【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は合成ラピス・ラズリとその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ラピス・ラズリは、日本名を青金石といい、古くから装身具や飾り石として珍重されるとともに、粉末にして絵具などの顔料としても用いられてきた。 【0003】ラピス・ラズリは、方ソーダ石族として一括される鉱物のひとつである。 方ソーダ石族の鉱物はどれも同じ結晶構造をもっており、アルミニウム(A1) または珪素(Si)を四つの酸素(O)が囲む四面体が、石英や長石と同じように、立体的につながった骨組みをつくっている。 【0004】この骨組みの間に比較的大きな空間があって、この空間にいろいろのイオンが入り込むことができる。 ラピス・ラズリ(青金石)ではここに、ナトリウム、カルシウム(Ca)と、硫黄(S)、四酸化硫黄、 塩素(Cl)が入っている。 したがって、ラピス・ラズリは一種の固溶体ということができる。 結晶系は立方晶系であり、モース硬度は5.5〜6で、比重は2.4程度である。 【0005】このような、ラピス・ラズリは、黄血塩や硫酸塩の作用によって青色に染められたジャスパーの一種であるスイスラピスやジャーマンラピスによって模造されたり、コバルトで着色した焼結処理の合成スピネル等のイミテーション品がある。 また、その他のイミテーション品として黄鉄鉱を含んでプラスチックで接着した粉末のラピス・ラズリでできているものやガラスで作られたラピス・ラズリがある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スイスラピスやジャーマンラピス及び合成スピネル、プラスチックラピス、ガラスラピス等のイミテーション品は、基本的に色や質感が似ていればいいというものであり、物性は天然ラピス・ラズリとは全く異質のものである。 【0007】また、淡色のラピス・ラズリを染色した処理石もあるが、決して最良のすばらしい色を見せることはない。 【0008】本発明者等は、このような従来のイミテーション品のラピス・ラズリや処理石に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ウルトラマリン、炭酸カルシウム、ポルトランドセメントの三成分からなる基本原料に、パイライトを所定量含有させると天然のラピス・ラズリと同様の結晶相をもち、同等の色と質感を再現できることを知見した。 【0009】したがって、本発明はこのような知見に基づいてなされたものであり、天然のラピス・ラズリと同様の結晶相をもち、同様の色と質感を呈する合成ラピス・ラズリとその製造方法を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る合成ラピス・ラズリでは、ウルトラマリン10〜90質量%、炭酸カルシウム5〜60質量%、ポルトランドセメント5〜85質量%からなる基本原料100質量%に対し、粒径40〜1000μmのパイライトを15質量%以下となるように含有して成る。 【0011】また、請求項3に係る合成ラピス・ラズリの製造方法では、ウルトラマリン10〜90質量%、炭酸カルシウム5〜60質量%、ポルトランドセメント5 〜85質量%からなる基本原料100質量%に対し、粒径40〜1000μmのパイライトを15質量%以下となるように添加して調製して水で養生することにより合成する。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、請求項1に係る合成ラピス・ラズリと請求項2に係る合成ラピス・ラズリの製造方法を詳細に説明する。 【0013】まず、原料組成について説明する。 一般的にラピス・ラズリは、藍方石(hauynite)、方ソーダ石(sodalite)、ノゼアン(nosel ite)、天藍石(Iazurite)の鉱物(ウルトラマリン)から構成されており、これにパイライト(黄鉄鉱)(pyrite)と方解石(calcite)が混入したものである。 【0014】そこで原料は、天然と同じ化学組成の合成ウルトラマリンと方解石(calcite)の理論化学組成である炭酸カルシウム(CaCo 3 )及び結合剤としてポルトランドセメントを使用して基本原料を作製し、これにパイライトを添加して原料を調製する。 【0015】基本原料の組成については、ウルトラマリンが10〜90質量%、炭酸カルシウムが5〜60質量%、ポルトランドセメントが5〜85質量%となるようにする。 【0016】これは、ウルトラマリンの添加量が10質量%未満であると、合成ラピス・ラズリの青みが非常に薄くなくるためである。 そして、ウルトラマリンの添加量が90質量%を超えると必然的にセメントの添加量が5質量%未満になるため、水で養生しても硬化ぜず、バフ研磨しても鏡面がでない。 【0017】また、炭酸カルシウムの添加量については、5質量%未満では合成ラピス・ズラリの色が暗くなりすぎ、60質量%を超えると合成ラピス・ラズリの色が白っぽくなりすぎる。 【0018】この基本原料に対して、粒径40〜100 0μmのパイライトを15質量%以下となるように添加する。 このパイライトの粒径については、粒径が40μ m未満ではパイライトが目立たず、添加する意味がなくなる。 一方、1000μmを超えると美観を損ねる。 またこのパイライトの添加量については、15質量%を超えると合成ラピス・ラズリの色調が非常に暗くなる。 【0019】以上の原料組成でラピス・ラズリを合成することにより、色及び質感が良好で同じ化学組成をもつ合成ラピス・ラズリを作ることが可能になった。 【0020】成形は、一軸プレスやCIPや有機溶剤系によるスリップキャスト等で行うことができる。 【0021】上述のような成形体を水中養生することにより、原料中に含まれているポルトランドセメントの水和反応が起こって硬化する。 また、成形体をオートクレーブ養生して硬化させても良い。 【0022】養生した合成ラピス・ラズリにアルキルシリケートを合浸させた後、加熱処理により架橋させて合成ラピス・ラズリの緻密化(微細な空孔が埋まる)を図れ、研磨後の美観が向上する。 また、原料にアルキルシリケートを5質量%程度添加して成形を行い、これを加熱処理して硬化させることにより、同様の効果が得られる。 【0023】 【実施例】第一化成工業製のウルトラマリン、関東化学製の炭酸カルシウム、秩父小野田製のポルトランドセメントを所定の組成で混合して基本原料を作り、これにパイライト粉末を基本原料に対して所定量添加した後、攪拌機で30分混合してラピス・ラズリ原料を作製した。 さらに、この原料にアルキルシリケートを添加して調整した原料も準備した。 成形は40MPaの加圧で行った。 その成形体を水中にて1週間養生して合成ラピス・ ラズリを作製した。 アルキルシリケートを添加して調整した原料から作った成形体は加水分解後、150℃で加熱処理して1時間してから水中で1週間養生して合成ラピス・ラズリを作成した。 【0024】また、アルキルシリケートを用いて合成ラピス・ラズリに合浸させた後、150℃で加熱処理を1 時間行った。 【0025】これをバフ研磨した後、色調・鏡面・硬化について官能検査を行った。 その結果を表1に示す。 【0026】 【表1】 【0027】なお、質感は、パイライトが美しく混入しているものには○、パイライトの量が多すぎたり、粒径が小さすぎたり、大きすぎたりして美観を損ねるものには×に、パイライト無添加のものは−に分類した。 色調は、天然ラピス・ラズリと同じものは○に、異なるものには×に分類した。 鏡面は、非常に美しいものは☆に、 美しいものは○に、汚いものには×に分類した。 硬化は、硬くなったものは○に、硬くならなかったものは× に分類した。 総合評価は、非常に良かったものは☆に、 良かったものは○に、悪かったものは×に分類した。 【0028】また、この合成ラピス・ラズリをXRD分析した結果、藍方石(hauynite)、方ソーダ石(sodalite)、ノゼアン(noselit e)、天藍石(Iazurite)、黄鉄鉱(pyri te)、および方解石(calcite)が検出され、 天然ラピス・ラズリと同じであることが確認できた。 【0029】 【発明の効果】以上のように、請求項1に係る合成ラピス・ラズリによれば、ウルトラマリン10〜90質量%、炭酸カルシウム5〜60質量%、ポルトランドセメント5〜85質量%からなる基本原料100質量%に対し、粒径40〜1000μmのパイライトを15質量% 以下となるように添加して成ることから、天然のラピス・ラズリと同等の色と質感を呈し、且つ結晶相が天然ラピス・ラズリと同様である商品価値の高い合成ラピス・ ラズリとなる。 【0030】また、請求項3に係る合成ラピス・ラズリの製造方法によれば、ウルトラマリン10〜90質量%、炭酸カルシウム5〜60質量%、ポルトランドセメント5〜85質量%からなる基本原料100質量%に対し、粒径40〜1000μmのパイライトを15質量% 以下となるように添加して調製して水で養生して合成することから、天然のラピス・ラズリと同等の色を質感を呈し、且つ結晶相が天然ラピス・ラズリと同様な商品価値の高い合成ラピス・ラズリを容易に製造することができる。 フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 FI C04B 14:28 14:38) |