断熱部材及び低融点ガラス組成物、並びに封止材料ペースト

申请号 JP2015552389 申请日 2014-11-28 公开(公告)号 JP6256480B2 公开(公告)日 2018-01-10
申请人 日立化成株式会社; 发明人 内藤 孝; 立薗 信一; 吉村 圭; 橋場 裕司; 青柳 拓也; 児玉 一宗; 小野寺 大剛; 藤枝 正;
摘要
权利要求

一対の基板と、気密封止部と、を含み、 前記気密封止部は、前記一対の基板の間の外周部に設けられ、前記一対の基板の間に空間を形成し、前記空間が真空或いは減圧の状態にあり、 前記気密封止部を構成する封止材料は、低融点ガラスを含み、 前記低融点ガラスは、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、さらに、酸化テルル、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化カリウム及び酸化ナトリウムのうち1種以上を含み、酸化物換算で次の2つの関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする断熱部材。 V2O5+BaO+P2O5+WO3≧90 V2O5>BaO>P2O5>WO3前記空間には、スペーサが付設されていることを特徴とする請求項1記載の断熱部材。前記一対の基板は、ガラスであることを特徴とする請求項1記載の断熱部材。前記低融点ガラスは、酸化物換算でV2O5を35〜47mol%、BaOを20〜35mol%、P2O5を15〜25mol%、WO3を3〜13mol%含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の断熱部材。前記低融点ガラスは、酸化物換算で次の関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の断熱部材。 37≦BaO+P2O5≦55前記低融点ガラスは、酸化物換算で次の関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の断熱部材。 42mol%≦V2O5+WO3≦55前記封止材料は、フィラー粒子を含み、 前記フィラー粒子は、前記低融点ガラスより熱膨張係数が小さく、 前記フィラー粒子の含有量は、前記低融点ガラス100体積部に対し50体積部以下であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の断熱部材。前記フィラー粒子は、Zr2(WO4)(PO4)2、LiAlSiO4、Mg2Al4Si5O18、ZrSiO4、SiO2ガラス、Al6Si2O13及びNb2O5のうち1種以上であることを特徴とする請求項7記載の断熱部材。前記封止材料は、更にスペーサ用球状ビーズを含むことを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の断熱部材。窓ガラス又は冷蔵庫若しくは冷凍庫に用いられることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の断熱部材。酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、 さらに、酸化テルル、酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化カリウム及び酸化ナトリウムのうち1種以上を含み、実質的に酸化鉄及び酸化アンチモンを含まず、 酸化物換算でV2O5を35〜47mol%含み、次の関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする低融点ガラス組成物。 V2O5+BaO+P2O5+WO3≧90 V2O5>BaO>P2O5>WO3酸化物換算でBaOを20〜35mol%、P2O5を15〜25mol%、WO3を3〜13mol%含むことを特徴とする請求項11記載の低融点ガラス組成物。酸化物換算で次の関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする請求項11又は12に記載の低融点ガラス組成物。 37≦BaO+P2O5≦55酸化物換算で次の関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする請求項11乃至13の何れか一項に記載の低融点ガラス組成物。 42mol%≦V2O5+WO3≦55請求項11乃至14の何れか一項に記載の低融点ガラス組成物の粉末粒子と、前記低融点ガラス組成物より熱膨張係数が小さいフィラー粒子とを含み、 前記フィラー粒子の含有量は、前記低融点ガラス組成物100体積部に対し50体積部以下であることを特徴とする封止材料ペースト。前記フィラー粒子は、Zr2(WO4)(PO4)2、LiAlSiO4、Mg2Al4Si5O18、ZrSiO4、SiO2ガラス、Al6Si2O13及びNb2O5のうち1種以上であることを特徴とする請求項15記載の封止材料ペースト。更にスペーサ用球状ガラスビーズを含むことを特徴とする請求項15又は16に記載の封止材料ペースト。前記球状ガラスビーズの含有量は、前記低融点ガラス組成物100体積部に対し1体積部以下であることを特徴とする請求項17記載の封止材料ペースト。

说明书全文

本発明は、断熱部材及びその気密封止に用いる低融点ガラス組成物、並びにその封止材料ペーストに関する。

建材用窓ガラス等では、省エネ、CO2削減、結露防止等の観点から断熱性が要求されている。その断熱部材として、熱線反射膜を内面に形成した複層ガラスパネルが広く展開されるようになり、その普及が大変高まっている。このような断熱部材、すなわち複層ガラスパネルは、一対のガラス基板の間に空間部を有し、その空間部は湿気を含む大気より熱伝導が低い乾燥空気、アルゴン或いは真空等の雰囲気とされ、その外周部が樹脂や低融点ガラスで封止された構造となっている。これら雰囲気の熱伝導率は、乾燥空気>アルゴン≫真空であり、パネルの断熱性は乾燥空気<アルゴン≪真空の順番で高くなる。0℃での熱伝導率は、乾燥空気で0.0241W/mK、アルゴンで0.0164W/mK、真空で0.0005W/mKである。熱線反射膜には、一般には金属の薄膜が使用され、どちらか一方のガラス基板内面に形成されることが多い。また、その金属の薄膜は酸化物の薄膜を介して多層化されることによって、熱線反射率を向上することができる。ガラス基板には、ソーダライムガラスが使われることが一般的であり、その耐熱性が約500℃であることから、少なくともその温度を超えない条件でガラス基板の外周部を封止する必要がある。

パネル内部が真空の場合には、低融点ガラスを用いたガラス封止が適用され、樹脂を用いた封止材よりも高い断熱性が実現されている。このガラス封止には、PbO−B2O3系低融点ガラスやBi2O3−B2O3系低融点ガラスが使用されている。しかし、PbO−B2O3系低融点ガラスでは、有害な鉛(Pb)を多く含むため、電子・電気機器では、RoHS指令等の環境規制によりこのような低融点ガラスは使用できなくなった。建材においても、環境負荷への低減を図るために鉛フリー化が要求されるようになってきた。また、真空断熱複層ガラスパネルは、建材の窓ガラスの他、冷蔵庫や冷凍庫、電子・電気機器等のへの展開も期待されるようになり、このような展開にはガラス封止部の鉛フリー化は必要不可欠である。

一方、Bi2O3−B2O3系低融点ガラスでは、鉛フリー化が可能であり、既に電子・電気機器では、PbO−B2O3系低融点ガラスに替わって、鉛フリーのBi2O3−B2O3系低融点ガラスが全面的に適用されるようになった。しかし、このBi2O3−B2O3系低融点ガラスは、PbO−B2O3系低融点ガラスより高温で軟化流動するため、複層ガラスパネルへ展開する際には、ガラス基板として使用されるソーダライムガラスの耐熱温度付近で気密封止されることになる。これは、複層ガラスパネルの製造歩留まりを低下させる要因となり、Bi2O3−B2O3系低融点ガラスはPbO−B2O3系低融点ガラス並みの低温化が要求されている。また、Bi2O3−B2O3系低融点ガラスは、埋蔵量の少ないビスマス(Bi)を多く含むため、継続的な安定供給が難しくなってくる可能性がある。さらに、ビスマスは鉛の副産物と産出されることが多く、精製時に有害な鉛廃棄物を多量に放出してしまうことから、必ずしも環境に配慮されたものではない。

特許文献1には、真空断熱複層ガラスパネルの外周部を鉛フリーのV2O5−BaO−ZnO系低融点ガラスを用いて気密封止することが提案されている。この気密封止に適したV2O5−BaO−ZnO系低融点ガラスの組成範囲は、V2O5が45〜50mol%であり、BaOが20〜23mol%であり、ZnOが19〜22mol%であることが開示されている。

国際公開WO2013/101748号

断熱部材として適用される複層ガラスパネルには、気密封止による高い断熱性とその長期的維持(信頼性)、環境負荷への低減(封止部の鉛フリー化)、酸性雨等の酸性環境への対応(封止部の耐酸性)等が要求されている。しかし、特許文献1記載のV2O5−BaO−ZnO系低融点ガラスは、結晶化傾向が大きく、ガラス封止時に結晶化しやすい。さらに、封止部とガラス基板の熱膨張を合わせるために、封止部に熱膨張を調整するためのフィラー粒子を混合し、分散することがあるが、このフィラー粒子は、低融点ガラスの結晶化を促進することが多々ある。結晶化による析出結晶の種類やサイズ及び結晶化の度合いによって熱膨張係数や軟化流動性が異なってくる。窓ガラス等に展開される複層ガラスパネルは、サイズが大きく、この結晶化をパネル全体で均一にコントロールして気密封止することは容易なことではない。結晶化の度合いにバラツキが生じると、熱膨張差や軟化流動性の違いによって信頼性の高い気密封止を安定して実現することは難しい。 また、特許文献1では、酸性雨を模擬したような耐酸性試験が実施されておらず、建材用窓ガラスへ展開するためには、このような実用的な試験を行い、耐環境性における信頼性を確保することも大変重要である。

本発明の目的は、環境負荷への影響を低減し、気密性の維持と耐酸性の向上とを実現することにある。

本発明の断熱部材は、一対の基板と、気密封止部と、を含み、気密封止部は、一対の基板の間の外周部に設けられ、一対の基板の間に空間を形成し、その空間が真空或いは減圧の状態にあり、気密封止部を構成する封止材料は、低融点ガラスを含み、低融点ガラスは、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、酸化物換算で次の2つの関係式(式中、単位はmol%)が成り立つことを特徴とする。 V2O5+BaO+P2O5+WO3≧90 V2O5>BaO>P2O5>WO3

本発明によれば、環境負荷への影響を低減し、気密性の維持と耐酸性の向上を実現することができる。

断熱部材の一例を示す平面図である。

図1Aの断熱部材の気密封止部近傍を示すA−A断面図である。

断熱部材の他の例を示す平面図である。

図2Aの断熱部材の気密封止部近傍を示すA−A断面図である。

図1A及び1Bに示す断熱部材の製造途中の状態を示す平面図である。

図3AのA−A断面図である。

図1A及び1Bに示す断熱部材の製造途中の状態を示す平面図である。

図4AのA−A断面図である。

図1A及び1Bに示す断熱部材の製造工程を示す模式断面図である。

断熱部材の封止温度プロファイルの一例を示すグラフである。

図2A及び2Bに示す断熱部材に用いるスペーサ部材(棒)に封止材料ペーストを塗布した後の処理工程におけるスペーサ部材(角棒)の状態を示す斜視図である。

図7Aのスペーサ部材(角棒)に焼成処理を施した後の状態を示す斜視図である。

図2A及び2Bに示す断熱部材に用いるスペーサ部材(円柱)の製造工程を示す斜視図である。

図8Aのスペーサ部材(円柱)に焼成処理を施した後の状態を示す斜視図である。

図2A及び2Bに示す断熱部材の製造途中を示す平面図及びその拡大図である。

図2A及び2Bに示す断熱部材の製造工程を示す模式断面図である。

代表的な低融点ガラスの示差熱分析(DTA)の結果を示すグラフである。

代表的な低融点ガラスの熱膨張曲線を示すグラフである。

代表的な低融点ガラスの加熱に伴う形状変化を示す概略図である。

せん断応を測定するための接合体の作製方法を示す概略図である。

封止材料中のフィラー粒子の含有量と、封止材料の熱膨張係数及びその封止材料を用いて接合した接合体のせん断応力との関係を示すグラフである。

以下、本発明の実施形態について説明する。

図1Aは、断熱部材の一例を示す平面図である。図1Bは、図1Aの断熱部材の気密封止部近傍を示すA−A断面図である。 図2Aは、断熱部材の他の例を示す平面図である。図2Bは、図2Aの断熱部材の気密封止部近傍を示すA−A断面図である。 なお、以下では、断熱部材の基板としては、ガラス製のものを示すが、本発明に用いる基板は、いわゆるガラスで形成されたものに限定されるものではなく、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素その他のセラミックスで形成されたものであってもよいし、銅合金、銀合金、鉄合金、ニッケル合金その他の金属で形成されたものであってもよい。さらに、例えば、セラミックス等の基板の表面に金属、ガラス等の被膜を形成したものであってもよいし、金属、ガラス等の基板の表面にセラミックス等の被膜を形成したものであってもよい。 基板がセラミックス又は金属で形成されているものの適用先としては、魔法瓶のような保温容器、冷蔵庫や冷凍庫の壁面、建材等の断熱ボードが挙げられる。 図1A及び1Bに示す断熱部材は、外周部に気密封止部1を有する一対の基板2と3の間に空間部4があり、その空間部4が真空或いは減圧の状態にあり、気密封止部1に低融点ガラス5を含む封止材料6が用いられた断熱部材である。建材用窓ガラスや冷蔵庫、冷凍庫等の複層ガラスパネルでは、基板2と3には耐熱性が約500℃のソーダライムガラスが使用されることが一般的である。ガラス基板は変形によって破損しやすいために、真空或いは減圧の状態にある空間部4には、複数のスペーサ7が設置される。気密封止部1に使用される封止材料6は、低融点ガラス5の他に基板2と3との熱膨張係数の整合をとるためのフィラー粒子8が含有される。また、適切な厚みの気密封止部1を得るためには、複数のスペーサ用球状ビーズ9を封止材料5に導入することが有効である。スペーサ用球状ビーズ9は、スペーサ7においても厚み制御で活用できる。 ここで、「減圧の状態」とは、大気圧(1気圧)より低い気圧をいう。

さらに、スペーサ7の固定には、気密封止部1と同様に封止材料6で使用される低融点ガラス5とフィラー粒子8を活用することが可能である。空間部4を真空状態にする場合には、事前に基板3に排気穴10を形成しておき、その排気穴10より真空ポンプを用い空間部4の排気を行う。排気後にキャップ11を取り付け、空間部4の真空度を維持できるようにする。空間部4を減圧状態にする場合には、排気穴10は不要であり、加熱によって気密封止することで達成できる。これは、気密封止後に空間部4内に閉じ込められた気体が冷却によって収縮するためである。建材用窓ガラスとして適用する際には、基板2の内面には事前に熱線反射膜12を蒸着法等で形成しておく必要がある。

図2A及び2Bに示す断熱部材は、一枚の基板2と3の間の空間部4の体積が大きい場合、すなわち基板2と3の間の間隔が大きい場合であり、角棒13を介して低融点ガラス5を含む封止材料6と6’で気密封止された断熱部材である。角棒13は、基板2と3の熱膨張係数に整合させるために、基板2と3と同じ材質であることが好ましい。封止材料6と6’中のフィラー粒子8は、図1A及び1Bに示すものと同様に、熱膨張係数の整合のために含有されるものである。空間部4に配置される複数のスペーサ7も気密封止部1と同様にして固定される。角柱或いは円柱14を介して封止材料6と6’で接着する。その角柱或いは円柱14は、角棒13と同様に基板2と3と同じ材質であることが好ましい。

封止材料6に含まれる低融点ガラス5が酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、次の酸化物でV2O5+BaO+P2O5+WO3≧90mol%であり、しかもV2O5>BaO>P2O5>WO3(mol%)であることを特徴とする。この条件を満たす低融点ガラス5は、鉛とビスマスを含まず断熱部材としての環境負荷への影響を低減できる。さらに基板2と3に使用されるソーダライムガラスの耐熱温度以下で結晶化することなく、良好な軟化流動を有し、しかも良好な耐酸性が得られることから、生産性と信頼性に優れた気密封止部1を有する断熱部材を提供することが可能である。この断熱部材は、上記図1で説明したとおり、複数のスペーサ7を介して一対のガラス基板の外周部が低融点ガラス5を含む封止材料6で気密封止された複層ガラスパネルであることが有効である。

さらに、前記低融点ガラス5としては、次の酸化物換算でV2O5が35〜47mol%(35mol%以上47mol%以下)、BaOが20〜35mol%、P2O5が15〜25mol%及びWO3が3〜13mol%の範囲にあることが有効である。主成分であるV2O5は、鉛フリーの低融点ガラス5を成立させるための必須成分であり、35mol%未満であると、ガラスの特性温度、たとえば軟化点が上昇してしまい、低温での良好な軟化流動性が得られにくくなる。一方、47mol%を超えると、耐酸性が低下したり、或いは結晶化しやすくなったりする。BaOは、ガラス化及び耐酸性の向上のための成分であり、20mol%以下であると良好な耐酸性が得られない。一方、35mol%を超えると、軟化点が上昇して、低温での良好な軟化流動性が得られにくくなる。P2O5は、ガラス化するために最も有効な成分であり、15mol%未満であると、結晶化しやすくなり、低温での良好な軟化流動性が得られない。一方、25mol%を超えると、耐酸性が低下し、或いは軟化点が上昇し、低温での軟化流動性が悪化する。WO3は結晶化を抑制することができることから、P2O5の含有量を低減でき、耐酸性を向上でき、軟化点の上昇を抑制できるが、3mol%未満であると、その効果が得られない。一方、13mol%を超えると、逆に結晶化が起こりやすくなったり、また軟化点が上昇したりする等して、低温での良好な軟化流動性が得られにくくなる。

また、前記低融点ガラス5は、さらに次の酸化物換算でMoO3、TeO2、SrO、ZnO、K2O及びNa2Oのうち1種以上を合計0〜10mol%(0mol%超、10mol%)含んでもよい。MoO3やZnOの含有は、WO3の含有ほどではないが、同様な効果が得られる。これらの含有量が多いと、耐酸性が低下したり、逆に結晶化が促進されたりする。SrOの含有は、BaOの含有と同様に耐酸性を向上する効果が得られるが、その含有量が多いと、逆に結晶化が促進されてしまう。TeO2の含有は、低温化や結晶化の抑制に効果があるが、TeO2は埋蔵量が少なく、また高価であるため、その含有量が多いと、安価に安定して提供することが難しくなる。K2OやNa2Oの含有は、低温化に効果あるが、含有量が多いと、熱膨張係数が大きくなり過ぎたり、耐酸性が低下したりする。以上より、これら成分には、長所と短所があり、これらの合計は10mol%以下であることが好ましい。

また、前記低融点ガラス5は、次の酸化物換算で37mol%≦BaO+P2O5≦55mol%であることが好ましい。この範囲では、軟化点が396〜446℃であり、しかも550℃以下では結晶化を起こさないため、基板2と3として、通常、使用されるソーダライムガラス基板の耐熱温度以下での軟化流動性が良好である。

さらに、前記低融点ガラス5は、次の酸化物換算で42mol%≦V2O5+WO3≦55mol%であることが好ましい。この範囲では、30〜250℃における熱膨張係数が(91〜130)×10−7/℃であり、熱膨張係数の小さいフィラー粒子8の含有によって、ソーダライムガラス基板の熱膨張係数に整合を取ることが可能である。ソーダライムガラスの30〜250℃における熱膨張係数は、85×10−7/℃前後である。低融点ガラス5の熱膨張係数が130×10−7/℃を超えると、フィラー粒子8の含有量を非常に増やさなければならず、それによって低融点ガラス5の軟化流動性が悪化し、良好な接着性が得られにくくなる。そのため、フィラー粒子8の含有量は、低融点ガラス100体積部に対して、50体積部以下とすることが好ましい。

フィラー粒子8としては、低融点ガラスよりも熱膨張係数が小さいZr2(WO4)(PO4)2、LiAlSiO4、Mg2Al4Si5O18、ZrSiO4、SiO2ガラス、Al6Si2O13及びNb2O5のうち1種以上であることが好ましい。これらのフィラー粒子8の含有は、封止材料6としての熱膨張係数を小さくでき、基板1と2に使用されるソーダライムガラス基板の熱膨張係数に合わせ込むことが可能である。通常では、ソーダライムガラスより封止材料6の方が機械的強度が低いため、封止材料6に若干の圧縮応力がかかる方が好ましく、封止材料6の熱膨張係数はソーダライムガラスの熱膨張係数より低めの方が良い。具体的には、封止材料6の30〜250℃における熱膨張係数が(60〜80)×10−7/℃の範囲にあることが好ましい。

また、図1A及び1Bに示すような断熱部材では、封止材料6に複数のスペーサ用球状ビーズ9が含まれることが有効であり、これによって適切な膜厚で気密封止することが可能である。その球状ガラスビーズ9が前記低融点ガラス組成物5の粉末粒子100体積部に対し1体積部以下であることが好ましい。この球状ガラスビーズ9を気密封止部1のスペーサとして使用する場合には、極少量で効果が得られる。スペーサ用球状ビーズ9には、寸法精度と価格に配慮したガラスビーズであることが好ましい。

本実施形態の断熱部材では、前記低融点ガラス5を適用した封止材料6によって、基板2と3に使用するソーダライムガラス基板の耐熱温度以下の420〜500℃で気密封止ができ、しかもその生産性と信頼性を向上できるものである。さらに、環境負荷への影響を低減できるものである。

以上、本実施形態の断熱部材は、高い断熱性とその長期的維持(気密封止)、環境負荷への低減(封止部の鉛フリー化)、及び酸性雨に対応した信頼性(封止部の耐酸性)等を達成できることから、窓ガラス或いは冷蔵庫や冷凍庫の断熱複層ガラスパネルとして有効に適用できるものである。また、本発明は、上記断熱部材に限られたものではなく、断熱性が要求される個所には幅広く展開できるものである。

次に、本実施形態の断熱部材の製法について説明する。図1A及び1Bに示す断熱部材の製法を図3A〜6を用いて説明する。 図3A及び4Aは断熱部材の平面概略図であり、図3B及び4Bはその気密封止部(外周部)近傍のA−A線断面概略図である。 排気穴10を有する基板3の外周部に、低融点ガラス5と、フィラー粒子8と、スペーサ用球状ビーズ9とを含む封止材料6を付設する。また、同様にして基板3の内側に複数のスペーサ7を付設する。スペーサ7は、封止材料6よりスペーサ用球状ビーズ9の数量を増やす必要がある。これらの形成方法は、先ずは封止材料6となる上記封止材料ペーストとスペーサ用ペーストを基板3の外周部と内側にディスペンサー法によって塗布し、乾燥する。これを焼成炉によって、封止材料6及びスペーサ7に含まれる低融点ガラス5を軟化流動させ、基板3へ焼成し、形成する。次に図4A及び4Bに示すように、熱線反射膜12を蒸着法によって基板2の全面に形成する。基板3の封止材料6とスペーサ7が形成された面と、基板2の熱線反射膜12が形成された面とを図5に示すように対向して、2枚の基板2と3を位置合わせし、耐熱性クリップ等で固定する。また、基板3の排気穴10に排気管を接合し、それを真空ポンプに接続する。これを焼成炉内で図6に示すような封止温度プロファイルで加熱する。

先ずは、大気中で封止材料6に含まれる低融点ガラス5の軟化点付近まで昇温し保持する。複層ガラスパネル全体を軟化点付近でほぼ均一な温度部分になるまで保持した後に、排気穴10より真空ポンプで排気しながら昇温し、保持する。その際に、封止材料6やスペーサ7は所定の厚みまで押し潰されるとともに接合される。ここで、封止材料6に含まれる低融点ガラス5を融かしすぎないように注意する必要がある。真空排気によって、複層ガラスパネル内部に封止材料6やそれに含まれる低融点ガラス5が取り込まれてしまうからである。軟化点付近の温度に保持した後、排気管を閉じ、排気穴10にキャップ11を取り付け、パネル内部の真空度が維持できるように栓をする。このようにして、気密封止部1を有し、パネル内部が真空状態の複層ガラスパネルを製作する。

減圧状態で図1A及び1Bの断熱部材を製作するに当たっては、基板3の排気穴10は不要である。その際には、図5の状態で加熱するに当たっては、焼成炉の雰囲気を多少の分を含む大気より熱伝導率が低い気体、たとえば乾燥空気或いはアルゴンとする。これらの雰囲気にするには、真空ポンプで炉内を排気した後に乾燥空気或いはアルゴンの気体を導入する。基板3の自重或いはそれに重りを載せることで、基板3に形成した封止材料6やスペーサ7を基板2に加熱、接合する。その際の加熱は、上記の真空排気封止より封止温度を高める必要がある。冷却時に気密封止された複層ガラスパネルへ導入した気体(乾燥空気或いはアルゴン)が収縮するために、パネル内部が乾燥空気或いはアルゴン雰囲気での減圧状態となる。断熱性は、上記真空状態には劣るが、安価に複層ガラスパネルを製作することができる。断熱性を長期的に維持するため、パネル内部にゲッターを入れておいてもよい。

次に、図2A及び2Bに示す断熱部材の製法を図7A〜10を用いて説明する。 図7Aに示すように、低融点ガラス5とフィラー粒子8を含む封止材料ペーストを角棒13の両封止面とその角棒13同士の接続面に印刷法又はディスペンサー法で帯状に塗布し、塗布面を床に接触させないようにして乾燥及び焼成をする。これにより、図7Bで示すような封止材料6と6’を形成した気密封止用の角棒13を製作する。 複層ガラスパネル内部に設置するスペーサ7は、図8Aに示すように、円柱14の両接着面に封止材料ペーストを用いて上記同様にして塗布し、乾燥及び焼成をし、図8Bで示すような封止材料6と6’を形成したスペーサ7用の円柱13を製作する。 封止材料6と6’を形成した角棒13と円柱14を図9に示すように熱線反射膜12を形成した基板2の上に配置する。図9の(a)は断熱部材の平面図で、(b)は平面図の角部を拡大した図である。図10に示すように排気穴10を形成した基板3をその上に設置し、耐熱性クリップ等で固定する。排気穴10に排気管及ぶ真空ポンプを接続し、図3A〜6で示した図1A及び1Bの断熱部材の製法と同様にして、気密封止部1を有し、パネル内部が真空状態の複層ガラスパネルを製作する。減圧状態で図2及び2Bの断熱部材を製作するに当たっても、図1A及び1Bの断熱部材と同様にして減圧状態の複層ガラスパネルを製作する。

以上より、本実施形態の断熱部材及びその気密封止に用いる低融点ガラス組成物、並びにその封止材料ペーストは、環境負荷への影響を低減し、しかも信頼性と生産性に優れた気密封止部が得られ、特に建材用窓ガラス或いは冷蔵庫や冷凍庫に適用できる断熱用の複層ガラスパネルとして展開できるものである。 なお、本発明の断熱部材は、必ずしも透明である必要はなく、用途によっては半透明又は不透明な基板を用いてもよい。

以下、実施例を用いて更に詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施例の記載に限定されることはなく、適宜組み合わせてもよい。

本実施例では、断熱部材用の封止材料に含まれる低融点ガラスの組成と特性について検討した。実施例を表1〜4、比較例を表5に示す。比較例においては、従来からの代表的なPbO−B2O3系低融点ガラスについても製作し、評価した。表1〜5に示した低融点ガラス組成物の製作に当たっては、ガラス原料としてV2O5、Ba(PO3)2、BaCO3、P2O5、WO3、MoO3、TeO2、SrCO3、ZnO、K2CO3、Na2CO3、PbO、B2O3、SiO2及びAl2O3を用いた。これらのガラス原料を用いて合計200gになるように所定量配合し、混合し、白金ルツボに入れ、電気炉にて5〜10℃/分の昇温速度で1000〜1100℃まで加熱し、溶融した。この温度で均一なガラスとするために撹拌しながら2時間保持した。その後、ルツボを取り出し、予め200℃程度に加熱しておいたステンレス板上に流し込んで低融点ガラス組成物を作製した。

作製した低融点ガラス組成物をスタンプミルで粗く粉砕した後にボールミルで平均粒径が10〜25μmの範囲に入るまで粉砕した。その粉末を用い、ヘリウム(He)ガス中でのピクノメータ法によって密度を測定した。また、その粉末を用いて5℃/分の昇温速度で550℃まで示差熱分析(DTA)を行うことによって、転移点(Tg)、屈伏点(Mg)、軟化点(Ts)及び結晶化温度(Tcry)を測定した。なお、標準サンプルとしてアルミナ(Al2O3)粉末を用いた。 図11に代表的な低融点ガラス組成物のDTA曲線を示す。図11に示すように、Tgは第一吸熱ピークの開始温度、Mgはそのピーク温度、Tsは第二吸熱ピーク温度、Tcryは結晶化による発熱ピークの開始温度である。ガラスの特性温度は、粘度により定義され、Tg、Mg及びTsは、粘度がそれぞれ1013.3poise、1011.0poise及び107.65poiseに相当する温度と言われている。ガラスを低温で軟化流動させるためには、極力、Tsを低温化する必要がある。また、結晶化は軟化流動性を阻害するため、TcryはTsに対して極力、高温側にすることが好ましい。

製作した低融点ガラス組成物をTg〜Mgの温度範囲まで加熱し、徐冷することによって残留熱歪を除去し、4×4×15mmの角柱に加工した。これを用い、熱膨張計で30〜250℃の熱膨張係数、転移温度(TG)及び変形温度(AT)を測定した。なお、昇温速度は5℃/分とした。また、標準サンプルとしては、φ5×15mmの円柱の石英ガラスを用いた。 図12に代表的な低融点ガラス組成物の熱膨張曲線を示す。図12は、標準サンプルである石英ガラスの伸び量は差し引きされている。30〜250℃の温度範囲における伸び量の勾配から熱膨張係数を算出した。TGは顕著に伸びが開始する温度、ATは荷重により変形する温度である。TGは上記DTAのTgとほぼ同程度の温度、ATは上記DTAのMg〜Tsの中間的な温度であった。

製作した低融点ガラス組成物の軟化流動性は、ボタンフロー試験によって評価した。上記ボールミルで粉砕したガラス粉末をハンドプレス(1ton/cm2)によりφ10×5mmの円柱形状に圧粉成形し、それをソーダライムガラス基板上で加熱することによって、そのぬれ広がり状態から判定した。加熱条件は、10℃/分の昇温速度でそれぞれ450℃、470℃及び490℃まで加熱し、30分間保持した。図13に代表的な低融点ガラス組成物の軟化流動性を示す。(a)は加熱前のガラス圧粉成形体15がソーダライムガラス基板16の上面に設置された状態である。これを加熱すると、加熱温度の上昇とともに(b)→(c)→(d)の順に軟化流動性が良好となる。なお、(b)、(c)及び(d)は断面概略図である。途中で結晶化が起こると、温度が上がっても軟化流動が抑制されたり、或いは停止されたりする。また、ガラス表面が失透する。軟化流動性の評価は、(b)の軟化状態17のときには「△」、(c)の流動状態18のときには「○」、(d)の良流動状態19のときには「◎」とした。また、軟化もしない場合や結晶化した場合には「×」と評価した。

製作した低融点ガラス組成物の耐酸性試験には、1N硝酸水溶液を用いた。評価用サンプルとしては、上記熱膨張評価用サンプルと同じ形状(4×4×15mm)のものを使用した。その重量を測定し、50℃の1N硝酸水溶液に10分間浸漬した。浸漬後の評価用サンプルを純水とアルコールで洗浄し、乾燥後に再度、重量を測定した。浸漬前後の重量より重量減少率を算出することによって耐酸性を評価した。その重量減少率が小さいほど、耐酸性に優れることになる。

環境負荷への影響に関しては、製作した低融点ガラス組成物中に含まれる鉛等の環境規制物質の有無で判定した。環境規制物質が含まれない場合には「○」、主成分として含まれる場合には「×」、副成分として含まれる場合には「△」と評価した。

製作した低融点ガラス組成物の総合評価に関しては、以上述べたいくつかの評価において、一つでも好ましくない特性を有する場合には「×」、そうでない場合には「○」とした。

表5に示す比較例G49とG50は、従来から低温気密封止に使用されてきた代表的なPbO−B2O3系低融点ガラスである。これらの従来ガラスは、PbOを多く含むことによって低温化が図られている。しかし、鉛(Pb)は環境規制物質であり、鉛フリー化が強く要求されている。G49の低融点ガラスは、G50よりPbO含有量が多いため、密度が大きく、DTA特性温度であるTg、Mg及びTsや熱膨張特性温であるTG及びATが低かった。また、PbO含有量が多いほど、環境負荷への影響が大きくなるが、軟化流動性は良好であった。熱膨張係数は、PbO含有量が少ないほど、小さく有効であり、複層ガラスパネル等の断熱部材としての基板に使用されるソーダライムガラスの熱膨張係数に近いものとなった。また、耐酸性はG49、G50ともに乏しく、特にPbO含有量が多いほど重量減少率は顕著に大きかった。複層ガラスパネルの基板として使用されるソーダライムガラスの耐熱温度は、約500℃であることから、その温度以下で気密封止されることになる。G50の低融点ガラスでは、500℃以下での軟化流動性が不十分であり、ソーダライムガラス基板を用いた複層ガラスパネルの気密封止に適用することは難しい。それに対し、より多くのPbOを含むG49の軟化流動性は良好であり、現状ではこのような低融点ガラスが断熱部材の気密封止に使用されている。

他の比較例G40〜48は、表5に示すとおり、V2O5を主成分とする鉛フリー低融点ガラスである。これらの密度は、G49やG50のPbO−B2O3系低融点ガラスに比べると、著しく小さかった。G41とG43は、G49のPbO−B2O3系低融点ガラスと同様に、500℃以下での軟化流動性は良好であったが、耐酸性が著しく乏しかった。G42、G44及びG45は、DTA特性温度であるTg、Mg及びTsや熱膨張特性温であるTG及びATが低いが、結晶化により軟化流動性は良好とは言えなかった。さらに、G42、G44及びG45の耐酸性は、G49とG50のPbO−B2O3系低融点ガラス同様に乏しかった。G46とG47は、G49とG50のPbO−B2O3系低融点ガラスより耐酸性が良好であったが、DTA特性温度であるTg、Mg及びTsや熱膨張特性温であるTG及びATが高く、500℃以下の軟化流動性が不十分であった。G48は、耐酸性がG49とG50のPbO−B2O3系低融点ガラス同様に乏しかった。

表5の比較例G41〜50の低融点ガラスに対し、表1〜4に示す実施例G1〜40のV2O5−BaO−P2O5−WO3系低融点ガラスは、500℃以下の軟化流動性、耐酸性、環境負荷への影響のどれを取っても良好であった。実施例G1〜40の密度は、比較例G41〜48とほぼ同程度で、G49とG50のPbO−B2O3系低融点ガラスに比較すると顕著に小さかった。また、実施例G1〜40は、DTA特性温度であるTg、Mg及びTsや熱膨張特性温であるTG及びATが低く、しかも結晶化しにくいために、500℃以下での軟化流動性は良好であった。さらに、実施例G1〜40の耐酸性は、G49とG50のPbO−B2O3系低融点ガラスの耐酸性に比較すると、大変良好なものであった。また、環境負荷への影響に対しては、実施例G1〜40は、鉛等の環境規制物質を含まないV2O5−BaO−P2O5−WO3系低融点ガラスであり、従来のPbO−B2O3系低融点ガラスに対して環境負荷の低減を大きく図った。

実施例G1〜40のV2O5−BaO−P2O5−WO3系低融点ガラスは、比較例G41〜48と同様に鉛フリーでV2O5を主成分としているが、ガラスを構成する成分とその含有量を詳細に検討することによって、500℃以下の軟化流動性と耐酸性の両立を図った。詳細検討の結果、実施例G1〜40の組成と特性から示唆されるとおり、酸化バナジウム、酸化バリウム、酸化リン及び酸化タングステンを含み、次の酸化物でV2O5+BaO+P2O5+WO3≧90mol%であり、しかもV2O5>BaO>P2O5>WO3(mol%)である条件を満たす低融点ガラスが軟化流動性と耐酸性の両立を達成できることを見出した。さらに、個々の成分が次の酸化物換算でV2O5が35〜47mol%、BaOが20〜35mol%、P2O5が15〜25mol%及びWO3が3〜13mol%の組成範囲であることが有効であった。また、次の酸化物換算でMoO3、TeO2、SrO、ZnO、K2O及びNa2Oのうち1種以上が合計0〜10mol%含まれてもよいことが分かった。

さらに、37mol%≦BaO+P2O5≦55mol%であると、550℃以下では結晶化を起こさず、しかもTsが396〜446℃であることから、複層ガラスパネル等の断熱部材の基板として使用されるソーダライムガラスの耐熱温度以下で良好な軟化流動性を有した。すなわち、500℃以下で気密封止が可能であると言うことである。さらに、次の酸化物換算で42mol%≦V2O5+WO3≦55mol%であることによって、30〜250℃における熱膨張係数が(91〜130)×10−7/℃であった。結晶化しにくいことから、熱膨張係数の小さいフィラー粒子を容易に含有できる。すなわち、この範囲の熱膨張係数を有する本発明の低融点ガラスであれば、このフィラー粒子の含有によって、ソーダライムガラス基板の熱膨張係数に容易に合わせることが可能である。なお、ソーダライムガラス基板の30〜250℃における熱膨張係数は、85×10−7/℃前後であった。

以上より、本実施例の低融点ガラスは、環境負荷への影響を低減できるとともに、500℃以下での軟化流動性と耐酸性が良好で、しかもフィラー粒子の含有によって低熱膨張化できることから、複層ガラスパネル等の断熱部材の低温気密封止へ有効に展開できるものであった。

本実施例では、低融点ガラスとフィラー粒子からなる封止(接合)材料で、ソーダライムガラス同士を接合し、その接合状態をせん断応力で評価した。低融点ガラスとしては、表2で示した実施例G12とG16の2種類、フィラー粒子としては、表6に示す7種類を用いた。実施例G12とG16の低融点ガラスは、実施例1と同様にして、ボールミルで平均粒径を10〜25μmの範囲に入るまで粉砕した。表6で示したフィラー粒子の平均粒径は、10〜30μmであった。また、表6には、これらのフィラー粒子の密度と30〜250℃の熱膨張係数も示す。これらのフィラー粒子の熱膨張係数は、表1〜4で示した実施例G1〜40の低融点ガラスに比べ、十分に小さいため、封止(接合)材料に含有することによって、ソーダライムガラスの熱膨張係数に合わせ込むことが可能である。

接合体の作製法について説明する。図14にその接合体の作製方法を示す。φ5×5mmの円柱状ソーダライムガラス20を用意し(図14(a))、の接合面に封止材料ペーストをディスペンサー法にて塗布し、乾燥した(図14(b))。これを大気中5℃/分の昇温速度で400℃まで加熱し30分間保持した後、同じ昇温速度で470℃まで加熱し30分間保持することによって、接合材料21を円柱状ソーダライムガラス20の接合面に形成した。これを、厚み5mmのソーダライムガラス基板22に設置し、耐熱用クリップで挟み、大気中5℃/分の昇温速度で470℃まで加熱し30分間保持することによって接合体を作製した(図14(c))。この接合体で、せん断応力を測定した。

接合材料ペーストは、実施例G12或いはG16の低融点ガラスの粉末粒子と、表6に示すフィラー粒子と、バインダー樹脂と、溶剤とを用いて作製した。フィラー粒子の含有量は、低融点ガラスの粉末粒子100体積部に対して30、50、60体積部とした。バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

接合体のせん断応力の評価は、25MPa以上のときには「◎」、15MPa以上25MPa未満のときには「○」、5MPa以上15MPa未満のときには「△」、5MPa以上未満のときは「×」とした。実施例G12の低融点ガラスを用いた場合のせん断応力評価結果を表7、実施例G16の低融点ガラスを用いた場合のせん断応力評価結果を表8に示す。表7と表8の結果は、低融点ガラスに対する各種フィラー粒子の含有量毎にせん断応力を評価した。実施例G12及びG16のどちらの低融点ガラスを使用した場合でも、またどのフィラー粒子を使用してもフィラー粒子の含有量が60体積部のときには、良好なせん断応力が得られなかった。これは、低融点ガラスに対するフィラー粒子の含有量が多いと、接合材料としての軟化流動性が不十分になるため、良好な接合強度が得られなかったためである。

フィラー粒子の含有量が50体積部以下では、どのフィラー粒子においても、良好なせん断応力が得られた。実施例G12よりG16の低融点ガラスの方が僅かながら良好な結果が得られている理由は、G16の方がG12より熱膨張係数が小さいためである。また、どちらの低融点ガラスもF1のフィラー粒子との組み合わせで、最も良好なせん断応力結果が得られた。これは、本発明のV2O5−BaO−P2O5−WO3系低融点ガラスとF1のフィラー粒子であるZr2(WO4)(PO4)2は、密度が近く、しかもぬれ性が良好であり、その上そのフィラー粒子が本発明の低融点ガラスを結晶化させにくいため、低融点ガラスの軟化流動性が悪化することなく、低融点ガラス中にフィラー粒子を均一に分散させ易いことが原因と考えられる。

そこで、実施例G16の低融点ガラスとF1のフィラー粒子の組み合わせについて、詳細に検討した。F1のフィラー粒子の含有量と、封止材料の熱膨張係数、及びG16とF1とを用いた接合材料でソーダライムガラスを接合した接合体のせん断応力との関係を図15に示す。接合材料の熱膨張係数は、実施例G16の低融点ガラスの粉末粒子とF1のフィラー粒子を所定量配合、混合し、ハンドプレスによって圧粉成形体を作製し、450℃で30分間焼成し、焼結体を作製した。それを4×4×15mmの角柱に加工して、実施例1と同様にして、30〜250℃における熱膨張係数を測定した。また、ソーダライムガラスの接合体のせん断応力は、図14を用いて説明した方法と同様にして評価サンプルを作製し、評価した。

封止材料の熱膨張係数は、図15に示すとおり、フィラー粒子の増加とともに減少し、約20体積部でソーダライムガラスの熱膨張係数とほぼ同じになった。ソーダライムガラス同士の接合体のせん断応力は、図15に示すとおり、フィラー粒子の増加とともに増加し、40〜50体積部当たりで極大値をもち、60体積部で大きく減少した。この減少は、先に述べたとおり、フィラー粒子が多すぎたために、封止材料として良好な軟化流動性が得られなかったことが原因である。接合体のせん断応力の増加は、フィラー粒子の増加によって熱膨張係数が減少し、ソーダライムの熱膨張係数と整合がとれるようになるためである。良好なせん断応力を得るためには、接合材料としての熱膨張係数は、ソーダライムガラスの熱膨張係数より小さめの(60〜80)×10−7/℃の範囲が有効であった。

本実施例では、基板2と3に900×600×3mmのソーダライムガラス基板を用いて図1A及び1Bに示す断熱部材を製作した。基板2と3の間隔を500μmとするために、気密封止部1とスペーサ7には、直径500μmのスペーサ用球状ビーズ9を含有した。封止材料6としては、表2に示す実施例G12の低融点ガラス5と表6に示すF1のフィラー粒子8を用い、F1のフィラー粒子の含有量は、実施例G12の低融点ガラス100体積部に対して35体積部とした。封止材料6に含有するスペーサ用球状ビーズ9には、球状ガラスビーズを用い、気密封止部1中には、実施例G12の低融点ガラス100体積部に対し1体積部、スペーサ7中には、実施例G12の低融点ガラス100体積部に対し10体積部を含有した。また、封止材料ペーストの作製に当っては、バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

本実施例の断熱部材は、図3A〜5で説明した製法に準じて複層ガラスパネルを製作した。実施例G12の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子35体積部及び球状ガラスビーズ1体積部を含む封止材料ペーストを作製し、図3A及び3Bに示すようにソーダライムガラス基板の外周部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。また、同様にして、実施例G12の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子35体積部及び球状ガラスビーズ10体積部を含むスペーサ用ペーストを作製し、ソーダライムガラス基板の内部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。これを大気中5℃/分の昇温速度で400℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で470℃まで加熱し30分間保持し、封止材料とスペーサを図3A及び3Bに示すとおりにソーダライムガラス基板へ形成した。これと、図4A及び4Bに示す熱線反射膜12を形成したもう一方のソーダライム基板を図5に示すとおりに対向させ、位置合わせし、複数の耐熱性クリップで固定した。これを図6に示す封止温度プロファイルによって、図5に示すように真空排気しながら気密封止を行った。

封止温度プロファイルでは、大気中5℃/分の昇温速度で410℃まで加熱し30分間保持した後に、パネル内部を排気穴10から真空ポンプで排気しながら、5℃/分の昇温速度で450℃まで加熱し30分間保持した。その際に気密封止部1やスペーサ7が押しつぶされ、2枚のソーダライム基板に密着した。その後、排気穴10にキャップ11を取り付け、断熱部材としての真空断熱複層ガラスパネルを製作した。なお、本実施例では、その真空断熱複層ガラスパネルを10枚製作した。

本実施例において、断熱部材として製作した10枚の複層ガラスパネルは、外観検査上、ワレやヒビ等はなく、問題はなかった。また、封止材料中及びスペーサ中の球状ガラスビーズによって、ソーダライムガラス基板の間隔が均一に所定の厚みとなっていた。すなわち、所定の空間部4を有する複層ガラスパネルとなっていた。さらに、パネル内部は真空状態となっており、パネル外周部が気密封止されていることを確認した。

気密封部1の信頼性を確認するために、製作した複層ガラスパネル3枚を50℃の温水に30日間浸漬した。3枚のパネルとも内部に水が浸入することなく、パネル内部が真空状態に維持されていることを確認した。また、別の複層ガラスパネル3枚について−50℃〜+100℃の温度サイクル試験を1000回実施した。この試験においても、3枚のパネルとも内部が真空状態に保たれていた。これらのことから、本実施例の断熱部材では、信頼性の高い気密封止部が得られることが分った。

以上より、本実施例の低融点ガラスを封止材料として使用することによって、断熱性と信頼性がともに優れる断熱部材が提供できることが確認された。

本実施例では、表1〜4の実施例の中で最も軟化点Tsが低かったG17の低融点ガラス5を用いて、実施例3と同様にして図1A及び1Bの断熱部材を製作した。また、本実施例で製作する断熱部材の基板2と3の間隔は300μmとした。このため、気密封止部1とスペーサ7に含有するスペーサ用球状ガラスビーズの直径は300μmとした。基板2と3には、実施例3と同サイズのソーダライムガラス基板を用いた。F1のフィラー粒子の含有量は、実施例G17の低融点ガラス100体積部に対して40体積部とした。封止材料6に含有するスペーサ用球状ガラスビーズは、実施例G17の低融点ガラス100体積部に対し0.1体積部、スペーサ7中には、実施例G17の低融点ガラス100体積部に対し5体積部を含有した。また、封止材料ペーストの作製に当っては、バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

実施例G17の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子40体積部及び球状ガラスビーズ0.1体積部を含む封止材料ペーストを作製し、図3A及び3Bに示すようにソーダライムガラス基板の外周部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。また、同様にして、実施例G17の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子40体積部及び球状ガラスビーズ5体積部を含むスペーサ用ペーストを作製し、ソーダライムガラス基板の内部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。これを大気中5℃/分の昇温速度で390℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で440℃まで加熱し30分間保持し、封止材料とスペーサを図3で示したとおりにソーダライムガラス基板へ形成した。これと、図4A及び4Bに示す熱線反射膜12を形成したもう一方のソーダライム基板を図5に示すとおりに対向させ、位置合わせし、複数の耐熱性クリップで固定した。これを図6に示す封止温度プロファイルによって、図5に示すように真空排気しながら気密封止を行った。

封止温度プロファイルでは、大気中5℃/分の昇温速度で390℃まで加熱し30分間保持した後に、パネル内部を排気穴10から真空ポンプで排気しながら、5℃/分の昇温速度で420℃まで加熱し30分間保持した。その際に気密封止部1やスペーサ7が押しつぶされ、2枚のソーダライム基板に密着した。その後、排気穴10にキャップ11を取り付け、断熱部材としての真空断熱複層ガラスパネルを製作した。なお、本実施例でも、実施例3と同様に10枚の真空断熱複層ガラスパネルを製作した。

本実施例で製作した10枚の断熱部材においても、実施例3と同様に断熱部材や低融点ガラスの有効性が確認された。

本実施例では、表1〜4の実施例の中で最も軟化点Tsが高かったG24の低融点ガラス5を含む封止材料6を用いて、複層ガラスパネルの空間部4がアルゴン雰囲気の減圧状態にある図1A及び1Bの断熱部材10枚を製作し、実施例3と同様にして評価した。基板2と3には、900×600×5mmのソーダライムガラス基板を用い、封止材料1とスペーサ7に含有するスペーサ用球状ガラスビーズの直径を500μmにすることによって、基板2と3の間隔を500μmとした。本実施例では、真空排気を行わないため、基板3には排気穴10は不要である。封止材料6に含有するフィラー粒子8は、実施例3と同様に表6のF1を用い、その含有量は、実施例G24の低融点ガラス100体積部に対して20体積部とした。さらに、球状ガラスビーズの含有量は、実施例G24の低融点ガラス100体積部に対して、気密封止1では0.3体積部、スペーサ7では3体積部とした。また、封止材料ペーストの作製に当っては、バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

実施例G24の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子20体積部及び球状ガラスビーズ0.3体積部を含む封止材料ペーストを作製し、図3A及び3Bに示すようにソーダライムガラス基板の外周部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。また、同様にして、実施例G24の低融点ガラスの粉末粒子100体積部、F1のフィラー粒子20体積部及び球状ガラスビーズ3体積部を含むスペーサ用ペーストを作製し、ソーダライムガラス基板の内部にディスペンサー法によって塗布し、乾燥した。これを大気中5℃/分の昇温速度で440℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で480℃まで加熱し30分間保持し、封止材料とスペーサを図3A及び3Bで示したとおりにソーダライムガラス基板へ形成した。これと、図4A及び4Bで示した熱線反射膜12を形成したもう一方のソーダライム基板を図5に示すとおりに対向させ、位置合わせし、複数の耐熱性クリップで固定した。これを焼成炉内に設置し、パネル中央部にスペーサ7を所定の厚みまで押し潰すための重りを載せた。炉内を真空ポンプで排気してから、アルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴン中5℃/分の昇温速度で450℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で500℃まで加熱し30分間保持し、気密封止部1やスペーサ7を2枚のソーダライム基板に密着させた。その後、冷却して、パネルの空間部3がアルゴン雰囲気での減圧状態となった断熱部材としての複層ガラスパネル10枚を製作した。

本実施例で製作した10枚の断熱部材においても、実施例3と同様に断熱部材や低融点ガラスの有効性が確認された。

本実施例では、基板2と3に900×600×3mmのソーダライムガラス基板を、角棒13に880×10×5mmと580×10×5mmのソーダライムガラス角棒を、円柱14にφ5×5mmのソーダライムガラス円柱を用いて、基板2と3の間隔を約5mmとした図2A及び2Bの断熱部材10枚を製作した。角棒13と円柱14に形成する封止材料6と6’としては、表1に示す実施例G3の低融点ガラス5と表6に示すF1のフィラー粒子8を用い、F1のフィラー粒子の含有量は、実施例G3の低融点ガラス100体積部に対して20体積部とした。また、封止材料ペーストの作製に当っては、バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

本実施例の断熱部材は、図7A〜11を用いて説明した製法に準じて、基板2と3の間隔が大きい複層ガラスパネルを製作した。実施例G3の低融点ガラスの粉末粒子100体積部とF1のフィラー粒子20体積部を含む封止材料ペーストを作製し、図7A〜8Bに示すように角棒13と円柱14に塗布し、乾燥した。これらを焼成炉に入れ、大気中5℃/分の昇温速度で420℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で470℃まで加熱し30分間保持し、封止材料6と6’を角棒13と円柱14に図7A〜8Bに示すとおりに形成した。これらを図9に示すように、熱線反射膜12を形成したソーダライム基板上に配置、設置した。 次に、図10に示すとおり、排気穴10を形成したソーダライム基板をその上に設置し、外周部を複数の耐熱性クリップで固定した。これを図6に示す封止温度プロファイルによって、図10に示すように真空排気しながら気密封止を行った。この封止温度プロファイルでは、大気中5℃/分の昇温速度で425℃まで加熱し30分間保持した後に、パネル内部を排気穴10から真空ポンプで排気しながら、5℃/分の昇温速度で450℃まで加熱し30分間保持した。その際に封止材料6と6’は、2枚のソーダライム基板に密着した。その後、排気穴10にキャップ11を取り付け、断熱部材としての真空断熱複層ガラスパネル10枚を製作した。

本実施例で製作した10枚の断熱部材においても、実施例3と同様に評価した。基板間隔が広く、空間部4が大きい場合においても、実施例3と同様に断熱部材や低融点ガラスの有効性が確認された。

本実施例では、表4に示す実施例G38の低融点ガラス5を含む封止材料6を用いて、複層ガラスパネルの空間部4がアルゴン雰囲気の減圧状態にある図2A及び2Bの断熱部材10枚を製作し、実施例3や実施例6と同様にして評価した。基板2と3には、900×600×5mmのソーダライムガラス基板を、角棒13には880×10×5mmと580×10×5mmのソーダライムガラス角棒を、円柱14にφ5×5mmのソーダライムガラス円柱を用いて、基板2と3の間隔を約5mmとした。本実施例では、真空排気を行わないため、基板3には排気穴10は不要である。封止材料6と6’に含有するフィラー粒子8は、実施例6と同様に表6のF1を用い、その含有量は、実施例G38の低融点ガラス100体積部に対して40体積部とした。また、封止材料ペーストの作製に当っては、バインダー樹脂にはエチルセルロース、溶剤にはブチルカルビトールアセテートを用いた。

本実施例の断熱部材は、実施例6と同様にして図7〜11を用いて説明した製法に準じ、基板2と3の間隔が大きい複層ガラスパネルを製作した。実施例G38の低融点ガラスの粉末粒子100体積部とF1のフィラー粒子40体積部を含む封止材料ペーストを作製し、図7及び図8に示すように角棒13と円柱14に塗布し、乾燥した。これらを焼成炉に入れ、大気中5℃/分の昇温速度で420℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で470℃まで加熱し30分間保持し、封止材料6と6’を角棒13と円柱14に図7A〜8Bに示すとおりに形成した。これらを図9に示すように、熱線反射膜12を形成したソーダライム基板上に配置し、設置した。 次に、図10に示すとおり、排気穴10がないソーダライム基板をその上に設置し、外周部を複数の耐熱性クリップで固定した。これを焼成炉内に設置し、パネル中央部に重りを載せた。炉内を真空ポンプで排気してから、アルゴンガスを炉内に導入した。その後、アルゴン中5℃/分の昇温速度で430℃まで加熱し30分間保持した後に、同じ昇温速度で490℃まで加熱し30分間保持し、気密封止部1やスペーサ7を2枚のソーダライム基板に密着させた。その後、冷却して、パネルの空間部3がアルゴン雰囲気での減圧状態となった断熱部材としての複層ガラスパネル10枚を製作した。

本実施例で製作した10枚の断熱部材においても、実施例3や実施例6と同様に断熱部材や低融点ガラスの有効性が確認された。

1:気密封止部、2、3:基板、4:空間部、5:低融点ガラス、6、6’:封止材料、7:スペーサ、8:フィラー粒子、9:スペーサ用球状ビーズ或いはスペーサ用球状ガラスビーズ、10:排気穴、11:キャップ、12:熱線反射膜、13:角棒、14:角柱或いは円柱、15:ガラス圧粉成形体、16:ソーダライムガラス基板、17:軟化状態、18:流動状態、19:良流動状態、20:円柱状ソーダライムガラス、21:接合材料、22:ソーダライムガラス基板。

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