【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、凍害が問題となる寒冷地において、建築物の床,壁,天井や鉄道軌道面,あるいは鉄道や道路用の防音壁等に使用される軽量モルタルに関する。 【0002】 【従来の技術】建築物の外壁や防音壁等に用いられる細孔構造を有する軽量モルタルは、セメントと水と砂とに加えて無機系の多孔質材料、合成樹脂の多孔質材料等を混合するか、通常利用されているモルタルの中に無数の空気孔を導入したものが知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の軽量モルタルは、寒冷地において、凍害によりひび割れ等の劣化が生じ、著しく強度が低下するという問題があった。 ここで、凍害とは、凍結融解により生ずる弊害であり、モルタルの細孔に進入した水が凍結することによって、細孔中の水が体積膨張するために、細孔構造が破壊され、劣化する現象である。 水の細孔への進入を防ぐために、モルタル表面に撥水処理することが考えられるが、撥水材が高価であり、工数も増えコスト高になっていた。 【0004】そこで、この発明は、凍害を防止し、コストアップにならない軽量モルタルを提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため、この発明は、細孔構造を有するモルタルに繊維を混入して形成され、繊維の径を10〜400μm、長さを1〜50mmとしたものである。 【0006】 【作用】従来のセメントモルタル,軽量気泡モルタル, 発泡ウレタンチップ混入モルタルに比較して、本発明の軽量モルタルは、繊維が細孔構造を連結し、補強するので、耐凍結融解性が格段に向上する。 繊維径を10〜4 00ミクロンにしたのは、10ミクロン以下では繊維強度が低い為、耐凍結融解性が向上しない。 400ミクロン以上では、セメント100重量部に対して、10重量部以上を投入しないと、耐凍結融解性が格段に向上しないため、経済的ではない。 繊維長1〜50mmにしたのは、1mm以下では、セメントとの接着力が弱くなり、耐凍結融解性が向上しない。 繊維長50mm以上では、ミキサーによる混合時、繊維の分散性が悪く、毛玉状になるため、繊維含有量が低下し、充分な連結・補強効果が得られず、耐凍結融解性が向上しない。 【0007】 【実施例】以下にこの発明の好適な実施例について詳述する。 【0008】 実施例1モルタルミキサーにセメント100重量部、砂300重量部を投入して、1分間撹拌後、水45重量部を投入し、1分間撹拌し、繊維径分布の中心が40ミクロンで、繊維長さが15mmのポリビニルアルコール繊維1重量部を投入し、さらに1分間撹拌して、繊維を混入させたセメントモルタルを得た。 繊維材料としては、ガラス繊維,ポリエステル,ポリプロピレンが好適に使用できる。 【0009】 実施例2モルタルミキサーにセメント100重量部、珪石100 重量部、発泡剤として金属アルミニウム粉末3重量部を投入し、1分間撹拌し、水45重量部を投入し、1分間撹拌し、繊維径分布の中心が40ミクロンで、繊維長さが15mmのポリビニルアルコール繊維1重量部を投入し、さらに1分間撹拌して、繊維を混入させた軽量発泡モルタルを得た。 繊維材料としては、ガラス繊維,ポリエステル,ポリプロピレンが好適に使用できる。 【0010】 実施例3モルタルミキサーにセメント100重量部、粒径2mm以下のウレタンチップ7.5重量部を投入して、1分間撹拌後、水35重量部、SBRラテックス20重量部、樹脂石けん系起泡剤3重量部を投入し、1分間撹拌し、繊維径分布の中心が40ミクロンで、繊維長さが15mmのポリビニルアルコール繊維0.25〜1.00重量部を投入し、さらに1分間撹拌して、繊維を混入させた空隙率50%の発泡ウレタンチップ混入モルタルを得た。 繊維材料としては、ガラス繊維,ポリエステル,ポリプロピレンも好適に使用できる。 実施例3では発泡ウレタンチップを用いたが、無機系多孔質材料を用いることもできる。 無機系多孔質材料としては、パーライト,メサライト,ライオナイト,石炭殻,軽石,泡ガラス等が好適に使用できる。 発泡ウレタンチップ以外の合成樹脂多孔質材料としてスチレンビーズ等も使用できる。 さらに、 これらを併用することもできる。 【0011】次いで、従来の一般的なものとして、次の比較例1〜3に示すものを製造した。 すなわち、セメント100重量部、砂300重量部、水45重量部で構成されたセメントモルタルを比較例1とし、建築物の外壁,屋根,床,間仕切として、比重0.8、空隙率80 %以上であり、繊維を含まない軽量気泡コンクリートを比較例2とした。 また、セメント100重量部、粒径2 mm以下のウレタンチップ7.5重量部、水35重量部、 SBRラテックス20重量部、樹脂石けん系起泡剤3重量部で構成された空隙率50%の発泡ウレタンチップ混入モルタルを比較例3とした。 【0012】図1に示すグラフは、ASTM−C666 に準じた凍結融解試験結果である。 符号Aは実施例1、 符号Bは実施例2、符号Cは実施例3、符号Dは比較例1、符号Eは比較例2、符号Fは比較例3のものであり、凍結融解サイクルと相対弾性係数の関係を示している。 比較例1,2,3は、凍結融解サイクル数30〜9 0で、凍害による劣化が進行し、ひび割れ、折損等の破壊が発生した。 【0013】 【発明の効果】以上説明したように、本発明では、繊維が細孔構造を連結し、補強するので、耐凍結融解性が格段に向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】この発明の実施例と従来品との凍結融解試験結果を示すグラフ。 |