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アンチモンドープ酸化錫、赤外線吸収顔料、赤外線吸収インキ、印刷物及びアンチモンドープ酸化錫の製造方法

申请号 JP2014514767 申请日 2013-05-10 公开(公告)号 JP5646114B2 公开(公告)日 2014-12-24
申请人 共同印刷株式会社; 发明人 文人 小林; 文人 小林; 渉 吉住; 渉 吉住; 博昭 島根; 博昭 島根; 正太 川▲崎▼; 正太 川▲崎▼; 山田 厚; 厚 山田;
摘要
权利要求
  • 酸化錫と酸化アンチモンを含有するアンチモンドープ酸化錫であって、下記(a)及び/又は(b)を満たすアンチモンドープ酸化錫:
    (a)X線回折測定により得られた2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)が、 0.30以下である;及び/又は (b)前記酸化アンチモンの含有量が、前記アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、0.5〜10.0重量%であり、かつ、X線回折測定により得られた2θ=27°付近のピークのピーク値を半値幅(Δ2θ)で除算した値である結晶化度が、 58427以上である。
  • 前記(a)において、前記半値幅(Δ2θ)は、0.21以下である、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 前記(b)において、前記酸化アンチモンの含有量は、前記アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、2.8〜9.3重量%である、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 前記結晶化度が78020以上である、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 前記アンチモンドープ酸化錫を、アクリルポリマー及びシリコーンを含むワニスに溶解させ、基材に塗布し、乾燥し、70μmの厚さ及び11.6重量%の前記アンチモンドープ酸化錫の固形分重量比を有する塗膜を形成して、JIS K5602に従って前記塗膜の日射反射率を測定したときに、380〜780nmの波長域における平均反射率から780〜1100nmの波長域における平均反射率を引くことにより得られた値が、3.00%以上である、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 請求項1〜 のいずれか1項に記載のアンチモンドープ酸化錫からなる赤外線吸収顔料。
  • 請求項 に記載の赤外線吸収顔料を含む赤外線吸収インキ。
  • 請求項 に記載の赤外線吸収インキにより印刷された印刷部を備える印刷物。
  • 前記印刷部に含有されるアンチモンドープ酸化錫の固形分重量比が11.6重量%である場合、780〜1100nmの赤外線波長域における反射率のピーク値が28.776%以下である、請求項 に記載の印刷物。
  • アンチモンドープ酸化錫原料を通気下で 炉において焼成する通気焼成工程を含む、アンチモンドープ酸化錫の製造方法 であって、
    前記アンチモンドープ酸化錫原料は、下記(i)〜(iii)の少なくとも1つである、アンチモンドープ酸化錫の製造方法:
    (i)錫化合物とアンチモン化合物の混合物を閉鎖系で焼成して、さらに閉鎖系で冷却することにより得られる生成物;
    (ii)錫化合物及びアンチモン化合物を原料として用いる共沈焼成法により得られる粗アンチモンドープ酸化錫;及び
    (iii)X線回折測定により得られた2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)が、0.30を超えており、かつ/又は、X線回折測定により得られた2θ=27°付近のピークのピーク値を半値幅(Δ2θ)で除算した値である結晶化度が、58427未満である粗アンチモンドープ酸化錫
  • 前記通気焼成工程の後に、
    200[℃/時間]以上の冷却速度で前記アンチモンドープ酸化錫を冷却する冷却工程を含む、請求項 10に記載の方法。
  • 前記アンチモンドープ酸化錫は、前記(a)を満たす、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 前記アンチモンドープ酸化錫は、前記(b)を満たす、請求項1に記載のアンチモンドープ酸化錫。
  • 前記通気焼成工程は、1100℃〜1300℃の温度で行なわれる、請求項10又は11に記載の方法。
  • 前記通気焼成工程は、1時間〜12時間行なわれる、請求項14に記載の方法。
  • 说明书全文

    本発明は、赤外線を吸収するアンチモンドープ酸化錫、赤外線吸収顔料、赤外線吸収インキ、印刷物及びアンチモンドープ酸化錫の製造方法に関する。

    アンチモンドープ酸化錫(ATO)は、少量の酸化アンチモンを含有する酸化錫であって、従来の一般的な製造方法は、加分解性の錫化合物とアンチモン化合物とを原料とする共沈焼成法であった。 この方法では、錫及びアンチモンの化合物を同じ溶液中で同時に加水分解させることにより(例えば、中和させることにより)、錫とアンチモンの各水和酸化物を共沈させる。 この共沈物を回収し、洗浄して付着する塩を除去した後、400℃以上で焼成することにより脱水して酸化物にすると、ATOが得られる。 一般に、焼成は、エネルギー消費量を抑制するために、閉鎖系で行われる。

    従来、アンチモンドープ酸化錫(ATO)は、透明導電材料として利用されることがあった。 この場合、十分な導電性を有する透明導電材料を得るためには、酸化アンチモンの含有量が約10重量%である必要があった。

    例えば、特許文献1に記載されている導電性微粉末では、酸化錫に対して酸化アンチモンを3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%加えており、特許文献2に記載されている製造方法によって得られた微粉末には、5重量%又は10重量%の酸化アンチモンが含有されている。 ただし、これらの文献に赤外線吸収効果についての記載はなく、考慮もされていない。

    また、アンチモンドープ酸化錫は、赤外線吸収効果も有しているため、セキュリティ材料として用いることもできる(例えば、特許文献3参照)。 特許文献3の技術では、アンチモンドープ酸化錫をインキに加えることにより、透明度が高い赤外線吸収インキを製造することができる。

    このため、特許文献3の技術によれば、様々な色の顔料と組み合わせてバリエーションに富んだ色彩を呈する赤外線吸収インキを製造することができると考えられる。 また、アンチモンドープ酸化錫は、無機顔料であるため、耐光性に優れた赤外線吸収インキを提供することができると考えられる。

    特許第2844012号公報

    特開昭56−156606号公報

    特開2010−6999号公報

    アンチモンドープ酸化錫は、主成分である酸化錫に、酸化アンチモンを含有させることにより製造される。 アンチモンドープ酸化錫が赤外線吸収効果を発揮する原理としては、主成分である酸化錫の結晶格子中に、酸化アンチモンが固溶される(入り込む)ことで、赤外線を吸収する結晶構造が形成されることが考えられる。

    このため、赤外線吸収効果を十分に発揮させるためには、主成分である酸化錫に対して、それ相応の酸化アンチモンを含有させる必要がある。

    ここで、酸化アンチモンは、化学物質排出移動量届出制度(PRTR)又は玩具安全基準書等の対象物質に挙げられている。 したがって、酸化アンチモンの使用量は、なるべく少ない方が望ましい。

    しかし、酸化アンチモンは、酸化錫の結晶格子中に入り込むことにより、赤外線を吸収する役割を発揮すると考えられているため、その使用量を単純に低減させるだけだと、その分赤外線吸収効果が低下してしまうという問題がある。

    したがって、本発明は、酸化アンチモンの使用量を低減させながらも、赤外線吸収効果を十分に発揮させることができる技術の提供を課題とするものである。

    上記課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する:
    [1] 酸化錫と酸化アンチモンを含有するアンチモンドープ酸化錫であって、下記(a)及び/又は(b)を満たすアンチモンドープ酸化錫:
    (a)X線回折測定により得られた2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)が、0.35以下である;及び/又は (b)前記酸化アンチモンの含有量が、前記アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、0.5〜10.0重量%であり、かつ、X線回折測定により得られた2θ=27°付近のピークのピーク値を半値幅(Δ2θ)で除算した値である結晶化度が、18092以上である。
    [2] 前記(a)において、前記半値幅(Δ2θ)は、0.21以下である、[1]に記載のアンチモンドープ酸化錫。
    [3] 前記(b)において、前記酸化アンチモンの含有量は、前記アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、2.8〜9.3重量%である、[1]に記載のアンチモンドープ酸化錫。
    [4] 前記結晶化度が58427以上である、[1]に記載のアンチモンドープ酸化錫。
    [5] 前記結晶化度が78020以上である、[1]に記載のアンチモンドープ酸化錫。
    [6] 前記アンチモンドープ酸化錫を、アクリルポリマー及びシリコーンを含むワニスに溶解させ、基材に塗布し、乾燥し、70μmの厚さ及び11.6重量%の前記アンチモンドープ酸化錫の固形分重量比を有する塗膜を形成して、JIS K5602に従って前記塗膜の日射反射率を測定したときに、380〜780nmの波長域における平均反射率から780〜1100nmの波長域における平均反射率を引くことにより得られた値が、3.00%以上である、[1]に記載のアンチモンドープ酸化錫。
    [7] [1]〜[6]のいずれか1項に記載のアンチモンドープ酸化錫からなる赤外線吸収顔料。
    [8] [7]に記載の赤外線吸収顔料を含む赤外線吸収インキ。
    [9] [8]に記載の赤外線吸収インキにより印刷された印刷部を備える印刷物。
    [10] 前記印刷部に含有されるアンチモンドープ酸化錫の固形分重量比が11.6重量%である場合、780〜1100nmの赤外線波長域における反射率のピーク値が28.776%以下である、[9]に記載の印刷物。
    [11] アンチモンドープ酸化錫原料を通気下で焼成する通気焼成工程を含む、アンチモンドープ酸化錫の製造方法。
    [12] 前記通気焼成工程の後に、
    200[℃/時間]以上の冷却速度で前記アンチモンドープ酸化錫を冷却する冷却工程を含む、[11]に記載の方法。
    [13] 前記通気焼成工程の前に、
    錫化合物とアンチモン化合物を混合して、混合物を得る混合工程、及び 前記混合物を閉鎖系で焼成して、前記アンチモンドープ酸化錫原料を得る閉鎖焼成工程を含む、[11]又は[12]に記載の方法。
    [14] 前記閉鎖焼成工程と前記通気焼成工程の間に、
    前記アンチモンドープ酸化錫原料を閉鎖系で冷却する閉鎖冷却工程を含む、[13]に記載の方法。

    本発明によれば、アンチモンドープ酸化錫の結晶性を向上させることにより赤外線吸収効果を向上させることができるため、酸化アンチモンの使用量を低減させたとしても、赤外線吸収効果を十分に発揮させることができる。

    図1は、アンチモンドープ酸化錫を製造する本発明の方法の一態様を示す工程図である。

    図2(A)は、実施例1のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率0.7重量%、通気焼成・冷却あり)のX線回折の結果を示す図であり、図2(B)は、実施例2のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率2.8重量%、通気焼成・冷却あり)のX線回折の結果を示す図である。

    図3(A)は、実施例3のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率5.3重量%、通気焼成・冷却あり)のX線回折の結果を示す図であり、図3(B)は、実施例4のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率9.3重量%、通気焼成・冷却あり)によるX線回折の結果を示す図である。

    図4(A)は、実施例5のアンチモンドープ酸化錫(市販品の通気焼成・冷却、200[℃/時間]以上の冷却速度、酸化アンチモン含有率2.7重量%)のX線回折の結果を示す図であり、図4(B)は、実施例6のアンチモンドープ酸化錫(市販品の通気焼成・冷却、200[℃/時間]未満の冷却速度、酸化アンチモン含有率2.7重量%)によるX線回折の結果を示す図である。

    図5は、実施例7のアンチモンドープ酸化錫(メタ錫酸と三酸化アンチモンの混合物の通気焼成・冷却、酸化アンチモン含有率4.2重量%)のX線回折の結果を示す図である。

    図6(A)は、比較例1のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率9.9重量%、市販品)のX線回折の結果を示す図であり、図6(B)は、比較例2のアンチモンドープ酸化錫(酸化アンチモン含有率2.8重量%、通気焼成・冷却なし)のX線回折の結果を示す図である。

    図7は、結晶化度の算出方法を概略的に示す概念図である。

    図8は、200nm〜2500nmの波長において酸化アンチモン含有率が反射率に与える影響を示すグラフである。

    図9は、200nm〜2500nmの波長及び2.7〜2.8重量%の酸化アンチモン含有率において、通気焼成工程が反射率に与える影響を示すグラフである。

    図10は、200nm〜2500nmの波長において、通気焼成工程が、市販のアンチモンドープ酸化錫原料の反射率及びアンチモン含有率に与える影響を示すグラフである。

    図11は、200nm〜2500nmの波長において、通気焼成工程が、メタ錫酸と三酸化アンチモンの混合物の反射率に与える影響を示すグラフである。

    以下、本発明のアンチモンドープ酸化錫、赤外線吸収顔料、赤外線吸収インキ、印刷物及びアンチモンドープ酸化錫の製造方法の実施形態について説明する。

    本発明のアンチモンドープ酸化錫は、酸化錫と酸化アンチモンを含む。 酸化アンチモンの含有量は、アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、約0.5重量%以上、約1.0重量%以上、約1.5重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上、又は約2.8重量%以上であることが好ましく、また、この含有量は、約10.0重量%以下、約9.5重量%以下、約9.3重量%以下、約8.0重量%以下、約7.0重量%以下、約6.0重量%以下、約5.5重量%以下、約5.0重量%以下、約4.0重量%以下、約3.5重量%以下、又は約3.0重量%以下であることが好ましい。 また、酸化アンチモンの含有量は、アンチモンドープ酸化錫の重量を基準として、約2.5〜約9.3重量%、約2.8〜約9.3重量%、約2.8〜約5.5重量%、又は約2.8〜約3.5重量%であることがより好ましい。

    従来のアンチモンドープ酸化錫は、十分な導電性を有する透明導電材料を得るために、10重量%を超える酸化アンチモンを含む必要があった。 一方で、本発明のアンチモンドープ酸化錫は、上記の通り、従来のアンチモンドープ酸化錫と比較して、酸化アンチモンの使用量を低減させることができる。

    ただし、酸化アンチモンは、酸化錫の結晶格子中に入り込むことにより、赤外線を吸収する役割を発揮すると考えられているため、その使用量を単純に低減させるだけだと、その分赤外線吸収効果が低下することになる。

    そこで、本発明のアンチモンドープ酸化錫は、赤外線吸収効果の低下を抑制するために、X線回折測定により得られた2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)が、0.35以下であり、かつ/又はX線回折測定により得られた2θ=27°付近のピークのピーク値を半値幅(Δ2θ)で除算した値である結晶化度が、18092以上である。

    赤外線吸収効果は、主成分である酸化錫の結晶格子中に、酸化アンチモンが固溶される(入り込む)ことで、発生する効果である。 つまり、アンチモンドープ酸化錫を製造する際には、主成分である酸化錫に酸化アンチモンを含有させることになる。

    したがって、酸化錫の結晶格子中に酸化アンチモンが適切に固溶されている場合、本発明のアンチモンドープ酸化錫は、結晶構造を適切に維持することによって、アンチモンドープ酸化錫中の酸化アンチモン含有量が微量(例えば、少なくとも0.5重量%)であったとしても、赤外線吸収効果を発揮することができる。 このとき、例えば、X線回折測定において、2θ=27°付近に鋭いピークが見られる。

    一方で、例えば従来のアンチモンドープ酸化錫のように、酸化錫の結晶格子中に固溶されない酸化アンチモンが不純物として存在していると、不純物は、赤外線吸収効果に寄与していなかったと考えられる。

    その場合、赤外線吸収効果に寄与していない部分の酸化アンチモンは、無駄な原料(不純物)としてそのまま残存することになる。 このため、アンチモンドープ酸化錫を製造する際には、必要以上に酸化アンチモンの使用量が増加してしまっていた。 そこで本発明の発明者等は、この不純物について研究を重ねた結果、アンチモンドープ酸化錫の半値幅(Δ2θ)が広く、かつ/又は結晶化度(物質が結晶化した際の物質全体に対する結晶化部分の割合)が低い場合には不純物としての酸化アンチモンが多くなり、一方で、半値幅(Δ2θ)が狭く、かつ/又は結晶化度が高い場合には不純物としての酸化アンチモンが少なくなることを突き止めた。

    なお、不純物としての酸化アンチモンを除去しながらアンチモンドープ酸化錫の結晶性を向上させる手段としては、例えば、後述する通気焼成、後述する気化精製などが挙げられる。

    そのため、本発明では、酸化アンチモンの使用量を必要最低限に抑えるために、半値幅(Δ2θ)を狭めたか、かつ/又は結晶化度を高めたアンチモンドープ酸化錫が提供される。 この点、半値幅(Δ2θ)を狭めるか、又は結晶化度を高めると、不純物が少なくなり、効果的に酸化アンチモンを固溶した状態にすることができ、赤外線吸収効果を向上させることができる。

    したがって、X線回折測定において、2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)を0.35以下に調整し、かつ/又は2θ=27°付近の結晶化度を18092以上に調整することにより、酸化アンチモンの使用量を抑えても、十分な赤外線吸収効果を発揮することができる。

    なお、本明細書では、X線回折を測定するときに、市販のX線回折装置を用いて、任意のスキャン速度を選択してよいが、積算回数を1回に設定するものとする。

    本発明のアンチモンドープ酸化錫では、酸化アンチモンの使用量を低減させながらも、赤外線吸収効果を十分に発揮させるために、2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)は、0.30以下、0.25以下、0.21以下、0.20以下、又は0.19以下であることが好ましい。

    また、本発明のアンチモンドープ酸化錫は、2θ=27°付近の結晶化度が58427以上、特に78020以上であることが好ましい。

    アンチモンドープ酸化錫の結晶化度を58427以上、特に78020以上とすると、不純物をより減らし、効果的に酸化アンチモンを固溶した状態にして、赤外線吸収効果をより向上させることができる。 それ故に、本発明によれば、酸化アンチモンの使用量を低減させながらも、赤外線吸収効果を十分に発揮させることができる。

    また、上記アンチモンドープ酸化錫を、アクリルポリマー及びシリコーンを含むワニスに溶解させ、基材に塗布し、乾燥し、70μmの厚さ及び約11.6重量%のアンチモンドープ酸化錫の固形分重量比を有する塗膜を形成したときに、この塗膜の日射反射率をJIS K5602に従って測定すると、380〜780nmの波長域における平均反射率から780〜1100nmの波長域における平均反射率を引くことにより得られた値が、約3.00%以上であることが好ましい。

    これに関連して、380〜780nmの波長域における平均反射率から780〜1100nmの波長域における平均反射率を引くことにより得られた値が3.00%以上であれば、アンチモンドープ酸化錫の可視光吸収性が相対的に低く、すなわち、アンチモンドープ酸化錫の可視光透明性が相対的に高くなる。 したがって、アンチモンドープ酸化錫の呈する色に束縛されることなく、アンチモンドープ酸化錫を幅広い用途で使用することができる。

    また、380〜780nmの波長域における平均反射率から780〜1100nmの波長域における平均反射率を引くことにより得られた値は、約4.80%以上、又は約4.85%以上であることがより好ましく、また約99%以下、約90%以下、又は約80%以下であることがより好ましい。

    本発明の赤外線吸収顔料は、上記のアンチモンドープ酸化錫からなる赤外線吸収顔料である。

    本発明の赤外線吸収顔料によれば、上述したアンチモンドープ酸化錫の作用・効果を赤外線吸収顔料にて実現することができる。 このため、酸化アンチモンの使用量を低下させつつ、赤外線吸収効果も十分に発揮することができるとともに、所定の安全基準等を遵守した高品質の赤外線吸収顔料を提供することができる。

    本発明の赤外線吸収インキは、上記の赤外線吸収顔料を含む赤外線吸収インキである。

    本発明の赤外線吸収インキによれば、赤外線吸収顔料の作用・効果を赤外線吸収インキにて実現することができる。 このため、酸化アンチモンの使用量を低下させつつ、赤外線吸収効果も十分に発揮することができるとともに、所定の安全基準等を遵守した高品質の赤外線吸収インキを提供することができる。

    本発明の印刷物は、上記の赤外線吸収インキにより印刷された印刷部を備える印刷物である。

    本発明の印刷物によれば、上記の赤外線吸収インキにより、文字、図形等を印刷した印刷部を備えるため、酸化アンチモンの使用量を低下させつつ、赤外線吸収効果も十分に発揮させた印刷物とすることができる。 また、高品質の印刷物を提供するのみならず、環境にも配慮した印刷物を提供することができる。

    本発明の印刷物は、印刷部に含有されるアンチモンドープ酸化錫の固形分重量比が11.6重量%である場合、780〜1100nmの赤外線波長域における反射率のピーク値が28.776%以下であることが好ましい。

    このように、赤外線の反射率が低い印刷物とすることにより、印刷部に含有される酸化アンチモンを低減することができると共に、赤外線吸収効果を十分に発揮させることができる。

    本発明のアンチモンドープ酸化錫は、例えば、以下の方法により製造されることができる。

    〔アンチモンドープ酸化錫の製造方法〕
    本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、アンチモンドープ酸化錫原料を通気下で焼成する通気焼成工程を含む。

    本発明において、通気焼成又は冷却は、焼成又は冷却雰囲気を流通させながら焼成又は冷却を行うことだけでなく、外気を遮断しない開放空間(以下、「開放系」とも呼ぶ)で焼成又は冷却を行うことも含む。

    本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、アンチモンドープ酸化錫の半値幅を従来品よりも狭め、かつ/又はアンチモンドープ酸化錫の結晶化度を従来品よりも高めることができる。

    本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、通気焼成工程を含むことにより、酸化アンチモンの使用量を低減させながらも、赤外線吸収効果を十分に発揮させることができるアンチモンドープ酸化錫を製造することができる。

    本明細書では、「アンチモンドープ酸化錫原料」は、通気焼成により本発明のアンチモンドープ酸化錫になる原料であり、例えば、下記(i)〜(v)の少なくとも1つを満たす原料である:
    (i)錫化合物とアンチモン化合物の混合物;
    (ii)上記(i)の混合物を閉鎖系(外気を遮断する密閉空間)で焼成することにより得られる生成物;
    (iii)上記(ii)の生成物を閉鎖系で冷却することにより得られる生成物;
    (iv)錫化合物及びアンチモン化合物を原料として用いる共沈焼成法により得られる粗アンチモンドープ酸化錫;及び(v)X線回折測定により得られた2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)が、0.35を超えており、かつ/又は、X線回折測定により得られた2θ=27°付近のピークのピーク値を半値幅(Δ2θ)で除算した値である結晶化度が、18092未満である粗アンチモンドープ酸化錫。

    上記(ii)及び(iii)からも明らかな通り、従来は閉鎖系で焼成工程及び冷却工程を行っていたため、従来のアンチモンドープ酸化錫では、酸化錫の結晶格子中に固溶されない酸化アンチモンが不純物として存在しており、赤外線吸収効果に寄与していないにもかかわらず、酸化アンチモンの多いアンチモンドープ酸化錫となっていた。

    そこで、本件発明者等は、通気焼成工程、及びその後の冷却工程を行うことにより、余分な酸化アンチモンの除去を達成できることを見出した。 そして、本発明の製造方法により得られるアンチモンドープ酸化錫は、半値幅が狭く、かつ/又は結晶化度が高くなるが、これは不純物の酸化アンチモンが少ないことに起因しているものと考えられる。 一方、アンチモンドープ酸化錫の中に、余分な酸化アンチモンが存在していると、X線回折での測定時にX線が散乱され、ピークが低くなるものと考えられる。

    なお、本明細書では、通気焼成工程、及びその後の通気冷却工程を少なくとも含むアンチモンドープ酸化錫の製造方法を「気化精製法」と呼ぶ。

    また、結晶格子中に固溶されている酸化アンチモンについては、本発明の製造方法では、通気焼成工程により、その一部を除去しつつ、結晶構造を適切に維持することができるため、高い赤外線吸収効果を維持することができる。 このため、通気焼成工程を経ることにより、酸化アンチモンの使用量を低減させながら、高い赤外線吸収効果を得ることができる。

    「錫化合物」としては、例えば、メタ錫酸、錫酸ナトリウム三水和物、ニオブ三錫、酸化フェンブタ錫、酸化錫、水素化錫を挙げることができる。

    「アンチモン化合物」としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン化インジウム、スチビンを挙げることができる。

    所望により、本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、通気焼成工程の後に、以下の工程を含んでよい:
    得られたアンチモンドープ酸化錫を、通気下で冷却する通気冷却工程;及び/又は 得られたアンチモンドープ酸化錫を200[℃/時間]以上の冷却速度で冷却する冷却工程。

    通気冷却工程は、例えば、炉の中に空気を送り込むことにより行なわれることができる(具体的には、冷却装置の設定により何時間後に何度まで冷却するという設定が可能である)。

    仮に密閉冷却工程(いわゆる自然冷却)に要する時間が10時間であるとすれば、通気冷却工程では、それよりも早い時間(例えば5時間程度)で冷却させてよい。 このため、通気冷却工程は、自然冷却よりも積極的に冷却していることになる。

    通気冷却工程又は単なる冷却工程において、冷却速度は、200[℃/時間]以上、215[℃/時間]以上、又は216[℃/時間]以上であることが好ましい。

    また、本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、通気焼成工程の前に、以下の混合工程及び閉鎖焼成工程を含むことが好ましい:
    錫化合物とアンチモン化合物を混合して、混合物を得る混合工程;及び 混合物を閉鎖系で焼成して、アンチモンドープ酸化錫原料を得る閉鎖焼成工程。

    さらに、本発明のアンチモンドープ酸化錫の製造方法は、閉鎖焼成工程と通気焼成工程の間に、アンチモンドープ酸化錫原料を閉鎖系で冷却する閉鎖冷却工程を含むことが好ましい。

    混合工程、閉鎖焼成工程、及び閉鎖冷却工程によって、それぞれ上記(i)〜(iii)を満たすアンチモンドープ酸化錫原料を得ることができる。

    本発明の一実施形態に係るアンチモンドープ酸化錫の製造方法の各工程について、図1を参照して、以下に説明する。

    〔原料混合工程:ステップS100〕
    この工程では、アンチモンドープ酸化錫の原料となる錫化合物とアンチモン化合物と混合する。 具体的には、粉末状のメタ錫酸(H SnO )と粉末状の三酸化アンチモン(Sb )とを混合する。 配合の割合は、「メタ錫酸(H SnO )=90重量%、三酸化アンチモン(Sb )=10重量%」の割合とし、水を媒体としてボールミルで砕混合を行う。 なお、三酸化アンチモンの含有量は、10重量%が好ましいが、5〜20重量%程度であってもよい。

    〔第1乾燥工程:ステップS102〕
    この工程では、先の原料混合工程(ステップS100)で混合された材料を320℃にて乾燥させる。 これにより、先の原料混合工程(ステップS100)にて材料を混合する際に使用した水を除去することができる。

    〔第1粉砕工程:ステップS104〕
    この工程では、先の第1乾燥工程(ステップS102)にて乾燥された材料を粉砕する。 具体的には、乾燥された材料を高遠粉砕機で粉末状に粉砕する。

    〔閉鎖焼成工程:ステップS106〕
    この工程では、先の第1粉砕工程(ステップS104)にて粉砕された材料を焼成する。 具体的には、先の第1粉砕工程(ステップS104)にて粉砕された材料を閉鎖系にて1000〜1300℃で1時間以上焼成する。 閉鎖焼成工程では、閉鎖系にて焼成しているため、酸化アンチモンの含有率(固溶比率)は、10重量%程度に維持される。

    〔閉鎖冷却工程:ステップS107〕
    この工程では、先の閉鎖焼成工程(ステップS106)で焼成された材料を冷却する。 具体的には、閉鎖焼成工程の終了と同時に冷却を開始して、焼成された材料を閉鎖系で冷却する。 これにより、錫(Sn)とアンチモン(Sb)とを複合させたアンチモンドープ酸化錫原料が生成される。 アンチモンドープ酸化錫原料は、閉鎖焼成工程(ステップS106)及び閉鎖冷却工程(ステップS107)を経て生成される。 なお、冷却は自然冷却でもよいが、後述する通気冷却工程と同様に、焼成された材料を通気下で冷却してもよい。

    〔第1微粉砕工程:ステップS108〕
    所望により、この工程を行なって、先の閉鎖冷却工程(ステップS107)にて冷却された材料を粉砕してよい。 具体的には、水を媒体としつつ、ビーズミルを用いて、焼成後の材料を粒径(レーザー回折散乱法でのメディアン径)が100nm程度になるまで粉砕することができる。 なお、この工程を省略する場合には、この工程より前の工程(例えば、ステップS106、ステップS107など)で使用された装置内において、連続的に後の工程に進んでよい。

    〔第2乾燥工程:ステップS110〕
    所望により、この工程を行なって、先の第1微粉砕工程(ステップS108)で粉砕された材料を、320℃に加熱することにより乾燥させてよい。 これにより、先の第1微粉砕工程(ステップS108)にて材料を粉砕する際に使用した水を除去することができる。 なお、この工程を省略する場合には、この工程より前の工程(例えば、ステップS106、ステップS107など)で使用された装置内において、連続的に後の工程に進んでよい。

    〔第2粉砕工程:ステップS112〕
    所望により、この工程を行なって、先の第2乾燥工程(ステップS110)にて乾燥された材料を粉砕してよい。 具体的には、乾燥された材料を高遠粉砕機で粉末状に粉砕することができる。 なお、この工程を省略する場合には、この工程より前の工程(例えば、ステップS106、ステップS107など)で使用された装置内において、連続的に後の工程に進んでよい。

    〔通気焼成工程:ステップS114〕
    この工程では、先の第2粉砕工程(ステップS112)にて粉砕された材料を焼成する。 具体的には、先の第2粉砕工程(ステップS112)にて粉砕された材料を通気下(炉内部に通気を保った状態)にて1000〜1300℃で1〜12時間焼成する。 この通気焼成工程により、閉鎖焼成工程により生成されたアンチモンドープ酸化錫原料を通気下で再び焼成することになる。 また、通気焼成工程では、通気下にて焼成しているため、酸化錫(SnO )中の余分な酸化アンチモン(Sb)を気化させて消失させることができる。 そして、最終的な酸化アンチモンの含有量(固溶比率)は、0.5〜9.3重量%程度になる。

    〔通気冷却工程:ステップS116〕
    この工程では、先の通気焼成工程(ステップS114)で焼成されたアンチモンドープ酸化錫を、通気下にて冷却する。

    具体的には、通気焼成工程の終了と同時に冷却を開始し、300分以内に焼成炉内の温度を室温(例えば20〜25℃程度)にすることにより、再び焼成されたアンチモンドープ酸化錫を冷却する。 なお、通気冷却工程は通気下で行われる。

    なお、実施形態において気化精製法を行う場合には、通気焼成工程(ステップS114)の後に、通気冷却工程(ステップS116)を行うことができる。

    〔第2微粉砕工程:ステップS118〕
    この工程では、先の通気冷却工程(ステップS116)にて冷却された精製後の材料を粉砕する。 具体的には、水を媒体としつつ、ビーズミルを用いて、精製後の材料を粒径(レーザー回折散乱法でのメディアン径)が100nm程度になるまで粉砕する。

    〔洗浄工程:ステップS120〕
    この工程では、先の第2微粉砕工程(ステップS118)にて粒度調整された材料の不純物を水洗により除去する。 不純物は、原材料に含まれる微量の電解質(例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)など)であり、不純物が十分に除去されたか否かは、導電率で確認することができる。

    〔第3乾燥工程:ステップS122〕
    この工程では、先の洗浄工程(ステップS120)で洗浄された材料を145℃に加熱することにより乾燥させる。 これにより、先の洗浄工程(ステップS120)にて材料を洗浄する際に使用した水を除去することができるとともに、洗浄後の材料を乾燥させることができる。

    〔仕上粉砕工程:ステップS124〕
    この工程では、先の第3乾燥工程(ステップS122)にて乾燥された材料を粉砕する。 具体的には、乾燥された材料を高遠粉砕機で、粒径(レーザー回折散乱法でのメディアン径)が数10nm〜100μm程度になるように仕上粉砕する。

    そして、上記の各工程を経ることにより、本発明のアンチモンドープ酸化錫が製造される。

    <アンチモンドープ酸化錫の作製>
    使用した材料は、以下の通りである:
    メタ錫酸:日本化学産業株式会社製のメタ錫酸 三酸化アンチモン:PATOX−CF(登録商標;日本精鉱株式会社製)
    アンチモンドープ酸化錫原料(市販品):日揮触媒化成株式会社製のELCOM(登録商標) P−特殊品(酸化アンチモンの含有量:9.9重量%、通気焼成なし、通気冷却なし)

    使用した焼成炉は、冷却装置付きシャトル式焼成炉(司電気炉製作所製)である。

    [実施例1]
    118.8gのメタ錫酸及び1gの三酸化アンチモンを用いて、図1に記載の通りに、ステップ100〜ステップ124を行なった。

    具体的には、下記表1に記載の通りに、混合工程(S100)、閉鎖焼成工程(S106)、閉鎖冷却工程(S107)、通気焼成工程(S114)及び通気冷却工程(S116)を含む方法により、酸化アンチモン含有量が0.7重量%であるアンチモンドープ酸化錫を得た。

    なお、通気焼成工程(S114)は、通気された炉内の温度を約1100℃に設定して、約8時間に亘って行われた。 また、通気冷却工程(S116)は、約200[℃/時間]以上の冷却速度で行われた。

    [実施例2〜7並びに比較例1及び2]
    下記表1に記載の通りに、実施例2〜7並びに比較例1及び2を行なった。 実施例2〜4については、メタ錫酸及び三酸化アンチモンの重量、及び/又は通気焼成工程(S114)の時間を変化させることによって、得られたアンチモンドープ酸化錫中の酸化アンチモン含有量を変化させた。

    一方で、比較例2では、混合工程(S100)、閉鎖焼成工程(S106)及び閉鎖冷却工程(S107)を実施例1と同様に行なったが、通気焼成工程(S114)及び通気冷却工程(S116)を行わずに、実施例2と同じ酸化アンチモン含有量を有する生成物を得た。

    比較例1では、市販品のアンチモンドープ酸化錫原料を用意した。 一方で、実施例5及び6では、比較例1の市販品を通気焼成工程(S114)及び通気冷却工程(S116)に供した。 通気冷却工程(S116)の冷却速度は、実施例5では200[℃/h]以上であり、実施例6では200[℃/h]未満であった。

    実施例7では、メタ錫酸と三酸化アンチモンの単なる混合物を通気焼成工程(S114)及び通気冷却工程(S116)に供した。

    〔生成物中の酸化アンチモン含有量の測定方法〕
    生成物中の酸化アンチモン含有量の測定は、蛍光X線分析装置RIX−1000(株式会社リガク製)のオーダー分析法にて行っている。 また、測定条件としては、アンチモンドープ酸化錫を粉末にして測定を行っている。 粉末は、粒径(レーザー回折散乱法でのメディアン径)が120nmの条件で測定を行っている。

    〔生成物のX線回折測定〕
    そして、実施例及び比較例の各生成物についてX線回折を行い、その測定結果から結晶化度の値を算出した。

    表1に示す通り、図2〜5は、実施例のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示す図であり、図6は、比較例のX線回折の結果を示す図である。 なお、各図において、縦軸はX線を照射した際の反射光の「強度(CPS)」を示しており、横軸は「2θ(deg)」を示している。

    〔CPS〕
    ここで、「CPS(Count Per Second)」とは、測定対象物にX線を照射した際の1秒あたりの光子の反射量を示しており、反射光の強度(レベル)として捉えることもできる。

    〔2θ〕
    また、「2θ」は、測定対象物にX線を照射する際の照射度を示している。 なお、「2θ」としている理由は、X線を照射する角度(入射角)がθであれば、反射角もθとなるため、この入射角と反射角とを合計した角度は2θとなるからである。

    〔結晶化度の算出方法〕
    結晶化度は、X線回折(XRD)の測定結果に基づいて算出している。 使用機器及び測定条件は、以下の通りである。
    (1)使用機器:株式会社リガク製 MultiFlex(X線回折装置)
    (2)測定条件:
    スキャン速度:4.0°/min.
    線源:40kV、30mA
    積算回数:1回

    例えば、図2(B)のグラフは、実施例2のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示すグラフである。 実施例2のアンチモンドープ酸化錫では、反射光の強度が大きく上昇する地点(波形が立ち上がる地点)が複数箇所にわたって発生している。

    具体的には、「2θ=27°」付近の地点、「2θ=34°」付近の地点、「2θ=38°」付近の地点、「2θ=52°」付近の地点、「2θ=55°」付近の地点、「2θ=58°」付近の地点である。
    そして、反射光の強度が上昇する地点のうち、反射光の強度が最も高い地点での2θ(deg)と強度(CPS)の測定値を用いて結晶化度を算出する。 アンチモンドープ酸化錫で反射光の強度が最も高い地点は、「2θ=27°」付近の地点である。

    図7は、結晶化度の算出方法を概略的に示す概念図である。
    結晶化度は、物質が結晶化した際の物質全体に対する結晶化部分の割合を示しており、ここでは、結晶化度=CPS/Δ2θ(半値幅)と定義している。 すなわち、結晶化度は、2θ=27°付近の地点における数値で定義している。 これにより、X線回折(XRD)の測定結果から結晶化度を算出することができる。 また、図示のグラフにおいて、規則正しい結晶構造を持ち、不純物がない程、波形のピークは大きく、波形の先端がシャープになる。

    〔CPS〕
    CPSは、反射光の強度(レベル)であるため、図示の例では波形の高さとなる。

    〔Δ2θ〕
    また、Δ2θは、X線回折測定により得られたCPSの最大値(ピーク値)の半分の値に対応する半値幅の広さとなる(図7において、長さA1と、長さA2とは同じ長さである)。

    このため、CPSの値が大きいほど(波形のピークが高いほど)、結晶化度の値は大きくなる。 また、Δ2θの値が小さいほど(半値幅が狭いほど)、結晶化度の値は大きくなる。

    ここで、検査対象となる材料にX線を照射する場合、X線を照射する角度によって、反射光が発生する角度と反射光が発生しない角度とがある。 反射光が発生する角度は、物質によって一定したものとなっており、同じ物質であれば、波形の立ち上がり又は立ち下がりの傾向はおおむね一致する。 本実施形態では、各実施例及び各比較例において、同じ物質であるアンチモンドープ酸化錫を用いているため、CPSの値が最大となる2θの位置は「2θ=27°」で統一されている。

    実施例1〜7並びに比較例1及び2について、2θ=27°付近の半値幅(Δ2θ)、2θ=27°付近の強度(CPS)、結晶化度(CPS/Δ2θ)及びX線回折グラフの図面番号を下記表1に示す。

    図2(A)のグラフは、実施例1のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示すグラフである。 実施例1のアンチモンドープ酸化錫は、「2θ=27°」付近の地点で反射光の強度が最も高く、CPSの最大値が12000程度である。 Δ2θに関しても、CPSの値がピークとなる波形の裾部分の幅が、上記実施例2〜4のものと比較してほとんど変わらない。 したがって、実施例1は、アンチモンドープ酸化錫として十分な結晶度であると考えられる。 ただし、酸化アンチモンの含有量が0.7重量%であり、酸化錫の結晶格子中に固溶されている酸化アンチモンの量が少ないため、実施例2〜4よりも赤外線吸収効果が低いと考えられる。

    図3(A)及び(B)のグラフは、それぞれ実施例3及び4のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示すグラフである。 実施例3及び4のアンチモンドープ酸化錫でも、反射光の強度が最も高い地点は、「2θ=27°」付近の地点である。

    また、図4(A)及び(B)のグラフは、それぞれ実施例5及び6のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示すグラフであり、そして図5のグラフは、実施例7のアンチモンドープ酸化錫によるX線回折の結果を示すグラフである。 実施例5〜7のアンチモンドープ酸化錫でも、反射光の強度が最も高い地点は、「2θ=27°」付近の地点である。

    実施例2〜4のアンチモンドープ酸化錫は、いずれもCPSの最大値が15000程度であり、反射光の強度が最も高い地点に出現する波形に関しても、先が尖っており裾部分の幅が狭いシャープな波形となっている。

    図6(A)のグラフは、比較例1の市販品によるX線回折の結果を示すグラフである。 比較例1の市販品は、反射光の強度が最も高いのは「2θ=27°」付近の地点であるが、CPSの値が上記実施例1〜7のものと比較して極端に小さい(2000程度)。 また、Δ2θに関しても、CPSの値がピークとなる波形の裾部分の幅が、上記実施例1〜7のものと比較して広くなっている。 これは、気化精製法を用いずに製造したアンチモンドープ酸化錫であるため、不純物が多いことが原因であると考えられる。

    図6(B)のグラフは、比較例2の生成物によるX線回折の結果を示すグラフである。 比較例2の生成物は、反射光の強度が最も高いのは「2θ=27°」付近の地点であるが、CPSの値が上記実施例1〜7のものと比較して小さい(CPS=6860.0)。 また、Δ2θに関しても、CPSの値がピークとなる波形の裾部分の幅が、上記実施例1〜7のものと比較して広くなっている。 これは、上述した気化精製法を用いずに製造したアンチモンドープ酸化錫であるため、不純物が多いことが原因であると考えられる。 これは、比較例2が実施例2と同じ酸化アンチモン含有量であるにもかかわらず、実施例2に比べて比較例2の結晶化度が低いことからもわかる。

    〔赤外線吸収効果の測定〕
    赤外線吸収効果の測定は、分光光度計を用いて光反射率を測定することによって行った。 使用機器、測定条件、及び測定方法は、以下の通りである。

    (1)使用機器:日本分光株式会社製 分光光度計V570
    (2)試料作成条件:アクリル/シリコーン系ワニス(ウレタン技研工業株式会社製 水性セフコート #800 クリアー)95部に、実施例及び比較例の赤外線吸収顔料5部を添加し、遊星式分散ミルを用いて分散させて赤外線吸収インキを作成し、厚さ200μmのPETフィルム上にフィルムアプリケーターで塗工して、乾燥させ、乾燥状態で膜厚70μmの印刷部を形成し、塗工フィルム(試料印刷物)を作成した。
    (3)測定方法:塗工フィルムの背面に標準白色板を装着し、200〜2500nmの波長範囲での反射率を測定した。 なお、実施例及び比較例の赤外線吸収顔料については、いずれも粒径(レーザー回折散乱法でのメディアン径)を120nmにして測定している。
    また、標準白色板の反射率を、約100%の標準値として設定した。
    なお、上記測定方法は「JISK5602 塗膜の日射反射率の求め方」に準拠している。 また、印刷部に含有される赤外線吸収顔料の固形分重量比(顔料比)については、次のように計算する。 上記(2)記載のアクリル/シリコーン系ワニスには樹脂等の固形分のほか、乾燥時に揮発して消失する溶剤等が含まれる。 アクリル/シリコーン系ワニスの固形分重量比が40重量%であるため、アクリル/シリコーン系ワニスの固形分が38部、赤外線吸収顔料が5部となり、赤外線吸収顔料の固形分重量比は11.6重量%である。 なお、残りの88.4重量%は、樹脂及び/又はその他の添加剤である。

    実施例1〜7並びに比較例1及び2について、200nm〜2500nmの波長と反射率の関係を図8〜11に示し、かつ380nm〜780nm及び/又は780〜1100nmの波長域において、平均反射率、最大反射率、及び最大反射率を示す波長を下記表1に示す。

    図8から、酸化アンチモンが酸化錫の結晶格子中に固溶しているアンチモンドープ酸化錫は、赤外線吸収効果を奏することが分かる。

    また、一般的な真贋判定に用いられる近赤外領域(波長が780〜1100nmの領域)では、赤外線吸収効果が高いことが望ましく、特に一般的な印刷条件であるアンチモンドープ酸化錫顔料の固形分重量比が11.6重量%のときに、反射率が30%以下であると、赤外線カメラ等の真贋判定装置で印刷物を観察した場合、アンチモンドープ酸化錫を含有する印刷部と他の部分との差が大きく、10人中10人が区別できるため、真贋判定に用い易く、好まれる。 これに関連して、図8に示されるように、2.8重量%以上の酸化アンチモン含有率を有する実施例2〜4は、その領域で反射率30%以下を保っている。

    図9から、2.7〜2.8重量%の酸化アンチモン含有率を有するとしても、通気焼成工程を経ていない比較例2は、通気焼成工程を経た実施例2、5及び6に比べて、赤外線吸収効果が低いことが明らかである。 つまり、通気焼成工程は、アンチモンドープ酸化錫の結晶性を高め、それによって、赤外線吸収効果を向上させることができる。 これは、下記表1において、実施例2、5及び6と比較例2の結晶性を対比することにより裏付けられる。

    また、実施例5及び6は、通気冷却工程(S116)の冷却速度を除いて、ほぼ同じ条件下で行われた。 しかしながら、下記表1に示されるように、200[℃/時間]以上の冷却速度で行われた実施例5は、200[℃/時間]未満の冷却速度で行われた実施例6よりも、半値幅(Δ2θ)が狭く、かつ結晶化度が高い。 これに関連して、通気焼成によって、酸化錫の結晶格子中に固溶されていない余分な酸化アンチモンとともに、その結晶格子中に固溶されている酸化アンチモンも微量ながら除去されるとしても、通気焼成後に積極的に冷却することによって、その結晶格子は維持されることが予想される。 したがって、通気冷却工程において冷却速度を200[℃/時間]以上に調整することは、アンチモンドープ酸化錫の結晶性の向上に寄与するものと考えられる。

    図10から、酸化アンチモンの含有率が9.9重量%である市販品のアンチモンドープ酸化錫顔料(比較例1)であったとしても、通気焼成工程を経ることによって、十分な赤外線吸収効果を有し、かつ酸化アンチモンの含有率が2.7重量%であるアンチモンドープ酸化錫(実施例5)になることが分かる。 つまり、通気焼成工程によって、結晶格子中に固溶されていない余分な酸化アンチモン(すなわち、赤外線吸収効果に寄与していない不純物)を除去することができる。

    図11から、閉鎖焼成工程及び閉鎖冷却工程を省略しても、つまり、混合工程、通気焼成工程及び通気冷却工程しか行わなくても、十分な赤外線吸収効果を有するアンチモンドープ酸化錫が得られることが分かる。

    ここで、下記表1について実施例1〜7を対比すると、実施例1〜6は、実施例7よりも、可視光波長域(380nm〜780nm)の平均反射率と赤外線波長域(780〜1100nm)の平均反射率の差が大きい。 したがって、実施例1〜6のアンチモンドープ酸化錫は、実施例7のアンチモンドープ酸化錫と比べて、アンチモンドープ酸化錫の呈する色に束縛されることなく、幅広い用途で使用可能であることが分かる。

    したがって、通気焼成工程を用いてアンチモンドープ酸化錫を製造することにより、必要最低限の酸化アンチモンの含有量で結晶性を向上させることができ、十分な赤外線吸収効果を有するアンチモンドープ酸化錫を製造することができる。

    しかも、得られたアンチモンドープ酸化錫は、酸化アンチモンの含有量が9.3重量%以下でありながら、酸化アンチモンの含有量が9.9重量%であるアンチモンドープ酸化錫と略同等又はそれ以上の赤外線吸収効果が得られている。

    本発明は、上述した実施形態及び実施例に制約されることなく、各種の変形又は置換を伴って実施することができる。 また、上述した実施形態及び実施例で挙げた構成又は材料はいずれも好ましい例示であり、これらを適宜変形して実施可能であることを理解されたい。

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