コーディエライトガラスセラミック、その製造および使用

申请号 JP2017198564 申请日 2017-10-12 公开(公告)号 JP2018062461A 公开(公告)日 2018-04-19
申请人 ショット アクチエンゲゼルシャフト; Schott AG; 发明人 ベアント リューディンガー; ビアンカ シュレーダー; マルトゥン ホヴハニスヤン; マイケ シュナイダー; オリヴァー ホーホライン;
摘要 【課題】低い膨張係数および高い弾性率を提供しかつ不利な気孔率を有しない改善されたガラスセラミックを提供する。 【解決手段】本発明は、改善されたコーディエライトガラスセラミックに関する。材料特性を改善するために、SiO 2 、Al 2 O 3 、MgOおよびLi 2 Oを有するガラスセラミックは、主結晶相としてコーディエライトを含み、かつガラスセラミックの副結晶相は、高温型 石英 混晶および/またはキータイト混晶を含むことが提案される。さらに、本発明は、このようなガラスセラミックの製造方法、およびこのようなガラスセラミックの使用に関する。 【選択図】なし
权利要求

主結晶相としてコーディエライトを有し、かつ副結晶相は、高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を含む、SiO2、Al2O3、MgOおよびLi2Oを含むガラスセラミック。前記高温型石英混晶および/または前記キータイト混晶はリチウム含有である、請求項1記載のガラスセラミック。温度範囲(−20;50)および/または温度範囲(−10;50)でゼロクロッシングを示すCTE−T曲線を有する、請求項1または2記載のガラスセラミック。少なくとも100GPa、有利に少なくとも112GPa、好ましくは少なくとも120GPa、特に好ましくは少なくとも125GPaの弾性率を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。次の成分(酸化物を基準として質量%で表す): SiO2 45〜62 Al2O3 20〜40 MgO 5〜16 Li2O 0.3〜6 TiO2 0〜8 MoO3 0〜2 ZrO2 0〜4 を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。前記ガラスセラミックを基準としてそれぞれ、主結晶相は少なくとも45体積%、有利には少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも55体積%の割合で存在し、かつ/または副結晶相は少なくとも5体積%、有利には少なくとも10体積%の割合で存在し、かつ/または異種結晶相は最大で7.5体積%、有利には最大で5体積%の割合で存在する、請求項1から5までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。50体積%より高い、有利には少なくとも65体積%の、好ましくは少なくとも70体積%の結晶相割合を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。TiO2、ZrO2、MoO3、WO3、SnO2、Ta2O5および/またはNb2O5からなる群から選択される1種以上の結晶化核生成剤を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。<2%、有利に<1%、好ましくは<0.5%、特に好ましくは<0.1%の気孔率を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。温度範囲(0;50)および/または温度範囲(20;25)および/または温度範囲22℃(±2℃)および/または温度範囲22℃(±1℃)で、≦0.8ppm/K、有利には≦0.5ppm/K、好ましくは≦0.2ppm/K、さらに好ましくは≦0.1ppm/K、特に好ましくは≦0.02ppm/K、さらに好ましくは≦0.01ppm/Kの平均熱膨張係数αを有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。プレートの形で存在する、好ましくは少なくとも30cm×30cm、特に好ましくは少なくとも50cm×50cm、特に好ましくは少なくとも85cm×85cmのサイズを有し、かつ/または有利に0.5mm〜40cmの厚みを有するプレートの形で存在する、請求項1から10までのいずれか1項に記載のガラスセラミック。SiO2、Al2O3、MgOおよびLi2Oを含むグリーンガラスを溶融および鋳造する工程、 前記グリーンガラスを凝固させる工程、 前記グリーンガラスをセラミック化温度を超える温度Tに加熱し、かつ前記温度Tに一定時間保持し、かつそれにより前記グリーンガラスを、主結晶相としてコーディエライトおよび副結晶相として高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を有するガラスセラミックに変換する工程、 前記ガラスセラミックを冷却する工程 を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載のガラスセラミックの製造方法。リソグラフィープロセスにおける部品または保持部として、精密光学系または機械的および光学的測定機器の構成部品として、望遠鏡ミラー支持体、レーザージャイロスコープまたは位置決め機構の構成部品として、高温部品、例えばノズル、熱交換器、タービン、レキュペレーター、フィルタ、炉内張り、または触媒担体の構成部品として、またはことに電子部品用の基板として、またはハウジングとしての、請求項1から11までのいずれか1項に記載のガラスセラミックの使用。

说明书全文

本発明は、特別な特性を有するコーディエライトガラスセラミック、この種のガラスセラミックを含む構成要素、ならびにガラスセラミックの使用およびその製造に関する。

半導体作製において小型化が次第に進むにつれて、この際に利用されるマイクロリソグラフィープロセスにとって、十分な位置決め精度のために極端に低い熱膨張を有する材料が必要とされる。例えば、ウェハの位置決めの際に、0.1nmの範囲の精度が必要であるので、僅かな温度変動による誤った位置決めを避けるために、<0.5ppm/K(例えば<0.5×10-6/K)、好ましくは<0.05ppm/K、好ましくは<0.005ppm/Kの熱膨張係数が必要とされる。マイクロリソグラフィープロセスにおいて使用される材料は、構成要素の機械的安定性を保証するために、同時に高い弾性率も有するべきである。

この場合に使用される部品、例えば基板ホルダ(いわゆるウェハステージ)にとって、今日では、Li2O−Al2O3−SiO2(LAS)ガラスセラミック(例えばZerodur(登録商標))を基礎とする低膨張性のガラスセラミックまたは頻繁にコーディエライトを基礎とする焼結されたセラミックが使用される。リチウム−高温型石英混晶が主要結晶相を形成するLAS系製のガラスセラミックは、0.02ppm/K未満(温度範囲0〜50℃で)の特に低い熱膨張係数で製造することができる。他の利点は、このガラスセラミックが、製造を要因とする測定可能な気孔率を有しないことにある。しかしながら、この弾性率は、一般に90〜95GPaの範囲にあるにすぎず、これは、多くの用途にとって低すぎる。

例えば米国特許出願の米国特許第2013225392号明細書(US 2013225392 A)に記載されたようなコーディエライトを含むセラミックは、20〜25℃の狭い温度範囲で、同様に<0.1ppm/Kの範囲の熱膨張係数を有し、かつ140〜145GPaの弾性率により特徴付けられる。しかしながら、この種のセラミックは、製造を要因とする不可避な残留気孔率、ならびに約8GPaの高い硬度を有する。これらの特性は、加工(研削、ラッピング、ポリシング)、ひいては部品の高精密な製造を困難にする。さらに、焼結されたセラミック部品は粉塵形成する傾向を引き起こしかねない。例えばリソグラフィープロセスは高純度環境で実施されるため、このような粉塵形成は不利である。

セラミックとは、粉末状の材料から熱処理(焼結)により1つの物体に変換される材料であると解釈される。ガラスセラミックとは、a)ガラス原材料からガラス状のまたは非晶質の、つまり主に微結晶不含の前駆体材料、いわゆるグリーンガラスを溶融し、b)このグリーンガラスを一般に、ガラス状の物体に完全に凝固するまで冷却し、c)こうして得られたグリーンガラス物体を場合により加工し、かつd)引き続きこのグリーンガラス物体を溶融温度を下回る温度に熱処理することにより再加熱し、かつこの際にグリーンガラスの制御された結晶化によりガラスセラミックを製造することにより製造される材料であると解釈される。したがって、本発明の主旨でのガラスセラミックとは、溶融技術的に製造され、かつ引き続き制御された温度処理(セラミック化)によりガラスセラミックに変換される材料であると解釈される。

コーディエライトガラスセラミックは文献に公知であり、最初のコーディエライト含有ガラスセラミックは、1958年の西独国特許第1045056号明細書(DE 1045056 B)に記載されている。主成分のMgO−Al2O3−SiO2の他に、結晶化核生成剤としてTiO2が使用される。ここでは、アルカリ金属化合物の添加は予定されていない。

欧州特許出願公開第2065346号明細書(EP 2065346 A1)は、とりわけリソグラフィー用途に使用することができるコーディエライトガラスセラミックを記載している。このガラスセラミックは、主成分のMgO、Al2O3、SiO2ならびにTiO2の他に、結晶化核生成剤としてさらに、かなりの量の、CeO2、BaO、SrO、SnO2、MnO、CuO、FeOおよびZnOのような、他の構成要素を含む。それに対して、アルカリ酸化物は含まれていない。

結晶化核生成剤としてTiO2およびZrO2を含みかつ結晶相として少なくとも60%のインディアライト(Indialith)が存在するリソグラフィー用途のためのコーディエライトガラスセラミック成分は、独国特許出願公開第102014219442号明細書(DE 102014219442 A1)に請求されている。

しかしながら、これら全ての材料は、十分に高い弾性率および低い気孔率と同時に、十分に低い熱膨張を有しない。

したがって、本発明の課題は、低い膨張係数および高い弾性率を提供しかつ不利な気孔率を有しない改善されたガラスセラミックを提供することにあった。

本発明の課題は、既に独立請求項の主題により解決される。有利な実施態様および実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。

本発明の場合に、主結晶相としてコーディエライトを含みかつ副結晶相は高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を含む、SiO2、Al2O3、MgOおよびLi2Oを含むガラスセラミックが問題となる。

本発明によるガラスセラミックは、主結晶相としてコーディエライトを有し、かつ本発明の場合に、キータイト混晶および/または高温型石英混晶を含む適切に作製された副結晶相を含む。好ましくは副結晶相は、キータイト混晶である。キータイト混晶および高温型石英混晶を、以後、一緒に混晶という。

この結晶相、変態および多形の専門用語は、ガラスセラミックの当業者に周知である。コーディエライトは、公知のように、マグネシウム−アルミニウム−シリケートである。副結晶相として、本発明によるガラスセラミック中には、高温型石英(β−石英ともいう)および/またはキータイトの混晶が混入物と共に含まれている。混晶中では、SiO2およびAl2O3が骨格構造を形成し、この骨格構造内に比較的小さなイオンが混入物として挿入され得る。リチウム(Li)イオンの挿入は、本発明の範囲内で好ましい。出発組成および/またはその不純物に応じて、リチウムの代わりにまたはリチウムに対して付加的に、他のイオン(例えば、マグネシウム、亜鉛、鉄などのイオン)が混晶中に導入されていてもよい。混晶のこのようなドーピングは、本発明の範囲内で可能であり、かつ場合により、ガラスセラミックの目指される特性を調節するためにも望ましい。この副結晶相が、本発明によるガラスセラミックの低い熱膨張を、コーディエライト割合により決定される高い弾性率と同時に生じさせることが想定される。以後、「キータイト」および/または「高温型石英」を論じる場合には、それぞれの混入物を含む混晶相を意味している。

本発明の3つの実施例(実施例13、14、15)のXRD回折図。

実施例13の膨張曲線。

実施例14の膨張曲線。

実施例15の膨張曲線。

本発明によるガラスセラミックは、ガラスセラミックの一般的な定義によると、結晶相割合と、通常では非晶質割合とを有する。好ましくは、ガラスセラミック中の非晶質領域の割合は、最大で35体積%、有利には最大で30体積%、好ましくは最大で25体積%である。かなり多くのガラスセラミックの場合には、非晶質割合は、最大で20体積%である。一般に、いくつかの好ましい実施形態の場合に、ガラスセラミック中で非晶質割合として少なくとも5体積%が存在する。しかしながら、ガラスセラミック中の非晶質割合がさらに低い好ましい変化形態が存在する。部分的に、この割合は、多大な測定の手間をかけずには正確に決定することができないほど僅かである。このガラスセラミック中の結晶相割合は、有利に50体積%より高く、有利には少なくとも65体積%、さらに好ましくは少なくとも70体積%である。特に好ましい実施形態の場合に、結晶相割合は、少なくとも80体積%、1つの変化形態の場合に少なくとも85体積%であることができる。かなり多くの実施形態の場合に、ガラスセラミック中の結晶相割合は、有利に少なくとも90体積%、有利には少なくとも95体積%、さらに好ましくは少なくとも97体積%であることができる。高い結晶相割合を有する変化形態は、一般に、より良好な熱伝導性および低い熱膨張係数を有する。

結晶相の中で、本発明の範囲内で、主結晶相、副結晶相および異種(結晶)相が区別される:結晶相の全体量を基準として、その割合が結晶相の50体積%を越える場合に主結晶相が存在する。副結晶相は、その割合が結晶相の50体積%未満または最大で50体積%を形成する場合に存在する。この場合、副結晶相は、その特性により、ガラスセラミックの特性に好ましく寄与する、例えば熱膨張の調節または弾性率の向上に好ましく寄与する結晶相である。これとは反対に、異種結晶相は、望ましくない結晶相であり、その本質的な量での存在は、ガラスセラミックの特性に不利な影響を及ぼし、例えば機械的安定性または熱膨張を損なう。したがって、異種結晶相の割合は、可能な限り最小化すべきである。

本発明の場合に、コーディエライトは主結晶相を形成し、かつ例えばガラスセラミックに高い弾性率を生じさせる。コーディエライトは、理想化学組成Mg2Al3[AlSi5O18]を示すマグネシウム−アルミニウム−シリケートである。これは、セラミック化の際に、ガラス成分のSiO2、Al2O3およびMgOから生じる。コーディエライトは、本発明の主旨で、コーディエライトの室温型の相であるばかりか、その高温型の多形のインディアライトでもあると解釈される。インディアリスは、コーディエライトと同様の化学量論比を有するが、(Al,Si)6O18環内でのアルミニウムの分布ならびにその結晶学的対称が異なる。コーディエライト中にさらに異種イオン(例えばリチウム)が組み込まれていることも可能であり、かつ本発明に含まれる。

結晶相を基準として、コーディエライトの割合は、50体積%より高く、有利には少なくとも55体積%、好ましくは少なくとも60体積%、特に好ましくは少なくとも70体積%である。コーディエライト割合についての有利な上限は、95体積%、有利には90体積%であることができる。

ガラスセラミックを基準として、コーディエライトの割合は、有利に少なくとも45体積%、有利には少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも55体積%である。コーディエライト割合についての上限は、有利には最大で80体積%、有利には最大で75体積%、特に好ましくは最大で70体積%であることができる。

副結晶相は、ことにキータイト混晶および/または高温型石英混晶(まとめて「混晶」ともいう)により形成されている。混晶は、ガラスセラミックの熱膨張の適切な調節に寄与し、かつセラミック化の際に成分Al2O3およびSiO2から生じる。有利には、この混晶は、リチウム混晶である。しかしながら、リチウムは、完全にまたは部分的に、混晶内で他のイオンに置き換えられていてもよい。有利には、混晶中で最大で10mol%、好ましくは最大で5mol%のリチウムが置き換えられていてよい。主に成分Li2O、Al2O3およびSiO2から形成されている混晶が好ましい。意外にも、熱膨張は、本発明による副結晶相としての混晶の存在により好ましい影響を受ける、つまり、熱膨張は、同程度で弾性率が低減されることなく、純粋なコーディエライトガラスセラミックと比較して低減されることが判明した。

結晶相を基準として、混晶の割合は、有利に少なくとも7.5体積%、有利には少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも20体積%、特に好ましくは少なくとも25体積%である。混晶の割合についての上限は、<50体積%、有利には45体積%、好ましくは40体積%であることができる。セラミック化の間に、高温型石英混晶はキータイト混晶に変換される。セラミック化の後に、キータイト混晶:高温型石英混晶の比率は、有利に約4:1、有利には約6:1、好ましくは約9:1、特に好ましくは約9.5:1である。本発明の好ましい変化形態の場合に、完全な変換が目指され、つまり混晶はほぼ完全にキータイト混晶からなる。

ガラスセラミックを基準として、混晶割合は、有利に少なくとも5体積%、有利には少なくとも10体積%、好ましくは少なくとも20体積%であることができる。混晶についての上限として、40体積%、有利には35体積%、有利に30体積%を選択することができる。一実施形態の場合に、このガラスセラミックは、混晶20〜30体積%を含む。

副結晶相の他の成分は、チタン酸マグネシウム(MgTi2O4)、チタン酸ジルコニウム(ZrTiO4)および/またはルチル(TiO2)および/またはMoO3含有の結晶相であることができる。

結晶相を基準として、他の副結晶相(例えばルチル、チタン酸マグネシウム、チタン酸ジルコニウムなど)は有利には最大で10体積%、有利には最大で7.5体積%、好ましくは最大で6体積%、さらに好ましくは最大で3体積%含まれていてよい。一実施態様によると、この割合は、少なくとも0.75体積%、有利に少なくとも1体積%であってよい。

ガラスセラミックを基準として、他の副結晶相(例えばルチル、チタン酸マグネシウム、チタン酸ジルコニウムなど)は有利に最大で7.5体積%、好ましくは最大で5体積%含まれていてよい。かなり多くの実施態様は、この相を最大で2.5体積%含むことができる。この実施態様の場合に、ガラスセラミック中の他の副結晶相の割合は、少なくとも0.5体積%、有利には少なくとも1体積%であることができる。かなり多くの有利な変化形態の場合に、ガラスセラミック中に、混晶相の他に他の副結晶相は出現しない。

ガラスセラミックを基準として、主結晶相および副結晶相の割合の合計は、60体積%より大きく、好ましくは70体積%より大きく、特に好ましくは75体積%より大きく、さらに好ましくは80体積%より大きい。いくつかの実施態様の場合に、主結晶相および副結晶相の合計は、85体積%より大きくてもよい。特定の実施形態の場合に、主結晶相および副結晶相の合計は、少なくとも90体積%、有利に少なくとも95体積%であることができる。

主結晶相および副結晶相は、他の元素もしくはイオンの僅かな混入物を含むことができる。この相は、上述のように、ドーピング性を有している。しかしながら、異種イオンの割合は、形成される結晶相により、本発明によるガラスセラミックの特性が著しくは影響されないか、またはイオンをこの結晶相内へ組み込むことができかつこの結晶相の特性は不利に変更されないが、本来の不所望な結晶相を形成しない程度にだけ大きいことが好ましい。

異種(結晶)相とは、主結晶相および副結晶相を除いて、本発明によるガラスセラミック中に生じる全ての結晶相を含む。一般に不所望な結晶相である異種結晶は、例えば融液からの残留成分に起因する、つまり異種結晶の種類および数は、融液の組成、原料の不純物ならびに加工条件およびセラミック化条件に依存する。形成された異種結晶は、例えば、ケイ酸マグネシウム(例えばエンスタタイト、フォルステライト)、ガーナイト(亜鉛スピネル)、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、セルシアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、クリストバライト(SiO2)、(アルミノ)ケイ酸ストロンチウム、ネフェリン、カルシライト、ムライト等であることができる。

結晶相を基準として、異種(結晶)相の割合はできる限り低くあるべきであり、なぜならこの異種結晶は、とりわけ、ガラスセラミックの熱膨張および弾性率に影響を及ぼすことがあるためである。好ましくは、異種(結晶)相の割合は、最大で10体積%、有利には最大で7.5体積%、好ましくは最大で5体積%、特に好ましくは最大で2.5体積%である。

ガラスセラミックを基準として、異種(結晶)相の割合は、有利に最大で7.5体積%、有利には最大で5体積%、好ましくは最大で2体積%、特に好ましくは最大で1体積%であることができる。本発明の1つの変化形態は、異種(結晶)相を含まない。

次に、組成物の成分を個別に記載する。この場合、ガラスセラミックの組成は、グリーンガラスの組成に相当する。グリーンガラスからガラスセラミックへの熱的変換の際に、内部構造だけが変化する。グリーンガラスとガラスセラミックの、化学分析からもたらされるような組成は同じである。

本発明によるガラスセラミックまたはグリーンガラスは、有利には次の組成を有する(酸化物を基準とした質量%で表す): SiO2 45〜62 Al2O3 20〜40 MgO 5〜16 Li2O 0.3〜6 TiO2 0〜8 MoO3 0〜2 ZrO2 0〜4

SiO2含有率は、少なくとも45質量%、好ましくは少なくとも47質量%、特に好ましくは少なくとも50質量%であるべきである。これは不可欠であり、なぜならSiO2は、一方でガラス形成剤として働き、他方で結晶相のコーディエライトおよび混晶の成分として働くためである。SiO2の最大含有率は、良好な溶融性の要求により制限され、なぜならSiO2割合が増加するにつれて一般に溶融温度も上昇するためである。最大で62質量%まで、好ましくは最大で60質量%までの含有率が好ましいことが判明した。かなり多くの有利な変化形態の場合に、61質量%が好ましい上限であることができる。

Al2O3は、同様に結晶相のコーディエライトおよび混晶の成分であり、したがって少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも24質量%、特に好ましくは少なくとも26質量%の割合で含まれているべきである。高すぎる酸化アルミニウム含有率は、ムライトの形成による高い失透傾向を引き起こし、それにより不所望な結晶化による溶融および/または成形における問題を引き起こす。したがって、Al2O3含有率は、最大で40質量%、好ましくは最大で35質量%、さらに好ましくは最大で32質量%、特に好ましくは最大で30質量%である。好ましい実施形態の場合に、この組成は、26〜30質量%のAl2O3の含有率を有する。

Al2O3とSiO2との間のモル比率は、有利に少なくとも0.24、好ましくは少なくとも0.28であるべきである。この組成が十分にAl2O3を含むことにより、結晶相のコーディエライトおよびキータイトの形成を可能にすることが達成される。有利に、Al2O3とSiO2との間のモル比率は、最大で0.38、好ましくは最大で0.34であるべきである。この上限は、キータイトの形成のために十分なSiO2がもたらされるので有利である。低すぎる割合のSiO2を有する組成は、セラミック化の後に、高い割合の高温型石英を含み、これは弾性率に不利に影響を及ぼしかねない。

マグネシウム含有率は、ガラスセラミック中でのコーディエライトの割合を決定的に定める。したがって、酸化マグネシウム(MgO)含有率は、少なくとも5質量%、有利に少なくとも6質量%、特に好ましくは少なくとも8質量%であるべきである。しかしながら、高すぎる酸化マグネシウム割合は、不所望な異種結晶相の形成を引き起こす。高い熱伝導率および高い弾性率に基づきこの結晶相の僅かな量は、ガラスセラミック特性に好ましい影響を及ぼすことができるが、比較的多くの量は不所望であり、なぜならこれは熱膨張を著しく高めかねないためである。この理由から、酸化マグネシウム含有率は最大で16質量%、好ましくは最大で15質量%、特に好ましくは最大で12質量%に制限される。

酸化リチウム含有率は、ガラスセラミック中の副結晶相の割合を制御することができる。Li2O割合が高すぎる場合に、ガラスセラミックの弾性率は、LASガラスセラミックにとって典型的な90〜95GPaの値に低下し、それに対してこの含有率が低すぎる場合に、熱膨張係数に好ましい作用は生じない。したがって、酸化リチウム(Li2O)含有率は、少なくとも0.3質量%、有利には少なくとも0.4質量%、好ましくは少なくとも0.8質量%であるべきである。この上限は、最大で6質量%、好ましくは最大で4.8質量%、特に好ましくは最大で2.5質量%であるべきである。特に好ましくは、酸化リチウム含有率は、0.8〜2.5質量%である。このLi2O含有率は、ガラスセラミックがリチウム混晶の十分な割合を含むことを保証する。

弾性率および熱膨張を改善するために、>3.2のMgO/Li2Oのモル比を有する組成が有利であることが判明した。

異種(結晶)相を避ける理由から、この組成は、有利には、他のアルカリ金属、つまりNa2O、K2O、Cs2O、Rb2Oを含まない。

他に記載がない限り、「X不含」または「成分Xを含まない」の表現は、ガラスがこの成分Xをほとんど含んでいない、つまりこのような成分はガラス中に多くても不純物として存在するが、ガラス組成に個別の成分として添加されないことを意味する。この場合、Xは、任意の成分(例えばNa2O)を表す。原料不純物により持ち込まれるような僅かな量は、最大で1質量%、有利に最大で0.5質量%、より好ましくは0.1質量%未満の最大含有率まで問題ない。

グリーンガラスからガラスセラミックへの変換のために、この組成は有利には結晶化核生成剤、または結晶核生成剤、または核生成剤を含む。グリーンガラス中の結晶化核生成剤の割合は、前駆体対象物、つまりセラミック化の前のグリーンガラスの全体の体積内で十分に多くの数の核微結晶または結晶化核の形成を保証する。

結晶化核生成剤の全含有率は、有利に少なくとも1.5質量%および/または最大で9質量%である。結晶化核生成剤の少なくとも1.5質量%、好ましくは少なくとも2.5質量%の割合は、バルク結晶化のために十分な数の結晶化核の上述のような形成を保証する。同時に、結晶化核生成剤の全含有率は、グリーンガラスの製造時の早期の結晶化を避けるためにおよびガラスセラミックの有利な物理特性をこの成分により本質的には変更しないために十分に低い。

一実施形態の場合に、結晶化核生成剤の全割合は、最大で6質量%に制限される。この変化形態による結晶化核生成剤の低減された割合により、結晶化核生成剤に起因する副結晶相の割合を低減することができる。生じるガラスセラミックの弾性率および熱膨張係数を改善することができる。

かなり多くの好ましい変化形態の場合に、結晶化核生成剤の全含有率は、有利に少なくとも0.1質量%および/または最大で5質量%であることができる。有利な下限は、0.2質量%または0.5質量%であることもでき、かつ/または有利な上限は、3質量%、有利には2質量%、有利には1質量%であることもできる。

結晶化核生成剤として、この組成の有利な実施態様の場合に、有利には少なくともTiO2が含まれている。あるいは、または付加的に、結晶化核生成剤として、ZrO2、SnO2、Ta2O5、MoO3、WO3および/またはNb2O5を個別にでも、2つ以上を組み合わせても使用することができる。結晶化核生成剤としてTiO2だけを含む組成は、かなり多くの変化形態において好ましい。形成された核微結晶は、ことにルチル微結晶、MgTi2O5微結晶および/またはZrTiO4微結晶であり、これらは前駆体対象物中に均一に分配されている。このような本発明によるガラスセラミックは、したがって、結晶化核生成剤の添加により、一般に、副結晶相の成分よりも僅かな割合のルチル、MgTi2O5および/またはZrTiO4を有する。

有利には、この組成はTiO2を含む。このTiO2含有率は、最大で8質量%、好ましくは最大で6.8質量%、特に好ましくは最大で5質量%であるべきであり、なぜならそうでないとセラミック化の際に大量のMg−チタン酸塩結晶が形成されかねず、このことがガラスセラミックの膨張挙動に不利な影響を及ぼしかねないためである。TiO2についての下限は、少なくとも1.0質量%、有利には少なくとも1.5質量%、好ましくは少なくとも2質量%であることができる。1.5〜5質量%のTiO2含有率が特に好ましい。ガラスセラミックのかなり多くの好ましい変化形態は、TiO2不含であるか、またはTiO2を少なくとも0.1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%含むことができる。

ZrO2含有率は、最大で4質量%に制限するべきであり、なぜならより高い含有率は著しい失透傾向を引き起こしかねないためである。この理由から、本発明の1つの変化形態の場合には、ZrO2を最大で3質量%、好ましくは2質量%未満、かつ/または好ましくは少なくとも0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.5質量%使用することが有利であることが判明した。しかしながら、ZrO2不含の組成も同様に可能である。

結晶化核生成剤としてTa2O5およびNb2O5を使用することができるにもかかわらず、この含有率は、一般に、この高い価格に基づいて、経済的な考察により制限される。しかしながら、この用途の要求に相応して、それぞれ最大で10質量%、有利には最大で8質量%の使用が可能である。Ta2O5および/またはNb2O5が含まれている限り、このそれぞれの割合は、少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.5質量%である。

MoO3は、単独でまたは他の成分と(例えばSnO2と)組み合わせて、結晶化核生成剤として使用することができる。結晶化核生成剤としてのMoO3の使用が好ましく、なぜなら、それによりガラスセラミック中の非晶質割合を低減することができるためである。さらに、障害となる結晶相(例えばルチル針状晶)の形成を妨げるためである。それが存在する場合には、少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.2質量%、有利には0.5質量%で存在する。2質量%の上限を上回るべきではなく、そうしないと、非晶質割合が明らかに上昇するためである。MoO3についての好ましい上限は、1.5質量%、好ましくは1質量%、特に0.8質量%、さらに好ましくは0.6質量%であることができる。相応する好ましい上限および下限は、結晶化核生成剤としてのWO3についても当てはまる。MoO3および/またはWO3不含の組成の変化形態も可能である。

SnO2は、結晶化核生成剤としての機能の他に、ガラスの清澄も支援することができる。しかしながら、高すぎるSnO2含有率は、失透安定性に関して不利に作用する。最大で5質量%のSnO2の割合が合理的であることが判明した。この成分についての有利な上限は、4質量%、有利に3質量%、有利には2質量%であることもできる。SnO2が含まれている限り、これは少なくとも0.05質量%、好ましくは0.1質量%、より好ましくは少なくとも0.2質量%、さらに好ましくは少なくとも0.5質量%の割合で存在する。本発明の変化形態は、SnO2不含であってもよい。

SnO2の他に、CeO2も清澄を支援することができる。同様に、CeO2の僅かな添加はガラス安定性を改善する。しかしながら、異種(結晶)相の形成を避けるために、最大で5質量%を使用するのが好ましい。CeO2が含まれている限り、これは少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.5質量%の割合で存在する。しかしながら、本発明の変化形態は、CeO2不含である。

ことに、リソグラフィー用途のためには、材料の高い均一性および僅かな気泡数が必要であるため、必要な場合には、1種以上の典型的な清澄剤、例えばAs2O3、Sb2O3および/または硫酸塩を通常の量で、つまり好ましくは少なくとも0.1質量%および/または好ましくは最大で2質量%で使用することができる。環境の観点から、SnO2、CeO2または硫酸塩を用いた清澄が好ましい。あるいは、物理的清澄(例えばガスバブリングによる)も使用することができる。

ZnOおよびアルカリ土類酸化物のCaO、SrO、BaOは、溶融性の改善のために、それぞれ最大で10質量%の含有率まで使用することができる。この上限は、異種(結晶)相を避ける必要性から生じる。

融液の粘度を合わせるために、B2O3およびP2O5が有利であると判明した。両方の成分は、ガラス安定性を高め、かつ失透傾向を低減する。しかしながら、この割合は、B2O3の場合には最大で8質量%および/またはP2O5の場合には最大で10質量%であるべきであり、なぜなら、そうでなければ熱膨張の上昇が観察されることがあるためである。B2O3および/またはP2O5が含まれている限り、これらのそれぞれの割合は、少なくとも0.1質量%、有利には少なくとも0.5質量%である。

他の成分として、La2O3、Y2O3、Fe2O3、Cr2O3およびLn2O3は、それぞれ最大で10質量%、好ましくはそれぞれ最大で5質量%の割合で使用することができる。これらの成分は、ことに弾性率に好ましい影響を及ぼすことができ、かつ部分的にコーディエライト結晶内に組み込まれる。これらの成分の1種以上が含まれている限り、これらのそれぞれの割合は、少なくとも0.01質量%、有利にはそれぞれ少なくとも0.5質量%である。「Ln」は、ここでは、先に個別に説明されているランタンおよびセリウムを除いたランタノイドを普遍化して表す。

本発明によるガラスセラミックは、セラミック化の後に白色または不透明である。しかしながら、着色する成分を相応するグリーンガラスに添加することにより、有色のガラスセラミックを得ることもできる。青色、灰色または黄褐色の色調を有するガラスセラミックは、例えば着色酸化物、例えばCoO、NiO、MoO3、V2O5、SeO2および/またはPtO2をグリーンガラスに添加することにより得ることができる。したがって、本発明の一実施態様の場合に、ガラスセラミックは、次の群(質量%で表す): CuO 0.01〜5.0、有利には最大で1.0 MnO 0.01〜5.0、有利には最大で1.0 CoO 0.01〜5.0、有利には最大で1.0 NiO 0.01〜0.8 MoO3 0.01〜0.1 V2O5 0.01〜0.1 SeO2 0.01〜0.5 PtO2 0.01〜0.1 から選択される1種以上の酸化物を含むグリーンガラスのセラミック化により得られる。

記載された範囲は、この場合、全組成を基準とする。着色するイオンが含まれている場合、この全割合は、有利に少なくとも0.01質量%でかつ/または最大で5質量%である。着色されていないガラスセラミックも可能である。そのときは、この組成は着色成分不含である。

本発明による一実施形態の場合に、本発明によるガラスセラミックまたはグリーンガラスは、有利には少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、最も好ましくは99質量%が、上述の成分からなるか、または有利には成分SiO2、Al2O3、MgO、Li2O、TiO2およびZrO2からなる。

本発明の別の実施形態の場合に、本発明によるガラスセラミックまたはグリーンガラスは、有利には少なくとも90質量%、さらに好ましくは少なくとも95質量%、最も好ましくは99質量%が、上述の成分からなるか、または有利には成分SiO2、Al2O3、MgO、Li2OおよびMoO3からなる。

既に先に記載したように、空洞部の不存在が精密用途の場合に中心的な役割を演じる。気孔率は、できる限り僅かであるべきであり、有利に2%未満、好ましくは1%未満、さらに好ましくは0.5%未満、特に好ましくは0.1%未満である。気孔率は、走査電子顕微鏡写真を用いて決定した。この写真では、ほとんど細孔を認識することができない。気孔率は、細孔容積の、ガラスセラミックの全体積に対する比率として定義される。

同時に、気泡および封入物の数は、100cm3当たり5未満、好ましくは100cm3当たり<3であるべきである。この場合、気泡および封入物とは、直径が>0.3mm、有利には>0.1mmの全てのガラス欠陥であると解釈される。

本発明の有利な実施形態の場合に、ガラスセラミックは、温度範囲0℃〜50℃(この場合、この温度範囲は、(0;50)の表記法で記載されていてもよい)および/または温度範囲20℃〜25℃((20;25)に相当)で最大で0.8ppm/Kの熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion)CTEまたはαを有する。このような温度範囲について記載された熱膨張係数は、CTE(0;50)またはα(0;50)と記載される。それにより、工業用途の場合に高い精度要求を満たすことができる材料が提供される。「ppm/K」は、この場合、熱膨張の記載との関連でも頻繁に使用される単位「10-6/K」に対応する。

上述の記載は平均CTEである。「平均CTE」とは、ガラスセラミック試料について多様な箇所で決定された全てのCTE測定の平均値であると解釈される。通常では、平均CTEは、0〜50℃の温度範囲について記載される(CTE(0;50))。しかしながら、平均CTEは、他の温度範囲について記載されてもよい。高精度の用途にとって、この平均CTEは、後の用途の温度付近の明らかに小さな温度範囲で記載される、例えばマイクロリソグラフィー構成要素についてはCTE(20;25)。後述するように、平均CTEは、特定の用途の温度TAについて記載されてもよい。

温度範囲についての平均CTEを、次の方程式(1)を用いて決定することができる: CTE[t0;t]=(1/l0)×(lt−l0)/(t−t0) =Δl/(l0×Δt) (1) この場合、t0は開始温度であり、tは測定温度であり、l0は開始温度t0での試料物体長さであり、ltは測定温度tでの試料物体長さであり、かつΔlは、温度変化Δtでの試料物体の修正された長さ変化である。

平均CTEの決定のために、開始温度t0でのガラスセラミックの試料物体の長さを測定し、この試料物体を第2の温度tに加熱し、この温度での長さltを測定する。上述の式(1)から、温度範囲t0〜tについての平均CTE[t0;t]が得られる。熱膨張の決定は、膨張計測を用いて行うことができ、つまり温度に依存した測定試料の長さ変化の決定により行うことができる。平均CTEの決定のための測定準は、例えばR. Mueller, K. Erb, R. Haug, A. Klaas, O. Lindig, G.Wetzig:「Ultraprecision Dilatometer System for Thermal Expansion Measurements on Low Expansion Glasses」, 12th Thermal Expansion Symposium, Pittsburgh/PA, P.S. Gaal and D.E. Apostolescu Eds., 1997に記載されていて、この内容は、全範囲が本願に組み込まれる。

熱膨張は、ガラスセラミックの後の用途にとって中心的な特性である。

一方で、平均熱膨張係数αは、有利には≦0.8ppm/K、好ましくは≦0.5ppm/K、好ましくは≦0.2ppm/K、さらに好ましくは≦0.1ppm/K、特に好ましくは≦0.02ppm/K、さらに好ましくは≦0.01ppm/Kであるべきである。一般に、熱膨張は、温度範囲0〜50℃(0;50)について、つまりα(0;50)について記載される。しかしながら、用途の種類よっては、熱膨張についての要求が特殊であることがあり、温度範囲20〜25℃について該当することがある(つまりα(20;25))。リソグラフィー用途の場合に、一般に、約22℃の温度範囲、つまり温度範囲22℃(±2℃、有利には±1℃)で作業される。したがって、この範囲内で、使用される基板の膨張は最小化されるべきである。

比較的広い温度区間で平均CTEを観察することによって特定の温度での「実CTE」は不正確となりかねないため、本発明の範囲内では、温度の関数としての「微分CTE」が決定される(動的測定法)。特定の温度での「微分CTE」とは、この温度でのCTE−T曲線上にある値であると解釈される。CTE(T)は、次の式(2)により定義されている: CTE(T)=(1/l0)×(∂l/∂T) (2)

Δl/l0−T曲線または膨張曲線を作成するため、または温度に対する試料物体の長さの変化Δl/l0をプロットするため、開始温度t0での開始長さl0から、温度tでの長さltへの、試料物体の長さの温度に依存した長さ変化を測定することができる。この場合、測定点の決定のために、有利には例えば5℃または3℃の小さな温度間隔が選択される。図2〜4は、本発明によるガラスセラミックのΔl/l0−T曲線を示す。

このような測定は、例えば膨張計測法、干渉分光法、例えばファブリ−ペローによる方法により、つまり材料中に入射されたレーザービームの共振ピークのずれの評価により、または他の適切な方法により実施することができる。選択された温度間隔の測定値から、選択された温度間隔についての平均CTEを算出することができる。

Δl/l0−T測定点の決定のために選択された方法は、有利には少なくとも±0.10ppm、より好ましくは±0.05ppm、最も好ましくは±0.01ppm、かなり多くの実施形態によるとそれどころか±0.005ppmの精度を有する。

零位線を中心に変動するCTE−T曲線は、僅かな低い平均CTEに見せかけることがあるのに対し、具体的な用途の温度での「微分CTE」は、規格外にあることがある。

ガラスセラミックの後の用途についての別の重要な特性は、CTE−T曲線のゼロクロッシングである。CTE−T曲線のゼロクロッシングの決定のために、一般に、まず温度の関数としての微分CTE(T)を、式(2)に従って決定する。

CTE−T曲線は、Δl/l0−T曲線の微分により得られる。CTE−T曲線から、ある温度間隔内のゼロクロッシング、CTE−T曲線の傾きならびに平均熱膨張を決定することができる。

本発明によるガラスセラミックのCTE/T曲線の推移は、有利な実施態様の場合に、−20℃〜50℃の温度範囲(T(-20;50))、有利には−10℃〜50℃の温度範囲(T(-10;50))、好ましくは−8℃〜50℃の温度範囲(T(-8;50))でのゼロクロッシングを示す。CTE/T曲線は、(Δl/l0)T/曲線の一階微分である。(Δl/l0)/T曲線中の極小値および/または極大値は、周知のようにそれに属するCTE/T曲線のゼロクロッシングをもたらす。本発明の一実施態様の場合に、ゼロクロッシングは、後の用途の温度の範囲、好ましくは0〜50℃の範囲、特に好ましくは20〜25℃の範囲、一実施形態の場合に、22℃±10℃の範囲、好ましくは22℃±5℃の範囲、さらに好ましくは22℃±2℃の範囲、さらに好ましくは22℃±1℃の範囲にある。本発明の別の有利な低温変化形態の場合に、ゼロクロッシングは、後の用途の温度の範囲、有利には−20〜0℃の範囲、好ましくは−10〜0℃の範囲、特に好ましくは−8〜0℃の範囲にある。

驚くべきことに、コーディエライトガラスセラミックへの酸化リチウムの添加、およびそれによる主結晶相のコーディエライトの他に副結晶相としてリチウム混晶も含むガラスセラミックの製造は、熱膨張の値に有利な影響を及ぼすばかりか、純粋なコーディエライトガラスセラミックの場合にマイナスの温度(例えば−30℃)のCTE曲線のゼロクロッシングを、僅かにマイナスの温度〜プラスの温度にまでシフトさせる、例えばいくつかの変化形態の場合に、0〜50℃、または20〜25℃の所望の温度範囲にシフトさせるか、または低温変化形態の場合に、−20〜0℃、もしくは−10〜0℃、もしくは−8〜0℃の温度範囲にシフトさせることが明らかとなった。

熱膨張の他に、熱伝導率も、適用の場合のガラスセラミックの挙動に影響を及ぼす。高い熱伝導率が有利であり、なぜなら熱を比較的速くに周囲に引き渡すことができるためである。熱伝導率は、少なくとも1.5W/(K×m)、好ましくは少なくとも2.5W(K×m)である。したがって、熱伝導率とCTEとの商は、できる限り大きいことが好ましく、この商は、有利には少なくとも3×106W/m、特に好ましくは少なくとも5×106W/mであるべきである。

ガラスセラミックの機械的安定性についての尺度である高い弾性率(Eモジュラス)は、本発明によるガラスセラミックの場合に同様に達成される。ガラスセラミックの有利な実施形態は、少なくとも100GPaの高い弾性率により特徴付けられる。好ましい実施態様の場合に、弾性率は、少なくとも112GPa、好ましくは少なくとも120GPa、特に好ましくは少なくとも125GPaであることができる。この特性は、十分な機械的安定性を保証する。この最大弾性率は、有利に180GPaであることができる。

運動する構成要素の場合に、さらに比弾性率、つまり弾性率と密度との商が、重要な役割を演じる。ガラスセラミックの密度は、有利に2.4〜2.8g/cm3である。比弾性率は、有利には少なくとも40GPa×cm3/g、特に好ましくは少なくとも45GPa×cm3/gである。最大で、有利に75GPa×cm3/gであることができる。

本発明のガラスセラミックは、かなり多くの実施形態の場合に、さらに低い誘電率(一般に、GHz領域で5〜8)および良好な絶縁特性(室温での比抵抗は一般に>1012Ωcm、好ましくは>1014Ωcm)により特徴付けられる。

これらの特性は、本発明によるガラスセラミックにより、個別にまたは2つ以上の特性と組み合わせて満たされることができる。

本発明によるガラスセラミックの利点の1つは、焼結されたセラミックと比べて改善された加工性にある。ガラスセラミックの場合には微結晶(典型的に100nmまでの小さなサイズを有する)がガラス相内に埋め込まれているため、研磨特性は、一般に、比較可能なセラミックの場合よりも良好である。これは、特に、リソグラフィー用途のためにまたはミラー支持体としての使用の場合に重要であり、なぜなら、ここでは特に低い表面粗さ(RA<0.5μm RMSまで)が要求されているためである。

本発明は、さらに、有利には低い膨張係数αまたはCTEを有するガラスセラミック構成要素、つまり本発明によるガラスセラミックから製造されている構成要素に関する。

本発明によるガラスセラミック構成要素とは、有利にリソグラフィープロセス(LCDリソグラフィー、マイクロリソグラフィー)における部品もしくは保持部、または光学的構成要素であることができる。

さらに、このガラスセラミックは、有利に精密光学系または機械的および光学的測定機器、レーザージャイロスコープまたは位置決め機構の構成部品として、または望遠鏡ミラー支持体として使用することができる。

少なくとも1.5W/(K×m)、好ましくは少なくとも2.5W/(K×m)の高い熱伝導率および1200℃までの良好な耐熱性により、このガラスセラミックは、高温部品、例えばノズル、熱交換器、タービン、レキュペレーター、フィルタ、炉内張り、触媒担体などの構成部品として使用することができる。

上述の低い誘電率および良好な絶縁特性に基づき、本発明によるガラスセラミックは、支持体、ことに電子部品用の基板として、または電子部品用のハウジングとしての使用のために適している。

本発明によるガラスセラミックについての他の可能な用途は、調理台および/またはホットプレートを含む。

本発明は、さらに、天文分野での、例えば分割式または一体式の天体望遠鏡用のミラー支持体として、または例えば地表観測のための宇宙支援型望遠鏡または光学系用の軽量化されたまたは超軽量のミラー支持体として、精密構成部品として、例えば精密測定技術用の標準として、例えばリングレーザージャイロスコープ用の機械的精密部品として、時計工業用の渦巻きばねとして、LCDリソグラフィーにおいて、例えばミラーまたはプリズムとして、ならびにマイクロリソグラフィーにおいて、例えばマスクホルダ、ウェハテーブルおよび基準プレートとしての、本発明によるガラスセラミック構成要素の使用にも関する。

本発明の主題は、上述の用途における、本発明によるガラスセラミックおよび/または本発明による構成要素の用途でもある。

さらに、本発明は、溶融技術により製造されたグリーンガラスを、制御された温度処理(セラミック化)によりガラスセラミックに変換する、ガラスセラミックの製造方法に関する。1つ以上の更なる後加工工程、例えば鋸断、切断、研削、研磨または必要な場合に被覆を続けることができる。

ことに、本発明は、 SiO2、Al2O3、MgOおよびLi2Oを含むグリーンガラスを溶融および鋳造する工程、 グリーンガラスを凝固させる工程、 グリーンガラスをセラミック化温度を超える温度Tに加熱し、かつこの温度Tに一定時間保持し、かつそれによりグリーンガラスを、主結晶相としてコーディエライトおよび副結晶相として高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を有するガラスセラミックに変換する工程、および ガラスセラミックを冷却する工程 を含むガラスセラミックの製造方法に関する。

本発明によるガラスセラミックの製造は、溶融経路を経て行われる。一般的に1500〜1650℃での溶融およびグリーンガラスの均質化および場合による個別の清澄段階の後に、このガラスを型内に注ぎ込むか、またはガラス工業から公知の他の成形方法を用いて後加工し、引き続き冷却する。冷却は、ガラス転移温度Tgの範囲内まで、グリーンガラス中で結晶化が避けられるほど急速に行い、引き続き室温まで十分にゆっくりと行い、ガラス内の応の発生を回避する。

かなり多くの変化形態の場合に、例えばフォーミングガスまたはArガスを用いたバブリングによるか、または炭素含有成分(例えば糖)の添加により、混合物を還元的に溶融させることが有利であることがある。

こうして得られたグリーンガラスは透明であり、このことは、ガラス品質(ことに均一性、気泡のなさ、封入物の制御、気泡など)の評価のための簡単な視覚的な検査を可能にする。

セラミックと比べたガラスセラミックの利点は、構成要素の加工を、既にセラミック化の前のガラス状の状態で行うことができる点にある。主結晶相のコーディエライトは、7〜7.5のモース硬度を有しかつガラスの高度は一般に明らかにそれを下回る(5〜6)ため、後加工、成形、研磨などを明らかに軽減することができる。

セラミック化のために、グリーンガラスを、セラミック化温度を超える温度Tに加熱し、かつこの温度Tに一定時間保持し、かつ主結晶相としてコーディエライトおよび副結晶相として高温型石英混晶および/またはキータイト混晶を有するガラスセラミックに変換する。温度Tは、有利には少なくとも950℃、より好ましくは少なくとも1000℃および/または有利には最高で1300℃である。温度Tでの保持時間は、好ましくは少なくとも1時間、有利には少なくとも6時間である。この保持時間は、セラミック化されるべきグリーンガラス成分の体積に依存し、この場合、より大きな部分についてはより長い保持時間が必要とされる。他の温度での更なる保持時間を、このプログラムに組み込むことができる。例えば、まず前駆体相としてMg−β−石英を生じさせ、その後で所望の主結晶相のコーディエライトを形成させることは公知である。セラミック化プログラムは、この結晶相の形成の範囲内で、結晶化に基づく応力の形成を避けるために、保持時間または低い加熱速度を含むことができる。同様のことが、キータイト混晶形成についての前駆体相として利用される高温型石英混晶の形成についても当てはまる。Tgと結晶化の開始との間の温度範囲での核生成の改善のための保持時間も、核生成の改善のために組み込むことができる。

溶融技術的な経路を経る製造は、セラミックと比べて、より大きくかつことにより厚い部品の製造を可能にする。例えば、少なくとも30cm×30cm、有利に少なくとも50cm×50cm、好ましくは85cm×85cm、好ましくは少なくとも100cm×100cm、特に好ましくは少なくとも150cm×150cmのサイズを有するプレートを製造することが可能である。例えば、1000cm×1000cmまでのサイズを製造することもできる。もちろん、他の底面、例えば長方形、多形、円形、楕円形などを有する別の部品形状も可能である。部品の厚みは、それぞれの使用に合わせられていてよい。この厚みは、有利に0.5mm〜40cmにあることができ、例えば1cm、2cm、5cm、7.5cm、10cm、20cm、40cmであることができる。もちろん、より大きな厚みおよび/またはより小さな厚みを実現することもできる。

鋸断または切断および研磨の他に、後加工は被覆工程を含んでもよい。

比較的大きな部品の場合に、質量を軽減するために、空洞を考慮に入れることが有利であることがある。本発明によるガラスセラミックは、いわゆる軽量構造物の製造のために使用することができる。軽量加工または原料加工は、有利には余り硬質でないグリーンガラス体について行うことができる。

本発明を、次の実施例を用いてさらに明確に説明する。

実施例 表1〜3に記載された組成を有するグリーンガラスを、ガラス工業において通常の原材料の使用下で、1500〜1650℃の温度で溶融し、かつ清澄した。この混合物を、任意にシリカガラス製の内部坩堝を備えたPt/Rh坩堝内で溶融し、約1580℃の温度で攪拌しながら30分間均質化した。1600℃で2時間放置した後に、多様な大きさの鋳造部材を鋳造し、かつ徐冷炉内でTgをいくらか下回る温度で応力緩和し、室温に冷却した。鋳造部材から、ガラス状の状態での特性(Tg、Va、ρ)の測定およびセラミック化のために、試験サンプルを作製した。

セラミック化のために、試料を1180〜1250℃の最高温度で4〜20hセラミック化した。こうして得られた試料について、ガラスセラミックの熱膨張、弾性率、ポアソン比ならびに密度を決定した。

熱膨張を、DIN 51045-1に依拠して測定した。熱による長さ変化の動的決定の際に、試験体を連続的に加熱する。それにより引き起こされた長さ変化を、特定の時間サイクルで長さLiおよび温度Tiについての対の値を読み出しかつ記憶することによりコンピュータ制御して検出する。それにより、温度間隔での物体の膨張挙動が記述され、かつ部分区間についての膨張係数の決定が可能となる。

密度は、DIN 66137-1、発行:2003-11 ASTM C 693、発行:1993-11、再認可2008による典型的な液浸法を用いて決定した。

弾性率およびポアソン比は、超音波測定技術を用いて決定した。この場合、平行平板の試料中で、試料背面で反射した超音波パルスの走行時間を測定する。縦波速度および横波速度の測定から、弾性定数が決定される。

次の表中で、「その他の結晶相」には、副結晶相(個別に挙げられているキータイト混晶および高温型石英混晶を除く)および異種結晶相が挙げられる。比較例1は、異種結晶相としてスピネルを含む。

実施例1〜26は、比較例1および2とは対照的に、本発明によるガラスセラミックを表す。

表1および2中には、TiO2を結晶化核生成剤として含む実施例および比較例が記載されている。表3中には、MoO3、またはMoO3とSnO2との混合物を結晶化核生成剤として含む実施例が記載されている。実施例22〜24および26は、還元性の条件下で溶融させた。実施例25は、酸化性で溶融させた。いくつかの特性、例えば熱膨張、弾性率、密度は、セラミック化して決定することができず、なぜなら試料のセラミック化の際に亀裂が形成されたためである。しかしながら、特定の結晶相(表3)に基づき、MoO3を含むそれぞれの組成を有する実施例は、先に記載されたように、好ましい範囲で、熱膨張(CTE)、CTE/T曲線のゼロクロッシング、弾性率などを有することができると仮定される。実施例22〜26では、XRD分析でその他の結晶相が測定されなかった。

実施例1は、その組成において、SiO2過剰でかつ結晶化核生成剤添加で、コーディエライト9部、高温型石英2部の比率に相当する。ガラスセラミックのXRD分析は、実施例1について、コーディエライト64.6体積%の割合、キータイト7.6体積%の割合、ならびに僅かな量のルチルおよびZrTiO4、つまり結晶化核生成剤として機能する相を明らかにする。体積%で表す結晶相割合、ならびに非晶質相の割合は、表1に表されている。

実施例1および2は、大きすぎないキータイト割合が、弾性率に僅かな影響を及ぼすだけであることを示す。両方の実施例は、実施例2が二倍より高い14.2体積%のキータイトを含むにもかかわらず、同じ132GPaの高い値を示す。

実施例1と比較例2との、リチウム割合を除いてモル数が似た組成の比較は、CTE値に関するキータイトの好ましい影響を示す:このCTE値は、1.08ppm/Kから0.16ppm/Kに低減される。CTEのゼロクロッシング(Δl/l曲線における極小値または極大値に相当し、かつこの表中ではゼロクロッシングCTE/T曲線と記載されている)も、比較的高い温度にシフトする。

既に上述したように、純粋なTiO2核生成を使用することが有利であることがある:実施例13〜15のZrO2不含の組成は、ゼロクロッシングについて最良の値を示す。これらの例のΔl/l曲線は、図2〜4に示されている。これらの図中から認識できるように、CTE曲線の極小値(ひいてはCTE/T曲線のゼロクロッシング)は、22〜27.5℃にある。TiO2およびSnO2を含む実施例21は、同様に良好な結果を示す。したがって、この本発明によるガラスセラミックは、室温でのリソグラフィー用途にとって最適に合わせられている。実施例13〜15および21は、さらに、コーディエライト≧58体積%およびキータイト20〜30体積%の好ましい相含有率を有する(表1参照)。図1は、実施例13〜15のXRD回折図を示す。

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