導電性ペースト、及びガラス物品

申请号 JP2016531179 申请日 2015-05-15 公开(公告)号 JP6098858B2 公开(公告)日 2017-03-22
申请人 株式会社村田製作所; 发明人 次本 伸一;
摘要
权利要求

少なくとも導電性粉末とガラスフリットと有機ビヒクルとを含有した導電性ペーストであって、 前記導電性粉末が、貴金属粉末と、Cu及びNiのうちの少なくとも一方を含む卑金属粉末とを有すると共に、前記卑金属粉末の比表面積は、0.5m2/g未満であり、 前記導電性粉末の総量に対する前記卑金属粉末の含有量は、重量比で、 前記卑金属粉末が前記Cuを主成分とする場合は、0.1〜0.3であり、 前記卑金属粉末が前記Niを主成分とする場合は、0.1〜0.2であり、 前記卑金属粉末が前記Cuと前記Niの混合粉を主成分とする場合は、0.1〜0.25であることを特徴とする導電性ペースト。前記卑金属粉末は、アトマイズ法で作製されたアトマイズ粉であることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。前記卑金属粉末は、平均粒径が8μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導電性ペースト。前記卑金属粉末は、平均粒径が2.5μm以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。前記貴金属粉末は、平均粒径が0.1〜3μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性ペースト。前記導電性粉末の含有量は、50〜90wt%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の導電性ペースト。前記ガラスフリットの平均粒径は、前記貴金属粉末の平均粒径の2倍以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性ペースト。前記ガラスフリットは、軟化点が350℃〜600℃であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の導電性ペースト。前記貴金属粉末は、Agを主成分としていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペースト。ガラス基体上に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、 前記導電膜は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の導電性ペーストが前記ガラス基体上に塗布されて焼結されてなることを特徴とするガラス物品。前記ガラス基体と前記導電膜との間にセラミック層が介在されていることを特徴とする請求項10記載のガラス物品。

说明书全文

本発明は、導電性ペースト、及びガラス物品に関し、より詳しくは、自動車等の車両用窓ガラスに付設される防曇用の熱線やアンテナパターン等を形成するための導電性ペースト、及びこの導電性ペーストを使用した防曇ガラスやガラスアンテナ等のガラス物品に関する。

従来より、自動車等の車両の窓ガラスには、防曇用の熱線を配した防曇ガラスや車外からの電波を受信するガラスアンテナ等のガラス物品が使用されている。これらのガラス物品、例えば防曇ガラスでは、通常、素材となるガラス基体上に導電性ペーストをライン状に塗布して焼成し、所定パターンの導電膜を形成している。そして、従来より、この種の導電性ペーストも各種開発され、提案されている。

例えば、特許文献1には、導電性銀粒子と、少なくとも1種の卑金属を含有する導電性粒子と、1種以上のガラスフリットと、ペースト形成媒体とを含んでなるガラス、セラミック又はほうろう鋼上に導電性コーティングを製造するための導電性ペーストであって、該卑金属含有導電性粒子が、実質的に鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛又はこれらの元素の少なくとも1種を含有する合金からなり、該卑金属含有導電性粒子の平均粒径D50が0.1μm〜15μmの範囲内であると共に、比表面積が0.5m2/g〜10m2/gの範囲内であり、導電性粒子全体の最大80重量%までは卑金属含有導電性粒子であり、該1種以上のガラスフリットの軟化温度(加熱顕微鏡)が350℃〜600℃の範囲内であると共に、半球形温度が450℃〜700℃の範囲内である導電性ペーストが提案されている。

この特許文献1では、導電性ペースト中に、平均粒径D50が0.1μm〜15μmであって比表面積が0.5m2/g〜10m2/gの卑金属導電性粒子と、軟化温度が350℃〜600℃、半球形温度が450℃〜700℃のガラスフリットとを含有させることにより、焼成温度が660〜680℃の範囲で変動しても、37〜40μΩ・cm程度の安定した比抵抗を有する導電性ペーストを得ようとしている。

特許第3960921号公報(請求項1、段落番号〔0009〕、〔0019〕〜〔0021〕、表2等)

しかしながら、特許文献1は、以下の理由により耐候性に劣り、また比抵抗も大きいという問題があった。

すなわち、導電性ペースト中に卑金属粒子を含有させた場合、卑金属粒子は焼成時の酸化反応によって導電膜内の酸素を消費し、局所的に酸素分圧が低下する。そして、酸素分圧が低下すると貴金属粒子表面の吸着酸素が減少し、酸化物であるガラスフリットの濡れ性が低下する。この場合、卑金属粒子の酸化が緩慢であると、酸素は卑金属粒子の周囲から導電膜に迅速に供給されるので、濡れ性の低下は軽微で済むが、卑金属粒子の酸化が急激に生じると、濡れ性の低下が顕著となる。

一方、焼成時に溶融したガラスフリットは、濡れ性により流動性が向上することから、該濡れ性を駆動として貴金属粒子と下地のガラス基体との空隙に侵入し、これによりガラス基体と導電膜との接合構造が形成され、所望の界面強度を確保することができる。

しかしながら、上述したようにガラスフリットの濡れ性が低下すると、ガラスフリットの前記空隙への浸入が阻害されることから、耐候性が劣化する。すなわち、ガラス基体と導電膜との界面に未充填の空隙が残留した状態で導電膜が外気に晒され、酸や塩等と接すると、これら酸や塩水が導電膜とガラス基体との界面に浸入して腐食が進行し、ガラス基体と導電膜との界面強度の低下を招くおそれがある。

また、ガラスフリットの濡れ性低下は液相焼結を阻害することから、導電膜の焼結密度が低下して比抵抗が増加し、導電性の低下を招くおそれがある。

比抵抗の増加を抑制するためには、導電膜の線幅を太くしたり、膜厚を厚くすることにより可能であるが、この場合は、導電性ペーストの使用量が増加することから、コスト高を招くおそれがあり、省資源の観点からも好ましくない。特に、特許文献1では、比抵抗が概ね20μΩ・cm以上であり、車両等のバッテリー電圧の主流が12〜24Vであることを考慮すると、比抵抗を18μΩ・cm以下程度に抑制するのが好ましいと考えられる。

本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、耐候性が良好で比抵抗を適度に抑制できる導電性ペースト、及びこの導電性ペーストを使用した防曇ガラスやガラスアンテナ等のガラス物品を提供することを目的とする。

本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を行ったところ、導電性粉末中に含有される卑金属粉末として、比較的酸化が生じ難いCu粉及び/又はNi粉を所定量含有させ、かつ卑金属粉末の比表面積を0.5m2/g未満とすることにより、焼成時の卑金属粒子の酸化が緩慢になって急激な酸化を抑制することができ、その結果ガラスフリットが貴金属粒子とガラス基体の空隙に浸入して導電膜及びガラス基体を外部環境から封止することができ、これにより良好な耐候性を得ることができ、かつ比抵抗も適度に抑制可能になるという知見を得た。

本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性ペーストは、少なくとも導電性粉末とガラスフリットと有機ビヒクルとを含有した導電性ペーストであって、前記導電性粉末が、貴金属粉末と、Cu及びNiのうちの少なくとも一方を含む卑金属粉末とを有すると共に、前記卑金属粉末の比表面積は、0.5m2/g未満であり、前記導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有量は、重量比で、前記卑金属粉末が前記Cuを主成分とする場合は、0.1〜0.3であり、前記卑金属粉末が前記Niを主成分とする場合は、0.1〜0.2であり、前記卑金属粉末が前記Cuと前記Niの混合粉を主成分とする場合は、0.1〜0.25であることを特徴としている。

また、本発明の導電性ペーストは、前記卑金属粉末が、アトマイズ法で作製されたアトマイズ粉であるのが好ましい。

また、本発明の導電性ペーストは、前記卑金属粉末が、平均粒径が8μm以下であるのが好ましい。

また、本発明の導電性ペーストは、前記卑金属粉末は、平均粒径D50が2.5μm以上であるのが好ましい。

さらに、本発明の導電性ペーストは、前記貴金属粉末は、平均粒径D50が0.1〜3μmであるのが好ましい。

また、本発明の導電性ペーストは、前記導電性粉末の含有量が、50〜90wt%であるのが好ましい。

また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットの平均粒径D50が、前記貴金属粉末の平均粒径の2倍以下であるのが好ましい。

さらに、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットは、軟化点が350℃〜600℃であるのが好ましい。

また、本発明の導電性ペーストは、前記貴金属粉末が、Agを主成分としているのが好ましい。

また、本発明に係るガラス物品は、基板上に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、上記いずれかに記載の導電性ペーストが前記基板上に塗布されて焼結されてなることを特徴としている。

また、本発明に係るガラス物品は、前記ガラス基体と前記導電膜との間にセラミック層が介在されているのも好ましい。

尚、本発明では平均粒径は、積算累積分布が50%の粒径、すなわちメジアン径(以下、「平均粒径D50」と記す。)をいう。

本発明の導電性ペーストによれば、少なくとも導電性粉末とガラスフリットと有機ビヒクルとを含有した導電性ペーストであって、導電性粉末が、貴金属粉末と、Cu及び/又はNiを含む卑金属粉末とを有すると共に、前記卑金属粉末の比表面積は、0.5m2/g未満であり、前記導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有量が、所定の重量比とされているので、焼成時の卑金属粒子の酸化が緩慢になって急激な酸化を抑制することができ、これによりガラスフリットは濡れ性を維持して貴金属粒子とガラス基体の空隙に浸入し、導電膜及びガラス基体を外部環境から封止することができる。

したがって、本導電性ペーストを使用することにより、良好な耐候性を有し、かつ比抵抗も適度に抑制可能な各種ガラス物品を得ることができる。

また、本発明のガラス物品によれば、ガラス基体上に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、上記いずれかに記載の導電性ペーストが前記基体上に塗布されて焼結されてなるので、本導電性ペーストを使用することにより、上述したように導電膜及びガラス基体を外部環境から封止できることから、耐候性が良好で、車両用のバッテリー電圧の主流である12〜48Vで電圧を印加しても比抵抗が適度に抑制することはでき、良導電性を有する防曇ガラスやガラスアンテナ等のガラス物品を得ることができる。

本発明に係る導電性ペーストを使用して作製されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態(第1の実施の形態)を示す正面図である。

図1のA−A矢視断面図である。

本発明に係るガラス物品の第2の実施の形態としてのガラスアンテナを模式的に示す断面図である。

次に、本発明の実施の形態を詳説する。

図1は、本発明に係る導電性ペーストを使用して製造されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態を示す正面図であり、図2は図1のA−A矢視断面図である。

この防曇ガラスは、ガラス基体1の表面に所定間隔を有して細線化・薄膜化されたライン状の導電膜2が平行状に複数形成されている。また、導電膜2の両端部にはバスバー電極3a、3bが形成され、バスバー電極3a、3bははんだを介して不図示の給電端子に接続されている。

すなわち、この防曇ガラスは、ガラス基体1上に導電性ペーストがライン状に塗布され、焼成処理によって所定パターンの導電膜2が形成され、該導電膜2がガラス基体1上に固着されると共に、該導電膜2の両端はバスバー電極3a、3bを介して電気的に接続され、該バスバー電極3a、3bははんだ付けされて給電端子(不図示)に接続されている。

このように形成された防曇ガラスは、例えば自動車等の車両のフロントガラスやリアガラスとして装備され、バスバー電極3a、3bを介して給電端子から導電膜2に給電され、発熱させることによって窓ガラスの曇り止めを行うことができる。

次に、上述した導電膜2を形成するための導電性ペーストについて詳述する。

本導電性ペーストは、自動車用ガラス等のガラス基体上に導電性パターンを形成するのに好適な導電性ペーストであって、少なくとも導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有している。

そして、導電性粉末が、貴金属粉末と、Cu及び/又はNiを含む卑金属粉末を有すると共に、卑金属粉末の比表面積が0.5m2/g未満とされており、この導電性ペーストを使用することにより、良好な耐候性を有し、かつ適度な比抵抗を有する防曇ガラス等のガラス物品を得ることができる。

すなわち、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、導電性ペースト中に卑金属粉末を含有させると、焼成時に卑金属粉末の酸化反応によって導電膜内の酸素が消費され、このため局所的に酸素分圧が低下する。そして、このように酸素分圧が低下すると貴金属粉末表面の吸着酸素が減少し、酸化物であるガラスフリットの濡れ性が低下する。

一方、焼成時に溶融したガラスフリットは、濡れ性を駆動力にして貴金属粉末とガラス基体1との空隙に充填され、これにより導電膜2とガラス基体1との接合構造が形成され、所望の界面強度を確保することが可能となる。

しかしながら、上述したようにガラスフリットの濡れ性が低下して流動性が低下すると、ガラスフリットを前記空隙に十分に浸入させることができない。

そして、このような状態で導電膜2が、外気に晒され酸や塩水等に接すると、該酸や塩水等が導電膜2とガラス基体1との界面を容易に浸食し、界面強度が低下する。また、濡れ性の低下は液相焼結を阻害することから、導電膜2の焼結密度が低下し、このため比抵抗が増加して導電性の低下を招くおそれがある。

そこで、本発明では、卑金属粉末としてZnやFeに比べ、酸化が生じにくいCu及び/又はNiを貴金属粉末と共に導電性粉末中に所定量含有させ、かつ卑金属粉末の比表面積を0.5m2/g未満に抑制している。

すなわち、卑金属粉末としてのCuやNiは、酸化物の生成エネルギーがZnやFeに比べて小さく、表面に強固な不動態膜を形成することから、酸化し難くなる。しかも、これらの卑金属粉末は比表面積が小さくなると、焼成時に卑金属粒子の酸化が緩慢になって急激には酸化しないことから、ガラスフリットは適度な濡れ性を維持して貴金属粉末とガラス基体1の空隙に浸入する。そしてその結果、導電膜2とガラス基体1との界面を外部環境から封止することができ、これにより耐候性を向上させることができる。そのためには卑金属粉末の比表面積は、上述したように極力小さくする必要があり、斯かる観点から0.5m2/g未満に抑制する必要がある。

卑金属粉末の比表面積の下限は、特に限定されるものではないが、比表面積が0.15m2/g未満になると、粉末粒子の最大径が粗大化してスクリーン印刷時にメッシュの目詰まりを招くおそれがあり、好ましくない。

また、本発明では、Cu及び/又はNiの含有量についても、以下の所定範囲に調整する必要がある。

すなわち、卑金属粉末がCuで形成されている場合は、導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有量、すなわち含有比率は重量比で0.1〜0.3に調整する必要がある。Cuの含有比率が0.1未満になると、導電性粉末中のCuの含有量が少なくなることから、比抵抗が極端に低下するおそれがある。一方、Cuの含有比率が0.3を超えると、導電性粉末中のCuの含有量が過剰となり、焼成時におけるCuの酸化によって比抵抗の増加を招き、また、耐候性の劣化を招く。

また、卑金属粉末がNiで形成されている場合は、導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有比率は重量比で0.1〜0.2に調整する必要がある。Niの含有比率が0.1未満になると、導電性粉末中のNiの含有量が少なくなることから、Cuの場合と同様、比抵抗が極端に低下するおそれがある。一方、Niの含有比率が0.2を超えると、導電性粉末中のNiの含有量が過剰となり、Cuとの焼結性の相違から比抵抗の増加は回避できても、耐候性の劣化を招くおそれがある。

さらに、卑金属粉末がCuとNiの混合粉で形成されている場合は、導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有比率は重量比で0.1〜0.25に調整する必要がある。CuとNiとの混合粉の含有比率が0.1未満の場合は、CuやNiの場合と同様の理由から、比抵抗が極端に低下するおそれがある。一方、混合粉の含有比率が0.25を超えると、導電性粉末中の混合粉の含有量が過剰となり、Niの場合と同様、耐候性の劣化を招くおそれがある。

また、前記CuとNiの混合粉の形態は、Cu粉とNi粉の混合粉だけでなく、CuとNiを予め合金化させた粉末を用いても同様の効果が得られる。

尚、導電性粉末中の卑金属粉末の含有比率は、いずれも下限値は0.1であるが、上限値が異なるのは、CuとNiのイオン化傾向の相違から、NiがCuよりも酸化しやすいことが主な理由と考えられる。

このように本導電性ペーストは、卑金属粉末としてのCu及び/又はNiの比表面積が0.5m2/g未満で、かつ導電性粉末中の卑金属粉末の含有比率が、上述した所定範囲であるので、導電性ペースト中のガラスフリットの濡れ性低下を抑制することができ、その結果、良好な耐候性を得ることができる。また、比抵抗を適度に抑制できることから、自動車等の防曇ガラスに好適な導電性ペーストを得ることができる。

尚、卑金属粉末の形状は、特に限定されるものではないが、比表面積を0.5m2/g未満とする必要があることから、比表面積の増大を避けるためには球形乃至略球形であるのが望ましく、表面が凹凸形状になるのは極力避けるのが好ましい。そして、このような卑金属粉末の製法としては、アトマイズ法で作製するのが好ましい。

すなわち、微粒の金属粉末を作製する方法としては、種々の方法が知られており、代表的な製法として湿式還元法やアトマイズ法がある。

しかしながら、湿式還元法は、化学的プロセスを利用した製法であり、金属塩の水溶液を還元剤で還元させて金属粉を析出させることから、表面が凹凸形状になりやすい。

これに対しアトマイズ法は、加熱処理して溶湯化された溶融金属をタンデッシュ底部のノズルから流出させると共に、この溶融金属にジェット流を噴霧して液滴化し、これを凝固させて金属粉を作製している。したがって、表面が凹凸形状になるのを抑制することができ、高品質の金属粉を得ることができる。

したがって、卑金属粉末の製法は特に限定されるものではないが、比表面積が0.5m2/g未満の卑金属粉末を効率よく得るためには、アトマイズ法で作製するのが好ましく、卑金属粉末としてはアトマイズ法で作製されたアトマイズ粉を使用するのが好ましい。

卑金属粉末の平均粒径D50も、特に限定はされるものではないが、平均粒径D50が8μmを超えると、スクリーン印刷時にメッシュの目詰まりが生じるおそれがあり、好ましくない。

また、卑金属粉末の平均粒径D50は、比表面積は粒子の形状や表面状態によって異なるが、微粒になると比表面積が増加する傾向にあり、斯かる観点からは卑金属粉末の平均粒径D50は、2.5μm以上が好ましい。

一方、貴金属粉末としては、良好な導電性を有する金属粉であれば特に限定されるものではないが、通常はAg粉を好んで使用することができる。また、Ag粉を主成分とし、Pd、Pt等の各種貴金属粉末を副成分として含有させてもよい。

また、貴金属粉末の形状も特に限定されるものではなく、例えば、球形状、扁平状、不定形形状、或いはこれらの混合粉であってもよい。

貴金属粉末の平均粒径D50も、特に限定されるものではないが、機械的強度等を確保する観点からは、平均粒径D50は、0.1〜3μmが好ましい。貴金属粉末の平均粒径D50が、0.1μm未満になるとペースト作製時に粘度が増加してペースト化が困難となる。一方、導電性粉末の平均粒径D50が3μmを超えると、焼成時に導電性粉末間での所望の粒成長した結晶粒子の存在が不足し、機械的強度の低下を招くおそれがある。

また、導電性ペースト中の導電性粉末の含有量は、特に限定されるものではないが、50〜90wt%が好ましい。導電性粉末の含有量が50wt%未満になると、ガラスフリットの含有量が相対的に増加することから、所望の導電性を確保するためには、線幅を広くしたり、導電膜を厚膜化する必要があり、コスト高を招くおそれがある。一方、導電性粉末の含有量が90wt%を超えると、導電性粉末が過剰となってペースト化が困難になるおそれがある。したがって、導電性粉末の含有量は、特に限定されないものの、50〜90wt%が好ましい。

また、ガラスフリットの組成は、特に限定されないが、焼結密度の低下や導電膜2の界面での封止不足を回避する観点からは、焼成温度で溶融し流動させる必要がある。そして、防曇ガラス等のガラス物品では、通常、500〜800℃程度の温度で焼成されることから、軟化点が350〜600℃程度に組成調整されたガラスフリットを使用するのが好ましい。

また、ガラスフリットの構成成分については特に限定されるものではなく、Bi2O3、PbO、SiO2、B2O3、Al2O3、BaO、CaO、SrO、ZnO、Na2O、K2O、Li2O、Sb2O3、FeO、CuOなどの各種酸化物から、軟化点や化学的耐久性を考慮して選定することができる。

また、ガラスフリットの平均粒径D50も、特に限定されないが、該ガラスフリットは、貴金属粉末やガラス基体1との空隙に均一に充填されるのが望ましく、斯かる観点から、ガラスフリットの平均粒径D50は、貴金属粉末の平均粒径D50の2倍以下であるのが望ましい。

また、有機ビヒクルは、バインダ樹脂と有機溶剤とが、例えば体積比率で、1〜3:7〜9となるように調製されている。尚、バインダ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、又はこれらの組み合わせを使用することができる。また、有機溶剤についても特に限定されるものではなく、α—テルピネオール、キシレン、トルエン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を単独、或いはこれらを組み合わせて使用することができる。

そして、この導電性ペーストは、貴金属粉末、Cu及び/又はNiを含む卑金属粉末、ガラスフリット、有機ビヒクルを所定の混合比率となるように秤量して混合し、三本ロールミル等を使用して分散・混練することにより、容易に製造することができる。

このように本実施の形態では、Ag粉末等の貴金属粉末と、Cu及び/Niを含む卑金属粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有し、前記卑金属粉末の比表面積は、0.5m2/g未満であり、導電性粉末の総量に対する卑金属粉末の含有比率が所定範囲とされているので、良好な耐候性を有し、比抵抗も適度に抑制された防曇ガラス等の導電膜形成に適した導電性ペーストを得ることができる。

図3は、本発明に係るガラス物品の第2の実施の形態としてのガラスアンテナの一例を示す要部断面図である。

このガラスアンテナは、複数のガラス基体(第1及び第2のガラス基体4、5)の間にポリビニルアルコール樹脂等からなる中間膜6を介在させた合わせガラスとされ、耐衝撃性を考慮した構造となっている。

そして、第1のガラス基体4の表面にはセラミック層7が形成され、該セラミック層7の表面にはアンテナ機能を有する所定パターンの導電膜8が形成されている。導電膜8は給電端子(不図示)とはんだ接合され、防曇ガラスと同様、例えば自動車等の車両用窓ガラスとして装備され、車外からの電波を受信し、ラジオやテレビに供される。

このガラスアンテナは以下のようにして作製される。

すなわち、ガラスフリットを含有したセラミック材料を主成分とするセラミックペーストを第1のガラス基体4上に塗布し、乾燥させる。次いで、このセラミックペースト上に所定のアンテナパターンを有するように本発明の導電性ペーストを塗布し、乾燥させ、その後、セラミックペーストと導電性ペーストとを同時焼成し、その後、中間膜3が第1のガラス基体4と第2のガラス基体5とが狭持されるように接着剤を介して貼付し、これによりガラスアンテナが作製される。

このように本ガラスアンテナにおいても、本発明の導電性ペーストを使用して導電膜8を形成することにより、第1の実施の形態と同様、耐候性が良好で比抵抗が適度に抑制されたガラスアンテナを得ることができる。

尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、卑金属粉末がCu及び/又はNiで形成されている場合について説明したが、Cu及び/又はNiは卑金属粉末の主成分として含有していればよく、特性に影響を与えない範囲で、他の卑金属成分が微量含まれていてもよい。また、特性に影響を与えない範囲で、必要に応じ各種無機成分を含有していてもよい。例えば、Zr、P、V、Ce、Nb、Ta、W、Pd、Ag、Ru、Sn、In、Y、Dy、La等を含有していてもよい。また、含有形態についても特に限定されるものではなく、酸化物、水酸化物、過酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物、有機金属化合物等、適宜選択することができる。

また、本導電性ペーストには、必要に応じて、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル等の可塑剤を1種又はこれらの組み合わせを添加するのも好ましい。また、脂肪酸アマイドや脂肪酸等のレオロジー調整剤を添加するのも好ましく、さらにはチクソトロピック剤、増粘剤、分散剤などを添加してもよい。

次に、本発明の実施例を具体的に説明する。

〔試料の作製〕 貴金属粉末として平均粒径D50が1.3μmのAg粉、卑金属粉末として表1に示すような比表面積及び平均粒径D50を有する9種類(粉末試料A〜I)のCu粉又はNi粉を用意し、さらに平均粒径D50が2μmのBi−B−Si−O系ガラスフリットを用意した。

また、比表面積はBET1点法で測定し、平均粒径D50はレーザー回析式粒度分布測定機で測定した。

尚、粉末試料EのCu粉及び粉末試料IのNi粉は湿式還元法で作製し、その他のCu粉又はNi粉はいずれもアトマイズ法で作製した。

この表1から明らかなように、粉末試料A〜C及びF〜Hは比表面積が0.50m2/g未満であり、いずれも本発明範囲内の卑金属粉末である。一方、粉末試料D、E及びIは比表面積が0.50m2/g以上であり、本発明範囲外の卑金属粉末である。

また、有機ビヒクルを以下の方法で作製した。すなわち、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂10wt%、有機溶剤としてターピネオール90wt%となるようにエチルセルロース樹脂とターピネオールとを混合し、有機ビヒクルを作製した。

次に、導電性粉末中の卑金属粉末の含有比率が、重量比で表2となるようにAg粉末と卑金属粉末(Cu粉、Ni粉)の配合割合を調整し、さらに導電性粉末(貴金属粉末及び卑金属粉末)の総含有量が70wt%、ガラスフリットの含有量が8wt%、残部が有機ビヒクルとなるように配合し、プラネタリーミキサで混合した後に、三本ロールミルで分散させて混練し、試料番号1〜18の導電性ペーストを作製した。

〔試料の評価〕 縦:76mm、横:26mm、厚み:1.4mmのスライドガラスを用意し、上記導電性ペーストを使用し、ライン全長L:100mm、線幅W:0.5mmとなるようにスクリーン印刷し、スライドガラス上に導電パターンを形成した。次いで、このスライドガラスを150℃の温度で10分間乾燥した後、最高温度600℃で5分間焼成し、表面に導電膜が形成された試料番号1〜18の試料を得た。

次に、導電膜の両端に電圧を印加し、デジタル抵抗計で抵抗値を測定した。次いで、導電膜の断面積を接触式表面粗さ計で測定し、該断面積とライン全長L(=100mm)とから比抵抗を算出した。

次に、試料番号1〜18の各試料を、濃度が10%のNaCl溶液に120時間浸漬した。次いで、この試料をNaCl溶液から取り出して十分に水洗し、乾燥させた。その後、導電膜の表面に粘着テープを貼付し、該粘着テープを前記試料から剥がし、導電膜の抵抗変化率から耐候性を評価した。

表2は、試料番号1〜18で使用した卑金属粉末種と導電性粉末中の卑金属粉末の含有比率、及び測定結果を示している。

尚、比抵抗については5.0〜18.0μΩ・cmの試料を良品とし、それ以外の試料を不良品と判断し、導電性を評価した。これは現在主流のバッテリー電圧は12〜24Vであることから、このバッテリー電圧に好適な比抵抗が5.0〜18.0μΩ・cmであることを考慮したものである。

また、耐候性は、導電膜の抵抗変化率が5%未満の試料を良品「○」、抵抗変化率が5%を超えた試料を不良品「×」と判断し、評価した。

試料番号4は、卑金属粉末であるCu粉の比表面積が0.50m2/gと大きいため、比抵抗は15.2μΩ・cmと良好であったが、耐候性に劣ることが分かった。これはCu粉の比表面積が大きいため、焼成時のCu粉の酸化が急激に進行し、ガラスフリットの濡れ性の低下が顕著になったためと思われる。

試料番号5は、Cu粉の比表面積が0.58m2/gと大きく、試料番号1と略同様の理由から比抵抗は16.6μΩ・cmと良好であったが、耐候性に劣ることが分かった。

試料番号7は、Cu粉の含有比率が0.05と小さいため、耐候性は良好であったが、比抵抗が4.2μΩ・cmと小さくなった。

試料番号9は、Cu粉の含有比率が0.40と大きいため、比抵抗も大きくなり、かつ耐候性も劣化した。これはCu粉の含有比率が大きいため、焼成時のCu粉の酸化量が増大し、ガラスフリットの濡れ性の低下が顕著になったためと思われる。

試料番号13は、卑金属粉末であるNi粉の比表面積が0.77m2/gと大きいため、試料番号4で述べたのと同様の理由から、比抵抗が16.9μΩ・cmと良好であったが、耐候性に劣ることが分かった。

試料番号15は、Ni粉の含有比率が0.05と小さいため、耐候性は良好であったが、比抵抗が4.5μΩ・cmと小さくなった。

試料番号16は、Ni粉の含有比率が0.25と大きいため、試料番号9で述べたのと同様の理由から、比抵抗は16.7μΩ・cmと良好であったが、耐候性が劣化した。

これに対し試料番号1〜3、6及び8は、比表面積が0.15〜0.48m2/gと0.50m2/g未満であり、含有比率が0.10〜0.30と本発明範囲内のCu粉が導電性ペースト中に含有されているので、比抵抗が5.3〜16.6μΩ・cmと良好であり、耐候性も良好であった。

また、試料番号10〜12、及び14も、比表面積が0.14〜0.48m2/gと0.50m2/g未満であり、含有比率が0.10〜0.20と本発明範囲内のNi粉が導電性ペースト中に含有されているので、比抵抗が5.2〜16.9μΩ・cmと良好であり、耐候性も良好であった。

また、試料番号17、18は、比表面積が0.25〜0.27m2/gと0.50m2/g未満であり、含有比率が0.10〜0.25と本発明範囲内のCu粉及びNi粉の混合粉が導電性ペースト中に含有されているので、比抵抗が5.6〜13.1μΩ・cmと良好であり、耐候性も良好であった。

本導電性ペーストは、耐候性が良好であり、適度な比抵抗を有し、車両用防曇ガラスやガラスアンテナ等のガラス物品に好適に利用できる。

1 ガラス基体 2 導電膜 4 第1のガラス基体(ガラス基体) 7 セラミック層 8 導電膜

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