【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、道路、鉄道、工場、産業用機器など防音対策が必要な部位に用いられる軽量吸音コンクリート、軽量吸音コンクリートユニット、およびそれらを用いた吸遮音パネル、ならびに軽量吸音コンクリートおよび吸遮音パネルの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】吸音材としては、グラスウール、ロックウールなど鉱物繊維及びそれを成形したもの、石膏ボード、石綿セメント板、パルプセメント板を穴あけしたもの、さらに最近ではセラミック系、多孔質コンクリート系などがある。 【0003】グラスウール、ロックウールは、複合板等の間に詰めて使用する場合、それにバインダーを加えて成形し天井板として使用する例などがある。 また、穴あき石膏ボードも天井板として使用されるケースが多い。 【0004】グラスウールは道路用防音壁の吸音材としても使用されており、グラスウールを用いた防音壁の代表的なものが図15に示す日本道路公団統一型のメタル系ボックスタイプである。 図15は(a)が正面図、 (b)が側面図、(c)が側面を詳細に示した図であるが、この防音壁の素材構成は、通常、表面多孔板1がアルミニウム板、吸音材2がグラスウール、背面板3が亜鉛鉄板からなっている。 【0005】近年上市されたものとしてセラミック吸音材があり、道路、鉄道、工場、産業用機器などの防音材料として用いられている。 セラミック吸音材は、所定の範囲に整粒された無機質粒子と結合剤を混合、成形、焼成したものである。 このようなセラミック吸音材は、例えば特公平2−14497号、特公平5−45557 号、特開平5−195516号などに開示されている。 【0006】また、本発明に近い技術として、同じく鉄道、工場の内外装材、産業用機器などの防音材料として用いられている多孔質コンクリート系吸音材がある。 多孔質コンクリート系吸音材は、セメント及びシリカ質材料に起泡剤により生成させた気泡を加え、オートクレーブ養生により硬化させたものである。 多孔質コンクリート系吸音材は、例えば特公昭57−32023号、特公昭58−25816号などに開示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上述した日本道路公団統一型の防音壁は、施工性が良く吸音性に優れていることから高速道路用の主流を占めている。 しかし、グラスウールへの雨水侵入を防止する観点からグラスウールを透気型防水フィルムで包み込んでいるため、吸音性が低下してしまう。 また、グラスウール自体の経時的劣化、 さらに超高速道路に対しては強度不足であるなどの問題が最近指摘されている。 【0008】セラミック吸音材は、強度が高く吸水も少ないため汚染した時洗浄が可能なこと、セラミックであるため耐火性、耐久性に優れること、多彩な着色が可能で意匠性に優れることなど多くの特徴をもつが、比重が大きく高価なことが課題である。 【0009】多孔質コンクリート系吸音材は、セラミック吸音材と同様に耐火性、耐久性に優れるが、強度が低く商用化に際し、GRC板(ガラス繊維補強セメント板)、ケイ酸カルシウム板、押出成形板などの無機系建築ボード、モルタル・コンクリート板、鋼板等と複合化する必要がある。 また、吸水した場合凍結融解により破損する恐れがあり、屋外で使用する場合、表面をはっ水処理する必要がある。 さらに、高い吸音性をもたせるには、細かい気孔(数百ミクロンオーダー)を均一に生成させしかも貫通気孔(開気孔)とする必要があり、細かい気泡の生成、貫通気孔とするための凝結時期の調整など厳しい製造条件を強いられる。 このように多孔質コンクリート系吸音材も種々の課題を有している。 【0010】本発明は、上記のような問題点を解決するためなされたもので、その目的は、軽量性、吸音性、耐久性に優れ、多孔質コンクリート系吸音材のように厳しい製造条件を強いられることがなく通常のコンクリート製品と同等な製造プロセスで製造できる軽量吸音コンクリート、軽量吸音コンクリートユニット、およびそれらを用いた吸遮音パネルを提供することにある。 また、このような軽量吸音コンクリートおよび吸遮音パネルの製造方法を提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、 (1)ある程度の強度および最大吸音率80%以上を確保し、吸音コンクリートの軽量化を図るためには、単位容積質量で1.0kg/l以下、好ましくは0.8kg /l以下、さらに好ましくは0.5kg/l以下の軽量骨材を用い、吸音コンクリートの気孔率、かさ密度が所定の範囲になるように、この軽量骨材を水和硬化性材料と共に配合して成形する必要があること (2)骨材を、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上になるように、または8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上になるように整粒することにより、特に吸音率を高めることができ、また、このように異なる軽量骨材の粒径範囲のいずれかを選択することにより吸音率が最大となる周波数が異なる軽量吸音コンクリートが得られること (3)最大吸音周波数の異なる2以上の軽量吸音コンクリートを規則的または不規則的に(例えば交互に)配設するか、あるいはこれらを積層して軽量吸音コンクリートユニットを構成することにより、幅広い周波数で高い吸音率が得られること (4)これらの軽量吸音コンクリートは、コンクリート二次製品で用いられている即時脱型製造プロセスを適用することができ、従って、厳しい製造条件を強いられることがなく、高い生産性で安価に製造できる可能性があること (5)軽量吸音コンクリートと各種無機系建築ボード、 モルタル・コンクリート板、鋼板等と一体化し、パネル化することにより、さらに遮音性を付与できることを見出し、本発明を発明を完成するに至った。 【0012】すなわち、本発明は、 (i)単位容積質量1.0kg/l以下の軽量骨材と、 前記骨材1m 3に対して250〜400kgの割合で配合された水和硬化性材料を水和硬化させてなる水和物とからなり、みかけ気孔率が35%以上80%以下、かさ密度が1.5kg/l以下であり、かつ最大吸音率が8 0%以上であることを特徴とする軽量吸音コンクリート (ii)前記軽量骨材が、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上であるか、または8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上であることを特徴とする軽量吸音コンクリート (iii )単位容積質量1.0kg/l以下の軽量骨材と、前記骨材1m 3に対して250〜400kgの割合で配合された水和硬化性材料を水和硬化させてなる水和物とからなり、みかけ気孔率が35%以上80%以下、 かさ密度が1.5kg/l以下であり、かつ最大吸音率が80%以上であって、最大吸音周波数の異なる2以上の軽量吸音コンクリートが積層されてなることを特徴とする軽量吸音コンクリートユニット (iv)単位容積質量1.0kg/l以下の軽量骨材と、 前記骨材1m 3に対して250〜400kgの割合で配合された水和硬化性材料を水和硬化させてなる水和物とからなり、みかけ気孔率が35%以上80%以下、かさ密度が1.5kg/l以下であり、かつ最大吸音率が8 0%以上であって、最大吸音周波数の異なる2以上の軽量吸音コンクリートを規則的または不規則的に配設してなることを特徴とする軽量吸音コンクリートユニット (v)以上の軽量吸音コンクリートまたは軽量吸音コンクリートユニットを不燃性建材よりなる型枠と一体化してなることを特徴とする吸遮音パネル (vi)単位容積質量1.0kg/l以下、好ましくは0.8kg/l以下、さらに好ましくは0.5kg/l 以下の軽量骨材を準備する工程と、前記骨材1m 3に対して250〜400kgの水和硬化性材料、および前記材料に対する重量比で25〜40%の水を加えて混練する工程と、生成された混練物を所定の形状に成形する工程と、生成された成形物を養生硬化する工程と、を備えたことを特徴とする軽量吸音コンクリートの製造方法 (vii )単位容積質量1.0kg/l以下の軽量骨材を準備する工程と、前記骨材1m 3に対して250〜40 0kgの水和硬化性材料、および前記材料に対する重量比で25〜40%の水を加えて混練する工程と、生成された混練物を所定の形状に成形する工程と、生成された成形物を養生硬化する工程と、これにより形成された軽量吸音コンクリートを不燃建材よりなる型枠と一体化する工程と、を備えたことを特徴とする吸遮音パネルの製造方法 (viii)単位容積質量1.0kg/l以下の軽量骨材に、この軽量骨材1m 3に対して250〜400kgの水和硬化性材料、および前記材料に対する重量比で25 〜40%の水を加えて混練、成形および養生硬化してなり、みかけ気孔率が35%以上80%以下、かさ密度が1.5kg/l以下であり、かつ最大吸音率が80%以上であることを特徴とする軽量吸音コンクリートを提供するものである。 【0013】なお、本発明において、メッシュとは、T yler篩に基づくTyler番号をいう。 【0014】 【作用】本発明における軽量吸音コンクリートは、単位容積質量で1.0kg/l以下の軽量骨材を使用することが必須となる。 軽量骨材の単位容積質量が1.0kg /lより大きくなると、軽量コンクリートのかさ密度を1.5kg/l以下とすることが困難となり、パネル化した時、軽量化を図ることができない。 軽量骨材の単位容積質量は、好ましくは0.8kg/l以下、さらに好ましくは0.5kg/lである。 軽量化の観点からは、 軽量骨材の単位容積質量の下限は存在しないが、耐久性および強度等の観点からは、無機系軽量骨材の場合、 0.2kg/l以上であることが好ましい。 なお、0. 01〜0.2kg/lの有機系軽量骨材を用いることもできるが、パネルの不燃性、耐火性、強度、コスト等の観点から、その使用量は制限される。 【0015】本発明の軽量吸音コンクリートは、このような軽量骨材と水和硬化性材料を水和硬化させてなる水和物とからなるものであるが、全体のみかけ気孔率が3 5%以上80%以下であり、かさ密度が1.5kg/l 以下である。 これにより十分軽量でしかも吸音特性に優れたものとなる。 また、かさ密度の好ましい範囲は0. 4〜1.0kg/lである。 かさ密度が0.4kg/l 未満では、強度が低くなる傾向にある。 このように、みかけ気孔率を35%以上80%以下で、かさ密度を1. 5kg/l以下とすることにより、軽量である程度吸音特性が優れたものとなるが、本発明では、特に、交通騒音、工場騒音など、比較的大きな騒音の低減に対して効果的な吸音材料を得る観点から、さらに垂直入射法による最大吸音率が80%以上であることを要件とする。 前述したグラスウール、ロックウール、セラミック系、多孔質コンクリート系などの吸音材は、いずれも垂直入射法による最大吸音率が80%以上と高い吸音性を有するものである。 最大吸音率が80%未満、例えば穴あき石膏ボードのような穴あき板も吸音材料の一種とされているが、比較的騒音が小さく騒音の低減の程度も小さくてよい場合か、あるいは前記高吸音製の吸音材と組み合わせて使用されている。 本発明の軽量吸音コンクリートは、比較的大きな騒音の低減に対して使用される前記高吸音性の吸音材と同等の吸音性を有するものである。 【0016】なお、ここでいうみかけ気孔率は、吸音コンクリート(成形体)内部ガスを真空置換し、アルキメデス法により測定したものであり、水和物に閉塞されない骨材の開気孔を含む値である。 従って、本発明の軽量吸音コンクリートのみかけ気孔率35〜80%は、水和物に閉塞されない骨材の開気孔率を含む値である。 軽量吸音コンクリートのみかけ気孔率に骨材の開気孔がとの程度含まれるかは、それらを区別する測定法がなく、明らかではない。 【0017】本発明者らが検討した結果によれば、吸水率がほぼ0の骨材を用いて作製した吸音コンクリートは、みかけ気孔率が20%以上で、高い吸音率、例えば最大吸音率で80%以上が得られる。 すなわち、骨材の開気孔率をほとんど含まず、骨材および水和物によってのみ形成される空隙(気孔)が20%以上であれば、高い吸音率を得ることができる。 骨材の開気孔部分が吸音率にどの程度寄与しているかは明らかではないが、骨材および水和物によってのみ形成される気孔率が少なくとも20%は必要である。 また、骨材および水和物によってのみ形成され、かつ骨材の開気孔を含まない上限の気孔率は40%である。 40%を超える気孔率は、高い吸音率を得るために必要としない。 また、40%を超える場合、軽量吸音コンクリートの製造が実用上困難となるばかりか、強度、耐久性等が大幅に低下し好ましくない。 【0018】一方、本発明に使用する軽量骨材は、開気孔を例えば骨材の吸水率(JISA1134「構造用軽量骨材の比重及び吸水率試験方法」で測定される値)で表示した場合、通常5%以上である。 本発明の軽量吸音コンクリートは、水和硬化性材料の量を通常のコンクリートよりも少なくしていることから、軽量骨材の開気孔部分(吸水部分)が水和物により完全に閉塞されることはなく、開気孔部分が残存している。 その量は、前述したように明確ではないが、本発明者らが吸水率の異なる軽量骨材で検討した結果、およそ15〜40%の範囲であろうと推定された。 従って、本発明では、軽量吸音コンクリートにおける軽量骨材の開気孔部分を含むみかけ気孔率を35〜80%の範囲に規定した。 【0019】軽量骨材としては、パーライト系、バーミキュライト系など一般に市販されているものを用いることができる。 また、フライアッシュ、赤泥、下水汚泥等の焼却灰などの廃棄物に発泡剤等を加え、造粒、焼成、 発泡させた軽量骨材を用いることができ、これらの骨材を使用することは資源リサイクルの観点から好ましい。 また、これらの骨材は、いずれも無機系軽量骨材であるが、軽量化の補助的手段として、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン等有機系発泡ビーズを本発明の目的を逸脱しない範囲で用いてもよい。 【0020】軽量骨材の粒度は、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上であるか、または8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上であることが好ましい。 【0021】軽量骨材の90重量%以上が、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下で篩分けられた範囲、または8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下で篩分けられた範囲という狭い範囲内に含まれるようにすることにより、吸音率に関係する気孔率が好ましいものとなり、 特に良好な吸音率を得ることができる。 軽量骨材の上記いずれかの篩分けの範囲に含まれる量が90重量%未満となり粒度分布がブロードになると、上述したような好ましい気孔率が確保できなくなり、吸音率の最大値が8 0%以上となるような高い吸音性をもつ軽量吸音コンクリートが得難くなる。 【0022】粒度の範囲を上記範囲に規定することにより、吸音特性上重要な低周波数域において吸音率が最大となる。 すなわち、軽量吸音コンクリートの厚さを60 mmとした場合、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上である軽量骨材の場合には600Hz前後で吸音率が最大となり、8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上である軽量骨材の場合には1000Hz前後で吸音率が最大となる。 なお、軽量骨材の粒度分布が14メッシュ篩下の範囲を主体とするようなものとなる場合には、上述したような好ましい気孔率を確保し難くなり好ましくない。 【0023】また、このように軽量骨材の篩分けの範囲を14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲、または8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲と2 種類の中から選択することにより、吸音率が最大となる周波数を異ならしめることができ、吸音周波数帯域が極めて広いものとなる。 【0024】従って、これらの篩分け範囲の軽量骨材を用いて得られた軽量吸音コンクリートを例えば交互配置することにより、最大吸音周波数が異なる2種類の軽量吸音コンクリートが配置されることとなり、600Hz 前後〜1000Hz前後までの幅広い周波数帯域で高い吸音率を持つ軽量吸音コンクリートユニットを得ることができる。 なお、配置は必ずしも交互的でなくてもよく、また規則的であっても不規則的であってもよい。 【0025】また、より低周波数側でより高い吸音性を必要とするならば、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上の軽量骨材(細粒径側)を用いた軽量吸音コンクリートの割合が高くなるように配置すればよいし、より高周波数側でより高い吸音性を必要とするならば、8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上の軽量骨材(粗粒径側)を用いた軽量吸音コンクリートの割合が高くなるように配置すればよい。 例えば、より低周波数側でより高い吸音性を必要とするならば細粒径側の軽量骨材を用いた軽量吸音コンクリートと粗粒径側の軽量骨材を用いた軽量吸音コンクリートとを3:1の割合で配置し、高周波数側でより高い吸音性を必要とするならば低粒径側の軽量骨材を用いた軽量吸音コンクリートと高粒径側の軽量骨材を用いた軽量吸音コンクリートとを1: 3の割合で配置するようにし、これらの割合が3:1〜 1:3の範囲で任意に選択するようにすることができる。 ただし、この範囲は例示であってこれに限定されるものではない。 【0026】14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上の軽量骨材を用いて形成した軽量吸音コンクリートと、8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上の軽量骨材を用いて形成した軽量吸音コンクリートとを積層してユニット化した場合にも、最大吸音周波数が異なる軽量吸音コンクリートが存在することとなり、幅広い周波数帯域で高い吸音率を得ることができる。 積層する軽量吸音コンクリートの厚さは10〜70mmの範囲であることが好ましく、積層したユニットの厚さを40〜100 mmとすることが好ましい。 【0027】積層するそれぞれの軽量吸音コンクリートの厚さは、低周波数側でより高い吸音性を必要とするならば、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲を主体とする軽量骨材で作製したものをより厚くすればよいし、高周波数側でより高い吸音性を必要とするならば、8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲を主体とする軽量骨材で作製したのものをより厚くすればよい。 【0028】なお、このように幅広い周波数帯域で高い吸音率を得るためには、上述した2種類の粒径の範囲を主体とする軽量骨材を用いることが好ましいが、必ずしもこれらに限定されず、少なくとも最大吸音周波数の異なる2以上の吸音コンクリートの組み合わせであればよい。 【0029】同一粒径範囲を主体とした軽量骨材のみを用いて軽量吸音コンクリートを作成し、その厚さを変えることによっても吸音率が最大となる周波数を変えることができ、厚さを大きくすることにより、吸音率が最大となる周波数が低周波数側へ移行する。 すなわち、同一厚さにおいて実質的に同一の最大吸音周波数および帯域を有し、実質的に同一材料で構成されている軽量吸音コンクリートでも、厚さが異なれば最大吸音周波数帯域が異なる。 従って、厚さが異なる2以上の軽量吸音コンクリートを例えば交互に配置することによっても、幅広い周波数帯域で高い吸音率を得ることができる。 なお、この場合にも配置は必ずしも交互的でなくてもよく、また規則的であっても不規則的であってもよい。 【0030】例えば、14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが90重量%以上の軽量骨材を用いて形成した軽量吸音コンクリートのみを用い、厚さを異ならしめたユニットを形成することにより、600H z前後〜1000Hz前後までの幅広い周波数帯域で高い吸音率をもつ軽量吸音コンクリートを得ることができる。 【0031】ここで用いる軽量吸音コンクリートの厚さは、20〜80mmの範囲であることが好ましい。 厚さの選定およびその配置の仕方は、高い吸音率を必要とする周波数に応じ選択することができる。 より低周波数側で高い吸音性をもつ最適な厚さは50〜80mmであり、より高周波数側で高い吸音性をもつ最適な厚さは2 0〜50mmである。 これらの配置の仕方は、低周波数側でより高い吸音率を必要とするならば、厚さ50〜8 0mmのものの割合を増加させればよいし、高周波数側でより高い吸音率を必要とするならば、厚さ20〜50 mmのものを増加させればよい。 この場合にも、厚さ5 0〜80mmのものと20〜50mmのものとを例えば3:1〜1:3の範囲で選定するようにすることができる。 そして、この場合にもこの範囲は例示であってこれに限定されるものではない。 【0032】本発明の軽量吸音コンクリートは、上述のような軽量骨材を準備し、骨材1m 3に対して250〜 400kgの水和硬化性材料、および前記材料に対する重量比で25〜40%の水を加えて混練し、成形し、養生硬化することにより得られる。 軽量骨材は上述したように予め粒度調整して用いることが好ましい。 【0033】水和硬化性材料の量は、軽量骨材1m 3に対し250〜400kgが好適である。 250kg未満であると、強度発現が低いばかりか成形後の即時脱型や移送等ハンドリングも困難となる。 また、400kgを越えると骨材間の空隙をペースト(水和硬化性材料+ 水)が埋めてしまい気孔率が低下し、吸音率が低くなる。 【0034】水和硬化性材料としては、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどJISに制定されているセメントが一般的に使用できる。 また、これらセメントに高炉スラグ粉末、フライアッシュ、シリカ質粉末、炭酸カルシウム粉末などの混和材を加えてもよい。 さらに、速硬性を必要とするならば、カルシウムアルミネート、カルシウムフルオロアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート等を主成分とする速硬性のセメントもしくは混和材、高強度を必要とするならば、シリカヒューム、ネオヒューム等のシリカ質超微粉、ブレーン比表面積6000cm 2 /g以上の高炉スラグ微粉末、フライアッシュを気流分級機等により微粉化した粉末、などをセメントに混合して使用してもよい。 【0035】水和硬化性材料に対する水の比率(水セメント比)は、25〜40%の範囲、好ましくは25〜3 0%の範囲である。 軽量吸音コンクリートの強度を高めるためには、水セメント比が低いことが好ましいが、2 5%未満であると混練が困難となり骨材とペーストとを均一に混合することができなくなる。 40%を越えると軽量吸音コンクリートの強度が低下するばかりか、成形時に骨材とペーストが分離しやすく、下部側にペーストが多くなり吸音率が低下するとともに、上下部で強度差が生じる。 なお、高性能減水剤等の混和剤を使用すれば水を25%未満とすることが可能であるが、混和剤を多く必要とし、コスト高となるばかりか、強度向上効果もそれほど大きくない。 また、本発明では、各種混和剤の使用が必須ではないが、水和硬化性材料の種類(速硬性材料、超微粉材料等)によっては混和剤の使用が必要となる場合もある。 なお、軽量骨材の吸水率が大きい場合、事前に吸水させ表面乾燥状態としておくか、吸水する分に見合う分の水を多く加えることが必要である。 【0036】混練は、モルタル及びコンクリート等の混練に通常使用されているミキサーを用いることができる。 軽量骨材の強度が弱く、混練中に骨材が破壊する恐れがある場合は、例えばオムニミキサーなどを用いるとよい。 【0037】得られた混練物は、型枠に投入し成形される。 本発明により得られる混合物は、水セメント比が低いため、単に型枠に投入しただけでは十分な充填が行えない恐れがある。 従って、振動を加えて充填する振動成形法が好適である。 なお振動成形法は、インターロッキングブロック、コンクリート平板などコンクリート二次製品の即時脱型製造プロセスに一般的に用いられている。 従って、振動成形法を用いることにより、既存の製造プロセスを使用することができるため新たな設備投資の必要がなく、高い生産性で製造できる。 また振動成形法は、金型を加工すれば複雑な形状の成形体を得ることも可能である。 【0038】次に、このようにして得られた成形体は養生され、その際の水和反応により硬化される。 養生方法は特に限定されるものではないが、短期間で製造するため一般的に常圧蒸気あるいは高圧蒸気による養生が採用され、その中でも特に、コンクリート二次製品などに用いられている常圧蒸気養生が、設備費、養生コスト等の面で好適である。 蒸気養生温度は、一般的には30〜9 0℃好ましくは40〜70℃の範囲である。 またこのような蒸気養生では、一般的にボイラーで得た蒸気を養生室へ吹き込み所定温度に制御する。 しかし蒸気養生温度が30〜40℃と低くてよい場合、蒸気を吹き込むことなしに行うこともできる。 すなわち、ある程度密閉された養生室内で、かつ多量の成形体を養生することにより、その水和反応で発熱し、蒸気を吹き込む場合と同様な効果が得られる。 【0039】軽量吸音コンクリートに着色する場合、特願平5−130900号公報に記載されているような炭酸ガスを含んだ雰囲気で養生する方法を適用することが好ましい。 この養生方法を用いることにより、コンクリート特有の白華が抑制された鮮明な着色が可能となり、 意匠性に優れたものとなる。 炭酸ガスの濃度は、10% 以上あればよい。 特に炭酸ガス10%以上を含む排ガスを利用すれば、コスト面で有利である。 また炭酸ガスを含んだ雰囲気で養生する場合、その温度は10〜60℃ の範囲で行うのがよい。 10℃以下では、石灰分の水への溶解度が小さくなり、炭酸化反応の進行に時間を要する。 また60℃以上では、炭酸ガスの水への溶解度が小さくなり、炭酸化反応の進行が遅くなる。 なお、炭酸化反応を進行させるためには、水が不可欠であり、相対湿度60%以上好ましくは80%以上の雰囲気とし、成形体から水分が完全に逸脱しないようにすることが必要である。 なお水セメント比が高い場合、相対湿度を60〜 70%とし成形体から水分を若干逸脱させた方が、炭酸ガスの成形体内部への拡散速度が大きくなり、炭酸化反応の進行が速くなる場合もある。 【0040】以上のようにして得られる軽量吸音コンクリートは、それほど強度が高くなく、これを単体で使用するのは通常困難である。 また、端面を保護しておかないと、角欠けなど剥離を生じる恐れもある。 従って、本発明の軽量吸音コンクリートをパネルとして商用化する場合、GRC板、ケイカル板等の無機系建築ボード、モルタル・コンクリート板、鋼板等の不燃建材よりなる型枠と一体化することが必要である。 また、このような不燃建材よりなる型枠と一体化することにより、吸音性のみならず遮音性も優れたものとなる。 本発明は、既述したような軽量吸音コンクリートまたは軽量吸音コンクリートユニットを不燃建材よりなる型枠と一体化してなる吸遮音パネルをも提供するものである。 【0041】軽量吸音コンクリートをモルタル・コンクリート板と一体化する場合、モルタル・コンクリートの型枠部分と軽量吸音コンクリート部分とを同時成形した後、養生するのが好ましい。 同時成形に際しては、コンクリート型枠部分からモルタル分が分離し、軽量吸音コンクリート部分の空隙を大きく埋めることのないように、コンクリート型枠部分のコンクリート配合設計を行うことが必要である。 【0042】また、軽量吸音コンクリートとGRC板、 ケイカル板等の無機系建築ボード、モルタル・コンクリート板、鋼板等とを一体化する場合、モルタル、ポリマーモルタル等セメント系接着剤、エポキシ系、酢酸ビニル系などの有機系接着剤を用いて行う方法を採用することができる。 【0043】なお上記型枠と軽量吸音コンクリートとの接着強度が十分確保できない場合、上記各種型枠と軽量吸音コンクリートとの間にポリエステル、ポリプロピレンなどの不織布を介在させ、エポキシ系、酢酸ビニル系などの有機系接着剤を用いて一体化すると、より強固に接着することが可能である。 【0044】本発明の軽量吸音コンクリートおよびそれとコンクリートで作製した型枠とを一体化した吸遮音パネルの一例を図1に、また鋼板で作製した型枠と一体化した吸遮音パネルの一例を図2に示す。 両図とも(a) が平面図で(b)が断面図である。 これらの図に示すように、複数の軽量吸音コンクリート11をコンクリート型枠12または鋼板型枠13内に配置することにより吸遮音パネルが構成されている。 【0045】 【実施例】以下に実施例により、本発明を詳細に説明する。 【0046】(実施例1)骨材としてフライアッシュを主原料に製造された軽量骨材を用いた。 軽量骨材は、骨材A(14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが96重量%、吸水率18.7%、単位容積質量0.26kg/l)、骨材B(8メッシュ篩上以上4メッシュ篩下以下の範囲のものが94%、吸水率19.6 %、単位容積質量0.21kg/l)を使用した。 また参考のため骨材C(28メッシュ篩上以上14メッシュ篩下以下の範囲のものが98重量%、吸水率19.6 %、単位容積質量0.26kg/l)も使用した。 なお軽量骨材は、表面乾燥状態で使用した。 水和硬化性材料としては、普通ポルトランドセメント(以下、単に「セメント」という)を用いた。 【0047】骨材A、B、C1m 3に対し、セメント量300kg、水量75kg(水セメント比;25%)の配合割合で、ホバート型のモルタルミキサーで混練した後、型枠に投入し、振動成形(加振時間;30秒、振動数;4000rpm、振幅;0.5mmの条件)を行った。 なお、成形体の寸法は、幅100×長200×厚6 0mmとした。 【0048】振動成形後、即時に脱型を行い、20℃の湿空状態で5時間の前養生を行い、60℃まで2時間で昇温し、10時間の蒸気養生を行った。 その後、20℃ まで降温し、材令7日まで湿空養生を行った。 【0049】得られた成形体から、直径100×高60 mmの試験体を切出し、吸音率の測定に供した。 吸音率の測定は、JIS A 1405「管内法による建築材料の垂直入射吸音率測定方法」により行った。 【0050】測定結果を図3に示す。 図3は横軸に周波数をとり縦軸に垂直入射吸音率をとってこれらの関係を示すものであるが、この図から明らかなように、骨材A では吸音率の最大が600Hz前後に、骨材Bでは吸音率の最大が1000Hz前後になることが確認された。 また両骨材とも最大吸音率が90%以上と高い吸音性を示している。 これに対して参考のための骨材Cでは、吸音率の最大が、400Hz前後と低くなるが、最大吸音率が60%程度と吸音性が低いことが確認された。 【0051】(実施例2)実施例1により骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートとを積層してユニット化した。 骨材Aを用いた吸音コンクリート、骨材Bを用いた吸音コンクリートとも厚さ30mmとなるように調整し、実施例1と同じ方法で振動成形、養生を行い、厚さ60mmの積層成形体を作製した。 実施例1と同様に試験体を切出し、吸音率の測定を行った。 【0052】測定結果を図4に示す。 図4も図3と同様、周波数と垂直入射吸音率との間の関係を示すものであるが、この図から明らかなように、異なる粒度をもつ軽量骨材で作製した軽量吸音コンクリートを積層することにより、幅広い周波数で高い吸音率が得られることが確認された。 【0053】(実施例3)骨材A1m 3に対し、セメント量300kg、水量75kg(水セメント比;25 %)の配合割合とし、実施例1と同じ方法で成形体厚さを20、40、60、80mmに変えて作製した。 実施例1と同様に試験体を切出し、吸音率の測定を行った。 【0054】測定結果を図5に示す。 図5も周波数と垂直入射吸音率との間の関係を示すものであるが、この図から明らかなように、軽量吸音コンクリートの厚さを変えることにより、吸音率が最大となる周波数が異なることが確認された。 【0055】(実施例4)骨材A1m 3に対し、セメント量を150、200、250、300、350、40 0kgと変えて実施例1と同じ方法で成形体を作製した。 なお水量は、水セメント比を25%一定として加えた。 実施例1と同様に試験体を切出し、吸音率の測定を行った。 【0056】測定結果を図6に示す。 図6も周波数と垂直入射吸音率との間の関係を示すものであるが、この図から明らかなように、セメント量を増加することにより最大吸音率が低下していく傾向にある。 セメント量40 0kgを超えて配合した場合には、最大吸音率が80% 未満になることが予想され、セメント量は400kg以下とすることが必要であることがわかった。 【0057】(実施例5)実施例4と同じ条件で作製した成形体の曲げ強度およびかさ密度を測定した。 測定結果を図7に示す。 曲げ強度は、セメント量に比例し向上する。 図7に示すように、曲げ強度で4kgf/cm 2 以上と多孔質コンクリート系吸音材(商品名「ポアセル」、大同コンクリート製、曲げ強度;4kgf/cm 2 、圧縮強度;11kgf/cm 2 )より大きくするためには、セメント量250kg以上が必要であることが確認された。 【0058】なお、かさ密度はセメント量250〜40 0kgの範囲で0.6kg/l〜0.8kg/lであり、このようにして製造された吸音コンクリートが軽量であることが確認された。 【0059】また、これらの成形体のみかけ気孔率を測定した結果、セメント量250kgの場合58%、セメント量400kgの場合78%であった。 なお、みかけ気孔率は成形体内部ガスを真空置換しアルキメデス法にて測定した。 【0060】(実施例6)吸水率が比較的低い軽量骨材として、同様にフライアッシュを主原料に製造された骨材D(14メッシュ篩上以上8メッシュ篩下以下の範囲のものが91重量%、吸水率5.2%、単位容積質量0.91kg/l)を用いた。 骨材D1m 3に対し、セメント量250kg、400kgの2水準とし、実施例4と同様に成形体を作製し、吸音率の測定を行った。 【0061】測定結果を図8に示す。 図8も周波数と垂直入射吸音率との間の関係を示すものであるが、この図から、骨材の種類を変えても図6と同等の吸音率が得られることが確認された。 【0062】また、これらの成形体のみかけ気孔率を測定した結果、セメント量250kgの場合36%、セメント量400kgの場合55%であった。 また、かさ密度はそれぞれ1.1kg/l、1.4kg/lであった。 【0063】(実施例7)即時脱型後のハンドリング性を判断するために、実施例4と同じ条件で作製した脱型直後の成形体を500mm □ ×厚さ3.2mmの鋼板に乗せた。 次に一端を2cm持ち上げて落とした。 これを3回繰り返し、成形体の変形状況を観察した。 結果を表1に示す。 【0064】 【表1】 表1から、セメント量200kg以下では、成形体の変形が大きく、即時脱型後の移送等ハンドリングを行うのが困難と判断される。 従って、本発明の軽量吸音コンクリートに即時脱型成形プロセスを適用するためには、セメント量250kg以上が必要であることが確認された。 【0065】(実施例8)骨材A1m 3に対し、セメント量300kg、水量を60、75、90、105、1 20、135kg(水セメント比;20、25、30、 35、40、45%)と変えて、混練状況および振動成形の状況を観察した。 水セメント比20%では、混練時に骨材とセメントの均一混合を行うことができなかった。 水セメント比25%以上では、均一混合を行うことが可能であった。 水セメント比25%以上の混練物は、 直ちに振動成形を行ったが、水セメント比45%になると水が多すぎ、骨材とペーストが分離し、特に成形体下部は骨材間の空隙を埋めた状態となった。 従って、振動成形を行うためには、水セメント比を25〜40%の範囲とすることが必要であることが確認された。 【0066】(実施例9)図2で示したような軽量吸音コンクリートと鋼板による型枠とを一体化し、吸遮音パネルを作製した。 吸遮音パネルの寸法は、幅500×長1960×厚さ約60mmとした。 図9に示すように、 軽量吸音コンクリートの部分は、実施例1により骨材A で作製したもの(細粒軽量吸音コンクリート14)と骨材Bで作製したもの(粗粒軽量吸音コンクリート15) でかつ厚さ60mmとし、それらを交互に配置した。 軽量吸音コンクリートと鋼製型枠の接着は、目付け量50 g/m 2のポリエステル不織布をその間に介在させ、エポキシ樹脂により接着した。 なお鋼製の型枠は、厚さ1.6mmの鋼板を加工し作製した。 【0067】また軽量吸音コンクリートと普通コンクリートにより作製した型枠と一体成形した吸遮音パネルも同様に作製した。 吸遮音パネルの寸法を厚さ95mmとした以外は、鋼板製の型枠と一体化した吸遮音パネルと同じように軽量吸音コンクリートの配置を行った。 【0068】吸音率の測定は、JIS A 1409 「残響室法吸音率の測定方法」により行った。 測定は、 残響室内に吸遮音パネルを横方向に2個(1.96×2 =3.92m)、縦方向に6個(0.5×6=3.00 m)並べて行った。 【0069】測定結果を図10に示す。 図10は横軸に中心周波数をとり縦軸に残響室法吸音率をとってこれらの関係を示すものであるが、この図から明らかなように、上記鋼板製型枠およびコンクリート型枠を用いた本発明の吸遮音パネルは、いずれも幅広い周波数で高い吸音率を示すことが確認された。 【0070】(実施例10)ここでは、実施例2に示した、骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートとを積層してユニット化したものを、実施例9と同様に鋼製の型枠と一体化した吸遮音パネルを作製し、実施例9と同様に吸音率の測定を行った。 【0071】その測定結果を図11に示す。 図11も図10と同様、横軸に中心周波数をとり縦軸に残響室法吸音率をとってこれらの関係を示すものであるが、この図から明らかなように、このような積層タイプのものを用いた吸遮音パネルの場合にも、幅広い周波数で高い吸音率を示すことが確認された。 【0072】(実施例11)ここでは、実施例3と同様の方法で厚さ40mmおよび60mmの軽量吸音コンクリートを作製した。 そして、これらの軽量吸音コンクリートを図12に示すようにコンクリート製型枠と一体成形した吸遮音パネルを作製した。 この吸遮音パネルは、 その平面図を同図(a)、断面図を同図(b)に示すように、上記60mmの厚さを有する厚い軽量吸音コンクリート16と、40mmの厚さを有する薄い軽量コンクリート17を交互に配置したものであり、この吸遮音パネルを用いて実施例9と同様に吸音率の測定を行った。 【0073】その測定結果を図13に示す。 図13も図10、図11と同様、横軸に中心周波数をとり縦軸に残響室法吸音率をとってこれらの関係を示すものであるが、この図から明らかなように、このように厚さが異なる軽量吸音コンクリートを用いた吸遮音パネルの場合にも、幅広い周波数で高い吸音率を示すことが確認された。 【0074】(実施例12)実施例9で作製した、骨材Aを用いた軽量吸音コンクリートと骨材Bを用いた軽量吸音コンクリートとを交互に配置し、それぞれ鋼板型枠およびコンクリート型枠と一体化した吸遮音パネルの遮音性の測定を行った。 遮音性の測定は、JIS A 1 416「実験室における音響透過損失測定方法」により行った。 【0075】測定結果を図15に示す。 図15は横軸に中心周波数をとり縦軸音響透過損失をとってこれらの関係を示す図であり、音響透過損失が高いほど遮音性に優れていることとなる。 この図から明らかなように、鋼板製型枠およびコンクリート型枠を用いた本発明の吸遮音パネルは、いずれも高い遮音性を有することが確認された。 【0076】 【発明の効果】以上のように、本発明によれば、軽量骨材を用い、さらに、みかけ気孔率および全体のかさ密度を規定することにより、軽量性、吸音性、耐久性に優れた軽量吸音コンクリートが提供される。 また、このような軽量吸音コンクリートは、従来の多孔質コンクリート系吸音材のように厳しい製造条件を強いられることがなく通常のコンクリート製品と同等な製造プロセスで製造できる。 また骨材の粒径を規定することにより、一層高い吸音率をもち、かつ軽量な吸音コンクリートを得ることができる。 さらに、粒度の異なる軽量骨材で作製した軽量吸音コンクリートを配設しあるいは積層化してユニット化することにより、また異なる厚さの軽量吸音コンクリートを組合せてユニット化する等、最大吸音率が異なる2以上の軽量吸音コンクリートを組み合わせることにより、幅広い周波数の範囲で高い吸音性をもたせることが可能となる。 【0077】また、本発明によれば、軽量骨材を用い、 さらに所定量の水和硬化性材料および水を加えて、混練し、成形養生して軽量吸音コンクリートを製造するので、即時脱型プロセスが適用でき、新たな設備投資の必要がなく、高い生産性で軽量吸音コンクリートを製造することができる。 また水和硬化性材料および水の量を一定の範囲にすることにより、一層高い吸音性を得ることができる。 【0078】さらに、このような軽量吸音コンクリートまたは軽量吸音コンクリートユニットをGRC板、ケイカル板等の無機系建築ボード、モルタル・コンクリート板、鋼板等の不燃性建材よりなる型枠と一体化することにより、軽量でかつ耐久性が高く遮音性も付与された吸遮音パネルとすることができる。 【0079】本発明の軽量吸音コンクリートおよびそれを用いた吸遮音パネルは多くの特長をもち、本発明品を道路、鉄道、工場、産業用機器などの防音材料として用いれば、騒音の低減ができ、音環境の向上に貢献することができる等、極めて有用性が高い。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の軽量吸音コンクリートとコンクリートで作製した型枠とを一体化した吸遮音パネルの一実施例を示す図。 【図2】本発明の軽量吸音コンクリートと鋼板で作製した型枠とを一体化した吸遮音パネルの一実施例を示す図。 【図3】粒度の異なる軽量骨材で作製した軽量吸音コンクリートの垂直入射吸音率の測定結果を示す図。 【図4】粒度の異なる軽量骨材で作製した軽量吸音コンクリートを積層成形した、積層軽量吸音コンクリートの垂直入射吸音率の測定結果を示す図。 【図5】厚さを変えて作製した軽量吸音コンクリートの垂直入射吸音率の測定結果を示す図。 【図6】セメント量を変えて作製した軽量吸音コンクリートの垂直入射法吸音率の測定結果を示す図。 【図7】セメント量を変えて作製した軽量吸音コンクリートの曲げ強度およびかさ密度の測定結果を示す図。 【図8】骨材Dで作製した軽量吸音コンクリートの垂直入射吸音率の測定結果を示す図。 【図9】骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートを交互に配置し、鋼板製の型枠と一体化した吸遮音パネルを示す図。 【図10】骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートを交互に配置し、 コンクリート製の型枠又は鋼板製の型枠と一体化した吸遮音パネルの残響室法吸音率の測定結果を示す図。 【図11】骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートを積層成形した軽量吸音コンクリートと鋼製の型枠と一体化した吸遮音パネルの残響室法吸音率の測定結果を示す図。 【図12】骨材Aで厚さの異なる軽量吸音コンクリートを作製し、それを交互に配置してコンクリート製の型枠と一体化した吸遮音パネルを示す図。 【図13】骨材Aで厚さの異なる軽量吸音コンクリートを作製し、それを交互に配置してコンクリート製の型枠と一体化した吸遮音パネルの残響室法吸音率の測定結果を示す図。 【図14】骨材Aで作製した軽量吸音コンクリートと骨材Bで作製した軽量吸音コンクリートを交互に配置し、 コンクリート製の型枠又は鋼製の型枠と一体化した吸遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示す図。 【図15】日本道路公団統一型のメタル系ボックスタイプの防音壁を示す図。 【符号の説明】 11,14,15,16,17……軽量吸音コンクリート 12……コンクリート製型枠 13……鋼板型枠 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G10K 11/16 G10K 11/16 D 11/162 A |