圧電磁器組成物及びその製造方法

申请号 JP2012547394 申请日 2012-03-02 公开(公告)号 JPWO2013128651A1 公开(公告)日 2015-07-30
申请人 本多電子株式会社; 发明人 流田 賢治; 賢治 流田; 敦灼 薫; 敦灼 薫;
摘要 【課題】良好な圧電特性を有しかつ特性バラツキが少ない圧電磁器組成物を提供すること。【解決手段】圧電磁器組成物10は、組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相を主相として含む。A元素は、K,Na,Liから選択される1つ以上の元素であり、B元素は、Nb,Ta,Sbから選択される1つ以上の元素である。圧電磁器組成物10には、A元素及びB元素とは異なる他の元素が添加されている。圧電磁器組成物10の粉末試料のX線回折プロファイルにおいて、主相と、組成式AsBtOu(s
权利要求

組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相(A元素は、K,Na,Liから選択される1つ以上の元素、B元素は、Nb,Ta,Sbから選択される1つ以上の元素)を主相として含む圧電磁器組成物であって、 前記A元素及び前記B元素とは異なる他の元素を添加物として含んで構成され、 該圧電磁器組成物を粒子径が10μm以下に粉砕した粉末試料のX線回折プロファイルにおいて、前記主相と、組成式AsBtOu(s 2θ=29.3°付近において前記異相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=29.3°)と、2θ=31.8°付近において前記主相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=31.8°)との強度比v=Imax(2θ=29.3°)/Imax(2θ=31.8°)が0前記異相は、前記A元素に対して前記B元素を1.5倍以上4.0倍未満の割合で含んで組成される酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。前記異相は、A6B10.8O30で示される酸化物であり、その重量比率wが0%前記添加物は、BiとFeとの金属元素であり、組成物全体を1とした場合に、組成式 (1−z)ABO3+z(0.5Bi2O3+0.5Fe2O3) で規定される金属元素の構成比zとして0仮焼工程の後に本焼工程を行って請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電磁器組成物を製造する製造方法であって、 前記仮焼工程の後において、組成物を粉砕して得られた仮焼粉に対してX線回折プロファイルを取得するX線回折工程と、 前記X線回折プロファイルに基づいて、前記異相の生成比率を確認し、その生成比率に応じて組成調整を行う調整工程と を含み、前記組成調整を行った仮焼粉を用いて前記本焼工程を行うようにしたことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法。

組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相(A元素は、K,Na,Liから選択される1つ以上の元素、B元素は、Nb,Ta,Sbから選択される1つ以上の元素)を主相として含む圧電磁器組成物であって、 少なくともBi及びFeを添加物元素として含んで構成され、組成物全体を1とした場合に、組成式 (1−z)ABO3+z(0.5Bi2O3+0.5Fe2O3) で規定される金属元素の構成比zとして0 該圧電磁器組成物を粒子径が10μm以下に粉砕した粉末試料のX線回折プロファイルにおいて、前記主相と、組成式AsBtOu(sタングステンブロンズ型結晶構造の異相との存在を示す回折ピークが存在し、 2θ=29.3°付近において前記異相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=29.3°)と、2θ=31.8°付近において前記主相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=31.8°)との強度比v=Imax(2θ=29.3°)/Imax(2θ=31.8°)が0.0045≦v≦0.088の範囲であることを特徴とする圧電磁器組成物。前記異相は、前記A元素に対して前記B元素を1.5倍以上4.5倍未満の割合で含んで組成される酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の圧電磁器組成物。前記異相は、A6B10.8O30で示される酸化物であり、その重量比率wが0%仮焼工程の後に本焼工程を行って請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電磁器組成物を製造する製造方法であって、 前記仮焼工程の後において、組成物を粉砕して得られた仮焼粉に対してX線回折プロファイルを取得するX線回折工程と、 前記X線回折プロファイルに基づいて、前記異相の生成比率を確認し、その生成比率に応じて組成調整を行う調整工程と を含み、前記組成調整を行った仮焼粉を用いて前記本焼工程を行うようにしたことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法。仮焼工程の後に本焼工程を行って、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧電磁器組成物でありかつ組成物全体のA元素とB元素との比率であるA/B比が0.95以上0.98以下である圧電磁器組成物を製造する方法であって、 前記仮焼工程の後において、組成物を粉砕して得られた仮焼粉に対してX線回折プロファイルを取得するX線回折工程と、 前記X線回折プロファイルに基づいて、前記異相の生成比率を確認し、その生成比率に応じて組成調整を行うにあたり、前記A/B比が0.95未満の仮焼粉と、前記A/B比が0.98超である仮焼粉とを混合して、混合物の前記A/B比が0.95以上0.98以下となるようにする調整工程と を含み、前記組成調整を行った仮焼粉を用いて前記本焼工程を行うようにした ことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法。

说明书全文

本発明は、アクチュエータ、超音波センサ、超音波振動子などに用いられるニオブ酸アルカリ系の圧電磁器組成物及びその製造方法に関するものである。

圧電磁器組成物は、アクチュエータ、超音波センサ、超音波振動子などの圧電素子として用いられている。現在、圧電特性の優れた圧電磁器組成物としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などのように鉛化合物を含んだものが実用化されているが、鉛化合物を含む圧電磁器組成物は環境への悪影響が懸念されている。このため、近年、鉛化合物を含まない圧電磁器組成物が注目され、研究開発が進められている。この鉛化合物を含まない圧電磁器組成物として、ニオブ酸アルカリ系の圧電磁器組成物が特許文献1〜3等にて提案されている。

特許文献1〜3に開示されている圧電磁器組成物は、ABO3の組成式で表されるペロブスカイト化合物であり、Aサイトの元素としてカリウムやナトリウムを含み、Bサイトの元素としてニオブやタンタルを含んでいる。

特許第4326374号公報

特許第4398635号公報

特開2008−162889号公報

ところで、ニオブ酸アルカリ系の圧電磁器組成物を製造する場合、出発原料として用いるカリウム材料の吸湿性による秤量誤差の問題や、焼成工程におけるカリウム飛散の問題などがあり、圧電特性の安定性や再現性が困難となることが知られている。このため、良好な圧電特性(具体的には、径方向の電気機械係数が0.4以上の特性)を有しかつ特性バラツキが少ない均一な製品を低コストで生産するための技術が求められている。

本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な圧電特性を有しかつ特性バラツキが少ない圧電磁器組成物を提供することにある。また、別の目的は、上記圧電磁器組成物を低コストで製造することができる圧電磁器組成物の製造方法を提供することにある。

上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相(A元素は、K,Na,Liから選択される1つ以上の元素、B元素は、Nb,Ta,Sbから選択される1つ以上の元素)を主相として含む圧電磁器組成物であって、前記A元素及び前記B元素とは異なる他の元素を添加物として含んで構成され、該圧電磁器組成物を粒子径が10μm以下に粉砕した粉末試料のX線回折プロファイルにおいて、前記主相と、組成式AsBtOu(s

sB

tO

uと呼ぶ)との存在を示す回折ピークが存在し、2θ=29.3°付近において前記異相の存在を示すメインピークの回折強度I

max(2θ=29.3°)と、2θ=31.8°付近において前記主相の存在を示すメインピークの回折強度I

max(2θ=31.8°)との強度比v=I

max(2θ=29.3°)/I

max(2θ=31.8°)が0

請求項1に記載の発明によれば、異相AsBtOuを含む形で圧電磁器組成物が作製され、全体組成としては、A/B=0.95〜0.98程度のBサイトリッチ(B元素の過剰)の状態となる。本発明の圧電磁器組成物では、主相におけるAサイト欠陥が2%程度の割合で存在していて、これ以上Aサイト欠陥を生成し難い状態となるため、副産物として異相AsBtOuが生成されている。また、圧電磁器組成物において、K,Na,Li,Nb,Ta,Sb以外の金属元素を添加物として含まない場合、主相におけるAサイト欠陥の許容量が著しく少なくなる。これに対して、微量の添加物の元素を加えることで点欠陥が導入され、それに伴いAサイト欠陥の許容量を適度に増やすことができる。本発明の圧電磁器組成物において、主相におけるAサイト欠陥量が多くなると、焼結体の緻密性が増して圧電特性を向上させることができる。また、A元素が欠乏しすぎると、Aサイト欠陥量が許容量(2%程度)で止まりそれ以上は生成されなくなり、異相AsBtOuが生成されるようになる。

ここで、異相AsBtOuが生成されない限界点に相当するAサイト欠陥量で焼結されるように圧電磁器組成物を製造すると、良好な圧電特性を得ることが可能となる。しかしながら、異相AsBtOuが生成されない限界点を狙った組成比で圧電磁器組成物を製造することは困難である。特に、圧電磁器組成物を大量生産する場合、焼成炉内の温度や雰囲気の不均一さによって、全ての圧電磁器組成物において狙いのAサイト欠陥量で焼結されるように調整することは困難である。また、異相AsBtOuが生成されない組成比側にずれが生じた場合、その組成比の変動がAサイト欠陥量の増減に直結するため、圧電特性の再現性や製造ロット内でのバラツキが悪くなる。

これに対して、本発明の圧電磁器組成物は、回折強度Imaxの強度比vが0

sB

tO

uを含む組成比としている。このようにすると、径方向の電気機械結合係数が0.4以上の良好な特性を有し、工業的に安定した圧電特性の圧電磁器組成物を得ることができる。具体的に、圧電磁器組成物において、組成比のずれが生じた場合、特性への影響が小さい異相A

sB

tO

uの生成比率が変動するものの、主相におけるAサイト欠陥の変動は小さくなる。つまり、焼成炉内の温度分布や雰囲気の不均一さによる焼き斑や組成ずれに対して、特性への寄与が小さい異相A

sB

tO

uの生成比率が緩衝となる。このため、焼結性や特性への影響が大きい主相(ABO

3のペロブスカイト構造の結晶相)のA/B比の組成ずれが抑制され、主相のAサイト欠陥がほぼ最大となった最適特性が得られる状態で、焼成炉内の全ての圧電磁器組成物が焼き上がる。この結果、圧電磁器組成物の特性バラツキを低く抑えることができ、高い良品率で圧電磁器組成物を大量に製造することが可能となる。

請求項2に記載の発明は、前記異相は、前記A元素に対して前記B元素を1.5倍以上4.0倍未満の割合で含んで組成される酸化物であることをその要旨とする。

請求項2に記載の発明のように、A元素に対してB元素を1.5倍以上4.0倍未満の割合で含んで組成される異相が存在する場合、工業的に安定した圧電特性を有する圧電磁器組成物を製造することができる。

請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記異相は、A6B10.8O30で示される酸化物であり、その重量比率wが0%

請求項3に記載の発明によれば、A6B10.8O30の組成式で示される異相が適度な割合で存在するため、工業的に安定した圧電特性を有する圧電磁器組成物を製造することができる。また、A6B10.8O30の異相は、常温で正方晶系であるが、圧電性が弱い。このため、A6B10.8O30の異相の生成比率が増えると、圧電磁器組成物としての圧電特性が低下してしまう。これに対して、本発明では、A6B10.8O30の異相は6%以下の重量比率で生成されるため、異相の生成比率が増えることによる圧電特性の低下を抑えることができる。

請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記添加物は、BiとFeとの金属元素であり、組成物全体を1とした場合に、組成式 (1−z)ABO3+z(0.5Bi2O3+0.5Fe2O3) で規定される金属元素の構成比zとして0

請求項4に記載の発明のように、Bi(ビスマス)とFe(鉄)との金属元素を適度に添加することにより、B元素としてTa(タンタル)が存在しなくても圧電特性のよい圧電磁器組成物を得ることができる。Taは、Nb(ニオブ)やSb(アンチモン)と比較して比較的高価な材料である。このため、Taを使用しないで圧電磁器組成物を製造することにより、その製造コストを低く抑えることが可能となる。

請求項5に記載の発明は、仮焼工程の後に本焼工程を行って請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧電磁器組成物を製造する製造方法であって、前記仮焼工程の後において、組成物を粉砕して得られた仮焼粉に対してX線回折プロファイルを取得するX線回折工程と、前記X線回折プロファイルに基づいて、前記異相の生成比率を確認し、その生成比率に応じて組成調整を行う調整工程とを含み、前記組成調整を行った仮焼粉を用いて前記本焼工程を行うようにしたことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法をその要旨とする。

請求項5に記載の発明によると、仮焼粉のX線回折プロファイルに基づいて、異相AsBtOuの生成比率が確認され、その生成比率に応じて組成調整が行われる。この場合、異相AsBtOuの生成比率が所望の範囲から外れてしまった仮焼粉を使用して、最適な組成比となるように組成調整を行うことができる。特に、ニオブ酸アルカリ系材料では、素材原料に使用されるカリウム材料(K2CO3粉末)の吸湿による秤量誤差などにより調合時の組成ずれが起こり易い。この問題に対しては、素材原料を混合して800〜900℃の温度で仮焼を行った仮焼粉に対してX線回折を行うことで、異相AsBtOuの生成の程度を確認し、仮焼までの工程での組成ずれの程度を把握することができる。そして、焼成後に所望の異相AsBtOuの生成量になるように組成調整して混合し、必要に応じて再仮焼し、これにバインダを添加して成形して焼成を行うことで、本材料系における組成ずれの問題に対応することができる。このようにすると、異相の生成比率が所望の範囲から外れた仮焼粉を捨てる必要がなく、その仮焼粉を使用して圧電磁器組成物を製造することができる。このため、原料の廃棄ロスをなくすことができ、圧電磁器組成物の製造コストを低く抑えることができる。

以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、良好な圧電特性を有しかつ特性バラツキが少ない圧電磁器組成物を提供することができる。また、請求項5に記載の発明によると、良好な圧電特性を有しかつ特性バラツキが少ない圧電磁器組成物を低コストで製造することができる。

第1の実施の形態の圧電磁器組成物を示す斜視図。

実施例1,2、比較例1〜7の圧電磁器組成物の粉末試料のX線回折プロファイルを示す説明図。

実施例1,2、比較例1〜7の仮焼粉のX線回折プロファイルを示す説明図。

実施例17、比較例2,5の圧電磁器組成物の粉末試料のX線回折プロファイルを示す説明図。

[第1の実施の形態] 以下、本発明をニオブ酸アルカリ系の圧電磁器組成物に具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。

図1は、本実施の形態の圧電磁器組成物10を示す斜視図である。圧電磁器組成物10は、直径が15mm、厚さ1mmのサイズを有する円板形状に形成されている。圧電磁器組成物10は、例えば超音波流量計を構成するための超音波センサとして使用される。なお、圧電磁器組成物10は、エンジンのノッキングセンサや超音波洗浄機の超音波振動子などに用いてもよく、その用途に応じて形状やサイズは適宜変更して使用される。

本実施の形態の圧電磁器組成物10は、組成式ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相を主相として含んで構成されている。圧電磁器組成物10は、Aサイトの元素(A元素)として、K(カリウム),Na(ナトリウム),Li(リチウム)を含み、Bサイトの元素(B元素)として、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Sb(アンチモン)のうちの少なくともNbを含んで構成されている。また、圧電磁器組成物10は、A元素及びB元素とは異なる金属元素であるBi(ビスマス)とFe(鉄)とを添加物として含んで構成されている。

以下、圧電磁器組成物10の製造方法について詳述する。

先ず、K2CO3、Na2CO3、Li2CO3、Nb2O5、Ta2O5、Sb2O3、Bi2O3、Fe2O3の原料粉末(純度99%以上)を準備する。そして、表1に示す実施例1〜16及び比較例1〜21の各々の組成を満たすように、それぞれの金属元素を含有する原料粉末を秤量し、ボールミルによりアルコール中で24時間混合して混合スラリーを得る。なお、それぞれの金属元素を含有する原料粉末(化合物)の種類は特に限定されないが、各金属元素の酸化物、炭酸塩等を好適に用いることができる。

次いで、得られた混合スラリーを乾燥し、900℃で3時間仮焼した後に、ボールミルによって24時間粉砕した。さらに、バインダとしてポリビニルアルコールを添加し、造粒した。そして、造粒後の粉体を圧2kN/cm2にて、直径18mm、厚さ2mmの円板状に加圧成形し、この成形体を1000〜1200℃にて2.5時間焼成し、焼成体を作製した。なお、このときの焼成温度は、1000〜1200℃の間で焼成体が最大密度になる温度を選定した。

次に、焼成後の各焼成体の両面を平行研磨し、図1に示す直径約15mm、厚さ1mmの円板形状に加工した後、この円板試料の両面に銀ペーストを塗布して700℃にて焼付けを行って対向電極を形成した。続いて、130℃のシリコーンオイル中にて3kV/mmの直流電圧を20分間電極間に印加し、厚み方向に分極を施して圧電磁器組成物10とした。

このようにして、実施例1〜16及び比較例1〜21に係る圧電磁器組成物10のサンプルをそれぞれ製造した。

本発明者らは、実施例1〜16及び比較例1〜21の圧電磁器組成物10について、電気特性、同一ロット内での特性バラツキ、及び工程能力指数Cpkを測定した。その測定結果を表2に示している。本実施の形態では、インピーダンスアナライザ(アジレント社製4294A)を用い、径方向の電気機械結合係数Kp、比誘電率ε33T0、誘電損失tanδの電気特性を25℃の温度でそれぞれ測定した。また、測定サンプル数は100個であり、それら電気特性の平均値を表2に示している。さらに、同一ロット内での電気機械結合係数Kpの標準偏差を特性バラツキとして求め、電気機械結合係数Kpの平均値及び標準偏差を用いて、Kp≧0.4を規格とした場合の工程能力指数Cpkを求めた。

本発明者らは、実施例1〜16及び比較例1〜21の圧電磁器組成物10について、X線回折装置(リガク社製SmartLab、X線源:Cu Kα、検出器:D−TEX Ultra)を用いてXRD分析を行った。図2には、得られたX線回折プロファイルの一例を示している。なおここでは、電極形成前の圧電磁器組成物10、または研磨によって電極を除去した圧電磁器組成物10を乳鉢によって粉砕し、粒径が10μm以下の粉末状にした試料粉末をX線回折装置の測定ホルダーにセットしてXRD分析を行った。また、XRD分析における具体的な計測は、θ−2θ法、集中ビーム法、測定範囲:2θ=5〜100°、スキャンスピード:4°/分、測定間隔:2θ=0.2°の条件で行った。なお、XRD分析の計測方法としては、異相AsBtOuの存在有無を正しく判定できる手法である限り、上述の方法に限定する必要はない。

XRD分析で得られたX線回折プロファイルにおいて、実施例1〜16及び比較例1〜21の全ての試料でメインピークが2θ=31.8°付近に観測された(図2参照)。この2θ=31.8°は組成式ABO3で表される主相の存在を示すメインピークである。また、2θ=29.3°付近に観測されるピークは、A6B10.8O30,A4B6O17などの異相AsBtOuの存在を示すメインピークであるが、そのピークを認識できる試料と認識できない使用とが存在した(表3参照)。

ここで、異相AsBtOuの存在を示す2θ=29.3°付近のピークが認識された試料について、異相AsBtOuの存在を示すθ=29.3°付近のメインピークとABO3の主相による2θ=31.8°付近のメインピークとの強度比v=Imax(2θ=29.3°)/Imax(2θ=31.8°)を計算した。その計算結果を表3に示している。さらに、これらのX線回折プロファイルに対して、解析ソフト(リガク社製PDXL)によりリートベルト解析を行い、異相AsBtOuの種類、及び存在比率w(重量%)を推定した。解析の結果、異相AsBtOuの種類はA6B10.8O30の正方晶と推定され、その存在比率w(生成比率)は表3に示す通りであった。なお、本実施の形態においては、ピーク強度比で存在比率を求めたが、ピーク分離が好適に為される場合においては、積分強度比を用いることもできる。

表2に示されるように、実施例1〜16では、インピーダンスアナライザによる電気機械結合係数Kpの評価において、Kp≧0.4を規格とした場合の工程能力指数Cpk>1.33を満たしており、不良率が少ない状態で良好な特性の圧電磁器組成物10が得られている。従って、表1にて示される実施例1〜16の組成比で圧電磁器組成物10を製造すると、ロット変動も小さく、安定して良好な特性が得られる。つまり、量産において、安定的に高い良品率で良好な特性の圧電磁器組成物10が得られる。

これに対して、比較例1〜4、10〜11、13〜15、20〜21は、異相AsBtOuの存在を示すピーク(θ=29.3°付近のピーク)は認識できなかった。これら比較例では、Kp≧0.4を規格とした場合の工程能力指数Cpk>1.33の条件をいずれも満たしていなかった。また、表3に示されるように、比較例5〜8、12は、異相AsBtOuの存在が確認されたが、その存在比率wが高過ぎて(w>6.0%)、メインピークの強度比vが0.088よりも大きくなっていた。このように異相AsBtOuの存在比率が高くなり、メインピークの強度比vが0.088よりも大きくなる場合、主相のAサイト欠陥量が小さくなることに関連して、電気特性が低下していた。

比較例9は、異相AsBtOuの存在が確認されたが、K、Na、Li、Nb、Ta、Sbの他に微量の添加物の金属元素(Bi,Fe)を含んでいない。このため、主相(ABO3で表されるペロブスカイト構造の結晶相)でのAサイト欠陥の導入量が少なく、電気機械結合係数Kpは0.4未満であり、圧電特性が悪くなる。

比較例16〜19は、異相AsBtOuの存在が確認され、異相の存在比率を示すメインピークの強度比vも0.088より小さくなっているが、電気機械結合係数Kpは0.4未満であり、電気特性を十分に確保することができなかった。これら比較例16〜19では、添加物の金属元素であるBi、Feの添加量が多過ぎて、X線回折プロファイルにおいて2θ=27.5°付近にFe−Sb酸化物と思われる異相の存在を示す回折線が確認されるなど、良好な圧電磁器組成物10が形成できなかったことに起因すると考えられる。従って、添加物としては、金属元素の構成比z(表1参照)として、z=0.2を超えないような添加量とすることが好ましい。

上述したように、実施例1〜16の圧電磁器組成物10は、A6B10.8O30の異相AsBtOuを含む形で作製され、全体組成におけるA元素とB元素との比率であるA/B比(表1ではaで示す比率)が0.95〜0.98程度のBサイトリッチ(B元素の過剰)の状態となっている。これら実施例1〜16の圧電磁器組成物10では、主相におけるAサイト欠陥が2%程度の割合で存在していて、これ以上Aサイト欠陥を生成し難い状態となるため、副産物として異相AsBtOuが生成されている。また、比較例9〜11の圧電磁器組成物10のように、K,Na,Li,Nb,Ta,Sb以外の金属元素であるBiやFeを添加物として含まない場合、主相におけるAサイト欠陥の許容量が著しく少なくなる。これに対して、実施例1〜16の圧電磁器組成物10のように、微量の添加物の元素(BiやFe)を加えることで点欠陥が導入され、それに伴いAサイト欠陥の許容量を適度(2%程度)に増やすことができる。圧電磁器組成物10において、主相におけるAサイト欠陥量が多くなると、焼結体の緻密性が増して、電気機械結合係数Kpを0.4以上に高めることができる。また、A元素が欠乏しすぎると、Aサイト欠陥量が許容量(2%程度)で止まりそれ以上は生成されなくなり、異相AsBtOuが生成されるようになる。A元素がさらに欠乏して異相AsBtOuの生成比率が増大する場合(比較例5〜7の場合)、平行バランスがずれて、主相のAサイト欠陥量が低下傾向になってしまう。

ここで、異相AsBtOuが生成されない限界点に相当するAサイト欠陥量で焼結されるように圧電磁器組成物10を製造すると、最適な圧電特性を得ることが可能となる。しかしながら、異相AsBtOuが生成されない限界点を狙った組成比で圧電磁器組成物10を製造することは困難である。圧電磁器組成物10を製造する場合、カリウム材料であるK2CO3粉末は吸湿性が高いため秤量誤差が生じ易く、さらに焼成時のカリウム飛散が問題となる。このため、圧電磁器組成物10の焼成工程後において組成比にずれが生じてしまう。特に、圧電磁器組成物10を大量生産する場合、焼成炉内の温度や雰囲気の不均一さによって、全ての圧電磁器組成物10において狙いのAサイト欠陥量(2%程度の欠陥量)で焼結されるように調整することは困難である。また、異相AsBtOuが生成されない組成比側(例えば、A/B比で0.98→0.99)にずれが生じた場合(例えば、比較例4の組成比から比較例3の組成比にずれた場合)、その組成比の変動がAサイト欠陥量の増減に直結する。このため、比較例3や比較例4では、圧電特性の再現性や製造ロット内でのバラツキが悪くなる。これに対して、実施例1〜16の圧電磁器組成物10では、全体組成としては、A/B=0.95〜0.98程度のBサイトリッチ(B元素の過剰)の状態となっている。このため、圧電特性の再現性があり、工業的に安定した圧電特性が得られる。

従って、本実施の形態によれば以下の結果を得ることができる。

(1)本実施の形態における実施例1〜16の圧電磁器組成物10は、回折強度Imaxの強度比vが0

sB

tO

uを含む組成比としている。この場合、各実施例1〜16の圧電磁器組成物10において、A

6B

10.8O

30の組成式で示される異相が重量比率w(wt%)で0%

pkが1.33以上の圧電磁器組成物10を得ることができる。また、圧電磁器組成物10において、組成比のずれが生じた場合、特性への影響が小さい異相A

sB

tO

uの生成比率が変動するものの、主相におけるAサイト欠陥の変動は小さくなる。つまり、焼成炉内の温度分布や雰囲気の不均一さによる焼き斑や組成ずれに対して、特性への寄与が小さい異相A

sB

tO

uの生成比率が緩衝となる。このため、焼結性や特性への影響が大きい主相(ABO

3で表されるペロブスカイト構造の結晶相)のA/B比の組成ずれが抑制され、主相のAサイト欠陥がほぼ最大となった最適特性が得られる状態で、焼成炉内の全ての圧電磁器組成物10が焼き上がる。この結果、圧電磁器組成物10の特性バラツキを低く抑えることができ、高い良品率で圧電磁器組成物10を大量に製造することが可能となる。

(2)本実施の形態における実施例1〜16の圧電磁器組成物10では、組成物全体を1とした場合に構成比zとして0

6B

10.8O

30の組成式で示される異相が重量比率wで1.0%≦w≦2.2%の割合で存在するように組成した実施例6,9,11,12の圧電磁器組成物10では、電気機械結合係数Kpを0.48以上とすることができた。さらに、各実施例6,9,11,12の圧電磁器組成物10では、電気機械結合係数Kpの標準偏差が0.0008以下となり特性バラツキを抑えることができ、工程能力指数C

pkを1.33以上に高めることができた。

(3)本実施の形態における実施例1〜16の圧電磁器組成物10は、A元素としてLiの元素をK,Naの元素と比較して1/10以下の割合で含んでいる。この場合、Liは比較的高価な材料であるため、Liを1/10以下の割合とすることにより、圧電磁器組成物10の製造コストを低く抑えることが可能となる。 [第2の実施の形態]

次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を説明する。本実施の形態では、圧電磁器組成物10の製造方法が第1の実施の形態と異なる。本実施の形態では、仮焼工程後に得られた仮焼粉をXRD分析し、その分析結果に基づいて組成調整を行っている。以下、本実施の形態の製造方法について詳述する。

まず、上記第1の実施の形態と同様に、金属元素を含有する原料粉末を混合し、得られた混合スラリーを乾燥した後に900℃で3時間仮焼する(仮焼き工程)。さらに、仮焼工程で得られた組成物を乳鉢によって粉砕し、粒径が10μm以下の仮焼粉を得る。この仮焼粉をXRD分析してX線回折プロファイルを取得する(X線回折工程)。なお、XRD分析の計測方法は、上記第1の実施の形態と同じである。図3には、実施例1,2、比較例1〜7の組成比で作成した仮焼粉のX線回折プロファイルの具体例を示している。

そして、X線回折プロファイルに基づいて、異相AsBtOuの生成比率が狙いの比率となるよう複数の仮焼粉を配合する組成調整工程を行い、その後、1000〜1200℃での本焼工程を行っている。

本実施の形態における材料系では、Bサイト過剰となるよう調合した組成において、800℃以上の温度で仮焼を行うと、未反応の素材原料は殆ど残らない。ABO3の結晶相としては、複数の組成が混在となる場合があるが、全体のA/B比のバランスによって、A6B10.8O30,A4B6O17などの異相AsBtOuが生成される。未反応の素材原料が残っていなければ、仮焼工程以降のA元素(例えば、カリウム)の飛散による組成ずれは小さいので、仮焼粉における異相AsBtOuの生成比率と、本焼工程後に得られる焼結体における異相AsBtOuの生成比率には高い相関性が見られる。従って、仮焼粉のX線回折プロファイルの測定結果を確認すると、その仮焼粉を用いて圧電磁器組成物10を作製した場合の圧電特性の良否が予想できる。

ここで、仮焼粉のX線回折プロファイルを確認した結果、異相AsBtOuの生成比率が好適な範囲から外れ、そのままでは圧電特性が悪くなると予想される場合には、最適なA/B比になるように組成調整が行われる。具体的には、例えば、表1〜3に示した比較例2と比較例5との仮焼粉が生成された場合を想定する。仮焼粉のX線回折によると、比較例2の仮焼粉では、異相AsBtOuが存在せず、このままでは特性が悪いことが予想される。また、比較例5の仮焼粉では、2θ=29.3°付近の異相AsBtOuからのピーク強度が強く、異相AsBtOuの生成比率が高過ぎて、特性が悪くなることが予想される。

これら2つの仮焼粉を1:1の重量比で配合して、ボールミルで6時間混合を行った。これにバインダとしてポリビニルアルコールを添加し、造粒した。造粒以降の製造工程は上記実施の形態(実施例1〜16)の製造方法と同様に行う。

このように製造した圧電磁器組成物10を実施例17とし、そのX線回折プロファイルを図4に示す。また、X線回折プロファイルに基づく異相AsBtOuの生成比率の推定結果を表4に示し、その圧電特性を表5に示す。

比較例2と比較例5との仮焼粉を用いて、そのまま作製した圧電磁器組成物10では、良好な特性が得られなかった。これに対して、比較例2及び比較例5の仮焼粉を配合して製造した実施例17では、異相AsBtOuの生成比率wが1.8重量%であり最適範囲となっている。また、実施例17では、電気機械結合係数Kpが0.4以上であり圧電特性も良好で、工程能力指数Cpkも高いことが確認された。

本実施の形態の製造方法を用いることにより、仮焼粉の段階で、組成ずれ要因による不具合を予見して組成調整することができ、圧電特性が良好な圧電磁器組成物10をより確実に得ることができる。また、何らかの要因で組成ずれを起こしてしまった仮焼粉の製造ロットが生じた場合でも、他の仮焼粉と適切な配合比率で混合して使用することによって、無駄にすることなく、圧電磁器組成物10を製造するために有効利用することができる。

なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。

・上記各実施の形態の実施例1〜17では、A元素として、K(カリウム),Na(ナトリウム),Li(リチウム)を全て含んで構成されていたが、これに限定されるものではない。A元素として、K(カリウム),Na(ナトリウム),Li(リチウム)の1種類以上を含んで構成されるものであればよい。

・上記各実施の形態では、異相AsBtOuとしてA6B10.8O30,A4B6O17の結晶相を例示したがこれに限定されるものではない。この他にも、(ア)A6B10.88O30、(イ)A5.75B10.85O30、(ウ)A2.6B11.6O30、(エ)A3B8O21、(オ)A2B8O21などを異相AsBtOuとして挙げることができる。つまり、異相AsBtOuは、AsBtOuの組成式(s、t、uはモル比)で示される酸化物であって、A元素に対してB元素を1.5倍以上4.0倍未満の割合(t/sの値が1.5〜4.0)で含んで組成されるものであればよい。

・上記第2の実施の形態では、異相AsBtOuの生成比率が狙いの比率となるよう組成調整を行っていたが、これに限定されるものではない。例えば、異相AsBtOuのメインピークの強度が狙いのピーク強度となるように組成調整を行ってもよい。

・上記第2の実施の形態では、全体組成のA/B比が1.00(比較例2)と0.94(比較例5)との仮焼粉を配合する場合を具体例として示したが、組成調整に使用する素材としては、原料粉末に用いたK2CO3、Na2CO3、Li2CO3、Nb2O5、Ta2O5、Sb2O3などの素材であってもよいし、これらを調合し、混合した後に仮焼して得たA6B10.8O30、A4B6O17などの化合物であってもよい。

・上記各実施の形態において、添加物の金属元素として、BiとFeとを1:1の割合で含んでいたが、これら割合は適宜変更してもよい。また、添加物の元素としては、BiやFe以外にも、Cr、Mn、Ni、Co、Cu、Zn、Sr、Zr、Mo、Ag、Baなど、種々の金属元素であってもよく、さらにそれらの組み合わせたものを添加物として圧電磁器組成物10に含ませてもよい。つまり、ABO3の主相におけるAサイト欠陥の許容量を好適に制御できる金属元素であれば、圧電磁器組成物10に添加することができる。そして、これら金属元素を添加することにより、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。

次に、請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。

(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記A元素として、K,Na,Liの元素を全て含んで構成されることを特徴とする圧電磁器組成物。

(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記A元素として、Liの元素をK,Naの元素と比較して1/10以下の割合で含むことを特徴とする圧電磁器組成物。

(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記圧電磁器組成物は、前記B元素として、Nb,Ta,Sbのうち少なくともNbを含んで構成されるニオブ酸アルカリ系の組成物であることを特徴とする圧電磁器組成物。

(4)請求項4において、前記添加物の金属元素としてBiとFeとを1:1の割合で含むことを特徴とする圧電磁器組成物。

(5)請求項1乃至4のいずれか1項において、組成物全体のA元素とB元素との比率であるA/B比が0.95以上0.98以下であることを特徴とする圧電磁器組成物。

(6)請求項3において、前記重量比率wが1.0%≦w≦2.2%で規定される比率で生成されていることを特徴とする圧電磁器組成物。

(7)請求項4において、前記添加物の金属元素の構成比zとして0.04≦z≦0.16の割合で含むことを特徴とする圧電磁器組成物。

(8)請求項5において、前記調整工程では、前記異相の生成比率が高い仮焼粉と前記異相の生成比率が低い仮焼粉とを混合して組成調整を行うようにしたことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法。

(9)請求項5において、前記調整工程では、前記X線回折プロファイルに基づいて、前記異相AsBtOuの生成比率を判定し、その異相の生成比率が狙いの比率となるよう組成調整を行うようにしたことを特徴とする圧電磁器組成物の製造方法。

(10)請求項5において、前記調整工程では、2θ=29.3°付近において前記異相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=29.3°)と、2θ=31.8°付近において前記主相の存在を示すメインピークの回折強度Imax(2θ=31.8°)との強度比v=Imax(2θ=29.3°)/Imax(2θ=31.8°)が0

(11)請求項1乃至4のいずれか1項において、組成式AsBtOu(s

10…圧電磁器組成物

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