【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、透明感や重量感があり、浴槽、キッチンカウンターおよび洗面台等に使用される人造大理石用樹脂組成物に関する。 【0002】 【従来の技術】通常、人造大理石は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびアクリル樹脂等の熱硬化性樹脂をマトリックスとし、ガラスフリット、ガラスパウダーおよび水酸化アルミニウム等の充填材とからなるコンパウンドとも言われる樹脂組成物を硬化させて製造される。 【0003】その成形法としては、FRP(ガラス繊維強化ブラスチック)型に先ずゲルコートをスプレイ塗装して硬化加熱炉で一旦硬化させた後、熱硬化性樹脂と充填材とからなるコンパウンドをその型内に注入して再度硬化炉で硬化させる注型法と、予めコンパウンドを増粘させてBMC(バルクモルディングコンパウンド)とし、これを金型内で加熱、加圧成形するプレス法の2つに大別される。 【0004】前者の方法は、例えば人造大理石浴槽一台を成形関始から型から脱型するまでの必要時間(成形時間)は150〜300分を要するのに対し、後者は5〜 15分で成形可能で生産性の高い成形法である。 しかし後者は設備費が前者の10倍以上であるという欠点を有する。 【0005】これら両者の成形法の欠点を解消するための方法として、特開平6−321597号公報には、型にゲルコートを施さずに、熱硬化性重合型不飽和エステル樹脂と水酸化アルミニウムとからなるコンパウンドを注型することによって、40〜60分で成形できる人造大理石成形品を得ることが開示されている。 しかし、不飽和ポリエステル樹脂と水酸化アルミニウムとの組み合わせでは、それぞれの屈折率が異なるために、成形品に透明感、いわゆる深み感が得られないとされている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】良好な人造大理石成形品を最も経済的に製造するためには、基本的には設備費の安価な注型法で且つプレス法並みの時間で成形方法を確立することにある。 そのためには先ずゲルコートを型に施さない注型法を確立する必要がある。 加えて従来の注型法よりも型の温度を高くしてコンパウンドの硬化速度を促進することが必要条件である。 しかし、コンパウンドを型に注入する過程でそれが硬化を開始すると成形品が不良になるため、室温付近で型にコンパウンドを注入し、所定の温度に型を昇温させると従来技術では人造大理石成形品にクラックが発生し、良好な製品が得られない。 この場合、充填材として水酸化アルミニウムを便用したコンパウンドは、ガラスフリットを同重量配合したそれに比較して樹脂硬化時の発熱(重合熱)が抑制され、成形時間は長くなるものの成形品のクラック発生を防止する効果が期待できる。 これは水酸化アルミニウムが水和水および結晶水を持っているため樹脂が硬化する過程の発熱を吸収するためである。 他方ガラスフリットは樹脂の硬化発熱を吸収する作用がないため急速にコンパウンドの硬化が進行し、型の温度を上げて短時間で成形することは成形品にクラックの発生を伴うため従来技術では極めて困難であった。 コンパウンド中の樹脂成分に添加する重合開始剤(硬化剤)を減量したり、重合禁止剤を追添加して樹脂の硬化速度を遅延してその硬化発熱を抑制することは可能であるが、結果として成形時間が長くなるという欠点がある。 【0007】本発明の目的は、安価な型を使用し、且つl5〜30分の成形時間で良好な耐水性、透明感、外観性を有する人造大理石成形品を製造可能な樹脂組成物を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明において、ガラスフリットが水酸化アルミニウムのように樹脂の硬化遅延作用がない点を人造大理石成形品の生産性向上の利点と考え、短時間で成形しても成形品にクラックの発生しない人造大理石用樹脂組成物を完成するに至った。 【0009】すなわち本発明の人造大理石用樹脂組成物は、多価アルコールとα、β−不飽和二塩基酸またはその無水物および飽和二塩基酸またはその無水物とを重縮合して得られる不飽和ポリエステル(A)と重合性単量体(B)とから構成される不飽和ポリエステル樹脂とガラスフリットとからなる人造大理石用樹脂組成物において、前記不飽和ポリエステル(A)に使用される全酸成分中の飽和二塩基酸の割合が40〜60モル%であって、この全飽和二塩基酸成分中の少なくとも50モル% 以上がテレフタル酸である不飽和ポリエステル樹脂(C)100重量部と、充填材として下記の(1)から(4)の条件をすべて満足するガラスフリット(D)1 00〜300重量部を配合したことを特徴とする。 【0010】(1)屈折率が1.53〜1.56の範囲にあること (2)平均粒径が30μm以下であること (3)粒子表面がシランカップリング剤で処理されていること (4)酸化ナトリウムの含有量が5重量%以下であること 本発明の不飽和ポリエステル樹脂中の不飽和ポリエステル(A)を製造するに当たって使用される多価アルコール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、 1、3−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、 ネオベンヂルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジブロモネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、1、4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができる。 α、β−不飽和二塩基酸またはその無水物としてはマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸を挙げることができる。 飽和二塩基酸またはその無水物としてはテレフタル酸の他に、オルソフタル酸およびその無水物、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸およびその無水物、 テトラブロモフタル酸およびその無水物、ジブロモテトラヒドロフタル酸およびその無水物、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、1、3−シクロヘキサンジカルボン酸、アジビン酸、セバシン酸等を挙げることができる。 これらの原料はいずれも単独または複数の組み合わせで使用される。 【0011】重合性単量体(B)としては、スチレン、 p−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、またその一部をジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、 アクリル酸またはメタクリル酸の低級エステル類等で置換してもよい。 【0012】本発明の樹脂組成物には着色のための顔料、消泡剤、内部離型剤、紫外線吸収剤および強度向上用にガラスあるいは有機の短繊維補強材等を混合してもよい。 本発明の樹脂組成物を硬化させる硬化剤はケトンパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類およびパーオキシカーボネート類等の有機過酸化物が単独または複数の組み合わせで使用される。 またナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンおよびジメチルパラトルイジン等の硬化促進剤を併用してもよい。 【0013】本発明の樹脂組成物を用いて加熱注型法で成形するに当たって使用される型の材質はFRP、コアロイ(日邦産業(株)販売)、電鋳、金属溶射およびアルミ鋳造等が挙げられ、これらの材質の型はいずれも安価に入手できる。 これらの材質の型を使用した場合、加熱注型法の成形温度は60〜90℃の範囲が望ましい。 成形温度が60℃より低いとコンパウンドの硬化速度が遅くなり、成形品の生産性が上がらない。 他方90℃より高いとコンパウンドの硬化が急速に進行し、成形品にクラックが発生して艮好な製品が得られないこと、および型の寿命を短縮し経済的でない。 【0014】 【作用】人造大理石成形品は製造時の耐クラック性の改良による生産性向上の他に、該成形品は浴槽、キッチンカウンターおよび洗面台等が主用途なため、透明感、光沢および平滑性等の外観性と、長期間温水に接触することによる耐水性が重要視される。 【0015】不飽和ポリエステル(A)に使用される全酸成分中の飽和二塩基酸の割合が60モル%を越えると該成形品の光沢および耐水性が不十分となる。 また、4 0モル%未満では樹脂組成物の硬化速度が高くなり過ぎるため、成形品にクラックが発生し良好な製品が得られない。 【0016】また、全飽和二塩基酸成分中の少なくとも50モル%以上がテレフタル酸でなければならない理由は、それ未満の場合ガラスフリットとの組み合わせで成形品に良好な表面光沢が得られないためである。 【0017】不飽和ポリエステル(A)は多価アルコール、α、β−不飽和二塩基酸またはその無水物およびテレフタル酸を含む飽和二塩基酸またはその無水物を重縮合反応(エステル化反応)させて得られるが、これを重合性単量体(B)に溶解させることによって、目的とする液状の不飽和ポリエステル樹脂を得る。 【0018】この不飽和ポリエステル樹脂中の重合性単量体(B)の割合は、30重量%より少ないと、不飽和ポリエステル樹脂の粘度が高くなり、その結果としてコンパウンドの粘度が高くなり過ぎ型への注入が困難になること、および該コンパウンド中の脱泡が困難なために良好な成形品が得られないためである。 他方50重量% を越えるとコンパウンドの流動性は良くなるものの、該不飽和ポリエステル樹脂の硬化収縮が大きくなり、その結果成形品にクラックが発生し良好な製品が得られないためである。 【0019】不飽和ポリエステル樹脂(C)100重量部に対し混合するガラスフリット(D)の割合を100 〜300重量部の範囲に限定したのは、100重量部未満ではコンパウンド中の樹脂分の比率の増大で硬化収縮が大きくなり、成形品にクラックが発生し良好な製品が得られない。 また300重量部を越えるとコンパウンドの粘度が高くなり過ぎるため、型への注入が極めて困難になること、および該コンパウンド中の脱泡が困難なために良好な製品が得られないためである。 コンパウンドの注型成形時の流動性および硬化時の耐クラック性を考慮すると、150〜250重量部の範囲が特に望ましい。 【0020】充填材として使用されるガラスフリットの屈折率は成形品の透明感を得るために、1.53〜1. 56の範囲にあることが必要であり、同時にその平均粒径は成形品の光沢、平滑性を得るために30μm以下である必要がある。 さらにD 50 =10μmが特に望ましい。 また、ガラスフリットは高温成形時の不飽和ポリエステル樹脂との界面剥離を防ぐためにシランカップリング剤で処理する必要がある。 ガラスフリット中の酸化ナトリウムの含有量が5重量%以下である必要があるのは、不飽和ポリエステル樹脂硬化物の耐加水分解性を改良し、人造大理石成形品の耐水性を向上させるためである。 【0021】 【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。 なお、実施例中に示す「部」は、断りのない限りすべて「重量部」を意味する。 【0022】不飽和ポリエステル樹脂の製造例 製造例l 撹拌機、温度計、窒素ガス吹き込み管および一連の部分凝縮器と全凝縮器を備えた5リットルの反応器(耐圧1 0kg/cm 2 )にテレフタル酸997g(6モル)、 イソフタル酸665g(4モル)、プロピレングリコール959g(12.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)、ジプロピレングリコール537g (4モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒) 1.8gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230°Cまで昇温し、 約5時間反応させ酸価がl0mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一旦150℃まで冷却してフマル酸1161g(10モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し、約13時間反応させて酸価が16mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.27gと6%ナフテン酸銅0. 13gとを含むスチレンモノマー2675gに溶解させて6688gの不飽和ポリエステル樹脂〔不揮発分約6 0重量%)(a)を得た。 樹脂(a)の粘度(25℃) は9.5dPa・sであった。 【0023】製造例2 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸1329g(8モル)、プロピレングリコール807g(10.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)、ジプロピレングリコール805g(6モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.7gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230℃まで昇温し、約4.5時問反応させ酸価が10mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、 内温を一旦150℃まで冷却して無水マレイン酸117 7g(12モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し、約12時間反応させて酸価が16mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180℃まで冷却し. ハイドロキノン0.24gと6%ナフテン酸銅0.12gとを含むスチレンモノマー1896gに溶解させて5925gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約68重量%) (b)を得た。 樹脂(b)の粘度(25℃)は32dP a・sであった。 【0024】製造例3 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸1661g(10 モル)、無水フタル酸296g(2モル)、プロピレングリコール1263g(16.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.8gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で23 0℃まで昇温し、約6時間反応させ酸価が10mgKO H/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一旦15 0℃まで冷却してフマル酸929g(8モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃ まで界温し、約14時間反応させて酸価が16mgKO H/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを1 80℃まで冷却し、ハイドロキノン0.26gと6%ナフテン酸銅0.13gとを含むスチレンモノマー258 7gに溶解させて6468gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約60重量%)(c)を得た。 樹脂(c)の粘度(25℃)は8.5dPa・sであった。 【0025】製造例4 製造例lと同じ反応器にテレフタル酸997g(6モル)、プロピレングリコール807g(10.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)、ジプロピレングリコール805g(6モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.5gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230℃まで昇温し、約4.5時問反応させ酸価が101mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一且150℃まで冷却して無水マレイン酸1 373g(14モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し、約11時間反応させて酸価が16mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180°Cまで冷却し、ハイドロキノン0.23gと6%ナフテン酸銅0.12gとを含むスチレンモノマー1849gに溶解させて577 8gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約68重量%)(d)を得た。 樹脂(d)の粘度(25℃)は3O dPa・sであった。 【0026】製造例5 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸1827g(11 モル)、無水フタル酸296g(2モル)、プロピレングリコール1263g(16.6モル)、ネオペンチルグリコール4l7g(4モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.9gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で23 0℃まで昇温し、約6時間反応させ酸価が10mgKO H/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一旦15 0℃まで冷却してフマル酸812g(7モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃ まで昇温し、約15時間反応させて酸価が16mgKO H/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを1 80℃まで冷却し、ハイドロキノン0.26gと6%ナフテン酸銅0.13gとを含むスチレンモノマー262 1gに溶解させて6552gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約60重量%)(e)を得た。 樹脂(e)の粘度(25℃)は9dPa・sであった。 【0027】製造例6 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸665g(4モル)、イソフタル酸997g(6モル)、プロピレングリコール959g(12.6モル)、ネオペンチルグリコール417g (4モル)、ジプロピレングリコール537g(4モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.8gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230℃まで昇温し. 約5時間反応させ酸価が10mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一旦150℃まで冷却してフマル酸1161g(10モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し. 約13時間反応させて酸価がl6mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180℃まで冷却し、ハイドロキノン0.27gと6%ナフテン酸銅0.13gとを含むスチレンモノマー2675gに溶解させて6688gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約60重量%)(f)を得た。 樹脂(f)の粘度(2 5℃)は9dPa・sであった。 【0028】液状不飽和ポリエステル樹脂(a)〜 (f)の6種類にそれぞれ硬化剤として過酸化ベンゾイルを1重量%加えて100℃で2時間硬化させ、それぞれ硬化物の屈折率を測定した。 その結果をまとめて表1 に示す。 【0029】 【表1】 充填材の性状 実施例および比較例を記載するに当たって用いた充填材の性状を表2に示す。 【表2】 実施例1〜6及び比較例1〜6 製造例1〜6に示した液状不飽和ポリエステル樹脂(a)〜(f)、表2に示した充填材、硬化剤及び場合によっては促進剤とから構成されるコンパウンドの配合を表3に示す。 【0030】 【表3】 これらの各成分を減圧下で攪拌混合し、実際の浴槽(1 200サイズ)の雄雌合わせ型の中に1.5kg/cm
2で圧入した。 硬化条件として型温を、成形品の評価は脱型までの時間(型内保持時間)、クラックの有無、表面光沢、表面平滑性、透明感(深み感)および耐水性(1500時間/90℃)を調べた。 これらの結果をまとめて表3に示した。 【0031】実施例1〜6に示したように、いずれも脱型時間(型内保持時閤)が30分以内でクラックの無い製品(浴槽)を成形することができた。 しかも表面光沢、表面平滑性及び透明感(深み感〕のいずれも良好であった。これらの浴槽に90℃の熱水を入れ1500時問保持した後、ブリスターの有無、ΔE(色差)を調べた結果、いずれもブリスターは発生せず、色差も3以下であつた。 【0032】比較例1では、樹脂の反応性が高い(全酸成分中の不飽和酸の比率が高い)ため、成形品にクラックが発生し、良好な製品が得られなかった。 比較例2では、樹脂の反応性が低い(全酸成分中の不飽和酸の比率が低い)ため、成形品にクラックは発生しなかったものの、表面光沢と表面平滑性が不良であった。 比較例3では、成形品にクラックは発生しなかったものの、表面光沢が不良であった。 比較例4では、ガラスフリット(ハ)の平均粒径が30μmを越えていること、及び酸化ナトリウムの含有量が5重量%を越えているため、表面平滑性と耐水性が不良であった。 比較例5では、充填材に水酸化アルミニウムを使用しているため、成形品にクラックは発生しなかったものの脱型時間(型内保持時間)が80分と長く(生産性が低い)、且つ透明感(深み感)が不良であった。 比較例6では、比較例5と同様に水酸化アルミニウムを使用して、故意に脱型時間を4 0分に短くしたが、成形品にクラックが発生し、且つ表面光沢及び透明感(深み感)とも不良であった。 【0033】 【発明の効果】本発明によって以下の効果を奏する。 【0034】(1)加熱注型法で成形することによって耐水性、光沢、平滑性が良好で大理石に似た半透明の人造大理石成形品を低コストで且つ生産性高く製造することができる。 【0035】(2)浴槽への応用に特に有用な耐水性に優れた大理石調の製品を製造することができる。 【手続補正書】 【提出日】平成8年3月28日 【手続補正1】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0003 【補正方法】変更 【補正内容】 【0003】その成形法としては、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)型に先ずゲルコートをスプレイ塗装して硬化加熱炉で一旦硬化させた後、熱硬化性樹脂と充填材とからなるコンパウンドをその型内に注入して再度硬化炉で硬化させる注型法と、予めコンパウンドを増粘させてBMC(バルクモルディングコンパウンド)とし、これを金型内で加熱、加圧成形するプレス法の2つに大別される。 【手続補正2】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0004 【補正方法】変更 【補正内容】 【0004】前者の方法は、例えば人造大理石浴槽一台を成形開始から型から脱型するまでの必要時間(成形時間)は150〜300分を要するのに対し、後者は5〜 15分で成形可能で生産性の高い成形法である。 しかし後者は設備費が前者の10倍以上であるという欠点を有する。 【手続補正3】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0006 【補正方法】変更 【補正内容】 【0006】 【発明が解決しようとする課題】良好な人造大理石成形品を最も経済的に製造するためには、基本的には設備費の安価な注型法で且つプレス法並みの時間で成形方法を確立することにある。 そのためには先ずゲルコートを型に施さない注型法を確立する必要がある。 加えて従来の注型法よりも型の温度を高くしてコンパウンドの硬化速度を促進することが必要条件である。 しかし、コンパウンドを型に注入する過程でそれが硬化を開始すると成形品が不良になるため、室温付近で型にコンパウンドを注入し、所定の温度に型を昇温させると従来技術では人造大理石成形品にクラックが発生し、良好な製品が得られない。 この場合、充填材として水酸化アルミニウムを使 用したコンパウンドは、ガラスフリットを同重量配合したそれに比較して樹脂硬化時の発熱(重合熱)が抑制され、成形時間は長くなるものの成形品のクラック発生を防止する効果が期待できる。 これは水酸化アルミニウムが水和水および結晶水を持っているため樹脂が硬化する過程の発熱を吸収するためである。 他方ガラスフリットは樹脂の硬化発熱を吸収する作用がないため急速にコンパウンドの硬化が進行し、型の温度を上げて短時間で成形することは成形品にクラックの発生を伴うため従来技術では極めて困難であった。 コンパウンド中の樹脂成分に添加する重合開始剤(硬化剤)を減量したり、重合禁止剤を追添加して樹脂の硬化速度を遅延してその硬化発熱を抑制することは可能であるが、結果として成形時間が長くなるという欠点がある。 【手続補正4】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0010 【補正方法】変更 【補正内容】 【0010】(1)屈折率が1.53〜1.56の範囲にあること (2)平均粒径が30μm以下であること (3)粒子表面がシランカップリング剤で処理されていること (4)酸化ナトリウムの含有量が5重量%以下であること 本発明の不飽和ポリエステル樹脂中の不飽和ポリエステル(A)を製造するに当たって使用される多価アルコール成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、 1、3−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、 ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジブロモネオペンチルグリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、1、4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を挙げることができる。 α、β−不飽和二塩基酸またはその無水物としてはマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸を挙げることができる。 飽和二塩基酸またはその無水物としてはテレフタル酸の他に、オルソフタル酸およびその無水物、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸およびその無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸およびその無水物、 テトラブロモフタル酸およびその無水物、ジブロモテトラヒドロフタル酸およびその無水物、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、1、3−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等を挙げることができる。 これらの原料はいずれも単独または複数の組み合わせで使用される。 【手続補正5】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0023 【補正方法】変更 【補正内容】 【0023】製造例2 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸1329g(8モル)、プロピレングリコール807g(10.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)、ジプロピレングリコール805g(6モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.7gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230℃まで昇温し、約4.5 時間反応させ酸価が10mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、 内温を一旦150℃まで冷却して無水マレイン酸117 7g(12モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し、約12時間反応させて酸価が16mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180℃まで冷却し. ハイドロキノン0.24gと6%ナフテン酸銅0.12gとを含むスチレンモノマー1896gに溶解させて5925gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約68重量%) (b)を得た。 樹脂(b)の粘度(25℃)は32dP a・sであった。 【手続補正6】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0024 【補正方法】変更 【補正内容】 【0024】製造例3 製造例1と同じ反応器にテレフタル酸1661g(10 モル)、無水フタル酸296g(2モル)、プロピレングリコール1263g(16.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.8gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で23 0℃まで昇温し、約6時間反応させ酸価が10mgKO H/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一旦15 0℃まで冷却してフマル酸929g(8モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃ まで昇温し、約14時間反応させて酸価が16mgKO H/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを1 80℃まで冷却し、ハイドロキノン0.26gと6%ナフテン酸銅0.13gとを含むスチレンモノマー258 7gに溶解させて6468gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約60重量%)(c)を得た。 樹脂(c)の粘度(25℃)は8.5dPa・sであった。 【手続補正7】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0025 【補正方法】変更 【補正内容】 【0025】製造例4 製造例lと同じ反応器にテレフタル酸997g(6モル)、プロピレングリコール807g(10.6モル)、ネオペンチルグリコール417g(4モル)、ジプロピレングリコール805g(6モル)およびジブチルチンオキサイド(反応触媒)1.5gを仕込み、反応器内を窒素ガスで置換後さらに3.5kg/cm 2の圧力下で230℃まで昇温し、約4.5 時間反応させ酸価が101mgKOH/g以下になった時点で常圧に戻し、内温を一且150℃まで冷却して無水マレイン酸1 373g(14モル)を仕込む。 常圧下で適量の窒素ガスを流しながら再度210℃まで昇温し、約11時間反応させて酸価が16mgKOH/g以下になった時点でこの不飽和ポリエステルを180°Cまで冷却し、ハイドロキノン0.23gと6%ナフテン酸銅0.12gとを含むスチレンモノマー1849gに溶解させて577 8gの不飽和ポリエステル樹脂(不揮発分約68重量%)(d)を得た。 樹脂(d)の粘度(25℃)は3O dPa・sであった。 【手続補正8】 【補正対象書類名】明細書 【補正対象項目名】0031 【補正方法】変更 【補正内容】 【0031】実施例1〜6に示したように、いずれも脱型時間(型内保持時閤)が30分以内でクラックの無い製品(浴槽)を成形することができた。 しかも表面光沢、表面平滑性及び透明感(深み感)のいずれも良好であった。 これらの浴槽に90℃の熱水を入れ1500時問保持した後、ブリスターの有無、ΔE(色差)を調べた結果、いずれもブリスターは発生せず、色差も3以下であった。 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C04B 14:22) 111:54 |