真空断熱部材、それに用いる封止材料、及び真空断熱部材の製造方法

申请号 JP2016195350 申请日 2016-10-03 公开(公告)号 JP2018058709A 公开(公告)日 2018-04-12
申请人 日立化成株式会社; 发明人 内藤 孝; 吉村 圭; 橋場 裕司; 立薗 信一; 青柳 拓也; 三宅 竜也;
摘要 【課題】 低温で気密封止でき、かつ断熱性能の高い 真空 断熱部材を提供する。 【解決手段】 第一の基材と、第一の基材と空間をもって対向するように配置された第二の基材と、第一の基材と第二の基材の間に形成される内部空間の周縁に設けられた封止部と、を備え、封止部はガラス相と金属相とを含み、金属相はガラス相よりも内部空間側に形成されていることを特徴とする真空断熱部材。 【選択図】図2A
权利要求

第一の基材と、前記第一の基材と空間をもって対向するように配置された第二の基材と、前記第一の基材と前記第二の基材の間に形成される内部空間の周縁に設けられた封止部と、を備えた真空断熱部材であって、 前記封止部がガラス相と、前記ガラス相よりも前記内部空間側に配置された金属相と、を含むことを特徴とする真空断熱部材。請求項1に記載の真空断熱部材であって、 前記ガラス相が酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスであり、 前記金属相が錫を含む低融点金属であることを特徴とする真空断熱部材。請求項2に記載の真空断熱部材であって、 前記封止部のガラス相がさらに酸化銀を含む無鉛低融点ガラスであり、 前記金属相がさらに銀を含む低融点金属であることを特徴とする真空断熱部材。請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の真空断熱部材であって、 前記封止部がさらに低熱膨張フィラー粒子を含むことを特徴とする真空断熱部材。請求項4に記載の真空断熱部材であって、 前記低熱膨張フィラー粒子がZr2(WO4)(PO4)2を含むことを特徴とする真空断熱部材。請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の真空断熱部材であって、 前記封止部はリボン状の金属箔を備え、 前記ガラス相は前記金属箔の両面に配置されていることを特徴とする真空断熱部材。請求項6に記載の真空断熱部材であって、 前記金属箔は、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−クロム系合金、アルミニウム金属、アルミニウム系合金、及びこれらのクラッド材のいずれかであることを特徴とする真空断熱部材。請求項6に記載の真空断熱部材であって、 前記金属箔は、鉄−ニッケル系合金又は鉄−ニッケル−クロム系合金からなるリボン状の箔の両面に、アルミニウム金属又はアルミニウム系合金の層が形成されているクラッド材であることを特徴とする真空断熱部材。請求項6乃至請求項8のいずれか一項に記載の真空断熱部材であって、 前記金属箔は、複数の貫通孔を有し、 前記貫通孔には前記ガラス相が存在することを特徴とする真空断熱部材。請求項1乃至9のいずれか一項に記載の真空断熱部材であって、 前記第一の基材の前記第二の基材の少なくともどちらか一方がガラス基板であることを特徴とする真空断熱部材。請求項10に記載の真空断熱部材であって、 前記ガラス基板がソーダライムガラスであることを特徴とする真空断熱部材。請求項10又は請求項11に記載の真空断熱部材であって、 前記ガラス基板が風冷強化処理或いは化学強化処理された強化ガラスであることを特徴とする真空断熱部材。リボン状の金属箔と、 前記金属箔の両面に形成され、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスと、金属錫を含む無鉛低融点金属と、を含む被膜と、 を有することを特徴とする封止材料。請求項13に記載の封止材料であって、 前記金属箔は、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−クロム系合金、アルミニウム金属、アルミニウム系合金、及びこれらのクラッド材のいずれかであることを特徴とする封止材料。請求項13又は請求項14に記載の封止材料であって、 前記金属箔は、鉄−ニッケル系合金又は鉄−ニッケル−クロム系合金からなるリボン状の箔の両面に、アルミニウム金属又はアルミニウム系合金の層が形成されているクラッド材であることを特徴とする封止材料。請求項13乃至請求項15のいずれか一項に記載の封止材料であって、 前記金属箔は、複数の貫通孔を有することを特徴とする封止材料。請求項13乃至請求項16のいずれか一項に記載の封止材料であって、 前記無鉛低融点ガラスがさらに酸化銀を含み、 前記無鉛低融点金属がさらに銀を含むことを特徴とする封止材料。請求項17に記載の封止材料において、 前記被膜は、さらに低熱膨張フィラー粒子を含むことを特徴とする封止材料。請求項18に記載の封止材料において、 前記低熱膨張フィラー粒子がZr2(WO4)(PO4)2であることを特徴とする封止材料。請求項13乃至請求項19のいずれか一項に記載の封止材料を、複数のスペーサを配置した第一の基材の周縁部に磁石を用いて搬送及び設置する第1工程と、 前記第1工程により設置された前記封止材料の上から、第二の基材を、前記第一の基材と空間をもって対向するように配置し、固定する第2工程と、 前記第2工程で固定された前記第一の基材及び前記第二の基材を、真空中で加熱する第3工程と、を有することを特徴とする真空断熱部材の製造方法。請求項13乃至請求項19のいずれか一項に記載の封止材料を、排気穴と排気管とを備え、複数のスペーサが配置された第一の基材の周縁部に、磁石を用いて搬送及び設置する第1工程と、 前記第1工程により設置された前記封止材料の上から、第二の基材を、前記第一の基材と空間をもって対向するように配置し、固定する第2工程と、 前記第2工程で固定された前記第一の基材及び前記第二の基材により形成される内部空間を、前記排気穴と前記排気管とにより真空排気しながら加熱する第3工程と、 冷却時又は冷却後に、前記排気管を焼き切る第4工程と、を有することを特徴とする真空断熱部材の製造方法。

说明书全文

本発明は、真空断熱部材及びそれに用いる封止材料、並びにその真空断熱部材の製造方法に関する。

建材用窓ガラス等に展開されている真空断熱複層ガラスパネル等の真空断熱部材では、二枚の基材との間に空間を有し、その空間を真空状態とし、さらにその真空状態を長期間保持するために、二枚の基材の周縁が気密に封止されている。これによって、高い断熱性が発現、維持されている。真空断熱部材の周縁部の気密封止には、低融点ガラスと低熱膨張フィラー粒子とを含む封止材料が適用されている。

近年、ZEH(ゼロエネルギーハウス)化やZEB(ゼロエネルギービル)化が世界的に国家規模で推進されようとしている。ZEHやZEBでは、従来の複層ガラス窓より、断熱性が著しく高い窓ガラスが要求されるようになった。現状の複層ガラス窓では、パネル内部の空間が空気層、アルゴン層、真空層の順番で断熱性が高く、これらの熱貫流率は3.0〜1.4W/m2・Kの範囲にある。これらに対し、ZEHやZEBの窓ガラスでは0.7W/m2・K以下、国や場所によっては0.4W/m2・K以下が要求されている。これを達成するには、複層ガラス窓内部の高真空化による高断熱化が必須である。さらに、高真空化による破損防止や安全、防犯等のため、パネルガラスには風冷強化処理等を施した、割れにくい強化ガラスの適用が要求されている。強化ガラスは、表面に圧縮強化層を形成することによって高強度化を図っている。しかし、その強化層は約320℃以上の加熱温度で徐々に減少し、約400℃以上の加熱温度で消滅してしまう。このため、強化ガラスをパネルガラスに使用する場合には、封止温度が400℃以上の鉛系低融点ガラスやビスマス系低融点ガラスは適用することが難しい。

また、世界的にグリーン調達・グリーン設計の流れが強まり、より安全な材料が要求されている。鉛系低融点ガラスは、RoHS指令の禁止物質に指定された鉛を多く含むために、環境上、真空断熱複層ガラスパネル等へ適用することは好ましくはない。

また、封止温度の低温化は、急熱急冷が難しい真空断熱複層ガラスパネル等にとっては、製造タクトを短縮できる。さらに、量産設備の導入投資費も削減できることから、安価に製造できるようになる。

以上より、真空断熱複層ガラスパネル等の真空断熱部材では、高真空化による高断熱化と封止温度の低温化が強く要求されている。

特許文献1(国際公開番号WO2014/136151)や特許文献2(国際公開番号WO2016/051788)には、複層ガラスパネルの高断熱化、すなわち高真空化を図るために、パネル内部から放出されるガスを吸着できるガス吸着材(ゲッター)やそのゲッターを無機材料の繊維や多孔質体に担持したガス吸着体をパネル内部に設置することが提案されている。ゲッターとしては、具体的にはゼオライト、銅イオン等でイオン交換されたゼオライト、Fe−V−Zr合金、Ba−Al合金が挙げられている。

特許文献3(特開2013‐32255号公報)には、Ag2Oと、V2O5と、TeO2とを含有し、Ag2OとV2O5とTeO2との合計含有率が75質量%以上100質量%未満であり、残部がP2O5、BaO、K2O、WO3、Fe2O3、MnO2、Sb2O3、及びZnOのうちの1種以上を0質量%超25質量%以下で含有する無鉛低融点ガラス組成物が開示されている。このAg2O‐V2O5‐TeO2系無鉛低融点ガラス組成物は、示差熱分析(DTA)の第二吸熱ピーク温度から求められる軟化点が268〜320℃の温度範囲にあり、従来の鉛系或いはビスマス系低融点ガラス組成物より著しく低温で軟化流動する。

国際公開番号WO2014/136151

国際公開番号WO2016/051788

特開2013−32255号公報

特許文献1や特許文献2に開示されたガス吸着材やガス吸着体は、気密封止後にパネル内部の各材料より放出されるガス、たとえば窒素、酸素、分等のガスによって真空度が劣化することを防止或いは抑制するものである。しかし、特許文献3で開示された無鉛低融点ガラスのように、封止温度が著しく低いと、特許文献1のガス吸着材や特許文献2のガス吸着体の活性化が不十分であり、十分なガス吸着性能が発揮できないと言った問題があった。このため、複層ガラスパネルの断熱性を向上するには、パネル内部のガス放出量を低減し、パネル内部の高真空化を図ることが非常に重要であった。

本発明の目的は、低温で気密封止でき、かつ断熱性能の高い真空断熱部材を提供することである。

上記目的を達成するため、本発明に係る真空断熱部材は、第一の基材と、第一の基材と空間をもって対向するように配置された第二の基材と、第一の基材と第二の基材の間に形成される内部空間の周縁に設けられた封止部と、を備え、封止部がガラス相と、ガラス相よりも内部空間側に配置された金属相と、を含むことを特徴とする。

本発明によれば、低温で気密封止でき、かつ断熱性能の高い真空断熱部材を提供できる。

従来の真空断熱部材の概略斜視図である。

図1Aの概略断面図である。

本発明の一実施形態に係る真空断熱部材の封止部近傍の概略断面図である。

図2Aの概略上面図である。

本発明の一実施形態に係る真空断熱部材の封止部近傍の概略断面図である。

図3Aの真空断熱部材に使用したリボン状の金属箔の概略斜視図である。

リボン状の金属箔(クラッド材)の概略斜視図である。

図4Aの概略断面図である。

本発明の一実施形態に係る真空断熱部材の封止部近傍の概略断面図である。

図5Aの真空断熱部材に使用したリボン状の金属箔の概略斜視図である。

本発明の一実施形態に係る封止材料の概略斜視図である。

図6Aの概略断面図である。

本発明の一実施形態に係る封止材料の製法を示す概略図である。

本発明の一実施形態に係る封止材料の概略斜視図である。

図8Aの概略断面図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

図9Aの周縁部の概略断面図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

図11Aの封止部近傍の概略断面図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法(排気管方式)を説明する概略図である。

図12Aの周縁部の概略断面図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法(排気管方式)を説明する概略図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法(排気管方式)を説明する概略図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法(排気管方式)を説明する概略図である。

図14Aの封止部近傍の概略断面図である。

図3A及び図5Aの真空断熱部材の製造方法(排気管方式)を説明する概略図である。

図15Aの封止部近傍の概略断面拡大図である。

ガラス特有の代表的な示差熱分析(DTA)カーブの一例である。

実施例1に係る真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

実施例1に係る真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

実施例1に係る真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

実施例1に係る真空断熱部材の製造方法を説明する概略図である。

実施例及び比較例で製作した真空断熱部材の断熱性の評価方法を示す概略断面図である。

実施例1の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

実施例2で製作した真空断熱部材の封止部断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。

図22Aの部分的な拡大写真である。

実施例2の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

実施例3の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

実施例4で製作した真空断熱部材の封止部断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。

図25Aの部分的な拡大写真である。

実施例4の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

実施例5の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

実施例6の真空断熱部材の片面中央部を60℃に加熱した際のもう片面中央部の経時温度変化を示すグラフである。

以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。ただし、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、要旨を変更しない範囲で適宜組み合わせや改良が可能である。

<真空断熱部材> 真空断熱部材の代表例として、建材用窓ガラス等に展開される真空断熱複層ガラスパネルの概略斜視図と概略断面図をそれぞれ図1A,図1Bに示す。真空断熱複層ガラスパネルでは、第一の基材1と第二の基材2には、ソーダライムガラス基板が一般的に使用される。第一の基材1と第二の基材2との間の内部空間5は、多数のスペーサ3によって形成され、内部空間5の周縁が低融点ガラスを含む封止材料4によって、気密に封止されている。2枚の基材の間に形成される内部空間5は真空状態となっている。なお、本明細書において、真空状態とは、圧が大気圧より低い空間状態であることと定義する。

また、建材用窓ガラスに適用される真空断熱複層ガラスパネルでは、第二の基材2の内面に熱線反射膜6が形成されることが一般的である。しかし、気密封止時に封止材料4に含まれる低融点ガラスから放出されるガス、特にCO2ガスの放出によって、内部空間5の真空度をさらに向上させることを難しくしていた。その結果、真空断熱複層ガラスパネルの断熱性をさらに向上することを難しくしていた。そこで、本発明者らは、封止材料4からのガスの放出を抑制できる真空断熱部材を検討した。

本発明の一実施形態に係る真空断熱部材の封止部近傍の概略断面図を図2Aに、封止部の概略上面図を図2Bに示す。真空断熱部材は、第一の基材1と、第一の基材1と空間5をもって対向するように配置された第二の基材2と、第一の基材1と第二の基材2の間の形成される内部空間の周縁に設けられた封止部4’と、を備える。封止部4’がガラス相7と、ガラス相7よりも内部空間5側に形成された金属相8と、を含むことを特徴とする。第二の基材2には熱線反射膜6が形成されている。内部空間5は、図1と同様に多数のスペーサ3によって形成される。封止部がガラス相7よりも内部空間5側に配置された金属相8を有することによって、ガラス相7の内部空間5への露出量を低減し、低融点ガラスから放出されるCO2ガスの内部空間5への放出量を減少させることができる。その結果、内部空間5の真空度を向上でき、真空断熱複層ガラスパネルの断熱性を改善できる。なお、真空断熱部材の製法上、封止部4’はガラス相7よりも外部側にも金属相8’が形成されることが多々ある。詳細に関しては、後ほど述べる。金属相は、少なくともガラス相7よりも内部空間5側に形成されていればよい。

(封止部) 封止部4’は、少なくともガラス相7と、ガラス相7よりも内部空間5側に形成された金属相8と、を含む。また、金属相がガラス相7の両端に形成される場合は、外部側に形成される金属相8’よりも内部空間側に形成される金属相8の量が多いことが好ましい。

ガラス相7は酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスであることが好ましい。酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスは軟化点が低く、低温での気密封止が可能となるためである。また、無鉛低融点ガラスは、さらに酸化銀を含むことが好ましい。酸化バナジウムと酸化テルルに加え、さらに酸化銀を含む無鉛ガラスはより軟化点が低い。そのため、より低温で気密封止することができる。なお、本明細書において、低融点ガラスとは、軟化点が400℃以下であるガラスをいう。

また、低融点ガラス中のV2O5とTeO2の合計量は、55モル%以上80モル%以下であることが好ましい。さらに、Ag2Oを含む場合は、V2O5とTeO2とAg2Oの合計量は、80モル%以上98モル%以下であることが好ましい。なお、無鉛低融点ガラスには、P2O5、Fe2O3、BaO、WO3、ZnO、Y2O3、La2O3のいずれかを含んでもよい。これらの成分は、2モル%以上30モル%以下で含むことが好ましい。

封止部4’におけるガラス相7の割合は、30体積%以上60体積%以下であることが好ましい。ガラス相7の割合が、この範囲にあると良好な気密性と接合強度が得られやすい。

また、封止部4’を形成する金属相8は無鉛低融点金属であることが好ましい。無鉛低融点金属は錫を含むことが好ましい。さらに、無鉛低融点金属は、錫の他に、銀、銅、亜鉛、アンチモンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。本明細書において、低融点金属とは融点が300℃以下の金属のことをいう。

封止部4’における金属相8、8’の割合は、20体積%以上70体積%以下であることが好ましい。金属相8、8’の割合が、この範囲にあると良好な断熱性と接合強度が得られやすい。

さらに、封止部4’は、低熱膨張フィラー粒子を含むことが好ましい。低熱膨張フィラー粒子を含むことによって、その封止部4’と基材1、2との熱膨張差を低減し、より接合強度が高い封止部を得ることができる。この低熱膨張フィラー粒子は、封止部4’の金属相8に存在するより、ガラス相7に存在することが好ましい。また、低熱膨張フィラー粒子としては、マイナスの熱膨張係数を有するものが好ましい。マイナスの熱膨張係数を有する低熱膨張フィラー粒子としては、リン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr2(WO4)(PO4)2)が好ましい。リン酸タングステン酸ジルコニウムは、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスとのぬれ性が良好であるためである。

封止部4’における低熱膨張フィラー粒子の配合割合は、10体積%以上35体積%以下であることが好ましい。低熱膨張フィラー粒子の配合割合が、この範囲にあると、良好な気密性と接合強度を両立しやすいと言った特徴がある。

また、封止部4’はリボン状の金属箔を備えることが好ましい。リボン状の金属箔を含む封止部の概略図を図3Aに示す。封止部4’に用いる金属箔9の斜視図を、図3Bを示す。封止部4’は、ガラス相7、7’と、金属相8、8’と、金属箔9からなり、リボン状の金属箔9を介してガラス相7,7’により第一の基材1と第二の基材2が接合されている。すなわち、金属箔9の両面にガラス相7,7’が配置している。封止部4’が金属箔9を備えることによって、封止部4’に使用される低融点ガラス量を減少させることができる。これにより、低融点ガラスからのCO2ガス放出量を著しく低減できる。このCO2ガス放出量の低減と内部空間5側に配置された金属相8によって、内部空間5の真空度をさらに向上でき、真空断熱複層ガラスパネルの断熱性をより改善できるものである。さらに、酸化バナジウム、酸化テルル及び酸化銀を含む無鉛低融点ガラスは大変高価であることから、その使用量を減少させることは、低コスト化にも有利である。

リボン状の金属箔9は鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−クロム系合金、アルミニウム金属、アルミニウム系合金、及びこれらのクラッド材のいずれかであることが好ましい。鉄−ニッケル系合金又は鉄−ニッケル−クロム系合金の金属箔9では、第一の基材1や第二の基材2にソーダライムガラス等のガラス基板を用いた場合にその熱膨張と整合をとりやすいことから、封止部4’の接合強度を向上できる。

また、アルミニウム金属又はアルミニウム系合金の金属箔9では、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスやさらにそれらに酸化銀を含む無鉛低融点ガラスからなるガラス相7、7’とのぬれ性や接着性が良好であるために、封止部4’の気密性を向上することができる。

特に有効な金属箔9は、図4Aと図4Bに示すような鉄−ニッケル系合金或いは鉄−ニッケル−クロム系合金と、アルミニウム金属或いはアルミニウム系合金とのクラッド材である。図4Aと図4Bに示すクラッド材は、鉄−ニッケル系合金或いは鉄−ニッケル−クロム系合金のリボン箔26の両面にアルミニウム金属或いはアルミニウム系合金の層27が形成されたものであり、より信頼性の高い封止部が得られる。

さらに、金属箔9は、図5Aと図5Bに示すように複数の貫通孔10を有し、貫通孔10に、ガラス相7、7’が存在することが好ましい。第一の基材1と第二の基材2には、多少のうねりが存在するために、金属箔9に貫通孔10を設けることによって、封止材料4がその貫通孔10を通じて行き来しやすくなり、第一の基材1や第二の基材2のうねりよる気密封止の失敗を低減し、真空断熱部材の製造歩留まりを向上することができる。

(第一の基材及び第二の基材) 真空断熱部材を構成する第一の基材及び第二の基材の材質は特に限定されないが、第一の基材1と第二の基材2のどちらか一方が少なくともガラス基板であることが好ましい。ガラス基板は透明で気密性や化学的安定性が高く、しかも熱伝導率が低めであることから第一の基材1や第二の基材2に適用することが有効である。さらに、真空断熱部材、特に真空断熱複層ガラスパネル等の建材用窓ガラスに広く展開及び普及させるためには、ガラス基板としては安価なソーダライムガラスを使用することが好ましい。

また、ガラス基板には、内部空間5の高真空化による破損防止や安全、防犯等のために、風冷強化処理或いは化学強化処理された強化ガラスを使用することができる。本発明の一実施形態に係る真空断熱部材では、その強化ガラスの表面圧縮強化層が消滅しない温度範囲、すなわち約320℃以下の温度で気密に封止することが可能である。

<封止材料> 本発明の一実施形態に係る封止材料の概略斜視図と概略断面図を図6Aと図6B示す。封止材料4は、リボン状の金属箔9と、金属箔9の両面に形成された被膜13、13’とを含む。被膜13、13’は、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラス11、11’と、金属錫を含む無鉛低融点金属12、12’と、を含む。なお、無鉛低融点ガラスと無鉛低融点金属を含む皮膜は、金属箔の両面だけでなく、金属箔の側面にも設けられていてもよい。

図6Aと図6Bで示した封止材料4の製造方法の概略図を図7に示す。図7は、封止材料4の製法の一例にすぎないが、封止材料4は連続的に製作することが可能であり、量産上、有利である。先ずは、無鉛低融点ガラス11、11’の粒子と、無鉛低融点金属12、12’の粒子と、溶剤とを含むペーストを作製する。作製したペーストを金属箔9の両面にローラー等を用い塗布する。次にペースト塗布した金属箔9を温風にて乾燥する。続いて無鉛低融点ガラス11、11’の軟化点以上の温度で焼成することにより、金属箔の両面に被膜13、13’を形成する。その後、風冷にて冷却し、レーザ等を用いカットし、図6で示した封止材料4を作製する。詳細は後で述べるが、この封止材料を用いて真空断熱部材を作製することにより、工程数を削減でき、しかも設備投資費も削減できる。その結果、図3で示した真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)を安価に提供できる。

(リボン状の金属箔) 封止材料4において、金属箔9は、鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル−クロム系合金、アルミニウム金属、アルミニウム系合金、及びこれらのクラッド材のいずれかであることが好ましい。鉄−ニッケル系合金及び鉄−ニッケル−クロム系合金の金属箔9は、真空断熱部材の第一の基材1や第二の基材2にソーダライムガラス等のガラス基板を用いた場合にその熱膨張と整合をとりやすい。そのため、図3で示した真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)における封止部の接合強度を向上できる。

また、鉄−ニッケル系合金及び鉄−ニッケル−クロム系合金の金属箔9は、磁石に引き寄せられることから、磁石を用いて封止材料4を搬送したり、設置、固定することができる。そのため、図3で示した真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)の生産性や量産性を向上できる。

アルミニウム金属及びアルミニウム系合金の金属箔9は、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスとのぬれ性や接着性が良好であるために、図3で示した真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)における封止部の気密性を向上することができる。

これらのなかでも、特に有効な金属箔9は、図4で示した鉄−ニッケル系合金或いは鉄−ニッケル−クロム系合金のリボン箔26の両面にアルミニウム金属或いはアルミニウム系合金の層27が形成されたクラッド材である。両者の利点を有効に活かすことができる。その結果、図3で示した真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)において、その生産性や量産性を向上でき、しかも信頼性の高い封止部が得られる。

さらに、金属箔9は、複数の貫通孔10を有することが好ましい。複数の貫通孔10が設けられたリボン状の金属箔の概略斜視図を図8Aに、概略断面図を図8Bに示す。貫通孔10には、無鉛低融点ガラス11、11’と、無鉛低融点金属12、12’とが存在している。図8Aと図8Bで示した封止材料は、図7で示したような製法により作製可能である。金属箔9に貫通孔10を設けることにより、真空断熱部材の気密封止時に無鉛低融点ガラス11、11’と無鉛低融点金属12、12’とがその貫通孔10を通じて行き来しやすくなり、真空断熱部材に使用される基材1や基材2のうねりよる気密封止の失敗を低減し、真空断熱部材の製造歩留まりを向上できる。

金属箔9の厚みは、内部空間5の真空度によるが、0.10mm以上0.25mm以下の範囲が望ましい。また、スペーサ3の高さよりも20μm以上小さくすることが好ましい。金属箔9の幅は、真空断熱部材のサイズや重量によるが、2mm以上10mm以下の範囲が望ましい。真空断熱部材のサイズや重量が大きいほど、封止部4’の接合強度を確保するために金属箔9の幅も大きくする必要がでてくる。封止材料4中或いは封止部4’中の金属箔9の割合は60体積%以上90体積%以下であることが好ましい。

金属箔9に形成する貫通孔10の直径は0.1mm以上1.0mm以下程度、その間隔は3mm以上10mm以下程度、及びその位置は金属箔9の幅の中央付近が好ましい。

(被膜) 封止材料4を構成する被膜13、13’は、酸化バナジウムと酸化テルルを含む無鉛低融点ガラスと、錫を含む無鉛低融点金属を含む。無鉛低融点ガラスは、無鉛低融点ガラスはさらに、酸化銀を含むことが好ましい。酸化銀を含むことにより、ガラスの軟化点を低温化することができ、より低温で封止することが可能となる。

無鉛低融点ガラスの好ましい組成範囲は、次の酸化物換算でV2O5が20モル%以上45モル%以下、TeO2が25モル%以上45モル%以下、Ag2Oが0モル%以上45モル%以下であり、Ag2Oを含まない場合には、V2O5とTeO2の合計量が55モル%以上80モル%以下、Ag2Oを含む場合は、V2O5とTeO2とAg2Oの合計量が80モル%以上98モル%以下であることが好ましい。なお、無鉛低融点ガラスには、P2O5、Fe2O3、BaO、WO3、ZnO、Y2O3、La2O3のいずれかを含んでも良く、これらの成分は、合計で2モル%以上30モル%以下であることが好ましい。

被膜13、13’におけるガラス相7の割合は、30体積%以上50体積%以下であることが好ましい。ガラス相7の割合が、この範囲にあると良好な気密性と接合強度が得られやすい。

無鉛低融点金属はさらに銀、銀、銅、亜鉛、アンチモンの少なくともいずれかを含むことが好ましい。これらのなかでも特に、銀を含むことが好ましい。無鉛低融点金属に銀を含むと、錫と上記のV2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスとの反応による高融点のAg3Snの生成を抑制することができる。その生成量が多いと、無鉛低融点金属は、低温で融けにくくなり、良好な気密性と断熱性が得られなくなってしまう。

被膜13、13’における金属相8、8’の割合は、25体積%以上50体積%以下であることが好ましい。金属相8、8’の割合が、この範囲にあると良好な断熱性と接合強度が得られやすい。

より低温で気密に封止することによって、真空断熱部材のプロセスコストを大幅に低減できる。その結果、安価な真空断熱部材を提供できるようになる。また、より低温での気密封止、具体的には320℃以下での気密封止により、第一の基材1や第二の基材2に風冷強化処理或いは化学強化処理された強化ガラスを適用することができるようになる。これによって、内部空間5の高真空化による破損防止や安全、防犯等にも対応可能な真空断熱部材を提供できる。

無鉛低融点ガラスに酸化銀、無鉛低融点金属に銀を含有させた場合は、その材料費が高額となる。しかしながら、図6及び図8で示した封止材料は、金属箔9を用いるため、無鉛低融点ガラス及び無鉛低融点金属の使用量を著しく減少でき、その材料費が高額にならないようにすることができる。

さらに、被膜には、さらに低熱膨張フィラー粒子を含むことが好ましい。低熱膨張フィラー粒子を含むことによって、第一の基材1や第二の基材2、具体的にはソーダライムガラスやその強化ガラス等のガラス基板との熱膨張差を低減し、より接合強度が高い封止部が得られるようになる。低熱膨張フィラー粒子としては、無鉛低融点ガラスとのぬれ性が良好で、しかもマイナスの熱膨張係数を有するリン酸タングステン酸ジルコニウムZr2(WO4)(PO4)2が好ましい。

被膜13、13’における熱膨張フィラー粒子の配合割合は、10体積%以上30体積%以下であることが好ましい。低熱膨張フィラー粒子の配合割合が、この範囲にあると、良好な気密性と接合強度を両立しやすいと言った特徴がある。

<真空断熱部材の製造方法> 真空断熱部材の製造方法は、複数のスペーサ3を配置した第一の基材1の周縁部に図6又は図8で示した封止材料4を磁石を用い搬送及び設置する第1工程と、封止材料の上から第二の基材2を、第一の基材1と空間16をもって対向するように配置し、固定する第2工程と、固定された第一の基材1と第二の基材2を真空中で加熱し、封止材料4によって周縁部を気密に封止する第3工程と、を備える。

図3及び図5で示した真空断熱部材の製造方法の概略図を図9A〜図11Bに示す。以下、真空断熱部材の代表例として真空断熱複層ガラスパネルを例に、真空断熱部材の製造方法を説明する。図9Aは第1工程を説明する概略斜視図、図9Bは第1工程における真空断熱部材の周縁部の概略図である。多数のスペーサ3を配置した第一の基材1の周縁部に図6又は図8で示した封止材料4を、磁石14を用い設置する。この磁石14には、永久磁石及び電磁石のどちらでもよい。封止材料4の金属箔9は磁石14に引き寄せられるため、磁石を用いることにより所定の周縁部に容易に設置できる。また、この磁石14によって基材1の周縁部に設置した封止材料4のエッジ部15においても、封止材料4間の隙間を大きく空けることなく、封止材料4同士を接触させて設置させることが可能である。

図10A及び図10Bは、第2工程を説明する概略断面図である。磁石14で設置されている封止材料4の上に反射防止膜6を形成した第二の基材2を第一の基材1と空間16をもって対向するように配置し、耐熱クリップ17等で固定する。磁石14は耐熱クリップ17等で固定した後に取り外す。

図11Aは第3工程を説明する図である。図11Bは第3工程における封止部近傍の概略断面図である。耐熱クリップ17で固定された第一の基材1及び第二の基材2は、真空ポンプ18が接続された真空加熱炉19の内部に設置され、真空に引きながら加熱される。真空引きしながら加熱することで周縁部は封止材料4により気密封止される。真空加熱の際に、封止材料4に含まれる無鉛低融点ガラスが軟化流動し、また無鉛低融点金属も融けて、さらに耐熱クリップ17での加圧や基材2の荷重によって、図3、図5及び図11で示したような封止断面構造を有する真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)を得ることができる。すなわち、第一の基材1と第二の基材2との封止部は、無鉛低融点ガラス11、11’によるガラス相7、7’と、無鉛低融点金属12、12’による金属相8、8’が形成されるようになる。その金属相8、8’は、ガラス相7、7’の両端、すなわち内部空間5側とその外側に形成されることが多い。内部空間5の真空度が高い場合には、内部空間5側の金属相8が増加し、一方その外側の金属相8’が減少或いは消滅する。この逆のケースでは、内部空間5の真空度が低く、真空断熱部材としては、良好な断熱性は得られないことがある。

また、この真空断熱部材(真空断熱複層ガラスパネル)の製法では、基材を3枚以上として、多層化することも可能である。

また、基材に排気穴を有する真空断熱部材は、次の方法で作製することができる。排気穴20と、排気管21と、を備え、複数のスペーサ3が配置された第一の基材1の周縁部に図6又は図8で示した封止材料4を、磁石を用い搬送及び設置する第1工程と、封止材料4上に第二の基材2を第一の基材1と空間16をもって対向するように配置し、固定する第2工程と、固定された第一の基材1と第二の基材2の内部空間16を排気穴20と排気管21とにより真空排気しながら加熱し、封止材料4によって周縁部を気密に封止する第3工程と、冷却時或いは冷却後に排気管21をヒーター或いはバーナーにより焼き切る第4工程と、を備える。

上記製造方法を、図12A〜図15Bを用いて説明する。図12A〜図15Bは真空断熱部材の代表例である真空断熱複層ガラスパネルの製造方法の各工程を説明する概略図である。

図12Aは第1工程を説明する概略図、図12Bは第1工程における第一の基材の周縁部の断面図である。先ずは、排気穴20と、排気管21とを備え、複数のスペーサ3とを配置した第一の基材1の周縁部に図6又は図8で示した封止材料4を、磁石14を用いて設置する。

図13A及び図13Bは第2工程を説明する概略図である。図13Aに示すように封止材料4の上から、反射防止膜6を形成した第二の基材2を、第一の基材1と空間16をもって対向するように配置する。これを、図13Bに示すように耐熱クリップ17等で固定した後、磁石14を取り外す。

図14Aは第3工程を説明する概略図であり、図14Bは第3工程における封止部近傍の拡大図である。耐熱クリップ17で固定された第一の基材と第二の基材を、図14Aに示すように真空加熱炉19の内部に設置する。また、排気管21に電熱ヒーター22を取り付け、排気管21を真空ポンプ18に接続する。排気穴20と排気管21から基材1と基材2との空間16を真空に引きながら加熱する。真空に引きながら加熱することにより、周縁部を気密に封止でき、内部空間5を真空状態とすることができる。

図15Aは第4工程を説明する概略図であり、図15Bは第4工程における封止部近傍の拡大図である。内部空間5を真空状態とした真空断熱部材は、図15Aに示すように冷却時又は冷却後に排気管21を電熱ヒーターにより焼き切る。排気管を焼き切ることにより、内部空間5の真空状態を維持できるようにする。

以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、本発明は、ここで取り上げた実施例に限定されることはなく、そのバリエーションを含むものである。

実施例において、真空断熱部材の封止材料を作製するのに用いた無鉛低融点ガラス、無鉛低融点金属及び低熱膨張フィラー粒子をそれぞれ表1、表2及び表3に示す。表1で示す無鉛低融点ガラスの特性温度に関しては、示差熱分析(DTA)により測定した。ガラス特有の代表的なDTAカーブの一例を図16に示す。図16において、第一吸熱ピークの開始温度が転移点Tg、その吸熱ピーク温度が屈伏点Mg、及び第二吸熱ピーク温度が軟化点Tsであり、これらの特性温度は接線法によって求められることが一般的である。それぞれの特性温度は、ガラスの粘度により定義され、Tgが1013.3ポイズ、Mgが1011.0ポイズ及びTsが107.65ポイズに相当する温度である。表1の無鉛低融点ガラス、表2の無鉛低融点金属及び表3の低熱膨張フィラー粒子を組み合わせた封止材料によって、真空断熱複層ガラスパネルを製作し、その断熱性を評価した。なお、封止材料は、表1の無鉛低融点ガラス、表2の無鉛低融点金属及び表3の低熱膨張フィラー粒子を配合、混合したものに溶剤等を加えることによって、ペーストの形態で用いた。

[実施例1] 実施例1では、表1の無鉛低融点ガラスと表2の無鉛低融点金属とを用いた封止材料によって、図2で示した真空断部材を製作し、その断熱性を評価した。また、比較例としては、表1の無鉛低融点ガラスと表3の低熱膨張フィラー粒子とを用いた封止材料によって、図1に示した真空断熱部材を製作し、その断熱性も評価した。なお、封止材料は、実施例、比較例ともに、溶剤等を加えたペーストの形態で使用した。

(封止材料の作製) 表1の無鉛低融点ガラスの粉末と表2の無鉛低融点金属の粉末、溶剤等を用いて封止材料のペーストを作製した。また、比較例の真空断熱部材を製作するために、表1の無鉛低融点ガラスの粉末と表3の低熱膨張フィラー粒子、溶剤等を用いて封止材料のペーストを作製した。表1の無鉛低融点ガラスの粉末には、平均粒径が5〜10μm程度の破砕粉を用いた。また、表2の無鉛低融点金属の粉末には、粒径が15〜45μmの範囲にあるアトマイズ粉を用いた。さらに、表3の低熱膨張フィラー粒子には、平均粒径が10〜20μm程度の破砕粉或いは球状粉を用いた。また、ペーストを作製する際の溶剤には、無鉛低融点ガラスA−1〜5が含有される場合にはブチルカルビトールアセテート、A−6〜18が含有される場合には高粘度溶剤であるα‐テルピネオールを使用した。さらに、無鉛低融点ガラスA−1〜5が含有される場合には、極少量の樹脂も含有し、ペーストの粘度を調整した。その樹脂には、エチルセルロースを用いた。

実施例で使用した封止材料の種類と配合組成、すなわち無鉛低融点ガラスと無鉛低融点金属の種類と配合割合、及びその大気中焼成温度と真空中封止温度を表4に示す。また、比較例に用いた封止材料の種類と配合組成、すなわち無鉛低融点ガラスと低熱膨張フィラー粒子の種類と配合割合、及びその大気中焼成温度と真空中封止温度を表5に示す。実施例で用いた表4の無鉛低融点ガラスと無鉛低融点金属の配合割合は、体積%で30:70に固定した。一方、比較例で用いた表5の無鉛低融点ガラスと低熱膨張フィラー粒子の配合割合は、第一の基材1と第二の基材2に使用するソーダライムガラス基板の熱膨張に配慮し決定した。使用したソーダライムガラス基板の熱膨張係数は、30〜300℃の温度範囲で88×10−7/℃であった。これに対し、実施例で用いた封止材料では、無鉛低融点金属の含有量が多く、しかもその無鉛低融点金属が柔らかいために、残留する熱応力が緩和しやすく、ソーダライムガラス基板との熱膨張差を比較例で用いた封止材料ほど配慮する必要がなかった。また、表3で示した低熱膨張フィラー粒子C−4とC−5についても検討したが、表1のどの無鉛低融点ガラスも結晶化してしまい、良好な軟化流動性が得られなかったために、表5に掲載することは取りやめた。

(真空断熱部材の作製) 真空断熱部材の製造方法について、図17〜19を用いて説明する。図17A及び図17Bに示すように多数のスペーサ3を配置した第一の基材1の周縁部にディスペンサー23を用いて、作製した封止材料4のペーストを塗布し、150℃程度で30分間乾燥した後に大気中で焼成した。焼成条件は、昇温速度を約6℃/分とし、封止材料4に含有する無鉛低融点ガラスの軟化点Tsより10〜40℃ほど高い温度で30分間保持した。

次に図18に示すように第二の基材2を合わせ、クリップ17で複数箇所を固定した。これを図19に示すように真空加熱炉19の内部に設置し、真空ポンプ18を用いて真空に引きながら加熱することによって周縁部を気密に封止し、図1に示した真空断熱部材を製作した。なお、真空加熱炉19での加熱には、赤外線ランプを用いた。真空加熱炉19での封止条件は、昇温速度を約5℃/分とし、封止材料4に含有する無鉛低融点ガラスの軟化点Tsより5〜30℃ほど高い温度で30分間保持した。

本実施例では、基材1及び基材2ともに250mm×200mm×3mmのサイズのソーダライムガラス基板を用い、基材2には熱線反射膜6を形成しなかった。また、スペーサ3の高さを0.2mmとし、真空状態の内部空間5を形成した。

(断熱性の評価) 作製した真空断熱部材について、断熱性を評価した。図20に断熱性の評価方法を説明する図を示す。製作した真空断熱部材の断熱性評価は、図20に示すように、60℃に加熱、保持した外径20mmの円柱状ヒーター24を基材2の表面中央部へ接触させ、反対側の基材1の表面中央部に接着させた温度計25よって、20分間の温度変化を計測した。その温度上昇が低いほど、内部空間5の真空度が高く、断熱性が高いと判断した。

製作した実施例と比較例の真空断熱部材の断熱性の評価結果、すなわち基材2の表面中央部を60℃に加熱した際の基材1の表面中央部の経時温度変化を図21に示す。表5の封止材料AC−1〜18を用いて製作した比較例の真空断熱部材では、時間の経過ともに基材2の表面中央部の温度が上昇し、14分以上でその温度変化はほぼなくなり、封止材料AC−1〜5を用いたグループ、AC−6〜13を用いたグループ、及びAC−14〜18を用いたグループのそれぞれで同等の温度上昇傾向が認められた。

最も温度上昇が少なかった比較例の真空断熱部材は、封止材料AC−1〜5を用いたグループで、次に封止材料AC−6〜13を用いたグループであり、最も温度上昇が大きかった真空断熱部材は、封止材料AC−14〜18を用いたグループであった。これには、規則性があり、特性温度が高い無鉛低融点ガラスを含有した封止材料を用い、より高温で大気中焼成や真空封止をした真空断熱部材の方が、基材1の表面温度上昇が少ない傾向を示すことが分かった。

封止材料AC−1〜5に含有した表1の無鉛低融点ガラスA−1〜5は、V2O5−TeO2系であり、表1の中では特性温度が高く、熱膨張係数が低めであった。また、封止材料AC−1〜5への無鉛低融点ガラスA−1〜5の含有量は、表5で示したとおり多めであった。一方、封止材料AC−6〜13やAC−14〜18に含有した表1の無鉛低融点ガラスA−6〜18は、V2O5−TeO2−Ag2O系であり、Ag2Oの含有により特性温度が低温であった。また、Ag2Oの含有量が多いほど、特性温度が低い傾向を示すが、一方熱膨張係数が大きくなる傾向を示すことから、封止材料としては、表5に示すように無鉛低融点ガラスの配合量を減らし、低熱膨張フィラー粒子の配合量を増やさざるを得なかった。特に無鉛低融点ガラスA−14〜18は、A−6〜13がモル%でTeO2>Ag2Oの関係であるのに対し、Ag2O含有量を増やし、TeO2

2Oの関係とすることによって、特性温度のさらなる低温化を図った。この関係の違いが、同じV

2O

5−TeO

2−Ag

2O系無鉛低融点ガラスであっても、図21で示したとおり封止材料AC−6〜13とAC−14〜18のグループ分けの原因になったものと考えられる。

以上より、比較例の真空断熱部材では、その封止材料に特性温度が高い無鉛低融点ガラスを使用し、高温で大気中焼成や真空中封止する方が基材1の表面温度上昇が少なく、断熱性が高くなることが分かった。これは、より高温での真空中封止によって真空断熱部材の内部空間が脱気されやすく、高真空化されたものと考えられる。

以上の比較例の真空断熱部材に対し、表4の封止材料AB−1〜18を用いて製作した実施例の真空断熱部材では、図21に示したとおり基材1の表面中央部の温度上昇が著しく抑制され、しかも経過時間が10分以上で温度変化がほとんど認められなくなり、比較例に比べて断熱性がかなり向上した。封止部は、表4のどの封止材料を用いた場合でも図2で示した状態となっていた。すなわち、封止部は、封止材料4に含まれる表1の無鉛低融点ガラスによるガラス相7と、表2の無鉛低融点金属による金属相8、8’とからなり、ガラス相7よりも内部空間5側に金属相8が形成されていた。金属相8や8’は、無鉛低融点金属が融けた際にクリップ17による加圧と基板2の荷重によって、封止部の両端に溶融した無鉛低融点金属が無鉛低融点ガラス中を移動することによって形成された。また、ガラス相7も、この溶融した無鉛低融点金属が無鉛低融点ガラス中を封止部両端へ移動することによって形成された。このため、ガラス相7には、取り残された僅かな金属相が層状に見受けられることが多々あった。本実施例では、図19で示したとおり真空加熱炉19の内部を真空に引きながら、封止材料4にて封止を行い、真空断熱部材の内部空間5を真空状態とするが、図12〜15で説明したように基材1に配置した排気穴20と排気管21から真空断熱部材の内部空間5のみを真空に引きながら封止する方法(排気管方式)では、ガラス相7の内部空間5側の金属相8が増加し、一方その外側の金属相8’が減少或いは消滅した。これは、封止時に溶融した無鉛低融点金属が内部空間5側に引っ張られるためであり、この封止方法においても、断熱性が良好な真空断熱部材が得られた。

以上より、図2の封止状態で示したように、CO2等のガス発生原因になり得るガラス相7の内部空間5への露出量を金属相8の形成により著しく低減することによって、真空断熱部材の断熱性をかなり向上できたものと考えられる。

また、表4で示した封止材料AB〜1〜18に配合される表1の無鉛低融点ガラスA−1〜18の種類によって、封止材料AB−1〜5、AB−6〜13、及びAB−14〜18の3つにグループ分けができることが分かった。最も基材1の表面温度上昇が少なかった真空断熱部材は、封止材料AB−6〜13を用いた場合であり、次に封止材料AB−14〜18、続いて封止材料AB−1〜5を用いた場合であった。すなわち、封止材料に含有される無鉛低融点ガラスとしては、A−1〜5のV2O5−TeO2系よりA−6〜18のV2O5−TeO2−Ag2O系の方が真空断熱部材の断熱性向上には有効であった。これは、比較例の真空断熱部材の断熱性評価結果とは、逆転している。また、表4で示した封止材料AB−1〜18には、表1の無鉛低融点ガラスの他に、表2の無鉛低融点金属B−1〜7のいずれかが配合され、これらの無鉛低融点金属は、錫を主要成分として含有することが真空断熱部材の断熱性向上に有効であった。特に有効であった封止材料AB−6〜13を用いた場合には、その封止材料に表2の無鉛低融点金属B−2〜4が配合され、これらにはさらに銀が含有されていた。無鉛低融点金属に錫と銀が含有されると、V2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスでは、錫との反応が抑制され、ガラス中の銀イオンが低融点金属中の錫へ拡散しにくくなるものと考えられる。V2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスから銀イオンが多数抜けてしまうと、特性温度が上昇し、真空中で気密に封止しにくくなることがあった。このため、封止材料にV2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスを使用する場合には、無鉛低融点金属としては錫と銀の両方が含有されることが真空気密封止には有効であることが分かった。

以上より、本実施例で製作した真空断熱部材の断熱性評価結果において、封止部がガラス相と、ガラス相よりも内部空間側に配置された金属相と、を含むことによって、その断熱性が著しく向上することを見出した。その封止部のガラス相は酸化バナジウム(V2O5)と酸化テルル(TeO2)を含む無鉛低融点ガラスであり、しかも金属相は錫(Sn)を含む無鉛低融点金属であった。封止部のガラス相はさらに酸化銀(Ag2O)を含む無鉛低融点ガラスであり金属相はさらに銀(Ag)を含む無鉛低融点金属であることが特に好ましいことが分かった。

[実施例2] 実施例2では、表1の無鉛低融点ガラスA−1、7及び11と、表2の無鉛低融点金属B−1〜3と、表3の低熱膨張フィラー粒子C−1〜3とを用いた封止材料によって、実施例1と同様にして図2で示した真空断部材を製作し、その断熱性を評価した。また、封止材料4も実施例1と同様にペーストの形態で使用した。

本実施例で使用した封止材料の種類と配合組成、すなわち表1の無鉛低融点ガラスA−1、7及び11、表2の無鉛低融点金属B−1〜3及び表4の低熱膨張フィラー粒子C−1〜3の種類と配合割合、並びにその大気中焼成温度と真空中封止温度を表6に示す。その表6で示した封止材料ABC−1〜11のペーストを用い、実施例1と同様に真空断熱部材を製作した。

第一の基材1及び第二の基材2には、実施例1と同サイズ(250mm×200mm×3mm)のソーダライムガラス基板を用い、第二の基材2の片側全面には熱線反射膜6を形成した。また、スペーサ3の高さを0.15mmとし、真空状態の内部空間5を形成した。

作製した真空断熱部材の断熱性評価は実施例1と同様に行った。また、図22A及び図22Bに封止材料ABC−4を用いて製作した真空断熱部材の封止部断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図22Bは、図22Aの部分的な拡大断面写真である。

図23に実施例2の真空断熱部材の断熱性の評価結果、すなわち基材2の表面中央部を60℃に加熱した際の基材1の表面中央部の経時温度変化を示す。表6の封止材料ABC−1〜11を用いて製作した真空断熱部材は、実施例1と同様に基材1の表面中央部の温度上昇が著しく抑制され、しかも経過時間が10分以上で温度変化がほとんど認められなくなり、断熱性がかなり向上していた。温度上昇傾向は、封止材料4に含有された無鉛低融点ガラス、無鉛低融点金属及び低熱膨張フィラー粒子の種類や配合割合によって、多少異なった。V2O5−TeO2系の無鉛低融点ガラスA−1を含有した封止材料ABC−1〜3を用いて製作した真空断熱部材では、同等の温度変化が認められたが、V2O5−TeO2系より特性温度が著しく低いV2O5−TeO2−Ag2O系の無鉛低融点ガラスA−7又はA−11を含有した封止材料ABC−4〜11を用いて製作した真空断熱部材に比べると、僅かに温度上昇が大きかった。封止材料ABC−4〜11内でもABC−4、5、8及び9と、ABC−6、7、10及び11との間で断熱性に僅かな違いが認められ、無鉛低融点ガラスの配合量が少なく、無鉛低融点金属の配合量が多いほど、温度上昇傾向が小さく、僅かながらでも断熱性が向上した真空断熱部材が得られた。封止材料ABC−1〜11を用いて製作した真空断熱部材の封止部は、どの封止材料を用いた場合でも図2や図22で示したように、ガラス相7と、金属相8とから形成され、ガラス相7よりも内部空間5側に金属相8が形成されていた。ガラス相7よりも内部空間5側に金属相8が形成されることにより、内部空間5側へのガラス相7の露出量を低減した。この金属相8により、ガラス相7から内部空間5へのガス放出量が低減されて、断熱性が良好な真空断熱部材が得られたものと考えられる。また、図12〜15で説明したように基材1に配置した排気穴20と排気管21から真空断熱部材の内部空間5のみを真空に引きながら封止する方法(排気管方式)においても本実施例の真空断熱部材を製作してみた。その封止部の状態は、ガラス相7の内部空間5側の金属相8が増加し、一方その外側の金属相8’が減少或いは消滅した。これは、封止時に溶融した無鉛低融点金属が内部空間5側に引っ張られるためであり、この封止方法においても、断熱性が良好な真空断熱部材が得られた。

図23で示したとおり、封止材料ABC−4〜11を用いて製作した真空断熱部材において、僅かな断熱性の違いは、内部空間5へのガラス相7の露出量の違いであるものと考えられる。すなわち、封止材料ABC−4、5、8及び9では、それらより無鉛低融点ガラスの配合量が多く、無鉛低融点金属の配合量が少ない封止材料ABC−6、7、10及び11より内部空間5へのガラス相7の露出量が少ない封止部が得られ、真空断熱部材の断熱性を僅かながらでも向上できたものと考えられる。封止材料4に含まれる表3の低熱膨張フィラー粒子C−1〜3は、図22で示したとおり、そのほとんどが、ガラス相7中に分散、存在していた。低熱膨張フィラー粒子が分散、存在したガラス相7は、ガラス相7の熱膨張係数を下げる効果があり、大きな熱膨張係数を有する表1の無鉛低融点ガラスとしては、基材1や基材2に使用したソーダライムガラス基板との熱膨張差を低減でき、熱的な残留応力を緩和するのに有効である。これは、封止部の接合強度を向上することに効果があり、封止材料4に低熱膨張フィラーを配合することは、真空断熱部材の信頼性向上に貢献できることは言うまでもない。特に低熱膨張フィラーとしては、V2O5−TeO2系無鉛低融点ガラスやV2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスとのぬれ性が良好で、マイナスの熱膨張係数を有するリン酸タングステン酸ジルコニウムZr2(WO4)(PO4)2或いはそれをベースとした物質が有効であった。

以上より、本実施例で製作した真空断熱部材は、建材用窓ガラス等に適用される真空断熱複層ガラスパネル等へ有効に展開できるものである。

[実施例3] 実施例3では、真空断熱部材の基材として強化ガラスの適用性を確認した。先に述べたとおり、真空断熱部材の基材に強化ガラスを用いる場合には、その機械的強度を極力低下させない低温、特に好ましくは320℃以下で封止する必要がある。

本実施例の第一の基材1及び第二の基材2には、風冷強化したソーダライムガラス基板を用い、第二の基材2には熱線反射膜6を形成した。基材1及び基材2のサイズは、600mm×500mm×5mmとした。封止材料4には、実施例として表6のABC−4、6、8及び10、比較例として表5のAC−7とAC−11を用い、実施例1や実施例2と同様にペーストの形態で使用した。これらの封止材料4は、表6や表5に示すように大気中焼成温度と真空中封止温度が320℃以下であるので、基材として用いる風冷強化ソーダライムガラス基板の機械的強度を低下させることはないと考えられる。また、真空状態の内部空間5を形成するためのスペーサ3の高さは0.25mmとした。真空断熱部材は実施例1と同様にして製作し、実施例1と同様の方法で断熱性を比較評価した。

第一の基材1や第二の基材2に使用した風冷強化ソーダライムガラス基板は、風冷強化していないソーダライムガラス基板に比べると、表面のうねりやそりが大きかったが、実施例及び比較例ともに真空断熱部材を製作することができた。また、その周縁に設けた封止部は、基材のサイズや重量を大きくしたにも係らず、容易に剥離等して真空状態にある内部空間5がリークするようなことはなかった。これにより実施例及び比較例で製作した真空断熱部材の断熱性を的確に評価することができた。

図24に実施例3で製作した真空断熱部材の断熱性の評価結果、すなわち基材2の表面中央部を60℃に加熱した際の基材1の表面中央部の経時温度変化を示す。表5の封止材料AC−7と11を用いてそれぞれ製作した比較例の真空断熱部材の断熱性は、実施例1の図21よりは基材1の表面中央部の温度上昇が少ない結果となった。これは、基材のサイズとスペーサ3の高さを大きくし、内部空間5の体積を増加させたために、断熱性が向上したものである。また、実施例1と同様に封止材料AC−7とAC−11を用いた場合では、真空断熱部材の断熱性に大きな差は認められず、ほぼ同等であった。これらに対し、表6のABC−4、6、8及び10を用いてそれぞれ製作した実施例の真空断熱部材では、基材1の表面中央部の温度上昇が著しく抑制され、断熱性がかなり向上していた。また、実施例2と同様に封止材料ABC−4、6、8及び10を用いた場合では、ABC−4と8を用いた場合の方が、ABC−8と10を用いた場合より、断熱性が僅かに良好であった。これは、封止材料4に含有された無鉛低融点ガラスと無鉛低融点金属の配合量に関係がある。無鉛低融点ガラスの配合量が少なく、無鉛低融点金属の配合量が多いほど、温度上昇傾向が小さく、僅かながらでも断熱性が向上したものと考えられる。

以上より、基材に強化ガラスが有効に適用できることが判明した。強化ガラスの基材への適用は、通常のガラス基材に比べると、内部空間5の高真空化による破損防止や安全、防犯等に貢献できるものである。また、実施例3に係る真空断熱部材は、建材用窓ガラス等に適用される真空断熱複層ガラスパネル等へ有効に展開できるものである。

[実施例4] 実施例4では、図6で示した封止材料を用い、図3で示した真空断熱部材を製作し、その断熱性を評価した。封止材料4に使用したリボン状の金属箔9の種類を表7に示す。表7に示した金属箔D−5と6は、図4で示したクラッド材であり、D−1〜4の金属材料から構成した。また、金属箔D−1〜6のサイズは、幅を5mm、厚みを0.16mmとした。

(封止材料の作製) 表4で示した封止材料AB−8と表6で示した封止材料ABC−7のペースト、及び表7で示した金属箔D−1〜6を用い、図7で説明した封止材料の製法によって封止材料を作製した。図7の製法において、金属箔の引張速度は50〜60cm/分程度とし、乾燥温度は150〜170℃、焼成温度は、使用する無鉛低融点ガラスの軟化点より30〜50℃程度高い温度とした。また、金属箔9の両面に焼成、形成した被膜13、13’の厚みは、それぞれ30〜40μm程度とした。

また、比較例として、表5で示した封止材料AC−8のペーストを用いて、リボン状の金属箔の両面に被膜を形成し、封止材料を作製した。表4のAB−8と表6のABC−7のペーストを用いて作製した実施例の封止材料4(図6)及び表5のAC−8のペーストを用いて作製した比較例の封止材料は、表7の金属箔9がD−3〜6の場合には、被膜13、13’が密着性よく形成された。これは、被膜13、13’に含まれるV2O5−TeO2−Ag2O系の無鉛低融点ガラス11、11’がアルミニウム金属やその合金とのぬれ性や接着性が大変良好なためである。しかし、金属箔9がD−1と2の場合には、被膜13、13’の密着性が良好とは言えず、D−1と2の金属箔9を用いた封止材料4では、被膜13、13’が剥離しないように、十分に注意して取り扱う必要があった。これは、被膜13、13’に含まるV2O5−TeO2−Ag2O系の無鉛低融点ガラス11、11’が鉄‐ニッケル系合金や鉄‐ニッケル‐クロム系合金とのぬれ性や接着性が良好とは言えないためである。

(真空断熱部材の作製) 作製した封止材料を用いて、図3に示した真空断熱部材を製作した。第一の基材1及び第二の基材2には、ソーダライムガラス基板を用い、第二の基材2には熱線反射膜6を形成した。第一の基材1及び第二の基材2のサイズは、600mm×500mm×3mmとし、真空状態の内部空間5を形成するためのスペーサ3の高さを0.2mmとした。

金属箔として鉄−ニッケル系合金や鉄−ニッケル‐クロム系合金を用いたD−1、2、5及び6を用いた封止材料4では、磁石への引力があるために、図9〜11で説明した真空断熱部材の製造方法によって、真空断熱部材を製作した。

金属箔としてD−3(アルミニウム金属)とD−4(アルミニウム系合金)を用いた封止材料4では、磁石への引力がないために、封止材料4の基材1への設置、基材2の配置及びクリップ17での固定の際に、その封止材料4が移動し易いために、エッジ部15に大きな隙間が空かないように十分な注意を払い、真空断熱部材を製作した。

真空中での封止温度は、金属箔9の両面の被膜13と13’をしっかりとつぶし、気密に封止するために、実施例1や実施例2よりは10〜20℃高温で行った。図25A及び図25Bに代表例として表6のABC−7と表7のD−2とからなる封止材料を用いて製作した真空断熱部材の封止部断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図25Bは、図25Aの部分的な拡大断面写真である。

(真空断熱部材の断熱性の評価) 気密に封止できた真空断熱部材の断熱性を実施例1と同様に評価した。断熱性の評価結果、すなわち基材2の表面中央部を60℃に加熱した際の基材1の表面中央部の経時温度変化を図26に示す。実施例の真空断熱部材は、比較例の真空断熱部材と比較すると、温度上昇が顕著に少なく、良好な断熱性を有していた。また、金属箔9の材質による断熱性の違いは、実施例及び比較例の真空断熱部材ともにほとんど認められなかった。実施例での真空断熱部材の封止部は、図3、図11及び図25の状態、形態を取っていた。すなわち、金属箔9の表裏面にあるガラス相7、7’の両端に金属相8、8’が形成されていた。内部空間5側に形成された金属相8によって、ガス発生原因のガラス相7、7’の内部空間5側への露出量が減少して、真空度が上がり、高断熱化が図られたものと考えられる。AB−8とABC−7の僅かな断熱性の違いは、そのガラス相7、7’の露出量の違いで、AB−8の方がABC−7より無鉛低融点ガラス11、11’の配合量が少なく、無鉛低融点金属12、12’の配合量が多かったことが原因であると考えられる。また、ガラス相7、7’中には、低融点金属12、12’が両端に移動した形跡、すなわち筋状の金属相が認められる場合があった。

以上のように実施例の真空断熱部材では、気密に封止できれば、良好な断熱性が得られた。しかし、基材1と基材2で使用したソーダライムガラス基板と、金属箔9との熱膨張係数の差が大きい場合には、気密に封止できない場合もあり、内部空間5を真空状態にすることができないことがあった。本実施例においては、基材1及び基材2で使用したソーダライムガラス基板と、金属箔9に使用したアルミニウム金属のD−3及びアルミニウム合金のD−4とでは、熱膨張係数の差が非常に大きく、封止部が一部剥離することもあり、気密に封止できないことがあった。一方、金属箔9がD−1、2、5及び6の場合には、基材1及び基材2で使用したソーダライムガラス基板と熱膨張係数が近く、気密封止に失敗することはほとんどなかった。

以上より、金属箔9として鉄−ニッケル系合金、鉄−ニッケル‐クロム系合金、アルミニウム金属、アルミニウム系合金、及びこれらのクラッド材のいずれかを使用することによって、ガス放出原因の源となっている高価なV2O5−TeO2−Ag2O系の無鉛低融点ガラス11、11’の使用量を著しく低減できる。また、真空断熱部材の製作工数を少なくすることができる。その結果、真空断熱部材の高断熱化と低コスト化の両立を図ることができる。

さらに封止材料4の金属箔9として鉄−ニッケル系合金或いは鉄−ニッケル−クロム系合金のリボン箔の両面にアルミニウム金属或いはアルミニウム系合金の層が形成したクラッド材が特に好ましい。無鉛低融点ガラス11、11’と金属粒子12、12’とを含む被膜13、13’が密着性よく形成でき、かつ、封止材料を磁石を用いて簡単に搬送や設置できるためである。また、熱膨張係数の整合が良好なことから、信頼性が高い封止部が得られた。

[実施例5] 真空断熱部材、特に真空断熱複層ガラスパネルでは、基材に安価なソーダライムガラス基板やその強化ガラス基板が使用されることが多い。しかし、その基材には、うねりやそりが存在する。そのうねりやそりが大きい場合には、気密封止の妨げとなることがあった。実施例5では、基材のうねりやそりを対策するために、多数の貫通孔10を有する金属箔9を用いた封止材料4を用いた真空断熱複層ガラスパネルを作製し、断熱性を評価した。

(封止材料の作製) リボン状の金属箔9に表7のクラッド材D−6(図4)を用い、0.3〜0.5mm径程度の貫通孔10を約5mm間隔で形成したこと、表4で示した封止材料AB−11と表6で示した封止材料ABC−9を用いて金属箔の両面に被膜を形成されたこと以外、実施例4と同様にして封止材料を作製した。

作製した封止材料4の被膜13、13’は、金属アルミ箔と強固に密着されていた。これは、D−6の金属箔9の両面にV2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスとぬれ性や接着性が良いアルミニウム金属層が施されたクラッド材であったためである。また、D−6の金属箔9の貫通孔10にも、被膜13、13’が充填されていた。

(真空断熱部材の作製) 第一の基材1及び第二の基材2には、風冷強化したソーダライムガラス基板を用い、そのサイズを、0.1mm程度のうねりを有する1000mm×900mm×5mmとし、上記封止材料を用いたこと以外、実施例4と同様に真空断熱部材を作製した。

うねりの大きな基材を用いた場合であっても、金属箔9に形成した多数の貫通孔10によって気密に封止できることが明らかになった。また、表7で示したD−6の金属箔9の熱膨張係数が基材1や基材2に使用した風冷強化ソーダライムガラス基板の熱膨張係数に近いために、封止部の熱的な残留応力が少なく、機械的信頼性が高い封止部が得られた。

(真空断熱部材の断熱性の評価) 製作した真空断熱部材の断熱性を実施例1と同様にして評価した。真空断熱部材の断熱性の評価結果、すなわち基材2の表面中央部を60℃に加熱した際の基材1の表面中央部の経時温度変化を図27に示す。製作した実施例の真空断熱部材は、温度上昇が著しく少なく、大変良好な断熱性を有していた。実施例での真空断熱部材の封止部は、図5で示した状態、形態を取っていた。すなわち、金属箔9の表裏面にあるガラス相7、7’の両端に金属相8、8’が形成されていた。また、貫通孔10にもガラス相や金属相が形成されていた。内部空間5側に形成された金属相8によって、ガス発生原因のガラス相7、7’の内部空間5側への露出量が減少して、真空度が上がり、断熱性が著しく向上したものと考えられる。AB−11とABC−9の僅かな断熱性の違いは、そのガラス相7、7’の露出量の違いである。AB−11の方がABC−9より無鉛低融点ガラス11、11’の配合量が少なく、無鉛低融点金属12、12’の配合量が多かったことが原因であると考えられる。また、ガラス相7、7’中には、低融点金属12、12’が両端に移動した形跡、すなわち筋状の金属相が認められる場合があった。また、金属箔9の貫通孔10によりガラス相や金属相が表裏面で行き来して、基材のうねりを吸収している様子が見受けられた。

[実施例6] 実施例6では、図12〜15で説明した真空断熱部材の製造方法によって、真空断熱部材を製作し、その断熱性を評価した。

(封止材料の作製) 金属箔として表7に示すD−5を用いたこと、表6で示したABC−5のペーストを用いて、金属箔の両面に被膜を形成させたこと以外は実施例4と同様に金属箔に貫通孔のない封止材料を作製した。

また、金属箔として表7に示すD−5を用いたこと、表6で示したABC−5のペーストを用いて、金属箔の両面に被膜を形成させたこと以外は実施例5と同様に、金属箔に貫通孔のある封止材料を作製した。

作製した2種類の封止材料は、金属箔がV2O5−TeO2−Ag2O系無鉛低融点ガラスとぬれ性や接着性が良いアルミニウム合金層が施されたクラッド材であったために、被膜と金属箔とが強固に密着されていた。また、貫通孔が形成されたD−5の金属箔では、その貫通孔10にも、被膜が充填されていた。

(真空断熱部材の製造方法) 作製した上記封止材料を用いて、図12〜15で説明した真空断熱部材の製法によって、図3及び図5で示した真空断熱部材を製作した。第一の基材1及び第二の基材2にはソーダライムガラス基板を用い、第二の基材2には熱線反射膜を形成した。なお、第一の基材1には、事前に排気穴20と排気管21を取り付けておいた。第一の基材1及び第二の基材2のサイズは、1000mm×900mm×3mmとし、真空状態の内部空間5を形成するためのスペーサ3の高さを0.2mmとした。

先ずは、図12に示すように排気穴20と、排気管21と、多数のスペーサ3とを配置した基材1の周縁部に上記で作製した封止材料4を磁石14の引力によって設置した。次に図13に示すように磁石14によって封止材料4を設置した基材1と空間16をもって対向するように反射防止膜6を形成した基材2を配置し、耐熱クリップ17で固定した。磁石14は耐熱クリップ17で固定した後に取り外した。これを図14に示すように真空加熱炉19の内部に設置し、排気管21に電熱ヒーター22を取り付け、排気管21を真空ポンプ18に接続した。排気穴20と排気管21から基材1と基材2との空間16を真空に引きながら加熱し、その封止材料4によって周縁部を気密に封止し、内部空間5を真空状態とした。その封止の際には、封止部に内部空間5の真空状態による大きな荷重がかかるために、図9〜11で説明した製法よりも低温で封止が可能ある。本実施例では、封止材料4に配合される表1の無鉛低融点ガラスA−7の軟化点より若干高い265〜270℃で封止した。次に図15に示すように冷却時或いは冷却後に排気管21を電熱ヒーターにより焼き切って、内部空間5の真空状態を維持できるようにした。

製作した真空断熱部材の断熱性を実施例1と同様の方法で評価した。実施例6の真空断熱部材の断熱性の評価結果を図28に示す。本実施例で製作した2種類の真空断熱部材は、どちらも実施例5と同等に温度上昇が著しく少なく、大変良好な断熱性を有していた。また、金属箔9の貫通孔10の有無による断熱性の差は、ほとんど認められなかった。2種類の真空断熱部材の封止部は、基本的には図3及び図5で示した状態、形態を取っていたが、金属箔9の表裏面にあるガラス相7、7’の両端に形成された金属相8、8’において、金属相8が金属相8’よりも多く形成されていた。封止箇所によっては、金属相8のみで金属相8’が認められない箇所もあった。また、貫通孔10を形成した金属箔9を用いた場合には、その貫通孔10にもガラス相や金属相が形成されていた。ガラス相7、7’中には、低融点金属12、12’が両端に移動した形跡、すなわち筋状の金属相が認められる場合があった。内部空間5側に形成された金属相8によって、ガス発生原因のガラス相7、7’の内部空間5側への露出量が減少して、真空度が上がり、断熱性が著しく向上したものと考えられる。

以上より、実施例6に係る封止材料は、真空断熱部材の封止時に排気穴20と排気管21から内部空間5を真空状態とする製法においても適合できることが分かった。

以上の実施例1〜実施例6より、本発明は、真空度の向上により高断熱化でき、しかも低温で気密封止できる真空断熱部材、具体的には特に建材用窓ガラス等へ有効に展開できる真空断熱複層ガラスパネルを提供できるものである。この真空断熱部材や真空断熱複層ガラスパネルは、車両用窓ガラス、業務用冷蔵庫や冷凍庫の扉等、断熱性が要求される個所や製品にも展開可能である。また、その真空断熱部材に有効に適用できる封止材料及びその封止材料の適用による真空断熱部材の製法を提供できるものである。

1:第一の基材、2:第二の基材、3:スペーサ、4:封止材料、4':封止部、5:内部空間、6:熱線反射膜、7,7’:ガラス相、8,8’:金属相、9:金属箔、10:貫通穴、11,11’:無鉛低融点ガラス、12,12’:無鉛低融点金属、13,13’:被膜、14:磁石、15:エッジ部、16:空間,17:耐熱クリップ、18:真空ポンプ、19:真空加熱炉、20:排気穴、21:排気管、22:電熱ヒーター、23:ディスペンサー、24:円柱状ヒーター、25:温度計、26:鉄−ニッケル系合金又は鉄−ニッケル−クロム系合金のリボン箔、27:アルミニウム金属又はアルミニウム系合金の層

QQ群二维码
意见反馈