Method of manufacturing the high-heat-resistant polypropylene fiber

申请号 JP2001105741 申请日 2001-04-04 公开(公告)号 JP4596672B2 公开(公告)日 2010-12-08
申请人 日本ポリプロ株式会社; 发明人 賢治 小林; 智朗 山口; 徹 松村; 淳一 西村;
摘要
权利要求
  • アイソタクチックペンタッドフラクションが96%以上98.5%未満であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を溶融成形後、延伸してなるポリプロピレン繊維またはヤーン の製造方法であって、 延伸後の拘束状態で測定した融解ピークが180℃以上であるポリプロピレン繊維またはヤーンを、拘束緊張下で170〜195℃で2〜60分間熱処理を施すことを特徴とする、 170℃、10分間における熱収縮率が10%以下、融解ピーク温度が178℃以上である セメント補強用高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーン の製造方法
  • 说明书全文

    【0001】
    【発明の属する技術分野】
    本発明は、高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンに関し、特にセメント補強用繊維として用いる高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンに関する。
    【0002】
    【従来の技術】
    従来から建材用途として内装材、外装材、屋根材等にセメント成形物が使用されている。 これらセメント成形物の補強用繊維としては、従来からアスベスト繊維を添加した製品が広く使用されているが、近年、特に環境問題が厳しくなるにつれアスベストの健康への悪影響が問題視され、この代替繊維の使用が年々増加傾向にある。 このアスベストを代替する補強用繊維としては、近年、人体に悪影響のない代替繊維として、特にポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等のポリオレフィン繊維が使用され始めている。
    【0003】
    セメントはその成形を行う段階で、養生過程を必要とする。 養生はオートクレーブ内(10kgf/cm )で170〜180℃、数十時間行うものである。 しかしながら、通常のポリプロピレン繊維では融点が160〜165℃であるため、この養生に耐えきれず融解してしまい、養生終了後にセメントコンクリート中にポリプロピレンが繊維として存在しない問題が生じてくる。 セメントコンクリートの養生温度を165〜170℃に下げれば、養生に長時間必要となり生産性低下を引き起こす等の問題があった。
    【0004】
    【発明が解決しようとする課題】
    本発明の目的は、上記の観点から、セメント補強材として、オートクレーブ養生温度175〜180℃で融解せず、形態保持性に優れた高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンを提供しようとするものである。
    【0005】
    【課題を解決するための手段】
    本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を行った結果、特定の立体規則性および流動性を有するホモポリプロピレン樹脂を溶融延伸後に拘束緊張下、特定温度で熱処理することにより、高温下の熱収縮率を低く抑え、かつ融解ピーク温度を高くすることができることを見出し、本発明を完成した。
    【0006】
    すなわち、本発明の第1の発明は、アイソタクチックペンタッドフラクションが96%以上98.5%未満であり、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜30g/10分であるホモポリプロピレン樹脂を溶融成形後、延伸してなるポリプロピレン繊維またはヤーンの製造方法であって、 延伸後の拘束状態で測定した融解ピークが180℃以上であるポリプロピレン繊維またはヤーンを、拘束緊張下で170〜195℃で2〜60分間熱処理を施すことを特徴とする、 170℃、10分間における熱収縮率が10%以下、融解ピーク温度が178℃以上であるセメント補強用高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンの製造方法である。
    【0010】
    【発明の実施の形態】
    以下、本発明について詳細に説明する。
    1. ポリプロピレン樹脂本発明におけるポリプロピレン樹脂は、立体規則性の指標であるアイソタクチックペンタッドフラクション(以下、IPFと略す。)が96%以上98.5%未満であって、かつ230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(以下、MFRと略す。)が0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜25g/10分を満足するホモポリプロピレン樹脂である。 IPFが96%未満であると、ホモポリプロピレン自身並びにその繊維成形物の融解温度が低くなり、セメント補強材として不適であり、一方、IPFが98.5%以上であると、溶融紡糸時に溶融樹脂の結晶化が著しく早くなることに伴い、糸揺れ等の紡糸安定性が損なわれる。 また、MFRが0.1g/10分未満であると、溶融成形(おもに繊維の紡糸)時にダイス出口の圧が上昇しすぎるため好ましくなく、一方、MFRが30g/10分を超えると、ポリプロピレン樹脂中に高分子量成分が少なくなり、延伸後の繊維またはヤーンに配向結晶が少なくなり、その結果として繊維またはヤーンの融解温度が低くなり、セメント補強材として不適となる。 さらに、ホモポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)が、3.5〜12であることが好ましく、特に4〜9であることが好ましい。
    【0011】
    本発明で用いるホモポリプロピレン樹脂には、使用目的に応じて適宜従来公知のポリオレフィン用改質剤を併用することができる。 例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶造核剤、有機カルボン酸、帯電防止剤、界面活性剤、中和剤、分散剤、エポキシ安定剤、可塑剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、充填剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、顔料等である。 酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びビタミン類等が挙げられる。 分散剤をかねた中和剤としては、金属石鹸、ハイドロタルサイト類、リチウムアルミニウム複合酸化物塩、ケイ酸塩、金属酸化物、金属水酸化物等が挙げられる。 また、セメント中での繊維またはヤーンの分散性を向上させるために、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等の親水性のポリマーを0.1〜20重量部の範囲内で添加することも有効である。
    【0012】
    2. 高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンの製造方法本発明の高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンは、上記ホモポリプロピレン樹脂を未延伸繊維に溶融成形後、延伸して繊維またはヤーンとし、さらに、拘束緊張下に熱処理を施して得られる。
    【0013】
    未延伸繊維の製造は、ホモポリプロピレン樹脂原料をペレット状又はパウダー状にして、一般に溶融押出成形法により行われる。 例えば、マルチフィラメント溶融紡糸装置やモノフィラメント溶融紡糸装置を用い、未延伸糸を得る。 またフラットダイあるいはリングダイを通して押し出した後に裁断することにより延伸用テープ(スプリットヤーン)が得られる。 次いで、延伸装置で延伸する。
    【0014】
    延伸操作は、1段あるいは2段以上の多段で行うことができる。 延伸温度は70〜150℃の範囲で、オーブン、熱板、加熱ドローロール、遠赤外線、温水(湿熱)等を熱源として延伸操作を行う。 延伸倍率は、繊維の場合は1.5〜10倍、好ましくは2〜7倍、ヤーンの場合は2〜20倍、好ましくは4〜18倍である。 延伸操作を多段で行う場合は、段階的に温度を上げ、最終的に160〜195℃の温度領域で延伸操作を行うこともできる。 この場合は、後述の熱処理を簡略化または省略することもできる。 すなわち、延伸の際のドローロール温度を160〜190℃に設定することにより、インラインで拘束緊張下の熱処理を施すことができる。
    【0015】
    延伸ポリプロピレン繊維またはヤーンは、拘束状態で測定した融解ピーク温度が180℃以上にあることが好ましい。 すなわち、後述の熱処理前の延伸ポリプロピレン繊維またはヤーンを拘束した状態、具体的には、繊維が収縮しないようにアルミ板等の金属に巻き付けた後、DSC測定用パンに投入した状態で、走査速度10℃/分で測定した結果の融解ピークが180℃以上にあることにより、後述の熱処理に耐えられる繊維又はヤーンとすることができる。 当該融解ピークが180℃を下回る場合は、繊維またはヤーンが高温での拘束緊張下の熱処理時に融解してしまうため好ましくない。
    【0016】
    上記の延伸して得られたポリプロピレン繊維またはヤーンは、拘束緊張下、170〜195℃で熱処理を施す。 従来、一般に120〜160℃、好ましくは130〜150℃の範囲で、熱処理が行われていたが、本発明においては、延伸繊維を拘束緊張し、高温で熱処理することにより、配向結晶部の結晶化が進行しやすくなり、高融点化がもたらされ、本来の融点以上の温度においても延伸繊維、ヤーンは融解せず、得られる繊維は低収縮率であり、高融点になることを見出したものである。
    【0017】
    すなわち、拘束緊張下で、熱処理温度170〜195℃、好ましくは175〜190℃、熱処理時間2〜60分、好ましくは5〜40分間、熱処理を行うことにより、ポリプロピレン繊維の170℃、10分間における熱収縮率を10%以下、好ましくは175℃、10分間における熱収縮率を10%以下にすることができる。 さらに、DSC測定における融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度を高温側にシフトさせることができ、融解ピーク温度を178℃以上にすることができる。 熱処理温度が170℃未満であると、低延伸倍率の繊維、ヤーンでは融解ピーク温度は173℃程度までしか到達せず、195℃を超えると、繊維またはヤーンが融解するため熱処理が不可能となる。
    【0018】
    3. セメント補強用繊維及び強化セメント成形物本発明の高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンは、前述のように高温下の熱収縮率が低く、融点が高温側にシフトしているので、セメント補強用繊維として用いることができる。 特に、175〜180℃のセメントコンクリートのオートクレーブ養生を行っても、その形態は保持され、強化材としての機能を十分に発揮する。
    【0019】
    本発明の高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンをセメント補強材として適用する場合のセメントとしては、例えば、通常ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、シリカセメント、マグネシアセメント、ポゾランセメント等の水硬性セメント、石膏、石炭などの気硬性セメント、耐酸セメントなどの特殊セメント等を挙げることができる。
    【0020】
    また、上記セメントを用いたセメント組成物としては、例えば、上述したセメントのうち1種または2種以上に炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムまたはチタンホワイトなどの無機材料や、必要に応じて小石、砂などの骨材、パルプ、パラフィン、ワックス、レゾール型フェノール樹脂などの熱硬化性水溶性樹脂、各種のポリマーエマルジョン、硬化促進剤、硬化遅延剤、減水剤などを配合することにより得ることができる。 このセメント組成物を硬化させる場合には、セメント組成物に水を加える際のセメントと水との混合比、いわゆるC/W比は、1〜10の範囲とすることが好ましい。 C/W比が1未満では水の量が多くなりすぎ、セメント硬化物の強度が十分に高くならず、10を超えるとセメント組成物の流動性が悪化する。
    【0021】
    本発明の高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンをセメント補強材として用いるに際しては、その形状によって使用する形態が異なる。 例えば、ヤーンをセメント補強材とする場合には、上記セメント組成物が完全に硬化していない段階で、ヤーンをロックボルトなどによりセメント組成物の半硬化物に固定し、さらにセメント組成物を供給する方法等が用いられる。 また、繊維をセメント補強材として用いる場合には、好ましくは繊維を3〜30mmの長さに切断した後、上記セメント組成物中に混入して用いるのが好ましい。 この場合、繊維長が30mmを超えると、セメント組成物中に均一に分散しづらくなり、逆に3mm未満であると、十分な補強効果を得ることができなくなるので好ましくない。
    【0022】
    また、セメント補強材を混入させる量は、セメント組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましく、特に0.5〜15重量部が好ましい。 セメント補強材の量が0.1重量部未満では、十分な補強効果を得ることができず、30重量部を超えるとセメント補強材が均一に分散しづらくなる。
    【0023】
    なお、ポリプロピレン繊維またはヤーンを、セメント補強材としてセメント組成物等に混入する際には、セメント等との親和性を高めるために、界面活性剤等で処理を行うのが好ましい。
    【0024】
    本発明の高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンを用いた繊維強化セメント成形物としては、種々のセメント製品が挙げられる。 例えば、テトラポットなどの水中構造物、橋梁、トンネル等の道路や鉄道用構造物、ビル、住宅(内装材、外装材)、壁面など構造物、護岸ブロック、瓦等を挙げることができる。
    【0025】
    【実施例】
    以下に、実施例で本発明を説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。 なお、実施例における試験法は以下の通りである。
    【0026】
    (1)IPF:エイ・ザンベリー(A.Zambelli)らによってMacromolecules,6巻,925頁(1973)に発表された方法に従い、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル( 13 C−NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。 すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してアイソタクチック結合したプロピレン単位の分率である。 但し、ピークの帰属に関しては、Macromolecules、8巻、687頁(1975)に記載の上記文献の訂正版に基づいて行った。 具体的には、 13 C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中mmmmピークの強度分率をもってアイソタクチックペンタッド単位を測定した。
    【0027】
    (2)MFR:JIS K 7210により荷重2.16kg、230℃にて測定した。
    (3)Mw/Mn(分子量分布):GPCにて測定した。
    【0028】
    (4)拘束下の融解ピーク温度:繊維またはヤーンのサンプル約4mgをアルミ板に巻き付け昇温中に繊維が収縮しないように調整し、室温から走査温度10℃/分にて融解ピーク温度を測定した。
    【0029】
    (5)融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度及び融解終了温度:DSC(示差走査熱量測定)により、延伸繊維またはヤーンのサンプル約10mgについて、室温から走査温度10℃/分にて測定した。 ただし、融解ピーク立ち上がり温度は、ベースラインと融解ピーク立ち上がり接線との交点とした。
    【0030】
    (6)熱収縮率:ポリプロピレン繊維またはヤーンを170℃、175℃のオーブン中で10分間保持し、収縮した割合を熱収縮率とした。
    【0031】
    (7)オートクレーブ養生後の繊維形態保持性:オートクレーブ内で養生後、コンクリートテストピースを割り、その断面に残っている繊維の状態形状から下記の基準で評価した。
    ○:断面の糸の形状が完全に残った状態のもの。
    △:断面の糸の形状が一部溶けて形態変化が見られるもの。
    ×:断面の糸の形状が溶けて形態変化が著しいもの。
    【0032】
    実施例1
    IPFが97.2%、MFRが1.5g/10分、分子量分布が4.5のホモポリプロピレンパウダーに、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)]メタン及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)を各々0.05重量部、中和剤としてカルシウムステアレートを0.05重量部加え、スーパーミキサーを用いてブレンドした後、50mmφの押出成形機にて230℃、75rpmのスクリュー回転数で溶融混練し、ペレット状のポリプロピレンを得た。
    【0033】
    これをギアポンプ付きマルチフィラメント紡糸機(ダイス:0.8mmφ×30穴)を用いて、紡糸温度280℃、巻取速度300m/分で溶融紡糸し、約20デニールの未延伸糸を得た。 次いで、フィードスピード50m/分、フィードロール温度90℃、延伸点のヒーター温度130℃、ドローロール温度160℃の条件下で延伸を行い、最高延伸倍率4.0倍で、3.7倍延伸糸を得た。 延伸糸の拘束下の融解ピーク温度を測定したDSCチャートを図1に示す。 融解ピーク温度は201℃であった。
    【0034】
    得られた延伸糸を熱により収縮しないように、両端を固定した後、180℃のギアーオーブン中に30分間入れ、熱処理を施し、耐熱性ポリプロピレン繊維を得た。 得られた繊維の融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度及び熱収縮率を測定した。 その結果を表1に示す。 なお、融解ピーク温度等を測定したDSCチャートを図2に示す。
    【0035】
    上記のようにして得られた熱処理後の延伸繊維にセメントとの親和性を高めるためにポリオキシアルキレングリコール系界面活性剤(商品名:レオコン1015B、ライオン社製)を塗布(繊維に対して0.1重量%))し、長さ15mmに切断した後、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、8号珪砂、パルプ及び水を重量比で、普通ポルトランドセメント:珪砂:パルプ:水=100:100:3:60となるように配合してなるセメント組成物中に投入し、オムニミキサーを用いて攪拌混合させた。 なお、セメント組成物と上記繊維状セメント補強材との混合比は、容量比でセメント組成物:繊維状セメント補強材=100:1とした。
    【0036】
    上記のようにして得られたセメント−繊維状セメント補強材混合物を、長さ80mm、幅30mm、高さ20mmの型枠中に流し込み、次のような常圧蒸気養生を1日、次いでオートクレーブ養生を1日行った。 得られたコンクリートテストピースを割って繊維形態を観察した。 その結果を表1に示す。
    【0037】
    常圧蒸気養生:23℃で2〜5時間養生した後、65℃まで20℃/時間の速度で上げた後、3〜5時間等温養生をする。 その後10〜15時間かけて23℃までゆっくりと冷却する。
    【0038】
    オートクレーブ養生:脱型した後、オートクレーブ釜へ投入し、3時間かけて160℃、10気圧まで加熱、加圧した後、3時間等温等圧を保つ。 その後1時間かけて180℃、10気圧まで加熱加圧し、次に釜の外壁の空間に水を張り7〜10時間かけて冷却する。
    【0039】
    表1及び図2に示すとおり、170℃、10分間の熱収縮率は0%であり、DSC測定による繊維状セメント補強材そのものの融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度は、それぞれ175℃、179℃、184℃で、従来に比べ格段の融点上昇がみられ、その結果、180℃におけるオートクレーブ養生後においてもその繊維形態を保持していることが確認された。
    【0040】
    実施例2
    熱処理温度を183℃とした以外は、実施例1と同様にして延伸倍率3.7倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして試験サンプルを得た。 結果を表1及び図2に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は0%であり、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ177℃、182℃、187℃と格段の融点上昇が見られ、180℃におけるオートクレーブ養生後においてもその繊維形態を保持していることが確認された。
    【0041】
    実施例3
    IPFが96.8%、MFRが0.5g/10分、分子量分布が4.7のホモポリプロピレンパウダーを用いた以外は、実施例1と同様にして延伸倍率3.2倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして試験サンプルを得た。 結果を表1及び図2に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は0%であり、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ176℃、181℃、185℃と格段の融点上昇が見られ、180℃におけるオートクレーブ養生後においてもその繊維形態を保持していることが確認された。
    【0042】
    実施例4
    IPFが97.0%、MFRが2g/10分、分子量分布が4.5のホモポリプロピレンパウダーに酸化防止剤としてテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)]メタン及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(いずれもチバスペシャルティケミカルズ社製)を各々0.05重量部、中和剤としてカルシウムステアレートを0.05重量部、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25B;日本油脂社製)を0.04重量部加え、スーパーミキサーを用いてブレンドした後、50mmφの押出成形機にて230℃、75rpmのスクリュー回転数で溶融混練し、MFRが10g/10分、分子量分布が3.7のペレット状のポリプロピレンを得た。
    【0043】
    これをギアポンプ付きマルチフィラメント紡糸機(ダイス:0.8mmφ×30穴)を用いて、紡糸温度280℃、巻取速度300m/分で溶融紡糸し、約20デニールの未延伸糸を得た。 次いで、フィードスピード50m/分、フィードロール温度90℃、延伸点のヒーター温度130℃、ドローロール温度160℃の条件下で延伸を行い、4.5倍延伸糸を得た。 延伸糸の拘束下の融解ピーク温度を測定したDSCチャートを図1に示す。 融解ピーク温度は183℃であった。
    【0044】
    得られた延伸糸を熱により収縮しないように、両端を固定した後、180℃のギアーオーブン中に30分間入れ、熱処理を施し、耐熱性ポリプロピレン繊維を得た。 得られた繊維の融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度及び熱収縮率を測定した。 その結果を表1及び図2に示す。
    【0045】
    得られた耐熱性ポリプロピレン繊維の繊維状セメント補強材を用い、実施例1と同様にオートクレ―ブ養生後の形態を観察した。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は0%であり、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ174℃、179.5℃、185℃と格段の融点上昇が見られ、180℃におけるオートクレーブ養生後においてもその繊維形態を保持していることが確認された。
    【0046】
    比較例1
    延伸時のドローロール温度を110℃し、熱処理を施さなかった以外は、実施例1と同様にして延伸倍率3.7倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして各種物性値を測定し、オートクレ―ブ養生後の形態を観察した。 その結果を表1及び図2に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は77%であり、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ158℃、165℃、173℃と融点は低く、180℃におけるオートクレーブ養生後において、その繊維形態は保持されていないことが確認された。
    【0047】
    比較例2
    延伸時のドローロール温度を110℃し、熱処理温度を165℃とした以外は、実施例1と同様にして延伸倍率3.7倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして各種物性値を測定し、オートクレ―ブ養生後の形態を観察した。 その結果を表1及び図2に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は65%であり、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ167℃、169℃、177℃と融点は低く、180℃におけるオートクレーブ養生後において、その繊維形態はほとんど保持されていないことが確認された。
    【0048】
    比較例3
    IPFが94.2%、MFRが2g/10分、分子量分布が5.2のホモポリプロピレンパウダーを用い、ドローロール温度を110℃、熱処理温度を155℃とした以外は、実施例1と同様にして延伸倍率4.0倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして各種物性値を測定し、オートクレ―ブ養生後の形態を観察した。 その結果を表1に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は融解して測定できず、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ158℃、163℃、168℃と融点は低く、180℃におけるオートクレーブ養生後において、その繊維形態は保持されていないことが確認された。
    【0049】
    比較例4
    比較例3において、熱処理温度を170℃としたところ、熱処理中に繊維が溶融してしまい、繊維状セメント補強材を得ることができなかった。
    【0050】
    比較例5
    IPFが96.7%、MFRが40g/10分、分子量分布が4.2のホモポリプロピレンパウダーを用い、紡糸温度を250℃、ドローロール温度を110℃、熱処理温度を160℃とした以外は、実施例1と同様にして延伸倍率5.0倍の繊維状セメント補強材を得、かつ実施例1と同様にして各種物性値を測定し、オートクレ―ブ養生後の形態を観察した。 その結果を表1に示す。 その結果、170℃、10分間の熱収縮率は融解して測定できず、DSC測定による融解ピーク立ち上がり温度、融解ピーク温度、融解終了温度はそれぞれ161℃、166℃、173℃と融点は低く、180℃におけるオートクレーブ養生後において、その繊維形態は保持されていないことが確認された。
    【0051】
    比較例6
    比較例5において、熱処理温度を170℃としたところ、熱処理中に繊維が溶融してしまい、繊維状セメント補強材を得ることができなかった。
    【0052】
    【表1】

    【0053】


    【発明の効果】


    本発明のポリプロピレン繊維またはヤーンは、高立体規則性で特定の流動性のホモポリプロピレン樹脂を用い、延伸後の拘束緊張下に高温で熱処理を行っているので、高温での熱収縮率低く、融点の高い高耐熱性ポリプロピレン繊維またはヤーンであるので、セメント補強用繊維として用いても、過酷な養生下においてその繊維形態が維持され、補強剤としての効果を十分に発揮できる。


    【図面の簡単な説明】


    【図1】実施例1、2、4で得られた延伸糸の拘束状態でのDSC測定チャートである。


    【図2】実施例、比較例で得られた熱処理後の繊維のDSC測定チャートである。

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