【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、主として建物の外装材として用いられる木質セメント板の製造のための原料である加熱硬化型セメント組成物と、この組成物を用いた木質セメント板の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、木質材料とセメント類との複合成形物である木質セメント板は、建物の外装材や内装材等の建築材料として用いられている。 しかしながら、従来の木質セメント板は寸法安定性がやや不足しており、乾燥吸湿によって伸縮が生じ亀裂やそり等が起こりやすいという問題があった。 【0003】上記問題の解決策として、従来から多数の提案がなされている。 例えば、セメントに超微粉珪砂を添加してセメントの水硬反応を促進する方法(特開平4 −160046号公報)、セメントにマイカを添加する方法(特公昭57−42580号公報)、セメントにシリカヒュームを添加する方法(特開平7−215744 号公報)、セメントにマイカとウォラスナイトとを添加する方法(特開平8−67547号公報)、等が挙げられる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記提案は、 いずれも普通ポルトランドセメントを用いた抄造法であり、木質セメント板の寸法安定性は改善されるものの、 抄造後の脱水、セメントの硬化、養生等に長時間を要し、生産性に問題を残している。 【0005】本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生産性が高く、寸法安定性が改善された木質セメント板を与える加熱硬化型セメント組成物、及びこのセメント組成物を用いた木質セメント板の製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の加熱硬化型セメント組成物(以下、本発明1という) は、アルミナセメント並びに無水石膏及び/又は半水石膏を主成分とする熱硬化成分とポルトランドセメントからなるセメント成分に、上記セメント成分に対しウォラスナイトが、セメント成分:ウォラスナイト=1:0. 2〜1:0.4の重量比率で混合されていることを特徴とする。 【0007】本発明の請求項2に記載の木質セメント板の製造方法(以下、本発明2という)は、請求項1記載の加熱硬化型セメント組成物に、木質材料及び水を混合し、この混合物を所定形状に成形した後加熱して硬化させる方法である。 【0008】本発明1で用いられるセメント成分におけるポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等が挙げられる。 【0009】本発明1で用いられるセメント成分における熱硬化性成分としては、アルミナセメント、無水石膏及び/又は半水石膏を主成分とするものが用いられる。 熱硬化性成分中には石灰が含まれてもよい。 【0010】セメント成分における熱硬化性成分とポルトランドセメントとの混合比率は、重量比で1:4〜 4:1が好ましい。 この範囲を外れ、セメント成分中の熱硬化性成分が少ないと、加熱による硬化促進の効果が小さくなるとともに、このセメント成分と木質材料を用いて木質セメント板を製造する場合に、木質材料に対するセメント成分の付着力が向上せず、得られる木質セメント板の強度を発現することが困難になる。 逆に、上記範囲を越えて熱硬化性成分の含有量が多くなると安価なポルトランドセメントの含有量が低下して原料価格が高くなる。 【0011】本発明1で用いられるセメント成分100 重量部に、有機カルボン酸のアルカリ金属塩を0.2〜 2.0重量部添加するのがよい。 上記有機カルボン酸としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、グルタール酸、グリコール酸、リンゴ酸等が挙げられる。 その中でも、クエン酸、グルコン酸、グルタール酸、グリコール酸が好ましい。 そのアルカリ金属塩としては、例えば、 ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。 【0012】上記有機カルボン酸のアルカリ金属塩は、 セメント成分に木質材料や水を混合したセメント混合物の可使時間を延長するために用いられるが、その添加量としては、上記セメント成分100重量部に対して、 0.2重量部未満では可使時間の延長効果が不十分となり、また、2.0重量部を超えても可使時間の延長効果が増さなくなるので、0.2〜2.0重量部に限定される。 【0013】本発明1で用いられるウォラスナイトは、 一般に長さ150〜200μm、アスペクト比7〜13 の繊維状であり、CaO,SiO 2 ,AL 2 O 3 ,Fe 2 O 3 ,TiO 2 ,MgO,Na 2 Oを成分として含む。 ウォラスナイトは、木質セメント板を補強して寸法安定性や形状安定性を付与する。 【0014】セメント成分とウォラスナイトとの混合比率は、重量比率でセメント成分:ウォラスナイト=1: 0.4を越えてウォラスナイトが多くなると、本発明1 の加熱硬化型セメント組成物を用いて得られる木質セメント板の耐久物性が悪くなり、また、セメント成分:ウォラスナイト=1:0.2よりもウォラスナイトが少なくなると、得られる木質セメント板の寸法安定性の改善効果が不十分となるので、セメント成分:ウォラスナイト=1:0.2〜1:0.4に限定される。 【0015】本発明2で用いられる木質材料としては、 針葉樹(ベイツガ、エゾマツ、アカマツ等)、広葉樹(ブナ、メラビ等)を問わず使用することができ、パルプ、木毛、木粉、木片等の形状で使用される。 本発明2 においては上記木質材料5〜30重量部と、本発明1の加熱硬化型セメント組成物70〜95重量部と、適宜量の水が混合されたものが好適に使用される。 【0016】木質材料の含有量が30重量部を超えかつ該セメント組成物の含有量が70重量部より少ないと、 木質材料に付着するセメント組成物の量が少なく、製品強度を上げることができず、木質材料の含有量が5重量部より少なくかつセメント組成物の含有量が95重量部を超えると、木質材料を混入する利点が薄れ原料費が上がってしまう。 【0017】本発明2の木質セメント板の製造方法としては、例えば、混合物を、型上に堆積させ、圧縮して所定形状に成形した後、所定時間加圧加熱して硬化させ脱型する方法が挙げられる。 【0018】脱型した製品は、必要に応じてオートクレーブ養生を行うこともできる。 この場合、養生温度としては、木質材料を熱劣化させないために、160〜17 0℃が好ましい。 【0019】 【作用】本発明1の加熱硬化型セメント組成物は、セメント成分にウォラスナイトが混合されているため、ウォラスナイトによる補強効果が発現し、本発明1を用いて得た木質セメント板は寸法安定性が改善されている。 また、本発明1は加熱硬化型であるため本発明1を用いた木質セメント板の製造は生産性が向上する。 【0020】本発明2の木質セメント板の製造方法は、 本発明1の加熱硬化型セメント組成物に、木質材料及び水を混合し、この混合物を所定形状に成形した後加熱して硬化させる加熱硬化型であるため、加熱されたときの硬化が早く、木質材料からセメントの硬化を阻害する成分が溶出する前に硬化が進行するので、樹種により制限されることなく木質材料を選択できる。 【0021】また、硬化が早いため脱型時間も短く生産性が向上し、木質セメント板を経済的に製造できる。 【0022】 【発明の実施の形態】 実施例1 図1は、本発明の一実施例であって、木質セメント板の製造方法を手順通りに示す説明図である。 図において、 1は型枠、2は混合物、3は当て板、4は木質セメント板である。 【0023】ポルトランドセメント50重量部、アルミナセメント12.5重量部、半水石膏7.5重量部、消石灰5重量部からなるセメント成分75重量部に、ウォラスナイト25重量部を加えて、熱硬化型セメント組成物を調合した。 因みに、上記熱硬化型セメント組成物は、セメント成分:ウォラスナイト=1:0.33の重量比率で混合されている。 【0024】上記の熱硬化型セメント組成物100重量部に、細分化された木片15重量部、水50重量部を加えて混合物2とした。 この混合物2を、図1に示すように、4×4×16cmの3連型枠1に手作業で堆積させ、上から当板3を載せ厚さ2cmに圧縮し、これを圧縮状態のまま加熱室に入れ材料温度が80℃に達してからその温度に10分間保った後脱型し、木質セメント板4を得た。 【0025】なお、有機カルボン酸のアルカリ金属塩は、セメント混合物の可使時間を延長するために用いられるものであるが、本実施例のように、上記木質セメント板4が小型の試験片であるので、可使時間が短くても支障をきたすことはないので、本実施例ではその使用を省略した。 【0026】得られた木質セメント板4について、JI S A 5422に準じて吸水伸び率と、JIS A 1408に準じて曲げ強度を測定し、吸水伸び率が0. 2%未満のものを○、0.2%以上を×に、曲げ強度が120kgf/cm 2 (11.8MPa)以上のものを○、120kgf/cm 2 (11.8MPa)未満のものを×に、と評価した。 【0027】本実施例の木質セメント板4は、吸水伸び率が0.18%、曲げ強度が130kgf/cm 2 (1 2.4MPa)であり、いずれも評価は○であった。 【0028】実施例2 前記セメント成分に、有機カルボン酸のアルカリ金属塩として、クエン酸ナトリウム0.2重量部を添加した以外は、前記実施例1と同じ組成の加熱硬化型セメント組成物を調合し、これに細分化された木片15重量部、水50重量部を加えて混合物2とした。 【0029】この混合物2を、幅910mm×長さ27 30mm程度の大きさの型枠に堆積させ、上から当板を載せて圧縮し、これを圧縮状態のまま加熱室に入れ、材料温度が80℃に達してからその温度に10分間保った後脱型し、木質セメント板を得た。 【0030】得られた木質セメント板について、実施例1と同様にして、吸水伸び率と、曲げ強度を測定し、吸水伸び率が0.2%未満のものを○、0.2%以上を× に、曲げ強度が120kgf/cm 2 (11.8MP a)以上のものを○、120kgf/cm 2 (11.8 MPa)未満のものを×に、と評価したところ、いずれも評価は○であった。 【0031】比較例1 ポルトランドセメント70重量部、アルミナセメント1 0重量部、半水石膏2重量部、消石灰3重量部からなるセメント成分に、ウォラスナイト15重量部を加えて、 熱硬化型セメント組成物を調合した。 因みに、上記熱硬化型セメント組成物は、セメント成分:ウォラスナイト=1:0.17の重量比率で混合されていて、このウォラスナイトの混合比率は0.2未満である。 【0032】上記の熱硬化型セメント組成物100重量部に、細分化された木片15重量部、水50重量部を加えて混合物とした。 この混合物を、前記実施例1と同じ型枠と、同じ成形条件で成形し、木質セメント板を得た。 得られた木質セメント板について、実施例1と同様にして、曲げ強度を測定したところ、曲げ強度が110 kgf/cm 2 (10.8MPa)となり、評価は×であった。 【0033】比較例2 ポルトランドセメント20重量部、アルミナセメント2 2.5重量部、半水石膏7.5重量部、消石灰5重量部からなるセメント成分55重量部に、ウォラスナイト4 5重量部を加えて、熱硬化型セメント組成物を調合した。 因みに、上記熱硬化型セメント組成物は、セメント成分:ウォラスナイト=1:0.81の重量比率で混合されていて、このウォラスナイトの混合比率は0.4以上である。 【0034】上記の熱硬化型セメント組成物100重量部に、細分化された木片15重量部、水50重量部を加えて混合物とした。 この混合物を、前記実施例1と同じ型枠と、同じ成形条件で成形し、木質セメント板を得た。 得られた木質セメント板について、実施例1と同様にして、吸水伸び率を測定したところ、吸水伸び率が0.23%となり、評価は×であった。 【0035】実施例の作用 上述してきたように、本実施例1、2の加熱硬化型セメント組成物は、セメント成分にウォラスナイトが混合されているため、ウォラスナイトによる補強効果が発現し、これを用いて得た木質セメント板は、曲げ強度が1 20kgf/cm 2 (11.8MPa)以上となり、曲げ強度にすぐれる。 また、吸水伸び率が0.2%より小さいので、吸湿によって生じる伸縮で亀裂やそりが起こり難く、寸法安定性が改善されている。 【0036】また、本実施例1、2の加熱硬化型セメント組成物は、加熱硬化型であるためこの組成物を用いた木質セメント板の製造は生産性が向上する。 【0037】本実施例の加熱硬化型セメント組成物を用いた木質セメント板の製造方法は、セメント組成物に、 木質材料及び水を混合し、この混合物を所定形状に成形した後加熱して硬化させる加熱硬化型であるため、加熱されたときの硬化が早く、木質材料からセメントの硬化を阻害する成分が溶出する前に硬化が進行するので、樹種により制限されることなく木質材料を選択できる。 【0038】また、硬化が早いため脱型時間も短く生産性が向上し、木質セメント板を経済的に製造できる。 【0039】 【発明の効果】本発明1は、上記の構成とされているので、本発明1を用いて得た木質セメント板は寸法安定性が改善されている。 また、本発明1を用いる木質セメント板の製造は生産性が高い。 【0040】本発明2は、上記の構成とされているので、樹種により制限されることなく木質材料を選択できる。 また、硬化が早いため脱型時間も短く生産性が向上し、木質セメント板を経済的に製造できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施例であって、木質セメント板の製造方法を手順通りに示す説明図である。 【符号の説明】 1 型枠 2 混合物 3 当て板 4 木質セメント板 ───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. 6識別記号 FI C04B 7:32 22:14 14:38 18:24) 111:20 |