【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、吸音性コンクリートとその二次製品、特に各種交通騒音や工場等から発生する騒音の防音材として適した吸音性コンクリート及びそれを用いて形成したコンクリート板に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、各種騒音の防音材として使用されている吸音性コンクリート板としては、連続した空隙をもつALC板や軽量骨材や砕石を骨材としたコンクリート板が知られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、前者のAL C板は、製造時にオートクレーブ養生を行なうための熱が必要であり、製作コストが高くつくと共に、強度的にも弱く、その平均空隙径は0.35mm以下と小さく、道路の防音壁に用いた場合、空隙が排ガス中のススや粉塵によって目づまりを起す傾向があり、長期的に吸音効果が低下するという問題がある。 【0004】また、後者のコンクリート板は、骨材をセメント系の結合材で単に結合しただけのものであり、極めて重量が大きくなり、取り扱いに不便であると共に、 吸音性は低いという問題がある。 【0005】そこで、この発明の課題は、熱を用いることなく低エネルギーで製作でき、嵩比重が低く取り扱いが便利で吸音性に優れ、比較的強度の高い吸音性コンクリート二次製品を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決するため、第1の発明は、主材として水、セメント、気泡発生剤、減水剤を用い、場合によってはポリマーエマルジョンやアクリル系またはセルロース系等の粘稠な高分子系の混合物、または微粒のポゾラン質物質を添加してそれらの混合物を結合材とし、骨材間空隙の15〜5 0%量の前記結合材を用いて骨材を結合することにより、骨材間に連続空隙を形成し、前記結合材が発泡により内部に空隙を有している構成としたものである。 【0007】第2の発明は、主材として水、セメント、 気泡発生剤、減水剤を用い、場合によってはポリマーエマルジョンやアクリル系またはセルロース系等の粘稠な高分子系の混合物、または微粒のポゾラン質物質を添加してそれらの混合物を結合材とし、骨材間空隙の15〜 50%量の前記結合材を用いて骨材を結合することにより成形体を形成し、前記骨材間に連続空隙を有し、かつ結合材が発泡により内部に空隙を有している構成としたものである。 【0008】この発明において、骨材が、火山れき、軽石および人工軽量骨材のうちから選ばれた表面が大きな凹凸を有するものや、この骨材の内部空隙と結合材の空隙が連通している構造とすることもできる。 【0009】また、結合材に繊維質材料を混合または敷設したり、骨材を結合材で結合することによって形成される板状体の板厚を表面の凹凸によって変化させたりすることもできる。 【0010】 【作用】骨材を結合する結合材で連続空隙を形成しているため、音波のエネルギーが連続空隙内に侵入し、空隙表面と摩擦して熱エネルギーに変換されると共に、結合材が連続空隙を有しているため、音波エネルギーはこの空隙内にも侵入し、一部空隙内で共鳴をも起し、効果的に吸収される。 【0011】また、骨材に、内部に連続空隙を有するものを使用すると、骨材の内部にまで音波のエネルギーが侵入し、吸音性能が一層上昇する。 【0012】更に、繊維素材を分散混入または連続繊維を敷設すると、空隙内を横切る繊維に音波エネルギーが当り、音波エネルギーが振動エネルギーに変換され、吸音性能がより一層向上する。 【0013】 【実施例】以下、この発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。 【0014】図1(A)、(B)、(C)に示すように、骨材1を結合してコンクリート板を成形するための結合材2は、主材として、セメント、水、気泡発生剤、 高性能減水剤またはAE減水剤を用い、場合によっては、ポリマーエマルジョンやアクリル系またはセルロース系等の粘稠な高分子系の混合物または微粒のポゾラン質物質を添加してそれらを混合することにより形成され、前記骨材間空隙(骨材自体の内部空隙を除く)の1 5〜50%量の前記結合材2を用い、この結合材2と骨材1を均等に混合することによって骨材1に結合材2をまぶし、これによって結合材2で骨材1を結合し、骨材1を包む結合材2間に連続空隙3を有するコンクリートを形成し、このコンクリートを成形体に成形することによりコンクリート板を形成する。 【0015】上記骨材1は、火山れき、軽石、および人工軽量骨材のうちから選び表面が大きな凹凸を有するものを選ぶ。 なお、この凹凸は、0.3mm以上のものが好ましい。 【0016】図1(A)に示した骨材は、内部に空隙のないものを示したが、図1(B)と(C)の骨材1はシラス軽石のように、内部に連続空隙1aを有するものを使用している。 【0017】前記結合材2は、各骨材1の表面を略均一な厚みで包む状態になり、気泡発生剤の混合により発泡し、連続空隙2aを有することになると共に、その表面は凹凸面になる。 【0018】図1(B)、(C)のように、骨材1に空隙1aを有するものを使用すると、結合材2の空隙2a と骨材1の空隙1aとは互に連通することになる。 【0019】図1(C)は、結合材2に、繊維質材料4 を混合または敷設し、吸音性能を向上させており、繊維質材料4の好ましい寸法は、直径5〜10μm、長さ2 〜7mmである。 【0020】なお、骨材1に対する結合材2の量は、骨材間空隙の15%以下であると結合強度が弱くなり、また、50%以上になると、連続空隙3の十分な量の確保が不可能になる。 【0021】図2は、骨材1を結合材2により結合して形成したコンクリートを用いて成形したコンクリート板5の一例を示し、表面に矩形状の凸部6と凹部7を並べて設けることにより、コンクリート板5の厚みを凸部6 と凹部7によって交互に変化させ、吸音効果の向上を図っている。 【0022】この発明のコンクリートとこれを用いた二次製品は上記のような構成であり、骨材1を結合材2で結合したコンクリートを成形することにより、図2で例示したようなコンクリート板5を形成し、各種交通騒音や工場騒音等の防音壁を構成する防音材として使用する。 【0023】コンクリート板5を防音材として使用した場合、連続空隙3を有するため、音波のエネルギーがこの連続空隙3内に侵入し、結合体2の表面と摩擦して熱エネルギーに変換されるために吸音効果が発生する。 【0024】連続空隙3の周囲を形成する結合体2の表面は凹凸面になっているので吸音効果が優れていると共に、結合体2は発泡による連続空隙2aを有し、かつ骨材1に連続空隙1aを有するものを使用すると、音波エネルギーは、上記空隙2aから骨材1の連続空隙1a内にも侵入することになり、これら連続空隙2a及び連続空隙1aにより吸音作用が生じ、一段と吸音効果が向上する。 【0025】なお、コンクリートは、現場打によって防音壁の形成に直接使用することができる。 【0026】更に、結合材2内に繊維質材料4を混合または敷設しておくと、連続空隙3と連続空隙2aにおいて、これらを横切る繊維に音波エネルギーが当り、音波エネルギーを振動エネルギーに変換することにより、吸音効果がより一層向上する。 【0027】 【実施例1】次に、この発明の吸音コンクリート板の具体的な製造方法とその特性について述べる。 【0028】結合材は、水、普通セメント、気泡発生剤としてアルミニウム粉末、ナフタリン系の高性能減水剤の混合物を使用した。 それらの割合は、水:25wt %、セメント:100wt%、気泡発生剤:1wt%、 高性能減水剤:1wt%とした。 結合剤の性質は、骨材をまぶし、しかも垂れ落ちないような適当な粘度状態(降伏値:0.6g/cm 2 、塑性粘度:20−30po ise)のものを用いた。 これは高性能減水材の添加量によって調整可能である。 【0029】骨材は吸音効果と軽量化を図る点から鹿児島産の軽石(粒径:2.4−4.0mm、見掛け比重: 1.23、空隙率46.0%)を用いた。 【0030】骨材と結合材の混合割合は、骨材空隙(単粒子骨材の空隙を除く)を体積で20%充填する結合材量とした。 【0031】製造方法は所定量の骨材と結合材を計量し、強制ミキサーによって攪拌したコンクリートを、凹凸のある板状の型枠に打設した。 製造時には所望の結合材を先に準備し、所定量の骨材と練り混ぜることが望ましい。 しかし施工の迅速化を図る場合には、混和剤が添加された結合材のまだ固まらないレオロジー状態を確認したうえ使用骨材と同時に練り混ぜても差し支えない。 【0032】吸音率の測定はB&K(ブリュエル クエール社)製の吸音率測定装置を用い、JIS A 14 05「管内法による建築材料の垂直入射吸音率測定法」 に準じ、供試体厚さを5、7.5、10cmにそれぞれ変化して実施した。 吸音周波数と吸音率との関係を図3 (A)に示す。 【0033】上記混合物を直径:5cm、高さ:10cmの型枠につめ2日後脱型、湿潤養生をおこなった材令28 日における圧縮強度は、35〜37kgf/cm 2となった。 【0034】一般の交通騒音周波数は、400ヘルツ(Hz)〜1600(Hz)とされており、それらの周波数帯をカバーする吸音板が望ましい。 特にそのうち影響の大きい400Hz〜1000Hzを吸音する特性を検討してみる。 前記配合したコンクリートを用いた板厚さ5cm、7.5cm、10cmの3板が400Hz〜100 0Hzを吸音する面積率は80.5%となり、かなり高い吸音率を示した。 【0035】次に、前記配合のコンクリートにおいて、 気泡発生剤としてアルミニウム粉末をセメントに対し1 %添加した配合のものを用い、このコンクリートで形成した吸音板で同様の実験を行なった結果を図3(B)に示す。 【0036】この結果により、各厚さを変えた板のピーク周波数は高周波数側に移動するが、吸音周波数帯は広くなり、吸音特性が改良されていることがわかる。 【0037】また、板厚さ、5cm、7.5cm、10cmの3板が400Hz〜1000Hzを吸音する面積率は、 85.6%となり、この点からも気泡発生剤としてアルミニウム粉末の混入が効果があることがわかる。 【0038】 【実施例2】実施例1の混合材にカーボン繊維(比重: 1.05,直径:0.007mm、長さ:5〜7mm)を結合材の体積に対して2%混合すると、吸音率は騒音周波数である400Hzから1000Hzの面積率にして4 〜5%上昇した。 また4×4×16cmの曲げ強度試験の結果、曲げ強度は無混入のものが8.5kg/cm 2であるのに対して9.2kg/cm 2となり7%以上上昇した。 【0039】 【発明の効果】以上のように、この発明によると上記のような構成であるので、以下に列挙する効果がある。 【0040】(I)骨材を骨材間空隙の15〜50%量の結合材で結合し、結合材で包まれた骨材間に連続空隙を形成したので、この空隙に侵入した音波エネルギーを空隙の周囲で熱エネルギーに変化し、効率よく吸音することができるので、吸音効果が優れたコンクリートとなり、現場打の防音壁や吸音板を形成することができる。 【0041】(II)結合材は、気泡発生剤を含んで発泡するので、空隙が生じ、音波エネルギーがこの空隙内にも侵入するので、吸音効果が一段と向上する。 【0042】(III )従来の吸音コンクリートに見られるように、オートクレーブ養生のような熱を用いて製造することなく、発泡剤の入ったセメント系結合材を骨材にまぶすことにより製造できる。 また製品としたコンクリート部材の嵩比重は、軽量な骨材を用いると低く、比較的強度の高い吸音コンクリート板となる。 【0043】(IV)骨材に連続空隙のある多孔質骨材を用いると、結合材の空隙と連続になり吸音特性をさらに改善した吸音性コンクリート板を提供することができる。 【0044】(V)繊維質材料を併用することにより、 製品の強度と吸音特性を一層改善した吸音性のあるコンクリート板を提供することができる。 【0045】(VI)板厚さを交互に変化させることにより、吸音する周波数帯を自由に選択することができるコンクリート製品を提供することができる。 【0046】(VII )鹿児島産の軽石のような火山石を骨材として用いることは、資源の有効利用が図れる。 【図面の簡単な説明】 【図1】(A)は骨材を多孔質結合材を用いたまぶしコンクリートの断面図、(B)は多孔質骨材と多孔質結合材を用いたまぶしコンクリートの断面図、(C)は同上に単繊維を混入させたまぶしコンクリートの断面図 【図2】(A)は吸音コンクリート板の平面図、(B) は(A)の矢印b−bに沿う断面図、(C)は(A)の矢印c−cに沿う断面図 【図3】(A)は吸音周波数と吸音率の関係をグラフで示す説明図、(B)は気泡発生剤を添加した場合の吸音周波数と吸音率の関係をグラフで示す説明図 【符号の説明】 1 骨材 1a 連続空隙 2 結合材 2a 連続空隙 3 連続空隙 4 繊維質材料 5 コンクリート板 6 凸部 7 凹部 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 E01F 8/00 8/02 //(C04B 28/02 14:02 B 14:16) |