット及び深さプロットを作製し、これを評価した。 深さプロフィールは、獲得サイクルをスパッタサイクルと交換することによって獲得した。 スパッタサイクルの間、4KeV Ar

    +イオンを用いて、処理後の供試ウエハから材料を除去した。 炭素、酸素、アルミニウム、チタン、フッ素及びケイ素の元素を、XPS/ESCA技術によって約170Åの深さまで追跡した。 No.19のウエハにおけるこれらの元素の元素濃度をスパッタ時間/深さの関数として、表2に示している。


    【0038】


    【表2】


    【0039】


    XPS/ESCA分析により得たNo.19のウエハの合成プロットは、炭素、酸素、フッ素、アルミニウム、ケイ素及びチタンの各々について濃度プロフィールを示しており、それらは図7乃至図12に示されている。 モンタージュプロットのy軸上に示されるカウント数/秒(c/s)の値は、Ar

    +イオンによって取り除かれるときの各ウエハ領域内の元素濃度に比例する。 x軸上に示される結合エネルギーは、分析領域内における元素の化学的状態を示す。 z軸はウエハ内の深さを示す。 当該分野の専門家であれば、図7乃至図9の「1s」は、検出された元素の1s軌道の原子中の電子からの信号を用いて、これらのグラフが作成されたことを意味すること、また、図10乃至12の「2p」は、検出された元素の2p軌道の原子中の電子からの信号を用いて、図10乃至図12のグラフが作成されたことを意味することを、理解し得るであろう。


    【0040】


    No.18及びNo.19のウエハのXPS/ESCA分析結果によれば、チタンは表面下領域(約100Å深さ)にて、酸化チタン錯体Al

    x Ti

    y

    zを主体として存在しており、少量のTiO

    2及びTiC/TiOも検出された。 酸化チタン錯体(Al

    x Ti

    y

    z )は試料の内部に存在しており、約100Åよりさらに内部では、チタンが、主にTiC/TiOとして観察された。 分析によれば、両試料の表面下領域の全体を通じて、無機フッ化物と同じ形態のフッ素が存在するのが明らかになった。 また、結合エネルギーが形態SiO

    x (但しxは2より小さい)の中間酸化物と一致するとき、ケイ素は表面で検出された。 この形態のケイ素は電気絶縁体として作用する。 アルミニウムは、試料表面のフッ化物形態(例えばAlF

    3 )と一致しており、これは、内部の酸化アルミニウム形態へ徐々に遷移した。 様々な量のオキシ-フッ化アルミニウム(aluminum oxy-fluoride)が、表面のフッ化物形態(AlF

    3 )と、最も内部で観察される酸化物形態との間にて、Al

    x

    y

    z形態で存在していた。


    フッ化アルミニウムは非常に強い電気絶縁体であり、オキシ-フッ化アルミニウムもまた電気絶縁作用を有している。 2つのウエハ試料中で検出された炭素の形態及び量は、外部からの有機汚染物(炭化水素及び炭素の酸素官能性を含む)と一致した。 例えば、図7を参照すると、初期炭素(initial carbon)の大きなピークが現れている。 しかしながら、表面下では、炭素はカーバイドとして検出された。 この炭素プロフィールのデータは、表面近傍の炭化物は、内部で検出された炭化物よりも、濃度が小さいことを意味する。 図7を参照すると、炭素汚染物より下の表面下領域では、炭素量が明らかに少なくなっている。 ケイ素は、酸化物と同じ形態でウエハ試料の表面下領域に存在することがわかった。 また、SiO

    2との類似性は、表面データが示唆するサブオキサイド錯体(sub-oxide complex)よりも近かった。 フッ素とケイ素は両方とも、約170Åの深さのところまで維持されることが判った。


    【0041】


    前記分析結果によれば、No.18及びNo.19の条件のもとで、GS−1ウエハにSiF

    3

    +イオンをイオン注入することにより、表面下に化学的変質領域が生成される。 この化学的変質領域は、オキシ-フッ化アルミニウム錯体(Al

    x

    y

    z )、酸化チタン錯体(Al

    x Ti

    y

    z )、及び酸化ケイ素又はケイ素のサブオキサイド(SiOx、但しx≦2)を含んでいる。 イオン注入により、表面下領域のTiC含有量が少なくなり、これによって、ウエハ表面及び表面下領域の電気抵抗率が大きくなる。


    【0042】


    本発明の方法によってウエハを処理したとき、ウエハの電気抵抗率が大きくなるのは、イオン注入及び/又はプラズマ浸漬によって表面下に変質領域が生成するためであり、処理後のウエハの表面に生成される酸化ケイ素(SiO

    2 )によるものでないことを確かめるための調査を行なった。 No.18のウエハ(イオン注入により、電気抵抗率の測定値が約10

    11 ohm-cmである)の処理面を、約100Åの深さまでエッチングした。 エッチングにより、全ての酸化物と、ウエハ表面下の変質領域の一部分が除去された。 処理面のエッチング後の電気抵抗率は、約10

    7 ohm-cmまで低下したことが観察された。 これは、未加工のGS−1材の電気抵抗率0.008ohm-cmより約

    1×10

    9

    も大きい。 このように、本発明の方法によって電気抵抗率が増加するのは、ウエハの処理面に形成される表面酸化物だけによるものでないことがわかる。


    【0043】


    発明者はまた、本発明の方法により更なる利点がもたらされるものと考えている。 本発明の方法によって形成された変質領域は、アルミナの下地層を有するAlTiCウエハよりも熱伝導率が高い。 近年、浮上高さの低い磁気抵抗(MR)ヘッド及び巨大磁気抵抗(GMR)ヘッドが発達したことにより、ディスクドライブの磁気媒体の面積密度が著しく増大した。 しかしながら、MR及びGMRヘッドは、サーマルアスペリティ(thermal asperities)の問題がある。 これは、ヘッドの磁気抵抗ストライプの温度のスパイクによって生成される過渡抵抗(resistance transients)である。 熱スパイクは、MR又はGMRヘッドの磁気抵抗ストライプが異物又は磁気媒体表面上の隆起した欠陥部と接触したときに生成する。 熱スパイクは、対応する過渡抵抗を生成して、ヘッドの出力に正の過渡電圧(即ち、サーマルアスペリティ信号)を生じさせる。 本発明の方法によってヘッドの一部領域の熱伝導率が増大すると、熱のストライプからの逸散はより速やかに行われるから、磁気抵抗ストライプの全ての熱スパイクは大きさが小さくなる。


    【0044】


    このように、本発明はセラミック基板又はその他物品の電気抵抗率を大きくすることにできる改良された方法を提供するものである。 本発明の適用例として、薄膜磁気記録ヘッド及び該ヘッドを内臓する装置の製造を挙げることができる。 本発明を幾つかの実施例について説明したが、当該分野の専門家であれば、前記の説明を参照することにより、本発明について多くの変形及び変更をなし得ること理解し得るであろう。 特に、本発明の方法の前記適用例では、セラミック基板内にイオンを注入するためにイオン注入を用いたが、プラズマ浸漬についても実質的に同じ結果がもたらされるものと思われる。 本発明に関するその様なすべての変更及び変形は、前記の説明及び特許請求の範囲に含まれるものと解されるべきである。


    【図面の簡単な説明】


    【図1】 従来の磁気記録用ヘッドの一部分であって、回転磁気記録媒体の上方に位置する状態を示している。


    【図2】 従来の磁気記録用ヘッドの一部分であって、回転磁気記録媒体の上方に位置する状態を示すと共に、アルミナ下地層と電子層の優先的腐食によって浮上高さが高くなることを示している。


    【図3】 本発明の方法によって作られた磁気記録用ヘッドを示す図である。


    【図4】 幾つかの化学種の相対イオン信号と、イオン源としてフルオロシランを用いて本発明の方法で処理したセラミックウエハの表面からの深さとの関係を示すグラフである。


    【図5】 ケイ素及びフッ素の原子濃度と、イオン源としてフルオロシランを用いて本発明の方法で処理したセラミックウエハの表面からの深さとの関係を示すグラフである。


    【図6】 幾つかの化学種の相対イオン信号と、図4及び図5の対象セラミックウエハの処理が施されていない裏面からの深さとの関係を示すグラフである。


    【図7】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、炭素濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。


    【図8】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、酸素濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。


    【図9】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、フッ素濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。


    【図10】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、アルミニウム濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。


    【図11】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、ケイ素濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。


    【図12】 イオン源としてSiF

    4イオン、イオン注入量が4×10

    16イオン/cm

    2 、イオンエネルギーが12.5KeVの条件にて本発明の方法でイオン注入したAlTiCウエハについて、チタン濃度と、AlTiCウエハ内部の深さの関数としての結合エネルギーとの関係を合成したグラフである。

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