【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、耐海水性(耐塩水性)に優れた耐海水性地盤改良材に係り、特に、海洋沿岸部あるいは海水含有地盤等の海水や塩水を含有する軟弱地盤の支持力の増加、沈下防止等の目的で、浅層あるいは深層の土のせん断力を高めるために使用するのに適したものに関する。 【0002】 【従来の技術】海洋開発における地盤改良において、ポルトランドセメント系地盤改良材を用いた土質安定処理の構造物基礎本体への採用が増加している。 しかしながら、従来より使用されている普通ポルトランドセメントやポルトランドセメント系地盤改良材を使用した場合、 海水の浸食による強度劣化が指摘されており、海水や塩水に対する抵抗性の大きい地盤改良材の必要性が望まれていた。 【0003】なお、普通ポルトランドセメントやポルトランドセメント系地盤改良材でも、単位セメント量を多くして密実な改良体とすることにより、耐海水性が向上する結果が得られることもあるが、高コスト及び作業性の問題が懸念される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐海水性に優れた地盤改良材を提供することを目的とするものである。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明の耐海水性地盤改良材は、アリナイト(高塩基性カルシウムクロロシリケート)及びベリットを主要鉱物とする特殊なアリナイト含有セメントを主要成分(アリナイト含有セメントの単独使用も含む)とするものである。 (請求項1) そして、上記アリナイト含有セメントは、アリナイト含有量が50〜70重量%、ベリット含有量が15〜25 重量%である。 (請求項2) また、本発明の耐海水性地盤改良材は、上記のアリナイト含有セメントに加えて、高炉水砕スラグ、フライアッシュ等のポゾラン物質を一種以上配合したものである。 (請求項3) なお、本発明の耐海水性地盤改良材は、改良対象土に粉体又はスラリーで混合して、地盤改良を行うことができる。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明の耐海水性地盤改良材は、 アリナイト(高塩基性カルシウムクロロシリケート)及びベリットを主要鉱物とするアリナイト含有セメントを主要成分(アリナイト含有セメントの単独使用も含む) としている。 この特殊なセメントは、現在、主として都市ゴミ焼却灰を原料の一部として製造されている。 【0007】従来のポルトランドセメントまたはポルトランドセメント系地盤改良材を使用して地盤を改良した場合、ポルトランドセメントの組成鉱物であるアリット(3CaO・SiO 2 :C 3 S)及びベリット(2CaO・SiO 2 :C 2 S)が水和することによってCa(OH) 2が生成する。 ここで改良土中に海水(塩水)があると、Ca(OH) 2が海水中(塩水中)の塩素イオンと反応して可溶性のCaCl 2を生成し、その溶出に伴う多孔化現象すなわち強度低下が起こり、さらには硫酸イオンの侵入によってアルミネート相(3CaO・Al 2 O 3 :C 3 A)と反応してエトリンガイトが生成し、膨張による劣化崩壊を招く問題点があった。 【0008】本発明で提供するアリナイト及びベリットを主要鉱物とするアリナイト含有セメントを主要成分とする耐海水性地盤改良材は、ベリットよりも水和活性の高いアリットを含有していないため、Ca(OH) 2の生成を少なくする系の材料である。 つまり、可溶性のCaCl 2の生成を少なくすることによって、改良土の多孔化を抑制する作用を有する。 さらにCa(OH) 2の生成を少なくし、 改良強度を優先させる場合には、耐海水性地盤改良材に対し、高炉水砕スラグあるいはフライアッシュ等のポゾラン物質を10重量%以上、好ましくは30重量%以上配合することも有効である。 一方、硬化速度ならびに固化速度を勘案すると、地盤改良材に対するポゾラン物質の配合量は50%重量以下の範囲内にあることが望ましい。 また、本発明の耐海水性地盤改良材は、C 3 Aを含有していないため、硫酸イオンの侵入によるエトリンガイトの生成を抑制することができ、膨張による劣化崩壊を防ぐ効果も有する。 【0009】本発明の耐海水性地盤改良材を、スラリーにして改良対象土に混合する場合、地盤改良材の使用量は、改良対象土に対して100kg/m 3以上、好ましくは150kg/m 3以上とすることにより、耐海水性が向上し、強度の発現性も良好に改良することが可能である。 【0010】 【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。 試験に用いたアリナイト及びベリットを主要鉱物とするアリナイト含有セメント及び比較用の普通ポルトランドセメントの化学組成、鉱物組成及び性状を表1、表2及び表3に示す。 また、アリナイト含有セメントに配合した高炉水砕スラグの性状を同じく表3に示す。 【0011】 【表1】 【0012】 【表2】 【0013】 【表3】 【0014】改良対象土に栃木県産鉱石粘土を用い、固化処理試験及び耐海水性試験を行った。 試験は、改良対象土に対し100、150及び200kg/m 3の割合のアリナイト含有セメント(表及び図ではAセメントと記す)を、そのまま単独で地盤改良材として、水:地盤改良材=1:1のスラリー状にして、改良対象土に添加、 混合し、これでφ50mm×h100mmの供試体を作製し、この供試体を温度20±3℃、湿度80%の恒温室で湿空養生したもの及び10倍容積の人工海水中で養生したものについて、一軸圧縮強さ試験を実施した。 また、アリナイト含有セメント(Aセメント)と高炉水砕スラグを重量比7:3の割合で混合した地盤改良材についても、改良対象土に対して200kg/m 3の添加割合で同様の試験を実施した。 試験に使用した対象土の性状を表4に、一軸圧縮強さ試験の結果を表5、図1及び図2 に示す。 なお、普通ポルトランドセメント(表及び図ではOPCと記す)を比較用として同様の試験を実施し、 その結果を同じ表5、図1及び図2に示す。 【0015】 【表4】 【0016】 【表5】 【0017】表5及び図1に示すように、湿空養生ではいずれの供試体も一軸圧縮強さが増加しており、材齢一年では普通ポルトランドセメント(OPC)よりもアリナイト含有セメント(Aセメント)及びこれにスラグを30重量%配合した地盤改良材の強度の発現性が良好なことが判る。 一方、人工海水養生では、表5及び図2に示すように、普通ポルトランドセメント(OPC)は、 添加量200kg/m 3の供試体において若干の強度増加がみられたものの、材齢一年では添加量100及び150 kg/m 3の供試体が崩壊しているのに対し、アリナイト含有セメント(Aセメント)及びこれにスラグを30重量%配合した地盤改良材を用いたものでは、強度が低下することなく、強度の発現性が著しく良好なことが判る。 従って、普通ポルトランドセメント(OPC)による地盤改良と同等の強度を得るためには、本発明の地盤改良材は普通ポルトランドセメントよりも少ない添加量ですみ、コスト面のメリットもある。 【0018】 【発明の効果】以上説明したように、本発明のように、 アリナイト及びベリットを主要鉱物とするアリナイト含有セメントを地盤改良材に使用すると、耐海水性を飛躍的に向上させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の耐海水性地盤改良材及び普通ポルトランドセメントを地盤改良に用いた場合の改良土の湿空養生における一軸圧縮強さと材齢の関係を示す図である。 【図2】本発明の耐海水性地盤改良材及び普通ポルトランドセメントを地盤改良に用いた場合の改良土の人工海水養生における一軸圧縮強さと材齢の関係を示す図である。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内田 晃一 千葉県佐倉市大作二丁目4番2号 秩父小 野田株式会社中央研究所内 (72)発明者 礒田 英典 千葉県佐倉市大作二丁目4番2号 秩父小 野田株式会社中央研究所内 |